フェイスブックがClubhouseクローンのライブ音声SNS機能を開発中

2021年2月に入ってNew York Timesは「FacebookがClubhouseのライバルを準備している」と報じた。しかしそのプロダクトがどのようなものになるのか、具体的な機能といった詳細は不明だったが、Alessandro Paluzzi(アレッサンドロ・パルッツィ)氏が開発中のFacebookのオーディオSNSのものと思われるスクリーンショットをTwitterで公開した。印象としてはスタンドアロンのアプリというより既存のMessenger Roomsの強化、拡大版のように見える。ライブでの音声ストリーミングと思われる機能も写っていた。

FacebookはTechCrunchに対し、この画像が同社の「音声配信サービス分野での実験的な取り組み」のものであることを確認したが、同時に「現時点では現実のプロダクトにはなっていない」と注意した。

同社では「この画像からプロダクトの機能の詳細を導き出そうとしても不正確になる」と述べた。もちろん、実際のプロダクトが開発中のものと大きく異なるものとなることはよくある。今後の正式リリースまでにどんな変化もあり得る。

しかし、この画像はFacebookがライブオーディオについてどのように考えているかをある程度明らかにする。また同社のソーシャル体験のどの部分に配置されるかを示しており、詳しく検討する価値がある。

リバースエンジニアリングは、コードを詳しく調べてさまざまな開発段階にある未発表のプロダクトを発見する。この写真を公開したパルッツィ氏はモバイルアプリ開発者で、リバースエンジニアリングの専門家だ。FacebookのAndroidアプリのコードを解析していてライブオーディオ機能やそのユーザーインターフェイスが実験されているのを見つけた。これまでパルッツィ氏が発見したコードの中には、廃棄されて日の目を見なかったものもあれば、最終的に配信されたものもある。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

今回共有された画像にはZoomのライバルとなるべく2020年5月にスタートしたFacebook Roomsのライブオーディオ機能も写っている。当時人々はビデオチャット機能を熱烈に求めていた。しかしパンデミックとともにZoomビデオが隅々まで浸透するにつれ、我々は「Zoom疲れ」を起こしてしまった。現在、人々は動画スクリーンを消して音声のみのClubhouseに熱中し始めている。

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現在、FacebookユーザーはMessengerまたはFacebook本体からMessenger Roomsを作成できるが、これは簡単にいえばグループビデオチャットだ。つまり友人、家族がリモートで時間を共有したり、Facebookの動画を共同視聴したりできる。しかしFacebook Roomの参加者は最大50人という制限があり、YouTubeライブのような大規模なストリーミングプロジェクトはできない。

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新しいスクリーンショットではRoomsの機能が拡張されている。Roomsには3つの異なるタイプがあり、現在と同様のプライベートビデオルーム、パブリックビデオルーム、プライベートオーディオルームのいずれかを選択できる。プライベートオーディオルームは友人グループとボイスチャットをするための場所であり、ライブオーディオルームは、大勢のリスナーに向けていわばラジオ放送を公開することができる。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

ライブオーディオルームには専用のリンクが与えられ、参加者はMessenger、Facebookタイムライン、Facebookグループなど、Facebookのあらゆるソーシャルメディアやウェブにリンクを貼って宣伝することができる。

一方、ライブオーディオルーム(パルッツィ氏はザッカーバーグ氏の顔写真をダミーに使ってUIのモックアップを作った)はとてもClubhouseに似ている。発言者はルームの上部に、大きな丸いプロフィール写真で表示される。ルームのリスナーはその下に表示されます。また「スピーカーによってフォローされている」という セクションがオーディエンスセクションの先頭に表示されるが、これもClubhouseと同様だ。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

パルッツィ氏によれば、現在開発中のライブオーディオルームでは、Facebook上の登録者なら誰でも参加できるルームを作ることができるようになるはずだという。ルームにはFacebook本体からアクセスできる。フルスクリーンに展開されない状態ではもルームのタイトル、スピーカーの数、リスナーの総数が表示されルームの人気度を知ることができる。

いうまでもなくパルッツィ氏が目にしたは最終製品ではない。プログラム中に隠された単なるユーザーインターフェイスのダミーに過ぎず、バックエンドは何も実装されていない。Facebookは、前述のように、この画像は単なる実験だと強調している。

しかし、この画像自体は現実にFacebookのエンジニアが開発したものであり同社がどういった方向を目指しているかを示している。Facebookの否定にもかかわらず重要性を無視することはできない。

Facebookの広報担当はパルッツィ氏の画像について「Facebookはこれまで長年にわたって、オーディオとビデオで人々を密接に繋いできた。今後もこうしたテクノロジーを進歩させていく」とコメントしている。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

FacebookのファウンダーでCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が音声SNSに強い期待を寄せていることはよく知られている。実際、ザッカーバーグ氏はすでに何度かClubhouseにに登場しており、最近では、TechCrunchの元ライターで現在はSignalFireの投資家であるJosh Consttin(ジョシュ・コンスティン)氏がホストを務めた先週のClubhouse Roomではソーシャルオーディオに大きな可能性があると強調した。その際、ザッカーバーグ氏は会議を多数主催してきた経験から、オーディオには他のフォーマットにはない利点が多数あることを強調してこう述べた。

(メリットの1つは)念入りな準備の必要がないことです。ポッドキャストやClubhouseなどの音声の場合はスタート前に身だしなみを整える必要がなくて済みます。話ながら自由に歩き回れますし、ディスプレイを見なくても、他のことをしながらでも参加でできます

ザッカーバーグ氏はClubhouseを賞賛して「ライブオーディオというフォーマットは将来のSNSにおいて欠かせないモデルとなるでしょう」と述べた。

画像クレジット:Alessandro Paluzzi

つまり、FacebookはClubhouseを「コピー可能な機能の1つ」と考えているようだ。ザッカーバーグ氏は過去にもSnapchatのStoriesのコンセプトをInstagramに借用したし、最近ではTikTokをInstagram Reelsに再現している。Clubhouseというライバルがいかに手強くてもFacebookは新しいアプリを立ち上げる必要はない。人々はすでにFacebookの上にいるのでオーディオを利用できる場所を立ち上げればよい。そしてClubhouseに登場してClubhouseを賞賛すると同時にエンジニアにデッドコピーを構築させていると示唆してた。ザッカーバーグ氏はこう述べている。

Facebookでは音声に関するユーザーの多様なニーズを考慮し、それら網羅するような方法で音声が活用できるよう、さまざなツールを構築中です。私はリリースをとても楽しみにしています。

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タグ:FacebookClubhouse音声ソーシャルネットワーク

画像クレジット:TechCrunch

画像:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:滑川海彦@Facebook

2021年のフェイスブック年次開発者会議は6月2日に「F8 Refresh」としてバーチャル開催

新型コロナウイルスの懸念により、Facebook(フェイスブック)は2020年いくつかの試みの後に結局、年次開発者会議「F8」をキャンセルした。そして3月23日、同社はF8 Refreshというバーチャルのみのイベントを発表した。米国時間6月2日に1日限りのイベントとして開催すると述べた。こちらからF8 Refreshにサインアップできる。

現在、置かれている状況に即してすべての物事のサイズを適正化するというのは時代を「象徴するもの(Mark)」だ。F8はここ何年も規模とスコープを拡大してきたが(通常約5000人を集め、会場で多くのイベントがある)、Facebookは2021年を少し控えめなものにしようとしているようだ。

「Mark」というのはここでは重要な意味を持つ言葉だ。2021年キーノートにMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は登場しない、と同社は筆者に認めた。創業者でCEOの同氏の言葉の代わりに、プラットフォームパートナーシップ担当副社長Konstantinos Papamiltiadis(コンスタンティノス・パパミルティアディス)氏がイベントのオープニングプレゼンを行う。通常オープニングプレゼンでは同社の新たなサービス立ち上げについてアップデートがある。

会場開催の計画を前もって立てるのは今のところうまく機能しない、というのも現代を象徴するものだ。新型コロナウイルスをめぐっては感染、感染減少、そしてパンデミックの再発とこれまでにあまりにも多くの予期せぬ事態が展開され、発生から1年経った現在も世界の複数の当局はウイルスを抑え込むために活動をコントロール下に置こうとしている。

Facebookはこれまで、デベロッパーやパートナー、他の出席者が日程を確保して離れたところからの移動計画を立てられるよう、F8に出席する人々に余裕あるリードタイムを与えてきた。例えば2020年の2日間のイベントは2019年11月に発表された。もちろんその数カ月後に新型コロナウイルス感染症が発生し、2020年のF8はキャンセルを余儀なくされた一連のイベントの1つとなった。Facebookは当初、ローカルイベントに置き換える方策を模索したが、結局すべてをキャンセルした。

「F8は常に構築、そしてイノベートし、次に何がくるかと探している人々のすばらしいコミュニティを1カ所に集めてきました。そして過去1年にわたって、デベロッパーのコミュニティはあらゆる規模の事業者が変わった世界を受け入れてデジタルトランスフォーメーションを加速できるよう成長させました」とパパミルティアディス氏はブログへの投稿に記した。「これを認め、当社はF8をそのルーツに戻したいと考えています。祝福し、インスパイアし、そしてデベロッパーが成長するのをサポートする場所です」。

Facebookが6月にどんなトピックを取り上げるべきと考えているのか、というのが大きな疑問だ。現在候補として考えられている大きなテーマは、発展途上マーケットでどのように引き続き成長しようと計画しているのか、Clubhouseのような新興アプリに対抗するものを立ち上げるかどうか、立ち上げるとすればそれがどんなものになるのか、広告を超えてビジネスモデルをどのように多様化するか、 Noviとデジタル通貨Diemは立ち上げられるのか、Facebookがいかにプラットフォーム上の誤使用に引き続き取り組むのか、といったものだ。

巨大で影響力の大きな企業にとって、カバーすべきものは実に多い。しかし少なくとも今は、注力すべきものは控えめとみられる。大きな立ち上げや発表よりも、FacebookはF8でエコシステムとその中にいるデベロッパーにフォーカスし続けるようだ。パパミルティアディス氏はFacebook、Instagram、Messenger、WhatsApp、Oculusにビルトインするためのプロダクトツール、テクニカルディープダイブセッション、デモ、パネルに言及し、トピックは同氏が強調したエリアの中から取り上げられそうだ。

カテゴリー:イベント情報
タグ:FacebookF8 2021

画像クレジット:Andrej Sokolow/picture alliance / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

Facebookの監督委員会はすでに「少し不満を感じている」、トランプ氏のアカウント停止については判断を保留

Facebook監督委員会(FOB)は、Facebook(フェイスブック)のコンテンツモデレーションの決定を検討する際に、二者択一の選択を求められることにすでに不満を感じている、とメンバーの1人が語った。米国時間3月3日、オンライン上の表現の自由に関する調査を行っている英国貴族院委員会で証言した時のことだ。

FOBは現在、FacebookのDonald Trump(ドナルド・トランプ)前大統領のアカウントに対する措置を覆すかどうかを検討している。2021年初頭、トランプ氏の支持者が米国の首都を襲撃したことを受けて、このテクノロジー界の巨人はトランプ氏のアカウントを「無期限に」停止した。

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米国時間1月6日に起きた混乱極まる暴動では、数人を死に至らしめ、トランプ氏が大手テクノロジープラットフォームを拡声器として利用し国民の分断と憎悪を煽っていたことについて、各社が抑止力を働かせることもなく黙認していたと、非難の声が広がっている。

しかし最終的に、Facebookはトランプ氏のアカウントを停止し、ほぼ同時にこの件を自ら組織し自ら命名した監督委員会の審査に委ねた。このことは、Facebook自身が立ち上げ、出資し、メンバーを決めた例外的な審査プロセスによって、トランプ氏への措置がすぐに覆される可能性があることを意味する。

英国の新聞社The Guardian(ガーディアン)の元編集長のAlan Rusbridger(アラン・ラスブリッジャー)氏は、委員として選ばれたFOB初期メンバー20人(人数は40人に倍増される予定)の一人だが、3月3日、審査が進行中であることを考慮しトランプ氏のケースについて直接言及することは避けたものの、初期段階での二者択一の選択肢は、自由に選択できるとは言え同氏が望むような繊細さを備えるものではないことを暗に語った。

「現在注目されているケースについてはコメントを控えるが、誰かを永久に追放するのではなく、『ペナルティーボックス』を用意して、再度何か問題を起こした場合には、その時点で追放するというのはどうだろうか」と述べ、代替案としてサッカーの「イエローカード」のような制度を望んでいることを示唆した。

「FOBは、その裁量を広げたいと考えている。単に追放か放置かだけでは、すでに少し閉塞感を感じている」と話し「もし、拡散を抑制したい場合はどうすればいいだろうか。何か枠をはめたい場合はどうだろうか」と続ける。

「そういったことは、いずれFOBがFacebookに要請することになるだろう。しかし、FOBは、まず自信を持って仕事に取り掛からなければならない。望む結果を得ることができる」。

ラスブリッジャー氏は貴族院委員会で「どのみちある時点で、アルゴリズムを見せてもらうことになると思う。それを見たときに理解できるかどうかは別問題だ」と語った。

多くの人にとって、Facebookのトランプ氏のアカウント停止は議論の余地がない。トランプ氏が暴動を煽るためにFacebookを使い続けることで、さらなる暴力を引き起こす危険性があるからだ。また、Facebookの規則に照らし合わせれば、Facebookのコミュニティ基準に対して明らかな違反が繰り返されている。

Facebookの元最高セキュリティ責任者のAlex Stamos(アレックス・ステイモス)氏は、このアカウント停止の支持者の一人だ。同氏は現在、スタンフォード大学インターネット観測所を通じて、オンラインプラットフォームの信頼性と安全性に関する幅広い問題に取り組んでいる。

ステイモス氏は1月初旬、Twitter(ツイッター)とFacebookの両社に「正当な公平性は失われた。レッテルを貼るだけではダメだ」と、すべてが始まる前にトランプ氏を排除するよう要請していた。

しかし最終的に、大手テクノロジー企業がほぼ一丸となってトランプ氏の口を封じたことを受けて、いくつかの国の首脳や議員が、大手テクノロジー企業の権力の誇示に懸念を表明した。

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ドイツの首相は、Twitterがトランプ氏のアカウントを停止したことを「問題がある」とし、言論を妨害するプラットフォームの力について厄介な問題を提起したと述べた。一方、欧州の他の議員らは、この一方的な行動を重く受け止め、巨大テクノロジー企業に対するしかるべき民主的規制の必要性を主張した。

世界で最も影響力を持つソーシャルメディアプラットフォームが、民主的に選出された大統領(それがトランプ氏のように対立を生み不人気な大統領であったとしても)を黙らせたという事実は、あらゆる立場の政治家に不快感を与えた。

いうまでもなく、Facebookの予想に違わぬ反応は、この二面性のある難題をFOBの判断に委ねることだった。結局のところ、それがFOBを計画した目的そのものだ。FOBは、物議を醸す面倒なコンテンツモデレーションに対処するために存在する。

そしてそのレベルでは、Facebookの監督委員会は、Facebookが意図した通りの仕事をしている。

しかし、この私的な「最高裁判所」が、二者択一に限られる裁定を求められていることに対してすでに不満を感じているというのは興味深い(トランプ氏のケースでは、アカウント停止を完全に破棄するか、無期限に継続するか、ということだ)。

FOBの非公式な発言の意味するところは、与えられた手段があまりにも柔軟性に欠けるということのようだ。しかしFacebookは、FOBが出す可能性のある広範な指針の提案に拘束されるとは言っておらず、個々の審査決定に従うとだけ言っている(つまり、FOBがFacebookに対して一般的な批判を表明しても重要なところで影響力はないということだ)。

FOBが不満の解消に向けて、どれだけ積極的にFacebookに働きかけるかは、まだわからない。

「どれも簡単に片付く問題ではない」。ラスブリッジャー氏は貴族院委員会でそのように述べ、デジタル時代における言論の抑制の課題について、より一般的な見解を示した。同氏は、グーテンベルクが発明した印刷機によって生じた長期に渡る社会的混乱を例に挙げ、インターネットがもたらした発信の革命に対応するためには、実際には何世代にもわたる取り組みが必要になる可能性を示唆している。

もしFacebookの期待することが、FOBが知性を発揮しつつコンテンツモデレーションに絡む難しい(そして厄介な)問題を棚上げにすることであれば、ラスブリッジャー氏の証言が示すようなFOBの内部で行われている熟慮のレベルに、きっと満足していることだろう(もしかすると、自ら任命した委員らにアルゴリズムのブラックボックスの開示を求められることを、不愉快に思っているかもしれないが)。

St John’s(セントジョーンズ)大学法科大学院のKate Klonick(ケイト・クロニック)准教授も貴族院委員会で証言した。クロニック氏は、FOBが設立される過程を取材するためにFacebookから広範なアクセス権を与えられ、FOBの内部構造に関する記事を執筆した。その記事は、最近The New Yorker(ザ・ニューヨーカー)に掲載された。

貴族院委員会は、FOBの運営についてより精通すべく、FOBのFacebookからの独立性について何度か参考人に質問した。

ラスブリッジャー氏は「自分たちがFacebookのために働いているとはまったく思っていない」と述べ、この点に関する懸念を否定した。FOBのメンバーは、Facebookが設立した信託会社を通じてFacebookから報酬を得ているが、これはFOBをFacebook本体から独立した立場に置くためだ。貴族院委員会は、FOBがどれほど純粋に独立しているのかを問うために、躊躇なく報酬の問題に切り込んだ。

ラスブリッジャー氏は「非常に独立していると思っている」と答え「Facebookに友好的でなければならないとか、否定的でなければならないといった義務があるとはまったく思っていない」と述べた。

「FOBの良いところは、時には誰かが『しかし、もしそんなことをしたら、どこそこの国でのFacebookの経済モデルが台無しになる』と言ったとしても、『それは私たちの問題ではない』と答える。これはとても自由なことだ」と同氏は付け加える。

もちろん、FOBの現職のメンバーが、一斉に報酬を辞退するなどしない限り、独立性の質問には他に答えようがないだろう(誤解のないようにいうと、ラスブリッジャー氏は辞退していない)。

FOBのメンバーは1期3年で3回の任期を務められることが確認されているので、同氏はFacebookのために、今後10年近く熟慮を続けることになる。

一方、クロニック氏は、Facebookが準独立の監視機関をゼロから構築し、同社自身と自らが監視機関と称するFOBとの間に距離を置くという課題の難しさを強調した。

「監視機関としての制度を構築すること、つまり、制度構築への移行や、[FOBとFacebookの間の]しがらみの排除、そして膨大な難題、新しいテクノロジー、新しいバックエンド、コンテンツ管理システムなどとともに新しい人たちを組織することは、信じられないほど難しいことだ」と同氏は語る。

ラスブリッジャー氏によると、FOBの「研修期間」の間、Facebookの代表者が参加する広範なトレーニングプロセスを経たとのことだ。しかし、トレーニングの終了後、Facebookの代表者がまだ通話に参加していることに気付いたときのことを説明し、その時点でFOBはFacebookに退去を指示する権限を得たと思うと話した。

クロニック氏は「その状況を見ていて、これはまさに、起こるべきことが起こった瞬間だったと思う」と述べ「ある種の正式な決別が必要だった。背中を押されて巣立つ瞬間、FOBがトレーニングを終えた時点がその時であり、当然の成り行きだった」と付け加える。

しかし、FacebookがFOBの通話を文字通り盗み聞きしていないことを独立性の尺度とするならば、Facebookは、自らの監督者をプログラムするための長く複雑なプロセスにおいて、選ばれた意欲的な参加者をどれほどうまく洗脳したのか、立ち上げを監視するために入れた付加的な部外者も含めて、疑ってみなければならない。

貴族院委員会は、FOBがこれまでのところ、ほとんどの場合、モデレーターが削除したコンテンツの回復をFacebookに命じているという事実にも関心を持っている。

2021年1月、FOBが最初の決定を下した際、Facebookが削除した5つのコンテンツのうち4つを回復させたが、その中にはヘイトスピーチに関するものもいくつか含まれていた。この動きはすぐに、FOBの方向性に対する批判を集めた。結局のところ、Facebookのビジネスに対して広がる批判は、有害なコンテンツを削除することにあまりにも消極的であるというものだ。(例えば、Facebookはようやく2020年、ホロコーストの否定を禁止した)。そしてなんと、自称「監督委員会」がヘイトスピーチの削除を撤回する決定を下しているのだ。

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真の意味でFacebookから独立し反抗する私的な「The Real Facebook Oversight Board(真のFacebook監督委員会)」は、即座に「衝撃的だ」と食いつき、FOBは「ヘイトを正当化するために全力を尽くしている」とこの決定を非難した。

クロニック氏は、FOBはFacebookの最高裁判所ではなく、本質的にはむしろ「ユーザーのための紛争解決メカニズム」に過ぎないという現実を指摘した。

もしこの評価が正しいとすれば(FOBにたどり着くユーザーの数が非常に少ないことを考える限り、実際、的を射ていると思うが)、本来ならばプラットフォームの標準機能であるはずの監督機能について、FacebookがどれだけPRできたかは、まったく疑わしい。

クロニック氏は、FOBの年初の取り消し決定は、コンテンツの削除に異議を唱えるユーザーの声を聞いた結果であり、ユーザーの不満に「共感」したからだと主張する。

「どのような規則に違反したのか、どうすれば再び規則違反を避けられるのか、どうやってその情報を得るのか、自分の言い分を伝えることができるのか、といったことが具体的にわからないという絶対的なフラストレーション」と、コンテンツ削除決定の見直しを申請したユーザーからFOBのメンバーが聞き、同氏に語った内容を列挙する。

「今回のFOBの決定は、何よりもまず、そのような状況を回復させようとするものだと思う」と同氏は示唆し「それはFOBがFacebookに送り返しているシグナルであり、正直にいうと、容易に解決できる問題だ。つまり、正確な規則を人々に伝え、事実に照らし合わせた分析や規則の適用を行い、目にしているものを読み取ってもらうことで、人々は何が起こっているのかをよりよく理解することができる」と続ける。

「あるいは少なくとも、検閲がブラックボックスではなくプロセスがあることを少しでも感じられればと思う」。

貴族院委員会の質問に対する回答の中で、ラスブリッジャー氏は、審査の意思決定にどのようにアプローチしているかを語った。

同氏は「ほとんどの判断は、なぜこの特定のケースで言論の自由を制限するのかを熟慮することから始まり、それが興味深い疑問を生む」と述べ、Brandeis(ブランディス)判事の「より多くの言論で悪い言論に対抗する」という見解に通づる、言論についての前述の自説を要約した。

同氏は「不快にされるか損害を与えられるかの境界線とは異なり、不快にされない権利がこの問題には関わっている」とし「この問題は、政治哲学者たちによって長い間議論されてきており、絶対に解決されることはないだろう」と続ける。

「しかし、もし不快にされない権利の確立が受け入れられれば、最終的にそれは、ほとんどすべての議論に大きな影響力を与えるだろう。そして実際、Facebookがあるコンテンツを削除した際、実質的にそのような権利を行使したケースが1つか2つあった」。

同氏は「不快とは異なり、被害は明らかに異なる扱いを受けるものだ」とし「そして、我々は幸運なことに、専門家を雇い、被害についての助言を求めることができる立場にある」と付け加えた。

ラスブリッジャー氏は、不快な言論と有害な言論の「境界線」を設定しなければならなくなった場合にFOBが直面する課題や落とし穴について悩んでいるようには見えなかったが、専門家を(さらに)外部委託できることは恐らく助けになるだろう。それは同氏が、貴族院委員会のセッションの中で、(初めにFacebookが選んだ)現在のFOBメンバーに技術的な専門性が欠けていることも含め、他にもいくつかのオペレーション上の問題点を指摘していたからだ。

技術的な専門知識がなければ、Facebookのコンテンツ配信マシンを有意義な方法で分析することはできない。それでは同氏がFOBの要望であるという「アルゴリズムを調べる」ことはどうやって実現するのだろうか。

FOBには現在、技術的な専門知識が欠けているため、その機能についてさまざまな疑問が提起されている。また、アルゴリズムを利用した金儲けのための選定について、言い逃れやより深い精査の回避を容易にすることで、最初にトレーニングを受けたメンバーが、Facebookの利己的な観点から有用な愚か者として扱われていないかどうかも疑問視されている。

Facebookという機械が技術的、経済的にどのように機能しているのかを本当に理解していなければ、一体どうやって意味のある監視を行うというのだろうか(ラスブリッジャー氏は明らかにこのことを理解しているが、このプロセスがどのように進展していくかを見守ることに満足しているようだ。知力の発揮とインサイダーの視点が魅力的であることは間違いない。「今のところ、非常に高い関心を持っている」と同氏は証言の冒頭で認めている)。

同氏は「監督委員会があるとしても、アルゴリズムは、中毒性を高めるためにコミュニティを対立させるような感情的なコンテンツに報酬を与えることはよく知られていることだ、と人々はいう。それが本当かどうかはわからないが、FOBとしてはそういった問題に取り組む必要がある」と述べ「たとえそれが、プログラマーと何度もセッションを重ね、我々が理解できるように非常にゆっくり話してもらうことになったとしても」と続ける。

「FOBの責任は、Facebookのメカニズムがどういったものであるかを理解することだと考えている。モデレーションのメカニズムではなく、許容するメカニズムだ」とし「そのメカニズムの評価基準は何なのか」と述べる。

二人の証言では、もう1つの懸念が示された。FOBが行っている複雑で微妙なモデレーションの判断は、スケールアップできないのではないかということだ。これは、AIベースのモデレーションに供給する一般的な情報に比べて、あまりにも特殊すぎるということを示唆している。また、Facebookが現在運用しているスタッフによるモデレーションシステム(数千人の人間のモデレーターが驚くほど短い思考時間でコンテンツの良否を決定している)でも、必ず対応できるとは限らないだろう。

それにもかかわらず、Facebookの巨大なスケールと、コンテンツ帝国の端っこでくすぶる、同社が決めた限られた機能のFOBとの間の問題は、適切に議論されることもなく、貴族院委員会のセッションに不安を残す包括的なポイントの1つとなった。

ラスブリッジャー氏は「『このようなことは簡単に意思疎通できるのか』という問いは、良い質問だ。FOBのメンバーは少しずつそのことに取り組んでいる」と述べ、審査の仕事の要求に応えるだけの資格を自認できるよう、見慣れない「世界中の人権プロトコルや規範」を一通り学ぶ必要があったことを認めた。

このようなレベルのトレーニングを、現在Facebookがコンテンツモデレーションを行うために雇用している何万人ものモデレーターに拡大するには、当然のことながら目のくらむような費用がかかる。また、Facebookから提供されるものでもない。その代わりに、非常に高価でトレーニングを受けた40人の専門家からなる精鋭チームを抜擢して、極少数のコンテンツ判定に取り組ませている。

ラスブリッジャー氏は「FOBが下す決定は、人間のモデレーターが理解できるものであることが重要だ」と言い「理想的にはAIでも理解できるものだが、あるケースの事実について、[Facebookのコミュニティ基準、Facebookの価値観、『人権フィルター』]の3つの基準に準拠し、特定の方法で決定することがあるので、そこには葛藤がある」と語る。しかし、AIがあるケースと別のケースの微妙な差異を理解するのはかなり難しいだろうということは承知の上で、次のように話した。

「だけど、これはまだ始まったばかりさ」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookSNSドナルド・トランプ

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックが脳からの神経信号を読み取るAR操作用ニューラルリストバンドのコンセプトを公開

Facebook(フェイスブック)のハードウェア戦略は、外から見るとかなり不透明に見えることが多い。パンデミックによる需要に助けられ、同社のOculus(オキュラス)の売れ行きは極めて好調だ。Echo Show(エコーショー)の競合製品であるPortalも、人々が社会的距離を確保せざるを得なくなったことで売上が伸びている。その一方で、HTCとのスマートフォンにおける提携は8年ほど前に失敗に終わった。

2021年の初めには、同社がApple Watchに対抗する製品を開発しているという報道があった。このスマートウォッチは、オープンソースのAndroidを搭載し、健康に焦点を当てたものになるといわれている。それが事実なら、Google(グーグル)が選択したwearOSに代わる興味深い選択肢となるだろう。

今週、Facebookは別のリストバンド型ウェアラブルを発表した。このプロジェクトの詳細は以前の報道とあまり一致していないため、2つの異なるプロジェクトを意味しているのかもしれない。Facebookのような大きい会社ならあり得る話だ。

Facebook Reality Labsのこのプロジェクトは、コンピュータの代替インターフェースを提供することに重点を置いている。具体的には、同社のAR(拡張現実)への取り組みに沿ったものだと思われる。

米国時間3月18日のブログ記事にはこう書かれている。

携帯電話やゲームのコントローラーのように、ポケットに入れられる別のデバイスは、ユーザーと環境の間に摩擦が生じます。可能性を追求していくうちに、入力デバイスを手首に配置することが明確な答えとなりました。手首は伝統的に時計を装着する場所であり、日常生活や社会的な状況に無理なく溶け込むことができます。1日中身につけていても違和感のない場所です。手首は、世界と対話するための主要な道具である手のすぐ近くにあります。この近さにより、手の持つ豊かなコントロール能力をARに導入することができ、直感的でパワフルかつ満足度の高いインタラクションが可能になります。

提示された情報から判断して、これはどちらかというと概念的な段階に見える。つまり、将来のARシステムにおいて、よりシームレスなコントロールを提供するための鍵となるかもしれないということである。それでも、これは人間とコンピューターをより深く統合するソリューションへの第一歩として提示されている。Facebookとあなたのニューロンをどれだけ深く統合したいかは、どうやらそう遠くない将来、我々が自分自身に問いかけなければならない問題のようだ。

具体的にはこのインターフェースは、筋電図(EMG)センサーを使って運動神経の信号を解釈し、それに応じてインターフェースを操作するように設計されている。興味深いことにこの話題は米国時間3月18日の夜、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が参加したClubhouse(クラブハウス)のイベントで持ち出された。Pebbleの創業者でありYCのパートナーでもあるEric Migicovsky(エリック・ミギコフスキー)氏が自身のスマートウォッチのスタートアップのためにApple(アップル)と取引した経験を語った後、FacebookのCEOは次のように述べた。

腕時計を作ろうとしているという話であれば、確かに当社は手首に装着するタイプのものを研究しています。ただこれは腕時計と呼びたくありません。基本的なニューラルインターフェースの仕組みについては、Facebook Reality Labsチームが今日、研究の一部をデモしました。手首を通すニューラルインターフェースでは、携帯電話と何らかのかたちで統合したい場合、iOSよりもAndroidの方がはるかに簡単です。私が思うに、この分野にはもっと力を入れるべきだと思います。また、プライベートAPIは、健全なエコシステムの構築を困難にしているとも思います。

「研究」している、という言葉がここではキーワードだ。しかし、このようなプロジェクトの初期段階を見るのは、いつもクールで興味をそそられる。たとえそれが約束する未来が、まだ少し行き過ぎに思えるとしても。

EMGは、いずれはより豊かなコントロールを実現するだろう。ARにおいてはこのデモ動画にあるように、バーチャルUIやオブジェクトを実際に触って動かすことができるようになる。また、離れた場所にある仮想の物体を操作することもできるようになる。凡人でもフォースに似た超能力を持つようなものだ。

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Facebook

画像クレジット:Facebook

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

フェイスブックとインスタグラムが「最も個人情報をかき集めるアプリ」トップに、第三者と多くの個人データ共有

フェイスブックとインスタグラムが「最も個人情報をかき集めるアプリ」トップに、広告主と最も多くの個人データ共有

SOPA Images via Getty Images

アップルは2020年末から新規およびアップデートするApp Storeアプリに、収集しているプライバシー情報(プライバシーラベル)の表示を義務づけています。FacebookGoogleなどは何らかの事情から遅れていましたが、ようやくトップアプリのほとんどが表示を実装しています。

そのプライバシーラベルに基づいて、スイスのクラウドストレージ企業pCloudがユーザーから最も多くの個人データを集めて第三者と共有する「侵略的な」アプリのランキングを発表し、InstagramとFacebookの2つがトップに位置づけられました。

InstagramとFacebookアプリはサードパーティ広告主(第三者)と最も多くのデータを共有しており、購入や位置情報、連絡先の詳細やユーザーコンテンツ、検索履歴から閲覧履歴まであらゆる情報を対象にしているとのこと。その事実は別のメディアが確認しており、両アプリを運営するFacebookのプライバシーに配慮の薄い印象から言っても全く意外ではありません。

フェイスブックとインスタグラムが「最も個人情報をかき集めるアプリ」トップに、広告主と多くの個人データ共有

pCloud

しかしInstagramは個人データの79%を収集し、Facebookは57%と数値化されると、やはり圧倒的ではあります。それに続くのはビジネスSNSのLinkedInとUber EATSで50%と並んでいます。また本調査はGoogleがGoogle検索アプリとChromeのプライバシーラベルを公開する前に行われましたが、それでもYouTubeとYouTubeMusicも43%を叩き出してトップ10入りを果たしています。

第三者との個人データの共有とは、たとえばYouTubeが動画を検索するたびにデータがアプリ外に送信され、他のSNSで個人をターゲットにしている業者などに販売されるということです。特にpCloudは、月間アクティブユーザー数が10億人を超えるInstagramが自覚のない人々のデータを大量に共有するハブ化していることに懸念を示しています。

かたや、ほとんど個人データを集めていないアプリの顔ぶれはSignalやClubhouse、NetflixやShazam、SkypeやTelegramといったところです。インストール時に「連絡先をぜんぶ吸い上げる」仕様を廃止したばかりのClubhouseですが、ログイン後の挙動はプライバシー重視だった模様です。

(Source:pCloud、via:MacRumorsEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
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Facebookがショート動画やストーリーズに広告を導入

Facebook(フェイスブック)は動画クリエイターの収益化オプションを拡大している。これらのクリエイターが投稿した動画を見ている人は、おそらくより多くの広告を目にすることになるだろう。

Facebook App Monetization DirectorのYoav Arnstein(ヨアヴ・アーンスタイン)氏はブログ記事で、クリエイターはこれまで最短3分間だったところを、最短1分間の動画にもインストリーム広告を入れられるようになると述べている。これらの広告は通常、ショート動画の再生開始から30秒後に再生される。

アーンスタイン氏は「今後は報酬や製品とのインタラクションを通じてエンゲージメントを高めるインストリーム広告フォーマットを検討しています。これは人々に優れた視聴体験を提供し、広告主が関連する視聴者にリーチする方法を提供しながら、コンテンツクリエイターの報酬の増加を支援することを意図しています」と述べ、またフェイスブックは「特にショート動画の収益化に注力しています」とし、Facebookストーリーズにステッカーのような広告を掲載する方法をテストする予定であると付け加えた。

Facebookはこれらの広告収益を動画クリエイターと分配し、プログラムの基準も更新するとしている。参加するにはFacebookストーリーズが過去60日間のすべての動画の視聴時間が60万分間であること(以前は3分間以上の動画のみカウントされていた)と、5本以上のアクティブ動画またはライブ動画があることが条件となる。

ライブ側では、Facebookはインストリーム広告プログラムを招待制から変更し、過去60日間に6万分のライブ視聴があったクリエイターが参加できるようになると、アーンスタイン氏は述べている。また700万ドル(約7億6000万円)を投じて、Stars(ファンがクリエイターを支援するために使用できるバーチャル通貨)の導入を促進するためにStarsを無料で提供する。

広告以外の製品も国際展開を続けている。アーンスタイン氏によれば有料オンラインイベント(2020年夏に開始)は20カ国で提供されており、今後数週間でさらに24カ国(アルゼンチン、香港、アイルランドを含む)に拡大する予定であること、ファンサブスクリプションは25カ国以上で提供されており、さらに10カ国(オーストリア、ベルギー、デンマーク、フィンランド、アイルランド、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、スイス、トルコ)で導入される予定だと記している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook

画像クレジット:Michael Short / Bloomberg / Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:塚本直樹 / Twitter

フェイスブックが開発途上国向けにInstagram Liteを提供、わずか2MBでAndroid版のみ

Facebook(フェイスブック)の成長は発展途上世界がもたらしている。米国時間3月10日、ソーシャルネットワークの巨人はその国々の消費者の要求を満たすために新たな行動を起こした。3年近い計画を経て、Facebookは満を持してInstagram Lite(インスタグラム・ライト)を公開した。省データ、ストレージ重視のAndroidオンリーバージョンの人気写真・ビデオアプリだ。端末上の必要ストレージはわずか2MB(メガバイト)で、開発途上国中心に170カ国で同日に公開された。

Instagram Liteは編集、共有、写真・ビデオ閲覧の他にスタンプの追加、ストーリー、IGTVの作成・閲覧からExploreの発見、推奨アルゴリズムまで基本的機能を揃えて公開される。そして170カ国で公開されることを踏まえ、それぞれの市場で利用するための言語もサポートされている。

しかし、iOSとAndroidで30MBのストレージ(と果てしないモバイル通信で必要な通信量)を費やす膨張したInstagramのぜい肉を削ぎ落とすために、Liteにはないものもいくつかある。

まず、デベロッパーは多くのグラフィクスを外し、広告を入れなかった。他にも外れた主要な機能として、TikTok風リールの作成(閲覧はできる)、ダークモード、ショッピング、エンド・ツー・エンド暗号化などがある(ちなみに、暗号化は2019年にメインアプリ向けに開発中だと報じられたが、まだ公開されていない)。iOSやフィーチャーフォンバージョンは開発されない。

Facebookは、搭載されなかった機能のいくつか(ダークモードや広告)は将来のアップデートで追加されると述べている。

Instagram Liteは2018年以来、Facebookからさまざまなかたちで限定提供されていたが、ソーシャルメディアの巨人にとって市場性があることが証明された地域に提供されることになった。テルアビブ拠点でFacebookの全Liteアプリ(FacebookとMessengerのLiteバージョンもテルアビブで開発されている)のプロダクト管理責任者であるTzach Hadar(ツァッハ・ハダー)氏は、現在Facebook Liteには月間アクティブユーザーが2億人以上いると今週語っている。

それはFacebook全体の数十億というユーザー数のごくわずかではあるが、Facebookに馴染みの少ない人や経済的、通信帯域制限などの理由でアプリを使っていなかった人をターゲットする重要な手段だ。

関連記事:Facebookが一度消えたアプリ「Instagram Lite」をリニューアル、インドでテスト開始

しかしInstagramは人気が高く、何年も前からLiteバージョンの有力候補であり、Instagram Liteは発展途上市場で最も要求の多い製品だったにもかかわらず、ちょっとした曲者であることがわかっていた。

それは、画像と動画という本質的に帯域幅とデータを消費するアプリであるからというだけではなく、Instagramがここ数年、機能が過剰気味になっているためだ。ユーザー体験を向上する目的のもの、他のアプリとの競合力を高める目的なのもの(ストーリーやリール)、そしてFacebookの収益機会を拡大するものなどだ。

「Instagramは同じ制約の下で同じ体験を届けるという新たなタイプのユニークな課題を会社にもたらしました」と、ニューヨーク拠点(同アプリはFacebookのテルアビブとニューヨークのオフィスで共同開発している。最近はおそらく多くのFacebook社員の自宅でも)のプロダクトマネジャーであるNick Brown(ニック・ブラウン)氏は話す。「私たちの本当の気持ちは、このユーザーたちにInstagramのすべてを届けることなのです」。

画像クレジット:Facebook

実際、FacebookやMessengerアプリのLiteバージョンと同様、Instagram Liteは発展途上経済の消費者に向けられたもので、スマートフォンはAndroidベースである可能性が非常に高く、最先端端末はほとんどない。消費者はモバイルデータを使う際の料金や通信データ量にいっそう敏感である可能性が高く、大多数はネットにつながっていることを理解し始めたばかりだ。

Facebookの推計によると、北米人口の90%がオンラインであるのに対して発展途上国では65%だ。それは同社が途上国市場に正面から取り組んでいる理由の1つだ。そこでは成長が停滞したときに成長する。米国・ヨーロッパなどの成熟市場と比べて、新規参入との競争がはるかに激しくなる。

しかし、発展途上市場での需要のための開発は、競争の激しい消費者アプリで見られるような機能を追加し続けるコンセプトと本質的に逆行する。

Instagram Liteアプリには長年さまざまなトラブルがあった。初期バージョンはInstagramウェブスタック上でPrograssive Web Appとして作られ、2018年に限定リリースされ、わずか573KBしかスペースを使わなかった。欠けている機能も多かったが、Instagram自体は本来それほど機能は多くない。理由は語られることがなかったが、2020年静かに姿を消し、すぐ後の2020年12月に新バージョンが限定テストとして公開された。デビューしたのは主要市場であるインドで、そこで公開されたInstagram Liteはベンガル語、グジャラート語、ヒンディー語、カンナダ語、マラヤーラム語、マラーティー語、パンジャーブ語、およびテルグ語に対応していた。

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そしてその最終テスト版が正式なInstagram Liteアプリになった。興味深いことに、その過程でアプリは完全に作り直され、Progressive Web Appを離れ、Bloks(Bloksと間違えないように)という社内のフレームワーク上に構築された。MessengerとFacebookのLiteバージョンで基本機能の難題を数多く解決した仕組みだ。

これについて私はさらに詳しく尋ねた。その結果、2020年公開されたMessengerの軽量バージョンのための開発プロジェクトだったLightSpeedとは関係がなかったことを確認した。Bloksはサーバーサイドで定義したマネジメントロジックをiOS、Android、およびウェブ開発をサポートするネイティブアプリケーションに変換し、Instagram、Facebook、MessegerおよびWhatsAppに統合するためのフレームワークだ。

「Bloksははるかに高性能多機能で能力の高いフレームワークで、新しいInstagramライトバージョンはこの上に作られています」とハダー氏は語った。「ですから、ほとんど新しいアプリのようなものです」。以前のアプリが中止になった正確な経緯はわかっていないが、いずれにせよこの基盤のおかげでサービスを拡張するための余地を得られたようだ(アプリのサイズは600KBから2MBへと増加したが)。

この事実はユーザーにはあまり関係ないことだが、会社内の注目すべきトレンドと将来のテクノロジーへの取り組み方をを指し示すとともに、主要アプリのフルバージョンとLiteバージョンとの間の機能一致の重要性に対する視点を示唆している。

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画像クレジット:Facebook

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フェイスブックがイリノイ州のプライバシー保護法をめぐる集団訴訟で約694億円支払う

Facebookはイリノイ州の州民をプライバシーの侵犯から護る州法に違反したとして米国時間2月26日に、6億5000万ドル(約693億9000万円)の支払いを命じられた

Biometric Information Privacy Act(生体認証情報私権法、BIPA)は、近年テクノロジー企業がつまずいて転倒している強力な州法だ。Facebookに対する訴訟は2015年に始まり、Facebookが顔認識を利用して写真の中の人に同意なくタグを付けているのは州法に違反していると同社を告訴した。

カリフォルニアの連邦裁が下した最終示談によると、160万人のイリノイ州住民が1人あたり345ドル(約3万6800円)以上を受け取ることになる。この最終的な数は、2020年にFacebookが提示し判事が不当と判断した5億5000万ドル(約587億2000万円)よりも1億ドル(約106億8000万円)高い。Facebookは2019年に、自動顔認識によるタグ付け機能を無効にして、自動でなくオプトインにし、イリノイの集団訴訟で広まったプライバシーへの批判の一部に対応した。

2020年、イリノイ州住民の顔が同意なく顔認識システムのトレーニングに使われていたため、同法の違反としてMicrosoftとGoogle、Amazonが、それぞれ個別の訴訟で訴えられている。

関連記事:顔認識のプライバシー侵犯でマイクロソフトやグーグル、アマゾンがイリノイ州住民に告発される

イリノイのプライバシー法は一部のテクノロジー大手を紛糾させたが、このBIPA法は、疑わしいプライバシー行為を行っている小規模な企業に対しても効力は大きい。議論の渦中にある顔認識ソフトウェアの企業Clearview AIは現在、州内でBIPAによる独自の集団訴訟に直面している。同社は訴訟を州外に持ち出そうとしたが失敗した。

関連記事:顔認識スタートアップのClearview AIがイリノイ州法違反で集団訴訟に発展

6億5000万ドルの示談は、通常の企業を倒産させるには十分な額だが、しかしFacebookは2019年の、50億ドル(約5338億5000万円)というFTCの記録的な罰金のときと同じく、平然と対応できるだろう。しかしイリノイ州の法律には牙がある。Clearviewの場合は、企業の事業活動を州外に追い出すこともできたのだ。

Facebookのような巨大な怪物を同じ方法で罰することはできないにしても、何年間もビジネスを行ってきたテクノロジー世界のデータブローカーたちにとって同法は、今後ますます無視できない脅威だ。連邦、州、そして議会のレベルで規制当局は、テクノロジーを抑制するための強力な措置を提案している。そしてイリノイ州の画期的な法律は、他の州が参考にするに十分な説得力のあるフレームワークを提供している。テクノロジー大手が国の監督に従うことを悪夢と思うならば、テクノロジー企業のやり方を州ごとに決めている先進的な州法の寄せ集めでも十分に彼らの口には合わないだろうが、未来にとって役に立つ規制になりうるだろう。

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タグ:Facebookプライバシーイリノイ顔認証裁判

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

インド政府がソーシャルメディアやストリーミングサービス企業に厳しい新規制を発表

インドは現地時間2月25日、ソーシャルメディア企業、ストリーミングサービス、デジタルニュースアウトレットを規制するための抜本的な新ルールを発表し、アジア第3位の経済規模を誇るこの国を重要な海外市場とみなすFacebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)、Google(グーグル)、Netflix(ネットフリックス)などの巨大企業に新たな課題を投げかけた。

インドの法務相兼電子情報技術相のRavi Shankar Prasad(ラヴィ・シャンカール・プラサッド)氏は、記者会見で、ソーシャルメディア企業は違法、誤報、暴力的なコンテンツに対する削除要求を24時間以内に受け入れ、15日以内に完全に矯正することが求められることになると述べた。露骨な性的コンテンツのようなデリケートなケースでは、24時間以内に削除することが要求される。

また、これらの企業は法令を遵守することを約束し、現実的な懸念に効果的に対処するため、接点となる連絡窓口と常駐する苦情担当者の名前と連絡先を、インド政府と共有することが求められる。また、企業はインドに現地事務所を設置しなければならない。

この新しい規制は、政府が2018年から取り組んできたものであり、それが発表される数週間前には、インド首都で農民の抗議運動が起きた際、Twitterがインド政府の命令の一部を遵守することを拒否するという出来事があった。インド政府は当時、Twitterは裁判に訴えたり、不遵守を正当化することはできないと述べていた。

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プラサッド氏によれば、ソーシャルメディア企業は、不快なコンテンツの発信者を開示しなければならなくなるという。「我々はコンテンツを知りたいわけではありませんが、企業は誤報やその他の好ましくないコンテンツを広め始めた最初の人物が誰なのかを教えることができる必要があります」と、同氏は語った。WhatsApp(ワッツアップ)は以前、すべてのユーザーのエンド・ツー・エンドの暗号化セキュリティを損なうことなく、このようなトレーサビリティの要求に応じることはできないと述べていた。

また、企業は月ごとに法令遵守報告書を公開して、これまでに受けた要求の数を開示し、実施した措置を明記することも求められる。アカウントの確認を希望するユーザーには、任意選択権を提供しなければならない。

2011年に制定された法律に代わるこの新規則は、小規模な企業には直ちに適用されるが「重要」なサービスには、通達された日(それは「早急」に通達されることになるだろうと、プラサッド氏は述べている)から3カ月の猶予期間が与えられる。

インド政府がこれらのガイドラインをまとめた理由は、市民が「苦情に対処するためのメカニズム」を長い間求めてきたからだ、とプラサッド氏は述べている。インドは2018年から中間業者を対象とした法律に取り組んでおり、2020年にはストリーミングサービスやオンラインニュースの発行にまで対象範囲を拡大した。草案の最終版はこちらで読むことができる。

「インドは世界最大のオープンなインターネット社会であり、政府はソーシャルメディア企業がインドで運営を行い、事業を行い、また利益を得ることを歓迎しています。しかし、彼らはインドの憲法や法律に対し責任を問われることになります」と、プラサッド氏は述べた。

GoogleやFacebookなどの企業が次の10億人のユーザーの獲得を急ぐ中、インドは過去10年の間に米国企業や中国企業の重要な戦場として浮上した。しかし近年、Narendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相の政府は、米国企業に影響を与えるいくつかの規則を施行または立案している。また、2020年にはサイバーセキュリティの懸念を理由に、ByteDance(バイトダンス)のTikTok(ティックトック)をはじめとする200以上の中国製アプリを禁じた。

関連記事:インド政府がTikTokなど中国企業の59のアプリを禁止すると発表

プラサッド氏によると、WhatsAppはインドで5億3000万人のユーザーを獲得しており、同アプリにとって最大の市場であるという。YouTubeは4億4800万人、Facebookは4億1000万人、Instagramは2億1000万人、Twitterは1750万人のユーザーを同国で抱えていると同氏はいう。

Facebookはこの新ルールについて検討しているところだと述べている。Netflixはコメントを拒否した。

ソーシャルメディア企業やその他の中間業者のためのガイドライン全文(出典:インド政府

「この新しい規則の義務化は、インターネットプラットフォームがコンテンツを過剰に検閲し、危険で実証されていないAIベースのコンテンツ規制ツールを必要とし、政府に引き渡すために膨大な量のユーザーデータを保持し、サイバーセキュリティと個人のプライバシーにとって重要なエンド・ツー・エンドの暗号化を弱体化させる結果を引き起こすだろう」と、Access Now(アクセス・ナウ)のアジア太平洋政策ディレクターを務めるRaman Jit Singh Chima(ラマン・ジット・シン・チマ)氏は述べている

ストリーミングプラットフォームに対しては、このルールは「コードの遵守と個守」のための3段階の構造を概説している。これまで、Netflix、Disney+ Hotstar(ディズニー+ ホットスター)、MX Player(MXプレイヤー)などのオンデマンドサービスは、インドではカタログの多くを検閲されることなく運営されていた。

インド政府は2020年、テレビのコンテンツを規制するインド放送省が、今後はデジタルストリーミングプラットフォームも監督することになると発表。これを受けて、国際的な大手を含む人気ストリーミング企業17社が、自主規制コードを考案するために団結した。だが、Prakash Javadekar(プラカシュ・ジャバデカール)情報放送大臣は、業界から提案された解決策は適切ではなく、コードの完全な遵守を保証するために政府による監視機構を設けることになるだろうと述べた。

関連記事:インドの情報放送省がNetflixなどの動画配信サービスやオンラインコンテンツの規制に乗り出す

ストリーミングサービスは、タイトルにコンテンツのレイティングも付与しなければならなくなる。「OTTプラットフォームは、このルールにおいてはオンライン上のキュレーションされたコンテンツのパブリッシャーと呼ばれ、コンテンツを5つの年齢ベースのカテゴリーに自己分類することになります。U(ユニバーサル)、U/A 7+、U/A 13+、U/A 16+、A(アダルト)です。プラットフォームは、U/A 13+以上に分類されたコンテンツにはペアレンタルロックを、Aに分類されたコンテンツには信頼性の高い年齢確認メカニズムを実装することが求められます」とインド政府は述べている。

「オンライン上のキュレーションされたコンテンツのパブリッシャーは、各コンテンツまたは番組に固有の分類されたレイティングを、コンテンツの性質をユーザーに知らせるコンテンツ記述子とともに、目立つように表示しなければなりません。また、ユーザーが番組を視聴する前に、十分な情報に基づいた意思決定ができるようにするため、すべての番組の冒頭で視聴内容に含まれる描写について(該当する場合は)忠告しなければなりません」。

ジャバデカール氏は、ストリーミングサービスを規制するためのパブリックコンサルテーションを行っていません。ストリーミングサービスのための自主規制コードはすでに存在しています。

政府はストリーミングサービスを規制するための法的根拠を持っていません。政府はIT法やケーブル&テレビ法の下でオンラインコンテンツの規制を行うことはできません。

業界の幹部は、インド政府がこの変更について彼らに相談していないと述べ、新たに提案された規制に懸念を表明している。インドのほぼすべてのオンデマンドストリーミングサービスを代表する強力な業界団体であるIAMAIは、ガイドラインに「当惑している」と述べ、政府との対話を求めている。

記者会見でジャバデカール氏とプラサッド氏は、業界と協議する場を設ける予定はあるのかと尋ねられたが、大臣はすでに業界から十分なインプットを受けていると述べた。

今回のインドの動きと並び、世界中のいくつかの政府は、これらのテクノロジー企業が自国の民衆や産業に与える影響を詳細に調査している。Facebookは2月中旬、オーストラリア政府によるニュース使用料の支払いを義務づける法案に反対し、同国でニュース記事の共有・閲覧を禁止したが、その後に同政府との合意に達したとしてニュース記事を復活させた。オーストラリアのScott Morrison(スコット・モリソン)首相は、ソーシャルメディア企業が政府を「いじめる」ことを防ぐ方法を探るため、インドのモディ首相と会談した。

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インドはオーストラリアの決定について何か思うことはあるかと尋ねられると、ジャヴァデカール氏は、その件について話すには適切な日ではないと答えた。

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックのEU米国間データ転送問題の決着が近い

アイルランドのデータ保護委員会(DPC)は、長期戦となっているFacebook(フェイスブック)による国際的な個人データ転送をめぐる訴訟を直ちに解決させることに合意した。これにより数カ月後には、FacebookはEU域内から米国へのデータ転送を停止せざるを得なくなる可能性がある。

プライバシー活動家であるMax Schrems(マックス・シュレムス)氏が2013年に提出した同訴状は、NSAの内部告発者Edward Snowden(エドワード・スノーデン)氏によって暴露された、米政府の知的機関が大規模な情報監視プログラムの下、Facebookユーザーのデータにアクセスしているという事実とEUのプライバシー権の衝突が発端にある。

シュレムス氏が率いるプライバシー保護団体であるNoybは、同氏の申し立てを中断して新たな訴訟手続きを開始するという決定に対して2020年に提訴したが、やっとのことでその司法審査のプロセスを最終化させ、迅速にシュレムス氏の申し立てを解決すべくDPCは取り組むこととなった。

Noybによると、アイルランド高等裁判所が調査の開始を許可した場合、和解という条件下でDPCの「独自の決断」による手続きとしてシュレムス氏のヒアリングが行われ、また同氏はFacebookによるすべての提出物にアクセスすることが可能となる。

当初の申し立てを再検討する以前にFacebook独自の司法審査の高裁判決を待つとDPCが決定した場合には、さらなる中断が起きる可能性があるとNoybは認識しているものの、シュレムス氏は7年半という長期にわたる訴訟は最終章に向かっており、今後数カ月以内に決着がつくのではないかと予測している。

シュレムス氏は現状を「もどかしいが最大限の可能性がある」と表現し「アイルランドの裁判所は期限の設定に消極的ですが、DPCはそれを利用してタイムラインが見えないと言い続けていました【略】アイルランドの法の範囲内で最大限に強い『迅速な』解決という決断を今回得ることができました」と同氏はテッククランチに語ってくれた。

この訴訟に対する最終的な決定がいつ下されると思うかと質問すると、早ければ2021年の夏だが、現実的には秋頃になるだろうと同氏は答えている。

シュレムス氏は自身の申し立てに対するDPCの対処方法や、さらにはペースの速い巨大テック企業と対照的なスピード感に欠ける政府の執行力に対して声高に非難し、アイルランドの規制当局は、シュレムス氏が申し立ての中で要求したように単にFacebookにデータ転送を停止するよう命じるのではなく、EU域内から米国へのデータ転送の仕組みの合法性についてより幅広く提起している。

この一連の訴訟はすでに莫大な影響力を及ぼしている。2020年の夏、欧州司法裁判所は、個人情報保護においてEUと同等の基準を米国が満たしていないと判断し、EUと米国間のデータ転送の取り決めを取り消すという画期的な判決を下している。

また欧州司法裁判所はデータが危険にさらされている場合にはEUのデータ保護規制当局が介入して第三国への転送を停止させる義務があることを明確にしており、アイルランドの法廷に事態を正すよう促している。

DPCに最新の進展についてコメントを求めると、本日中に回答するという答えが返ってきたため、それについてはまた更新したいと思う。

EUの一般データ保護規則(GDPR)に基づくFacebookのデータ規制当局であるDPCは、欧州司法裁判所による画期的な判決を受けて、2020年9月には同社に対してデータ転送を一時停止するよう予備命令を出している。

しかしFacebookは即座に反撃し、7年以上続く訴訟であるのに関わらず、DPCによる命令は時期尚早だとしている。

Noybは本日、Facebookが今後もアイルランド高等裁判所を利用してEU法の施行を遅らせようとするだろうと述べている。またFacebookは2020年、EUと米国間でデータ転送を行なっている数多くの企業に影響を与える問題の政治的解決策を考え出すために、また米国の新政権がこの問題に対処するための時間稼ぎのために、法廷を使って議員に「合図を送って」いることを認めている

しかし、Zuckerberg(ザッカーバーグ)氏が場当たり的なこの規制ゲームをいつまで続けることができるのかといえば時間の問題だ。今後半年以内に、EUのデータ流出問題は解決を迎えようとしているのだ。

EUと米国政府間の今はなきプライバシーシールドの代替案をめぐり、EUと米国の議員はかなりタイトなスケジュールで交渉を進めて行かなければならない。

欧州委員会は2020年秋、米国の監視法の改正なしには代替案を実現することは不可能だと述べている。米国企業が必要な変更をもたらすため働き掛け、大規模な努力をしない限り、ここまで抜本的な法改正が夏か秋までに実現するとは考え難い。

Facebookは2020年、DPCに予備命令を受けた際に提出した法廷文書の中で、データ転送に対してEUの法案が施行された場合、欧州でのサービス運用を停止しなければならない場合もあると述べている。

しかし同社のPRチーフであるNick Clegg(ニック・クレッグ)氏はすぐにそれを撤回。その代わりに「パーソナライズド広告」はEUにおけるポストコロナの経済回復に必要不可欠であると主張し、データに深く依存したビジネスモデルに対して好意的に見るようEUの議員らに呼び掛けた。

しかし、巨大テック企業にはさらなる規制が必要であり、緩和は必要ないというのが欧州連合の議員間の総意であった。

それとは別に、現在、Bobek(ボベック)法務官の意見に沿ったものであれば、欧州司法裁判所にとって影響力の強いアドバイザーの意見が今後の欧州でのGDPRの施行スピードに影響を与え得る可能性がある。国際的なケースを扱うためのGDPRのワンストップショップメカニズムの結果として起きている、アイルランドのような主要な管轄区域での障害に同氏が目をつけているとも受け取れるからだ。

ボベック法務官は国際的なケースを調査する主管規制当局に能力があるとする一方で「データ保護における主管当局は国際的なケースにおいてはGDPRの唯一の執行者とはみなされず、GDPRが定める関連規則と期限を遵守して、この分野でその意見が重要とされる関連する他のデータ保護当局と緊密に協力しなければならない」と記している。

同氏はまた「緊急措置」の採用を目的とする場合や「データ保護当局が事案を取り扱わないことを決定した後」に介入する場合など、各国のDPAが独自の訴訟を起こすための具体的な条件を提示している。

法務官の意見を受け、DPCのGraham Doyl(グレアム・ドイル)副長官は次のように述べている。「我々と協力関係にあるEUのDPAとともに、我々は法務官の意見に留意し、関連するワンストップショップ規則の解釈という点で裁判所の最終判決を待つこととします」。

アムステルダム大学でデータプライバシーのポスドク研究者を務めるJef Ausloos(ジェフ・オースルース)氏に法務官の発言についての見解を求めたところ、この意見は「実際の保護と執行がワンストップショップメカニズムによって損なわれる可能性があることを明確に認識したもの」だという。

しかし同氏によると、DPAが主管規制当局を回避するための新たな道が法務官の意見から見て取れたとしても、短期的には何の影響力もないとのことだ。「長期的な場合に限って、変化に向けた道は開けていると思います」と同氏はいう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookEUプライバシーアイルランド欧州司法裁判所

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

Facebookがラップを制作・公開できるTikTok風アプリ「BARS」を発表

米国時間2月26日、Facebook(フェイスブック)の社内R&DグループであるNPEチームが、新たな実験的アプリ「BARS」を発表した。このアプリは、プロが作成したビートを使って、ラップを創作・公開できるもので、NPEチームが音楽分野で起ち上げたアプリとしては、最近一般に正式公開されたミュージックビデオアプリ「Collab」(コラブ)に続いて2つ目となる。

関連記事:Facebookが音楽動画をコラボ制作できるアプリCollabを正式リリース、まずは米App Storeで

Collabがオンラインで他の人と一緒に音楽を作ることに焦点を当てているのに対し、BARSは自分の動画を作成して公開したいと思っているラッパーを対象としている。このアプリでは、ユーザーは何百ものプロが作成したビートの中から好きなものを選択し、自分のリリックを書いて、動画を録画する。BARSはまた、ユーザーがリリックを考えている時に自動的に韻を提案する機能もある。さらに、映像に適用できるさまざまな視覚効果フィルターや、オートチューン機能などのオーディオ用フィルターも使用できる。

「チャレンジモード」も用意されており、これは自動提案された言葉でフリースタイルのラップを行うというもので、ゲーム的な要素を備えている。Smule(スミュール)の「AutoRap(オートラップ)」のように、単にラップを楽しみたい人にも受け入れられるようにデザインされており、おそらくユーザーが自分で作成したビートも使用できるようになるだろう。

画像クレジット:Facebook

BARSは最長60秒までの動画を作成可能で、カメラロールに保存したり、他のソーシャルメディアプラットフォームでシェアしたりすることができる。

Collabと同様に、新型コロナウイルスの流行がBARSの制作にひと役買ったようだ。ウイルスの影響で、ラッパーが自分の作品をライブで試すことができる場所や機会が得られなくなってしまったと、NPEチームのメンバーであるDJ Iyler(DJアイラー)氏は説明する。同氏は自身も「D-Lucks」という名前でヒップホップソングを制作している。

「ラッパーを目指す人々にとって、高価なレコーディングスタジオや制作機材を利用できる機会は限られていることを、私はよく知っています。それに加えて、世界的な新型コロナウイルス感染流行の影響で、私たちが作品を制作し、公開することが多いライブパフォーマンスをできる場所が閉鎖されてしまいました」と、彼はいう。

意欲的なラッパーたちのチームによって作られたBARSは、米国で2月26日よりクローズドベータ版の配布が開始された。

画像クレジット:Facebook

この新しいアプリは音楽、特にラップに焦点を当てているものの、FacebookがTikTok(ティックトック)の競合(少なくともこのカテゴリにおける)を開発しようとする試みの1つと見ることもできる。

TikTokは、すでにラッパーを含む新進気鋭のミュージシャンにとって、自分の作品を公開するための発射台となっているラッパーは自分のリリックを試すことができ、多くのビートメーカーに支持されているだけでなく、どのような音楽が作られるかということにも影響を与えているディストラックもまた、TikTokで非常に人気のあるフォーマットになっており、主にインフルエンサーが事件を煽ったり、意見を追求したりする手段として使われている。つまりTikTokにおけるラップの界隈にはすでに大規模なソーシャルコミュニティができ上がっており、Facebookはその一部の注目を奪いたいと考えているということだ。

BARSは、ユーザーインターフェイスの点でもTikTokと似ている。それは2つのタブで構成された縦長の動画インターフェースで、TikTokの「フォロー中」と「おすすめ」の代わりに「Featured」と「New」のフィードが表示される。そしてこのアプリは、やはりTikTokのように、画面の右下にエンゲージメントボタンを配置し、左下にクリエイター名を配置している。

しかし、BARSで動画を「お気に入り」にするには、ハートをタップするのではなく、動画をタップすると「火」がつく(動画が再生されている間は、火の絵文字が表示される)ようになっている。「火」は何度でもタップできる。しかし、BARSには(厄介なことに)タップして一時停止する機能がないので、動画の再生を停止する方法を探している時に、誤って「火をつけて」しまうことがある。進めるには垂直方向にスワイプするのだが、インターフェイスにはお気に入りのクリエイターを「フォロー」するための明確なボタンが見当たらない。それは右上の3ドットメニューの下に隠されている。

アプリには、意欲的なラッパーや元音楽プロデューサー、パブリッシャーを含むNPEチームのメンバーからのコンテンツが組み込まれている。

現在、BARSのベータ版は米国のiOS App Storeで配信されており、招待希望者のウェイティングリストが開放されている。Facebookによると、BARSの招待は米国で開始され、数回に分けて行われるという。招待に関するアップデートやニュースはInstagram(インスタグラム)で発表される。

Facebookの実験的アプリ部門から最近発表されたアプリには、Collabの他、コラージュメーカーの「E.gg」(エッグ)などがあるが、すべてのアプリが定着するわけではない。市場を牽引することができなければ、Facebookはそれらのアプリを廃止する。実際に同社が2020年、Pinterest(ピンタレスト)風の動画アプリ「Hobbi」でそうしたように。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Facebookがパーソナライズされた広告の利点を訴えるキャンペーンを展開

オンライン広告は、Facebook(フェイスブック)のブランドマーケティング責任者を務めるAndrew Stirk(アンドリュー・スターク)氏が認めたように「不毛な話題」になりがちだ。だが、この巨大ソーシャルネットワーク企業は、その新しいキャンペーンで、中小企業にとって「パーソナライズされた広告がどれほど競争の場を平等化するか」ということを盛り上げようとしている。

この「Good Ideas Deserve To Be Found(見つけられる価値のある良いアイディア)」キャンペーンは、テレビ、ラジオ、デジタル広告で展開される。各企業は、新しく用意されたInstagram(インスタグラム)ステッカーや、Facebook上の#DeserveToBeFoundハッシュタグを使用して、プロモーションを行うことができる。

このキャンペーンでは、Facebook上で特定の中小企業が強調表示される。ハンドバッグや旅行用バッグ・メーカーのHouse of Takuraもその1つで、同社創業者のAnnette Njau(アネットンジャウ)氏は、米国時間2月24日に開催されたプレス向けイベントで、デジタル広告の利点について次のように語った。

「このようなプラットフォームが私たちに可能にしてくれることは、私たちがストーリーを語ることができるようになるということです。私たちのような企業は、テレビや大手雑誌でストーリーを語ることができません。なぜなら非常に費用が高く、そしてそれをどんな人が見るのか、私たちにはわかりません」。

このような考え方は、2020年Facebookが、Apple(アップル)のApp Tracking Transparency機能に反対して起ち上げたキャンペーンと似たものだ。このAppleが今後導入を予定している機能では、ユーザーが許可しない限り、アプリは広告ターゲティングのためにユーザーデータを共有することができなくなる。Facebookはこれに反応し「すべての中小企業のためにAppleに抗議する」と主張。とはいえ、このような変更は、2021年直面することが予想される「広告に対する著しい逆風」の1つになるだろうと指摘した。対照的にAppleのTim Cook(ティム・クック)氏は、これらの変更は消費者が求めている制御を提供するものだと述べている)。

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今回のキャンペーンは、Appleとの論争を拡大するものになるのかと尋ねられたスターク氏は、Facebookは公にAppleの変更に反対しているが、このキャンペーンは同社が中小企業のために行っている長期的なサポートの一部であると語った。

「実際にある程度の緊急性があります。中小企業は今、苦しんでいるのです」と同氏は述べた。

Facebookのビジネスプロダクト責任者を務めるHelen Ma(ヘレン・マ)氏は、これは「新型コロナウイルス感染流行のごく初期から我々が製品サイドで行ってきた取り組みの延長そのもの」であると付け加えた。その取り組みには、他に「Businesses Nearby」機能の導入や、#SupportSmallBusinessのハッシュタグなどが含まれる。

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Facebookは同日、このキャンペーン開始に加えて、製品におけるいくつかの仕様変更も発表した。広告マネージャを使いやすく簡素化したことや、レストランがその食事体験に関してさらに詳細な情報を提供できる新しいオプションを設定したこと、そしてFacebookのBusiness Resource hub(ビジネスリソースハブ)とInstagramのProfessional Dashboard(プロフェッショナルダッシュボード)で、パーソナライズされた広告に関する詳細情報を提供することなどだ。

また、同社はFacebook Shops(Facebookショップ)のCheckouts機能を通じた取引手数料の免除を2021年6月まで延長し、少なくとも2021年8月までは有料オンラインイベントで支払われた料金についても同様の措置を取ることも発表した。

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Facebookがオーストラリア政府と合意、ニュースコンテンツ共有の再開を発表

Facebook(フェイスブック)は、オーストラリア政府と合意に達したことから、同国のユーザーのフィードでニュースを共有することを「近日中に」復活させると発表した。このソーシャルメディアの巨人は米国時間2月17日、近々投票で成立が予想されるオーストラリアのメディア交渉規定法案を巡る討論の後、同国でニュースコンテンツを制限するという思い切った行動に出た。この規定は、FacebookやGoogle(グーグル)などの大手テック企業が、自社のソーシャルメディアプラットフォームに投稿されたニュースコンテンツに関して、ニュース発信元のメディア会社との間で収益分配契約を結ぶことを求めるものだ。

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Seven News(セブン・ニュース)の報道によれば、オーストラリアのJosh Frydenberg(ジョシュ・フライデンバーグ)財務大臣は、「ニュースメディア企業が公正に報酬を得られるようにするための枠組みを強化するこの規定について、デジタルプラットフォームとニュースメディア企業に対しその運用方法をより明確にする」修正が加えられたと語ったという。

今回の修正案は、Facebookのようなデジタルプラットフォームとニュースメディアが合意に達することができるように、強制的な仲裁に入る前に2カ月間の調停期間が規定に盛り込まれたことを意味する。オーストラリア政府はまた、この規制を適用すると決定する前に、テックプラットフォームがすでに地元のメディアと結んでいる商業契約を検討することになり、最終決定に達する前に1カ月間の観察期間が与えられることになった。

Facebookオーストラリア&ニュージーランドのマネージングディレクターであるWilliam Easton(ウィリアム・イーストン)氏は声明の中で、同社は今回の修正に「満足している」と述べ、それが「我々のプラットフォームがパブリッシャーに提供する価値と、我々がパブリッシャーから受け取る価値を相対的に認識する商業取引を可能にするための核心的な懸念事項に対処した」と続けた。

Facebookが先週行った制限は、オーストラリアのパブリッシャーがFacebookページでニュースを投稿・共有することできなくなり、オーストラリアのユーザーは自国や外国のニュースコンテンツを閲覧・共有することができなくなるというものだった。

オーストラリア政府は2020年4月、GoogleやFacebookなどの大手テック企業に対し、地元メディアにコンテンツの再利用料を支払うことを義務づける規制を採用すると発表した。それ以前にプラットフォーム企業と地元メディアの間では自主的な規定を作成する試みが行われていたものの、遅々として進まなかったためだ。

この法案に反対を表明する活動として、最初にFacebookは2020年9月、オーストラリアでニュースコンテンツの公開共有を制限せざるを得なくなると脅しをかけた。Googleもまた、オーストラリアにおけるユーザー体験が損なわれると主張し、同国で無料のサービスを提供することができなくなるかもしれないと示唆していた。

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タグ:Facebookオーストラリア

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

WhatsAppが新プライバシー規約を同意しないユーザーへの対応内容を説明

WhatsAppは今週初めに、ユーザーが「自分のペース」で同社のプライバシーアップデートの計画を見直すことを認め、また用語の変更をわかりやすく説明するバナーを表示すると発表した。しかし、2021年5月15日の締め切りを守れないユーザーはどうなるのだろうか?

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TechCrunchでは、同社が商業者パートナーに宛てたメールを確認することができたが、Facebookがオーナーが所有するWhatsAppは、そのようなユーザーには、彼らが新しい規約に準拠してWhatsAppの全機能を利用できるように5月15日から「徐々に求めていく」という。

規約を同意しないユーザーも「短期間、通話や通知を受けとることはできるが、メッセージを読んだり送ることはできない」と同社はメモで述べている。そのメモが同社の計画の真意であることを、同社はTechCrunchに対して確認した。

「短期間」とは、数週間のことだ。そのメモには、WhatsAppが新たに設けたFAQページへのリンクがあり、非アクティブユーザーに関するポリシーは5月15日以降に適用されるとある。

WhatsAppの非アクティブユーザーに関するポリシーによると、アカウントは「通常120日間、何もなされなかった後に削除される」という。

このインスタントメッセージングサービスは、一部のユーザーから反発を食らった。それには、最大の市場であるインドも含まれている。そのときWhatsAppはアプリ内アラートで、プライバシー規約の計画への同意は2月8日までに、とある。これは同社のeコマースへの最近のテコ入れを反映したもので、サービスを使い続けたいのであればその日程を守れ、と述べている。

反発を食らったWhatsAppは、プライバシーアップデートの計画がユーザーの一部に混乱を招いたとし、2021年1月のブログで「最近のアップデートに関して、とても多くの人が混乱しているようだ。心配が生じたのは多くの誤報のためであり、今後は弊社の原則と事実を理解していただけるようにアナウンスしたい」と述べている。

2016年以降、WhatsAppのプライバシーポリシーは、ユーザーの電話番号やデバイスの情報などをFacebookと共有してよいことになった。新しい規約では、FacebookとWhatsappが、より良い広告ターゲティングのために決済や商取引のデータを共有できる。それはソーシャルの巨大モンスターがeコマースを拡大して、それを同社のメッセージングプラットフォームと合体させようとしているためだ。

WhatsAppは20億以上のユーザーが使っており、2021年1月には新たなポリシーの発効を3カ月遅らせ、その規約の説明に努めてきた。しかし規約を受け入れないユーザーへの対応は、その説明よくわかっていなかった

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タグ:WhatsAppFacebookプライバシー

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フェイスブックが豪州ユーザーのニュースリンク共有・閲覧を禁止へ

Facebook(フェイスブック)は米国時間2月17日、オーストラリアのユーザーがプラットフォーム上でニュースリンクを共有したり閲覧したりすることを禁止すると発表した。同国のFacebookユーザーはニュースを読むのに他のサイトを利用することを余儀なくされそうだ。この大胆な措置は、インターネットプラットフォーム(特に広告大企業であるFacebookとGoogle)が報道機関のコンテンツをシェアするためのアクセスに対して、その対価を報道機関に直接支払うようにしようとしている豪政府が提案した法案についての議論を受けてのものだ。

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決断しかねていたFacebookにとって、完全禁止は最後の手段だった。ブログ投稿の中で同社はこのような動きはオーストラリア、そして世界のユーザーの利益を損なうものだと強調しつつ、決断による収益への実質的影響を最小限にしようとした。同社は、オーストラリアのユーザーのフィードにあるコンテンツのわずか4%がニュースだと明らかにしたが、ニュース消費に関連する他のエンゲージメント指標は示さなかった。

投稿の中で、Facebookはニュースコンテンツが同プラットフォーム上でユーザーによっていかに共有されているかについて、自社をGoogleと区別しようとした。Googleの検索では、コンテンツはアルゴリズムでGoogleによってキュレートされている。「Google検索はニュースと密接に絡み合っていて、報道機関は自由意志でコンテンツを提供していません」とFacebookオーストラリアのマネージングディレクターであるWilliam Easton(ウィリアム・イーストン)氏は書いた。「一方、報道機関はFacebook上にニュースを投稿することを自ら選んでいます。そうすることで報道機関は購読を売り込んで視聴者を増やし、広告売上も増やすことができます」。

Googleはすでにオーストラリアでニュースコンテンツを引き続き表示できるよう、対価支払いを進めるために報道機関との提携を開始した。同国でのサービスを停止するという先の脅しにも関わらず、まずはRupert Murdoch(ルパート・マードック)氏のNews Corpと契約を結んだ。Facebookの動きには、オーストラリアに拠点を置く報道機関へのリンクをプラットフォーム上で共有できなくなるという、同国外のグローバルユーザーへの予想外の影響が含まれる。

オーストラリアの法制化は、インターネットプラットフォームがいかに運営を継続するか、地域の法制化がグローバル規模で影響をおよぼす可能性があるという攻撃的な例だ。多くの国がこの法案がどのように影響するのか見守っているのは明らかだ。Googleが同国でサービスを維持するためにプライベートな取引の成立を模索している一方で、Facebookが強硬 なアプローチを取ったことは、将来どのように運営するかという計算を余儀なくされた、各プラットフォームの異なるアプローチを示している。

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タグ:Facebookオーストラリア

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

Appleのティム・クック氏がアドテックは社会の破滅をもたらすと警告、同社アプリトラッカーのオプトイン機能を擁護

Apple(アップル)のTim Cook(ティム・クック)CEOは2021年1月に「Computers, Privacy and Data Protection(CPDP)」カンファレンスで基調講演を行い、欧州はプライバシー保護を強化するべきだという考えを明らかにした。同氏は2年前にもブリュッセルで生講演を行い、アドテック業界によるインターネットユーザーの大量監視を支えている「data-industrial complex(データ産業複合体)」を激しく非難したが、今回の講演でもほぼ同じ主張を繰り返した。

この講演でクック氏は、現世代のアドテックの改革は今や人道的に必要不可欠なものだと述べ、遠回しにFacebook(フェイスブック)に対する批判を繰り返した。

「2年前にもブリュッセルで話したとおり、包括的なプライバシー保護法を米国で策定するだけでなく、データの最小化、(自分の情報利用に対する)ユーザーの知識、ユーザーによるデータへのアクセス、データのセキュリティという原則をグローバルに実践するための、世界規模の法律と新しい国際合意を策定すべきときだ」と話した。

「我々は何を許容すべでないか、何を許容しないか、という点でユーザーの個人情報に対する権利を主張する人々に、普遍的かつ人道的に応答しなければならない」とクック氏は付け加えた。

Appleは現在、トラッキングについて事前にユーザーの許可を求めることを開発者に義務づけるという世界初の試みへと舵を切る準備を進めている最中だ。前述のクック氏のメッセージは、同社にとって極めて重要な時期に発表された。

Appleは2021年1月下旬に、iOS 14の次期ベータリリースでApp Tracking Transparency(アプリ追跡透明性、ATT)機能を有効にすることを改めて発表している。正式な導入は2021年の春先になる見込みだという。

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Appleはこの機能を2020年から運用開始する予定だったが、開発者側に対応準備期間を与えるために予定を延期している

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この動きに対してアドテック大手のFacebookは以前から強く反論しており、サードパーティによるトラッキングを拒否する権限をAppleがユーザーに与えると、広告ネットワークを使用しているパブリッシャーは重大な影響を被ることになると警告している

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先に、Facebookは第4四半期の決算を発表し「広告部門での逆風が強まっており」2021年の収益が低下すると警告を発し、AppleのATT(および「変化する規制当局側の姿勢」)をリスクとして挙げた。

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クック氏はまた、データ保護とプライバシーに関する別のカンファレンス(通常はブリュッセルで開催されるが2021年はパンデミックの影響でオンライン開催となった)で行った講演で、ATTとプライバシーに対するAppleの姿勢をかなり強い言葉を使って擁護し、導入が間近に迫ったトラッキングのオプトイン機能は「ユーザーにコントロール(制御権)を返却する」ものであること、アドテックによるインターネットユーザーの監視によって、陰謀説、過激主義、物理的な暴力などの拡大をはじめとするさまざまな悪影響が生じていることを指摘した。

同氏はATTについて「ユーザーはこの機能を長い間待ち望んでいた」と述べ、次のように語った。「我々は開発者と密接に連携して、この機能を実装するための時間とリソースを彼らに与えてきた。また、我々自身も、この機能によって事態がすべての人にとって良い方向へと変化する可能性が高いと考えており、熱意を持って取り組んでいる」。

フランスでは、Appleのこの動きに対して不当競争の疑いがかけられており、2020年10月、4つのオンライン広告ロビー団体が「開発者がアプリユーザーに対してトラッキングの許可を求めることをAppleが強制するのは同社による市場支配力の乱用である」として、独禁法違反でAppleを告訴している(英国でも、GoogleがChromeブラウザでトラッキング用サードパーティCookieのサポートを打ち切ることについて同様の提訴があり、規制当局による調査が始まっている)。

また、The Informationによると、Facebook側もAppleを独禁法違反で告訴する準備を進めているといい、司法の場での争いがヒートアップしている(実はFacebook自身も、長年にわたる反競争的行為によってソーシャルネットワーク市場を独占してきたとしてFTCから提訴されている)。

クック氏は同講演で、プライバシー保護に関する別の新たな取り組みとして、App Storeに出品されるアプリについて、データ収集に関する情報を食品成分表のようにわかりやすく示す「privacy nutrition(プライバシーラベル)」の表示をiOSアプリの開発者に義務化していくと述べた。すでに別の記事で伝えたとおり、このラベルと、近く導入されるATTはサードパーティだけでなくApple製のアプリにも適用される。

クック氏によると、この2つの動きは「ユーザーの役に立ち、ユーザーの幸福を目指す」テクノロジーを創造するというAppleの核をなす製品哲学に沿ったものであり、人々がオンラインで実行するあらゆることについて情報を収集しそれらを大衆操作ツールとしてユーザーに不利になるように利用する、強欲な「データ産業複合体」のアプローチとは対照的であると語った。

「そもそも、プライベートな情報や個人情報はすべて、監視や収益化、あるいは集積してユーザーの生活を丸見えにすることにつながっているように見える」とクック氏は警告する。「こうしたアプローチの行き着く先は顧客の製品化である」。

「ATTが本格的に導入されると、こうしたトラッキングに対してユーザーはノーと言えるようになる。トラッキングに必要な程度の情報であれば、ターゲット広告の精度を上げるために提供してもよいと考える人もいるかもしれない。しかし、多くの人はそう考えていないようだ。というのは、同様の機能をSafariのウェブトラッカー制限に組み込んだところ、大半のユーザーから良い評価が得られたからだ」と同氏は述べ、「こうしたプライバシー中心型機能とイノベーションは、Appleが果たすべき責任の中核をなしている。今までずっとそうであったし、これからも変わらない」とつけ加えた。

過去には、プライバシーに反した大量監視などなくても広告業界が繁栄していた時代があった、とクック氏は指摘する。「テクノロジーは多数のウェブサイトやアプリから寄せ集められた膨大な個人データなどなくても成功できる。そんなものがなくても、広告は何十年も存続し、繁栄してきた。最も抵抗の少ない道を行くことが賢明な選択であることはめったにない。我々が今日のような立場を取っているのはそのためだ」。

クック氏はまた、いくつかの点でFacebookを遠回しに厳しく批判した。Facebookの名前こそ出さなかったが「ユーザーの監視」「データの搾取」「選択の余地のない選択」を基盤とするそのビジネス手法を酷評した。

「このような組織は我々の称賛に値しない。改革に値する」と同氏は続けた。また、同じ講演の前の部分で欧州の一般データ保護規則(GDPR)がプライバシー保護の強化に果たす役割を称賛し、そのような法の執行を「継続する必要がある」とカンファレンス出席者に訴えた(まさにこの継続性がGDPRの弱点となってきたが、現在2年半が経過して、やっと執行体制が軌道に乗ってきたようだ)。

クック氏は、Facebookに対する厳しい批判を続け、膨大なデータを吸い上げる、エンゲージメント偏重のアドテックのせいでデマや陰謀説が拡散されているとし、こうしたアプローチによってもたらされる影響はあまりにも深刻で、民主社会が許容できるものではないと主張した。

「大局的な見地を見失ってはならない。アルゴリズムによってデマや陰謀説が蔓延している今、可能な限り多くのデータを収集するために、エンゲージメント率を上げさえすればよい、ユーザーの滞在期間が長いほどよいというテクノロジーの考え方に対して見て見ぬふりをすることはできなくなっている」。

「多くの人たちが今でも『どの程度の罰金で済むだろうか』という話をしている。考えるべきなのは、どのような影響がもたらされるかという点だ。単にエンゲージメント率が高いという理由で陰謀説や暴力行為の扇動が優先されたら、どのような結果になるだろうか。命を救うワクチンに対する大衆の信頼を弱体化させるコンテンツを許容するだけでなく、そのようなコンテンツに報酬を与えるならどうなるだろうか。数千人のユーザーが過激グループに参加しているのに、そのグループへの参加を推奨するアルゴリズムを存続させたらどうなるだろうか」と、同氏は続け、Facebookのビジネスが直接の原因として批判されているさまざまなシナリオを挙げて説明した。

「こうしたアプローチに犠牲がともなわないふりをすることは、すぐにでも止めるべきだ。犠牲とは格差であり、信頼の喪失であり、そしてもちろん暴力だ。社会的ジレンマが社会的大惨事につながるのを許してはならない」とつけ加え、Facebookによるソーシャルネットワークのイメージを一撃で一変させた。

Appleが、ATTに反対するアドテック大手との戦いを推し進めるために欧州のデータ保護専門家に働きかけていることには理由がある。EUの規制当局には、ATTによるアプローチを後押しする法律を施行する権限があるからだ。ただし、現時点では規制当局はまだそこまでは踏み切れていない

Facebookに関するデータ保護監視を主導するアイルランドのデータ保護委員会(DPC)は、いわゆる「同意の強制」(サービスを使いたいなら広告ターゲティングによってトラッキングされることを承諾する以外に選択肢がないこと)を含め、Facebookのさまざまなビジネス手法に関する調査をまだ行っていない。

ユーザーに選択肢を与えないこのような手法はAppleがApp Storeで進めている変革とは対照的だ。App Storeでは今後、すべての企業はトラッキングに関してユーザーの同意を得る必要がある。Appleのこの動きは欧州のデータ保護法の原則に沿ったものだ(一例として、同法には、法的に有効であるためには一切の条件を提示することなく人々のデータに対する処理の承諾を得る必要がある、という原則がある)。

同様に、ユーザーに選択肢を与えることを引き続き拒否するFacebookの姿勢は、EUの法律と真っ向から対立しており、GDPR(一般データ保護規則)の規制対象となる可能性がある(クック氏が講演の中で訴えていたのはこの点だ)。

2021年はこの論争が決着に向かう重要な年になりそうだ。2020年末、アイルランドが他のEU加盟国のデータ保護当局に決定案を送付したことで、WhatsAppとFacebook間のデータ共有の透明性に対するDPCの長期にわたる調査が2021年、法執行に向かって動き始めている。

Politicoの報道によると、WhatsAppはこの1件のみで3000万~5000万ユーロ(約38億~64億円)の罰金を科せられる可能性があるという。それだけではない。WhatsAppは2019年にプライバシー保護違反に関する件でFTCに50億ドル(約5277億円)の罰金を支払ったが、そのときは広告ビジネスの運営方法について具体的な変更を行う必要はなかった。今回は、ユーザーデータの扱い方を変更するよう命令される可能性がある。

特定の種類のユーザーデータの処理中止を求める(またはデータを使用する前にユーザーの同意を得ることを強制する)命令が当局によって出されれば、これまでよりはるかに大きな影響がFacebookのビジネス帝国におよぶことは間違いない。

Facebookは2021年中に、欧州のユーザーデータのEU圏外への転送を合法的に継続できるかどうかについても最終判決を言い渡される。

Facebookがこのようなデータフローの停止を命令されれば、同社のビジネスのかなりの部分が大きく混乱することになるだろう。2019年の第1四半期時点で欧州のDAU(1日あたりの利用者数)は2億8600万人だった。

要するに、Facebookのビジネス運営をめぐる規制当局側の姿勢は明らかに「変化している」ということだ。

Facebook側もAppleによるプラットフォームレベルでのプライバシー保護執行が迫っている事態に対抗し、法律の専門家を投入して、Appleの動きは反競争的だと主張する構えを見せている。しかし、EUの立法担当者も、プライバシー保護執行に対抗するツールとして独禁法を持ち出す利己的な動きには目を光らせているようだ。

(クック氏が同講演でプライバシーの「イノベーション」に触れたことは注目に値する。同氏は「我々の生活をより良く、満たされた、人間的なものにするイノベーションの先にこそ未来があるのではないか」と聴衆に問いかけた。これは、プライバシー対独禁法規制の論争においてまさに鍵となる問いかけだ。)

2020年12月、コミッションのEVPで競争担当責任者のMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)氏はOECD Global Competition Forumで、独禁法の執行担当者は、プライバシーが競争を抑え込む盾として使われないように用心する必要があると指摘した。とはいえ、同氏はドイツにおけるスーパープロファイリング訴訟でFacebookに有罪判決が下されたことに支持を表明しており、同氏の言葉にはデータ産業複合体に対する皮肉も込められていた。

この訴訟(ドイツFCOによって引き続き係争中)では、プライバシーと競争を新しい興味深い方法で組み合わされている。規制当局が勝訴すれば、Facebookのソーシャル部門がデータレベルで構造的に分離される結果になる可能性がある。いわば、「すばやく行動してマンネリを断ち切る」(Facebookの有名なモットー)の規制当局版だ。

ベステアー氏が規制のイノベーションを「刺激的で興味深い」と形容したことは注目に値する。欧州のデジタル政策と競争を監督する人物も、規制のイノベーションに対して、非難するどころか、むしろ信任票を投じているようだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleFacebookEUアドテックGDPR

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

Facebookの監督委員会がプロジェクトが成功すれば「他ソーシャルネットワークの参加も歓迎」

Facebook監督委員会はまだ発足したばかりだが、すでに今後のことを考えている。

関連記事:賛否両論を呼ぶFacebook監督委員会が削除コンテンツの再審査を開始

米国時間2月11日にカーネギー基金が主催した集まりで、監督委員会の共同議長で元デンマーク首相のHelle Thorning-Schmidt(ヘレ・トーニング=シュミット)氏は、同委員会はFacebookの政策意思決定の策定に留まらないというもっと広いビジョンを提示した。

彼女によると、このプロジェクトが成功と評価されるならば「他のプラットフォームや他のテクノロジー企業が、私たちに可能な監督行為に参加することが歓迎される」という。

トーニング=シュミット氏は、この種のモデレーション機関のより幅広いビジョンはいずれにしても今後生まれるだろうが、現委員会の当面のミッションは企業という「閉じた箱」の中で政策の意思決定を策定することから脱出することだと強調した。

「これまでコンテンツのモデレーションは、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏やその他のディレクターたちといったFacebookやTwitterでそれを最もやりそうもない人物が行ってきた」とトーニング=シュミット氏はいう。「しかし史上初めて、コンテンツモデレーションを大手ソーシャルメディアの外で行えるようになった。そのこと自体は、歴史的だと表現しても過言ではない」。

このようなコメントは、Facebookの監督委員会の大望を表しているのかもしれない。そもそも現在は、ウェブサイト上に「Oversight Board(監督委員会)」とあるだけで、Facebookの「F」の字もない。

今回の集まりでは、監督委員会の関係者たちで構成されるパネルの全員がプロジェクトを擁護した。グループは当初、懐疑論者たちからの批判を浴び、Facebookから生まれた団体が真の自律性を持てるわけがない、といわれていた。

監督委員会のコミュニケーション担当であるDex Hunter-Torricke(デックス・ハンター-トリッケ)氏は「監督委員会を直ちに否定して、新しいものを求める人がとても多い」という。

ハンター-トリッケ氏は4年間、Facebookのコミュニケーションチームの役員を務め、ザッカーバーグ氏とSheryl Sandberg(シェリル・サンドバーグ)氏のスピーチ原稿を代筆してきた。その彼も、次のように、監督委員会のより広いビジョンを示唆している、

「これは私たちが今テストしているモデルであり、Facebookの一部の領域と同社が直面するコンテンツモデレーションという課題に対して、この種の機関がインパクトをおよぼすことができるのか検証しようとしている」。ハンター-トリッケ氏によると、委員会は「進化し、成長することを」望んでおり、そのためにFacebookのモデレーションを扱った経験を生かしたいという。

ハンター-トリッケ氏は、さらに次のように述べている。「コミュニケーションの専門家としての私たちの能力と、Facebookを扱って得た経験により、委員会の能力は今後より強力なものになると予想しています。今は、その旅の途中です。しかもその旅は、目的地がわかっておらず、モデルをテストしながら微調整していくものです」。

TechCrunchは現在、監督委員会に対して、今後Facebookに限らず、ソーシャルネットワークに対する一般的で外部的な統治機関を目指すのかと質問している。

関連記事:Facebookの監督委員会は4件の削除を無効と決定、コミュニティ基準に対し9項目を勧告

Facebookの監督委員会は現在、ドナルド・トランプ前大統領のアカウントを復活するのかという、微妙で難問に直面している。トランプ氏は2021年1月初めに、米国議会を襲撃した暴徒を扇動したとしてFacebookから削除されていた。

関連記事:Facebookの監督委員会がトランプ前大統領のアカウント停止決定について再審議

グループの20名のメンバーの内5名が、トランプ氏のケースを評価しているが、それが誰であるかは公表されていない。5名が結論に達したら、委員会全体の多数決にかけられる。評決が出るのは2カ月後だ。

監督委員会における最も突出したトランプ批判者は、法学者のPamela Karlan(パメラ・カーラン)氏だったが、彼女は先週、委員会を去りバイデン政権に加わったので、決定には関与しない。カーラン氏は、トランプ氏の弾劾に関する最初の聴聞会で、トランプ氏の行為は弾劾に値する違反だと主張している。

委員会は米国時間2月12日まで、決定過程において「多様な見方」を考慮するためトランプ氏のケースに関するコメントを受けつけている

関連記事:Facebookの監督委員会がトランプ氏のアカウント停止に対するパブリックコメントを募集

2月11日にはFacebookの元セキュリティ最高責任者Alex Stamos(アレックス・ステイモス)氏が公開書簡に署名して、監督委員会がFacebookの決定と歩を揃えてトランプ氏を排除せよと主張した。「ソーシャルメディアがトランプ氏の声明を拡散しなければ、これらの事件はほとんど起き得なかっただろう」と書簡では述べられている。

「極端な状況下で政治的リーダーをソーシャルネットワークのプラットフォームから排除できるポリシーがあっても、もしかしたら扇動と動員は可能だったかもしれない。しかしこれは、そのような事案ではなかった」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Facebook

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フェイスブックがニュースフィードでの政治コンテンツのランクダウンをテスト中

長年、ユーザー定着のためにはコストをいとわずサービスを最適化してきたFacebook(フェイスブック)が、ニュースフィード内の政治的コンテンツの配信を減らす変更を「テスト」することを米国時間2月10日に発表した。テストは一時的なものでごく少数のユーザーが対象であり、米国、カナダ、ブラジルおよびインドネシアの地域に限定して行う、と同社は述べている。

実験の目的は、ニュースフィード中の政治コンテンツを異なる視点からランクづけするさまざまな方法を探ることで、将来どんなアプローチをとるかを決定することだとFacebookはいう。

また同社は、CDC(米疾病管理予防センター)とWHO(世界保健機構)および国と地域の保険機関・サービスの発信した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報は、試験期間中のニュースフィード内でのランク降格の対象外であることを明らかにした。公式政府機関のコンテンツも同じく影響を受けない。

テストにはアンケート部分もあり、Facebookは対象ユーザーに彼らの体験について質問する。

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本テストに関するFacebookの発表は、あまり大げさにならないことを意図している。大がかりな変更は、罪を認めるようなことになるからだ。Facebookはもっと大きな変化を起こす能力をもっている。パブリッシャーのコンテンツをランクダウンさせたいときはそれを実行し、多くのメディアビジネスを破壊してきた。最近では、質の悪いサイトスクレーパークリックベイトスパムなどに対してさらに厳しい措置をとっている。

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今回のFacebookのテストに関するニュースは、人々がソーシャルメディアの影響力と方向性に疑問を持ち始めたときにやってきた。益々多くのソーシャルメディアユーザーが、テックプラットフォームは人々過激にする役割を演じていると考えている。アルゴリズムによって不均衡な世界観を促進し、人々をソーシャルバブルに隔離し、危険な発言や誤情報をバイラルに広めているからだ。

今週Axiosがレポートした世論調査によると、過半数の米国人がソーシャルメディアは過激化を推進すると信じている。74%が誤情報は著しく深刻な問題だと述べている。76%がソーシャルメディアは議事堂襲撃に関して少なくとも部分的に責任があると信じている。うち10人中7人は、ネット上の極端な行動が見過ごされた結果だと考えている、と報告書は論じている。

一方で、米国民の3分の1が定期的にFacebookのニュースを見ているとPew Research Centerの調査が報告している。これは現在、人々は過激派パブリッシャーの極端な視点を多く読んでいることを意味している、と関連するPewの調査が報じている。

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世界のあちこちで、Facebookは政情不安を悪化させていると非難されている。インドネシアの死者を出した暴動やミャンマーの大虐殺、ブラジルの選挙時の誤情報拡散などだ。

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しかしこの日Facebookは、政治コンテンツはニュースフィードのわずか部分(たとえば米国人の見ているコンテンツの6%)であることを強調した。これは世界情勢に関わる責任の追求から逃れようとするものであり、ランクダウンの変更を、ユーザーのフィードバックがFacebookに調査を要求したことかのように位置づけている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フェイスブックがワクチン接種の邪魔をする新型コロナ陰謀論を削除へ

ワクチンに関する誤った情報は パンデミックのかなり前から出回っているが、世界的に変化する致命的なウイルスの蔓延と戦う中で、反科学的な陰謀がネット上で盛り上がらないようにすることは、これまで以上に重要な意味を持つ。

今回Facebook(フェイスブック)は、虚偽のワクチンに関する主張を取り下げるための基準を拡大すると発表した。同社はWHO(世界保健機関)などと協議して作った新しい規則の下で、新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンには「効果がない」「病気にかかる方が安全である」といった主張や、広く論破されてきた「ワクチンが自閉症を引き起こす可能性がある」という、反ワクチン派の主張を削除する。

acebookはルールを破ったグループ、ページ、アカウントに対して「特定の焦点」を当て、プラットフォームから削除される可能性を示唆している。

Facebookは2020年12月に新型コロナウイスワクチンに関する誤った情報を制限する措置を講じ、ワクチンのロールアウトのためのプラットフォームを準備していたが、その一方で、反ワクチン派の広がりへの対応では大きく遅れをとっている。同社は「新型コロナウイルスワクチンにマイクロチップが含まれているという虚偽の主張」や、ワクチンが一部の人々の同意なしに実験されていると主張する内容を含む、いくつかの誤報を含む投稿の削除を開始した。

なぜこの種の情報が、Facebookの新型コロナウイルスの誤報規制の対象にならなかったのかは、誰にもわからない。同社は新型コロナウイルスに関連した陰謀論の爆発的な広がりを防ぐために、パンデミックの早い段階から新しいポリシーを導入していたが、何度も何度も規則を均一かつ十分に施行することに失敗している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook新型コロナウイルス陰謀論

画像クレジット:ANGELA WEISS/AFP / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:塚本直樹 / Twitter

巨大テック企業を規制する米国の新たな独占禁止法案の方針

民主党は議会両院の支配を固め、党の立法の優先順位が明らかになってきた。これまでのところ、テック規制状況再考への議員の関心は未だ健在のようだ。

Amy Kobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員(民主党・ミネソタ)は反トラスト法改革の新たな提案として、大型合併の障壁を増やし、国の反トラスト法執行要員を強化することを謳っている。クロブシャー氏の法案、Antitrust Law Enforcement Reform Act(反トラスト法執行改革法)は、さまざまな業界にわたる統合を対象とし、特に「支配的デジタルプラットフォーム」に重点を置いている。

「かつて米国は世界有数の反トラスト法を有していましたが、現在我が国の経済は深刻な競争問題に直面しています」とクロブシャー氏はいう。「もうこれ以上この問題を見ないふりをして既存の法律が適切であると願うことはできません」。

現在、クロブシャー氏は上院の反トラスト・競争政策および消費者の権利小委員会の長を務めている。これまでにも巨大テック企業に影響を与える改革に関心を示している議会の一角である。

新法案は、1914年に制定され競争に関わる法律の枠組みを作り現在も適用されているクレイトン反トラスト法を強化するものだ。具体的には、反競争的合併の評価基準を標準化し、「競争を大きく損なう重大なリスクを生む」契約を防ぐよう現在の文言を変更する。

目的は反トラスト行為の可能性を早期に発見することで、これは政府が現在、抱えている難問であり、現在国の規制当局は、合併後何年も経ってから独占状態に発展した案件の再評価を行っている。

また同法案は、競争を減少させる危険が生じないことの証明を、合併する企業に義務付けることによって政府の負担を軽減する。これらの規則が適用されるのは、時価総額50億ドル(約5269億4000万円)以上で50%以上の市場シェアを持ち、現在あるいは将来の競合相手を買収しようとしている会社だ。

さらにクロブシャー氏の提案は、クレイトン法を修正して、競合相手を不利に陥れる行為を禁止する条項も加えようとしている。直接的合併、買収のみならず、一部曖昧な領域のトラスト行為についても対象とする。

執行予算の欠如を掲げる同法案は、3億ドル(約316億2000万円)の追加予算を司法省反トラスト部門およびFTC(連邦取引委員会)につぎ込む。FTCでは、委員会内に市場と合併を調査する部門を設置するためのその資金を使用する。

法案は、全員が民主党上院議員で反トラスト小委員会のメンバーでもあるCory Booker(コリー・ブッカー)氏、Richard Blumenthal(リチャード・ブルーメンソール)氏、Brian Schatz(ブライアン・シャーツ)氏、およびEd Markey(エド・マーキィー)氏が共同発起人となる。また現在は一党による取り組みだが、反トラスト改革は共和党ミズーリ州選出のJosh Hawley(ジョシュ・ホーリー)上院議員の支持も得られる可能性がある。同議員は巨大テック企業を標的にした反トラスト改革に今週になって関心を示した。ホーリー氏も上院の反トラスト小委員会のメンバーである。

クロブシャー氏は、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)といった大型テック企業の解体までは求めていないが、それはここ数年Elizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員とBernie Sanders(バーニー・サンダース)上院議員の支持を得ている行動だ。大型テック企業をターゲットにした複数州による訴訟の最中、FTCはFacebookに対する独自の訴訟を2020年末に提起し、同社の分割を要求している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookGoogleアメリカ反トラスト法

画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook