企業が「自分で作る」給与計算プロダクトのインフラを提供するZealが約14.3億円調達

Zealの共同創業者であるプラナブ・クリシュナン氏とキルティ・シェノイ氏(画像クレジット:Zeal)

組み込み型フィンテック企業であるZealは、個別化された給与計算製品を構築することができるプラットフォームの開発を継続するために、シリーズAで1300万ドル(約14億3000万円)の資金を確保した。

今回のシリーズAには、Spark Capitalが主導し、Commerce Venturesの他、MarqetaのCEOであるJason Gardner(ジェイソン・ガードナー)氏とCROのOmri Dahan(オムリ・ダーハン)氏、Robinhoodの創業者であるVlad Tenev(ウラジミール・テネフ)氏、UltimateSoftwareの役員であるMitch Dauerman(ミッチ・ダウアーマン)氏とBob Manne(ボブ・マンネ)氏、Namelyの創業者であるMatt Straz(マット・ストラズ)氏などの個人投資家が参加した。今回のラウンドにより、同社は2020年の160万ドル(約1億7500万円)のシードラウンドを含め、総額1460万ドル(約16億400万円)の資金調達を行ったことになると、CEOのKirti Shenoy(キルティ・シェノイ)氏はTechCrunchに語っている。

ベイエリアに拠点をかまえる同社の原点は、シェノイ氏とCTOのPranab Krishnan(プラナブ・クリシュナン)氏が2018年に設立したギグエコノミー向けの決済処理スタートアップPuzzlだった。PuzzlはY Combinatorの2019年のグループに参加していた。2人は、何千人もの1099型契約社員(米国の契約労働者の種類)の一部をW2従業員(雇用契約にある一般的な従業員)契約へ移行させたのち、会社の方向を大きく変更する必要があった。

ADPやPaycorなど、大量の給与を自動で処理してくれる給与計算ソフトを探したが、どれもシェノイ氏とクリシュナン氏が求めていた、労働者への日払いや収入の構成要素の細かなカスタマイズなどの機能に対応していないことがわかった。

他の企業が同じ問題に直面しないように、彼らは顧客企業が独自の給与計算製品を構築し、従業員に毎日給与を支払うことができるような給与計算向けAPIを開発することを決めた。従来、企業は時代遅れの他社製給与計算ツールを重ね合わせ、そのための相談・使用料に数百万ドル(数億円)を費やしていた。ZealのAPIツールは、バックエンドの支払いロジスティックを管理すると同時に、給与計算のプロセスをより現代風にわかりやすくし、給与計算の責任を引き受けてくれる」とシェノイは述べている。

現在、企業はZealを利用して大量の従業員に給与を支払い、支払いデータを自社のネイティブシステムに保管している。その上、BtoBのサービスを販売するソフトウェアプラットフォームを提供する企業は、Zealを利用して独自の給与計算製品を構築し、顧客に販売している。

クリシュナン氏は「私たちの使命は、当社の税務・決済技術を米国のすべての給与明細に適用し、米国の従業員が正確、かつ効率的に給与を受け取れるようにすることだ」と語る。

米国には2億人の従業員がおり、年間8兆8000億ドル(約967兆3900億円)以上の給与が処理され、1万1000の税務管轄区では年間2万5000件以上の税法変更が行われている。

一方、シェノイ氏はIRS(米国内国歳入庁)のデータを引用し、中小企業の40%以上が年に1回以上の給与支払いのペナルティを支払っていることを示している。これが、Zealの最新プロダクトであるAbacusグロス / ネット計算ツールの原動力の1つとなった。Abacusは、給与計算の会社が所得税の支払いを遵守しているかどうかを確認するために使用できる。

同氏らは今回の資金調達により、チームを強化し、企業との取引実績を確保するためのコンプライアンス対策を強化したいと考えている。

「当社は、より多くの企業との契約を獲得し始めており、毎日数百万ドル(数億円)を動かしている。この分野は長い間手つかずであったため、多くの企業が迅速に対応できるプロバイダーと仕事をしたいと考えている」とシェノイ氏は述べている。

シェノイ氏は、今後5年から10年の間に、より多くの企業が事細かくカスタマイズできるユーザー体験を提供するモデルへ移行すると予測している。従来はADPのような企業が主流だったが、企業は自社のデータを管理し、顧客が1つのプラットフォームですべての給与関連業務を行えるようなプロダクトを作りたいと考えるようになるだろう。

今回の投資の一環として、Spark CapitalのパートナーであるNatalie Sandman(ナタリー・サンドマン)氏がZealの取締役会に参加した。同社は以前、AffirmやMarqetaといった他の組み込み型フィンテック企業に投資しており、彼女はこの分野にはAPIが切り開くことができる新しい体験があると考えている。

サンドマン氏は、Zenefitsで働いていたときに、給与計算を構築する痛みを自分でも感じていた。当時、同社は同じようなことをやろうとしていたが、接続するためのAPIがなかったのだ。データを転送するためのスプレッドシートは存在したが、1つでも間違った控除があると、それが結果的に税金のペナルティに繋がってしまう。

シェノイ氏とクリシュナン氏はともに「顧客にこだわり」、顧客がどのように給与計算製品を作りたいのかを理解するために、スピードと思慮深さのバランスを保っているとサンドマン氏はいう。

彼女は、新入社員をオンライン型にすることは、従来のスプレッドシートよりも価値をもつ製品に新入社員を組み込むことを意味するような、オーディエンス主導の人事へのマクロ的な変化を見ている。

「APIが賃金や控除の方法に柔軟性を与えることは至極当然のことだと思う。従業員が雇用主への信頼を失うこともある。給与計算は、雇用主と従業員の関係において最も信頼度に影響を与えるエリアであり、人はそのニーズを解決するために透明性と堅牢なソリューションを求めている」とサンドマン氏は語る。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

従業員のスキルアップ支援プラットフォーム「Workera.ai」が約17.6億円調達

企業にとって、最適な学習プラットフォームを見つけることは困難だ。特に、データサイエンス、機械学習、人工知能といった特定のエリアの技術能力の需要に応えるために、人材のスキルアップや新しい技術を身に付けさせることを考えている場合はなおさらだ。

Workera.aiのアプローチは、対象となるリソース(技術的な役割と非技術的な役割の両方)の学習プランを、その人の現在の習熟度に基づいてパーソナライズすることで、スキルギャップを解消するというものだ。

パロアルトを拠点とする同社は、New Enterprise Associatesを中心に、既存の投資家であるOwl VenturesやAI Fund、さらにはRichard Socher(リチャード・ソーチャー)氏、Pieter Abbeel(ピーテル・アブベル)氏、Lake Dai(レイク・ダイ)氏、Mehran Sahami(メーラン・サハミ)氏といったAI分野の個人投資家を含め、シリーズAで1600万ドル(約17億5800万円)の資金を確保した。

Workeraの共同創業者兼CEOであるKian Katanforoosh(キアン・カタンフォロッシュ)氏は、すべてのチームが明確に構造化されているわけでもなく、学習の取り組みに関して十分なサポートを受けていると感じているわけでもないと述べている。そのため同社では、技術的なスキルに関する評価、従業員がキャリア上どこに行きたいか、そのためにどんなスキルが必要かなど、いくつかの角度からソリューションを検討し、それらのスキルセットのうち今いる場所から、到達したいレベルの場所まで、Workeraが橋渡しをしてくれる。そのライブラリには、3000以上の細かなスキルと、パーソナライズされた学習プランが用意されている。

「これは、私たちが貴重なスキルアップと呼んでいるものだ」と彼はTechCrunchに語ってくれている。「スキルデータはその後組織に送られ、一緒に働くのに最も理想的で、自分たちに欠けている部分を補ってくれるスキルを持っている人が誰なのかを判断することができるようになる」。

Workeraは、Courseraの共同創業者でWorkeraの会長であるAndrew Ng(アンドリュー・ング)氏の協力を得て、カタンフォロッシュ氏とCOOのJames Lee(ジェームズ・リー)氏によって2020年に設立された。リー氏は、カタンフォロッシュ氏と最初に連絡を取ったとき、この会社がコンテンツやスキルアップにおける基本的な原理にまつわる問題を解決できると確信した。

同社は2020年10月に500万ドル(約5億4900万円)のシードラウンドを実施し、これまでに調達した総額は2100万ドル(約23億800万円)に達している。今回のラウンドでは、12カ国で30社以上の顧客を獲得した後の、同社のGo-To-Market戦略と顧客の牽引力が評価された。

過去数四半期の間に、専門サービス、医療機器、エネルギーなどの業界で、Siemens Energyをはじめとするフォーチュン500社と仕事をするようになった、とリー氏は述べている。2022年にはAIスキルへの支出が790億ドル(約8兆6800億円)を超えると予想されていることから、Workeraはそのギャップを解消するための支援になるという。

「私たちは、スキルを測定することのニーズを感じている」と彼は付け加えた。「技術者や非技術者のチームがAIリテラシーを身につけることに関心を持っているのと同様に、今回の契約の規模はその現れであり、これはより差し迫ったニーズだ」。

その結果、エンジニアリングチームとサイエンスチームを増やす時期が来たとカタンフォロッシュ氏はいう。彼は新たな資金を使って、これらの分野の人材を増やし、新製品を作り上げることに注力することを計画している。さらに、裏では多くの自然言語処理が行われているが、企業がそれをより細かいレベルで理解し、企業がより正確に人を評価できるようにしたいと考えている。

NEAのジェネラルパートナーでアジア担当のCarmen Chang(カルメン・チャン)氏は、ング氏のAIファンドとCourseraのリミテッドパートナーを務めており、彼の会社をたくさん見てきたという。

彼女は、今回のラウンドを主導できたことと、Workeraのコンセプトに「非常に興奮している」と述べている。同社は、従業員のスキルセットをよく理解しており、オーダーメイドの学習プログラムによって、企業のニーズに合わせて成長することができると、チャン氏は付け加えた。

「誰でも雇うことはできるが、今いる人材に投資し、教育やトレーニングを行うことで、従業員の全体像を把握することができる」とChang氏はいう。「Workeraは、AIや機械学習を使ってテストを行い、企業内のスキルセットをマッピングすることができる。それにより企業は自分たちが今どんなスキルセットをもっているのかを知ることができ、これは特に今の環境においてはとても大切なことだ」。

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画像クレジット:Brighteye Ventures

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

グローサリー配達のInstacartが新CEOにフェイスブック幹部のシモ氏を指名

グローサリー配達のInstacart(インスタカート)は、わずか7カ月前に同社の取締役会に加わったFacebook(フェイスブック)の幹部Fidji Simo(フィジー・シモ)氏を新CEOに指名した。元副社長でFacebookアプリ責任者のシモ氏は8月2日にInstacartの創業者で現CEOのApoorva Mehta(アプアバ・メフタ)氏の後を継ぐ。Instacartの声明によると、メフタ氏は取締役会会長に就く。

Instacartはシモ氏に代わり、さらなるコメントの求めを却下した。

10億ドル産業の最前線にいる有色人種女性のCEOは、残念ながらまだ稀だ。シモ氏はプロダクトマネジメントに携わっている女性をサポートし、テック業界における女性のキャリアを啓発する非営利組織Women in Productの共同創業者だ。今回の同氏のCEOは就任は、Facebookが同社における数少ない女性のリーダーの1人を失い、Instacartが2021年に従業員数を50%増やすことを計画する中で新たなエネルギーを得ていることを意味する。

予定しているIPOを直前にしてメフタ氏が現役職から退くことは、その稀有さゆえに注目に値する。同氏は10年前にInstacartを創業し、Y Combinatorの2012年夏のプログラムの参加から、直近の評価額が390億ドル(約4兆2850億円)という企業に育てあげた。

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パンデミックによりInstacartは脚光を浴びた。世界中の何百万という人が隔離を余儀なくされ、グローサリーストアに買い物に行くことも含めた対面やり取りの制限に直面した。デリバリーによるサービスへの消費者支出の増大は、Instacartの数十万人という労働者の雇用や、アボカドだけでなく電化製品やスポーツ用品、処方箋薬などさまざまな種類の商品の同日配達の展開につながった。

成長には論争もともなった。InstacartはProposition 22の主要な支持企業としてUber、Lyft、 DoorDash、Postmatesの仲間に加わった。Prop 22はギグワーカーを独立請負業者として分類し、受けられる福利厚生の種類を制限するものだ。最終的に可決されたProp 22は、Instacartの幹部に恩恵があり、配達を行うショッパーにとっては有害だとみられていた。Prop 22の採決は何年にもわたる抗議、賃金をめぐる集団訴訟、ショッパーに不平等な取り決めのために厳しく調査されることになったチップに関するInstacartの大失敗を経てのものだった。

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シモ氏はFacebookに10年在籍し、議論を呼んでいる企業で働いた経験を明らかに持っている。Facebookの最高執行責任者Sheryl Sandberg(シェリル・サンドバーグ)氏はシモ氏の発表にFacebook上でコメントした。

「フィジー、これまでの10年間にあなたがFacebookにもたらした影響に対して非常に感謝しています。Facebookアプリを率いながら数多くの役割を担い、その間、テック業界におけるジェンダーの平等を啓発しました。あなたが進む方向を誇りに思います。あなたを応援しています」。

Instacartはシモ氏について「Facebookのモバイル収益化戦略」の原動力であり、Facebookの広告事業のアーキテクチャのリーダーと表現する。Facebookが従業員を1000人から10万人に増やし、上場企業となる中でシモ氏は同社の規模拡大をサポートした。上場した経験は、ゆくゆくは公開企業になるというInstacartの野心とぴったり合いそうだ。

シモ氏のCEO就任は、パンデミックが落ち着き、世界の一部が経済を再開し始める中でのものだ。Instacartが今後どのように事業を展開し、好調維持という点での新たな困難にどう立ち向かうのか、新章の幕開けとなりそうだ。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Instacart人事Facebook

画像クレジット:Instacart

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

IBM社長ジム・ホワイトハーストがわずか14カ月で退任

米国時間7月2日、IBMは、Red Hatの買収にともなって入社したJim Whitehurst(ジム・ホワイトハースト)氏が、社長就任からわずか14カ月で社長を退任するという驚きの発表を行った。

辞任の理由など、詳細は発表されていないが、声明には2018年にRed Hatの340億ドル(約3兆7740億円)の買収を成功に導いた功績と、彼がその後の両社の融合に努めたことが特記されている。「ジムはIBMの戦略の構築に力を発揮しました。また、IBMとRed Hatの協調関係を確実なものとし、弊社の技術的プラットフォームとイノベーションが顧客にもたらす価値を大きなものにしました」とある。

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ホワイトハースト氏は会長兼CEOであるArvind Krishna(アルヴィンド・クリシュナ)氏のシニアアドバイザーとして社に残るが、短期間で社長職を去る理由、および今後についての説明はない。通常、このクラスの大きな買収があると、上級役員の処遇に関する合意もあるはずだが、単純にその期限が過ぎただけなのか、ホワイトハースト氏が昇進を求めているのか、そのどちらかかもしれない。彼をクリシュナ氏の当然の後継者と見ていた者もいたが、その線で考えるとなおさらのこと、今回の異動は意外だ。

Moor Insight & Strategiesの創業者で主席アナリストのPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は「ジムはIBMの次のCEOだと思っていたから意外だ。IBMの生え抜きであるクリシュナ氏と外部からの人材であるホワイトハースト氏のコンビも、すてきだった」と語る。

とにかく、IBMを主にハイブリッドクラウドにフォーカスした会社に変える仕事をしていた彼を失うと、クリシュナ氏のリーダーシップチームに大きな穴ができる。ホワイトハースト氏は、その深い業界知識と、Red Hat時代に培われたオープンソースコミュニティの信頼を武器として、IBMの変化を推進する絶好の位置につけていたことは間違いない。彼は、簡単に代わりを見つけられるような人物ではないし、今日の発表も後任については触れていない。

2018年にIBMがRed Hatを340億ドルで買収した際、両社には滝のように連なる一連の変化が起きた。まず、Ginni Rometty( ジニー・ロメッティ)氏がIBMのCEOを降りアルヴィンド・クリシュナ氏に代わった。同時に、Red HatのCEOだったジム・ホワイトハースト氏が社長としてIBMへ移籍し、長年の社員だったPaul Cormier(ポール・コーミエ)氏がRed HatのCEOを引き継いだ。

今日は、その他の異動も発表され、その中では長年IBMの役員だったBridget van Kralingen(ブリジット・バン・クラリンゲン)氏が退社し、グローバル市場担当上級副社長としての役を降りることになった。また、IBMのクラウドとデータプラットフォーム担当上級副社長だったRob Thomas(ロブ・トーマス)氏がバン・クラリンゲン氏の役を引き受けることになる。

カテゴリー:その他
タグ:IBMRed Hat人事退任

画像クレジット:Bloomberg/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルがGoogleマップのトップに経験豊富なSiriusXMの元CPO / CTOを招く

ほぼ1年前、Googleは指導部の一新を図った。それにより2012年に同社に参加したPrabhakar Raghavan(プラバカール・ラガヴァン)氏が、検索とGoogleアシスタント、Googleマップを統轄することになった。同社の雇用に詳しい筋によると、今度はこれまでインターネットラジオSiriusXMのプロダクトと技術の最高責任者だったChristopher Phillips(クリストファー・フィリップス)氏がGoogleのジオ(地理)関連のチームを率いることになり、GoogleマップとGoogle Earth、Google Maps Platform、およびこれらのプロダクトを中心とする同社のエンタープライズビジネスを統轄することになった。Googleは彼の雇用を認めたが、それ以上の情報はない。フィリップス氏は2021年6月中に正式に同社に加わる。

画像クレジット:Christopher Phillips/LinkedIn

フィリップス氏がSiriusXMに入ったのは、同社が2020年、音楽サービスPandoraを買収した後だ。それまで彼はPandoraのCPOとテクノロジーのトップを6年務め、その前の2012年から2014年まではAmazon Musicのプロダクトと設計部門を指揮し、さらにその前はWorkspeedとIntuitの役員職だった。

Googleにおける新しい役割としてフィリップス氏は、地理チームのプロダクトとエンジニアリングの両方を率い、直接の上司はプラバカール・ラガヴァン氏になるだろう。後者は検索とアシスタントとGeo、コマース、そして広告部門の指揮を続ける。2020年の指導部一新では、Jen Fitzpatrick(ジェン・フィッツパトリック)氏がGeoチームに関して同様の役を演じた。

Search Engine Landによると、フィッツパトリック氏がGeoチームを去った後はDane Glasgow(デーン・グラスゴー)氏とLiz Reid(リズ・リード)氏がチームのトップを務めた。グラスゴー氏はその後Googleを辞め、現在はFacebookにいる。またリード氏は最近、新たな役割としてGoogleの検索体験部門を率いることになった。これらにより、Geoのトップは空席となり、それを今回フィリップス氏が引き継ぐことになる。

フィリップス氏には地理方面のプロダクトを実際に作った経験はないと思われるが、プロダクト指向のエンジニアリングチームを率いた豊富な体験をGoogleに持ち込むだろう。Googleマップは最近、いくつかの重要なアップデート発表したばかりであり、フィリップス氏の雇用は、Googleマップが同社のプロダクト群における重要性をさらに増した時期に行われたことになる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleGoogleマップ人事

画像クレジット:Sundry Photography/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Googleが「責任あるAI」部門に新たなリーダーにマリアン・クローク博士を任命

Google(グーグル)は、Google Researchの「責任ある人工知能(AI)」部門のリーダーにMarian Croak(マリアン・クローク)博士を任命したと、Bloombergが米国時間2月18日に報じた。クローク博士はそれまで、同社のエンジニアリング担当副社長を務めていた。

クローク博士の新しい役職は、アクセシビリティ、社会的利益のためのAI、健康におけるアルゴリズムの公平性、脳の公平性、倫理的AIなどに取り組むチームを監督することだ。彼女の直属の上司は、Google ResearchのAIと健康部門のSVPであるJeff Dean(ジェフ・ディーン)氏になる。このニュースを認めたGoogleのブログ記事と動画の中で、クローク博士は次のように述べている。

この分野、責任あるAIと倫理の分野は新しいものです。ほとんどの機関はこの5年ほどで原則を策定してきましたが、それは非常に高レベルで抽象的な原則です。これらの原則の規範的な定義を標準化しようとすることに対して、多くの反対意見があり、多くの対立があります。誰が定義した公平性や安全性に、私たちは従うのか?現在、この分野では多くの対立があり、二極化していることもあります。私がしたいことは、人々に今よりもっと外交的な方法で、対話してもらうことです。そうすれば、私たちはこの分野を真に発展させることができるでしょう。

今回の件はすべて、Googleの倫理的AIチームで共同リーダーを務めていたTimnit Gebru(ティムニット・ゲブル)博士の辞職と、Googleの倫理的AIチームの創設者である研究者のMargaret Mitchell(マーガレット・ミッチェル)氏が企業アカウントをロックされた後の出来事だ。Axiosの報道によると、Googleは2021年1月、自動化されたスクリプトを使ってゲブル博士が虐待されていた例を探したとして、AI倫理研究家のマーガレット・ミッチェル氏の企業アクセスを無効化したという。Googleは彼女が辞職したと主張しているが、同社から解雇されたとゲブル氏は語っている。Googleは当時、Axiosに送った声明で次のように述べている。

当社のセキュリティシステムは、従業員の企業アカウントが信用性の問題により危険にさらされていることを検出した場合や、機密データの取り扱いを含む自動ルールが発動された場合、アカウントを自動的にロックします。今回の例では、昨日あるアカウントが数千ものファイルを流出させ、複数の外部アカウントと共有していることがシステムによって検出されました。我々は、その従業員に本日の早い段階でこのことを説明しました。

ミッチェル氏はまだアカウントをロックアウトされたままであり、Bloombergの記事を見て初めて組織再編のことを知ったと、2月18日にツイートしている。

私はこの記事で知りました。信用を取り戻してくれて本当に良かった。私は完全に消されてチームを奪われてしまったようです。

TechCrunchは、これがミッチェル氏にとって何を意味するのかを判断しようとGoogleに連絡を取ったが、同社は彼女についてのコメントを辞退した。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Google人事

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スマートマグの先を見据えるEmberが元ダイソンのトップをコンシューマー部門CEOに指名

温度制御スマートマグのEmberは米国時間2月12日、創業者のClay Alexander(クレイ・アレクサンダー)氏が2月16日付でグループCEOに異動することを発表した。同氏の後任には、ロサンゼルスを拠点とするスマートマグカップメーカーの同社は、コンシューマー部門CEOとしてJim Rowan(ジム・ローワン)氏を迎える。ローワン氏はDyson(ダイソン)のCOOを5年間務めた後、2017年から2020年までCEOを務めていた。

これは、Emberのような比較的小規模な企業にとっては大きなゲットだ。2012年に設立されたこのハードウェアスタートアップは、直近では2019年初頭に2000万ドル(約21億円)のシリーズDを調達し、資金調達総額は5000万ドル(約52億5000万円)弱となった。

アレクサンダー氏の同社における継続的な役割は、Emberのコンシューマー部門を超えた追加カテゴリを示している。「私はEmberを設立したとき、当社の温度制御技術には無限のアプリケーションがあると知っていました。ジム(・ローワン)が我々のチームに加わったことで、新興のヘルスケア分野に集中し、当社の技術を利用して生活の改善や救命にまで貢献できるようになります」と同氏は声明でこう述べている。

気の利いたテクノロジーとスマートなデザインのおかげで、同社はかなりニッチな製品にも関わらずそれなりの規模のフットプリントを構築し、Target(ターゲット)、Costco(コストコ)、 Best Buy(ベストバイ)、Starbucks(スターバックス)などでの小売販売を拡大している。同社はおよそ100人のスタッフという少ない社員数を維持しながら、これを実現してきた。

ローワン氏はTechCrunchの取材に対し、こう語っている。「彼らには精密な温度制御を軸にして、優れたIP、優れたデザイン、そして優れたイノベーションがあります。もちろん温度制御マグやフラスコから始まったわけですが、そのIPは他の多くのアプリケーションにも応用できます。私にとっては、無数の異なる産業や市場でそれを使用できるという黄金の糸は、本当に、本当にエキサイティングなことです。その1つがコールドチェーンですが、パンデミックが始まって以来、その重要性はさらに高まりました。これは、新市場での破壊と革新をどうやって実現できるかを示していると言えるでしょう」。

ローワン氏は、BlackBerryのCOOやFlextronicsの上級幹部を務めた経験もある。Dysonを退職した後は、PCH InternationalとKKRの両者にアドバイザーとして参画していた。しかし、Emberで彼が何をしようとしているのかを最も直接的に例示しているのはDysonだろう。Dysonは空気を動かす会社だ。それは掃除機、扇風機、ドライヤー、その他無数の製品カテゴリーに当てはまる。

根本的な疑問は、Ember独自の加熱・冷却技術を他の分野でどのように応用できるかということだ。産業レベルでは、食品や医薬品を国際的なコールドチェーンで出荷している間、所定の温度に保つのに役立つ可能性があることを意味する。また、同じ基礎技術をベースにして作られた消費者向け製品が増えることも意味する。

「現在のマグカップやトラベルマグ以外にも、もっとたくさんの製品がこれから出てきます」とローワン氏はいう。「消費者向けのパイプラインには多くの新製品があり、2022年または数年のうちに発売される予定です。さらに、既存の製品で新しい地域への展開も考えています」とも。

これは主にアジア地域(ローワン氏はシンガポールにとどまる予定)とヨーロッパを意味している。これまでのところ、Emberのフットプリントは米国中心だったが、パンデミックの中でのeコマースへのプッシュは、それをある程度拡大するのに役立っている。しかし、130ドル(約13640円)の電気スマートマグを生活に取り入れる人口の上限がどれだけ高いのかという疑問が残っている。Emberはまだ実際の数字をリリースしていないし、Dysonでの経験があるローワン氏は、プレミアム価格の製品をプレミアム価格で販売することには慣れ親しんでいるが、低価格ポイントまたは格下の製品にコミットする準備はできていないと思われる。

もちろん、保温マグカテゴリーの低価格モデルは近所の99セントストア(100円ショップ)ですでに購入できるし、Emberがそのスペースで競合しようとウズウズしているわけではないのは明らかだ。同様に、Emberの現在のラインアップとは異なり、それらの廉価製品はApple Storeには置かれないだろう。その代わり、同社はプレミアム消費者ブランドとして、より急速なペースで他のカテゴリーへの進出を続けることになりそうだ。ローワン氏は、「実際の技術は、温度制御技術により、飲料だけでなく、多くの新しい分野に拡大することができます」と述べている。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Emberスマート家電人事

画像クレジット:Ember

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

Bambeeの提案:雇用主だけでなく、中小企業の従業員が信頼できる人事サービス

Allan Jones(アラン・ジョーンズ)氏の最初のスタートアップは、サンタモニカを拠点とするスタートアップスタジオ・アクセラレーターのScienceが支援した、Trunk Clubのようなバーチャル・パーソナルショッパーサービス、Fourth and Grandだった。

その事業は成功しなかったが、おかげで駆け出しの若い起業家(そして大学中退者)だった彼は、ロサンゼルスを拠点とするスタートアップBambeeを立ち上げる道に進んだ。同社は、小企業でも大企業と同じような人事サービスを従業員に提供することを可能にする会社だ。

BambeeがZenefitsなど人事サービスを提供しようとしている他の企業と異なる点は、雇用主だけでなく従業員のニーズにも焦点を当てているところだ。多くのツールは、雇用主の視点から採用、人材管理、福利厚生管理に重点を置いている。Bambeeは、それを取り巻くビジネスプロセスではなく、人事のソフトでヒューマンな側面を扱っていると自負している。

ジョーンズ氏は、カリフォルニア州アップランドで地元のミニマーケットを経営していた父親が、恨みを持った従業員から不当解雇訴訟を起こされ対処せねばならなかった経験から、このビジネスのインスピレーションを得たという。

「(アメリカ)全国すべての中小企業は、人事の専門家にアクセスできるべきです」とジョーンズ氏は語る。「子供の頃、私の父は小さなミニマーケットを所有していましたが、不当解雇で訴えられ、彼は、私の大学のために貯めた教育資金に手をつけざるを得ませんでした」。

DocstocやZipRecruiterを含むLAのスタートアップと仕事をする中で、ジョーンズ氏は父親の雇用主としての状況で目の当たりにした不安定さが、従業員にも及んでいることに気づいた。「脆弱性は双方に存在していました」とジョーンズ氏は言う。

WeWork、Uber、Zenefits、あるいはAwayのようなスタートアップの従業員の状況を見れば、企業の存在の初期段階での人事管理の不足が、後になってより大きな問題に雪だるま式に発展する可能性があるのは一目瞭然だ。

「これは560万社の企業に蔓延している問題です。一旦そのことに… そして(既存の)解決策がないことに気がついたら… 正気のさたじゃないとしか思えませんでした」とジョーンズ氏は語った。

ジョーンズ氏によれば、Bambeeなら、フルタイムの人事の専門家が提供するサービスの80%をはるかに小さなコストで提供できるという。

Bambeeは月額99ドル(約1万300円)で、クライアントに専任の人事マネージャーを提供し、適切な人事ポリシーの作成と実施、アプリでの電子署名の収集、複雑なコンプライアンスの規制の世界をナビゲートすることができると同社は述べている。これらのマネージャーは、社内調査、採用、新人研修、一時解雇、職場復帰手続きの実施などを指揮できるとのこと。

人事の専門家は、管理職の不祥事が全社的な問題に発展しないようにするだけでなく、情報の源泉となることもある。また、従業員を一時解雇する方法、スタッフを再雇用する方法、両方の状況に対応する方法などの情報も提供できる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックへの対応では、これらの情報は非常に重要になった。

そのため、Stojo Projects、Knife Aid、Hank’s Bagelsなどの企業が同社のサービスを利用している。Bambeeは全国に彼らと同じような顧客を約1万社抱えており、現在までに3200万ドル(約33.2億円)を調達している。10月には、QED Investorsが主導する1500万ドル(約15.5億円)のラウンドを終了し、AlphaEdisonを含む以前の投資家も参加している。

ジョーンズ氏は、成長の余地はたくさんあると考えている。いったん同社が実際に人材を管理するソフトサービスを導入すれば、従業員の福利厚生管理や給与など、よりコモディティ化されたツールも簡単に導入できるようになる。他の金融商品も、バックエンドから提供できるようになるかもしれません、とジョーンズ氏は語った。

「私が実現したいことの一つは、雇用主と雇用者の関係をより公平にすることです」とジョーン氏は言う。「基本的なことから始めて、関係をより良く定義する必要があります。蔓延する問題として、雇用主と従業員の世界で、両者の関係がいかに定義されておらず、軽視されているかを目の当たりにしてきました。信頼関係が構築される人事サービスの要素… これらの企業ができることを、どれだけ拡げることができるでしょうか?」。

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カテゴリー:HRテック
タグ:人事

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(翻訳:Nakazato)