広告ターゲティング事業が脅かされつつあるフェイスブック、事業主向けに数々の新機能を発表

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月16日、事業主向けにいくつかの新製品および新機能を発表した。これは、Apple(アップル)が新たなプライバシー機能を導入し、モバイル機器ユーザーがiOSアプリ上での追跡をオプトアウトできるようになったことから、Facebookの広告ターゲティング事業が脅かされていることを受けてのものといえるだろう。この巨大ソーシャルネットワーキング企業は、アップルのプライバシー方針変更が、Facebook広告から顧客を獲得している中小企業に影響を与えると繰り返し主張してきたが、アップルの変更を一切止めることはできなかった。それどころか、市場はユーザーのプライバシーに重点を置いた新しい時代へと移行しており、パーソナライゼーションやターゲティングは、よりオプトインな体験、つまりユーザーに許可する意思の表示を求めるようになっている。そのため、Facebookは企業広告について新たな方法で対処する必要があったのだ。

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Facebookは、消費者を追跡する機能が低下した(追跡されることを自ら選択する消費者はほとんどいないという調査結果が出ている)ことから、企業が自社製品やサービスに関連があるユーザーに、より訴求できるようにする新機能をいくつか導入する。これには、顧客へのリーチ、顧客への広告、Facebookアプリによる顧客とのチャット、リード(見込み客)の生成、顧客の獲得などを可能にするアップデートが含まれる。

Facebookは2021年4月、ニュースフィードの投稿の下に表示される、美容、フィットネス、服飾など、興味のあるトピックをタップして、関連する他の企業のコンテンツを探索する方法のテストを開始した。この機能により、ユーザーは自分が好きそうな新しい企業に出会うことができ、Facebookは特定の種類のコンテンツを好むユーザーのデータセットを、独自に作成することができる。将来的には、この機能を広告ユニットにして、企業が料金を支払って上位表示させることも可能になるかもしれない。

しかし当面は、この機能を米国内のより多くのユーザーに拡大するとともに、Facebookはオーストラリア、カナダ、アイルランド、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、南アフリカ、英国で開始を予定している。

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Facebookは、企業がもっと容易に顧客とチャットできるようにしたいとも考えている。企業はすでに、Messenger(メッセンジャー)、Instagram Direct(インスタグラム・ダイレクト)、WhatsApp(ワッツアップ)といった、Facebookが所有するさまざまなチャットプラットフォームで、人々にメッセージを送るよう促す広告を購入することができるが、今後は利用可能なすべてのメッセージングプラットフォームを選択できるようになり、会話が発生する可能性が最も高い場所に基づいて、広告に表示されるチャットアプリがデフォルトで設定されるようになる。

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この取り組みの一環として、同社はWhatsAppをInstagramに結びつけることにした。多くの企業がInstagramで宣伝したり、ショップを運営したりしているのに、顧客とのコミュニケーションや質問への回答は、WhatsAppに依存していると、Facebookは説明している。そこで同社は、企業がInstagramのプロフィールに、WhatsAppのClick-to-Chat(クリック・トゥ・チャット)ボタンを追加できるようにした。

特にこの変更は、Facebookが別々のアプリをより密接に結びつけようとする動きを象徴するものだ。その背景には、規制当局が独占禁止の懸念から、Facebookの解体を検討しているという現在の状況がある。すでに同社は、MessengerとInstagramのメッセージングサービスを相互に接続しており、さらに最近では、MessengerをFacebookのプラットフォーム自体に直接統合し始めている。これらのことから、解体はさらに複雑なものになるだろう。

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また、それに関連した変更として、企業は近日中に、Instagramアプリからクリックするだけで、直接ユーザーをWhatsAppに送り、チャットを始めることができる広告を作成できるようにもなる(Facebookはすでにこのような広告を提供している)。

今回のニュースとは別に、FacebookはWhatsApp内に新しいビジネスディレクトリを設けることも発表した。これによって消費者は、同チャットプラットフォーム上でもショップやサービスを探せるようになる。

その他の変更は、Facebook Business Suite(フェイスブック・ビジネス・スイート)のアップデートとして導入される。これを利用する企業は「Inbox(受信箱)」でeメールを管理したり、リマーケティングメールを送信できるようになる他、新たに導入される「File Manager(ファイルマネージャー)」を使って簡単に投稿コンテンツを作成・管理することや、異なるバージョンの投稿をテストして、どの投稿が最も効果的かを比較することもできるようになる。

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それ以外にテストが行われる新製品としては、Instagramにおける有料の有機的なリードジェネレーション(見込み客生成)ツールや、Messengerで会話を始める前に顧客にいくつかの質問に答えてもらう見積もり依頼、そして小規模事業主がFacebook広告の利用を始めるために提供される特典などがある。これにはFacebook広告クーポン、会計ソフトウェア「QuickBooks(クイックブックス)」とグラフィックツール「Canva Pro(キャンバ プロ)」の3カ月間無料アクセスなどが含まれる。

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また、Facebookは「Work Accounts」と呼ばれるもののテストも開始する。これにより事業主は、個人のFacebookアカウントとは別に、この仕事用アカウントでBusiness Manager(ビジネス・マネージャー)などの企業用製品にアクセスできるようになる。企業は従業員に代わってこれらのアカウントを管理したり、シングルサインオンなどの企業向け機能を利用することも可能になる。

Work Accountsは、年内に少数の企業を対象としてテストを行い、2022年には利用可能な範囲を拡大していく予定であると、Facebookは述べている。

その他の広告に関する取り組みとしては、クリエイターや地元企業のコンテンツをより多く取り入れることや、ユーザーが閲覧するコンテンツをコントロールできる新機能などが計画されているというが、これらの変更点については現時点では詳細が明らかにされていない。

今回発表された新機能のほとんどは、すでに展開が始まっているか、近日中に導入される予定だ。

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

WhatsAppがクラウド上のチャットのバックアップの暗号化をついに提供

WhatsAppが金曜日(米国時間9/10)に、その20億人のユーザー全員に、チャットのバックアップをクラウド上で暗号化するオプションを提供する、と発表した。この重大な決断によって、このアプリの上で行われる個人間のプライベートなコミュニケーションを危険に晒す、陰険な方法の一つに蓋がされることになる。

Facebookがオーナーであるこのサービスはすでに10年あまり、ユーザー間のチャットをエンドツーエンドで暗号化している。しかしユーザーが自分のチャットのバックアップを、iPhone上ではiCloud、AndroidならGoogle Driveなど自分のクラウドに保存するためには、それらを暗号化しないオプションしかなかった。

WhatsAppの暗号化されていないチャットのバックアップを調べることは、ここ何年にもわたり、各国の法執行機関が、容疑者のWhatsAppのチャットにアクセスするための、広く知られている方法の一つだった。

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しかしついにWhatsAppは、システム中のこの弱いリンクをパッチすると発表した。

FacebookのCEO、Mark Zuckerberg氏が新しい機能を発表するポストでこう述べている: 「WhatsAppは、これだけの大きさでは初めての、エンドツーエンドで暗号化されたメッセージングとバックアップを提供するグローバルなメッセージングサービスであり、そこに到達することは、すべてのオペレーティングシステムにわたって暗号鍵の保存とクラウドストレージの完全に新しいフレームワークを必要とする、本当に困難な技術的チャレンジでした」。

自分の暗号鍵を保存する

同社によると、同社はAndroidとiOSのユーザーが自分のチャットのバックアップを暗号鍵でロックできるためのシステムを考案した。WhatsAppによると、同社はユーザーに自分のクラウドバックアップを暗号化する二つの方法を提供するが、この機能そのものはオプションだ。

「数週間後に」WhatsAppのユーザーは、クラウドにある自分のチャットバックアップをロックするための64桁の暗号鍵を生成するオプションを目にすることになる。ユーザーはその暗号鍵を、オフラインや好みのパスワードマネージャーに保存できるが、自分の暗号鍵をバックアップするパスワードを、WhatsAppが開発したクラウド上の「バックアップ鍵の保管庫」で作ってもよい。そうやってクラウドに保存した暗号鍵は、ユーザーのパスワードがなければ使えないし、後者はWhatsAppにも知られない。


画像クレジット: WhatsApp/提供

WhatsAppはこう言っている: 「64桁の暗号鍵を好まれる方と、簡単に覚えられるものを求める方がおられるので、両方のオプションをご提供する。ユーザーがご自分のバックアップパスワードを設定されても、それは私たちには知られません。もしお忘れになったら、最初のデバイスの上で違う設定ができます」。

「64桁の鍵については、エンドツーエンドの暗号化されたバックアップにサインアップされたとき、ユーザーがそれを失った場合に私たちがそれを復旧することはできないので、手元にメモしておくよう、複数回通知いたします。セットアップが完了する前にはユーザーに、ご自分のパスワードや64ビットの暗号鍵を保存されたことを確認いたします」。

WhatsAppの広報によると、暗号化されたバックアップが作られたら、バックアップの以前のコピーは削除される。「削除は自動的に行われるので、ユーザーは何もしなくてよい」そうだ。

規制介入の可能性は?

これはプライバシー保護のための相当思い切った措置なので、影響が広範囲に及ぶかもしれない。

エンドツーエンドの暗号化は政府が依然としてバックドアを要求しているだけに、厄介な問題であり続ける。AppleはFBIの苦情により、iCloud Backupsに暗号化を加えないよう圧力がかかっていると言われる。GoogleはGoogle Driveの保存するデータを暗号化する能力をユーザーに提供しているが、そのことを事前に政府に報告しなかった、と言われている。

今回のチャットバックアップの暗号化については、WhatsAppもその親会社のFacebookも、事前に政府機関に相談したり、政府からの支持をもらったりということは、その開発過程の間にいっさいなかった、と言っている。

同社はこの件に関して、本誌にこう伝えた: 「人びとのメッセージはきわめて個人的なものであり、生活のオンライン化が進むにつれて企業は、ユーザーに提供するセキュリティを強化すべきである。今回のこの機能では、私たちはユーザーにバックアップのセキュリティを強化する新たなセキュリティの層を任意のオプションとして提供し、ユーザーの個人的メッセージの安全性を強化できたことを喜びとしている」。

WhatsAppはまた、このアプリが使えるすべての市場でこのオプションを有効にする、と確言した。しかし、企業が法律や規制を理由にプライバシー機能を抑止することはよくある。たとえばアップルが近く提供する暗号化閲覧機能も、一部の権威主義的な体制では利用できない。それらは、中国、ベラルーシ、エジプト、カザフスタン、サウジアラビア、トルクメニスタン、ウガンダ、フィリピンなどの国々だ。

いずれにしても、金曜日の発表の数日前にはProPublicaが、二人のユーザー間のエンドツーエンドで暗号化された会話は、ユーザーがそのメッセージを報告したときには第三者が読める、と報じた

WhatsAppのプライバシーを担当しているプロダクトリード、Uzma Barlaskar氏は本誌にこう語った: 「バックアップを完全に暗号化するのはきわめて困難で、とくにそれをユーザーにとって十分に信頼性がありシンプルにするのは特段に困難だ。これだけ巨大なメッセージサービスが、人びとのメッセージに対してこのようなレベルのセキュリティを提供したことは過去に例がない」。

「この問題には何年も取り組んできた。これを作るためには、世界最大のオペレーティングシステムで使用できる、暗号鍵の保存とクラウドストレージのための全く新しいフレームワークを開発しなければならなかったから、時間もかかった」。

文:Manish Singh, Zack Whittaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Kirill Kudryavtsev/AFP/Getty Images

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Facebookが音声やビデオ通話機能をFacebookアプリ本体に再統合か、公式には「アプリ切り替え回数を減らすため」

Facebook、音声やビデオ通話機能をメインアプリに再統合か。公式には「アプリ切り替え回数を減らすため」

Facebook

2014年にFacebookアプリからは音声およびビデオ通話を含むメッセージ機能が削られ、すべてメッセージアプリMessengerへと移されています。それらの機能を、再びFacebookアプリ本体に統合するテストが行われていることが報じられました。

米Bloombergによると、米国を含む一部の国ではFacebookアプリから直接、音声通話やビデオ通話が可能になっているとのことです。Messengerの製品管理担当ディレクターであるコナー・ヘイズ氏は、この機能はテスト中にすぎず、FacebookユーザーがMessengerアプリに切り替える回数を減らすことを目的としていると明かしています。

またMessengerに切り替えなくてもできることを広げるため、FacebookアプリにMessengerの受信箱の限定版を追加するテストも行っているそうです。

Facebookアプリ本体にメッセージ機能が出戻ってくる可能性は、すでに2年前から手がかりが見つかっていました。当時はFacebookアプリ内でメッセージ送信しようとすると、Messengerアプリを起動するかわりに、新たな「Chats」セクションに移動する仕様でした。

上記のヘイズ氏は、FacebookがMessengerを単独のアプリではなく、サービスとして考え始めているとの趣旨を述べています。さらに「時間の経過とともに、こうしたことがかなり多く見られるようになるでしょう」とのことです。

Facebookは昨年、InstagramとMessengerのメッセージング機能を統合しましたが、いずれWhatsAppもこれらに加える予定です。

なぜFacebookは、複数アプリのメッセージ機能を統合しようとしているのか。一説には、メッセージングプラットフォームでもSNSと同様の支配を望み、長期的にはテキストメッセージやチャット以外にも使えるプラットフォームに育て上げる思惑との推測もありました

また米MacRumorsは、各アプリを深く結びつけておけば、もっかFacebookが直面している反トラスト(独占禁止法訴訟)で敗れた場合に、分割(事業分割や売却)されにくくなる可能性があるため、と示唆しています。

Facebookはメッセージ機能の統合につき、アプリの説明では「単一のアプリをインストールしていれば、他のアプリをダウンロードしなくてもいい」とユーザーの使いやすさを強調しています。が、それ以上に野心的な戦略や、最悪の事態に備えた保険の意味合いが大きいのかもしれません。

(Source:Bloomberg。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

WhatsAppが写真とビデオを「1回だけ見られる」機能を提供開始

6月にWhatsApp(ワッツアップ)は、消滅する写真と動画を送れるようにすると発表した。そして今週、その機能が全ユーザーに公開される。Facebook傘下のメッセージングアプリのユーザーは、写真またはビデオを「view once」(1回閲覧)モードでシェアできるようになる。1回見るとそのメディアは「フッと」消え去る。view onceモードでシェアされたメディアは、しかるべき視聴者が覗いた後は「開封済み」として表示される。

会社は新機能について、試着した服の写真やWi-Fiのパスワードを送るなどさまざまなニーズに応えるもので、決してヌードを送るためではないと述べている。注意書きでは、写真やビデオが消滅するからといって誰かがスクリーンショットを撮れないわけではない(撮ったかどうかもわからない)と念押ししている。

Facebookによると、この新機能はユーザーに「プライバシーの制御を高める」力を与えるという、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が2019年に唱えて以来続いている「プライバシー中心のビジョン」の一環だ。それ以来Facebookは、人々にオンラインプライバシーの制御を渡す姿勢をいくつか見せており、メインアプリの公開範囲制御を整備した他、WhatsAppで消えるメッセージをサポートした。

Facebookは、将来の相互接続を計画している傘下の全メッセージングサービスにエンド・ツー・エンド暗号化を導入するという大事業も予定している。WhatsAppは 2016年に暗号化を完了しているが、Messenger(メッセンジャー)とInstagram(インスタグラム)でこの重要なプライバシー機能を提供するのは数年先と言われている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:WhatsAppFacebookSNS

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

WhatsAppがスマホなしで動作するマルチデバイス機能をテスト

Facebook(フェイスブック)傘下のインスタントメッセージサービスであるWhatsAppが、ついに重要な機能の改善を公開する。長年にわたってユーザーからの要望のトップだったと同社が認める機能だ。

米国時間7月14日、WhatsAppは新しいマルチデバイス機能に関して限定的なパブリックベータテストを公開すると発表した。

このアップデートにより初めて、登録済みのスマートフォンの電源が切れていてもインターネットに接続していなくても、WhatsAppを最大4台のデバイスで利用できる。WhatsAppの広報担当者はTechCrunchに対し、この複数のデバイスの中に別のスマートフォンを含めることはできないと述べた。

WhatsAppはブログの投稿で「各コンパニオンデバイスはWhatsAppに独立して接続します」と説明している。

全世界で20億人以上に使われているWhatsAppは、すでに複数デバイスでの使用をサポートしている。1人のユーザーが、例えばウェブブラウザやコンピュータのデスクトップアプリから同時にサービスにアクセスできる。しかし現在は複数デバイスで使う際にスマートフォンがインターネットに接続している必要がある。

WhatsAppは次のように説明している。

スマートフォンがすべての処理をする必要があるため、コンパニオンデバイスの速度が落ち、特にスマートフォンの接続が不安定な場合やバッテリー残量が少ない場合、アプリのプロセスがスマートフォンのOSによって強制終了された場合に頻繁に接続が切れます。また、一度に1台のコンパニオンデバイスしか動作しません。例えばPCでメッセージをチェックしながらPortal(Facebookのビデオ通話デバイス)で通話をすることはできません。

WhatsAppの新しいマルチデバイスアーキテクチャではこうした制限が取り除かれます。スマートフォンを信頼できる情報源にする必要がなくなると同時に、ユーザーのデータをシームレスかつセキュアに同期しプライバシーを守ります。

米国時間7月14日に公開されたホワイトペーパー(PDF)で、WhatsAppはこの機能の仕組みを概説し、公開までにこれほど時間がかかった理由を示している。

同社は複数のデバイスを使ってもエンド・ツー・エンドの暗号化を維持してメッセージが同期される新しいテクノロジーを開発してきたとし、これは市場では今のところほとんど実現されていない離れ業だという。

画像:WhatsApp

同社は次のように説明している。「これを実現するために、我々はWhatsAppのアーキテクチャを再考し新しいシステムを設計して、スタンドアローンのマルチデバイスエクスペリエンスでありながらプライバシーとエンド・ツー・エンドの暗号化を守っています。個々のメッセージが確立されたペアワイズ暗号化セッションを利用して各デバイスで別々に暗号化されます。メッセージが配信された後はサーバーに保管されません」。

広報担当者によれば、この機能によってユーザーのためのクラウドバックアップに変更はないという。担当者はさらに「メッセージや他のアプリのデータをユーザーのデバイス間で同期するメカニズムは、クラウドバックアップからは独立しています」と補足し、ホワイトペーパーにプロトコルが詳しく説明されていると述べた。

この機能を全ユーザーに公開する時期について具体的な日程は計画されていない。同社はTechCrunchに対し、この機能をまず既存のベータユーザーに公開すると述べた。今後数カ月でアプリの安定版を利用する一部のユーザーに対し、許可を得てベータ機能を公開する計画だ。

@WhatsAppに期待されるセキュリティをすべて実現しています。我々はデータを同期しつつエンド・ツー・エンドの暗号化を維持する新しいテクノロジーを開発しました。メッセージの履歴、連絡先の名前、スターを付けたメッセージなどをデバイス間でシームレスに同期できます。詳しくはこちら。

近いうちに「リンクされたデバイス」画面にベータに参加するオプションが表示されます!

これはWhatsAppが現在開発している多くの機能の1つだ。同社はiPad専用アプリや2020年に導入した消滅モード機能にも取り組んでいる。現在はメッセージが7日間で消えるように設定できるが、この機能を拡張して写真やビデオを1回だけ表示できるようにする計画だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookWhatsAppメッセージングアプリ

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(文:Manish Singh、翻訳:Kaori Koyama)

物議を醸すWhatsAppのポリシー変更、今度はEUの消費者法違反の疑いで

Facebookは、WhatsAppのユーザーにポリシーのアップデートを5月15日まで受け入れなければアプリが使えなくなるなど、議論の多い利用規約変更を認めるよう強制していることで、EUの消費者保護法の複数の違反で告訴されている。

EUの消費者保護総括部局であるBureau Européen des Unions de Consommateurs(BEUC、欧州消費者機構)は現地時間7月12日、その8つの会員組織とともに、欧州委員会(EC)と、ヨーロッパの消費者保護機関のネットワークに訴追状を提出したと発表した

同機関のプレスリリースでは「この訴追状は、WhatsAppのポリシーのアップデートを受け入れるようユーザーに迫る、度重なる、執拗で強圧的な通知に対する初めての対応である」と述べられている。

「通知の内容と性質、タイミング、頻度はユーザーをいわれなき圧力の下に置き、彼らの選択の自由を毀損している。したがってそれらは、EUの不公正な商習慣に関する指示に違反している」。

最初に表示されるWhatsAppの新しいポリシーを受け入れる必要性に関する通知は、何度も繰り返されるため、サービスの利用を妨害することになると告げたが、後に同社はその厳しい締め切りを撤回した

それでも同アプリは、アップデートの受け入れを迫ってユーザーを困らせ続けた。受け入れない、というオプションはなく、ユーザーはそのプロンプトを閉じることはできるが、再度、再々度のポップアップを停止することはできない。

BEUCの訴追状は、次のように続いている。「さらに本訴追状は新しい利用規約の不透明性と、WhatsAppが、変更の性質を平易にわかりやすく説明できていないことを強調している。WhatsAppの変更が自分のプライバシーに何をもたらすのかを、消費者が明確に理解することが不可能であり、特に自分の個人データがFacebookやその他の企業の手に渡ることに関し記述が不明確である。このような曖昧さがEUの消費者法への違反を招いているのであり、企業は本来この法に従って、明確で透明な契約条項と商業的コミュニケーションを提示しなければならない」。

同機関が指摘しているのは、WhatsAppのポリシーのアップデートが依然としてヨーロッパのプライバシー規制当局から精査されていることだ。それ(まだ捜査中であること)が、同機関の主張によると、ポリシーをユーザーに押し付けるFacebookの強引なやり方が極めて不適切である理由の1つだ。

この消費者法に基づく訴追状は、BEUCが関与しているもう1つのプライバシー問題、EUのデータ保護当局(DPAs)が捜査しているものとは別だが、彼らに対しても捜査を早めるよう促している。「私たちはヨーロッパの消費者当局のネットワークとデータ保護当局のネットワークの両者に対して、これらの問題に関する密接な協力を促したい」。

BEUCは、WhatsAppのサービス規約に対する懸念を詳述した報告書を作成し、そこでは特に、新しいポリシーの「不透明性」を強く攻撃している。

WhatsAppは未だに、削除した部分と追加した部分に関して極めて曖昧である。結局のところ、何が新しくて何が修正されたのかをユーザーが明確に理解することは、ほとんど不可能である。新しいポリシーのこのような不透明性は、EUの不公正な契約規約に関する指示(Unfair Contract Terms Directive、UCTD)の5条に違反し、またEUの不公正な商習慣に関する指示(Unfair Commercial Practices Directive、UCPD)の5条と6条に照らして、それは誤解を招き不公正な慣行である。

WhatsAppの広報担当者はこのような消費者訴追状に対するコメントとして、次のように述べた。

BEUCの行為は、弊社のサービス規約のアップデートの目的と効果に対する誤解に基づいています。弊社の最近のアップデートは、WhatsApp上の企業に多くの人がメッセージングする際のオプションを説明しており、弊社のデータの集め方と使い方に関するさらなる透明性を提供するものです。このアップデートは、弊社のデータをFacebookと共有する能力を拡張するものではなく、世界のどこにいても、ユーザーが友だちや家族とやり取りするメッセージのプライバシーには何ら影響が及ぶものではありません。このアップデートをBEUCに説明し、多く人にとっての意味を明らかにする機会を歓迎したい。

BEUCの訴追状に対するコメントを欧州委員会(EC)に対しても求めたので、得られ次第この記事をアップデートしよう。

【更新】ECの職員は、次のように述べている。

本日、EUの消費者権への複数の侵犯によりWhatsAppに対して訴追状を提出したヨーロッパ消費者機関(BEUC)からの、警報を受け取りました。

欧州委員会はBEUCと各国の消費者機関から数週間後に提出されるすべての要素を細心に検討し、この件に関するさらなる捜査の必要性と、その結果としての共同消費者保護(Consumer Protection Cooperation、CPC)の規制が予見しているような協調行為の可能性を評価します。

協調行為はCPCのネットワークが定期的に行なうもので、その目的はこの単一市場において消費者の権利を一貫して強制していくことです。

私たちは、すべての企業が、EUではEUのデータ保護のルールに適合するサービスを提供することを期待しています。

GDPRの下では、ルールの監督と強制は各国のデータ保護当局が担当します。そして必要な協力はEuropean Data Protection Boardから提供されます。

欧州委員会は、この問題を密接に追尾していきます。

このWhatsAppポリシーアップデート問題は、以前からEUとヨーロッパ各国が着目しているため、今回の苦情提出は最新の反感表明にすぎない。例えば1月にはイタリアでプライバシーに関する警告が出され、その後の5月にドイツで緊急措置が取られた。それはハンブルグのデータ保護当局が、WhatsAppのユーザーデータの処理を禁じたことがきっかけだ。

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2021年初めには、EUでFacebookのデータ規制を指揮しているアイルランドのデータ保護委員会が、サービス規約の変更は当地域のユーザーに影響を及ぼさないとするFacebookの確約を了承したような雰囲気があった。

しかし、ドイツのデータ保護当局は不満だった。そしてハンブルグはGDPRの緊急時対応を持ち出し、それはアイルランドという一地域の問題ではなく、国をまたぐ訴えであり懸念であると主張した。

そういう緊急措置は期限が3カ月だ。そこでEuropean Data Protection Board(EDPB)は本日、緊急措置に関するハンブルグのデータ保護当局のリクエストを総会で議論すると確認した。総会での決定によっては、ハンブルグのデータ保護当局の介入が、今後も長続きすることになる。

一方では、ヨーロッパの規制当局が力を合わせてプラットフォームの強大な力に対抗しよう、という気運も芽生えている。たとえば各国の競争促進当局とプライバシー規制当局は共同で仕事をしていこうとしている。つまり国によって法律が異なっていても、独禁やデータ保護の専門知識や能力は個々のサイロに封じ込められるべきではない、という考え方だ。個々にサイロ状態であれば、リスクが行政の執行を邪魔し、インターネットのユーザーにとって衝突し相矛盾する結果を生むだろう。

強力なプラットフォームを鎖につなぐだけでなく、そのパワーを規制するために力を合わせるという考え方は、大西洋の両岸で理解されつつある。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookWhatsAppEUヨーロッパBEUCプライバシー個人情報

画像クレジット:Brent Lewin/Bloomberg/Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

WhatsAppで「最高品質」を指定して写真や動画を送信可能に

WhatsAppは現在準備中の機能により、ユーザーは画像圧縮のわかりにくい設定なしで、写真や動画を最高の画質で送ることができる。「最高品質」オプションはアプリの今後のバージョンで「オート」と「データ保存」のメニューに加わるようだ。

今後ユーザーが選択できるのは、写真や動画を圧縮してデータ量を節約するか、それらを最高の画質で送るか、またはWhatsAppが自動的に最適の圧縮率を選ぶかの3択になる模様。

その設定はWhatsAppがGoogle Play Beta Programに提出したアップデートに存在する、と発見したWABetaInfoは述べている。オプションはAndroidアプリの一般公開用ビルドに登場すると思われるが、目下開発中なので時期はわからない。画質に関する新たなオプションはiOSアプリにも登場しそうだ。これまでもWhatsAppは機能を、両プラットフォームで揃えていた。

iOSやAndroidで標準のメッセージングアプリを使わず、写真や動画を愛する人に頻繁にシェアするタイプの人にとって、このニュースはうれしいものだろう(Apple Messagesは元の画質を維持する場合が多い)。そして、WhatsAppのマルチデバイスサポート(1つのアカウントで4台まで)も現在、開発中のようだ。

【編集部注記】この記事は最初、Engadgetに掲載された。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:WhatsApp動画

画像クレジット:Thomas Trutschel/Getty Images

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(文:Kris Holt(Engadget)、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フェイスブックがネットショッピングに関連する4つの新機能を発表

Facebook(フェイスブック)は、高校時代の同級生が飼っていた犬の写真を見て商品を購入するようなことが、さらに簡単にできるように、ショッピング関連の新機能をいくつか導入する。もちろん、Instagram Shops(インスタグラム ショップ)や「Facebook Marketplace(フェイスブック マーケットプレイス)」は、すでにアプリの下部ナビゲーションタブに大きく表示されている。しかし今回、その他のアップデートとともに、WhatsApp(ワッツアップ)でもショッピングができるようになった。

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Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOは米国時間6月22日、Facebookの音声チャット「Live Audio Room(ライブオーディオルーム)」で、同社のプラットフォームに新たに導入されるeコマース機能を発表した。「Shops on WhatsApp(ショップ・オン・ワッツアップ)」「Shops on Marketplace(ショップ・オン・マーケットプレイス)」「Shops Ads(ショップ・アド)」そして「Instagram Visual Search(インスタグラム・ビジュアル・サーチ)」の4つだ。

ザッカーバーグ氏はFacebookの投稿で「毎月10億人以上の人がMarketplaceを利用しています。そこで私たちは、企業が自分たちのShops(Facebookショップ)をもっと多くの人に利用してもらえるように、Marketplaceに導入できるようにします」と書いている。また、企業はWhatsAppでもFacebookショップを表示させることが可能になり、ユーザーは商品を購入する前にその企業とチャットできるようになる。

画像クレジット:WhatsApp

2021年6月初めに開催された「F8 Refresh(F8リフレッシュ)」の基調講演で、FacebookはWhatsApp Business(ワッツアップ・ビジネス)のアップデートを発表した。それまで、ビジネスアカウントの開設には数週間を要していたが、今ではわずか数分で登録できるようになった。WhatsAppには全世界で20億人以上のユーザーがいるが、カスタマーサポートなどのためにWhatsApp Businessアカウントで毎日メッセージを送っている人は約1億7500万人ほどしかいない。FacebookはInstagramなどのプラットフォームでeコマース向け機能の強化を推進しているため、この取り組みをWhatsAppにも拡大しようとするのは理に適っている。

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Shops on WhatsAppは間もなく導入が開始される予定で、Shops on Marketplaceはすでに米国ではオンサイトチェックアウトが可能になっている。

3つ目の機能であるShops Adsは、人々のそれぞれの買い物の傾向に基づき、より個人に合わせたショッピング体験を提供することを目的としている。「人々の買い物の行動に基づいて、企業が買い物客を最も購入する可能性の高い場所に送り込むことができる機能の提供を開始します」と、ザッカーバーグ氏は述べている。米国ではAR Dynamic Ads(ARダイナミック広告)の導入が始まっており、Huda Beauty(フーダ ビューティー)やLaura Mercier(ローラ メルシエ)などの企業は、この広告を利用して、顧客が購入する前にARで口紅の色合いを試せるようにしている。このようなAR試着体験は、Modiface(モディフェイス)やPerfect Corp(パーフェクト、玩美移動)とのAPI統合によって提供されるものだ。2021年初めには、Pinterest(ピンタレスト)がModiFaceと協力して、アイシャドウのAR試着を始めている。

画像クレジット:Facebook

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そして4つ目として、Instagramでは今後数カ月以内に、AIを活用したVisual Search機能のテスト導入を開始する。

「ショッピングディスカバリーは、多くの場合、ビジュアルディスカバリーから始まりますよね。良いなと思うものを見かけたら、同じような商品を他にも見たいと思ったり、その商品を手に入れる方法を知りたいと思ったりするでしょう」と、ザッカーバーグ氏は説明する。「そんな問題の解決を、AIが助けてくれるのです」。

このAIを使えば、人々は自分で写真をアップロードして(Instagramに投稿していない写真でもOK)、似たようなアイテムを見つけることができるようになる。この技術を採用したのはFacebookが初めてというわけではない。例えば、CadeeraDonde SearchStye.aiなどではすでに活用されている。しかし、Instagramのようなメジャーなプラットフォームにこの技術が導入されたら、我々の買い物の仕方が変わるかもしれない。それこそが、Facebookの現在の目標であるようだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookショッピングeコマースSNSWhatsAppInstagramAR人工知能ソーシャルコマース

画像クレジット:Instagram

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

WhatsAppがマルチデバイス対応し「一度だけ表示」して消失する機能を導入

Facebook(フェイスブック)の最高経営責任者であるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、人気のメッセージングアプリWhatsAppが、近々複数のデバイスで同時に使用できるようになると発表した。またザッカーバーグ氏は、20億人以上のユーザーに利用されているこのインスタントメッセージングアプリに、メッセージを消去するオプションを追加することも計画していると述べた。

ザッカーバーグ氏は、WABetaInfoの取材に対し、インスタントメッセージングサービスのマルチデバイス対応が「間もなく」実現することを認めたのだ。WhatsAppの責任者であるWill Cathcart(ウィル・キャスカート)氏によると、ユーザーは1つのアカウントに4台までのデバイスを接続できるようになるとのことだ。またWhatsAppは、iPad向けWhatsAppアプリの開発にも取り組んでいると彼はいう。

「携帯電話のバッテリーが切れても、すべてのメッセージやコンテンツをデバイス間で正しく同期させることは、技術的に大きな挑戦でしたが、これを解決することができましたので、ほどなくお届けできることを楽しみにしています!」とザッカーバーグ氏はいう。

また2020年、メッセージに7日間のタイマー(消えるモード)を設定する機能を導入したWhatsAppは、この機能を拡張して、一度しか見ることのできない写真やビデオをユーザーが送ることができるようにする予定だ。「また、送信したコンテンツを相手が見た後に消滅させることができる『view once(ビューワンス)』の展開も開始しようとしています」とザッカーバーグ氏は述べている。

また、WhatsAppユーザーは、すべての新規チャットに対して消滅モードオプションを指定できるようにもなる。

ザッカーバーグ氏とキャスカート氏が、上記のニュースサイトで話している内容によれば、これらの機能は「来月か再来月に」パブリックベータ版としてユーザーに提供されるといいうことだ。

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(文:Manish Singh、翻訳:sako)

フェイスブックがWhatsApp APIをアップデート、ビジネス利用を促進

WhatsApp(ワッツアップ)には全世界で20億人以上のユーザーがいるが、ビジネス利用を開拓する努力は比較的控えめだ。現在1億7500万人を少し超えるユーザーが、WhatsAppのビジネスアカウントを使ってメッセージをやりとりして、日々のカスタマーサポートや製品検討を行っている。米国時間6月2日、Facebook(フェイスブック)は同社のF8イベントで、WhatsApp APIの体験を拡張するアップデートをいくつか公開した。

このニュースは、Facebookがこの日にInstagram(インスタグラム)Messenger APIの一般公開を発表した直後のことで、同プラットフォームのビジネス利用を便利にする一連の発表の一環だ。

全般的に、Facebookと同社サービスの多くは消費者向けサービスの色が非常に濃い。数十億の人たちが連絡を取りあい、気分転換し、自分にとって重要なことを知るために使っている。

しかし、企業はFacebookでつながりを作ったユーザーを中心とした非常に大きくてお金になる商用インフラストラクチャーを徐々に構築している。広告に始まり、マーケティング、カスタマーサービス、職場の生産性向上、ショッピングなどへと深く広げている。

F8カンファレンスは、元々はハッカソンとして生まれ、非常に大きいイベントへと成長した。2021年は、過去数年と比べて著しく縮小されたイベントになった。大観衆はなく(完全バーチャル)、大きいサービスやハードウェアの発表もなく、どちらかというとZoom(ズーム)会議のような印象だ。ビジネス志向のデベロッパーツールに関するこの日の発表は、イベントを当初のデベロッパー重点のイベントへとリセットするだけでなく、商業戦略を強化するものだ。

WhatsApp for Businessに関しては、WhatsApp for Businessを設定するところから、さまざまな種類のメッセージに対応することまで長年の課題がある。今回Facebookが取り組んでいるのはそこだ。

まず、WhatsAppでビジネスアカウントを設定するのに要する時間を5分に短縮する(これまでは数週間だったと述べている)。

次に、Facebookは設定したビジネスアカウントを簡単に使えるようにする。まず、企業はインバウンドメッセージに早く対応できるようになり(これまでは「24時間より前の顧客はフォローアップが困難」だった)、たとえば在庫確認などに関してオプトインしているユーザーにメッセージを送ることができる。

カスタマーサービスのためにこのツールを使っている企業は、最大10種類のメッセージ・テンプレートを作って対応をスピードアップできるようになり、よくある質問への返信を準備しておいて送るための返信ボタンを設定することもできる。

WhatsAppのニュース以外に、FacebookはMessengerにも、Facebook Login Connectを拡張するツールを追加する。

要するに、企業がFacebook Loginを統合すると、ユーザーは自分のFacebook認証情報を使ってその企業のアプリやウェブサイトにログインし、Messengerを通して企業と会話することができる。

これが便利なのは、ユーザーが1カ所で会話を追跡できるだけでなく、チャットボットであれ他のCRMデータベースへのリンクであれ、企業が元々Messengerで会話するために作ったツールをアクセスできることだ。Facebookによると、ユーザーの70%がLogin Connectツールの利用にオプトインするそうで、Facebookの認証情報をこのように使う意志があることを表している。

現在は限定ベータだが、数カ月のうちにもっと広く公開する、とFacebookは言っている。

最後に、FacebookはBusiness Suite(ビジネス・スイート、企業がFacebook、InstagramおよびMessengerを横断して行動を管理するためのプラットフォーム)の新機能を公開し、デベロッパーが「Business Apps」(ビジネス・アプリ)を作れるようにした。

これはアプリストアのような意味のアプリではなく、サードパーティー(デベロッパー)がFacebookの内蔵Business Suiteと協調して動かすために作るツールのことで、企業のサイトやアプリにFacebookのツールをさらに統合するとともに、企業のコンテンツ(カタログ項目など)を自社のFacebookページやInstagramアカウントなどに持ってくる。このプラットフォームではすでに90社のデベロッパーが開発中で、Bigcommerce(ビッグコマース)のようなeコマースプラットフォームと統合している、とFacebookは述べた。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フェイスブックやグーグルはインドの新IT規則を遵守、法令順守担当者を任命

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Telegram(テレグラム)、LinkedIn(リンクドイン)、そしてTiger Globalが出資しているインドのスタートアップShareChat(シェアチャット)やKoo(クー)はいずれも同国の新しいIT規則を全面的あるいは部分的に受け入れ、順守している。この件に詳しい情報筋、そしてTechCrunchが入手した政府のメモで明らかになった。

2021年2月に発表されたインドの新しいIT規則では、懸念を解決すべく企業に法令順守、判断基準、苦情処理を担当する代表者を任命して連絡先を共有することを求めている。

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上記の企業はこの要件を満たしたと政府のメモにはあり、情報筋もそのように述べた。企業は今週までに新ルールを順守するよう求められていた。

Twitter(ツイッター)はまだこのルールに従っていない。「Twitterは担当者ならびに苦情処理責任者としてインドの法律事務所で働いている弁護士の詳細を昨夜遅くに連絡してきた」とインド政府のメモにはあり、ルールではそうした担当者は直接雇用している従業員でなければならない、とも書かれている。

Twitterとインド政府の間ではこのところ緊張が高まっている。今週、デリの警察はインドの政治家のツイートを誤解を与えるものと分類したことについて調べることを「正式に通知する」ためにTwitterのオフィスを訪れた。Twitterは従業員に関する懸念を指摘してこの動きを脅迫の形態と呼び、市民の言論の自由を尊重するよう政府に求めた。

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WhatsApp(ワッツアップ)は新規則に則っているが、トレーサビリティについての要件は満たしていないと情報筋はTechCrunchに語った。WhatsAppは今週初め、メッセージの発信者を追跡する方法の確保を求めている要件について、インド政府を相手取って訴訟を起こしている。このルールを満たすようにするにはあらゆるユーザーのプライバシーを危険にさらすことになるとWhatsAppは指摘した。

iMessageを展開しているApple(アップル)、そしてSignal(シグナル)がこのルールに従っているか、現時点では不明だ。

TechCrunchが真っ先に報じたように、インドの電子情報技術省は現地時間5月26日、ソーシャルメディア企業にコンプライアンス状況をアップデートするよう求めた

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FacebookやGoogleを含む一部のテック大企業にとってインドは鍵を握る海外マーケットだ。前述の2社はユーザー数においてインドを最大のマーケットだと認識している。隣国パキスタンは2020年、インドと同様のルールを提案したが、テック大手が結束してパキスタンから撤退すると脅したのち、パキスタンはルールを撤回することとなった。

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

インド政府が大手ソーシャルメディアに新ルール遵守状況の報告を要求

インド政府はソーシャルメディア企業に対し、新しいITルールに従っているかどうかを「早急に」「できれば今日中に」報告するよう求めている。しかし、現在この新たな規則に対してWhatsApp(ワッツアップ)が異議を唱えている

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現地時間5月26日に「主要ソーシャルメディア仲介者」(インド政府が、インド国内に500万人以上の登録ユーザーをもつソーシャルメディアをこう定義している)宛に発信されたレターで電子情報技術省は、新ITルールの対象となるアプリ、ウェブサイト、あるいはサービスの名称および遵守状況を報告するよう企業に求めた。

TechCrunchが入手したレターによると、政府はさらに、規則に沿って各社が任命したインド国内の最高コンプライアンス責任者、ユーザー対応責任者、および常駐苦情処理責任者の氏名と現地オフィスの所在地も要求している。2021年2月に公表された新ルールは、問題に迅速に対応するためにインド国内に何人かの責任者を配置することを企業に義務付けている。

レターは、インド政府がソーシャルメディア企業に対して、5月26日の新ルール遵守期限の延長を認めるつもりがないことも示唆している。「SSMI(主要ソーシャルメディア提供者)に要求されている報告義務は、SSMIに与えられた3カ月の追加期間が終了する本日をもって発効する」と書かれている。インド政府はこの新ルールを公開した直後に、3カ月以内に遵守するよう対象企業に通知している。

「自社がSSMIに該当しないと考えられる場合は、その理由を貴社が提供する各サービスの登録ユーザー数とともに提出されたい」。「政府は、この規則およびIT法で許されている範囲で、追加情報を要求する権利を有している」とレターは続く。

5月26日、WhatsAppはインド政府を訴え、当局が人々のプライベートなメッセージを「追跡可能」にし大規模監視を実施することを許すこの世界第2のインターネット市場の新ルールに異議を申し立てた。

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Twitterがインド当局のさらなる警告を受け500以上のアカウントを停止

この3カ月間、米国テクノロジー巨人とインド政府との間で緊張が高まっている。2021年2月、Twitter(ツイッター)はインド政府とナレンドラ・モディ首相を批判したアカウントのブロックを拒否した。

2021年4月、インド政府はFacebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)、およびTwitterに対し、モディ首相の新型コロナウイルスパンデミック対応を批判する投稿を削除するよう命令した。先週には、Twitterによる同国政治家のツイートに対する「操作メディア」判定に異議を唱えた。そして今週、インド警察は複数のTwitterインド支社を訪れ、政治家のツイートを誤解を招くと分類した根拠について情報を求めた。

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「Facebook、Twitter、Instagram、WhatsApp、およびGoogleのような大型テック企業は、しばしばひどいポリシーを作り数百万のインド国民に害を与える決断を下しています。我々インターネット自由財団(IFF)全員は、他の公共機関とともに、問題解決を助けるユーザーの権利を重視した規則を一貫して支持します、とニューデリー拠点のデジタル権利団体であるIFFが声明で語った

「この仲介者規則は、こうした未解決の問題を解決するものではなく、手続き的、実質的に重要な法的欠陥に悩まされ、最終的に私たちの権利やインターネットをこれほどすばらしく胸踊らせるものにしているイノベーションに害を及ぼすことになると私たちは確信しています。今こそ私たちは、先人の歩んだ道とインド憲法の価値をこれまで以上に追求しなければなりません」。

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インド政府がWhatsAppの新規制撤回を求める訴訟は「反抗行為」「無謀」と批判

インド政府は現地時間5月26日、WhatsApp(ワッツアップ)が同国の新しいIT規則に異議を唱えた訴訟は、新規制の発効を阻止しようとする「不穏当な土壇場の」試みであるとともに「明らかな反抗行為」だとし、Facebook(フェイスブック)傘下の同サービスは2018年10月以降、トレーサビリティーの要求について書面での具体的な異議申し立てを一度も行っていないと指摘した。

インドのRavi Shankar Prasad(ラヴィ・シャンカール・プラサッド)電子IT大臣は、26日に期限が切れるガイドラインの遵守をWhatsAppが拒否したことは「その意図を疑いようがない、措置に対する明らかな反抗行為」であると述べた。

WhatsAppは26日未明にデリー高等裁判所でインド政府を提訴し、世界第2位のインターネット市場である同国の新しいIT規則により、当局が人々のプライベートなメッセージを「追跡可能」にし、集団監視を行うことが可能になると主張している。

電子IT省によると、政府は「特にインドの主権、一体性、安全に関連する犯罪、公共秩序・レイプに関わる犯罪の扇動、5年以上の禁固刑に値する性的表現物、児童性的虐待物の予防、調査、処罰などの目的」で、メッセージの最初の発信者を追跡する必要があるという。

「このような犯罪につながる悪事を始めた者を発見し、処罰することは公共の利益につながります。多くの集団リンチや暴動事件で、すでにパブリックドメインにあるWhatsAppメッセージの内容が繰り返し拡散されていることは否定できません。だからこそ、誰が発信したかということが非常に重要なのです」。

インドは2018年、メッセージの発信者を追跡可能にするためのソフトウェア変更を展開するよう、WhatsAppに初めて提案した。この提案は、デマの流通により現実に複数の死傷者が出ていた中、WhatsAppがインドでの偽情報の拡散防止に取り組んでいた時期に行われた。同提案は、2021年2月に新規則の一部となった。

一方WhatsAppは、ユーザーに提供しているエンド・ツー・エンド暗号化はセキュリティや政策の専門家が以前から高く評価していたもので、世界中で20億人以上のユーザーが利用している同社がユーザーを特定できる情報を見つけることは不可能だと主張してきた。

インドは、フェイスブック傘下の人気インスタントメッセージングサービスにとってユーザー数では最大の市場だ。政府の推計によると、WhatsAppはインドで5億3000万人以上のユーザーに利用されている。

電子IT省は、インドでの企業活動はいかなる会社でも「国法の対象」であるとし、他の市場でも類似の、あるいはより厳しい規制が施行されたり提案されていると主張している。

同省は「インドが求めているものは、他の国々が要求しているものよりもはるかに少ない」と述べ、新規則の目的を疑うことは「無謀」であると付け加えた。

同省はさらにこう述べた。「WhatsAppは一方で、マーケティングや広告を目的として、すべてのユーザーのデータを親会社であるFacebookと共有するというプライバシーポリシーを義務づけようとしています。そのまた一方で、法と秩序を維持し、フェイクニュースの脅威を抑制するために必要な情報仲介企業ガイドラインの制定を拒否しようとしています」。

TechCrunchが最初に報じたように、電子IT省は26日にソーシャルメディア企業各社に書簡を送り、新ルールを遵守しているかどうか最新情報を求めた。この書簡の中で同省は、現地での懸念に対応するために職員が地元に常駐することを義務付ける新規則のコンプライアンスの一環として、企業が任命した担当者の情報(氏名と連絡先)を求めている。

「WhatsAppはインドの仲介企業ガイドラインがプライバシー権に反するものであると主張していますが、これは見当違いです。【略】インド政府は『プライバシー権』が基本的な権利であることを認識しており、国民にその権利を保証することを約束します」と同省は声明で述べた。

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ドイツ当局がFacebookに対し物議を醸している「WhatsApp」の利用規約を適用しないよう命令

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

ドイツ当局がFacebookに対し物議を醸している「WhatsApp」の利用規約を適用しないよう命令

ハンブルグのデータ保護機関(DPA)はFacebookに対し、WhatsAppの利用規約の強制的な更新に基づいて同社が自らにアクセスを許可しようとしている、WhatsAppの追加的なユーザーデータに関する処理を禁止した。

物議を醸しているWhatsAppのプライバシーポリシーのアップデートは、公表されて以来、世界中で広範な混乱を引き起こしてきた。Facebookはユーザーから大きな反発を受け、競合のメッセージングアプリが憤慨するユーザーの流入で恩恵を享受することに直面した。同社はすでにその施行を数カ月延期している。

インド政府もまた、WhatAppの利用規約の変更を法廷で阻止しようとしており、同国の反トラスト当局が調査を進めている

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全世界のWhatsAppユーザーは、5月15日までに新しい規約に同意しなければならない(WhatsAppのFAQによると、その後も利用規約の更新への同意を求めるリマインダーは継続されるという)。

Facebookは、同規約を求められたユーザーの大多数はすでにこれに同意したとしているが、そのユーザーの割合は公表されていない。

しかし、ハンブルグのDPAの介入により、少なくともドイツ国内ではFacebookによる利用規約の施行がさらに遅れる可能性がある。当局は欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)で認められている緊急措置を採用し、同社に対し3カ月間データを共有しないよう命じた。

WhatsAppの広報担当者は、ハンブルグ当局の命令の法的有効性に異議を唱え、これを「WhatsAppのアップデートの目的と影響に対する根本的な誤解」だとし「したがって合法的な根拠はない」と主張した。

「今回のアップデートは、ユーザーがWhatsApp上の企業にメッセージを送る際のオプションを明白にして、私たちがデータをどのように収集し、利用しているかについての透明性をさらに高めるものです。ハンブルグのDPAの主張は誤りであり、その命令は今回のアップデートの継続的展開に影響を与えるものとはならないでしょう。私たちは引き続き、すべての人に安全でプライベートなコミュニケーションを提供することに注力していきます」と広報担当者は付け加え、Facebook傘下のWhatsAppがこの命令を黙殺することを意図している可能性を示唆した。

TechCrunchでは、Facebookがハンブルクの手続きを訴える選択肢を検討していると認識している。

ハンブルグが採用している緊急措置権限は3カ月を超えて延長することはできないが、当局は欧州データ保護評議会(EDPB)に対し介入を求め、27の加盟国ブロックに及ぶ「拘束力のある決定」を下すよう圧力をかけている。

TechCrunchはEDPBに連絡を取り、ハンブルグのDPAの要請に応えるためにどのような措置を取り得るかについて尋ねた。

EUのDPAは通常、特定の苦情に関連する拘束力を有するGDPRの決定には関与しない。ただし、国境を越えた案件を処理するためのワンストップショップ制度の下で、主任監督機関による審査のために提出されたGDPRの決定草案についてEUのDPAが合意できない場合は、この限りではない。

こうしたシナリオでは、EDPBが自ら拘束力のある判断を採択できるが、それが緊急性の高い手続きに適しているかどうかは不透明だ。

【更新】DPAが暫定措置を延長または最終的なものとすることを希望する場合のように、第66条に基づく暫定措置を採択する決定を通知した監督機関が、EDPBに対して緊急の意見あるいは緊急の拘束力のある決定を要請することをGDPRが認めていることについて、EDPBが確認した。

「第66条は、GDPRのワンストップショップ制度(第60条)および一貫性制度(第63条)の例外規定です」とEDPBの広報担当者はTechCrunchに語った。「これは、監督機関がその管轄内のデータ主体の権利および自由を保護するために行動する緊急の必要性があると考える場合に利用できる、補完的な手続きです」。

「ハンブルグ当局はEDPBに対し、暫定措置を採用する決定を通知済みです」と同担当者は言い添えた。

ドイツのDPAは、FacebookがEUのデータ保護規則を軽視しているとして同社を厳しく批判するだけでなく、同地域の統括データ監督機関であるアイルランドのデータ保護委員会(DPC)に対しても、WhatsAppの新しい利用規約に付随する非常に広範な懸念を調査していないとして遺憾の意を表明した。

(「データ共有の事実上の慣行を調査する主任監督機関への我々の要請は、今のところ尊重されていない」というのが、ハンブルグのプレスリリースにおけるこの批判に関する丁寧な表現である)。

TechCrunchはDPCの所見を照会しており、入手次第、本記事を更新する。

【更新】DPCの広報担当者は次のように語った。「ハンブルグはワンストップショップの例外としてこのプロセスを開始しており、ハンブルグのDPAにとって、緊急手続きを開始するためのしきい値をどのように満たすかについて対応することが重要です。WhatsAppに関するアイルランドのDPA草案の決定は、DPA間の合意に達することができなかったため、GDPRの第65条紛争解決手続を通して処理されます。したがって、そのコンテキストにおいてハンブルグのDPAは、すでに進行中であるワンストップショップ手続きの例外としての第66条の下で、自らの行動を適格化する必要があります」。

アイルランドのデータ監視機関は、GDPRの施行に関して創造的な規制措置を怠っていると批判されている(批判者たちは、委員長のHelen Dixon[ヘレン・ディクソン]氏と同氏が率いるチームに対し、多くの苦情の調査を実施せず、調査を開始した場合にはその調査に数年を要したことについて非難している)。

DPCが大手テック企業に対してこれまでに下した唯一のGDPRの決定(Twitterに対するもので、データ漏えいに関連している)は、他のEUのDPAとの論争に発展した。DPA側は、最終的にアイルランドが科した55万ドル(約6000万円)の罰金よりもはるかに厳しい罰則を求めている。

FacebookとWhatsAppに対するGDPR関連の調査について、DPCは依然として積み残したままである。WhatsAppのデータ共有の透明性に関する決定書の草案が2021年1月に他のEUのDPAに送られて審査に入っているが、この規制が適用されてから3年近く経った今もなお決議案は日の目を見ていない。

つまり、最大の大手テック企業に対するGDPRの施行が欠如していることに対する不満が、他のEUのDPAの間でも高まっている。DPAの中には、アイルランドを通じて多くの苦情を集めるワンストップショップ(OSS)制度のボトルネックを回避するために、創造的な規制措置を取っているところもある。

イタリアのDPAも2021年1月にWhatsAppの利用規約の変更について警告を発しており、変更内容についての明確な情報が不足していることを懸念してEDPBに連絡したと述べている。

EDPBはその時点で、監督当局間の協力を促進することがEDPBの役割であることを強調した。さらに「その権限に従ってEU全体でデータ保護法の一貫した適用を確保するため」、DPA間の情報交換を引き続き促進すると付言した。しかし、EUのDPA間の合意は常に脆弱であり、執行上のボトルネックや、OSSのフォーラムショッピングにより規制が維持されていないという認識をめぐる懸念が広がっている。

このことは、行き詰まりを打開して広範な規制の崩壊を回避する何らかの解決策、すなわちより多くの加盟国機関が一方的な「緊急」措置に訴える場合の対処に向けた対策を講じるようEDPBに求める圧力を高めることになるだろう。

ハンブルグのDPAは、WhatsAppの規約が更新されたことで、WhatsAppのユーザーの位置情報をFacebookに渡したり、企業がFacebookのホスティングサービスを利用した場合にWhatsAppユーザーの通信データを第三者に譲渡できるようにするなど、WhatsApp自体の目的(広告やマーケティングを含む)のために「Facebookとデータを共有する広範囲な権限」がWhatsAppに与えられるとしている。

FacebookはEU法の下でデータ共有を拡大する法的基盤としての合法的な利益に依存することはできない、と同局は判断している。

また、大手テック企業がユーザーの同意に依存しようとしている場合、変更が明確に説明されていないことや、ユーザーが同意に関する自由な選択(これはGDPRで要求されている基準である)を提供されていないことから、基準を満たしていないことになる。

「新しい規約に関する調査により、FacebookがWhatsAppユーザーのデータをいつでも自分たちの目的のために利用できるようにするために、両社の密接な関係をさらに拡大しようとしていることが明らかになりました」とハンブルグ当局は続けた。「プロダクトの改善と広告の領域に関して、WhatsAppはデータ主体のさらなる同意を要求することなく、データをFacebook企業に渡す権利を留保しています。その他の領域については、現時点ですでにプライバシーポリシーに則った自社利用が想定されています」。

「WhatsAppとそのFAQによって提示されたプライバシーポリシーには、例えば、電話番号やデバイスIDなどのWhatsAppユーザーのデータが、ネットワークセキュリティやスパムの送信防止などの共同目的のために、すでに企業間で交換されていることが記述されています」。

ハンブルグをはじめとする各DPAは、当時TechCrunchが報じたように、EUの最高裁判所のアドバイザーによる最近の意見を参考にして、GDPRの施行に関する問題を自らの手で解決しようとしているのかもしれない。Bobek(ボベック)法務官は、EU法は「緊急措置」を採用するため、または「事案を処理しないことを決定した主要データ保護当局に従って」介入するためなど、特定の状況において各機関が独自の手続きを取ることを認めているとの見解を示した

この件に関するCJEU(欧州司法裁判所)の裁定はまだ係争中だが、法廷はアドバイザーの見解に同調する傾向が強くなっている。

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タグ:ドイツFacebookWhatsAppプライバシーGDPR

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

インドの独占禁止監視機関がWhatsAppのプライバシーポリシー変更に対する調査を命じる

WhatsApp(ワッツアップ)が計画しているポリシー変更は、このインスタントメッセージングサービスが最大のユーザー数を抱えるインドで順調に進んでいない。同国の独占禁止監視機関であるインド競争委員会は現地時間3月24日、Facebook(フェイスブック)傘下のWhatsAppが、ポリシーの更新を装い現地の独占禁止法にあたる競争法に違反しているとして、同社のプライバシーポリシー変更に関する調査を命じた(PDF)。

インドの監視当局は、WhatsAppの新ポリシーを調査し「ユーザーの不本意な同意によるデータ共有の全容、範囲、影響を確認」するよう、同国の事務局長(DG)に命じた。事務局長は、60日以内に調査を完了し、報告書を提出するよう命じられている。

インドの監視当局はこの命令の中で、WhatsAppのプライバシーポリシーと利用規約の「嫌なら使うな」的な本質について「WhatsAppが享受している市場での地位と市場支配力を考慮すると、詳細な調査が必要である」と述べている。

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これに対しWhatsAppの広報担当者は声明で「インド競争委員会との交渉を楽しみにしています。WhatsAppは、エンド・ツー・エンドの暗号化によって人々の個人的なコミュニケーションを保護し、これらの新しい任意のビジネス機能がどのように機能するかについて、透明性を提供することに引き続き取り組んでいます」と語っている。

「WhatsAppは顕著なネットワーク効果を享受しており、インドのインスタントメッセージング市場に信頼がおける競合他社が存在しないことから、個人情報保護の観点における水準を妥協できる地位にあり、ユーザーベースの減少を恐れることなく、『オプトアウト』などのユーザーフレンドリーな選択肢を保持する必要がないと判断できる立場にあると思われる。さらに、WhatsAppを継続したくないユーザーは過去のデータを失う可能性がある。なぜなら、WhatsAppから他の競合アプリにデータを移植することは、面倒で時間のかかるプロセスであるだけでなく、すでに説明したようなネットワーク効果により、ユーザーがアプリを切り替えることは困難だからだ。以上のことは、ポリシー変更によって代替アプリへの移行を希望するユーザーの乗り換えにともなう代償を増大させ、強調するものである」と、インド競争委員会の命令文には書かれている。

「プライバシーポリシーの2021年の更新により、事業者はFacebookのような第三者のサービスプロバイダーに、通信内容を送信、保存、読み取り、管理、その他の処理を行うことができるアクセス権を与えることになる。Facebookが企業にサービスを提供する際には、収集したデータの使用を条件とする可能性もある。DGは調査の際にこれらの点についても調査することになるだろう」。

今回の動きは、WhatsAppが2021年5月に施行を予定している新たなポリシーのアップデートをめぐり、インドで繰り広げてきた数カ月に及ぶ法定闘争に続くものだ。インド政府は先週、WhatsAppが計画しているプライバシーアップデートがいくつかの点で現地の法律に違反していると主張した。また、連邦政府はデリー高等裁判所に提出した書類の中で、WhatsAppがインドでアップデートを実施することを阻止するように裁判所に求めてもいる。

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インド政府がWhatsAppの新プライバシーポリシーを法律違反として裁判所に差し止めを申請

2021年初め、インドのIT省はWhatsAppの責任者であるWill Cathcart(ウィル・カスカート)氏に書面を送り、アップデートとその影響について「重大な懸念」を表明し「提案された変更を撤回するよう求め」ていた。

WhatsAppは2021年初めから、その懸念を払拭するためにインド政府に協力してきた。しかし、インドはFacebookの説明に納得していないようだ。インドの監視当局は、強い言葉で書かれた命令の中で「Facebookは新しいアップデートの直接的かつ隣接的な受益者であり、このような状況下でFacebookがアップデートの潜在的な影響についてまったく知らないふりをして、それについての見解の提供を避けているのは言語道断である」と述べている。

20億人以上のユーザーに利用されているWhatsAppは、2016年から親会社のFacebookと一部の情報を共有している。それ以来、利用規約を大幅に更新していなかった同社は、2020年、電話番号や位置情報など、ユーザーの個人データをFacebookと共有するために、いくつかの変更を行うと発表した。

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2021年1月にWhatsAppは、アプリ内のアラートを通じて新規約への同意をユーザーに求めたが、これに対して一部のユーザーは即座に反発。数千万人のユーザーがSignal(シグナル)やTelegram(テレグラム)などの競合サービスを求めるようになったため、WhatsAppはユーザーに新しい規約を確認するための期間をさらに3カ月間設けると発表した。

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月間アクティブユーザー数が4億5千万人を超えるインドは、WhatsAppにとって、そしてその親会社であるFacebookにとっても、最大の市場だ。この巨大ソーシャル企業は近年、インドを重要な市場にすることに賭けており、そのための投資を倍増させている。2020年はインド最大の通信事業者であるJio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)に57億ドル(約6211億円)を投資した。この会社は、インドで最も裕福な人物であるMukesh Ambani(ムケシュ・アンバーニ)氏が経営している。

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タグ:インドプライバシーWhatsApp独占禁止法

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

インド政府がWhatsAppの新プライバシーポリシーを法律違反として裁判所に差し止めを申請

WhatsAppが計画するポリシーの変更に関して同社は、何カ月もかけてユーザーの心配や混乱の解消に努めてきたが、その努力があまり功を奏さなかった相手が、インド政府だ。

インド政府は現地時間3月19日、2カ月後に発効するWhatsAppのプライバシーに関する新しいポリシーが、いくつかの点でインドの法律に違反していると主張した。

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デリー高等裁判所に提出した文書で連邦政府は、FacebookのメッセージングアプリWhatsAppに、ユーザー数では世界最大の市場であるインドでポリシーのアップデートをさせないよう求めた。

「近年、ソーシャルメディアは世界中で数十億の人々に利用され、今日では数百万のインド人がWhatsAppに依存している。つまり大量の個人情報が共有されている。この情報はソーシャルメディア大手が販売や悪用をしようと思えば、間違った使われ方をする可能性があり、ユーザーが人に知られたくない情報などがサードパーティーの手に渡るおそれがある」と同国政府は提出文書で述べている。

この裁判所提出文書は、WhatsAppが政府の懸念を払拭できなかったことを示唆している。インド政府がWhatAppのポリシー変更の計画を最初に問題として提起したのは2021年1月だ。

2021年初めにインドのIT省はWhatsAppのトップであるWill Cathcart(ウィル・カスカート)氏に書簡を送って、ポリシー変更とその含意に関する「重大な懸念」を表明し、ポリシー変更案の「撤回を求めた」。

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一方、WhatsAppの広報担当者は、声明で次のように述べている。「この問題が最初に提起された2021年1月に申し上げたように、私たちが強調したいのは、このアップデートがFacebookとデータを共有する私たちの能力を拡大するものではないという点です。私たちの狙いは、ユーザーが企業とエンゲージするときの透明性と新しいオプションを提供して、彼らが顧客に奉仕し成長できるようにすることです。WhatsAppは常にエンド・ツー・エンドの暗号化で個人のメッセージを保護し、WhatsAppにもFacebookにもそれが見えないようにします。私たちは誤った情報への対処に努め、いかなるご質問にもお答えする体制を今後も維持いたします」。

WhatsAppの今後の規約と条件の変更に対し、インド政府の態度が変わらないことと訴訟が進んでいることは、人気の高いインスタントメッセージング企業にとってまた新たな頭痛だ。さらに同社は、インド政府からの今後の新しいガイドライン、特にその中のエンド・ツー・エンドの暗号化を法執行目的のために解読できる件についても悩んでいる。

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ユーザー数20億ほどのWhatsAppは2016年以降、情報の一部を親会社のFacebookと共有している。これまでサービス規約を大幅に変えたことがない同社は2020年、その一部を変更し電話番号や位置といった一部の個人データをFacebookと共有すると発表した。

2021年初めのアプリ内通知でWhatsAppはユーザーに対して、新しい規約への同意を共有するよう求めた。それに対し、一部のユーザーからの反発が起こった。反発に続いて現在では、何千万ものユーザーがSignalやTelegramなどの競合するサービスを検討している。WhatsAppはユーザーに、新しいポリシーの検討のためにさらに3カ月の猶予を与えている。人気の某モバイル情報サイトによると、Signalのモバイルアプリは月間アクティブユーザー数が1億を超えたという。

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タグ:WhatsAppインドプライバシー

画像クレジット:SAJJAD HUSSAIN/AFP/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

InstagramとWhatsAppにシステム障害発生

Instagram(インスタグラム)とWhatsApp(ワッツアップ)で米国時間3月19日(日本時間3月20日)、明らかなシステム障害が発生した。この障害は東部標準時午後1時40分(日本時間3月20日3時40)頃に始まり、30分以上続いた。

WhatsAppではサーバーに接続できず、メッセージが配信されなかった。この問題がFacebook Messengerにも影響を与えたかどうかは定かではないが、同アプリは2020年にFacebook(フェイスブック)、WhatsApp、Instagramの間でクロスプラットフォームのメッセージングを可能にする新機能を導入していた。

Instagramではバックエンドサーバーのエラーを示唆する500のメッセージが表示されていた。

WhatsAppのユーザー数は20億人以上、Instagramのユーザー数は約10億人だという。Facebookの開発者ステータスページには、直ちに停止するような表示はなかった。

TechCrunchはこれらのサービスを運営しているFacebook(フェイスブック)に連絡をとったが、すぐには返答がなかった。詳細がわかり次第、続報をお届けする。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:InstagramWhatsAppシステム障害

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Zack Whittaker、翻訳:塚本直樹 / Twitter

WhatsAppがデスクトップアプリに音声通話とビデオ通話機能を追加

Facebook(フェイスブック)が所有しているメッセージングサービスのWhatsApp(ワッツアップ)が、そのデスクトップアプリに音声とビデオ通話のサポートを展開しようとしている。米国時間3月4日同社が、これまではコンピュータの前に座っていながら、WhatsAppアプリが鳴るたびに携帯電話に手を伸ばさなければならなかった無数の人々を救済すると発表したのだ。

WhatsAppによれば、この発表されて5年近くになるMacとWindows用のデスクトップアプリでは、現時点では1対1の通話のみがサポートされているという。だが「将来的には」グループでの音声通話やビデオ通話にも拡張していく予定だという。

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ビデオ通話は、縦向き(ポートレイト)でも横向き(ランドスケープ)でも「シームレスに」動作し、デスクトップ クライアントは「ブラウザのタブや開いているウィンドウの後ろにビデオチャットが紛れてしまわないように、常にトップに表示されます」と説明されている。

そういえば、今のところブラウザ版のWhatsApp Webには音声通話とビデオ通話のサポートは拡張されていない、と同社の広報担当者はTechCrunchに語った。(Facebookは2020年、Messengerサービスの専用デスクトップアプリを立ち上げて、グループビデオ通話をサポートしている)。

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今回の新機能のサポートは、WhatsAppのデスクトップクライアントを毎日使用していたが、利便性の高さもあってデスクトップ上で1対1のビデオ通話を行うためにZoom(ズーム)やGoogle Meet(グーグル・ミート)を使用してきた無数の人たちにとって、便利なものになるはずだ。

20億人以上に利用されているWhatsAppは、そのプラットフォーム上でビデオ通話や音声通話がどれくらい利用されているかを発表していないが、通常利用率がピークに達する大晦日の夜には、14億件以上の通話を処理したと語っている。

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WhatsAppがプラットフォーム上で毎日処理している1000億通のメッセージと同様に、音声通話やビデオ通話もエンド・ツー・エンドで暗号化されているという。

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WhatsAppは、かつてはアプリの機能改善を行うのにかなりの時間をかけることで知られていたが、2020年は新機能を追加することに対して目に見えて積極的になってきていた。2021年1月下旬、Facebookは、デスクトップとウェブ上のWhatsAppに対してオプトイン式で指紋、顔、または虹彩スキャンといった生体認証を追加した。今回のアップデートの後では、こうした追加プロテクションがさらに意味のあるものとなるだろう。

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2020年末には、7日後に自動的に消えるメッセージ、写真、動画機能を展開し、最大のユーザーを抱える市場のインドで決済サービスも展開している。

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この新機能の追加は、Twitter界隈である程度の議論になっている、WhatsAppのプライバシーポリシー変更計画に対して、WhatsAppがユーザーを説得しようとしている最中に行われた。Twitter上のひと握りの人々にから提起されたそれらの懸念が、より多くの人びとに広がるのかどうかはまだわからない。

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画像クレジット:Facebook / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:sako)

インド政府がソーシャルメディアやストリーミングサービス企業に厳しい新規制を発表

インドは現地時間2月25日、ソーシャルメディア企業、ストリーミングサービス、デジタルニュースアウトレットを規制するための抜本的な新ルールを発表し、アジア第3位の経済規模を誇るこの国を重要な海外市場とみなすFacebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)、Google(グーグル)、Netflix(ネットフリックス)などの巨大企業に新たな課題を投げかけた。

インドの法務相兼電子情報技術相のRavi Shankar Prasad(ラヴィ・シャンカール・プラサッド)氏は、記者会見で、ソーシャルメディア企業は違法、誤報、暴力的なコンテンツに対する削除要求を24時間以内に受け入れ、15日以内に完全に矯正することが求められることになると述べた。露骨な性的コンテンツのようなデリケートなケースでは、24時間以内に削除することが要求される。

また、これらの企業は法令を遵守することを約束し、現実的な懸念に効果的に対処するため、接点となる連絡窓口と常駐する苦情担当者の名前と連絡先を、インド政府と共有することが求められる。また、企業はインドに現地事務所を設置しなければならない。

この新しい規制は、政府が2018年から取り組んできたものであり、それが発表される数週間前には、インド首都で農民の抗議運動が起きた際、Twitterがインド政府の命令の一部を遵守することを拒否するという出来事があった。インド政府は当時、Twitterは裁判に訴えたり、不遵守を正当化することはできないと述べていた。

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プラサッド氏によれば、ソーシャルメディア企業は、不快なコンテンツの発信者を開示しなければならなくなるという。「我々はコンテンツを知りたいわけではありませんが、企業は誤報やその他の好ましくないコンテンツを広め始めた最初の人物が誰なのかを教えることができる必要があります」と、同氏は語った。WhatsApp(ワッツアップ)は以前、すべてのユーザーのエンド・ツー・エンドの暗号化セキュリティを損なうことなく、このようなトレーサビリティの要求に応じることはできないと述べていた。

また、企業は月ごとに法令遵守報告書を公開して、これまでに受けた要求の数を開示し、実施した措置を明記することも求められる。アカウントの確認を希望するユーザーには、任意選択権を提供しなければならない。

2011年に制定された法律に代わるこの新規則は、小規模な企業には直ちに適用されるが「重要」なサービスには、通達された日(それは「早急」に通達されることになるだろうと、プラサッド氏は述べている)から3カ月の猶予期間が与えられる。

インド政府がこれらのガイドラインをまとめた理由は、市民が「苦情に対処するためのメカニズム」を長い間求めてきたからだ、とプラサッド氏は述べている。インドは2018年から中間業者を対象とした法律に取り組んでおり、2020年にはストリーミングサービスやオンラインニュースの発行にまで対象範囲を拡大した。草案の最終版はこちらで読むことができる。

「インドは世界最大のオープンなインターネット社会であり、政府はソーシャルメディア企業がインドで運営を行い、事業を行い、また利益を得ることを歓迎しています。しかし、彼らはインドの憲法や法律に対し責任を問われることになります」と、プラサッド氏は述べた。

GoogleやFacebookなどの企業が次の10億人のユーザーの獲得を急ぐ中、インドは過去10年の間に米国企業や中国企業の重要な戦場として浮上した。しかし近年、Narendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相の政府は、米国企業に影響を与えるいくつかの規則を施行または立案している。また、2020年にはサイバーセキュリティの懸念を理由に、ByteDance(バイトダンス)のTikTok(ティックトック)をはじめとする200以上の中国製アプリを禁じた。

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プラサッド氏によると、WhatsAppはインドで5億3000万人のユーザーを獲得しており、同アプリにとって最大の市場であるという。YouTubeは4億4800万人、Facebookは4億1000万人、Instagramは2億1000万人、Twitterは1750万人のユーザーを同国で抱えていると同氏はいう。

Facebookはこの新ルールについて検討しているところだと述べている。Netflixはコメントを拒否した。

ソーシャルメディア企業やその他の中間業者のためのガイドライン全文(出典:インド政府

「この新しい規則の義務化は、インターネットプラットフォームがコンテンツを過剰に検閲し、危険で実証されていないAIベースのコンテンツ規制ツールを必要とし、政府に引き渡すために膨大な量のユーザーデータを保持し、サイバーセキュリティと個人のプライバシーにとって重要なエンド・ツー・エンドの暗号化を弱体化させる結果を引き起こすだろう」と、Access Now(アクセス・ナウ)のアジア太平洋政策ディレクターを務めるRaman Jit Singh Chima(ラマン・ジット・シン・チマ)氏は述べている

ストリーミングプラットフォームに対しては、このルールは「コードの遵守と個守」のための3段階の構造を概説している。これまで、Netflix、Disney+ Hotstar(ディズニー+ ホットスター)、MX Player(MXプレイヤー)などのオンデマンドサービスは、インドではカタログの多くを検閲されることなく運営されていた。

インド政府は2020年、テレビのコンテンツを規制するインド放送省が、今後はデジタルストリーミングプラットフォームも監督することになると発表。これを受けて、国際的な大手を含む人気ストリーミング企業17社が、自主規制コードを考案するために団結した。だが、Prakash Javadekar(プラカシュ・ジャバデカール)情報放送大臣は、業界から提案された解決策は適切ではなく、コードの完全な遵守を保証するために政府による監視機構を設けることになるだろうと述べた。

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ストリーミングサービスは、タイトルにコンテンツのレイティングも付与しなければならなくなる。「OTTプラットフォームは、このルールにおいてはオンライン上のキュレーションされたコンテンツのパブリッシャーと呼ばれ、コンテンツを5つの年齢ベースのカテゴリーに自己分類することになります。U(ユニバーサル)、U/A 7+、U/A 13+、U/A 16+、A(アダルト)です。プラットフォームは、U/A 13+以上に分類されたコンテンツにはペアレンタルロックを、Aに分類されたコンテンツには信頼性の高い年齢確認メカニズムを実装することが求められます」とインド政府は述べている。

「オンライン上のキュレーションされたコンテンツのパブリッシャーは、各コンテンツまたは番組に固有の分類されたレイティングを、コンテンツの性質をユーザーに知らせるコンテンツ記述子とともに、目立つように表示しなければなりません。また、ユーザーが番組を視聴する前に、十分な情報に基づいた意思決定ができるようにするため、すべての番組の冒頭で視聴内容に含まれる描写について(該当する場合は)忠告しなければなりません」。

ジャバデカール氏は、ストリーミングサービスを規制するためのパブリックコンサルテーションを行っていません。ストリーミングサービスのための自主規制コードはすでに存在しています。

政府はストリーミングサービスを規制するための法的根拠を持っていません。政府はIT法やケーブル&テレビ法の下でオンラインコンテンツの規制を行うことはできません。

業界の幹部は、インド政府がこの変更について彼らに相談していないと述べ、新たに提案された規制に懸念を表明している。インドのほぼすべてのオンデマンドストリーミングサービスを代表する強力な業界団体であるIAMAIは、ガイドラインに「当惑している」と述べ、政府との対話を求めている。

記者会見でジャバデカール氏とプラサッド氏は、業界と協議する場を設ける予定はあるのかと尋ねられたが、大臣はすでに業界から十分なインプットを受けていると述べた。

今回のインドの動きと並び、世界中のいくつかの政府は、これらのテクノロジー企業が自国の民衆や産業に与える影響を詳細に調査している。Facebookは2月中旬、オーストラリア政府によるニュース使用料の支払いを義務づける法案に反対し、同国でニュース記事の共有・閲覧を禁止したが、その後に同政府との合意に達したとしてニュース記事を復活させた。オーストラリアのScott Morrison(スコット・モリソン)首相は、ソーシャルメディア企業が政府を「いじめる」ことを防ぐ方法を探るため、インドのモディ首相と会談した。

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インドはオーストラリアの決定について何か思うことはあるかと尋ねられると、ジャヴァデカール氏は、その件について話すには適切な日ではないと答えた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:インドSNSソーシャルメディアFacebookTwitterWhatsAppGoogleNetflix

画像クレジット:Sanjit Das / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

WhatsAppが新プライバシー規約を同意しないユーザーへの対応内容を説明

WhatsAppは今週初めに、ユーザーが「自分のペース」で同社のプライバシーアップデートの計画を見直すことを認め、また用語の変更をわかりやすく説明するバナーを表示すると発表した。しかし、2021年5月15日の締め切りを守れないユーザーはどうなるのだろうか?

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ユーザーからの激しい批判を受けWhatsAppがプライバシー規約更新についてのアプリ内バナー公開

TechCrunchでは、同社が商業者パートナーに宛てたメールを確認することができたが、Facebookがオーナーが所有するWhatsAppは、そのようなユーザーには、彼らが新しい規約に準拠してWhatsAppの全機能を利用できるように5月15日から「徐々に求めていく」という。

規約を同意しないユーザーも「短期間、通話や通知を受けとることはできるが、メッセージを読んだり送ることはできない」と同社はメモで述べている。そのメモが同社の計画の真意であることを、同社はTechCrunchに対して確認した。

「短期間」とは、数週間のことだ。そのメモには、WhatsAppが新たに設けたFAQページへのリンクがあり、非アクティブユーザーに関するポリシーは5月15日以降に適用されるとある。

WhatsAppの非アクティブユーザーに関するポリシーによると、アカウントは「通常120日間、何もなされなかった後に削除される」という。

このインスタントメッセージングサービスは、一部のユーザーから反発を食らった。それには、最大の市場であるインドも含まれている。そのときWhatsAppはアプリ内アラートで、プライバシー規約の計画への同意は2月8日までに、とある。これは同社のeコマースへの最近のテコ入れを反映したもので、サービスを使い続けたいのであればその日程を守れ、と述べている。

反発を食らったWhatsAppは、プライバシーアップデートの計画がユーザーの一部に混乱を招いたとし、2021年1月のブログで「最近のアップデートに関して、とても多くの人が混乱しているようだ。心配が生じたのは多くの誤報のためであり、今後は弊社の原則と事実を理解していただけるようにアナウンスしたい」と述べている。

2016年以降、WhatsAppのプライバシーポリシーは、ユーザーの電話番号やデバイスの情報などをFacebookと共有してよいことになった。新しい規約では、FacebookとWhatsappが、より良い広告ターゲティングのために決済や商取引のデータを共有できる。それはソーシャルの巨大モンスターがeコマースを拡大して、それを同社のメッセージングプラットフォームと合体させようとしているためだ。

WhatsAppは20億以上のユーザーが使っており、2021年1月には新たなポリシーの発効を3カ月遅らせ、その規約の説明に努めてきた。しかし規約を受け入れないユーザーへの対応は、その説明よくわかっていなかった

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画像クレジット:SAJJAD HUSSAIN/AFP/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)