蜂のサイズの飛行ロボ「Robobee X-Wing」は動力を光から得て持続飛行する

TechCrunchはハーバード大学の飛行ロボットRobobeeの進化を数年前から追っている。最初は飛ぶことを覚え、2015年には泳げるようになり、2017年には水から跳び出すことができた。そして今回のRobobee X-Wingは、光を自分の太陽電池に集めることによって飛べるようになった。光のあるところなら無限に飛び続けることができる。

この大きさでは、飛ぶことは極めて難しい。小さいから離陸も飛行も昆虫みたいに簡単にできるだろうとお思いかもしれないが、実際は自己動力の飛行は小さいほど難しい。昆虫の飛行は、われわれが自然界で出会うもっとも不可解で奇跡のような偉業なのだ。

小さな2つの翼を動かす動力を有線で外部から供給するなら、飛行は簡単だ。これまで、Robobeeなどもそれをやってきた。電源を本体に搭載したり、あるいは身につけたソーラーパネルにレーザーを照射するなどの方法は、ごく最近の試みだ。

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robobee chart

今度のRobobee X-Wing(翼が4枚なのでX型)は、電池もレーザーも使わない新しい段階を達成した。普通のフルスペクトルの光が上にあるだけでよい。現状では太陽光よりも明るいのだが、現実の条件に一歩近づいた。

ハーバードのMicrorobotics Laboratory(超小型ロボット研究所)のチームは、エネルギー変換のシステムと翼の機械系を極力軽量化してそれを達成した。全重量が1/4グラムで、ペーパークリップの約半分。消費電力も超微量だ:

わずか110–120ミリワットの電力を消費するこのシステムは、蜂のような同サイズの昆虫と同程度の推力効率がある。この昆虫サイズの航空機は、瞬間的な跳躍や離陸上昇ではなく普通の飛行を無線で維持できる機として、最軽量である。

上記の最後のところは、競合する他の研究に影を投げかけている。まだそれらの研究は「ふつうの飛行を無線で維持できる」状態ではない(詳細はよくわからないが)。たとえば下の記事のオランダの羽ばたく飛行ロボットは電池を搭載して1km飛行する。「飛行を維持できる」といえば、これぐらいしか思い浮かばない。

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Robobeeのビデオでは、離陸がペットボトルロケットみたいだ。スペース的に不可能だったのは、高度な飛行制御回路や、使わないエネルギーの保存、ホバーリングなどだ。

それらはチームにとって次のステップだろうし、しかも簡単ではない。重量が増えて新しいシステムが加われば、航空機として完全に別のものになる。でも数か月から1年ぐらい経てば、本物の蜻蛉のようにホバーリングできるようになっているだろう。

Nature誌に、Robobee X-Wingについて極めて詳細に記述されている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

精子の動きを再現するCGアニメが生物学の進歩にも貢献した

精子が動きまわる短編3Dアニメが、精子のかつてなかったほど詳細なモデルとして、大きな科学的価値を持つことになった。あの中で一体何が起きているのか、前から関心があった方にも、たいへん参考になるだろう。

ハーバード大学Wyss研究所のDon Ingberが、生物学的過程を原子のレベルで正確に視覚化したい、と考えた。呼吸でも視覚でもなんでも、きわめて複雑な過程だが、でも、精子が卵子に殺到して、自分を卵子に埋没させていく過程は、単純かつ、彼の制作努力に見合うほど十分にドラマチックだろう。

彼は、同じくWyssにいて映画畑で働いたことのあるCharles Reillyとコンビを組んだ。絵コンテは作ったが、精子の長い尾のアニメーションで難航した。尾の動きは、精子の推力を作り出している。二人は精子の動きに関して大量の文献を読んだが、マクロのレベルで見るような単一のモデルを作ることには役に立たなかった。尾の実際の動きは、原子のレベルで起きていることの直接の結果だった(分子モーターが動きを作り出す)。

しかし、ばらばらの知識をとにかく大量に寄せ集めて、精子のさまざまな実態に合ったモデルを作ることに成功した。精子の尾の動きという過程を原子〜分子レベルで視覚化すると、きわめてユニークな映像になった(下図)。尾を構成しているのは長い軸糸(axonemes)と呼ばれる原子の構造で、それらのあいだにダイニン(dynein)と呼ばれる酵素分子が並んでいるのだ。

その原子レベルの動きの全体を、彼らの短編アニメで見ることができる。それは見ておもしろいだけでなく、ダイニンが関与している、ボートの漕ぎ手のような動きを、エレガントに説明している。おまけに、科学的価値も高い。

IngberがWyssのニュースリリースで説明している:

われわれの物理学レベルのシミュレーションとアニメーションシステムは、そのほかの、データに基づくモデリングシステムと比べても遜色はなく、またそれだけでなく、新しい科学的知見にも導く。すなわち、ダイニンヒンジの制約された動きが、ATPの加水分解(ATP hydrolysis)によってリリースされるエネルギーをフォーカスすることである。それによってダイニンの形が変わり、微小管の滑動と軸糸の動きを駆動する。

さらに、ダイニンのこれまでの研究により、その分子の二つの異なる静的配座が明らかとなったが、われわれのアニメーションは、それら二つの形状の間をプロテインが遷移する、ひとつの妥当な様相を示している。それは、他のシミュレーションにできなかったことだ。またアニメーションによって、ダイニンの列が一斉に働く様子を視覚化でき、それはボート競技の漕ぎ手たちの揃った動きを連想させる。これも、従来の科学的シミュレーションの方法では困難である。

彼らがこの短編アニメーションで見せていることは、精子の実際の動きの理解を、一歩前進させることに役立つだろう。

では、アニメの最終バージョン、“The Beginning”をご覧いただこう:

それは、奇異であると同時に優れた作品だ。これを実際に作れたことは、喜ばしい。

Ingberは語る: “われわれは、アートとサイエンスが本当に互恵的に互いの役に立つことを実証できた。このプロジェクトが今後のさらなるコラボレーションを喚起し、アートとサイエンスの密接な協働がエンターテインメント産業でも活用されて現実を描き出し、万人がそれらを楽しめることを期待したい”。

このアニメの創作過程は、ジャーナルACS Nanoにドキュメントされている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ハーバードのOctobotは、ソフトな材料だけで作られた初の自律型ロボット

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長年にわたり、ロボット工学は金属やプラスチックに代わるソフトな材料に目を向けてきた ― 全身ソフトなロボットまで作った。しかし、ハーバード大学が作ったこのOctabotは、硬い部品を使っていないだけでなく、初めての完全自律型だ。

Robert WoodとJennifer Lewisのふたりは、Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering[ワイズ研究所]の所属で、今日Nature誌で発表した論文でOctobotについて書いた。この創作物が俊敏さで賞を取ることはないだろうが、一般にはコンピューターがロボットの動きを制御することで自律性を実現していることを考えると、これは実に画期的である。

「バッテリーや電子制御等の固い部品を、同等の柔いシステムで置き換えて組み立てることは、常に挑戦だった」とハーバード大学のニュースリリースでWoodが言った。「この研究は、全身が柔軟で単純なロボットの主要部品を簡単に製造できることを示すものであり、こうした部品はさらに複雑な設計の基礎となるだろう」

ロボットの大部分は3Dプリントで作られ、その後電源と動作を制御する経路が組み込まれる。動きは空気圧によるもので、ロボットの燃料である過酸化水素から発生した酸素を用いる。酸素が液体を手足に向けて押し出し膨らませる ― 仮にこれだけだとしても十分感心する。

しかしここで重要なのは、巧みに設計されたマイクロ流体ネットワークが自らにフィードバックを与え、1本の足が膨らみ終ると押し出すのをやめ、あらかじめ決められた順番で次の足を膨らましていくしくみだ。人や周囲から電源や指示を与える必要はない。

なお、このマイクロ流体ネットワークは、同じくWyss Institue所属の化学者で共同執筆者でもあるGeorge Whitesidesの業績に基づいている。

たしかにこれは、どの自律ロボットと比べても著しく単純だが、唯一初めてであることは間違いない。ソフトなロボット材料は多くの分野で期待されており、中でも人間の周囲 ― あるいは内部 ― を動き回る必要のあるロボットにとっては特に重要だ。。

チームはオクトパスデザインをさらに追求する計画だ ― 「骨なし」構造の威力と万能さを踏まえれば論理的な判断だろう。次期バージョンのOctobotは、泳いだり周囲の物体とやりとりしたりするようになる、と研究者らはほのめかした。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook