船の自律航行技術開発を行うエイトノットが1億円調達、2025年までの社会実装目指す

船の自律航行技術開発を行うエイトノットがシードラウンドファーストクローズとして1億円調達、2025年までの社会実装目指す

船の自動運転技術開発スタートアップ「エイトノット」は2月15日、シードラウンドのファーストクローズとして、J-KISS型新株予約権方式による1億円の資金調達実施を発表した。引受先は、DRONE FUND、15th Rock Ventures、リアルテックファンド。累計資金調達額は1億5000万円となった。

2021年3月設立のエイトノットは、「ロボティクスとAIであらゆる水上モビリティを自律化する」をミッションに掲げる、自律航行技術開発スタートアップ。ロボティクス専門家集団による開発チームを擁し、実用的な技術を現実的なコストで、かつスピーディに開発可能としており、創業から半年で小型船舶向けの自律航行技術の開発と実証実験を成功させている。同社は、2025年の自律航行無人船の社会実装を目指し、事業活動を加速させるという。

調達した資金は、「ロボティクスおよびAIに精通したエンジニアリングチームの強化」「EVロボティックボートを活用した事業開発チームの強化」などにあてる。

調達した資金の主な用途

  • ロボティクスおよびAIに精通したエンジニアリングチームの強化
  • EVロボティックボートを活用した事業開発チームの強化
  • 自律航行機能を備えた小型船舶の開発
  • 遠隔監視システムの開発
  • 事業化を見据えた実証フィールドでの航行試験

昨今、陸の自動運転・空のドローンなど、モビリティの自律化・自動化技術は隆盛著しく、その動きは船舶など水上モビリティにも及んでいる。水上モビリティにおいても自律化による安全性・利便性・経済合理性の向上が見込め、とりわけ四方を海に囲まれた日本では、旅客・物流において新たな移動・輸送手段となることが期待されているためという。災害時に代替輸送手段として活用することも期待されている。

またグローバル市場、特に新興国の場合、都市部の交通渋滞が深刻な社会課題となっていることから、船運は重要な交通・輸送手段として活用が推進されている。

これら状況においてエイトノットは、ロボティクス・AIなど先端技術を活用した「水上モビリティのロボット化」をコンセプトとし、環境に配慮したEVロボティクスボートによるオンデマンド型水上交通を実現することで、課題解決に貢献するという。

自律航行して海洋データを収集するロボットボート開発Saildroneが約114億円調達

海洋経済の重要性は増しており、それにともなって海洋そのものをマッピング、理解、追跡する必要性が高まっている。Saildrone(セールドローン)は、自律航行する科学実験船を使ってそうした活動を展開してきたが、ロボットボートの開発をさらに進めるために1億ドル(約114億円)という巨大なラウンドCを実施した。

Saildroneの船は何年も継続して使用されており、人間の乗組員には危険すぎたり、退屈すぎたりするようなあらゆる種類の興味深い航海を行っている。例えば、2021年10月初めには、ますます頻繁に発生するようになっている激しい嵐をより深く理解するためのNOAA(米海洋大気庁)のプロジェクトで、同社の船1隻がハリケーンの中を航行した。ロボットは50フィート(15メートル)の波と120MPH(時速193km)の風に耐えてデータを収集することができる。

Saildroneの船は、合計で50万マイル(約80万km)を旅した経験を持つ、最も経験豊富な自律型ボートだ。これにより、海洋情報の重要性が高まる中、魅力的な市場ポジションを得ることができた。ある場所の海の状態を知ることは、科学的に、そして嵐の際の船の操作など予想される目的のために役立つだけではない。体系的に収集された膨大な量のデータは、気候変動や持続可能な養殖への移行の際に、複雑な水生生態系の新たな基本的理解を構築するのに役立つ。

自律型の科学ボートといえばSaildroneが知られているが、他にも別の方向から新しいブルーエコノミーにアプローチしている企業がある。Sea Machinesの自律型タグボートや商業用ボート(このほど約1610kmの航行を実証した)があり、EcoDroneSea Provenはより小型でカスタマイズ可能な船で勝負しようとしている。また、Bedrockのもののように海底をマッピングする水中ドローンというまったく異なる世界もある。

関連記事
自律型潜水機とクラウドベースのデータでBedrockは海底マッピングを近代化
Saildroneが水深7000メートルまで自律して海底をマッピングする全長22メートルの無人水上艇を発表

しかし、Saildroneは立ち止まっているわけではなく、むしろ深く掘り下げている。最新の船であるSurveyor(サーベイヤー)号は、1年間航海し、水深2マイル(約3.2km)以上の海底をマッピングすることができる。しかしこの船は安くはない。Saildroneが「海洋領域のインテリジェンス」分野でできるだけ多くのシェアを獲得したいのなら、迅速に規模を拡大する必要がある。そのために1億ドル調達したはずだ。

今回のCラウンドはBONDがリードし、XN、Standard Investments、Emerson Collective、Crowley Maritime Corporation、CapricornのTechnology Impact Fund、Lux Capital、Social Capital、Tribe Capitalが参加した。「データ・インサイト・チーム」が組まれ、その資金を「GTM戦略機能」に活用する。

プレスリリースの中で、SaildroneのCEO兼創業者であるRichard Jenkins(リチャード・ジェンキンス)氏は「最も試行錯誤された自律型海洋技術と、世界で最も経験豊富なベンチャーキャピタリストたちとの提携の組み合わせは、業界における当社のリーダーシップを強化し、顧客のニーズを満たすための急速な成長路線を可能にします」と述べた。今後、注目度が高まるにつれ、同社のミッションについてこれまでよりも耳にするようになるのは間違いない。

画像クレジット:Saildrone

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi