楽天「ラクマ」と「フリル」が統合——グループ他サービスとの連携でメルカリ追随

楽天本体が運営する「ラクマ」と、2016年9月、楽天に買収されたFablicが運営する「フリル」——楽天グループで並行して存在していた2つのフリマアプリが、2月26日にサービス統合されることになった。

統合は、現在のラクマから、フリルにユーザーとデータを集約してフリルへ移行する形で行われる。統合後のサービス名称は、「ラクマ」となる。新ラクマの運営はFablicが行う。

現ラクマは3月以降、段階的に機能制限が行われ、2019年中にサービスを終了する予定。現ラクマのユーザーには、現フリルに登録して楽天IDと連携することで、ラクマの出品物や評価データをフリル(新ラクマ)に反映できる「ラクラクお引っ越しツール」が提供されている。

Fablicは2012年4月の設立で、シードアクセラレーターOpen Network Lab 4期生としてフリルを開発、2012年7月からサービスをスタートした。2016年9月の楽天による買収を経て、楽天傘下へ参入。以降、楽天では、ファッションやコスメなどの取引を中心に、10代から20代の女性に強いフリルと、30代男女を中心とした層に利用されてきたラクマが共存して運営されてきた。

フリマアプリでは、フリルより後発のメルカリが昨年12月に世界累計ダウンロード数1億を突破。日本のダウンロード数6000万超、1日の出品数100万品以上と順調に推移し、事実上、独走状態となっている。

楽天とFablicでは、サービス統合により、経営資源を集中させて運営やマーケティングの効率化を図る。また、「楽天市場」をはじめとするグループの他サービスとの連携強化も行い、メルカリを追う構えだ。

キーワードは“決済”——フリマアプリ「フリル」が楽天傘下での成長を選んだワケ

Fablic代表取締役CEOの堀井翔太氏

Fablic代表取締役CEOの堀井翔太氏

フリマアプリ「フリル(FRIL)」を運営するFablic。同社の楽天による買収が9月5日、正式に発表された。楽天では8月末にFablicの発行済み全株式を取得。買収額は非公開だが、数十億円規模だと見られる。

楽天はすでにフリマアプリ「ラクマ」を展開しているが、それぞれサービスを補完しつつも、独立した運営を続ける。Fablicの創業者であり、代表取締役CEOの堀井翔太氏は今後も同社のトップとして指揮を執る。同社のこれからについて堀井氏に聞いた。

成長には大きな資本が必要

Fablicは2014年にクックパッド、コロプラ、ジャフコを引受先とした第三者割当増資を実施。アプリは500万ダウンロードを達成。10代から20代の女性を中心にサービスを拡大してきた。そんな中で発表された今回の楽天の買収。堀井氏は次のように語る。

「7月から次の資金調達を目指して動いている中で三木谷さん(楽天代表取締役会長兼社長 最高執行役員の三木谷浩史氏)と話した。(買収額は)正当な評価。2016年にあった買収の発表としてはかなりの金額ではないか。これからプロモーションなども含めてサービスを育てていく、資金調達的な側面も大きい」「サービスの成長は順調。だがそれ以上のところに引き上げるには大きな資本が必要だった」(堀井氏)

国内フリマ市場を見ると、後発サービスである「メルカリ」が月間流通総額100億円以上という数字を発表しており、事実上の独走状態が続いている。これに対して楽天では、若い女性に強いフリル、そして30〜40代男性や主婦層中心で、家電やガジェットなど高単価商品が多い(手数料無料であることが影響しているようだ)ラクマという2つの特化型のサービスをぶつけていく(日経新聞などの報道では2サービス合計での月間流通総額は30億円程度とのこと)。

すでにフリルの楽天ID対応や、楽天スーパーポイントを利用したキャンペーンの実施などが発表されているが、これに加えて、楽天の各種サービスからの送客なども検討中だという。また、テレビCMをはじめとしたマーケティングを実施するほか、フリルの手数料無料化も間もなく開始する。

楽天は海外事業を見直している状況だ。これまで積極的に海外に進出してきた同社だが、2016年に入ってシンガポールやインドネシアなどでのマーケットプレイス事業を終了。その他の地域でも一部の拠点を閉鎖した。一方でリソースをラクマに集中。3月には台湾でサービスを開始したほか今後の東南アジア展開も控える。ここに今後フリルが関わる可能性もある。米国での躍進が聞こえてくるメルカリをはた目に、アジア圏でのサービス拡大を狙っているようにも見える。(ただしCarousellShopeeといった現地のサービスが先行している)。

フリマアプリは「決済」に繋がる

堀江氏は今後の展開について、「日本で一番長い間フリマアプリをやっているからこそ思うが、フリマアプリは(機能的に)コモディティ化してきている。お金で殴り合うだけでなく(大量の資金を投下してマーケティングなどで競合と戦うという意味)、その次を作らないといけない」とも語る。ではその次とは何か?堀井氏と話す中で浮かび上がってきたキーワードは決済だ。

今、決済まわりのサービスが非常に活気づいている。例えばBASEがの「PAY.JP」を立ち上げ、コイニーが「coineyペイジ」、AnyPayが「AnyPay」といったスタートアップ発の決済サービスが多く登場しているし、LINEも「LINE Pay」をヤフーも「Yahoo!マネー」を提供している。

僕がこれらの決済サービスの話を聞いて思ったは、これらのサービスは「モノを買う」処理を自前で行うということだけを狙っているのではないということだ。当たり前のことながら決済をすれば売り手と買い手のお金が動くわけだが、今度はその動いたお金(=売上)を同じ決済プラットフォームで流通させる、要は「財布がなくても決済プラットフォームだけを使ってお金を電子的にやり取りする」ということを目指しているのではないか。

例えばBASE代表取締役の鶴岡裕太氏はPAY.JPでID決済を提供する際に「現金をリプレイスするプラットフォームを作る」と語っていたし、AnyPay代表取締役の木村新司氏は「デビットカードをリプレイスする」ということを語っていた。すでに中国ではAlipayやWeChat Paymentといったモバイル決済の利用が拡大している。日本では資金決済法の絡みもあってスタートアップが簡単にチャレンジできる領域ではないが、魅力的な市場があることは間違いない。Fablicも楽天と組んでこの領域にチャレンジするのではないか、ということだ。

堀井氏にそんな話をしたところ、具体的な回答こそ得られなかったものの次のように語ってくれた。「楽天はECの会社であると同時にFinTechの会社。資金移動業者であり、銀行も証券も持っている。ECはこの先、物流や決済と繋がっていく。そのとき(楽天は)強力な後ろ盾になってくれる」(堀井氏)

フリマアプリの元祖「Fril」運営のFablic、楽天が数十億円で買収へ

Fablic代表取締役社長の堀井翔太氏(写真は2014年9月撮影)

楽天がフリマアプリ「Fril」を手がけるFablicを買収する。日経新聞が9月3日に報じた。関係者に確認したところによると、週明けにも正式な発表がなされる予定だという。

楽天はファブリックの全株を経営陣などから取得。取得額は数十億円になるという。また今後も楽天の完全子会社として存続させる。

Fablicは2012年4月の設立。OpenNetworkLabの第4期に参加している。2012年7月にはフリマアプリの元祖とも言えるFrilをスタートした。当初は女性に限定してサービスを提供してきたこともあり(現在はその制限はない)、若い世代の女性を中心にサービスを展開している。また最近ではバイクに特化したフリマアプリ「RIDE」の提供も開始した。楽天もフリマアプリ「ラクマ」を2014年11月から提供しているが今後Frilとラクマのユーザーを補完していくことで、月間流通総額を30億円程度を目指すという。

現在国内のフリマアプリ市場を牽引しているのは、Frilより後発、2013年2月にローンチした「メルカリ」だ。2016年3月に84億円の大型調達を発表した際の取材でも「国内月間流通総額100億円を超えた」と語っている。メルカリのようなサービスが現れる一方で2013年頃立ち上がったフリマアプリの中にはすでに終了しているものも少なくない。2013年12月にスタートした「LINE MALL」も、2016年5月にサービスを終了している。TechCrunch Japanでは現在、Fablicに本件に関するコメントを求めている。コメントが得られ次第、情報をアップデートする予定だ。

女性特化フリマアプリ「Fril」のFablic、バイク特化新フリマアプリ「RIDE」をリリース

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女性向けファッションからスタートし、2015年7月からは男性向けにもサービスを展開するフリマアプリ「Fril」を提供するFablicが次の領域に選んだのは「バイク」だった。同社は3月16日にバイク専門フリマアプリ「RIDE(ライド)」をリリースした。App StoreGoogle Playより無料でダウンロードできる。

RIDEは位置情報をもとに、近くで出品しているバイクを検索。実物を見た上で購入ができるという。出品もバイクのタイプやメーカー、車種などの質問に答えて画像を添付するだけの簡単な設計だという。

現在はプレオープン期間として、手数料無料でサービスを提供している。エスクローサービスは用意せず、金銭は個人間で直接やりとりするかたちだ。ただしバイクだとやっかいなのが、売買にまつわる公的な手続き。RIDEでは、アプリ上で成約完了時から必要な書類や準備などを説明。配車手続きや名義変更などの支援を行う。

ではなぜFablicがこのタイミングで「バイク特化のフリマ」を始めたのか? RIDE事業部の事業責任者の山本圭樹氏は次のように説明してくれた。

「(女性特化でスタートしたFrilを先行しているからと言って)あまり次は男性か、女性かと意識してサービスを提供した訳ではない。ただし、FrilはもともとSNS上でファッションアイテムを売買している人達に目を付けて提供したサービス。同じように、フリマアプリが激戦の時代でも、いまだにSNS上で売買されている商品の1つがバイクだった」—前述の手続きの面倒さもあって、既存のCtoCコマースでは取り扱いづらかった領域でもあるという。

また同社にはFrilの近況も聞いている。アプリは現在500万ダウンロードを突破。2016年はプロモーションもさらに強化し、年内1000万ダウンロードを目指すとしている。また売上については非公開ながら「右肩上がり」(同社)で、すでに単月黒字化しているとのこと。

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