このように、これまでは個人に向けてパーソナルモビリティを販売してきたWHILLだが、同社は今後、移動をサービスとして展開するMaaS(Mobility as a Service)事業を新たに立ち上げることによってBtoBの領域にも注力する。空港、商業施設、スポーツ施設などの施設を通して、長距離の移動が困難な人たちに向けてWHILLを貸し出すというサービスだ。また、そのために必要な「自動停止機能」や「自動運転・自動追従機能」などの実装に向けてパートナー企業らと研究を進めている最中だという。
同社では2014年9月より「WHILL Model A」、2016年7月よりWHILL Model Aの仕様を一部改良した「WHILL Model M」の一般販売を開始。そして2017年4月には普及価格版の「WHILL Model C」を発表し、より広範なユーザーに同社のプロダクトを提供していく方針を示していた。
またWHILLはパナソニックと共同開発しているロボティクスモビリティ「WHILL NEXT」とWHILL Model Cを10月27日から開催される「東京モーターショー2017」に出展することを発表。会場では活用事例として、早稲田大学とNTTの共同研究による運転支援システムの一例を展示する。このシステムはWHILL Model Cに試乗する来場者の走行データにもとづき、「技能」「心理」の2つの側面から運転を支援するものだという。
「すべての人の移動を楽しく、スマートに」というミッションのもと、WHILLは2014年9月よりフラグシップモデルである「WHILL Model A」の一般販売を開始した。その後、FDA(アメリカ食品医薬品局)からの認可を得るためにModel Aの仕様を一部改良したModel Mを発表。2016年2月にFDAからの認可を取得し、7月から一般販売を開始した。
そんなWHILLが本日発表したのが、Model Aよりも広範なユーザーをターゲットにした普及価格版の「WHILL Model C」だ。Model Cのメーカー希望小売価格は45万円。Model Aの小売価格は99万5000円であり、従来モデルの半額以下となる大幅な価格ダウンを実現したことになる。一般的な電動車いすの価格帯は20〜40万円程度で、これに近づけたかたちだ。
WHILL Model C
Model CはModel Aと比べ約55%の軽量化を実現(重量は52kg)。車体は3つに分解することも可能で、セダン車程度の大きさがあれば積み込むことができる。動力は取り外し可能なバッテリーで、5時間の充電で16kmの走行が可能。スマホとBluetoothで接続すれば、専用アプリを使ってリモート操作することもできる。カラーバリュエーションは6色だ。
WHILLはTechCrunch Tokyo 2012のスタートアップバトルにも登壇し、見事優勝を果たしている。日産自動車出身の杉江理CEOをはじめとして、ソニーやトヨタグループ、オリンパスなどメーカー出身エンジニアが中心となって2010年にチームを立ち上げた。その後1年をかけてプロトタイプを開発。東京モーターショーなどにも出展したのち、2012年には正式に法人化。販売に向けて製品のブラッシュアップを進めてきた。
杉江氏によると、同社のパーソナルモビリティ「WHILL Type A」の特徴は大きく3つ——24個の小さなタイヤを組み合わせることで、その場での回転、方向転換を実現した前輪や、四輪駆動による走破性といった「機能」、見た目だけでなく利用者の動きやすさを意識した「デザイン」、スマホアプリ経由で操作のカスタマイズが可能な「ソフトウェア」——となっている。