ロボットにスナイパーライフルを装着させるという一連問題

ロボットに銃を装備させるというのは、実用的な四足歩行ロボットが登場して以来、我々が追い続けてきたトピックだ。先の展示会で、SWORD(スワード)と呼ばれる企業が設計した遠隔操作可能な狙撃銃がGhost Robotics(ゴースト・ロボティクス)のシステムに装着されているものがお披露目されたため、この問題がさらに重要性を増してしまった。

これはBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)がどうにかして自らを遠ざけようとしていた問題である。当然のことながら戦争マシンを作っているという事実は、一般的に見て企業イメージにもよろしくない。しかし、多くのロボット産業がそうであるように、DARPA(国防高等研究計画局)の資金援助を受けたBoston Dynamicsが恐ろしいSF映画のようなロボットを生み出しているという事実は事態を複雑にしている。

先のコラムでは、威嚇や暴力を目的としたSpotの使用に対するBoston Dynamicsのアプローチについて話をした。また、ロボットの背中に銃を取り付けることについての筆者自身の考えも少し述べたつもりだ(繰り返しいうが、私は銃やデスマシン全般に反対である)。記事を書く前にGhost Roboticsに連絡を取ったものの、返事をもらったのは記事が公開された後だった。

筆者はその後、同社のCEOであるJiren Parikh(ジレン・パリク)氏に、同氏が「歩く三脚」と呼ぶこのシステムについて話を聞くことができた。Ghostはペイロード、この場合はすなわちSWORD Defense Systemsの特殊用途無人ライフル(SPUR)を設計していないため、こういった呼び方をするのだろう。しかしここには重要な倫理的疑問が詰まっている。歩く三脚と同社は呼ぶが、実際の責任はどこに置かれているのだろうか。ロボット開発会社なのか、ペイロードを製造する会社なのか。またはエンドユーザー(例えば軍隊)なのか、はたまたこれらすべてなのか。

銃を装備したロボット犬の軍隊が誕生し得るという可能性があるのだから、これは非常に重要な問題である。

自律性の観点からお話を伺いたいと思います。

ロボット自体には、武器のターゲティングシステムのための自律性やAIを一切使っていません。システムを作っているSWORDについては、私からはお話しできませんが、私の知っている限りでは、武器は手動で発射されるトリガー式であり、ターゲティングも裏で人間が行っています。トリガーの発射は完全に人間がコントロールしているのです。

完全な自律性というのは、越えるべきでない一線だとお考えですか。

我々はペイロードを開発していません。兵器システムを宣伝したり広告したりするつもりがあるかと聞かれれば、おそらくないでしょう。これは難しい質問ですね。私たちは軍に販売しているので、軍がこれらの兵器をどのように使用しているのかはわかりません。政府のお客様にロボットの使い方を指図するつもりはありません。

ただし販売先に関しては境界線を設けています。米国および同盟国政府にのみに販売しています。敵対関係にある市場には、企業顧客にさえロボットを販売しません。ロシアや中国のロボットについての問い合わせは多いですね。企業向けであっても、こういった国には出荷しません。

貴社が望まない方法でロボットが使われないようにするための権利を留保していますか?

ある意味ではそうですね。弊社にはコントロール権があります。全員がライセンス契約にサインしなければなりませんし、我々が望まない企業にはロボットを売りません。弊社が納得できる米国および同盟国の政府にのみロボットを販売しています。ただし軍の顧客は、彼らが行っていることすべてを開示しないということを認識しなければなりません。国家安全保障のため、あるいは兵士を危険から守るために、特定の目的でロボットを使用する必要があるのであれば、私たちはそれに賛成します。

画像クレジット:SWORD

ロボットを使って何をするかではなく、誰がロボットを購入するかというのが審査対象という事ですか。

その通りです。このロボットを使って格闘技のビデオを作ったり、ロボットがとんでもないことをするリアリティ番組を作ったりしたいという声が寄せられています。しかし誰が使うかわからなければお断りしています。ロボットはあくまでも道具です。検査やセキュリティ、そしてあらゆる軍事的用途のためのツールなのです。

先に見た写真に関してですが、タイムラインはあるのでしょうか。

2022年の第1四半期後半には、スナイパーキットのフィールドテストを行う予定だそうです。

このケースにおける契約内容は何ですか?国防総省は御社やSWORDと個別に契約をしているのでしょうか。

契約はありません。彼らは市場機会があると信じているただのロングガン企業で、彼らは自分たちのお金で開発し、我々はそれが魅力的なペイロードだと思った。顧客がいるわけではありません。

画像クレジット:Reliable Robotics

さて、(少なくとも今回)軍用犬ロボットの話はここまでにしよう。陸上での案件から、海や空へと話を移したい。まずはベイエリアに拠点を置く自律型貨物機企業、Reliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)が1億ドル(約114億円)を調達した。設立4年目の同社の総資金額は、今回のシリーズCラウンドにより1億3000万ドル(約148億円)となり、自律型トラック輸送モデルを空へと移行させるべく計画を進めている。

無人航空機といえば、Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が米国でのドローン配送を本格的に開始することを発表した。オーストラリアとバージニア州の小さな町でパイロット版に成功した同社。その後ダラス・フォートワース都市圏で自律走行による配達を開始するべく、Walgreens(ウォルグリーンズ)とのパートナーシップを発表したのである。

画像クレジット:Alphabet

Wingは規制面での取り組みについて次のように話してくれた。

2019年4月、Wingはドローン事業者として初めて米連邦航空局から航空事業者としての認定を受け、数マイル先にいる受取人に商材を届けることができるようになりました。この認定の拡大版として、2019年10月にバージニア州でローンチすることができました。現在この拡大版の許可に向けて作業を進めており、その一環として、今後数週間のうちにテストフライトを行い、この地域で新しい機能を実証する予定です。ダラス・フォートワース都市圏でのサービス開始に先立ち、私たちは地元、州、連邦レベルの当局と協力して、すべての適切な許可を確保してまいります。

画像クレジット:Saildrone

水上はというと、こちらでも1億ドル規模のシリーズCが行われている。科学的なデータ収集を目的とした自律航行船を開発するSaildrone(セイルドローン)は、すでにかなりの数の無人水上飛行機(USV)を配備しており、その総走行距離は約50万マイル(約80万Km)に達しているという。

最後に、パンデミックによる人手不足の中、ロボットウェイターを採用するというThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)の興味深い記事を紹介したい。ロボットウェイターというのは大して興味深いわけでもないのだが、おもしろいことに、この結果人間のウェイターが受け取るチップが増えたと報告されたのである。

Serviによってウェイターがキッチンを往復する手間が省かれ、常に忙しいウェイターは客と会話する時間を増やし、より多くのテーブルにサービスを提供することができたため、ウェイターはより高いチップを得ることができたのである。

自律型システムは既存の仕事を置き換えるのではなく、企業が現在の人員では補えない部分を補うものであるという、ロボット関連企業が以前から主張してきたことが、このニュースで裏付けられた形になった。自律型システムが既存の仕事を完全に取って代わる事はなく、現在の人員では補えない部分を補完するのだということがよく分かる。これが完全な自動化への一歩となるかどうかは疑問だが、人間がより人間的な仕事に専念できるようになることに、大きな意味があるのではないだろうか。

画像クレジット:SWORD

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

自律航行して海洋データを収集するロボットボート開発Saildroneが約114億円調達

海洋経済の重要性は増しており、それにともなって海洋そのものをマッピング、理解、追跡する必要性が高まっている。Saildrone(セールドローン)は、自律航行する科学実験船を使ってそうした活動を展開してきたが、ロボットボートの開発をさらに進めるために1億ドル(約114億円)という巨大なラウンドCを実施した。

Saildroneの船は何年も継続して使用されており、人間の乗組員には危険すぎたり、退屈すぎたりするようなあらゆる種類の興味深い航海を行っている。例えば、2021年10月初めには、ますます頻繁に発生するようになっている激しい嵐をより深く理解するためのNOAA(米海洋大気庁)のプロジェクトで、同社の船1隻がハリケーンの中を航行した。ロボットは50フィート(15メートル)の波と120MPH(時速193km)の風に耐えてデータを収集することができる。

Saildroneの船は、合計で50万マイル(約80万km)を旅した経験を持つ、最も経験豊富な自律型ボートだ。これにより、海洋情報の重要性が高まる中、魅力的な市場ポジションを得ることができた。ある場所の海の状態を知ることは、科学的に、そして嵐の際の船の操作など予想される目的のために役立つだけではない。体系的に収集された膨大な量のデータは、気候変動や持続可能な養殖への移行の際に、複雑な水生生態系の新たな基本的理解を構築するのに役立つ。

自律型の科学ボートといえばSaildroneが知られているが、他にも別の方向から新しいブルーエコノミーにアプローチしている企業がある。Sea Machinesの自律型タグボートや商業用ボート(このほど約1610kmの航行を実証した)があり、EcoDroneSea Provenはより小型でカスタマイズ可能な船で勝負しようとしている。また、Bedrockのもののように海底をマッピングする水中ドローンというまったく異なる世界もある。

関連記事
自律型潜水機とクラウドベースのデータでBedrockは海底マッピングを近代化
Saildroneが水深7000メートルまで自律して海底をマッピングする全長22メートルの無人水上艇を発表

しかし、Saildroneは立ち止まっているわけではなく、むしろ深く掘り下げている。最新の船であるSurveyor(サーベイヤー)号は、1年間航海し、水深2マイル(約3.2km)以上の海底をマッピングすることができる。しかしこの船は安くはない。Saildroneが「海洋領域のインテリジェンス」分野でできるだけ多くのシェアを獲得したいのなら、迅速に規模を拡大する必要がある。そのために1億ドル調達したはずだ。

今回のCラウンドはBONDがリードし、XN、Standard Investments、Emerson Collective、Crowley Maritime Corporation、CapricornのTechnology Impact Fund、Lux Capital、Social Capital、Tribe Capitalが参加した。「データ・インサイト・チーム」が組まれ、その資金を「GTM戦略機能」に活用する。

プレスリリースの中で、SaildroneのCEO兼創業者であるRichard Jenkins(リチャード・ジェンキンス)氏は「最も試行錯誤された自律型海洋技術と、世界で最も経験豊富なベンチャーキャピタリストたちとの提携の組み合わせは、業界における当社のリーダーシップを強化し、顧客のニーズを満たすための急速な成長路線を可能にします」と述べた。今後、注目度が高まるにつれ、同社のミッションについてこれまでよりも耳にするようになるのは間違いない。

画像クレジット:Saildrone

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

海上ドローン船でハリケーン中心部の様子を米海洋大気庁が初撮影、将来の予報用データも取得

海上ドローン船でハリケーン中心部の様子を米海洋大気庁が初撮影、将来の予報用データも取得

Saildrone Inc

アメリカ海洋大気庁(NOAA)が水上ドローンを使って、初めてハリケーンの中心近くの様子を映像に捉えました。風速54メートル、波高15mという激しい嵐になっているハリケーン「Sam」の内部を海上から捉えたのはSaildrone Explorer SD 1045と名付けられたウィンドサーフィンのようなドローン船で、海上でのハリケーンの様子をデータとして収集しました。

SD 1045は、ハリケーンシーズンに大西洋に配備していた5艘のうちの1つ。これらのドローン船は、研究者がハリケーンについて寄り詳しく分析するためのデータを常時記録するようになっています。そして収集した情報は、将来のハリケーンに関する予報の精度向上のために役立てられ、ハリケーンの上陸予測を寄り確かなものにすることで、犠牲者が出るのを抑えることが期待されます。

「ハリケーンは数時間で急激にその勢力を増すこともあり、沿岸地域の人々にとっては深刻な脅威になり得ます。NOAAの科学者であるグレッグ・フォルツ氏は、NOAAが使用しているSaildroneやその他の無人機器が収集する新しいデータは、ハリケーンの勢力変化をより正確に予測し、早期にハリケーンの予想進路上のコミュニティに警​​告を発するのに役立ちます」と述べました。

ちなみに、ハリケーン「Sam」に関しては、予報では米国本土に上陸する可能性は低いと予測されています。しかし、今回の映像でみられるような激しい波がこの週末には米国東海岸沿い打ち寄せ、場所によっては非常に危険な離岸流を起こす可能性があると、米国立ハリケーンセンターが注意喚起しています。

(Source:NOAAEngadget日本版より転載)