フェイスブックが開発途上国向けにInstagram Liteを提供、わずか2MBでAndroid版のみ

Facebook(フェイスブック)の成長は発展途上世界がもたらしている。米国時間3月10日、ソーシャルネットワークの巨人はその国々の消費者の要求を満たすために新たな行動を起こした。3年近い計画を経て、Facebookは満を持してInstagram Lite(インスタグラム・ライト)を公開した。省データ、ストレージ重視のAndroidオンリーバージョンの人気写真・ビデオアプリだ。端末上の必要ストレージはわずか2MB(メガバイト)で、開発途上国中心に170カ国で同日に公開された。

Instagram Liteは編集、共有、写真・ビデオ閲覧の他にスタンプの追加、ストーリー、IGTVの作成・閲覧からExploreの発見、推奨アルゴリズムまで基本的機能を揃えて公開される。そして170カ国で公開されることを踏まえ、それぞれの市場で利用するための言語もサポートされている。

しかし、iOSとAndroidで30MBのストレージ(と果てしないモバイル通信で必要な通信量)を費やす膨張したInstagramのぜい肉を削ぎ落とすために、Liteにはないものもいくつかある。

まず、デベロッパーは多くのグラフィクスを外し、広告を入れなかった。他にも外れた主要な機能として、TikTok風リールの作成(閲覧はできる)、ダークモード、ショッピング、エンド・ツー・エンド暗号化などがある(ちなみに、暗号化は2019年にメインアプリ向けに開発中だと報じられたが、まだ公開されていない)。iOSやフィーチャーフォンバージョンは開発されない。

Facebookは、搭載されなかった機能のいくつか(ダークモードや広告)は将来のアップデートで追加されると述べている。

Instagram Liteは2018年以来、Facebookからさまざまなかたちで限定提供されていたが、ソーシャルメディアの巨人にとって市場性があることが証明された地域に提供されることになった。テルアビブ拠点でFacebookの全Liteアプリ(FacebookとMessengerのLiteバージョンもテルアビブで開発されている)のプロダクト管理責任者であるTzach Hadar(ツァッハ・ハダー)氏は、現在Facebook Liteには月間アクティブユーザーが2億人以上いると今週語っている。

それはFacebook全体の数十億というユーザー数のごくわずかではあるが、Facebookに馴染みの少ない人や経済的、通信帯域制限などの理由でアプリを使っていなかった人をターゲットする重要な手段だ。

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しかしInstagramは人気が高く、何年も前からLiteバージョンの有力候補であり、Instagram Liteは発展途上市場で最も要求の多い製品だったにもかかわらず、ちょっとした曲者であることがわかっていた。

それは、画像と動画という本質的に帯域幅とデータを消費するアプリであるからというだけではなく、Instagramがここ数年、機能が過剰気味になっているためだ。ユーザー体験を向上する目的のもの、他のアプリとの競合力を高める目的なのもの(ストーリーやリール)、そしてFacebookの収益機会を拡大するものなどだ。

「Instagramは同じ制約の下で同じ体験を届けるという新たなタイプのユニークな課題を会社にもたらしました」と、ニューヨーク拠点(同アプリはFacebookのテルアビブとニューヨークのオフィスで共同開発している。最近はおそらく多くのFacebook社員の自宅でも)のプロダクトマネジャーであるNick Brown(ニック・ブラウン)氏は話す。「私たちの本当の気持ちは、このユーザーたちにInstagramのすべてを届けることなのです」。

画像クレジット:Facebook

実際、FacebookやMessengerアプリのLiteバージョンと同様、Instagram Liteは発展途上経済の消費者に向けられたもので、スマートフォンはAndroidベースである可能性が非常に高く、最先端端末はほとんどない。消費者はモバイルデータを使う際の料金や通信データ量にいっそう敏感である可能性が高く、大多数はネットにつながっていることを理解し始めたばかりだ。

Facebookの推計によると、北米人口の90%がオンラインであるのに対して発展途上国では65%だ。それは同社が途上国市場に正面から取り組んでいる理由の1つだ。そこでは成長が停滞したときに成長する。米国・ヨーロッパなどの成熟市場と比べて、新規参入との競争がはるかに激しくなる。

しかし、発展途上市場での需要のための開発は、競争の激しい消費者アプリで見られるような機能を追加し続けるコンセプトと本質的に逆行する。

Instagram Liteアプリには長年さまざまなトラブルがあった。初期バージョンはInstagramウェブスタック上でPrograssive Web Appとして作られ、2018年に限定リリースされ、わずか573KBしかスペースを使わなかった。欠けている機能も多かったが、Instagram自体は本来それほど機能は多くない。理由は語られることがなかったが、2020年静かに姿を消し、すぐ後の2020年12月に新バージョンが限定テストとして公開された。デビューしたのは主要市場であるインドで、そこで公開されたInstagram Liteはベンガル語、グジャラート語、ヒンディー語、カンナダ語、マラヤーラム語、マラーティー語、パンジャーブ語、およびテルグ語に対応していた。

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そしてその最終テスト版が正式なInstagram Liteアプリになった。興味深いことに、その過程でアプリは完全に作り直され、Progressive Web Appを離れ、Bloks(Bloksと間違えないように)という社内のフレームワーク上に構築された。MessengerとFacebookのLiteバージョンで基本機能の難題を数多く解決した仕組みだ。

これについて私はさらに詳しく尋ねた。その結果、2020年公開されたMessengerの軽量バージョンのための開発プロジェクトだったLightSpeedとは関係がなかったことを確認した。Bloksはサーバーサイドで定義したマネジメントロジックをiOS、Android、およびウェブ開発をサポートするネイティブアプリケーションに変換し、Instagram、Facebook、MessegerおよびWhatsAppに統合するためのフレームワークだ。

「Bloksははるかに高性能多機能で能力の高いフレームワークで、新しいInstagramライトバージョンはこの上に作られています」とハダー氏は語った。「ですから、ほとんど新しいアプリのようなものです」。以前のアプリが中止になった正確な経緯はわかっていないが、いずれにせよこの基盤のおかげでサービスを拡張するための余地を得られたようだ(アプリのサイズは600KBから2MBへと増加したが)。

この事実はユーザーにはあまり関係ないことだが、会社内の注目すべきトレンドと将来のテクノロジーへの取り組み方をを指し示すとともに、主要アプリのフルバージョンとLiteバージョンとの間の機能一致の重要性に対する視点を示唆している。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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