スペースX、初の商業宇宙遊泳を年内に計画

SpaceX(スペースX)は、初の民間人のみによる宇宙飛行を開始するだけでなく、近い将来、本格的な民間宇宙プログラムの本拠地となる見込みだ。The Washington Postによると、Shift4(シフト4ペイメンツ)の創業者でInspiration4ミッションのリーダーを務めたJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏は、SpaceXによる「最大3回」の有人飛行を含むPolaris Program(ポラリスプログラム)の構想を発表した。最初のフライトである「Polaris Dawn(ポラリスの夜明け)」は2022年の第4四半期に予定されており、初の商業宇宙遊泳が含まれるはずだ。この取り組みは理想的には、人間が乗った最初のStarship(スターシップ)の飛行で終わる。月旅行を期待していた方たちには申し訳ない。

Polaris Dawnチームは、史上最高の地球周回軌道を目指し、健康研究を行い、レーザーを使ったStarlink(スターリンク)通信のテストも実施する予定だ。アイザックマン氏はミッションコマンダーとして復帰し、Inspiration4のミッションディレクターで空軍経験者のScott Poteet(スコット・ポティート)氏がパイロットを務める。また、SpaceXのリードオペレーションエンジニアであるAnna Menon(アナ・メノン)氏とSarah Gillis(サラ・ギリス)氏の2名も搭乗する。メノン氏の役割は、昨今の民間宇宙飛行へのシフトを象徴している。彼女の夫であるAnil Menon(アニル・メノン)米空軍中佐はNASAの宇宙飛行士に選ばれているが、彼女はその配偶者よりも先に宇宙に到達する可能性が高いのだ。

このプログラムの実現は、SpaceXとパートナー企業がいくつかの問題を解決することにかかっている。SpaceXは宇宙遊泳に必要な宇宙服を開発中であり、アイザックマン氏のグループはクルーのうち何人が宇宙船の外に出るかをまだ決めていない。また、Starshipには不確定要素もある。十分なテストが行われ、多くの進歩を遂げているが、この次世代ロケットシステムの開発は必ずしも計画通りには進んでいない。Polaris Programは、比較的緩やかなスケジュールで、場合によってはいくつかの挫折を経験することになるだろう。

それにしても、これは民間宇宙飛行の常態化を意味する。Polaris Programは、億万長者が率いる民間宇宙飛行の最近の「慣習」を引き継ぐものだが(アイザックマン氏も例外ではない)、宇宙遊泳や新しい宇宙船のテストなど、これまで政府の宇宙飛行士だけが行っていたことが商業化されることも見込まれる(SpaceXのDemo-2は、NASAの宇宙飛行士が操縦した)。近い将来、民間宇宙飛行士が他の役割を果たすようになっても不思議ではない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Jon Fingas(ジョン・フィンガス)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Polaris Program / John Kraus

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(文:Jon Fingas、翻訳:Aya Nakazato)

イーロン・マスク氏のSpaceX Starshipイベントで残る大型ロケットをめぐる多くの疑問

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、テキサス州ボカチカにあるStarship(スターシップ)開発現場から、同社の次世代打ち上げ宇宙船Starshipの進捗と計画について最新情報を提供した。StarshipとSuper Heavyブースターを組み合わせた高さ約400フィート(約121メートル)の打ち上げ機について、これまで印象的な説明があった。しかし今回、同氏がStarshipについて語ったことの多くは目新しいものではなかった。飛行試験と開発の次のステップに関してプロジェクトが置かれている実際の状況について同氏が共有できたことは、新しいコンセプトビデオに描かれた、空想上の惑星に向かうというビジョンに現状からどうやってたどり着くのかという疑問をいくつか投げかけた。

「ノアの方舟」の正当化

マスク氏は、人類を火星やその先に恒久的に到達させるというミッション実存の正当性に繰り返し言及してきたが、今回のアップデートでは、その目標に、地球の幅広い種の保存を中心とする補足を加えた。同氏はノアの方舟に触れなかったが、以下の通り、この類推は外れていない。

人類だけでなく、地球上のすべての生命を本当に大切に思う人たちにとって、長期的には、私たちが複数の惑星を持つ種になり、最終的には太陽系を越えて生命をもたらすことが非常に重要です。私たちは生命の管理人であり、生命の後見人です。私たちが愛する生物たちは宇宙船を作ることができませんが、私たちは彼らを連れて行くことができるのです。それは、環境を大切にする人、地球上のすべての生き物を大切にする人にとって、とても重要なことだと思います。

SpaceX(スペースエックス)のCEOであるマスク氏は、究極的にはこのプロジェクトの正当化を軽視し、第2の理由であるインスピレーションをより重要視している。同氏は以前、SpaceXの野心について語った際に、Starshipと文明の多惑星化は、人々を「未来について興奮」させることができるものの1つだと述べた。これは、マスク氏とSpaceXが地球上の問題解決に費やした方がよいはずの膨大な資金をプロジェクトに注いでいるという批判に対する長い回答の一部だった。批判に対して同氏は「リソースの99%超は地球上の問題解決に向けられるべき」ということに同意し、それはすでに行われていると述べた。

Starshipの打ち上げプロセスと迅速な再利用性

SpaceXは、これまでもStarshipの打ち上げプロセスについて語り、コンセプトアニメーションも公開してきたが、今回のアップデートでは、同社がイメージする最新のバージョンを映し出した。上に掲載した短い映像は、現在ボカチカに設置されている実際の打ち上げ施設をより忠実に再現しているが、タワーにブレードランナーの雰囲気を漂わせるビジュアルが施されている。

このアニメーションでは、2つのStarship宇宙船が軌道上でドッキングする様子も描かれている。これは、SpaceXが以前にモデル化したものではないが、火星への旅のために宇宙で燃料を補給する方法について同社は議論してきた。マスク氏は、ドッキングプロセスの詳細について同社がまだ解決しなければならないことだとしながらも、実際には「自分自身とドッキングするよりも宇宙ステーションとドッキングする方がずっと難しい」はずだと語り、SpaceXの宇宙船が常に宇宙ステーションとドッキングしていることに言及した。

打ち上げ場所と必要なクリアランス

もう1つの話題は、これまで共有された情報との相違が明確になった、Starshipの打ち上げ施設についてだ。マスク氏によると、打ち上げ場所の周辺には比較的人口の少ない広大なエリアが必要で、さらに人々をすばやく避難させることができること、打ち上げ傾斜角や宇宙船が宇宙に入る際の適切な位置取りが必要なことから、Starshipの打ち上げには2つのオプションしかないという。イベントが行われたテキサス州のStarship開発施設と、フロリダ州のケープカナベラルだ。

テキサスでの打ち上げのための米連邦航空局(FAA)による現場審査がどういう状況なのか、マスク氏は実際には把握していなかったが、3月中には承認が得られると予想しているという。とはいえ、ケープカナベラルには予備のためのStarshipの建設現場と発射台があり、テキサスで環境審査とFAAの審査が通らなければ、ケープカナベラルが第一の場所になる可能性もある。SpaceXが最初からフロリダのスペースコースト(ケネディ宇宙センターとケープカナベラル基地周辺)に決めてStarshipを打ち上げようとしなかった理由の1つは、そこではすでに多くのロケット打ち上げが行われており、既存のオペレーションを中断させたくなかったからだと、マスク氏は述べた。

質疑応答のセッションでマスク氏は、最終的にはSpaceXが古い石油プラットフォームを使って現在開発しているような、海上に浮かぶ宇宙港が「おそらく」いくつもできると考えている、と繰り返した。これは、ロケット発射が「かなりうるさい」こと、また混乱を最小限に抑えるために少なくとも「主要都市から20~30マイル(約32〜48キロメートル)」離れたところで発射を行わなければならないことに対処するためだ。このことは、地球を拠点としたポイント・ツー・ポイントの移動にとって重要なことだと同氏は話した。

軌道到達のタイムラインは不明

Starshipに関して次に期待されているのは、何といっても最初の軌道上テスト飛行だ。プロトタイプはすでに(Super Heavy除く)民間旅客機が飛行する高度まで飛んでいるが、地球の大気圏を超えたものはまだない。過去の発言でマスク氏はいつも楽観的なスケジュールを示してきた。例えば2019年9月の最初のStarship情報アップデートで同氏は、6カ月以内に軌道に到達し、2020年中には人を乗せることもできると予想していた。

明白だが、それは実現しなかった。

その代わり、タイムラインは2021年末から2022年1月に、そして現在は3月になる可能性もあるなど絶えず変化しており、マスク氏は実際に軌道テストに成功するいう点に関して「2022年中に軌道に到達すると強く確信している」とだけ発言している。

Starshipアップデートのプレゼンテーションの全容は、下の動画で閲覧できる。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

マスク氏、人類を他の惑星に送り出す大規模打ち上げシステム「Starship」の初軌道飛行は2022年1月が目標

SpaceXは、史上最大の超重量級打ち上げシステムStarshipの開発を、驚異的なペースで進めている。そして同社CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、2022年中に軌道に達するあろうことに「安心」している。

マスク氏は、全米アカデミー初のSpace Studies Board(宇宙研究委員会)およびBoard on Physics and Astronomy(物理・天文学委員会)の合同バーチャル会議で、いつも哲学的方向に脱線しがちなコメントの数々を披露した。シンプルに「SpaceX Starship Discussion(SpaceX Starshipに関する議論)」と題された講演とその後の質疑応答で、同社の次世代システムの技術、運用面の詳細についてアカデミー会員からの質問に答えた。

マスク氏は、テキサス州ボカチカにある同社の広大な施設、Starbase(スターベース)の発射台と発射タワーを2021年11月中に完成させ、最初の軌道投入を2022年1月に行うことを目指している。その後、2022年中に10回あるいはそれ以上の打ち上げが続くだろうとマスク氏は述べた。

ただしそれは、Starshipが1月に軌道に到達するという意味ではないことをマスク氏が慎重に補足した。「最初の打ち上げには多くのリスクがともないます。成功する可能性が高いというつもりはありませんが、大きな進歩を遂げるだろうと私は考えています」と彼はいう。

1月の打ち上げを阻むもう1つの障壁は、当局の認可だ。SpaceXのStarbaseにおける打ち上げ事業は、現在、連邦航空局(FAA)の環境評価を受けている。FAAは今週、12月31日までに審査を終える予定だと語っているため、すべてがマスク氏の計画どおりに進めば、1月打ち上げは最速実行可能日となる。

マスク氏は、Starshipの打ち上げを約2年以内にFalcon 9よりも安い価格で販売開始することも予測した。これは、NASAの有人月面着陸システム(HLS)に関するSpaceXの提案に書かれた日程よりさらに早い(HLSはNASAのアルテミス計画の一環として、アボロ計画以来初めて人間を月に送り込むプログラムで、SpaceXが単独指名を勝ち取った。Artemis 3と呼ばれるその打ち上げは、現在、2025年に予定されている)。

Starshipの歩みは速い

Starshipのスケールを大げさに語ることは難しい。宇宙船Starshipと打ち上げロケットSuper Heavy(スーパーヘビー)からなる同システムは、歴史上どの打ち上げシステムよりも大規模だ。完成時の高さは120メートルになる(NASAが開発中のSpace Launch Systemと宇宙船Orionはフル装備で98メートル)。Starshipは100トン以上の積載物を繰り返し軌道に送り込む能力があり、マスク氏がいう「太陽系のための汎用輸送機構」として機能する。

しかしマスク氏の目標Starshipを1台か2台、いや10台作ることでもない。講演の中で同氏は、真に複数惑星の生活を送るためには、人類は約1000基の打ち上げシステムを必要とするだろうと推計した。そしてSpaceXは、それを大量(あるいは限りなくそれに近く)生産するための工場を作っている。

同社はStarshipの開発を高速で進めている。去る2021年5月、SpaceXはStarshipの15番目のプロトタイプを打ち上げ、ロケットは高度約9.1kmに達した後、垂直着陸に成功した。それは打ち上げ機が無傷のうちに終えた初めてのテストだった。

「SpaceXの最重要目標は、宇宙テクノロジーを進化させ、人間が複数惑星種に、究極的には宇宙を旅する文明となり、SFで読んだものごとを実現しフィクションではないものにすることです」と、マスク氏は全米アカデミー会員に語った。

「これは意識の光を長期的に維持するために、非常に重要なことだと思っています」。

マスク氏のトークは以下で確認することができる。

画像クレジット:National Academies

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーロン・マスク氏、Starshipロケットは「規制当局の承認があれば」来月にも最初の軌道打ち上げの準備ができると語る

SpaceX(スペースX)の「Starship(スターシップ)」ロケットは、テキサス州南東部で現在も開発が進められており、発射塔の建設や、宇宙空間に到達した際の動力源となる真空仕様の「Raptor(ラプター)」エンジンの搭載など、重要な要素に大きな進展が見られる。Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、規制当局の承認が得られれば、来月にも初の軌道宇宙飛行を試みる準備ができると述べている。

SpaceXがこの試みを実施するためには、これまでテキサス州ブラウンズビル郊外の開発拠点で行ってきたStarshipのテスト飛行と同様に、米国連邦航空局(FAA)の承認が必要になる。FAAは基本的に、SpaceXが打ち上げ時に何か問題が発生しても最小限のリスクで済むように、必要な安全対策をすべて講じていることの証明を求めている。

Starbase(スターベース)発射塔が完成に近づき、初の軌道飛行に向け、StarshipとSuper Heavyブースターがスタンバイ

SPadre

すべてが順調に進めば、規制当局の承認を得た上で、来月にはStarshipの最初の軌道打上げに向けた準備が整います。

Elon Musk

この開発段階では、それも決して有り得ないというわけではない。SpaceXはすでに開発プログラムの中で、多くのStarship試作機が爆発するのを目にしてきた。だが、SpaceXのテストには、地球の大気圏内における高高度飛行テストや、制御された着陸に向けた宇宙船の降下など、いくつかの成功例もある。

SpaceXの次の大きなマイルストーンは、Starshipとブースター部分の「Super Heavy(スーパー・ヘビー)」のコンボを完全に積み重ねたバージョンを、地球の大気圏を超えて宇宙空間に飛ばすことだ。マスク氏によれば、技術的にはその準備は整っているとのことだが、FAAが最近行った打ち上げライセンス付与に関するパブリックコメントの募集が示唆するところによれば、規制当局の承認が得られるまでには1カ月以上かかる可能性もある。

先週行われたタウンホールミーティングでは、次のステップに進む前にFAAがSpaceXと一緒に検討・対処しなければならない多くの問題を、賛成派と反対派の両方が声をそろえて提起した。しかしながら、FAAはテストを目的とした一時的なライセンスを発行し、進行中の打ち上げ許可を再検討することで、これらの問題の解決を先送りする可能性もある。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マスク氏はスペースXの新都市「スターベース」の発電所とロケット燃料に必要な天然ガスをどうやって調達する?

SpaceX(スペースX)が世界最大のロケットのテストを開始する前に、ある環境関連の文書にFAA(米連邦航空局)の承認を得る必要がある。そこに、燃料の調達先についての重要な詳細が欠けていると専門家は指摘する。

FAAは9月、SpaceXのStarship(スターシップ)とSuper Heavy(スーパーヘビー)ロケットのプログラム環境アセスメント(PEA)の草案を発行し、パブリックコメントを募った。Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、スターシップとスーパーヘビーロケットをまもなく軌道に乗せ、その後、火星に送ることを目指している。142ページに及ぶ草案の対象は、マスク氏が新都市「スターベース」の建設を希望しているテキサス州ボカチカにおける、SpaceXの施設での建設と日常業務だ。飛行前のオペレーション、ロケットのテスト、打ち上げと着陸、燃料・水・電気の供給などが含まれる。

新しい前処理システムで、天然ガスを精製・冷却し、スターシップとスーパーヘビーロケット用の液体メタン燃料にする。その上、新しい250メガワットのガス火力発電所向けに、さらに多くのガスが必要となる。この規模の発電所は、通常10万以上の世帯に電気を供給し、コストは数億ドル(数百億円)に上ることもある。PEAはロケットの打ち上げについて大きく取り上げているが、新しい発電所についてはほとんど触れていない。特に、1日に必要な数千万立方フィートのガスが、メキシコ国境近くにあるSpaceXの遠隔施設にどのように運ばれるのかが明らかにされていない。

バーモント大学ロースクールのPat Parenteau(パット・パレントー)教授は「PEAにこのような記述がないのは異例であり、連邦政府の国家環境政策法(NEPA)に違反している可能性があります」という。

「NEPAは、いわゆる『Look-before-You-Leap(跳ぶ前に見よ)』法です」とパレントー教授は話す。「連邦政府の意思決定者に、ある行動が環境に与える影響と、それを回避する方法を知らせるための法律です」。

発電所への天然ガス運搬には一般的にパイプラインを利用する。連邦政府機関の関係者がTechCrunchに語ったところによると、SpaceXは2021年の初め、リオ・グランデ・バレー国立野生生物保護区を通る、今は使用されていない天然ガスパイプラインの再利用について問い合わせてきたそうだ。

「彼らはメタンの輸送に、現在彼らが行っているようにトラックを使うのではなく、パイプラインを再利用したいと考えています」と匿名の関係者は述べた。

しかし、この関係者と州の記録によると、そのパイプラインは2016年に永久に放棄された。その関係者がTechCrunchに語ったところによると、廃止されたパイプラインには現在、テキサス大学リオグランデバレー校のインターネット接続用の光ケーブルが設置されているという。

大規模発電所と定期的なロケット打ち上げの両方を支えるのに十分な天然ガスをトラックで運ぶのは、かなりの大仕事になる。TechCrunchが話を聞いたあるエンジニアによると、毎年タンカーで何千回もの運搬が必要になるという。

2021年初めにブルームバーグが最初に報じたように、SpaceXは自らガスを掘削することに興味があるとさえ表明している。同社は、放置された複数のガス井の所有権をめぐる争いの中で「SpaceXには、輸送やガス市場への販売に依存しない、異なる経済的な動機で天然ガスを利用する独自の能力があります」と記している。

SpaceXがどの方法を選択するかにかかわらず、環境への影響はPEAで開示されるべきだったとパレントー教授はいう。

「メタンは非常に強力な温室効果ガスです。裁判所は、メタンが絡むプロジェクトを誰かが提案する際には、ガス井、パイプライン経由の輸送、ガスが燃やされる下流での影響までを考慮しなければならないとしています」。

スターベースについて調査している環境エンジニアのブログによると、PEAでは、熱酸化装置、アンモニア貯蔵タンク、ガスフレア焼却装置など、ガス発電所やガス処理施設によくある設備についても言及していない。これらはすべて、二酸化炭素排出量や大気汚染など、環境に影響を与える。

FAAは次のような声明を出した。「評価書の草案は、米国家環境政策法など適用される環境関連法令を順守して作成されました」。

SpaceXはコメントの要求に応じなかったが、マスク氏は米国10月7日木曜日に開催されたTesla(テスラ)の株主総会で、同社の化石燃料への依存について触れた。「人々は炭素税がテスラの利益になると言っています」と同氏は発言した。「私は、『それはそうですが、SpaceXには不利です』と言いました」と述べた。そして、大気中のメタンは最終的に二酸化炭素に分解されることを指摘した。「メタンのことはあまり気にしなくていいです」と締めくくった。

ガス発電所の正確な位置は不明だが、広さは約5.4エーカー(約2万2000平方メートル)、高さは最大150フィート(約46メートル)の構造物で、昼夜を問わず1年を通して連続して稼働する。また、PEAによると、小規模(1メガワット)の太陽光発電所もあり、SpaceXはそれを拡張したいと考えている。

同社がガス発電所を必要としているのは、新しい海水淡水化プラントを稼働させるためだ。このプラントでは、打ち上げ時の防音や消火のために、年間数百万ガロン(数百万リットル)もの真水を生産する。また、空気から液体酸素を作るために、大量の電力も必要となる。

適用される連邦規則はNEPAだけではない。パレントー教授と別の専門家によると、250メガワットの発電所は通常、米大気浄化法の下で、重要な新規大気汚染源として認定される。そうなれば、長期にわたる環境審査が別途必要とされる。

「NEPAが制定されてから50年以上が経過しているにもかかわらず、このようなことをする機関があるとは驚きです」とパレントー教授はいう。「誰も気づかないことを期待しているのではないでしょうか」。

11月1日にパブリックコメント期間が終了すると、FAAは最終版のPEAを発行し(安全性に関する発見事項を付す可能性はある)、SpaceXに許可を出すか、あるいは通常は数年を要する、より詳細な環境影響評価書(EIS)を作成する意向を表明する。

最終版PEAがNEPAや大気浄化法の要件を満たしていなければ、地元のコミュニティや環境団体がFAAにEISの作成を求める訴訟を起こし、スターシップの軌道への打ち上げがさらに遅れる可能性がある。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Mark Harris、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpaceXがStarlinkの端末10万台を出荷、今後の打ち上げにはStarshipを利用する計画

Elon Musk(イーロン・マスク)氏のStarlinkプロジェクトは、人工衛星のコンステレーションにより、グローバルなブロードバンド接続を提供する。当プロジェクトがこのほど、10万台の端末を顧客に出荷した。

10万台の端末を出荷した。

2019年の11月に衛星の打ち上げを始め、翌年2020年には一部の顧客に月額99ドル(約10870円)でベータアクセスの提供を開始したが、その1年後に端末10万台は資本集約型のサービスにとって驚くべきペースだ。SpaceXはこれまでに1700基以上の衛星を打ち上げており、出荷された10万台の端末に加えて、50万台以上のサービスの追加注文を受けている。

同社は衛星の打ち上げに自社のFalcon 9ロケットを使っているため、ペースが速いのも意外ではないかもしれない。今や時価総額が最大の宇宙企業である同社にとって、このような垂直的統合こそが中心的な戦略だ。

Starlinkのベータ版顧客の多くは、従来のブロードバンドへのアクセスが限られているか、存在しない遠隔地や田舎に住んでいる。Starlinkは499ドルの初期費用がかかるが、その中にはサービスの利用開始に必要なユーザー端末(スペースXは「Disy McFlatface」と呼ぶ)、Wi-Fiルーター、電源、ケーブル、三脚などのスターターキットが含まれている。

画像クレジット:Starlink

しかしStarlinkの急速な成長は同社の積極的な戦略を反映したものだが、プロジェクトとしてはまだ始まったばかりだ。SpaceXにいわせれば、これは本プロジェクトの始まりに過ぎない。同社は最終的に、約3万個のスターリンク衛星を軌道上に打ち上げ、ユーザー数を数百万人にまで拡大したいと考えている。米国時間8月18日に連邦通信委員会(FCC)に提出した次世代Starlinkシステムの申請書によると、コンステレーションの構成を2つに分けて提案しており、そのうち1つは、同社の次世代重量物打ち上げ用ロケットStarshipを使用する。

完成後のコンステレーションは総衛星数2万9988基となり、SpaceXの提案によると、同社のFalcon 9ロケットを使用する別の構成もある。しかしいうまでもなく、ペイロードの大きさで有利なのはStarshipだ。

「SpaceXは新しい打ち上げ機Starshipの進んだ能力を有効利用する方法を見つけました。同機はより多くの質量を速く、効率的に軌道へ運ぶ強化された能力を持ち、また上段の再利用性も増しているため効率性はさらに良い」と同社の修正申請書にある。

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画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

SpaceXの大型ロケット「Super Heavy」と宇宙船「Starship」が初めて合体、全高120mは史上最大

SpaceX(スペースX)は、完全再使用型ロケットシステム「Starship(スターシップ)」の開発において、新たに大きなマイルストーンを達成した。同社は、29基のRaptor(ラプター)ロケットエンジンを全搭載したSuper Heavy(スーパーヘビー)ブースターのプロトタイプの上に、6基のエンジンを搭載したStarship宇宙船本体を設置するスタック試験を完了した。合体した宇宙船は、これまで開発されたロケットの中で最も全高の高い組立式ロケットとなる。

テキサス州南部にあるSpaceXの開発拠点で行われたこのスタッキングは、Starshipシステムを構成する2つの要素が初めて1つになったという点で重要な意味を持つ。これは、次のStarshipプロトタイプをテストミッションで打ち上げる際に使用される構成で、軌道到達が期待されている。

この巨大な複合ロケットシステムは、全高が約400フィート(正確には約390フィート、約119m)に達し、それが乗っている軌道発射台と合わせると、全体で約475フィート(約145m)となり、ギザの大ピラミッド(138.74m)よりも高い(牛久大仏は全高120m)。

スタッキングの実現は目覚ましい成果だが、この状態は長くは続かないはずだ。次のステップは、ロケットシステムの2つの部分を再び分離して、より多くの作業、分析、テストを行い、最終的な軌道飛行打ち上げテストに向けて再組み立てすることになると思われる。

軌道投入の打ち上げテストがいつ行われるかについては、現時点では明らかになっていない。解体、試験、再組み立てには時間がかかるはずだが、同社が年内の実現を目指していることは間違いない。

上のストリームはNASASpaceflightが配信したもの。

【更新】SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、Starshipシステムの2つの部分が分離された後の次の作業についての詳細を明らかにした。同氏はツイートの中で、システムの次の課題はStarship宇宙船に最終的な耐熱シールドタイルを追加することであり、この作業は約98%完了していると付け加えた。他にも、ブースターエンジン、地上の推進剤貯蔵タンク、宇宙船のQDアームに熱保護を加えることも今後やるべきことのリストに含まれているという。

もちろん、SpaceXがStarshipを飛行可能な状態にするために越えねばならないハードルはそれだけではない。同社は、米国連邦航空局(FAA)から打ち上げライセンスを取得する必要がある。これは規制当局が環境アセスメントを完了するまで実現できないが、そのプロセスには数ヶ月かかる可能性がある。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXStarshipSuper Heavy宇宙船イーロン・マスク

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

「Starlink衛星通信端末は製造コストの半値以下で提供」とマスクCEO、黒字化までもうしばらく時間がかかりそう

Starlink(スターリンク)が黒字化するまでには、もうしばらく時間がかかりそうだ。この衛星ネットワークを利用して世界中に高速ブロードバンドを提供するというSpaceX(スペースX)のプロジェクトは、顧客にベータ版キットを約500ドル(約5万5300円)で販売しているが、実際にはそれ以上の製造コストがかかっていると、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは米国時間6月29日のインタビューで語った。

このベータ版キットには、顧客が衛星に接続してブロードバンドアクセスを可能にするユーザー端末(アンテナのようなもの)が含まれている。「率直に言って、現時点ではその端末で損しています」と、マスク氏は語った。「この端末のコストは1000ドル(約11万500円)以上するので、当然ながら私がその費用を補助しています」。SpaceXではそれと同じ機能を持ちながら、より低コストで製造できる次世代端末の開発に取り組んでいると、マスク氏は続けた。

このプロジェクトに対するSpaceXの全体的な投資額は、当初は50億〜100億ドル(約5530億〜1兆1055億円)の間になると見られていたが、長期的には300億ドル(約3兆3164億円)に達する可能性があるとのこと。それは同社が今後も改良を続け、携帯電話通信網の技術に対して競争力を維持していくためだと、マスク氏は語った。

バルセロナで現地時間6月29日に開催されたMobile World Congress(モバイルワールドコングレス)のバーチャル基調講演で、このように語ったマスク氏は、Starlinkの現在の状況について他にも詳細を述べている。このプロジェクトは今後12カ月以内に50万人以上のユーザーを獲得できる見込みで、約12カ国で運用されており、それは「毎月増えている」とのこと。

SpaceXは衛星バージョン1.5の打ち上げも間近に控えているが、これはレーザーによる衛星間リンクを備え、高緯度や極地での継続的な接続を可能にする。来年にはバージョン2の打ち上げが予定されており「性能は格段に向上する」とマスク氏は強調した。

望遠鏡で観測すると光の筋に見えるStarlink衛星(画像クレジット:SpaceX)

このプロジェクトでは、2つの大手通信会社との提携に取り組んでいるというものの、マスク氏はその社名を明かさなかった。

Starlinkは、SpaceXが成し遂げた再利用可能なロケットの飛躍的向上抜きには考えられないプロジェクトだ。「しかし、まだ私たちは、Starship(スターシップ)の開発によって、これを次の段階へと進化させる必要があります」と、マスク氏はいう。この新型ロケットは、迅速に再利用できることを目指している。つまり現在の航空機のように、一度の飛行を終えたら地上でそれほど時間を要せず、すぐに再発射が可能になるということだ。

Starshipは、月面に基地を建設したり火星に都市を建設するというマスク氏のビジョンの鍵となるものだ。SpaceXでは今後数カ月以内に、Starshipによる初の軌道への打ち上げを試みたいと考えていると、マスク氏は語った。SpaceXは、Starshipの打ち上げシステムと地上との間で「高データレートの通信を実証する」ために、Starlink端末を新しい宇宙船に搭載して飛行させる承認申請を、連邦通信委員会(FCC)に提出した。

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カテゴリー:宇宙
タグ:イーロン・マスクMWCMWC 2021StarlinkStarshipSpaceX

画像クレジット:Mobile World Congress

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXがStarship軌道試験でStarlinkインターネットを使った接続品質の実証を行う予定

SpaceX(スペースエックス)が予定しているStarship(スターシップ)軌道試験飛行は、同社の技術力を示す正真正銘の見本市になるだろう。なにしろ今回SpaceXは、連邦通信委員会(FCC)に対して、Starlik(スターリンク)端末を宇宙船に搭載し、宇宙へ往復する間に地上との「高速通信の実証」を行うための承認を申請したのだ。

SpaceXの計画は、再突入時に大気中の「イオン化したプラズマ」の存在によって通常は通信信号が失われる部分であっても、地球低軌道衛星Starlinkのネットワークが「これまでにない量のテレメトリーを提供し、大気圏再突入時の通信を可能にする」ことを示すことだ(Michael Baylor[マイケル・ベイラー]氏のツイートより)。もしこれが成功すれば、SpaceXの試験飛行中に、これまで以上に優れたライブデータを提供することが可能になり、StarshipやSuper Heavy(スーパーヘビー)ローンチシステムの開発に役立つはずだ。そして、よりよい画質でさらに壮観な光景を、ライブで私たちに見せてくれることだろう。

打ち上げ時のテレメトリーやその他の通信手段にStarlinkを利用することは、もし説明通りに機能するならばSpaceXにとっては間違いなく機能向上となるが、Starlinkの能力をアピールするという意味では、それ以上に役立つものとなる。FCCに提出した資料によると、宇宙船に搭載される端末は、基本的には既存の民生用端末に新しい外装を施したものだ、すなわちこれがうまく機能すれば、より多くの民生用ブロードバンド顧客の注目を集めることができるだろう。

さらにSpaceXは、Starlinkの機能を、旧式でより遠い距離にある静止衛星ネットワークに代わって、飛行機や船、その他の輸送手段に対する接続を可能にするシステムだと饒舌に語っている。ロケット打ち上げ時にもしっかりとした性能を発揮することを示すことで、その分野でのパートナーを増やすことになるだろう。

申請によれば、Starship上のStarlink運用の免許は米国時間8月1日から始まるとされている。これは、SpaceXのGwynne Shotwell (グウィン・ショットウェル)社長が「7月中に打ち上げたい」と発言したものの次の打ち上げを意味しているか、あるいは、その打ち上げそのものがすでに翌月にずれ込んでいる可能性があることを示唆している。

関連記事:SpaceXが開発中の新型宇宙船「Starship」初軌道投入試験の7月実施を目指す

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX FCC / 米連邦通信委員会StarlinkStarship

画像クレジット:Starship

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(文: Darrell Etherington、翻訳:sako)

SpaceXが開発中の新型宇宙船「Starship」初軌道投入試験の7月実施を目指す

SpaceX(スペースX)は、開発中の宇宙船「Starship(スターシップ)」を7月に初めて軌道に乗せることを目指していると、同社社長のGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏が語った。同氏は国際宇宙開発会議のバーチャルスピーチで、このタイムラインを明らかにした。

Starshipは数年前から開発が進められており、2020年から何度か短いテスト飛行を行っているものの、いまだ地球の大気圏内に留まっている。5月に行われた最近の飛行では、初めて完全着陸に成功した。これは、SpaceX初の完全に再利用可能なロケットシステムとなることを目指しているStarshipの開発にとって、必須の要素だ。

Starship初の軌道飛行を7月に行うというのは、野心的なスケジュールと言えるだろう。SpaceXは、テキサス州南部のブラウンズビル近郊にある同社の開発拠点(通称「スターベース」)から離陸し、最終的にはハワイ沖の太平洋上に着水して地球に帰還するというこの飛行計画のコースを、5月に提出したばかりだからだ。

初の軌道飛行では、5月の試験飛行のように、制御された着陸を行って終了というわけではない。目標は軌道に到達することであり、その過程を通して宇宙船のコンポーネントをテストすることにある。その後のテストには、Starship宇宙船で制御された着陸を行うことも含まれており、最終的には軌道への推進を助ける「Super Heavy(スーパーヘビー)」ブースターを含むシステム全体を、完全に再使用可能にすることを目標としている。

ショットウェル氏は、SpaceXがStarshipの軌道試験飛行を開始するために必要な技術的な準備をほぼ整えていると、高い自信を示しているようだが、SpaceXが現在取得しているライセンスは、準軌道飛行のみを対象としているため、軌道試験飛行を行うためには、連邦航空局(FAA)から新たにライセンスの承認を得なければならない。FAAは現在、周辺地域への環境影響評価を含め、ライセンス取得のための要件を検討しているところだ。

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タグ:SpaceXStarshipロケット宇宙船

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スペースXが初の海上スペースポートを建設中、2022年にStarship打ち上げを予定

SpaceX(スペースX)は、同社初の浮体式スペースポート(宇宙港)プラットフォームの建設をすでに進めており、早ければ2022年に打ち上げを開始する予定だという。SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、同社が開発中の再使用型ロケット「Starship(スターシップ)」の浮体式発射・着陸施設に改造するために2021年初めに購入した、石油掘削リグ2基のうちの1つである「Deimos(ダイモス)」の進捗状況についてその詳細を共有した。

SpaceXが2021年1月に購入した2基の掘削リグは、火星の月にちなんで名付けられた2つの浮体式スペースポート「Deimos(ダイモス)」と「Phobos(フォボス)」を建設するためのものだった。これらの港は、Starshipの打ち上げ活動のための海上拠点として機能する。最終的な計画では、Starshipが地球と赤い惑星との間で人と物の両方の輸送を行うことになっているため、このネーミングは適切といえるだろう。

マスク氏とSpaceXはこれまでに、Deimosのようなスペースポートが世界中の主要ハブからアクセスしやすい場所に配置され、北京からニューヨークまで30分程度で移動できるStarshipを使った極超音速ポイントツーポイント飛行の世界的ネットワークを実現するというビジョンを語ってきた。しかしSpaceXはその前にまず、まだ開発中のStarshipとそれに付随するブースター「Super Heavy(スーパーヘビー)」の軌道上での飛行テストを行うことを目指している。

マスク氏は2021年初め、早ければ2021年末には海上プラットフォームからロケットを飛ばし始めることができると語っていた。今回の新しいスケジュールは、当初のバラ色の予想が裏切られたことを示しているが、これは複数企業のCEOである同氏に関しては珍しいことではない。しかし、テキサス州の開発拠点である「Starbase(スターベース)」での高高度の打ち上げ・着陸テストに成功するなど、同社のStarship計画は最近、順調に進んでいる。

SpaceXは現在、StarshipをSuper Heavyの上に載せて初めて飛行させる軌道飛行テストと、試験後にStarshipがハワイ沖で着水した後に回収する準備を進めている。また、次の大きなマイルストーンに向けて、燃焼時間がより長いRaptor(ラプター)エンジンの地上試験を行っている。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

米国連邦航空局がスペースXのStarshipのテストを3回分承認、早ければ今週打ち上げ

SpaceX(スペースX)はStarship宇宙船のテストと開発プログラムのペースを順調に維持しているが、米国時間4月29日午後、米国連邦航空局(FAA)よりテキサス州ボカチカの発射場から3回のテスト飛行を行う許可を得た。これまでの打ち上げテストの承認は単発的なものだったが、FAAは声明の中で「スペースXはロケットにほとんど変更を加えておらず、FAAが承認した一般の人々のリスクを計算する方法論にもとづいている」ため、一括して承認すると述べている。

スペースXは早ければ今週にも試験用StarshipのSN15を打ち上げる予定だが、その際にはFAAの検査官がボカチカの施設に立ち会うことが条件となる。FAAは米国時間4月29日到着予定の検査官を派遣したと述べており、今後数日のうちに打ち上げを試みる可能性が開けるかもしれない。

スペースXがボカチカから最後に試験飛行を試みたのは、2021年3月末に行われたSN11の打ち上げだった。約3万フィート(約9キロメートル)の高度までの最初の上昇とフリップマヌーバに成功した後、動力着陸を制御するラプターエンジンの1つにエラーが発生して爆発するという最悪の結末を迎えた。

FAAは次の3回のテストの認可に関する声明の中で、SN11で起きたこととその不幸な結末についての調査はまだ進行中であると指摘したが、それでもFAAは問題に関連する公共の安全上の懸念が緩和されたと判断したと付け加えた。

3回の打ち上げ許可にはSN15に加えてSN16、SN17の飛行が含まれているが、FAAはSN15の打ち上げで新たな「災難」が発生した場合には、次の2回の飛行では実際に離陸する前に追加の「修正措置」が必要になる可能性があると指摘している。

スペースXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、Starshipの開発で同社が追求している反復とテストの迅速なペースに対して、FAAが十分な柔軟性と対応力を持っていないと批判していた。一方で米連邦議会の議員らは、FAAがStarshipの初期のテスト事故を独自に調査するにあたって、必要なほど徹底していなかった可能性があると示唆している。しかし、最終的に公共の安全に対する影響がないことは、これまでの同計画が成功していることを示していると政府は主張している。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NASAがアポロ計画以来となる有人月面着陸システムの開発にSpaceXを指名

NASAの有人着陸システム(HLS)を受注する企業が、SpaceX(スペースエックス)に決定した。同社は、アポロ計画以来初めてNASAの宇宙飛行士が月面に降り立つ手段を開発する権利を、29億ドル(約3156億円)で落札した。SpaceXはBlue Origin(ブルーオリジン)や Dynetics(ダイネティックス)と並んで入札に参加していたが、The Washington Post(ワシントンポスト)によると、これらのサプライヤー候補を大幅に下回る価格で落札したという。

SpaceXは、現在開発中の宇宙船「Starship(スターシップ)」を、宇宙飛行士が月に到着した後の着陸手段として使用することを提案した。HLSは、NASAのArtemis(アルテミス)計画で重要な部分だ。このミッションは無人飛行から始まり、有人での月面接近を経て、最終的には2024年を目標に、月の南極に宇宙飛行士が着陸することを目指している。

NASAは2020年4月、HLSの入札に参加するベンダーとして、SpaceX、Blue Origin、Dyneticsの3社を承認したと発表。それ以来、Blue Origin(とそのパートナー企業であるLockheed Martin[ロッキード・マーチン]、Northrop Grumman[ノースロップ・グラマン]、Draper[ドレイパー]による「ナショナル・チーム」)とDyneticsは、各々のシステムの実物大モデルを製作し、機能的仕様の計画を詳細に記した提案書をNASAに提出して検討を受けていた。一方、SpaceXはテキサス州でStarship宇宙船の機能的なプロトタイプを積極的にテストしており、準備が整えば月に向けてStarshipを推進させるための「Super Heavy(スーパーヘビー)」ブースターの開発も進めている。

関連記事:NASAがSpaceX、Blue Origin、Dyneticsの3社を月面着陸船の開発に指名

この計画では、NASAは3社すべてを選んで契約の初期要件を満たす最初のバージョンを製造させ、最終的には、月面に到達する手段に柔軟性を持たせるために、3社の中から2社を選んで有人着陸機を製造させると一般的に考えられていた。これは基本的に、NASAが国際宇宙ステーションに向けてCommercial Crew Program(商用有人宇宙船計画)を実施した際に、SpaceXとBoeing(ボーイング)の2社に宇宙飛行士輸送用の宇宙船の製造を発注したのと同じやり方だ。SpaceXはすでに資格を取得して宇宙船の運用を開始しており、ボーイングは2021年の終わりか来年の初めには、SpaceXと並ぶ選択肢として稼働できるようにとたいと考えている。

SpaceXは信頼性が高くて再利用可能な有人宇宙船「Crew Dragon(クルー・ドラゴン)」で商用人員輸送を実現し、NASAから多くの信頼を得ている。魅力的な価格設定に加えて、NASAは人間だけでなく、大量の物資や材料を月へ、そして最終的には月より遠い場所にも飛ばせることを目指しているため、SpaceXの柔軟性と貨物容量に惹かれたと、ワシントンポストは書いている。

しかし、現時点において、SpaceXのStarshipはその目標からまだほど遠いところにある。SpaceXはラピッドプロトタイピングという手法を用いて、新たなテストを繰り返すことで迅速に開発を進めてきたが、直近のStarshipによる高高度飛行は、着陸前に爆発するという不運な結果に終わった。しかし、これまでのテストでは、空中で向きを変え、着陸に向けて減速を行うなど、他の要素では成功を収めている。とはいえ、これまでのテストでは地球の大気圏外に出たことはなく、有人飛行テストも行われていないため、ミッションに対応するためにはさらなる開発が必要だ。

SpaceXは、Lunar Gateway(月周回有人拠点)建設のための資材を搬送するロケット会社としても選ばれており、2024年に予定されている打ち上げに向けて、実際にPPE(Power and Propulsion Element、電力・推進モジュール)とHLO(Habitation and Logistics Outpost、居住・物流前哨基地モジュール)を製造するMaxar(マクサー)と協力している。だが、これらのモジュールは、すでに何度も打ち上げに成功している「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」で搬送される予定だ。

関連記事:NASAが月周回有人拠点「Gateway」のパーツを打ち上げる2024年のミッションにSpaceX Falcon Heavyを指名

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スペースXが11機目のStarshipプロトタイプを打ち上げるも着陸時爆発

SpaceX(スペースX)は米国時間3月30日の火曜日、Starshipのプロトタイプ宇宙船のさらなる高高度テスト飛行を行った。すべてのStarshipのプロトタイプの建造や飛行テストと同様、このプロトタイプも最近Elon Musk(イーロン・マスク)氏が 「Starbase」と改名した同社のテキサス州ボカチカの開発施設から離陸した。ただし、残念ながらテストはうまくいかず、SN11のプロトタイプは最終降下中に失われた。現場からの報告によれば大きな爆発が起こり、着陸地点周辺に破片が散乱したとされている。

現時点でのスペースXの目標は、Starshipを高高度(およそ3万2000〜4万フィート、約10〜12キロメートル)まで飛行させ「ベリーフロップ」というマヌーバーを実行した後、垂直方向に制御された姿勢で地球に帰還させ、その後に軟着陸させることだ。今日までに同社はこの目標に向けて前進してきた。最初の2回の試みは着陸時の衝撃で爆発し、3回目の試みでは垂直に着陸したが、しっかりとした状態で静止した後もののわずか10分弱で爆発した。

スペースXの現時点での具体的な目標は、Starshipの姿勢を制御するために使用するコントロールフラップのデータを収集し、軟着陸を実現することだ。同社は低高度飛行にて研究し、後に軌道上での弾道飛行テストを開始した際の成功率を高めるために必要なデータを得たいと考えている。

当日朝、テキサス州の発射場が霧に覆われていたため、スペースXの飛行テストの様子をはっきりと見ることはできず、またミッションの何が問題だったのかはまだ明らかされていないい。この点については、後に調査結果が公開される予定だ。

【更新】マスク氏によれば、着陸時の燃焼に使用された第2エンジンに問題があったとしている。

事故直後のマスク氏のツイートは以下のとおりだ。

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スペースXがStarlink衛星をさらに60機打ち上げ、3月だけで240機も投入
SpaceXの大型宇宙船Starshipが3度目の試験飛行で高度10kmまで上昇〜着陸に成功

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

SpaceXが新たにStarlink衛星60機打ち上げ、Starshipロケットは一度に最大400機まで打ち上げ可能に

SpaceX(スペースエックス)が、Starlink(スターリンク)衛星の新しいバッチを打ち上げた。いつものように地球低軌道向けの60機の衛星で構成されており、打ち上げ済みの1000機の衛星コンステレーションに加わることになった。今回の打ち上げは、SpaceXにとって2021年5回目のStarlink衛星の打ち上げであり、トータルでは20回目の打ち上げとなる。

2021年の初めにSpaceXは、払い戻し可能な前払いの予約システムを介して、現在または計画されているStarlinkのサービスエリアへ、誰でもアクセスできるようにした。同社は、このような打ち上げを2021年を通して続け、世界のはるか広い範囲で顧客にサービスを提供できる、衛星コンステレーションを構成することを目指している。以前SpaceXのCOOで社長であるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏は、同社は約1200個の衛星で世界の多くの地域をカバーできると予想していると語っていたが、現在同社はネットワークの容量と速度を完全に作り上げるために3万個以上の衛星打ち上げを計画している。

SpaceXは、Falcon 9ロケットを使ったStarlinkの打ち上げを順調に進めているが、その一方で衛星コンステレーション成長のキードライバーとしてStarshipにも目を向けている。南テキサスで開発中のSpaceXの次世代ロケット「Starship」は、一度に400個のStarlink衛星を軌道に投入することが可能で、完全な再利用性と迅速なターンアラウンドを考慮して設計されている。

1回のミッションで6倍以上の衛星を打ち上げることができるようになれば、Starlinkネットワークの展開速度や計画の全体的なコストの面で、SpaceX社にとって大きな助けになるだろう(なおここでは、Starshipが量産ロケットとなった際には、Starlinkが一般的に手頃な価格になるとしている彼らのコスト予測が正確であると仮定している)。少なくともそれは間違いなく数年先のことだが、SpaceXは米国時間3月3日に新しいマイルストーンを達成し、それが実現する可能性があることを十分に示している。

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同社の最新のStarship試作機は、米国時間3月3日にこれまでで最も成功したテスト打ち上げを行った。同機はSpaceX社のテキサス州ボカチカ開発サイトから離陸し、高度約3万2000フィート(約9728m)まで飛行した後「フロップ」操作を実行して、垂直方向の軟着陸のために自身の向きを変えた。今回のテストロケットも、着陸後10分以内に爆発を起こしたが、その派手な結末にもかかわらず、今回のテストでは、SpaceXがStarshipを現実のものにするために必要な基本的なエンジニアリング作業の多くが証明された。

Starlinkは数年に渡る巨大な取り組みであり、Starshipの大量生産や飛行が数年先になったとしても、プロジェクト全体にまだ大きな影響を与えられるはずだ。そして、Starlinkが完全に展開され運用が始まった後は、定期的な保守作業が発生する。ネットワーク内の個々の衛星は、実際には最大で5年までの運用ができるように設計されているに過ぎない。そのため運用をスムースに行い続けるためには、定期的な交換が必要となるのだ。

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タグ:SpaceXStarshipロケット衛星コンステレーション人工衛星

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(文:Darrell Etherington、翻訳:sako)

SpaceXの大型宇宙船Starshipが3度目の試験飛行で高度10kmまで上昇〜着陸に成功

SpaceXは、開発中の重量級再利用型宇宙船「Starship(スターシップ)」で現行10番目の試験機体となる「SN10」を打ち上げた。SpaceXが開発施設を置くテキサス州ボカチカから離陸したStarship SN10は、約10kmの高さまで上昇した後、摩擦を利用した着陸降下に向けてマヌーバを行い、体勢を立て直した。

この高度を飛んだ過去2台のStarship試験機体とは異なり、約6分間の飛行は火の玉になって終了することはなかった。SN10は意図したとおり、着陸に向けた姿勢転換マヌーバを完了させ、落下速度を減速させて軟着陸した。ロケットは垂直姿勢を保ったまま、無傷のままだ(更新:とはいえ、ロケットは着陸してから数分後に着陸パッド上で静止している間に爆発したのだが、これは潜在的に漏れが原因であった可能性がある)。

これはすばらしい結果であり、SpaceXのライブストリームによると、すべて「計画どおり」とのことだ。しかし、前回と前々回の爆発後、どうしてすぐにここまで来れたのだろうか?それはこのロケットの開発方法によるところが大きい。すべてのロケット開発には予期せぬ出来事や最良ではない結果が付き物だが、SpaceXの仕事にはいくつか平均的な宇宙船メーカーと異なる点がある

まず、この開発をオープンに行っていることだ。ボカチカの施設は、基本的にはいくつかの小さな建物、コンクリートのパッド、貯蔵タンク、足場があるだけだ。公道に非常に近く(テスト中は閉鎖され、周辺地域は避難している)、人々はクルマで近くまでやって来てカメラを構え、そこで行われていることを撮影することができる。これは、従来のロケットメーカーの一般的なやり方とはまったく違う。

そして2番目、SpaceXの創業者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が、SpaceXが迅速にStarshipの試作機を製造して試験を繰り返す開発戦略を追求することに対して、一切ブレないことだ。つまり、一般的なロケットメーカーのように、各テストを行った後に一度引き下がって、数カ月に及ぶ長期的な分析を行ってから別の仕様のロケットを製作して飛ばすのではなく、SpaceXでは少しずつ改良を加えた複数の試作機を、同時進行で製造・組み上げていることを意味する。

画像クレジット:SpaceX

この日、最初の打ち上げの試みは、短いエンジン点火の後に中断された。ロケットの計器が、マスク氏のいう「保守的」に反するわずかに高い推力値を示したからだ。これに対し、実際にSpaceXが考案した修正策は、試験中止を回避するため、限界値を高く調整することだった。

同社が飛行と着陸に成功した後に起こった爆発の原因について、これから調査を行うことは間違いない。だが、開発のこの段階において、SpaceXにとって最も重要な事項が、すべて成功したことに変わりはない。Starshipの次なる課題は、テスト飛行の高度をさらに上げることだろう。もちろん最終的には軌道に到達することが目標だが、その前にSpaceXは大気圏内に留まりながらも、今回の試験飛行をはるかに上回る打ち上げを、何度か試すことになるだろう。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXのプロトタイプStarship飛行実験は今回も成功、しかし着陸でまた爆発

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SpaceXは南フロリダで建造中の宇宙ロケットであるStarshipの打ち上げテストを再び実施した。今回テストされたのはプロトタイプの9機目となるSN9だ。発射後、SN9は高度3万3000フィート(約10km)まで上昇した。高度に達した後、SN9は再突入角度に姿勢を変え(低高度で大気圏内だったため姿勢変更は本番とは異なるモードのシミュレーション)、逆噴射による制御された着陸のために降下を開始した。

これは、2020年12月にSN8で行われたテストに続く2回目のテストだった。今回のテストでSN9は目標高度に到達し、姿勢を逆転させる「ベリーフロップ」にも成功。酸化剤の投棄、推進剤の切り替えにも成功した。しかし残念ながら、着陸はスムーズにいかなかった。着陸のための垂直姿勢を取ろうとしたが失敗し、十分に減速できないまま降下してタッチダウンの際に爆発してしまった。

画像クレジット:SpaceX

SpaceX社の2020年に行われた最初のテストも非常に似た経過だった。最後の着陸部分を除いてはすべてほぼ順調に進んだ。同様に着陸に失敗したとはいえ、SN8のテストのほうが今回より姿勢制御が良好だったように見える。しかし飛行のデータやパラメータは多岐にわたるため、動画を見た印象であまり多くを語ることはできない。

Starshipは再利用を前提としているため、着陸操作に成功することが必須となっている。完全な再利用性を実現するためには、ロケット噴射によるパワードランディングが必要であり、当然だが、この際に爆発してはならない。しかし同社が指摘しているとおり、テストにおける他の部分は順調だったように見える。

この種の初期段階のテストは、計画どおりに進むとは期待されていない。重要なのは、実験を繰り返して開発の改善に役立つデータを収集することだ。もちろん開発チームは最初のテストから予定どおりに動作することを望んでいるが、実際にはそのようにうまくいくことは滅多にない。むしろ珍しいのは、このような初期段階の実験でSpaceXが動画中継を含めて多数のデータを公開している点だ。

SpaceXはすぐに3回目のテストに挑む予定だ。同社はすでにSN10プロトタイプをテキサス州の打ち上げ基地に運び込み、発射台への設置も終えている。上の動画でテストされたSN9の横に見えているもう1つのロケットがSN10だ。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXがStarship宇宙船初の高高度試験飛行を来週に設定

SpaceX(スペースX)は、Starship宇宙船開発プログラムにおける次の重要なフェーズに進む準備ができたようだ。そのフェーズとは15kmの試験飛行で、これまでStarshipのプロトタイプが達成した最大高度をはるかに超えるものとなる。現在までに記録されたホップテストの最高高度は約150mだったからだ。Elon Musk(イーロン・マスク)氏はSpaceXが最初の高高度試験を、来週のある日に行う予定だ(Twitter投稿)と話している。

この暫定的な日付(これらは常に変更になる可能性がある)は、現在のSN8世代のプロトタイプが静的点火試験(基本的に発射台に固定したまま試験用宇宙船のラプターエンジンの点火だけを行うテスト)に成功した後になる。それは実際の飛行への道を開く重要なステップであり、宇宙船が地上を離れる前に、稼働したエンジンの圧力に持ち堪え、耐えられることを証明するものだ。

SpaceXのSN8プロトタイプは、いくつかの点で以前のバージョンとは異なっている。最も明らかなのは、ノーズフィンとともにノーズコーンが実際に装備されているということだ。これまで短いテストホップを行ったSN6を含むプロトタイプは、ノーズコーンの代わりに質量シミュレーターとして知られるもの(つまりノーズコーンと同じ重量のおもり)が先端部分に取り付けられていた。

マスク氏は、SN8の高高度飛行が計画通りに進む可能性は高くないと付け加え、多くのことが正しく機能しなければならないことを考えると「可能性は3分の1くらいだろう」と見積もっている。そのためSpaceXはすでにSN9とSN10の準備をしており、それがStarshipのこれまでの開発プログラムのテーマであると言及した。つまり、テストと反復作業を迅速に行うために、連続した数世代のプロトタイプを並行して早急に製作しているというわけだ。

打ち上げがいつ行われるかについては、地元の規制当局に提出された警戒警報から、おそらく知ることができるだろう。SpaceXのStarshipプログラムが大きく飛躍することを期待しながら、来週は我々のお伝えする新たな情報に注目していただきたい。

関連記事:SpaceXがStarship宇宙船プロトタイプの短期試験飛行を成功、初の軌道上打ち上げへ向け前進

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タグ:SpaceX宇宙船StarshipElon Musk

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(翻訳:TechCrunch Japan)

イーロン・マスク氏が「Starship宇宙船開発プログラムのアップデートは3週間後に来る」と発表

SpaceXの創業者でCEOのイーロン・マスク氏によると、SpaceXは約3週間後にStarship(スターシップ)宇宙船で何が起こっているかについての最新情報を提供する予定だという。Starshipは完全に再利用可能な次世代宇宙船で、同社はFalcon 9やFalcon Heavyを含むすべてのロケットに取って代わることを目的に開発を進めている。地球の軌道上、さらには月、そして最終的には火星へのミッションを目指す。

Starshipは、SpaceXがテキサス州にある開発施設で一度に複数のプロトタイプを組み立てたため、ここ数週間で急速な進歩を遂げている。Starship SN6は、その前の同SN5と同様にホップテストを完了し、150m(500フィート弱)まで上昇した後、制御された着陸のために再び降下した。Starship SN8は現在、高高度飛行の準備を進めており、数週間後のアップデートでは「V1.0」のプロトタイプを発表する予定だとマスク氏は表明している。

SpaceXはStarshipに多くのことを依存している。Artemis(アルテミス)プログラムの一部として、将来的にNASAからの有人飛行のための月面着陸ミッションのための潜在的な契約を含む。スペースXは、ブルー・オリジンの業界をリードするチーム、ダイナティクスと並んで、これらの契約に入札するためにNASAから選ばれた3社のうちの1社である。

SpaceXは、Artemis(アルテミス)計画の一環として、将来NASAからの有人飛行のための月面着陸ミッションの契約を含む、多くのものをStarshipに乗せている。同社は、Blue Origin率いる業界横断チーム、そして応用科学および情報技術企業のDynetics(ダイネティクス)とともに、これらの契約に入札するためにNASaによって選ばれた3社のうちの1社だ。

一方でマスク氏は、SpaceXのStarlink(スターリンク)インターネットサービスは、テキサス州でStarshipの開発が進められているブラウンズビル地区では技術的には到達可能だが、米国のはるか南から接続品質が実際に良好になるのは約3カ月後だと述べた。

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画像クレジット:Darrell Etherington

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(翻訳:TechCrunch Japan)

SpaceXがStarship宇宙船プロトタイプの短期試験飛行を成功、初の軌道上打ち上げへ向け前進

SpaceXは、Starship宇宙船試作機の2回目の「ホップ」飛行を1カ月足らずで実施した。具体的には、米国テキサス州ボカチカの開発サイトから150m(500フィート弱)の試験飛行だ。今回使用されたプロトタイプはSN6で、SpaceXが8月の初めに同様のテストを完了するために使用したSN5よりも新しいモデルとなる。

ホップ飛行は、StarshipとそのRaptorエンジン(液体メタン/LOXの液体燃料ロケットエンジン)のテストプログラムの重要な部分となる。これらのプロトタイプには1つのエンジンしかないが、最終的な製品版には6つのエンジンが搭載され、そのうち3つは地球の大気圏内を飛行、残りの3つは宇宙空間で使用される予定だ。

SpaceXは、このうち2回の飛行を制御された直立着陸を連続して達成したことで、宇宙船の開発プログラムにとって非常に良い兆しを見せた。以前のバージョンでは、燃料を搭載した状態をシミュレーションする際に、負荷がかかると加圧に失敗することがあったからだ。

ノーズコーンや最終的な着陸脚などの要素は含まれていないものの、これらのショートホップはSpaceXがRaptorエンジンの性能や、実物大のプロトタイプ宇宙船の性能に関するデータを収集するのに役立つだろう。また、これらのデータはすべて、民間航空機と同じくらいの高さを飛行することを目的としたはるかに高い軌道下大気圏飛行や、最終的には初の軌道上Starshipの打ち上げなど、その後のテストにも反映される予定だ。現在のところ、早ければ来年に行われる確率が高い。

SpaceXはStarshipの開発計画を急速に進めており、テキサス州のブラウンズビル近郊のボカチカビーチのサイトで何世代ものプロトタイプを一度に作成しており、迅速なテストと設計の改善を目指している。目標は来年中にStarshipの最初の運用ミッションを飛行させることだが、ロケットの開発サイクルの中にあることを考えれば、これが実現したとしたら、信じられないほど素晴らしいことになるだろう。

画像クレジット:NASA Spaceflight

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(翻訳:TechCrunch Japan)