バイデン政権が3Dプリンターなどで作られる「ゴーストガン」に対抗する銃規制改革を提案

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は「疫病」や「国際的な恥」と表現した銃による暴力に歯止めをかけるため、新たな取り組みを発表した。ATF(アルコール・タバコ・火器および爆発物取締局)は、銃器の無秩序なオンライン販売や、シリアルナンバーも身元調査もなしに製造・3Dプリントできる、いわゆる「ゴーストガン」といった抜け道を塞ぐことなどを予定している。

米国時間4月8日午後、ホワイトハウスのローズガーデンでスピーチを行ったバイデン大統領は、最近起きた多くの銃乱射事件を恐ろしい悲劇として振り返る一方で、この国では毎日100人以上が銃で撃たれていると指摘。「これはもはや疫病のようなものであり、止めなければならない」と繰り返した。

この問題を撲滅するための計画を説明する前に大統領は、誰もがアサルトライフルなどを所有することは憲法上の権利であると考える人々からの、憲法修正第2条に基づく必然的な反論に対処することを忘れなかった。

「これからお話しすることは、いかなる意味においても、憲法修正第2条の侵害を推し進めるものではありません」とバイデンは語った。「我々は最初から、所有したい武器を何でも所有できるわけではなかったのです。憲法修正第2条が存在した当初から、特定の人が武器を持つことは許されていませんでした」。

もちろん、この点に関しては連邦法が州法と対立することが多く、重装備のデモ隊がミシガン州の議事堂を占拠するという驚くべき事態が合法的に発生している。しかし、連邦政府はいくつかの策略を密かに用意している。

身元調査や登録の追跡には連邦当局が関与しているが、近年は銃のオンライン取引が増加したり(ソーシャルネットワークは薄利多売の銃取引の場として悪名が高い)、自宅で武器を作るプロセスが容易になったことから、抜け穴が生まれたり悪化したりしている。

バイデン大統領に続いて登壇したMerrick Garland(メリック・ガーランド)連邦検事総長は、次のように語った。「私はATFに、現代の銃は単なる鋳造や鍛造ではなく、プラスチックで作られたり、3Dプリンターで製作されたり、自分で組み立てるキットとしても販売されていることを考慮に入れて、最新の銃不正取引に関する調査に着手するよう指示しました」。そして「我々はデータに基づいた方法で、犯罪的な銃売買の問題を、確実に理解し、判断するつもりです」と続けた。

数年前に「ゴーストガン」が話題になったのは、武器製造のオープンソース団体「Defense Distributed(ディフェンス・ディストリビューテッド)」をはじめとする複数の人物や組織が、3Dプリントされた拳銃やアサルトライフルの部品を普及させようとしたためだ。これらはハイテクという切り口でメディアに取り上げられたが、このようなサイトやサービスが提供するものは、規模の面において、従来の密輸や対面販売というかたちで行われる銃の密売を、当然ながらはるかに上回る。

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ATFの規制には大きな抜け穴があり、銃の製作キットには登録や身元調査が必要ない。つまり、この方法で銃の80%を手に入れ、残りの20%(通常は「レシーバー」と呼ばれる銃の発射機構を収納する部分)を3Dプリントなどの方法で手に入れれば、シリアルナンバーも登録もない銃を手に入れることができるのだ。

ガーランド氏はATFに、この件を含めいくつかの点を変更した規則を提案している。例えば、現在はピストルを短銃身のライフルに変える改造キットが簡単に購入できるが、新規則ではこのような改造キットにも登録を義務付ける。これはおそらく、前政権の間ずっと空席だったATFの5年ぶりの長官として、バイデン大統領がDavid Chipmen(デビッド・チップメン)氏を指名した後に導入されるだろう。

他にバイデン政権の取り組みには、地域の暴力介入プログラムに8年間で50億ドル(約5467億円)を投じることや、危険人物と見做された人が一時的に銃を手にできないようにする「レッドフラッグ」法を推進すること、そして行政ができないことに対処するための法案を議会に提出するよう促すことなどが含まれる。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

3Dプリンティング技術導入支援などを行う3D Printing Corporationが4億円を調達

3Dプリンティング技術導入支援などを行う3D Printing Corporationが4億円を調達

3Dプリンティング技術によって日本の製造業を活性化するというビジョンを掲げる3D Printing Corporationは4月6日、総額4億円の資金調達を発表した。引受先は、大陽日酸、アマダ、みらい創造機構、山梨中銀経営コンサルティング、芙蓉総合リース。

2016年2月設立の3D Printing Corporationは、3Dプリンティング技術・AM(積層造形。アディティブマニュファクチャリング)技術と既存製造業を調和させ、次世代のサプライチェーン構築を目指すスタートアップ。3Dプリンティングによる製造の各工程に必要な中核技術の構築と規格化によって、他社との差別化を図るとしている。

調達した資金により、3Dプリンティングを活用した新製品の研究開発、同社の3Dプリンティングによる製造技術を展開するワンストップのデジタルプラットフォーム構築・サプライチェーン構築を加速させる。また、同社顧客サポートをさらに強化する。

同社プラットフォームは、基盤となる幅広い種類の3Dプリンターと後加工ソリューションの上に構築。3Dプリンティング製造の根幹となる形状設計および工程設計の技術を提供し、製造者がよりスムーズに3Dプリンティング技術を導入し、運用可能となるシステムの構築を目指しているという。

また同社は、引受先企業のネットワークの下、より高性能な製品を、より早く市場投入する方法を探している日本のエンタープライズ企業に対して、3Dプリンティング技術を活用したソリューションを提供できるとしている。

3D Printing Corporationでは、材料および工程選択・意匠・機能・製造効率などの多角的なスキルを持つチームが、3つのサービス「DFAM(AM専用の設計手法)ソリューションズ&コンサルティング」「システム販売」「製造環境の構築と改善」を提供し、顧客のAM利用価値を最大化するという。

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ExtraBold(エクストラボールド)は4月1日、第三者割当増資による約3.6億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のリアルテックファンドおよびMistletoe Japan、小橋工業、前田技研、みずほキャピタル、グローカリンク。

エクストラボールドは、高速造形可能な超大型3Dプリンターにより、一般的な樹脂ペレットを使用した低コストでの大型造形を可能とし、これまでの製造業を革新するスタートアップ。

同社は、シンガポールの大学や研究機関との共同研究で、さらなる樹脂吐出量の増大や安定的な造形を実現するまったく新しい3Dプリントヘッドを共同開発しているという。調達した資金は、新規3Dプリントヘッドの開発を完了するとともに、大型3Dプリンター最新機種の量産化および販売拡大を目指す。

エクストラボールドによると、一般的に普及している従来の3Dプリンター(熱溶解押出方式)の大きな課題として「造形時間がかかる」「造形サイズが小さい」「材料が限定されている」の3点があるという。

この解決策として同社は、超高速で大容量の造形が可能な独自3Dプリントヘッドを開発。2020年5月発表の量産試作機「EXF-12」では、FFF(熱融解積層)方式のプリントヘッドをふたつ備えたデュアルヘッドを採用しており、1時間あたり15Kgの樹脂吐出量と最大1700×1300×1020mmの大型かつ高速な造形を実現した。フィラメントを用いずに一般的な多種の樹脂ペレット材を使用できるため、低コスト化やリサイクル材の活用が可能としている。

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さらにEXF-12は、非常時には被災地・避難所近くに移設し、身の回りに必要な家具や日用品などの造形が迅速に行える「モビリティタイプの大型3Dプリンター」としても利用できるという。国内鉄道輸送などでは一般的な12ftコンテナに設置する条件で設計を行っており、陸路・航路問わず輸送が可能となっている。

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Fortifyが複合材部品を製造する3Dプリンタの量産に向けて21.8億円のシリーズBを調達

ここ数カ月、アディティブマニュファクチャリング(積層造形、AM)の分野ではかなりの動きがあった。その理由をあえて挙げるとすれば、(筆者が注視している)ロボティクスと同様に、パンデミックに後押しされてこの分野への関心が高まったということだろう。当然のことながら医療分野への応用が注目されており、代替製造にも関心が集まっている。

Desktop Metal、Markforgedそして新規参入のMantelは、それぞれここ数週間で重要な発表を行ったが、今度はFortifyが意義深い資金調達を行った。ボストンを拠点とする同社は米国時間3月18日、2000万ドル(約21億8000万円)のシリーズBエクイティラウンドを発表した。このラウンドはCota Capitalが主導し、それに加えAccel Partners、Neotribe Ventures、Prelude Venturesが参加した。

Fortifyは、材料の堆積において確固たる地位を築こうとしている。独自の光造形(DLP)技術を使い、同社はさまざまな特性を持つ多くの異なる素材を混ぜて印刷することができる。そのリストには、熱的・電磁的特性などの有用な特性が含まれている。

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同社はMantelと同様に、射出成形を含む製造用金型をターゲットにしているようだ。

CEOのJosh Martin(ジョッシュ・マーティン)氏はプレスリリースでこう述べた。「Fortifyは過去1年半以上にわたり、当社の製品と市場機会の実行可能性を証明することに注力し、2020年の初めに設定した目標を超えました。今回のラウンドにより、射出成形金型などの主要な垂直市場における当社の市場参入フットプリントを拡大するとともに、最終用途の電子機器における市場シェアを獲得することができます」。

またここ数カ月の間に、同社は他の企業から3Dプリンティングのベテランを起用している。元Desktop MetalのVP、Paul Dresens(ポール・ドレッセンス)氏がエンジニアリング担当副社長に就任した他、(Stratasysに買収された)GrabCADのマーケティング担当副社長を勤めていたRob Stevens(ロブ・スティーブンス)氏がアドバイザーに就任した。

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画像クレジット:Fortify

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

3DプリントのDesktop Metalが「健康」にフォーカスする事業を開始

3Dプリントの未来は大量生産かもしれないが、健康関連製品はまさに現在のトピックだ。歯列矯正から人工関節まで、医療ニーズはまさに積層造形のスイートスポットといえる。プロトタイピングは上限のあるカテゴリーだが、真の大量生産はこれらのシステムでまだ不可能な領域である。医療・歯科分野はより大きな市場でありながら、カスタマイズが必要な分野でもある。

米国時間3月15日にDesktop Metalは、医療関連製品に特化した事業であるDesktop Healthのローンチを発表した。このビジネスにはバインダージェッティング、3Dバイオプリンティングおよび各種材料などを含むさまざまな技術が含まれている。

画像クレジット:Desktop Health

「現在、世界では毎年850億ドル(約9兆3000億円)を超える医療用および歯科用インプラントが製造されています」とDesktop MetalのRic Fulop(リック・フロップ)CEOはリリース文で述べている。「2010年代の終わりまでにこれらの部品の大部分が印刷され、患者に合わせて作られるようになると考えており、この市場はDesktop Metalにとって重要な機会になると考えています」。

歯科 / 歯科矯正(リテーナーやインビザラインスタイルの歯列矯正など)は依然として最優先課題であるが、現在および将来の用途はそれだけではない。将来の事業としては組織や移植片のプリントなどが含まれており、Desktop Metalはこのプロセスがどのように成長するかを検討している。

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同部門を率いるのは、Michael Mazen Jafar(マイケル・マゼン・ジャファル)氏だ。Evolusの元COOであるジャファル氏はCEOとして参加する。「Desktop Healthは革新的な技術と科学的根拠に基づいたソリューションにより、患者がパーソナライズされたヘルスケアを体験する方法を変えることを使命としています」とリリースで述べている。

Desktop Healthは2020年8月にSPACを通じて上場する計画を発表した。また2021年1月にはEnvisionTECを3億ドル(約330億円)で買収している。EnvisionTECはドイツの企業で、歯科用の重要な新技術であるフォトポリマープリンティングを専門としている。同社はSmile Direct Clubを含む1000社の歯科関連顧客を有しており、その中には新部門の重要な基盤となるSmile Direct Clubも含まれている。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Desktop Metal3Dプリント

画像クレジット:Desktop Health

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ロケット史上最高の事前契約数を記録したRelativity Spaceが米国防総省と初打ち上げ契約を締結

Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、すでに相当数の打ち上げ契約を交わしている。事実、CEOで共同創設者のTim Ellis(ティム・エリス)氏によれば、同社のTerran 1(テランワン)ロケットの事前契約の数は、ロケット史上最高を記録したという。だが、とりわけ重要なのは最も新しい契約先だ。それは米国防総省(ペンタゴン)。同省は国防イノベーション部門(Defense Innovation Unit、DIU)の取り組みとして、450〜1200kgのペイロードの地球低軌道への打ち上げに即応できるパートナーを探し続けてきたが、Relativity Spaceは、今回の契約でその役割を担うこととなった。

「かなり大型の衛星です。これだけの宇宙船を打ち上げられる業者はかなり限られます」とエリス氏はインタビューに応えて話した。「3mのペイロードフェアリングを持つTerran 1は、実際にそのサイズのペイロードが打ち上げられるすべての米国企業の中でも特異な存在です。そのスケールに十分に対応できるフェアリングを有しているのは、いまだに私たちだけです」。

DIUには、革新的な米国企業、特に技術開発が比較的初歩の段階の企業と協力するという特別な使命があり、その契約は、将来にわたり国防総省との深い関係が保証されるお墨つきとも見られている。だが今回のケースは、Relativity Spaceが比較的成熟した企業であり、国防関係以外の政府機関のものを含むミッションの事前契約数が多いことが評価された。

「今回は、特定のロケットを必要とする現実のミッションがあったからです」とエリス氏。「またこれは、国防総省を初めて顧客として迎えともに仕事ができる、そして私たちが聞いてきた政府の要望を実現できる大きなエコシステムへ駆け上がるすばらしいチャンスでもあります。これはすべてTerran 1に焦点を当てたものですが、もちろん、このプロジェクトとはまったく別に、私たちはTerran Rについてもすでに公表しています。これは、ほんのきっかけに過ぎません。私たちが作るあらゆるものを活用して、さまざまな分野で国益を支えてゆく多大な好機を私たちは見据えています」。

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エリス氏が話していたのは、先日Relativity Spaceが発表した大積載量ロケットTerran Rだ。これは3Dプリントでロケットを建造するこの会社が2021年2月に発表した大型ロケット計画であり、地球低軌道に衛星コンステレーションを投入する目的で注文に応じて作られる。変化するニーズに即応でき、冗長性の高い衛星技術を特に求める国防総省は、これまでに何度も衛星コンステレーションへの強い関心を示してきた。

カテゴリー:宇宙
タグ:Relativity Spaceロケット3Dプリントペンタゴン

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

Energy Impact Partnersが気候変動対策関連企業の指標を作成、NASDAQ総合を大幅に上回る

気候変動に焦点を当てた企業が公開市場に溢れている中、誰が何をしているのか、どこで取引されているのか、どのように業績を上げているのか、把握するのは難しくなっている。そこでEnergy Impact Partners(エナジー・インパクト・パートナーズ)は、持続可能性やエネルギー効率、温室効果ガス排出量の削減に注力しているハイテク企業を追跡するインデックスを設定した。

世界最大級のエネルギー消費者や電力会社を投資家に持つ同社は、過去数カ月間、公開市場で取引されている代表的な気候変動対策技術を対象としたインデックスの設定に取り組んできた。その結果、これらの企業が市場全体と比較して大きなリターンを上げていることが判明した。

2020年に入ってから、EIP Climate Index(EPI環境指標)はNASDAQ(NASDAQ総合指数)を約2.8倍上回っており、NASDAQ総合の45%に対し、127%の上昇となっている。リストに掲載されている企業27社のうち約20社が公開後1年未満の新規上場で、その間にNASDAQ総合を上回った。中でも約16社は、その間に100%以上の上昇を見せている。それは、この指数全体が1月のピーク時から約20%下がった状況になっても変わらない。

このインデックスは、実際には株式投資のためではなく、何よりも教育的なツールとして考えられたものだが、気候関連のソリューションに取り組んでいる企業の幅広さと、これらの企業を支援したいという公開市場の投資家の圧倒的な意欲がそこには示されている。

「SPACに限らず、公開市場における気候変動関連技術の動向は、本当に信じられないほど好調です」と、Energy Impact PartnersのパートナーであるShayle Kann(シャイル・カン)氏は述べている。「この気候変動技術インデックスを作成した動機の1つは、どれだけ多様な企業を集められるかを、確認することでした」。

EIPのインデックスには、持続可能性の観点から注目を集めるBeyond Meat(ビヨンド・ミート)のような企業や、水素燃料電池のBallard Power(バラード・パワー)やBloom Energy(ブルーム・エナジー)のように、やや歴史が長い企業も含まれている。このインデックスに含まれる企業は、電力貯蔵、再生可能エネルギーの生産、電気自動車の充電とインフラ、代替タンパク質の提供など多岐にわたる。

「考え方としては、このような企業をすべて含めた場合、全体のパフォーマンスはどうかということでした。私たちはこのインデックスを作成し、包括的なものにしようとしました。その結果、市場全体を劇的に上回ることになったのです」。

EIPのリストは情報提供を目的としているが、誰かがこのインデックスを利用して、この業界のETF(上場投資信託)を作らない理由はない。現在市場にあるETFのほとんどは、エネルギー生産やインフラに焦点を絞ったものだが、EIPのインデックスは、気候変動の影響を緩和し、温室効果ガスの排出を削減することに焦点を当てた企業の幅広い多様性を追う初めての指標となる可能性が高い。

Desktop Metal(デスクトップ・メタル)のような3Dプリント(積層造形)の会社もあるが、カン氏によると、同社の技術には多大な気候変動要素が含まれているという。

「積層造形技術は、廃棄物の削減、輸送の削減、製造工程の電化など、かなり強力な気候変動対策になります」と、カン氏は語った。

また、この指標は、初期段階の個人投資家が注目するためのシグナルでもあるとカン氏はいう。

「公開市場への道筋が広がります。ここで株価が上昇する企業がわかります。これが我々やベンチャーキャピタルの世界にいるすべての人に示唆するのは、この指標が好調なときには、イグジットまでの道筋が好転するということです」と、同氏は述べている。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Energy Impact Partners気候変動持続可能性二酸化炭素燃料電池3Dプリント

画像クレジット:Energy Impact Partners

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Relativity Spaceが完全再利用可能な新しい大型ロケットの建造計画を発表

Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、2021年後半からの打ち上げを予定している小型ロケットTerran 1の次に計画しているものを明らかにした。それはTerran Rという、Terran 1の20倍の積載量を持つずっと大型の軌道投入ロケットだ。これにはもう1つ、小さな兄と違う点がある。完全に再利用可能といことだ。SpaceXのFalcon 9とは異なり、第1段から第2段まで、すべてが再利用型になる。

私はRelativity SpaceのCEOで創設者でもあるTim Ellis(ティム・エリス)氏に、Terran Rについて、またこの宇宙スタートアップの仕事にいつから就いているのかを話を聞いた。エリス氏は、Y Combinator(ワイ・コンビネーター)に参加していたときから、実際に大型ロケットやその他の構想があったと話す。

「5年前、Relativityを創設したとき、SpaceXのロケットの打ち上げと着陸、国際宇宙ステーションとのドッキングを見るたびに刺激を受けていました。また火星へ行くという考えは、人類の未来にとって極めて重要であり、地球やそれ以外の場所での人類の体験を大いに拡大させる可能性があります」とエリス氏は私に語った。「しかし、人類が宇宙船から火星表面に歩いて出た瞬間、すべてのアニメーションが暗転してしまいます。そこで、火星に産業基地を建設するためには、3Dプリント技術がどうしても欠かせないと私は確信したのです。そして、その未来を実現するためには、数十また数百の企業を触発する必要がありました」。

Relativity Spaceの長期的な目標は、常に変わらず「最終製品の3Dプリント企業」となることだ。軽量ロケットのTerran 1は、その理念に基づいて市場に送り出される最初の3Dプリント製品に過ぎない。

「3Dプリントは、航空宇宙のための私たちの新しい技術スタックです。これはこの60年間、基本的に変わっていないとみんなが感じているものを、大きく書き換えます」と彼は話す。「これは、工場設置型の工作機械、サプライチェーン、何百何千ものパーツ、手作業、遅い改良スピードに置き換わるオートメーションと、地球の未来に必要だと私が信じているものを提供します」。

20トン以上のペイロードを地球低軌道に打ち上げる能力を持つTerran Rも、地球上で使用するための宇宙航空向けの機器を含む数々の製品を生み出そうというRelativity Spaceの長期目標における「次なる論理的なステップ」に過ぎない。エリス氏によれば、地球低軌道までの最大積載量が1250キログラムというTerran 1への消費者からの強い需要と、現在打ち上げられている衛星の平均的なサイズを合わせて考慮すると、大型のローンチビークルは理に適っているという。いわゆる「小型」衛星への恩恵はあるものの、現在作られているコンステレーションは、1基で500キログラムを超えるものが多いとエリス氏は指摘する。Terran Rなら、拡大しつつあるそうした軌道上の宇宙船ネットワークのための衛星を、もっとたくさん同時に打ち上げられるようになるということだ。

Terran Rで使われる予定の高推力エンジンの燃焼試験(画像クレジット:Relativity Space)

「Terran 1とロケットの構造はほぼ同じで、同じ推進剤を使い、同じ工場の同じプリンターで、同じ航空電子工学を用いて、同じチームが建造します」とエリス氏は次期ロケットについて説明した。つまり、Terran Rの機能が現行の小型ロケットとは大きく異なり、特に完全に再利用型になるとしても、同社にとって新しい製造ラインの立ち上げは比較的簡単であることを表している。

前述のとおり、Terran Rは、第1段、第2段とも再利用可能となる。SpaceXのFalcon 9の第1段(液体燃料式のロケットブースター)は再利用型だ。それは宇宙に到達して第2段を切り離すなり、すぐに方向転換して大気圏に突入し、エンジンを噴射して着陸する。Falcon 9の第2段は使い捨て型、つまり基本的に宇宙用語でいうところのゴミであり、廃棄され、いずれ軌道から外れて大気圏に再突入して燃え尽きる。

SpaceXにも、Falcon 9の第2段を再利用型にする計画はあった。しかし、耐熱材を追加すれば重量が増し、目標とする経済性は得られないとわかった。Terran Rの仕様に詳しいエリス氏は、3Dプリントに対応する非常に珍しい素材をユニークなかたちで使うこと、ジェネレーティブデザインを控えめに採用すること、それらがRelativity Spaceのロケットの第2段を、持続可能な形で再利用できるようにすることを、それとなく話してくれた。

「これも完全に3Dプリントで建造するので、従来の製造方式では使えなかった特別な素材や幾何学的デザインを採用する予定です」とエリス氏。「見た目はとにかく非常に複雑で、Terran Rの設計を従来方式で作ろうとしたら、大変なことになります。しかしそれが、再利用性の高いロケットを生み出すのです。最高の再利用型ロケットの建造に大いに寄与してくれました」。

Terran Rには、Relativity Spaceが開発している第2段用の新型エンジンが使われる予定だ。これも現在のTerran 1のエンジンと比べるとユニークなものになる。やはり3Dプリントで作られるのだが、銅製のスラストチャンバーを採用して全体的な出力と噴射能力を高めるとエリス氏は言っていた。木曜日の夕方にエリス氏に話を聞いた時点で、同社はすでにこの新型エンジンの初の耐久テストを完全に成功させていた。本格的な建造への重要な一歩だ。

エリス氏は、年内にはTerran Rのもっと詳しい情報を公開する述べていたが、製造工場にある大型3Dプリンターは、すでに新型ロケットのサイズに合わせて調整してあるとも教えてくれた。「変えたのはソフトウェアだけです」と彼はいう。また、同社がエンジンテストのためにNASAと使用契約を結んでいるステニス宇宙センターの試験場は、Terran Rのサイズのロケットの試験が可能だとも話していた。どうやら、この新型ロケットの開発を彼は急いでいるように思える。

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タグ:Relativity Spaceロケット3Dプリント

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

独自の金属3Dプリント技術で鋳型や金型の作成を支援するMantleがステルスモードを脱し約13.8億円調達

付加製造技術は、数十年前からよく耳にする専門用語となっている。しかし、一部の顕著な例外を除いて、3Dプリントは主にラピッドプロトタイピングや数量限定の個人的な制作物に特化していた。Mantle(マントル)のような金属3Dプリントを手がける企業は、この技術を本当の意味での大量生産へと拡大していく興味深い使用例を示している。

ベイエリアを拠点とするこのスタートアップ企業は、3Dプリント技術を従来の製造方法の代替としてではなく、その強化と改善に用いることに重点を置いている。具体的にいうと、製造業者のためのより優れた鋳型や金型の作成を支援することにその技術を集中しているのだ。

もちろん、金属3Dプリント技術の分野で同社と競合する企業は数多く存在する。中でも注目すべき企業としては、Desktop Metal(デスクトップ・メタル)、ExOne(エックスワン)、Markforged(マークフォージド)などが挙げられるが、Mantleは製造工程の一部を省くことができる機械で差別化を図っている。米国時間2月24日にステルスモードを脱したMantleは、Foundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)、Hypertherm Ventures(ハイパーサーム・ベンチャーズ)、Future Shape(フューチャー・シェイプ)、11.2 capital(11.2キャピタル)、Plug and Play Ventures(プラグ・アンド・プレイ・ベンチャーズ)、Corazon Capital(コラゾン・キャピタル)から1300万ドル(約13億8000万円)の資金提供を受けたことを明らかにした。

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「30年近く3Dプリントに関わってきた中で、この会社の主な違いは生産志向のユースケースに焦点を当てていることです」と、Foundation CapitalのジェネラルパートナーであるSteve Vassallo(スティーヴ・ヴァサロ)氏はTechCrunchに語った。「3Dプリントの多くは、できるだけ早くプロトタイプを作るためのものです。実際に生産の環境で使えるもの、つまり使用できる本物の部品を作ることは、これまでなかったことです」。

Mantleの機械(同社によれば、およそ「スタンディングデスク2台分」の大きさ)は、部品の仕上げがプロセスに組み込まれている。

「当社では、炉に入る前に形状の精緻化を行う初の焼結ベースのハイブリッド技術を使用しています」と、Ted Sorom(テッド・ソロム)最高経営責任者はTechCrunchに語った。「非常に高密度のボディに蓄積するだけでなく、高速切削工具で加工できるように考案された独自の材料を使っています。これによって、今日の誰もが得ることのできる物とはまったく異なるレベルの精緻な表面に仕上げることが可能です」。

同社は現在のところ、L’Oréal(ロレアル)を最初のパートナーとして発表している。この化粧品大手は、Mantleのプリンターを使って製品やパッケージの精密な金型を作成する予定だ。

Future ShapeのTony Fadell(トニー・ファデル)氏は、TechCrunchに寄せたコメントの中で次のように述べている。「Mantleの技術を使えば、Apple(アップル)製品並みの品質の機械部品を、数カ月ではなく数日で作ることができ、コストを桁違いに下げられる超強大な力が得られます。このスピードと低コストは、部品を完璧にするために繰り返し製作することを可能にし、さらにより早く発売することも可能になります」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Mantle3Dプリント資金調達

画像クレジット:Mantle

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

金属3DプリントのMarkforgedがSPAC経由での株式公開計画を発表

マサチューセッツ州のハイテク企業が、SPAC(特別買収目的会社)を通じた株式公開を計画している。Berkshire Greyがその意向を明らかにした直後、ウォータータウンを拠点とするMarkforgedがその計画を発表した。金属3Dプリント技術を開発する同社はKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏が作った特別目的会社のONEと合併し、同氏が取締役会に加わる予定だ。

この買収によりMarkforgedの価値は約21億ドル(約2200億円)となり、現金で約4億ドル(約420億円)を手にすることになる。同社はこの資金を新製品や新素材の研究開発に活用し、同社の技術による新たな垂直市場を開拓する計画だ。なお、Shai Terem(シャイ・テレム)氏は引き続きCEOを務める。

「Markforgedは添加製造業界の最前線に立ってきました」と、同社幹部はこのニュースに関連したリリースで述べている。「今回の取引により、Markforgedは信じられないほどの勢いを得て、当社のブランドを成長させ、製品のイノベーションを加速させ、主要な垂直市場における顧客の採用拡大を推進するための資本と柔軟性を提供することが可能になります」。

Markforgedは2013年の創業以来、同社の技術は1000万以上の部品のプリントに使用されており、Markforgedの機械は70カ国の約1万カ所に配備されている。なお、2020年の売上げは約7000万ドル(約74億円)だった。これまでに1億3600万ドル(約140億円)以上の資金を調達しており、2019年には8200万ドル(約87億円)の資金調達を行っている。

3Dプリントはここ数年で力強い成長を遂げているが、企業がこの技術に注目しているのは、それが最も一般的だったラピッドプロトタイピングを超えて拡大していくことが期待されているためだ。MarkforgedやDesktop Metalを含む競合他社の金属印刷は、プラスチックの堆積物よりもはるかに高い耐久性を提供する重要なステップと見られている。

SPACは企業を上場させる手段として人気が高まっている。Markforgedは現在のところ巨大なプレイヤーではない(スマートロックマットやラッチなどの一部の例外を除いて)が、状況は変わりつつあるようだ。今回の買収手続きは2021年夏に完了する見込みだ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:MarkforgedSPAC3Dプリント

画像クレジット:Markforged

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ゼンハイザーがカスタムイヤフォン作成で3DプリントのFormlabsと提携

3Dプリントは過去10年で大きな進歩を遂げたが、この技術が主流になるかどうかについてはまだ疑問が残っている。一方で医療機器は大量生産されておらず、高度なパーソナライズが必要とされるため、非常に説得力のあるユースケースとなっている。たとえば矯正歯科などは、そのスイートスポットに該当するものの好例だ。

オーディオにもまた、多くの可能性が秘められている。たとえば装着者の耳のためにカスタムデザインされたイヤフォンを想像してみよう。この技術はこれまではハイエンドモデルでは利用できていたが、3Dプリントはこの技術をより幅広く普及させられるようになる可能性がある。

Sennheiser(ゼンハイザー)は今週、カスタムイヤフォンの3DプリントにFormlabsの技術を活用するパートナーシップを発表した。具体的には、ゼンハイザーは主に歯科用途に利用されている生体適合性材料のForm 3Bを使用する予定だ。製品の詳細は明かされていないが、同社のAMBEO部門がこの技術を使ってカスタムイヤフォンのイヤーチップを作成する予定だという。ユーザーはスマートフォンで自分の耳をスキャンし、それを送ってイヤーチップをプリントしてもらうことができる。

画像クレジット:Sennheiser

「Sennheiserとの技術提携は、製品開発においてよりカスタマイズされたユーザー中心のアプローチを可能にし、顧客が好きなブランドとの関わり方を変えることを目指しています」と、Formlabsのオーディオ部門を率いるIain McLeod(イアン・マクロード)氏はリリース文で述べている。「Formlabsは幅広い業界知識とスケーラブルなソリューション開発により、ユーザーに具体的なイノベーションを提供します。今回のケースでは、SennheiserのAMBEOチームと協力して他に類を見ないアクセス性の高いカスタムフィットエクスペリエンスを提供しています」。

製品はまだプロトタイプ段階だ。このような提携はヘッドフォンメーカーにとっては簡単なことのように思えるが、価格や拡張性などいくつか大きな問題点もある。明らかにこのような製品は標準的なイヤフォンよりも高価だが、このような目新しさを考えれば高価すぎるわけではない。

リリースでは「手頃な価格でシンプルなソリューションが、カスタムフィットイヤフォンを大量に3Dプリントすることを可能にしました」と述べている。それが本当に手頃な価格になるのかは、今後を見守る必要がある。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Sennheiser3DプリントFormlabsイヤフォン

画像クレジット: Formlabs

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

金属3DプリントのExOneがコンテナ内にポータブル3Dプリント工場を建設、米国防総省と約1.7億円の契約

ExOneは今週、米国防総省から160万ドル(約1億7000万円)の契約を獲得したと発表した。これはペンシルバニア州を拠点とし金属3Dプリント企業の同社にとって最大規模の政府契約の1つで、最前線にポータブル3Dプリント工場を建設するサービスの提供を目標としている。

「この2年間、私たちは政府系アプリケーション(米国防総省、NASA、米エネルギー省)に技術を提供することに注力してきました」と、CEOのJohn Hartner(ジョン・ハンター)氏はTechCrunchに語った。「サプライチェーンの崩壊や製造業の分散化が話題になることがありますが、これは分散型かつ必要に応じて現地に展開されます。それが緊急であれ、人道的な任務であれ、戦闘機の最前線であれ、一緒です」。

助成金からの資金は主に、研究開発と最初のユニットの建設に充てられる。

 

このシステムは一連の機械と、利用のための障壁を低くするように設計されたソフトウェアレイヤーが組み合わされる。ある程度の訓練が必要だが、現場でシステムを操作できるようになることが期待される。

「私たちは製品の耐久性を高めました」とハンター氏は語る。「ソフトウェアはすべてが使いやすくなっています。まずスキャンすることから始め、あるいはクラウドベースのリポジトリから印刷する可能性もありますが、何らかの理由でそれが利用できない場合もあるため、壊れた部分をスキャンしてファイルをデジタル修復して印刷することができます」。

この装置はExOneの製品の中核技術であるバインダージェット印刷を利用する。基本的にシステムは粉体を合成し、何層にも重ねてオブジェクトを構築する。ExOneは2022年第3四半期(7月〜9月)までに最初のシステムを納入する予定で、順調にいけば今後の契約についても協議していく予定だ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:ExOne3Dプリント

画像クレジット: ExOne

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

3Dプリント、ロボッティクス、自動化で手頃な価格の家を建てるMighty Buildingsが約42億円調達

その昔、家を3DプリントするというのはSFだった。

近年住宅は、どんどん高価になっている。特にサンフランシスコ周辺の値上がりは極端だ。そこでもっと手頃な価格の住宅を建設しようとテククノロジーの活用に創造的努力を振り向ける企業が出てきた。

オークランドに本拠を置くスタートアップMighty Buildingsは、3Dプリント、ロボッティクス、自動化を利用して「美しく持続可能で手頃な価格」の住宅を建設しようと試みている。同社はシリーズBのラウンドで4000万ドル(約42億円)を調達した。この資金によ、従来の建設よりも「労働時間を95%削減し、廃棄物は10分の1、スピードは2倍」という3Dプリントによる住宅建設が可能だとしている。たとえば350平方フィートのワンルームならわずか24時間で3Dプリントできるという。

創立後4年になるMighty Buildingsの取り組みはKhosla Venturesの目に止まり、今回のラウンドはKhoslaとZeno Venturesが共同でリードした。

Mighty Buildingsは2020年8月にステルスモードから抜け出した。Khoslaの運営パートナーであるRyno Blignaut(リノ・ブリノー)氏は「このスタートアップは住宅建設のコストと二酸化炭素排出量の両方を50%以上削減できる可能性がある」と考えている。

共同ファウンダーであるCOOのAlexey Dubov(アレクセイ・ドゥボフ)氏によれば、同社は3Dプリントとプレハブを組み合わせたハイブリッドアプローチで住宅建設を行っている。現在の住宅建設業界はコンクリートとスチールに大きく依存しているが、Mighty社はLSM(ライトストーンマテリアル)と呼ばれる独自の熱硬化性複合材料を発明した。

同社によれば、この素材は3Dプリンティングに利用可能で、即座に硬化し、積層間の強度も高く、強固なモノリシック構造を作ることができる。つまりコンクリート型枠の工事のようにオーバーハングや天井などの部分にサポート型枠を必要とせず、一挙に3Dプリントできる。つまり建築の壁だけでなく全な躯体を出力できる。

また複合材の後処理に同社はロボットアームを利用する。これにより、断熱材の必要な箇所への注入が自動化される。3Dプリンティングとロボット機能を組み合わせると建設プロセスの最大80%を自動化できるという。

KhoslaはMighty Buildingsのこうした革新的な建設アプローチに強く惹かれた。

ブリノー氏は「Mighty Buildingsは建物を素材の制約から解き放ち、セメントや鋼材の使用量を劇的に削減することでコストを低下させ、手頃な価格の住宅の供給を増やすとともに、全体として資源やエネルギー持続可能性を向上させることができると考えています」とメールで述べている。

同社は創立以後、多数のADU(追加居住ユニット)を出力・設置しており、現在も注文を受け付けている。ユニットの面積は864平方フィート(80平米)から1440平方フィート(134平米)で、価格は30万4000ドル(約3200万円)から42万500ドル(約4420万円)と見積もられている。サンフランシスコ周辺ではこの規模の住宅は100万ドル(約1億500万円)以上することが珍しくない。

ADUは3Dプリントされたがパネルが外殻をなし、浴室などの要素はオークランドにある同社の8万平方フィートの生産施設でプレハブ生産されている。

現在、同社はカリフォルニアでのみ住宅建設を行っているが、ドゥボフ氏は「同様の施設を作るのは簡単であり、他の地域にも進出したい」としている。

2021年、Mighty Buildingsは住宅デベロッパー向けに計画しているB2Bプラットフォームの一部として、Mighty Kit Systemと多層階の建物をプリントできる新しい繊維強化材料を販売する予定だ。同社はすでに一戸建て住宅とのデベロッパーとの契約を確保してる。今回調達した資金の一部はさらなる自動化によって生産能力を増強するため利用される。

Mighty Buildingの中長期のビジョンは建築家が独自のプランを設計者ンしデベロッパーがMighty Factoryを使用してそうした住宅を低価格で大規模に生産することだ。住宅建設のサービス化、つまりPaaS(プロダクション・アズ・ア・サービス)の実現を目指している。

3Dプリントで住宅を建設しているスタートアップは他にもある。2020年8月、オースティンを拠点とするICONは、シリーズAラウンドで3500万ドル(約36億8000万円)の資金を調達した。同社も3Dプリンター、ロボティクス、先端材料を使用して手頃な価格の家を建てることを目指している。ドゥボフ氏によると、両社における最大の違いは、ICONが建設の大部分を現場で行うのに対し、Mighty Buildingsがあらかじめ工場で製造した材料によるプレハブ工法とのハイブリッドだという点だ。

Mighty Buildingの今回のラウンドには、シリーズAの投資家、Bold Capital Partners、Giant Ventures、Core Innovation Capital、Foundamentalに加えて、ArcTern Ventures、Abies Ventures、Modern Venture Partners、MicroVentures、One Way Ventures、Polyvalentなどの新規投資家を含め12社以上の投資家が参加した。Mighty Buildingsは、Y Combinatorのトップ企業リストにも選ばれており、会社評価額は1億5000万ドル(約15億4000万円)を超えている。ただし同社は現在の評価額を明らかにすることを避けた。

Khoslaのブリノー氏は、「建築は都市景観を作る主要な部分であるだけでなく、リソースの消費も巨大です。米国の炭素排出量では建設、建築は運輸交通や一般産業よりも大きい部分を占めています」と述べた。

KhoslaはOri Living、Vicarious、Katerra、Arevoなどこのような課題に取り組む他の企業にも投資している。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Mighty Buildings3Dプリント建築資金調達住宅

画像クレジット:MightyBuildings

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:滑川海彦@Facebook

MITの学生たちがロボットやドローン製作の全行程を自動化したシステムを開発

付加製造法は、特定の作業に理想的なソリューションであることが証明されているが、この技術は多くのカテゴリーで従来の製造方法におよばない点がある。その最も大きなものの1つは、3Dプリントした後の組立て工程だ。3Dプリンターは非常に複雑な部品を作成することができるが、それを組み立てるには外部の人間または機械が必要になる。

MIT(マサチューセッツ工科大学)のCSAIL(MITコンピュータ科学・人工知能研究所)が米国時間2月8日に公開した「LaserFactory(レーザー・ファクトリー)」は、「ワンストップショップ」でロボットやドローンなどの機械を製作しようとする新しいプロジェクトだ。このシステムは、ソフトウェアキットとハードウェアプラットフォームで構成されており、機械の構造を作成し、回路やセンサーを組み立てることができるように設計されている。

このプロジェクトを現実化した完全なバージョンは5月のイベントで紹介される予定だが、チームはこのコンセプトが実際にどのようなものであるかを示すために、少しだけカーテンを開けて見せた。以下はCSAILのページからの抜粋だ。

あるユーザーが自分のドローンを作りたいと思っているとしましょう。それにはまず、パーツライブラリから部品を配置してデバイスを設計し、回路トレース(プリント回路基板上の銅線やアルミ線で、電子部品間を電気が流れるようにするためのもの)を描きます。次に、2Dエディタでドローンのジオメトリを完成させます。この場合は、プロペラとバッテリーをキャンバス上に配置し、それらを配線して電気的な接続を行い、クアッドコプターの形状を定義する輪郭を描きます。

基板のプリントは確かに新しいものではない。それだけに留まらないCSAILのマシンの特徴は、1台のマシンに詰め込まれた機能の幅広さだ。それは下の動画を見れば一目瞭然だろう。

もちろん、これはまだ初期の段階であり、正式発表は数カ月先だ。多くの疑問点があり、もっといえば、このような複雑な機械にとって多くの潜在的な不安要素もある。それは特に、これが専門家ではない人をターゲットにしているらしいことだ。

博士課程の学生であり、開発リーダーでもあるMartin Nisser(マーティン・ニッサー)氏は、リリースの中で次のように述べている。「安価で高速で誰でも扱える製造方法の実現は、未だに課題として残さています。LaserFactoryは、3Dプリンタやレーザーカッターのような広く利用可能な製造プラットフォームを活用し、これらの機能を統合して、機能的なデバイスを作るための全工程を1つのシステムで完全に自動化した初めてのシステムです。

そのソフトウェアは大きな鍵となりそうだ。ユーザーは実際に製作が始まる前に、製造工程を画面で視覚的に確認することができる。未然に不具合を発見できるかもしれない。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:MIT3Dプリント

画像クレジット:MIT

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売

フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売

産業⽤インクジェットプリンター、カッティングプロッター、3Dプリンターを手がけるミマキエンジニアリングは11月5日、1000万色以上のフルカラー造形を実現する小型フルカラー3Dプリンターのエントリーモデル「3DUJ-2207」を発表した。日本の印刷色標準「ジャパンカラー」(Japan Color)に対して89%の色域をカバーしている。全世界で2021年1月より販売予定。価格は税別348万円。

3DUJ-2207は、上位機種「3DUJ-553」と同等の色数および造形精度を維持しつつ、徹底した小型化設計のもと3DUJ-553と比較し約1/5の本体価格を実現。

1000万色の高画質・高精細な造形により、フィギュアやおもちゃのグッズデザインをはじめ、建築模型、家電製品など、工業デザインのわずかな色の違いにより印象を左右させる精密な試作品を求められる分野でも利用しやすいという。

また、フルカラー出力により着色の手間を省いた試作品をオフィス内で造形・内製化することが可能なため、外部発注の必要性を減らし、新製品や設計・技術情報の漏洩リスクを低減できる。

3DUJ-2207は、UV硬化インクジェット方式でフルカラー造形を実現する3Dプリンター。造形領域はW203×D203×H76mm。カラーインク(CMYK、ホワイト、クリア)で造形・着色することで日本の印刷色標準「ジャパンカラー」(Japan Color)に対して89%の色域をカバーしている上、透明度の高いカラーインクによる造形により、一般的な石膏方式に比べて約2倍の高精細な色表現を行える。クリアインクとカラーインクを同時に使用することで、半透明のカラー表現も可能。フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売

また、高画質が求められる産業用インクジェットプリンター開発で培ってきた、独自の波形コントロール技術と高精度なインク吐出技術により、狙った場所に正確にインクを着弾。高い着弾精度により、ディテールまでこだわった精巧な造形も対応できるとしている。さらに、一度に3つのドットサイズにインクを打ち分けるバリアブルドット機能により、常に最適なドロップサイズで造形。粒状感の少ない美しいグラデーション表現や高精度なフルカラー造形も行える。フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売

インクはアクリル系樹脂を使用し、ABS樹脂同等の強度を実現。ドリルなどを使用した穴あけやネジの取り付けが可能。また、オーバーコートも使用できるため、最終製品としてより美しく仕上げられる。フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売

造形の過程で必要となるサポート材には、水溶性のサポート材インクを採用。水に浸けることでサポート材を除去でき、削り取る必要がない。繊細なデザインも造形物を破損することなく簡単にサポート材を除去可能。フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売

また3DUJ-2207はサイズW1355×D1290×H856mm/重量140kgの小型設計で、本体を分解することなくエレベーターを使った搬入などが可能な上、設置面積が小さく静音設計で脱臭機(オプション)を採用。オフィス環境への設置も行いやすいとしている。フルカラー造形が可能なUV硬化インクジェット方式3Dプリンターが税別348万円で2021年1月発売

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カテゴリー: ハードウェア
タグ: ミマキエンジニアリング3Dプリント(用語)日本

Relativityの3DプリントフェアリングをロッキードがNASAの宇宙空間実験ミッションに採用

宇宙航空スタートアップのRelativity Spaceが初の政府との契約を獲得した。同社はNASAのTipping Point(ティッピング・ポイント)という高度、複雑なミッションを実施する上でRelativityの3Dプリンティングによるロケットフェアリングが最適のチョイスと判断した。

ミッションは、宇宙空間で十数種類の極低温液化ガスの取り扱いを実験するものだ。中でも液化水素は処理が非常に難しい物質として知られている。しかもこの実験は単一の衛星上で行われるため、メカニズムのデザインは非常に複雑となる。

液化ガス処理システム自体は、NASAのパートナーであるロッキードが設計する。しかし、当然ながらシステム開発にあたっては実際の打ち上げに用いられるロケットの開発者と緊密に協力する必要がある。

RelativityのファウンダーであるCEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏はこの複雑なミッションを実施するロケットの製作には3Dプリンティングが最適だと説明した。

エリス氏は「予定されているペイロードに合わせて、カスタマイズされた特殊な形状のフェアリングを製作する必要があります。ペイロードへの適切なフィッティングも必要とされ、これも特別なものです。もちろん部外者が一見したところでは普通のロケットに見えるかもしれません」と述べた。

フェアリングというのはロケット先端のペイロード搭載部分を覆うカバーで、ペイロードに合わせて設計されねばならない。Tipping Pointのような実験では特に高度なカスタマイズが必要となる。10種類以上の低温液化ガスをロケットに搭載し、打ち上げ直前まで状態を確認し続けなければならないため、特殊なフェアリングを必要とする。これを従来の方法で製造すればコストの大幅上昇を招く。

エリス氏は「現在のロケットの製造マシンは60年前とほとんど変わっていません。据え置きタイプの巨大な機械で、見た目は壮観ですが、特定の目的のために設計されおり単一の製品しか作ることができません。製造過程はすべて手作業で1年から2年かかります」と現在の製造プロセスの問題点を指摘する。

しかし、Relativityはそうではないという。

「私たちの3Dプリンティングは、フェアリング全体を30日以内に出力します。製造過程はソフトウェアが制御するため、異なる形状の製品を製造する場合は制御ファイルを交換するだけでいいわけです。今回のミッション向けのフェアリングには数多くのカスタマイズが行われていますが、私たちのテクノロジーは柔軟性が高くすばやい適応が可能です。Tipping Pointプログラムはスタートしてからすでに3年経っていますが、このようなミッションでは打ち上げが近づけば近づくほど『最後の瞬間の変更』が頻繁になるのはよくあることです。3Dプリンティングならこのような変更にも即座に対応できます。従来のテクノロジーでは設計からやり直さねばなりません」とエリス氏は説明する。

Relativityは、ロッキードのような有名大企業と公開契約を結ぶことができたことに興奮している。こうした巨大企業は無数の政府契約を得ており、多数の衛星打ち上げに関わっている。宇宙産業では、こうした大企業と契約できることが非常に重要となる。いってみれば、相手の住所録に名前が載るだけでも大きなメリットだ。今回のような(月面探査とか有人宇宙飛行などと比べて)小規模なミッションは、Relativityスタートアップが能力を示す絶好のチャンスだ(もちろん多数の3Dプリンティング部品が打ち上げに利用されており注目に事欠いていない。しかし関心がさらに高まるのはメリットだ)。

プロジェクトが計画通りに進めば同社のフェアリングは2021年の後半に実際に宇宙に飛び出すことになる。「当社では数週間前から実際にフェアリングの出力を始めています」とエリス氏はコメントした。

NASAのTipping Pointプロジェクトによりロッキードは8970万ドル(約93億9000万円)の契約を獲得している。Tipping Pointというプロジェクト名のとおり、この実験は低温液化ガステクノロジーの商業利用の根本的な革新を目指している。有人月面探査やロボットアームには数十億ドル(数千億円)という巨額の資金が投じられているのに対してこのプロジェクトは比較的小規模だが、NASAにとってはある種のベンチャー投資なのだろう。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Relativity SpaceNASALockheed Martin3Dプリント

画像クレジット:Relativity

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Formlabsが人工装具・歯列矯正器具向け大型光造形法3Dプリンタを発表

Formlabsは数年前の巨大なテックバブルを乗り越えた数少ないデスクトップ3Dプリンタ企業のひとつだ。マサチューセッツ州サムヴィルを拠点とする同社は、高度な産業用3Dプリント技術をコンシューマー向けに取り入れることで差別化してきた。また最近では、この技術によってさまざまな製造分野に進出し、競合をリードしている。

医療と歯科の2つは重要なターゲットだ。カスタマイズ可能ですぐに作れるという2つのメリットを生かせるプロダクトの最も良い例は、人工装具や歯列矯正器具だ。米国時間9月15日、FormlabsはForm 3LBを発表した。これは最近発表した1万ドル(約106万円)の大型ステレオリソグラフィ(光造形法)プリンタのForm 3Lを医療・歯科に特化したものだ。

Form 3BLは標準のForm 3プリンタのおよそ5倍の体積のものが作れるなど、スペックは3Lとほとんど同じだ。最大の違いは、生体適合性のある材料に最適化されている点だ。このシステムは医療・歯科関係者の院内や社内で、模型や歯科で必要なものをすぐに作ることを想定している。

Form 3LBの発表の同日に、プリントした大きいオブジェクトを処理するWash L + Cure Lも発表された。これは2021年中の出荷を予定している。さらに同日、Form 3Lの出荷と3BLの注文が開始された。3BLは来月から出荷される。

画像クレジット:Formlabs

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(翻訳:Kaori Koyama)

金属3DプリントのDesktop Metalはまさに「金のプリンター」、Kleinerのリターンは投資額の10倍

「金属をプリントする」技術を携えたDesktop Metal(デスクトップ・メタル)は、ひさしぶりにボストンから現れたおもしろいスタートアップだ。3Dプリント市場で大成長する可能性がある。通常3Dプリントでは柔軟性のあるポリマーが材料に使われるため、プリンターが「印刷」できる材料によって、製品のタイプが限られてしまう。なので、数週間前にこの会社がSPAC(特別目的買収会社)の目に留まったのは、ごく自然なことだった。すべてが順調にいけば、2020年末には株式が公開される。

米国時間9月14日朝、Trine(トライン)というSPACとこのスタートアップは、最新の財務と株主に関する報告書を米証券取引委員会(SEC)に提出したが、その内容から大成功を手にするベンチャー投資会社はどこなのかが見えてくる。

まず、2015年のシリーズA以降のDesktop Metalの第一優先株の価格を見てみよう。シリーズA当時は0.53ドルだったが、2019年のシリーズEで販売した株価は10ドルをやや上回るなど、この5年間で急上昇している。

Desktop Metalの株価。

提出された資料(SECサイト)によれば、Desktop Metalの大口の投資会社は、17.66%を所有するNEA、11.59%のLux、11.10%のKleiner、8.89%のGV(元Google Venturs)、6.96%のNorthern Trust、5.89%のKDT(Koch Industriesの子会社)となっている。

Desktop Metalの評価額は、SPACの総合評価額25億ドル(約2630億円)のうちの18億3000万ドル(約1895億円)。この2つの数値の差は、SPACが保有する株式3億500万ドル(約316億円)と、買収の一環として実施される同社への民間投資と手数料やその他の補助的融資を合わせた2億7500万ドル(約290億円)から生じている。

リターンの期待度という面から見るとどうだろう?その提出書類によれば、Desktop Metalは6回のラウンド(シリーズAからシリーズEおよびE-1)で、トータル4億3800万ドル(約460億円)の資本金を調達している。この数値を使った簡単な計算で、個々のファンドが投資会社にどれほどのリターンを提供できたかを大まかに推測できる。

Desktop Metalへの投資額。

投資額の何倍戻ったかという観点で見れば、最大の勝利者はKleiner Perkins(クライナー・パーキンス)だ。Desktop Metalへの投資総額のおよそ10倍のリターンを獲得した。KlienerはシリーズAの5分の1を提供している。およそ300万ドル(約3億1600万円)だ。シリーズBでは、投資額はおよそ1300万ドル(約13億7000万円)に増強された。その後のラウンドでは、次第に比率が下がってゆく。2040万ドル(約21億5000万円)という投資額の比率が、昔に遡るほど大きくなっているところを見ると、それがリターンの倍率を押し上げていることがわかる。

NEAは、おそらくその資本規模の大きさからすべてのラウンドを通して一定した投資を行っており、最終的な投資額はおよそ5700万ドル(約60億円)にのぼる。シードプログラムから参加し、シリーズAの投資割合は43%としている。NEAは継続してDesktop Metalのすべての成長ラウンドに巨額を投じてきた。最終的なNEAのリターンの倍率は、およそ5.67倍と算出される。

最後に、初期ステージの投資会社の間ではLux(ラックス)が5.31倍を守った。同社も同様に、すべてのラウンドに資金を提供している。ただし、NEAほど積極的ではない。最終的にDesktop Metalに投じた資金は4000万ドル(約42億円)となった。

成長投資企業を目指すGVはシリーズCから参加し、その後のラウンドを通じておよそ6500万ドル(約68億5000万円)を投資。リターンの倍率は2.5倍となっている。Northern Trust(ノーザン・トラスト)はシリーズDからの参加で、リターンの倍率は1.6倍。KDT of Koch Industries(コッチ・インダストリーズ)のKDTの場合は、そのメザニンファイナンスの注入によるリターンが1.44倍という結果になった。

これらの投資会社は、みなSECの基準による5%以上の所有権を持つ者たちだ。4億3800万ドル(約460億円)というDesktop Metalの調達額の中には、資本政策表には公開されていない1億ドル(約105億円)があるため、他にも巨額のリターンを獲得しながシェアの公開義務のないベンチャー投資家がいるようだ。またここでは、これらのベンチャー投資会社が所有する少数の普通株による出資金は計算に入れていない。リターンの倍率に影響するほどの大きな額ではないからだ。

ほんの5年間で評価額を急増させたDesktop Metalは、これらの投資会社に投資に対する確かな内部利益率を与えることになる。

Desktop MetalがSPACを通じて株式公開を行えば、これらすべての投資会社には株式を売却するか、そのまま持ち続けるかの選択肢が与えられる。もしDesktop Metalの株式を持ち続け、同社の業績が順調に伸びれば、株価は劇的に上昇してリターンはさらに押し上げられる可能性がある。もちろん、その逆もあり得る。株式公開をした企業にはエグジットするか、するならいつかを決める自由がある。そしてその判断が、リミテッドパートナーたちの最終的なリターンの額を決めることになる。

だが今のところこれは、ベンチャー投資会社たちが、今回の取引でどれだけ成功できるかを確かめる指標として有効に使える。おそらく彼らは、その3Dプリンターで黄金をプリントできるようになるだろう。

関連記事:金属3Dプリント技術を擁するDesktop MetalがSPACを利用したIPOで2600億円超企業に

カテゴリー:VC / エンジェル

タグ:Desktop Metal 3Dプリント SPAC

画像クレジット:Pier Marco Tacca / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Firehawk Aerospaceは安全で低コストなハイブリッドエンジン用燃料でロケット革命を目指す

SpaceX(スペースエックス)をはじめとする商用ロケット打ち上げ市場の各企業は、宇宙の経済に変革をもたらし、小型衛星起業家の時代を切り拓いたものの、実際に使われているロケットエンジンの技術は、50年前にNASAが初めて宇宙に進出したときからそう進歩していない。

CEOのWill Edwards (ウィル・エドワーズ)氏と会長兼最高科学責任者であるRon Jones(ロン・ジョーンズ)氏が創設した新しいスタートアップFirehawk Aerospace(ファイヤーホーク・エアロスペース)は、安定した費用対効果の高いハイブリッドロケット燃料でそれを変えようとしている。彼らは、これまでのハイブリッド燃料用エンジンの製造にともなう困難や制約を、積層造形法(工業規模の3Dプリンター)で克服したいと考えている。

固体燃料と液体酸化剤を組み合わせるハイブリッドロケットは、それ自体がそう新しいものではないが、パフォーマンス指標や最大推力の面で、常に大きな制約に悩まされてきた。長期にわたってロケット燃料と航空宇宙構造物の研究に携わり、先端複合材料エンジニアでもあるジョーンズ氏は、以前からエンジン技術に興味を抱き、その利点を活かしつつ、さらに安全性とコストにも配慮しながら過去のハイブリッドエンジンの設計における制約を克服する方法を考えてきた。

ジョーンズ氏は高校から大学を通して物理学と工学が大好きだったが、結局、海軍に入隊して飛行士となり、その後ようやく航空宇宙産業に落ち着くことができた。その一方で、彼は黎明期のインターネットを活用し、ロケット工学への情熱を深めていた。特にハイブリッドエンジン技術を研究したり、世界の専門家たちと意見交換を行っていた。

「最終的に、私は2つのコンセプトを合体させることを思いつきました」とジョーンズ氏はインタビューで話した。「1つは、燃料が間違っていたという点。これまで使われていた燃料は、弾性が高すぎます。圧力をかけると、燃料はその影響を受けてしまいます。薄くなるに従って強度が低下し、基本的にバラバラになってしまい燃料の多くが無駄になります。そこで私は、構造的に非常に強いポリマーに切り替えました。もう1つは、型に入れて成形するやり方は利口ではないという点です。私はそれを、積層造形法に変更しました」。

材料を少しずつ時間をかけて重ねることで構造を作り上げていく積層造形法であれば、液状の燃料を型に流し込んで固めるモールド方式では不可能だったことができる。例えば、内部構造を非常に細かく意図したとおりに作ることも可能だ。家庭用の3Dプリンターを見たことがある人なら、大きなモデルを作るときに内部を格子状にして強度を高め、表面を支える技法をご存知だろう。それが、固形ロケット燃料のペレットの潜在能力を解き放つ鍵となった。

「積層造形法を使うことで、私はこれまで誰もやらなかったことができるようになりました。それこそが、モールド方式では不可能だった高度に設計された内部構造を構築する方法です」と彼はいう。「その内部構造を採用したことで、ロケットエンジンの性能が大幅に向上しました。信頼性だけでなく安全性も大きく高まりました。それは、私が目指していた最も重要な特性です」。

Firehawkは現在、ロケット燃料の3Dプリントに関連した5つの特許を取得し、すでに32基のエンジンを使った燃焼試験を推力200ポンド(約90kg)と500ポンド(約230kg)の2種類で実施し、設計の有効性を実証している。また同スタートアップは、推力5000ポンド(約2.3トン)のエンジンにも取り組んでいる。これは、Rocket Lab(ロケット・ラボ)のElectron(エレクトロン)ロケット第2段の推力とほぼ同じだ。2020年末に、燃焼試験に建設中の施設でテストを開始する予定だ。

前述のとおり、現在すでに運用を行っているロケット打ち上げ企業は、ずっと旧式の、それでもいまだに効率的なロケット技術を採用している。ならば、新種のハイブリッドエンジンなど使う必要がどこにあるのか?いろいろあるが、特に注目すべき理由は効率性と安全性だ。

Firehawkの燃料は、保管も輸送も取り扱いもずっと安全にできる。燃料と酸化剤を別々にしている限り、偶発的な発火事故の心配がないからだ。また毒性もない。この燃料は「環境に優しい」排気しか出さないとFirehawkは話している。大型ロケット用の既存のロケット燃料を安全に取り扱うには、大量の特殊な手順や安全策を講じる必要がある。作業員の訓練も欠かせないため、その分、時間と費用がかさむ。

しかもFirehawkでは、特注設計のエンジンを4カ月から6カ月で提供できるという。既存技術に基づいて新しいロケットエンジンを開発しようとすれば、通常は5年から7年はかかる。この時間的節約で、大きなコストを数億ドル(数百億円)単位でさらに減らすことができる。つまり、世代ごとの研究開発初期費用を回収しようとロケットの運用寿命を延ばす必要がなくなり、より新しくより優れたロケットの試作を、より短期間で繰り返せるようになるということだ。

この燃料は、長期間の保管と輸送に耐えられる。また、飛行中の停止と再点火も可能だ。これらが意味するのは、長期にわたる複雑なミッションも、これまでに比べてずっと低予算で遂行できるようになるということだ。当然のことながら、この可能性が民間企業と政府機関の両方の顧客の強い関心に火を点けたとCEOのエドワーズ氏は述べていた。

2020年の初め、Firehawk Aerospaceは200万ドル(約2億1000万円)のシードラウンドをクローズした。これにはVictorum Capital、Achieve Capital、Harlow Capital Managementが参加している。現在は人員増強を目指し、特に未来のロケット推進技術の仕事に高い関心を持つ意欲あるエンジニアを求めている。さらに、複数の潜在パートナーとの提携話を進めつつ、この技術の商品化に関するいくつもの申し出にも対応しているとのことだ。

カテゴリー:宇宙

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画像クレジット:Firehawk Aerospace

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(翻訳:金井哲夫)

金属3Dプリント技術を擁するのDesktop MetalがSPACを利用したIPOで2600億円超企業に

Desktop Metalはその5年間の存在を通じて、投資家が足りないことはなかった。これまでのところ、この金属3Dプリント企業は4億3000万ドル(約460億円)を調達し、その間に米国で最も最速でユニコーンの資格を達成した企業になった。

米国時間8月26日、同社は上場の意図を発表(Businesswire記事)している最近の一連の企業の中(未訳記事)で最新の企業になった。

マサチューセッツ州バーリントンを拠点とする同社は、SPAC(特別目的買収会社、ブランク・チェック・カンパニー)であるTrine Acquisitionと合併(GlobalNewswire記事)し、「DM」のテッッカーシンボルでニューヨーク証券取引所に上場するつもりだ。この特別目的買収会社は昨年の3月に、2億6100万ドル(約278億円)の自社のIPOを発表(IPOScoop.com記事)した。

この新しい取引でTrineは、Desktop Metalと合併して同社自身の見積もりでは最大で25億ドル(約2663億円)の企業(Businesswire記事)を作る。Desktop Metalの昨年初頭以降最新の評価額は15億ドル(約1600億円)だ(Pichbookデータ)。従って、この特別目的買収会社がリードする取引はDesktop Metalの投資家に魅力的な上げ幅を与える。

この取引に先立って、SPACによる合併のブームがあり、さらにその背景には活発な活動があった。その典型がVirgin Galacticのケースだ

関連記事:Desktop Metal just raised another $160 million(未訳記事)

この特別目的買収会社がリードする上場は、5億7500万ドル(約612億円)の資金を生み出す(BusinessWire記事)という。Trineで3億ドル(約320億円)、さらに「普通株PIPEは1株当たり10.00ドルでコミットされている」いることから2億7500万ドル(約293億円)となる。PIPE(Private Investment In Public Equity)は「公開株式への民間投資」という意味(Harvard Law School Forum on Corporate Governance記事)で、必要に応じて特別目的買収会社主導の案件により多くの資金を投入できる仕組みだ。

SPAC以後の計画

Desktop Metalは、自社の研究開発をさらに深く進めることに加え、付加価値製造、3D印刷業界の「建設的統合」と呼ばれる分野での買収も計画している。この計画によって同社は「付加製造2.0」における主要なプレーヤーになる狙いだ。3Dプリントイノベーションの第二波により、今までの数十年間、期待と誇大宣伝で膨らんでいた金属の3Dプリントというものがついにそのポテンシャルを満たし、従来の製造業を打ち負かしていく。(付加製造(additive manufacturing, AM)、3Dプリントは素材を徐々に付加していって物を作るので、こう呼ばれる。従来の、素材を削って物を作る技術は除去加工と呼ばれる)。

Desktop Metalは、自社の研究開発努力を進めるとともに、付加製造(材料を付加しながら製造していく造形方法)、3D印刷業界の「建設的統合」と呼ばれる分野での買収も計画している。今回の買収によってDesktop Metalは、同社が「付加製造2.0」(3Dプリンターでは付加製造の材料に樹脂や金属を使える)とみなしてきた分野の主要なプレーヤーとなる狙いだ。これは3Dプリンティングのイノベーションの第2の波になり、何年も何十年にもわたって喧伝されてきた製造業を真にひっくり返す可能性をついに実現できるかもしれないと考えている。

同社創業者でCEOのRic Fulop(リック・フロップ)氏はプレスリリースで「私たちは付加的製造の採用における大きな転換期にあり、Desktop Metalはこの変革をリードしています」と述べている。

このような業界では、誇大広告と真に影響力のある技術と区別するのは難しいかもしれないが、Desktop Metalは設立以来5年の間に、確かに目覚ましいブレークスルーを示してきた。Lux Capital、NEA、Kleiner Perkins、Ford Motor Company、Google Ventures、Koch Disruptive Technologiesなどの著名な投資家に加えて、同社は数々のビッグネームのパートナーシップを結んでいる。Ford(フォード)とBMWの両社は、自動車産業の製造工程を革新させる可能性を十分に同社が秘めていることを感じ、投資家として契約した。

画像クレジット: Desktop Metal

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa