繊細な処理が可能なロボットの「手」を開発するSoft Roboticsが大手FANUCと提携、約25億円調達

 

ロボティクスのスタートアップ、Soft RoboticsがシリーズBラウンドを完了、2300万ドル(約25億円)の資金を獲得した。このラウンドはCalibrate VenturesとMaterial Impactがリードし、Honeywell、ヤマハ、Hyperplaneなどの既存投資家が加わった。注目すべき点は世界最大の産業用ロボットのメーカー、FANUCがラウンドに参加したことだ。同社や最近SostRoboticsと戦略的な提携を行っている。

Soft Roboticsのプレスリリースによれば、今回のラウンドは「募集枠を超えた」額だったという。つまり同社は差し迫った資金需要があったわけではないらしい。実際、今回の2300万ドル(約25億円)を調達したラウンドの前、2018年の2000万ドル(約22億円)のラウンドも「募集枠を超えた」ものと発表されている。それ以前のラウンドは500万ドル(約5億5000万円)のシリーズAで2015年にクローズされている。Soft Roboticsのクライアントには世界の大企業多数が含まれるため、おそらく資金は潤沢なのだろう。

Soft Roboticsはロボットが対象をつかむ手の部分を開発している。社名からも推察できるが、このグリッパーにはソフトな素材が用いられ、各種のデリケートな処理を可能としている。従来の変形しない強固なグリッパーの場合、壊れやすい素材をつかむためには非常に精密な位置決めが必要となりわずかの誤差も許されなかった。

2018年の資金調達ではSoft Roboticsは従来のリテールやロジスティクス一般に加えて、食品、飲料などの処理にもターゲットを拡張することを明らかにした。新しいパートナーであるFANUCが今回のラウンドに参加している。FANUCはSoft RoboticsのMini-Pコントローラーを内蔵する柔軟なグリッパー、mGripをFANUCの既存の各種産業用ロボットに組み込むことにより、処理のバリエーションを大幅に拡大している。一方、Soft Roboticsはロボティクス事業において世界でもっとも影響力がFANUCと戦略的、テクノロジー的な関係を築くことに成功した。

今回の資金調達でSoft Roboticsはさらなる成長に向けて投資が可能となった。アイテムのバリエーションを拡大し、食品パッケージングを含めて消費者向けグッズの処理やeコマースのインフラとなるロジスティクス分野にもいっそう力を入れることになるだろう。特にeコマース業界において最大の課題となっている大量に発生する返品処理のロボット化、効率化はSoft Roboticsのソフトグリッパーが威力を発揮する分野になりそうだ。

【Japan編集部追記】 記事中で今回のラウンドがシリーズBとされているが、CrunchBaseによると2015年2018年とも「シリーズA」とされている。なお原文のSoft RoboticsのCrunchBaseはエラーを返してくる。

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滑川海彦@Facebook

産業用ロボット大手ファナックがAI利用でオートメーションをオートメーションする

工場等の製造工程はオートメーションによってすでに相当合理化されているが、しかしそれらのマシンは有能な技術者が苦労して訓練しなければならない。産業用ロボットの大手ファナックは、ロボットをもっと訓練しやすくして、オートメーションを製薬などより幅広い産業が利用できるものにしたい、と考えている。同社は米国時間4月18日に行われたTechCrunchのイベント「Robotics + AI Sessions」で、人工知能を利用する新しいツールを発表した。それは、簡単なアノテーションとセンサー技術によりロボットに容器から正しいオブジェクトを取り出すよう教え、訓練工程を従来より数時間も短縮する。

Bin-picking(ビンピッキング、より単純にはピッキング)はその名のとおり、ロボットアームを容器(bin)から正しい品物を取り出せるよう訓練して、一括注文した部品を正しく選り分けるなどの面倒で時間のかかる仕事をやらせる。そのために部品のサンプルを写真に撮り、ロボットが視覚センサーで目の前の部品とマッチできるようにする。従来のビンピッキングロボットの訓練では、正しいパーツを取り出せるようにたくさんのルールを教えなければならない。

ファナックのロボット事業本部本部長の稲葉清典博士はこう語る。「以前はそのためのルールを作るために大量の試行錯誤ややり直しが必要で時間もかかり、とても面倒だった」。

たとえば積まれた部品の山を見て、そこに目的の部品を見つけるためのルールがある。あるいはその中でいちばん目立つもの、目立つという概念を教えなければならない。エラーを犯したら人間オペレーターがそのことをロボットに教え、訓練をやり直す。オートメーションを導入してまだ日の浅い産業では、ロボットを訓練するための技術者やオペレーターを確保することが難しい。

そしてそこに、ファナックの新しいAIベースのツールが登場して、訓練工程を単純化する。人間オペレーターは容器に乱雑に放り込まれているパーツの写真を見て、ロボットに取り出させたいパーツの例を画面上でタップする。それは、幼児におもちゃの片付け方を教えるのに似ている。これは通常のAIベースの視覚センサーを訓練する場合に比べてかなり短時間で済み、同時に複数のロボットを訓練できる。

稲葉氏はこう語る。「人間が物を動かすときと同じやり方をロボットに人間オペレーターが教えるのは、きわめて難しい。しかしAIを利用すれば、従来のやり方よりももっと直観的にロボットに教えることができる」。彼によると、この技術はまだ初期的な段階なので、実際に工場の組立ラインで使えるようになるためには、さらなる研究開発が必要、という。

画像クレジット: Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Amazonの世界最大級フルフィルメントセンターのロボット軍団を見た

第2本社の一つをクイーンズ区に建設するという計画が地元の攻撃にあって挫折する数カ月前に、Amazonは8000平方メートル近い面積を持つ巨大フルフィルメントセンターをスタテン島にオープンさせていた。昨年秋に完成したJFK8と呼ばれるロジスティクス施設の建設には1億ドルが投じられ、最終的には2250人を雇用することになる。

我々は2月にJFK8を視察するチャンスがあったが、空気にはまだ新品の匂いが漂っていた。すべては真新しくピカピカで、マシンの静かなうなり声が聞こえた。これは年中無休、24時間稼働を前提とした設備で、Amazonが目指す迅速な商品宅配を実現するためのデザインだった。

JFK8は21世紀の資本主義を象徴するある種の大聖堂だ。Amazonの政治的意味を考えるなら、JFK8のベルトコンベアのハイウェイにパッケージが迅速に積み込まれ翌日までに消費者の手元に届くように発送されていく光景を忘れてはならないだろう。

このスペースはまた人間とロボットが文字通り手を取り合って働く未来の工場の姿としても印象深い。Amazonは現在、25個所以上のフルフィルメントセンターに10万台のロボットシステムを配置している。Amazonの説明によれば、在庫商品の種類を40%アップするのに役立ったという。

スタテンアイランドの施設には、棚から所定のアイテムを取り出してコンベアに置くソーターから、Amazonと日本のオートメーション大手、ファナックが共同で開発したパレットを積み込み用の巨大なロボットアームまで、 ありとあらゆる最新のテクノロジーが導入されている。

システムの中心をなすAmazonの自社製ロボット群はすべて迅速な配送というひとつの目的のために動いている。上の階ではぎりぎりのスペースの床の上で巨大なルンバのようなロボットが厳密に制御された複雑なダンスを踊っている。

リモート操作により自由に動き回れるロボットこそ、 Amazonが2012年に7億7500万ドルで買収したマサチューセッツに本拠を置くスタートアップKivaの中心となるテクノロジーだった。3年後に同社はAmazon Roboticsと改名されたが、Kivaの痕跡はまだあちこちに残っている。人間の立ち入りを制限するロボッ作動区域を囲う柵にはいまだにKivaのロゴが見られるものの、Amazonとして2番目に巨額だ。た買収は急速に結果を出しているといえるだろう(略)。

Amazon Roboticsのソフトウェアおよびシステム・ソリューションを担当するScott Dresserは「ロボットが人間の職を奪う」という広く流布している説を否定し、TechCrunchに対し、人間とロボットのスキルセットは別物であり、相互に補完関係にあると述べた。Dresserの説明によればこうだ。

人間はプロダクトを分類しどの棚に収納すべきか即座に判断できる。コンピューターはこういう判断が苦手だ。我々は人間が得意な仕事は人間に、ロボットが得意な仕事はロボットに分担させている。このような状況はフルフィルメントセンターだけでなく、あらゆる場所で同じだ。作業をロボットによって拡張することにより、人間は全体としていっそう効率的に働けるようになる。

最近Amazonが特に重視しているのが職場の安全性だ。ニュージャージーのセンターでアウトドアでクマを撃退するためのスプレーの缶が破損し、従業員24人が病院送りとなった事件は記憶に新しい。Amazonのロボットの誤作動が当初の報じられたが、Amazonは「ロボットは無関係だった」と否定した。

ロボット区域を囲むフェンスは、人間のスタッフに危害が及ばないようにすることを目的としている。重く大型の機械が作業の一部になるにつれ、安全性はまつます重点的な配慮を要する事項となる。安全性と効率性、双方の理由から、人間は通常この区域に立ち入ること禁止されている。しかし100%完璧なシステムは存在しない。ときおりパッケージが取り落とされたり、ロボットが故障したりする。


TechCrunchでも取り上げたロボット安全ベストをAmazonが導入したのはまさにこの問題に対処するためだ。鮮やかなオレンジ色のメッシュベストには多種類のセンサーが取り付けられており、作業者にとって1、2キロの負担となる。

しかしDresserによれば、「このベストはロボットがはっきり認識できるようデザインされている。ロボットは人間のスタッフが付近にいること認識し、それに合わせて作動する。これは我々のロボットの最も基本的な機能に組み込まれている」という。

従業員がベストの機能をデモしてくれた。ボタンを押して制限区域のフェンスを開き、中に入っていくと近くにいるロボットは即座に停止し、遠方のロボットも動作を減速させた。これが何重にもデザインされた安全対策の一つのレイヤーだという。クマ撃退スプレー事件から教訓が得られるとすれば、ロボットが作動している職場での事故は、たとえロボットが関与していなくても、あっという間にトップニュースになってしまうということかもしれない。

我々はまずます頻繁にオンラインで商品を購入するようになっている。この需要を満たす上で、賛否はともあれ、ロボットの大部隊がさらに中心的な役割を果たすようになることは疑いない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ワッフル積み重ねロボット、そのうち人類を征服?

私はワッフルもロボットも大ファンなので、 FANUCの食品処理ロボットがワッフルを積み重ねて箱詰めするとことろお目にかけたい。このロボットは、ワッフルの色を識別し5枚を1組として積み重ねる。コンベアの端で別のロボットが待ち構えており、ワッフルを箱詰めする。サイトの説明によるとこの連中はもっと重いものも処理できるそうだ。

当社では単独ないし協調して動作し、0.5kgから2300kgまで処理可能な多様なロボットを用意している。また箱詰めやパレット搭載のためにロボットを作動させるためのアプリケーション・ソフトウェアを提供する。このソフトウェアはiRVision®をもちいて対象物を認識、トラッキングできる。ROBOGUIDEシミュレーションやデュアル・チェック・セーフティー((DCS)システムなど作業のオートメーションに必須の機能もサポートされる。

ワッフル箱詰めではまだ足りないならtSpectrumの提供によるABBロボットのビデオはどうだろう。こちらもパンケーキ掴みで驚くべき能力を見せてくれる。これまで職人芸の領域だった職場にイノベーションがやってくるとどういうことになるかの一例だ。たとえヴァッサー料理大学院あたりでパンケーキ選別の学位を取得していても安心ならない世の中らしい。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+