GEのミミズ型ロボット、下水管に付着した固形廃棄物を除去するためにゴキブリ型ヒゲを採用

Dull(退屈)、Dirty(汚い)、Dangerous(危険)と言われる「3D」の仕事で、自動化について語る時に一般的に取り上げられるのは「退屈」と「危険」という分野だ。ロボットは人間を危険から遠ざけ、極めて退屈な反復作業を代替する上で重要な役割を果たす。しかし「汚い」という部分についてはどうだろうか?今回ご紹介するロボットほど、真ん中のDに適したものを、筆者は今まで記事にした覚えがない。

もちろん、ヘビ型ロボットは特に新しいものではない。従来のシステムでは不可能だった狭い場所での作業を可能にする賢いフォームファクターだ。カーネギーメロン大学もNASAも、長い間このようなロボットを開発している。一方、この巨大ミミズ型ロボットは、実はDARPA(国防高等研究計画局)が軍のトンネル掘削作業を開発するために実施した「Underminer(アンダーマイナー)」プログラムの一環として誕生したものだ。

現在はGE(ゼネラル・エレクトリック)のもとで「Pipe-worm」(Programmable Worm for Irregular Pipeline Exploration、不規則なパイプラインを探索するためのプログラム可能なミミズ)と呼ばれているこのロボットは、流体で動く筋肉と、ゴキブリにヒントを得たヒゲのシステムを組み合わせ、狭く曲がりくねったパイプの中を通り抜けることができる。触覚フィードバックを使って、パイプの直径、継ぎ目、曲がり角などを判断することも可能だ。

このロボットは最近、GEの研究拠点に配備され、業務に大きな影響を与えることなく配管内を運行している。

「このAI搭載の自律型ロボットは、パイプラインを単独で検査したり、さらに可能性としては修復する能力も備えており、我が国の下水道システムの多くで現在問題となっているファットバーグ(下水管の中で固形化し、流れなくなった塊)のような固形廃棄物の形成を打破することができるでしょう」と、GEのロボット研究者であるDeepak Trivedi(ディーパック・トリヴェディ)氏はプレスリリースで述べている。「私たちは、このロボットの体にゴキブリのようなヒゲを付けました。これによって、急なカーブを曲がったり、パイプラインのネットワークの暗くて内部がわからない部分を通り抜けたりするための知覚が、大幅に強化されました」。

同社はこのロボットが、発電所から光ファイバーケーブルまで、あらゆる施設の地下の点検に活用できると確信している。

画像クレジット:GE

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

魚やフジツボにも負けず海に浮かんでデータ収集する自律制御式センサーの増加をSofar Oceanが計画

海は広大で謎めいている……が、数千個もの小さな自律制御式のブイが毎日興味深い情報を報告してくれたら、そんな謎はかなり減るだろう。それこそがSofar Ocean(ソーファー・オーシャン)という企業の目的であり、同社は7つの海をリアルタイムで理解するというビジョンを実現するために、3900万ドル(約44億円)を調達した。

Sofar Oceanでは「オーシャン・インテリジェンス・プラットフォーム」と称しているが、本質的には海流、水温、天候など、さまざまな重要な海洋指標のリアルタイムマップを同社は運営している。これらの情報の一部は、人工衛星や海上の大規模な船舶ネットワークからいつでも簡単に得ることができるが、数千もの熱心な観測者が波に乗ることで得られる粒度やグラウンド・トゥルースは非常に明確だ。

昨日の測定値や通過する衛星による推定値ではなく、15分前のデータを得ることができれば、航路や天気予報(陸地でも)などについて、より多くの情報に基づいた判断を下すことが可能になる。もちろん、このような大量のデータは無数の科学的応用にも役に立つ。

現時点で、数千個の同社が「スポッター」と呼ぶものが海に存在しているという。

「海の大きさを考えると、この数はまだ少ないと言えるでしょう」と、CEOのTim Janssen(ティム・ヤンセン)氏はいう。確かに、他の誰も実現したことがない数ではあるが、まだ十分ではない。「私たちはすでに5つの海すべてをカバーしていますが、これからさらにギアを上げて、この分散型プラットフォームの密度を高め、可能な限りパワフルなセンシング能力を発揮できるようにします。そのために、今後数年間で急速に多くのセンサーを追加し、収集するデータを拡大して、より正確な海洋の洞察を得られるようになると我々は予想しています」。

SofarとDARPA(米国防衛高等研究計画局)は先日、人々が独自の海洋データ収集装置を設計する際にリファレンスデザインとなるハードウェア規格「Bristlemouth(ブリストルマウス)」を発表した。これは、海中で増え続ける自律機器を可能な限り相互運用できるようにすることで、重複しながらも互換性のなかったネットワークの問題を回避することを目的とするものだ。

フジツボに覆われ、魚にかじられ、風雨にさらされた、何千ものロボットブイのネットワークを運営する難しさは想像に難くない。ヤンセン氏によると、同社の「スポッター」は外洋での長期間の活動に耐えるように設計されているため「最小限のメンテナンス」しか必要としないという。「最近では、過酷な天候のために氷に覆われてしまったスポッターがありましたが、数カ月後に氷が解けた途端、自動的にデータの共有が再開されました」と、同氏は振り返る。スポッターが海岸に打ち上げられてしまった場合は、同社が発見者を支援し、必要な場所に戻す。

このデバイスは、手動のデータオフロードやメッシュネットワークではなく(それもオプションの1つだが)、イリジウム衛星ネットワークを介して報告する仕組みになっているが、ヤンセン氏によれば、同社は「Swarm(スウォーム)のような、衛星通信分野に革命をもたらす最新技術にも取り組み始めている」という。TechCrunchでも初期の頃から取材しているSwarmは、低帯域の衛星通信ネットワークで、消費者向けインターネットではなく、IoTタイプのアプリケーションに焦点を当てたものだ。現在、SpaceX(スペースX)が同社の買収を進めている。

海流などの海の状態を表示するSofarのインターフェース(画像クレジット:Sofar Ocean)

今回の3900万ドルを調達した投資ラウンドは、Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)とThe Foundry Group(ザ・ファウンドリー・グループ)が主導した。両社はプレスリリースの中で、海運業のような現在の事業においても、気候変動の研究のような将来に向けた仕事においても、より多くのデータが必要であることは明らかだと述べている。

「特にCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の開催を受けて、気候変動に関する議論がようやく中心的なものになってきました。世界各国の政府が、ハリケーンや暴風雨の増加、海面上昇、サンゴ礁などの生態系の危機に備えて、調整や計画を進めています」と、ヤンセン氏は説明する。「気象パターンの変化、海流や気温の変化、繊細な海洋生態系の変化について、明確な情報を提供できるようにすることは、当社やそのパートナーにとってだけではなく、地球上の1人ひとりにとっても、刻々と迫る時間に間に合わせるために一丸となって取り組む上で、本当に有益なことなのです」。

政府が何かをすべきかと考えている一方で、もちろん、海運会社やサプライチェーン管理会社は、燃料使用量を最小限に抑えて物流全体を改善するためのより良い経路選択を期待し、Sofarのデータに喜んでお金を払う。

「リアルタイムのデータにアクセスできるようになることで、これらの業界全体の不確実性が低減し、より効率的で、より良いビジネス判断ができるようになり、さらに燃料を節約して炭素排出量を削減することができます。つまり、すべて持続可能性や将来に対する備えの向上につながるというわけです」と、ヤンセン氏は述べている。

画像クレジット:Sofar Ocean

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロボットにスナイパーライフルを装着させるという一連問題

ロボットに銃を装備させるというのは、実用的な四足歩行ロボットが登場して以来、我々が追い続けてきたトピックだ。先の展示会で、SWORD(スワード)と呼ばれる企業が設計した遠隔操作可能な狙撃銃がGhost Robotics(ゴースト・ロボティクス)のシステムに装着されているものがお披露目されたため、この問題がさらに重要性を増してしまった。

これはBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)がどうにかして自らを遠ざけようとしていた問題である。当然のことながら戦争マシンを作っているという事実は、一般的に見て企業イメージにもよろしくない。しかし、多くのロボット産業がそうであるように、DARPA(国防高等研究計画局)の資金援助を受けたBoston Dynamicsが恐ろしいSF映画のようなロボットを生み出しているという事実は事態を複雑にしている。

先のコラムでは、威嚇や暴力を目的としたSpotの使用に対するBoston Dynamicsのアプローチについて話をした。また、ロボットの背中に銃を取り付けることについての筆者自身の考えも少し述べたつもりだ(繰り返しいうが、私は銃やデスマシン全般に反対である)。記事を書く前にGhost Roboticsに連絡を取ったものの、返事をもらったのは記事が公開された後だった。

筆者はその後、同社のCEOであるJiren Parikh(ジレン・パリク)氏に、同氏が「歩く三脚」と呼ぶこのシステムについて話を聞くことができた。Ghostはペイロード、この場合はすなわちSWORD Defense Systemsの特殊用途無人ライフル(SPUR)を設計していないため、こういった呼び方をするのだろう。しかしここには重要な倫理的疑問が詰まっている。歩く三脚と同社は呼ぶが、実際の責任はどこに置かれているのだろうか。ロボット開発会社なのか、ペイロードを製造する会社なのか。またはエンドユーザー(例えば軍隊)なのか、はたまたこれらすべてなのか。

銃を装備したロボット犬の軍隊が誕生し得るという可能性があるのだから、これは非常に重要な問題である。

自律性の観点からお話を伺いたいと思います。

ロボット自体には、武器のターゲティングシステムのための自律性やAIを一切使っていません。システムを作っているSWORDについては、私からはお話しできませんが、私の知っている限りでは、武器は手動で発射されるトリガー式であり、ターゲティングも裏で人間が行っています。トリガーの発射は完全に人間がコントロールしているのです。

完全な自律性というのは、越えるべきでない一線だとお考えですか。

我々はペイロードを開発していません。兵器システムを宣伝したり広告したりするつもりがあるかと聞かれれば、おそらくないでしょう。これは難しい質問ですね。私たちは軍に販売しているので、軍がこれらの兵器をどのように使用しているのかはわかりません。政府のお客様にロボットの使い方を指図するつもりはありません。

ただし販売先に関しては境界線を設けています。米国および同盟国政府にのみに販売しています。敵対関係にある市場には、企業顧客にさえロボットを販売しません。ロシアや中国のロボットについての問い合わせは多いですね。企業向けであっても、こういった国には出荷しません。

貴社が望まない方法でロボットが使われないようにするための権利を留保していますか?

ある意味ではそうですね。弊社にはコントロール権があります。全員がライセンス契約にサインしなければなりませんし、我々が望まない企業にはロボットを売りません。弊社が納得できる米国および同盟国の政府にのみロボットを販売しています。ただし軍の顧客は、彼らが行っていることすべてを開示しないということを認識しなければなりません。国家安全保障のため、あるいは兵士を危険から守るために、特定の目的でロボットを使用する必要があるのであれば、私たちはそれに賛成します。

画像クレジット:SWORD

ロボットを使って何をするかではなく、誰がロボットを購入するかというのが審査対象という事ですか。

その通りです。このロボットを使って格闘技のビデオを作ったり、ロボットがとんでもないことをするリアリティ番組を作ったりしたいという声が寄せられています。しかし誰が使うかわからなければお断りしています。ロボットはあくまでも道具です。検査やセキュリティ、そしてあらゆる軍事的用途のためのツールなのです。

先に見た写真に関してですが、タイムラインはあるのでしょうか。

2022年の第1四半期後半には、スナイパーキットのフィールドテストを行う予定だそうです。

このケースにおける契約内容は何ですか?国防総省は御社やSWORDと個別に契約をしているのでしょうか。

契約はありません。彼らは市場機会があると信じているただのロングガン企業で、彼らは自分たちのお金で開発し、我々はそれが魅力的なペイロードだと思った。顧客がいるわけではありません。

画像クレジット:Reliable Robotics

さて、(少なくとも今回)軍用犬ロボットの話はここまでにしよう。陸上での案件から、海や空へと話を移したい。まずはベイエリアに拠点を置く自律型貨物機企業、Reliable Robotics(リライアブル・ロボティクス)が1億ドル(約114億円)を調達した。設立4年目の同社の総資金額は、今回のシリーズCラウンドにより1億3000万ドル(約148億円)となり、自律型トラック輸送モデルを空へと移行させるべく計画を進めている。

無人航空機といえば、Alphabet(アルファベット)の子会社であるWing(ウイング)が米国でのドローン配送を本格的に開始することを発表した。オーストラリアとバージニア州の小さな町でパイロット版に成功した同社。その後ダラス・フォートワース都市圏で自律走行による配達を開始するべく、Walgreens(ウォルグリーンズ)とのパートナーシップを発表したのである。

画像クレジット:Alphabet

Wingは規制面での取り組みについて次のように話してくれた。

2019年4月、Wingはドローン事業者として初めて米連邦航空局から航空事業者としての認定を受け、数マイル先にいる受取人に商材を届けることができるようになりました。この認定の拡大版として、2019年10月にバージニア州でローンチすることができました。現在この拡大版の許可に向けて作業を進めており、その一環として、今後数週間のうちにテストフライトを行い、この地域で新しい機能を実証する予定です。ダラス・フォートワース都市圏でのサービス開始に先立ち、私たちは地元、州、連邦レベルの当局と協力して、すべての適切な許可を確保してまいります。

画像クレジット:Saildrone

水上はというと、こちらでも1億ドル規模のシリーズCが行われている。科学的なデータ収集を目的とした自律航行船を開発するSaildrone(セイルドローン)は、すでにかなりの数の無人水上飛行機(USV)を配備しており、その総走行距離は約50万マイル(約80万Km)に達しているという。

最後に、パンデミックによる人手不足の中、ロボットウェイターを採用するというThe New York Times(ニューヨーク・タイムズ)の興味深い記事を紹介したい。ロボットウェイターというのは大して興味深いわけでもないのだが、おもしろいことに、この結果人間のウェイターが受け取るチップが増えたと報告されたのである。

Serviによってウェイターがキッチンを往復する手間が省かれ、常に忙しいウェイターは客と会話する時間を増やし、より多くのテーブルにサービスを提供することができたため、ウェイターはより高いチップを得ることができたのである。

自律型システムは既存の仕事を置き換えるのではなく、企業が現在の人員では補えない部分を補うものであるという、ロボット関連企業が以前から主張してきたことが、このニュースで裏付けられた形になった。自律型システムが既存の仕事を完全に取って代わる事はなく、現在の人員では補えない部分を補完するのだということがよく分かる。これが完全な自動化への一歩となるかどうかは疑問だが、人間がより人間的な仕事に専念できるようになることに、大きな意味があるのではないだろうか。

画像クレジット:SWORD

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

DARPAがより軽く快適な生物・化学向け防護服の開発プログラム開始、感染症予防や治療提供など公衆衛生領域でも期待

DARPAがより軽く快適な生物・化学向け防護服の開発プログラム開始、感染症予防や治療提供など公衆衛生領域でも期待

DARPA

米国防高等研究計画局(DARPA)は、FLIR Systems、Leidos、Charles River Analyticsとの契約で化学・生物系の脅威から兵士やその状況に対応する人々を守るための、新しい個人用防護服の開発プログラムを立ち上げました。

パーソナライズド・プロテクティブ・バイオシステム(PPB)と称する個人用防護服は、既存の核・生物・化学物質向け防護服に比べより軽く快適で多様な危険に対応できることを目指しています。通常、このような防護服は結露防止用の通気孔を備えた不浸透性のゴムのような素材か、活性炭を含んだ通気性のある素材で作られています。この防護服は兵士の制服の上から着用し、さらにガスマスクなど保護具を装着して数日間にわたり戦闘や作業をこなせるよう作られています。

とはいえ、このような防護服は着心地が悪いうえに重く、新しく出てきた化学・生物系の兵器に対応できなくなりつつあります。そのためDARPAは広範な脅威に長時間対応可能な、軽量素材と分子技術の開発とそれを使った新しい防護服の開発を求めているわけです。

PPBプログラムマネージャーのEric Van Gieson氏は、今回のPPB開発プログラムは「脅威特有の脆弱性、熱的・物流的な負担、潜在的な被ばくリスクなど、PPEの限界を解決することを目的としています」と述べ「兵士への負担の少ない防護を提供する新スーツがあれば、脅威の有無にかかわらず、ミッション達成までの時間を短縮し、作戦の柔軟性を高め、任務に就ける期間を延長し、厳しい環境でも作戦を実行可能にする、非常に貴重な戦力になるでしょう」としました。

またPPB技術は、その開発に成功すれば軍用途だけでなく、公衆衛生の分野でも予測不可能な環境下での活動をしやすくする可能性があります。既知の感染症だけでなく新たな感染症に対する予防や、治療手段をその場に提供できるようになるかもしれません。

(Source:DARPA、Via:New AtlasEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:公衆衛生(用語)DARPA / 米国防高等研究計画局(組織)

Duality Labsはハードウェアアクセラレーション利用の準同型暗号テクノロジーで15.3億円のDARPA契約を獲得

現在、AIに適切な学習をさせることはテクノロジービジネスにとって不可欠の要素だが、そのために個人情報等を含む大量データを処理することには本質的に危険がつきまとう。米国防省のDARPA(国防高等研究計画局)がDuality Labsと1450万ドル(約15億3000万円)の調達契約を結んだのはデータを復号化せず、暗号化されたまま大量のデータを処理する新しいハードウェアアクセラレーションを開発しようと考えているためだ。

Dualityは完全準同型暗号化を採用したシステムを提供している。技術的な詳細に踏み込むことは避けるが、現在の暗号化手法の大きな問題点は、暗号化されたデータはまったく読み取れなくなることだ。読み取れなくすることがそもそも暗号化の目的だから当然だが、復号化鍵がない限り暗号化されたデータは無意味なノイズとなってしまう。大規模なデータセットをAI学習のために復号化すると膨大な処理コストがかかる。さらに平文は、外部のハッカーからの攻撃その他の悪用の危険に対して脆弱になる。

ただしデータを復号化せずにAI学習や分析のための処理ができるようにする方法がいくつか存在する。その1つが完全準同型暗号化(FHE)だ。ところがFHEは、通常の暗号化よりもさらに計算量が多くなる。このためギガバイト、テラバイト級の大きなデータが必要なアプリケーションではFHEは利用できなかった。同様の目的を達成する方法は他にもあるが、FHEが突然10倍も効率化されれば大変な朗報だ。

当然DARPAもこの分野に強い興味を抱いているが、暗号化分野の他の企業や組織に比べて桁違いに資金が豊富だ。今回の調達契約は、DPRIVE(仮想環境でのデータ保護)と呼ばれる広範な取り組みの一部だ。FHEを10倍からそれ以上高速に実行できるASICチップ(コードネーム「TREBUCHET」)を開発するという目標が発表されている。

Dualityチームは南カリフォルニア大学、ニューヨーク大学、カーネギーメロン大学、ドレクセル大学およびSpiralGen、TwoSix Labから人材を集めており、 この分野での経験も長い。実際、以前にもDARPAと協力したことがあり、熟知した領域だという。

Duality Labsのディレクターで主席研究員のDavid Bruce Cousins(デビッド・ブルース・カズンズ)氏はプレスリリースで次のように述べている。

Dualityは過去10年以上にわたってDARPAが資金提供するFHEの革新と応用に協力してきました。我々のメンバーは2010年にはDARPAのPROCEEDプログラムにおいて最初の準同型暗号化シのためのハードウェアアクセラレータのプロトタイプを開発しています。また2015年にはDARPAのSAFEWAREプログラムで最初に開発されたPALISADEオープンソースFHEライブラリの開発責任者でした。

ご覧のとおりDualityとDARPA頭字語には不足していないようだ。

開発、実用化のスケジュールは今のところ明確ではないが、完全準同型暗号処理の高速化はAIの利用に影響するところが極めて大きい画期的なテクノロジーであることを考えると、なんらかの結果が出るには少なくとも2、3年はかかると思われる。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Duality LabsDARPA機械学習暗号化資金調達

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook