RV版Airbnb「Outdoorsy」で家族旅行に出かける人たち、急増中

世界中がかつてない不安感に包まれる中、何か手段があれば今年の夏は休暇にでかけたいと考えている人たちがいる。

新型コロナウイルスへの感染が引き続き懸念される今の状況では、多くの人にとって飛行機もホテルも選択肢からは外れるだろう(費用については言うまでもない。飛行機とホテルを利用する金銭的余裕がある米国民は4000万人減少する見込みだ)。そうなると、今年の夏は旅行先でAirbnb(エアビーアンドビー)を利用するしか方法はなさそうだ。あるいは、遠くに住む親族に会いに行くための交通手段と宿泊場所を確保するにはRV(レクリエーショナルビークル:キャンピングカーやキャンピングトレーラーなど)またはキャンパーバンのレンタルしかないと考えて、そのような車を初めてレンタルしようと計画する人も増えている。

TechCrunchは先週、後者のトレンドの波に乗りそうなOutdoorsy(アウトドアジー)の共同創立者兼CEOで連続起業家でもあるJeff Cavins(ジェフ・ケイヴィン)氏にインタビューを行った。アウトドアジーは2015年に設立されたRVの個人間レンタルサービス会社だ。起業後数年を創業者の自己資金で運営した後、8800万ドル(約95億3000万円)をベンチャーキャピタルから調達した。そのうち1300万ドル(約14億800万円)は、今年初めに静かに完了した5000万ドル(約54億1500万円)のシリーズB資金調達ラウンドの追加分だ。

レンタルプラットフォームを利用する車両オーナーからもレンタル利用者からも手数料を取るアウトドアジーに、顧客の変化や今夏の旅行先に関する最新トレンドについて意見を聞いた。以下がインタビューの内容だ(長さを調整するために多少の編集を行っている)。

TechCrunch(以下、TC):新型コロナウイルスによってアウトドアジーのビジネスモデルはどのように変化しましたか。

ジェフ・ケイヴィン氏(以下、JC):以前は、当社のレンタルサイト利用者の平均レンタル期間は約6日間でした。それが現在では9日間を超えるようになっています。他の多くの企業と同じく、当社も新型コロナウイルスの影響を受け、レンタルサイトでのキャンセルが相次ぎましたが、ある時期になるとものすごい勢いで予約件数が回復し、その後ある程度の件数で落ち着きました。新型コロナウイルスによる影響で一番落ち込んだ3月下旬と現在を比較すると、予約件数は2645%増加しています。

TC:予約全体のうち初回利用者の割合はどれくらいですか。

JC:5月は全予約件数のうち88%が初回利用者でした。これは当社史上、最高記録です。さらに、初回利用者の半数以上がリピーターとしてすでに次のレンタルを予約しています。つまり、5月に当社のレンタルサービスを利用してメモリアルデーの連休に旅行にでかけ、数日で戻ってきてすぐに、例えば7月の独立記念日や6月中の旅行のために予約した利用者が多かったということです。ご存じのとおり、多くの人は子どもたちと一緒に自宅で過ごしています。そのため、米国ではみんなが長い夏休みを過ごしているようなものです。さらに、子どもがいる家庭は特に、RVで移動すればより安全に旅行できると感じているようです。

TC:初回利用者が求めるサービスに何か特徴はありますか。RVを持つキャンプ熟練者だったら要求しないようなサービスを求めていますか。

JC:RV業界で見られる大きなトレンドとして、米国に限ったことではないのですが、新しい消費者は、大型キャンピングカーは求めていません。彼らが求めているのは、キャンパーバンです。なぜなら、当社のレンタルサイト利用者の平均年齢は40歳以下だからです。それまでベビーブーム世代や退職者世代が多めだったRV業界にとってこれは驚きの発見でした。また、当社のレンタル利用者はキャンプに電気設備を求めません。自分たちにとって快適で、資源の無駄が少なく、環境により優しい車を利用したいと思っているのです。そのため、ソーラー発電設備、可搬型の飲料水タンク、マウンテンバイクやスポーツギア用のフックなどが人気です。また、インスタ映えするユニークな場所に行きたい人も増えています。当社は以上のようなトレンドが出てきていると感じており、このトレンドは世界共通だと思います。

TC:昨年1月のインタビュー時、アウトドアジーのプラットフォームに登録されているレンタル用RVは3万5000台でした。現在の登録台数は何台ですか。

JC:現在、個人間レンタル用に登録されている台数は4万8000台です。米国外のユーザーも加えて、API経由でつながっているIndies Campers(インディーズ・キャンパーズ)やJucy(ジューシー)などから利用できる台数を含めると合計6万8000台になります。

TC:レンタル車両の消毒や病気の感染防止のためにどのような対策を実施していますか。

JC:どんな形態の宿泊施設でも衛生管理は重要な要素です。当社では、レンタルRVオーナー向けに、衛生管理に関するCDC(疾病予防管理センター)ガイドラインをまとめたものを作成しています。さらにオーナーには、次のレンタルまでに十分な時間を空けて、車両の消毒を手作業で丁寧に行うようにお願いしています。当社の投資家の中に、ハーバード大学での博士論文でノーベル化学賞を受賞した分子生物学者がおり、入手しやすい最新型紫外線ランプを使った消毒方法について当社の車両オーナーに周知するのを助けてくれています。この紫外線ランプは救急車でも使われていて、一定の時間照射すると、照射された範囲を完全に消毒できます。

レンタル利用者にも、消毒用品の持ち込み利用を勧めています。自分がいる環境は自分でコントロールできた方が安全だと感じる人が多いためです。当社では、レンタル時のキー引き渡しの非対面化を導入したため、今後は、オーナーがキャンプ場まで運転して車を運び、キャンプ用の日よけシートやアウトドア用チェアなどを設置した後でレンタル利用者がその場所に来る、といったことができるようになります。

TC:レンタル利用者の動向が変化しているとおっしゃいました。ちなみに、RVをレンタルしてもヨセミテやイエローストーンに向かうのではなく、例えば小さい子どもがいて在宅勤務が難しい人がRVをレンタルして近場の駐車スペースで仕事をする、というようなケースはありますか。

JC:そうですね、例えば、私はサンディエゴに住んでいますが、祖母はカンザスシティにおり、子どもたちが祖母に会いに行く手だてはありません。でもキャンパーバンやRVをレンタルすれば、自宅待機期間中でも愛する親族に家族で会いに行くことができ、家族の絆も強まります。このような用途でレンタルする利用者が増えています。

TC:今年の初め、予約キャンセルが続いたとおっしゃいました。レイオフをしなければなりませんでしたか。

JC:新型コロナウイルス感染症が流行する前、当社には160人の社員がいました。確かに、多少の組織再編は行いました。当社はイタリア、ドイツ、フランス、英国、オーストラリア、ニュージーランド(後に閉鎖)にもチームを置いていました。そして、新型コロナウイルスによって当社が受けたインパクトのほとんどは、米国外のマーケットからのものでした。米国内では人員をカットするのではなく、社員と一緒に座って話し合い、「もしすべての社員が減給を承諾してくれれば、その報酬として会社の株を譲る。今は会社の雇用を守るべきときではないだろうか」と提案しました。

私は無収入で働いています。給与は受け取っていません。他にも数名の役員が給与を辞退してくれました。社員に減給の見返りとしてより多くの自社株を渡すことで、社員と投資家が協力できるようにしました。

TC:ビジネスが持ち直してきている現在、次の資金調達の計画はありますか。

JC:今すぐにさらに資金を調達する計画はありません。5月は黒字でしたし、6月も黒字になると思います。現在のレンタル予約状況を見ると、新型コロナウイルスの第2波が来て再びロックダウンが実施されない限りは、7月、8月、9月も黒字になる見込みですので、今年は会計年度全体でも前年比増益になるかもしれません。

当社へのインバウンド投資打診はほとんどがレイトステージ・グロース投資家によるものです。会社としてそのような投資を受けたいのか、それとも、自分たちだけで決定して迅速に動ける今の環境を維持したいのかは、役員たちと十分に話し合って決めたいと思います。

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Category:モビリティ シェアリングエコノミー

Tag:自動車 Outdoorsy

投稿者:

TechCrunch Japan

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