【レビュー】2022年新型トヨタGR 86はすべての愛好家を魅了するマストドライブの逸品

スポーツカー市場は排他的なクラブのように思えるかもしれない。非実用的な情熱にあふれる買い物をするのに十分なお金とガレージスペースを持つ人々の、専用クラブのようなものだ。

こうしたプレステージアイテムには大抵の場合、威圧的なパワー値と、同じように脅威的な価格が表示されており、どちらも暗黙的に購入希望者に挑戦をしかけてくる。乗りこなせるのか?手に入れる余裕があるのか?

Daft Punk風の「harder better faster stronger(よりハードに、より良く、より速く、より強く)」というスポーツカー業界のマントラは、参入するのに十分な財力がある人やサイドラインからの応援を楽しむ人にとってはすばらしいものだが、グラウンドフロアでアクションを起こそうとする人にとっては昨今、マツダのMiata(ロードスター)ではない、3万ドル(約330万円)を切るパフォーマンスに特化したクルマを見つけるのは難しいだろう。

「パフォーマンス」は高速で高馬力のマシンに限って言及するものだという過度な誤称は、まったくもって未熟なマシンや単にそれを必要としないマシンを追い払ってしまう。また会えたね、ロードスター。

初代トヨタGT 86(旧サイオンFR-S)の導入が重要な意味を持ち、その次の世代であるGR 86が期待を抱かせる理由はここにある。庶民に向けたパフォーマンス、すべての人のためのスポーツカーだ。

基本

GR 86は2+2クーペで、2.4リットルのフラットな4気筒ボクサーエンジン(水平対向エンジン)を搭載し、228馬力、184ポンドフィート(約250Nm)のトルクを生み出す。

この構成に馴染みのない方のために説明すると、従来的なV字直線よりも優れたバランスを実現するレイアウトだ。動力は6速トランスミッション、マニュアルまたはオートマチックを介して後輪に送られる。

フロントにマクファーソンストラット式、リアにマルチリンク式の独立懸架サスペンションを採用。トリムレベルに応じて、GR 86は17インチまたは18インチのホイールを備える。

トリムに関していえば、GR 86にはベースとプレミアムの2つのタイプがあり、プレミアムには前述の18インチホイール、ダックビルリアスポイラー、適応型フロントLEDヘッドランプ、ちょっとした視覚的アクセントに加えて、8ステレオスピーカーへのアップグレード(標準は6)が含まれる。

すべてのトリムとして、エンターテインメントと接続性を追求した8インチのタッチスクリーンディスプレイ、7つのエアバッグを備えた標準的な安全装置、そして安定性制御、期待されているアンチロックブレーキシステム、さらにブレーキアシストとブレーキ力配分で構成されたToyota Star safety systemが装備されている。

自動ギアボックスを搭載したGR 86には、衝突前ブレーキ、車線維持支援、アダプティブクルーズコントロールに対応する、アクティブセーフティシステムという付加的な利点も備わっている。

GR 86は、契約制のコネクテッドサービスを提供するアプリを通じて、エンジンの始動やドアのロック、クラクション鳴動などのリモート接続機能に加え、車両のヘルスレポートの提供や、クルマの基本的なペアレンタルコントロール(ジオフェンシング、スピード警告、さらには夜間外出禁止など)の設定も可能だ。

レースで培われたテクノロジー

GR 86のようなシンプルさを追求したスポーツカーには、テクノロジーを駆使したランボルギーニ・フラカンや、近縁のアウディR8のような高級な輝きはない。

こうしたクルマはゲーム用PCよりも多くのハードウェアを搭載しているのに対し、GR 86はコンピューターによる力量が少ない。「ピュアリストのスポーツカー」と銘打たれているこのクルマは確かに、活発なドライビングセッションとなるとアシストが足りない。

安定性はオフにすることができ、ドライブモードの「スポーツ」と「トラック」ではブレーキとスロットルへのインプットレスポンス性が高まる。これらのモードはまた、より積極的なエンジンマッピングに近い形で、自動ギアボックスの効果を向上する。

GR 86はこのように小型のパッケージのため、差をつけるテクノロジーを見出すには特定の領域における入念な精査が必要だ。トヨタによると、このクルマはレースで培ったテクノロジーを活かして開発され「GR」(トヨタのモータースポーツ部門GAZOO Racingの頭文字)というブランド名を冠しているという。

外部では、安定性に大きな違いをもたらすエアロダイナミックタッチが注目に値する。これは、車両の制御を補助するために空気を高速で流通させる機能的な通気口があるフロント部分から始まり、リアホイールウェルの上の成形品がバックエンドでこの作業を継続するよう形成されているリア部分に続いている。

構造的には、GR 86は前バージョンに比べてフレームの剛性を高め、前後の主要部分の補強を行うとともに、高強度鋼を採用している。

興味深いことに、このクルマは現行モデルよりも少し重くなっており、トランスミッションによって77ポンド(約35kg)から117ポンド(約53kg)程度増えている。アルミルーフやフェンダーなどの軽量化対策がこれを緩和しているものの、重量を減らすことよりも慎重に重量配分することに力が注がれた。

シートベルト装着

GR 86のハンドルを握るところから見ると、インテリアは抜本的な変更というよりもアップグレードであることがわかる。アナログゲージクラスターは姿を消し、ドライブモードによって変化する7インチTFTデジタルスクリーンが採用されている。

オートマチック仕様のGR 86sには、最適な使用のために可視情報をシフトする3つの独立したスクリーンがある。マニュアル車では2つになっている。

例えば「ノーマル」スクリーンでは1時間あたりの走行距離が表示され「トラック」スクリーンでは現在のギアが3色のRPMインジケータの上に表示される。これはトヨタを閉鎖的コースで走行させようとする人には有用だ。現在の速度と比較して「その瞬間に」知るべき重要な情報だからだ。この表示を拡大してインターフェイスに鮮明なオレンジ色の光を与えることで、データをひと目で確認できるようになっている。ドライバー周辺にも情報が届くだろう。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

インフォテインメントスクリーンも若干アップグレードされている。視覚的にはより良く統合されている印象で、旧バージョンでその魅力を減じていたピアノブラックのプラスチック製ベゼルから解放されている。

インターフェイスはシンプルでラジオ、メディアソース、メンテナンスデータへのアクセス、ロードサイドアシスタンスへのコール、そして音楽ストリーミングサービスなどのインストール可能な他の統合アプリへのアクセスを可能にするアイコンがある。

アプリは好みに合わせて調整することができるが、全体的に見ると、真に機能するためには外部デバイスに依存している。このクルマがターゲットとしているハイパーコネクテッドオーディエンスに対して、トヨタはほとんどのユーザーがAndroid AutoとApple CarPlayを主として利用することを想定しているという感がある。

パフォーマンスのプレイグラウンド

GR 86でトラックに向かうと、捕獲された生き物を元の環境に戻すような気分を味わう。トヨタはこのGR 86とその先代モデルを試乗と連続比較のためにMonticello Motor Clubに持ち込み、全長4.1マイル(約6.6 km)のコースでクルマのパフォーマンスに挑む20周を設定した。GR 86はストリートカーではあるが、その性能を十分に発揮しながらワイルドに走ることができるトラック上に放たれた。

先代モデルのパワーは賛否両論を呼び、ファンはそのクルマの目的に合ったサイズだと感じていた一方、他の人たちはそれが不足していることに気づき、価値があると感じていたターボチャージャーをトヨタが最終的に取り付けることを期待した。

GT 86のボクサーエンジンの改良は目を見張るものがあり、両陣営を満足させるはずだ。

変位の増加やその他の機能強化は、実際にパワーをわずかに高めており、ターボを追加することなく、特にパワーの適用において、諸事をシンプルかつ均一に保持している。

さらに重要な点として、このパワーは回転バンドにおいて早期に有効になるため、GR 86はより迅速にスピードを上げることができる。比較すると、重量のあるGR 86の方が軽く感じられるのに対し、先代モデルは積み荷のレンガを引っ張っているように感じられる。

重量バランスとサスペンションの改良により、クルマの制御量が増大した。旧86の決定的な特徴の1つは、信じられないほど地面に埋め込まれているかのように感じられたことだ。

限界を超えてクルマを押し出すことは難しく、そのために新旧のドライバーたちは、自分たちの真下に何かが入り込む心配は無用の運転を促された。GR 86でも同じことがいえるが、俊敏性には若干の調整が必要だ。

画像クレジット:Alex Kalogiannis

お気に入りのビデオゲームをプレイしながら、コントローラーの設定を今までよりもずっと高くしていくような感じだ。GR 86は、ハンドルを握り、リバランスされたパワー出力と組み合わせることで、驚くほど満足感が得られる状態でコーナーを回ることができる。

ステアリングとスロットルは軽いタッチに反応するかもしれないが、ブレーキに関しては別だ。それ以外の点ではしなやかなGT 86は、大幅な減速や停止の際に重い足の踏力を必要とする。高速ブレーキだけでなく、通常のスピード調整の場合でも、ブレーキを踏むことは、見た目ほど軽くないドアを押し開けるのと同じような不確実さをもたらす。

異なるトランスミッション間において、それは最終的に、トラックまたはストリートのどちらかの好みに帰着する。

マニュアルの操作は少しゆるい感じがするが、滑らかで軽い。クルマのハンドリングと同じように、ギアボックス自体もパターン全体をすばやく動かすことができるように設計されている。それ以外の点では、マニュアルであることから、オートマチックとは対照的にドライバーはフルコントロールの状態にある。

一般的に、オートマチック車はカジュアルからスポーティーな運転に向いているが、それを超えて、使いこなすというより克服するシステムになりつつある。

「スポーツ」モードは、オートマチック式GR 86sのスロットルレスポンスとギアボックスの挙動を処理するものであり、その違いは実際の適用において顕著である。「ノーマル」で速く走ろうとすると、ペダル操作時に一気に加速するが、ギアボックスはドライバーが加速を最大にするように低い位置にとどまるのではなく、できるだけ早く高いギアに戻ろうとする。スポーツでも、しばらくはギアを入れたままだが、最終的には自らの役割を果たすようになる。運転している人のフラストレーションに大きく影響するだろう。

ストリートビート

ストリートで元気なドライブをするとき、GR 86の才能はその欠点をはるかに凌いでいく。

トランスミッションの挙動はオートマチック車ではまだ邪魔になっているが、バックロードのカーブの感覚はトラックの時とは異なり、その荒々しい加速感とハンドリングは、前方の道路がどのように見えても、ほぼ確実に良い時間を保証する。

楽しいセッションの合間に、トヨタは十分に要求に適っていることを実感した。3万ドル以下のクルマに期待される性能よりも優れているが「すごい」要素(「wow」 factor)はない。悪くいえば、そこそこの内部タッチポイントを備えた安価な通勤車のように感じられるが、決して耐えられないものではない。

オートマチックでは、アダプティブクルーズコントロールなどの運転支援機能を利用できる。アダプティブクルーズコントロールは、高度が変化したり、クルマの存在が検知されたときに、設定速度を維持すべく積極的に動作する。

車線逸脱警告などのその他の設定のほとんどは、このデジタルゲージクラスターの1つのセクションからアクセスできるメニューの中に隠され、その使い方は、特に移動中は扱いにくい。これが作動すると、検知は的外れで、時にははっきりと無視される。筆者の場合、意図的に車線を逸脱してみたところ、同じ道を戻ってくるときだけ過度に反応した。

ライバルたち

価格面では、GR 86は、当然ながらマツダのMX-5を除けば、他に対抗するスポーツカーは多くない。アクセスしやすさ、手頃な価格、動的な振る舞いは似ているが、その使命と姿勢はそれぞれ異なっている。

ミアータは、遊び心のあるドロップヘッドの表現力でドライバーに愛されている気前のいいロードスターだ。GR 86も同じように遊び心があるが、コミカルでもなければ威圧的でもなく、やや厳粛性が高い印象だ。

最終的にはユーザーの好みとユースケースによるだろう。筆者なら、沿岸部のドライブにはミアータを選び、一方でGR 86はトラック用の小型車といったところだろうか。

実際、GR 86は自らに対抗しているだけである。ある面では、それは外向的な自己よりも優れたものになろうと努力しているのであり、ほとんどのドライバーたちは、GR 86がそこで成功していることに同意するだろう。

別の面では機械式ツインのスバルBRZと真っ向から勝負している。トヨタとスバルが提携してこれを実現したのは有名な話だ。このクルマを際立たせているものには、外観やチューニングなどがあるが、それ以上のものはない。愛好家たちがどちらに惹かれるかを見るのは興味深い。

GR 86は、トヨタの現在のモータースポーツへの取り組みと、文化的に重要な意味を持つスポーツカーの遺産へのコミットメントを示す重要な車両である。これを疑問視する人は、同社の構造のトップに目を向けてみて欲しい。トヨタの豊田章男社長は、スポーツカーに熱中しているだけでなく、経験豊富なドライバーでもあり、GR 86の開発にも個人的に関わってきた。要するに、自分自身が満足しない限り車は前に進まず、個人的な投資の度合いは重要でないことには注がれないのだ。

GRというサブブランドへのエントリーポイントとして(スープラに加わり)、GR 86は、新規の、そして経験豊富な愛好家に、パフォーマンスドライブの旅へのすばらしいスターティングポイントを提供する。GR 86にはドライバーとして、全米モータースポーツ協会の1年間の会員資格が付属しており、そこではハイパフォーマンスのドライビングイベントが1つ用意されている。

この86はまた、スープラやGRの前身であるAE 86のようなクルマの改造やメンテナンスを行っているアフターマーケットのチューナーにとっても白紙の状態である。結局のところ、GR 86は路上やトラックにおいて最速あるいは最強のクルマではないかもしれないが、学習曲線と価格面の両方において、そのアクセシビリティが優れているといえるだろう。

編集部注:本稿の執筆者Alex Kalogiannis(アレックス・カロジアンニス)氏は自動車関連ライター、エディター、司会者。

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画像クレジット:Alex Kalogiannis

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(文:Alex Kalogiannis、翻訳:Dragonfly)

自動車技術会社のVeoneerに、QualcommがMagnaを上回る約5000億円で買収を提案

スウェーデンの自動車技術会社であるVeoneer(ヴィオニア)を、大手自動車部品メーカーのMagna International(マグナ・インターナショナル)が38億ドル(約4174億円)で買収するという話は、雲行きが怪しくなってきた。半導体・通信技術企業のQualcomm(クアルコム)が、米国時間8月5日、さらに8億ドル(約880億円)を上乗せした金額で買収を提案してきたのだ。

Qualcommが提案した46億ドル(約5053億円)の買収額は、1株あたり37ドル(約4064円)で、既に同社の取締役会から承認を得ており、株主投票は必要ないと同社は声明で述べている。VeoneerとMagnaは、7月に両社の取締役会が買収を承認したと発表していた。

Veoneerは先進運転支援システム(ADAS)を開発している企業で、高速道路を走行中の車線変更や緊急ブレーキなど、特定の条件下で限られた動作を自動的に行う車両のハードウェアとソフトウェアを手掛けている。ADASは、いわゆる「自動運転車」とは程遠いものの、現在販売されている新車の多くに搭載されている、人気の高い(そして現実的な)一連の機能である。

MagnaとQualcommの間で繰り広げられている入札合戦は、ADAS技術の将来的な有望性を示していると言える。どちらの企業も、ADASの一次サプライヤーであるContinental(コンチネンタル)やBosch(ボッシュ)との競争力を維持する手段を手に入れようとしているのだ。Qualcommの時価総額は現在1648億ドル(約18兆1020億円)で、Magnaは253億ドル(約2兆7790億円)。ただし、Magnaが応札するかどうかは現時点では不明だ。

市場はこの新たな買収提案に反応し、Veoneerの株価は水曜日から木曜日にかけて31.22ドル(約3429円)から38.20ドル(約4196円)へと7ドル(約769円)近く上昇した。7月23日にMagnaへの売却が発表される前は、Veoneerの株価は1株あたり19.93ドル(約2189円)だった。

Veoneerは、2018年に自動車安全システムサプライヤーのAutoliv(オートリブ)からスピンオフして誕生した会社だ。Autolivは2017年に、Volvo Cars(ボルボ・カーズ)と先進運転支援システムに特化したZenuity(ゼニュイティ)という合弁会社を設立したが、このベンチャーは昨年7月、ボルボとVeoneerに分割された。

このADAS開発企業は、Qualcommとも以前から関係を持っている。両社は今年1月に、ADASプラットフォームの共同開発に関する契約を締結した。

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画像クレジット:Veoneer
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

車載充電パッドも期待されるワイヤレス充電のAiraが約13.1億円を調達

2017年に創業しアリゾナに拠点を置くAiraは、そのテクノロジーを証明する時間を無駄にしなかった。TechCrunchでは同社のワイヤレス充電について何度か記事にした。例えば同社の「FreePower」テクノロジーはNomadの充電パッドに搭載され、Appleが開発を中止したAirPowerをさらに使いやすくした製品になった。このテクノロジーのおかげでユーザーは最大3つのデバイスを同時に充電できる。しかも時間をかけてパッド上の正確な位置にデバイスを置く必要はない。

米国時間8月3日、Airaはシードラウンドで1200万ドル(約13億1000万円)を調達したと発表した。このラウンドは、主にJawad Ashan(ジャワド・アシャン)氏、Lori Greiner(ロリー・グライナー)氏、Robert Herjavec(ロバート・ハージャベック)氏などの個人投資家がリードした。同社はこの資金で、コンシューマー向けデバイス充電を拡大し、企業や自動車、宿泊業などへも進出する他、充電テクノロジーのバージョン2.0も登場させる予定だ。

Airaの共同創業者でCEOのJake Slatnick(ジェイク・スラトニック)氏は発表の中で「この新しい資金調達ラウンドはイノベーションに向けて我々の力を加速させるゲームチェンジャーです。我々のパイプラインには多くのパートナーシップがあり、FreePowerのバージョン2.0はもう目前で、ジャワドが経営陣に加わった状況であることから、これはAiraにとっての転換点です」と述べた。

画像クレジット:Aira

2020年12月の記事でお伝えしたように、Airaはすでに自動車には進出している。このとき同社は、車両パーツサプライヤー大手で今回のラウンドにも参加しているMothersonからの投資を発表した。2020年12月の投資は、Airaが同社のワイヤレスモジュールを自動車に統合しようとする方向性を明確に示すものだった。多くの自動車メーカーはコンシューマー向け機器に対応した装置を備えていないため、これは歓迎すべきことだった。

AiraもMothersonもその時点で、そして現在も、自動車に関して具体的なパートナーを発表していない。しかしAiraは、同社とMothersonが協力して自動車向けFreePowerモジュールを開発していると述べている。

画像クレジット:Aira

米国時間8月3日の発表の中でAiraは「現在のワイヤレス充電テクノロジーは移動する環境で使うようには作られていないため、消費者も自動車メーカーも関心を持っていません。これに対してFreePowerを使った車内用充電パッドは、運転中のデバイスのずれ、複数デバイスの充電、あらゆるサイズのパッド、ファームウェアのアップデートによる将来的な機能の拡張や互換性の確保に対応します。安全性と規制の厳しい基準を守りつつハイパワー充電も可能です」と述べた。

今回の発表で、AxonのCFOであるジャワド・アシャン氏がAiraの経営陣に加わったことも判明した。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Airaワイヤレス充電自動車資金調達Motherson充電器

画像クレジット:Aira

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(文:Brian Heater、翻訳:Kaori Koyama)

1990年代のような旧態依然とした自動車修理工場の業務を変革するShopmonkey

自動車修理工場に行くと、まるで過去に足を踏み入れたような気分になることがある。手書きのメモや領収書、不便なPOSシステムやスケジュール管理ツール(もしあったとしても)は、顧客に21世紀ではなく、1990年代にいるような感覚を与える。

Shopmonkey(ショップモンキー)はそんな状況を変えようとしている。

「この業界はすばらしいサービスを提供していますが、今の時代とサービスから5〜10年は遅れていると感じます」と、ShopmonkeyのCEOであるAshot Iskandarian(アショット・イスカンダリアン)氏は、最近のインタビューで語っていた。

同氏の会社は、自動車修理業界向けに開発されたクラウド型の店舗管理ソフトウェアを提供している。2500万ドル(約27億4000万円)を調達したシリーズBラウンドの発表から1年も経たないうちに、Shopmonkeyはまた新たな資金を獲得した。以前にも出資したBessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)とIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)の主導でシリーズC投資ラウンドを実施し、7500万ドル(約82億3000万円)を調達したと発表したのだ。このラウンドには、継続出資を決めたHeadline(ヘッドライト)とI2BF、そして新たに投資家に加わったICONIQ Growth(アイコニック・グロース)も参加した。

今回調達した資金は、製品、営業、マーケティングの各チーム増員と、プラットフォームのさらなる開発に充てられる予定だ。

イスカンダリアン氏は、多くの自動車修理工場が業務プロセスの犠牲となっていることに気づいた。例えば、工場の経営者たちは、請求書の発行、スケジュール管理、部品の発注などの作業を行うために、多くのツールやプラットフォームを使わなければならない泥沼にはまっていた。あるいは、工場の中には、1台のローカルなマシンにダウンロードした店舗管理システムを使っている場合さえある。「これらのショップはそういう世界にいたのです」と、イスカンダリアン氏はいう。

画像クレジット:Shopmonkey

Shopmonkeyは、これらの異なる機能を単一のクラウドベースのツールに統合し、複数のコンピュータ、タブレット、スマートフォンからアクセスできるようにする。また、同社のソフトウェアは、予約のリマインダーや確認、アップセルのおすすめなども提供し、ショップと顧客のコミュニケーションにも役立っている。

イスカンダリアン氏がShopmonkeyを設立したのは2017年のこと。それ以来、従業員は約125人に増え、2500以上のショップがこのソフトウェアを使用している。同氏によると、ショップオーナーの年齢層の移り変わりや、顧客からの圧力により、管理ソリューションを求める自動車修理工場が増えているという。

多くの業界と同様に、自動車修理業界も新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた。しかし、それも回復しつつある。ある調査報告によると、2021年は数百万の人々が路上に戻ったり、中古車の購入を決めたりすることで、7%の成長が見込まれるという。これは自動車修理工場にとって朗報であり、Shopmonkeyもこの需要増にチャンスを見出している。

新型コロナウイルス収束と世の中のさまざまな動きの活発化は「中古車や中古車修理など、自動車のアフターマーケット全体に大きな追い風となっています」と、イスカンダリアン氏はいう。「創業者にとっても、自動車修理業界にとっても、良い時代です」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Shopmonkey資金調達DX自動車

画像クレジット:Shopmonkey
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新しいレーシングカーのためにF1がデータを収集した方法とは

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

こんにちは!立ち寄っていただいたことに感謝したい。今日は材料がてんこ盛りだ。資金調達ラウンドのダイジェストや、スタートアップ市場のデータ(DocSend[ドックセンド]に感謝する)などをお届けする。だが、最初は個人的に大好きなものから始めよう。レースだ。

The Exchangeは、テクノロジーマネーがF1の世界に流れ込むことに関する、さまざまなジョークを飛ばしてきた。Splunk(スプランク)、Webex(ウェベックス)、Microsoft(マイクロソフト)、Zoom(ズーム)、Oracle(オラクル)というた企業が、チームやレース、そしてリーグそのものを後援している。

F1のパートナーとして注目されているのがAmazon(アマゾン)だ。例えば同社のパブリッククラウドプロジェクトのAWS(アマゾン・ウェブサービス)は、F1中継の画面上に現れるグラフィックを動作させている。もちろん、ファンの目からはAWSグループの計算機クラスターがどのようにして特定の指標を出しているのかが正確にはわからないこともあるが、AWSによるタイヤの摩耗に関するメモは有用でタイムリーなものだ。

しかし、F1の世界の舞台裏では、Amazonがこれまで私が理解していた以上に活躍していたことがわかった。要するに、これまで述べてきたテクノロジー企業とF1のお金の話は、大きなパズルの一部に過ぎなかったのだ。それはどのようなものなのだろう?実はF1の新しい2022年型マシンの設計過程で、AWSが重要な役割を果たしていたことがわかったのだ。

マシンはこんな感じだ。

画像クレジット:フォーミュラ・ワン

なかなかいいんじゃない?

なぜこんなにスラリとした形状なのか気になっていると思う。その答えは、この車両が非常に特殊な空力目標を持って設計されているからだ。例えばF1マシンの後ろに流れる空気の影響で、後続車のコースどりが難しくなる「ダーティエア」現象を減らすことなどだ。

現在のF1マシンは、現行世代のF1ハードウェアとしては最後のシーズンを迎えているが、大量のダーティエアを発生させている(頑張れランド!)。そのため、大切なダウンフォースを失うことを恐れて、コース上のクルマ同士が近づくことができないという、少々厄介なレースになっている。ご存知のようにダウンフォースは、クルマが壁にぶつからずコース上に留まることを助ける。

F1が次の時代の競争で求めていた、ダーティエアを削減しよりクルマ同士が接近したレースを可能にするベースカーを設計するためには、CFD(Computational Fluid Dynamics、計算流体力学)に多くのコンピューターパワーが投入されなければならなかった。そのとき、AWSがF1のコンピューティングニーズに対応していることがわかったのだ。

今回、初めてAmazon Chime(アマゾン・チャイム、Amazonのウェブ会議システム)を利用して、F1のデータシステム担当ディレクターであるRob Smedley(ロブ・スメドレー)氏とこうした統合について話をすることができた。元フェラーリとウィリアムズのエンジニアだったスメドレー氏によれば、F1とAmazonは2018年から新型車のプロジェクトを進めているそうだ。F1には自社の問題を解決するための多くの頭脳が集まっており、一方Amazonはトリッキーな計算をするために大量のコアを提供した。

スメドレー氏によると、もし彼のチームが、個別のF1チームに許されているものと同じコンピューティングパワーを使っていたとしたら、2台の車が前後を走る新しいモデルを計算するのに1回あたり4日かかっていただろうという(なにしろF1レースというスポーツには、チームをある程度平等にするための、あるいはメルセデスの足を引っ張るための規制がたくさんあるのだ)。

しかし、Amazonが2500個の計算コアを提供したことで、スメドレー氏とF1のデータ科学者たちは、同じ作業を6時間または8時間で終わらせることができた。つまり、F1グループはより多くのシミュレーションを行い、より良いクルマを設計することができるのだ。時にはより多くの計算パワーを使用することもある。スメドレー氏は2020年のある時点で、彼のチームが十数種類の繰り返しシミュレーションを同時に実行したこともあるとThe Exchangeに対して語っている。これを可能にしたのは、約7500個のコアによるデータ処理だ。このシミュレーションの実行には30時間かかった。

つまり、F1にはテック系の資金が多く投入されていて、各チームが仕事をすることを助けて、財政的に余裕がある状態にさせていることは事実だが、しかし、F1の本質的な部分にも多くの技術が投入されているのだ。また、F1オタクの私にとって、自分の好きなことが仕事に結びつくのはとてもうれしいことだ。

さて、いつもの話題に戻ろう。

中西部の最新ユニコーン

M1 Finance(M1ファイナンス)は、私の取材活動の中に何度も登場する会社だ。その大きな理由は、彼らがずっと資金を調達し、新しいパフォーマンス指標を発表し続けているからだ。今週、同社は1億5000万ドル(約165億円)のラウンドを実施し、評価額は14億5000万ドル(約1595億7000万円)に達した。この消費者向けフィンテックスーパーアプリの最新の資金調達ラウンドは、ソフトバンクのVision Fund 2が主導した。

関連記事:フィンテックM1 Financeがソフトバンク主導のシリーズEラウンドでユニコーンに

さて、なぜ私たちがこの会社気にするのか?M1の超おもしろい点は、同社の収益の成長を時間軸に沿って追跡する方法を教えてくれたことだ。私がこのスタートアップを取材しはじめた頃、同社のCEOは、運用資産(AUM)の約1%程度の収益を挙げたいと語っていた。つまり、AUMの増加を追跡することで、会社の収益成長を追跡することができるのだ。

そして、同社はAUMの数字を発表し続けている(世の広報担当のみなさん、長期的なデータを提供することは、私たちにスタートアップへの興味を持たせ続けるためのすばらしい方法なのだ!)

M1のAUMを時系列で見てみよう。

1%の目標値で換算すると、年間収益はそれぞれ1450万ドル(約15億6000万円)、2000万ドル(約22億円)、3500万ドル(約38億5000万円)、4500万ドル(約49億6000万円)となる。言い換えれば、2020年6月から実質的に収益が3倍になっている。これはとても良い数字で、投資家が支持したいと思うような成長だ。それが今回のラウンドとなり、そして、M1の新しいユニコーン価格となった。

Truveta

Truveta(トゥルベータ)を覚えているだろうか? 以前、同社が計画を発表したときに、記事を書いている。Microsoft(マイクロソフト)の元幹部であるTerry Myerson(テリー・マイヤーソン)氏がチームの一員であり、私もかつてMicrosoftの取材を生業としていたため、このスタートアップには初期の頃から注目していた。Truvetaは「医療機関から大量のデータを収集し、それを匿名化して集計し、第三者が研究に利用できるようにしたい」と考えていることを、前回お伝えした。

今週、このスタートアップは、新しいパートナーシップと9500万ドル(約104億5000万円)の資金調達を発表した。これはかなり大きな調達額だ!このスタートアップは現在、17のパートナーヘルスグループを抱えている。

多くのデータを1カ所に集めることで、医療の世界をより良く、より公平にすることを目指している。そして今、その目標を達成するために大金を手に入れたのだ。この先何ができるあがるのかを見ていこう。

関連記事:データは米国の不公平なヘルスケア問題を解決できるだろうか?

その他の重要なこと

文字数を適度に抑えて編集の手間を減らしたために、他の記事では紹介しきれなかった重要なものを紹介しよう。

Cambridge Savings Bank(CSB、ケンブリッジ・セービング・バンク)がフィンテックに参入:Goldman(ゴールドマン)が一般庶民向けのデジタル銀行Marcus(マーカス)を立ち上げたことを覚えているだろうか?同じこと狙うのは1社だけではない。今回はCSBが独自のデジタル・ファースト銀行のIvy(アイビー)を構築しローンチを行った。率直に言って、長い営業の歴史と、古典的な技術スタックとサービス群を持つ銀行から始めるというアイデアを私は気に入っている。そして、そのすぐ隣にもっとモダンなものを建てるのだ。古い銀行そのものに新しい技術を習得させるよりも、その方が良い解決策となるだろう。また、多くの銀行がこのようなことをすれば、ある程度ネオバンクの勢いを削ぐこともできるだろう。だよね?

Code-X(コードX)が500万ドル(約5億5000万円)を調達、評価額を公表しても大騒ぎにはならないことを証明:「ラティスベースのデータ保護プラットフォーム」を構築したフロリダのスタートアップ、Code-Xが、最新の増資により4000万ドル(約44億円)の価値を持つことになった。いや「ラティスベースのデータ保護プラットフォーム」が何であるかは知らない。しかし、Code-Xがアーリーステージ ラウンドの一環として評価額を発表したことは知っている。それは拍手喝采に値する。よくやった、Code-X。

最後にDocSendのデータ:その名の通り「文書を送る」同社が今週新しいデータを発表したので、ご紹介しよう。以下がその主たる内容だ。

DocSendのStartup Index(スタートアップインデックス)中の2021年第2四半期のデータによると、スタートアップのピッチ資料に対する投資家の関心とエンゲージメント(需要の代名詞だ)は、前年同期比で41%増加している。一方積極的に資金調達を行っているファウンダーが作成したピッチ資料へのリンク(供給の指標だ)は、2021年第2四半期に前年同期比で36%増加している。

なぜこれがおもしろいのかって?需要が供給を上回っているからだ!あははっ!それがすべてを物語っているような気がする。

ここ数週間、ベンチャー企業の第2四半期決算を調べてきたが、どうにも簡潔にまとめることができなかった。なぜスタートアップの評価額が上がっているのか?なぜ スタートアップ企業はより多くの資金を、より早く調達しているのか?なぜなら、ベンチャーの後援対象となる企業たちに対して、投資家の需要が供給をはるかに上回っているからだ。

それが2021年だ。

きょうのみなさんは素晴らしく、楽しそうで、とてもすてきだ!

来週は、バッテリーに特化した2つのSPAC、つまりEvonix(エボニックス)とSESについてご紹介する。バッテリー技術、エネルギー密度、そして未来について、多くのことを語ることができるだろう。そして、もちろんお金についても。

ではまた。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

自動車の整備・修理出張サービス「セイビー」の開発・運営を行うSeibiiが総額8.4億円のシリーズA調達

自動車の整備・修理出張サービス「セイビー」の開発・運営を行うSeibiiが総額8.4億円のシリーズA調達

自動車の整備・修理出張サービス「セイビー」の開発・運営を行うSeibiiは6月30日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額8億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのグロービス・キャピタル・パートナーズ、またCoral Capital、 エンジェル投資家の有安伸宏氏。調達した資金は、事業成長の核であるテクノロジー強化に向けたエンジニア採用活動、サービス認知拡大へのマーケティングに活用予定。累計調達額は約10億円となった。

2019年1月設立のSeibiiは、「人とモビリティとの新たなストーリーを創る」をミッションに掲げ、車の整備・修理・パーツ取付などの出張サービス「セイビー」を展開。スマホやPCから、日時やメニューを選んで事前予約・事前決済を行うと、予約した時間に国家資格を持つ自動車整備士が自宅などに出張する。また、車について詳しくない方やメニューに悩む方を対象に、サービスぺージから自動車整備士にチャット相談(無料)を行えるようにしている。

セイビーの特徴である「出張」を前提としたビジネスモデルにより、来店や待ち時間不要で時間を節約できる上、店舗の相場価格と同等以下という料金設定を実現しているという。

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カテゴリー:モビリティ
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スマホカメラとAIを利用して自動車事故の損傷を査定するTractable、最大の市場は日本

保険業界も21世紀の生活に合わせて進化しているようだ。コンピュータビジョンを利用して遠隔地から損傷を鑑定できるツールを開発したAIスタートアップが、多額の成長資金を獲得したことを発表した。

Tractable(トラクタブル)は、自動車保険会社と提携し、ユーザーがぶつけたクルマの写真を撮影して送信すると、その損傷具合を「読み取って」査定するサービスを提供している。同社はシリーズDラウンドで6000万ドル(約66億1000万円)の資金を調達したと発表、その評価額は10億ドル(1102億円)に達したという。

Tractableは、世界の自動車保険会社トップ100のうち20社以上と提携しており、過去24カ月間で収益は600%増加したという。Alex Dalyac(アレックス・ダルヤック)CEOによると「年間売上高は8桁ドル(数十億円)に達する」とのこと。「新型コロナウイルス感染拡大がなかったら、もっと早く成長していただろう」と、同氏は語っている。人々が自宅から出なくなるということは、クルマで路上を走る人の数が格段に減り、事故も減るからだ。

現在のTractableのビジネスは、主に交通事故の損害請求に関わるものが中心となっている。ユーザーは事故で損傷したクルマの写真をスマートフォンのカメラで撮影し、(通常のアプリではなく)モバイルサイトを介して写真をアップロードする。

しかし、同社は今回の資金調達の一部を利用して、自然災害の復旧(特に物的損害の鑑定)や、中古車の査定といった、隣接する分野へのさらなる事業拡大も計画している。また、スマートフォンで撮影された(サイズの小さな)写真を処理・解析するためのAIベースの技術を、より優れたものにするためにも、この資金は使われる。

今回の投資ラウンドは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)とGeorgian Partners(ジョージアン・パートナーズ)が共同で主導した。これにより、同社の累計調達額は1億1500万ドル(約127億円)に達した。

深層学習の研究者であり、Razvan Ranca(ラズバン・ランカ)氏やAdrien Cohen(エイドリアン・コーヘン)氏とともにTractableを設立したダルヤック氏によれば、同社が特定し解決する「機会」(「事故」と言い換えることもできるだろう)では、自分のクルマに起きた問題として対処する場合、保険会社とのやり取りには時間がかかりストレスになっているという。

最近では、そんな問題により近代的なプロセスを導入する新世代の「インシュアテック」スタートアップが登場しているものの、Tractableがターゲットとする既存の大手保険会社には、そのプロセスを改善する技術が不足していた。

それは、フィンテックを推進するネオバンクと、時代に追いつくためにさらなるテクノロジーへの投資に躍起になっている既存の銀行との間に見られる緊張関係と似ている。

「事故に遭うと、面倒なことからトラウマになることまでさまざまな負担を受けます」とダルヤック氏はいう。「壊滅的なダメージを受け、立ち直るまでにはかなりの時間がかかります。保険会社とのやりとりも多いし、多くの人がやって来て何度も確認しなければなりません。いつになったら本当に元通りになるのかを把握するのは困難です。私達は、画像分類の飛躍的な進歩により、そのプロセス全体が10倍速くなると確信しています」。

このプロセスは現在、保険金請求のための写真撮影に留まらず、Tractableのコンピュータビジョン技術を使って、車両が修理不能になった場合に、どの部品をリサイクルして他の場所で再利用できるかを判断するのにも役立っている。ダルヤック氏によれば、2020年はこのサービスが人気を博し「2019年にTesla(テスラ)が販売した新車台数」と同じ数のクルマのリサイクルを支援したという。

これまでTractableと契約を結んだ顧客企業には、米国のGeico(ガイコ)をはじめ、日本では東京海上日動、三井住友、あいおいニッセイ同和損保など、多くの保険会社が含まれている。また、フランス最大の自動車保険会社であるCovéa(コベア)、英国Admiral Group(アドミラル・グループ)のスペイン法人であるAdmiral Seguros(アドミラル・セグロス)、英国の大手保険会社であるAgeas(エイジアス)も同社の顧客となっている。

現在、日本は同社の最大の市場であるとダルヤック氏はいう。その理由は、高齢化が進んでいることと、その一方で携帯電話の利用率が非常に高いことという2つの条件が揃っているためだという。そのため「自動化は単なる付加価値ではなく、必要不可欠なものとなる」とダルヤック氏は述べている。だが、近い将来には米国が日本を抜いてTractableの最大の市場になるだろうと、同氏は付け加えた。

物的資産や中古車への応用などの新たな方向性は、保険会社との提携だけに留まらず、より幅広いユースケースへの扉を開くことになるだろう。それによってTractableが新たな競争環境に入る可能性もある。同じようなビジネスチャンスを狙っている企業は他にもあるからだ。

例えば、一般的なスマートフォンのカメラを使って住宅の3D画像を作成する方法を確立したHover(ホバー)は、元々は住宅の修理の見積もりをするために開発された技術を、保険会社に販売する方法を検討している。

しかし今のところ、このような商機は十分に大きく、競合他社に勝つことよりも、需要を満たすことの方が重要だと考えられる。

Insight PartnersのMDであり、Tractableの取締役でもあるLonne Jaffe(ロン・ジャフィ)氏は、声明の中で次のように述べている。「Tractableの大規模な加速度的成長は、同社の応用機械学習システムの力と差別化を証明するものであり、それはますます多くの企業に採用されることで改善を続けています。何億人もの生活に影響を与える事故や災害から、世界がより早く回復することを支援するために活動しているTractableとのパートナーシップを、二倍に強化できることを我々はうれしく思います」。

Georgian PartnersのパートナーであるEmily Walsh(エミリー・ウォルシュ)氏は、次のように述べている。「Tractableの業界をリードするコンピュータビジョン機能は、顧客の投資利益率と同社の成長を驚異的なペースで促進し続けています。TractableがそのAI能力を、中古車業界や自然災害復旧という数十億ドル規模の新たな市場機会に適用するために、引き続きパートナーとして協力できることをうれしく思います」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Tractable資金調達自動車事故深層学習画像認識機械学習保険

画像クレジット:Tractable

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードがコンパクトな新型ピックアップトラック「マーベリック」の発表を予告

Ford(フォード)は、競争が激化するピックアップトラック市場であらゆる価格帯のモデルを提供するため「Maverick(マーベリック)」と呼ばれるエントリーレベルの新型トラックをラインアップに加える。

同社は米国時間6月8日にこのトラックを公開する予定であり、新たに開設したTikTok(ティックトック)チャンネルでデビューする初のフォード車になるという。主にオンラインで行われる正式発表には、女優のGabrielle Union(ガブリエル・ユニオン)を起用し、フォードの各ソーシャルチャンネルやHulu(フールー)、そして彼女自身のInstagram(インスタグラム)とTikTokチャンネルでも、この新型トラックを紹介するという。

今のところ、この新型車の姿はほとんど露出されておらず、YouTubeのティーザー広告で1秒ほど映るだけだ。一部公開されている写真を見ると、明らかにフォードのクルマで、コンパクトなトラックであることがわかる。その全貌や詳しい情報は来週まで待たなければならない(それ以前にリークされない限り)。

画像クレジット:Ford

フォードのピックアップ・ヒエラルキーにおいて、新型マーベリックはRanger(レンジャー)やFシリーズよりも下に位置することになる。ミッドサイズ・ピックアップのレンジャーで最も安価な「XL」グレードは、輸送費別で2万5070ドル(約276万円)からとなっているので、マーベリックは少なくともそれより数千ドル(数十万円)は安い価格から買えることになりそうだ。

マーベリックが、ハイブリッド車、電気自動車、ガソリン車のどれになるのか、フォードはまだ明らかにしていない。しかし「F150」にハイブリッド仕様や、最近発表された電気自動車の「F-150 Lightning(ライトニング)」を投入したフォードの最近の方向性を考えると、少なくともハイブリッド仕様が設定される可能性は高いと思われる。

フォードF-150は、この米国の自動車メーカーの事業で収益の柱となっている製品だ。そこに電気自動車の兄弟が加わったことで、必要なラインナップはすべて揃ったかのように見えた。しかし、フォードはさらに、手頃な価格でもっと都市生活に適したピックアップを求める顧客のエントリーレベル市場も獲得したいと考えている。

関連記事:フォードが同社電気自動車計画の柱となるEVピックアップトラック「F-150ライトニング」を発表

カテゴリー:モビリティ
タグ:フォード自動車

画像クレジット:Ford/screenshot

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ドライバーモニタリングのSmart Eyeが感情検知ソフトウェアAffectivaを約80億円で買収

ドライバーのモニタリングシステムを自動車メーカー12社に供給しているスウェーデンの上場企業Smart Eye(スマートアイ)が、感情検知ソフトウェアスタートアップのAffectiva(アフェクティヴァ)を現金と株式合わせて7350万ドル(約80億円)で買収した。

MIT Media Labから2009年にスピンアウトしたAffectivaは人間の感情を検知して理解できるソフトウェアを開発した。このソフトウェアはSmart Eyeが自社のAIベースの視線追跡テクノロジーと合体させたがっているものだ。両社の創業者たちは、ドライバーの覚醒度を追跡・計測するための高度なドライバーアシスタンスシステムによく使われているテクノロジーであるドライバーモニタリングシステム以上の機会を目にしている。両社が一緒になることで、そのテクノロジーは新たに生まれている「インテリアセンシング」マーケットに参入するのに役立つかもしれない。インテリアセンシングは車両の乗車空間全体をモニターし、乗車している人の感情に応じたサービスを提供するのに使われている。

買収取引条件に基づき、6750万ドル(約73億円)が新規発行されるSmart Eyeの235万4668株で支払われることになっており、うち201万5626株は取引完了時に発行される。残りの33万9042株は取引完了から2年以内に発行される。そして2021年6月の取引完了時に約600万ドル(約6億5000万円)が支払われる。

AffectivaとSmart Eyeは競合していた。2020年のテクノロジー展覧会CESでのミーティングが合併につながった。

「マーティンと私は、両社が互いに競うために同じ道を歩んでいて、もし力を合わせればさらに良くなるのではないかと気づいたのです」とAffectivaの共同創業者でCEOのRana el Kaliouby(ラナ・エル・カリウビー)氏は米国時間5月25日のインタビューで述べた。「一緒に取り組むことで、OEM企業のインテリアセンシングに関する要求のすべてを満たし、我々は競争で優位に立ちます。個々にやるよりもずっとうまく、そして早く達成する機会を手にします」。

ボストン拠点のAffectivaは感情検知ソフトウェアを買収取引に持ち込み、これによりSmart Eyeは既存の自動車業界のパートナーにさまざまなプロダクトを提供できるようになる。Smart EyeはAffectivaが開発やプロトタイプ作業を超えて生産契約に移れるようサポートする。Smart EyeはBMWやGMを含むOEM13社から生産契約84件を獲得した。スウェーデン・ヨーテボリ、デトロイト、東京、中国・重慶市にオフィスを置いているSmart Eyeは忠実に再現できる人間工学研究のためのアイトラッキングシステムをNASAのような研究組織に提供する部門も抱える。

Smart Eye創業者でCEOのMartin Krantz(マーティン・クランツ)氏は、ラグジュアリーでプレミアムな車両を製造している欧州のメーカーがドライバーモニタリングシステムの変化をリードした、と話した。

「インテリアセンシングでも同じパターンが繰り返されています」とクランツ氏は述べた。「初期の契約の大半はMercedes、BMW、Audi、JLR、Porscheといった欧州のプレミアムなOEMになるでしょう」。そしてCadillacやLexusなどを含む欧州外の地域でターゲットにする他のプレミアムなブランドも数多くある、と付け加えた。

まずは人間が運転する乗用車に照準を当て、高度な自動運転がマーケットに導入されるにつれゆくゆくは拡大する。

ボストンとカイロのオフィスに従業員100人を抱えるAffectivaは感情検知ソフトウェアをメディア分析に応用する別の事業部門も擁している。買収取引に含まれ、別に運営されるこの部門は収益をあげているとカリウビー氏は話し、世界の大手広告主の70%がメディアコンテンツへの感情反応を測定して理解するのにこのソフトウェアを使っているとも指摘した。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Smart EyeAffectiva買収インテリアセンシング自動車

画像クレジット:Smart Eye

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

車内VRエンタメのHolorideが市場投入に向けブロックチェーンとNFTを導入

Audi(アウディ)のスピンオフ企業で、車内で体験するXRエンターテインメントを手がけるHoloride(ホロライド)は、2022年の市場投入に向けた準備の次の段階として、ブロックチェーン技術とNFTを導入するという。

2021年4月のシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達した同社は、自動車メーカーとコンテンツ制作者によるエコシステムに透明性をもたらすため、Elrond(エルロンド)のブロックチェーンを自社の技術スタックに統合すると発表した。HolorideはNFT(非代替性トークン)を使用することで、トークンの購入によって開発者がより多く稼げることを約束し、同社のプラットフォーム上でより多くの魅力的なコンテンツを作成するように奨励して、車内の体験をパーソナライズしたいと思う乗員を惹き付けたいと考えている。

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ブロックチェーン、NFT……。Holorideはインターネットの流行に乗ろうとしているだけなのだろうか?そうかもしれないが、少なくともブロックチェーンの統合には、1年前から取り組んでいたと、Holorideの創業者でCEOを務めるNils Wollny(ニルス・ウォルニー)氏は言っている。

Holorideの没入型車内メディアプラットフォームは、それが機能するためにブロックチェーンを必要とするわけではない。乗員が体験するコンテンツは、車両のリアルタイムの動きと位置情報に基づいたデータに同期して調整される(つまり、乗り物酔しない!)。ブロックチェーンが果たす役割は、Holorideがコンテンツを公正かつ透明に配信し、ユーザーのエンゲージメント時間と評価に基づいて、開発者に報酬を与えられるようにすることだ。

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「私たちは最初から、このエコシステムにおけるすべてのパートナーを、極めて公正かつ透明な方法で結びつけたいと考えていました」と、ウォルニー氏はTechCrunchに語った。「すべての取引とエンゲージメントは、ブロックチェーンに保存できます。自動車メーカー側は、車内のHoloride体験にどれだけの時間が費やされたかを把握することができますし、コンテンツクリエイター側にとっては、私たちのプラットフォームのために制作したタイトルに、どれだけユーザーが時間を費やしたかということが透明になります」。

NFTはブロックチェーン上に記録された、他のものとは代替ができない唯一無二のデジタルトークンだ。ほとんどのNFTはEthereum(イーサリアム)のブロックチェーンに属しているが、HolorideのNFTはElrondのブロックチェーンでサポートされることになる。

Holorideの体験に没入しながら、NFTを買ったり集めたりするという魅力が、より多くのエンゲージメントにつながると、ウォルニー氏は期待している。同氏はまた、未来学者や技術オタクたちが「メタバース」と呼ぶような、デジタルでバーチャルの世界と物理的な現実や拡張された現実が結びつくという概念が、加速していくことも予見している。

ヘッドセットを装着して次の目的地へ移動する間に、この仕組がどのように機能するのだろうか? それをイメージするには、ウォルニー氏に具体的な例を上げてもらったほうがわかりやすいだろう。Holorideの場合、NFTは仮想世界の要素を現実世界の場所や出来事に結びつけることから始まる。

「人々が仮想の乗り物、例えば宇宙船や潜水艦なんかに乗って移動しているところを思い浮かべてください。同時にその人たちの物理的な身体は、現実の世界で自動車に乗っているのです」と、ウォルニー氏は説明する。「彼らがある場所を通り過ぎるとき、コンテンツ制作者はそこに、乗員が集められるような何かを置いておくことができます」。

つまり「Pokémon GO(ポケモンゴー)」のようなものだ。だが、スマートフォンを手に持って、拡張現実のアニメ・ペットを狂ったように追いかけて外を歩くのではなく、VRヘッドセットを装着して車内に座っていればいい。そして捕まえるのは、レアなポケモンどころか、唯一無二の自分だけが持つことができるアイテムであり、交換しない限り、他の誰もそれを手に入れることはできないのだ。

「あるいは、ユーザーがあるゲームをとても上手にプレイしたら、賞品としてアイテムを得ることができるというものも考えられるでしょう」と、ウォルニー氏は続ける。「将来的には、それを他のユーザーに見せたり、交換したりできるようになり、現実世界と仮想世界の距離が縮まります」。

HolorideのNFTの将来性は、乗員が車内で体験するコンテンツに没頭し、デジタルトークンという形で得られるものに、愛着や所有欲を感じるようになるかどうかにかかっている。ウォルニー氏がバーチャルリアリティに熱中し過ぎているのかもしれないし、我々が拡張現実に依存せずにいられなくなるような、我々が知らないことを彼は何か知っているのかもしれない。しかし、彼がTechCrunchに語ったように、これは同社のエコシステムの始まりであり、Holorideを「メタバースの輸送企業」にするためのステップに過ぎない。

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:HolorideNFT自動車

画像クレジット:Holoride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スマホが自動車のキーになるAndroid 12の新機能をグーグルが発表

Google(グーグル)は、BMWをはじめとする自動車メーカーと協力して、Androidスマートフォンから車両の施錠 / 解錠やエンジン始動ができるデジタルキーを開発中であることを、米国時間5月18日に行われた開発者向けイベント「Google I/O」で発表した。

このデジタルカーキーは、同社のモバイルOSの最新版であるAndroid 12で採用される数多くの新機能の1つ。Android & Google Playのプロダクト・マネジメント担当バイス・プレジデントであるSameer Samat(サミア・サマット)氏によると、デジタルカーキーは2021年後半に一部のPixel(ピクセル)およびSamsung Galaxy(サムスン・ギャラクシー)のスマートフォンで利用可能になるという。対応する車両は、BMWを含む2022年モデルの新型車と一部の2021年モデルとのことだが、具体的な車名やBMW以外のメーカー名はまだ明らかにされていない(発表で例として提示された画像は、BMWが2021年内に発売する新型電気自動車「i4」だった)。

このデジタルカーキーには、UWB(Ultra Wideband、超広帯域無線)と呼ばれる無線通信技術が使われている。これは、センサーが信号の方向を知ることができる、小さなレーダーのようなものだ。この技術によって携帯電話に内蔵されたアンテナは、UWB送信機を備えた物体の位置を特定し、識別することができる。UWB技術を利用するため、Androidユーザーは携帯電話を取り出さなくても、車両の施錠 / 解錠が可能になる。

画像クレジット:Google

NFC(近距離無線通信)技術を搭載した車種を所有するユーザーは、携帯電話をクルマのドアにかざすことでロックを解除できるようになる。通常はクルマのドアハンドル内に搭載されているNFCリーダーが、ユーザーの携帯電話と通信を行う仕組みだ。Googleによると、ユーザーはクルマの貸し借りをする場合にも、友人や家族とクルマのキーを安全かつ遠隔で共有することが可能になるとのこと。

Googleが今回の発表を行う前に、Apple(アップル)も2020年、iPhoneやApple Watchに同様のデジタルカーキー機能を追加すると発表している。iOS 14で導入されたこの機能は、NFCを介して動作する仕組みで、2021年モデルのBMW 5シリーズで初めて利用可能になった。

関連記事:アップルはiPhoneをクルマの鍵に変える、WWDC20で発表

最近では、独自にアプリを開発する自動車メーカーも増えており、それらを使えばユーザーはスマートフォンからリモートロック / アンロックなど、特定の機能を制御することもできるようになっている。GoogleやAppleの側から見た大きなメリットは、モバイルOSにデジタルキー機能を統合することで、ユーザーがアプリをダウンロードする必要がないということだ。

その意図は、面倒な体験を減らすことにある。そしてさらに、これをシームレスにしようという動きもある。Apple、Google、Samsung、そしてBMW、GM、Honda(ホンダ)、Hyundai(ヒュンダイ)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)といった自動車メーカーが加盟するCar Connectivity Consortium(カー・コネクティビティ・コンソーシアム)は、メーカーの枠を超えて容易にスマートフォンを自動車のキーとして使用できるデジタルキーの標準規格を策定するために、数年を費やしてきた。

デジタルカーキーの開発は、スマートフォンが消費者の生活の中心になることを目指すGoogleの活動の一環だ。そしてその目標は、自動車抜きには達成できない。

「最近では、携帯電話を購入する際には、電話機のみならず、テレビ、ノートパソコン、自動車、スマートウォッチやフィットネストラッカーなどのウェアラブルなど、連携が求められる機器のエコシステム全体を購入することになります」と、Googleのエンジニアリング担当バイス・プレジデントを務めるErik Kay(エリック・ケイ)氏は、今回のイベントにおける発表にともなうブログ記事の中で書いている。「北米では現在、1人あたり平均約8台のコネクテッド・デバイスを所有しており、2022年にはこれが13台に増えると予測されています」。

Googleは、ユーザーがワンタップするだけでデバイスをBluetoothを介してペアリングできる「Fast Pair(ファストペア)」機能を、自動車を含む他の製品にも拡大すると言っている。

ケイ氏によると、現在までに消費者は3600万回を超える「Fast Pair」を利用して、Sony(ソニー)、Microsoft(マイクロソフト)、JBL、Philips(フィリップス)、Google、その他多くの人気ブランドを含むBluetooth機器とAndroidスマートフォンを接続しているという。

このFast Pair機能は、今後数カ月のうちに、Beats(ビーツ)のヘッドホンやBMW、Ford(フォード)の自動車など、さらに多くのデバイスに導入される予定だと、サマット氏はGoogle I/Oで語った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:GoogleGoogle I/O 2021AndroidBMW自動車電気自動車

画像クレジット:Google/screenshot

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルが自動車用Androidアプリの開発にライブラリの提供などで便宜強化

2021年中に、Volvo(ボルボ)とGMとRenault(ルノー)およびPolestar(ポールスター)の計10車種以上にAndroid Automotiveオペレーティングシステムが搭載され、内蔵のGoogle(グーグル)アプリとサービスのすべてを利用できるようになる。今後同社は、サードパーティの開発者が、ナビゲーションやEVの充電、駐車、メディアなどのアプリを車のスクリーン上にもっと容易かつ直接的に実装できるよう図っていく。

Googleは米国時間5月18日に行われたデベロッパーカンファレンスで、Android for Cars App Libraryの拡張を発表した。ライブラリスイートAndroid Jetpackに含まれ、Android Automotiveオペレーティングシステムをサポートする。これにより開発者は、Android OSとAndroid Autoという、2つの異なる(ただし重複部分もある)プラットフォームに対応したアプリを開発できるため、良いニュースでもある。また開発者は、アプリを1つ開発したらそれが複数の車種で問題なく動くという状態を維持確保できる。

Googleの発表によると、同社はすでに初期パートナーたちとの共同事業を開始しており、ParkwhizやPlugshare、Sygic、ChargePoint、Flitsmeister、SpotHeroらの開発者とともにAndroid Automotive OSで動く各種車載アプリの開発を進めている。

画像クレジット:Google

Android Automotive OSとAndroid Autoを混同しないように。後者はオペレーティングシステムの上に来る二次的なインタフェイスだ。Android Autoは、ユーザーのスマートフォンで動くアプリで、クルマのインフォテインメントシステムとワイヤレスで通信する。一方、Android Automotive OSはLinuxの上で動くオープンソースのモバイルオペレーティングシステムAndroidがその基本形だ。ただしAndroidであってもスマートフォンやタブレットで動くのではなく、自動車メーカーが車載用に使えるよう、Googleが変更を加えている。GoogleはこのOSのオープンソースバージョンを自動車メーカーにしばらく提供していたが、しかし最近では自動車メーカーがテクノロジー企業と共同で、Google AssistantやGoogle Maps、Google Play StoreなどGoogleのアプリとサービスをすべて内蔵するAndroid OSをネイティブで作り込んでいる。

Spotifyなど多くのサードパーティ開発者がAndroid for Cars App Libraryを使って独自のAndroid Autoアプリを開発し、Play Storeへ出している。Cars AppをOSの拡張とすることにより開発者は、アプリを1度だけビルドすればよい。

2年前にGoogleは、Android Automotiveオペレーティングシステムをサードパーティの開発者に公開して、音楽などのエンターテインメントアプリをクルマのインフォテインメントシステム用に作らせようとした。それが最初に実現したのが、Volvoが電動車専門のパフォーマンスブランドとして誕生したPolestarの、Polestar 2だ。その後のVolvo XC40 Rechargeなども、この方式を採用している。

アーリーアクセスプログラムに参加を希望する企業は、こちら書式に記入して申し込むこと。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:GoogleGoogle I/O 2021VolvoGMRenaultPolestarアプリ電気自動車自動車AndroidAndroid AutoAndroid Automotive

画像クレジット:Volvo

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

車内を仮想空間と現実を融合したエンターテイメントの場にするHolorideが約13億円調達

没入型の車内XRメディアプラットフォームを開発しているHoloride(ホロライド)は現地時間4月22日、シリーズAラウンドで1000万ユーロ(約13億円)を調達し、評価額は3000万ユーロ(約39億円)となったことを発表した。

スウェーデンのADASソフトウェア開発会社Terranet(テラネット)が320万ユーロ(約4億円)を拠出してラウンドをリードし、中国の金融や自動車テクノロジーの投資家が参加した。投資専門家のJingjing Xu(ジンジン・シュー)氏と教育・エンターテインメントゲーム開発企業Schell Gamesがこの中国の投資家グループをまとめた。Schell Gamesはコンテンツ制作でHolorideと提携している。

Holorideは欧州や米国、アジアなどグローバルマーケットへの進出に備え、そして2022年夏のプライベート乗用車向けのローンチを前に、調達した資金を新しいデベロッパーと人材探しに使う計画だ。

「コンテンツクリエイターコミュニティを重んじています。そして今夏には、コンテンツクリエイターが当社のプラットフォームでクルマ向けのコンテンツを制作できるよう、多くのツールをリリースします」とHolorideの創業者でCEOのNils Wollny(ニルス・ヴォルニー)氏はTechCrunchに語った。

ミュンヘン拠点の同社は2019年にCESでプロダクトを発表した。TechCrunchは車内バーチャル・リアリティシステムをテストする機会を得た。TechCrunchのチームはHolorideが乗車とVRヘッドセットの使用による車酔いをどのように抑えるかを解決したかを知って驚き、そして喜んだ。鍵となることは?ユーザーのヘッドセット内での体験を車両の動きに合わせることだ。プロダクト展開では、ユーザーはHolorideアプリをスマホやVRヘッドセットのような他のデバイスにダウンロードできる。デバイスは車とワイヤレス接続し、現実を拡大する。

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「当社のテクノロジーは2つの面を持っています」とヴォルニー氏は話した。「1つは、ローカライゼーション、あるいは車からデータポイントを取り出してリアルタイム同期を行うポジショニングソフトウェアです。もう1つは、Elastic Software Development Kitと我々が呼んでいるものです。コンテンツクリエイターは移動時間やルートに合わせた弾力のあるコンテンツを制作できます。Terranetとのコラボレーションは、正確なキャプチャやより速いスピードで高精度での環境解釈を可能にするTerranetのセンサーやソフトウェアスタックが、将来さらなる可能性をもたらすことができることを意味する。

元々ADASアプリケーション用にデザインされたTerranetのVoxelFlowソフトウェアはHolorideがリアルタイムの車内XRエンターテインメントを高度化するのをサポートする。TerranetのCEOであるPar-Olof Johannesson(パー−オロフ・ヨハンソン)氏はVoxelFlowをコンピュータービジョンと物体認知における新たなパラダイムだと表現し、VoxelFlowでは距離や方角、物体のスピードを計算するために複数のセンサー、イベントカメラ、レーザースキャナーがクルマのフロントガラスとヘッドランプに統合されている。

TerranetのVoxelFlowは複数のセンサー、イベントカメラ、レーザースキャナーを通じたコンピュータービジョンと物体認知を活用している。VoxelFlowは距離や方角、物体のスピードを計算するために複数のセンサー、イベントカメラ、レーザースキャナーがクルマのフロントガラスとヘッドランプに統合されている(画像クレジット:Terranet)

メーカーにとらわれないHolorideは、もしTerranetのソフトウェアが統合されて製造されたクルマでHolorideが使われていれば、VoxelFlowがリアルタイムで計算したデータポイントを使うことができる。しかしより重要なのは、Holorideが3DイベントデータをXRアプリのために再使用できる能力だ。これにより、クリエイターは最もインターラクティブなエクスペリエンスを作ることができる。TerranetはまたVoxelFlowを活用する新たな分野を開拓することを楽しみにしている。

「もちろん我々はHolorideの広いパイプラインへのアクセスも熱望しています」とヨハンソン氏は述べた。「この取引は獲得可能な最大市場規模を大きく拡大し、自動車産業の核心に踏み込むものです。自動車産業では通常、リードタイムとターンアラウンドタイムがかなり長くなります」。

Holorideはクルマでの退屈な時間をゲームや教育、生産性、マインドフルネスなどに使えるインターラクティブなエクスペリエンスに変えることで、乗車体験に革命を起こすことをミッションとしている。例えば2019年のハロウィンの時期に、Holorideは飛び出してくるモンスターやライダーに課すタスクなどで、「Bride of Frankenstein(フランケンシュタインの花嫁)」の恐ろしい世界に乗客をどっぷりと浸からせるためにFord、Universal Picturesとタグを組んだ

ヴォルニー氏は、Holorideが常に次のステップに目を向けてきたと話したが、プロダクトはまだ市場投入されていない。同氏は、将来は自動走行車両が行き交い、みんなが乗客という未来のクルマの未来のテックスタックの重要な要素を構築したいと考えている。

「自動車メーカーはいつもクルマを購入する人やドライバーにフォーカスしていますが、乗客に対してはそれほどではありません。乗客はHolorideが真にフォーカスしたい人たちです。我々はあらゆる車両を動くテーマパークに変えたいのです」とヴォルニー氏は話した。

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Holoride資金調達自動車

画像クレジット:holoride

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

Spotifyが車載用エンターテインメントシステム「Car Thing」を米国内でリリース

Spotify(スポティファイ)は米国時間4月13日朝、Spotify Premium加入者を対象とした初となるハードウェアデバイス「Car Thing」の米国内限定リリースを正式に発表した。なんと無料(送料のみ請求)で提供されるこの奇妙な名前のデバイスは、2019年に初めてテストが開始されて以来大幅に進化しているようだ。アップグレードされた今回のモデルには、タッチスクリーン、ナビゲーション用の大きくてつかみやすいダイヤル、音声コントロール機能の他、モバイルデバイスのSpotifyと同様に、お気に入りの音楽やポッドキャスト、プレイリストのための4つのプリセットボタンが上部に搭載されている。

関連記事:Spotifyが車載ハードウェア「Car Thing」をテストへ

同社によると、車内でも「よりシームレス」でパーソナライズされたリスニング体験を味わいたいというユーザーのニーズに応えることがCar Thingの目的だという。現在多くの自動車がApple CarPlayやAndroid Autoに対応しているが、実際には米国における自動車の平均使用年数は11年、自動車の平均寿命は18年であると同社は指摘している。つまり、最新の車載インフォテイメントシステムに対応していないクルマがまだ大量に走っているということだ。

Car Thingはこういった市場に対応するために誕生したわけである。また、Spotifyが車内のユーザーとより直接的な関係を築くことで将来的なビジネスモデルを検討する機会にもなると思われるが、同社は現時点では長期的な目標について言及していない。

画像クレジット:Spotify

新Car Thingは軽量(96g)で薄型(11.7×6.4×1.8cm)の音楽&ポッドキャストプレイヤーで、音声コントロール、ダイヤル、ボタン、タッチスクリーンディスプレイを組み合わせてメニューを操作し、聴きたいメディアを選択することができる。デバイスの設定は、普段カーステレオと携帯電話を接続して音楽を再生するのと同じ方法で、Bluetooth、AUXまたはUSBケーブルのいずれかを使用することが可能だ。

また、カーチャージャーとUSB-Cケーブルに加えて3種類のダッシュボードマウントとベントマウントが付属しているため、さまざまな方法でCar Thingをダッシュボードに取り付けることができる。

画像クレジット:Spotify

Car Thingの起動時にはクイックツアーが始まり、スタート方法を説明してくれる。ユーザーインターフェースはSpotifyのモバイルアプリと似ているため、初めてでもすぐに慣れることができるだろう。タップ、スワイプ、音声を使って画面を操作でき、またダイヤルを使えばすばやく曲を選ぶことができるため、車の内蔵ステレオのダイヤルに慣れている人にとってはより快適に感じるかもしれない。

本体上部には4つのプリセットボタンがあり、お気に入りのコンテンツを保存して簡単にアクセスすることが可能だ。デフォルトでは自分の「お気に入りの曲」、Spotifyの「Daily Drive(毎日のドライブ)」「Morning Commute(通勤時の1曲)」のプレイリストが設定されており、最後のプリセットは空になっている。そのままにしておくユーザーも多いかもしれないが、これはいつでも変更することができるという。

画像クレジット:Spotify

このデバイスのリリースに先立ち、Spotifyは「Hey Spotify」という音声コマンドのサポートを密かに開始しているが、Car Thingにもこれが活用されている。曲、アルバム、アーティスト、プレイリスト、放送局、ポッドキャストなどのリクエストをSpotifyに声で直接伝えると、Car Thingが上部にある4つのマイクでそれを「聞く」。(4つあるのは、音楽を爆音で流していたり窓を開けていたりして車内が騒がしくてもCar Thingが反応できるようにするためだという)。

関連記事:すでに利用可能なモバイルの「Hey Spotify」音声コマンド機能公開についてSpotifyは沈黙

モバイルデバイスでは「Hey Spotify」の使用は任意で、アプリの設定からオフにすることが可能だが、当然Car Thingではよりスマートで、より安全性を重視した音声コントロールの使用が必要とされている。画面やダイヤルを触る代わりに声で指令を伝えることができ、おそらく子どもたちが後部座席から選択肢を叫んでも大丈夫だろう。

画像クレジット:Spotify

Spotifyは音声データの使用に関するポリシーとして、ユーザーが話した内容の録音とトランスクリプト、およびユーザーに返されたコンテンツに関する情報を収集し、機能を改善するためにデータを使用することがあると説明している。同社は音声データ以外の情報は、モバイルアプリですでに収集している以上のものが新たに収集されることはないと説明しているが、Car ThingによってSpotifyは通勤時や長時間のドライブ中に人々が何を聴いているかをより直接的に知ることができ、それが将来の製品やプログラムプレイリスト、その他の機能に反映される可能性は大いにあるだろう。

「通常の1年間において、アメリカ人は合計で700億時間以上を車の中で過ごしており、現在アメリカの道路には2億5000万台の車が走っています」。Spotifyのグローバルカルチャー&トレンド部門の責任者であるShanon Cook(シャノン・クック)氏は説明する。「非常に多くの時間を路上で過ごしていることになりますね。だからこそ、車内での時間を乗り切るために何をするか、何を聴くのかというのは非常な重要な情報です」。

この限定リリース期間中、Car Thingは無料で提供され、選ばれたユーザーは送料のみを支払うことになる。これはCar Thingがまだ実験段階であるという理由からだという。

「これはSpotifyにとって初めてのハードウェアであり、当然成功させたいと考えています。最初に多くのことを知っておきたいため、この始め方が自然だと感じています」とSpotifyのハードウェア製品責任者であるAndreas Cedborg(アンドレアス・セドボーグ)氏は伝えている。

画像クレジット:Spotify

Spotifyによると、同デバイスの現在の小売価格は80ドル(約8700円)となっているが、いつ販売を開始できるか、または実際に発売されるかもわかっていないという。ただしソフトウェアのアップデートを行うことは可能なため、Spotifyがいつか別の方向に進むことになっても、少なくともデバイスがすぐに使えなくなることはない。

今回ハードウェア製造に挑戦したSpotifyだが、ハードウェア企業になることを目指しているわけではないと同社は強調している。どちらかというと、Spotifyは車内に特化した体験を提供することで、次のSiriusXMになることを考えているようにも受け取れる(ダッシュボードに物理的にCar Thingを取り付けなければならないため、SiriusXMよりは付加的ではあるが)。長期的に見ると、自動車が年々スマートになり、インフォテインメントシステムが標準化されていく中で、Car Thingの製品ラインを開発することに大きな意味があるかは分からない。

Car Thingはスマートフォンを持つ米国のSpotify Premium加入者を対象に、carthing.spotify.comを通じて招待制で提供される予定だ。同社は出荷台数については明らかにしていないため、興味のある読者は早めにウェイティングリストに登録することをおすすめする。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Spotify自動車音楽ストリーミングアメリカ

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

半導体チップ不足によりGMがさら多くの工場を操業停止に

General Motors (ゼネラルモーターズ)は、インフォテインメント、パワーステアリング、ブレーキシステムなど、自動車で無数の動作を制御するために使用される半導体チップが引き続き不足しているため、より多くの工場を休止させることにした。すでに操業停止となっている北米の他の施設でも閉鎖を延長している。

GMは米国時間4月8日、8つの組立工場が一時的に閉鎖されていることを明らかにした。この一時的な工場閉鎖については、CNBCが最初に報じている。TechCrunchが問い合わせたところ、GMはこの閉鎖を認め、ミズーリ州のウェンツビル組立工場では来週から生産を再開する予定だと付け加えた。

「GMは、利用可能なすべての半導体を活用して、フルサイズトラックやSUVなど、最も人気があり需要の高い製品の製造・出荷をお客様に向けて続けています」と、広報担当者は電子メールに書いている。「私たちは、これらの工場で失われた生産量を可能な限り補うことに力を尽くしています」。

世界的な半導体チップ不足が長引く中、GMやフォードなどの自動車メーカーは工場を休止し、SUVのような利益率の高いクルマの生産にリソースを振り分けざるを得ないでいる。GMによれば、フルサイズトラックやフルサイズSUVの工場では、チップ不足による操業停止やシフト削減は行っていないという。また、自動車メーカーは、特定の部品を使わずにクルマを製造する方策も取るようになっている。例えば、GMは2021年3月、一部のピックアップトラックに、最大限の燃費向上を可能にするフューエルマネジメントモジュールを装着せずに生産すると発表した。

自動車メーカー各社は、この部品不足が2021年の業績にどのような影響を与えるかについてのガイダンスを発表している。フォードは、半導体不足のシナリオが2021年上半期まで延長された場合、コスト回収や下半期における一部の生産補填を差し引いても、10億ドル(約1093億円)から25億ドル(約2732億円)の収益減少になる可能性があると述べている。

GMは2021年2月、半導体の世界的な供給不足により、2021年の生産、収益、キャッシュフローに短期的な影響が出ると発表した。

Cadillac(キャデラック)XT5とキャデラックXT6、GMC Acadia(アカディア)を製造しているGMのテネシー州スプリングヒル組立工場は、4月12日から2週間にわたって操業を停止する予定だ。GMは4月19日から始まる週に、メキシコのラモス組立工場におけるChevrolet Blazer(シボレー・ブレイザー)の生産と、ミシガン州ランシングデルタタウンシップ組立工場でのChevrolet Traverse(シボレー・トラバース)およびBuick Enclave(ビュイック・エンクレーブ)の生産ラインを一時的に停止する。

GMはまた、ミシガン州ランシンググランドリバー組立工場の休業を4月26日の週まで延長した。キャデラックCT4とキャデラックCT5およびChevrolet Camaro(シボレー・カマロ)を生産しているこの工場は、3月15日から操業を停止している。

同自動車メーカーは、カナダのCAMI組立工場と、Chevrolet Malibu(シボレー・マリブ)やキャデラックXT4を生産しているカンザス州フェアファックス組立工場の操業停止を5月10日まで延長すると発表した。GMによると、両工場とも2月8日の週から停止しているという。

韓国にあるGMの富平2組立工場は2月8日から生産量を半分に減らしており、ブラジルのグラヴァタイ工場では4月と5月の間は休業期間となっている。

関連記事:フォードが世界的なチップ不足を理由に特定の部品を使わずにF-150トラックを生産

カテゴリー:モビリティ
タグ:GM半導体自動車Ford

画像クレジット:GM

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォードが同社全体のデジタルトランスフォーメーション推進のためGoogle Cloud採用

Google(グーグル)とFord(フォード)は米国時間2月1日、2023年からFordとLincoln(リンカーン)ブランドの新型車にAndroid Automotive(アンドロイド・オートモーティブ)を搭載することを中心とした新たなパートナーシップを発表した。しかし、同時に両社は、Fordが優先的なクラウドプロバイダーとしてGoogle Cloud(グーグル・クラウド)を選択したことも発表した。

「Google Cloudによって、Fordはフロントオフィスから車両、製造工場の現場まで、デジタル変革を進めることになるでしょう」と、Google CloudのThomas Kurian(トーマス・クリアン)CEOは同日の記者会見で語った。「これによって、製品開発の現代化、製造・サプライチェーン管理の改善、従業員教育へのコンピュータビジョンAIの活用、組立ラインにおける機器の検査など、さまざまな応用が可能になります」。

GoogleとFordは、整備リクエストや下取りアラートのような機能を通じて、Fordのデータを収益化する新たな方法を模索していることも、クリアン氏は言及した。

「Fordは社内に世界クラスのデータインサイトとアナリティクスチームを持っています」と、Fordの戦略・パートナーシップ担当副社長であるDavid McClelland(デイビッド・マクレランド)氏は語った。「ソフトウェアの専門知識が豊富な人材を採用しており、この分野では大きな進歩を遂げています。そして、新しい自動運転事業の商業化に向けて急速に動いています。トーマス(・クリアン)と私が本日発表するこのニュースで、私たちはそのすべてにターボを効かせて加速化していきます」。

マクレランド氏は、Googleが「クラウド、Android、マップ、その他多くの分野を含め、同社のすべてを提供してくれた」と強調している。FordがGoogle CloudのAIツールを活用することも視野に入れているのは、この分野におけるGoogleの専門知識を考えれば当然のことだろう。この取り組みは、実際にクルマの運転に留まらず、Fordの製品開発、製造、サプライチェーンの近代化、Fordの工場における予知保全などにもおよぶ。

他の自動車メーカーと同様にFordもまた、収集したデータを利用して、クルマの購入時や整備のために時折(たぶん)ディーラーを訪れる体験を超えたドライバーとのつながりを作り出す方法を模索している。そのためには、顧客を理解し、パーソナライズされた体験を提供できる必要がある。

今回の発表は、Fordにとって多少の方向転換を意味する。これまでFordは、自動車業界におけるGoogleの役割を最小限に抑えるという明確な目標を持って、他の自動車メーカーと連合していたからだ。それからほんの数年後、今やFordとGoogleは自動車業界で最も深い絆で結ばれたパートナーとなった。

少し前には、FordがMicrosoft(マイクロソフト)と深いパートナーシップを結び、Fordの「Sync(シンク)」と呼ばれる車載情報技術を共同で開発していたことも、触れておくべきだろう。

「最初にベルトコンベアを導入した動く組み立てラインから、最新の運転支援技術に至るまで、Fordは約120年にわたり自動車業界のイノベーションを先導してきました」と、GoogleとAlphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は語った。「GoogleのAI、データ分析、コンピューティング、クラウドプラットフォームを最大限に活用できるパートナーを組めることを誇りに思います。これによってFordのビジネス変革と、人々が道路で安全につながることができる自動車技術の構築を支援していきます」。

関連記事:Fordがグーグルと提携、同社とリンカーンの全車両にAndroid Automotive OS搭載

カテゴリー:モビリティ
タグ:FordGoogleGoogle Cloud自動車

画像クレジット:Sean Gallup/Getty Images / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「クルマのインターネット」とは?ドライバーのためのIoTについて考える

現在では何十億台ものデバイスがIoT(モノのインターネット)に接続されているが、研究者は今後10年間で驚異的な成長を遂げると予測している

IoTの中で、最もエキサイティングでチャレンジング、そして利益を生む可能性のある分野の1つが自動車だ。クルマはほとんどの人にとって日常生活の主要な構成要素であり、「スマートカー」は人々の時間とお金を節約する多くのことができるようになる可能性がある。

一方で、「クルマのインターネット(IoC)」は、広告ノイズの増加やセキュリティ上の脅威といったディストピア的な未来像も想像させる。インターネットと一体化されたクルマには、どのようなことが予想されるか(良いことも悪いことも)、そして未来のクルマを正しい方向に走らせるために、消費者は自分自身をどのように教育できるか、少し考えてみる価値がある。

コネクテッドカーの可能性と問題

たとえばもしあなたのクルマが、エンジンにトラブルの兆候が表れたら、オーナーが知らないうちに自動的に整備士に連絡が入ると想像してほしい。連絡を受けた整備士は、エンジンから送られてきたデータリポートを読み取り、必要な部品を前もって注文できると想像してほしい。それらのデータが集計されると、自動車会社には大量リコールの必要性を警告できると想像してほしい。道路が渋滞する時、あなたが乗っているクルマは周囲のクルマと通信し、クルマ同士が協力してルートを選ぶことで、渋滞が緩和されるとしたら、どうだろう?もし、あなたのクルマが駐車場やドライブスルーで自動的に支払いをすることができたら?

クルマを所有している人なら、誰もが上に挙げたような問題をよくご存じだろう。これらの摩擦を解消する新しいシステムの展望は、歓迎すべき開発となるに違いない。

しかし、スマートカーから新たに得られるこれらのデータを、セキュリティとプライバシーを確実に守りながら、適切に処理するためにはどうすればいいだろう?各自動車会社は早急に自社製品をオンライン化しようと動き出しており、クルマのインターネットを実現するため、まずは巨大テクノロジー企業の力を借りることになりそうだ。このことは、自分のデータを覗き見されたり売られたりすることに嫌気がさしている消費者にとって、懸念材料になるかもしれない。大手テック企業は、本質的に悪ではないが、その基本的なビジネスモデルの構造では、消費者のプライバシーとセキュリティの保護は最優先事項にはなっていない。

「クルマのインターネット」がより暗い方向に進むことを、想像するのは難しくない。フロントガラスには位置情報を元に更新される広告が表示され、中央のサーバーに保存さた個人の走行履歴や運転の癖は、無数の脆弱性を悪用するハッカーの脅威に常にさらされるなどなど。新たな問題に気を病むことなく、我々の生活を便利に快適にするためには、どのようにクルマをオンライン化すればよいのだろうか?

データセキュリティをIoCの基本とする

当然ながら、巨大テック企業は喜んでドライバーにコネクティビティを提供したがるだろう。だが、それは巨大テック企業のサーバーに個人データを渡すという代償と引き換えになる可能性が高い。これには例のごとく、2つの大きな問題がつきまとう。1つ目は、データの一元化がハッカーの標的になるということだ。どんなに強固なセキュリティシステムであっても、ハッカーは一度突破すればすべての情報にアクセスできることを理解している。第2の問題は、すべてのデータの価値が、そのオーナーにとって無視できないほど、金儲けの道具に利用されるということだ。匿名化を約束するとは言いながらも、データは常に売られてしまうものだ。

IoTは、我々の生活の中にIT統合の新たなレイヤーを形成する。これは少なくともインターネットそれ自体と同じくらい、我々の生活を変えることになるだろう。スマートフォンの普及によって進化を遂げたモバイルインターネットでさえ、これまでインターネットには基本的に画面やキーボード、マウスといった粗野なインターフェイスが使われてきた。IoTは、どこでどのようなインターフェイスを使うかということに、新たなレベルの洗練をもたらす。だが、それは我々の物理的な現実に対する新たなレベルの侵入を意味する。クルマの場合、この新たな発展によって起こりうる問題を我々が警戒するのは当然のことだ。しかし、その必要はない。

分散型台帳技術(DLT)は、接続されたデバイスの基盤にデータのセキュリティとプライバシーを構築するため、クルマのインターネットに向けた道筋を示すと考えられる。DLTはどんなモデルにも、データはコンピュータとサーバーの分散化されたネットワーク上で運ばれるという基本的な概念が含まれている。また、データは永久に保存され、データの新しいエントリーは数学的な検証の対象となる。DLTは大量のデータを扱う方法として、中央集中管理型とは根本的にまったく異なる。DLTは攻撃に対して非常に強いことが証明されており、これらのネットワーク上に分散するデータを収集して売ることはほぼ不可能だ。

仕事に適したツールを選ぶ

現在すでにインターネットに接続されたクルマは何百万台も公道を走っているが、そのほとんどは音楽ストリーミングや天気情報のような素朴なサービスを提供するだけのものだ。だが、今後はさらなる進化にともない、コネクティビティの利用分野は大幅に拡がることが予想される。公道を走る一般的なクルマには、最大で200個ほどのセンサーが搭載され、それぞれが1種類のデータを分刻みで記録する。その総量はあっという間に膨大なものになり、緊急時には高速なデータ処理の必要性が明らかになるだろう。

たとえば高速道路を中程度の交通量で走行しているとしよう。数百メートル先で誰かのタイヤがパンクすると、その情報はすぐに周囲の車両に伝わり、それらのドライバーに急ブレーキの必要性をあらかじめ警告することができる。DLTソリューションには、これらすべての新しい情報パケットを、瞬時にネットワークに取り込み、搬送するために、非常に敏捷な検証プロセスが必要になる。

さらに計算が複雑になるため、今日ではほとんどすべてのDLT が、ネットワークに新たなデータ処理の要求が入る度に料金を請求している。

実際に、この料金は多くの計算モデルの構造に不可欠なものとなっている。しかしこれは、毎日何十億もの「トランザクション」が発生する都市交通のようなシステムでは、明らかにうまく機能しそうもない。分散型データネットワークは、このような大規模なユースケースのシナリオを扱うように設計されていなかったというのが実情だ。たとえばブロックチェーンは、ネットワーク内の検閲耐性において非常に洗練されており、これは特定の金融分野のユースケースにおいて価値があることが証明されている。

しかし、クルマのエアコンが出力を報告するたびに小額のお金を請求するようなDLTは、そのような用途には使えない。高いレベルのセキュリティとリアルタイムの接続性を実現するDLTには、無料で使えることも求められるだろう。

「クルマのインターネット」をバックアップするネットワークには、セキュリティ、スピードそして無課金による採用しやすさという3つが重要なポイントとなる。DLTが最も安全なオプションであることは明らかだが、それに加えて、スケーラビリティと無課金で利用できる構造が提供できなければならない。

駐車場を利用した際に自動で料金の支払いができるという一例は、陳腐な便利さのように思えるかもしれないが、実際には、このような小さなトランザクションを最初から適切に実装することができれば、クルマの交通データ環境における複雑さと膨大さを解決するために我々が越えるハードルは、安全で消費者に優しいIoT全般の実現に、大きな役割を果たすだろう。

完全に接続された物理環境を考えると、それに取って代わるものとして、拡張性が高く料金のかからないDLTが実現すれば、率直に言って最高だ。

【Japan編集部】著者のMathew Yarger(マシュー・ヤーガー)氏は、IOTA Foundationのモビリティおよび自動車部門の責任者。分散型台帳技術をベースにしたイノベーションによるデータ利用の戦略とソリューションを開発している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:IoT自動車

画像クレジット:Viaframe / Getty Images

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(文:Mathew Yarger、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

モビリティ市場のニッチ、車両を自宅まで届けてくれるレンタカー事業のKyteが約9.2億円調達

2年以上前、Ludwig Schoenack(ルートヴィヒ・シェーナック)氏、Nikolaus Volk(ニコラウス・ヴォルク)氏、Francesco Wiedemann(フランチェスコ・ヴィーデマン)氏の3人は、米国のほとんどの都市部で利用可能なスクーターサービス、ライドハイリングアプリ、公共交通機関、カーシェアリングといった選択肢の数々に注目し、モビリティ市場にニッチがあることを発見した。

自家用車を所有したくはないが、数日から数週間ほどクルマが必要な消費者には「空港や市街地の郊外によくあるレンタカーセンターに向かう」「カーシェアリングプラットフォームを利用する」という2つの選択肢がある。3人の友人同士(全員がドイツからの移民でサンフランシスコで出会った)は、BMW、McKinsey(マッキンゼー)、Uber(ウーバー)に関する専門知識を結集し、多数の車両を所有して維持するというコストのかかるビジネスをすることなく、新しい種類のレンタカー体験を創造するためにKyte(カイト)を立ち上げることを決めた。

Kyteは、ユーザーがアプリやウェブサイトを通じて車両をレンタルできる車両物流プラットフォームを構築した。都心のハブに配置された車両は、ギグエコノミーの労働者が借り手の自宅まで届けてくれる。Kyteは車両のピックアップと給油も無料で行う。

「私たちは、人々がクルマを所有するのは、ドアを開けたらすぐの場所にクルマがほしいからだと考えています。だから、そこまでクルマを持って行ってあげればいいと思いました」。

シェーナック氏は最近のインタビューでそう語っている。

Kyteは多くの車両を管理するレンタカー会社などの企業と提携しており、このスタートアップ企業は消費者とテクノロジーに焦点を絞ることができる。

2018年後半に創業しボストン、ロサンゼルス、サンフランシスコで事業を展開している同社は、投資家の注目を集めている。

Kyteは米国時間1月5日、DN Capital(DNキャピタル)とAmplo VC(アンプロVC)から900万ドル(約9億2000万円)の資金調達を行ったと発表した。モビリティ業界の個人投資家も多数参加しており、その中には元Uber幹部のEd Baker(エド・ベーカー)氏、Jörg Heilig(ヨルグ・ハイリグ)氏、Josh Mohrer(ジョシュ・モーラー)氏、William Barnes(ウイリアム・バーンズ)氏をはじめ、Lime(ライム)の共同創業者Toby Sun(トビー・サン)氏、Kayak(カヤック)とTravelocity(トラベロシティ)の共同創業者Terry Jones(テリー・ジョーンズ)氏などが含まれる。

今回調達された資金は、ワシントンD.C.から始まったKyteの市場拡大のためにすでに活用されている。

画像クレジット:Kyte

Kyteの創設者達はその収益について、月々「6桁は確実」ということ以外、開示しようとしなかった。シェーナック氏は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が広まる中、より多くの人々がクルマに乗るようになった2020年3月から、Kyteの月次収益が400%成長したことを加えた。

「新型コロナウイルスが流行する前から、我々はクルマとの関わり方を変える必要があることは明らかでした」と、シェーナック氏は述べている。新型コロナウイルスが多くの人々を空の旅から遠ざけてしまったため、代わりにKyteのような代替品を試してみようと思う人が増えている。

このような急成長にもかかわらず、シェーナック氏によると、Kyteの予約は半分以上が定期的に利用するユーザーからのものだという。

Kyteはまた、クライアント(シェーナック氏は国内最大手のレンタカー会社としか表現しようとしなかったが)が意欲的で熱心であることも発見した。そのレンタカー会社が抱える車両を、Kyteは消費者の手に渡す手助けとなるからだ。レンタカー会社は、営業所の多くが空港にあるため、新型コロナウイルスによって大打撃を受けた。これらの企業には、収益を生み出すことがなかった数百万ドル(数億円)分の減価償却資産が残されていた。

DNキャピタルの共同創業者で取締役社長のSteve Schlenker(スティーブ・シュレンカー)氏は、Kyteがモビリティの未来を担う中核的なビルディングブロックになると考えている。

「新型コロナウイルス感染流行の影響で、都市や消費者行動の交通機関に関する変革が加速しています」と、シュレンカー氏はいう。「Kyteの独自のオペレーションレイヤーは、他のソリューションでは対応できないレベルのサービスと利便性を提供しながら、この変革を促進させます」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Kyte資金調達自動車

画像クレジット:Kyte

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(翻訳:TechCrunch Japan)

自動車修理業者の業務をデジタル化するAutoLeap、顧客との関係性「修復」を支援

自動車修理工場に行くのが好きな人はいないだろう。クルマを預けた後に何が起こるかのか、透明性はほとんどなく、請求書は大抵の場合、読みにくい箇条書きの連続に過ぎない。まるで混沌とした試練のように感じられることがある。

トロントを拠点とするスタートアップ企業のAutoLeap(オートリープ)は、6カ月前に設立されたばかりだが、9月にはひっそりとシードファンディングで500万ドル(約5.2億円)の資金を調達した。このチームは、自動車修理工場をようやく21世紀に持ち込むことで、この崩壊した経験を修復する方法が見つけ出せると考えている。彼らの大きなアイデアは、自動車修理業者が業務を整理し、仕事のスケジュールを立て、部品を注文し、デジタル検査を実施し、透明でシームレスな方法で顧客に請求書を発行するのを支援するというものだ。

自動車修理のプロセスを近代化しようしたのは、彼らが初めてではない。他のスタートアップ企業の中では、シアトルを拠点とする5年前に設立されたWrench(レンチ)が、その目的に向けて既に4000万ドル(41.4億円)の資金を調達(GeekWire記事)している。2年前にLAで創業した自動車修理・整備サービス業のRepairSmith(リペアスミス)は、ダイムラー社から支援を受けている。

だが、世界の自動車修理市場は現在7000億ドル(約72.5兆円)と評価されており、まだ新たな企業とアプローチの参入する余地があることは明らかだ。そしてAutoLeapにはいくつか有利な点がある。

まず第一に、有益なコネクションのある投資家ベースを持っていることが挙げられる。AutoLeapのシードラウンドを主導したThreshold Venturesは、10月に逆さ合併で株式公開(Insurance Journal記事)した自動車販売プラットフォームのShift(シフト)への投資を含め、自動車業界とのつながりを持っている。

他にもMaple VC、Liquid2 Ventures、Global Founders Capital、Codename Venturesなどのベンチャー投資家が投資しているが、AutoLeapはさらに、自動車業界に影響力を持つ何人かの著名人からも支援を受けている。Shiftの共同創業者George Arison(ジョージ・アリソン)氏、元ゼネラルモーターズCEOのRick Wagoner(リック・ワゴナー)氏、元ブリヂストン上級幹部のNed Aguilar(ネッド・アギラール)氏などだ。

さらに重要なのは、AutoLeapの創業者たちが以前にも一緒に、退屈な事業に活気を取り戻すために働いていた経験があるということだ。AutoLeapを立ち上げる前、共同CEOのRameez Ansari(ラミーズ・アンサリ)氏とSteve Lau(スティーブ・ラウ)氏は、スモールビジネスの経営を支援するSaaS企業、FieldEdge(フィールドエッジ)の共同CEOとして4年間を過ごした。

トロント大学で出会った大学時代の友人である2人が、この会社を立ち上げたわけではない。ラウ氏がウォートンで、アンサリ氏がスタンフォードで、それぞれMBAを取得した後、2人はいわゆるサーチファンド(個人投資家から支援を受けたチームが会社を探して買収し、一定期間それを経営した後、売却してさらに多くの利益を得るという仕組み)を利用して放置されていたビジネスを買収し、成長させるために力を合わせた。

それは関係者全員にとって生産的な経験だった。ソフトウェアがすでに30年前から存在していたFieldEdgeを2000万ドル(約20.7億円)で買収した後、ラウ氏とアンサリ氏は同社の製品を劇的に改善したため「この会社が従来の製品で得ていた金額の7倍も請求することができるようになった」とラウ氏は言っている。

その後、彼らは2018年に投資会業のAdvent(アドヴェント)に、会社を「1億ドル(約103.5億円)より多い金額」で売却(Adventリリース)したとラウ氏。

それは堅実な退陣だった。その2000万ドル(約2070億円)の投資を差し引いても、チームはFieldEdgeの売却益のうち30%を得て、残りはサーチファンドの投資家に回った。

それでもラウ氏によると、「資金調達に夢中になった」ライバルのServiceTitan(サービスタイタン)がいなかったら、彼とアンサリ氏は続けていたかもしれないという。7年前に設立された同社は、投資家から合計4億ドル(約414億円)を調達している。

ServiceTitan の膨大な軍資金と「これが私たちにとって最初の退陣になる」ことを考え、「私たちは撤退しました」とラウ氏は語る。

今日では、ラウ氏もアンサリ氏も、このシナリオをAutoLeapで繰り返したくないと考えている。実際、ラウ氏によると、同社はシード資金を確保した今、「頭を下げて」おり、投資家との話し合いは「一切していない」とのことだが、この状況が変わるまでにはそう時間は掛からないと想像する向きもある。

投資家が資金を提供するのは、紙のチラシやぼろぼろになったファックス機や請求書の山をなくすことを目的とした、急成長中のソフトウェアプラットフォームだ。そのためには修理業者にこのソフトウェアを十分に時間を掛けて試すように説得しなければならない。

だが、そうなるのは当然のことだとラウ氏は認めている。「それはオンボーディングに向けた取り組みになります。なぜなら、それが彼らのビジネスの生命線になるからです」とラウ氏は述べた。AutoLeapの販売プロセスでは、修理業者に既存のデータを共有させ、時間を掛けてその使い方を学ぶように説得しなければならない。

その説得力がラウ氏にあることは明らかだ。同氏によると、新規顧客がオンボーディングするまでの期間は1~2週間で、「顧客が価値を見出し始めると、『ああ』という瞬間が訪れる」とのこと。実際、AutoLeapはトロントの数店舗、ラスベガスの1店舗、ボストンの1店舗など、すでにいくつかの業者と提携しているという。

同社の拡大計画について、ラウ氏によると、シード資金の一部はデジタルマーケティングに使われる予定だが、口コミにも大きく依存しているという。修理業者の工場は一部の地理的なエリアに集中していることが多く、これがAutoLeapの迅速な普及を可能にすると彼は考えている。

その仮定を裏付ける「多くのデータ」はありません、とラウ氏は言う。しかし、AutoLeapがこのままやり方を貫けば、普及するまで長い時間は掛からないだろう。

写真はAutoLeapの共同CEOのラミーズ・アンサリ氏(左)とスティーブ・ラウ氏(右)。新型コロナウイルス流行のため、ラウ氏自らフォトショップで合成したものを提供してくれた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:資金調達、自動車

画像クレジット:AutoLeap

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(翻訳:TechCrunch Japan)

マイクロモビリティで脱・自動車を目指す欧州4都市

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、欧州全域で都市の変革を促す触媒の役割を果たしている。市当局が、市民の健康を危険にさらすことなく、あるいは過剰な交通量により渋滞を招くことなく、いかにして都市の機動性を管理するかに力を注いでいるためだ。

いくつかのケースで都市再生のための短期的および長期的な解決策になると見られているのが、マイクロモビリティとローカルコマース(地元経済)だ。この記事では、歩道や自転車専用レーンについて、さまざまなペースで見直しや再生に取り組む4つの大都市(パリ、バルセロナ、ロンドン、ミラノ)の政策を紹介する。

パリの「15分シティ」構想

パリでは毎年、大気汚染のために約2500人が天寿をまっとうすることなく亡くなっている。ヨーロッパのほとんどの都市と同様に、公害の最大の原因は自動車の交通量にある。

過去20年間にわたり一貫した政策が施行された結果、大気汚染は徐々に軽減されてきた。これは長くて険しい道のりであり、その一歩一歩がまた新たな課題を生んでいる。

この20年間にパリ市長を務めたのは、Bertrand Delanoë(ベルトラン・ドラノエ)氏Anne Hidalgo(アンヌ・イダルゴ)氏の2人のみだ。つまり、その長い任期によってもたらされたいくつかの変革と長期的な構想が論議を呼んでいる。

パリ市当局と自動車との間には、長い対立の歴史がある。20年近く前、バス専用レーンの設置は他の車のスペースを減らすとして、大きな議論を呼んだ。今日では、そのレーンの撤去を求める者はいない。

そのため、同じことが何度も繰り返されているのは、少し皮肉な話だ。例えば、パリのアンヌ・イダルゴ市長は2016年にセーヌ川右岸からの車の通行を禁止した。この決定には、多くの政敵や自動車愛好家から批判の声が上がった。今年の初めの市政選挙では、候補者の誰一人としてセーヌ川右岸について言及しなかった。もはや論点にすらならなかったのである。

しかし、パリ市の政策は自動車の禁止だけに焦点を当てているわけではない。官民を問わず多くの取り組みが行われているパリは、欧州各都市にとってモビリティ実験場のような存在となっている。パリでの取り組みが上手くいけば、その取り組みは他の都市でも再現される可能性があるからだ。

パリがモビリティの実験に適している理由は2つある。1つ目は、人口密度が世界で29番目の大都市であることだ。19世紀後半にGeorges-Eugène Haussmann(ジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン)氏が始めたいくつかの急進的な都市化計画は、ほとんどが環状道路に並ぶ7階建ての建物という、同市の近代的な都市計画の基礎を築いた。

パリ市の境界は、100年が経過しても変わっていないため、他の大都市に比べると、比較的小さい方だ。例えば、サンフランシスコは米国の基準では小さな都市だが、面積ではパリよりも大きい。

2つ目の理由は、パリは(何事もなければ)多くの観光客を惹きつけることだ。2019年には、3800万人の観光客がパリを訪れた。これらの観光客は、普通にツーリストらしい行動をとることが多い。つまり一日中、街のあちこちを移動するのだ。

モビリティ改革の原動力「ヴェリブ」

パリ市長アンヌ・イダルゴ氏とヴェリブの自転車(画像クレジット:Loïc Venance / AFP / Getty Images)

 

地下鉄、地方鉄道、バス、路面電車などの公共交通網が発達していることに加え、他の交通手段も登場している。2005年、リヨン市は、市内に点在する駅のサービス網をベースに、公費の助成により自転車をシェアするサービスVélo’v(ヴィロヴ)を導入した。

その2年後には、パリ市がVélib’(ヴェリブ)と呼ばれる同様のサービスを導入した。ヴェリブが交通機関に与えた影響は計り知れない。サービス開始からわずか数年後、加入者は数十万人に達し、利用回数は1日あたり10万回を超えた。

欧州や米国の他の都市も後を追い、独自のバイクシェアリングサービスを導入している。しかし、ヴェリブほどの成功には至っていない。成長の過程で多少の苦悩はあったものの、ヴェリブは現在40万人以上の加入者を抱えている。2020年9月4日の時点で、同サービスの利用回数は1日あたり20万9000回にのぼる。使用されている自転車は約1万5000台だ。つまり、1日1台あたり14回近く利用されていることになる。

ヴェリブがニューヨークのCiti Bike(シティ・バイク)やロンドンのSantander Cycles(サンタンデール・サイクルズ)よりも成功している理由は、ヴェリブがはるかに安いからだ。乗り放題付きの標準的なヴェリブの会員費は月3.70ドル(約390円)だが、これに対して、ロンドンのサンタンデール・サイクルズの会員費は年間90ポンド(約1万2600円)なので、月約10ドル(約1050円)の計算になるし、ニューヨークのシティバイクは月15ドル(約1560円)だ。ヴェリブの会員費が安いことは明白である。

そして、これはすべて政治的な意図によるものである。ヴェリブは政府から助成を受けているサービスだ。しかし、ヴェリブが財政に与える影響はそう単純な話ではない。走る車が減ることは、道路の維持費を削減する。さらに、公害の低減や自転車で身体を動かすことは、市民の健康促進と、公共医療体制への負担の軽減につながる。

自転車シェアリングサービスでは、サービス網の密度を高めて利用率を高めることが重要であり、それは公的資金がなければ上手くいかない。一定規模のサービス網を整備できれば、サービス網の拡大と新規利用者の獲得という好循環を続けていくことができる。

マイクロモビリティの激戦市場

画像クレジット:Romain Dillet / TechCrunch

 

多くのスタートアップが、独自のドックなし方式自転車シェアリングサービスで、収益性の高いこの市場に参入してきた。Gobee.bike(ゴービー・バイク)、oBike(オーバイク)、Ofo(オッフォ)、Mobike(モバイク)、そして最近ではBolt(ボルト)が、パリの路上に何千台もの自転車を配備していた。しかしその後、それらはすべて閉鎖されてしまった。現在でも残っているのはLime(ライム)の子会社となったJump(ジャンプ)のみだ。

しかし、自転車は、フランスで「ソフトモビリティ」と呼ばれる交通手段の一つに過ぎない。フリーフローティング(何処にでも停められる)方式の原動機付きのスクーターサービスを運営するCityscoot(シティスクート)もフランスのスタートアップで、同社のサービスも1日に数万回利用されている。

さらに、スクーター(電動キックボード)がある。一時期、あまりにも多くのスクーターのスタートアップがあった。Bird(バード)、ボルト、Bolt Mobility(ボルトモビリティ、ウサインボルトが起業)、Circ(サーク)、Dott(ドット)、Hive(ハイブ)、ジャンプ、ライム、Tier(ティア)、Voi(ヴォイ)、Ufo(ユーエフオー)、そしてWind(ウィンド)。彼らは皆、面白い響きの名前を持っていたし、同じ名前(ボルト)を持つ2つの別会社もあった。それに、いくつかの会社を忘れているかもしれない。

画像クレジット:Romain Dillet / TechCrunch

 

このことも、パリがマイクロモビリティのスタートアップにとってやはり魅力的な都市であることを示している。観光客も多く、ある場所から別の場所への移動も簡単だ。

スクーターが都市空間を占拠していたため、パリ市行政はマーケットを規制しなければならなかった。現在パリでは、ドット、ライム、ティアの3社がシェアリング電動スクーターの運営許可を得ている。それぞれ5000台のスクーターを運営しており、現在は専用のドックが用意されている。

15分シティ構想

続いて、パリ市長アンヌ・イダルゴ氏は、変革を加速させるいくつかの意欲的な計画を表明した。同氏は、今年初めの再選に向けたキャンペーンで、キーコンセプトとなる「15分シティ」という明確な複数年計画を打ち出した。

「15分シティは、分散型都市の可能性を示す構想だ。その中心にあるのは、都市の社会的機能を融合して、活気に満ちた周辺地域を作るというコンセプトである」と、パリ第一大学教授のCarlos Moreno(カルロス・モレノ)氏はBloomberg(ブルームバーグ)に語った

モレノ氏は、居住地域、ビジネス街、商業地域は原則として別の区域に分けるべきではないと考えている。それぞれの居住区は、職場、店舗、映画館、保健所、学校、パン屋などがある小さな街であるべきだ、というのが同氏の考えだ。

この「15分シティ」というコンセプトは、二酸化炭素排出量の削減だけでなく、近隣地域の活性化にもつながる可能性を秘めている。社会機能を優先すれば、道路をどう整備すべきかという点はすぐに明らかになるだろう。

15分シティは、多くの事が集約されたコンセプトである。突然、次の10年の都市計画のための強力なブランド力を持つ明確な政治的アジェンダが登場した、ということだ。

新自由主義的に言い換えれば、多くの政策が15分シティ構想から派生していく。パリでは車の所有率は比較的低く、60%を超える世帯が車を持っていない。さらに驚くべきことに、通勤者が車を使うことは極めて稀であり、9.5%に過ぎない

ここから2つの結論が導き出される。1つ目は、自動車はもはや優先事項ではないということだ。2024年には、パリでディーゼル車を運転できなくなる。2030年にはガソリン自動車も禁止される。

いくつかの幹線道路では「ソフトモビリティ」に主眼が置かれるようになった。コロナウイルスの大流行に起因するロックダウンを機に、パリ市は新しい自転車レーンを設置したり、道路の用途を変更したりして、モビリティの課題解決を加速させた。これは、Naomi Klein(ナオミ・クライン)氏が自身の著書で説明した、新自由主義的なショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)を模倣しているように感じる。しかし同時に、行政はグリーンイニシアチブに力を入れているのだから、”逆”ショック・ドクトリンのようにも感じられる。

例えば、リヴォリ通りはかつて、シャンゼリゼとバスティーユを結ぶ幹線道路だった。現在では、道路の3分の1がバス専用、3分の2が自転車やeスクーターの専用レーンとなっている。

リヴォリ通り(画像クレジット:Romain Dillet / TechCrunch)

 

2つ目は、パリ市がスペースを再生利用しようとしているということだ。パリにある自動車は、時間にして95%が駐車されたままだ。そのため、パリ市は駐車場の50%を撤去し、代わりに、いくつかの通りを庭園に変えたいと考えている。市庁舎前や、エッフェル塔とトロカデロ広場の間に新しい公園を造るという、さらに大規模な計画もある。

何十年にもわたる漸進的な変化は、すべてが劇的な変遷の下地となっている。パリでは、変革は少しずつ進み、そして突然、その目的を達成する。

画像クレジット:Romain Dillet / TechCrunch

 

バルセロナの「スーパーブロック」計画

スペイン第2の都市であるカタルーニャ州都バルセロナは、2013年、ひどい状態の街路空間を歩行者に優しいものに変え、自家用車の優先順位を下げることを目的とした新しい都市モビリティ計画を承認した。バルセロナは欧州で最も車両密度が高く、それが大きな問題となっている。

バルセロナ市当局の報告によると、車両密度は1平方キロ当たり約6000台で、大気の質や公衆衛生に悪影響を及ぼすことが明らかになっている。公式統計によると、交通公害は年間3500人の早死に原因となっており、1800人が心肺疾患で入院している。また、成人では5100人、子供では3万1100人が気管支炎を発症し、子供と成人合せて5万4000人が喘息発作を起こしている。

この公衆衛生上の危機に対するバルセロナ市の解決策は、近年の意欲的な歩行者専用道路化計画であり、「super islands(スーパーアイランド)」や「superblocks(スーパーブロック)」としても知られる「superilles(スーペリアレス、カタルーニャ語)」を作ることに重点を置いている。これは、いくつかの道路の機能を、車を運ぶことから近隣住民の生活を第一に考えることへの転換を意味する。

バルセロナ、ポブレノウ地区の初期のスーパーブロックの1つ(画像クレジット:Toni Hermoso Pulido / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license

 

ここ何年かで、数か所にスーパーブロックが設置された。グラシア区にあるようなスーパーブロックはすっかり馴染みの風景の一部となっているため、その効果に気付きにくいが、立ち止まって意識すれば、多くの歩行者が出歩いていること、車はその後ろを忍び寄るように徐行していること、また、歩道の端が段差もなく道路に溶け込んでいることに気付くだろう。

しかし、バルセロナは現在、Ada Colau(アダ・コラウ)市長が提唱するこの政策を、さらに広範囲に拡大することを計画している。今後10年間で、密集した中心部のアシャンプラ地区にスーパーブロックを整備し、より多くの緑豊かな(そして低速の)都市空間を創出しようとするものだ。そしてこれは、同市の中心部に位置し、以前のものと比較して規模が大きいことを考慮して、バルセロナ・スーパーブロックと名付けられた。

当然ながら、スーパーブロック構想はマイクロモビリティと相性が良く、自転車レーンのネットワークを市内に構築することは、都市モビリティ計画の重要な部分となっている。

バルセロナでは2007年から、赤い自転車が目印の、Bicing(ビシング)と呼ばれるドックあり方式自転車レンタルスキームを導入している。最近になって、普通の自転車に加えて電動自転車も導入され、パリの利用回数には及ばないとはいえ、地元住民の間では非常に人気がある(ちなみに、ビシングに加入するには地元で発行された身分証明書が必要であるため、観光客は利用できない)。

公式データによると、ビシングは2020年9月の時点で12万7000人を超える加入者を獲得しており、1か月あたりの利用回数は約130万回にのぼったという。

近年はeスクーターの所有者も急増しており、公道での個人利用を禁止する法律は特にないが、レンタル会社は規制に直面している。しかし、バードからボルト、ウィンドまで、スクーターのスタートアップ各社はあきらめていない。何とかして同市に参入しようと、規制を回避する方法を模索している。

既に歩行者と自転車が車よりも優先されているバルセロナ、グラシア地区の通りに停められた1対のWind社eスクーター(画像クレジット:Natasha Lomas / TechCrunch)

 

スーパーブロック計画は、自転車やマイクロモビリティの促進のみならず、街路を、「自動車のための」通路という用途から、人々が出会い、集まり、商売することを奨励する、緑豊かで快適な空間へと転換し、地元経済を活性化させることも目的としている。

バルセロナは、別の交通規制政策として、今年に入ってから排出ガス量に基づく車両の規制を開始し、古いガソリン車やディーゼル車のピーク時間帯の進入を禁止した(この規制は、来年から配送用車両にも適用される)。また、規制対象車両の所有者には、公共交通機関を3年間無料で使えるカードと引き換えに車を手放すように奨励している(つまり、既存の地下鉄、電車、バスのネットワークを利用するように人々を誘導している)。

歴史上の過ちを正す

スーパーブロックへの変換に伴い、バルセロナの都市計画担当者が解決を目指している、建築に関する歴史上の課題がある。

1856年にカタルーニャ人の土木技術者Ildefons Cerdà(イルデフォンソ・セルダ)氏によって考案されたアシャンプラ地区中心部のグリッド構造は、成長する都市の健全な拡張を目的とし、すべての住宅ブロック内に緑地を確保できるようにしていた。

しかしこの計画は、不十分な規制の下で推進され、地価と住宅価格の上昇の煽りを受けたこともあり、時間の経過とともに開発業者や投機家が緑地用地を別の目的で使うことを許してしまった。そのため、開放された公共スペースとして用意されていたブロックの隙間が食い尽くされ、その結果、セルダ氏が計画していたよりもはるかに密集した街になってしまった。そして(ガソリン車やディーゼル車が密集している限り)、散策するには騒がしく、汚染されていて不快な場所となっている。

バルセロナのスーパーブロックは、市行政の都市計画の遂行におけるこのような歴史的過ちを正そうとする試みである。あるいは「19世紀後半のバルセロナを近代化し、公衆衛生のためにより良い状態を造り上げること」と、市当局は語る。

これはまた、都市計画が公共の利益のため確実に機能するように、私的な経済的利害による不当な外圧を抑え、住民の健康、生活の質、地元経済を守るために、計画に応じた適切な規制が必要であることの教訓にもなっている。

バルセロナのスーパーブロック計画では、2030年までにアシャンプラ区にある61の道路の約3分の1が、歩行者専用道路の「緑の軸」に転換される予定だ。また、21か所の対角交差点に新しい公共広場が作られることになっている。

市当局は、この転換には時間がかかると見ており、住民の協力を得ることが必要だと考えている。しかし、市当局には、この計画を支持するデータがある。例えば、ポブレノウ地区をはじめとするスーパーブロック成功例がいくつかあり、転換後の交差点の1つで二酸化窒素の汚染が3分の1に減少した事例や、街路レベルでの商業活動が同様に増加した事例もある。

新しい街路モデルの詳細はまだ決定されておらず、来年、同市はモデルを選ぶためのデザインコンテストを開催する予定だが、夏季には街路の80%を樹木や植生で日陰にすることや、路面の少なくとも20%を舗装ではなく透水性のあるものにするなど、重要なパラメータが設定されている。

バルセロナのスーパーブロック都市構想が描く街路の進化(画像クレジット:Barcelona City Council)

「出歩きたくなるような空間、子供の自発的な遊びや快適な生活を促すような空間を創り出す必要があります。また、フェア、コンサート、その他のイベントなど様々な臨時の用途に対応できる柔軟なスペースを設計することが求められます。女性に優しく、子どもや高齢者を優先する視点を持って、サービスや地域商業を促進します」とプレスリリース[カタルーニャ語から翻訳]には書かれている。

市当局はその目的について、「住民のことを考えて設計された、健康的で、より持続可能な公共空間のモデルにより、社会的な関係を促進して地元の商業活動を活性化させ、子供や高齢者のニーズに焦点を当てること」、と説明している。

当局はまた、スーパーブロック全体で公共交通機関を利用しやすくすることも計画している。

最初の4つの道路(コンセル・デ・セント通り、ジローナ通り、ロカフォート通り、コンテ・ボレル通り)の転換作業は、2022年の第1四半期に開始される予定である。市当局は、この転換作業のために3780万ユーロ(約47億円)を支出することをすでに決めている。しかし、完全な転換を実現するには、さらに多くの公的資金が必要なことは明らかだ。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、規模は小さいが歩行者に焦点を当てた都市改造を加速させる機会となってきた。例えば、バルセロナ市当局は、ロックダウンのせいで街が比較的静かな間に、市内の自転車レーンのネットワークを拡大し、新型コロナウイルス感染症対策として緊急歩行者ゾーンを設置して屋外のスペースを拡大した。

また、バルセロナ市内の路上駐車場の一部は、市の要請によりパンデミックの間、カフェやバーの屋外テラススペースとして代用されている。

しかし、自動車交通が独占している不健康な都市インフラをリセットする必要性は、バルセロナ市が何十年にもわたって取り組んできた問題である。これまでも、地域イベントの開催時や週末に一時的に道路を閉鎖することを許可するなど、さまざまな政策で少しずつこの問題に対処してきた。

そのため、バルセロナの多くの住民にとって、健康的で商業的に活発な都市空間を作ることは、自動車が歩行者に道路を明け渡すことであると言っても過言ではない。そして2030年の「バルセロナ・スーパーブロック」は、全体のバランスを良い方向へと変えていくように見える

とはいえ、市の中心部を横断するいくつかの高速道路に対して何の措置も講じていないため、このプロジェクトは十分に急進的ではないという批判もある。バルセロナの自動車からの脱却はまだ、パリで計画されているものほど急進的とは言えないようだ。

バルセロナ、ポブレノウ地区の自転車専用レーンとバードのeスクーター (画像クレジット:Natasha Lomas / TechCrunch London’s Low-Traffic Neighbourhoods)

ロンドンの「低交通量区域(LTN)」規制

英国の首都ロンドンは2003年以来、市の中心部で渋滞料金の徴収を行っており、最も混雑する時間帯の道路利用を減らすために、その地域に進入する自動車の運転手から料金を徴収している。この政策により、ロンドンは欧州において、都市部における車両通行規制の先駆者となった。

しかし、この問題に関する国民的、および政治的なコンセンサスの欠如により、長期にわたって政策の展開が制限され、2010年末には、当時のロンドン市長Boris Johnson(ボリス・ジョンソン)氏が西部拡張地域として知られるゾーンの一部を廃止したことで、政策の後退にさえつながった。

ロンドンの巨大な人口と無秩序に拡大した規模は、商業ゾーンがクラスター化している傾向があり、大規模な住宅地(所得によって分けられている場合が多い)から離れた場所に集中しているため、移動手段の問題は、人々や企業にとって意見が分かれる問題となるだろう。そのため、ロンドンが「自動車ゼロの街」になれないことは明らかだ。

しかし同時に、ロンドンは公共交通機関(バス、地下鉄、路面電車、市内鉄道)が非常に充実しており、車を使わなくても移動には事欠かない。自家用車を持つ必要もない。また、ここ数十年の間に、市内の自転車専用レーンのネットワークの拡充にも投資してきた。また、2010年からは、利用時払いのドックあり方式自転車の有料レンタルサービスが運営されており、2017年の時点で合計のべ1000万回利用されている。

しかしまた、車で埋め尽くされた道路と欧州北部の気候が、自転車で風雨に立ち向かおうとする人々の意欲をくじく可能性がある。

ロンドンのドックあり方式自転車レンタルサービス(画像クレジット:Elliott Brown / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license

 

さらに、英国の既存の規制も、eスクーターのような現代的な代替手段の採用を妨げてきた。しかし現在、この種のマイクロモビリティに街路を開放しようとする動きがあり、同市の交通規制当局は、スクーターのレンタル会社を対象とした試験運用の準備をしている。

車の使用を抑制するための断固とした政策の欠如は、間違いなく、数十年にわたってロンドンの空気を酷く汚染し、ひいては市民の健康に深刻な影響をもたらしてきた(2015年のある研究では、汚染に長期間さらされたことによる死亡者数は年間9500人にも上る可能性があることが示唆されている)。その一方、都市交通に関連した健康リスクに対する意識の高まりは、市当局が課徴金の適用により、有害物質を多く排出する車両が渋滞区域を通過することを抑止する政策の推進につながり、汚染レベルを低減させる効果として現れてきている

ロンドンの「超低排出ゾーン(ULEZ)」は来年、市内のより広い範囲をカバーするように拡大される予定だ。このように、都市部での車の利用をよりクリーンで無害なものにしていこうという取り組みは、一貫性が欠けてはいたものの、政府主導で多少なりとも持続的に行われてきた。

しかし、最近では、新型コロナウイルス感染症のショックが、住宅地の通り抜けを行政区や地域レベルで禁止しようとする草の根キャンペーンを誘発するという、より劇的な変化が起きている。

このような取り組みは、いわゆる低交通量区域(LTN)を適用することによって行われる。LTNの適用には、効果的に配置されたプランターや車止めポール、抜け道としての使用を防止するための時間的な通行制限など、交通量を低減するためのさまざまな措置が含まれる。

交通によって発生する騒音や汚染と隣り合わせの生活にうんざりしているロンドンのいくつかの行政区の住民たちは、新型コロナウイルス感染症に関連した移動制限を利用して、自宅近くの道路が抜け道として利用されることを抑制するチャンスをつかんだ。

Bloomberg(ブルームバーグ)によると、7月下旬の時点で、ロンドンでは114のLTNの計画が進行中である。

ここでも意見の対立はあり、LTNを適用しても、抜け道を使う車が他の道路に移動するだけではないかという苦情を含め、反対意見も上がっている。

また、相対的に裕福な地域が不釣り合いに恩恵を受け、より貧しい地域を犠牲にしているという、社会経済的に重要な批判もある。

このような反対意見は、LTNがパンデミック後、比較的迅速に実施されたことが一因で発生している可能性もある。より参加型のプロセス、および多方面にわたるモニタリングと協議を行えば、このような反対意見は回避できるかもしれない。

しかし、LTNに住んでいる幸運な人々にとっては、その恩恵を無視することは難しい。ブルームバーグは、あるLTNで見られた街路環境の変化について、「今では、スピードを出して走る車の代わりに、通りには、車から降りて近所を探索するように呼びかけるストリートチョークや壁画、花、子どものイラスト入りの看板などがある」と報じている。

新型コロナウイルス感染症緊急対策の一環として、住民のためにより多くの街路スペースを作れるよう歩行者専用化されたダリッジ地区の交差点(画像クレジット:Richard Baker / In Pictures / Getty Images)

 

5月、ロンドンのSadiq Khan(サディク・カーン)市長は、来年再選された場合、2030年までにロンドンをカーボンニュートラルにすることを公約した。また「ストリートスペース」計画を発表し「ロンドンの街路を急速に変容させて自転車の10倍の増加と 徒歩の5倍の増加に対応する」ことを目的としたさまざまな政策を推進している。

この計画では、ロンドンでの市内移動で優先される方法として、徒歩や自転車と並んでスクーターの使用が明示的に奨励されている

ロックダウン規制の緩和後も依然として新型コロナウイルス感染症のリスクが残る現在、市民がロンドンの公共交通機関から離れ、車の利用に戻ってしまうことを避けることも、この政策を推進する動機の一部となっている。

カーン市長のストリートスペース計画はまた、LTNの支援を表明している。しかし、最終的には、ロンドンの交通を制限する権限は地方自治体(または中央政府)にある。市長の権限でできるのは、ロンドン市民が「よりクリーンで持続可能な交通手段」に切り替えるよう、市民を促す措置への取り組みを政府または自治区議会に「要請する」ことだ。

LTN関連政策にロンドンの中央当局が関わっていないことは、これらの「通り抜けできない地域」がロンドンで普及する範囲と速さを制限する可能性がある。

それでもなお、この取り組みは、ロンドン市民が住宅地の街路を安らげる場所として取り戻したいと考えていることを示す、興味深い動きである。

ロンドン市長のストリートスペース計画の一環として、プランターを置いて通り抜けを防止している(画像クレジット:Photo by Richard Baker / In Pictures / Getty Images. Milan’s Open Streets)

 

ミラノの「オープンストリート」計画

イタリアの北部工業地帯は、新型コロナウイルス感染症パンデミックの第一波の間、ヨーロッパで最も被害の大きかった地域の一つだった。ロックダウンの延長により、ミラノのような都市では、企業が閉鎖されて住民が屋内に閉じこもり、数か月の間、自動車が通りから一掃された。そして、その結果、汚染されていることで悪名高い地域の大気の質が顕著に改善された。

ミラノ当局は以来、、これを、スモッグで満ちた「いつもの生活」と強制的な決別する機会と考え、Strade Aperte(ストレイド・アペルテ、オープン・ストリートの意味)と呼ばれるモビリティ計画の下で、実験的に自転車専用レーンと歩行者専用ゾーンの市全体への拡大を推進している。これは、ロックダウンが解かれて都市生活が元に戻ったときに、ソーシャルディスタンスを確保できるようにインフラを適応させることを目的としている。

オープンストリート計画には、道路標識や速度制御のための構造的要素を取り入れることにより、ミラノの多くの道路で制限速度を50km/hから30km/hに引き下げること、また、年内に既存の自転車ネットワークを35km延ばすことなどが含まれている。

ミラノ市は、2008年にドックあり方式の自転車レンタルサービス、BikeMI(バイクミー)を開始した。

ミラノは、自転車レーンのネットワークを拡大することで、ロックダウン後の自転車利用を促進しようとしている(画像クレジット:Emanuele Cremaschi / Getty Images)

 

ミラノ市当局はこの計画について、「ミラノ2020適応戦略が予見しているように、現在の健康危機は、より持続可能で汚染のない移動手段を増やし、物理的な距離要件を尊重しながら、商業、レクリエーション、文化、スポーツのために道路や公共スペースを再定義することで、人々により多くのスペースを提供し、市の環境条件を改善することを決定する機会となり得る」と、同計画に関するある覚書に書いている

推進される政策を包括的に見ると、その方向性は、パリのビジョンと同じ目標、つまり「地域のサイズ」という概念と同じだ。つまり、すべての市民が、徒歩15分以内に、ほぼすべてのサービスに確実にアクセスできる街を作る、ということだ。

住民がウイルスと共に生きることを余儀なくされている今、これは戦略的な目標である。同時に、対策のいくつかは「一時的な」ものとして策定されている。

しかし、パンデミックが今のように急速な変化を促す触媒または大義として機能する前から、市当局は都市インフラを再利用して市民に健康面での利益、および環境面での利益をもたらし、人々を車から降ろして近所を自転車や徒歩で移動させることで地域の商業 を後押しする方法を探していた。

そのため、より騒がしく、汚染を悪化させ、遊び心のない道路に逆戻りすることを望む声が上がるとは考えにくい。

ミラノでも同じことが言える。都市交通の方向性は、車が庶民を支配し道路を他の場所へのデフォルトハイウェイとすることを許すのではなく、人々と地元密着型のマイクロモビリティのために開かれた公共空間として道路の在り方を再考することにある。Addio macchina(自動車よ、さらば)。

ミランの街をスクーターで走る(画像クレジット:Mairo Cinquetti / NurPhoto / Getty Images)

 

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(翻訳:Dragonfly)