3Dプリントで作られたTerran 1ロケットの実証打ち上げをRelativity Spaceは2022年初頭に延期

3Dプリントによるロケット開発企業のRelativity Space(レラティビティ・スペース)は、同社の軽量ロケット「Terran 1(テラン1)」の実証打ち上げの日程を、2021年冬から2022年初頭に延期した。同社はTwitter(ツイッター)でスケジュールの変更を発表するとともに、打ち上げがフロリダ州のケープカナベラルから行われることを明らかにした。

#Terran1の最新情報をお伝えします。

ステージ2が、構造試験台で極低温圧力証明+油圧機械式座屈性能試験に合格したとお伝えできることを大変うれしく思います。次は S1の構造テストです。

Terran 1のデモンストレーション打ち上げは、2022年初頭にケープカナベラルLC-16から行われることになりました。

Relativity Space

また、Relativityによれば、ステージ2は極低温圧力と油圧機械式座屈性能の試験に合格したという。今後、ステージ1の構造試験が行われる予定だ。

今回の延期のニュースは、RelativityがTerran 1を2021年の冬に打ち上げると(同じくツイッターで)言ってから、わずか2カ月後のことだった。軌道飛行実証を行うこのロケットにはペイロードは搭載されないが、同社はすでに2022年6月に2回目の打ち上げを予定しているという。そちらのロケットは、NASAとのVenture Class Launch Services Demonstration 2(VCLS Demo 2)契約の一環として、CubeSat(キューブサット)を地球低軌道に運ぶことになる。

同社の広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、打ち上げ日が延期された理由は「1つではない」とのこと。「新型コロナウイルスの影響でいくつかのプロセスを遅らせている間に、Relativityはこの1年間で、Terran 1のアーキテクチャを改良し、まったく新しいエンジンを開発し、素材をアップグレードしました」と、広報担当者は語り「パートナーとの連携を円滑に進めるため、実証打ち上げの日程を2022年初頭に変更しました」と続けた。

今回の打ち上げでは、3Dプリンターで全体が作られたロケットが、世界で初めて宇宙へ飛び立つことになる。Relativityの技術は投資家の関心を集めており、2021年の夏に行われた6億5000万ドル(約714億円)の資金調達で、評価額は42億ドル(約4600億円)にも達したほどだ。同社はTerran 1に加えて、2機目の「Terran R(テランR)」と呼ばれる重量物運搬用の完全再利用可能なロケットの開発も進めており、早ければ2024年の打ち上げを目指している。

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画像クレジット:Relativity Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Relativity Spaceが生産能力を10倍にすべく9万平米超の工場を建設、再利用可能3DプリントロケットTerran R製造へ

6億5000万ドル(約722億円)のシリーズEラウンドで資金調達を終えたばかりの3Dプリントロケットのスタートアップである Relativity Space(リラティビティー・スペース)が、その生産能力を10倍に増やすべく、100万平方フィート(9万2900平方メートル)の本社工場をカリフォルニア州ロングビーチに建設する。

Relativityの同じくロングビーチにある15万平方フィート(1万3900平方メートル)の現工場も生産を続ける。この工場は同社初のロケットとなる使い捨て型Terran 1に、引き続き焦点を当てる。このロケットは少量貨物向けの設計だ。新しい工場はRelativityの重量貨物用完全再利用可能な2段ロケット、Terran Rの開発および生産を目的としている。どちらのロケットもまだ軌道を見たことはないが、RelativityはTerran 1を2021年末に、Terran Rを2024年初めに打ち上げる計画だ。

2022年1月の新工場稼働に合わせて、同社は雇用の拡大も計画している。2021年中に少なくとも200名の社員を追加したい、とCEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏がTechCrunchに語った。新工場の必要労働力は2000人を超えるため「Terran 1の打ち上げとTerran Rの開発開始に向けて1000人単位の新規雇用を行うことは間違いない」とエリス氏は言った。

画像クレジット:Relativity Space

Relativity独自の3DプリンターであるStargate(スターゲート)は、同社のどちらのロケットもプリントできる。しかし、能力はそれにとどまらない。少なくとも理論的には。Terran Rは再利用可能なので、巨大な新工場で生産可能な数よりもはるかに少ないロケットしか必要としないはずだ。そこで疑問が生じる。一連のプリンターは何を作ることになるのか?

エリス氏はいくつか可能性を示唆した。「ここではTerran Rを製造し、当初は開発を行いますが、長期的には次に当社が宇宙に送り込む何かを作るために、この工場の改善と再構成を続けていくことができるでしょう」と彼は言った。しかし、それがどんなものなのか正確には言わなかった。

「たしかに時間とともにプリント能力に余剰ができます、Terran Rは再利用するので。このため、ある時点で私たちには山ほどのプリンターと大量の空き時間があることになります。そんな能力を得たら何ができるか想像してみてください。次の破壊的製品に向けて突き進むだけです」。

Stargateプリンター群に加えて、敷地内にはカスタマイズ版DMLS(直接金属レーザー焼結方)メタル・プリンター、冶金研究所、機械工場、ミッション管制センターなどがある。ミッション管制センターではその名の通りミッションオペレーターが、フロリダ州ケープ・カナベラルとカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地で行われる打ち上げの監視と管理ができる。

Relativityはこの場所を、土地所有者であるGodman Groupから「長期間契約」で賃借しているとエリス氏は言った。かつて当地は、Boeing(ボーイング)が軍用輸送機C-17の製造に使用していた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Relativity Space工場3Dプリントロケット

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

3Dプリントでわずか60日で完成するRelativity Spaceの新しい大型ロケットTerran R、もちろん再利用可能

3Dプリント製ロケットのスタートアップであるRelativity SpaceがシリーズEラウンドで6億5000万ドル(約712億円)を調達し、調達総額は12億ドル(約1315億円)を超えた。この件に詳しい情報筋がTechCrunchに語ったところによると、Relativityのポストマネー評価額は現在42億ドル(約4602億円)だという。

今回のラウンドを主導したのはFidelity Management & Research Companyで、他にBlackRock、Centricus、Coatue、Soroban Capitalが運用するファンドやアカウントを持つ新規投資家や、既存投資家のBaillie Gifford、K5 Global、Tiger Global、Tribe Capital、XN、Brad Buss(ブラッド・バス)氏、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏、Jared Leto(ジャレッド・レト)氏、Spencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏らが参加した。

シリーズEからの資金は、同社の完全に再利用可能な2段式重量物打ち上げロケット「Terran R」の生産を加速するために使われる。Terran Rは、2021年末に初の軌道飛行を行うRelativityのデビューロケット「Terran 1」に加わることになる。

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同社はTerran Rについて固く口を閉ざしてきたが、今回の資金調達の発表と合わせてさらに詳しい情報を明らかにした。予想通り、Terran 1とTerran Rはかなり大きな違いがある。Terran 1は消耗品であり、Terran Rは再利用可能だ。前者は小型ペイロード用、後者は大型ペイロード用に設計されている。Terran Rのペイロードフェアリングでさえ再利用可能であり、Relativityは回収とリサイクルを容易にするシステムを案出した。

この大型ロケットは、高度216フィート(約66メートル)、最大ペイロード2万ポンド(約9トン)で低地球軌道(LEO)に投入される(ちなみにSpaceXのFalcon 9ロケットの高度は約230フィート[約70メートル]、LEOへの最大ペイロードは2万2800ポンド[約10トン]である)。

左がRelativityのTerran 1、右がTerran R(画像クレジット:Relativity)

Terran Rは、1段目に7個の新しい「Aeon R」エンジンを搭載し、それぞれが30万2000ポンド(約134トン)の推進力を持つ。Terran Rのエンジンとロケットを製造するのと同じ3Dプリンターが、Terran 1の動力源となる9個の「Aeon 1」エンジンも製造しており、Relativityは新ロケットを製造するために生産ラインを大幅に再構成する必要がない。

CEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏によると、Terran Rを1基製造するのにかかる日数は60日ほどだという。このようなペイロード容量を持つロケットとしては信じられない速さだ。

Terran 1の打ち上げはまだ行われていないが、RelativityがTerran Rの開発を遅らせる様子はない。エリス氏は、同社は2024年にはケープカナベラルの発射台からのTerran Rの打ち上げにも着手する予定であり、今回の新ロケットの最初のアンカー顧客として「有名な優良企業」と契約済みだと述べている。

Relativityは、2021年末に同社初の軌道飛行を行うロケットの約85%のプリントを終えたところだ。このミッションを遂行するTerran 1にペイロードは搭載されない。Terran 1の2回目の打ち上げは2022年6月に予定されており、NASAとの契約「Venture Class Launch Services Demonstration 2(VCLS Demo 2)」の一環としてCubeSat(キューブサット)をLEOに投入する。

RelativityのCEOであるティム・エリス氏はTechCrunchとのインタビューで、3Dプリントを製造におけるパラダイムシフトであると形容した。「私たちのアプローチ、あるいは一般的な3Dプリントは実際のところ、ガスの内燃機関から電気へ、あるいはオンプレミスサービスからクラウドへの移行に近いものだということが、人々にはあまり認識されていないように思います」とエリス氏。「3Dプリントはクールなテクノロジーですが、それ以上に、実用上ソフトウェアであり、データ駆動型の製造および自動化技術でもあるのです」。

3Dプリントのコアはテクノロジースタックであり、同社は従来の製造方法では「不可能だった幾何学的構造」をアルゴリズム的に生成することができる、とエリス氏は説明する。また、設計は市場の需要に合わせて簡単に調整可能だ。

Relativityの設立前にBlue Originで金属3Dプリント部門の立ち上げを担当したエリス氏は、Terran 1と、カウンターパートである重量物運搬仕様を設計、構築することが、Day1(創業初日)からの戦略だったと語っている。

3Dプリントの実際のメカニズムは、地球上の重力の38%しかない火星のように重力がはるかに小さい環境でも技術的に実現できる。しかしより重要なのは、それが惑星外の不確実な環境で「必然的に必須の」アプローチだということだ。

「Relativity設立へのインスピレーションは、SpaceXがロケットを着陸させ、宇宙ステーションにドッキングするところを目にしたことでした。創業して13年の同社は、その輝かしい成功に留まることなく、人類を多惑星化しようと考え、火星に行くことを目指す唯一の企業でした」とエリス氏は語る。「そして私は、3Dプリント技術が他の惑星に産業基盤を現実的に構築する上で避けられないものだと考えたのです。火星に行こうと実際に試みたり、それが自分たちのコアミッションだと主張する人さえいないときでした。それは5年後の今でも、実際にはまだ当社とSpaceXだけです。そしてそのミッションの後に進むべき数十から数百の企業にインスピレーションを与えたいと、私は心から願っています」。

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タグ:Relativity Spaceロケット資金調達3Dプリント

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

ロケット史上最高の事前契約数を記録したRelativity Spaceが米国防総省と初打ち上げ契約を締結

Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、すでに相当数の打ち上げ契約を交わしている。事実、CEOで共同創設者のTim Ellis(ティム・エリス)氏によれば、同社のTerran 1(テランワン)ロケットの事前契約の数は、ロケット史上最高を記録したという。だが、とりわけ重要なのは最も新しい契約先だ。それは米国防総省(ペンタゴン)。同省は国防イノベーション部門(Defense Innovation Unit、DIU)の取り組みとして、450〜1200kgのペイロードの地球低軌道への打ち上げに即応できるパートナーを探し続けてきたが、Relativity Spaceは、今回の契約でその役割を担うこととなった。

「かなり大型の衛星です。これだけの宇宙船を打ち上げられる業者はかなり限られます」とエリス氏はインタビューに応えて話した。「3mのペイロードフェアリングを持つTerran 1は、実際にそのサイズのペイロードが打ち上げられるすべての米国企業の中でも特異な存在です。そのスケールに十分に対応できるフェアリングを有しているのは、いまだに私たちだけです」。

DIUには、革新的な米国企業、特に技術開発が比較的初歩の段階の企業と協力するという特別な使命があり、その契約は、将来にわたり国防総省との深い関係が保証されるお墨つきとも見られている。だが今回のケースは、Relativity Spaceが比較的成熟した企業であり、国防関係以外の政府機関のものを含むミッションの事前契約数が多いことが評価された。

「今回は、特定のロケットを必要とする現実のミッションがあったからです」とエリス氏。「またこれは、国防総省を初めて顧客として迎えともに仕事ができる、そして私たちが聞いてきた政府の要望を実現できる大きなエコシステムへ駆け上がるすばらしいチャンスでもあります。これはすべてTerran 1に焦点を当てたものですが、もちろん、このプロジェクトとはまったく別に、私たちはTerran Rについてもすでに公表しています。これは、ほんのきっかけに過ぎません。私たちが作るあらゆるものを活用して、さまざまな分野で国益を支えてゆく多大な好機を私たちは見据えています」。

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エリス氏が話していたのは、先日Relativity Spaceが発表した大積載量ロケットTerran Rだ。これは3Dプリントでロケットを建造するこの会社が2021年2月に発表した大型ロケット計画であり、地球低軌道に衛星コンステレーションを投入する目的で注文に応じて作られる。変化するニーズに即応でき、冗長性の高い衛星技術を特に求める国防総省は、これまでに何度も衛星コンステレーションへの強い関心を示してきた。

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タグ:Relativity Spaceロケット3Dプリントペンタゴン

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

Relativity Spaceが完全再利用可能な新しい大型ロケットの建造計画を発表

Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、2021年後半からの打ち上げを予定している小型ロケットTerran 1の次に計画しているものを明らかにした。それはTerran Rという、Terran 1の20倍の積載量を持つずっと大型の軌道投入ロケットだ。これにはもう1つ、小さな兄と違う点がある。完全に再利用可能といことだ。SpaceXのFalcon 9とは異なり、第1段から第2段まで、すべてが再利用型になる。

私はRelativity SpaceのCEOで創設者でもあるTim Ellis(ティム・エリス)氏に、Terran Rについて、またこの宇宙スタートアップの仕事にいつから就いているのかを話を聞いた。エリス氏は、Y Combinator(ワイ・コンビネーター)に参加していたときから、実際に大型ロケットやその他の構想があったと話す。

「5年前、Relativityを創設したとき、SpaceXのロケットの打ち上げと着陸、国際宇宙ステーションとのドッキングを見るたびに刺激を受けていました。また火星へ行くという考えは、人類の未来にとって極めて重要であり、地球やそれ以外の場所での人類の体験を大いに拡大させる可能性があります」とエリス氏は私に語った。「しかし、人類が宇宙船から火星表面に歩いて出た瞬間、すべてのアニメーションが暗転してしまいます。そこで、火星に産業基地を建設するためには、3Dプリント技術がどうしても欠かせないと私は確信したのです。そして、その未来を実現するためには、数十また数百の企業を触発する必要がありました」。

Relativity Spaceの長期的な目標は、常に変わらず「最終製品の3Dプリント企業」となることだ。軽量ロケットのTerran 1は、その理念に基づいて市場に送り出される最初の3Dプリント製品に過ぎない。

「3Dプリントは、航空宇宙のための私たちの新しい技術スタックです。これはこの60年間、基本的に変わっていないとみんなが感じているものを、大きく書き換えます」と彼は話す。「これは、工場設置型の工作機械、サプライチェーン、何百何千ものパーツ、手作業、遅い改良スピードに置き換わるオートメーションと、地球の未来に必要だと私が信じているものを提供します」。

20トン以上のペイロードを地球低軌道に打ち上げる能力を持つTerran Rも、地球上で使用するための宇宙航空向けの機器を含む数々の製品を生み出そうというRelativity Spaceの長期目標における「次なる論理的なステップ」に過ぎない。エリス氏によれば、地球低軌道までの最大積載量が1250キログラムというTerran 1への消費者からの強い需要と、現在打ち上げられている衛星の平均的なサイズを合わせて考慮すると、大型のローンチビークルは理に適っているという。いわゆる「小型」衛星への恩恵はあるものの、現在作られているコンステレーションは、1基で500キログラムを超えるものが多いとエリス氏は指摘する。Terran Rなら、拡大しつつあるそうした軌道上の宇宙船ネットワークのための衛星を、もっとたくさん同時に打ち上げられるようになるということだ。

Terran Rで使われる予定の高推力エンジンの燃焼試験(画像クレジット:Relativity Space)

「Terran 1とロケットの構造はほぼ同じで、同じ推進剤を使い、同じ工場の同じプリンターで、同じ航空電子工学を用いて、同じチームが建造します」とエリス氏は次期ロケットについて説明した。つまり、Terran Rの機能が現行の小型ロケットとは大きく異なり、特に完全に再利用型になるとしても、同社にとって新しい製造ラインの立ち上げは比較的簡単であることを表している。

前述のとおり、Terran Rは、第1段、第2段とも再利用可能となる。SpaceXのFalcon 9の第1段(液体燃料式のロケットブースター)は再利用型だ。それは宇宙に到達して第2段を切り離すなり、すぐに方向転換して大気圏に突入し、エンジンを噴射して着陸する。Falcon 9の第2段は使い捨て型、つまり基本的に宇宙用語でいうところのゴミであり、廃棄され、いずれ軌道から外れて大気圏に再突入して燃え尽きる。

SpaceXにも、Falcon 9の第2段を再利用型にする計画はあった。しかし、耐熱材を追加すれば重量が増し、目標とする経済性は得られないとわかった。Terran Rの仕様に詳しいエリス氏は、3Dプリントに対応する非常に珍しい素材をユニークなかたちで使うこと、ジェネレーティブデザインを控えめに採用すること、それらがRelativity Spaceのロケットの第2段を、持続可能な形で再利用できるようにすることを、それとなく話してくれた。

「これも完全に3Dプリントで建造するので、従来の製造方式では使えなかった特別な素材や幾何学的デザインを採用する予定です」とエリス氏。「見た目はとにかく非常に複雑で、Terran Rの設計を従来方式で作ろうとしたら、大変なことになります。しかしそれが、再利用性の高いロケットを生み出すのです。最高の再利用型ロケットの建造に大いに寄与してくれました」。

Terran Rには、Relativity Spaceが開発している第2段用の新型エンジンが使われる予定だ。これも現在のTerran 1のエンジンと比べるとユニークなものになる。やはり3Dプリントで作られるのだが、銅製のスラストチャンバーを採用して全体的な出力と噴射能力を高めるとエリス氏は言っていた。木曜日の夕方にエリス氏に話を聞いた時点で、同社はすでにこの新型エンジンの初の耐久テストを完全に成功させていた。本格的な建造への重要な一歩だ。

エリス氏は、年内にはTerran Rのもっと詳しい情報を公開する述べていたが、製造工場にある大型3Dプリンターは、すでに新型ロケットのサイズに合わせて調整してあるとも教えてくれた。「変えたのはソフトウェアだけです」と彼はいう。また、同社がエンジンテストのためにNASAと使用契約を結んでいるステニス宇宙センターの試験場は、Terran Rのサイズのロケットの試験が可能だとも話していた。どうやら、この新型ロケットの開発を彼は急いでいるように思える。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

3DプリントロケットのRelativity Spaceが520億円調達を正式発表、火星の産業化を目指す

3DプリントロケットのスタートアップであるRelativity Space(レラティビティー・スペース)は、シリーズDラウンドで5億ドル(約523億円)調達した(Business Wire記事)ことを米国時間11月23日に発表した(以前本誌が報じた内容を正式に認めた)。ラウンドをリードしたのはTiger Global Managementで、ほかにFidelity Management & Research Company、Baillie Gifford、Iconiq Capital、General Catalystなど多くの新規出資者が参加した。初の完全3Dプリント製軌道ロケット打ち上げを2021年に控える同社の総調達額はこれで7億ドル(約732億円)近くになった。

カリフォルニア州ロサンゼルス拠点のRelativity Spaceにとって、2020年はロングビーチに12万平方フィート(約1万1000平方メートル)の製造工場が完成した大きな年だった。同社のロケット製作技術は、現存する最大の金属3Dプリンターの開発と利用に基づくもので、3Dプリントプロセスの大部分を自社開発による無人ロボットシステムとソフトウェアが扱うことで、現場の人員が比較的少なかったため、新型コロナウイルスの影響は最小限で済んでいる。

今年、Relativityは米国政府と初の正式契約も結び、新規技術と宇宙開発のためのNASAのTipping Point契約の一環として、クライアントであるLockeed Martin(ロッキード・マーティン)のために極低温燃料管理システムの新たな実験を開始した。稼働を始めた同社の第3世代Stargate金属3Dプリンターは、世界最大だといわれている。

会社の野望は遠大であり、今回調達した巨額の資金は同社が2021年にいっそう攻撃的な成長を果たす糧になるだろう。現在新たなプロジェクトが地上、宇宙関連の両方で進行中だが、CEOでファウンダーのTim Ellis(ティム・エリス)氏は、Relativityのテクノロジーの今後の応用について、火星と火星での持続可能な運用を具体的に挙げている。

以前エリス氏は、Relativityのプリンターを他の大規模金属製造に適用する可能性を示唆したことがあり、現在の費用曲線はロケット製作に最も適しているが、技術が成熟すれば他の分野にも応用できると指摘した。火星であれ地球であれ、大規模3Dプリンターが将来有望であることに間違いはなく、Relativityは有利な位置につけているようだ。

我々は来たるTC Session: Space 2020イベントにエリス氏を迎え、今回の資金調達や会社の未来について質問するつもりだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

3Dプリンターを使ったロケット開発のRelativity Spaceが520億円調達

ロケット開発のRelativity Space(リレイティビティ・スペース)は23億ドル(約2400億円)のバリュエーションで、5億ドル(約520億円)のシリーズDラウンドを調達したとCNBCが報じた。TechCrunchもこの件に詳しい情報筋に確認した。まだペイロードを軌道に打ち上げていない企業にしては悪くない数字だ。

Relativityは、3Dプリントを使うことで打ち上げ用ロケットのコスト抑制と組み立てスピードアップを図ることを狙っている。この方法にはテストで裏付けられた多くのメリットがあり、同社は2021年の初のミッション打ち上げを目指している。

同社の直近の大型資金調達は2019年後半で、1億4000万ドル(約146億円)を調達した。この資金はロングビーチへの新本部設置と、Terran-1ロケットを仕上げるのに使われた。一連の機械や固定されたツールを使っている組み立てラインから、いくつかの巨大カスタム3Dプリンターへの変更はロケット建造プロセスを簡素化し、新たな能力を可能にした。

例えばRelativityは最近、ペイロードに極低温システムを含むために特別の配慮を要するNASA(米航空宇宙局)とLockheed(ロッキード)のミッションという、同社にとって初となる政府との大きな契約を獲得している。1年あるいはそれ以上前に固定されるハードウェアを必要とする通常の建設プロセスと異なり、この特別ミッションミッションの場合は打ち上げの数カ月前まで見直したりテストしたりされる。

5億ドルのラウンドはおそらく、本格的なオペレーション、人員の確保、材料、輸送、保険、その他大きなミッションに必要なものに使われる。Terran-1はまだ打ち上げられていない。しかし予想コストとケイデンスはTerran-1をかなり魅力的な選択肢に仕立てている。Terran-1はRocket Lab(ロケット・ラボ)のElectronより大きく、SpaceX(スペースX)のFalcon 9 より小さい。そして重量当たりの費用対効果はこの2つよりも優れている。

いずれにしろ、RelativityがTerran-1を工場から打ち上げパッドに持ってくる来年にすべてはかかっている。初の軌道試験飛行は2021年後半に予定されている。

CNBCのMichael Sheetz(マイケル・シーツ)氏は、がTiger Global Managementがラウンドをリードし、Fidelityや既存投資家が参加したと報じた。

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(翻訳:Mizoguchi

Relativityの3DプリントフェアリングをロッキードがNASAの宇宙空間実験ミッションに採用

宇宙航空スタートアップのRelativity Spaceが初の政府との契約を獲得した。同社はNASAのTipping Point(ティッピング・ポイント)という高度、複雑なミッションを実施する上でRelativityの3Dプリンティングによるロケットフェアリングが最適のチョイスと判断した。

ミッションは、宇宙空間で十数種類の極低温液化ガスの取り扱いを実験するものだ。中でも液化水素は処理が非常に難しい物質として知られている。しかもこの実験は単一の衛星上で行われるため、メカニズムのデザインは非常に複雑となる。

液化ガス処理システム自体は、NASAのパートナーであるロッキードが設計する。しかし、当然ながらシステム開発にあたっては実際の打ち上げに用いられるロケットの開発者と緊密に協力する必要がある。

RelativityのファウンダーであるCEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏はこの複雑なミッションを実施するロケットの製作には3Dプリンティングが最適だと説明した。

エリス氏は「予定されているペイロードに合わせて、カスタマイズされた特殊な形状のフェアリングを製作する必要があります。ペイロードへの適切なフィッティングも必要とされ、これも特別なものです。もちろん部外者が一見したところでは普通のロケットに見えるかもしれません」と述べた。

フェアリングというのはロケット先端のペイロード搭載部分を覆うカバーで、ペイロードに合わせて設計されねばならない。Tipping Pointのような実験では特に高度なカスタマイズが必要となる。10種類以上の低温液化ガスをロケットに搭載し、打ち上げ直前まで状態を確認し続けなければならないため、特殊なフェアリングを必要とする。これを従来の方法で製造すればコストの大幅上昇を招く。

エリス氏は「現在のロケットの製造マシンは60年前とほとんど変わっていません。据え置きタイプの巨大な機械で、見た目は壮観ですが、特定の目的のために設計されおり単一の製品しか作ることができません。製造過程はすべて手作業で1年から2年かかります」と現在の製造プロセスの問題点を指摘する。

しかし、Relativityはそうではないという。

「私たちの3Dプリンティングは、フェアリング全体を30日以内に出力します。製造過程はソフトウェアが制御するため、異なる形状の製品を製造する場合は制御ファイルを交換するだけでいいわけです。今回のミッション向けのフェアリングには数多くのカスタマイズが行われていますが、私たちのテクノロジーは柔軟性が高くすばやい適応が可能です。Tipping Pointプログラムはスタートしてからすでに3年経っていますが、このようなミッションでは打ち上げが近づけば近づくほど『最後の瞬間の変更』が頻繁になるのはよくあることです。3Dプリンティングならこのような変更にも即座に対応できます。従来のテクノロジーでは設計からやり直さねばなりません」とエリス氏は説明する。

Relativityは、ロッキードのような有名大企業と公開契約を結ぶことができたことに興奮している。こうした巨大企業は無数の政府契約を得ており、多数の衛星打ち上げに関わっている。宇宙産業では、こうした大企業と契約できることが非常に重要となる。いってみれば、相手の住所録に名前が載るだけでも大きなメリットだ。今回のような(月面探査とか有人宇宙飛行などと比べて)小規模なミッションは、Relativityスタートアップが能力を示す絶好のチャンスだ(もちろん多数の3Dプリンティング部品が打ち上げに利用されており注目に事欠いていない。しかし関心がさらに高まるのはメリットだ)。

プロジェクトが計画通りに進めば同社のフェアリングは2021年の後半に実際に宇宙に飛び出すことになる。「当社では数週間前から実際にフェアリングの出力を始めています」とエリス氏はコメントした。

NASAのTipping Pointプロジェクトによりロッキードは8970万ドル(約93億9000万円)の契約を獲得している。Tipping Pointというプロジェクト名のとおり、この実験は低温液化ガステクノロジーの商業利用の根本的な革新を目指している。有人月面探査やロボットアームには数十億ドル(数千億円)という巨額の資金が投じられているのに対してこのプロジェクトは比較的小規模だが、NASAにとってはある種のベンチャー投資なのだろう。

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カテゴリー:宇宙
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(翻訳:滑川海彦@Facebook