埼玉大学発の進化分子工学スタートアップEpsilon Molecular Engineeringが資金調達

埼玉大学発の進化分子工学スタートアップEpsilon Molecular Engineeringが資金調達

進化分子工学を基盤技術とする埼玉大学発バイオテック系スタートアップのEpsilon Molecular Engineering(EME)は12月23日、シリーズAラウンドのセカンドクローズとして資金調達を実施したと発表した。

セカンドクローズの引受先は、リード投資家の三菱UFJキャピタル、地域経済活性化支援機構(REVIC)と群馬銀行がその子会社を通して運営するぐんま医工連携活性化投資事業有限責任組合、花王。また商工組合中央金庫より劣後ローンを実行、埼玉りそな銀行より借入、首都圏リースよりリースを実行した。シリーズAラウンドにおいて、エクイティファイナンス、借入、リースにより合計5.7億円を調達したことになる。

調達した資金により同社は、Heavychain single domain抗体(VHH。シングルドメイン抗体)を中心に新世代中分子バイオ創薬の研究開発をさらに推進する。

EMEは、「未来のバイオ分子を創造する」をミッションに掲げ、埼玉大学発スタートアップとして2016年に設立。設立者および現代表取締役は、埼玉大学大学院 理工学研究科物質科学部門 根本直人教授。

進化分子工学の技術によって、VHHやcyclic peptidesなどの巨大な配列多様性を有するライブラリ「cDNA Display Libraries」を独自に構築し、次世代シークエンス NGS、FACS、AIを活用した独自のハイスループットスクリーニング法によるシステムを構築した。

進化分子工学とは、突然変異と淘汰による生物の進化サイクルを試験管内で再現し、タンパク質など分子の生物機能に改良を加えていく研究。分子に変異を導入・増幅することで多様性を創出し、「望む機能を備えるものだけが生存する」プロセスを繰り返すことで、新たな分子機能を開発する。

現在同社は創薬・医療領域にフォーカスしており、新しいモダリティによる新世代のバイオ医薬品や中分子医薬品の開発候補品の取得、細胞・遺伝子治療でのVHHの活用に取り組んでいる。

また、製薬企業などの提案に基づく共同研究開発を展開し、さらに自社研究開発パイプラインについて共同研究開発パートナーとの早期の提携を目指して研究開発に取り組んでいる。最近の成果として、新型コロナウイルスに対し感染抑制能をもつVHHを取得した旨を北里大学、花王と連名で発表した(「大村智記念研究所片山和彦教授ら研究グループが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功」)。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Epsilon Molecular Engineering医療(用語)埼玉大学進化分子工学資金調達(用語)新型コロナウイルス(用語)日本(国・地域)

米国がモデルナの新型コロナワクチン緊急使用を承認、ファイザーに続き2例目

米食品医薬品局(FDA)はModerna(モデルナ)の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンに対し緊急使用許可(EUA)を出した。今週初めに諮問委員会が許可を推奨していたことを受けてのものだ。EUAで米国での使用が認められたコロナワクチンは、Pfizer(ファイザー)とBioNTech(ビオンテック)が共同開発し、先週承認されたものに続き2例目となる。

Anthony Fauci(アンソニー・ファウチ)博士がNBC番組Todayでのインタビューで語ったところによると、Modernaのワクチンの接種は12月21日か22日には始まりそうだ。この承認から接種までのタイムラインは、PfizerのEUAから実際に最初の接種が先週始まるまでのものと同じだ。

Pfizerのワクチンと同様、ModernaのワクチンもmRNAタイプだ。つまり、ウイルスそのものは含まず、人体に特定のタンパク質をつくるよう伝える遺伝子情報だけを含んでいる。そのタンパク質は新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルスSARS-CoV-2が持つものとほぼ同じだ。Modernaのワクチンでは人体がそれ自体は無害なタンパク質を作るようにするだけで、免疫システムによる自然免疫能がタンパク質に反応してウイルス防御法を構築する。防御システムは体に記憶され、その一方でワクチンそのものはほどなくして自然に消失し、人に免疫だけを残す。

米国での使用はまだ承認されていないオックスフォード大学とAstraZeneca(アストラゼネカ)が共同開発したワクチンは、接種した人の体の中でタンパク質を急増させないよう弱毒化され、組み替えられた普通の風邪のウイルスを使っている。結果として人体は免疫反応をつくることができる。これはワクチン開発の過程でより確立されている方法だ。しかしModernaとPfizerのmRNAベースのワクチンは大規模なフェーズ3治験の予備データでかなりの有効性を示した。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Modena、新型コロナウイルス、ワクチン、米国

画像クレジット: Konstantinos Zilos/SOPA Images/LightRocket

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(翻訳:Mizoguchi

世界初、英国がファイザーとBioNTechの新型コロナワクチン緊急使用を承認

英政府は医薬品当局の推奨を受け、BioNTech(ビオンテック)とPfizer(ファイザー)が共同開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した(英国政府リリース)。

英国は広範使用を目的に新型コロナワクチンを承認した初の国となる。承認により、高齢者ケアホームの住人や医療従事者といった最も「ハイリスク」な人たちが年末までにワクチンの接種を受けられるようになる。

BBC(BBC News記事)は、英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)が来週からワクチンを提供してもよいと述べた、と報じている。ただし、まず最初に誰が接種を受けるのかははっきりとしていない。

緊急使用の申請は、BioNTechとPfizerが先月MHRAに提出した。また、オーストラリア、カナダ、欧州、日本、米国の当局にも提出したが、まだどこもゴーサインを出していない。

声明文の中で、Pfizerの会長兼CEOのAlbert Bourla(アルバート・ブーラ)氏は英国の緊急使用の承認を「新型コロナとの戦いの中で歴史的な瞬間」と表現した。

「この承認は、科学が勝利すると最初に我々が宣言して以来、取り組んできた目標だ。注意深い評価を行う能力、そして英国民を守ろうとタイムリーに行動を取ったMHRAを称賛します」と同氏は述べた。「今後さらに承認や許可が得られると予想していて、これまでと同様に緊急性をもって高品質なワクチンの世界に向けた安全供給への移行に注力します。多くの人が感染する中で、この壊滅的なパンデミックを終わらせるという集団レースにおいては毎日が大事です」。

英国の承認は、BioNTechとPfizerが世界で行ったフェーズ3治験を含む試験データに基づいている。フェーズ3の治験ではワクチンの効果は95%で、安全上の重大な懸念は見当たらないとされた。

このワクチンはまたそれまでSARS-CoV-2ウイルスにさらされていなかった治験参加者、さらされていた治験参加者のどちらにおいても効果的であることが示された。

効果は年代、性別、人種、民族に関係なく一貫性があり、65才以上の人での効果は94%だった、と両社は明らかにした。

英首相Boris Johnson(ボリス・ジョンソン)氏は12月2日朝、正式承認のニュースをツイートした。そこには、ワクチンが「来週から英国で接種可能になります」と書いている。(2つめのツイートでは、一般的にはワクチン接種が「ついに」通常の経済活動に戻ることを可能にする、と推測している)。

英国はBioNTechとPfizerのワクチンを4000万回分注文している。これは2000万人分ということになる(1人2回の接種が必要)。ただ、注文したワクチンすべてを受け取るには時間がかかる。

「締結した契約を実行するにあたり各国に平等に提供できるよう、ワクチン4000万回分の提供は2020年から2021年にかけて段階的に行われます」と両社はプレスリリースで述べた。

「ワクチンが英国で承認され、我々はワクチン供給を始めるために迅速に動きます。初出荷分は数日内に英国に届くと見込んでいます。納入完了は2021年になります」と付け加えた。

英国の国民保健サービス(NHS)は、NHS最高経営責任者Simon Stevens(サイモン・スティーヴンス)卿がいうところの「英国史上最も大規模なワクチンキャンペーン」に向けて準備を進めている。BBCによると、50ほどの病院がスタンバイし、カンファレンスセンターのような施設に設けるワクチンセンターも準備中だ。

ジャーナリストへのコメント(Twitter投稿)のなかで、保健大臣Matt Hancock (マット・ハンコック)氏は来週80万回のワクチンが利用でき、年が明けてさらに多くのワクチンが投入されると述べた。「製造されるスピードで接種を展開していきます」と付け加えた。

ハンコック氏はワクチン初回分は、ケアする人も含め、ケアホームにいる「最も高齢」の人に優先して接種すると述べた。「そして当然のことながら年齢のレンジを下げていきます。NHSスタッフもまたワクチン接種を優先されるべきリストの上の方にきます。それから健康面で影響を受けやすい人、特にコロナウイルスに対して脆弱である人も優先されます」。

ワクチンは21日の間隔を空けて2回接種する必要がある。12月2日の記者会見で、MHRAと英政府の共同ワクチン・予防接種委員会の担当者は、完全な免疫は2回目の接種の7日後以降に得られる、と明らかにした。ただし、1回目の接種から何日か経って多少の免疫がつくとも述べた。

記者会見の中でMHRAのCEOであるJune Raine(ジューン・レイン)博士は、ワクチンの承認につながったデータについて行われたチェックの基準に「絶対的な自信」を持つことができると話した。米国の食品医薬品局(FDA)のような各国の当局で行われているものと「同等」のチェック基準だと表現した。FDAはまだ緊急使用を承認していない。

英国の対応は9月に始まり、チームの招集や、スタッフが並行して作業を進められるようにキャパシティを確保するなど数カ月かけて準備した、とレイン博士は述べた。

ハンコック氏が主張していた、EUよりも早いワクチン承認にブレグジットが関係していた、ということについては、レイン博士はむしろ2021年1月1日(ブレグジット移行期間が終わる時)まで効力を持つEU法の下で準備できたことの恩恵があったと話した。

MHRAのスピーディな承認はローリングデータと専門性へのアクセスに頼っていた、とレイン博士は述べ、差し迫っている英国のEU脱退が、今後追加される新型コロナワクチンの承認を遅らせるかについては疑問を呈した。

「進捗は完全に、レビューや確固たる評価、独立したアドバイスという点においてデータが利用できるかどうかにかかっていました。これが、EUとの関係を明確にできればと思います」とレイン博士は付け加えた。

共同ワクチン・予防接種委員会(JVCI)の当局は、BioNTechとPfizerのワクチンはマイナス70度で保管される必要があり、これにともなう制約がワクチンプログラムの初段階の実行において「フレキシビリティ」につながるかもしれない、と述べた。

画像クレジット:MHRA/JVCI press conference slide

つまりそれは、たとえば医療現場のスタッフが、働く場所に保冷施設があるために自分たちがワクチン接種を受けるのが簡単であればそうすることを意味する。しかしながら当局はまた、短い期間ながらワクチンが2〜8度の環境で品質を維持できるとも言及した。これはケアホームでの接種にともなう困難を解決するのに役立つとの考えを示した。

英国は、EUにある施設(ベルギーの製造施設)からBioNTechとPfizerのワクチンの供給を受ける。ブレグジット移行期間の終わりが迫るなか、EU脱退が将来のスムーズなワクチン供給における物流面での支障を引き起こすことになるかどうかは不明だ。もし支障があれば、製造と同じスピードで接種を行うというハンコック氏の計画に赤信号が灯る。これは、ブレグジット後の英国とEUの貿易について交渉がまだ続いているからであり、決着がつかない場合、税関検査により輸入遅れが発生する懸念もある。

また、(英国に限定しない)別の疑問として、ワクチンの効果がどれくらい続くのかというものがある。BioNTechとPfizerのワクチンはかなりのスピードで開発され、この疑問に答える長期的なデータはまだない。

他の企業が開発している新型コロナワクチン候補にも同じことが言える。

「英国の緊急使用承認により、英国市民は治験をのぞいて世界で初めて新型コロナワクチンを接種する機会を手にします」とBioNTechの共同創業者でCEOのUgur Sahin(ウグル・サヒン)氏は声明で述べた。「英国でのワクチンプログラムの展開でハイリスクの人たちの入院数を減らせると確信しています」

「我々の目的は、承認を受けた安全で効果のあるワクチンを必要な人に提供することです。世界中の当局に提出したデータは厳密な科学と極めて倫理的な研究・開発プログラムに裏付けられたものです」。

カテゴリー:バイオテック
タグ:BioNTechPfizer新型コロナウイルスCOVID-19ワクチン

画像クレジット:Dogukan Keskinkilic / Anadolu Agency / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

AlphabetのDeepMind、AIベースのタンパク質構造予測で歴史的なマイルストーンを達成

Google(グーグル)の親会社Alphabet(アルファベット)の傘下にあるAI技術企業DeepMind(ディープマインド)は、AIを使ったタンパク質の構造予測で大きなブレイクスルーを達成した。同社は米国時間11月30日、そのAlphaFold(アルファフォールド)システムが、50年前から科学界を悩ませてきた重要課題だったタンパク質のフォールディング(折りたたみ)問題を解決したと発表した。今回のAlphaFoldの進歩は、疾患の理解や将来の創薬、製薬の分野で、大きな飛躍につながる可能性がある。

AlphaFoldが今回合格したテストが示すものは、AIがタンパク質の構造をわずか数日のうちに、非常に高い精度で(実際、原子の幅の範囲内で正確に)把握できるということだ。これは疾病がどのように治療できるかを発見するために重要な、極めて複雑な仕事であるだけでなく、有毒廃棄物のような生態系の中で危険な物質を分解するための、最適な手法を見つけ出すような大きな課題を解決することも可能となる。おそらく「Folding@Home」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれない、これは、タンパク質のフォールディング実験に個人が自分の家庭用コンピュータ(かつてはゲーム機)の処理能力を提供できるプログラムだ。こうした大規模なグローバルクラウドソーシングの取り組みが必要だった理由は、従来の方法では部分的なフォールディングの予測にも何年もかかり、直接コストや計算リソースの面で非常に高価だったからだ。

DeepMindのアプローチは「Attention-based(アテンション・ベースド)ニューラルネットワークシステム」(基本的に、効率を上げるために特定の入力に注目できるニューラルネットワーク)も利用している。システムは、タンパク質のフォールディング履歴に基づいて、可能性のあるタンパク質のフォールディング結果の予測を継続的に洗練させていくことができるため、結果として非常に正確な予測を提供することができる。

タンパク質がどのようにして折りたたまれるのか、つまり、最初に作られたときのランダムなアミノ酸の列から、どのようにして最終的に安定した複雑な形の3D構造になるのか、病気がどのようにして広がっていくのか、そしてアレルギーなどの一般的な状態が、どのように引き起こされるのかを理解するための鍵となる。折りたたみのプロセスを理解していれば、それを変える可能性も生まれ、感染症の進行を途中で止めたり、逆に、神経変性や認知障害につながるフォールディングの間違いを修正したりすることができる。

DeepMindによる技術的な飛躍は、こうしたフォールディングをはるかに短時間かつ省資源の処理で正確に予測することを可能にし、病気や治療法の理解が進むペースを劇的に変える可能性がある。この成果は、私たちが現在苦痛に直面している新型コロナウィルス感染症(COVID-19)同様の、将来起こりうるパンデミックなどの世界的に重大な脅威に対処する役に立つだろう。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のような脅威が将来新たに出現した際に、初期の段階でウイルスのタンパク質構造を高い精度で予測することで、効果的な治療法やワクチンの開発をスピードアップできるのだ。

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(翻訳:sako)

モデルナの新型コロナワクチンの予防効果94.1%、重症化ケース100%予防、緊急使用許可申請へ

製薬会社Moderna(モデルナ)が新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン治験の初期分析を完了し、94.1%の予防効果が確認されたと結論づけた。治験には3万人が参加し、うち196人で感染が確認された。分析ではまた、(入院が必要になるなど)重症化ケースを100%予防でき、治験中に重大な安全性の懸念はなかったことも確認された。こうした結果を踏まえ、同社は11月30日に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可(EUA)を申請する。

EUA申請は実際の新型コロナワクチン供給開始に向けた次のステップだ。EUA申請が承認されれば、ヘルスケア監視当局からの正式かつ最終的な承認を待たずして、新型コロナによる死亡者数を減らせるような状況において医療従事者のような高いリスクを抱えている人にワクチンを提供できる。同社は欧州医薬品庁にも条件付きの承認を申請し、認められれば欧州内でも米国同様の緊急使用が可能になる。

ModernaのワクチンはmRNAベースで、新型コロナウイルスが人体に影響を及ぼすのを許すレセプター部位をブロックする働きのあるパワフルな抗体を作るのを促進するよう、遺伝子による指示を体に出す。人体への使用では新しい治療アプローチで、新型コロナに対し自然抗体よりもより強い抵抗を得ることができる可能性もある。免疫反応を引き起こすために実際にウイルスを体内に入れるワクチンにはリスクがつきまとうが、mRNAベースのものにはそうしたリスクはない。

Modernaは11月中旬に暫定結果での同社のワクチンの有効性は94.5%だったと発表した。同じデータを使った最終分析の結果は暫定結果とほぼ同じで、効果的なソリューションが早く利用できるようになることを願っている人にとって期待できるニュースだ。このデータはまだ専門団体のレビューを受けていない。しかし同社はフェーズ3の治験で得られたデータを科学専門誌に提出するところだと話している。

Modernaのワクチンは、前代未聞のグローバルパンデミックを受けて2020年初めに始まった新型コロナワクチンの開発・生産・供給を促進するための米国のOperation Warp Speedプログラムの一環だ。Pfizer(ファイザー)がパートナー企業BioNTech(ビオンテック)と共同で開発したワクチン、オックスフォード大学とAstraZenecaが共同開発したものなどもフェーズ3治験を進め、緊急承認と供給の準備を進めている。Pfizerはすでに緊急使用をFDAに申請した。一方、オックスフォード大学のワクチンでは、驚くほどの効果が得られた治験でワクチン接種量に誤りが見つかったため、新たな治験を完了するまでは米国で緊急使用の申請は行わない見込みだ。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Moderna新型コロナウイルスCOVID-19ワクチン

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(翻訳:Mizoguchi

アストラゼネカの新型コロナワクチン治験で誤り、追加の治験実施へ

製薬会社AstraZeneca(アストラゼネカ)の新型コロナウイルスワクチンのフェーズ3臨床試験(治験)で、効果が高かったグループのワクチン投与量に誤りがあったことが明らかになり、同社のCEOはグローバルで追加の治験を行うとBloomberg(ブルームバーグ)に語った。AstraZenecaとパートナーのオックスフォード大学は、ワクチン2回分を投与したグループで62%の効果を、半回分の投与後に追加で1回分を投与したグループで90%の効果が確認されたとする暫定結果を発表していた。しかし後者については実際は、本来2回分を投与するはずのものを誤って1.5回分投与したにすぎなかったことに科学者が後で気づいた。

はっきりさせておくと、これはオックスフォード大学とAstraZenecaのワクチンに対する期待をくじくものではないはずだ。結果はかなり有望であり、追加の治験はアクシデントの半回分投与の結果が実際に意図的に行った時にも裏づけられることを証明するために行われる。追加の治験は米食品医薬品局(FDA)が米国内での使用を承認するのに必要な米国で計画されている治験の前に行われる見込みで、結果的にオックスフォード大のワクチンが米国で承認されるのにさらに時間がかかることになりそうだ。

AstraZenecaのCEOによると、安全性データを含めこれまでに行われた研究には米国以外の国からの参加者があったため、オックスフォード大のワクチンの米国外での展開はおそらく影響を受けない。

Moderna(モデルナ)とPfizer(ファイザー)のワクチン候補もフェーズ3治験でかなり高い効果を示した一方で、AstraZenecaのワクチンには非常に大きな期待が寄せられている。というのも、異なる手法を用いているAstraZenecaのワクチンは冷凍させるのではなく冷蔵庫の温度で管理・輸送でき、ModernaとPfizerが開発中の2つのワクチンに比べるとコストはわずかだからだ。

そのため、AstraZenecaのワクチンはコストや輸送インフラが大きな懸念事項となっている国への配布を含め、世界中のワクチン接種プログラムにとってかなり貴重なリソースとなっている。

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(翻訳:Mizoguchi

オックスフォード大学の新型コロナワクチンも効果を確認、安価で管理が容易なタイプ

製薬会社AstraZeneca(アストラゼネカ)と提携して開発しているオックスフォード大学の新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンは、フェーズ3治験の予備結果で70.4%の効果が確認された。この数字には、2種の投与方法で得られたデータを含んでいる。1つのグループには2回分を投与し、効果は62%だった。もう1つのグループには半分の量を投与してから間を空けて1回分を追加投与し、効果は90%だった。

オックスフォード大学の治験結果は、Pfizer (ファイザー)やModerna(モデルナ)のもののように目を惹く高い効果ではないかもしれない。しかし、いくつかの理由で最も有望な要素を含んでいる。まず、2回に分けて投与する手法の効果が今後の結果や分析でも認められれば、オックスフォード大学のワクチンは使う量を抑えつつ、高い効果を得ることができることを意味する(効果がさほどなければフルに2回分の量を使用する理由はない)。

2つめに、オックスフォード大学のワクチンは通常の冷蔵庫の温度(摂氏1.6〜7.2度)で保存・輸送することができる。この点に関し、PfizerとModernaのワクチン候補はかなりの低温で管理される必要がある。通常の冷蔵庫温度での管理が可能なことは、輸送する際やクリニック・病院などで管理する際に特別な設備が必要ないということになる。

オックスフォード大学のワクチンは、mRNAをベースとしたModernaやPfizerのワクチンとは異なるアプローチを取っている。mRNAベースの手法は、ウイルスを体内に入れることなくウイルスをブロックする作用のあるタンパク質を作るための設計図を提供するのにメッセンジャーRNAを使うというもので、人体への使用に関してはどちらかというと未知の技術だ。一方、オックスフォード大学が開発しているワクチン候補は、アデノウイルスワクチンだ。何十年もの間使われてすでに確立された技術であり、遺伝子を操作して通常の風邪のウイルスを弱体化させたものを注入し、人の自然免疫反応を引き起こす。

最後に、オックスフォード大学のワクチンは安い。これは部分的にはすでに試験・テストされたテクノロジーを使うためだ。確立されたサプライチェーンもあり、輸送・保管がしやすいというのも貢献している。

オックスフォード大学のフェーズ3のワクチン治験には2万4000人が参加し、2020年末までに6万人に増える見込みだ。安全性に関するデータではこれでまでのところリスクは特に見られなかった。暫定分析では131人のコロナ感染が認められたが、ワクチンを接種した人で重症化したり入院が必要になったりしたケースはなかった。

これは、はっきりと効果が認められる新型コロナワクチンのサプライチェーンの幅を広げる、有望なワクチンという素晴らしいニュースだ。可能な限り早く多くの人に接種できるという点において、複数の有効なワクチンを持つというだけでなく、複数の異なるタイプの効果的なワクチンを持つ方がはるかにいい。

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画像クレジット:STEVE PARSONS/POOL/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ファイザーとBioNTechが新型コロナワクチン候補の緊急使用承認を申請

米国時間11月20日、有力な新型コロナウイルスワクチン候補の1つを製造している2つの企業が、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)に予防治療の緊急使用承認(EUA)を申請した。今週初め、国際共同第3相臨床試験データにおいてワクチンが95%の有効性を示したことを明らかにしたPfizer(ファイザー)とBioNTechは、米国だけでなくオーストラリア、カナダ、ヨーロッパ、日本、英国でも緊急承認申請を行っており、2020年12月末までに「高リスク集団」でのワクチン使用を開始するための道を開く可能性があると述べている。

FDAのEUAプログラムは、現在のパンデミックのような軽減事由が満たされている場合、治療薬会社が早期承認を求めることができる。情報のサポートと安全性データの提供が必要とされるが、一般的に新薬や治療法が実際に広く投与できるようになる前に行われる完全な、正式な、より永続的な承認プロセスと比べて、優先的に審査が行われる。

ファイザーとBioNTechのワクチン候補は本質的に、SARS-CoV-19(新型コロナウイルス感染症の原因となるウイルス)が細胞に付着する能力をブロックする特定のタンパク質を産生する方法の指示を、人体に与えるというmRNAベースのワクチンだ。このワクチンは最近、第3相臨床試験が行われており、これまでに4万3661人が参加している。両社は参加者の中から確認された170例のデータ、8000人の参加者から積極的に募集した安全性情報、受動的に収集した3万8000人の補足データなど、FDAにEUAを申請するための裏付けとなる情報を提出している。

このワクチンやその他の後期開発段階にあるワクチンは、世界的に生産の準備が進められており、EUAは第一線で働く医療従事者を含む高リスク者へのアクセスを許可する可能性があるが、広範なワクチン接種プログラムの開始はおそらく来年以降、2021年後半になると思われるということは、記しておく必要があるだろう。

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タグ:PfizerBioNTech新型コロナウイルスCOVID-19ワクチン

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(翻訳:TechCrunch Japan)

ファイザーの新型コロナワクチンの予防効果は95%と判明、緊急使用許可申請へ

製薬会社Pfizer(ファイザー)は新型コロナウイルス感染症ワクチンのフェーズ3臨床試験データに関する最新の分析を明らかにした。それによると、4万4000人が参加した治験を分析した最終結果でワクチンの効果は95%だった。同社が米国時間11月9日に発表した初期データよりも高い有効性だ。初期データではフェーズ3治験データの暫定分析に基づく予防効果は90%と発表していた。

今回の発表は、Moderna(モデルナ)が開発するワクチンのフェーズ3臨床試験の分析に続くもので、Modernaは94.5%の有効性が認められたと発表していた。Pfizerとパートナー企業BioNTech(ビオンテック)のワクチンはmRNAをベースとした手法だ。Modernaのものと似ていて、2つのワクチン候補の効果はほぼ同程度のようだ。対象が限られ、今後科学者によってレビューが行われることになるが、少なくとも今のところはそうだ。

最終分析のPfizerのデータは、治験参加者4万4000人のうち170人で新型コロナ感染が確認されたことを示している。170人のうち162人はプラセボ(偽薬)が投与されたグループで、残る8人のみが実際にワクチン候補を投与された。同社はまた、重症となった10人のうち9人がプラセボグループで、新型コロナ感染を防げない稀なケースでもワクチンが重症化を防ぐのに役立つと考えられる、とも報告した。

今回の発表はPfizerが米食品医薬品局(FDA)から緊急使用許可(EUA)を認められるのに役立つはずだ。EUAが承認されれば、本来のプロセスで最終的な承認が下りる前に緊急手段としてワクチンを供給できる。今週初めに同社は、治験参加者の2カ月分のフォローアップデータをすでに集めたと明らかにした。フォローアップデータは承認に必要なもので、同社は「数日以内」にEUA申請する意向を示していた。同社は年内にワクチン製造を開始し、2021年末までに最大13億回分のワクチンを製造する計画だ。

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タグ:PfizerBioNTech新型コロナウイルスワクチン

画像クレジット:JUSTIN TALLIS/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ナタリー・ポートマンとジョン・レジェンは革ではなく菌糸の服を着る

女優のNatalie Portman(ナタリー・ポートマン)とミュージシャンのJohn Legend(ジョン・レジェンド)は、ベンチャー投資家とMycoWorks(マイコワークス)が支援する無名のファッションブランドからなるグループに参加した。MycoWorksは、皮革に置き換わる菌類を材料にしたバイオ素材の技術を商品化しようと4500万ドル(約47億円)を調達したばかりだ。

その目的は、動物やハ虫類の皮を使った服飾品から菌類ファッションへと消費者に乗り換えてもらうことにある。

同社は、すでにいくつかの大手ファッションブランドとパートナー契約を交わしており、その素晴らしい菌類素材を、これまで伝統的に動物の皮で作られてきた靴、財布、ベルトといった製品に加工して多くの人に広めたいと考えている。

「私たちは高級ブランドやフットウェアの大手メーカー数社と緊密に協力しています」と、MycoWorksのCEO、Matt Scullin(マット・スカリン)氏は話す。

無名のファッションブランド数社は、靴、既製服、バッグなどの幅広い製品を販売店に向けてすでに生産を開始していると、スカリン氏はいう。

MycoWorksは、菌類素材の普及や植物ベースの繊維製品の定着を目指す他社との差別化を、その繊維製品の耐久性を強調することで図りたいと考えている。競合企業には、キノコを使うBolt Threads(ボルト・スレッズ)、パイナップルの繊維を使うAnanas Anam(アナナス・アナム)、サボテンの皮を使うDesserto(デザート)などがある。

「私たちは、さまざまな皮革製服飾品、室内装飾品、ハンドバッグや財布といった一般的な皮革製品など、広範にわたる応用方法で製品をテストしています。私たちが作る素材がキノコから作られた皮と大きく異なる点は、構造成分が非常に高いことにあります」とスカリン氏。「私たちは、さまざまな用途に対応できるこの素材の性能の高さに自信を持っています。そのため、これには幅広い使い道があります」。

ゆくゆくは、高級品市場への参入をMycoWorksは目指している。「ブランドは持続可能性のために性能を犠牲にしているという誤解がありますが、それは間違いです」とスカリン氏はいう。「このような業界では、高い性能を示せば、本格的に受け入れられるのです」。

スカリン氏は、MycoWorksの素材の価格について、またその素材で製品を作っている企業の具体的な名前は明かさなかった。ただ彼は、いずれは伝統的な皮革市場だけでなく、皮革代替品となるプラスチック市場においても価格で勝負できるようにしたいと話していた。プラスチック代替品市場の価値は1年間だけで700億ドル(約7兆3000億円)に達する。

スカリン氏によれば、同社では年間に数万平方フィート(約930平方メートル)の菌類素材を生産する能力があるとのこと。つまりMycoWorksは、数十億平方フィート(約930万平方メートル)の生産能力を誇る皮革業界に追いつくには、まだ時間がかかるということだ。

MycoWorksへの財政支援には目を見張るものがあるが、ファッション業界では、それぞれに牽引力を発揮する他社との戦いもある。

2020年10月、Bolt Threadsは長年のパートナーであるAdidas(アディダス)、Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)、そしてBalenciaga(バレンシアガ)などのブランドを支えるファッションハウスとともに協議会を立ち上げ、キノコ革を使った製品の研究を行うと発表した。

台北のWTT Investment Ltd.、DCVC Bio、Valor Equity Partners、Humboldt Fund、Gruss & Co.、Novo Holdings、8VC、SOSV、AgFunder、Wireframe Ventures、Tony Faddell(トニー・ファデル)氏といったMycoWorksの投資家には、競合は折り込み済みだ。しかしその機能性から、彼らはMycoWorksは代替皮革界の王者だと信じている。

「Fine Mycelium(ファイン・マイシリアム、細かい菌糸という意味)の革は、クライアントの要望に応じてカスタマイズができます」とDCVC Bioの投資家Kiersten Stead(キルステン・ステッド)氏はいう。「形と用途においてカスタマイズ可能です。価格も用途と顧客が求める品質に応じて異なります」。

これまでにMycoWorksは6200万ドル(約64億5000万円)を調達しているが、今回の資金調達の発表は、カリフォルニア州エメリービルの新しい生産工場のオープニングと偶然にも重なった。これにより、現在の数万平方フィートという菌糸革の置換能力は大幅に強化される。

動物の皮に替わるものを求めるこうした動きの背景には、衣服や靴などの皮革素材の伝統的な製造方式にともなう問題点が次第に知られるようになったことがある。その製造では、非常に毒性の高い薬品や汚染物質が使われているのだ。皮をなめすとき、染めるとき、廃物処理の段階で環境が汚染される。また動物の皮革でもプラスチックの合成皮革でも、廃棄物の埋め立てという問題がある。

「菌糸体の育成プロセスはカーボンネガティブです。消費者は私たちの製品と動物の革を比べて、こっちを選ぶしかないというでしょう」とスカリン氏は話す。「加えてそこには、動物を傷つけないという側面と、プラスティックを使わないという側面があり、これらは現在、大変に多くの意志決定の動機になっています。私たちのブランドパートナーにとって、私たちの本当の姿は、進歩した製造業者です。持続可能性が私たちの原動力です。サプライチェーンを改革する道を、私たちは彼らに示しているのです」。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:MycoWorksファッション環境問題

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(翻訳:金井哲夫)

Modernaの新型コロナワクチン、治験で94.5%の有効性確認

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの有効性についてのPfizer(ファイザー)の発表に続き、Moderna(モデルナ)も米国11月16日にフェーズ3治験で得られた良好な結果を明らかにした。同社はワクチン候補が初期暫定データ分析で94.5%の有効性を示した(Modenaリリース)としている。治験参加者95人の新型コロナ感染が認められ、うち90人は偽薬を投与されていて5人のみが同社のmRNAベースのワクチンを接種していた。そして重症になったのは11人で、ここにはワクチン候補を投与された人は含まれなかった。

今回の発表も、2021年のどこかでまとまった量のワクチンを実用化できる可能性があるという有望なものとなった。上記の通り、今回の発表は暫定分析結果ではあるが、米国立衛生研究所が指名した治験を監督する安全委員会によるデータだ。同研究所はModernaとは関連のない独立した機関であるため、最終的な分析に期待をかけられる信頼できる結果だ。

Modernaは今後数週間内に判明する結果を元に、ワクチン候補の緊急使用許可を申請すると話している。最終的な承認の前に緊急状況で使用できるよう、米食品医薬品局(FDA)からの使用許可取得を目指す。緊急使用許可は、フェーズ3の治験参加者グループ(計3万人が参加)で感染者151人が確認されたデータと、感染後平均2カ月のフォローアップのデータに基づいて下りる見込みだ。

最終的な全データは独立したレビューのために専門団体に提出されることになる。これは最終ワクチン治験と承認のプロセスでは標準的なものだ。

Modernaのもの、そしてPfizerBioNTechとの提携で開発したものはともにmRNAベースのワクチンだ。このタイプは人に使用するのは初めてで、接種を受けた人の細胞に免疫反応を起こすよう指示するメッセンジャーRNAを活用しているという点で従来のワクチンとは異なる。従来のワクチンでは、抗体を作り出すためにかなり少量のウイルスを使って免疫反応を起こすが、mRNAベースのワクチンでは実際に人体をウイルスにさらすことはない。

関連記事:ファイザーの新型コロナワクチンの効果は90%、年末までに大規模な接種開始か

カテゴリー:バイオテック
タグ:Moderna新型コロナウイルスワクチン

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(翻訳:Mizoguchi

Modernaの新型コロナワクチン、治験で94.5%の有効性確認

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの有効性についてのPfizer(ファイザー)の発表に続き、Moderna(モデルナ)も米国11月16日にフェーズ3治験で得られた良好な結果を明らかにした。同社はワクチン候補が初期暫定データ分析で94.5%の有効性を示した(Modenaリリース)としている。治験参加者95人の新型コロナ感染が認められ、うち90人は偽薬を投与されていて5人のみが同社のmRNAベースのワクチンを接種していた。そして重症になったのは11人で、ここにはワクチン候補を投与された人は含まれなかった。

今回の発表も、2021年のどこかでまとまった量のワクチンを実用化できる可能性があるという有望なものとなった。上記の通り、今回の発表は暫定分析結果ではあるが、米国立衛生研究所が指名した治験を監督する安全委員会によるデータだ。同研究所はModernaとは関連のない独立した機関であるため、最終的な分析に期待をかけられる信頼できる結果だ。

Modernaは今後数週間内に判明する結果を元に、ワクチン候補の緊急使用許可を申請すると話している。最終的な承認の前に緊急状況で使用できるよう、米食品医薬品局(FDA)からの使用許可取得を目指す。緊急使用許可は、フェーズ3の治験参加者グループ(計3万人が参加)で感染者151人が確認されたデータと、感染後平均2カ月のフォローアップのデータに基づいて下りる見込みだ。

最終的な全データは独立したレビューのために専門団体に提出されることになる。これは最終ワクチン治験と承認のプロセスでは標準的なものだ。

Modernaのもの、そしてPfizerBioNTechとの提携で開発したものはともにmRNAベースのワクチンだ。このタイプは人に使用するのは初めてで、接種を受けた人の細胞に免疫反応を起こすよう指示するメッセンジャーRNAを活用しているという点で従来のワクチンとは異なる。従来のワクチンでは、抗体を作り出すためにかなり少量のウイルスを使って免疫反応を起こすが、mRNAベースのワクチンでは実際に人体をウイルスにさらすことはない。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Moderna新型コロナウイルスワクチン

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(翻訳:Mizoguchi

ファイザーの新型コロナワクチンの効果は90%、年末までに大規模な接種開始か

Pfizer(ファイザー)とBioNTech(ビオンテック)は米国時間11月9日、開発中の新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンについて、フェーズ3治験の参加者で90%の予防効果があったと発表した(BioNTechリリース)。これは治験の結果をチェックするための外部独立委員会が分析したデータに基づいており、最終的な検証結果ではなく治験の初期結果を反映したものだ。しかしワクチンの実用化に向けた大きなニュースだ。

PfizerとBioNTechのワクチン候補はmRNAベースのもので、開発のスピードと潜在的有効性において優れていることから、多くの企業が新型コロナワクチン開発で比較的新しい技術だ。今回の結果は、新型コロナ陽性が確認された治験参加者94人のデータに基づいており、これは企業とFDA(米食品医薬品局)が合意している、正式な科学的評価のための陽性者62人という最低しきい値をクリアしている。

フェーズ3の治験は4万3358人を対象に行われた。Pfizerは感染予防率に加えて「安全に関する深刻な懸念は確認されていない」としている。初期データに基づくと、ワクチン接種を受けた人は最初の接種から28日後に抗体が確認された。このワクチンは2回接種する。

今後さらなる安全テストがあり、また研究も続けられるが、2カ月分の安全データ(FDAが緊急使用許可のために求めているもの)を11月第3週に提出できると両社は見込んでいる。治験参加者はまた、長期的な効果を監視するため、2回目のワクチン接種後2年間モニターされる。Pfizerは年末までに接種5000万回分、2021年に13億回分のワクチンが製造できると考えている。

今回の治験のフルデータは他の研究者や科学誌のレビューを受ける必要があるが、これは明らかに新型コロナワクチン開発においてこれまでで最も有望で良いニュースだ。すべてが順調にいけば、ワクチンの大規模な接種が2020年末までに始まることになるかもしれない。

カテゴリー:バイオテック
タグ:PfizerBioNTech新型コロナウイルスワクチン

画像クレジット:THIBAULT SAVARY / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

徳島大学発のバイオ系スタートアップ「セツロテック」にせとうち観光活性化ファンドが出資

徳島大学発のバイオ系スタートアップ「セツロテック」にせとうち観光活性化ファンドが出資

せとうちDMOを構成する瀬戸内ブランドコーポレーションは11月9日、徳島大学発のバイオテクノロジー系スタートアップ企業「セツロテック」に対する支援を決定し、せとうち観光パートナーズ管理運営の「せとうち観光活性化ファンド」を通じて優先株式出資を実施したと発表した。

同投資にあたり、瀬戸内ブランドコーポレーションは観光関連事業を通じて、ゲノム編集に対する社会的な認知度向上に取り組み、今後のゲノム編集技術を活用した地域産品の開発支援、瀬戸内地域の企業、地方公共団体との連携を推進することにより、瀬戸内地域の経済発展への貢献を目指す。

セツロテックは、徳島大学発ベンチャーとして、同大学先端酵素学研究所 竹本龍也氏(PI:Principal Investigator)らが2017年2月に設立したバイオテクノロジー系スタートアップ。創業以来同社は、ゲノム編集技術を活用した研究支援事業において、ゲノム編集マウスやゲノム編集培養細胞を提供。また、ゲノム編集基盤技術を発展させ、畜産分野における新品種開発の事業も進めている。

せとうちDMO(Destination Marketing / Management Organization)は、せとうち観光推進機構と金融機関・域内外の民間企業が参画する瀬戸内ブランドコーポレーションで構成。観光需要の創出と商品やサービスの供給体制の強化を行いながら、多様な関係者とともに持続可能な観光地域づくりを推進している。

せとうち観光活性化ファンドは、瀬戸内地域7県(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県)の地方銀行および日本政策投資銀行と海外需要開発支援機構の出資により組成。

瀬戸内ブランドコーポレーションは、せとうち観光活性化ファンドを活用した資金調達や事業者支援の決定・実行を行い、せとうち観光パートナーズは、せとうち観光活性化ファンドの管理運用を行う。徳島大学発のバイオ系スタートアップ「セツロテック」にせとうち観光活性化ファンドが出資

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カテゴリー: バイオテック
タグ: セツロテック資金調達(用語)日本

Alphabet Xはうつ病発見のための単一バイオマーカーを探求するも達成できず、Project Amberをオープンソースとして公開

Alphabet X(Googleのいわゆる「ムーンショットファクトリー」)が、Project Amber(プロジェクト・アンバー)に関する新しいブログ記事(Alphabet Xブログ)を、米国時間11月2日投稿した。同プロジェクトは過去3年間にわたって取り組みが行われていたが、その成果が今回オープンソースとして世界のメンタルヘルスの研究コミュニティに公開された。この先その上でさらなる開発が進むことが期待されている。Xプロジェクトは、うつ病のための特定のバイオマーカーを特定しようとしたが、その目的を達成することはできなかった(現在研究者たちは、うつ病や不安症を特定できる単一のバイオマーカーは存在しない可能性が高いと考えている)、それでもXは、脳波(EEG)と機械学習を組み合わせたその研究成果が、他の研究者たちの役の立つことを期待している。

Xの研究者たちは、うつ病が他の病気や障害と同様に、医療従事者がいm以上に簡単かつ客観的にうつ病を診断するのに役立つ、明瞭なバイオマーカーを持っているのではと期待していた。それは、目的のために特別にデザインされたゲームを使用して、実験室で行われた研究の中で脳波を見た際に、いくつかの前例となるケースが発見されたからだ。そこでは、うつ病の人びとには、実質的にゲームの「勝利」に対応する脳波活動の低下が一貫して観察された。

これらの研究は、バイオマーカーの可能性への道筋を示しているように見えた。それを(クリニックや公衆衛生ラボのような)実際の診断環境で有用なものにするために、Xのチームは脳波収集やその解釈プロセスを改善して、ユーザーや技術者たちにとって使いやすいものにしようとした。

この探求についておそらく最も注目すべき点は、Alphabetがその過程を詳細に発表した米国時間11月2日の投稿は、基本的にうまくいくことがなかった長年の調査についてのストーリーであり、大規模テック企業から一般的に聞こえてくる典型的なムーンショットストーリーとは異なっている。

実際、これはおそらく、大規模テック企業の多くのアプローチを、批評家が理解し損なう例を示す最良のものの1つだ。ソフトウェアやエンジニアリングの世界でよく見られるソリューションに類似したアプローチでは解決できない問題もあるのだ。

Xのチームは、長年にわたったユーザー研究プロジェクトからの学びを、3つの要点としてまとめている。そしてそれぞれの要点が、純粋なバイオマーカー検出手段の(たとえ機能していたとしても)不十分さに何らかのかたちで触れている。それは特にメンタルの病に対する場合に顕著なものとして示されている。

1.メンタルヘルスの測定はまだ未解決の問題です。多くのメンタルヘルスの調査や評価基準が利用可能であるにもかかわらず、それらは特にプライマリケアやカウンセリングの現場では、広く使用されていません。その理由は、作業負荷(「私はこれを行うための時間がありません」)から、懐疑主義(「評価基準を使用しても、私の臨床判断よりも優れていることはない」)、信頼の欠如(「私は患者がこれに正直に答えているとは思わない」「私はカウンセラーにこれほどまでに多くを明らかにしたくない」)まで、多岐にわたっています。これらの知見は、測定に基づくメンタルヘルスケアに関する文献の中に現れているものです。いかなる新しい測定ツールであっても、生きた経験を持つ人と臨床医の両方に対して明確な価値を創出することで、こうした障壁を克服する必要があります。

2.主観的データと客観的データを組み合わせることには価値があります。生きた経験を持つ人と臨床医は、どちらも客観的な指標の導入を歓迎しましたが、主観的な評価や、相手に経験や感情について質問する行為を置き換えるものではありませんでした。主観的指標と客観的指標の組み合わせは、特に強力であると見なされていました。客観的な指標は、主観的な体験を裏付ける場合もあれば、両者の相違そのものが、会話を始めるきっかけを与えてくれる、興味深い洞察となったりする場合もあります。

3.新しい測定技法には、複数のユースケースがあります。私たちの最初の仮説は、臨床医が診断補助として「脳波検査」を使用できるかもしれないということでした。しかし、このコンセプトは熱心に歓迎はされませんでした。精神科医や臨床心理学者などのメンタルヘルスの専門家は、臨床面談を介しての診断能力に自信を感じています。プライマリケアの医師は、脳波検査が有用だろうと考えましたが、それは血圧検査などと同様に、患者との面談前に医療スタップによって実施された場合に限るのです。一方カウンセラーやソーシャルワーカーは実践の場で診断を下さないため、脳波診断とは無関係でした。生きた経験を持つ人の中には、機械によって「うつ」だとラベル付けされるというアイデアを好まない人もいました。

対照的に、テクノロジーを継続的に観察するためのツールとして使用することには、特に強い関心が示されました。面談と面談の間に何が起きたかを知るために、メンタルヘルスの状態の変化を経時的に捉えるのです。多くの臨床医が、患者や顧客が自分で検査を繰り返せるように、脳波システムを自宅に送っても良いかと尋ねてきました。また彼らは、脳波が持つ予測能力への可能性にも強い関心を示しました。例えば将来より「うつ」が深刻になるのは誰かを予測するといったことです。脳波などのツールが、臨床およびカウンセリング環境においてどのように導入されることが最適なのかを決めるためには、さらなる研究が必要です。例えば、デジタル表現型(digital phenotype、個人のデバイスから収集される行動データ)などの他の測定技術と組み合わせる方法も含まれます。

XはProject AmberのハードウェアとソフトウェアをGitHub上でオープンソース化する。そして同時に、オープンソース素材を通して使われる、Amberに関わる脳波特許の利用者に対して、いかなる法的措置も講じないことを宣言する「特許誓約」も発行する。

Amberが「うつ病」のための単一バイオマーカーを発見できたのかどうかははっきりしないが(おそらく発見できていないだろう)、専門的な試験施設以外でも脳波をより使いやすくするためにチームが行った作業の成果は、より広いコミュニティの手に渡ることで、おそらく他の興味深い発見につながることだろう。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Alphabetうつ病GitHub

画像クレジット:X, the moonshot factory

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(翻訳:sako)

細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達

細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達

細胞ファイバ技術を用いた細胞大量培養ソリューションの開発を手がけるセルファイバは10月14日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資として1.05億円の資金調達を実施したを発表した。引受先は、リアルテックホールディングス運営のリアルテックファンド3号投資事業有限責任組合(グローカルディープテックファンド)。

セルファイバではこれまでに、高生産細胞培養技術を構築。すでに小規模試験における技術評価を完了し、2020年10月より事業会社1社と共同開発を開始した。さらに2020年度内に異なる細胞種類・用途の共同開発の開始も予定しているという。

今回調達した資金は、主として実験環境の拡充に伴う設備投資、開発加速のための専門人材採用、研究開発に充てる予定。2020年10月より実験室面積を2倍に拡張し、間葉系幹細胞およびiPS細胞の培養技術について、実製造へと移行するためスケールアップ、加えて規制への適合に取り組む。

細胞治療に向けた細胞量産技術開発に取り組む「セルファイバ」が1.05億円を調達

2015年4月設立のセルファイバは、ひも状の細胞塊を形成する世界初の技術「細胞ファイバ」をコア技術とする東京大学発スタートアップ。「『細胞をつかったものづくり』で地球規模の課題解決に貢献する」をミッションに掲げ、現在は主として細胞治療用途の細胞量産技術開発に取り組んでいる。

細胞医薬品はがん免疫治療などを中心に注目が集まる一方で、依然手作業に依存した製造工程が主流となっており、製造の合理化が喫緊の課題とされる。セルファイバは、ファイバ培養技術を用いて高額な細胞医薬品の製造コストの削減・大量製造を可能とし、誰もが手の届く細胞治療の実現を目指していく。

細胞ファイバ技術は、髪の毛ほどの細さの中空ハイドロゲルチューブ内に細胞を封入し、培養する技術。周囲のゲルが内部の細胞を保護しつつ過剰な凝集を防ぐため、従来の懸濁培養(フラスコやタンクを用いて細胞を培地に浮遊させた状態で培養する方法)では困難だった、高品質な細胞を高密度で培養する「高生産培養」を実現した。また、細胞の分離回収が容易なことから、自動培養装置と組み合わせることによって1ロットあたりの生産量を飛躍的に高めることが可能となる。

ハイドロゲルで被覆されたひも状細胞塊「細胞ファイバ」の顕微鏡観察像

ハイドロゲルで被覆されたひも状細胞塊「細胞ファイバ」の顕微鏡観察像

カテゴリー: バイオテック
タグ: 細胞ファイバ資金調達セルファイバ日本

企業ブランディングから女性起業家へ転身、牧草由来の微生物群で生ゴミや畜糞を1週間で高速分解するkomham

komham代表の西山すの氏に初めて会ったのは、大手テック企業の発表会だった。当時彼女は、PR会社で企業ブランディングを手がけており、その後も発表会で何度か顔を合わせることがあった。その西山氏が、地元北海道に戻ってバイオテックのスタートアップkomhamを起業したことを知り、今回取材を申し込んだ。

牧草由来の微生物群で生ゴミや畜糞を1週間で分解

komhamは、牧草由来の微生物群で生ゴミや畜糞を1週間で分解する技術を擁するスタートアップ。もともとは西山氏の父親が手がけていた事業を引き継ぐかたちで新たに法人化した会社だ。すでに導入して8年が経過している取引先もあり、微生物群の働きは実証済みだ。

西山氏が起業を考えるようになったのは「PR/ブランディングで自分が実現できる限界を感じた」からとのこと。そしてせっかく起業するなら、これまでの経験を生かせて世の中のためになることで考え、自らなにかを創り出したいと思ったそうだ。とはいえ、エンジニアでもない自分がテック分野で戦っていくのは難しいとも感じていたそうだ。

そんな思いを抱きながらもPRやブランディングの仕事を続けていたころ、当時の部下がいつもエコバック持ち歩いたり、木のスプーンを使ったりとエコな日々を送っていたのを見たとき、環境に優しい半面、それをチョイスする生活者の意識に依存した仕組みでは継続が難しいと感じ、個人レベルではなく社会的にサステイナブルな事業を考え始めたという。

そんなとき、TechCrunch Tokyo 2018で最優秀賞を獲得したムスカのことを知る。そして、ムスカと近い事業をやっているが、事業運営に悩みを抱えている父親のことを思い出したそうだ。西山氏は、テック同様バイオも素人で簡単に事業化できる分野ではないが、スタートアップには競合が少ないこともあり、この事業での起業を決意。

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とはいえ、ゴミ処理系の技術はこれまで詐欺まがいの事例が過去に何度もあり、業界的にすんなり受け入れてもらえる素地は整っていないことを知る。業界に認めてもらうには、科学的根拠をしっかり公開したクリーンな経営が必要とされていることを認識。この点をきちんと進めれば、すでに実績も出ている事業なので勝てる可能性があるのではないかと感じたそうだ。

すでに10トン/日の処理実績、導入して8年の産廃処理業者も

komhamは、独自で開発した牧草由来の微生物群(komham菌)を、生ゴミや家畜糞尿、下水道汚泥などの有機物に仕込むことで微生物が分解を進めて減容するバイオマス処理。焼却炉の役割を果たす菌床をクライアント先の処理場に作り、菌床に毎日基準量の有機物を投下して攪拌することで、24時間後には有機物が分解され、次の有機物の受け入れ態勢ができるという仕組みだ。

komham菌の処理プラントはビニールハウスをカスタマイズしたような建物で、中小の養鶏場や養豚場などが各自で設置できる程度のコスト感とのこと。なお処理プラントの建設費のほか、自動攪拌機やタイヤショベル、トラクター、ミキシングなどの重機も必要だ。

実は技術的にはまったく新しくなく、畜産業者が堆肥舎に家畜糞尿を置いて堆肥に変える堆肥化と同じ流れだが、大きく異なるのはそのスピード。通常の堆肥化だと、数週間から2カ月程度かかるとされているところが、komham菌を使用するバイオマス処理の場合1日で投下物の98%以上を減容できるのが特徴だ。

バイオマス処理では臭気と汚水が問題になるが、その原因の大半は処理スピード。処理過程で投下した有機物の分解に時間がかかると腐敗が始まり、異臭や汚水の問題が起こる。komhamの場合は処理スピードが24時間以内と早いため、投下するゴミが腐敗する前に処理が完了し、臭気と汚水の問題が出にくいという。

なお、バイオマス処理された生ゴミや畜糞は堆肥として利用できるものの、ゴミから堆肥化した肥料を敬遠する傾向もあり、実際に生成した堆肥を受け入れてくれる大きな市場は国内にはなく、自家使用するか無料配布するぐらいしか需要がないそうだ。komhamは堆肥化がマストではなく、売り先がある場合は必要な量だけ堆肥にし、必要なければ減容処理の機能のみ使い続けることができるという、無駄のない処理技術を提供できるのが特徴だ。

もちろん処理できる廃棄物は限られている。komham菌が得意とするのは、肉や魚、野菜、穀類、菓子、甲殻類や卵の殻など生ゴミとして処理できるものや、落ち葉や草花、糞尿、割り箸など。金属類やガラス、紙・段ボールなどは分解できない。

komham菌は実績としてすでに10トン/日規模の生ゴミや畜糞を問題なく処理できているとのこと。既存取引先のある産廃処理業者は、komham菌の処理能力の高さを実感し、それまで続けていた大学とのゴミ処理の共同研究から切り替えたほどで、この業者とはすで8年の取引実績があり、近日中に処理量を現在の10〜12トンから20トンにまで引き上げる計画もあるそうだ。

課題は科学的根拠と大量生産技術

実績がある一方で、komham菌についてこれまで科学的根拠を導き出したことはなく、これから導入を考えている企業や行政の誰が見ても安心できる状況を作ることがマストだと考えている。そこで現在、大学との共同研究を進めており、春先までには正式に内容を発表できる予定だ。同時に特許も取得するとのこと。

今後の事業展開について地域は特にこだわっておらず、すでに現在国内外からの問い合せもきているそうだ。komham菌は北海道でも60〜80度ぐらいの発酵熱を出すので、温暖地もちろん寒冷地でも問題なくゴミ処理できるという。なお、産廃処理業は産業構造が出来上がっている業界でもあり、飛び込み営業で顧客獲得という手法ではなく、大手で信頼のおける業者とアライアンスを組み、komham菌の導入を進めていきたいとのこと。

ネックとなるのは現状のkomham菌の製造方法で、大量生産の技術が確立されておらず、新規顧客は年間で1〜2社程度しか増やせないとのこと。そのため、後日発表する学術機関との共同研究で培養実験も開始する。培養実験が成功して大量培養できるようになった際に、一気にドライブかけられるようにしたいとのこと。処理するゴミの種類に合わせて菌のブレンドを変えて、バイオマス処理の効率化も図りたいという。

ほとんどの銀行が門前払いの中、唯一北海道銀行が融資 ・事業伴走

komhamは2020年1月設立の創業の間もないスタートアップで、現在はデットファイナンス(融資、借入)による資金調達で会社を運営している。拠点が東京でもなく、事業がSaaSやAI、ロボティクスなどテックでもないため、資金調達にはかなり苦労したそうだ。

バイオテック系の事業は、事業計画が半年、1年と遅れてしまうことケースが多くあり、起業したばかりで先が見通せない状況では、株主にとっても自分たちにとっても現状ではメリットが見い出せないため、まずエクイティファイナンス(第三者割当増資)の調達は難しいと感じたそうだ。ネットサービスやソフトウェアであれば、とりあえずローンチ日までに基本機能の実装を間に合わせて、あとでアップデートをかけていくという手法を使えなくもないが、バイオテック系の事業は人が頑張っても乗り越えられない壁があるわけだ。もちろん、前述した大学の共同研究によって、科学的根拠や量産体制が整えば事業シナジーのある企業やVCから調達したいと考えているが、現在はエクイティを検討する材料がまだそろっていないとのこと。

残るはデットでの資金調達となるが、創業したばかりで資本金100万円、社会的信用のないkomhamに対して、ほとんどの銀行から融資の前段階で却下され、申し込みすらできない状態だった。そんな中、唯一相談に乗ってくれたのが地元の北海道銀行だった。融資だけでなく、営業支援や会ってみたい人との仲介など、北海道銀行がサポーターとして伴走してくれていることは本当に心強く、事業を早くグロースさせて恩返ししたいという気持ちが強くなったという。

カテゴリー:バイオテック
タグ:komham北海道

エビ・甲殻類の細胞培養肉開発スタートアップShiok Meatsに東洋製罐グループが出資

エビ・甲殻類の細胞培養肉開発スタートアップShiok Meatsに東洋製罐グループが出資

総合包装容器メーカーの東洋製罐グループは10月8日、エビ・甲殻類の細胞培養開発に取り組むシンガポールのスタートアップ企業Shiok Meats(シオック・ミーツ)に出資したと発表した。

Shiok Meatsの今回の資金調達はシリーズAで、調達総額は1260万ドル(約13億3500万円)。リード投資家は、オランダの投資ファンドAqua Spark。また東洋製罐グループのほか、SEEDS Capital(シンガポール企業庁Enterprise Singaporeの投資部門)、リアルテックホールディングスなどが参画した。

Shiok Meatsは2022年に培養エビのミンチ肉の商業販売を目指しており、今回調達した資金は、シンガポールに建設予定となっている世界初・商用規模の細胞培養パイロットプラントの建設、運営資金にあてられる予定。

また東洋製罐グループは、食生活を支えるインフラ企業として、今回の出資によってShiok Meatsや他の共創パートナーとともに、培養エビ・甲殻類の商用生産・供給を進め、アジア地域における豊かで持続可能な食生活の実現を目指す。

Shiok Meatsの培養エビのミンチ肉を使用したシュウマイ

Shiok Meatsの培養エビのミンチ肉を使用したシュウマイ

Shiok Meatsは、幹細胞の研究者Dr. Sandhya Sriram(CEO)とDr. Ka Yi Ling(CTO)が2018年8月に共同設立した、シンガポールのフードテック・スタートアップ。エビ・甲殻類から幹細胞を分離する独自技術を有しており、クリーンなエビ・甲殻類の細胞培養製造によって、アジア地域が抱える食糧・タンパク質危機や気候変動、海洋汚染の社会課題解決を目指している。

東洋製罐グループは、1917年(大正6年)創業以来100年間で培った容器の技術やノウハウを活用し、ひとりひとりが抱える社会課題を解決し、持続可能な未来の暮らしを創るオープンイノベーションプロジェクト「OPEN UP! PROJECT」を2019年より実施。2年目となる2020年は、共創プロジェクトを促進するため、共に社会課題の解決に取り組むスタートアップ企業への投資を開始しており。今回のShiok Meatsへの投資は、その1号案件となる。

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タグ: Shiok Meats東洋製罐グループバイオテックシンガポール細胞培養食品

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UCバークレー校のダウドナ教授がノーベル化学賞を受賞、CRISPR遺伝子編集が新型コロナなど感染拡大抑止に貢献

米国カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)のJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)教授が、CRISPRテクノロジーの共同開発者であるEmmanuelle Charpentier(エマニュエル・シャルパンティエ)教授とともにノーベル化学賞を受賞した。 TechCrunchは9月に開催したTechCrunch Disrupt 2020で、ダウドナ教授にCRISPRテクノロジーと新型コロナウイルス対策への応用について詳しく話を聞く機会があった。またダウドナ教授はこのテクノロジーが医学全般、ことに将来のパンデミック対策として役立つ可能性についても強調した。

ダウドナ教授は以下のように説明している。

CRISPRテクノロジーで最も興味あるのは、現在の新型コロナウイルスだけでなく、将来現れるかもしれない別のウイルスも容易に検出ターゲットとすることができる点です。

私たちはすでに新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスを同時に検出できるようにする戦略で研究を進めています。 これ自身重要な意味を持つのは明らかですが、CRISPRはプログラムを書き換えて別のウイルスをターゲットとするよう素早くピボットすることができます。

これは多くの人が留意しなければならない点だと思いますが、ウイルス性のパンデミックがまったく消え去るということはありません。現在の新型コロナウィルスは将来のパンデミックに対する警告と考えるべきでしょう。私たちは将来の新たなウイルスによる攻撃に対する防衛体制を科学的に整えておくことが必要です。

最近の応用について考えると、CRISPRは新型コロナウイルスの検査体制を飛躍的に拡充できる可能性がある。このテクノロジーはスピードや信頼性を含め、検査の本質を根本的に変えるかもしれない。第一線で活動する医療専門家、医療機関の能力を大きく拡大するだけでなく、パンデミックへの対処体制にも革命をもたらす可能性がある。

ダウドナ教授は以下のようにも述べている。

私の経験からいって今年中にCRISPRを応用した新型コロナウイルスの検査方法が提供できると思います。当初、このテストには病院等の検査室で行われるでしょうが、医療の第一線におけるCRISPRの検査を実現すべく、カリフォルニア大学バークレー校のInnovative Genomics Institute、サンフランシスコ校のGladstone医療センターなどと共同して開発を続けています。 これは病院だけでなく介護施設や寮などあらゆる場所で検査に利用できる小型のデバイスとなるはずです。唾液や綿棒で拭ったサンプルを使った迅速なテストができるようにしたいと考えています。

ダウドナ教授へのインタビューの詳しい記事はこちら。教授はCRISPRについて感染蔓延に対する応用面だけでなく。開発の背景や意義について詳しく解説している。

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タグ:新型コロナウィルス、COVVID-19、ノーベル賞、CRISPR

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ハイテク創薬技術のXtalPiがソフトバンク主導の巨額シリーズCラウンド336億円を調達

米国と中国を拠点とするAIを活用した創薬バイオテック企業XtalPi(晶泰科技)は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド率いる熱烈な投資家たちによるシリーズCラウンドで3億1900万ドル(約336億円)を調達した。明らかに価値が高く魅力的な分野でのこの9桁のラウンドには、他にも多くの投資家も参加している。

XtalPiは、新薬になり得る有望な分子を特定し、それに関するできるだけ多く知識を得る必要性に迫られたPfizer(ファイザー)などの大手製薬会社に協力している。そこはまさに競争の世界。AIでそのプロセスをスピードアップすると主張する企業には、巨額の資金が集中する。だがこの分野では、これといって際立ったブレイクスルーはいまだ見られない。とはいうものの、重要なプレイヤーたちがそれを我慢できるとは、とうてい思えない。

2014年に創設されたこの企業は、目標とする分子の非常にローレベルのシミュレーションと予測の提供を目標としている。どちらも原子レベルでの物理特性のシミュレーションと伝統的なデータ科学に基づく作業により、行き詰まりを回避し、より実りある方向へ探索の道を延ばしている。

こうした進展はデジタル世界でのことだが、結果の検証と前進のためには、どの企業もいまだに大勢の経験豊富の科学者の手と、さらにはそれを支える施設が必要となる。それが、歩みの遅い製薬業界のスピードアップに貢献するのだが、安く簡単に行えるものではない。

AI(実際には機械学習の手法だが)に支えられたバイオテック企業は、製薬大手が賭けを行う中で、巨額の資金調達ラウンドや大きな利益をもたらす(またはその可能性のある)提携を獲得してきた。Insitro(インシトロ)の創設者Daphne Koller(ダフニー・コラー)氏も、ほんの2週間前にDisruptでそんな話をしていた

ご想像に違わずXtalPiは、現在の事業をアルゴリズムの改良し、より多くのデータ、より強力なコンピューターパワーで拡大するために今回の資金を活用する計画だ。

「AIは、製薬の生産性という課題を解決する鍵を握っていると、私たちは確信しています」と、会長で共同創設者のShuhao Wen(温书豪、ウェン・シュハオ)氏は広報資料で述べている。「具体的には、XtalPiのAIを原動力とするプラットフォームは、製薬業界の研究の効率性と成功率を高め、新薬の発見と開発のコストを削減します。私たちはより多くのファースト・イン・クラス(画期的医薬品)をもたらし、飛躍的に進歩した薬を市場に送り出し、未解決の医療問題に対処して全世界規模で患者に恩恵を与えるこのプラットフォームを、クライアントに提供できる日を心待ちにしています」

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カテゴリー:バイオテック

タグ:XtalPi ソフトバンク・ビジョン・ファンド 資金調達

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(翻訳:金井哲夫)