米上院は独禁法公聴会でアップルのApp Storeにおける不正防止の怠慢を非難

米国時間4月21日に米上院司法委員会の反トラスト法小委員会で開催されたヒアリングでApple(アップル)はApp Store における詐欺的行為についても追及を受けた。Appleはこれまで、App Storeにおける高額の手数料はAppleが詐欺、不正を防止し消費者を守るために必要だと主張していた。しかし最近デベロッパーコミュニティは「Appleは詐欺的であることが明白な有料・課金アプリに対して防止の努力を十分払わずこうしたアプリ全般に対する消費者の信頼損ねている。そのため合法的なサブスクリプション・ビジネスに対しても悪影響が出ている」と主張している。

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特にあるデベロッパーのKosta Eleftheriou(コスタス・エレフテリウ)氏はApp Storeにおける明白な不正を暴くことを自らの使命としている。エレフテリウ氏はいわば企業犯罪取締のワンマンアーミーとしてレビュー欄に大量のフェイク投稿を載せてユーザーを集めるなどの有害アプリをTwitter で告発し続けてきた。

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これまでに発見されたこうした詐欺行為の中でも特に目立つものは、あるユーザーの全財産であるビットコイン約60万ドル(6500万円)を騙し取った暗号資産ウォレットや、オンラインカジノを隠した子ども向けゲーム年間500万ドル(約5億4000万円)を騙し取ったVPNアプリなどがある。そもそもエレフテリウ氏をこの活動に向かわせる発端となった詐欺事件も詳しく報告している。同氏が開発したApple Watchアプリのライバルがマーケティング資料を盗み、アプリをコピーし、金を払って偽のレビューを投稿させたという。これによって詐欺アプリの方が優れた選択肢であるかのように見せかけて「ユーザーから年間200万ドル(約2億2000万円)をだまし取った」とエレフテリウ氏は主張する。

エレフテリウ氏のツイートは、アプリ開発者コミュニティで大きな注目を集めた。デベロッパーは自分が発見した詐欺の事例をエレフテリウ氏にメールで送るようになった。同氏は最近、さらに一歩を進め、App Store詐欺によって被った損害についてAppleを相手に訴訟を起こした

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上院の反トラスト法ヒアリングではエレフテリウ氏の名前は言及されなかったが同氏の努力が広く評価されていることは確実だ。

ヒアリングではJon Ossoff(ジョン・オソフ)上院議員(ジョージア州、民主党)がAppleの最高コンプライアンス責任者Kyle Andeer(カイル・アンディア)氏に対し「なぜアップルはこのような詐欺的アプリを摘発できないのか?」と質問した。オソフ上院議員は「これらが詐欺的アプリであるのは明白であり、そのようなものと判断するのは極めて容易なはずだ」と述べた。

上院議員は「なぜ我々は App Store における不正を発見するためにデベロッパー・コミュニティやジャーナリストからの情報に頼らねばならないのか?」と追求した。これはおそらくエレフテリウ氏の活動を念頭に置いたものだろう。

エレフテリウ氏自身は「(詐欺アプリの発見に)さして努力を払ったことはない」と述べている。「高い利益を上げているアプリについて不審なユーザーレビューがないか利用料金が高額ではないかチェックするだけです。その両方に当てはまるならおそらく詐欺です」という。

上院議員の質問に対しアンディア氏は「我々はApp Storeのセキュリティ強化と改善のために数千万ドル(数十億円)から数億ドル(数百億円)を投資しています」と述べて反論した。

アンディア氏は続けて「アプリストアにおけるセキュリティ強化と詐欺の防止はモグラ叩きです。このビジネスに携わっている全員がそう認めるでしょう。だからこそ、私たちは常に改善に取り組んでいます」と述べた。またAppleは不正行為者を発見するために膨大なリソースを新しいテクノロジーに投資していると主張した。同氏はApp Storeが消費者にリスクをもたらすアプリケーションを毎年何千も拒否していることを指摘した。

同氏はApp Store を運営しているのがApple でなかったら事態はさらに悪くなっていただろうとして次のように述べた。

誰しも完全な仕事はできません。しかし私たちは他社よりも優れた仕事をしていることを何度も証明してきたと思っています。App Store に登録されたアプリ以外のプログラムをサイドロードすることやサードパーティのアプリケストアにiPhoneを開放することはこの問題をますます悪化させるものと考えています。他のアプリストアや配信プラットフォームを観察すると、その状態は恐ろしいものです。

オソフ上院議員は、サイドローディングに関しては別途質問するとして詐欺アプリについて再度「Appleはこうした詐欺的アプリからも手数料を徴収していすね?」と質問した。

アンディア氏は「そういうことはないと考えてます。詐欺あるいは不正を発見すれば我々は直ちに是正措置を取ります。これは毎日行われています 」と答えた。

しかし、mAppleがApp Storeの詐欺からどの程度の利益を得ていたのかについては明確にならなかった。オソフ上院議員はAppleが詐欺による請求で得た収入の「全額」を被害者に返金したのかどうか、言い換えれば、これまでに契約したすべての顧客が、詐欺が確認されたときに返金を受けたのかを尋ねた。

アンディア氏の答えはいささか漠然としていたが、どうやら現行のシステムでは「詐欺を通報しまた苦情を申し立てた顧客については返金している」ことになっている受け取れた。同氏は、詐欺が発見された場合「顧客全員に返金している」とういう表現を避け「Appleは顧客が満足するよう取り計らっている」と慎重に答えた。アンディア氏はこう述べた。

もちろんAppleには毎日この作業を行っている専門チームがあります。私の理解によれば、チームは顧客の立場に立って懸命に働いています。顧客の満足が結局のところ私たちが最も重視する点です。もし顧客の信頼を失えば、Appleにとって痛手となります。

しかしエレフテリウ氏はこうした説明に満足していない。同氏は TechCrunchの取材に対して次のように述べた

昨日の公聴会でのオソフ上院議員の質問は的確なものでしたが、Appleは事実上回答から逃げました。デベロッパーコミュニティの全員はこれに対して怒りを感じています。App Storeでは何年も数百万ドル規模の詐欺行為がチェックされず見過ごされtえいています。しかしこれを発見するのは私のような個人でも簡単なのです。なぜAppleが見過ごしているのか、その理由についてAppleはまったく説明しませんでした。またApp Storeでの詐欺行為に対しAppleに責任があるのかどうかについても明確な回答をしませんでした。

Appleはこうした詐欺行為から利益を得ているように受け取れます。つまり後になって詐欺的と判明したアプリを削除しても、すべてのユーザーに被害金額を返金するのではないのです。私たちは10年以上にわたり、Appleの問題点を指摘し続けてきました。上院反トラスト法委員会には、こうした疑問の真相を究明するよう強く求めます。これには数年前にApp Storeでユーザーが疑わしいアプリに通報フラグを立てる機能を削除したAppleの不可解きわまる決定も含まれます

Appleにコメントを求めているがいまのところ回答がない。

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(文:Sarah Perez、翻訳:滑川海彦@Facebook

米議会の新しいプライバシー法は警察がブローカーからデータを買う慣行に終止符

「Fourth Amendment is Not for Sale Act(修正第四条販売禁止法)」と名づけられた新しい法律は、本来なら合法的なアクセスができなかった個人を同定できる機密性の情報の集まりを、諜報機関や法執行機関が入手するために利用していた抜け穴を塞ぐだろう。

上院議員のRon Wyden(ロン・ワイデン)氏(民主党、オレゴン州)とRand Paul(ランド・ポール)氏(共和党、ケンタッキー州)が提出したこの新しい法案では、ブローカーから得たデータにアクセスするために政府機関は裁判所命令を入手しなければならない。同様のデータを政府がモバイルのプロバイダーやテクノロジーのプラットフォームから得ようとする場合に関しては、すでに裁判所命令の必要性が決まっている。

「データブローカーから取り出した情報が、電話会社やメールのプロバイダーが保持している同じデータと異なる扱いになるべき理由はない」とワイデン氏は述べている。同氏はこの抜け穴を、警察などの機関が「米国憲法修正第四条を迂回して」データを買う方法、と言い表している。

ポール氏は、政府がデータブローカーに関する現在の抜け穴を利用して、憲法に保証されている米国人の権利を欺いていると批判した。「不合理な捜索や押収に対する修正第四条の保護は、政府職員の恣意や金銭的取引によって侵されることのない自由を、すべての米国人に保証している」とポール氏はいう。

重要なのは、この法案では法執行機関は、ハッキングやサービス規約違反によって「ユーザーのアカウントやデバイスから」得られた米国人に関するデータを買うことも禁じられていることだ。

法案のその部分は、顔認識検索エンジンへのアクセスを売っているClearview AIの、厳しい議論の対象にもなっている疑わしい慣行を結果的に強調している。Clearviewのプラットフォームは、ソーシャルメディアサイトなどウェブからかき集めた顔の写真を集めて、そのデータへのアクセスを全国の警察ICEのような連邦政府機関に販売している。

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サイトからデータをかき集めて売ってるため、Clearviewはすべての大手ソーシャルメディアプラットフォームのサービス規約に違反している。FacebookやYouTube、Twitter、LinkedIn、Googleなどはすべて、彼らのサイトから摘み取ったデータを利用しているとしてClearviewを糾弾し、このデータブローカーの操業停止を命ずる停止命令を送ったところもある。

この法案はまた、プライバシー法を拡張して、基地局やデータケーブルを持つインフラストラクチャー企業にも適用し、諜報機関が位置データやウェブ閲覧データの取得を、その必然的大義に関するFISA裁判所の検討と許可なく、米国人の国際通信からメタデータを得て行うという回避策を封印する。

法案は下にあるが、単なる生まれたばかりの法案ではなく、民主党の上院多数党院内総務Chuck Schumer(チャック・シューマ)氏とBernie Sanders(バーニー・サンダース)氏、共和党はMike Lee(マイク・リー)氏とSteve Daines(スティーヴ・デインズ)氏など、すでに両党の複数の重要な支援者からの支持を得ている。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】「良心に基づく」診療拒否を許すアーカンソー州法案は患者を危機にさらしヘルステックの基本的価値に反する

本稿の著者Lena Levin(レナ・レビン)氏は、新型外科固定術ソリューションの大手開発会社Via Surgicalの共同ファウンダーでCEO。

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最近制定された、ヘルスケア提供者が誠実な信念を理由に処置を拒んだり、トランスジェンダーを治療しないことを許す法律は、一見テック業界にとって問題ではなさそうに見えるが、この種の法制度はヘルステックの基本的価値と直接衝突する。

アーカンソー州のAsa Hutchinson(アサ・ハッチンソン)知事は2021年3月、S.B. 289法案に署名した。「医療の倫理および多様性に関する法律」として知られているもので、ヘルスケアサービスを提供する者は誰でも(医師に限らない)、ケア行為が自分の良心に反すると信じた場合、緊急を要しないケアの提供を拒否できる。

アーカンソー州は、過去数年間この種の法律を推進してきた米国のいくつかの州の1つだ。このような 「conscience law(良心法)」はあらゆる患者に害を及ぼし、LGBTQ当事者や女性、郊外市民らは特にそうだ。中でも、一部の州で40%以上の病床がカトリック団体に支配されていることは大きな理由だ。

これらの法律は医師が自分の宗教的信条に反する可能性のある治療に従事しなくてはならないことを避けるための予防措置に見せかけながら、実際にはそれをはるかに超えており、破棄されるべきものだ。

「緊急を要しない」はさまざまな解釈が可能

アーカンソー州の法律は、極めて危険な坂道の始まりだ。同法が生殖の権利やLGBTQコミュニティに与える直接的影響だけでなく、医療従事者が自分の信条に反するというだけの理由でさまざまな種類の行為を拒否できるという問題を生み出す。

ヘルスケア提供者が宗教、倫理、良心などに基づいてどのサービスを実施するか決めるのを許すことは、国の差別禁止法の下で患者が有する保護される権利を実質的に奪うものだ。

ある医師や救急救命士にとって「緊急」であるものが、別のところで「緊急を要しない」と解釈される可能性がある。医療専門家による一部サービスの提供回避を許すことで、この法はヘルスケアサービスの範疇に関わる者なら誰でも、どんな種類のサービスでも、その時それが緊急ではなかったと信じたと主張する限り、拒否できるという解釈が可能になる。

同法はさらに、患者に患者の望む治療を提供できる誰かを紹介することも拒否できるとしている。これは、身体的、精神的健康問題を抱える患者に不当な負担を強いるものであり、別の提供者を探すために治療が遅れる恐れがある。健康や命に関わる問題では、複数の女性がカトリック医療施設で治療を拒否され、近くの救急医療センターに移動を強いられた事例がある。

ヘルステックコミュニティはあらゆる人々の健康改善に務めている

アーカンソー法は医療技術の開発と改善に尽力するビジネスの価値に相反する。そのビジネスの中心にいるヘルステックスタートアップは、より多くの患者により多くの優れたサービスを提供するために戦っている。ヘルスケアを誰もが利用できるようにするプラットフォームを作ることから、サービスの質を向上させる特別な医療機器の開発、新たな治療方法やワクチンの研究まで。

世界的パンデミックのためにワクチンを開発している一方で、ウイルスが特定の人々にとって緊急かどうかはさまざまな解釈が可能だという理由で医者が投与を拒むことを許している状況を想像して欲しい。あるいは、院内薬剤師が自分の信じる陰謀論を理由に何百回分ものワクチンを故意に使用不能にしたところを。アーカンソー州で決議されたような法律は、ヘルスケア・システムが陰謀論者に悪用される隙きを与え、すでに多くの健康ビジネス業者がQAnon(キューアノン)の嘘を根拠にアドバイスやサービスを提供している。

ヘルステックコミュニティは医薬や医療機器を自分たちと似た信条の患者のためだけに開発しているのではない。同様に医療従事者は、患者が必要な医療を受けるのを個人の感覚に基づいて難しくすべきではない。ヘルステック事業者やヘルスケア提供者にとって究極のゴールは、全員のための治療の質の改善という単一の焦点に絞られるべきだ。

「医療倫理」とアンチLGBTQ法は非倫理的である

ヘルステックコミュニティは、全員の健康を改善するべく新たなソリューションを市場に持ち込もうと日夜努力を続けるだけでなく、患者の命と健康の向上のために培われてきた重要な進歩を根絶やしにするこうした法律に立ち向かう必要がある。

アーカンソー法をはじめとする類似の法律は、適切な治療を見つけるという本来医療コミュニティが負うべき努力を患者に押し付けている。

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(文:Lena Levin、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ベラルーシ政権が暴漢・圧力で同国の重要なスタートアップハブImaguruに閉鎖を強いる

マスクをした匿名の侵入者たちに押し入られ、賃貸契約が解除された後、ミンスクにあるベラルーシの主要なスタートアップハブで、イベント・コワーキングスペースでもあったImaguruは、ここ数カ月間、自国民に対して残忍な弾圧を行ってきたルカシェンコ政権によって事実上閉鎖された。しかしこのスペースを運営している会社は、当局に反抗してオンラインでの活動を続けると述べている。

2013年以降Imaguruは、2017年にFacebook(フェイスブック)が買収したMSQRDをはじめとするベラルーシ発の多くのスタートアップが誕生した場所として知られるようになり、また、ベラルーシを訪れる国際的な投資家たちの着地点にもなっていた。このスペースから生まれたスタートアップは、近年、1億ドル(約108億円)以上の投資を集めている。

「Imaguru Startup HUB」は、2013年に「Horizon Holding」が国有企業から老朽化した建物を引き継いだ際に、スペースを借りるリース契約を結んだ。しかし、2021年4月16日、Horizonは一方的にリースを終了するとImaguruに伝え、同スタートアップスペースは4月30日までに退去するよう命じられた。

Imaguruによると、HorizonはImaguruを同不動産事業の「フラッグシップ」テナントと呼んで宣伝しており、リース終了の理由は何もないという。

Imaguruの設立者タニア・マリニッチ氏

外部から見れば、Imaguruがベラルーシ国内の民主化運動を積極的に支援したことで、Horizonに圧力がかかったように見受けられる。

2021年3月上旬にはマスクを被った正体不明の男たちがImaguruのオフィスに侵入し「出口を塞ぎ、若いイベント参加者たちを壁に押し付け、警察署に連れて行った」という。

Imaguruは声明の中でこう述べている。「我々は、誠実で公正な選択の権利を擁護する一般市民に対する無法状態、弾圧、迫害を黙認しません。政権がビジネス、投資、そしてスタートアップの環境をシャットダウンすることを黙認しません。ベラルーシからスタートアップが大量に流出していることも、このことによる国の破滅、そしてこのプロセスにおけるHigh Tech Park(政府支援のテクノロジー経済特区)の役割についても黙ってはいません」。

「I’m a guru(私は達人)」というフレーズにちなんで名づけられたImaguruは、ベラルーシの起業家たちによって文字通り書き起こされ、数え切れないほどのカンファレンスやイベント、スタートアップピッチやコースを開催してきた。また、Venture Day Minsk(現地時間4月29日にオンラインで開催予定)の主催者でもある。

2013年以来、ImaguruはSplitmetrics、MSQRD、PingFin、DEIP、TrackDuckなど、300以上のベラルーシのスタートアップを支援し、250以上の雇用を創出し、1万2000人以上を教育し、3500以上のイベントを開催し、米国、英国、フィンランド、スペインへのスタディツアーを企画し、最近ではTechMinskアクセラレータプログラムを立ち上げたという。

ここ数カ月の間に同社は、不正が疑われる2020年選挙後に起こった国内での抗議活動に連帯して従業員が投獄されたPandaDocへの支持を示す動画を録画し、さらに2020年10月26日のゼネストを支援していた。

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Imaguruチームが主催したGlobal Entrepreneurship Week Belarusは、ベラルーシのリーダーで2020年大統領候補だったSviatlana Tsikhanouskaya(スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ)氏によって開会された。

Imaguruは、ベラルーシのビジネスウーマンTania Marinich(タニア・マリニッチ、TwitterLinkedinTelegram)氏によって設立された。彼女の夫は、ルカシェンコ政権に対抗して選挙に立候補した後、獄中で亡くなった。

下の動画は、Imaguruスペースの閉鎖に関するマリニッチ氏の声明だ。

ミンスクに拠点を置くスタートアップハブは、2013年のベラルーシではまったく新しいアイデアだったが、マリニッチ氏は設立以来、このエコシステムを擁護してきた。

2020年の抗議活動の後、マリニッチ氏は野党の調整評議会のコアチームに加わり、ビジネスグループを率いている。

Imaguruを支援したい方は、同社のニュースFacebookLinkedinTwitterInstagramYoutubeを購読することができる。

Imaguruの商品を購入したり、オンラインで提供し続けているサービスを注文することも可能だ。

また、4月29日に開催されるVenture Day Minsk Onlineに参加することもできる。登録はこちらから。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

アップルとグーグルが上院の独禁法ヒアリングでサードパーティーアプリのデータ共有の詳細を問われる

米国時間4月21日、米上院で行われた反トラスト法に関するヒアリングでAppleとGoogleの代表がそれぞれのアプリストアで収集されたデータを不当に利用していないかどうか質問された。プラットフォームにアプリを登録しているサードパーティーの企業のデータを自社の製品開発に流用し、不当に競争力を得ることを防ぐために「厳しいファイアウォール」その他の内部ポリシーを設けているかどうかが焦点となった。Richard Blumenthal(リチャード・ブルーメンソール)上院議員(コネティカット州、民主党)はAppleに対して「sherlocking(シャーロッキング)」という慣行について質問した。同上院議員はAppleの開発者コミュニティでは他のアプリをコピーする行為が一般的になっており「シャーロッキング」というニックネームで呼ばれていると指摘した。

Sherlock(シャーロット)というソフトウェアはWikipediaに1項目を立てた記事が掲載されているが、2000年代初頭にAppleが開発した検索ツールだ。サードパーティーのデベロッパーであるKarelia SoftwareはSherlockのライバルとなるWatsonという検索ツールを開発した。この製品の成功に対し、AppleはWatsonと同一の機能を自社のSherlock検索ツールに追加したためWatsonは事実上ビジネスの継続が不可能となった。後に「Sherlock」ないし「sherlocking」という呼び名はAppleがサードパーティーのデベロッパーのアイデアをコピーし、ライバルを脅かしたり潰したりすることを意味するようになった。

以後、デベロッパーコミュニティはAppleは多年にわたって数多くのアプリを「Sherlock」してきたと主張してきた。例えばデスクトップ・ウィジェットのKonfabulator、ポッドキャストマネージャーのiPodderX、ウェブサイト作成アプリSandvox、Mac OS Xの通知システムGrowl、さらに近年では、画面のブルーライト軽減ツールF.lux、iPadをサブディスプレイにするアプリDuetとLunaに加えてさまざまなスクリーンタイム管理ツールなどがそうだという。今回、TileはAppleのAirTagは不当な方法で同社の市場を脅かすものだと主張している。

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ブルーメンソール上院議員がヒアリングで質問した相手はAppleのKyle Andeer(カイル・アンディア)最高コンプライアンス責任者とGoogleのWislon White(ウィルソン・ホワイト)公共政策および政府関係担当シニアディレクターだ。同上院議員はAppleのアプリストアとビジネス戦略立案の間に何らかの「ファイアウォール」を採用しているか尋ねた。

アンディア氏は「上院議員の質問を正しく理解しているなら、AppleではApp Storeを管理するチームと製品開発戦略に携わるチームは別個の存在しです」と述べ質問をかわそうとした。

これに対しブルメンソール議員は「ファイアウォール 」の意味を具体的に説明した。つまり、それぞれを担当するチームが存在するかどうかではなく、App StoreとAppleの他事業部の間でデータ共有を禁止する社内規定の有無を尋ねているのだと述べた。

アンディア氏は「私たちは適切な管理を行っています」と答えた。

これに続いて「過去12年間、Appleはごく少数のアプリとサービスを導入したのみです」と述べた。いずれの場合においてもApp Storeには「サードパーティーによる数十の選択肢があり、そうしたライバルのアプリがAppleの製品より人気があることも多々ありました」とした。

アンディア氏は「我々はコピーしませんし、敵を潰したりしません。私たちがしているのは新しい選択肢と新しいイノベーションを提供することだけです」と述べた。

この主張は、SpotifyとApple Music、NetflixとApple TV +、KindleとApple Booksなど強力なライバルとの競争の場合には当てはまるかもしれない。しかしAppleがiPadをサブディスプレイにすることができる機能であるSidecarを導入したときのようにAppleが限定された領域で改良を行う場合は別だ。DuetやLunaのようなアプリがサブディスプレイ接続のニーズがあることを証明したもののSidecarの導入でサードパーティーのアプリは行き場を失った。

もう1つの例は、AppleがiOSに視聴時間制限機能を組み込んだときだ。サードパーティーのスクリーンタイムアプリのデベロッパーにAPIを提供しなかったため消費者はサードパーティーのアプリからAppleのスクリーンタイム設定機能にアクセスすることが不可能となった。このためユーザーはサードパーティーの専用インターフェースや独自機能を利用できなかった。

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ブルーメンソール議員はファイアウォールの存在に関するアンディア氏の答えた「ノー」だと断定した。

同じ質問を受けたGoogleのホワイト氏は「Googleにはサードパーティーのサービスからのデータの使用方法に対するデータアクセスコントロールが実施されていると理解しています」と答えた。

上院議員はこれが前述の「ファイアウォール」であるかどうかを明確にするようさらに迫った。議員はサードパーティのデータへの別チームの「アクセスを禁止しているかどうか」に明確に答えるよう求めた。

「Google自身のサービスと直接競合するような仕方でサードパーティーのサービスを利用することは禁止されています。Googleにはそれを管理する内部規定があります」とホワイト氏は述べた。

この時点で時間切れとなったため、ブルーメンソール上院議員は「フォローアップ質問は書面で行う」と述べた。

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(文:Sarah Perez、翻訳:滑川海彦@Facebook

【コラム】米国の低所得者ブロードバンド支援はLifeline Programの再構築で改革せよ

本稿の著者Rick Boucher(リック・バウチャー)氏は民主党米下院議員を28年間務め、米国下院エネルギーおよび商業対策委員会の通信・インターネット小委員会の議長を務めた。Internet Innovation Alliance名誉議長。

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「If you build it, they will come(それを作れば、彼らはやってくる)」は、行動を勇気づけるために30年以上繰り返されているスローガンだ。映画「Field of Dreams(フィールド・オブ・ドリームス)」に出てくるこの一文は、強力な格言だが、私はそこに一語加えてみたい。「If you build it well, they will come.(それをうまく作れば、彼らはやってくる)」。

米国のLifeline Program(ライフライン・プログラム)は、低所得世帯が不可欠な通信サービスを利用できるようにするための月額助成制度であり、すばらしい意図の下に作られた。当初の目標は誰もが使える電話サービスの構築だったが、連邦通信委員会(FCC)がこれをブロードバンド中心のプログラムに変更しようとしたことで、達成目標を大きく下回っている。

FCCのユニバーサルサービス管理会社の推定によると、現在同プログラムを利用しているのはLifeline有資格世帯のわずか26%だ。これは、低所得消費者の4人中3人が得られるべき恩恵に預かっていないことを意味している。しかし、これはJor Biden(ジョー・バイデン政権)が最近発表したインフラストラクチャー計画が示唆している、プログラムを廃止すべきだという意味ではない。

むしろ、今こそLifeline Programのブロードバンドへの転換を完了し、支援をブロードバンド市場に見合ったレベルへと引き上げることによって、利用価値を拡大するチャンスである。しかし、この計画に関するホワイトハウスの概況報告書は、インターネット利用サービスの価格統制を推奨し、低所得世帯への女性をフェーズアウトするとしている。これは欠陥のある政策処方箋だ。

もし、米国の世界的競争力を維持し、費用のかかる郊外地域にブロードバンド基盤を築き、国による5Gワイヤレスサービスの迅速な展開を続けることが国家目標なのであれば、政府はインターネットアクセスの価格を決めるべきではない。

手頃価格なブロードバンドを追求するために人為的な低価格を強制することによって、インターネットサービスプロバイダーは、国の通信インフラストラクチャーの要求を満たすための優れたなイノベーションと十分な投資に必要な収益を上げることができなくなる。

代わりにLifeline Programに目標を定めた変更を施すことによって、登録者が増え、現代世界で雇用、教育、医療、政府情報へのアクセスなどに不可欠な電話およびブロードバンドサービスを必要としている貧しい米国の人たちを繋ぐという目標の実現に近づくことができる。

まず、Lifeline Programへの登録をもっとずっと簡単にすべきだ。現在、サービスを利用しようとする個人は、個別の登録プロセスを使う必要がある。SNAP(補助的栄養支援プログラム、旧称フードスタンプ)やMedicaid(メディケイド、医療費補助性度)などの政府支援制度の対象者が、Lifelineに自動的に登録される「coordinated enrollment(連携登録)」を実施すれば、プログラムの深刻な低利用率は解消されるはずだ。

同じ市民たちを複数の政府プログラムが対象としているため、対象プログラムすべてに適用される単一の登録プロセスを作れば、政府・自治体の効率が高まり、機会を逃している国民に手を差し伸べることができる。

2014年にアメリカン・エンタープライズ研究所で講演したFCCのMignon Clyburn(ミニヨン・クライバー)委員は次のように語った。「ほとんどの州では、消費者はすでに、州政府が管理する国の支援プログラムに登録するために所得関連書類を集めル必要があり、プログラムによっては面接もあります。他の政府支援プログラムへの申請と同時にLifelineに登録できるようにすれば、消費者の体験は向上し、私たちの作業効率も高まります」。

次に、Lifeline特典の利用は、SNAPプログラムの電子給付金送金(EBT)カードのように、助成金が電子Lifeline給付カードアカウントを通じて直接入金されるようになれば、消費者にとってずっと簡単になる。Lifeline給付金カードによって、プログラムへの登録が簡単になるだけでなく、低所得層はさまざまなプロバイダーの中から、自分のニーズにぴったり合ったキャリアを選べるようになる。消費者の選択肢が広がることで、プログラムに登録する動機づけが高まる。

そして、Lifelineの現在の助成金、月額9.25ドル(約1000円)は、ブロードバンド契約に十分ではない。助成金が真に意味のあるものになるためには、月額の給付を増やす必要がある。2020年12月、議会は一時的なEmergency Broadband Benefit(緊急ブロードバンド支援)を承認し、パンデミック中、米国の低所得者はブロードバンド接続のために月額最大50ドル(約5400円)、部族所有地では75ドル(約8100円)の減額を受けられるようになった。緊急支援終了後には、ブロードバンド契約料金負担に見合った月額給付金が必要になる。

月間9.25ドル以上の支援を行うためには、Lifelineの財源も見直す必要がある。現在同プログラムはFCCのユニバーサルサービス基金に依存しており、その財源は従来の長距離および国際通話の「税金」で賄われている。

ウェブによる音声会話の利用が増え、伝統的電話の利用が減ったことによる固定電話サービスによる収入減を補うために、税率が引き上げられている。10年前、「contribution factor(寄与因子)」と呼ばれるこの税は15.5%だったが、現在は維持不可能な33.4%へと2倍以上に増えている。変革を起こさなければ問題は悪化する一方だ。

ブロードバンド給付金の財源を滅びゆくテクノロジーと結びつけておくべきでないことは明白だ。代わりに、Lifeline Programはインターネットエコシステム全体で共有される「税」で賄うことができる。例えば顧客とつながるためにブロードバンドに依存しているウェブサイトから、あるいはLifeline Programのための議会が定めた政府歳出予算から直接支出するなどだ。

ここに挙げた改革案は実現可能かつ単純明快だ。プログラムを廃止するのではなく、今こそLifelineを「再構築」し、当初の目標を実現して米国の最貧困層に手を差し伸べる時だ。

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画像クレジット:Paul Taylor / Getty Images

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(文:Rick Boucher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

デザイナーズカンナビスをより多くの州で展開、Connected Cannabisが約33億円調達

Connected Cannabis Co.は2009年に設立され、その後にデザイナーズカンナビスのリーディングカンパニーとして成長してきた。そして米国時間4月14日に同社は、3000万ドル(約33億円)の負債および株式による資金調達を発表した。Connected Cannabisは2019年にシリーズAで2500万ドル(約27億円)を調達しており、今回のラウンドはNavy CapitalやOne Tower Groupなどの既存の投資家が主導し、Bryant Park Capitalの系列会社であるEmerald Park CapitalとPresidio View Capitalも参加した。

Connected Cannabisは現在、カリフォルニア州とアリゾナ州で栽培施設と小売施設を運営している。そして今回の追加の資金調達により、他の地域にも拡大していく予定だ。同社によると、ネバダ州やミシガン州などの大麻の文化が強く、成長が期待できる州に注力する計画だという。

「Emerald Park CapitalとPresidioをConnectedのファミリーに加え、創業当初から当社のミッションを支えてくれた長期的なパートナーを歓迎します」と、Connected CannabisのSam Ghods(サム・ゴーズ)CEOは語る。「私たちはクラス最高の新しい遺伝学を開発し、最高品質の花を生産することで、目覚ましい成長と揺るぎない顧客ロイヤルティを獲得しました。私たちが初日から誇りに思ってきたこのコミットメントと品質は、他の州に進出しても変わらないでしょう。当社の真の製品とブランドを新しい市場の消費者に提供できることを、楽しみにしています。これは、事業拡大を検討する際の最優先事項です」。

Connected Cannabisは特定の地域以外への事業拡大に先駆けて資金調達を行う、増えつつある大麻に特化した企業の中の1社だ。米国で大麻を合法化する州が増えるにつれて、より多くの企業が事業拡大の選択肢を模索している。しかし連邦政府の規制が厳しいため、Connected Cannabisのような大麻栽培企業はプロセスを遅らせ、異なる州で事業を展開することになる。州によって規制が異なり、連邦法では州間取引が禁止されているためだ。

大麻の栽培は簡単だ。そして丈夫で心が広く、寛大だ。しかし大麻を大規模に栽培することは、決して容易なことではない。だからこそConnected Cannabisは、国内での成長を促すために追加の資金を調達したのだ。

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タグ:Connected Cannabis資金調達大麻アメリカ

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(文:Matt Burns、翻訳:塚本直樹 / Twitter

スタートアップにはバイデン大統領のインフラ計画を支持する110兆円分の理由がある

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領が2021年3月末に提案した膨大なインフラ投資計画概算で2兆ドル(約220兆円)の規模となり、大幅な増税もともなう。スタートアップとテクノロジー業界全体にとって、この計画の価値は実に1兆ドル(約110兆円)ほどになる。

テクノロジー企業は過去10年以上、農業、建設、エネルギー、教育、製造、運輸、流通といった昔からの業界に適用できるイノベーションの開発に取り組んできた。こうした業界は、非常に強力なモバイルデバイスの出現により、ようやく最近テクノロジー適応における構造的な障害が取り除かれた業界だ。

これらの業界は現在、より強固な経済再建を目指す大統領の計画の核となっている。バイデン政権が期待する取り組みの大半を実現するのは、スタートアップや大手のテクノロジー企業が提供するハードウェアサービスやソフトウェアサービスだ。米国を再び偉大にすべく費やされる何千億ドルもの資金は、直接的であれ間接的であれ、こうした企業にとって大きな後押しとなるだろう。

投資会社Energy Impact Partners(エナジーインパクトパートナーズ)のパートナーを務めるShayle Kann(シェイル・カン)氏は「バイデン氏の新計画に織り込まれている環境重視の投資は、ARRA(American Recovery and Reinvestment Act、米国復興・再投資法)における投資額のおよそ10倍の規模となる。これは、クリーンな電気や炭素管理、車両の電気化など、環境テクノロジーを扱う幅広い部門にとって大きな機会となるはずだ」と話している。

この計画の感触は多くの面でグリーンニューディールに似ているが、目玉は米国が切実に必要とするインフラの最新化、そしてサービスの改善だ。事実、エネルギー効率化はもはや新時代の建設の一部となっているため、グリーンニューディールの核であるエネルギー効率や再生可能エネルギーの開発計画を無視してインフラに投資することは難しい。

関連記事:バイデン次期大統領の気候変動対策はグリーンニューディールに依存しない

予算案のうち7000億ドル(約77兆円)以上は自然災害への耐性強化に用いられる。例えば、水道、電気、インターネットといった重大なインフラの改修や、公営住宅、連邦ビル、老朽化した商業不動産や住宅不動産などの復旧・改善だ。

また、別途4000億ドル(約44兆円)ほどの資金が、半導体など国内の重要な製造業の強化、将来のパンデミック対応、そして地域のイノベーションハブの立ち上げに投じられる。地域ごとのイノベーションハブは、ベンチャー投資とスタートアップ育成の促進を目指したもので「有色人種のコミュニティやサービスが行き届いていないコミュニティにおける起業家精神の向上を後押しする」ものとなる。

気候への耐性

2020年に米国を襲った数々の災害(および合計で推定1000億ドル、約11兆円ほどの被害額)を鑑みると、バイデン計画の焦点がまず災害対策に向けられていることにも納得できる。

バイデン計画の概要としては、まず500億ドル(約5兆5000億円)を融資に投じ、Federal Emergency Management Agency(連邦緊急事態管理庁)とDepartment of Housing and Urban Development(住宅都市開発省)のプログラム、またDepartment of Transportation(運輸省)の新たな取り組みを通じて、サービスが不十分で災害リスクが最も高いコミュニティにおける強化・保護・投資を行う算段だ。スタートアップに最も関係する点として、大規模な山火事や海水位の上昇、ハリケーンなどを阻止してこれらに備え、農業の新たなリソース管理を実現し「気候に強い」テクノロジーの開発を促進するための取り組みやテクノロジーには、積極的に資金が提供される。

バイデン氏の大がかりなインフラ戦略の大部分と同様、これらの問題にも解決に向けて取り組んでいるスタートアップが存在する。例えば、Cornea(コルネア)Emergency Reporting(エマージェンシーレポーティング)Zonehaven(ゾーンハーヴェン)などの企業が山火事におけるさまざまな側面の解決に取り組んでいる他、洪水予測や気候監視を行うスタートアップもサービスを展開し始めている。また、ビッグデータ分析、監視・感知ツール、ロボティクスといった分野も農場に欠かせない存在となりつつある。大統領がてがける節水プログラムやリサイクルプログラムについては、Epic CleanTec(エピッククリーンテック)をはじめとする企業が住宅ビルや商業ビル向けに廃水のリサイクル技術を開発したところだ。

米国再建物語

バイデン氏のインフラ投資計画で圧倒的な額を占めているのが、エネルギー効率の向上と建物の改修だ。実に4000億ドル(約44兆円)もの資金が、丸ごと住宅やオフィス、学校、退役軍人病院や連邦ビルの改修に充てられる。

Greensoil Proptech Ventures(グリーンソイルプロップテックベンチャーズ)Fifth Wall Ventures(フィフスウォールベンチャーズ)が立ち上げた新たな気候重視の基金は、バイデン氏の計画によってさらにその理論の信頼度を高めることとなる。2億ドル(約220億円)の投資手段を確立し、エネルギー効率と気候テックのソリューション事業に力を入れている基金だ。

フィフスウォールに最近参加したパートナーであるGreg Smithies(グレッグ・スミシーズ)氏は2020年、エネルギー効率の分野で建物の改造とスタートアップのテクノロジーに大きなビジネスチャンスが広がっていると述べている。

「この分野では、実入りが良く、すぐに着手できる案件が数多くある。これらの建物の価値は260兆ドル(約2京9000兆円)にも上るが、ほとんど近代化されていない。こうした老朽化物件に注力すれば、ビジネスチャンスは格段に広がるだろう」。

不動産の脱炭素化もまた、住民の暮らしの質と満足度を高められるだけでなく、世界的な気候変動への取り組みを大きく変える分野だ。フィフスウォールの共同設立者、Brendan Wallace(ブレンダン・ワランス)氏は、声明の中で「エネルギー全体の40%を不動産が消費している。世界経済は屋内で動いているのだ。不動産は炭素問題に大きく関与しているため、気候関連のテクノロジーへの出資が特に多い分野となるだろう」と述べている。

手頃な価格での住宅建設が難しい現状を鑑み、バイデン計画では、この障壁を取り除くための具体的な方策を講じる地域に報酬として柔軟な財政支援を行うよう、新しい補助金計画の議会成立を求めている。その一部に含まれるのは、米国の公営住宅のインフラ改修に使われる400億ドル(約4兆4000億円)の資金だ。

このプロジェクトには、すでにBlocPower(ブロックパワー)などのスタートアップが深く関わっている。

ブロックパワーの最高責任者兼設立者、Donnel Baird(ドネル・ベールド)氏は次のように述べている。「まさにヒーローの登場だ。バイデン・ハリス政権が発表した気候対策は、まさに米国の経済と地球を救うプランで、 「Avengers: Endgame(アベンジャーズ / エンドゲーム)」の現実版を見ている気分だ。過去5年間はやり直せなくても、スマートで大がかりな投資をして未来の気候インフラを整備することならできる。200万軒もの米国の建物を電気化し、化石燃料から完全に切り離す取り組みは、まさに米国への投資だ。新しい業界を生み出し、外国に流出しない雇用を米国人のために創出し、将来的には建物が排出する温室効果ガスを30%削減することにもなるのだ」。

連邦政府によると、スタートアップに直接影響する投資計画の中には、Clean Energy and Sustainability Accelerator(クリーンエネルギーおよび持続可能性促進法)の取り組みとして、270億ドル(約3.0兆円)を投じて個人投資を集める提案書が含まれている。この取り組みで重視されるのは、分散型エネルギー資源、住宅・商業ビル・庁舎の改造、そしてクリーンな運輸だ。サービスが行き届いておらず、クリーンエネルギーへの投資機会がなかったコミュニティに重点が置かれる。

未来のスタートアップ国家への資金提供

連邦政府は次のように発表している。「半導体の発明からインターネットの誕生まで、経済成長の新たな原動力となっている分野は、研究や商品化、強力なサプライチェーンなどを支える公共投資によって成長してきた。バイデン大統領は議会に対し、研究開発、製造、地域単位での経済成長、さらにはグローバル市場での競争に勝つためのツールやトレーニングを従業員と企業に提供する人材育成といった分野について、スマートな投資を行うよう呼びかけている」。

これを実現すべく、バイデン氏は別途4800億ドル(約53兆円)を費やして研究開発を促進する予定だ。このうち500億ドル(約5兆5000億円)は半導体、高度通信技術、エネルギー技術、およびバイオ技術への投資として国立科学財団へ、300億ドル(約3兆3000億円)は農村開発、さらに400億ドル(約4兆4000億円)は研究基盤の強化に充てられる。

また、インターネットを生み出したDARPAプログラムをモデルに、Advanced Research Projects Agency(国防高等研究計画局)の一機関として、気候問題に主眼を置いたARPA-Cの設立を目指す動きもある。気候専門の研究・実証プロジェクトに対する資金としては、200億ドル(約2兆2000億円)が投じられる。こうしたプロジェクトに該当する分野は、エネルギー貯蔵をはじめ、炭素の回収・貯留、水素、高度な核燃料、および希土類元素の分離、浮体式洋上風力発電、バイオ燃料・バイオ製品、量子計算、電気自動車などである。

製造業に資金投入するバイデン氏の取り組みでは、さらに3000億ドル(約33兆円)の政府財政援助を行う用意がある。このうち300億ドル(約3兆3000億円)はバイオプリペアドネスとパンデミックへの準備、500億ドル(約5兆5000億円)は半導体の製造・研究、460億ドル(約5.0兆円)は連邦政府による新たな高度原子炉、核燃料、自動車、ポート、ポンプ、クリーン物質の購買力向上に使われる。

これらすべてで強調されているのは、国内全体で公平かつ均等に経済を発展させるという点だ。そこで、地域のイノベーションハブに加え、刷新的なコミュニティ主導の再開発事業を後押しするCommunity Revitalization Fund(コミュニティ再生基金)に200億ドル(約2兆2000億円)が割り当てられ、農村部の製造業およびクリーンエネルギーの促進を目標にして、国内の製造業投資に520億ドル(約5兆7000億円)が割り当てられる。

さらに、スタートアップ関連では、スモールビジネスがクレジットやベンチャーキャピタル、研究開発費用を獲得できるよう支援するプログラムに310億ドル(約3兆4000億円)が投じられる。予算案では特に、有色人種のコミュニティやサービスが行き届いていないコミュニティの発展を後押しすべく、コミュニティベースのスモールビジネスインキュベーターやイノベーションハブへの資金提供を呼びかけている。

水道と電力のインフラ

米国のC評価のインフラが抱える問題は国内のいたるところで見受けられ、その内容も、道路や橋の崩壊、きれいな飲料水の不足、下水設備の欠陥、不十分なリサイクル施設、発電・送配電設備の増加し続ける需要に対応しきれない送電網などさまざまだ。

連邦政府の声明によると「配管や処理施設が全国で老朽化しており、汚染された飲料水が公衆衛生を脅かしている。推定では、600~1000万軒の住宅への飲料水配給でいまだに鉛製給水管が使われている」とのことである。

この問題に対処するため、バイデン氏は450億ドル(約4兆9000億円)をEnvironmental Protection Agency’s Drinking Water State Revolving Fund(環境保護庁州水道整備基金)とWater Infrastructure Improvements for the Nation Act(水道インフラ改善法)を通じた助成に充てる計画だ。こうしたインフラ交換のプログラムはスタートアップに直接影響することはないかもしれないが、飲料水・廃水・雨水の処理設備や水に含まれる汚染物質の監視・管理システムの改善にさらに660億ドル(約7兆2000億円)が費やされれば、水質検査やフィルタリングなどを扱うさまざまなスタートアップがここ10年以上市場にあふれていることを考えると、恩恵は大きい(事実、水道技術に特化したインキュベーターもあるほどだ)。

悲しい事実ではあるが、米国内の水道インフラの大部分は維持が追いついておらず、こうした大規模な資金投入が必要となっているのである。

また、水道に関して言えることは、近年電力に関しても言えるようになってきている。連邦政府によると、停電による米国の経済損失は年間700億ドル(約7兆7000億円)以上にも上る。この経済損失と1000億ドル(約11兆円)の出費を比較すれば、どちらがいいかは一目瞭然だろう。スタートアップにとって、この計算式で浮く金額はそのまま会社の利益につながる。

より耐久性のある送電システムを構築することは、Veir(ヴェイル)をはじめとする企業にとっては実にうれしい話だろう。ヴェイルは、送電線容量の増加に向けた新しい技術の開発に取り組んでいる企業だ(このプロジェクトは、バイデン政権も計画内で明確に言及している)。

バイデン計画には資金提供だけでなく、Department of Energy(エネルギー省)内部に新しくGrid Deployment Authority(送電網配備局)を設置する案も盛り込まれている。連邦政府はこれを、同局の設置について、道路や鉄道沿線の敷設用地をより有意義に活用し、資金提供手段を通じて新たな高圧送電線を開発するためとしている。

同政権の取り組みはこれだけにとどまらない。エネルギー貯蔵技術と再生可能技術を後押しするため、これらの開発には税額控除が適用される。つまり、直接払いの投資税額控除と生産税控除が10年延長され、その後、徐々に控除が減額されるというわけだ。この計画では、クリーンエネルギーの包括的補助金を捻出する他、政府の連邦ビルについては再生可能エネルギーのみを購入することが盛り込まれている。

バイデン政権下では、クリーンエネルギーとエネルギー貯蔵に対するこの支援に加え、廃棄物の浄化と汚染除去の分野で予算を大きく拡大し、210億ドル(約2兆3000億円)が投じられる予定だ。

Renewell Energy(レネウェルエナジー)をはじめとする企業や、放置された油井を塞ぐ取り組むを続けるさまざまな非営利団体は、この分野に携わることができるはずだ。また、その他の鉱床の回復や、こうした油井から出る排水の再利用といった取り組みの可能性も考えられる他、ここでも投資家はビジネスチャンスを狙うアーリーステージの企業を見出だせるだろう。バイデン計画から出される資金の一部は、汚染されて利用できなくなった工業用地を再開発し、より持続可能なビジネスに変えるために用いられる。

屋内での農業をてがけるPlenty(プレンティ)、Bowery Farms(バワリーファームズ)、AppHarvest(アップハーヴェスト)などの企業は、利用されていない工場や倉庫を農場として再利用することで、大きな利益を上げられるかもしれない。送電網に関する需要を考えれば、閉鎖された工場をエネルギー貯蔵やコミュニティベースの発電に使うハブ、あるいは送電設備に生まれ変わらせることもできる。

連邦政府の声明によると「バイデン大統領の計画は、Appalachian Regional Commission(アパラチア地域委員会)のPOWER補助金プログラム、エネルギー省による(セクション132プログラムを通じた)閉鎖工場の改革プログラム、さらにはコミュニティ主導の環境正義活動を後押しする専用の資金を通して行われる、持続可能な経済開発の取り組みを促進するものである。コミュニティ向けの支援としては、旧世代の環境汚染や蓄積された環境への影響を最前線や工場に隣接する地域で経験してきたコミュニティがこうした問題に対応できるよう、能力構築助成金やプロジェクト助成金が給付される」。

こうした再開発事業の鍵は、スチール、セメント、および化学製品の大規模な製造施設向けに炭素の回収・修復の実証実験を行うパイオニア施設の設立だ。とはいえ、バイデン政権が望めば、さらに一歩先へ進んで低排出の製造技術開発に取り組む企業を支援することもできるだろう。例えば、Heliogen(ヘリオゲン)は大規模な採掘作業用に必要な電力を太陽光発電でまかなっている他、BMWと提携しているBoston Metal(ボストンメタル)は炭素排出量がより少ないスチール製造プロセスの開発を進めている。

関連記事:持続可能な自動車製造を目指すBMWが二酸化炭素を排出しない製鉄技術を開発したBoston Metalに投資

また、これらの資金を使うために不可欠な前提条件として、開発前の段階にある事業に投資する必要がある。これには250億ドル(約2兆7000億円)が割り当てられており、Forbes(フォーブス)誌のRob Day(ロブ・デイ)はこの資金について、比較的小規模のプロジェクトデベロッパーを後押しするだろうと述べている。

デイ氏は次のように述べている。「他の記事でも書いたように、持続可能性に関するプロジェクトを最も有意義な形で、つまり現地の環境汚染や気候変動による打撃を最も受けたコミュニティで実施するには、地元のプロジェクトデベロッパーが鍵となる。比較的小規模のプロジェクトデベロッパーは、単に民間企業のインフラ整備投資を受けるだけでも、多額の出費が必要となる。持続可能性政策に携わる人は皆、起業家の支援について話すが、現状の支援対象の大半は技術開発者で、実際にこうした技術革新を展開する小規模のプロジェクトデベロッパーには支援が向けられていない。インフラの投資家も通常、プロジェクトの建設準備が整ってからでないと資金を提供したがらないものだ」。

より良いインターネットの構築

連邦政府は次のような声明を出している。「広帯域インターネットは、新時代の電気のようなものだ。米国人が仕事をして、平等に学校で学び、医療サービスを受け、人とつながるには広帯域インターネットが欠かせない。それにもかかわらず、ある調査によると、3000万人以上の米国人は最小限必要な速度の広帯域インフラがない場所で生活している。また、農村部や部族の所有地で暮らす米国人のインターネット環境はとりわけ貧弱だ。さらに、OECD諸国の中で米国の広帯域インターネット料金が特に高いこともあり、インフラが整っている地域に暮らしていながら実際には広帯域インターネットを利用できない人も多く存在する」。

バイデン政権は、広帯域インターネットのインフラ整備のために1000億ドル(約11兆円)を支出するにあたり、高速の広帯域インターネットのカバレッジを100%に引き上げる他、地方自治体、非営利団体、および共同組合が所有・運営・提携するネットワークを優先することを目標としている。

新たな資金投入にともない、規制政策にも変化が生じる。これにより、地方自治体が所有または提携するプロバイダーや農村部の電気協同組合が民間のプロバイダーと競合することになり、インターネットプロバイダーは料金形態をさらに透明化する必要が生じる。競争の激化はハードウェアベンダーにとってもメリットとなり、最終的には独自のISP立ち上げを目指す起業家の新事業も生まれる可能性がある。

そうしたサービスの1つが、ロサンゼルスで高速のワイヤレスインターネットを提供するWander(ワンダー)だ。

連邦政府の声明によると「米国人は他の国の人と比べてもインターネット料金を払いすぎている。そこで、大統領は議会に呼びかけて米国人全員のインターネット料金を引き下げ、農村部と都会の両方のインフラを強化し、プロバイダーに説明責任を課し、納税者のお金を守るためのソリューションを全力で探している」とのことだ。

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タグ:ジョー・バイデンインフラ環境問題災害農業炭素脱炭素電力持続可能性公共政策アメリカ

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

アマゾンの労組結成賛否を問う従業員投票結果を受け米労組会長が「再選挙の可能性が高い」と語る

Amazon(アマゾン)のアラバマ州ベッセマー倉庫で行われた労働組合結成の賛否を問う従業員投票で、米国時間4月9日に明らかになった開票結果がどうであれ、AmazonとRWDSU(小売・卸売・百貨店労組)の戦いに終わりがないことだけは確かだった。圧倒的にAmazon有利となった開票結果を受け、組合はすぐにその結果に異議を唱えた。

RWDSUは、賛成も反対も50%を超える票がなかったことを受け、Stuart Appelbaum(スチュアート・アッペルバウム)会長の声明をいち早くTechCrunchに提供し「我々は、この選挙を腐敗させたAmazonの行動について包括的な調査を要求する」と述べている。

Amazonは、当然のことながら、すぐに勝利宣言を行った。「Amazonスタッフ」とクレジットされたブログ記事の中で、同社は次のように書いている。

アラバマ州のBHM1フルフィルメントセンターの従業員のみなさん、選挙に参加していただきありがとうございました。この数カ月間、さまざまな意見が飛び交っていましたが、最終的にみなさんの総合的な声が聞けたことをうれしく思います。結局、BHM1の従業員のうち、RWDSUの組合に加入する方に投票した人々は16%以下でした。この選挙でAmazonが勝利したのは、私たちが従業員を威嚇したからだと組合側がいうだろうことは容易に想像がつきますが、それは事実ではありません。

会社側は選挙が「終わった」と言っている一方で、RWDSUは、将来的にベッセマー倉庫で労働組合が結成される可能性と、この運動が今後のAmazonにおける組合結成活動にどのような意味を持つことになるかという両面において、まだ希望を持っている。

アッペルバウム会長は、米国時間4月9日早朝に行われた記者会見で、Amazonが労働者に対し、職を失いたくなければ組合に反対票を投じる必要があると伝えていたことを示唆した。

「私たちは、再選挙の可能性が非常に高いと考えています」と、組合長はメディアに対して語った。「Amazonがこれを勝利と考えるならば、考え直した方がいいと思います。せいぜい、ピュロスの勝利に過ぎません。この期間に何が起こったかを見てください。私たちはAmazonの非道な労働環境を、誰もがわかるように暴露したのです」。

アッペルバウム氏の発言の一部は、ノルマの厳しさを懸念して労働者が飲料水用ボトルに排尿していたという数々の報道について言及していると思われる。Amazonは、明らかにJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)CEOの指示で積極的なソーシャルメディア・キャンペーンを展開する中で、当初は上述のような報道を否定していた。しかし、数々の反論的報道を受け、一部のドライバーに該当する可能性があることを認めた。そしてすぐに、だがそれは広範な業界の問題であるとして責任を転嫁した。

「Amazonが勝ったのではなく、社員が組合加入に反対するという選択をしたのです」と、同社は投稿の中で続けている。「従業員はAmazonの心であり、魂です。私たちは常に従業員の声に耳を傾け、彼らのフィードバックを受け、継続的な改善を行うことに懸命に取り組み、安全で包括的な職場で優れた給与と福利厚生を提供するために多額の投資を行ってきました。私たちは完璧ではありませんが、我々のチームと自分たちが提供しているものを誇りに思っています。そしてこれからも日々向上するために努力を続けていきます」。

RWDSUの異議で鍵となりそうなカ所は、Amazonが全米労働関係委員会(National Labor Relations Board)の規定に反して、USPS(米郵便公社)に圧力をかけて設置させたという投票箱だ。アッペルバウム氏は、この投票箱が「監視されているような印象を従業員に与えた」と述べている。

同氏は、RWDSUがすでにAmazonの他の施設で働く従業員と連絡を取り合っていると付け加え「この選挙の前に、すでに他の施設の労働者とも話し合いを始めています」と説明した。

その後、Amazonは投票箱について次のような声明を出した。「我々は最初から、すべての従業員に投票して欲しいと言っており、簡単に投票できるようにするためにさまざまなオプションを提案しました。しかし、RWDSUはあらゆる場面でこれらに対抗し、郵送のみによる選挙を推し進めましたが、それでは投票率が下がることが、NLRB自身のデータからわかっていました。USPSだけがアクセスできる郵便箱を設置することは、従業員が簡単に投票できるようにするための、シンプルで安全な、完全に任意の方法であり、それ以上でも以下でもありません」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Amazon労働組合労働問題

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾンが労働組合結成をめぐる投票で勝利確定、RWDSUは結果に異議

Amazon(アマゾン)のアラバマ州ベッセマー倉庫における労働組合結成に向けた取り組みは、開票2日目に大差で敗北したことがわかった。3215票のうち半数以上が会社を支持する結果となったのだ。この投票が可決された場合、労働組合の役割を果たすことになっていた小売・卸売・百貨店連合(RWDSU)は、この結果にいち早く異議を唱えた。

RWDSUのStuart Appelbaum(スチュアート・アッペルバルム)会長は、TechCrunchに提供された声明の中で次のように述べている。

Amazonは、自社の従業員をガスライティングするためにあらゆる手段を講じてきました。私たちは、Amazonの嘘、ごまかし、違法行為を許すことはできないため、組合投票の際にAmazonが行ったひどい違法行為のすべてを正式に告発します。Amazonは、たとえ違法行為であっても、できる限りのことをしなければ、労働者が組合結成を支持し続けるだろうということを十分にわかっていたのです。

だからこそ、Amazonは、全従業員に虚偽と嘘に満ちた説明を何度も行う必要があり、労働者は会社から組合反対要求を聞かされることになりました。また、だからこそ、Amazonは、インターネットや電波、ソーシャルメディアを利用して、誤った情報の宣伝を流したのです。だからこそ、Amazonは、何十人もの外部の人間や組合潰しの人間を連れてきて、倉庫の床を歩かせたのです。だからこそ、Amazonは、施設内のいたるところに看板を設置し、従業員にテキストメッセージを送り、自宅には電話をかけてきたのです。そして、だからこそ、Amazonは、労働権が認められている州で、組合費が毎月給料から徴収されると嘘をついたのです。Amazonの行為は卑劣なものです。

この最初の敗北は、Amazonの27年の歴史の中で組合結成に向けた最大の取り組みが、大きく後退したことを意味する。これは小売業の巨人とブルーカラーの技術労働者の双方にとって大きな変化をもたらす可能性があったが、今のところ、圧倒的な敗北を喫している。

当然ながらAmazonは、労働者を適切に扱っているため、このような組合活動は必要ないと、長いこと主張してきた。その論拠として、同社は時給15ドル(約1640円)の最低賃金などの基準を挙げているが、これも当初は抵抗していたものの、最終的には議員からの圧力を受けて導入したものだ。

今回は双方にとって厳しい戦いとなった。Bernie Sanders(バーニー・サンダース)氏からMarco Rubio(マルコ・ルビオ)氏まで、多くの議員が党派を超えて組合結成のために力を貸した。後者の保守派のフロリダ州上院議員は、同社の「独自で悪質な企業行動」を指摘した。また、Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領も労働者側に立ち、自らを「史上最も組合びいきの大統領」と称した。

Amazonがこの結果を正当なものと主張することは疑う余地がない。同社は以前の声明で「我々の従業員は賢明で、時給15ドル以上の初任給を得て、初日から健康管理が受けられ、そして安全で包括的な職場という真実を知っています。すべての従業員に投票をお勧めします」と述べていた。

このニュースを受けたブログ記事で、同社は次のように述べている。

この選挙でAmazonが勝ったのは、私たちが従業員を威圧したからだと組合がいうだろうことは容易に想像できますが、それは真実ではありません。当社の従業員は、我々から聞いたメッセージよりも、組合や政策立案者、メディアから反Amazonのメッセージを聞くことの方がはるかに多かったのです。そして、Amazonが勝ったわけではありません。私たちの従業員が、組合への加入に反対するという選択をしたのです。従業員はAmazonの心であり、魂です。私たちは常に従業員の声に耳を傾け、彼らのフィードバックを受け、継続的な改善を行うことに懸命に取り組み、安全で包括的な職場で優れた給与と福利厚生を提供するために多額の投資を行ってきました。私たちは完璧ではありませんが、我々のチームと自分たちが提供しているものを誇りに思っています。そしてこれからも日々向上するために努力を続けていきます。

労働委員会の規約に違反してアマゾンが設置したとされる投票箱に対する疑念も残っており、これについても組合からの異議申し立てが予想される。

「倉庫の敷地内に投票箱を設置するというAmazonの要求をNLRB(米労働関係委員会)が明確に拒否したにもかかわらず、Amazonは自分たちが法律を超えた存在であると感じ、ともかく郵便公社と協力して投票箱を設置した」と、RWDSUは書いている。同社がこのようなことをした理由は、それが労働者を威嚇する明確な手段を提供するからです」。

約6000人の労働者を雇用するAmazonのベッセマー倉庫は、ロックダウンが差し迫る中、同社が必要不可欠な労働者の運用を拡大するため、2020年3月末に開設したものだ。この件に関する報道では、厳しい就業基準を満たすために従業員が飲料水用ボトルに放尿しているという多数の報告をはじめ、同社のブルーカラー労働者の扱いをめぐるさまざまな長年の不満が表面化している。

Amazonは当初、ソーシャルメディア上でこれらの主張を否定していたが、後に謝罪の意を表したものの、業界全体の問題に責任を転嫁するような姿勢を示した。また、同社は子会社のストリーミング・プラットフォームであるTwitch(ツイッチ)で、反組合的な広告を流していたが、Twitchは「掲載を許可すべきではなかった」との声明を出し、広告を取り下げたこともある。

開票された3215票は、アラバマ州の倉庫で働く労働者の半数以上を占める。Amazonがその半数以上を獲得したにもかかわらず、集計は継続される。労組結成の挑戦は数週間にわたり続く可能性がある。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Amazon労働組合労働問題

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾンの倉庫労働者による組合員投票は圧倒的に会社有利に

アラバマ州ベッセマーにあるAmazon(アマゾン)の倉庫労働者のための組合投票が終わってから1週間あまりが経過した。その間は、台風の目のように何事も静かだった。しかし米国時間4月8日、本格的に開票が始まったことで状況は変わった。これまでのところ、激しい反組合運動の結果、劇的に会社有利に展開している。にはかなり劇的な好材料となっている。

4月8日の時点で反対票は賛成票の倍以上の1100対463となっている。4月9日に集計は再開され、終了する見込みだが、労働組合の役割を果たす可能性のあるRWDSU(小売・卸売・百貨店労組、Retail, Wholesale and Department Store Union)はAmazon側の戦術を非難している。

RWDSUのStuart Appelbaum(スチュアート・アペルバウム)理事長は「システムが壊れており、Amazonはそのことを最大限に利用した。私たちは州労働委員会に訴えて、キャンペーンにおける同社の違法で悪質な行為について、Amazonの責任を求めるつもりだ」とTechCrunch宛の声明で述べている。「しかし、誤解のないように言っておくが、これはそれでもなお労働者にとって重要な瞬間であり、彼らの声は聞かれるだろう」。

このコメントは、Amazonが選挙期間中にとった行動と、結果に対する異議申し立てに備えてのものであるようだ。この数字は、現在集計中の3215票のうちの約半分に相当し、同社にとっては、組合活動の敗北まであと500票というところまできている。

Amazonにアペルバウム氏のコメントに対する返答を求めたが、まだ得られていない。1カ月前にTechCrunchにくれたコメントで同社は、アペルバウム氏にあまり良い言葉を与えず、彼のことを「偽情報最高責任者(Chief Disinformation Officer)と呼び、「長年衰退している組合を救うために、(彼は)オルタナティブファクトのレベルを未曾有の高いレベルに上げてしまった」と述べている。

集計の最終結果に関わらず、このプロセスは長引くことになりそうだ。苦情の中には、同社がUSPS(米郵政公社)に違法な投票箱を設置させ、その過程で全米労働関係委員会の裁定を破ったという報道もある。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Amazon労働組合労働問題

画像クレジット:PATRICK T. FALLON/AFP/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

バイデン政権が3Dプリンターなどで作られる「ゴーストガン」に対抗する銃規制改革を提案

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は「疫病」や「国際的な恥」と表現した銃による暴力に歯止めをかけるため、新たな取り組みを発表した。ATF(アルコール・タバコ・火器および爆発物取締局)は、銃器の無秩序なオンライン販売や、シリアルナンバーも身元調査もなしに製造・3Dプリントできる、いわゆる「ゴーストガン」といった抜け道を塞ぐことなどを予定している。

米国時間4月8日午後、ホワイトハウスのローズガーデンでスピーチを行ったバイデン大統領は、最近起きた多くの銃乱射事件を恐ろしい悲劇として振り返る一方で、この国では毎日100人以上が銃で撃たれていると指摘。「これはもはや疫病のようなものであり、止めなければならない」と繰り返した。

この問題を撲滅するための計画を説明する前に大統領は、誰もがアサルトライフルなどを所有することは憲法上の権利であると考える人々からの、憲法修正第2条に基づく必然的な反論に対処することを忘れなかった。

「これからお話しすることは、いかなる意味においても、憲法修正第2条の侵害を推し進めるものではありません」とバイデンは語った。「我々は最初から、所有したい武器を何でも所有できるわけではなかったのです。憲法修正第2条が存在した当初から、特定の人が武器を持つことは許されていませんでした」。

もちろん、この点に関しては連邦法が州法と対立することが多く、重装備のデモ隊がミシガン州の議事堂を占拠するという驚くべき事態が合法的に発生している。しかし、連邦政府はいくつかの策略を密かに用意している。

身元調査や登録の追跡には連邦当局が関与しているが、近年は銃のオンライン取引が増加したり(ソーシャルネットワークは薄利多売の銃取引の場として悪名が高い)、自宅で武器を作るプロセスが容易になったことから、抜け穴が生まれたり悪化したりしている。

バイデン大統領に続いて登壇したMerrick Garland(メリック・ガーランド)連邦検事総長は、次のように語った。「私はATFに、現代の銃は単なる鋳造や鍛造ではなく、プラスチックで作られたり、3Dプリンターで製作されたり、自分で組み立てるキットとしても販売されていることを考慮に入れて、最新の銃不正取引に関する調査に着手するよう指示しました」。そして「我々はデータに基づいた方法で、犯罪的な銃売買の問題を、確実に理解し、判断するつもりです」と続けた。

数年前に「ゴーストガン」が話題になったのは、武器製造のオープンソース団体「Defense Distributed(ディフェンス・ディストリビューテッド)」をはじめとする複数の人物や組織が、3Dプリントされた拳銃やアサルトライフルの部品を普及させようとしたためだ。これらはハイテクという切り口でメディアに取り上げられたが、このようなサイトやサービスが提供するものは、規模の面において、従来の密輸や対面販売というかたちで行われる銃の密売を、当然ながらはるかに上回る。

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ATFの規制には大きな抜け穴があり、銃の製作キットには登録や身元調査が必要ない。つまり、この方法で銃の80%を手に入れ、残りの20%(通常は「レシーバー」と呼ばれる銃の発射機構を収納する部分)を3Dプリントなどの方法で手に入れれば、シリアルナンバーも登録もない銃を手に入れることができるのだ。

ガーランド氏はATFに、この件を含めいくつかの点を変更した規則を提案している。例えば、現在はピストルを短銃身のライフルに変える改造キットが簡単に購入できるが、新規則ではこのような改造キットにも登録を義務付ける。これはおそらく、前政権の間ずっと空席だったATFの5年ぶりの長官として、バイデン大統領がDavid Chipmen(デビッド・チップメン)氏を指名した後に導入されるだろう。

他にバイデン政権の取り組みには、地域の暴力介入プログラムに8年間で50億ドル(約5467億円)を投じることや、危険人物と見做された人が一時的に銃を手にできないようにする「レッドフラッグ」法を推進すること、そして行政ができないことに対処するための法案を議会に提出するよう促すことなどが含まれる。

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画像クレジット:Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スタンフォード大とデューク大が投資家と企業幹部の多様性教育を推進する認証プログラムに参加

テック業界の多様な企業創設者の育成と支援を目的に、ノースカロライナ大学のKenan Flagler Entrepreneurship Center(ケアンフラグラー起業家精神センター)、Opportunity Hub(OHUB、オポチュニティー・ハブ)、100 Black Angels and Allies Fund(ワンハンドレッド・ブラック・エンジェルズ・アンド・アライズ)ファンドによって結成されたパートナーシップに、デューク大学とスタンフォード大学という強力なパートナーが加わった。

このパートナーシップの一環として、スタンフォード大とデューク大に所属する教員は、DEIS Practicum Certificate(DEIS実習修了認定)【訳注:DEISはDiversty(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)、ソリューションの頭字語】プログラムと、Black Technology Ecosystem Investment Certificate(ブラック・テクノロジー・エコシステム投資認定)プログラムの教師を務めることになる。前者は、単なる人材雇用や補償による公平化を超えて、企業の経営陣が多様性と包括性に組織的な形で関与する方法への取り組みであり、後者はより多くの黒人投資家がスタートアップの支援を行えるようにする取り組みだ。

「団体の組織的レベルで、DEIのような問題と、富の格差という根深い問題に対処するためには、私たちはそうした教育がより多くの人に開かれるよう、力を合わせる必要があります」とEntrepreneurship Centerの事務局長Vickie Gibbs(ビッキー・ギブズ)氏は声明で述べている。「ともに私たちはアクションを起こし、より公平な社会と起業家コミュニティの構築に向けて前進します」。

スタンフォード大学のTechnology Ventures(テクノロジー・ベンチャーズ)プログラム(STVP)とデューク大学からの教員の参加は、プログラムの有効性を高めるだけではないと、OHUBの会長であり、100 Black Allies & Angels(ブラック・アライズ・アンド・エンジェルズ)の共同創設者にしてジェネラルパートナーのRodney Sampson(ロドニー・サンプソン)氏はいう。ノースカロライナ大学とデューク大学で客員教授も務めている同氏は、2つの大学の加盟により、それぞれの大学の卒業生の間でプログラムの周知が行き渡るとも話している。

「これらのソリューションと見識が、この2つの名門大学の卒業生と、その起業家コミュニティの中の認識を高めます」とサンプソン氏は声明で述べている。

サンプソン氏が開発した枠組みには、多面的なアプローチが採用されている。そこでは、多様性、公平性、包括性が事業化されてる度合いを審査するための項目を、取締役会とガバナンス、雇用、昇進、人事における実践の評価、調達とベンダーサービス、イノベーションと製品開発、多様なオーディエンスに届く市場参入のための資源、黒人およびラテン系コミュニティへの投資、そのコミュニティでの事業のインパクトの監視と設定している。

この枠組みは、幸先良くも、他ならぬBrookings Institution(ブルッキングス研究所)から先日発表された、Amy Liu(エイミー・リュー)氏とReniya Dinkins(レニヤ・ディンキンス)氏の共同執筆による論文にも引用された。

「偏見をなくし、本当の帰属意識が持てる文化の創造への取り組みを最高責任者が自ら示すことで、他社との協力に必要な会社と企業幹部たちの高い信頼と信用が得られ、より大きな進歩と持続的な繁栄がその拠点にもたらされます」と同論文には書かれている。

特にスタンフォード大学にとって、多様性と教育実習を受け入たことは、大学での多様性教育の制限を要求する前政権の政策に急いで従わなければならなかった同大学が、汚名回復のためのリハビリに励んでいる今の時期には好都合だった。

「あまりにも長い間、多様性、公平性、包括性は、起業家精神とイノベーションにとって後付けの考え方でした。思慮深く、行動力のある仲間たちと組織的人種差別に対処できることを、とてもうれしく思っています。私たちが力を合わせることで、私たち団体間に重要にして新たなネットワークを構築でき、世界中の教育者や団体とで共有できる教育のための見識を磨くことができます」と、ノースカロライナ大学チャペルヒル校およびデューク大学コヘイン名誉客員教授、STVP主任教員であるTom Byers(トム・ベイヤーズ)氏は話している。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

Uberがドライバーの顔認識チェックの利用で圧力を受ける

Uberがドライバーの識別システムに顔認識テクノロジーを使用していることが英国で問題になっている。ドライバーが誤って識別され、ロンドン交通局(TfL)から営業ライセンスを取り消されたケースが複数見つかったことから、App Drivers & Couriers Union(アプリ運転手および配送業者組合、ADCU)とWorker Info Exchange(労働者情報取引所、WIE)は、Microsoft(マイクロソフト)に対しこの配車サービス大手へのB2B顔認識サービスの提供を停止するよう求めている。

同組合によると「顔認識やその他の身元確認の失敗」により、TfLによるライセンス取り消し処分を受け、ドライバーが職を失ったケースが7件確認されたという。

Uberは、2020年4月に英国で「リアルタイムIDチェック」システムを立ち上げた際「ドライバーのUberアカウントが、強化されたDBS(開示および禁止サービス、いわゆる無犯罪証明)チェックに合格したライセンス保持者以外に使用されていないことを確認する」としていた。またその際、ドライバーは自分の自撮り写真を「写真照合ソフトによる検証か、人間の審査員による検証かを選択できる」とも述べていた。

ADCUによると、ある誤認のケースでは、ドライバーはUberに解雇され、TfLにライセンスを取り消されたという。同組合は、この組合員の身元証明を支援し、UberとTfLの決定を覆すことができたと付け加えている。しかし、マイクロソフトが2020年夏のBlack Lives Matter(黒人の命の大切さを訴える)運動を受けて、米国の警察へのシステム販売を見合わせたことを挙げ、同社の顔認識テクノロジーの精度に対する懸念を訴えている。

顔認識システムは、識別の対象が有色人種の場合、特に高いエラー率になることが研究で明らかになっており、ADCUは、マイクロソフトのシステムが20%ものエラー率になる可能性があるという2018年のMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究結果を引用している(肌の色が濃い女性の場合に最も悪い精度となった)。

同組合は、ロンドン市長に書簡をお送り、ハイブリッドリアルタイム個人認証システムの結果を根拠としたUberの報告書に基づく、TfLのプライベートハイヤーに対するライセンスの取り消しを、直ちにすべて見直すことを要請しているという。

マイクロソフトは、Uberに対する顔認識テクノロジーのライセンスの停止が要請されたことについて、コメントを求められている。

【更新】Microsoftの広報担当者は「MicrosoftはFace APIのテストと改善に力を入れており、あらゆる年齢層における公平性と精度に特に注意を払っている。また、お客様がシステムの公平性を評価できるよう、最適な結果とツールを得るための詳細なガイダンスも提供しています」と述べた。

ADCUによると、Uberは英国の首都での営業ライセンス回復のために実施した対策パッケージの一環として、労働力の電子監視および識別のシステムの導入を急いだという。

2017年、TfLはUberに営業ライセンスの更新を認めないという衝撃的な決定を下した。当局はUberの営業形態に対する規制圧力を強め、2019年にはUberがプライベートハイヤーライセンスを更新するのは「適切ではない」と再び判断し、この決定を継続した。

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TfLは、Uberのライセンス更新を保留した主な理由として、安全性とセキュリティの欠如に言及した。

UberはTfLの決定に対して法廷で異議を唱え、2020年に別のライセンス停止に対する控訴で勝訴したが、その際に与えられた更新期間はわずか18カ月だった(正規の5年ではない)。しかも数多くの条件が並べ立てられており、Uberは依然としてTfLの品質基準を満たすよう強い圧力を受けている。

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しかしADCUによると、現在、労働運動家らは、TfLがUberに導入を促した労働力の監視テクノロジーにおいて、規制基準が設定されていないことを指摘するなど、別の方向からもUberに圧力をかけているという。また、TfLによる平等性インパクト評価も行われていないと、同組合は付け加える。

WIEはTechCrunchに対し、UberのリアルタイムIDチェックの後に解雇され、TfLから免許を取り消されたImran Raja(イムラン・ラジャ)氏というドライバーのケースで、同団体がUberを相手取り、同氏への差別的扱いに対する訴えを起したことを明らかにした。

同氏のライセンスはその後回復したが、それは、ADCUがこの措置に異議を唱えた後のことだ。

WIEによると、Uberの顔認識チェックで誤認された、他の何人かのUberドライバーらも、TfLによるライセンス取り消しを英国の裁判所に訴えるとのことだ。

TfLの広報担当者は、顔認識テクノロジーの導入はUberのライセンス更新の条件ではなく、Uberが十分な安全システムを備えていることが条件だと話す。

「ドライバーの身元確認」に関する暫定ライセンスの関連条項には、次のように記されている。

ULL(Uber London Limited、ウーバー・ロンドン有限責任会社)は、アプリを使用するドライバーがTfLからライセンスを取得した個人であり、ULLからアプリの使用を許可された個人であることを確認するために、適切なシステム、プロセス、手順を維持しなければならない。

また、TechCrunchでは、TfLと英国情報コミッショナーズオフィス(ICO)に、UberがリアルタイムIDチェックを開始する前に実施したというデータ保護影響評価のコピーを求めており、入手した場合にはこのレポートを更新する。

一方、Uberは、ドライバーの個人認証に顔認識テクノロジーを使用することは、失敗を防ぐために手動(人間)で審査するシステムを導入しているため差別を自動化する危険性がある、という組合の主張に異議を唱えている。

しかし、同社はそのシステムがラジャ氏のケースでは明らかに失敗したことを認めている。同氏は組合が介入したことでUberのアカウントを取り戻し、そして謝罪を受けた。

Uberによると、同社のリアルタイムIDシステムでは、ログイン時にドライバーが送信する自撮り写真の「画像照合」が自動で行われ、システムがその自撮り写真とファイルに保存されている(1枚の)写真を比較する。

自動照合で一致しない場合は、システムは3人の人間による審査委員会に照会し、手動でチェックが行われる。Uberによると、最初の審査委員が承認できない場合は、2番目の審査委員にチェックが委ねられるという。

このテクノロジー大手は声明の中で次のように述べている。

当社のリアルタイムIDチェックは、正規のドライバーや宅配業者が本人のアカウントを使用していることを確認することで、アプリを利用するすべての人の安全と安心を守るように設計されている。今回提起された2つの事例は、技術的な欠陥によって引き起こされたものではない。実際、そのうちの1つは当社の不正防止ポリシーに違反していることが確認され、もう1つは人為的なミスだった。

テクノロジーやプロセスに完璧はなく、常に改善の余地があるが、ドライバーの抹消を決定する前に最低2回の人間による手作業での審査を保証する徹底したプロセスと併用されるこのテクノロジーは、公正であり、当社のプラットフォームの安全性にとって重要であると考えている。

Uberは、ADCUが言及した2つのケースのうち、1つのケースでは、リアルタイムIDチェックの際に、ドライバーがライブIDチェックに必要な自撮り写真を撮る代わりに、写真を見せていたという。つまり、ドライバーが正しい手順に従っていなかったため、IDチェックが失敗したことは間違いではないと主張している。

もう1つのケースについて同社は、人手による審査チームが(二度にわたって)誤った判断を下したヒューマンエラーに責任を負わせている。ドライバーの外見が変わり、自撮り写真を送ってきた(現在はひげを生やした)男性の顔が、同社がファイルしていた、きれいにひげを剃った顔写真の人物と同一人物であると審査委員が認識できなかったと述べている。

Uberは、ADCUが言及した他の5つのIDチェックの失敗で何が起こったのか詳細を説明できなかった。

また、同組合がIDチェックで誤認されたとしている7人のドライバーの民族性についても明言を避けた。

Uberは、将来起こりうる人為的ミスによる誤認識を防ぐためにどのような対策をとっているのかという質問に対しては、回答を拒否した。

Uberは、ドライバーがIDチェックに失敗した場合、TfLに通知する義務があると述べている。これは、ラジャ氏のケースのように、規制当局がライセンスを停止することにつながる措置だ。したがって、IDチェックプロセスに偏りがあると、その影響を受けた人の働く機会に不均衡なインパクトを与える危険性があることは明らかだ。

WIEは、顔認識チェックのみに関連してTfLのライセンスが取り消されたケースを3件把握しているという。

また同団体は「[Uber Eats]の宅配業者には、他にも契約を解除された者もいるが、TfLのライセンスを取得していないため、それ以上の措置はとられていない」と話す。

TechCrunchもまた、Uberに、ドライバーの契約解除が何件行われ、TfLへの報告で何件が顔認識に基づいたかを尋ねたが、ここでもこのテクノロジー大手は回答を拒否した。

WIEは、Uberが地理的な位置情報に基づいて行う契約解除に、顔認識のチェックが組み込まれている証拠があると話す。

あるケースでは、アカウントを取り消されたドライバーは、Uberから位置情報のみに関する説明を受けていたが、TfLがUberの証人調書を誤ってWIEに送ってしまったことがあり、その証人調書には「顔認識の証拠を含めていた」と述べている。

このことは、UberのIDチェックにおける顔認識テクノロジーの役割が、同社がリアルタイムIDシステムの方法を説明する際に示したものよりも広いことを示唆している(やはり、Uberはこの件に関するフォローアップの質問には答えず、公式発表やそれに関わる背景以上の情報を提供することを拒否した)。

しかし、UberのリアルタイムIDシステムに限ってみても、機械の提案に加えて、より広いビジネス上の責務(安全性の問題で規制順守を証明する緊急の必要性など)の重さを前にして、Uberの人間の審査スタッフが実際にどれだけのことを言えるか疑問が残る。

WIEの創設者であるJames Farrer(ジェームス・ファラー)氏は、差別問題が指摘されている顔認識テクノロジーのセーフティネットとしてUberが講じている人間によるチェックの質について疑問を呈する。

「Uberは、自動化された意思決定に対して法的にもっともらしい否認機能を用意しているだけなのか、もしくは意義のある人間の介入があるのか」と同氏はTechCrunchに語り「これらすべてのケースで、ドライバーは停職処分を受け、専門家チームが連絡を取ると言われる。そして大抵、1週間ほど過ぎると、誰とも話すことなく永久に停止されてしまう」と続ける。

「顔認識システムが不一致と判断すると、人間には機械を追認するようなバイアスがかかるという研究結果がある。人間は、機械を無効にする勇気を持つ必要がある。そのためには、機械を理解し、その仕組みと限界を理解し、機械の判断を覆す自信と経営陣のサポートが必要だ」とファラー氏は述べ「ロンドンで仕事をするUberのドライバーには、Uberのライセンスに対するリスクが付きまとうが、その対価は何だろうか。ドライバーには何の権利もなく、過剰に存在する消耗品だ」と続ける。

同氏はまた、Uberが以前法廷で、疑わしいケースではドライバーに有利な判断よりも、顧客の苦情を避けられる判断を優先すると証言したことを指摘する。そして「そうであれば、Uberが顔認識についてバランスのとれた判断をすると本当に信頼できるだろうか」と問いかける。

さらにファラー氏は、UberとTfLが、アカウントを無効にする根拠とした証拠をドライバーに開示せず、決定の実際の内容について不服を申し立てる機会を与えないことに疑問を呈している。

同氏は「私見だが、結局すべてテクノロジーのガバナンスの問題だ」とし「マイクロソフトの顔認識が強力でほぼ正確なツールであることを疑っているわけではない。しかし、このテクノロジーのガバナンスは、知的で責任のあるものでなければならない。マイクロソフトは極めて賢明であり、この点に限界があることを認めている」と付け加える。

「Uberが自社の営業ライセンスを守るための代償として監視テクノロジーの導入を強いられ、94%のBAME(Black、Asian and minority ethnic、黒人・アジア人・少数民族)の労働者を不当解雇から守る労働者の権利を無力にする施策など本末転倒だ」と語気を強める。

この顔認識に関わるUberのビジネスプロセスへの新たな圧力は、ドライバーは英国法における労働者ではなく「自営業者」であるというUberの言い逃れに対する長年の訴訟の末、ファラー氏をはじめとする元Uberドライバーや労働権運動家が大きな勝利を収めた直後のことだ。

現地時間3月16日火曜日、Uberは、2021年2月に最高裁がUberの上告を棄却したことを受け、今後はドライバーを市場での労働者として扱い、同社からの福利厚生を拡大すると述べた。

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しかし、訴訟当事者は、Uberの「取引」ではドライバーがUberアプリにログオンしたときから労働時間を算出すべきとの最高裁の主張を、Uberが無視していると即座に指摘した。対するUberは、ドライバーが仕事を引き受けたときに労働時間を計算する資格が発生すると述べている。つまり、Uberは依然として、運賃収入を待つ時間についてはドライバーへの支払いを避けようとしているのだ。

そのためADCUは、Uberの「オファー」は、ドライバーが法的に受け得る報酬から40~50%下回ると見積もっており、Uberドライバーが公正な取引を得られるように法廷で闘い続けると述べている。

EUレベルでは、EUの議員らがギグワーカーの労働条件を改善する方法を検討しているが、このテクノロジー大手は現在、プラットフォーム業務に有利な雇用法を作り上げるために動いており、労働者の法的基準を下げようとしていると非難されている

2021年3月のUberに関わる他のニュースとしては、オランダの裁判所が、ADCUとWIEの異議申し立てを受けて、同社にドライバーに関してより多くのデータを引き渡すように命じたことだ。ただし、裁判所は、さらに多くのデータを求めるドライバーらの要求の大半を却下している。しかし注目すべきことは、ドライバーらがEU法の下で保証されたデータ権を利用して情報をまとめて入手し、プラットフォームに対する団体交渉力を高めようとすることに裁判所が異議を唱えなかったことだ。これは、ファラー氏が労働者のためにデータ信託を立ち上げたことで、より多くの(そして、より慎重に言葉を選べば)挑戦への道が開かれたことを意味する。

請求人はまた、Uberが不正行為に基づくドライバー解雇の判断にアルゴリズムを使用していることについて、法的または重大な影響がある場合、自動的な決定のみに左右されない権利を規定する、EUのデータ保護法の条項に基づいて検証を求めた。このケースで裁判所は、不正に関わる解雇は人間のチームによって調査され、解雇の決定には有意な人間の意思決定が関与しているというUberの説明を言葉通りに受け入れた。

しかし、プラットフォームのアルゴリズムによる提案・決定から始まり人間による「有意な」ぬれぎぬ・見落としに至る問題は、新たな争点となりつつある。そこではユーザーのデータを神のように崇め、完全な透明性にアレルギーを持つ、強力なプラットフォームがもたらす人間への影響や社会的不均衡を規制するための重要な戦いが繰り広げられるだろう。

Uberの顔認識にともなう解雇に対する直近の異議申し立ては、自動化された判断の限界と合法性に対する調査が始まったばかりであり、審判が下るまでには程遠いことを示している。

Uberがドライバーのアカウント停止に位置情報を使用していることも、法的な問題として挙げられている。

現在、欧州連合の機関で交渉が行われているEU全体に適応される法規制は、プラットフォームの透明性を高めることを目的としており、近い将来、規制当局による監視やアルゴリズムによる監査さえもプラットフォームに適用される可能性がある。

2021年3月第2週、Uberの訴訟に判決を下したアムステルダムの裁判所は、インドの配車サービス会社Ola(オラ)に対しても、UberのリアルタイムIDシステムに相当する顔認識ベースの「Guardian(ガーディアン)」システムに関するデータの開示を命じた。裁判所は、オラは現在提供しているものよりも広範囲のデータを請求人に提供しなければならないとし、その中には、同社が保持しているドライバーの「詐称が疑われるプロファイル」や、同社が運営する「ガーディアン」監視システム内のデータの開示も含まれている。

こういった状況からファラー氏は「いずれにせよ、労働者は透明性を手に入れることができる」と自信を示す。それに、Uberの労働者への対応をめぐって英国の裁判所で何年も闘ってきた同氏のプラットフォームとのパワーバランスを正そうとする粘り強さは疑うべくもない。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

リモートワークの普及により職場ですでに疎外されていた人たちはさらに居づらくなったというレポート

2020年は誰にとっても簡単な年ではなかったが、Project Includeの新しいレポートによると、リモートワークへの移行は一部のグループに対し他のグループよりも悪影響を及ぼした。当然のことながら、それはすでにハラスメントや偏見に苦しんでいた人々で、特に有色人種の女性やLGBTQと認識している人々が、そうした振る舞いに大きな影響を受けた。

このレポートは、約2800人への調査と、多くの国や業界の技術者や対象分野の専門家へのインタビューに基づいている。良いニュースはあまりないが、そもそもあると期待すべきだろうか。悲しいことに、2020年に発生した前例のない複数の災いが合わさって、労働条件の点で別のより静かな災いが発生している。

在宅勤務は人々の対話の方法を変えた。その結果、特に性別および人種に基づくハラスメントが大幅に増加した。調査対象者の4分の1以上が、嫌がらせと職場での敵意が増加したと答えている。増加したと答えた人のうち、98%は女性またはノンバイナリーであり、99%は非白人だった。

トランスジェンダーの人々は、すべての黒人の回答者、特に女性とノンバイナリーの人々がそうであるように、ハラスメントと敵意をより多く経験していた。アジア系、ラテン系、およびマルチレイシャルの回答者も同様に多かった。

画像クレジット:Project Include

リモートでの生産性とコミュニケーションへの切り替えにより、ハラスメントは避けがたいものになっているようだ。チャット、電子メール、ビデオ通話による1対1のコミュニケーションへの依存度の高まりにより、ハラスメントをする人と直接働くことが避けられず、それを報告するのが難しくなっている。「回答者は、ハラスメントをする個々の人間がオンラインスペースを越えて彼らを追いかけてくると述べた」とレポートは付け加える。

メンタルヘルスに何らかの症状がある人、特にPTSD(心的外傷後ストレス障害)のある人は、そうでない人に比べてハラスメントを2倍多く経験する傾向がある。

期待とツールの変化は、不安の大幅な増加とワークライフバランスの低下を意味する。回答者のほぼ3分の2は、より長時間働くことが期待されていると回答し、半数以上は公式の労働時間外にもオンラインにとどまるようプレッシャーを感じている(または明らかに期待されている)と述べた。調査によると、10%はマネージャーが毎日チェックしていると述べ、5%が1日に2回以上チェックしていると報告した。キーストロークや画面監視などの監視ソフトウェアについて不満を述べる人もいる。

障害のある労働者は、企業がアクセシビリティ機能が不十分な生産性ツールやコラボレーションツールをよく選択することに気づいている。例えば自動キャプションなしのズームコールでは、読唇術が必要となる。

ほとんどの人が、苦情の適切な処理や公正な対応という点で人事部門や会社全体を信頼していなかったため、ハラスメントについて報告しなかったと述べた。ハラスメントを行っているのは人事部の人であるという回答もあった。こうした問題に適切に対応するという点で自社を信頼している回答したのは半数未満だった。約3分の1は、会社が適切に対応するとは思っていないと述べた。ほぼ同数が、職場には、発生する可能性のある問題に介入したり解決したりするためのツールすらないと述べた。

こうした統計がこのレポートで手に入る。このレポートでは、他の多くの問題や行動について詳しく説明し、企業がステップアップするためにできることついて多くの提案をしている。もちろん、あなたの会社が今まで行動を起こさなかったのなら、それはまさにそこにある問題だ。だが一般的には、実際に従業員に耳を傾け、リーダーシップに責任を持ち、ノーミーティングデーや寛大な休暇ポリシーなど、目に見えるインパクトを与える行動を取ることが解決になる。

何より、単純に物事が「通常に戻る」と期待しないで欲しい。Vaya ConsultingのCEOであるNicole Sanchez(ニコル・サンチェス)氏は、レポートで引用されているように、そのことについて適切に語っている。

ほとんどの企業は、選択制であっても、人々を物理的に元に戻す準備ができていません。エグゼクティブレベルの人々は、自分たちが実際に扱っているのが現在進行形の多数のトラウマであると知ってショックを受けるでしょう。以前のやり方に戻ろうとする多くの企業は「なぜ1つ1つのピースがもう合わなくなってしまったのか」と疑問に思うでしょう。私たちの意見が一致する答えは次のとおりです。そうしたピースがお互いにしっかりと合うことはもはやありません。合うのは自分自身にとってだけです。今、あなたはすべての継ぎ目と脆弱性を目にしています。したがって、会社を再構築しなければなりません。

レポートの作成者には、Project IncludeのEllen Pao(エレン・パオ)氏、Shoshin InsightsのYang Hong(ヤン・ホン)氏、およびConvocation Design + ResearchのCaroline Sinders(キャロライン・シンダーズ)氏が含まれる。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

米国のVC業界に急増するアジア人差別と戦う動き

長年のベンチャーキャピタリストであるHans Tung(ハン・トゥン)氏は体格が大きい。これが命を救ってきたかもしれない。

トゥン氏は1984年に米国ロサンゼルスにやって来た台湾系米国人第1世代で、14歳だった同氏にとって当時は大変な時代だった。その2年前には中国系米国人Vincent Chin(ビンセント・チン)という名の27歳の製図工がデトロイトでChrysler(クライスラー)工場の監督と、その義理の息子によって殴り殺された。自動車メーカーに解雇されたその義理の息子は、日本の自動車産業の勢いある発展に怒っていて、チンが日本人の子孫だと信じていた。チンは自身のバチェラー・パーティー(結婚前の男性が男友達と開くパーティー)の夜に殺された。

それから数十年の間、反アジア人の感情は減っていたかもしれない。しかしまだ一定残っていた。そしてトゥン氏はその反アジア人の感情を受ける側だった、と話す。「大人になり、挑発に直面しました。カリフォルニアだろうがボストンだろうが、あるいはニューヨークだろうが、人種的差別的な言葉での挑発です。私の身長が193cm、体重は90kg超あるのは幸いでした」。もしかすると身体的なことで嫌がらせを受けたことがあるかもしれない。

トゥン氏は今ほど自身の体格について注意深くなったことはない。反アジア人の感情は2020年、新型コロナウイルスに関する政治的なレトリックを元に突然悪化した。「新型コロナが中国で発生したとき、アジア系米国人が非難されるだろうとわかっていました」とトゥン氏は話した。同氏はクロスボーダーの投資会社GGV Capitalのマネージングディレクターとして仕事で定期的に米国と中国を行ったり来たりしていた。「我々は同じようなことをSARS(重症急性呼吸器症候群)のときも体験しましたが、それは大きなパンデミックではなく、アジア人は嫌がらせを受けましたが殺されはしませんでした」。

友人や家族との会話、そして特に高齢者がサンフランシスコオークランドニューヨークの地下鉄、タイムズスクエアの近くで殴られるという気がかりなニュースからして、米国のアジア人にとって現在は危険な状況だとはトゥン氏は確信している。米国時間3月29日には65歳の女性がひどい暴行を受け、その様子を見物人が撮影していた事件は国民の怒りを引き起こした。

数字がトゥン氏の主張を裏づけている。最初にNBCが報じたように、2019年から2020年にかけて、全体のヘイトクライム(増悪犯罪)率は減少している一方で、アジア人を標的にしたヘイトクライムは増えている。このニュースはカリフォルニア州立大学サンバーナーディーノ校のヘイト・過激主義研究センターが発表した分析に基づいている。研究では、そうした犯罪は2020年7%減った一方、アジア人を標的にした犯罪は150%近く増えていて、ニューヨークで最も急増していることが明らかになった。ニューヨークではアジア人に対するヘイトクライムが2019年に3件だったのが、2020年は28件と833%増加した。

そうした数字は2021年に増え続けていて、トゥン氏とGGV Capitalのパートナーは2週間前に自分たちが力を発揮できるところですばやく行動を起こすことを決めた。資金力とネットワークでもって増える暴力に対応するというものだ。最初のステップはAAPI(アジア系米国人と太平洋諸国出身者)のコミュニティをサポートしている組織への10万ドル(約1110万円)の寄付先を公募するというものだった。GGVの動きに、何か手伝いたいと思っていた他の投資家や創業者らもすぐさま呼応した。ここにはLightspeed Venture PartnersのJeremy Liew(ジェレミー・リュー)氏、Goodwater CapitalのEric Kim(エリック・キム)氏とChi-Hua Chien(チフア・チエン)氏らも含まれ、彼らもまた10万ドルの寄付をマッチングしている。

話を早送りすると、GGVの事実上のTwitterキャンペーン11日間で創業者175人超、Jen Rubio(ジェン・ルビオ)氏、Stewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏、Eric Yuan(エリック・ユアン)氏を含む、と「VCコミュニティで目にするのは稀」とトゥン氏が指摘するパートナーシップのようなもので30超のベンチャーファームから約500万ドル(約5億5350万円)の寄付が集まっていると同氏は話す。

すばらしいスタートだと話すトゥン氏は、全国ベンチャーキャピタル協会の統計によると米国のベンチャーファームでパートナーを務める15%のアジア・太平洋諸島出身者の1人だ。

と同時に、トゥン氏は問題は続いており、より多くのリソースが必要だと指摘する。そのリソースとは、増大する差別とそれをほのめかすものに対処するさまざまなアジア系米国人コミュニティにみんなが直接送っているものだ。実際、寄付者の関心を正しい方向へと送り込むのをサポートするために、GGVは少なくとも影響を与える取り組みをしていると確信している5つの組織を推薦している。これらの組織はAsian Americans Advancing JusticeRed Canary SongGoFundMe Support the AAPI CommunityStop AAPI HateCompassion in Oaklandだ。

トゥン氏は、GGVが投資会社や役員室に男女平等をもたらそうと取り組んでいる組織AllRaiseを含む他のキャンペーンでも積極的に動いてきたとわざわざ断った。同氏のパートナーたちは2020年春のBlack Lives Matter(黒人の命も大事だ)運動にも大きく心を動かされ、NAACP Legal Defense FundやSouthern Poverty Law Centerなどに寄付をしたと同氏は指摘する。

Redpointの投資家Ryan Sarver(ライアン・サーバー)氏が2020年、シェフが作った食事を買って病院のスタッフに提供するという寄付の方法を考案してフロントラインワーカーやレストラン従業員をサポートした取り組みを含め、先の動きから学ぶものがあったとトゥン氏は話す。

そうしたレッスンの1つが、誰かの心に通じるものがあるとき、それが針を動かすのであれば「見せびらかしているVC」として見られるリスクを冒す価値がある、というものだ。

今回の場合「こうした犯罪の多くが個人の問題として扱われていて、ヘイトクライムとして扱われていません」とトゥン氏は話す。ヘイトクライムにはより厳しい罰則がある。そして同氏はこの問題を啓発することを決めた。たとえこれが、愉快なものではなく自身を脆弱な立場に置く体験になることを意味していてもだ。

「アジア人ヘイトは、私自身の問題です」と同氏は話している。

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タグ:VC差別

画像クレジット:GGV Capital

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

障害者手帳アプリ「ミライロID」やユニバーサルデザインのソリューションを提供するミライロが資金調達

障害者手帳アプリ「ミライロID」やユニバーサルデザインのソリューションを提供するミライロが資金調達

​障害のある当事者の視点を活かし、ユニバーサルデザインのソリューション提供や、障害者手帳アプリ「ミライロID」(Android版iOS版)を運営するミライロは4月2日、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は、日本生命保険、三菱地所。2021年2月に実施した第三者割当増資と合わせ、総額3億円の資金調達となった。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、障害者やその家族は様々な制約を受けており、障害者の就学や就労、日常生活の選択肢を増やすことが求められているという。ミライロは、同社ビジョンに賛同する企業とともに、障害者やその家族の生活がより豊かになる新たなソリューション開発を進め、障害を価値に変える「バリアバリュー」が広がる未来を目指す。

障害者手帳アプリ「ミライロID」やユニバーサルデザインのソリューションを提供するミライロが資金調達

ミライロIDは、障害者手帳を所有している方を対象としたスマートフォン向けアプリ。ユーザーは、障害者手帳の情報、福祉機器の仕様、求めるサポートの内容などをミライロIDに登録できる。また公共機関や商業施設など、ミライロIDを本人確認書類として認めている事業者において、障害者手帳の代わりに提示することで、割引などが受けられる。2021年2月末時点で885事業者が導入済みで、ミライロIDが利用できる駅やレジャー施設などの数は約6000カ所(2020年12月末時点)、ミライロIDが利用できるバスやタクシーなどの数は約5万台(2020年12月末時点)となっている。さらに3月10日には、JRを含む鉄道会社123社の導入が発表された。同アプリを利用できる施設・交通機関などは、「ミライロIDが使える場所」において確認可能となっている。

なお同社は、プレスリリースの表記を「障害者」で統一している。「障がい者」と表記すると、視覚障害のある方が利用するスクリーン・リーダー(コンピュータの画面読み上げソフトウェア)では「さわりがいしゃ」と読み上げられてしまう場合があるためという。「障害は人ではなく環境にある」という考えのもと、漢字の表記のみにとらわれず、社会における「障害」と向き合っていくことを目指すとしている。

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タグ:アクセシビリティ(用語)資金調達(用語)ミライロ(企業)日本(国・地域)

アップルが英語圏のSiriに2つの新たな声を追加、「女性」の声のデフォルト設定は廃止に

Apple(アップル)は、iOSの最新のベータ版で、Siriの英語版に2つの新しい声を追加し、これまで「女性」の声が選択されていたデフォルトを廃止した。これによって、Siriの設定をする人は誰もが自分で声を選択することになる。アップルの音声アシスタンスは初期状態で女性の声に設定されていることが、数年前から性差別的偏向として議論の的になっていた。

このベータ版はすでに公開されており、プログラム参加者には提供されているはずだ。

この種のアシスタントの中で、デフォルトの設定がなされておらず、ユーザーが自分で選ぶ必要があるというのは、おそらく初めてのことだろう。これは人々がデフォルトの設定に偏ることなく、自分で好きな声を選ぶことができるという意味において、ポジティブな一歩といえる。また、新たに追加された2つの新しい声は、Siriの声に求められていたバリエーションを増やし、ユーザーが自分で音声を選ぶ際に多様性を提供する。

一部の国や言語では、Siriはすでにデフォルトで男性の声になっている。しかし、今回の変更により、その選択が初めてユーザーのものになった。

「英語圏のユーザーのために2つの新しいSiriの声を導入し、Siriのユーザーがデバイスの設定時に好きな声を選択できるようになったことに、私たちは高揚しています」と、アップルは声明で述べている。「これは、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括性)に対する責任を持ち、製品やサービスに私たちが住む世界の多様性をよりよく反映するという、アップルの長年にわたる取り組みの継続です」。

この2つの新しい声は、タレントの声を録音したものを音源として使い、アップルのNeural text-to-speech engine(ニューラル・テキスト・トゥ・スピーチ・エンジン)によって生成されるもので、実際に構成されるフレーズの中で、より有機的に聞こえるようになっている。

新しい声を聞いてみると、自然な抑揚でスムーズにつながり、とてもすばらしい。選択肢が増えることは、iOSユーザーに歓迎されるだろう。実際に使用されているボイスのサンプルは下のツイートで聞くことができる。

iOS 14.5でSiriに新たにラインナップされた米国人の声を録音してみました。声1と4が従来からあったもの、声2と3が新しく追加されたものです。

この最新のベータ版では、アイルランド、ロシア、イタリアのSiriの音声もNeural TTSにアップグレードされており、これで新技術を採用した音声は合計38種類になった。Siriは現在、5億台以上のデバイスで月間250億件のリクエストを処理し、36カ国の21言語に対応している。

新しい声は、世界中の英語圏のユーザーに提供される。Siriユーザーは16の言語で個人的な好みの声を選択することができる。

今回追加された2つの新しい声は、Siriの声の選択肢を広げる最初の試みである可能性が高い。声やトーン、地域の方言などの多様性が増えることは、スマートデバイスの包括性を高める上でプラスになるはずだ。ここ数年、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)、アップルの3社には、否定的な言葉や乱暴な言葉を使った質問に対するアシスタントの回答に偏りが現れる状況を、積極的に是正しようとする動きがようやく見られるようになった。

このような状況を改善することは、社会的に公正なトピックへの対応や、全体的なアクセシビリティの向上と並んで、ボイスファーストやボイスネイティブなインターフェースの爆発的な普及を目指す上で、非常に大事な鍵となる。特に数億人の規模となると、この種の選択が重要になるはずだ。

【更新】一部の国や言語では、Siriのデフォルトが男性の声に設定されていることがわかった。

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タグ:AppleSiriiOSインクルージョン

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Amazonの歴史的な労働組合投票はまもなく開票

Amazon(アマゾン)アラバマ州ベッセマー配送センターの労働組合結成に向けた歴史的投票の開票作業が米国時間3月30日に始まる。ちょうど1年前に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で急増した需要に応じるために操業が始まったこの倉庫は、近代米国史の中でも有数の労働運動の中心地となった。

投票は2月8日に郵便で開始されたが、それまでにAmazonは、投票を遅らせようとしたり、パンデミックの制約にもかかわらず、直接投票させようとした。状況は、予想どおり、日々ヒートアップを続け、3月29日の投票締切日を迎えた。Amazonの積極果敢な広報戦略の基準を踏まえても、驚くほど事態は進んでいる。

中でも、3コマース巨人はTwitterを活用して積極的アンチ組合戦略を展開した。さらに同社は、現在の労働環境のイメージを宣伝しようと試み、一方でバーモント州上院議員であるBernie Sanders(バーニー・サンダース)氏のような進歩派/左翼政治家と対決した。同議員は倉庫労働者の最低賃金時給15ドル(約1660円)をAmazonに認めさせる中心的役割を演じた人物だ。

報道によると、サンダース議員とマサチューセッツ州のElizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員に対する焦土作戦は初めから過熱した。ファウンダーのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏(2021年CEOを辞任する予定)は、攻撃を推進したと言われている。

Amazon News Twitterは、反論するツイートを発信し、配達員がノルマ不達を恐れてペットボトルで用を足しているとする広く根強い報道を否定したが、その後前向きなアプローチへと転じた。しかし、投票を巡っての行動は続けられており、投票箱を監視するビデオカメラの設置を提案したが、全国労働関係委員会(NLRB)に却下された。

票集計は米国時間3月30日から始まるが、すぐに結果が出ることを期待しないように。プロセスは系統的かつ慎重だ。どちらの側からも文句の出ない方法がとられる。これが現在、ベッセマー配送センターで働いている6000人ほどの労働者よりはるかに大きい問題であることを会社が十分認識していることは、Amazonの最近の行動からも明らかだ。もし会社が勝利すれば、この決定を同社の労働条件の妥当性を証明するものだと位置づけるだろう。一方、もし労働者が組合結成に賛成すれば、会社全体に連鎖反応をもたらす可能性がある。

米国時間3月5日、アラバマ州バーミンガム。議員団がAmazon BHM1施設の組合結成活動関係者と2021年3月5日に会談した後、トラックが走り去る。Amazon施設で働く人々は現在時給15ドルを得ているが、ノルマ軽減の要求は経営陣に聞き入れられていないと感じている(画像クレジット:Megan Varner/Getty Images)

今週Amazonの ドイツ事業者の労働者はストライキを4日間決行する予定であり、先週イタリアでも同様の動きがあった。

「これはアラバマ州の労働者だけではありません。ジェフ・ベゾス氏に、もうたくさんだと言っている世界中の労働者です。話す言語は違っても、世界中のAmazon労働者はみんな、あまりにも長い間我慢を強いられてきたこの労働条件に耐えるつもりはありません」と小売・卸・百貨店労働組合(RWDSU)のStuart Applebaum(スチュアート・アップルバウム)プレジデントは声明で語った。

票集計はNLRBが管理する。もし労働者が組合結成を支持すれば、ベッセマーの労働者はRWDSUに加入する。同組織もAmazonの抵抗にあっている。先週、AmazonはTechCrunchに次のように語った。

RWDSUの最高誤情報責任者、スチュアート・アップルバウム氏は、自らの凋落しつつある組合を救うために、もう1つの事実をまったく新しいレベルに引き上げました。しかし、当社従業員は賢明であり真実を知っています。時給15ドル以上、入社初日からの健康保険、そして安全で包括的な職場。会社は全従業員に投票を推奨します。

投票用紙はNLRBのバーミンガム事務所に送られた。どちらの側もいくつかの理由でも結果に異議を唱えることができる。投票した人物が実際にAmzon従業員であることを証明する署名もその1つだ。票集計が終わったあとでも、何かが起きるに違いない。法廷闘争になる可能性も高い。最終的に数週間、数カ月間を要するかもしれない。

この戦いは超党派の政治的同盟が作られる稀な状況になっている。一方にMarco Rubio(マルコ・ルビオ)氏、他方にバーニー・サンダース氏、エリザベス・ウォーレン氏、Joe Biden(ジョー・バイデン)氏といった政治家が並ぶ出来事は滅多にない。労働組合のような伝統的に対立する事象ではなおさらだ。

「すでにこの運動はさまざまな意味で勝利です」とアップルバウム氏が先週の声明で述べた。「投票結果がどうなるにせよ、この国全体で組合結成のドアを開いたと私たちは信じています」。

関連記事:アマゾンの倉庫労働者が組合結成へ向け郵便投票を開始

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タグ:Amazon労働組合

画像クレジット:Elijah Nouvelage/Bloomberg via Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ジェフリー・エプスタイン関連失言で辞任したリチャード・ストールマンがFSF理事会復帰、Red HatやSUSE反発

ジェフリー・エプスタイン関連の失言で辞任したリチャード・ストールマンがFSF理事会復帰、Red HatやSUSEが反発

3月22日、フリーソフトウェア財団(Free Software Foundation:FSF)は、2019年にFSF会長および理事会を離れたリチャード・M・ストールマン氏を復帰させたとする動画を公開しました。ストールマン氏と言えばEmacsやGCCの開発、GNU Public License(GPL)の策定などフリーソフトウェア界に多大な貢献をしてきたものの、思想の面では他に相容れない偏固なところがあり、時おり論争を巻き起こすこともあった人物。

2019年のFSF離脱も、当時MeToo運動で女性への差別的発言や行動が大きく批判されているなか、MIT CSAIL設立者のマービン・ミンスキー氏が資金提供者だった性犯罪者ジェフリー・エプスタインの斡旋で未成年者と性的関係を持ったと報道されていることに対し、ミンスキー氏を擁護する考えを表明したことが原因でした。

ストールマン氏はFSFのオンラインイベントにおけるライブ配信でFSFへの復帰を自らアナウンスしました。現在に至るまでFSFは正式にストールマン氏の復帰を発表していませんが、理事会のメンバー紹介ページにはすでにストールマン氏の名が掲載されています。

これに対し不信感をあらわにしたのが、オープンソースソフトウェア界のリーダー的企業Red Hat。Red Hatは「ストールマンのFSFへの復帰を知って愕然とした」と述べ、直ちにFSF関連の一切の資金提供をとりやめることを決定しました。FSFは同日、理事会メンバー選出プロセスの透明化やFSFスタッフからの選出による代表を理事会の一因に加えることなどの改善策を提示したものの、ストールマン氏の復帰には変わりなく、これが前向きで有意義なコミットメントとは信じることができないとしています。

Red Hatと同じく主要LinuxディストリビューションのSUSEのCEOも「世界はもっと良くなるべきだ。リーダーとして、忌まわしい決定がなされたときには、声を上げ、身を挺して行動する必要がある。いまがその時だ。われわれはFSFの決定に失望し、あらゆる女性蔑視や偏見に断固として反対する」とメリッサ・ディ・ドナート氏はツイートしました

さらにオープンソースのOfficeスイートLibreOfficeを手がけるDocument Foundationは、FSFの諮問委員会への参加およびFSFと関わる活動を停止すると表明、Debianも最新の理事会メンバーからストールマン氏の名前を取り除くことを求める書簡への署名の是非について投票による決定を行うとしています。

フリーソフトウェア界隈でも、ストールマン氏の復帰を望まない人々が多くいるようです。たとえば上級のGCC開発者ネイザン・シドウェル氏はストールマン氏の存在を最も意識する立場と言えますが、今回の騒動に対してストールマン氏をGCC運営委員会から除くよう求めました。シドウェル氏は「以前はストールマン氏が巻き起こす”真の毒性”に目をつぶっていたし、皆もそうしていたことでしょう。それによって私は影響を受けずに済んだ。彼と交流する必要がなかったからです。私は女性ではありません。しかしそれを無視することは、私たち全員の価値を下げることになります」と述べ、さらにストールマン氏の最後の貢献は2003年に勃発したSCOとLinuxのソースコードコピー論争のときが最後だとして、すでにストールマン氏はGCC開発メンバーでは無いとの見解を示しました。

FSFの内部メンバーにも、ストールマンの復帰を望まない人は多く、すでにそのひとりCat Walsh氏は辞任を表明。FSFのエグゼクティブ・ディレクターを務めていたジョン・サリバン氏もやはり辞任しました。

ストールマン氏は、事の発端となったストリーミングでの復帰表明で「私の復帰を喜ぶ人もいれば、がっかりする人もいるでしょう。まあそれはともかくもはや決まったことなので、私は二度と辞める気はありません」と述べています。

ただでさえクセの強いストールマン氏の復帰は、フリーソフトウェア界隈だけにとどまらない議論を呼びそうな気配です。

フリーソフトウェア運動開祖ストールマン、MIT職とFSF代表を辞任。エプスタイン献金関連で失言

(Source:Free Software Foundation、Via:mixCraft(Twitter)Ars TechnicaZDNetEngadget日本版より転載)

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