カップホルダーを車上荒らし防止デバイスに変えるKeep Technologiesのプロダクト

David Moeller(デビッド・メラー)氏は次の会社を起業するつもりはなかった。ウェブサイトバックアップスタートアップのCodeGuard(コードガード)とハードウェア企業Claw Hanging Systems(クローハンギングシステムズ)を起業したことで連続起業家としての称号をすでに勝ち得ていたからだ。

ところが、車上荒らしが相次ぐ中、メラー氏は自分のクルマを盗難から守る製品を急いで探していた。それでわかったのは、市場の車上荒らし対策製品は需要に応えていない部分があり、それを埋める製品を出せばビジネスチャンスになるということだった。

メラー氏は数年に渡ってプロトタイプと研究開発を行い、ビジネスプランを立て、Keep Technologiesという会社を創業する。このアトランタ本拠のスタートアップは、TechCrunch Startup Battlefieldで事実上のデビューを果たし、2020年秋に正式に創業した。

「最初は起業しない理由を本当に探していました」とメラー氏はいい、市場調査、特許調査、消費者調査に数カ月を費やしたあと、プロトタイプを制作したと説明する。「ちょうど会社を売却したところでしたし、起業を検討していたときは、ゴルフも本格的にやりたかったし、下の娘も生まれたばかりだったので、何か危険信号はないか、起業すべきでない理由が欲しかったのです」。

しかし、起業しない理由は見つからなかった。それどころか、車両の安全性とセキュリティを実現するスマートデバイススイート、および付随するクラウドサービスとモバイルアプリも開発してしまった。フラグシップ製品のKnightは、車両への侵入と車周辺の動きの検出器で、車内のカップホルダーに取り付けて使う。もちろん、カップホルダーもそのまま使用できる。

すでに5つのユーティリティ特許を取得し、他にも16の特許を申請中のKeep Technologyは、多くの投資家の目を惹きつけている。メラー氏は最初、自己資金でKeepを立ち上げた。以降、数多くの投資家たちから4億ドルの資金を調達している。Cloudflareの共同創業者兼CEOのMatthew Prince(マシュー・プリンス)氏、アーリーステージのテクノロジー投資企業TechOperators(テックオペレーター)の共同創業者Tom Noonan(トム・ノーナン)氏、Ellis Capital(エリスキャピタル)のBert Ellis(バート・エリス)氏、 Kenzie Lane Innovation(ケンジーレーンイノベーション)のCEO Tripp Rackley(トリップ・ラックレー)氏、Intercontinental Exchange(インターコンチネンタルエクスチェンジ)の最高情報セキュリティ責任者Jerry Perullo(ジェリー・ペルロー)氏などがKeepに投資している。

動作原理

Keep TechnologyのKnightデバイスは、車両のOBDポートに接続して使う。コードは床板の下を通って車両の中央コンソールに接続される。そこには通常、カップホルダーがある。Knightはカップホルダーに固定して使う。デバイスを回してしっかり固定するとアクティブ化される。

Knightデバイスは所有者以外の誰も取り外すことができない、とメラー氏は説明し、取り付けおよび取り外し作業中のアラーム機能に関する特許もいくつか取得していると付け加えた。Knightにはカメラが内蔵されており、180度の視界を確保できる。携帯電話にも接続可能で、パッシブ赤外線方式(PIR)およびマイクロ波センサーによって車内外の動きを検出できる。

画像クレジット:Keep Technologies

つまり、Knightは車上荒らしの犯人の動画を記録し、そのデータをクラウドに送信し、ユーザーのモバイル端末にも送ることができる。また、クルマの所有者の代わりに動画を確認して、警察に通報するという行動を取ることができるモニタリングサービスも提供している。

目的はもちろん、クルマへのいたずらやパーツの盗難を記録するだけでなく、車上荒らしを防ぐことだ。Keep製のデバイスはBluetooth経由で付属のフォブまたはユーザーのモバイルアプリと通信する。いずれにしても、所有者がドアをロックしてクルマを離れると、デバイスが自動的にアクティブ化される。

何者かがクルマに近づき車内を覗き込んだら、デバイスは抑止モードになり、LED光が点滅し甲高い警告音が鳴る。これは今日市場に出ている大音量の屋外用アラームとは異なる。光の点滅と甲高い警告音は誰かがクルマの周辺をうろついているときだけ発動され、その人が去ると止む。その人がクルマのドアを開けようとすると、最大120dbの警告音を発するブザー(メラー氏によると100人の赤ん坊が泣き叫んでいるような音)が鳴り、魚眼レンズがビデオを録画し転送する。

メラー氏によると、Knightデバイスの価格は299ドル(約3万3000円)、サブスクリプションの場合は年50ドル(約5500円)にする予定だという。本格的な監視サービスを望むユーザーには、月30ドル(約3300円)の価格設定を考えている。製品のリリースは2022年の中頃の予定だ。

Keep創業までの経緯

ジョージア工科大学で機械工学の学位を取得したメラー氏は、GEに就職し、ごく普通にプロとして仕事を始めた。GEでは中東、中国、ダラスの各支社に配属され、4年間在籍した。その後、投資銀行に転職するため仕事を辞め、ハーバードビジネススクールに入学した。起業家精神が芽生えたのはその頃だった。

メラー氏と友人はAmerican Inventorというリアリティーテレビ番組(2007年にABCで放送されたShark Tankの先行番組)に出演する。2人はThe Clawという自転車用ラックを発明し、ファイナリスト6組に残った。最終的には、The ClawをWhirlpool(ワールプール)にライセンス供与し、Lowe’s(ロウズ)、Home Depot(ホームデポ)、Amazon(アマゾン)で100万台以上を売り上げた。

メラー氏は、その夏の前半にAmerican Inventorの撮影を行い、後半は某投資銀行でインターンとして経験を積んだ。

「その夏の終わりまでには、その自転車用ラックが売れなくても、起業家になると決心しました」とメラー氏はいう。「あの経験で、大きなリスクを取ること、そしてその結果起こり得ることに対する私の考え方は大きく変わりました」。

Claw Hanging Systemsを立ち上げたメラー氏は、続いてCodeGuardを起業する。Clawの創業者は製品が番組で紹介されたときに先行予約を受けられるようにウェブサイトを立ち上げていた。ワールプールや他の会社に、この製品の需要があることを示すことが目的だった。が、このウェブサイトは、American Inventorが放映される前にクラッシュしてしまった。

数年後、メラー氏は、ウェブサイトバックアップスタートアップCodeGuardをジョージア工科大学の教授と共同で創業する。CodeGuardはTechCrunch Disrupt 2011に参加し、コンペでファイナリストに残った。その後すぐ、CodeGuardはCloudflareと提携し、2018年、Sectigoに買収された。

メラー氏はその後2年間、Sectigoに在籍していた。当時、同氏は、夜間も週末も費やして神経科学向けのハードウェアの開発を始めた。この取り組みはジョージア工科大学とMITからのスピンアウト組で構成されるNeuromatic Devicesとして会社化され、メラー氏は開発したハードウェアをこの会社から販売するようになる。

CodeGuardをSectigoに売却した頃から、メラー氏は立て続けに車上荒らしの被害に遭う。アトランタで近隣に引っ越した直後に被害に遭ったのを期に、同氏は、車上荒らしの被害を防ぐためのセキュリティデバイスまたは製品について考えるようになった。

今後の展望

画像クレジット:Keep Technologies

KeepはKnight以外にもいくつか製品を出している(製品名はチェスの駒の名前から取っているものが多い)。具体的には、カメラは内蔵していないが、クルマの周辺の動きや車内への侵入は検知できる廉価版のPawn、フロントガラスに貼り付けて使う360度の視界を提供するRookなどがある。

メラー氏によると、Knight、Pawn、Rookの3機種はKeepの初期製品に過ぎないという。同社はメラー氏を含めて11人の会社だが、例えば盗難の被害に遭うことが多いガス浄化装置(自動車の排出ガス中の有害成分を、触媒を使って低減する装置)の盗難防止デバイスなど、上記以外のセキュリティデバイスやセンサーの開発にも取り組んでいる。今後登場するアドオン製品としては、座席モニタリングセンサー、ドア / トランク / 給油口監視装置、カップ式無線充電装置、GPS追跡強化タグなどがある。

またKeepは、Lookoutと呼ばれる製品も設計している。これは、フロントガラスに取り付けて、警察官による職務質問を録画する小型パック型デバイスだ。といっても、メラー氏はこのデバイスでドライブレコーダー業界に参入しようとしているわけではない。むしろ、大手のドライブレコーダーメーカーと提携して、Lookoutを組み込んでもらうほうが可能性があると考えているようだ。

画像クレジット:Keep Technologies

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

RoboTireのタイヤ交換ロボットに米大手タイヤ小売企業が出資

RoboTire(ロボタイヤ)という会社が初めて我々の目に留まったのは、新型コロナウイルスによって世界の大半が完全に停止してしまう直前の2020年2月のことだった。当時、このデトロイトに本拠を置くスタートアップ企業は、まだごく初期の段階に過ぎなかった。

関連記事:三菱電機が提携するRoboTireのロボットは10分で4本ものタイヤを交換する

だが、それから1年半、より多くの産業が自動化の利点を取り入れようとする間に、かつてSpark Robotics(スパーク・ロボティクス)でCEOを務めていたVictor Darolfi(ビクトール・ダロルフィ)氏が設立したこの会社は、着実に良好な、そして戦略的な関心を集めてきた。同社は米国時間10月7日、750万ドル(約8億4000万円)のシリーズA資金調達を実施したことを発表した。このラウンドを主導したThe Reinalt-Thomas Corporation(ライナルト・トーマス・コーポレーション)は、Discount Tire(ディカスウント・タイヤ)やAmerica’s Tire(アメリカズ・タイヤ)を運営する大手タイヤ小売会社だが、おもしろいことに、我々が2020年ダロルフィ氏から話を聞いた際に、後者は同氏から皮肉な賛辞を受けている。

画像クレジット:RoboTire

「America’s Tireで3時間も待たされていた時に、工場でロボットを使ってタイヤ交換をすればいいんじゃないかと思いついたのです」と、ダロルフィ氏は語っていた。「サービス業にもロボットを導入してはどうだろうか」。Reinalt-Thomas社は、それを聞いていたに違いない。今回の資金調達には、他にもAutomotive Ventures(オートモーティブ・ベンチャーズ)、Detroit Venture Partners(デトロイト・ベンチャーズ・パートナーズ)、640 Oxford Ventures(640オックスフォード・ベンチャーズ)が参加した。RoboTireは、この資金をデトロイトでの事業拡大に役立てると述べている。

RoboTireが開発した基幹技術は、1セットのタイヤを15分以内に交換することができるという。Discount Tireは、この自動化技術を採用する最初の企業となる予定だ。

「Discount Tireは、より良い顧客体験をもたらす新しく革新的な技術の開発において、RoboTireを支援できることを大変うれしく思います」と、Discount Tireのチーフ・エクスペリエンス・オフィサーを務めるTom Williams(トム・ウィリアムズ)氏は、リリースで述べている。「『オンラインで購入・予約』という体験に対するお客様の期待と、待ち時間の短縮を実現する当社の能力がますます高まるにつれ、当社はすべてのお客様にとって魅力的で簡単かつ安全な体験を保証するため、自動化と改良を引き続き追求していきます」。

画像クレジット:RoboTire

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルがiPhoneでクルマの空調やシートをコントロールできる技術を開発中か

iPhoneが、電話に出たり音楽を選んだりする以外にも、クルマの中で役立つことができるようになるかもしれない。Bloombergによると、Apple(アップル)はコードネーム「IronHeart」というiPhoneを使ってクライメートシステム、ラジオ、シート、さらにはインストルメントクラスターをコントロールできるようになる技術を開発しているとのことだ。暖房の温度を上げるためだけに、CarPlayとクルマの(おそらく不便な)インフォテイメントソフトウェアを切り替える必要はなくなるだろう。

情報提供者によると、IronHeartはまだ開発の初期段階にあり、自動車ブランドとのパートナーシップが必要になるとのことだ。この件についてAppleはコメントを控えている。

このような取り組みは、自動車におけるAppleの存在感を、CarPlayや最近のCarKeyのような限定的な技術を超えたものにする可能性がある。また、かねてより噂されている電気自動車戦略の一環というわけではないが、この技術の開発を通して自動車のより多くの側面を経験することができ、Appleでの自動車開発にも役立つはずだ。

ただ、自動車メーカーがこのコンセプトを受け入れるかどうかは別の問題だ。Appleは、多くの一般的な作業において、自動車の元々のインターフェイスを事実上バイパスすることになる。特に、Appleのサービスと競合するサービスを持っているメーカーは、自社のカーインターフェースやアプリに多大な労力を費やしてきただけに、躊躇することは容易に想像できる。もしIronHeartが出荷されたとしても、クルマの購入者から熱狂的な反応がない限り、その搭載は一部のメーカーやモデルに限られるかもしれない。

編集部注:本記事の初出はEngadget

画像クレジット:JOSH EDELSON / Stringer / Getty Images

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(文:Jon Fingas、翻訳:Yuta Kaminishi)

元テスラのCIOが率いる自動車小売プラットフォームTekionの価値が3倍に

1年前、TechCrunchは、元TeslaのCIOであるJay Vijayan(ジェイ・ヴィジャヤン)氏が追い求めている計画についてお伝えした。それは、彼がTeslaで開発に携わったような、エンド・ツー・エンドで自動化されたSaaSプラットフォームを使って、自動車ディーラーを21世紀に連れて行こうというものだ。顧客は、このプラットフォームを使って、自分の好みに合った車を注文することができる。ディーラーは、このプラットフォームを使って、リアルタイムで在庫を把握し、サービス予約のために顧客をシームレスにチェックインすることができる。OEMはこのプラットフォームを使って自社の部品がディーラーのどこにあるかを正確に把握することができる。

関連記事:テスラの元CIOが自動車ディーラー向けクラウドソフトビジネスの成長に向け160億円調達

ヴィジャヤン氏の説明によれば、このソフトウェアを導入することで、ディーラーとOEM企業の双方がコスト削減と効率化を図ることができるという。カリフォルニア州サンカルロスにある彼の会社Tekion(テキオン)も、この流れの重要な引率役を果たしているようだ。

ヴィジャヤン氏によると、同社の収益は2020年の3倍に成長し、Tekionのソフトウェアを使用しているディーラーの州数は28から39に増え、国際的な企業になるための計画の一環として、カナダで最初のディーラーとの仕事を始めたばかりだという。

これにより、シードステージにおける資金調達サイクルの第4ステージシリーズDで同社は2億5000万ドル(約278億円)の資金調達を発表し、評価額は1年前の10億ドル(約1114億円)から35億ドル(約3899億円)に、その資金総額は1億8500万ドル(約206億円)から4億3500万ドル(約484億円)に拡大した。このラウンドはAlkeon CapitalとDurable Capitalが共同でリードしており、その他の投資家には、現代自動車、米国内のいくつかのディーラーグループ、そして以前からの支援者であるAdvent InternationalとIndex Venturesが含まれている。

興味深いことに、2021年9月の新車販売台数を26%も減少させた世界的なチップ不足やその他の部品供給の混乱は、Tekionにとってはプラスの影響しか与えておらず、Morning Brewの最近の記事はその理由を以下のように述べている。

オハイオ州コロンバスにある自動車グループの社長に話を聞いたところ、在庫が不足しているため、チップ不足の前には4時間かかっていた販売が、今では52分で終了しているという。またこの品薄状態は利益を押し上げており、買い手は新品・中古品を問わずより高い価格で購入し、自動車小売業者は在庫が少ないことで営業コストを削減できるというメリットがある。

また、Tekionや競合他社の技術により、販売店は、品薄状態に耐えながら、車を長持ちさせたいと願っている消費者へのサービスをより迅速に行うことができるようになったと思われる。

実際、フロリダ州のフォートローダーデールにあるディーラーは、2020年の第1四半期と比較して2021年の第1四半期に利益が197%も急増したとMorning Brewに語っている。

「供給は少ないですが、需要は多いので、誰もがたくさんの利益を出しています」とヴィジャヤン氏はTechCrunchに語った。「ディーラーもOEMも、かなりのマージンを稼いでいます」。

また、Tekionは「そのような成長の中で非常に強い存在」であり、ヴィジャヤン氏は、在庫が需要に追いつき始める来年はさらに良い年になると予想している。

「来年のある時期には、市場にある程度の調整が入ると思います。そして、当社の技術プラットフォームは、ディーラーとOEMの両方が、どこにビジネスの焦点を当てるべきかという洞察を提供するために学習し、進化し続けるので、この修正をよりスムーズにナビゲートすることができると信じています」。

カリフォルニアとインドのベンガルールに拠点を置くTekionの成長は、大部分は自然なものであるようだ。自動車業界はマーケティングに莫大な費用をかけ、積極的な営業活動を行うことで知られているが、現在1350名の従業員のうち、営業を担当しているのはわずか17名である。「マーケティングには一切お金をかけていませんし、それはほとんど無視できる程度のものです。私たちは口コミで成長しています」。

BMWや日産・ルノー・三菱アライアンスと同様に、Tekionに早くから出資しているゼネラルモーターズと3月に契約を結んだことも、確実に同社に貢献している。

それぞれのフランチャイズが参加するかしないかを選ぶことができるものの、現在、GMのディーラーは、Tekionのホワイトレーベルのディーラー管理ソフトウェアを使用して、顧客がChevy、Cadillac、Buick、GMCブランドの電気自動車を簡単に購入できるようにし始めている。このプラットフォームは、ユーザーが近くのディーラーで特定のGM車を検索し、インターネット上で取引の一部を完了することができるGMの既存のShop. Click. Drive.プログラムに似ているものの、それ以上に優れた操作性を持っていると言われている。

少なくとも、シボレーの副社長は、2021年初めにAutomotive Newsとの会話の中で、このソフトウェアをGMの社内プログラムを「強化」したようなものであり「ゲームチェンジャー」であると表現していた。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Yuta Kaminishi)

Qualcommがマグナを退け、先進運転支援技術を手がけるヴィオニアを約5000億円で買収

Qualcomm(クアルコム)が、スウェーデンの自動車技術会社Veoneer(ヴィオニア)を買収することに決まった。より高い入札額を提示して、Magna International(マグナ・インターナショナル)を退けたことになる。

クアルコムと投資グループのSSW Partners(SSWパートナーズ)は、米国時間10月4日、ヴィオニアを1株あたり37ドル(約4100円)、総額45億ドル(約5000億円)で買収すると発表した。買収が完了したら、SSWはヴィオニアのArriver(アライバー)技術(センサーとソフトウェアを含む先進運転支援システムスタック)をクアルコムに売却し、他のティア1サプライヤー事業は維持すると述べている。

ヴィオニアは以前、マグナ社へ自社を売却することに合意していた。社がマグナより18%すなわち8億ドル(約890億円)高い金額で入札を行うまで、この取引は前進するかのように見えた。しかし、クアルコムの時価総額1648億ドル(約18兆3000億円)に対し、253億ドル(約2兆8000億円)のマグナは応札しなかった。

関連記事:自動車技術会社VeoneerにQualcommがMagnaを上回る約5000億円で買収を提案

これはクアルコムにとって、2021年最初の大型買収というわけではない。同社は半導体や通信機器の設計・製造で知られているが、現在はその事業領域を拡大しつつある。1月には、高性能コンピューティングのスタートアップ企業NUVIA(ヌビア)を14億ドル(1560億円)で買収することで合意し、通信以外の市場を模索していた。今回の買収は、自動車メーカーが当たり前のように新車に搭載するようになっているADAS(先進運転支援)技術にとって、特に好材料のニュースと言えるだろう。

クアルコムがヴィオニアの買収提案を行ったのは、マグナの提案から約1カ月後のことだったが、まったくの驚きというわけではなかった。両社は2021年の初めに、運転支援システム用のソフトウェアとチップを開発するための提携を結んでいたからだ。

ヴィオニアは買収合意を解消することになったマグナに対し、1億1000万ドル(約122億円)の違約金を支払う。この買収の完了は2022年になる見込みだ。

関連記事:創業2年アップルとグーグルで活躍したチップ開発者のNUVIAをQualcommが約1460億円で買収

画像クレジット:Veoneer

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】ランボルギーニ Huracán STO、強力なエンジンの代名詞な企業がハイブリッド化に向かうとき何が起こるのだろうか

Lamborghini Huracán(ランボルギーニ・ウラカン)。ランンボルギーニで最大の販売台数を誇るスーパースポーツカーは、ガソリンエンジン車としての時代を終えようとしている。

2014年にHuracánが登場して以来、同社は全世界で1万7500台を販売したという。しかし、顧客がどれほど望んでいても、V10エンジンを救うには十分ではなかった。ランンボルギーニのラインナップに加わる最新のスーパースポーツカー、新型Huracán STO(ウラカン スーパートロフェオ・オモラガータ)は、ランボルギーニの未来を垣間見せてくれると同時に、轟音を放ちながら、激しくパワフルなガソリンエンジンの終焉を称えている。

「Huracán STOはガソリンエンジンの最後の祭典です」。Willow Springs Raceway(ウィロー・スプリングス・レースウェイ)でのプレスイベントで、トラックサイドに座りこんだランンボルギーニの新しい北米CEO、Andrea Baldi(アンドレア・バルディ)氏はTechCrunchにこのように語る。このスーパースポーツカーの価格は32万7838ドル(約3600万円、税金と配送料を除く)から。公道からサーキットまで対応する。

画像クレジット:Lamborghini

ランンボルギーニの最高技術責任者、Maurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)氏は、その後筆者に「エンジンは単なるエンジンではなく、音楽であり、ランンボルギーニブランドのDNAの一部です」と語ってくれた。

このDNAは、印象的なデザイン、パワー、そして2人の経営者が「感情」と呼ぶもの、すなわち富裕層がランボルギーニに惹かれる排他性と喜びの感覚を体現する抽象的な概念に強く結びついている。

熟練したプロのレーシングカー・ドライバーを気取るつもりはない。筆者はトリッキーで起伏のあるビッグ・ウィロー・トラックを先導されながら走行しただけだが、ランンボルギーニが最後に発表するガソリンエンジン車に何か特別なものを取り入れたことは明らかだ(次回は、公道を走るHuracán STOを見てみたい)。

街乗りできるレーシングカーとしての親しみやすさ

新型Huracán STOは、ランボルギーニが世界各地で開催しているSuper Trofeo EVOシリーズやGT3 EVOシリーズなどのワンメイクレースで成功を収めていることから学び、それに「快適性、実用性」と「公道走行」を融合させている。Huracán STOは、高度な空気力学と素材、ブレーキ、テレメトリ(車両の状態の遠隔監視)を備えた、競技団体が規定する規格を公道に降ろしたとも言える公道仕様のレーシングカーであり、サーキットで高速走行することもできるし、Huracán STOで人目を引きつけながらデートを楽しむこともできる。

Huracánは後輪駆動で、巨大な5.2リッターV10エンジンは631馬力。7速デュアルクラッチ・ギアボックスと組み合わせることで、ビッグ・ウィローのストレートでは一瞬で時速200kmに加速した。STOの最高時速は300km/hなので、まったくもって余裕である。ANIMA(アダプティブネットワークインテリジェンスマネジメント)の設定が最も緩いストリート(STO)モードであっても、アクセルを踏んだ途端に走り出す。このSTOモードは、Lamborghini Dinamica Veicolo Integrata(LDVI、ランボルギーニ・ディナミカヴェイコロインテグラータ)システムによってサスペンションとダイナミクスが管理され、他のモードよりも反応が良く、より緩やかな走りになっている。

コーナーでのスライドをもう少し高めにして、ラップタイムを上げたければ、ANIMAボタンをもう一度押すと、Trofeoモードに切り替わる。このTrofeo(トロフェオ)モードでは、LDVIによって管理されるトルクベクタリングが変更され、テールの動きが良くなる。Piaggio(ピアッジオ)モードは雨天用のモードで、ウィロー・スプリングスのあるカリフォルニア州ローズミード周辺の砂漠地帯では久しく見られなかったものだ。

Huracán STOは、ビッグ・ウィロー周辺の険しいオフ・キャンバーやダブル・エイペックスの急カーブでも、コース上と同じ乗りやすさを感じることができる。シャークフィンと手動で調整可能な巨大なウイングが代表する、この車両の高度な空気力学がその理由だろう。後部のウイングは3つのポジショニングが可能で、重心を最大13%変化させ、ダウンフォースを90kg以上増減することができる。

最先進の素材とブレーキ

また、ランンボルギーニは、ボディ剛性と重量の最小化を両立させるために軽量のカーボンファイバーを採用している。Huracán STOのボディは75%以上がカーボンファイバーで構成され、Miuraにヒントを得たクラムシェル型のフロント「コファンゴ」(イタリア語のボンネットとフェンダーを組み合わせた造語)もその1つだ。ボンネットの下には小さな収納スペースがあり、その日のドライブプランに合わせて、レーシングヘルメットやバッグを入れるのに十分な大きさである。ベースとなったPerformanteに比べ、STOはカーボンファイバーの採用やインテリアの軽量化などにより、約45kg軽量化されている。

レース上で重要なのは、高速走行ではなく、ブレーキが甘くなく、何度でもすばやく止まれることだ。STOには、F1用に開発されたBrembo(ブレンボ)製CCM-R(Carbon-ceramic Resin Matrix)ブレーキが、民生車としては初めて採用されている。この技術は、ブレーキの温度を下げ、長時間の走行時のフェード現象を防ぐことができる。また、フェンダーに設けられた通気孔により、キャリパーやディスクに空気を送り込み、熱がこもらないように工夫されている。ブレーキの温度はインストルメントパネルで確認でき、LDVIもフェード現象をチェックする。

速く走るためのテクノロジー

Lamborghinは、サーキットでのタイムの向上を実感したいオーナーのために、サーキットでのタイムやパフォーマンスを記録し、比較するためのテレメトリシステムを提供する。プロが使用するVBOXと同じようなものだ。

このシステムは、ブレーキやスロットルの入力からステアリングの角度まですべてを分析し、オーナーやドライバーが馴染みのサーキットでより速く走行できるように支援する。記録されたデータと動画はランンボルギーニ独自のソーシャルネットワークにアップロードされ、オーナーはスマートフォンのUNICAアプリでアクセスすることができる。自分のトラックタイムを他のオーナーや友人、コーチと共有することも可能だ。

画像クレジット:Lamborghini

(ランンボルギーニのブレーキはいうに及ばず、)自分の車に装着されていた特注のブリジストン製ポテンザでさえも限界まで走行した訳ではない筆者だが、Huracán STOは、筆者が経験した中で最も自分に自信を与えてくれて、コミュニケーションを取りやすく、親しみやすい車両の1つであるとは言えるだろう。ステアリングはダイレクトかつリニアで、私がサーキット内外で運転したことのある他のランンボルギーニ車とは異なり、STOは車の能力ギリギリまで使っても、動きが乱れたり、操作性が悪くなったりすることはない。高速走行時でもコントロールされ、洗練された走り……これは従来の、サーキット志向のランンボルギーニとは結びつかなかった言葉だ。

富裕層にとっては、Huracán STOの生産の制約となるのはSant’Agata Bolognese(サンタガタ・ボロニェーゼ、イタリアの自治体)の工場の生産能力だけだ、というのは良いニュースだろう。バルディ氏によれば、Huracán STOは生産量は年間2500台程度で、すでに2022年の分まで完売しているとのことだ。「制約となるのは私たちの生産能力です。生産能力には限界があります。私たちは2024年までにHuracánをハイブリッド化して、既存のガソリンエンジンバージョンを廃止する予定です」とバルディ氏。

ランンボルギーニによれば、STOは3秒以内で時速100kmまで加速するという。プロのレースドライバー、Richard Antinucci(リチャード・アンティヌッチ)に先導されてサーキットを回ったのはほんの数周だったが、Huracán STOが、レース仕様の車を限界まで走らせるだけの資金と度胸のある人に、何か特別なものを届けてくれるのは間違いない。

画像クレジット:Lamborghini

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

全米30万の自動車修理工場のDX化をサポートするAutoLeapが約20億円調達

500万ドル(約5億5000万円)のシードラウンド発表から9カ月後、トロントの自動車修理ソフトウェア企業AutoLeapが、今度は1800万ドル(約20億円)のシリーズAを獲得した。Bain Capital Venturesがそのラウンドをリードした。

シードラウンドをリードしたThreshold Venturesがこのラウンドにも加わり、同社の総調達額は2300万ドル(約25億5000万円)になる。

共同CEOのSteve Lau(スティーブ・ラウ)氏によると、AutoLeapは各地の自動車修理工場を21世紀のものとし、ワークフローをデジタル化するときの二重、三重の無駄な入力作業をなくす。顧客への見積もりや請求書、作業の見積もりなどはすべて、バックグラウンドの計算で処理し、営業とマーケティングをCRMと連携させる。アプリからのスケジューリングや顧客とのテキストでのメール、オンラインのレビュー機能もある。

関連記事:自動車修理業者の業務をデジタル化するAutoLeap、顧客との関係性「修復」を支援

2020年のシードラウンドと立ち上げ以降、同社は「予想以上に」成長した、とラウ氏はいう。チームとして同社は5倍の成長、顧客ベースは10倍に増加した。現在も毎月、成長は続いている。

「市場が提供している機会に私たちはうまくフィットしているという確信を、さらに持つようになりました。初期の顧客の1人に最近話を聞く機会があったのですが、AutoLeapを使うようになって最初の10カ月で売上が倍増したとのこと。彼らの生活も変わりました」とラウ氏はいう。

ビジネスを成長させることはラウ氏の天職だ。彼は共同CEOのRameez Ansari(ラミーズ・アンサリ)氏とともに、下請け専門の企業が自分の小さな事業を経営できるためのSaaSであるFieldEdgeの共同CEOを務めた。同社は3年で社員数200名にまで成長し、AutoLeapを創業できる基盤になった。

同社のチームは今、カナダと米国とパキスタンに分散している。顧客の85%は米国、残りはカナダだ。

ラウ氏の推計では、自動車のアフターマーケットは7000億ドル(約77兆7536億円)の業界であり、100万人の技術者が30万のショップにいる。

く「今は、この市場がペンからデジタルに移行するゲームの2回の表くらいです。大量の資本がこの市場機会を掴もうと躍起になって世界クラスのチームを起用し、私たちがもっと良いプロダクトと顧客サービスを提供できるようにしている」とラウ氏は語る。

彼の予想では、AutoLeapのワークフォースは1年後に今の3倍、そしてもっと多様な人材を抱えることになるだろう。

Bain Capital VenturesのパートナーであるAjay Agarwal(アジェイ・アガーウォール)氏によると「国の経済的なバックボーンは小企業であり、彼らは消費者ブランドやレストラン、リテールなどあらゆる分野で、自分が競争に生き残り顧客にもっと良い体験を提供するための、モダンなクラウドソフトウェアを求めています」。

さらにアジェイ・アガーウォール氏は「スティーブとラミーズは、独立した30万の自動車修理工場のデジタル時代への移行を支援しています。この巨大な機会に挑戦している彼らに協力すること以上にエキサイティングなことは他にありません。AutoLeapは、総合的なSaaSプラットフォームと組み込みの決済機能およびマーケットプレイスを組み合わせたサービスを、自動車修理ショップに提供しようとしています。それは、まだクラウドへの飛躍を行っていない最後の業種の1つです」という。

画像クレジット:AutoLeap/Rameez AnsariとSteve Lau, AutoLeapの共同CEO

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

GMが新しいソフトウェアプラットフォーム「Ultifi」を2023年から生産される次世代車に搭載

General Motors(ゼネラルモーターズ)は「Ultifi(アルティファイ)」と名付けられた新しいエンド・ツー・エンドのソフトウェアプラットフォームを、2023年から生産が始まる次世代車両の一部に搭載すると発表した。これにより、ドライバーがサブスクリプションで提供される車載機能を利用したり、無線アップデートを使って新しいアプリケーションやサービスを導入することが可能になるなど、広範囲にわたるさまざまな機能を提供できるようになると、同社の経営陣は述べている。

このソフトウェアプラットフォームによって、オーナーは車両の全体の機能やセンサーにまでアクセスできるようになる。例えば、後部座席に子どもがいることをカメラが検知すると、自動的にチャイルドロックが作動するように設定できる。また、ドライバーはUltifiを介して、ハンズフリー運転が可能なGMの先進運転支援システム「Super Cruise(スーパークルーズ)」などのサブスクリプションサービスを利用することができる。

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「これは、当社のソフトウェア戦略における大きな次のステップです」と、GMのソフトウェア定義車両担当VPであるScott Miller(スコット・ミラー)氏は、プレスブリーフィングで語った。「今日の自動車はソフトウェアによってさまざまなことが可能になっています。Ultifiではソフトウェアによって自動車が定義されることになるでしょう」。

Ultifiの機能は、GMの「Vehicle Intelligence Platform(VIP、ビークル・インテリジェンス・プラットフォーム)」上に組み込まれる。VIPは、車両のデータ処理能力を向上させるハードウェア・アーキテクチャーで、これを採用したモデルではすでに無線によるソフトウェアアップデートが利用できるが、Ultifiでは車載モジュールが1つのプラットフォームに集約されるため、より迅速なアップデートが可能になるという。

Ultifiは、GMの一部のインフォテインメント・システムに搭載されている「Android Automotive(アンドロイド・オートモーティブ)」OSとともに組み込まれることになる。なお、車載システムのOSとしての役目を担うAndroid Automotiveは、OS上で作動する副次的なインターフェイスである「Android Auto(アンドロイト・オート)」とは別物だ。UltifiとAndroid Automotiveの役割の違いは、機能と可用性にある。「Android Automotiveは、車内における機能の一部を提供するものです」と、ミラー氏は説明する。「Ultifiは、より全体に渡るアンブレラ戦略です」。

Androidと同様に、Ultifiも開発者向けのプラットフォームとして広く使われているLinux(リナックス)をベースにしている。GMがLinuxを選択した理由について、ミラー氏は「ある時点で、私たちは本当にこれをオープンにしたいと思っています」と述べ、将来的にはサードパーティの開発者が車内アプリを作成できるようにしたいと語った。

まだ開発中のUltifiは、2023年より展開を開始する予定であり、利用できるのはそれ以降に生産される車両に限られる。システムの要求する処理能力を車両が備えている必要があるからだ。ミラー氏によれば、スマートフォンに異なる購入プランが用意されているように、消費者は車両を購入するか、あるいはいくつか用意されるアクセスプランを購入するか、選べるようになるという。つまり、価格も購入プランもさまざまということだが、GMは具体的な内容を説明しなかった。また、同社はこの新しいプラットフォームがどのくらいの収益をもたらす見込みであるかということも明らかにしなかった。

今回のGMの発表は、大手自動車メーカーが新型車をこれまで以上にコネクテッドにするために行っている最新の動きの1つである。ゼネラルモーターズとFord(フォード)の両社は、ソフトウェアやサブスクリプションサービスによる収益機会について議論を重ねている。Ultifiはこれらの事業を構築するためのさらなるステップだ。

「私たちは自動車から離れようとしているわけではありません」と、ミラー氏はいう。「私たちは事業を拡大しているのです。他のアプリケーションのために、技術を拡張・活用する新しいビジネスラインの創出は、我々のコアの代わりになるものではなく、(コアに)追加されるものです」。

画像クレジット:GM

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ジープが新型グランドチェロキーのプラグインハイブリッド車を発表、電気のみで約40kmを走行可能

公約通り、Jeep(ジープ)は米国時間9月29日、「Grand Cherokee(グランド・チェロキー)」初のプラグイン・ハイブリッド車に関する詳細を明らかにした。この「Grand Cherokee 4xe(グランド・チェロキー・フォーバイイー)」は、2022年初頭に北米のディーラーに並ぶことをジープは認めている。そしてその性能は期待以上と言っていいだろう。電気のみで25マイル(約40km)の距離を走行可能、といっても必ずしも毎日の通勤をすべてカバーできるわけではないかもしれないが、ジープは2.0L直列4気筒ガソリンエンジンに火を入れなくても、坂道をぐんぐん登っていける、荒削りだが目的に適ったPHEVであることを約束している。ちなみにガソリンも使った場合の航続距離は440マイル(約708km)となっている。

電気のみによる走行の他に、エンジンとモーターを組み合わせて最適なパフォーマンスを発揮する「ハイブリッド」モードや、容量17kWhのバッテリーをなるべく残しておくために、エンジンを優先的に使用する「eSave」モードを選択することもできる。

車内にも期待通り、多くの新しいテクノロジーが採用されている。前席と後部座席の前に備わる10インチのディスプレイには、Amazon Fire TV(アマゾンファイヤーTV)が組み込まれており、つまり移動の間、後席の子どもたちはPrime Video(プライム・ビデオ)を観ていられる。車載インフォテインメント・システムには「前世代より5倍も速い」という最新の「Uconnect 5」を採用。無線アップデートにも対応している。

4xeを含む新型グランド・チェロキーは、電子制御式セミアクティブ・ダンパーを採用したエアサスペンションを装備し、オフロード走行性能が向上した。路面状況から全輪駆動が必要ないと車両が判断した際には、前輪の駆動力が自動的に切り離され、駆動装置の抵抗を軽減させて燃費を向上させる。オプションの「Active Driving Assist(アクティブ・ドライビング・アシスト)」システムを使えば、ハンドルに手を置いて道路を注視している限り、半自動運転が可能だ。ジープによれば、グランド・チェロキー4xeのプラグインハイブリッド・システムは、1基の内燃エンジンと2基のモーターの組み合わせで、最高出力375馬力(280kW)と最大トルク637Nmを発生し、最大6000lbs(2720kg)の牽引力を発揮するという。

グランド・チェロキー4xeには、Limited(リミテッド)、Trailhawk(トレイルホーク)、Overland(オーバーランド)、Summit(サミット)、Summit Reserve(サミット・リザーブ)という4種類の仕様が設定されるが、いずれも価格はまだ明らかにされていない。しかし、これがジープ・ブランドにとって重要な車であることは、すでに明らかだ。ジープを傘下に収めるStellantis(ステラティス)は、ライバル企業に追いつくために電動化を競っており、2025年までにすべてのSUVに完全電気自動車バージョンを投入する計画を掲げている。プラグインハイブリッドは、それに向けた重要な第一歩である。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者Jon FingasはEngadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Jeep

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(文:Jon Fingas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スマホ事業を閉鎖したLGが自動車向けサイバーセキュリティのCybellumを264億円で買収、

韓国の大手テック企業であるLG Electronics(LGエレクトロニクス)は、かつて携帯電話分野でトップシェアを誇っていたが、現在は同事業を縮小している。同社は、次世代の自動車向けハードウェアおよびサービスという新分野への意欲の表れとして、イスラエルの自動車用サイバーセキュリティ専門企業であるCybellum(サイベラム)を買収すると発表した。Cybellumは「デジタルツイン」と呼ばれる手法を用いて、コネクテッドカーのサービスやハードウェアの脆弱性を検出・評価する。

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LGによると、この買収は複数の部分からなっている。

まず、1億4000万ドル(約154億円)でCybellumの株式の64%を取得する。次に2000万ドル(約22億円)をSAFE(Simple Agreement for Future Equity)ノートの形で「第4四半期の取引プロセスの終了時に」拠出する。残りの株式は「近い将来」(日付の指定なし)に取得する予定で、これは最終的なバリエーションと投資が確定する時でもある。

現在のところ、バリエーションが一定であれば、この取引の総額は約2億4000万ドル(約264億円)になると見込まれる(市場やCybellumの業績が影響する可能性もある)。

LGは、自動車関連のスタートアップへの投資家としての実績を積み重ねているが、今回の買収は、イスラエル(Cybellumはテルアビブ拠点)での初の買収となる。この取引は、LGがハードウェアだけでなく、自動車業界にソフトウェアソリューションを提供することに興味を持っていることを示している。

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「自動車業界においてソフトウェアが重要な役割を果たしていることは周知の事実であり、それにともなって効果的なサイバーセキュリティ・ソリューションが必要とされています」とLG Electronicsのビークル・コンポーネント・ソリューションズ・カンパニーのKim Jin-yong(キム・ジンヨン)博士は語る「今回の取引は、LGのサイバーセキュリティの強固な基盤を一層強化するものであり、コネクテッドカーの時代に向けてさらに準備を進めるものです」。LGは以前からこの分野に注目していた。

この取引は、Blumberg Capital、Target Global、RSBG Ventures(ドイツの業界大手RAGのベンチャー部門)など、Cybellumの投資家にとても良いリターンとなる。Cybellumはこの取引に先立ち、1400万ドル(約15億4000万円)強を調達していた。

Cybellumは、イスラエル国防軍のサイバーセキュリティ部門のOBであるSlava Bronfman(スラヴァ・ブロンフマン)氏とMichael Engstler(マイケル・エングストラー)氏の2人が2016年に創業した。同社は長年にわたり、ジャガーランドローバーや日産自動車など、同社の技術を利用する大物顧客を数多く獲得しており、提携先にはハーマン、豊田通商、PTCなどが名を連ねている。

ブロンフマン氏は電子メールによるインタビューで、当面はこれらの企業との協力関係を継続し、独立した事業体として運営していく方針を明らかにした。

Cybellumの技術とそのLGによる買収は、コネクテッドカーとサイバーセキュリティの世界におけるいくつかの重要な傾向を示している。

コネクテッドカーは、悪意のあるハッカーにとって新たな攻撃対象だ。しかも、自動車に搭載されている複数の部品や、自動車という大きなエコシステムの中で動いている多数のOEMや自動車関連の会社を考えると、攻撃対象として非常に複雑だ。自動車がより賢く、よりつながりやすく、最終的にはより自律的に進化していけば、その複雑さは増していく一方だ。

大きな課題の1つは、これらすべてに共通するサイバーセキュリティへのアプローチを開発することだった。LGは、この市場での既存のプレイヤーとして、その地位をさらに高めたいと考えており、自社の将来のビジネスと、業界の幅広いサービスニーズに対応するための投資を行っている。

Cybellumのアプローチは、システムの「デジタルツイン」を作り出すことだ。これは、エンタープライズITヘルスケア世界でも採用されている手法で、脅威を特定・評価すべく全体像を把握するためにモニタリングを行う。個々のコンポーネントの断片化を解消する方法の1つであり、車のシステムに負担をかけずにリアルタイムでイベントを監視することができる。

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「これは何よりもまず、セキュリティへの投資です」とブロンフマン氏はいう。「Cybellumはサイバーセキュリティの会社です。LGは大手自動車サプライヤーの1つとして、現在のコネクテッドビークルの時代や、自動運転車への移行に不可欠な要素であることを理解しているため、サイバーセキュリティを優先しています」。

LGは現在、Cybellumの提携先ではないが、ブロンフマン氏は、両社の最初の統合は2022年に実現する可能性が高いと述べた。

画像クレジット:Joan Cros/NurPhoto / Getty Images 

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

アルコールやマリファナなど検査のために「目」のスキャンデータベースを構築するEyeGage

LaVonda Brown(ラヴォンダ・ブラウン)氏はジョージア工科大学在学中にアイトラッキング(目の動きの追跡)に関心を持つようになった。「心の窓」と言われる目をスキャンすることで得られる情報に魅了され、これが2021年のDisrupt Startup Battlefieldで競っている20社のうちの1つ、EyeGage(アイゲージ)の礎となった。

TechCrunchコンペティションへのEyeGageのエントリーは、同社初のプロダクトである、運転できるほどには酔っ払っていないかどうかを確認できるアプリを立ち上げようとしている中でのものだ。アプリでは、酔っ払っている場合には「Do Not Drive(運転してはいけません)」という大きな赤い文字の警告と、UberかLyftにつながるリンクが案内される。アプリは無料で、2つの目的がある。消費者へのサービス提供、そしてEyeGageの拡大中の目のデータセットに参加してもらうというものだ。

「アプリをダウンロードし、目の写真を撮ると、アプリは消費者がライドシェアサービスを使うべきかどうかを提案します。究極的には目に基づき、運転を不可とします」とブラウン氏は説明する。「アプリは無料です。バーターのサブスクサービスと呼びましょう。アプリユーザーは当社に自身の目の写真やビデオを提供し、当社はユーザーに適切な判断をくだせるようテクノロジーへのアクセスを提供します」。

このアプリは今のところ、同社事業の中で最も目立つ要素だ。同社が行っていることのほとんどは目のデータセットの構築に向かう。同社は目のさまざまな面へのアルコールの影響の測定を始める。ここには、連邦政府が承認したテスト施設で同社が現在行っている研究も含まれる。テスト参加の申し込みにサインした人はアルコールを飲み、その間に同社は目の写真やビデオを撮り、血液サンプルも採取する。

現在いくつかの州で合法であることを考えると、次に来るのがマリファナだ。オピオイド、アンフェタミン、ベンゾジアゼピンのような他のドラッグはデータを収集するのがより難しいが、こうした物質の合法バージョンを扱っている病院やクリニックが、きちんとした同意をともなうデータ収集の良い源になるかもしれない。

労働環境が論理的な次のステップでもある、とブラウン氏は話す。法執行当局もリストに載っているが、そうした種の提携を得るにはさまざまなハードルがある。「建設や製造、輸送などリスクの高い職場をターゲットとしています。そうした産業では特にドラッグやアルコールの使用率が高くなっています」とブラウン氏はTechCrunchに語った。

また、体内の物質を検出するための緊急使用以外でのデータセットの潜在的な使い道があるかもしれない。

「目の動きのモニタリングは多くの分野で使用することができます」とブラウン氏は付け加えた。「そしてもちろん、目を見て識別することができます。脳しんとうや糖尿病など特定の病気を診断するのに使え、また異なるマーケットの分野でも使えます。目は体の中で何が起こっているのかについての情報を多く持っています。目が光にどのように反応するかをみることでカフェインを摂取したかどうかわかります。目の動きがあまりに速い場合は刺激物のようなものの摂取となります。そしてあまりにも動きが遅ければ、抑制剤のようなものの摂取が考えられます」。

EyeGageはこれまでに14万2455ドル(約1560万円)を調達した。友人や家族からの4万2455ドル(約465万円)のプレシード資金、そしてこのほどGoogle Black Founders Fundから贈られた賞金10万ドル(約1095万円)だ。

画像クレジット:EyeGage

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラが規制当局の監視下にある中国でイーロン・マスク氏は同国自動車メーカーを称賛

中国で開催されたWorld New Energy Vehicle Congress(WNEVC)に事前収録で参加したElon Musk(イーロン・マスク)氏は、珍しく原稿どおりのスピーチの中で、中国の自動車メーカーに対して融和的かつ賛辞的なコメントを述べ、米国での発言スタイルとは一線を画した態度を取った。

「中国の多くの自動車メーカーがこのような(EVやAV)技術を牽引していることに大きな敬意を表します」と、後ろの窓にリングライトが映り込んでいる部屋から同氏は語った。もしかしたらクライシスコミュニケーションの専門家がフレームの外にいて、彼に準備した発言を続けるように促しているのではないかと疑ってしまいそうな光景だった。

しかし、おそらくマスク氏に外からの働きかけは必要ないだろう。中国は電気自動車においては世界で最も収益性の高い市場の1つであり、2020年のTesla(テスラ)の売上高全体の約5分の1(66億6000万ドル、約7321億円)を占めている(規制当局への提出書類による)。

米国は引き続きTeslaの最大の市場のひとつだが、同社は2019年に上海ギガファクトリーを開設して「Model 3(モデル3)」と「Model Y(モデルY)」を製造するなど、中国での事業拡大を積極的に進めている。Teslaは、EVスタートアップ企業であるXpengXpeng(シャオペン、小鵬汽車)や、検索大手企業のBaidu(バイドゥ、百度)など、中国の自動車メーカーとの競争に直面している。

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「私の率直な見解は、中国の自動車メーカーは世界で最も競争力があるということです。ソフトウェアを得意とする企業が揃っており、設計から製造、そして特に自律走行まで、自動車産業の未来を最も形作るのはソフトウェアです」とマスク氏はメッセージの中で述べた。

世界で最も人口の多い国のEV市場への参入は最初は波乱含みだったが、Teslaはそれを好転させることに成功した。2020年、Tesla Model 3は中国で最も売れたEVとなった。また、Teslaは中国以外の自動車メーカーで唯一、現地法人の完全所有を認められており、同国では前例のない自治権を得ている。それは、マスク氏が過去に公の場で指摘した事実だ。

2020年のBattery Dayイベントで、マスク氏はこう述べていた。「中国に100%自社工場を持つ唯一の外資系メーカーであることは、非常に注目に値すると思います。このことはあまりよく理解されず、評価もされないことが多いのですが、中国に唯一の100%出資の外資系工場を持つことは本当に大きな意味があり、それが多大な利益をもたらしているのです」。

そうは言っても、すべてがバラ色というわけではない。2021年に入ってからは、消費者と規制当局の両方から否定的な報道が相次ぎ、2月には中国政府当局が車両の安全性に関する懸念から同社の幹部を召喚して会議を開いたこともあった(これに対してテスラは「政府部門の指導を真摯に受け止め、事業運営上の欠点を深く反省している」と述べた)。

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その後、4月に開催された上海モーターショーで、Tesla車のオーナーだという女性が同社に抗議する事件が起きた。Bloombergはその数ヵ月後、Teslaがさまざまな悪いPRと闘うために、中国のソーシャルメディアのインフルエンサーや自動車業界の出版物と関係を築こうとしていると報じた。

また、マスク氏はこの事前に録画された挨拶の中で、自動運転車とデータセキュリティに関する質問に答え、それは「一企業の責任だけでなく、業界全体の発展の礎となるもの」だと述べた。この問題は、中国軍がその施設にTesla車を駐車することをドライバーに禁止したというニュースが出た後、特にセンシティブな話題となっている。Tech Wire Asiaが報じたところによると、中国は8月、コネクテッドカーにおけるデータセキュリティの強化を目的とした新しい規制を発表した。Teslaをはじめ、Ford(フォード)やBMWなどの自動車メーカーは、中国国内に現地データストレージセンターを設立する動きを見せた。

「Teslaは、インテリジェントなコネクテッドカーのデータセキュリティを確保するために、すべての国の国家当局と協力していきます」と同氏は付け加えた。

画像クレジット:JayInShanghai

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

GMがシボレー・ボルトEVの生産停止を10月中旬まで延長

General Motors(ゼネラルモーターズ)は、オリオン組立工場の操業停止を少なくとも10月中旬まで延長する。先日発表したシボレー・ボルトEVおよびEUVの安全性のためのリコールに関連したバッテリーパックの不足によるものだ。Bloomberg(ブルームバーグ)が最初に報じたところによると、同社は10月11日の週まで同工場を休止する意向だ。

同社は声明で「今回の直近のスケジュール調整は、新型コロナウイルスに関連した国際市場からの半導体供給の制約により、部品不足が続いていることが原因です」と述べた。「私たちのチームは、需要は高いものの生産能力に制約のある車両への影響を最小限に抑えるために、創造的な解決策を見つけられると確信しています。状況は依然として複雑で非常に流動的ですが、GMは引き続き、需要の高いフルサイズトラックの生産を優先します」。

GMは先週、8月23日に始まったミシガン州の組立工場(オリオン組立工場)の操業停止を9月20日まで延長すると発表したが、遅れの原因への解決策がまだ見つかっていないことは明らかだ。その一方で、バッテリーサプライヤーであるLG Chem(LG化学)と協力し、製造工程と生産スケジュールの更新を継続するとしている。

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同社は7月、火災の危険性があるとしてシボレー・ボルトのリコールを開始した。米高速道路交通安全局は同社の顧客に対し、予防措置として住宅や他の車両から離れた場所にクルマを駐車するよう勧告している

GMは先週、フルサイズトラックとフルサイズSUVの生産を今週までに開始すると発表したが、チップ不足のため、北米の他の5つの組立工場でも生産を減速すると発表した。同社によると、シボレー・シルバラード1500とGMCシエラ1500モデルを生産しているフォートウェイン組立工場およびシラオ組立工場のような一部の工場は、世界的な半導体不足の影響を一時的に受けた後、9月13日時点ですでにフル生産に戻っている。

シボレー・トラバースとビュイック・アンクレイブを製造しているミシガン州のランシング・デルタ・タウンシップ組立工場は、9月27日の週にさらに1週間の稼働停止を予定しており、10月4日の週に生産を再開する。同工場は7月19日から操業を停止している。シボレー・カマロとキャディラック・ブラックウイングの生産停止も27日の週まで延長され、以前に発表されたキャディラック CT4とCT5の生産停止も同様だ。カマロの生産停止は9月13日から、CT4とCT5の生産停止は5月10日からだ。

また、カナダのCAMI組立工場、メキシコのサン・ルイ・ポトシ組立工場、ラモス組立工場で生産しているエクイノックス、ブレイザー、GMCテレインの生産も10月11日の週に延期された。ブレイザーは8月23日、エクイノックスは8月16日から、それぞれ生産を停止している。

キャデラックXT4は、2月8日から生産を停止していたが、来週からカンザス州のフェアファックス組立工場で生産を再開する。GMによると、同じくフェアファックスで2月8日から生産を停止しているシボレー・マリブの生産は、10月25日の週まで停止する予定だ。

画像クレジット:Veanne Cao

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

高級感とテクノロジーが両立したデザインを追求する自動車メーカーたち、「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」開催

2021年の夏はモントレー、デトロイト、そして夏の終わりには英国オックスフォードで恒例のカーイベントが開催され、自動車コレクターが集結して高級車やビンテージカーを鑑賞し、オークションを楽しんだ。

2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響で多くのカーイベントが中止。2021年は屋外に高級車を集めたイベントが復活し、7月の「Goodwood Festival of Speed(グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード)」、8月の「Monterey Car Week(モントレー・カーウィーク)」「Woodward Dream Cruise(ウッドワード・ドリーム・クルーズ)」、そして9月上旬に開催された「Salon Privé(サロン・プリヴェ)」などのイベントでは、魅力的なクーペや派手なハイパーカーだけではなく、さまざまなクルマが展示された。

COVID-19の変異株「デルタ」の流行にもかかわらず集まった観客と、豪華な会場に並んだ自動車に対する彼らの反応は、ビンテージカー、そして未来の超高級車に対する抑えきれない興奮を反映したものだった。

Gooding & Company(グッディングアンドカンパニー)のオークション・スペシャリスト、Angus Dykman(アンガス・ダイクマン)氏は「現地で参加できるオークションの需要が高まっていました」「私たちは現地でのセールスに強い関心があり、ビジネスは活発です。皆がさまざまな自動車を応援してくれました」と話す。

カリフォルニア州ペブルビーチの「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス2021」に出品されたPorsche 917(2021年8月15日)(画像クレジット: Getty Images、撮影:David Paul Morris / Bloomberg)

この屋外の展示には、新興自動車メーカーも歴史あるブランドも、未来を反映させた最新の自動車を顧客に提示する必要がある、という緊迫感があった。高級車メーカーにとって、8月のモントレーは、次世代モデルのデザインをアピールできる重要なイベントだ。Bentley(ベントレー)、Bugatti Automobiles(ブガッティ・オートモービルズ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)などの老舗の自動車メーカーに加え、新規参入のRimac Automobili(リマックアウトモビリ)やLucid Group(ルシードグループ)もモントレーでの存在感のアピールに資金を投じた。

ビンテージカーでもコンテンポラリーカーでも、その一貫したテーマは新しい顧客を惹きつける見事なデザインである。

マイクロチップが不足し、車両数も限られている中、カーコレクターは生産開始前から新型車の予約を行っていた。各ブランドのトップもコレクターたちと交流を図り、ペブルビーチでは、Ford Motor(フォード・モーター)のJim Farley(ジム・ファーレイ)CEO、メルセデス・ベンツ米国プレジデントのDimitris Psillakis(ディミトリス・プシラキス)氏、Aston Martin(アストンマーティン)のTobias Moers(トビアス・モアーズ)CEO、Lamborghini(ランボルギーニ)のMaurizio Reggiani(マウリツィオ・レッジャーニ)CTOなど、少なくとも十数名の経営幹部が目撃された。

現地時間2021年8月13日(金)、米国カリフォルニア州カーメルで開催された「The Quail, A Motorsports Gathering(ザ・クエイル、ア・モータースポーツギャザリング)」で、ブガッティ・オートモービルズのSAS Bolideを鑑賞する参加者たち(画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg via Getty Images)

モアーズ氏は、アストンが建設した大きなスタンドからビンテージカーショーを見下ろし「私たちのラグジュアリーカービジネスに関していえば、この場所が最適です」と話す。「ここでは、これまで会ったことのない新しい顧客に出会うことができます。私たちのブランドは、F1(フォーミュラワン)でかつてないほどの注目を集めています」。

同社は未来のレース仕様のアストンを展示。F1マシンを中心に、ValkyrieやValhallaなど、アストンの今後の方向性を示す指標となっている。

「これは私たちのメッセージです」とモアーズ氏。「2020年は、誰もがアストンは終わったと思っていたでしょう。そこにLawrence Stroll(ローレンス・ストロール)氏が乗り込んできて、多額の投資をしてくれました。私たちは復活し、お客様との関係はかつてなく強化されています」。英国で多くの地域がロックダウンされている中、同社はベントレー、フォード、Porsche(ポルシェ)から新しい部門長を採用した。

モアーズ氏自身もパンデミックの最中に新しいCEOとして就任しているが、同氏は北米の従業員、ディーラー、顧客と初めて顔合わせをした。

Mercedes-AMG(メルセデスAMG)出身のモアーズ氏は自信に満ちた経営者で、電動化の経験が自分の強みになると考えている。同氏は「アストンは超高級車を開発しており、その美しさは昔から有名でした。新しい技術を使えば、もうどこにも妥協する必要はありません」と語る。

ペブルビーチの観客を魅了することも重要だが、同氏はアストンの中国でのビジネス、そしてメルセデスのエンジニアリングをアストンの事業拡大にどのように利用するかという点にも注目している。

「中国では北米とは異なり、18歳~30代の若い顧客層に対応する必要があります。それから60代以上。その間の購買層は今のところ存在しません。中国のペースは信じられません。世界の富豪層の増加という点では、中国とアジアがトップだと思います」。

アストンにとっての未来とは、電動化と車内のユーザーエクスペリエンスの再考であり、これはメルセデス・ベンツの前世代の技術を採用するという過去の計画を破棄することを意味する。

「私たちは、メルセデスのインフォテイメント(情報とエンターテインメントを組み合わせた造語)やHMI(ヒューマンマシンインターフェース)を使用しないと決めました。未来を見据えてHMIを構築するなら、もう少し魅力的なものが必要です」とモアーズ氏。同社はメルセデスのMBUXインフォテイメントを取り入れずに、ランボルギーニやApple(アップル)と仕事をしているイタリアのサプライヤー、ART(アート)と一緒に新しいインフォテイメントシステムを構築しているという。

アストンマーティンは、電動化という業界の要求に応えるため、メルセデスのV8エンジン技術を利用して効率化を図る計画だ。

パワー、情熱、テクノロジー

Audi skysphere concept(画像クレジット:Tamara Warren)

ペブルビーチでは、自動車メーカーの経営者たちの間で、コンプライアンス基準を満たすために新しい動力源を開発する一方で、顧客の自動車に対する情熱を維持し、最新の車内エクスペリエンスで新しい顧客を惹きつけるというテーマが浮上した。

1社でできることではない。オーダーメイドの小さな超高級車ブランドは、エンジンや電子プラットフォームの供給を大手自動車メーカーや親会社の投資に頼っている。また、開発には競争力のある人材が必要だ。その上で、これらの小さなブランドは、大企業とは異なる独自性を強く打ち出す必要がある。

ランボルギーニのレッジャーニCTOは次のように話す。「将来に向けて一年前から開発が続けられている最も重要で高価なものの1つが、電子プラットフォームと呼ばれるものです」「ユーザーが電子プラットフォームに触ることはできません。電子プラットフォームはまさしく自動車の神経系(nervous system)です。私たちはグループ内でこれを使おうとしています。そうすれば、従来の車両に使用されていたパーツの多くや、識別できなかったシステムやコンポーネントを使用することが可能になります」。

ランボルギーニはVolkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)の傘下にあり、ブガッティ、ベントレー、Audi(アウディ)、ポルシェなどの主要な競合車もフォルクスワーゲングループの企業である。

「グループで共有できるものは利用していますが、私たちは他とは違うことをしようとしています」とレッジャーニ氏。ランボルギーニはAmazon Alexaとのパートナーシップに着手した最初の自動車ブランドであり、顧客にAlexaが受け入れられたことで将来的な思考への扉が開かれたと話す。「『音』は、音声認識のフィルターを構成する手段です。未来を想像してみてください。トラブルが発生してランプが点灯しているときに、Alexaに『どうすればいいか教えて』と尋ねたとします。Alexaは、車を停め、サービスアシスタントを呼ぶようにと教えてくれます。そして人工知能が訓練されます」。同氏は、サウンドデザインと音声の新しい使い方を構築するためのデータ収集に取り組んでいるという。

しかし、目の肥えたランボルギーニの顧客には、高価なテクノロジーも時代遅れにならないような魅力的なデザインで魅せる必要がある。「デザインはランボルギーニを購入する1つ目の理由です」とレッジャーニ氏は話す。「しかし、従来のようにデザインが良ければそれでいい、というわけではありません。今や多くが、美学の中にエンジニアリングを統合したデザインになっています。車を構成する部品の1つ1つに機能性が求められます。そして空気力学と冷却の融合。PHEV(プラグインハイブリッドEV)の登場で、冷却系はますます複雑になりました。バッテリーマネジメントも今後ますます複雑になるでしょう。それらすべての要件を満足するクールなデザインが必要です」。

今という時代のテクノロジーとデザイン

モントレー・カーウィークに展示されたビンテージカーと比較すると、特にモータースポーツカーでは、空気力学と重量配分が常に車の設計原理を支配し、進歩を促してきたことがわかる。しかし、現代におけるテクノロジーとデザインとは、スピード、電動化、ADAS(先進運転支援システム)、コネクティビティなどが、時代を超越する洗練されたシステムに収められていることを意味する。レッジャーニ氏は「最も重要なポイントの1つは、必ず感動を呼び起こすデザインであることで、これは譲れない条件です」と話す。

未来をデザインするということは、その方向性を伝えることだ。急速に変化する世界で、高級車メーカーはそのペースに必死で追いつこうとしているが、これは非常に難しい課題である。モントレー・カーウィークに参加しなかったTesla(テスラ)は、同社のAIの発表をこの週に合わせて行った。テスラでさえも電動化を進化させようとしている。

モントレーで、完璧に手入れされ、限られた数しか生産されず、それゆえに数億円もの価値があるビンテージカーを運転することは魅惑的な体験だ。筆者は1957年式Mercedes-Benz 300 SLというエレガントなマニュアルトランスミッション(MT)オープンカーを太平洋沿いの道路で試乗し、(パンデミックにより入場料が高額な)この神聖な世界を少しだけ垣間見ることができた。

グッドウッド、ウッドワード、そして今週末に終了したサロン・プリヴェも同様に魅力的だったが、豪華な屋外イベントが終了した今、自動車業界は、輸送機関の未来に焦点を当てたショーに視線を移したようだ。

現地時間9月7日にミュンヘンで開幕したIAAモビリティ(旧フランクフルト・モーターショー)では、旧態依然の自動車ショーのイメージを一新しようとする自動車メーカーの姿勢が感じられ、より臨場感のある体験を楽しむことができる。展示されているEVのモデルやコンセプトの数々は、進化のスピードは金銭では予測できないものの1つであることを思い出させてくれる。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)

自動運転用にレーダーの性能をソフトウェアで向上させるOculiiにGMが数億円規模の出資

レーダーセンサーの空間分解能を最大100倍に向上させることを目標としているソフトウェア開発スタートアップ企業のOculii(オキュライ)は、General Motors(ゼネラル・モーターズ)から新たに投資を獲得した。両社によるとその額は数百万ドル(数億円)に上るという。数カ月前にOculiiは、5500万ドル(約60億5000万円)のシリーズB資金調達を完了させたばかりだ。

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OculiiとGMは「しばらく前から」協力関係にあったと、CEOのSteven Hong(スティーヴン・ホン)氏はTechCrunchによる最近のインタビューで語っている。GMがOculiiのソフトウェアをどのように使用するつもりなのかということについて、同氏は具体的に明かそうとしなかったものの、GMのハンズフリー先進運転支援システム「Super Cruise(スーパークルーズ)」の機能を強化するために使用される可能性が高い。Oculiiは他にもいくつかの自動車メーカーと協力しており、その中の一社からも出資を受けていると、同氏は付け加えた。

「GMのような企業が、これはすばらしい技術だ、これは将来的に使いたいと言ってくれれば、サプライチェーン全体が注目し、そのソリューションや技術を採用するために、より密接に協力してくれるようになります。それが自動車メーカーに販売されるというわけです」と、ホン氏は語る。

Oculiiは顧客の自動車メーカーのためにハードウェアを製造するつもりはない(ただし、協業しているロボット企業のためにはセンサーを製造していると、同社の広報担当者は述べている)。その代わり、Oculiiはレーダーを製造している企業に、ソフトウェアのライセンスを提供したいと考えている。ホン氏によれば、低価格で市販されているレーダーセンサー(自動運転用に設計されたものではなく、緊急ブレーキや駐車支援などの限定されたシナリオ用に設計されたセンサー)に、同社のAIソフトウェアを使えば、より自動運転的な機能を実現させることができるというのが、Oculiiの主張だという。

「拡張性の高いものを提供する方法はソフトウェアによるものだと、私たちは強く確信しています。なぜなら、ソフトウェアはデータによって根本的に改善できるからです」と、ホン氏はいう。「ハードウェアの世代が新しくなれば、性能がより向上したハードウェアに合わせてソフトウェアは根本的に改善されます。また、ソフトウェアは基本的に、時間が経てばハードウェアよりもずっと早く、安価になっていきます」。

今回のニュースは、レーダーにとって間違いなく好材料になるだろう。レーダーは画像処理に限界があるため、一般的に補助的に使用されるセンサーだ。しかし、LiDARよりもはるかに安価に売られているレーダーの性能を、Oculiiが実際に向上させることができれば、自動車メーカーにとっては大幅なコスト削減につながる可能性がある。

世界で最も多くの電気自動車を販売しているTesla(テスラ)は最近、その先進運転支援システムからレーダーセンサーを外し、カメラと強力な車載コンピュータによるニューラルネットワークを使った「ピュアビジョン」と呼ばれるアプローチを採用することにした。しかしホン氏は、テスラが廃止したレーダーは非常に解像度が低く「既存のパイプラインに何も追加するものではない」と述べている。

しかし、技術が進歩すれば、テスラも必ずしもレーダーを排除しようとはしないだろうと、ホン氏は考えている。「基本的に、これらのセンサーはそれぞれがセーフティケースを改善し、それによって99.99999%の信頼性に近づくことができます。結局のところ、それが最も重要なことなのです。信頼性を、できるだけ多くの9が並ぶ確率まで近づけることです」。

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画像クレジット:Oculii

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルがウェアラブルのチーフ、ケヴィン・リンチ氏を自動車部門のリーダーに任命との報道

Apple(アップル)は、秘密裏に進めている自動運転車部門の開発を指揮するために、新たな幹部を任命したと報じられている。Bloombergによると同社は、今週初めにiPhoneメーカーからFordに移った役員Doug Field(ダグ・フィールド)氏が後任として、Project Titanの統括にKevin Lynch(ケヴィン・リンチ)氏を起用したという。

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初めて見る名前かもしれないが、ここ数年のAppleイベントを見ていた人は、ステージ上でリンチ氏を見たことがあるはずだ。リンチ氏は2013年にAdobeからAppleへ移籍して、同社のウェアラブル&ヘルス部門を統括し、watchOSの新しい機能が発表されるときには、紹介役を務めることが多かった。

Bloombergによるとリンチ氏は、2021年の早い時期に同事業部に参加したが、現在、その全体を統括している。同報道によると、リンチ氏の任命はAppleが、リリースすれば誰の目にも明らかな自動車そのものではなく、その走行を支えるソフトウェアに力を入れていることの表れだという。

編集部注:本稿の初出はEngadget

画像クレジット:BRITTANY HOSEA-SMALL/AFP/Getty Images

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Hiroshi Iwatani)

40%軽量化で航続距離アップ、トレッドが再生可能なContinentalのエコなコンセプトタイヤ

自動車の環境負荷を低減するためにさまざまな取り組みが行われているが、そのクルマが履いているタイヤはどうだろうか?Continental(コンチネンタル)は、それが助けになるかもしれないと考えている。自動車情報サイトRoadshowによると、Continentalは、材料の半分以上が「トレーサブル、再生可能、再生素材」の「Conti GreenConcept」(そう、コンセプトタイヤだ)を発表した。天然ゴム製のトレッドを少しの手間でリニューアルすることも可能だ。それは全く新しいアイデアではないが、再生可能なトレッドは一般的に大型商用トラックに限られていた。3回再生すれば、総走行距離に対してケーシングに使用される材料が通常の半分になる。

原料の約35%は再生可能素材で、タンポポゴム、もみ殻を原料としたケイ酸塩、植物油や樹脂などが使われている。また、17%はペットボトルをリサイクルしたポリエステル繊維、再利用スチール、回収カーボンブラックを使用している。

このデザインによりクルマ自体の効率も向上するはずだ、とContinentalは付け加えた。新しいケーシング、サイドウォール、トレッドパターンにより、GreenConceptは従来のタイヤに比べて約40%軽量化され、約16.5ポンド(約7.5kg)になった。その結果、EUの最高ランクのタイヤに比べて、転がり抵抗が25%減少したという。Continentalの試算によると、EVの航続距離がそれで6%伸びるとのこと。

我々の自家用車にこのタイヤが装着される日はまだそんなに近くないもしれないが、これは単なる思考エクササイズではない。Continentalは2022年からリサイクル技術を段階的に展開する予定で、再生ボトルを使ったタイヤの生産も計画している。

Conti GreenConceptのような取り組みは、Continentalのイメージアップにもつながる。同社は2030年までに最も環境に優しいタイヤメーカーとなり、「遅くとも」2050年までには完全なカーボンニュートラルを実現したいと考えている。しかし、パワートレインだけでなく、多くのコンポーネントが地球に優しくなるような、より全体的なエコカーへのアプローチを示唆している。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Jon Fingas(ジョン・フィンガス)氏は、Engadgetのウィークエンドエディター。

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画像クレジット:Continental

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(文:Jon Fingas、翻訳:Aya Nakazato)

ナイジェリアの自動車テックAutochekがROAM Africaからのオンライン自動車販売Chekiのケニアとウガンダ事業を買収

ナイジェリアの自動車テック企業であるAutochek(オートチェク)は、現地時間9月6日、Ringier One Africa Media(ROAM、リンギアー・ワン・アフリカ・メディア)からCheki Kenya(チェキ・ケニア)とCheki Uganda(チェキ・ウガンダ)を非公開の金額で買収することを発表した。

声明によると、Autochekは今後数週間のうちに取引を確定する予定だ。今回の買収により、Autochekは東アフリカへの進出を完了し、約1年前にChekiからナイジェリアとガーナの事業を最初に買収したのに続くものとなる。

Chekiは2010年に、ケニアのディーラー、輸入業者、個人販売者向けのオンライン自動車販売事業を開始した。ナイロビに本社を置くChekiは、その後、ナイジェリア、ガーナ、タンザニア、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエに事業を拡大した。

その後2017年にROAMに買収され、Jobbermanのようなネットワーク内のオンラインマーケットプレイスやクラシファイドの仲間に加わった。

ROAMのウェブサイトによると、Chekiはまだタンザニア、ザンビア、ジンバブエで事業を行っている。しかし、これらの市場はかなり不活発なため、実質AutochekはChekiの主な事業をすべて完全に買収したといっていいだろう。

Chekiのケニア市場は、双方にとってワクワクする市場だ。この子会社には70万人のユーザーがいて、毎月1万2000台以上の車両を掲載している。また、過去2年間で前年比80%の成長を遂げているとのことで、Autochekの地域拡大計画にとって貴重な資産となっている。

AutochekのCEOであるEtop Ikpe(エトプ・イッペ)氏は「Cheki Kenyaは、常に最重要部門のような存在でした。ナイジェリアとガーナの買収を完了した当時は、このようなことを意識していたわけではありませんでしたが、実現したことはすばらしいことです」とTechCrunchの取材に語っている。

ケニアでは、ナイジェリアやガーナに比べて、自動車金融におけるクレジットの普及率が高い。東アフリカでの普及率は27.5%であるのに対し、西アフリカ全体市場では5%だ。そのため、Autochekが東アフリカ市場を楽観視しているのも納得できる。今回の買収に先立ち、創業1年の同社は、ガーナやナイジェリアと同様の戦略で、ケニアのいくつかの銀行と共同で、クルマの所有者に資金を提供する試験的な取り組みを行った。今回の買収は、この市場における当社の地位を確固たるものにするものだとイッペ氏は述べている。

Chekiがすべての主要市場で事業を1年以内に売却したことから、4つの事業体の業績が悪かったためにROAMは適切な買い手を早く見つけざるをえなかったのではないか、と考える人もいるかもしれない。

しかし、CEOのイッペ氏は、窮地に追いやられたことによる売買の憶測については否定した。今回の買収が立て続けに行われたのは、Chekiが運営していたクラシファイドモデルが、より現代的な取引モデル(Autochekやアフリカの主要な自動車メーカーが採用している)に移行する必要があることを双方が理解していたからだと述べている。そのため、今回の取引をChekiにとって必要な移行であると捉えている。

イッパ氏は過去にRingier(合併前のROAMの1部門)との関係を築いており、Ringierが最終的に買収したクラシファイド型取引会社であるDealDey(ディールディ)を経営していたため、Autochekに会社を売却することは難しい決断ではなかったと、イッパ氏はTechCrunchに語っている。

「彼らにとっては長期的な戦略であり、私たちのビジネスモデルを信じてくれているのだと思います。そして、私たちが将来的に何かを成し遂げられるという希望を持っています。また、このビジネスと従業員にとって適切な場所を見つけてあげるということでもありました」と述べている。

ROAMのClemens Weitz(クレメンス・ヴァイツ)CEOは声明の中で「世界中で、デジタル自動車プラットフォームの新たな進化が見られ、深い専門性が求められています。特にアフリカでは、Autochekこそが、これまでにない消費者体験を生み出すための、最高のチームと専門知識を持ったプレイヤーであると考えています。ROAM Africaにとって、今回の売買は単に良い取引だったというだけではありません。我々の他の事業の戦略的なシナリオにさらに集中することができるようになります」と述べている。

Autochekの東アフリカへの進出はMoove(ムーブ)、Planet42(プラネット42)、FlexClub(フレックスクラブ)などの自動車関連企業が投資家から注目されている最中のことで、アフリカ大陸では柔軟な自動車金融のニーズが高まり続けている。

この大陸で最も重要な自動車金融市場は、間違いなく南アフリカだ。他の自動車会社も何らかの形でこの市場に進出しているが、Autochekもこの市場での事業拡大を計画している。その理由は明らかだ。

南アフリカは、大陸の中でも自動車ローンの普及率が最も高い、最良の市場だ。競争は激しいように見えるが、イッパ氏は、他社とは異なる市場に合わせたサービスを提供する機会が存在すると考えている。

「当社のプラットフォームの良さは、多様性があることです。例えば、我々は小売りやB2Bのアプローチが可能です。ダイナミックなたくさんのやり方ができるのです。だからこそ、すべての地域に進出することを目標とするのは当然のことだと思っています。東と西に進出しましたが、北と南のアフリカでも同じようでありたいと思って活動を続けていきます」と述べている。

Autochekによると、この目標を達成するための資金調達を現在行っており、年内には完了する予定だ。

画像クレジット:Autochek / Autochek

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Akiito Mizukoshi)

設立10周年を前に黒字化を達成した元Nokiaスタッフが企業したJolla、モバイル以外の展開も視野に

約10年前、Nokia(ノキア)のスタッフ数人が、Google(グーグル)のAndroidに代わるLinuxベースのモバイルOSを開発するために設立したフィンランドのスタートアップ企業Jolla(ヨーラ)。現在Sailfish OSを手がける同社は、現地時間8月25日、黒字化を達成したことを発表した。

モバイルOSのライセンス事業を行っているJollaは、2020年を事業の「ターニングポイント」と位置づけていた。売上高は前年同期比53%増、EBITDAマージン(利払い前・税引き前・減価償却前利益を売上高で割った比率。経営効率を示す)は34%となった。

Jollaは、新しいライセンス製品(AppSupport for Linux Platforms)の提供を開始したばかりだ。この製品は、その名の通り、Linuxプラットフォームに一般的なAndroidアプリケーションとの互換性をスタンドアロンで提供するもので、顧客はSailfish OSのフルライセンスを取得する必要はない(もちろん、Sailfish OSは2013年からAndroidアプリケーションに対応している)。

Jollaによると、AppSupportは初期の段階から、自社のインフォテインメントシステム(情報と娯楽を提供するシステムの総称)を開発するためのソリューションを探している自動車会社の「強い」関心を集めているという。AppSupportがあれば、Googleの自動車向けサービスを使わずに、車載のLinux互換プラットフォームでAndroidアプリケーションを実行できる、というのがその理由だ。多くの自動車メーカーがAndroidを採用しているが、Jollaが提供する「Googleフリー」の選択肢には、さらに多くのメーカーが興味を持ちそうだ。

車載のLinuxシステムにもさまざまなユースケースが考えられる。例えばIoTデバイスで人気の高いアプリケーションを実行できるようにして顧客に付加価値を提供する、といった幅広い需要が期待できる。

CEOで共同創業者のSami Pienimäki(サミ・ピエニマキ)氏は次のように話す。「Jollaは順調に成長しています。2020年、正式に黒字化できたことをうれしく思っています」。

ピエニマキ氏は「資産や会社が全体的に成熟してきたことで、顧客が増え始めています。私たちは少し前から成長に注力し始めました」と述べ、同氏のトレードマークでもある控えめな表現で好調な数字の理由を説明する。「Jollaは10月に設立10周年を迎えますが、ここまで長い道のりでした。この過程で、私たちは着実に効率性を高め、収益を向上させることができました」。

「2019年から2020年にかけて、私たちの収益は50%以上伸び、540万ユーロ(約7億円)となりました。同時に運用コストベースもかなり安定してきたので、それらが相まって収益性を高めることができました」。

消費者向けのモバイルOS市場は、ここ数年、GoogleのAndroidとApple(アップル)のiOSにほぼ独占されているが、JollaはオープンソースのSailfish OSを政府や企業にライセンス供与し、Googleの関与を必要としない、ニーズに合った代替プラットフォームとして提供している。

意外かもしれないが、ロシアは同社が早くから参入した市場の1つである。

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近年では、地政学的な緊張が技術プラットフォームにもおよび、場合によっては外国企業による米国の技術へのアクセスが(破廉恥にも)禁止されるなど、デジタル主権の主張が強まり、特に(米国以外の)独立したモバイルOSプラットフォームプロバイダーの必要性が高まっている。

これに関連して、6月には中国のHuawei(ファーウェイ)が、Androidに代わる独自のスマートフォン「HarmonyOS」を発表している。

ピエニマキ氏はこの動きを歓迎し、Sailfish OSが活躍する市場の妥当性を示しているとしている。

HarmonyOSがSailfishのパイを奪ってしまうのではないかという質問に対し、同氏は次のように答える。「私は、HuaweiがHarmonyOSの価値提案や技術を出してきたことを、必ずしも競合するものとは考えていません。むしろ、市場にはAndroid以外の何かへの要求があることを証明しているのだと思います」。

「Huaweiは彼らの市場を開拓し、私たちも私たちの市場を開拓しています。両者の戦略とメッセージは、お互いにしっかりとサポートし合えていると思います」。

Jollaは、数年前からSailfishの中国進出に取り組んできたが、この事業は現段階ではまだ進行中である。しかし、ピエニマキ氏によれば、Huaweiの動きは、極東地域におけるAndroid代替製品のライセンス事業拡大という目標を妨げるものではないという。

「中国市場では一般的に健全な競争が行われ、常に競合するソリューション、激しく競合するソリューションが存在しています。Huaweiはその中の1つであり、私たちもこの非常に大きく難しい市場にSailfish OSを提供できることをうれしく思います」。

「私たちは中国で良い関係を築いており、中国市場に参入するために現地のパートナーと一緒に仕事をしています」とピエニマキ氏は続ける。「Huaweiのような大企業がこの機会を認識することは非常に良いことだと思っています。これにより、業界全体が形成され、Androidを選択せざるを得ない状況は解消されました。他に選択肢があるのですから」。

Jollaによると、AppSupportについては、自動車業界が「このようなソリューションを積極的に探している」という。同社は「デジタルコックピットは自動車メーカーにとって他社と差別化するための重要な要素」と指摘し、自動車メーカー自体がコントロールできる戦略的に重要な要素であると主張する。

「ここ数年、この分野はポジティブな状況にあります。Tesla(テスラ)のような新規参入企業が自動車業界を揺るがしたことで、従来のメーカーはコックピットでどうやってユーザーに楽しんでもらうか、という点について、これまでとは異なる考え方をする必要に迫られています」とピエニマキ氏。

「この数年間の多額の投資により、この業界は急速な発展を遂げてきました。しかし同時に、私たちは、私たちの限られたリソースの中で、この技術のチャンスがどこにあるのかを学んでいるところだということを強調しておきたいと思います。(Sailfish OSは)自動車分野での利用が多いのですが、他の分野、たとえばIoTや重工業などでも可能性があると考えています。私たちはオープンに機会を探っています。でも、ご存じの通り、自動車は今とてもホットな分野ですからね」。

「世界には一般的なLinuxベースのOSが数多く存在していますが、私たちはそれらのOSに優れた付加技術を提供することで、厳選されたアプリケーションを利用できるようにしています。例えばSpotifyやNetflix、あるいは特定の分野に特化した通信ソリューションなどが考えられます」。

「そのようなアプリケーションの多くは、当然ながらiOSとAndroidの両方のプラットフォームで利用できます。そして、それらのアプリケーションを単に存在させるだけでなく、Linuxプラットフォーム上で独立して実行することができれば、多くの関心を集めることができます」。

Jollaはもう1つの展開として、AppSupportの販売促進とSailfishライセンスビジネスのさらなる成長のために、2000万ユーロ(約26億円)を目標とした新たな成長ステージの資金調達の準備を進めている。

ヨーロッパは現在もモバイルOSライセンスビジネスの最大の市場であり、Sailfishの成長の可能性が見込まれている。また、ピエニマキ氏は、アフリカの一部の地域でも「良い展開」が見られると述べている。中国への進出をあきらめたわけでもない。

この資金調達ラウンドは2021年の夏に投資家に公開され、まだクローズされていないが、Jollaは資金調達を成功させる自信があるという。

「私たちはJollaストーリーの次の章を迎えようとしています。そのためには新しい機会を探る必要があり、そのための資本が必要で、私たちはそれを探しています。投資家サイドには現在資金が豊富にあります。一緒に仕事をしている投資銀行と私たちは、そこに勝機を見出しています」とピエニマキ氏。

「この状況であれば、投資家には必ず興味を持ってもらえると思います。Sailfish OSとAppSupportの技術への投資、さらには市場開拓のための投資を獲得して、市場の多くのユーザーに私たちの技術を利用してもらえるはずです」。

画像クレジット:Jolla

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

IAA MobilityでEV挑戦状を叩きつけるメルセデス・ベンツ

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、ドイツで開催されるIAA Mobility(IAAモビリティ)ショーに先立ち、初のAMGブランドの高性能EV、セダン、GクラスSUVコンセプトなど、多数の電気自動車(EV)を発表した。いずれも、2020年代の終わりまでにEV専業メーカーになる決意の一部である。
メルセデスはすでに完全電気自動車であるEQSの生産を開始している。これは、Sクラスの電気自動車版カウンターパートとなることを目的とした、先進的で洗練されたフラッグシップカーだ。IAA Mobilityでメルセデスは、次の大きなEV関連の動きを紹介することを目指している。

2021年の初めに、メルセデスは400億ユーロ(約5兆2100億円)に及ぶ完全電気自動車化計画を打ち出した。このことによって、会社をより緊密に上流から下流まで統合し、従業員を訓練し、製品に利用するために必要なバッテリーを確保することを目指している。この計画は、実際には、より多くのEVを生産して販売するという以前の目標をさらに拡大したものだ。メルセデスは2017年に、2022年までにラインナップ全体を電気化すると発表していた。これはガスハイブリッド、プラグインハイブリッド、またはバッテリー式電気自動車を意味している。そして先の7月には、その2022年までに現在車両を提供するすべてのセグメントで、バッテリー式電気自動車を提供すると発表した。

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メルセデスは、2025年には以降のすべての新車の基礎となる、3つの完全電動アーキテクチャを立ち上げることを目指している。MB.EAプラットフォームは中型から大型の乗用車に使用され、AMG.EAはメルセデスAMG車を支え、VAN.EAは電気乗用ミニバンと小型商用車専用のアーキテクチャだ。同社はすでに、MMAという名で知られる「電気ファースト」のコンパクトカーアーキテクチャを発表しており、2024年までには車両に搭載される予定だ。

メルセデスベンツの責任者であるOla Källenius(オラ・ケレニウス)氏は、新しいEQEの詳細を発表する際に「特にメルセデスが属する高級車セグメントでは、EVシフトが加速しています」と語った。「それこそが『EVファースト』から『EVオンリー』へと加速した理由です。2022年には、サービスを提供しているすべてのセグメントにバッテリー電気オプションを提供します。そして2025年までには、製造するすべてのモデルに少なくとも1つの電気式代替製品を提供します」。

ケレニウス氏は、全電気自動車への道を進むメルセデスは、2030年まで市場の状況が許す限り、メルセデス車を2台売るごとに1台のEVを販売することを目指していると語った。

メルセデスベンツEQB

画像クレジット:メルセデスベンツ

メルセデスが2021年初めに明らかにしたこの車種は、同社のイベントに登場した。そして今回、それらが2022年のある時期に米国で発売されることを含め、さらにいくつかの詳細が共有された。2021年の終わりにはヨーロッパと中国で発売される予定だ。

EQBは、ハンガリーのケチケメート工場から送り出される最初の電気自動車となる。中国市場向けの車両は北京で生産されている最中だ。米国に登場するEQBには、2つのバリエーションがある。最初に登場するコンパクトSUVは168 kW(255馬力)のEQB 300 4MATICだ。その次に215 kW(288馬力)のEQB 350 4MATICが発売される。前者は、390ポンドフィート(528.77ニュートンメートル)のトルクを持つ。どちらの場合も、航続距離は約419kmとなる。これは、米国時間9月5日に明らかにされた他の車種の航続距離よりも少し短い。メルセデスは、前輪駆動モデルと並んで、長距離バージョンも続いて提供される予定だという。

また電動パワートレイン(動力伝達機構)は、電動モーター、ディファレンシャル付き固定比トランスミッション、冷却システム、パワーエレクトロニクスで構成されるコンパクトな統合ユニットだ。前輪車軸には非同期モーターを採用している。

コンパクトなEQBは普段は5人乗りだが、大家族のために追加のスペースが必要な場合は、7人乗りにすることができる。

メルセデスベンツEQE350

画像クレジット:メルセデスベンツ

EQEセダンは、フラッグシップEQSを望んでいるものの、それを買う余裕がない人たちからの要望に応えるモデルだ。このセダンは、288馬力と391ポンドフィート(530ニュートンメートル)のトルクを発生する単一の電気モーターを備えている。気にしている人たちのために付け加えると、それはEQSより41馬力ほど少ない。90kWhのバッテリーは、約660kmの航続距離を提供し、急速充電を行うことで15分以内にさらに250km分を充電できる。市場投入時には、仕様の異なる2番目のモデルもリリースされる予定だが、メルセデスはそれ以上の詳細を発表していない。

EQSに備わるの機能の多く、すなわち先進運転支援システム、自動的に開くフロントドア、後輪車軸ステアリングなどは、弟分のこの車種にも搭載される。マルチスクリーン接続型エンターテインメントシステムのMBUXハイパースクリーンはオプションとして利用可能だ。ボディはやや小さめだが、室内はゆったりとしており、現在のEクラスに比べて、フロントシートのショルダー部が27mm広く、シートポジションが65mm高く、キャビン全長が80mm長くなっている。

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EQEは、メルセデスが2021年発表した4番目のEQ車であり、ケレニウス氏によると、ほどなくEQSとEQEのSUVバージョンが続くという。生産は世界市場向けのものはブレーメンで、中国市場向けのものは北京で行われ、2022年半ばには順次全世界での発売が開始される。

メルセデス-AMG EQS 53 4MATIC +

画像クレジット:メルセデスベンツ

さてパワーとパフォーマンスの登場だ。AMG EQSは、EQアーキテクチャに基づく最初のバッテリー式AMG生産モデルだ。メルセデス-AMGの本拠地であるアファルターバッハで生まれたこのクルマは、パワー、ボディ、豪華さを完璧に組み合わせたゼロエミッション車を具現化することを目的としている。その雰囲気を高めるために、このクルマは走行時に唸るような音を出すことができるようなサウンドシステムを備えた、特別なハードウェアで構成される。このことによって車内、車外の人たちに本物のAMG感を与えることができる。

AMG EQSは2台のAMG電気モーターを搭載し、システム全体の出力は484kW(658馬力)である。「レーススタート」まで踏み込んだ場合には、560kW(761馬力)と1020ニュートンメートルのトルクが得られ、3.4秒で0から時速100kmに到達し、最高速度は時速250kmとなる。

合計108kWhのストレージ容量を持ち580kmの航続距離を提供するバッテリーに対して、回生ブレーキシステムがエネルギーを送り返す。またこの車両は、200kWを超える高速DC充電にも対応している。

AMG EQSは、シュトゥットガルト郊外のジンデルフィンゲンにある、メルセデスベンツのカーボンニュートラルな工場の「Factory 56」(ファクトリー56)で生産されている。メルセデスは2021年末にこの車両を市場に投入することを計画している。

メルセデスコンセプトEQG

画像クレジット:メルセデスベンツ

さて「マイティG」のお目見えだ!EQGはGクラスの電動オフロードコンセプトカーで、EQモデルの先進的豪華さをともなった4×4 Gの強力な特徴を備えている。量産の前にはまだ多くの変更が考えられるため、メルセデスはEQGに関してはあまり多くの詳細は提供しなかったが、私たちが知っているのは以下のようなものだ。すなわち同車は「十分なパワーを持った」4基のモーターを持ち、それぞれのモーターは独立して制御できるようにそれぞれ車輪の近くに置かれている。またオンロードおよびオフロード走行用の新しい後輪車軸と、2速ギアボックス装備されている。

そのオフロード走行は、シリーズモデルへの開発の最後に、グラーツのシェークル山(標高1445m)にある、メルセデスのテストトラックでテストされる予定だ。

メルセデス・マイバッハ・コンセプト

画像クレジット:メルセデスベンツ

このSUVコンセプトカーは、比較的長い伝統を誇るマイバッハの歴史の中で、初の完全電気自動車となる。マイバッハEQSは、ツートンカラーの塗装仕上げなど、従来モデルのクラシックな特徴を備えながら、EQラインナップの先進的ドライブテクノロジーを備えた車種だ。おそろしく洒落た車両でもある。白いピアノラッカーの内装は豪華でなめらかで、映画「エリジウム」の後半で空中の楽園にたどり着くために使われた乗り物を思わせるかもしれない。仕事や休憩を快適に行える場所となるが、特に「エグゼクティブシート」や「ショーファーパッケージ」を選んだ場合にはなおさらだ。

このSUVは2023年には市場に出回る予定だが、メルセデスは早ければ2022年にも次のSUVのプラットフォームを導入すると発表しており、その予想される航続距離は約600kmである。

画像クレジット:Mercedes-Benz

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(文: Kirsten Korosec、Rebecca Bellan、翻訳:sako)