新型EVフォードマスタングMach-Eを体験、まずはタッチスクリーンの「ボリュームノブ」に感心

2021年型フォードマスタングMach-Eには巨大なタッチスクリーンが搭載されており、その下部にはボリュームコントロール用の大きなノブがある。私はこれがとても気に入った。タッチスクリーン上に、物理的なノブが備わっているのだ。それをひねって!回す!ひねるとカチッと手応えがある。このノブはタッチスクリーンのスライダーバーよりもはるかに使い勝手がよい。私は他の自動車メーカーに、フォードの先導に従うことを強くお勧めしたい。このノブは驚くほどシンプルなソリューションだ。

このノブの裏にはタッチスクリーンが感応する小さな帯が仕込まれており、ノブを回すとその部分がスクリーン上でドラッグされる。人間がタッチスクリーン上のスライダーを指で触れて操作したかのように、システムを騙すのだ。私が知る限り、このノブはスクリーンに接着されたプラスチックのパーツに過ぎない。

フォードがマスタングMach-Eに搭載したシステムは、巨大なタッチスクリーンと優れたユーザーインターフェースの間の幸せな妥協点である。ユーザーは回転するノブの恩恵を受けることができるが、フォードはそのために物理的な部品を追加で製作したり設置したりする必要がない。私の経験によれば、ボリュームのコントロールには知覚できるようなラグはなく、非常にうまく機能する。回転させれば音量を変更できるし、中央のボタンを押せばオーディオをミュートできる。思った通りに操作できるというのは、優れたデザインである証だ。

オーディオの音量は、回転するノブやダイヤル、ホイールで操作するべきである。議論の余地はない。

自動車メーカーは長い間、何度となくこれに替わるボリュームコントロールを導入してきたが、私はまだシンプルなノブより使いやすいものを見たことがない。

BMWは車内でジェスチャーコントロールを採用している。センタースタックの上に手を置き、片方の指を突き出して空中に円を描く。確かにこれはちゃんと機能する。私はいくつかの点でこのジェスチャーコントロールを良いと思う(未訳記事)が、しかし音量を変えるために指を回していると、馬鹿みたいに感じる時がある。

他にキャデラックなどの自動車メーカーは、音量をコントロールするためにタッチ感応式のスライダーバーを採用してきた。しかし、そのほとんどの自動車メーカーは、いくつかの理由からこのデザインを放棄してしまった。コントロール用のタッチスライダーはダッシュボードの表面に埋め込まれていることが多く、触れてもユーザーにフィードバックを返さない。また、システムの反応も遅いことが多く、イライラするばかりでちっともおもしろくない。

ありがたいことに、最近のほとんどのクルマには、メインのボリュームノブのほかに、ステアリングホイールにオーディオのコントロールが装備されている。回転するホイール式もあれば、上下ボタンを押して操作するものもあるが、私は明らかに回転ホイール派だ。

車内にタッチスクリーンが普及し始めると、より多くの自動車メーカーがボリュームのコントロールを画面上のスライドバーで行わせようとした。多くの場合、物理的なボタンよりもタッチスクリーンを使う方が安価だからだ。しかし、操作性は決して優れているわけではない。現在、ほとんどの自動車メーカーはインタラクティブなコンテンツを画面に表示し、音量とミュートのためのノブをダッシュボードの別の場所に設置するようになっている。

2021年型フォード マスタングMach-Eは運転するとどうだったかって?それは数日後まで話すことはできない。

ところでこの記事では、私に割り当てられた1カ月分の「ノブ」という言葉を消費してしまったことに留意していただきたい。全部で14回もこの言葉を使ってしまった。申し訳ない。

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タグ:フォード電気自動車Mustang Mach-Eレビュー

画像クレジット:Matt Burns

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(翻訳:TechCrunch Japan)

MobileyeがLuminarと契約、2022年の無人タクシー実現に向けLiDARを供給

センサーの開発を手がけるスタートアップで、上場企業入りを目指すLuminarは、Intel(インテル)の子会社であるMobileyeに自律走行車用のLiDARを供給するサプライヤー契約を締結した。

米国時間11月20日に発表されたこの契約は、長い間自動車業界を支配してきた企業と組み合わされることで期待の星となりそうだ。

このサプライヤー契約は、Mobileyeの中心事業であるコンピューターによる視覚イメージ処理技術の規模とはほど遠いものの、いくつかの試験プログラムを超えて拡大が見込める重要なコラボレーションだ。LuminarとMobileyeは、約2年前から開発契約を結んでいる。今回の新たな契約は、両社にとって次の重要なステップを示すものだ。

Mobileyeのカメラを使ったセンサーは、ほとんどの自動車メーカーが先進的な運転支援システムをサポートするために使用している。現在、5400万台以上の車両がMobileyeの技術を搭載している。しかし、2017年に153億ドル(約1兆5900億円)でインテルに買収された同社は、ここ数年で手を広げ、いまや先進運転支援技術を超えて、自律走行車のシステム開発に向けて動き出している。2年前にMobileyeは視覚認識、センサー融合、REM(Road Experience Management)マッピングシステム、ソフトウェアアルゴリズムを含むキットを発売する計画を発表した。

Mobileyeはそれ以来、自動運転の野心をさらに高めており、業界の一部では、単なるサプライヤーに留まらず、無人タクシー事業に乗り出すという予期せぬ方向に発展するのではないかとみられている。

LuminarとMobileyeの現時点では小規模な契約は、まだ生産契約に過ぎない。LuminarのLiDARは、Mobileyeの第1世代の無人運転車に搭載される予定で、ドバイ、テルアビブ、パリ、中国、韓国の大邱市で試験運転が行われている。Mobileyeの最終的な目標は、無人タクシー事業を拡大し、その自動運転スタック(AVシリーズソリューション)を他の企業に販売することである。MobileyeのAmmon Shashua(アンモン・シャシュア)最高経営責任者(CEO)は、同社が2022年に商業的な無人タクシーサービスを開始することを目標にしていると述べている。

「つまり、この生産契約は基本的に、2022年のサービス開始に向けてMobileyeの車両に装備を整え、同社のカメラソリューションと併用することで、安全性と余剰性を確保する力となるわけです」と、Luminarの創業者でCEOのAustin Russell(オースティン・ラッセル)氏は最近のインタビューで語っている。

この「AVシリーズソリューション」の最初の用途は、Mobileyeが自社で所有する車両向けだが、ラッセル氏はその後の機会に興味を持っている。

「Mobileyeは、他のどんな民間の自動運転開発会社ともまったく異なる会社で、まったく異なる戦略を取っています」とラッセル氏は語る。「彼らは何千万もの製品を量産車に搭載しています。つまり、何かを量産するために何が必要なのかを知っているわけです。その波に乗り、量産車の分野に有利な立場として関わることができるというのは、私たちにとって特別な関心事でした」。

Luminarは他にも量産レベルの案件を獲得している。VOLVO(ボルボ)は5月、LuminarのLiDARと認識システムを搭載した自動車の量産を2022年に開始すると発表した。これらを使ってボルボは、高速道路用の自動運転システムを展開する。

いまのところ、LiDARはハードウェアパッケージの一部として、XC90から始まったボルボの第2世代の「スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ」をベースとする各車にオプションとして用意されている。ボルボはLuminarのLiDARをカメラ、レーダー、ソフトウェアそしてステアリングやブレーキ、バッテリー電力などの機能を制御するバックアップシステムと組み合わせ、高速道路における自動運転機能を実現する予定だ。

ダイムラーのトラック部門は2020年10月、人間が乗っていなくても高速道路をナビゲートできる自律型トラックを生産するための幅広いパートナーシップの一部として、Luminarに投資したと発表している。

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タグ:LuminarIntel自動運転LiDAR自動車ロボタクシー

画像クレジット:Intel

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(翻訳:TechCrunch Japan)

自律走行車の開発を後押しするはずの公道試験「評価」、実は逆効果か

著者紹介:

Grace Strickland(グレース・ストリックランド)氏は、自律輸送業界をはじめとする最先端産業界のテック企業の顧問弁護士として6年以上の実績を持つ弁護士。

John McNelis(ジョン・マックネリス)氏は、Fenwick & West(フェンウィック・アンド・ウェスト)の自律輸送および共有モビリティ部門の主席弁護士。専門は知的財産。California Technology Council(カリフォルニア技術評議会)の自律輸送イニシアチブの議長も務める。

毎年、年末が近づくと、自律走行車の開発企業から不満の声が噴出し始める。毎年恒例となっているこの不満の原因は、California Department of Motor Vehicles(カリフォルニア州車両管理局(DMV))がすべての自律走行車(Autonomous Vehicle、以下「AV車」)開発企業に提出を義務づけている「Disengagement Report(自動運転解除レポート)」だ。AV車の試験を行うすべての開発企業は、試験走行中に「Disengagement」した回数、つまり自律走行モードから人間のドライバーによる手動運転に切り替えた回数を、毎年1月1日までに同レポートにまとめて提出しなければならない。

しかし、すべての自動運転解除レポートには1つの共通点がある。それは、「どの提出企業もレポートの有用性に疑問を呈している」という点だ。サンフランシスコのとある自動運転車企業の創業者兼CEOは公の場で、自動運転解除レポートは「AV車の商業展開が可能かどうかを判断するための意味ある判断根拠を提供する、という本来の目的をまったく果たせていない」と発言している。また、自動運転技術を扱う別のスタートアップ企業のCEOも、レポートの測定基準は「的外れ」だと言っている。Waymo(ウェイモ)は、レポートの測定基準は同社の自動運転技術を把握するのに「有効なインサイトを提供するものではなく、自動運転分野の競合他社と性能を比較するものとしては不十分である」とツイートした。

AV車開発企業がカリフォルニア州の自動運転解除レポートにこれほどまで強く異論を唱えるのはなぜなのだろうか。企業によって異なる試験方法を採用しているため、状況説明が十分に行えない同レポートの測定基準は誤った結論を引き出すことにつながる、というのが開発企業の意見だ。筆者の見解では、レポート内で自動運転解除の状況を説明するための表現とその定義について十分な指針が確立されていないことも、報告データから間違った結論が引き出されることにつながると思う。さらに、自動運転解除率という現在の測定基準では、各社が、数字を低く抑えるためにAV車をより無難な状況で試験走行させるようになったり、より多くのインサイトが得られるバーチャル試験よりも実地試験の方を好むようになったりする恐れがある。

自動運転解除レポートの測定基準を理解する

カリフォルニア州の公道でAV車の試験走行を行いたい企業は、AV Testing Permit(AV車走行試験許可)を取得しなければならない。2020年6月22日時点で、同州にはこの試験許可を受けた企業が66社あり、そのうちの36社は2019年にも同州でAV車の走行試験を行ったことを報告している。全66社のうち、乗客を輸送する許可を取得しているのは5社のみだ。

カリフォルニア州の公道でAV車を走らせる許可を取得した企業は、物損、人身被害、死亡に至った車両事故を、発生から10日以内に報告することが義務づけられている。

2020年度はこれまでに24件のAV車両事故が報告されている。ただし、大半が自律走行モード時に発生したとはいえ、ほとんどすべての事故は、AV車が後ろから衝突されて発生したものだ。カリフォルニア州では、追突事故の場合、大抵は後ろから衝突した方のドライバーに非があるとみなされる。

この車両事故データに有用性があることは明らかだ。消費者と規制当局が最も懸念しているのは、自律走行車が歩行者や乗客にとって安全か否か、という点である。もしAV車開発企業が、自律走行モードで車両大破や歩行者または乗客への深刻な人身被害に至った事故を1件でも報告すれば、その影響力は非常に大きく、事故を起こした車両の開発企業(ひいてはAV車業界全体)への風当たりは相当強くなる。

しかし、自動運転解除レポートで報告されるデータの有用性は、これよりはるかに疑わしい。カリフォルニア州車両管理局は、1月1日から始まる暦年中にカリフォルニア州内の公道でAV車の試験走行を行っている最中に自動運転を解除した回数と解除に至った状況の詳細を報告するよう各社に義務づけている。同局はこれを「AV車の試験走行中に自律走行モードが解除された回数(技術的な不具合、または試験走行ドライバー/オペレーターが安全のために手動走行へと切り替えざるを得ない状況が生じたことに起因する解除)」と定義している

AV車のオペレーターはまた、自律走行モードを解除した頻度と、その解除がソフトウェアの不具合、人為的ミス、車両オペレーターの裁量のいずれによるものなのかを追跡する必要もある。

AV開発企業は自社製品に関する測定可能なデータについては厳重に秘密を守っており、公開するのはせいぜい、制御された環境でのデモ走行を撮影した動画の一部とわずかなデータくらいである。不定期に「安全性に関する年次報告書」を発表する企業もあるが、どちらかと言えばAV車の性能をアピールする販促資料のような感じだ。さらに、公道での試験走行に関する報告を開発企業に義務づけている州は他にない。カリフォルニア州の自動運転解除レポートは例外的な存在なのだ。

このように、AV車に関して入手できる情報がほとんどない状況であるため、カリフォルニア州の自動運転解除レポートはしばしばAV車に関する唯一の情報源として扱われてきた。自動運転解除に関するこのデータは良く言っても「不完全」、悪く言えば「誤解を招く」ものだが、世間がAV車の開発の進み具合や相対的パフォーマンスを判断するにはこのデータに頼るしか方法がない、というのが現状だ。

自動運転解除レポートには状況説明が欠如している

自動運転解除レポートのデータには数字の根拠となる状況説明が欠如しているため、AV車業界の発展度合いを判断する尺度として使うには不十分である、というのが大半のAV車開発企業の意見だ。なぜなら、自動運転解除レポートのデータを読み解くには、試験走行を行った場所や走行の目的に関する情報が欠かせないためだ。

人口密度が低く、気候は乾燥していて、交差点もほとんどない地域で走行した距離と、サンフランシスコ、ピッツバーグ、アトランタのような都市部で走行した距離とでは、意味するものがまったく異なる、と言う業界関係者もいる。そのため、このような2つの異なる地理的環境下で走行した結果をまとめた自動運転解除レポートでは、競合企業を互いに比較することはできない。

また、自動運転解除レポートの提出義務が、試験走行の場所と手法に関する開発企業の決定を左右することを認識しておくことも重要だ。たとえ安全でも自動運転の解除が頻繁に必要になる試験走行は敬遠される可能性がある。自動運転解除率が高くなって、商業展開への準備が競合他社よりも遅れているように見えてしまうからだ。実際には、そのような試験走行こそ、商業展開に最適な車両の開発につながる可能性がある。商業展開への準備が進んでいるように見せるために、走行環境を無難なものにして自動運転解除レポートの報告基準を操作している、と競合他社を批判したAV車開発企業もある。

さらに、無難な走行環境と負担の少ない道路状況によって良好なデータを作り上げることができる一方で、AV車用ソフトウェアを改善するための戦略的な試験走行を行うと、非常に見栄えの悪いデータがはじき出される可能性がある。

一例として、米公共ラジオ局NPRのビジネス情報番組「Marketplace(マーケットプレイス)」のレポーターであるJack Stewart(ジャック・スチュワート)氏が紹介するケースについて考えてみよう

「例えば、まったく新しいソフトウェアを開発して本格展開しようとするある企業が、単に本社が近いからという理由で、カリフォルニア州で試験走行を行ったとする。試験の開始直後は特に多数のバグが見つかり、自動運転を何度も解除することになるだろう。しかし、同じ会社が、自動運転解除レポートの提出が不要な他の州、例えばアリゾナ州で試験走行を行えば、商業運転サービスを開始できるかもしれないのだ」とスチュワート氏は言う。

「そのサービスは非常にスムーズに運行するかもしれない。自動運転解除率という狭義の測定基準1つだけで、AV車開発企業が持つ能力の全体像を把握することなど到底できない。カリフォルニア州が数年前に追加情報の収集を開始したのはよいことだとは思うが、それでもまだ、本来の目的を果たすまでには至っていない」と同氏は続けた。

状況説明に使用する用語の定義が確立されていない

自動運転解除レポートが誤解を招く恐れがあるのは、自動運転解除の状況を説明する用語や表現に関する指針が確立されておらず一貫性が欠如しているためでもある。例えば、自動運転解除の理由を説明する際にさまざまな表現が用いられる中、最も多用されているのが「perception discrepancies(認知の不一致)」という言い回しだが、この表現が正確に何を意味するかは不明だ。

物体を正確に認識できなかったことを「認知の不一致」と表現しているオペレーターもいる。しかし、Valeo North America(北米ヴァレオ)は同様の誤作動を「物体の誤検知」と表現している。また、Toyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)は、ほぼすべての解除事例について「セーフティードライバーが予防的に解除した」という、どんな状況における解除にも当てはまる曖昧な表現を用いている。その一方で、Pony.ai(ポニー)は、自動運転解除の各事例について詳細に説明している。

他にも、自動運転解除の理由を「試験を目的とした計画的な解除」、あるいはほとんど意味がないほど抽象的な表現を用いて説明しているAV車開発企業は多い。

例えば、「計画的な解除」は、意図的に作り出した不具合をテストすることを意味していると考えることもできるが、単にソフトウェアが新しくてまだ荒削りであるために解除は想定内だったことを意味している可能性もある。同じように、「認知の不一致」という言い回しも、予防的な解除からソフトウェアの極めて危険な不具合による解除まで、あらゆる状況を意味し得る。解除理由の説明に「計画的な解除」や「認知の不一致」をはじめとする多数の曖昧な表現が使われていることが、競合企業間の比較をほとんど不可能にしている。

そのため、例えば、サンフランシスコを拠点とするAV車開発企業の自動運転解除がすべて予防的なものだったとしても、その理由を説明する表現に関する指針が存在せず、曖昧な表現が多用されているせいで、解除に関する説明が怪しく見えて疑問視されてしまうのが現状だ。

レポート提出義務がバーチャル試験走行の足かせになっている

現在、AV車開発の本質はソフトウェアにある。ハードウェア、ライダーやセンサーなど、AV車を構成する他の物理的な要素は、実質的に既製品で間に合う。本当に試験が必要なのはソフトウェアだ。ご存じのとおり、ソフトウェアのバグを発見するのに最適な方法は、とにかくそのソフトウェアを可能な限り頻繁に実行することである。路上の走行試験だけで、バグをすべて発見できるほど膨大な回数のソフトウェアテストを実行できるわけがない。そこで必要になるのがバーチャル走行試験だ。

しかし、自動運転解除レポートで報告する公道での試験走行距離が短いと、「路上走行の準備ができていない」と判断される可能性があるため、このレポートの提出義務自体が、バーチャル走行試験の足かせとなっている。

先ほども登場した米公共ラジオ局NPR「マーケットプレイス」のスチュワート氏も、同様の見解を述べている

「特に最近は、割りと既製品で間に合う部品もある。数社も回れば、必要なハードウェアが手に入るだろう。鍵はソフトウェアにある。そして、そのソフトウェアがバーチャル試験と実地の公道試験でどれだけの距離を無事故で動作したのか、ということが一番重要だ」とスチュワート氏は語る。

では、AV車開発の競合企業間の比較を行うのに必要な、本当に使えるデータはどこから入手できるのだろうか。ある企業は、3Dシミュレーション環境でエンドツーエンドの走行試験を毎日3万回以上行っている。別の企業は、社内のシミュレーションツールを使ってオフロード走行試験を1日に何百万回も行っており、その試験の中で、歩行者、車線合流、駐車車両などがある道路ではテストできないシナリオを含む運転モデルを動かしている。ウェイモはCarcraft(カークラフト)というシミュレーションシステムで1日あたり2000万マイル(約3200万キロメートル)の試験走行を実施している。同じ距離を実地の公道走行試験で走破するには100年以上かかる。

あるCEOは、バーチャル走行試験1マイル(約1.6キロメートル)から得られる成果は、公道走行試験1000マイル(約1600キロメートル)分に相当すると見積もる。

ウェイモのシミュレーション・自動化部門でプロダクトリードを務めるJonathan Karmel(ジョナサン・カルメル)氏も同様の見解を示し、カークラフトのバーチャル走行試験によって「最も興味深く有用な情報を得られる」と語っている。

今、何をすべきか

自動運転解除レポートに問題があることは明らかだ。同レポートのデータに依存することは危険であり、走行試験についてAV車開発企業に負のインセンティブを与える場合もある。しかし、これらの問題を乗り越えるために、AV車業界が自主的に取り組めることがある。

  1. バーチャル走行試験を重視して、そこに投資する。信頼性の高いバーチャル走行試験システムを開発・運用するには多額の資金がかかるかもしれないが、より複雑で危険度の高い運転シナリオを数多くテストできるようになれば、商業展開へぐっと近づくチャンスが開ける。
  2. バーチャル走行試験から収集できたデータを共有する。バーチャル走行試験の結果データを自主的に共有すれば、世間が自動運転解除レポートに依存する可能性が下がる。AV車開発企業が、開発の進み具合に関して信頼できるデータを一定期間にわたって一般に公表しない限り、商業展開への準備ができているかどうかを議論することは無意味だろう。
  3. 公道走行試験から最大限の成果を引き出す。AV車開発企業はカリフォルニア州での公道走行試験を続けるべきだが、バーチャル走行試験からは得られない成果を獲得することを目指して公道走行試験を行う必要がある。バーチャル走行試験よりも遅い速度で走行するからこそ発見できることがあるはずだ。レポートで報告する自動運転解除率が高くなるのは仕方がない。また、レポートでは、解除した理由や状況について具体的に説明する必要がある。

上記のような取り組みにより、AV車開発企業は、カリフォルニア州の自動運転解除レポートのデータがもたらす苦悩を和らげつつ、AV車が活躍する未来へと、より速く歩を進めることができる。

関連記事:ミシガン州で自動運転車専用道路を建設へ、ホンダやトヨタ、GM、フォードなども協力

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(翻訳:Dragonfly)

フォードの主力ピックアップトラック「2021 F-150」で採用されたテクノロジーのすべて

Ford(フォード)社は木曜日の晩、エレキギターのリフをバックに、ビデオの中から飛び出してくるような演出を用いて、フルモデルチェンジを果たしたF-150トラックの新型車を大々的に発表した。MCにはなんと、あの歯に衣着せぬDenis Leary(デニス・リアリー)を起用した。

もちろん、そんなことはどうでも良いことで、注目すべきは、フラグシップとして、また最も収益を望めるモデルとして、同社が改良を重ね、形にしてきた内容だ。前回のマイナーチェンジから実に6年が経過している。このまったく新しいF-150は、フォードトラックのファンが大いに期待してきた高い性能と豊富なオプションを備えている。例えば、フォードでは11のグリルオプションを提供している。

しかし、今回際立っているのは、組み込まれているテクノロジーと、マイルドハイブリッドを飛び超えて、いきなりフルハイブリッドパワートレインを採用したことだ。

新しいF-150で採用されたすべてのテクノロジーを以下に紹介する。まずは、インテリアと車載インフォテインメントシステムから。

コントロールセンター

ベースバージョンとなる XL には、8インチのセンタータッチスクリーンディスプレイが標準装備される。しかし、XLT 以上のグレードでは、画面を分割できる12インチのディスプレイが装備されている。これにより、ナビゲーション、音楽、トラック機能など、複数の機能を同時に操作できる。

Image Credits: Ford

接続性とOTA

搭載されている機能をサポートする接続性を備えていなければ、そのディスプレイにいったい何の意味があるだろうか。注目に値するのが、F-150には新しいSYNC 4システムと、最大10台のデバイスまで Wi-Fiアクセスを提供できる4G LTE内蔵モデムが搭載されている点である。前の世代より2倍のコンピューティング性能を備えたSYNC 4は、F-150のすべてのモデルに標準装備され、音声制御やリアルタイムマッピングといった機能も備えている。SiriusXMが提供するオンデマンドオーディオコンテンツも利用できる。

またスマートフォンをワイヤレスでApple CarPlayやAndroid Autoに接続できる。

このマストなシステムは、外部に委託せず、自社で製造しているため、無線ソフトウェアアップデートをサポートする。つまり、対象車種にアップグレードがロールアウトされ、運転アシストシステムの追加や改善を行ったり、地図を最新の状態に保ったりすることができる。SYNC 4はAppLinkシステムを介してサードパーティアプリも提供し、Wazeや「Ford+Alexa」と呼ばれるAmazon(アマゾン)社のAlexa(アレクサ)などにも対応する。

オフィス、寝室、それともダイニングルーム?

フォードが仕事のためにトラックで長い時間を過ごす人にターゲットを絞っていることは明白だ。この新しいF-150のセンターコンソールエリアは作業台へと変化する。この作業台は、書類に署名したり、15インチサイズのノートパソコンを使用したり、サンドウィッチを置いたりできるように設計されている。コンソールシフトレバーをうまく格納することによって、この快適な空間を作り出すことに成功した。ドライバーがボタンを押すとシフトレバーが折りたたまれて格納場所に収まり、ノートパスコンを広げるスペースがつくりだされる。

Image Credits: Ford

テールゲートを外に倒すと、物差しやモバイルデバイスを固定でき、カップホルダーや鉛筆収納ケースにもなる別の作業台が現れる。

Image Credits: Ford

発表前に少しリークされていたが、車内後部座席は完全フラットになる。この「マックスリクライニング」シートはほぼ180度倒すことができ、宣伝されている通り、King Ranch(キングランチ)、Platinum(プラチナ)、Limited(リミテッド)などのハイエンドモデルに装備されている。

ハイブリッドシステム

フォードは、F-150 XLからリミテッドまでのモデルで、フルハイブリッドパワートレインとも呼ばれる「PowerBoost」システムを提供している。このシステムは、フォードの3.5リッターV6エンジンと10速トランスミッションを35キロワットの電気モーターと組み合わせることによって実現されている。この電気モーターは、回生ブレーキによるエネルギー回収を利用し、トラックの下部に設置されている 1.5kWhリチウムイオンバッテリーに充電している。

フォードによると、一度の給油でEPA推定航続距離約1126キロメートルを目標としており、少なくとも約5.5トンの牽引が可能である。

電力

このトラックは、「Pro Power Onboard(プロパワーオンボード)」と呼ばれる車載発電機も備えている。オプションのガソリンエンジンで、2.0キロワットの電気出力が可能となる。ハイブリッド F-150では2.4キロワットの電気出力が標準で、オプションで7.2キロワットの出力を選べる。

所有者はキャビンにあるコンセントに差し込んで電源を利用できる。また、荷台には最大4 つの120ボルト20アンペアのコンセントが装備される。7.2キロワットの電源オプションの場合、240ボルト30アンペアのコンセントが備えられている。自動車で移動中に工具のバッテリーを充電することが可能になる。

アシスタント機能が満載

走行時には多くの危険が潜んでいるため、いつも安全に運転するのは容易なことではない。そのためフォードが提供する Co-Pilot 360 2.0システムの一部には運転アシスト機能が含まれている。注目すべき点は、これらの高度な運転アシスト機能はベースモデルの XL から標準装備されていることである。これには、自動緊急ブレーキと歩行者検知を利用した衝突を事前に避けるアシスト機能、ダイナミックヒッチアシストを備えたバックカメラ、ヘッドランプのハイビーム自動切り替え機能、ヘッドランプのオン/オフ自動切り替え機能が含まれる。

フォードはこれまで10個の運転アシスト機能を新たに追加してきた。最も有名なのは、Active Drive Assist(アクティブドライブアシスト)と呼ばれる、ハンズフリー運転機能である。2021年の第3四半期に、全電動式Mustang Mach-E(マスタング・マッハ E)を含む特定の車種にソフトウェアアップデートを介してロールアウトする予定。

ハンズフリー機能は、米国およびカナダの中央分離帯のある、事前に地図に登録されている約16万キロの高速道路で利用できる。モニタリングシステムには、ドライバーが道路に注意を払い続けているかを確認するため、視線や頭の位置を追跡する高度なドライバー顔認識赤外線カメラが含まれる。 DMS は、ドライバーが車線維持モードを選択したときに、ハンズフリーモードで使用される。これは、車線が引かれている道路で機能する。ドライバーが視線を前方から逸らすと、インストルメントクラスターに視覚的に警告が表示される。

ドライバーが左折しようとするときに対向車があればそれを検知する「Intersection Assist,(交差点アシスト)」機能や、縦列駐車や直角駐車を行う際にボタンを押すだけでステアリング、シフトチェンジ、ブレーキ、アクセルを制御する「Active Park Assist 2.0(アクティブ駐車アシスト 2.0)」機能もある。

さらに、「Trailer Reverse Guidance(トレーラーバックガイダンス)」機能や 「Pro Trailer Backup Assist(プロトレーラーバックアップアシスト)」機能もある。これらは新しいものではないが、トラックを運転するものにとってどれも重要な機能である。

関連記事:2020年ベントレー新型フライングスパーは極上の乗り心地とパフォーマンス

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タグ:Ford 自動車 レビュー

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(翻訳:Dragonfly)

2020年ベントレー新型フライングスパー:極上の乗り心地とパフォーマンス

なんと言ってもBentley(ベントレー)なのだ。最高である。

ベントレーの新型フライングスパーはラグジュアリーを極めた高級セダンである。ほとんどのスポーツカーよりも大きなエンジンを搭載し、極上の座り心地の4つの座席を備え、まるでシャワーフロアを滑る石鹸のようになめらかに道路を滑走する。27万9000ドル(約3000万円)という価格を掲げたさすがの仕様である。

パワフルであるにもかかわらずこの上なく快適なのがこのセダンの特徴だ。ベントレーによると、同車はW型12気筒エンジンを搭載しており時速は207mphに達するとのことだが、それを確かめようという気にはなれなかった。速く走るということは、目的地に早く着いてしまうということだからだ。新型フライングスパーを試乗した1週間、ずっと運転していたいとどれほど願ったことか。

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レビュー

新型フライングスパーはベントレーのセダンにおける長い歴史を反映している。ベントレーの4つのラインナップの中でフライングスパーは、豪華なミュルザンヌモデルのひとつ下のより手頃な価格のモデルとして格付けされており、よりドライバーにフォーカスしたセダンである。サイズは若干小さく少し控えめではあるものの、それでも仕上がりは秀逸である。

ボンネットのクリスタルオーナメントに至るまで、フライングスパーの全ては極上の体験を叶えるためにデザインされている。後部座席のヘッドレストのピローは、著者のベッドにある枕よりも柔らかくサポート力がある。マッサージシートの機能は的確。オーディオは響き渡る低音とクリアな高音が楽しめる驚きのクオリティだ。

フライングスパーが持つ快適性は、格下クラスの車種でも提供されている。大型セダン向けのマッサージシート、贅沢な素材、大型セダンにして卓越したドライビングダイナミクスは、8万ドル(約860万円)のキャデラックや15万ドル(約1600万円)のメルセデスベンツでも体験できるのだ。私はこれらの車を全て運転したことがあり、どれも素晴らしいのだが、フライングスパーはどの点においても少しずつ他社を上回っている。しかし、他社よりもはるかに高額なこの価格が正当性を持つか否かは、お金を払う人が決めれば良いことである。

ラグジュアリーで惹きつけ、パフォーマンスで心を掴む

フライングスパーの走りは堂々たるものだ。ボンネットの下に搭載されたW型12気筒エンジンがクルージングに十二分なパワーを提供。最高出力626hpと663フィートポンドのトルクを発揮し、パワーは底なしだ。これこそが堂々たるセダンに必要とされているものなのである。車両の俊敏性を高めるために再構成されているものの、過去のモデルと同様、今回アップデートされた フライングスパーも全輪駆動を採用している。今回の仕様では、ほとんどの動力が後輪に送られる。前輪に動力が供給されるのは、主に車が後部のスリップを検出した場合だ。その結果、高速のスタートを切っても十分な安定性を確保できるようになった。

高速時にフライングスパーはその実力を発揮する。なめらかなシフトと驚くほどの惰性能力で道路を走り抜ける。アクセルオフ時には余力で延々と惰性走行を続けていられるような感覚だ。実際に機械面で同社は卓越した成功を収めており、ドライバーと同乗者双方に比類ない乗り心地を提供している。フライングスパーの乗車体験を極上のものにするために熟練した運転手は必要ない。ベントレーはあらゆる問題点を細やかに解決。アグレッシブな運転であっても乗り心地を快適なものにしてくれる。

新型フライングスパーでの居眠りは禁物だ。この車は3.7秒で時速60マイルに達するのだ。これより速い車はあるが、このベントレーほど大きな車でこの実力はほぼ存在しない。スピードを出してもサイズ感が安定感をもたらし、音の遮断効果のおかげで運転席のすぐ目の前で起きているエンジンの激しいドラマからドライバーを隔離。誤解のないよう言うと、フライングスパーは高速ではあるものの素早いという感覚とは違う。これは素晴らしいことである。ベントレーがもたらすエクスペリエンスは、首の折れるような高速スタートとは一線を画すものなのだ。

ヘッドレストピローが最高だ

インテリアには期待通りの設備が整っており、広さも余裕のある造りだ。ドライバーは快適かつ見晴らしの良い位置にゆったりと収まり、後部座席の乗客は5つ星ホテルにある枕と同じくらい柔らかいヘッドレストで快適に過ごすことができる。

セダンにモダンな要素をプラスすべく、車載インフォテインメントスクリーンが中央に埋め込まれている。超ワイドスクリーンにユーザーコントロールのほとんどが表示されるが、これは少し時代遅れに感じられる。フォルクスワーゲンブランド全体(VWはベントレーを製造している)の他のトップクラスの車両と比較すると、触覚フィードバックやエアージェスチャーなどの先進的な機能やデザインの洗練性において同システムは劣っている。

しかし画面自体には驚かされる。ボタンを押すだけで画面が逆回転し、木製のトリムに埋め込まれた3つのアナログダイヤルが姿を表す。モダンな要素を隠し、ベントレーが誇る時代を超えたエレガンスを演出する上品なクラフツマンシップである。

ベントレーフライングスパーの車内はある意味、馴染みのあるものだ。回転するインフォテインメントシステムを除くと、フィット感やトリムは、アウディ、メルセデス、レクサスによるトップクラスのセダンと変わらない。他とは違うインテリアを望む場合は、ベントレーミュルザンヌにステップアップするしかない。

後部座席にもリクライニングリアシート、マッサージャー、車内温度とメディアを調節するタッチスクリーンを備え、前部座席と同様の心地良さを実現。しかし大型セダンにしては後部座席の足元の余裕は少ない。快適ではあるものの、身体の大きい大人は予想よりも窮屈に感じるかもしれない。少なくとも現時点では、フライングスパーでは拡張ホイールベースを備えていない。後部座席に座ると前部座席よりも特別な体験を得ることができる。何せこのヘッドレストピローが極上なのである。

フライングスパーの約27万9000ドル(約3000万円)という価格は、BMW、アウディ、メルセデスのトップクラスのセダンをはるかに上回っている。これら自動車メーカーのスーパーセダンも同レベルのパフォーマンス統計と豪華な仕様を備えているため、売り上げは難航するだろう。生で見るとフライングスパーは競合他社とは異なる威厳を放っているのが分かる。フライングスパーはテクノロジーを内部に秘めつつ、時代を超えたエレガンスを体現しているのだ。

フライングスパーはドライバーと同乗者双方に素晴らしい体験をもたらしてくれる。一部の高級車は豪華さかパフォーマンスかのどちらかに重点が偏っており、これを両立させるのは簡単なことではないが、ベントレーのセダンは見事にこれを実現してくれた。ドライバーはほとんどのスポーツカーに劣ることのない素晴らしいスポーツセダンを運転することができ、同乗者はこの上ない快適な乗り心地を体験できるのだ。

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(翻訳:Dragonfly)

RV版Airbnb「Outdoorsy」で家族旅行に出かける人たち、急増中

世界中がかつてない不安感に包まれる中、何か手段があれば今年の夏は休暇にでかけたいと考えている人たちがいる。

新型コロナウイルスへの感染が引き続き懸念される今の状況では、多くの人にとって飛行機もホテルも選択肢からは外れるだろう(費用については言うまでもない。飛行機とホテルを利用する金銭的余裕がある米国民は4000万人減少する見込みだ)。そうなると、今年の夏は旅行先でAirbnb(エアビーアンドビー)を利用するしか方法はなさそうだ。あるいは、遠くに住む親族に会いに行くための交通手段と宿泊場所を確保するにはRV(レクリエーショナルビークル:キャンピングカーやキャンピングトレーラーなど)またはキャンパーバンのレンタルしかないと考えて、そのような車を初めてレンタルしようと計画する人も増えている。

TechCrunchは先週、後者のトレンドの波に乗りそうなOutdoorsy(アウトドアジー)の共同創立者兼CEOで連続起業家でもあるJeff Cavins(ジェフ・ケイヴィン)氏にインタビューを行った。アウトドアジーは2015年に設立されたRVの個人間レンタルサービス会社だ。起業後数年を創業者の自己資金で運営した後、8800万ドル(約95億3000万円)をベンチャーキャピタルから調達した。そのうち1300万ドル(約14億800万円)は、今年初めに静かに完了した5000万ドル(約54億1500万円)のシリーズB資金調達ラウンドの追加分だ。

レンタルプラットフォームを利用する車両オーナーからもレンタル利用者からも手数料を取るアウトドアジーに、顧客の変化や今夏の旅行先に関する最新トレンドについて意見を聞いた。以下がインタビューの内容だ(長さを調整するために多少の編集を行っている)。

TechCrunch(以下、TC):新型コロナウイルスによってアウトドアジーのビジネスモデルはどのように変化しましたか。

ジェフ・ケイヴィン氏(以下、JC):以前は、当社のレンタルサイト利用者の平均レンタル期間は約6日間でした。それが現在では9日間を超えるようになっています。他の多くの企業と同じく、当社も新型コロナウイルスの影響を受け、レンタルサイトでのキャンセルが相次ぎましたが、ある時期になるとものすごい勢いで予約件数が回復し、その後ある程度の件数で落ち着きました。新型コロナウイルスによる影響で一番落ち込んだ3月下旬と現在を比較すると、予約件数は2645%増加しています。

TC:予約全体のうち初回利用者の割合はどれくらいですか。

JC:5月は全予約件数のうち88%が初回利用者でした。これは当社史上、最高記録です。さらに、初回利用者の半数以上がリピーターとしてすでに次のレンタルを予約しています。つまり、5月に当社のレンタルサービスを利用してメモリアルデーの連休に旅行にでかけ、数日で戻ってきてすぐに、例えば7月の独立記念日や6月中の旅行のために予約した利用者が多かったということです。ご存じのとおり、多くの人は子どもたちと一緒に自宅で過ごしています。そのため、米国ではみんなが長い夏休みを過ごしているようなものです。さらに、子どもがいる家庭は特に、RVで移動すればより安全に旅行できると感じているようです。

TC:初回利用者が求めるサービスに何か特徴はありますか。RVを持つキャンプ熟練者だったら要求しないようなサービスを求めていますか。

JC:RV業界で見られる大きなトレンドとして、米国に限ったことではないのですが、新しい消費者は、大型キャンピングカーは求めていません。彼らが求めているのは、キャンパーバンです。なぜなら、当社のレンタルサイト利用者の平均年齢は40歳以下だからです。それまでベビーブーム世代や退職者世代が多めだったRV業界にとってこれは驚きの発見でした。また、当社のレンタル利用者はキャンプに電気設備を求めません。自分たちにとって快適で、資源の無駄が少なく、環境により優しい車を利用したいと思っているのです。そのため、ソーラー発電設備、可搬型の飲料水タンク、マウンテンバイクやスポーツギア用のフックなどが人気です。また、インスタ映えするユニークな場所に行きたい人も増えています。当社は以上のようなトレンドが出てきていると感じており、このトレンドは世界共通だと思います。

TC:昨年1月のインタビュー時、アウトドアジーのプラットフォームに登録されているレンタル用RVは3万5000台でした。現在の登録台数は何台ですか。

JC:現在、個人間レンタル用に登録されている台数は4万8000台です。米国外のユーザーも加えて、API経由でつながっているIndies Campers(インディーズ・キャンパーズ)やJucy(ジューシー)などから利用できる台数を含めると合計6万8000台になります。

TC:レンタル車両の消毒や病気の感染防止のためにどのような対策を実施していますか。

JC:どんな形態の宿泊施設でも衛生管理は重要な要素です。当社では、レンタルRVオーナー向けに、衛生管理に関するCDC(疾病予防管理センター)ガイドラインをまとめたものを作成しています。さらにオーナーには、次のレンタルまでに十分な時間を空けて、車両の消毒を手作業で丁寧に行うようにお願いしています。当社の投資家の中に、ハーバード大学での博士論文でノーベル化学賞を受賞した分子生物学者がおり、入手しやすい最新型紫外線ランプを使った消毒方法について当社の車両オーナーに周知するのを助けてくれています。この紫外線ランプは救急車でも使われていて、一定の時間照射すると、照射された範囲を完全に消毒できます。

レンタル利用者にも、消毒用品の持ち込み利用を勧めています。自分がいる環境は自分でコントロールできた方が安全だと感じる人が多いためです。当社では、レンタル時のキー引き渡しの非対面化を導入したため、今後は、オーナーがキャンプ場まで運転して車を運び、キャンプ用の日よけシートやアウトドア用チェアなどを設置した後でレンタル利用者がその場所に来る、といったことができるようになります。

TC:レンタル利用者の動向が変化しているとおっしゃいました。ちなみに、RVをレンタルしてもヨセミテやイエローストーンに向かうのではなく、例えば小さい子どもがいて在宅勤務が難しい人がRVをレンタルして近場の駐車スペースで仕事をする、というようなケースはありますか。

JC:そうですね、例えば、私はサンディエゴに住んでいますが、祖母はカンザスシティにおり、子どもたちが祖母に会いに行く手だてはありません。でもキャンパーバンやRVをレンタルすれば、自宅待機期間中でも愛する親族に家族で会いに行くことができ、家族の絆も強まります。このような用途でレンタルする利用者が増えています。

TC:今年の初め、予約キャンセルが続いたとおっしゃいました。レイオフをしなければなりませんでしたか。

JC:新型コロナウイルス感染症が流行する前、当社には160人の社員がいました。確かに、多少の組織再編は行いました。当社はイタリア、ドイツ、フランス、英国、オーストラリア、ニュージーランド(後に閉鎖)にもチームを置いていました。そして、新型コロナウイルスによって当社が受けたインパクトのほとんどは、米国外のマーケットからのものでした。米国内では人員をカットするのではなく、社員と一緒に座って話し合い、「もしすべての社員が減給を承諾してくれれば、その報酬として会社の株を譲る。今は会社の雇用を守るべきときではないだろうか」と提案しました。

私は無収入で働いています。給与は受け取っていません。他にも数名の役員が給与を辞退してくれました。社員に減給の見返りとしてより多くの自社株を渡すことで、社員と投資家が協力できるようにしました。

TC:ビジネスが持ち直してきている現在、次の資金調達の計画はありますか。

JC:今すぐにさらに資金を調達する計画はありません。5月は黒字でしたし、6月も黒字になると思います。現在のレンタル予約状況を見ると、新型コロナウイルスの第2波が来て再びロックダウンが実施されない限りは、7月、8月、9月も黒字になる見込みですので、今年は会計年度全体でも前年比増益になるかもしれません。

当社へのインバウンド投資打診はほとんどがレイトステージ・グロース投資家によるものです。会社としてそのような投資を受けたいのか、それとも、自分たちだけで決定して迅速に動ける今の環境を維持したいのかは、役員たちと十分に話し合って決めたいと思います。

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Category:モビリティ シェアリングエコノミー

Tag:自動車 Outdoorsy

MiddleFieldが3.4億円を調達、電話・FAX受発注や請求書郵送などのアナログ非効率業務のクラウド化を推進

自動車アフター業界(市場)の統合オンラインプラットフォーム構築を目指すMiddleField(ミドルフィールド)は5月27日、シリーズBラウンドのファーストクローズにおいて総額3.4億円の資金調達を明らかにした。D4V(D4V1号投資事業有限責任組合)をリード投資家とし、千葉道場(千葉道場2号投資事業有限責任組合)と新株予約権付社債で投資していた既存投資家のフェムトパートナーズ(フェムトグロースファンド2.0投資事業有限責任組合)が株主に加わる。累計調達額は約6億円になる。

同社は、中古車やカー用品の購入から、自動車保険やカーローンの契約、車検や整備までをワンストップで完結できる、自動車アフター業界の統合プラットフォーム開発を目指すスタートアップ。これまでに、中古車とカーパーツのECサイト「モタガレ」、自動車保険紹介コンシェルジュサービス「クルマの保険」などの事業を展開。全国1300社のパーツメーカー、1000社の整備工場、200社の中古車販売店、大手企業と提携しており、月間300万人以上のユーザーは利用しているとのこと。

「モダガレ」のウェブページ。膨大な量のメーカー別、車種別の各種カスタムパーツがデータベース化されているのが特徴だ

今回調達した資金は、事業者向けサービスの展開に投下する。具体的には、自動車アフター業界の業務フローをオンライン化する業務効率化システム「モタガレビジネス」を、中古車販売店やパーツメーカーへ提供し、BtoBプラットフォームの強化・拡大を目指す。

同社は各サービスを展開していく中で、電話やFAXでの受発注、紙の請求書の発行や郵送、紙の帳簿による顧客の売上管理といったアナログかつオフラインの非効率な業務が数多くあることを目の当たりにし、モタガレビジネスの開発を進めることになった。同サービスを利用することで、中古車販売店やパーツメーカーは事務作業をはじめとした各種業務をオンライン化して作業効率、省人化を高め、顧客対応や商品開発などに注力できるとしている。