フリーランサーのマーケットプレイス「Malt」がコンサルタントのマーケットプレイス「Comatch」を買収

フリーランサーのマーケットプレイス業界に、統合の時期がきている。フランスのスタートアップ企業であるMalt(モルト)は、コンサルタントや業界の専門家に特化した競合マーケットプレイスのComatch(コマッチ)を買収すると発表した。Comatchはもともとドイツで始まった会社であるため、Maltはこの買収でドイツ市場も倍増させることになる。買収の条件は非公開だが、株式と現金の混合対価で行われる。

Maltは、フリーランスの開発者、デザイナーなどの技術者と、人材を求める企業をマッチングするマーケットプレイスとしてスタートした。これまでに同社はかなりの資金を調達し、欧州の複数の国々にわたり34万人のフリーランサーを集めている。

当初はフランス市場に限定されていたMaltだが、ここ数年でドイツ、スペイン、ベルギー、オランダ、スイスに拡大した。4万社の企業が1人または複数のフリーランサーを見つけるためにMaltを利用している。

同社のクライアントには、Unilever(ユニリーバ)、Lufthansa(ルフトハンザ)、Bosch(ボッシュ)、BlaBlaCar(ブラブラカー)、L’Oréal(ロレアル)、Allianz(アリアンツ)などが含まれる。このように、多くの大企業がMaltを利用したことがあるのだ。

Maltは、新しいプロジェクトが立ち上がった時に足りない分野を埋めることができる高スキルのフリーランスの仕事に特化している。現在では、開発者だけでなく、マーケティングやコミュニケーションの専門家、グラフィックデザイナーなどにも機会を提供するようになっている。

Maltのようなプラットフォームを使うことは、特にフリーランスとしてスタートしたばかりで、潜在的な顧客との大きなネットワークを持っていない場合に有益だ。また、Maltは経営上の事務処理にも役立つ。フリーランサーはMaltから直接クライアントに請求することができ、もちろん、Maltはわずかな手数料を受け取る。

Comatchもほぼ同じビジネスモデルを踏襲しているが、こちらは特に経営コンサルタントや業界の専門家に焦点を合わせている。Maltはこれまで、特に経営コンサルタントをターゲットにしていなかった。つまり、この買収によって同社は新しい業種に参入することになる。

「Comatchは、ビジネスコンサルティングのマーケットプレイスの分野におけるチャンピオンです。Maltの『コミュニティファースト』のアプローチを共有し、才能を製品やビジネスの中核に置いて、仕事の未来に対する我々のビジョンを実現する仲間として、両社の高いスキルを持ったフリーランサーの2つの世界を1つにすることを我々は熱望しており、そうなることに興奮しています」と、Maltの共同創設者でCEOを務めるVincent Huguet(ヴィンセント・ユゲー)氏は声明で述べている。

Maltは欧州で最も頼りになるフリーランサーのマーケットプレイスになりたいとも考えている。Comatchは9つの市場で1万5000人のフリーランサーを集めており、両社はCAC40とDAX40に選ばれる企業の80%と取引している。ComatchはMaltに興味深い外部成長の機会を提供することになる。

この買収後に関して、Maltはいくつかの野心的な目標を掲げている。2024年までに10億ユーロ(約1360億円)のビジネスボリュームを見込んでおり、2022年末までに150人の従業員を新たに雇用する予定だという。

画像クレジット:Malt

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)a

異色の投資家アーラン・ハミルトン氏はスタートアップの雇用ルートを変えようとしている

ベンチャーキャピタルのBackstage Capital(バックステージ・キャンピタル)を2015年に設立して以来、Arlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏は、自動車保険に挑戦する2人組からバーチャル学習のやり方を見直しているチームまで、数百万ドル(数億円)の資金を過小評価されたファウンダー率いる195の会社に投資してきた。業種の多様さにもかかわらず、ハミルトン氏は常に2つの質問を投資先企業から受けてきた。

「資金調達を手伝ってくれますか?」「雇用を手伝ってくれますか?」。

ハミルトン氏のファンドは、最初の質問への答えだが、彼女が今賭けているのは、後者を探求する(ハミルトン氏自身が作った)スタートアップだ。Runner(ランナー)は、スタートアップをパートタイムで働く人を探している人たちとをつなぐ労働マーケットプレイスだ。目的はアーリーステージスタートアップ構築における最大の不安のいくつかと戦うこと、最初の人事責任者をいつ雇うか、何を外注して何を内製すべきかといった人材配置などだ。Runnerは事業運営の職種に明確に特化してスタートする。

「コードの書き方を習いたかったり、技術色の強い職を探したければ、いくらでも行く場所はあります」とハミルトン氏はいう。「しかし、誰かの右腕、たとえばCOOになりたい人は今どこへ行けばいいでしょう。これは多くの会社が見落としてきた部分です」。

概念上、Runnerは逆張り投資家ではない。Upwork(アップワーク)とFiverr(ファイバー)はフリーランス経済の上で堅調なビジネスを構築した。この会社の違うところは、そのターゲットがテック業界の事業運営者であり、彼らをどう雇うかである点だ。”runner”、すなわちギグワークを求めているパートタイムプロフェッショナルは、W-2雇用者としてRunnerに雇われる。現在、同プラットフォームには200人前後の runnerがおり、その中には幹部経験者や、新たな収入源を求める元企業家もいる。

同社の現在の幹部の多くは、かつてrunnerとして入った人たちだ。例えばカスタマーサクセス(顧客を成功に導く)を率いるMelanie Jones(メラニー・ジョーンズ)氏は、歯科医ネットワークのプロダクトマネージャーを経て同プラットフォームに加わった。1カ月以内に彼女は幹部として雇用され、runnerから企業の意思決定者へと転じた人々に仲間入りした。それとは別に、Boeing(ボーイング)の幹部、Diana Moore(ダイアナ・ムーア)氏が4カ月前にCOOとして加わった。

runnerを請負人ではなく従業員に分類することによって、彼らは基本的な保護とより安定した雇用を得ることができる。Y Combinator(ワイ・コンビネーター)出身のBluecrew(ブルークルー)もオンデマンドワーカーを派遣する類似の組織をつくり、バーテンダー、イベントスタッフ、警備員、データ入力、カスタマーサポートなどの職種でも福利厚生のある従業員として労働者を雇用した。

ハミルトン氏にとって、Runnerは彼女がベンチャー業界に入る前から温めていたアイデアに立ち返るものだ。Backstage Capitalを始める前、ハミルトン氏は4人のミュージシャンの制作コーディネーターとツアーマネージャーだった(今も彼女は投資家としての仕事の中で音楽を引き合いに出す)。その仕事をする中で、彼女は多くのrunnerたち、すなわち遠征先で右腕として役に立ってくれる地元のエキスパートたちと仕事をした。Backstageを立ち上げる中で、彼女は自身の生活でrunnerを使い始め、国を横断してファウンダーらと合う際に1日だけ手伝ってくれる人を雇った。

音楽制作の世界におけるこの役割と、テック業界の柔軟性への愛との間にシナジーを見出した彼女は、Runnerを、ロゴを含め1から立ち上げた。

「Backstageを作っている時、私たちにリソースはありませんでした。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生して以来、人々はこのアイデアに困惑しました」と彼女はいう。「だから当時は机上のアイデアの1つにすぎませんでした」。そして2年近くパンデミックが続く今、機は熟した。

同社のビジネスモデルでは、runnerの時給の25%を受け取る。また、runnerが顧客にフルタイムとして採用された場合、顧客企業はrunnerの初年報酬の10%を斡旋料として支払う。

Backstage Ventureがベンチャーキャピタルの配り方と行き先を一変させようとしているのに対して、Runnerは企業が過小評価された人材を採用する手助けをする、という立場では作られていない。それはハミルトン氏がこの会社を固定概念化したくなかったからだという。

「私たちをDEI(多様性、公平性、インクルーシブ)な採用会社として位置づけるのは実に簡単なことでしたが、その責任を私たちがとることはしたくありませんでした。これは全員の責任であるべきことです」と彼女はいう。そういいながらも、現在Runnerの幹部は全員が、歴史的に見過ごされてきた経歴の持ち主だ。

需要にうまく応えるためにウェイティングリストモデルを採用する前、Runnerは約120社のパイロット顧客を確保し、年間50万ドル(約5700万円)の収益を見込んでいる。アプリは2022年3月15日の公開を予定している。

資金調達に関して、ハミルトン氏は同社を自己資金で立ち上げ、設立100日以内に50万ドル(約5700万円)のエンジェルラウンドを完了した。直近では、RunnerはSAFE(将来株式取得略式契約スキーム)によるプレシード・ラウンドで150万ドル(約1億7000万ドル)を評価額非公開で調達した。

ラウンドの出資者は、Precursor、Lunar Startups、Kabor CapitalのFreada Klein(フリーダ・クライン)氏、360 Venture Collective、およびGaingels。Backstage Capitalのクラウド・シンジケートであるBackstage Flex Fund IIおよびBackstage Opportunity Fund IもRunnerに投資した。

投資家が自身のファンドの資金を、自分が立ち上げた企業に投入することは稀だが、ハミルトン氏がいうように皆無ではなく、Guy Oseary(ガイ・オゼアリー)氏のSound Venturesが自身の会社のBrightに投資したり、David Sacks(デビッド・サックス)氏のCraft Ventuesが彼のオーディオ会社に投資した例はある。それでも、GP(ゼネラルパートナー)の会社に投資する時、意思決定者たちがプレッシャーを感じることがあれば利益の衝突が起きかねない。なんといってもGPなのだから。

ハミルトン氏は、Runnerへの出資を決定した投資委員会の一員だったが、各委員には自主決定する権限を与えたと彼女はいう。さらに、8ページにわたる契約概要(課題、機会、ギャップなどが書かれている)をまとめたのはBackstageのパートナーであるBrittany Davis(ブリタニー・デービス)氏とアソシエートのKelly Lei(ケリー・リー)氏であり、彼女は手を加えていないことを付け加えた。Runnerチームはプレゼン資料を提供してくれた。

「会社が利益をもたらすことは私の信託義務であり、RunnerのCEOとしての私の義務は、最良の投資パートナーを連れてくることです。私は両方をやりました」とハミルトン氏はTwitterのDMで付け加えた。Backstageの投資先でRunnerを利用している企業は25%のサービス手数料や収益の一部を支払わなくてよいこともバランスを保つ一因だ。

「私たちのゴールは2022年中に1000人以上の参加者を集め、平均4万ドル(約458万円)を達成することです」とハミルトン氏は言った。「そうすれば、私たちは5億ドル(約573億4000万円)企業になります」。

画像クレジット:Blake Little / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フリーランスのマーケットプレイス「Fiverr」が顧客ごとにカスタマイズしたPinterest風フィードを導入

フリーランスのマーケットプレイス「Fiverr」が、Pinterestに似たインタラクティブなモバイルエクスペリエンスを導入した。Fiverrを利用するユーザー企業ごとに構成したビジュアルコンテンツのフィードを頻繁にアップデートしてアピールすることを目的としている。Fiverrによれば、この「Inspire」という新機能は新しいプロジェクトのヒントを提供し、企業がマーケットプレイス上のフリーランサーを見つけやすくするためのものだという。企業はフィードでコンテンツに「いいね」したり、後で参照できるようにアプリ内でムードボードやリストにコンテンツを追加できる。

Fiverrは、この新機能にはユーザー企業が自社のビジネスやプロジェクトのニーズに役立つさまざまなサービスや機能を見つけられるようにする意図もあると説明している。フィードのコンテンツは企業の最近の検索や購入に応じて表示される。企業がフィードを延々見ていけば自社との関連性が強いコンテンツに接することができ、さらに以前に見たものを補完するコンテンツも見つかると同社は説明している。

Fiverrのプロダクト担当バイスプレジデントであるLiron Markus(リロン・マーカス)氏は発表の中で「この新しいエクスペリエンスからどのようなインスピレーションやアイデアが生まれるかを楽しみにしています。我々は今後も優秀なフリーランサーの仕事ぶりに称賛と感謝を送ります」と述べた。

画像クレジット:Fiverr

Fiverrは2021年11月に、企業がフリーランスのチームを管理するStoke Talentを9500万ドル(約109億1500万円)で買収した。Stokeには新たに参加するフリーランサーのオンボーディング機能がある他、企業はこのプラットフォームを通じてフリーランサーに支払いをしてそれに応じてフリーランス用の予算全体を管理することもできる。2021年10月にはシアトルを拠点とするオンライン学習企業のCreativeLiveも買収した(金額非公表)。CreativeLiveは起業家向けの学習プラットフォームで、ユーザーはビデオ、写真、デザイン、ビジネス、マーケティングなどのコースを受講できる。

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フリーランスのマーケットプレイス「Fiverr」が単発だけでなくサブスクでの支払いプランも開始

2021年2月には、Fiverrはそれまでの単発の支払いに加えて3カ月または6カ月のサブスクリプションをスタート。この機能を利用して、Fiverr上のフリーランスは毎月所定の業務をする。利用企業もフリーランスもいつでもサブスクリプションをキャンセルでき、残りの月の費用は発生しない。

Fiverrは2010年にテルアビブで創業し、現在はニューヨークに本社を置く。ニューヨーク証券取引所に上場しており、評価額は63億ドル(約7240億円)だ。同社によれば、このプラットフォーム上で直近の会計年度内に160カ国以上の400万社を超える企業がフリーランサーのサービスを購入した。同社マーケットプレイスでカバーしている専門技能は、グラフィックデザイン、デジタルマーケティング、プログラミング、ビデオ、アニメーションなど9つの分野、500以上のカテゴリーにわたる。

画像クレジット:Fiverr

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)

「チームワーク」で働くフリーランサーを支援する仏Collective

Collective(コレクティブ)は、開発、プロダクトデザイン、デジタルマーケティング、データ戦略など、フリーランスとして働くことの意味を再定義しようとするフランスのスタートアップだ。同社は、複数のフリーランサーがチームを組んで、同じプロジェクトに取り組むことができるようなプラットフォームを構築した。

ポイントとなるのは、それらのチームが独立したフリーランサーであり続けるということだ。彼らは同じ会社のために働いているのではなく、あくまで同じプロジェクトで働いているだけなのだ。そして、仕事が終わると、全員が請求書の一部を受け取ることができる。

Collectiveは、スタートアップ企業であるeFounders(イーファウンダーズ)の支援を受けて設立されたが、Blossom Capital(ブロッサム・キャピタル)が800万ドル(約9億円)のシードラウンドを実施した。また、多くのビジネスエンジェル投資家がこのスタートアップに投資している。フリーランスの仕事でCollectiveを利用しているフリーランサーの中には、Collectiveに投資している人もいる。彼らは自らお金をかけているのだ。

フリーランサーのためのプラットフォームは決して新しいものではない。フランスに拠点を置く開発者の多くは、Malt(モルト)Comet(コメット)にすでに慣れ親しんでいることだろう。しかし、Collectiveはこれらの市場と真っ向勝負するつもりはない。その代わりに、Collectiveはフリーランサーのチームのみを受け入れている。それは、スクワッド、スタジオ、フラッシュチーム、コミュニティなどだ。

共同設立者兼CEOのJean de Rauglaudre(ジャン・ド・ラグラードレ)氏は「私たちは、独立したコレクティブ(集団)に特化した初のSaaSプラットフォームを構築しています」と語った。同氏は、伝統的な開発会社と比較した場合のコレクティブの利点を挙げてくれた。

同氏によると、フリーランサーのチームは通常、代理業者に比べて安価だ。代理業者の場合は固定費がかかるからだ。一方フリーランサーも、健康保険や年金などの費用を払わなければならないのは事実だ。基本的には、コレクティブは同じ福利厚生を共有しないので、同僚グループという考え方に関する個人主義的な考え方になる。

しかし、それを気にしないのであれば、他にもコレクティブにはもっと明らかなメリットがある。例えば、コレクティブに参加すると、副業として自分のプロジェクトに取り組むことができるので、よりフレキシブルな働き方ができる。また、一度に複数のコレクティブに参加することもできる。

同社は、フリーランスに必要なツールを提供する。例えば、プラットフォーム上でコレクティブを管理することを選択した場合、単一の請求書を作成して顧客に送信することができる。顧客は請求書を一度だけ支払えばよい。支払いの分割や各アカウントへの追加は同社が行ってくれる。

また、Collectiveは「Portage Administratif(ポータジュ・アドミニストレーション)」と呼ばれる特別なステータスを利用している。これにより、同社は合法的に請求書を発行し、チームを代表するものとして名乗ることができるのだ。一方、フリーランサーは自分で法人格を選ぶことができる。

管理業務に加えて、同社はマーケティングツールも提供したいと考えている。例えば、軽量のコンテンツプラットフォームを開発し、各コレクティブが独自のブランディングを行い、仕事のポートフォリオを見せることができるようにしたいと考えている。

Collectiveは、フリーランスに支払われる請求額からわずかに手数料を引く。もし顧客がCollectivを通して直接来たのであれば、同社はより多くの手数料を要求することになるだろう。すでに何百社もの企業がコレクティブと仕事をしており、この仕組みはうまく機能しているようだ。

コレクティブのガバナンスシステムを解明することも興味深いことだ。従来の民間企業とは異なり、コレクティブは誰も「所有」していないからだ。つまり、次の仕事や報酬システムを選択する際には、誰もが発言権を持つことになる。

多くのDAO(分散型自律組織)は、重要な意思決定をブロックチェーン上のトークンに依存している。Collectiveでは、ブロックチェーンは関係ない。そして同社は、コンセンサスを得るのに必ずしもブロックチェーンが必要ではないということを証明してくれているだろう。

画像クレジット:Collective

画像クレジット:Nathan Dumlao / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:AKihito Mizukoshi)

正社員としての契約を与えることでフランスのフリーランサーに安定をもたらすJump

フランスのスタートアップJump(ジャンプ)は、アンブレラ型企業(一時的な契約業務に従事するエージェント契約者を雇用する会社のこと)の業界を破壊しようとしている。それら企業は、従来のフリーランスの仕事に新たに代わるものを提供している。彼らは労働者を正社員として雇用することで、労働力の安定性と正社員契約のメリットを得ることができる。しかし、労働者は独立性を保ち、複数のクライアントと仕事をしたり、自分で直接契約を交渉したりすることができる。

Jumpが従来のそれら企業と異なるのは、既存のサービスよりもはるかに低コストで、より自動化されている点だ。ユーザーは自動でアカウントを作成でき、最初の請求書も自動で送信されるため、Jumpのスタッフと話す必要もない。

登録すると、クライアントに自分への直接支払いではなく、Jumpへ支払いをするよう依頼し始めることができるようになる。ユーザーはいつでも未払いの請求書や、Jumpのアカウントにある金額を確認することが可能だ。

Jumpのユーザーは、給与明細書を作成し、給与を受け取ることができる。また、フランスの通常の正社員契約なので、国民健康保険制度に登録され、老後の生活資金を貯めることもできるのだ。顧客との関係がうまくいかない場合は、法定合意解約を申請し、失業手当を受ける権利を得られるようになる。

同社は、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)を中心に450万ドル(約5億1200万円)のシードラウンドを実施した。Kima Ventures(キマ・ベンチャーズ)と16人のエンジェル投資家もこのラウンドに参加しており、Nicolas Brusson(ニコラス・ブルソン)氏、Hanno Renner(ハンノ・レナー)氏、Laurent Ritter(ローラン・リッター)氏、Thibaud Elziere(ティボー・エルジエ)氏などが名を連ねている。

従来のアンブレラ型企業は、年間売上高の一部を徴収する。価格はさまざまだが5%、7%、場合によっては10%になることもある。例えば、Jumpの共同設立者でありCEOのNicolas Fayon(ニコラス・フェイヨン)氏は、かつてITGに勤務していたが、ITGでは売上に対して6%から8%の手数料を徴収していた。また、ITGにさらに2%の追加料金を支払うことで、経費を管理し、給与を最適化することもできる。

Jumpは現在、月額79ユーロ(約1万円)の定額制でサービスを提供している。顧客は、Axa(アクサ)の社会人・個人向け生命保険、Alan(アラン)の健康保険、フリーランスマーケットプレイス(Malt、Talent.io、LeGratin)、その他いろいろなサービス(Simbel、Secret、HelloPrêt)など、サードパーティのサービスにもアクセスすることができるようになる。

これまでに、Jumpは何百人ものフリーランサーと仕事をしてきた。これまでの請求は300万ユーロ(約3億8400万円)にのぼる。開発者、不動産業者、ドライバーなど、多くのフリーランサーがこの製品の恩恵を受けることができるだろう。また、フランスに子会社を作りたくない外資系企業でリモートワークをしている人たちにとっても特に便利なため、アンブレラ型企業にとっては大きな市場機会があるだろう。

画像クレジット:Romain Dancre / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Akihito Mizukoshi)

フリーランスのためのネットワークContraがTikTokと提携、ソーシャルビデオアプリにLinkedInテイストを追加

フリーランスのためのネットワークContraがTikTokと提携して、ユーザーが自分の履歴書や代表的作品集を、TikTokのサードパーティ統合ツールであるTikTok Jumpで展示できることになった。つまりクリエイターは、自分のContraのプロフィールを自作のTikTokビデオにリンクして、プロとしてのポートフォリオを披露できる。

またクリエイターは「View My Portfolio」のリンクをTikTokの自分のコンテンツに加えられる。するとそのリンクをタップして、クリエイターのプロフィールを見たり、サービスを知り、コラボレーションをリクエストしたりできる。

Contraによれば、この統合によってプロフェッショナルな仕事や作品を共有しやすくなり、新たな見込み客をつかまえられる。計画ではJumpの統合をもう1つ立ち上げて、求人企業がTikTokにポストしたコンテンツにリンクがあり、求職者はそこに自分のContraプロフィールをつけて応募できるようにする。同社によると、このパートナーシップにより独立系のワーカーは古典的な履歴書の代わりに、もっとおもしろい方法で自分の仕事や作品を展示できる。

Contraの創業者でCEOのBen Huffman(ベン・ハフマン)氏は次のように述べている。「キャリアに関するアドバイスをもらったり、すばらしい役割について見つけたりする場所として、TikTokはトップの位置にある。クリエイターが自分のすばらしいプロフェッショナルな作品をこのプラットフォーム上で披露できることは当然だ」。

2021年初めにContraは、Unusual Venturesのリードで1450万ドル(約16億6000万円)のシリーズAを調達した。これには、Cowboy VenturesやLi Jin(リ・ジン)氏が最近発表したAtelier Venturesが参加した。さらに2週間前に同社は、NEAがリードする3000万ドル(約34億3000万円)のシリーズBを調達し、こちらはUnusual VenturesとCowboy Venturesが参加した。

同プラットフォームは、プロフェッショナルたちが、プロジェクトベースのアイデンティティと、LinkedInのような役割ベースのアイデンティティの両方を載せたプロフィールを作ることを求めている。Contraの目標は、独立のワーカーがシグナル性が高い紹介ネットワークを作って新しい仕事の機会を得ることだ。LinkedInでは会った人を誰でも「コネクション」に加えられるが、Contraでは各ネットワークでの仕事経験を要する。

同社のTikTokとのパートナーシップで、多くのミレニアル世代やZ世代の人たちに届くことができ、仕事の機会も増えるだろう。TikTok Jumpは6月にローンチして以来、QuizletやWikipedia、BuzzFeed、Jumpropeなど多くの企業とパートナーして、それぞれに独自の統合を作ってきた。

画像クレジット:Nur Photo/Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フリーランサーや零細企業向けネオバンク「Oxygen」が約570億円超の評価額でのシリーズB調達に向けて交渉中

フリーランサーや零細企業にデジタルバンキングサービスを提供しているスタートアップ「Oxygen」が、5億ドル(約570億円)以上の評価額での新規ラウンドの調達に向けて交渉中であることを、2人の情報筋が語ってくれた。

サンフランシスコに本社を置く同社は、約7000万ドル(約79億7000万円)の資金調達に向けて交渉を進めているとのこと。ロンドンを拠点とするTribe VenturesがOxygenのシリーズBラウンドを主導する交渉を行っていると、詳細は非公開のため匿名を希望している情報筋は付け加えた。

米国やその他の地域の銀行は昔から、従来的な定職と安定した定期収入がない個人へのサービス提供を拒否してきた。

以前Amazon(アマゾン)で働いていたHussein Ahmed(フセイン・アーメッド)氏は、他のスタートアップをサポートするフリーランスコンサルタントとして仕事をするようになってから、自らこの問題に直面した。2020年のポッドキャストで同氏は「その時に、当社が今サービスを提供しようとしている市場セグメントに行き当たったのです」と語った。アーメッド氏はWeWorkで仕事をしていたとき「写真家から不動産ブローカー、会計士まで、周りの人たちは皆、同じ問題に直面している」ことに気づいた。

アーメッド氏がOxygenを立ち上げたのはその時期だった。このスタートアップは、一般消費者や小企業向けに、月額料金ゼロの口座を提供している。これらの口座は、FDICによって保証されており、最低残高なしで運用でき、Visaデビットカードが付いている。

Y Combinator(Yコンビネータ)やRuna Capitalなどが出資している同社は、これまでに60万人以上の顧客を獲得している。

Oxygenは今回の資金調達の交渉についてコメントを控えたが、アーメッド氏は広報担当者を通じて、同スタートアップは「2021年に大規模な成長を遂げ、2021年は収益を10倍に伸ばした」と述べている。「将来の計画に最適な資金調達方法について継続的に話し合っており、可能なときにコメントする予です」とのこと。

画像クレジット:Oxygen

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

LinkedInがフリーランスのためのサービスマーケットプレイスをグローバルに展開

Microsoft(マイクロソフト)傘下のLinkedIn(リンクトイン)は、仕事に就いている人や仕事を探している人が、同じ分野の人とつながるためのプラットフォームだ。採用の観点では、正社員の候補者探しや求人広告で知られる。そのLinkedInが、フリーランスのためのジョブマーケットを開拓している。

この新機能では、短期間の仕事向けに誰かを雇いたい人は広告を出すことができる。熟練知識労働者を探せるFiverrやUpworkなどと競合することになる。

今回のフリーランス向けプラットフォームの立ち上げは、他の求職ツールに関するいくつかの重要なアップデートと同時に行われた。雇用市場や働き方の新しい流れに、LinkedInがいかに適応しようとしているかを示している。

新しく検索フィルターが設けられ、リモート、ハイブリッド、オンサイト(つまり正社員)のいずれで働けるのかが表示される。採用担当者からの連絡を受けられるよう「オープン・トゥ・ワーク」をオンにしている場合、そこに上記の情報が表示される。また、求人情報を検討する際、企業の予防接種要件を確認することができるようになった(企業がその詳細を表示している場合)。

Service Marketplace(サービスマーケットプレイス)は2021年2月、小規模なテストの段階で初めてリークされた。それ以来、米国でこのサービスのベータ版を静かに稼働させ、LinkedInが全世界で抱える約8億人のユーザー(米国時間10月26日の決算発表時点)の中から、すでに200万人のユーザーを獲得した。

10月27日からService Marketplaceは全世界で提供される。フリーランスのプロフィールを設定するには、自分のプロフィールページにアクセスし、上の方にあるボタンを押し、指示に従って設定を行い、自分が興味を持って取り組める仕事にフラグを立てる。

この新機能は、Microsoftの傘下に入ったLinkedInにとって興味深い転換点となる。LinkedInは前四半期に約2500万人の新規ユーザーを獲得した。

長い間LinkedInが構築してきたのは、同社が「エコノミックグラフ」と表現するものだ。人々が仕事上の関係でどのようにつながっているかをマッピングすることで、世界経済をより深く理解することができるという構想だ。

その意図はもちろん、同社のビジネスの商業的な側面、すなわち人材紹介ビジネスをより強固なものにすることにある。同社のプラットフォームは、リクルーターにプレミアム会員権を販売して潜在的な候補者に関する詳細なデータを入手できるようにしたり、求人広告を出したり、求職者が仕事を見つけられるようになっている。

このビジネスは着実に成長している。LinkedInは10月27日の決算説明会で、プラットフォーム上で確認された採用数が前年同期比で160%以上増加し、広告収入全体も61%増加したと発表した。また、採用担当者に幅広いトレーニングコンテンツをアップセルしているLinkedIn Learningは現在、1万5000社以上の法人顧客を抱えている。

だが、その過程で、LinkedInは市場の大きな部分を切り離してしまった。この10年間で、フルタイムの長期雇用から短期のフリーランスへと移行する人が急増したからだ。

彼らがLinkedInを利用して、ネットワークを広げたり、同じ分野の人々と連絡を取ったり、仕事を見つけたりすることを妨げるものは何もなかったが、これまでLinkedInには短期のフリーランスに関わる正式な方法がなく、特にそれを収益化できていなかった。

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Service Marketplaceは、他の人材紹介製品と同様、現在は料金を請求していないが、LinkedInが将来提供し得るサービスの基礎となる。

Service Marketplaceは、250の職種カテゴリーでスタートし、500種まで拡大する計画だと、プロダクトマネージャーのMatt Faustman(マット・ファウストマン)氏はインタビューで語った。

「私たちはまだ取りかかり始めたばかりです」と同氏はいう。これまでのところ、マーケットプレイスで引き合いが強いカテゴリーの1つとして、マーケティングが挙げられると付け加えた。

注:ファウストマン氏がLinkedInに入社したのは、前職のリーガルテック専門会社のスタートアップであるUpCounselがLinkedInに買収された時だった。前職での最初のプロジェクトは、短期的な仕事に必要な弁護士を探すマーケットプレイスを構築することだったが、それは自然に、より広範なService Marketplaceに取り組むことへと発展した。

「私たちはまだ取りかかり始めたばかりです」という言葉はピッタリかもしれない。

今のところ、仕事の料金を交渉したり、請求書を発行したりするツールは用意されていない。また、人材を探す側は、候補者との会話が深まるまで、料金について具体的な説明をする必要はない。

レビューに関していえば、クライアントは契約相手をレビューすることができるが、個人側はクライアントのレビューを残すことができない。

また、マーケットプレイスに自身を掲載している人は、自分から仕事を探すことはできない。誰かに見つけ出してもらうのを待つために存在するのであって、自らの仕事を探すためではない。

仕事を探しているクライアントは、LinkedInの大きなドロップダウン検索メニューを使って人材を探す。例えば、ブランドマーケティングのスペシャリストを探している場合、検索ウィンドウにそのフレーズを入力し始めると、LinkedInがオートコンプリートで「in Service Marketplace」と表示し、そのカテゴリーの候補者一覧を出す。

候補者の抽出には、クライアントであるあなたが、仕事や個人的なつながりで、各個人とどれだけ密接につながっているかが考慮される。

しかし繰り返しになるが、一例として、ブランドマーケティングの専門家の人は、包括的な案件リストに目を通すことはできない。これは意図的なものだとファウストマン氏はいう。この機能は今のところ、クライアントの体験のために開発されたものであり、クライアントにターゲットを絞った依頼をさせ、専門家に応募が殺到して選別に時間を取られることがないようにしようという考えだ。

ゆくゆくは、上記の点や、決済など現在用意されていない機能も再検討すると同氏は語る。

LinkedInが労働者を開拓し、彼らの信頼を得たいなら、その点が重要になる。フリーランスは、料金の透明性の低さに悩まされることが多く、結果的に低価格で搾取される危険性がある。ファウストマン氏は、この点が問題であることを認め、LinkedInのプロダクトチーム内でも議論になっていたと話す。

「価格設定については、今後対応していきますが、今のところは見合わせることにしました」と同氏は述べた。

もう1つの興味深い点は、LinkedInが他の種類の労働者をどのように市場に呼び込むのかということだ。つまり、第一線で働く人やその他のサービス業に従事する幅広い人々をどうカバーするのか。Service Marketplaceにそうした層を含める計画は手元にない、とファウストマン氏は語る。しかし「長期的には、LinkedInに存在するあらゆるカテゴリーに拡張する可能性があります」。

画像クレジット:Nan Palmero / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

フリーランスのマーケットプレイスFiverrが学習プラットフォームのCreativeLive買収

フリーランスのマーケットプレイスであるFiverr(ファイバー)は、米国時間10月7日朝、シアトルを拠点とするオンライン学習企業のCreativeLive(クリエイティブライブ)を非公開額で買収すると発表した。CreativeLiveは、ユーザーが動画、写真、デザイン、ビジネス、マーケティングなどのコースを受講できる起業家向けの学習プラットフォームだ。

企業とオンデマンドのフリーランサーをつなぐオンラインマーケットであるFiverrは、変化する労働環境の中で新しいスキルを身につけることができるCreativeLiveの力が、Fiverrのプラットフォーム上で買い手と売り手の変革を導く役割を果たすと説明している。

「Fiverrは単なる仕事のプラットフォームではなく、フリーランスのライフスタイル全体をサポートするものであると私たちは信じており、それには専門的な教育やトレーニングも含まれます」と、Fiverrの創業者兼CEOであるMicha Kaufman(ミカ・カウフマン)氏は、声明の中で述べている。「今回のCreativeLiveの買収は、この幅広い戦略の一環です。CreativeLiveが提供するコースは、内容の深さと水準の高さが並外れており、それらを私たちのコミュニティ全体に提供できることを楽しみにしています」。

CreativeLiveの掲げる講師陣には、ピューリッツァー賞、グラミー賞、オスカー賞受賞者、New York Times(ニューヨーク・タイムズ)紙のベストセラー作家、著名な起業家など、多彩な顔ぶれが揃っている。魅力的な学習体験を作り上げたCreativeLiveの専門知識は、Fiverrのプラットフォームに自然に適合すると、Fiverrは述べている。

CreativeLiveは、今後も独立したサービスとして存続し、シアトルにある現在の本社でチームを拡大していく。Fiverrが現在提供しているオンライン学習プラットフォーム「Fiverr Learn(ファイバー・ラーン)」は、買収後にはCreativeLiveに統合され、内容の拡大を図ることになる。

「私たちの未来は、創造や革新を成し遂げ、速いペースで仕事をする環境に適応できる人や会社にとって、有利なものになります」と、CreativeLiveの創業者兼CEOであるChase Jarvis(チェイス・ジャーヴィス)氏は、声明の中で述べている。「私たちはFiverrファミリーの一員となり、私たちのコミュニティやFiverrコミュニティ、そして現代の労働人口のために、経済的機会を高めることができる魅力的なコースを増やしていけることを、大変うれしく思います」。

CreativeLiveは「未来における創造性、学習、仕事の交差点に座る」ことを目指し、クリエイティブプロフェッショナルのためのオンラインコースに存在するギャップを埋めるために、2010年に設立された。以来、2000以上のクラスを提供し、1000万人以上のユーザーを獲得している。

同じ2010年に設立されたFiverrは、直近の会計年度において、160カ国以上にわたる400万人の顧客が、同社のプラットフォームに登録しているフリーランサーからサービスを購入したと述べている。同社は2019年にニューヨーク証券取引所へ上場を申請した

Fiverrは2021年2月、従来のプロジェクトごとに支払うやり方を拡大し、3カ月または6カ月のサブスクリプションで購入する方法を導入した。この機能により、Fiverrの売り手であるフリーランサーは、毎月一定の業務を提供することができるようになった。これは買い手(発注主)も売り手(フリーランサー)も、いつでもキャンセルすることが可能で、その場合は残りの月額料金の支払いは発生しない。

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画像クレジット:Fiverr

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ギグワーカーやクリエイターに金融サービスとしての福利厚生を提供するCatch

Catch共同創業者アンドリュー・アンブロジーノ氏とクリステン・アンダーソン氏(画像クレジット:Catch)

Catchは、すべてのギグワーカーが、彼らが必要とする保健医療や退職手当などの福利厚生を得られるよう努力している。

現在、本社をニューヨークへ移転中の同社は、フリーランサーや契約社員など企業からの福利厚生のない人たちに直接、健康保険や退職貯蓄、源泉徴収などの福利プランを売っている。

同社は現在、シリーズAで1200万ドル(約13億2000万円)の資金を調達中で、そのリード投資家はCrosslinkで、初期からの投資家であるKhosla VenturesやNYCA Partners、Kindred VenturesおよびUrban Innovation Fundが参加した。資金は、代理店パートナー網の拡大とボストンからの移転費用に充てられる。

共同創業者のKristen Anderson(クリステン・アンダーソン)氏とAndrew Ambrosino(アンドリュー・アンブロジーノ)氏はCatchを2019年に創業し、これまでに610万ドル(約6億7000万円)を調達しているので、総調達額は1810万ドル(約19億9000万円)になる。

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Catchの15名のチームがそのプラットフォームを連邦市場の38の州で売る承認を得るのに、2年近くを要した。アンダーソン氏によると、このような承認を得ているのは同社も含めてわずか8社だが、福利の受益者個人に直販しているのはCatchも含めて3社だけだという。

「現在、クリエイターやギグワーカーとして食べてる人たち、つまり個人労働者がどんどん増えているのに、肝心の健康保険を提供していない金融サービスが多い。多くの人に、企業の社員のような福利厚生がない」とアンダーソン氏はいう。

Catchの顧客の平均年齢は32歳だが、現在の提供物に加えて、収入源のセットアップを求める者が多い。つまり彼らは、税や退職後や病気休職などへの備えを、実際に貯蓄する余力がなくても求めている。

パンデミックにより、Catchの顧客の多くが全業種平均で40%の収入を失った。美容師や調理師などには、収入がゼロになった人たちもいる。

そこでアンダーソン氏とアンブロジーノ氏は、同業のプラットフォームやビジネスツールのメーカー、ギグのマーケットプレイス、給与事務代行企業などから成る代理店パートナーシップのネットワークを作り始めた。アンダーソン氏によると、今度の資金で社員数を増やして、さらにこのパートナーシップの拡大努力を続けたいという。

Catchのプロダクトは一種の保険業務だが、競合他社の多くは、たとえばStarshipのように、健康保険のための貯蓄口座といった一品目だけのところが多い。しかしアンダーソン氏によると、Catchはプラットフォームを提供し、個々のケースにより深入りしている。クラウドベースで企業のために給与計算や福利厚生、人事管理などのサービスを提供しているGustoというスタートアップがあるが、彼女はCatchをそのGustoに喩える。Catchも同じくエンド・ツー・エンドのサービスだが、対象は企業ではなく個人だ。

これまでの1年間で同社のユーザーベースは3倍増した。副業をする人が増えたことと、DoorDashとのパートナーシップが大きい。またアンダーソン氏によると、同プラットフォームの現在のユーザーは、得られる福利の目標が大きく、多くの貯蓄をする必要があるので、通常の5倍の残高を抱えている。退職投資と健康保険も、同じく増えている。

今後についてアンダーソン氏は、シリーズBはすでに考えているが、それは2年後だという。同社は、独自のHSAプロダクト(医療費貯蓄口座)と傷害保険なども検討しており、プロダクトの多様さで他と差別化したい意向だ。たとえばSpotSuper.mxEvenなどはみな、2021年7月にベンチャーキャピタルを調達して福利を賄っている。

Catchはまた、連邦市場以外のオーディエンスにもサービスを提供していきたい。今すでにその取り組みを開始しており、アンダーソン氏によると、米国籍を持たない者への金融保険サービスは悪質なものが多く、一見おいしそうなキャッチコピーの陰で、粗悪で内容の薄いサービスが提供されているそうだ。

アンダーソン氏は「非常に混乱した市場であるため、それを正していくのは大変なことです。若者は安いサービスしか買うことはできませんが、その場合は最初に条件をよく理解してもらうことが、とても重要です」という。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:ギグワーカー福利厚生Catchフリーランス資金調達クリエイター

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フランスで介護専門フリーランサーを派遣するマーケットプレイスMediflash

療養施設やクリニック、メンタルヘルス施設のようなヘルスケア施設への人材派遣を改善しようとしている、フランスの新しいスタートアップMediflash(メディフラッシュ)を紹介しよう。同社は自らを従来の人材派遣エージェントに代わるものと位置付けている。派遣スタッフ、施設両方にとってより良い契約を提供するとうたう。

「介護スタッフへの支払いは少ない一方で、ヘルスケア施設側にはかなり費用がかかります」と共同創業者のLéopold Treppoz(レオポルド・トレポズ)氏は筆者に語った。

従来の人材派遣エージェントは給料を払って介護スタッフや看護師を雇っている。施設が十分なスタッフを確保できないときは人材派遣エージェントに派遣を依頼する。そしてエージェントはスタッフを派遣し、施設に課金する。

「我々がMediflashを立ち上げたとき、人材派遣エージェント業をしようと考えていました。しかしよりデジタル化され、テックを使った手法でです」とトレポズ氏は話した。だがMediflashは従来の人材派遣エージェントと同じ問題に直面するだろうということに気づいた。

そして同社はデベロッパーやプロジェクトマネジャー、マーケティング専門家などのためのフリーランス専用マーケットプレイスに取り組んでいるスタートアップに目を向けた。フランスではそうしたスタートアップの数社は極めて成功している。CometMaltStaffMeBrigad などだ。一部の企業はヘルス分野のプロに特化したサービスも展開している。しかしMediflashは特に介護スタッフに注力したいと考えている。

Mediflashに登録する介護専門職の人はフリーランサーだ。Mediflashはヘルスケア施設とそうしたフリーランサーをつなげるマーケットプレイスとして機能する。マーケットプレイスを通じて派遣される介護スタッフはより多くの収入(最大20%増)を見込め、その一方で施設側は人件費を抑えられる、とMediflashは話す。

もちろん、人材派遣会社は介護スタッフを雇っているため、これは公正な比較ではない。フリーランサーはフルタイムで働く従業員と同じ福利厚生、特に失業手当を受けられない。

「しかし介護専門職の多くの人は、需要が多いためこれは問題ではない、と言います」とトレポズ氏は話した。プラットフォームには、小遣いを稼ぎたい看護師養成学校に通っている生徒、すでにパートの仕事を持っていて追加の仕事を探している人、フルタイム職の代替人員となりたい人などがいる。

通常、ヘルスケア施設は人材不足を解消するために3日間だけ人手を欲しがる。Mediflashはヘルスケア施設が1つの人材派遣エージェントを利用することをよく知っている。だからこそ、同社はそれぞれの施設と1対1で話すセールスチームを抱えていえる。目下、MediflashはMetz、Nancy、Strasbourgに注力している。

Mediflashはつい最近、Firstminute Capitalがリードするラウンドで200万ドル(約2億2000万円)を調達した。MaltのAlexandre Fretti(アレクサンドル・フレッティ)氏、NablaのAlexandre Lebrun(アレクサンドル・レブルン)氏、Batch.comのSimon Dawlat氏(シモン・ダウラ)、Twitterに買収されたAiden.aiのMarie Outtier(マリー・アウティエ)氏などのエンジェル投資家も参加した。

これまでにMediflashは派遣要請のあった1400日に対応した。Mediflashは各派遣取引で手数料を取る。同社は他の都市や国にも事業を拡大する計画だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:フランス介護フリーランスMediflash

画像クレジット:Mediflash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

フリーランスの「借りられない」問題の解決目指すアプリ「smeta(スメタ)」

フリーランスは、その名のとおり「自由」に仕事をして生きていけるという魅力がある。一方で、会社員と比較すると与信審査が通りにくく、賃貸契約が難しい場合があるなど、その自由に対して支払わなければならない代償も決して小さくない。

REASEが運営するアプリsmeta(スメタ)は、このような課題の解決を目指す。スメタはフリーランスに加え、スタートアップ起業家、高齢者、外国人などに特化して与信を行い、スムーズな賃貸契約をサポートするサービスだ。

最短3日で契約が可能

REASEのCEOである中道康徳氏は「現在、日本で賃貸契約を行う際には、ほとんどのケースで賃貸保証会社による審査に通らなければなりません。その審査基準は、勤務先・勤続年数・収入がメインです。しかし、これらが安定していないフリーランスは、審査に落ちてしまいやすい」という。

smetaは、物件紹介と賃貸与信の両方の機能を兼ね備えるサービスだ。ユーザーが自分の年収を入力すると「目安家賃」が計算され、当てはまる物件が一覧表示される。その中で気になった物件があれば、本人確認書類と収入証明を提出することで、smetaから「与信枠」を得ることができる。この「与信枠」は「上限家賃」でもあり「この金額以下の賃貸物件であれば確実に入居できる=家賃保証を行う」ことを意味する。ユーザーは、上限家賃以内の賃貸物件をsmetaアプリから申し込むことで、入居審査に落ちることなく確実に契約できるようになる。

smetaの大きなメリットは「無駄な時間がなくなる」ことだろう。従来の賃貸契約では、申し込みから契約までに約2週間はかかる。しかも、賃貸保証会社による与信審査に落ちてしまうと、また振り出しに戻ってしまうというリスクもある。中道氏は「私が聞いた中で最悪のケースでは、3回連続で与信審査に落ちてしまい、最終的な賃貸契約までに約1カ月半かかったというフリーランスの方がいました」と話す。

これに対して、smetaは与信審査を最初のステップで完了するため、ユーザーは安心して申し込みを進められる。申し込みから契約まで「最短3日」程度で完結させることも可能だという。

ランサーズでの仕事内容を評価する

ここで疑問になるのは「smetaはどのような評価方法でフリーランスに与信を行っているのか」という点だろう。その答えは、申込者のランサーズなどのプラットフォーム上での業務内容を加味するというものだ。

現在、smetaはランサーズやKasookuPE-BANKをはじめとする国内フリーランス向けのプラットフォームや人材マッチングサービスなど24社と提携している。例えば、フリーランスとして活動するライターが、ランサーズ経由でsmetに賃貸契約の申し込みを行うと、ランサーズは申込者の業務内容や実績をsmetaに一部共有する。これらのデータを元に、smetaは申込者の与信枠(上限家賃)を決定するのだ。

中道氏は具体的な例を挙げる。「その申込者がランサーズ上で2万文字・10万円の仕事を受注していたとします。それを3日後に納品し、クライアントから最終的な支払いを受けている。ここからは、申込者が案件を獲得できたという営業力や、与えられたタスクを完了できる業務遂行能力、そして最終的に売上を得たという実績を確認できます。smetaでは、このような事例を多数収集して分析し『申込者が家賃を払い続けられるかどうか』という判断をしています」。

smetaでは「仕事の中身・能力」という部分まで詳細に分析することで、これまで審査に通りにくかった人たちへの与信を実現するというわけだ。この方法を実践しているのは、国内の家賃保証業界では同社が初めてという。

保証会社自らが集客することでリスクを減らす

しかし「新しい尺度」で審査をするにはリスクがつきものだろう。ましてsmetaを運営するREASEはスタートアップであり、大手の賃貸保証会社などと比較すると資本力にも欠ける。これに対して中道氏は「smeta自身がエンドユーザーを獲得して与信を行っているということが、リスクヘッジになる」という。

これはどういうことか。通常、賃貸契約を行う人は、不動産仲介業者から申し込みを行う。仲介業者の主な収益源は仲介手数料(家賃半月〜1カ月分など)であるため、顧客が支払える範囲でなるべく高い家賃の物件を契約したい、というインセンティブがある。中道氏は「商売だから当然です。しかし賃貸保証会社にしてみると、それはリスクにもなり得ます」という。

REASEは、自らのアプリsmeta経由でエンドユーザーを獲得し、上限家賃(与信)を設定する。つまり、REASE自らリスクコントロールを行うことで、ユーザーが余裕を持って支払える家賃の物件のみを案内できるため、家賃滞納や未払いなどの事態を未然に防げるのだ。

smetaは2020年の1月より本格稼働を始め、現在、そのダウンロード数は6000を超えている。不動産会社からの紹介顧客も含め、保証契約数は合計1300に及ぶという。また、REASEはPlug and Play Japanが主催するWinter/Spring 2021 Summitでは、Fintech部門の最優秀国内スタートアップに選出され、今後さらに勢いに乗りそうだ。

これまで、フリーランスとして独立すると「社会的信用度が下がる」のはなかば常識だった。これを懸念してフリーランスになるのを躊躇する人も多かったのではないだろうか。しかしsmetaの新しい評価基準により、フリーランスがさらに「自由」に生活できる日が来るのも、そう遠くないかもしれない。

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タグ:REASEsmeta不動産賃貸フリーランス日本

Y Combinatorが支援するPangeaがデモデーを前に成長と資金調達について語る

フリーランスの学生とデジタル化で助けを求めている企業を結びつけるPangeaは、Y Combinatorのデモデーはまだ先のことなのに、すでに成長が加速している。

このアクセラレーターを受講したスタートアップがデモデーに備えるのは、ちょうど今ごろからだ。彼らが成長についても語る気なら、ぜひその話も聞きたい。

ロードアイランド州プロビデンスのPangeaは、まさにそんな企業だ。TechCrunchでは2020年4月に同社の40万ドル(約4300万円)のプレシードを取り上げたが、YCのアクセラレーター事業全期を通じて同社は、最近の成長と、2020年遅くに増資をしたことが話題になった。

Pangeaのシェアハウス兼シェアオフィス(画像クレジット:Pangea)

同社の成長についてPangeaのCEOであるAdam Alpert(アダム・アルパート)氏は、同社マーケットプレースの総取引額が過去2カ月、前年比で35%伸びたという。それは、GMV(gross merchandise volume、流通総額)の成長率としては急激だ。金額でいえば最近の4週間で同社が学生のフリーランスと企業との取引を仲介した仕事量の総額は5万ドル(約540万円)になる。1年前、その数字は3000〜4000ドル(約33万〜43万円)だった。

同社はサービスの課金方法を改善して、マーケットシェアを約25%に伸ばしている。同社が実現したモデルは、主にフリーランスのデザイナーが利用しているFiverrに似ている。今後同社の売り上げも、急速に伸びるだろう。

同社の最近の成長の前には、2020年11月に新たに35万ドル(約3800万円)を調達している。そのときの評価額は、その前のシードラウンドのときよりも高い。それにもちろんY Combinatorからの12万5000ドル(約1400万円)がある。それは2021年の1月に、同社の口座に振り込まれたはずだ。

アルパート氏によると、Pangeaは現在600校が利用している。一方、最も多い買い手は、新興のブランドや小さなスタートアップだ。そうした企業は、ソーシャルメディアのアカウントやデザインなど、学生でも十分こなせる仕事が多い。

今後のプロダクトについて同社は明言を避けるが、これからはシリーズAのサイズを賄えるほどの投資パートナーを見つけることが当然重要となる。数週間後にPangeaが何をどうしているか、見るのが楽しみだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pangeaフリーランス

画像クレジット:Sean Foster/Unsplash(画像は一部を変えて使用)

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フリーランスのマーケットプレイス「Fiverr」が単発だけでなくサブスクでの支払いプランも開始

Fiverrのマーケットプレイスで、フリーランスはこれまでにはなかった方法で支払いを受けられるようになる。3カ月または6カ月のサブスクリプションだ。

Fiverrに登録しているフリーランスは、この機能により毎月所定の業務をする。注文者に割引を提供することもできるが、必須ではない。発注者もフリーランスもいつでもキャンセルでき、サブスクリプションの残りの月は費用が発生しない。ただし発注者が1カ月だけなのに割引を受けようとしてサブスクリプションを使うことのないように、キャンセルは2カ月目以降に限られる。

FiverrプロダクトマネージャーのNatasha Shine-Zirkel(ナターシャ・シャイン-ツィルケル)氏は筆者に対し、Fiverrは「1回、またはプロジェクト単位」でフリーランスに仕事を依頼するマーケットプレイスとして定評を得ているが、継続的な仕事の発注も増えてきたと述べた。そこで同社は継続的な仕事の発注と支払いをしやすくしようと考えた。

同氏によれば、サブスクリプションを申し込む企業は「質の高いフリーランスと長期にわたる関係を築く」ことができ、「仕事の要件を毎回入力する手間も省ける」という。フリーランス側は業務量と収入を予測しやすくなる。

Fiverrのサブスクリプションは、ソーシャルメディアマーケティングやSEO、ナレーターなど8つの分野で同社が「トップフリーランス」と認めた人が利用できる。

シャイン-ツィルケル氏は、「質が高くすでに関係を築いているフリーランスから学ぶ」ために小規模に始めたと述べた。最初にサブスクリプションを開始した分野は長期的な仕事とプロジェクト単位の仕事が混在していることが多く、「発注者とフリーランスがこの機能をどのように使うか」をさまざまな状況で観察できるという。

同氏は「まだ始まったばかりです」とも表現する。Fiverrは今後この機能を多くの分野の、多くのフリーランスに公開していく予定だ。

Fiverrはサブスクリプションの開始に加え、長期の業務に関する「マイルストーン」という機能も発表した。これは大きな仕事を分割し、マイルストーンが完了するたびに発注者が支払いをする方法だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Fiverrフリーランス

画像クレジット:Fiverr

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(文:Anthony Ha、翻訳:Kaori Koyama)

「個人事業主」向けバックオフィスプラットフォームのCollective、シードラウンドで9億円を調達

米国だけでなく世界中で自営業者の数が増えている。数ある中でも特に大きな原因となっているのは、優れたソフトウェアが利用できること、柔軟な働き方が必要とされていること、高いスキルを要するサービスを提供できる場合には特に高報酬が期待できることだ。

ちょうど1年前、フリーランサー向けのデジタルプラットフォームであるFreelancers UnionとUpworkが公開したレポートの推定によると、米国の労働者の35%がすでにフリーランスに転向しているという。国内でも世界中でも新型コロナウイルスの流行が依然として続いており、何千万という人々が働き方を大幅かつ継続的に変えることを余儀なくされているため、フリーランサーの割合は急上昇することが予想される。

大半のフリーランサーは、自身のビジネスの安定的成長には関心を持つが、人や物事を管理する作業は煩わしいと思っている。当然ながら、そうした自営業者の経済力に目を付ける抜け目のないスタートアップが登場している。その代表例が、サンフランシスコを拠点とする、創業2年半、従業員数20名のスタートアップ企業、Collective(コレクティブ)だ。コレクティブは、これまであまり注目されてこなかったが、同社が言うところの「個人事業主」向けに確定申告書類の作成や簿記といった事務管理サービスを構築してきた。同社は最近、シード投資ラウンドで865万ドル(約9億1300万円)の資金調達を終えたばかりだ。

この投資ラウンドをリードしたのはGeneral Catalyst(ゼネラル・カタリスト)とQED Investors(QEDインベスターズ)の2社で、Uber(ウーバー)共同創業者のGarrett Camp(ギャレット・キャンプ)氏、Figma(フィグマ)創業者のDylan Field(ディラン・フィールド)氏、DoorDash(ドアダッシュ)経営幹部のGokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏などの有名エンジェル投資家たちも参加した。

コレクティブの共同創業者兼CEOのHooman Radfar(フーマン・ラドファー)氏に、同社のミッションである「自営業者コミュニティのパワーアップ、支援、つながり形成」や提供しているサービスの内容について話を聞くことができた。

TechCrunch(以下、TC):以前会社を興し、2016年にその会社をOracle(オラクル)に売却する前に、早々とベンチャーキャピタル業界に転身して、ギャレット・キャンプ氏のスタートアップスタジオExpa(エクスパ)で仕事をしておられましたね。起業支援ではなく起業する側に戻ってこられたのはなぜですか。

ラドファー氏(以下、HR):AddThis(アドディス)やエクスパでの経験やエンジェル投資事業を通して、財務管理業務は大変な仕事だということがわかりました。小企業にとって、会計、税務、コンプライアンスといった一連の業務は、本当に厄介なものです。

2年前、[コレクティブの共同創業者の]ウグル[Ugur Kaner(ウグル・ケーナー)氏]がエクスパにやってきて、「お手軽スタートアップ」プログラムなるものを売り込もうとしてきました。起業支援ビジネスを立ち上げる話だったのですが、[どちらかというと起業に伴う事務作業や管理業務を引き受けるのが狙いでした]。ウグルは私と同じ移民で、起業に関する財務に疎く、追徴税を取られる羽目になった苦い経験がありました。フリーランサーにとって、こうした追徴税は企業よりも厳しいのです。我々が提供しているサービスのオーダーメイド版のようなものを提供しようとするスタートアップもありますが、我々から見れば「そんなサービスなんて必要ないんじゃないか」と。このようなサービスはいわば便利な道具のようなものですが、それを1つのプラットフォームにまとめると、非常に強力なサービスになり得るのです。

TC:そうした業務をコレクティブで一手に引き受けるということでしょうか。それともサードパーティーの協力を仰ぐのですか。

HR:両方です。我々は、会計や税務といった事務管理業務をメインに行うオンライン・コンシェルジュであると同時に、S法人(小規模法人)の設立のお手伝いもします。そうすれば、LLCとして起業するよりも資金を大幅に節約できますから[LLCとS法人とでは税金の要件が異なる]。ですから、統合レイヤーがあって、その上にダッシュボードがあるというイメージです。S法人の場合は給与支払名簿が必要ですから、そこはGusto(ガスト)と提携しています。ガストのサービスは当社のサブスクリプション契約に含まれています。QuickBooks(クイックブックス)とも提携しています。コンプライアンス業務についてはサードパーティーと協力して対応しています。当社のビジョンはこうした事務管理業務を簡素化してオートパイロット方式で行えるようにすることです。まさに時は金なりです。起業家には、面倒な事務仕事をしている時間などないことはよく分かっていますから。

TC:料金を教えてください。

HR:税務、会計、企業バンキング、給与のコアパッケージで、月200ドル(約2万円)です。簿記と、より包括的なサービスを含むフルパッケージについても現在試験的に導入中ですが、徐々に[それに近い姿か]その方向に向かうと思います。フルパッケージは追加料金になります。

TC:こうしたサービスが料金に見合うものであることを、個人事業主にどのようにアピールされますか。

HR:米国には、年収10万ドル(約1000万円)以上[の個人事業主]が300万人近くいます。そうした個人事業主が上記の[各種サービスの]うちすでに利用しているものがどのくらいあるのか考えると、当社のサービスは大いに利用価値があります。クイックブックスやガストは、当社経由で利用したほうがお得です。出費を抑えることで節約できます。ポイントは、S法人をすぐに立ち上げることです。S法人には普通所得税がかかりますが、配当は所得と課税方法が異なります。所得税より税率が低くなります。ですから、給与データを取り込み、各州の支出の集計を見て、「キャッシュフローの状態から判断すると、お勧めの方法はこちらになります。これで、この配当を規制に準拠した方法で認識できます」と伝えます。

TC:有益な顧客データを蓄えることになりますね。そうしたデータはどのように利用するのですか。

HR:第一に考えるべきことは、然るべき人だけがデータにアクセスできるよう配慮することです[我々はプライバシーを重視しています]。とはいえ、データの使用権を獲得すれば、そのデータを集約していろいろなことができます。たとえば、理論的には、新しい形の財務スコアを作成することも可能です。個人事業主の場合、住宅ローンや通常のローンを組むのが難しい。クレジット会社側に彼らを査定するためのツールがないからです。ですが、数年に渡る財務履歴があれば、自分が真っ当な人物で、きちんとした会社を経営していることを示せます。

これから会員ユーザー(もうすぐ2000人になる)が増えれば、別の面白い方向性も見えてきます。会員数の力で、会員が安価で保険に加入したり、クレジットを容易に利用[信用が提供される]できたり、401kに対応[サポートを受けられる]できたりといったことが実現します。

TC:プロジェクト管理からグラフィックデザインまで、他にもできることはたくさんありそうですね。

HR:現時点では、コアサービスを確実に提供したいと考えています。

Uber(ウーバー)はライドシェアリングに、Uber Eats(ウーバーイーツ)は食品宅配に、透明性と安心感をもたらしました。調理中とか、配達中とか、到着予想時刻といった情報を確認できるからです。我々は、多くのものについて、そうした高レベルの透明性と説明責任が提供されることを当然と思うようになっていますが、会計処理サービスに関してはそうなっていません。これはおかしな話です。ユーザーのお金を扱っているにもかかわらず、透明性も説明責任も果たされていない。この状態を変えたいと思っています。

TC:「個人事業主」を対象にするということは、断片化の度合いが大きい市場を相手にすることになります。潜在的な顧客にリーチできるよう、どのような企業と提携しようと考えていますか。

HR:現在交渉を進めているところですが、まずネオバンクが浮かびます。他にも、看護師と医師、不動産仲介業者、ライターのための垂直市場などが考えられます。多くの可能性があります。

写真は、コレクティブの共同創業者たち。左から順に、CTOのBugra Akcay(ブグラ・アッケイ)氏、CEOのフーマン・ラドファー氏、CPOのウグル・ケーナー氏。

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カテゴリー:ソフトウェア

タグ:フリーランス インタビュー 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)