アップル、Siriに「性別の区別が明確につかない声」を追加

Apple(アップル)が、男性とも女性とも明らかな区別がつかない新しいSiri(シリ)の音声を開発した。このSiriの声は、iOS 15.4のベータ版で、言語を「英語(アメリカ合衆国)にすると利用可能になる。アップルは歴史的に、同社のデジタルアシスタントが不当な性差の固定観念を強化してきたという批判を受けてきた。今回のジェンダーニュートラルな音声を導入するという決定は、この大手テクノロジー企業がその批判から、また一歩距離を取るためのものと見ることができる。

長年にわたり、業界のオブザーバーや専門家は、Alexa(アレクサ)、Siri、Cortana(コルタナ)といった女性っぽい名前の音声アシスタントが作られ、それも女性っぽい声で話すことは、女性がいつでも言いなりになり、虐待さえ甘んじて受けるべきという考え方を暗示するものだと主張してきた国連の研究では、女性の声のアシスタントが従順で、時には媚びるようにさえ感じられることを指摘している。

さらに問題なのは、多くのバーチャルアシスタントをデフォルトで女性に設定するという決定は、私たちの日常的なテクノロジーの構築を担うチームに多様性が欠けているために行われている可能性が高いということだ。この問題は、AI音声の軽率な選択につながるだけでなく、女性にとって便利なツールの進化を遅らせる原因にもなってきた。例えば、人類の約半数に関連する健康指標であるにもかかわらず、アップルが「ヘルスケア」アプリに生理日追跡機能を搭載すべきだと気づくまでに何年もかかったのだ。

アップルは2021年、その信用を得るために、Siriの声に関する懸念に対処し、より多様な声を追加したアップデートを配信した際に、Siriの声がデフォルトで女性に設定されないようにした。

関連記事:アップルが英語圏のSiriに2つの新たな声を追加、「女性」の声のデフォルト設定は廃止に

しかし、AIの音声アシスタントの性別について、まったく考えなくて済むとしたらどうだろう?

それは明らかに、今回Siriに5番目の声を追加した意図である。アップルはまだそうはっきりと明言しているわけではないが。

しかし、iOSソフトウェアのコードを見れば、アップルの考え方を知るためのいくつかのヒントを得ることができる。

開発者のSteve Mosser(スティーブ・モッサー)氏は、iOS 15.4ベータ版の初期のバージョンで、性的区別のないSiriの声への参照を見つけ、今週には米国向けに用意された5番目のSiriの声が「Quinn(クイン)」というファイル名でベータ4に追加されたことを指摘した

Quinnはアイルランドを起源とする名前で、性別にとらわれない名前として知られ、長年にわたって男の子にも女の子にも使われてきた。これが新しいSiriの声にもなっているのは、偶然ではないだろう(ただし、アップルは音声ファイル名をエンドユーザーには表示しておらず、ユーザーインターフェース上では「声 1」「声 2」「声 3」等と表示される)。

Quinnの声は聞く人によって、少し女性っぽく、あるいは男性っぽく聞こえるかもしれない。だが、男性か女性かどちらかに決めて聞くようにすれば、その通りに解釈されるようになるだろう。

しかも、この新しい声は、ひと昔前のようなロボット的な調子に戻ることなく、性別を超えて聞こえるのだ。以前から他のSiriの声で聞かれるような自然な抑揚と滑らかな移行があり、人間らしい声であることに変わりはない。

アップルはTechCrunchに、新しい声はLGBTQ+コミュニティのメンバーによって録音されたと述べている。その自然な音声には、Neutral Text to Speech(ニューラル・テキスト・トゥ・スピーチ、Neural TTS)技術が活用されている。英語圏の音声はすべてNeural TTSを使用しており、他の6言語(フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、日本語、韓国語)の音声も同様だ。ユーザーは、デバイスの設定とSiriの音声を選択する際に、合計16の言語から選択することができる。

インクルージョンに関してアップルは、Siriの音声だけでなく、デジタルアシスタントの発言にも力を注いできたた。過去数年の間に、アップルは「Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)」や「Stop Asian Hate(ストップ・アジアン・ヘイト)」に関するSiriの応答を追加し、ジェンダーやセクシュアリティに基づく暴言に対する強い応答を導入してきた。同社はまた、Speak Screen(スピークスクリーン、画面を読み上げ)、Dictation(ディクテーション、音声によるテキスト入力)、Voice Control(ボイスコントロール、音声コントロール)といった、数々の音声アクセシビリティ機能も導入してきた。

「私たちは、英語を話す人向けに新しいSiriの声を導入し、ユーザーが自分に話しかける声を、より多くの選択肢の中から選べるようにできることを大変うれしく思います」と、アップルの広報担当者は、新しいSiriの声について問い合わせた我々に答えた。「私たちが住む世界の多様性をより良く反映した製品とサービスを開発するというアップルの長年のコミットメントの一環として、私たちは2021年、2つの新しい音声を導入し、音声のデフォルト設定を廃止しました。世界中の何百万人もの人々が、毎日何かをするためにSiriを頼りにしています。そのため、私たちはできるだけパーソナライズされた体験が感じられるようにしようと力を入れています」と、アップルの広報では述べている。

新しい音のオプションは、3月中に配信が予想されるiOS 15.4で、英語話者向けに導入される予定だ。

画像クレジット:Thomas Trutschel / Contributor / Getty Images

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップル、iOS 15.2でSiri専用の「Apple Music Voiceプラン」を開始

Apple(アップル)が、秋のハードウェアイベントで発表したApple Musicの低価格プラン「Voiceプラン」へのアクセスを開始する。このサービスは。ほぼHomePodのスピーカーとAirPods専用で、主にSiriのコマンドでApple Musicにアクセスする。音声だけで操作するこのシンプルなバージョンは、標準の個人プランの月額9.99ドル(税込980円)に対して、月額4.99ドル(税込480円)で提供される。

関連記事:アップルがSiriでのみ利用できる安価なApple Music Voiceプランを発表、月額480円

音楽の新サブスクリプションはiOS 15.2のさまざまなアップデートの一環で、他にもアプリのプライバシー報告や、メッセージの子どもの安全警告「メールを非公開」によるプライバシー機能などがある。

音声コマンド専用の音楽サブスクなんて誰が必要とするんだ?と疑問に思った人もいるかもしれないが、実のところ、初めてそれを提供するのはAppleではない。

2019年、Amazon(アマゾン)はAmazon Musicサービスをもっと手頃な価格で提供する方法として無料で広告入りのプランを、Echoスピーカー専用として用意した。つまりそれは、AlexaのコマンドからしかアクセスできないAmazon Musicだった。

今回のSiriだけサービスもそれと似ているが、Appleのスマートスピーカーだけに限定されていない。AppleによるとHomePod、AirPods、iPhone、CarPlayなど、Siri対応のデバイスなら何でもよいとのことだ。

この音声オンリーのプランは、曲数が少ないApple Musicの簡易バージョンではない。これまでのサブスクと同じく、会員はApple Musicのカタログに載っている9000万曲や数万のプレイリスト、数百種類のムード、アクティビティプレイリスト、個人化されているミックス、ジャンル別のステーションなどにアクセスできる。Apple Music Radioも含まれている。

このコンテンツにアクセスするために、ユーザーは曲やアルバムやアーティストをSiriにリクエストし、おそらくは「play something chill(チルな曲をプレイして)」や「play the dinner party playlist(ディナーパーティー用のプレイリスト)」「play more like this(こんな曲をもっと)」といった音声コマンドでジャンルやプレイリストを指定するだろう。

Voiceプランの会員は、Apple Musicアプリをある程度利用できる。しかし通常のようにライブラリ全体を閲覧するのではなく、「今すぐ聴く」に先にプレイされた曲が表示され、タップやSiriのコマンドでそれに似た曲を聴くことができる。「ラジオ」は、ライブやオンデマンドのラジオにアクセスできる。検索機能もあるが、検索結果の曲はSiriに要求しないと再生されない。アプリには、Apple Music向けにSiriを最適化する方法も紹介されている。

Siriへのフィードバックは「I like this song(この曲は好き)」とか「I don’t like this song(この曲は好きではない)」などといえばよい。Siriは、歌手の名前や、曲名、アルバム名、発売年なども教えてくれる。

音声でApple Musicに付き合うことは、Siriを訓練することにもなり、ユーザーの好みをよく理解するようになる。そうなると、Siriに「play some music I like(私が好きな音楽をかけて)」や「play my favorites mix(私の好きなミックスをかけて」」などとお願いすると、そのとおりの曲をかけてもらえるようになるだろう。

AmazonのEchoオンリープランに対抗し、Apple MusicのVoiceプランはユーザーのSiriの利用履歴にAppleがアクセスできるようにしている。そしてそのデータを利用して、AlexaやGoogleアシスタントと比べて後塵を拝しているプロダクトを改良することができる。より大きな意味では、有料の音楽サービスを利用することをためらっていたお金に敏感なユーザーに、初めてそれを試してもらう機会になる。広告のない音楽をオンデマンドで聴けることの良さに目覚めたら、Pandoraの広告入りバージョンから離れるかもしれない。

関連記事:安価なApple Music VoiceプランはSiriの改良を進める作戦である可能性が高い

iOS 15.2のアップデートにより、Apple Music Voiceが提供されるのは、オーストラリア、オーストリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港、インド、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、スペイン、台湾、英国、米国となる。

画像クレジット:Apple

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

安価なApple Music VoiceプランはSiriの改良を進める作戦である可能性が高い

Apple(アップル)は、先に開催したイベントで数多くの興味深い発表を行った。その中で私が特に注目した、かつあまり注目されていないように思えたのが、Apple Musicの新しい料金プランだった。新しい「Voice」プランでは、Apple Musicの全ライブラリを月額5ドル(日本では税込月額480円)という低価格で利用できる。ただし、Siriを使ってアクセスしなければならず、Apple Musicの標準的なビジュアルと入力しやすいアプリ内のユーザーインターフェイスは使用できない。

関連記事
アップル発表イベント「Unleashed(パワー全開)」に登場した新製品まとめ
アップルがSiriでのみ利用できる安価なApple Music Voiceプランを発表、月額480円

Appleは、このプランを開始する理由を明らかにしていないが、iPhoneメーカーとしては、音声アシスタントの学習と改良のために音声データをより多く収集したいため、価格の障壁を低くして、より多くの人にSiriを使ってもらおうとしているのではないかと推測するのが妥当だと思う。

AppleのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、このイベントで「より多くの人が、声だけでApple Musicを楽しめるようになることをうれしく思います」と述べていた。

このApple Music Voiceプランが存在する理由として、他に説得力のあるものが考えられない。特に、Apple Music上の曲目全体を提供するために、Appleはレーベルとのライセンス契約を変えていないため、標準プランよりもはるかに低いマージンでこの新サービスを提供していると思われる。

繰り返しになるが、これは単なる推測だ。ただ、AppleとSpotify(スポティファイ)間の厳しい競争を考えると、スウェーデンの会社がApple Musicを価格で打ち負かすために自社のストリーミングサービスを月額7~8ドル(月額税込980円)で提供できるのであれば、そうするのではないだろうか。そしてAppleは、どうしても膨大なデータを集めたいがために、新しいサブスクリプションプランであえて多少の損失を出しているのではないだろうか。私がこの説をツイートしたとき、同僚のAlex(アレックス)は、ではなぜAppleはサブスクリプションを無料にしないのかと疑問を抱いていた。2兆5000億ドル(約285兆円)規模の企業であるAppleは、技術的にはバランスシート上でそれだけの打撃を飲み込むことができると思うが、Spotifyのような独立した音楽ストリーミング企業からの批判をこれ以上集めたくはないのだろう。同社はすでに、さまざまな分野で反競争的な行為を行っているという批判を受けている。

テクノロジー企業は、AIモデルに膨大な量のデータを与え、サービスの機能を向上させている。Siriが長年にわたってかなり改良されてきたとしても、テック業界で働く多くの人々や大衆の間では、Amazon(アマゾン)のAlexaやGoogle Assistantの方がはるかに優れているというのが一般的な意見だ。

Appleはすでにこのような音声データを、Apple Musicの既存ユーザーから取得していると思われるが、ある友人が言ったように「要は、この機能はもともとあった。ただ、高い有料の壁を設置していただけだ。今回、彼らはその壁を低くしたということ」。新プランでMusicを音声操作のみにしたことで、参入障壁が下がっただけでなく、ユーザーはSiriを使わなくてはいけなくなった。SiriはApple Musicの標準加入者向けの機能だが、ほとんどのユーザーは基本的に、もしくは意図的にアプリのUIを使ってコンテンツにアクセスする可能性が高いと思われる。

音声アシスタントに「音声優先」や「音声のみ」のサービスを求めるとどうなるかわかる例として、AmazonのAlexaを見てみよう。Alexaは、最初から音声でアクセスしなければならなかった。これにより、AmazonはAlexaのアルゴリズムのために大量の学習データを収集することができただけでなく、Alexaを最大限に活用する方法についてユーザーをトレーニングすることもできた。

私の理論が正しいと思うもう1つの理由は、Appleがこの新しいサブスクリプションを最初に提供する予定の国についてだ。オーストラリア、オーストリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港、インド、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、スペイン、台湾、英国、米国だ。

インド、スペイン、アイルランド、フランスが第一陣に名を連ねているのは、Appleが世界中のさまざまな言葉を集めようとしていることを意味している。ところで、インドなどの発展途上国や、中国や日本など、テキスト入力が音声に比べて不必要に複雑になることがある市場では、音声検索が非常に人気がある(世界第2位のスマートフォン市場であり、約98%のパイをAndroidが占めているインドで、音声検索が驚くほど大量に採用されたことで、Googleアシスタントの改良や、音声分野での革新に向けたより積極的なアプローチが可能になったと、Googleの幹部が話してくれたことがある)。

Siriは、他の音声アシスタントと比較して、その能力の点でやや遅れをとっていると言われているが、Appleのサービスにおける新しい動きは、顧客に音楽ストリーミングサービスに参加するための割安な方法を提供するためのものでもある一方で、この認識されているギャップを埋めるための試みでもあると捉えられるだろう。

画像クレジット:Heng Qi / Visual China Group / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アップルがSiriでのみ利用できる安価なApple Music Voiceプランを発表、月額480円

Amazon(アマゾン)は2019年に、同社のEchoスピーカーでストリーミングする広告つき無料音楽サービスの提供を開始し、家庭でAmazon Musicをストリーミングするより手頃な方法を導入した。そしてApple(アップル)は米国10月18日「Voiceプラン」というApple Musicサブスクリプションの新しい低価格バージョンをデビューさせてAmazonを追撃する。Amazonのサービスと違って、Voiceプランは無料ではない。従来のものよりも安い月額4.99ドル(日本では月額480円)の広告なしのサブスクで、Siriの音声コマンドでのみApple Musicにアクセスできるようになっている。

本日開催されたイベントで同社が説明したところによると、新しいVoiceプランでは、今秋のサービス開始時にはまず17カ国でSiriを使ってApple Music内の曲やプレイリスト、すべてのステーションを再生できるようになる。気分や活動に応じた一連の新しいプレイリストや、パーソナライズされたミックス、ジャンル別のステーションにもアクセスできる。つまり、例えば、ディナーパーティーのための音楽や、1日の終わりに気持ちを落ち着かせるための音楽をSiriに流してもらえるようになる。何百もの新しいプレイリストが利用できるようになる、とAppleは話した。

SpotifyやAmazon Music、PandoraなどApple Musicのライバルは、すでにこうした機能を何年も前から提供している。なのでこれは、Appleがムードやアクティビティに合わせて選べるさらに豊富になったプレイリストでもってこの分野でのライバルに追いつこうとしていることになる。現在のところ、Apple編集のプレイリストは「Favorites Mix」「Chill Mix」「New Music Mix」「Get Up Mix」などのパーソナライズされたプレイリストを含む「Made for You」のラインナップに限られている。

新しいVoiceプランは「すべてのAppleデバイス」でApple Musicにアクセスするのに使えるとしているが、AmazonがEcho向けに提供している無料の音楽ストリーミングと同様、HomePodを念頭に置いて設計されたことは明らかだ。スマホやタブレット、パソコンなど、画面のあるデバイスを使っている場合、Siriに話しかけて音楽を再生するのは必ずしも理に適うものではない。しかし、主にAirPodsでApple Musicを聴いていて、すべてのコマンドを話すことに抵抗がない人にとっては、このサービスは興味深いものかもしれない。

Appleによると、このサービスはiPhoneをはじめiPad、Mac、Apple TV、Apple Watchなどのデバイスに加え、CarPlayでも利用できるという。

Apple Music加入者は、自分の音楽の好みに基づいた提案や、Siriを通じて最近再生した音楽のキューを表示する、カスタマイズされたアプリインターフェイスを目にする。また「Just Ask Siri」というセクションもあり、そこではSiriをApple Musicに最適化する方法を紹介している。

Apple Musicの他のサブスクには「個人プラン」と「ファミリープラン」があり、それぞれ月額9.99ドル(日本では月額980円)、月額14.99ドル(月額1480円)となっている。新Voiceプランも個人プランと同様に、1つの契約で利用できるのは1人に限定されている。このプランでは、9000万曲を超えるApple Musicの全カタログにアクセスすることができる。

画像クレジット:Apple

Voiceプランはオーストラリア、オーストリア、カナダ、中国本土、フランス、ドイツ、香港、インド、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、スペイン、台湾、英国、米国で提供される。

Siriを使って音楽をリクエストしている非加入者にもこのサービスを販促するとAppleはいう。非加入者はVoiceプランを7日間無料で試すことができ、自動更新はない。

新サービスの開始に合わせて、Appleは第3世代の新しいAirPodsと、カラフルなHomePod miniスマートスピーカーのラインナップも発表した。

関連記事
アップルが新デザインのAirPods(第3世代)発表、空間オーディオ対応
アップルのHomePod miniに新色イエロー、オレンジ、ブルー登場

画像クレジット:Apple

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトがTeamsのアップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成も

マイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能も

米マイクロソフトはビデオ会議ツール「Microsoft Teams(以下、Teams)」における、今後の機能追加のスケジュールを明かしています。

今年5月に企業向けだけでなく、個人向けにも提供が始まったTeams。また同月には大画面スクリーンや専用カメラ、空間オーディオなどを組み合わせた未来のビデオ会議のコンセプトも披露されています。

さて今回の発表によれば、Teamsにはプレゼンテーションツール「PowerPoint」の画面共有ツール「PowerPoint Live」におけるカメオ機能が追加されます。これはピクチャー・イン・ピクチャーのように、PowerPoint資料映像に自分の顔や上半身映像(動画)を合成する機能で、来年初頭にリリースされる予定です。マイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能もマイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能も

さらに2022年初頭には、AI(人工知能)を利用したスピーチの改善機能「スピーカーコーチ」も導入されます。同機能ではスピーチのペースや出席者に確認するタイミングをアドバイスしてくれたり、あるいは聴衆にチェックインするようにリマインダーを表示したりします。

今月末には、米アップルのCarPlayによる音声での会議参加が可能に。自動車の中からでも、Siriを利用してミーティングに加わることができます。マイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能もマイクロソフトがTeamsの大幅アップデート予告、アップルCarPlay対応やパワポ映像へのピクチャー・イン・ピクチャー合成機能も

照明の自動調整ツールも、数ヶ月以内に導入されます。Teams Mobileのコンパニオンモードも改善され、チャットやライブリアクションなどの機能への簡単なアクセス、さらにカメラなどの接続デバイスのコントロールが可能になります。

Jabra、Neat、Poly、Yealinkなどが提供する、インテリジェントカメラへの対応も予定。AIによる会話者の判断機能では音声だけでなく視覚的な合図も利用し、画面を切り替えられます。また同じ場所にいる会話者をそれぞれのビデオペインに配置する複数ビデオストリームや、会話者のプロフィールを下部に表示する人物認識ツールなども、数ヶ月以内に導入される予定です。2022年に導入されるOutlookのRSVP(簡易返答)機能では、自分が会議に直接参加するのか、あるいは遠隔地から参加するのか、勤務時間にいつ、どこで仕事をできるのかを記入できるようになります。

このように、新機能が次々と導入される予定のTeams。ビデオ会議ツールとしてはTeamsだけでなく、Zoomや米GoogleのGoogle Meetが激しいシェア争いを繰り広げており、今後もさらなる機能改善が業界全体で実施されることになりそうです。

(Source:MicrosoftEngadget日本版より転載)

【インタビュー】アップルのプライバシー責任者、児童虐待検出機能とメッセージアプリの通信の安全性機能への懸念について答える

先にApple(アップル)は、同社の端末を使う児童の安全性の向上を目的とした一連の新機能を発表した。この新機能はまだリリースされていないが、2021年後半にはダウンロード配信される予定だ。これらの機能は、未成年の保護と児童性的虐待画像の拡散を抑えることをも目的としており、良い機能として受け入れられているものの、アップルが採用しているやり方に疑問の声が上がっている。

関連記事:アップルがiCloud上の児童虐待画像を検出する新技術「NeuralHash」導入へ

この記事では、アップルのプライバシー担当責任者Erik Neuenschwander(エリック・ノイエンシュバンダー)氏に、アップル製端末に搭載されるこれらの新機能について話を聞いた。同氏は、この機能についてユーザーが抱いている多くの懸念について丁寧に回答してくれた。この機能の導入後に発生する戦術的、戦略的な問題についても詳しい話を聞くことができた。

また、密接に関連しているが、同じような目的を持つ完全に独立したシステム群であるこれらの機能の導入についても話を聞いた。アップルは今回3つの機能を発表しているが、これらの機能はその守備範囲においても、一般ユーザーの間でも、混同されることが多いようだ。

iCloud写真でのCSAM検出NeuralHashと呼ばれる検出システムは、全米行方不明・被搾取児童センターやその他の組織のIDと照合可能なIDを作成し、iCloud写真ライブラリにある既知のCSAMコンテンツを検出する。大半のクラウドプロバイダーでもユーザーライブラリをスキャンしてこうした情報を取得しているが、アップルのシステムは、クラウド上ではなく端末上でマッチングを行う点が異なる。

メッセージアプリの通信の安全性親がiCloudファミリーアカウントで未成年向けにオンにできる機能。画像を表示しようとする子どもたちに、その画像には露骨な性的表現が検出されていることを警告し、親にも同じ警告がなされることを通知する。

Siriと検索への介入:Siriや検索を介して児童性的虐待画像関連の表現を検索しようとするユーザーに介入して、そのユーザーに介入を通知し、リソースを紹介する。

これらの機能の詳細については、当社の記事(上記にリンクがある)またはアップルが先に投稿した新しいFAQを参照いただきたい。

関連記事:アップルがメッセージアプリで送受信される性的な画像を検知し子どもと親に警告する新技術を発表

筆者は、個人的な体験から、上記の最初の2つのシステムの違いを理解していない、あるいは、自分たちの子どもの無害な写真でも何らかのフィルターに引っかかって厳しい調査を受ける可能性があると考えている人たちがいることを知っている。ただでさえ複雑な内容の発表に混乱を生じさせる結果となっているようだ。この2つのシステムはもちろん、組織がすでに虐待画像と認識しているコンテンツと完全に一致するコンテンツを検索するCSAM検出システムとは完全に別個のものである。メッセージアプリの通信の安全性では、すべての処理が端末上で実行され、外部には一切報告されない。単に、端末を使っている子どもに、性的に露骨な画像を表示しようとしている、またはその可能性があることを、その場で警告するだけである。この機能は親によるオプトイン方式となっており、有効化されていることを親も子どもも意識する必要はない。

アップルのメッセージアプリの通信の安全性機能(画像クレジット:Apple)

また、端末上で写真をハッシュ化しデータベースを使って比較対照できるIDを作成する方法についても疑問の声が上がっている。NeuralHashは、写真の高速検索など、他の種類の機能にも使用できるテクノロジーだが、iPhone上では今のところCSAMの検出以外には使用されていない。iCloud写真が無効になっている場合、この機能は、まったく動作しない。これにより、この機能をオプトアウトできるようにしているのだが、iCloud写真がアップルのオペレーティングシステムに統合されていることの利便性を考えると、オプトアウトすることで失うものが非常に大きいことは明らかだ。

エリック・ノイエンシュバンダー氏へのインタビューでは、これらの新機能について考えられるすべての質問に答えているわけではないが、アップルの上級プライバシー担当者による公開の議論としては、最も詳細な内容になっている。アップルがこれらの新機能の内容を公開しており、継続的にFAQを更新し、記者会見を開いていることから、同社はこのソリューションに明らかに自信を持っているように思われる。

この機能については、さまざまな懸念や反対意見があるものの、アップルは、必要なだけ時間をかけてすべての人たちに納得してもらうことに尽力しているようだ。

このインタビューはわかりやすくするために編集されている。

ーーー

TC:大半の他のクラウドプロバイダーは、すでにCSAM画像のスキャンをかなりの期間実施していますが、アップルはまだ行っていません。現在、サーバー上でCSAM画像の検出を行うことを強制する規制はありませんが、EUやその他の国では規制による混乱が起こっています。今回の新機能はこうした動きを受けてのことでしょうか。なぜ、今なのですか。

なぜ今リリースするのかという点については、児童の虐待からの強力な保護とユーザーのプライバシーのバランスをとるテクノロジーが実現したということに尽きます。アップルはこの分野にかなりの期間注目してきました。これには、クラウドサービス上のユーザーのライブラリ全体をスキャンする最先端の技術が含まれますが、ご指摘のとおり、アップルはこうした処理、つまりユーザーのiCloud写真を走査するという処理を行ったことがありません。今回の新システムもそうした処理は一切行いません。つまり、端末上のデータを走査することもなければ、iCloud写真に格納されているすべての写真を走査することもありません。では、何をやっているのかというと、既知のCSAM画像が蓄積し始めているアカウントを特定する新しい機能を提供しているのです。

ということは、この新しいCSAM検出テクノロジーが開発されたことが重要な転機となって、このタイミングで今回の機能をリリースすることになったというわけですね。しかも、アップル自身も満足のいく形で、なおかつユーザーにとっても「良い」方法でこの機能を実現できると考えていると。

そのとおりです。この機能には、同じくらい重要な2つの目的があります。1つはプラットフォーム上での児童の安全性を向上させること、もう1つはユーザーのプライバシーを保護することです。上記の3つの機能はいずれも、上記の2つの目的を実現するテクノロジーを組み合わせることで実現されています。

メッセージアプリの通信の安全性機能とiCloud写真でのCSAM検出機能を同時に発表したために、両者の機能と目的について混乱が生じているようです。これらを同時に発表したことは良かったのでしょうか。また、この2つが別個のシステムなら、なぜ同時に発表されたのでしょうか。

確かにこれらは2つの別個のシステムですが、Siriと検索における当社による介入の増加に伴って開発されたものです。アップルのiCloud写真サービスの中の既知のCSAMのコレクションが格納されている場所を特定することも重要ですが、その上流部分を特定することも重要です。上流部分もすでにひどい状況になっています。CSAMが検出されるということは、すでにレポートプロセスの処理対象になったことのある既知のCSAMが存在しており、それが広範囲に共有されて子どもたちが繰り返し犠牲になっているということです。そもそも最初にそうした画像が作成される原因となった虐待があり、そうした画像の作成者がいたはずです。ですから、そうした画像を検出することも重要ですが、人々が問題のある有害な領域に入ろうとするときに、あるいは、虐待が発生し得る状況に子どもたちを仕向ける虐待者がすでに存在している場合に、早期に介入することも重要です。メッセージアプリの通信の安全性と、Siriおよび検索に対する当社の介入は、まさにその部分に対する対応策です。つまり、アップルはCSAMに至るまでのサイクルを遮断しようと試みているのです。最終的にはCSAMがアップルのシステムによって検出されることになります。

iCloud写真システムにおけるアップルのCSAM検出プロセス(画像クレジット:Apple)

世界中の政府と政府機関は、何らかのエンド・ツー・エンドまたは部分的な暗号化を組織内で使用している大規模組織に常に圧力をかけています。政府機関は、バックドアや暗号解読手段に賛成する理論的根拠として、CSAMやテロにつながる可能性のある活動を抑えることを挙げることがよくあります。今回の新機能および端末上でのハッシュ照合を実現する機能をリリースするのは、それらの要求を回避し、ユーザーのプライバシーを犠牲にすることなく、CSAM活動を追跡し防止するために必要な情報を提供できることを示すための取り組みでしょうか。

最初に、端末上での照合についてですが、このシステムはマッチング結果を(通常マッチングと考えられているような方法で)端末または(端末が作成するバウチャーを考えている場合でも)アップルに公開しないように設計されている、という点を申し添えておきます。アップルは個々の安全バウチャーを処理することはできません。このシステムは、あるアカウントに、違法な既知のCSAM画像に関連付けられたバウチャーのコレクションが蓄積した時点で初めて、そのユーザーのアカウントについて調査できるように設定されています。

なぜそんなことをするのかというと、ご指摘のとおり、これはユーザーのプライバシーを保護しながら検出機能を実現するための仕組みだからです。我々の動機となっているのは、デジタルエコシステム全体で児童の安全性を高めるためにもっと多くのことを行う必要があるという事実です。上記の3つの機能はすべて、その方向への前向きな一歩になると思っています。同時に、アップルが、違法行為に関わっていない人のプライバシーを侵害することも一切ありません。

端末上のコンテンツのスキャンとマッチングを可能にするフレームワークを作成するというのは、法的執行機関の外部のフレームワークを作るということでしょうか。つまり「アップルはリストを渡します。ユーザーのデータをすべて検索するようなことはしたくありませんが、ユーザーに照合して欲しいコンテンツのリストを渡すことはできます」ということでしょうか。そのリストをこのCSAM画像コンテンツと照合できるなら、探しているCSAM画像以外のコンテンツとも照合できますよね。それは、アップルの現在の考え方、つまり「アップルはユーザーの端末を復号化できない。端末は暗号化されていて、我々はキーを持っていないのだから」という立場を損なうことになりませんか。

その立場は一切変わりません。端末は依然として暗号化されていますし、アップルは復号化キーも持っていません。今回の新システムは端末上のデータに対して機能するように設計されています。アップルが作成したのは端末側コンポーネントです。プライバシーを向上させる端末側コンポーネントも含まれています。サーバー上のユーザーデータをスキャンして評価するやり方もあったわけですが、そのほうが(ユーザーの承認なしに)データを自由に変更できるし、ユーザーのプライバシーも低いのです。

今回のシステムは、端末側コンポーネントとサーバー側コンポーネントで構成されています。端末側コンポーネントは、バウチャーを作成するだけで何も認識しません。サーバー側コンポーネントには、バウチャーと、アップルのサービスに入ってくるデータが送信され、当該アカウントについて、違法なCSAM画像のコレクションが存在するかどうか調査されます。つまり、サービス機能です。話が複雑になりますが、このサービスの機能に、バウチャーが端末上に作成される部分が含まれているのですが、何度も申し上げているとおり、端末上のコンテンツの内容が認識されることは一切ありません。バウチャーを生成することで、サーバー上ですべてのユーザーのコンテンツを処理する必要がなくなりました。もちろん、アップルはiCloud写真の内容を処理したことも一切ありません。そのようなシステムは、プライバシー保護の観点から、より問題を起こしやすいと思います。ユーザーに気づかれずにシステムを本来の設計意図とは異なるものに変更できてしまうからです。

このシステムに関して大きな疑問が1つあります。アップルは、CSAM画像以外のコンテンツをデータベースに追加して端末上でチェックするよう政府やその他の機関から依頼されたら拒否すると明言しました。アップルには、ある国で事業展開したければ、その国の法律に最高レベルで準拠しなければならなかった例が過去にあります。中国の件が良い例です。政府からシステムの意図的改ざんを要求または依頼されても、アップルは、そうした干渉を一切拒否するという約束は本当に信頼できるのでしょうか。

まず、このシステムは米国内でのみ、iCloudアカウントのみを対象としてリリースされます。ご質問では国全般または米国以外の国からの要請を想定されているようです。少なくとも米国の法律では、こうした要請を政府が行うことは許されていないと思われます。

システムを改ざんする試みについてですが、このシステムには、多くの保護機能が組み込まれており、児童虐待画像を保持している個人を(政府が)特定するにはあまり役立たないようになっています。ハッシュリストはオペレーティングシステムに組み込まれるのですが、アップルは1つのグローバルなオペレーティングシステムのみを所有しており、個々のユーザー向けにアップデートを配信することはできません。ですから、ハッシュリストはシステムを有効にしているすべてのユーザーに共有されます。第2に、このシステムでは、(バウチャーの中身を見るには)画像のしきい値を超える必要があるため、個人の端末または特定のグループの端末から単一の画像を探し出すことはできません。というのは、システムはアップルに、サービスに保存されている特定の画像について一切情報を提供しないからです。第3に、このシステムには手動によるレビュー段階が組み込まれています。つまり、あるアカウントに、違法なCSAM画像のコレクションが保存されていることを示すフラグが立つと、外部の機関に報告する前に、アップルのチームがその画像が確かに違法なCSAM画像と一致していることを確認するようになっています。ですから、ご指摘のような状況(アップルが政府の要請に応じてシステムを改ざんするような事態)が発生するには、例えばアップルに内部プロセスを変更させて違法ではない(既知のCSAM以外の)コンテンツも報告させるようにするなど、本当に多くの作業を行う必要があります。それに、アップルは、そうした要請を行うことができる基盤が米国内に存在するとは考えていません。最後に付け加えておきますが、ユーザーはこの機能を有効にするかどうかを選択できます。この種の機能が気に入らなければ、iCloud写真を使わない選択をすればよいだけです。iCloud写真が無効になっていれば、このシステムは一切機能しません。

iCloud写真が無効になっていればこのシステムは機能しないと、確かにFAQでも明言されています。この点について具体的にお聞きしますが、iCloud写真が無効になっている場合でも、このシステムは端末上で写真のハッシュの作成を継続するのでしょうか。それとも、無効にした時点で完全に非アクティブな状態になるのでしょうか。

ユーザーがiCloud写真を使用していない場合、NeuralHashは実行されず、バウチャーも生成されません。CSAMの検出では、ニューラルハッシュがオペレーティングシステムイメージの一部である既知のCSAMハッシュのデータベースと比較対照されます。iCloud写真を使用していない場合、安全バウチャーの作成やバウチャーのiCloud写真へのアップロードなどの追加部分は、一切実行されません。

アップルは近年、端末上での処理によりユーザーのプライバシーが保護されるという事実に注目しています。今思い浮かぶ過去のすべての事例において、これは真実です。確かに、例えば写真をスキャンしてそのコンテンツを特定し、検索できるようにするといった処理は、ローカルの端末上で実行し、サーバーには送信しないで欲しいと思います。しかし、この機能の場合、外部の使用ケースがなければ個人的な使用をスキャンするのではなくローカルの端末をスキャンするという点で、ある種の抗効果が発生し、ユーザーの気持ちに「信頼性の低下」というシナリオが生まれる可能性があるように思います。それに加えて、他のすべてのクラウドプロバイダーはサーバー上をスキャンすることを考慮すると、この実装が他のプロバイダーとは異なるため、ユーザーの信頼性が低下するのではなく向上するのはなぜか、という疑問が生じるのですが。

アップルの方法は、業界の標準的な方法と比較して、高い水準にあると思います。すべてのユーザーの写真を処理するサーバー側のアルゴリズムでは、どのようなものであれ、データ漏洩のリスクが高くなり、当然、ユーザーのライブラリ上で行う処理という点で透過性も低くなります。これをオペレーティングシステムに組み込むことで、オペレーティングシステムの完全性によって他の多くの機能にもたらされているのと同じ特性を実現できます。すべてのユーザーが同じ1つのグローバルなオペレーティングシステムをダウンロードおよびインストールするため、個々のユーザー向けに特定の処理を行うのはより難しくなります。サーバー側ではこれは実に簡単にできます。いくつかのプロパティを用意しそれを端末に組み込んで、この機能が有効になっているすべてのユーザーでプロパティ設定を統一できることで、強力なプライバシープロパティが得られます。

第2に、オンデバイステクノロジーの使用によってプライバシーが保護されるというご指摘ですが、今回のケースでは、まさにおっしゃるとおりです。ですから、ユーザーのライブラリをプライバシー性の低いサーバー上で処理する必要がある場合の代替策になります。

このシステムについて言えるのは、児童性的虐待画像という違法行為に関わっていないすべてのユーザーのプライバシーが侵害されることは一切なく、アップルがユーザーのクラウドライブラリに関して追加の情報を得ることも一切ないということです。この機能を実行した結果としてユーザーのiCloud ライブラリが処理されることはありません。その代わりに、アップルは暗号的に安全なバウチャーを作成できます。このバウチャーには数学的プロパティが設定されています。アップルがコンテツを復号化したり画像やユーザーに関する情報を取得できるのは、そのユーザーが、CSAMハッシュと呼ばれる違法な画像ハッシュに一致する写真を収集している場合だけです。一方、クラウド処理スキャンサービスでは、まったく状況が異なります。すべての画像を復号化された形式でくまなく処理し、ルーチンを実行して誰が何を知っているのかを決定するからです。この時点で、ユーザーの画像に関して必要なことは何でも確定できます。それに対して、アップルのシステムでは、NCMECおよび他の児童虐待保護組織から直接入手した既知のCSAM画像ハッシュのセットに一致することが判明した画像について知ることしかできません。

このCSAM検出機能は、端末が物理的にセキュリティ侵害されたときにも全体として機能しますか。何者かが端末を手元で操作できれば、暗号がローカルに迂回されることもあります。これを防ぐための保護レイヤーはありますか。

これは難しく、犠牲が大きい問題ですが、非常に稀なケースであることを強調しておきたいと思います。この問題はほとんどのユーザーにとって日常的な関心事ではありませんが、アップルはこの問題を真剣に受け止めています。端末上のデータの保護は我々にとって最重要事項だからです。では、誰かの端末が攻撃されたという仮説の下で説明してみます。その攻撃は極めて強力なので、攻撃者が対象ユーザーに対して行えることはたくさんあります。攻撃者にはアクセス可能なユーザーのデータが大量にあります。誰かの端末のセキュリティを侵害するという極めて難しい行為をやってのけた攻撃者にとって最も重要なことが、アカウントの手動レビューを起動させることだという考え方は合理的ではありません。

というのは、思い出して欲しいのですが、しきい値が満たされていくつかのバウチャーがアップルによって復号化されても、次の段階で手動レビューによって、そのアカウントをNCMECに報告するべきかどうかを決定するわけですが、我々は合法的な高価値レポートであるケースでのみこうした報告を行うべきだと考えています。我々はそのようにシステムを設計していますが、ご指摘のような攻撃シナリオを考えると、攻撃者にとってあまり魅力的な結果にはならないと思います。

画像のしきい値を超えた場合のみ報告されるのはなぜですか。CSAM画像が1つ見つかれば十分ではないでしょうか。

NCMECに対してアップルが報告するレポートは高価値でアクション可能なものにしたいと考えています。また、すべてのシステムについて共通しているのは、その画像が一致するかどうかにある程度の不確かさが組み込まれるという点です。しきい値を設定することで、誤報告によってレビューに至る確率は年間で1兆アカウントに1つになります。ですから、既知のCSAMのコレクションを保持しているユーザー以外の写真ライブラリをスキャンすることに興味がないという考え方に反することになりますが、しきい値を設定することで、レビューしているアカウントをNCMECに報告したとき、法執行機関は効果的に調査、起訴、有罪判決まで持っていくことができると確信できます。

関連記事
電子フロンティア財団が「アップルの大規模な監視計画に反対」と声明発表、請願書への署名を呼びかけ
アップルが台湾・香港・中国向け刻印サービスで「ダライ・ラマ」「雨傘革命」など法的義務以上に検閲と明らかに
アップルがSiri改善のためフィードバック収集アプリ「Siri Speech Study」をひそかに提供開始
また批判を浴びるアップルの児童虐待検出技術
画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

原文へ

(文:Matthew Panzarino、翻訳:Dragonfly)

アップルがSiri改善のためフィードバック収集アプリ「Siri Speech Study」をひそかに提供開始

Apple(アップル)は最近、対象ユーザーから音声データを収集するための研究を開始した。2021年8月初め、同社は「Siri Speech Study」という新しいiOSアプリをApp Storeで公開した。このアプリは、オプトインした調査参加者が自分の音声リクエストやその他のフィードバックをAppleと共有できるようにするもの。同アプリは世界の多くの市場で利用可能だが、公開されている「ユーティリティ」カテゴリーを含め、App Storeのチャートには登録されていない。

アプリストア分析会社Sensor Towerのデータによると、このiOSアプリは8月9日に初めて公開され、8月18日に新しいバージョンにアップデートされた。現在、米国、カナダ、ドイツ、フランス、香港、インド、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、台湾で利用可能となっており、本調査がグローバルに展開されていることを示している。ただし、App Storeをキーワードで検索しても、Appleが公開しているアプリの一覧を見ても、このアプリは表示されない。

Siri Speech Studyアプリ自体には、この研究の具体的な目的や参加方法はほとんど記載されていない。その代わりに、ごく標準的な使用許諾契約書へのリンクと、参加者がID番号を入力する画面が用意されているだけだ。

Appleにコメントを求めたところ、同社はTechCrunchに対し、このアプリはSiriの製品改良のためにのみ使用されており、参加者がAppleに直接フィードバックを共有する方法を提供している、と述べた。また、この研究に参加するには招待されなければならず、一般ユーザーが参加するために登録する方法はないと説明している。

App Storeのスクリーンショット

このアプリは、同社がSiriを改善するために取り組んでいる数多くの方法の1つに過ぎない。

これまでAppleは、一般ユーザーが録音した音声のごく一部を業者に送り、手作業で採点・レビューしてもらうことで、Siriのミスをより深く学ぼうとしてきた。しかし、ある内部告発者が英国のThe Guardian(ガーディアン)に、このプロセスでは機密事項を盗聴されることがあったと警告した。Appleはその後間もなく、そうした人手によるレビューをオプトイン方式に変更し、音声の採点を社内で行うようにした。このような消費者データの収集は継続されているが、その目的は調査研究とは異なる。

関連記事:アップルはSiriの音声クリップのレビュー方法を抜本的に見直しへ

そうした広範囲で一般的なデータ収集とは異なり、フォーカスグループのような調査では、収集したデータと人間のフィードバックを組み合わせるため、AppleはSiriのミスをよりよく理解することができる。Siri Speech Studyアプリでは、参加者がリクエストに応じて明確なフィードバックを提供するとAppleは述べている。例えば、Siriが質問を聞き間違えた場合、ユーザーは何を聞こうとしていたのか説明することができる。また、ユーザーが「Hey Siri」と言っていないのにSiriが起動した場合は、その旨を伝えることができる。また、HomePodのSiriが複数人の家庭で話者を誤認した場合、参加者はそれを記録することができる。

もう1つの特徴は、参加者のデータが自動的にAppleと共有されないことだ。代わりに、ユーザーは自分が行ったSiriのリクエストのリストを見た上で、どれを選択してフィードバックとともにAppleに送信するかを選べる。また、参加者から直接提供されたデータ以外のユーザー情報は、アプリ内で収集・使用されないと同社は述べている。

Apple WWDC 2021

Appleは、自分のことを理解してくれるインテリジェントなバーチャルアシスタントが競争上の優位性を持つことを理解している。

2021年に入り、Appleは元Google(グーグル)のAI科学者であるSamy Bengio(サミー・ベンジオ)博士を起用し、SiriをGoogle アシスタントの強力なライバルに育てようとしている。一方、家庭内ではAmazon(アマゾン)のAlexaを搭載したスマートスピーカーが米国市場を席巻しており、中国以外のグローバル市場でGoogleと競合している。AppleのHomePodが追いつくには、まだまだ時間がかかりそうだ。

しかし、近年、音声ベースのコンピューティングが急速に進歩しているにもかかわらず、バーチャルアシスタントは特定の種類の音声を理解するのに苦労することがまだある。例えば2021年初め、Appleはユーザーがポッドキャストで話始めにつっかえた際の音声クリップを集め、この種のスピーチパターンの理解を向上させると発表した。また、家庭内に複数の機器があり、複数の部屋からの音声コマンドを聞いている場合にも、アシスタントはミスを犯しやすい。また、家族の中で声を聞き分けようとしたり、子供の声を理解しようとすると、アシスタントはよく失敗する。

言い換えれば音声研究は、同社の現在のフォーカス以外にも、時間をかけて追求できる道筋がたくさんあるということだ。

AppleがSiriの音声研究を行っていることは、必ずしも新しいことではない。同社はこれまでにも、何らかの形でこのような評価や研究を行ってきた。しかし、Appleの研究が直接App Storeで公開されることはあまり多くない。

このアプリをより秘密にしておくために企業向けの配布プロセスを通じて公開することもできたはずだが、Appleは公開マーケットプレイスを利用することを選んだ。これは調査研究がAppleの従業員だけを対象とした社内向けのアプリではないためか、App Storeのルールに沿ったものとなっている。

しかし、一般ユーザーがこのアプリを偶然見つけて混乱することはまずないだろう。Siri Speech Studyアプリは、発見されないように隠されており、アプリのダイレクトリンクがなければ見つけることができない(我々が詮索好きでよかった)。

関連記事
「音声認識AIの競争に対する懸念が高まっている」とEUが発表
iOS 15でSpotlightが大幅強化、アプリのインストールも可能に
スマホを臨床的に認められた血圧計にするアプリをSiri開発者と科学者の「Riva Health」が開発中
画像クレジット:Apple

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

「音声認識AIの競争に対する懸念が高まっている」とEUが発表

欧州連合はおよそ1年にわたり、AIを使用した音声アシスタントおよびテクノロジーと連携したモノのインターネット(IoT)に関連する競争の影響を調査してきた。今回紹介する1回目の報告では、EU委員会の立案者が表明する潜在的な懸念が、今後の幅広いデジタル法案決定への情報提供に役立つかどうかという点が扱われる。

2020年末に提出されたEUの法案の大部分は、その地域で実行中のいわゆる「ゲートキーパー」プラットフォームに対する法規の事前適用に向けて、すでに準備が整っている。EU全土に適用されるデジタルサービス法にまとめられた、仲介を行う強力なプラットフォームに当てはまるビジネス規範「命令事項および禁止事項」のリストも含まれている。

しかしもちろん、テクノロジーを活用する流れが止まることはない。競争政策を担当するMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステガー)氏はこれまで、音声認識AIテクノロジーに注目してきた。自分の部門で「データへのアクセスがどのようにマーケットプレイスを変えるのか探っている」と彼女が述べた2019年には、ユーザーの選択に対して引き起こされる課題に関する懸念を表明していた。

関連記事:EU競争政策担当委員の提言「巨大ハイテク企業を分割してはいけない、データアクセスを規制せよ」

委員会は2020年の7月に、IoT関連の競争に関する懸念について精査するため、セクターごとの調査を発表し、確かな一歩を踏み出した。

これは、コンシューマー向けのIoT製品やサービスに関連する市場で(ヨーロッパ、アジア、米国で)事業を展開する200以上の企業を対象とした調査に基づき、現在、暫定報告書として公開されている。さらに、最終報告が来年の前期に発表される前に、(9月1日までの)調査結果に対するさらなるフィードバックを要請している。

競争に関して明らかになった潜在的な懸念のうち、主な分野には、同じスマートデバイスで異なる音声アシスタントを使用しにくくする音声アシスタントおよび手法に関連した、独占行為または結託行為がある。また、ユーザー、さまざまなデバイス、サービスの市場との間で、音声アシスタントおよびモバイルOSが担う仲介的な役割も懸念となっている。この場合の懸念は、プラットフォーム音声AIのオーナーが、ユーザーの関係性を管理することで、競合他社のIoTサービスが発見される可能性や可視性に影響を与える可能性があるという点である。

データへの(不平等な)アクセスに関連した懸念もある。調査の参加者は、プラットフォームと音声アシスタントのオペレーターが、ユーザーのデータに対して広範囲にアクセスできると述べた。これには、サードパーティーのスマートデバイスやコンシューマー向けのIoTサービスと通信した内容が、仲介的な音声AIを使用することで取得されてしまう可能性も含まれる。

委員会のプレスリリースには「セクター調査に協力した人々は、データへのアクセスと集積された膨大なデータにより、音声アシスタントを提供する側は、汎用音声アシスタントの改善や市場優位性に関連した利点を得られるだけでなく、関連する業界にも容易に応用することが可能になると考えている」と記されている。

第三者の業者が保有するデータを、Amazonが使用しているという点に関するEU独占禁止法の調査(現在進行中)にも、同じような懸念が表れている。このデータとは、Amazonが電子商取引マーケットプレイスから取得できるデータ(委員会によると、オンライン取引市場で競争を妨害する違法行為になり得ると考えられている)のことである。

その報告で注意が喚起されている別の懸念は、コンシューマー向けのIoTセクターにおける相互運用性の欠如である。「特に、音声アシスタントとOSを提供するひと握りのプロバイダーが、一方的に相互運用性と統合プロセスを管理しているため、自社のサービスと比較して、サードパーティーのスマートデバイスおよびコンシューマー向けのIoTサービスの機能を制限することが可能である」とのことである。

上記の点は特に驚くことではないだろう。しかし、該当する地域で音声アシスタントAIの普及率が低い現段階で、委員会が競争上のリスクに対処しようと努めており、採用できそうな対策を思案し始めているのは注目に値する。

委員会はこのプレスリリースで、音声アシスタントテクノロジーの使用率は世界的に高まっており、2020年から2024年で2倍になる(音声AIの数が42~84億個になる)との予想を発表している。とはいえ、Eurostat data(ユーロスタット・データ)の引用によれば、2020年の調査対象で、すでに音声アシスタントを使用したことがあるEU市民は11%のみであった。

EU委員会の立案者は、デジタル開発の現状に精通し、巨大テック企業の最初の波を抑制する上で、競争政策に関連する最近の失敗から学んだはずである。これらの巨大テック企業は、Amazon Alexa(アマゾンアレクサ)、Googleアシスタント、Apple(アップル)のSiri(シリ)を使って、現在の音声AI市場を間違いなく独占し続けるであろう。競争が脅かされていることは明白であり、過去の間違いを繰り返すことがないように、委員会は目を光らせている。

しかし、ユーザーが利用しやすいウェブサイト、プッシュボタン、ブランド化された利便性をUSPとしている音声AIに対して、政策立案者が競争に関する法整備にどう取り組んでいくのか、これから明らかになっていく点も多いだろう。

相互運用性を強制すると複雑になる可能性があるため、使いやすさという点では好ましくない。また、ユーザーデータのプライバシーなど、他の懸念が浮上する可能性もある。

コンシューマー向けのテクノロジーについてユーザーが意見を述べ、テクノロジーを管理できるようにするのは良いアイデアだが、少なくともまず、選択できるプラットフォームの在り方そのものが操作されるまた搾取されるものであってはならない。

IoTと競争に関する問題が数多くあるのは確かだか、独占プラットフォームがすべての基準をもう一度定めることがないように規制措置を事前に講じることができれば、スタートアップや小規模企業にもチャンスが訪れる可能性がある。

ベステガー氏は声明に対するコメントとして「このセクター調査を開始した時点では、このセクターでのゲートキーパーのリスクが新たに高まっているのではないかと懸念していました。大企業の持つ影響力により、新興ビジネスやコンシューマーに損害をもたらすほど競争が妨げられることを心配していました。現在発表されている最初の報告から、セクター内の多くの関係者が同じ懸念を抱いていることは明らかです。コンシューマーの毎日の生活において、モノのインターネットのすばらしい可能性を最大限に引き出すには、公平な競争が必要です。この分析結果は、今後の法案施行と規制措置に役立ちます。関係する利害関係者すべてから、今後何カ月間でさらにフィードバックを受け取ることを楽しみにしています」と述べた。

セクターごとの報告は、ここからすべて閲覧できる。

【更新】ベステガー氏は調査結果に関するスピーチで、いくつかの行為については、将来的に新たな競争防止違反の訴訟につながる可能性もあると述べた。しかし、そうなるのはまだ先のことであると彼女は強調し、委員会には「懸念の範囲を的確に把握する」必要があるとも述べた。

「これまでのセクター調査の結果により、異なるスマートデバイスとサービスをつなぐオペレーティングシステムと音声アシスタントの主な役割がはっきりしました。この役割により、オペレーティングシステムおよび音声アシスタントのプロバイダーが、競争にマイナスとなる影響を与える可能性があると、回答者は注意を喚起しています。EUでは、Googleアシスタント、Amazon Alexa、AppleのSiriが音声アシスタントの分野で優位に立っています。加えて、グーグル、アマゾン、アップルには、 スマートホームやウェアラブルデバイスのオペレーティングシステムがあり、それぞれデジタルサービスを提供し、スマートデバイスを生産しています」とも語った。

「異なるデバイスとサービスでの通信や相互運用性はほとんどの場合、このような企業に依存しています。加えて、音声アシスタントはユーザーについて多くのことを学習します。スマートデバイスとモノのインターネットサービスは、家にいる時のユーザーの活動に関する大量のデータを生成します」。

「データへのアクセス、ユーザーへのアクセス、切り替えの難しさなど、現時点で明らかになった課題の多くは、デジタルマーケットで法を施行する場合と同じような課題です。実際、デジタルマーケット法に関連して委員会が提案する命令事項および禁止事項について、調査機能によって数多くのケースが報告されています。現段階での事前調査結果と、今後何カ月かの取り組みにより、デジタルマーケット法の対象に関する討議に、セクター調査が寄与することは間違いありません」と付け加えた。

「競争の強化と補完的法的措置によって、すべての人が恩恵を受けられるデジタル経済を作り上げることが目標です。その目標を実現するには、コンシューマー向けのモノのインターネットを含むデジタルマーケットが、どんな規模のビジネスでも参入して成長できる場となり、コンシューマーにとってオープンかつ公平であるかどうかを確かめていく必要があります」。

【更新】委員会の報告に対して、Amazonから送られた声明は以下のとおりである。

スマートホーム分野においては、多くの企業による競争が激化しています。1社だけが勝者となることはなく、勝者となるべきでもありません。弊社では当初からのこの認識に基づいて、アレクサを設計しました。現時点で、アレクサには14万個以上のスマートホーム製品と互換性があるため、デバイスを生産する企業が独自の商品とアレクサを簡単に統合できます。また、1台のデバイスから複数の音声サービスにアクセスできるように、お客様が柔軟に選択できる取り組みとして、音声相互運用イニシアチブ(現在80社が参加中)にも出資しています。

関連記事:グーグルがEUの圧力を受けAndroid検索エンジンの選択画面オークションを廃止、無料化へ

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:音声アシスタントAIIoTEUAmazon AlexaGoogleアシスタントSiri

画像クレジット:Joby Sessions/T3 Magazine / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

iOS 15でSpotlightが大幅強化、アプリのインストールも可能に

Apple(アップル)はモバイルデバイス向けオペレーティングシステム「iOS 15」のリリースを控え、標準検索エンジンのSpotlight(スポットライト)を大幅に機能強化する。これは「Siriからの提案」の導入以来最大のアップデートになるかもしれない。新バージョンのSpotlightは、いくつか重要な検索場面でGoogle(グーグル)に取って代わる可能性がある。ウェブ画像、俳優、ミュージシャン、TV番組、映画などに関する情報などだ。さらに、ユーザーのフォトライブラリを探したり、連絡先の詳しい情報を知らせたり、アプリやそこに含まれる情報とより直接的に繋がれるようになる。App Storeのアプリを、Spotlightの外に出ることなくインストールすることも可能だ。

また、Spotlightはかつてないほどアクセスしやすくなった。

数年前のiOS 7で、Spotlightはホーム画面の左側の位置を離れ、どの画面を下にスワイプしても利用できるようになり、多くのユーザーが利用するきっかけになった。iOS 15ではiPhoneのロック画面からでも同じ下向きスワイプで利用できるようになる。

Appleは先日のWWDCの基調講演で、Spotlightの改善点をいくつか披露した。たとえば検索機能の新しいカードから俳優、映画、テレビ番組、ミュージシャンの情報を調べることができる。この変更だけでも、ウェブ検索のかなりの部分をGoogleやIMDbなどの専用アプリから奪える可能性がある。

この数年Googleは、Knowledge Graph(ナレッジグラフ)を通じてよくある検索結果をクイックアクセスできるようにしている。ナレッジグラフは、さまざまなソースから情報を集めた知識ベースで、それを使って標準の検索結果の上や横の情報パネルを表示することができる。俳優、ミュージシャン、番組、および映画のパネルも用意されている。

しかし、今iPhoneユーザーは、この情報をホーム画面上で見ることしかできない。

新しいカードには、Wikipediaの経歴や背景情報で見られる以上のものが入っている。対象のアーティストや俳優、映画、番組などのコンテンツを聴いたり見たりするためのリンクも掲載されている。ニュース記事、ソーシャルメディアのリンク、公式ウェブサイト、さらには探している人物や話題がユーザー自身のアプリにあるかどうか指示することもできる(例えば「Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)」を検索すると、SeatGeek(シートギーク)や彼女がゲストだった回のポッドキャストに誘導されることもある)。

画像クレジット:Apple

ウェブ画像検索でも、Spotlightは人物、場所、動物などをウェブで探し、ここでもGoogleが提供している検索分野に侵食している。

OS 15のスクリーンショット

iOS 15では、検索結果がリッチになってカスタマイズ検索もアップグレードされる。

連絡先を検索すると、名前と連絡方法を表示する以上のことを行うカードが出てくる。さらに、相手の現在の状態(これもiOS 15の新機能による)や、Find My(探す)から得た位置情報、メーセージの最近の会話、シェアした写真やカレンダーの予定、メール、メモ、ファイルなども見ることができる。

関連記事:アップルがiOS 15で「通知」を改良、新機能「フォーカス」「サマリー」でよりパーソナルに

画像クレジット:Apple

パーソナル写真検索も改善された。SpotlightはSiriの知識を使って、自分の写真の中から人物、景色、物体などを検索できるようになる。そしてiOS 15の新しいLive Text機能を使って、写真の中にあるテキストを検索して、関連する結果を求めることができる。

関連記事:アップルのiOS 15新機能「Live Text」は写真内の文字を自動認識してテキストデータ化

レシピのスクリーンショットや買い物のレシート、手書きのメモからでもテキストを簡単に取り出せるようになるかもしれない、とAppleはいう。

画像クレジット:Apple

Spotlightのアプリへの統合に関連するいくつか機能については、基調講演で言及はなかった。

Spotlightは、検索結果のマップにアクションボタンを表示して、店舗がユーザーを自社アプリに誘導することもできるようになる。これでは新機能が、サードパーティ製アプリをダウンロードやインストールすることなくすぐに作業できるApp Clips(アプリ・クリップ)を活用している。例えばSpotlightの中でレストランのメニューを開いたり、チケットを買ったり、予約を撮ったり、テイクアウトを注文したり、ウェイティングリストに加わったり、駐車料金を払ったり、価格を調べるなどさまざまなことができるようになる。

この仕組みが働くためには、企業や店舗がApp Clipsに対応する必要がある。

iOS 15のスクリーンショット

もう1つ、目立たないけれども重要な変更が、SpotlightからApp Storeのアプリを直接インストールできる機能だ。

これはアプリのインストール増加につながる可能性がある。検索してダウンロードする手順が省略される他、App Storeの検索をオペレーティングシステム全体でアクセスしやすくなるからだ。

またデベロッパーは、自分のアプリに数行書き加えるだけで、アプリ内のデータをSpotlightで発見可能にすることができるようになる。これはSpotlightがアプリ内コンテンツを検索するツールとして使えることを意味している。これもまた、ユーザーを従来のウェブ検索から転換させるAppleのやり方だ。

しかし、ウェブをクロールしてデータをインデックスしているGoogleの検索エンジンと異なり、Spotlightのアプリ内検索が働くためには、まずデベロッパーが採用する必要がある。

いずれにせよ、AppleがSpotlightをウェブ検索エンジン(Googleを含む)の潜在的ライバルと考えていることは明白だ。

「Spotlightは、あなたの『すべての』検索をスタートする共通の場所です」とAppleのソフトウェアエンジニアリング担当副社長であるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏が基調講演で話した。

もちろんSpotlightは「すべての」検索を扱えるわけではまだないが、どうやらそのゴールに向かって着実に進んでいるようだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDCWWDC2021SpotlightiOS 15Siri

画像クレジット:Apple

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルが「Spring Loaded」で発表した新製品まとめ、新iMac、iPad Pro、AirTagなど

Apple(アップル)のイベントの日だ。

Apple Cardの改良から新しいiMacやiPadまで、Appleは1時間のイベントでたくさんのニュースを発表した。しかし、すべての発表に目を通している時間がない方のために、それぞれのポイントをまとめてご紹介しよう。

Apple Card

画像クレジット:Apple

Appleはまず「Apple Card」の仕組みの変化について、簡単だが重要な説明を行った。「Apple Card Family」では、13歳以上の家族なら誰とでもカードを共有でき、追加ユーザーごとに利用限度額をカスタマイズできる。また、Appleカードを他の大人と「共同所有」することもできるようになり、両方の所有者が等しくクレジットを蓄積できるようになる。

Appleはまず、Apple Cardの仕組みの変更について、簡単に、しかし重要な説明を行った。「Apple Card Family」では、13歳以上の家族であれば誰でもカードを共有することができ、追加ユーザーごとに利用限度額をカスタマイズできる。また、他の大人とApple Cardを「共同所有」することも可能になり、2人の所有者が同じようにクレジットを貯めることができるようになる。

Apple Podcasts

画像クレジット:Apple

Appleは、Podcastアプリのデザインを一新し、それぞれのPodcastを有料購読(月額または年額)できるオプションを提供する。

パープルのiPhone

画像クレジット:Apple

今回、新しいiPhoneは発表されなかったが(iPhoneは通常、年内に発売される)、既存のiPhone 12とiPhone 12 miniに新色「パープル」が加わった。彼らはWilly Wonka(ウィリー・ウォンカ)の歌が使われたが……、まぁそれはパープルだからだろう。

関連記事:iPhone 12 / 12 miniに新色パープルが追加

AirTag

画像クレジット:Apple

Appleはついに、ソファーで紛失したさまざまなAppleデバイスを探すのにときと同じく「Find My」アプリを使って、鍵やお財布、バッグなどを追跡するためのアクセサリーを正式に発表した。

AirTag」(不思議なことに「AirTags」ではない)と名づけられたこのアクセサリーは、1個29ドル(日本では税込3800円)、4個入りで99ドル(日本では税込1万2800円)、4月30日に発売される予定だ。バッテリーはユーザーが自分で交換できるが、奇妙なことにアタッチメントループは付属しない。キーホルダーなどに取り付けたい場合は、ケースを追加する必要がある。もちろん、Appleはそれを作り、販売する。

AirTagにはそれぞれスピーカーが内蔵されており、紛失したアイテムを見つけるのに役立つ。オンラインで購入すると、テキストや選択した絵文字を無料で刻印することができる。

関連記事:アップルが紛失物トラッカー「AirTag」をついに正式発表

次世代Apple TV 4 K

画像クレジット:Apple

Appleは、2017年に初めて発売した「Apple TV 4K」を大幅に刷新する。その内訳は以下のとおりだ。

  • AppleのA 12 Bionicチップ搭載。
  • iPhoneを使って映像のキャリブレーションが行える。キャリブレーションプロセスを開始し、iPhoneの前面カメラをテレビに近づけると、Apple TV 4Kはそれに応じて自らのカラー / コントラスト出力を自動的に最適化する。
  • リモコンのデザインも一新。これまでのタッチパッド付きのリモコンから、iPodのようなスクロールホイールを備えた5方向のクリックパッド付きのリモコンに変更された。ボタンを押す代わりにテレビに話しかけたくなったときのために、側面にはSiriボタンが付いている。このリモコンは、前世代
  • Siri RemoはApple TV 4KおよびApple TV HD用として59ドル(日本では税込6500円)で別売りされる。
  • 32GBモデルが179ドル(日本では税込2万1800円)、64 GBモデルが199ドル(日本では税込2万3800円)。

関連記事:新型Apple TV 4KにはSiriが使える「Siri Remote」が付属

新しいiMac

画像クレジット:Apple

iMacがM1にシフトするときが来た!Appleは、iMacの新ラインナップを発表した。往年のiMacを彷彿とさせる、ファンシーなカラーバリエーションが特徴だ。その概要は以下のとおりだ。

  • Appleが2020年にノートPCに初導入した驚異的に高速な「M1」チップセットを搭載。
    24インチの「4.5K」ディスプレイ。
  • ついに、まともなウェブカメラが登場!新iMacには1080pのFaceTimeカメラが搭載される。
    予約注文は4月20日から始まり、出荷は5月下旬。
  • 1299ドル(日本では税込15万4800円)で8コアCPU / 7コアGPU、1499ドル(日本では税込17万7800円)で8コアCPU / 8コアGPUにアップグレードできる。
  • カラーはグリーン、イエロー、ピンク、オレンジ、ブルー、パープル、シルバーの7色。一部の色は、より高額なモデルでのみ提供される。
  • どちらのモデルも256GBのSSDとThunderboltポートが2つ備えている。1499ドルのモデルでは、USB 3ポートが2つ追加される。
  • Appleは、Touch ID指紋認証センサーを搭載したBluetooth Magic Keyboardの新バージョンも発表。高額なモデルに同梱される。

画像クレジット:Apple

関連記事
アップルがカラフルな新iMacを発表
新型iMacがついに高画質なウェブカメラを搭載
アップルがMagic KeyboardにTouch IDを搭載

新しいiPad Pro

画像クレジット:Apple

iPad ProもM1を搭載する!Appleによると、この移行により従来のiPad Proと比べてパフォーマンスが50%向上したという。新機能は以下のとおりだ。

  • 8コアGPU / 8コアCPU。
  • 11インチモデルは799ドル(日本では税込9万4800円)から、12.9インチモデルは1099ドル(日本では税込12万9800円)から。
  • セルラーモデルは5Gをサポート。
  • USB-Cポートを介してThunderboltおよびUSB 4をサポート。
  • 12.9インチモデルは「Liquid Retina XDR」ディスプレイを搭載。Appleによるとフルスクリーン輝度は1000ニト、ピーク輝度は1600ニトとのこと。
  • Appleが「Center Stage」と呼ぶ機能は、FaceTime通話中に、部屋の中を動き回っても自動的に自分の顔をフレームの中央に保つ。
  • 最大2TBの内蔵ストレージと16GBのRAMを搭載。

関連記事
新iPad ProもApple M1チップ搭載
M1 iMacの電源アダプターは磁気コネクタとEthernetポートを搭載、他製品でも採用か

カテゴリー:イベント情報
タグ:AppleAPPLE SPRING HARDWARE EVENT 2021Apple CardクレジットカードポッドキャストiPhoneAirTagトラッカーApple TVSiriiMacApple M1iPad

画像クレジット:Apple

原文へ

(文:Greg Kumparak、翻訳:Katsuyuki Yasui)

新型Apple TV 4KにはSiriが使える「Siri Remote」が付属

Apple(アップル)は米国時間4月20日、新型のApple TV 4Kを発表した。これには新しいSiri Remoteが付属する。

この新しいアルミニウム製のリモコンでは従来のSiriのサポートに加えて、クリックパッドを再設計し外側のリングで円形のジェスチャーを可能にした。これにより、視聴者は探しているシーンをすばやく見つけることができる。また他のリモコンに手を伸ばす必要がないように、ミュートボタンとテレビの電源ボタンも搭載している。

新しいApple TV 4KはアップルのA12 Bionicチップを搭載しており、より高品質な映像、具体的には毎秒60フレームのハイフレームレートHDRとDolby Visionに対応している。

もちろん画質はテレビ本体にも依存するのだが、アップルはこの状況に対応するための新機能を発表した。テレビのカラーバランスを改善するために、iPhoneの光センサーを使って現在のバランスを測定し、それに応じてApple TVからの出力が調整されるのだ。

新しいApple TV 4Kは、32ギガバイトで179ドル(日本では税込2万1800円、ストレージ容量を2倍にしたい場合は税込2万3800円)で4月30日から注文を開始し、5月後半に発売される予定だ。また、新しいSiri Remoteを搭載したApple TV HDは149ドル(日本では税込1万7800円)で、Siri Remoのみを59ドル(約6500円)で購入することもできる。

「Apple TV 4KはA12 Bionicとまったく新しいSiri Remoteによりシンプルかつ直感的な操作で、お客様がお気に入りの番組や映画などを最高のクオリティで楽しむことを可能にします」と、アップルのワールドワイドマーケティング担当副社長のBob Borchers(ボブ・ボーチャーズ)氏は声明で述べている。「そしてもちろん、Apple TV 4Kはアップルのサービスに簡単にアクセスでき、App Storeにある何千ものアプリケーションと合わせて、さらに多くのエンターテインメントの選択肢を提供します」。

関連記事
アップルがカラフルな新iMacを発表
新型iMacがついに高画質なウェブカメラを搭載
アップルがMagic KeyboardにTouch IDを搭載
iPhone 12 / 12 miniに新色パープルが追加
M1 iMacの電源アダプターは磁気コネクタとEthernetポートを搭載、他製品でも採用か

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleAPPLE SPRING HARDWARE EVENT 2021Apple TVSiri音声アシスタント

画像クレジット:Apple

原文へ

(文:Anthony Ha、翻訳:塚本直樹 / Twitter

スマホを臨床的に認められた血圧計にするアプリをSiri開発者と科学者の「Riva Health」が開発中

科学者のTuhin Sinha(トゥヒン・シンハ)氏とSiriの共同創設者であるDag Kittlaus(ダグ・キトラウス)氏が設立したRiva Healthは、臨床的に認められた方法で人々が血圧を測定できるようにしたいと考えている。血圧を測定し、心臓疾患の初期徴候を確認することで、リスクのある患者が実際のリスクが発生する前に問題に対応することができるからだ。市場に出回っている他のハードウェアソリューションも同じ目的を掲げているが、Rivaはエンドユーザーが持っていると同社が考えるハードウェア、つまりスマートフォンと統合する純粋なソフトウェアソリューションを目指している。

突然姿を現し、米国時間3月17日にローンチした同社は、Menlo Venturesが主導し、True Venturesが参加したラウンドで1550万ドル(約17億円)のシード資金を調達した。そのうちUC HealthとUniversity of Colorado Innovation Fundが500万ドル(約5億5500万円)を出資した他、GoHealthのBrandon Cruz(ブランドン・クルーズ)氏やMadison IndustriesのLarry Gies(ラリー・ギース)氏などのエンジェル投資家が参加している。投資前に3年間シンハ氏と交渉を行っていたMenloのGreg Yap(グレッグ・ヤップ)氏が取締役に就任する。

AIアシスタント「Viv」の創設者でもあるキトラウス氏は、自身が深刻な健康問題を経験した後、デジタルヘルスに変化をもたらす方法について考え始めたと述べている。キトラウス氏は2016年に膵臓の神経内分泌癌と診断されたが、これはAppleの最高経営責任者だった故Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏が患っていた癌と同じ種類のものだった。

「私は血液測定に関するアイデアを検討することに多くの時間を費やしていたのですが、そこには以前自分がいた両方の会社にあったものが欠けていました。世界を動かす力を持ったすばらしい技術的イノベーションが欠けていたのです」と彼はいう。

キトラウス氏は、友人のShawn Carolan(ショーン・カロラン)氏とこの夏に交わした内輪の会話について触れた。Siriに最初に投資したこの友人は、Rivaに使われている技術を長年開発してきた科学者トゥヒン・シンハ氏を紹介してくれた。

Rivaは、スマートフォンでアプリを開いて「Go」をタップするだけで利用できる。スマートフォンの背面カメラのフラッシュが起動し、ユーザーはその上に指をかざすように誘導され、適切な位置にロックされるまでアプリが調整してくれる。その後、Rivaはこのライトを使って血圧の変化を追跡し、画面上にそのレンダリングを生成する。

Riva Healthが計画しているデザイン。変更される可能性がある(画像クレジット:Riva Health)

「この技術でよく知られているのは、血管に光を当て、そこから波を取り出すことです」とシンハ氏は説明する。「当社の技術の新規性は波の形で、それが血圧とどのように関係しているかという点にあります。そして当社の企業秘密は、波の形の変化を厳密かつ包括的な方法で検証していることです」。シンハ氏はその検証方法については明らかにしなかったが、さまざまなシナリオ(立っている、座っているなど)で血圧を測定し、効果があるかどうかを確認することが鍵だと語った。

Rivaが心拍数5〜7回分のデータを追跡すると、測定対象者のその時点での血圧を包括的に把握できる。

データはHIPAAに準拠しており、高血圧をはじめとするリスクがあるかどうかを分析するためにかかりつけの医師または診療所に送ることができる。

「スマートフォンのようなプラットフォームへの移行は(健康と疾病管理の)測定と管理をモバイル型にするものです」 とシンハ氏はいう。Riva Healthは純粋なソフトウェアソリューションだ。

同社は現在Android携帯でそのソフトウェアを検証している最中だが、キトラウス氏は「今日あるどの携帯でも必要な信号を取得できるはずです」という。

ヘルステック企業、特にRivaにとっての大きなハードルは、臨床使用に関してFDAの認可を得ることができるかどうかである。同社は現在、FDAの承認手続きに取り組んでおり、2021年夏にリリース予定の無料アプリを試験利用するユーザーに対し、承認手続きを促進するための試験とデータ収集への参加を求める予定だ。

現在、Rivaはその技術を使って、臨床現場での血圧の変化を追跡しており、後半には自宅での使用データも集める。実世界でのシステムの使用状況を追跡することで、同社の病気管理技術が研究室や自宅の環境で動作し、有効であることを証明しようとしているのだ。

「血圧測定ができると主張する機械やガジェットはたくさんあります。それらはそれなりの血圧測定を行うことはできますが臨床基準は満たしてはいません」。とキトラウス氏は続ける。血圧カフや、iPhoneのようなスマートデバイスに接続するカフレスウェアラブルのようなその他のソリューションは、非臨床使用で血圧を測定するもので、精密なものではなく、血圧に関する明らかな問題を知らせるだけだ。

Rivaの目標は、医師も頼りにできるような正確さを日常にもたらすことであり、それは収益を上げる手段でもある。UC HealthのチーフイノベーションオフィサーであるRichard Zane(リチャード・ゼイン)博士はこの技術は「万全」であると述べている。過去3年間に700社以上の企業がゼイン氏のチームと協力しようとしてきたが、Rivaはその目標を達成した数少ない企業の1つだ。

「私たちのチームがテストしてみたところ、最初から問題なく機能していました。これは稀なことです」。とゼイン氏は述べている。同氏はさらに、参入への最大の障壁の1つはデバイスを必要としていたことであったことに言及し、Rivaは「患者がすでに持ち歩いているものに組み込まれ、心臓病や高血圧を管理できるようになる、実用的な新しい技術」をもたらすものだと付け加えた。

「Rivaのコアプロダクトは医療成果です」とシンハ氏は語る。同社は、成果に基づく医療が今後重要になってくると信じているスタートアップの1つであり、医師が1日に完了する診察回数ではなく、結果に対して報酬が支払われるようなモデルを念頭に置いている。このビジョンの下、Rivaは結果を病院のシステムやプロバイダーに販売することで収益化を図ろうと計画している。医師が患者を手術から遠ざけ、以前よりも早く問題を指摘できるツールを提供できれば、病院側がなぜそれを採用すべきかについて確固とした議論をすることができる。

価値ベースのモデルを採用しているのは医療機関のわずか20%であるため、同社の考え方が適切であったとしてもこれはビジネスの障害になるだろう。サービスを軌道にのせるために、当面は保険会社と協力していくとキトラウス氏は話している。Rivaは、高血圧の治療と管理に対して払い戻しを受ける。

「保険が適用され、消費者にも医師にも無料で利用できるようにしたいと思っています」と同氏は語った。

FDAがこの技術を承認しても、医師や医療従事者は「依然として懐疑的な姿勢を取る」と思われるが、最終的にはカフよりも正確で継続的な結果が得られることを納得するだろうとキトラウス氏は述べている。

「薬の代わりに、アプリを処方しているのです」と同氏はいう。

FDAの承認を待っているこのアプリは、2021年の終わりか2022年の初めに一般提供される予定だ。Rivaの今後数カ月が、その成功と有効性を決定する鍵となるだろう。チーフサイエンティストのシンハ氏は、厳格かつ迅速に作業を進めていると語る。同氏は、会社の成功と個人的なつながりを持っている。

シンハ氏は、59歳になる前に心臓病で5人の叔父と1人の叔母、そして父親を亡くしている。そしてこのアプリには、家族を失った状況を追跡する機能が搭載されている。

「胸に時限爆弾を抱えているような気がします」と同氏は吐露した。「どちらかといえば、私は自分のためにアプリの開発をしています」。

関連記事:VRの力を借りて人工網膜が進歩、人体臨床試験に向けて開発が進む

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Riva Health血圧計スマートフォン資金調達Siri

画像クレジット:Riva Health

原文へ

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

アップルが英語圏のSiriに2つの新たな声を追加、「女性」の声のデフォルト設定は廃止に

Apple(アップル)は、iOSの最新のベータ版で、Siriの英語版に2つの新しい声を追加し、これまで「女性」の声が選択されていたデフォルトを廃止した。これによって、Siriの設定をする人は誰もが自分で声を選択することになる。アップルの音声アシスタンスは初期状態で女性の声に設定されていることが、数年前から性差別的偏向として議論の的になっていた。

このベータ版はすでに公開されており、プログラム参加者には提供されているはずだ。

この種のアシスタントの中で、デフォルトの設定がなされておらず、ユーザーが自分で選ぶ必要があるというのは、おそらく初めてのことだろう。これは人々がデフォルトの設定に偏ることなく、自分で好きな声を選ぶことができるという意味において、ポジティブな一歩といえる。また、新たに追加された2つの新しい声は、Siriの声に求められていたバリエーションを増やし、ユーザーが自分で音声を選ぶ際に多様性を提供する。

一部の国や言語では、Siriはすでにデフォルトで男性の声になっている。しかし、今回の変更により、その選択が初めてユーザーのものになった。

「英語圏のユーザーのために2つの新しいSiriの声を導入し、Siriのユーザーがデバイスの設定時に好きな声を選択できるようになったことに、私たちは高揚しています」と、アップルは声明で述べている。「これは、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括性)に対する責任を持ち、製品やサービスに私たちが住む世界の多様性をよりよく反映するという、アップルの長年にわたる取り組みの継続です」。

この2つの新しい声は、タレントの声を録音したものを音源として使い、アップルのNeural text-to-speech engine(ニューラル・テキスト・トゥ・スピーチ・エンジン)によって生成されるもので、実際に構成されるフレーズの中で、より有機的に聞こえるようになっている。

新しい声を聞いてみると、自然な抑揚でスムーズにつながり、とてもすばらしい。選択肢が増えることは、iOSユーザーに歓迎されるだろう。実際に使用されているボイスのサンプルは下のツイートで聞くことができる。

iOS 14.5でSiriに新たにラインナップされた米国人の声を録音してみました。声1と4が従来からあったもの、声2と3が新しく追加されたものです。

この最新のベータ版では、アイルランド、ロシア、イタリアのSiriの音声もNeural TTSにアップグレードされており、これで新技術を採用した音声は合計38種類になった。Siriは現在、5億台以上のデバイスで月間250億件のリクエストを処理し、36カ国の21言語に対応している。

新しい声は、世界中の英語圏のユーザーに提供される。Siriユーザーは16の言語で個人的な好みの声を選択することができる。

今回追加された2つの新しい声は、Siriの声の選択肢を広げる最初の試みである可能性が高い。声やトーン、地域の方言などの多様性が増えることは、スマートデバイスの包括性を高める上でプラスになるはずだ。ここ数年、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)、アップルの3社には、否定的な言葉や乱暴な言葉を使った質問に対するアシスタントの回答に偏りが現れる状況を、積極的に是正しようとする動きがようやく見られるようになった。

このような状況を改善することは、社会的に公正なトピックへの対応や、全体的なアクセシビリティの向上と並んで、ボイスファーストやボイスネイティブなインターフェースの爆発的な普及を目指す上で、非常に大事な鍵となる。特に数億人の規模となると、この種の選択が重要になるはずだ。

【更新】一部の国や言語では、Siriのデフォルトが男性の声に設定されていることがわかった。

関連記事:アップルがiOS 14.5で「デフォルト」の音楽サービスは設定できないと明言

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:AppleSiriiOSインクルージョン

原文へ

(文:Matthew Panzarino、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルがiOS 14.5で「デフォルト」の音楽サービスは設定できないと明言

Apple(アップル)は、iOS 14.5 betaが一部で言われているようなデフォルトのミュージックサービスを選ぶことを許しているわけではないことを明言した。2021年2月にこのベータ版が公開されて以来、Siriに音楽の再生を依頼した時、どのミュージックサービスを使うかをSiriが尋ねることに多くのベータテスターが気づいた。しかしAppleは、この機能を「デフォルトの設定」とは考えていない。メールとブラウザーのアプリについては最近デフォルトの選択ができるようになった。

実際には、学習機能のあるSiriが、ユーザーの音楽を聞く習慣をより深く理解するためだという。

例えばSiriに楽曲やアルバムやアーティストを演奏するよう依頼すると、Siriはこの種のコンテンツを聴くのにどのサービスを使いたいかを尋ねる。しかし、ユーザーのSiriに対する返答によってそのサービスが「デフォルト」になるわけではない、とAppleは言っている。事実、Siriは後で同じ質問をすることがある。自分の好みがすでに設定されていると思っていたユーザーにとっては混乱を招く要求だ。

画像クレジット:iOS 14.5のスクリーンショット

さらにAppleは、iOSの設定の中にはメールやブラウザーのような「デフォルト」のミュージックサービスを指定する部分がないことも指摘した。これまでにも多くの報道がこの違いを記載していたが、それでもこの機能を「デフォルトの設定」と書いており、それは厳密には誤りである。

もう少し具体的にいうと、これはユーザーが異なるタイプのオーディオコンテンツ(音楽に限らない)を利用する際に使いたいアプリをSiriが学習するのを手助けする仕組みだ。音楽を聴くときにSpotify(スポティファイ)を使う人でも、ポッドキャストはApple Podcastsやサードパーティーのポッドキャストアプリを使いたいかもしれない。さらにオーディオブックはまた別のアプリで聴きたいかもしれない。

このようなオーディオに関するリクエストにどのサービスを使いたいかをユーザーに尋ねる時、Siriはインストールされているオーディオアプリのリストを提示してそこから選ばせる。

画像クレジット:iOS 14.5のスクリーンショット

Siriがユーザーの習慣を(ユーザーの返答や選択に基づいて)理解することに加えて、アプリ開発者は自分のアプリでユーザーが何をなぜ聴いているかについての情報を、APIを通じてSiriに伝えることができる。これによってSiriはユーザーのリクエストに対してより正確に答えることができる。なお、一連の処理はすべてデバイス上で行われる。

このオーディオ選択機能は、普段の好みとは違う特定のサービスを使うようユーザーがリクエストすることを妨げるものではもちろんない。

たとえばユーザーは「スムーズジャズのラジオをPandora(パンドラ)で流して」と言って希望のアプリを使うことができる。ただし、もしその後も音楽のリクエストにPandoraの名前を出し続けると、Siriが最初に尋ねた時にApple MusicやSpotifyなどのサービスを指定していた場合でも、次にサービスを指定せずに音楽再生をリクエストすると、Siriは再度サービスを選ぶようにと尋ねることがある。

画像クレジット:iOS 14.5のスクリーンショット

この明確化は些細なことのように思えるかもしれないが、App Storeとアプリエコシステムを巡ってこのところAppleに向けられている規制当局の監視を踏まえると、大きな意味を持っている。中でもSpotifyは、Appleが反競争的な行動をとっていると告発しており、たとえばAppleが競合する音楽サービスを運営していながらSpotifyのアプリ内購入に手数料を要求しているのは不当な先行者利益だと指摘している。

このオーディオ選択機能が最初登場したのはiOS 14.5 beta 1だったが、beta 2で削除された。それがbeta 3で復活して注目を集め見出しを賑わせ、さらにAppleの反応を呼び起こした。

厳密には「デフォルト」の設定を可能にするものではないとしても、Siriのこの新機能は、一貫したリスニング傾向を持つユーザーにとって、いずれは同じ意味になるかもしれない。こうしてiPhoneは、使いたくないときにはApple自身のアプリを使うことを強制されることなく、あなたの聴きたいものをどうやってプレイするかについてさらに賢くなっていくだろう。

関連記事:アップルがiOS、iPad OSでデフォルトのメールやブラウザアプリの変更を許可

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiOSSiri音楽

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook