複数の暗号資産取引所のデータを検索・比較できるモバイルアプリ「TabTrader」

当面は主要な暗号資産(仮想通貨)の多くが史上最高値付近で安定しているように見えるため、もう少し変動の大きいトークンに投機したいと考えているユーザーは、取引所を横断しながら良い情報を探している。

アムステルダムを拠点とするスタートアップ企業のTabTrader(タブトレーダー)は、このユーザーの動きに便乗し、数十にわたる取引所の価格とトークンの入手状況を集約したプラットフォームを提供している。ユーザーが取引所間のトークン価格を横並びに見ることができるプラットフォームは他にもあるが、その多くはデスクトップ用に最適化されたものだ。一方、TabTraderは、iOSとAndroid向けのモバイルアプリが大きな存在感を放っている。

新しいトークンの導入については取引所ごとにアプローチが異なるため、暗号資産トレーダーは複数の取引所のアカウントに登録して、複数のアプリで価格を追跡し、それぞれに複数の通知を設定しているケースが増えている。TabTraderが多くのユーザーに利用されているのは、特定のトークンが一定の値を超えたときや下回ったときにユーザーに通知する、取引所間を横断した価格アラート機能があるためだ。多くの取引所が独自のアプリ内でこの機能を提供しているものの、これらのプッシュ通知の信頼性やカスタマイズ性には一貫性がなかった。

CEOのKirill Suslov(キリル・スースロフ)氏がTechCrunchに語ったところによると、TabTraderアプリには40万人以上のアクティブユーザーがいて、特に欧州とアジアで強い存在感を示しているという。

このスタートアップ企業では、トークンの価格を集計して、ユーザーがアプリで購入する際に取引所からリベート手数料を受け取るという、旅行検索・料金比較アプリのKayak(カヤック)と同じようなモデルを採用している。ユーザーは自分のウォレット情報をアプリに入力しておくことで、接続された取引所で簡単に購入することができるが、スースロフ氏によると、TabTraderがユーザーの資金にアクセスすることはないそうだ。

これらのリベートの他に、TabTraderは、有料版の月額12ドル(約1370円)のサブスクリプションや、広告によっても収益を得ている。スースロフ氏によれば、同社の20人のチームは、有料のマーケティングを一切行わずに、現在の利用者を獲得するまでに成長したという。

何千万人ものユーザーがCoinbase(コインベース)やBinance(バイナンス)のような中央集権的な取引所にアカウントを作っている一方で、TabTraderの最大の好機は、ユーザーが他のユーザーとトークンを迅速に交換できるUniswap(ユニスワップ)のようないわゆる分散型取引所を受け入れることかもしれないと、スースロフ氏は語っている。

スースロフ氏の話によると、各取引所はバックエンドで優れた技術を構築しているものの、フロントエンドのインターフェースはユーザーにとってあまり使いやすくないため、TabTraderのようなアグリゲーターがユーザー体験を合理化することで、ユーザーが初めて分散型取引所を探索できるようにする余地があるとのこと。TabTraderでは、Serum(セラム)、Raydium(レイディアム)、Orca(オルカ)などのSolana(ソラナ)基盤の取引所から始めているという。

「(分散型取引所は)2021年の最もホットな話題です」と、スースロフ氏はいう。「我々はこのロケット船に乗るために賭け金を上げました」。

スースロフ氏はTechCrunchに、TabTraderが100X Ventures(100xベンチャーズ)、Hashkey Capital(ハッシュキー・キャピタル)、Spartan Capital(スパルタン・キャピタル)、SGH Capital(SGHキャピタル)、SOSV、Artesian Venture Partners(アーテシャン・ベンチャーズ・パートナーズ)から、シリーズA資金として580万ドル(約6億6000万円)を調達したと語った。

画像クレジット:TabTrader

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

MITの研究者による自動運転の水上タクシーが、アムステルダムの運河で初航行

確かに、自動運転の水上タクシーが実用化されている都市は多くないが、アムステルダムはそのうちの1つになるかもしれない。先に、MITのCSAIL(コンピュータ科学・人工知能研究所)とSenseable City Laboratory(センサブル・シティ・ラボラトリー)の研究者たちは、自律的に航行する完全自動運転型のロボットボートを初めて進水させた。彼らはこのボートを「Roboats(ロボート)」と呼び、現地時間時間10月28日、運河で初航海を行った。

このボートは5人が十分に乗れるほどの大きさで、開発チームは廃棄物の回収や商品の配送などの、人間が操縦するボートで行っている作業にも使えると考えている。映画「Blade Runner(ブレードランナー)」から出てきたようなこの船は、バッテリーで駆動し、ドックに収まっている時にはワイヤレスで充電できる。チームの主張によれば、10時間の運行に十分な電力を搭載しているという。

自律的に進路を決定し、物体への衝突を避けるために、ロボートはLiDARと360度の視界を可能にする多数のカメラを使用している。ナビゲーションは、一般的な自動車のカーナビと同じように、GPSを使って現在地から目的地までの安全なルートを把握する。

アムステルダムの運河を順調に航行中のロボート(画像クレジット:Roboat)

「認識機能、ナビゲーション、制御システムの精度と信頼性が向上し、ラッチングも可能な近接接近モードなど新機能の導入や、 自動船位保持システムが改善されたことにより、今やこのボートは現実世界の水域を航行できるようになりました」と、MIT教授でCSAIL所長のDaniela Rus(ダニエラ・ルス)氏は語る。「ロボートの制御システムは、ボートに乗っている人の数に適応します」。

ロボートの設計で賢明な点の1つは、ユニバーサルプラットフォームを採用していることだ。これはバッテリーや推進システムの収容と併せて多目的に使用できる船体で、トップデッキを交換することによって、さまざまな用途に合わせて活用できる構造となっている。

「ロボートは24時間365日、船長がいなくても業務を遂行できるため、都市にとって大きな価値があります。しかし、安全上の理由から、レベルAの自動運転に到達することが望ましいかどうかは疑問です」と、プロジェクトの主任研究員であるFábio Duarte(ファビオ・ドゥアルテ)氏は語る。「陸にいるオペレーターが、コントロールセンターから遠隔操作でロボートを監視するシステムになるでしょう。1人のオペレーターが50台以上のロボートを監視することで、円滑な運用が可能になります」。

Roboat.orgでは、この技術が作動している様子を見ることができる。

画像クレジット:Roboat

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

システム障害に対応するエンジニアのための共同作業ノートブック「Fiberplane」

アムステルダムを拠点とするFiberplane(ファイバープレーン)は、Googleドキュメントのグループ編集に似た方法で、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)がインシデントに取り組むための共同作業ノートブックを構築している。このアーリーステージのスタートアップ企業は現地時間9月16日、シードラウンドにおける750万ユーロ(約9億7000万円)の資金調達を発表した。

この投資ラウンドは、Crane Venture Partners(クレーン・ベンチャー・パートナーズ)とNotion Capital(ノーション・キャピタル)が共同で主導し、Northzone(ノースゾーン)、System.One(システムワン)、Basecase Capital(ベースケース・キャピタル)が参加した。

通称Mies(ミース)と呼ばれているMicha Hernandez van Leuffen(ミシャ・ヘルナンデス・ファン・ロイフェン)氏は、Fiberplaneの創業者でCEOだ。以前起ち上げたスタートアップのWerker(ワーカー)が2017年にOracle(オラクル)に買収されたことをきっかけに、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はより大きな会社の一員となり、そこで(どこの会社でも起こる)障害への対応に苦労している人々を目にした。

関連記事:WerckerをOracleが買収、コンテナベースのデベロッパープラットホームに既存大手も着目

「私たちは常にメトリクス、ログ、トレースの間を行ったり来たりして、私はいつもこれを宝探しと呼んでいるのですが、機能停止やダウンタイムの根本的な原因を突き止めていました」と、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏は筆者に語ってくれた。

同氏はこの経験から、インシデント対応に関するいくつかの重要な洞察が得られたという。1つ目は、すべてのインシデントデータを集めておく集中的な場所が必要だということ。2つ目は、分散したシステムを管理する分散したチームが、しばしば異なるタイムゾーンを越えて、リアルタイムに協力する必要があるということだ。

2020年8月にOracleを退職した同氏は、DevOps(デブオプス)チームやSREに、組織内の他のチームがGoogleドキュメントやNotion(ノーション)などのツールで行っているのと同じようなグループ編集機能を与えることができないかと考え始め、新会社のアイデアを具体化させていった。

同氏がFiberplaneで作り上げたものは、SREがさまざまな種類のデータを取り込み、インシデントを解決するために共同作業を始めるためのコラボレーションノートブックだ。同時にこのノートブックには、何が起き、どのように問題を解決したかという自然な監査証跡を残すことができる。Googleドキュメントを複数の人が編集できるように、このノートブックにもさまざまな人が参加できるようにすることで、当初の構想を実現している。

複数の人が関わっているFiberplaneのコラボレーションノートの例(画像クレジット:Fiberplane)

しかし、彼はそこで止まるつもりはない。長期的なビジョンとしては、SREやDevOpsチームが障害のあらゆる側面に対応できる運用プラットフォームを目指している。「これは私たちの出発点です。しかし、ここからさらに拡大して、いわばSREのワークベンチとして、インフラを指揮・管理できるものにしたいと考えています」と、同氏は述べている。

現在、Fiberplaneでは13名の従業員が働いており、今も成長を続けている。彼らは、今の彼らがそうであるように、多様性のある会社を作るための方法を模索しており、より多様な候補者を見つけるための具体的な戦略を検討している。

「私たちは多様な人材を雇用するために、当社のトップ・オブ・ザ・ファネルのプロセスを再検討しているところです。当社の取り組みとしては、社会的弱者のコミュニティに求人情報を掲載したり、求人情報の記述をジェンダーデコーダにかけたり、求人情報の公開期間を長くしたりしています」と、Fiberplaneのマーケティングマネージャーを務めるElena Boroda(エレナ・ボロダ)氏は述べている。

ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はアムステルダムを拠点としているが、同社は英国、ベルリン、コペンハーゲン、そして米国でも人材を雇用しているという。従業員の大半がアムステルダムに住んでいるため、オフィスが再開される際にはアムステルダムを中心拠点とする計画だ。

画像クレジット:lemono / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

システム障害に対応するエンジニアのための共同作業ノートブック「Fiberplane」

アムステルダムを拠点とするFiberplane(ファイバープレーン)は、Googleドキュメントのグループ編集に似た方法で、SRE(サイト・リライアビリティ・エンジニア)がインシデントに取り組むための共同作業ノートブックを構築している。このアーリーステージのスタートアップ企業は現地時間9月16日、シードラウンドにおける750万ユーロ(約9億7000万円)の資金調達を発表した。

この投資ラウンドは、Crane Venture Partners(クレーン・ベンチャー・パートナーズ)とNotion Capital(ノーション・キャピタル)が共同で主導し、Northzone(ノースゾーン)、System.One(システムワン)、Basecase Capital(ベースケース・キャピタル)が参加した。

通称Mies(ミース)と呼ばれているMicha Hernandez van Leuffen(ミシャ・ヘルナンデス・ファン・ロイフェン)氏は、Fiberplaneの創業者でCEOだ。以前起ち上げたスタートアップのWerker(ワーカー)が2017年にOracle(オラクル)に買収されたことをきっかけに、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はより大きな会社の一員となり、そこで(どこの会社でも起こる)障害への対応に苦労している人々を目にした。

関連記事:WerckerをOracleが買収、コンテナベースのデベロッパープラットホームに既存大手も着目

「私たちは常にメトリクス、ログ、トレースの間を行ったり来たりして、私はいつもこれを宝探しと呼んでいるのですが、機能停止やダウンタイムの根本的な原因を突き止めていました」と、ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏は筆者に語ってくれた。

同氏はこの経験から、インシデント対応に関するいくつかの重要な洞察が得られたという。1つ目は、すべてのインシデントデータを集めておく集中的な場所が必要だということ。2つ目は、分散したシステムを管理する分散したチームが、しばしば異なるタイムゾーンを越えて、リアルタイムに協力する必要があるということだ。

2020年8月にOracleを退職した同氏は、DevOps(デブオプス)チームやSREに、組織内の他のチームがGoogleドキュメントやNotion(ノーション)などのツールで行っているのと同じようなグループ編集機能を与えることができないかと考え始め、新会社のアイデアを具体化させていった。

同氏がFiberplaneで作り上げたものは、SREがさまざまな種類のデータを取り込み、インシデントを解決するために共同作業を始めるためのコラボレーションノートブックだ。同時にこのノートブックには、何が起き、どのように問題を解決したかという自然な監査証跡を残すことができる。Googleドキュメントを複数の人が編集できるように、このノートブックにもさまざまな人が参加できるようにすることで、当初の構想を実現している。

複数の人が関わっているFiberplaneのコラボレーションノートの例(画像クレジット:Fiberplane)

しかし、彼はそこで止まるつもりはない。長期的なビジョンとしては、SREやDevOpsチームが障害のあらゆる側面に対応できる運用プラットフォームを目指している。「これは私たちの出発点です。しかし、ここからさらに拡大して、いわばSREのワークベンチとして、インフラを指揮・管理できるものにしたいと考えています」と、同氏は述べている。

現在、Fiberplaneでは13名の従業員が働いており、今も成長を続けている。彼らは、今の彼らがそうであるように、多様性のある会社を作るための方法を模索しており、より多様な候補者を見つけるための具体的な戦略を検討している。

「私たちは多様な人材を雇用するために、当社のトップ・オブ・ザ・ファネルのプロセスを再検討しているところです。当社の取り組みとしては、社会的弱者のコミュニティに求人情報を掲載したり、求人情報の記述をジェンダーデコーダにかけたり、求人情報の公開期間を長くしたりしています」と、Fiberplaneのマーケティングマネージャーを務めるElena Boroda(エレナ・ボロダ)氏は述べている。

ヘルナンデス・ファン・ロイフェン氏はアムステルダムを拠点としているが、同社は英国、ベルリン、コペンハーゲン、そして米国でも人材を雇用しているという。従業員の大半がアムステルダムに住んでいるため、オフィスが再開される際にはアムステルダムを中心拠点とする計画だ。

画像クレジット:lemono / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

今後5年で1000万台、世界をリードするスマートeバイクを目指すVanMoofが約141億円調達

アムステルダム発の電動自転車スタートアップVanMoof(ヴァンムーフ)は米国時間9月1日、シリーズCラウンドで1億2800万ドル(約141億円)の資金を調達したと発表した。VanMoofは、一部の市場でかなり人気のあるeバイク(電動アシスト自転車)の設計・販売を行っている企業だ。同社は現在、イタレーションをより速いペースで行うことにより、世界をリードするeバイクブランドになることを目指している。

今ラウンドはアジアを拠点とするプライベートエクイティ企業Hillhouse Investmentがリードし、Booking.com(ブッキング・ドットコム)の元CEOであるGillian Tans(ジリアン・タンズ)氏も参加している。また、Norwest Venture Partners、Felix Capital、Balderton Capital 、TriplePoint Capitalなどの既存投資家も、さらに資金を投入した。

今回のシリーズCは、同社のシリーズBに比べて大きな飛躍を遂げている。2020年、VanMoofは4000万ドル(約44億円)のシリーズBを調達した。全体では、同社はこれまでに総額1億8200万ドル(約200億円)を調達したことになる。

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VanMoofのeバイクに馴染みのない方は、TechCrunchで最新のS3X3の両モデルを以前レビューしている。機能の上では、両者は同じだ。VanMoof X3は、より小さなフレームと小さなホイールを採用している。

VanMoofが一般的なeバイクメーカーと異なる点は、サプライチェーンから顧客体験まで、すべてをコントロールしようとしていることだ。VanMoofのeバイクは、主に街乗り用に設計されたプレミアムeバイクだ。最新モデルの価格は、2298ドル(日本では税込27万5000円)となっている。

同社のeバイクは、電動モーターと電動変速システムを組み合わせているのが特徴だ。4つのギアがあり、自分でギアチェンジをする必要はない。自転車に乗って、ペダルを漕ぐだけだ。

未来的な三角形のフレームが特徴的なS3とX3には、油圧式ブレーキ、ライト、そしていくつかのスマートバイク機能が搭載されている。S3とX3には、アラーム機能付きモーションディテクター、GPSチップ、スマホ接続機能などが搭載されている。

自転車の盗難を報告すると、GPSと携帯電話のチップが稼動し、VanMoofアプリで自転車を追跡することができる。また、Apple(アップル)の「探す(Find My)」アプリにも対応するようになった。

関連記事:アップルの「Find My(探す)」がサードパーティーの電動自転車とイヤフォンをサポート

VanMoofは、既製の部品だけに頼るのではなく、少数のサプライヤーと協力してカスタム部品を製造している。そうすることで、できるだけ多くの中間業者を排除し、コストを抑えられる。これは競合優位性にもつながる。

VanMoofのような企業を成長させるのは、資本集約的なビジネスだ。同社は、世界50都市に小売店とサービス拠点を開設している。もともと欧州でスタートした同社だが、現在は米国がVanMoofにとってもっとも急速に成長している市場となっている。

今回の資金調達により、VanMoofは現在の戦略をさらに強化する予定だ。研ぎ澄まされたデザインとより多くのカスタムパーツを備えた最新のバイクが期待できる。また、世界中に店舗やサービス拠点を増やしていく予定とのこと。そしてオンライン販売の拡大も予想される。

共同設立者兼CEOのTaco Carlier(タコ・カーリエ)氏は、声明でこう述べている。「(この資金調達により)今後5年間で、1000万人の人々に同社のeバイクに乗ってもらうことができます」。ちなみに今のところ、VanMoofのeバイクは15万人に利用されている。

今日の投資は、驚くべきことではない。新型コロナのパンデミックはヨーロッパの都市を変革する計画を加速させ、自動車よりも自転車を優先させる状況を作った。2020年、TechCrunchの同僚であるNatasha Lomas(ナターシャ・ロマス)と私は、パリ、バルセロナ、ロンドン、ミラノの4つの主要都市における主要な政策展開の包括的な概要を書いた。VanMoofは現在、こうした政策の変化の恩恵を受けている。

関連記事:マイクロモビリティで脱自動車を目指すパリ、バルセロナ、ロンドン、ミラノ

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

大学生向けノート共有ネットワークを提供するStuDocuがユーザー数1500万人突破

オンラインで学ぶにしても、直接授業を受ける場合でも、教えられたことを記憶し、応用するための主要な手段として講義で優れたノートを取ることの重要性をすべての生徒が十分に認識しているだろう。アムステルダムを拠点とするスタートアップのStuDocuは、学生が作成した最良の授業ノートを集めて共有するためのプラットフォームで収益性の高い大型ビジネスを構築してきたが、このほど5000万ドル(約54億6000万円)の資金調達を発表した。

シリーズBはフランスのベンチャーキャピタルPartechによるもので、StuDocuがクリティカルマスを獲得しようとする中で行われた。同スタートアップによると、同社のユーザー数は現在、60カ国2000校の大学で1500万人に達しているという。このスケールで注目すべきなのは、規模の大きさだけでなく、同社はかつてはほとんど自己資金で運営を行っており、その間に達成されたという事実だ。PitchBookCrunchbaseの報告によるこれまでの調達額は150万ドル(約1億6400万円)程度となっているが、CEOのMarnix Broer(マルニックス・ブロアー)氏によると、Piton Capital、Peak Capital、Point Nine Capitalなどの既存投資家から1000万ドル(約10億9200万円)弱の資金を密かに調達してきたという。

2020年の新型コロナウイルス感染症の影響下の生活において、EdTech分野で注目されたのは、従来の物理的環境と比較しても遜色ない(あるいはそれ以上の)学習をリモート環境で可能にする技術だった。ストリーミング体験の改善、スクリーンを介した指導アプローチの向上、体験を管理するツールなどだ。StuDocuの事業はどちらの型にも適合するが、ある意味では、学習に関連するより基本的なアプローチ、すなわち授業中に座ってノートを取るということへの回帰でもある。

それが、4人の学生が協働してStuDocuとして最初に作り上げた環境だった。

StuDocuが拠点を置くオランダでは、学部での評価の多くが期末試験の成績に基づいており、ノートの価値はさらにいっそう大きくなっているかもしれない。

CEOのマルニックス・ブロアー氏は、友人のJacques Huppes(ジャック・ハプス)氏、Lucas van den Houten(ルーカス・ヴァン・デン・ホーテン)氏、Sander Kuijk(サンダー・クイーク)氏とともに、まだ学生だった2013年、インターネットとクラウドソーシングの力を活用する機会を見出した。大学で同じコースを学ぶ学生たちがオンラインでつながり、コースからのメモをアップロードして互いにやり取りすることで、スムーズに協力し合うことを可能にするものだ。

(ハプス氏は同社の積極的な職務からは離れてアドバイザーとして活動しており、他の2人は引き続き同社に在籍しているとブロアー氏は述べている)

初期の製品は「完全に無料」で、デルフトの大学だけでなく他の多くの学校でユーザーを集めるほどの人気があったと同氏は語る。その後、創業者たちは卒業を目前にして「ある程度の収益が必要だと判断」し、そのコンセプトを堅持しつつ、自分たちのツールをビジネスにすることに目を向けた。

数回のイテレーションを経て「フリーミアムモデルでできる限り自由を保とうと最終的に考えました」とブロアー氏。StuDocuの場合、ドキュメントの閲覧数、ダウンロード数、推薦度で集計したデータをもとに全ドキュメントの上位20%を構成し、それらをプレミアムとしてラベルづけする。「そうすることで、自分のドキュメントをアップロードする他に、プレミアムにアクセスするために少額の購読料を支払うという選択肢がユーザーに生まれる」。逆にいうと、サイト上のドキュメントの80%は無料のままだ。

StuDocuはまた、同社のプラットフォームにいくつかの技術を組み込んで、詐欺師や不正を企てる者への対策に役立てている。プレミアムコンテンツを判断するための指標となるユーザーはプレミアムユーザー自身に限られており、彼らはサイト上のプレミアムコンテンツがどのようなもので、何がそうでないかを知ることはなく、さらには、StuDocuのより本格的なユーザー、ヘビーユーザーである可能性が高い。

「最高品質のドキュメントを上位に保持し、残りは別に蓄積しますので、ユーザーはすばらしいノートだけを体験できるようになります」と同氏は説明する。「ただし、多少のアップロードのゴミがあっても損をしないことはわかっています。無料でアクセスできるようにするもので、そうなるべきではありません。結局のところ、これはコミュニティであり、質を高く保つことができると信じています」。さらに、宝くじやその他の特典を利用して、ドキュメントを見直すよう奨励している。

また、ユーザーが投稿しているものが、白紙のドキュメントだったり、関係のないランダムな文章だったりするものではなく、目の前にあるテーマに関する実際のメモであるかどうかを判断するために、資料をスキャンする手段も拡大している。さらにブロアー氏によると、先ごろ締結されたAlgoliaとの検索に関する業務提携により、大学やコース単位で検索して資料を探すのではなく、より詳細な文書検索が可能になるという。

これは多くのユーザー生成コンテンツサイトが抱えている問題、つまり圧倒的多数がクリエイターではなく消費者であるという課題を解決するのに役立つ魅力的なビジネスモデルだ。ブロアー氏は、現在ユーザーの約15%が有料サービスを利用しており、15%がコンテンツのアップロードによってアクセスし、70%が無料サービスを利用してアップロードはしていないと概況を語った。

StuDocuは、自分たちのために作ったツールから段階的にビジネスを構築することを通して「スクワットで働く」ことから、インターンと一緒に小規模で低コストのスペースを利用すること、そしてブロアー氏がいうところの「普通のオフィス」へと発展してきたという。

他にも多くのEdTech企業が、生徒たちが互いに学習を手助けできるプラットフォームを提供する可能性を見出している。Brainlyも欧州(具体的にはポーランド)の大手企業で、ノートではなく、学生が互いに助け合って宿題の質問に答えるという、Cheggと類似したコンセプトを確立した。オーストラリアのNexusNotesも、メモを集めるためのプラットフォームを構築している。Academiaはノートだけでなく研究論文も対象としている。Docsityはクラスノートと論文の両方に焦点を当てている。StudySmarterも欧州を拠点にしており、ノート機能に加えて、学習の進歩をかたち作るためにAIを活用している。

おそらく最も類似性が高く、StuDocuの最大の競合である米国企業Course Heroは、現在の評価額が約11億ドル(約1200億円)とされている(注目すべき数字だが、StuDocuは評価額を公表していない)。

「私たちは世界をリードする企業であると認識しています」とブロアー氏は語り、コースやノートのカタログ全体で30以上のローカル言語をサポートしていることを示した。

「数百万人にのぼる学生を支援し、膨大な数のドキュメントを保有していますが、同時に私たちは自らをハイパーローカル型マーケットプレイスと捉えています」と同氏は付け加えた。「同じ法学コースにいる300人が、お互いにコミュニケーションを取り、知識を共有できるようになりました」。

今回の資金調達は、ハイパーローカルコンセプトをより広範囲に拡大するだけでなく、来るべき支援がより大きな影響を与え得る機会を利用するという、興味深い試みになるだろう。

例えば英国では、他の年齢層に比べて、大学より下の年齢層の高校生(14歳以上)が多くなってきている。彼らの大多数は、2つのセットの試験に備えるために勉強している。GCSEは11年目(通常16、17歳)に、Aレベルは13年目(18、19歳)に受験する。どちらも極めて限定的な科目に基づいており、文字通り国全体が共同で学ぶという非常に特殊なカリキュラムに準拠している。つまり、個々の学校や教師が異なったアプローチをとったり、良い教え方をしたり、悪い教え方をしたりしても、最終的にはすべての生徒が指定科目で同じ試験を受けることになる。

これはStuDocuのような企業にとって興味深い機会である。大きなユーザーネットワークを構築することができ、その結果、貢献度の高い強力なノートの割合は少なくて済む(より多くのユーザーが同じ素材を必要とするため)。このモデルは他の地域でも採用されており、ブロアー氏によると、StuDocuはこの種の市場でテストを進め、徐々に拡大してきているという。

標準化されたテストが方程式の一部ではなかったとしても、学生は、エッセイの執筆などの他の種類のコースワークに使用するために、または単に学習を続けながら知識を保持するのに役立つように、より良いノートを必要とすることが考えられる。現在約2億人が大学教育を受けており、この前提において多様性を見出す機会は多いと言えるだろう。

また将来的には、多くの教授が学生に講義用のノートを提供することを考慮すると、大きな領域となるコース教材を構築するために大学とより緊密に協力する可能性もあるかもしれないが、ブロアー氏は、多くの場合教授はまだそうしたことを実行していないため、当面は学生とそのニーズに焦点を当てるとしている。

StuDocuの資金調達に投資家が参加しているのは、これまでに述べたすべての理由からだろう。

PartechのゼネラルパートナーであるBruno Crémel(ブルーノ・クレメル)氏は声明の中で「StuDocuはすでに世界中の何百万人もの学生を支援しているプラットフォームであり、教育を誰もが利用しやすいものにするというミッションのもと、この才能あるチームとパートナーになることを喜ばしく思います」と述べている。「StuDocuのチームに出会ったとき、私たちはそのデータ駆動型の文化と、学生たちがそのサービスをとても気に入っていることに非常に感銘を受けました。ブロアー氏とそのチームがStuDocuのグローバル展開を加速させ、学生たちが学習目標を達成するのを支援する革新的な方法をさらに開発してくれることを楽しみにしています」。

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カテゴリー:EdTech
タグ:StuDocu資金調達アムステルダムオランダ大学生

画像クレジット:Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)