マスク氏、人類を他の惑星に送り出す大規模打ち上げシステム「Starship」の初軌道飛行は2022年1月が目標

SpaceXは、史上最大の超重量級打ち上げシステムStarshipの開発を、驚異的なペースで進めている。そして同社CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、2022年中に軌道に達するあろうことに「安心」している。

マスク氏は、全米アカデミー初のSpace Studies Board(宇宙研究委員会)およびBoard on Physics and Astronomy(物理・天文学委員会)の合同バーチャル会議で、いつも哲学的方向に脱線しがちなコメントの数々を披露した。シンプルに「SpaceX Starship Discussion(SpaceX Starshipに関する議論)」と題された講演とその後の質疑応答で、同社の次世代システムの技術、運用面の詳細についてアカデミー会員からの質問に答えた。

マスク氏は、テキサス州ボカチカにある同社の広大な施設、Starbase(スターベース)の発射台と発射タワーを2021年11月中に完成させ、最初の軌道投入を2022年1月に行うことを目指している。その後、2022年中に10回あるいはそれ以上の打ち上げが続くだろうとマスク氏は述べた。

ただしそれは、Starshipが1月に軌道に到達するという意味ではないことをマスク氏が慎重に補足した。「最初の打ち上げには多くのリスクがともないます。成功する可能性が高いというつもりはありませんが、大きな進歩を遂げるだろうと私は考えています」と彼はいう。

1月の打ち上げを阻むもう1つの障壁は、当局の認可だ。SpaceXのStarbaseにおける打ち上げ事業は、現在、連邦航空局(FAA)の環境評価を受けている。FAAは今週、12月31日までに審査を終える予定だと語っているため、すべてがマスク氏の計画どおりに進めば、1月打ち上げは最速実行可能日となる。

マスク氏は、Starshipの打ち上げを約2年以内にFalcon 9よりも安い価格で販売開始することも予測した。これは、NASAの有人月面着陸システム(HLS)に関するSpaceXの提案に書かれた日程よりさらに早い(HLSはNASAのアルテミス計画の一環として、アボロ計画以来初めて人間を月に送り込むプログラムで、SpaceXが単独指名を勝ち取った。Artemis 3と呼ばれるその打ち上げは、現在、2025年に予定されている)。

Starshipの歩みは速い

Starshipのスケールを大げさに語ることは難しい。宇宙船Starshipと打ち上げロケットSuper Heavy(スーパーヘビー)からなる同システムは、歴史上どの打ち上げシステムよりも大規模だ。完成時の高さは120メートルになる(NASAが開発中のSpace Launch Systemと宇宙船Orionはフル装備で98メートル)。Starshipは100トン以上の積載物を繰り返し軌道に送り込む能力があり、マスク氏がいう「太陽系のための汎用輸送機構」として機能する。

しかしマスク氏の目標Starshipを1台か2台、いや10台作ることでもない。講演の中で同氏は、真に複数惑星の生活を送るためには、人類は約1000基の打ち上げシステムを必要とするだろうと推計した。そしてSpaceXは、それを大量(あるいは限りなくそれに近く)生産するための工場を作っている。

同社はStarshipの開発を高速で進めている。去る2021年5月、SpaceXはStarshipの15番目のプロトタイプを打ち上げ、ロケットは高度約9.1kmに達した後、垂直着陸に成功した。それは打ち上げ機が無傷のうちに終えた初めてのテストだった。

「SpaceXの最重要目標は、宇宙テクノロジーを進化させ、人間が複数惑星種に、究極的には宇宙を旅する文明となり、SFで読んだものごとを実現しフィクションではないものにすることです」と、マスク氏は全米アカデミー会員に語った。

「これは意識の光を長期的に維持するために、非常に重要なことだと思っています」。

マスク氏のトークは以下で確認することができる。

画像クレジット:National Academies

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook