買収したRed Hatは成長を続けるがIBMの苦戦は続く

IBMは、Arvind Krishna(アルヴィンド・クリシュナ)氏が2020年CEOに昇格して以来、ハイブリッドクラウドやAIにフォーカスして戦略転換を進めてきた。その中心となっているのが、2018年に340億ドル(約3兆8810億円)で買収したソフトウェア会社Red Hat(レッドハット)だ。IBMは米国時間10月20日決算発表を行い財務成績はかなり厳しいものだったが、少なくともRed Hatは勢いよく成長を続けている。

IBMの第4四半期の売上高は176億2000万ドル(約2兆110億円)だったが、CNBCの報道によると、これはアナリスト予想の177億7000万ドル(約2兆280億円)を下回った。明るい話題としては、前年同期比で0.3%という非常に控えめな伸びを示したことが挙げられる。これは大したことではないと思うかもしれないが、過去10年間、ビッグブルー(IBMのニックネーム)は前年の売上高を上回ることはなかった

Red Hatを含むクラウドおよびコグニティブソフトウェア事業の売上高は、2.5%増の56億9000万ドル(約6490億円)となった。決算発表後に行われたアナリストへの説明会で、CFOのJim Kavanaugh(ジム・カバノー)氏は、Red Hatが第3四半期に17%成長したと指摘した。「Red Hatの売上高は、インフラストラクチャアプリケーション開発と新興テクノロジーで2桁の成長を達成しました。また、OpenShiftの経常収益が40%以上増加しました」と同社のコンテナオーケストレーションプラットフォームに言及しながら述べた。

以上が良いニュースだ。悪いニュースは、需要に追いつくためには技術者を雇う必要があり、その人件費はより高額になっていて、収益を抑制していることだ。「競争の激しい労働市場では、人材獲得や定着のためのコスト増などが当社の人件費を圧迫する要因となっていますが、現在の価格にはまだ反映されていません。今後の契約でこの価値を獲得することを期待していますが、収益構造に反映されるまでには時間がかかります」とカバノー氏は述べた。

つまり、Red Hatが問題なのではなく、IBMは自社の中心的企業からもっと収益を上げる方法を見つける必要があるということだ。Constellation ResearchのアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、Red Hatを単にIBMのサービスを販売するだけの存在とするのではなく、真に中立的なプレイヤーであることをハイブリッドクラウド市場に納得させるために、Red Hatをさらに成長させる必要がある、と話す。

「IBMは、企業がRedHatを使用してロックインを回避できるようにして自らをクラウドの『スイス』と位置づけることが完全にできていません。これは有効な提案ですが、世の中のCxOの心を捉えていません」とミューラー氏は述べた。

一方、IBMは2020年発表したように、インフラストラクチャサービス部門を別会社としてスピンアウトしている最中だ。これは、クラウドとAIの戦略に基づいて会社を強固にするための動きと見られているが、来月この手続きが完了すると、バランスシートからその収益を失うことになり、財務的には痛みをともなう。

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その他の主要部門であるグローバルサービス部門は5%減、システム部門は12%減と大幅な減収となった。唯一、グローバルコンサルティングが12%成長したのが救いとなった。

IBMは少しずつ前進しているが、十分ではなく、また迅速でもない。IBMの株価は10月21日の取引終了時に9.56%下落した。株主は明らかにさらなる成果を求めている。Red Hatがリードしている一方で、他の部門は遅れを取り続けていて、投資家は満足していない。

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画像クレジット:MIGUEL MEDINA / CONTRIBUTOR / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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