メルカリが暗号資産・ブロックチェーン領域参入、新会社「メルコイン」は暗号資産交換業者として申請予定

メルカリが暗号資産・ブロックチェーン領域参入、新会社「メルコイン」は暗号資産交換業者として申請予定

メルカリが新会社「メルコイン」の設立を4月下旬に設立します。メルカリの子会社として、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行い、暗号資産交換業者の新規登録も行います。

発表によると、メルカリグループは「メルコイン」を「メルカリ」「メルペイ」に続く事業の柱に育てる方針。今後は売上金のビットコインでの受け取り機能の提供や、メルペイで決済・送金・与信・資産運用・暗号資産を1つのウォレットで管理できる機能を提供します。

また、価値交換を実現するブロックチェーン技術に取り組むことで、NFT(Non-fungible token)等、これまでのモノ・金に限らず、サービスやデジタルコンテンツなどのあらゆる価値を誰もが簡単に交換できる新しい取引の形の創出を目指すといいます。

メルカリが暗号資産・ブロックチェーン領域参入、新会社「メルコイン」は暗号資産交換業者として申請予定

暗号資産をめぐっては、米国の決済サービス大手「ペイパル」が自社ウォレットでの取り扱い開始を発表したほか、テスラが自社製品の購入代金にビットコインを利用可能とするなど、各社の参入が相次いでいます。

2020年末からの価格高騰を受けて、暗号資産全体の時価総額は200兆円を超え、金の時価総額(1200兆円)の6分の1に迫っています。また、直近では米フィデリティがビットコインETFの承認申請をSEC(米証券取引委員会)に行ったことでも話題を集めています。

発表の全文は下記の通りです。

株式会社メルカリ(以下、メルカリ)は、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行うことを目的に、メルカリの子会社として2021年4月下旬(予定)に株式会社メルコイン(以下、新会社)を設立することを決定いたしましたので、お知らせいたします。
※メルコインは、今後、暗号資産交換業者の新規登録申請を行う予定です。

暗号資産は、現在、暗号資産全体の時価総額が200兆円※1を超え、これまで採掘された金の時価総額約1200兆円[※2]の6分の1の規模に迫るなど、大きな存在になりつつあります。国内の暗号資産やブロックチェーンの領域においては、2017年4月に「資金決済に関する法律」が改正され、以降、様々な事業者が暗号資産交換業に参入、資産運用を中心に活用が広がっています。一方、グローバルな環境においては、資産運用に加え、決済や送金での利用等、様々なシーンで暗号資産やブロックチェーンの活用が広がっており、国内においてもこれまでに無い新たな顧客体験を提供できる可能性があると考えています。

新会社を設立し、暗号資産事業に取り組むことで、「メルカリ」においては、売上金のビットコインでの受取り機能の提供や、「メルペイ」においても決済・送金機能の提供に留まらず、与信、暗号資産・資産運用の機能を一つのウォレットで提供していく等、より簡単に金融サービスを利用できる環境を構築していきます。

また、価値交換を実現するブロックチェーンの技術に取り組むことで、NFT(Non-fungible token)[※3]等、これまでのモノ・お金に限らず、サービスやデジタルコンテンツなどのあらゆる価値を誰もが簡単に交換できる新しい取引の形を創出し、さらなる顧客体験の向上や顧客基盤の拡大に繋げていきたい考えです。メルカリは、メルコインにおける新たな挑戦を通じて、メルカリグループの新たな柱となりうる事業の企画・開発を目指してまいります。

※1:CoinMarketCap(https://coinmarketcap.com/ja/)2021年3月30日時点
※2:出典(グラム単価:https://www.kitco.com/kitco-gold-index.html、金の採掘量:https://www.gold.org/about-gold/gold-supply/gold-mining/how-much-gold)2021年3月30日時点
※3:NFT(Non-fungible token)とは、ブロックチェーン上に記録されるNon-Fungible Token(非代替性トークン)のことで、デジタル資産や権利などの所有や譲渡を記録するものです。

【メルコイン概要】
会社名:株式会社メルコイン / Mercoin, Inc.
設立日:2021年4月下旬(予定)
資本金:5,000万円(株式会社メルカリ100%子会社)
事業内容:暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発
代表者名:青柳直樹
主要役員:
取締役CISO 曾川景介
取締役 伏見慎剛
監査役 栃木真由美
所在地:〒106-6118 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー

(Source:メルカリEngadget日本版より転載)

関連記事
Coinbaseが4月14日に直接上場へ、4月6日に最新の財務情報発表予定
PayPalが仮想通貨でオンライン精算できる新機能を導入、まずは米国で
Visaが米ドルステーブルコイン「USDC」で仮想通貨による決済を開始
テスラがEV販売でビットコイン決済を米国で受け付け開始、2021年中に他国でも
コインチェックが「NFT」を取引できるマーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」を3月24日開始
ここ数週間で爆発的な人気のNFTのマーケットプレイスOpenSeaがA16Zから約25億円調達
イラスト作品をNFTアートとして発行できる「NFT Studio」が3月22日公開予定、クレジットカード決済で購入可能
double jump. tokyoとスクウェア・エニックスが「ミリオンアーサー」NFTコンテンツ開発で協業
国内NFT市場形成に向けdouble jump.tokyo、CryptoGames、スマートアプリが業務提携、NFT発行から販売まで支援
メルカリのスマホ決済サービス「メルペイ」がマイナンバーカードのJPKIによるリアルタイムの本人確認に対応
ビットコイン・イーサリアムを「楽天キャッシュ」にチャージ(出金)し、楽天ペイや楽天ポイントカードで利用可能に
マスターカードが暗号資産に年内対応と発表、中央銀行デジタル通貨(CBDC)で中央銀行数行とも連携
「日本から世界で勝負する」国産ブロックチェーンPlasm NetworkがBinanceらから2.5億円調達
異なるブロックチェーンやアプリ間でNFTを相互利用するための共通仕様「Oct-Pass」を策定開始

カテゴリー:フィンテック
タグ:暗号資産 / 仮想通貨(用語)SEC / 米証券取引委員会(用語)NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)中央銀行デジタル通貨(CBDC)Bitcoin / ビットコイン(用語)ブロックチェーン(用語)Paypal(企業)メルカリ / Mercari(企業)メルペイ(製品・サービス)日本(国・地域)

メルカリが暗号資産・ブロックチェーン領域参入、新会社「メルコイン」は暗号資産交換業者として申請予定

メルカリが暗号資産・ブロックチェーン領域参入、新会社「メルコイン」は暗号資産交換業者として申請予定

メルカリが新会社「メルコイン」の設立を4月下旬に設立します。メルカリの子会社として、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行い、暗号資産交換業者の新規登録も行います。

発表によると、メルカリグループは「メルコイン」を「メルカリ」「メルペイ」に続く事業の柱に育てる方針。今後は売上金のビットコインでの受け取り機能の提供や、メルペイで決済・送金・与信・資産運用・暗号資産を1つのウォレットで管理できる機能を提供します。

また、価値交換を実現するブロックチェーン技術に取り組むことで、NFT(Non-fungible token)等、これまでのモノ・金に限らず、サービスやデジタルコンテンツなどのあらゆる価値を誰もが簡単に交換できる新しい取引の形の創出を目指すといいます。

メルカリが暗号資産・ブロックチェーン領域参入、新会社「メルコイン」は暗号資産交換業者として申請予定

暗号資産をめぐっては、米国の決済サービス大手「ペイパル」が自社ウォレットでの取り扱い開始を発表したほか、テスラが自社製品の購入代金にビットコインを利用可能とするなど、各社の参入が相次いでいます。

2020年末からの価格高騰を受けて、暗号資産全体の時価総額は200兆円を超え、金の時価総額(1200兆円)の6分の1に迫っています。また、直近では米フィデリティがビットコインETFの承認申請をSEC(米証券取引委員会)に行ったことでも話題を集めています。

発表の全文は下記の通りです。

株式会社メルカリ(以下、メルカリ)は、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行うことを目的に、メルカリの子会社として2021年4月下旬(予定)に株式会社メルコイン(以下、新会社)を設立することを決定いたしましたので、お知らせいたします。
※メルコインは、今後、暗号資産交換業者の新規登録申請を行う予定です。

暗号資産は、現在、暗号資産全体の時価総額が200兆円※1を超え、これまで採掘された金の時価総額約1200兆円[※2]の6分の1の規模に迫るなど、大きな存在になりつつあります。国内の暗号資産やブロックチェーンの領域においては、2017年4月に「資金決済に関する法律」が改正され、以降、様々な事業者が暗号資産交換業に参入、資産運用を中心に活用が広がっています。一方、グローバルな環境においては、資産運用に加え、決済や送金での利用等、様々なシーンで暗号資産やブロックチェーンの活用が広がっており、国内においてもこれまでに無い新たな顧客体験を提供できる可能性があると考えています。

新会社を設立し、暗号資産事業に取り組むことで、「メルカリ」においては、売上金のビットコインでの受取り機能の提供や、「メルペイ」においても決済・送金機能の提供に留まらず、与信、暗号資産・資産運用の機能を一つのウォレットで提供していく等、より簡単に金融サービスを利用できる環境を構築していきます。

また、価値交換を実現するブロックチェーンの技術に取り組むことで、NFT(Non-fungible token)[※3]等、これまでのモノ・お金に限らず、サービスやデジタルコンテンツなどのあらゆる価値を誰もが簡単に交換できる新しい取引の形を創出し、さらなる顧客体験の向上や顧客基盤の拡大に繋げていきたい考えです。メルカリは、メルコインにおける新たな挑戦を通じて、メルカリグループの新たな柱となりうる事業の企画・開発を目指してまいります。

※1:CoinMarketCap(https://coinmarketcap.com/ja/)2021年3月30日時点
※2:出典(グラム単価:https://www.kitco.com/kitco-gold-index.html、金の採掘量:https://www.gold.org/about-gold/gold-supply/gold-mining/how-much-gold)2021年3月30日時点
※3:NFT(Non-fungible token)とは、ブロックチェーン上に記録されるNon-Fungible Token(非代替性トークン)のことで、デジタル資産や権利などの所有や譲渡を記録するものです。

【メルコイン概要】
会社名:株式会社メルコイン / Mercoin, Inc.
設立日:2021年4月下旬(予定)
資本金:5,000万円(株式会社メルカリ100%子会社)
事業内容:暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発
代表者名:青柳直樹
主要役員:
取締役CISO 曾川景介
取締役 伏見慎剛
監査役 栃木真由美
所在地:〒106-6118 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー

(Source:メルカリEngadget日本版より転載)

関連記事
Coinbaseが4月14日に直接上場へ、4月6日に最新の財務情報発表予定
PayPalが仮想通貨でオンライン精算できる新機能を導入、まずは米国で
Visaが米ドルステーブルコイン「USDC」で仮想通貨による決済を開始
テスラがEV販売でビットコイン決済を米国で受け付け開始、2021年中に他国でも
コインチェックが「NFT」を取引できるマーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」を3月24日開始
ここ数週間で爆発的な人気のNFTのマーケットプレイスOpenSeaがA16Zから約25億円調達
イラスト作品をNFTアートとして発行できる「NFT Studio」が3月22日公開予定、クレジットカード決済で購入可能
double jump. tokyoとスクウェア・エニックスが「ミリオンアーサー」NFTコンテンツ開発で協業
国内NFT市場形成に向けdouble jump.tokyo、CryptoGames、スマートアプリが業務提携、NFT発行から販売まで支援
メルカリのスマホ決済サービス「メルペイ」がマイナンバーカードのJPKIによるリアルタイムの本人確認に対応
ビットコイン・イーサリアムを「楽天キャッシュ」にチャージ(出金)し、楽天ペイや楽天ポイントカードで利用可能に
マスターカードが暗号資産に年内対応と発表、中央銀行デジタル通貨(CBDC)で中央銀行数行とも連携
「日本から世界で勝負する」国産ブロックチェーンPlasm NetworkがBinanceらから2.5億円調達
異なるブロックチェーンやアプリ間でNFTを相互利用するための共通仕様「Oct-Pass」を策定開始

カテゴリー:フィンテック
タグ:暗号資産 / 仮想通貨(用語)SEC / 米証券取引委員会(用語)NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)中央銀行デジタル通貨(CBDC)Bitcoin / ビットコイン(用語)ブロックチェーン(用語)Paypal(企業)メルカリ / Mercari(企業)メルペイ(製品・サービス)日本(国・地域)

ディーカレットが67億円調達、民間発行デジタル通貨と企業独自のスマコン実装が可能なプラットフォーム開発目指す

ディーカレットが67億円調達、民間発行デジタル通貨と企業独自のスマコン実装が可能なプラットフォーム開発目指す

暗号資産(仮想通貨)などデジタル通貨の取引・決済を担う金融サービス事業を手がけるディーカレット(DeCurret)は3月23日、第三者割当増資による総額67億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、筆頭株主のインターネットイニシアティブ、KDDI、日本電信電話(NTT)、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、ゆうちょ銀行、綜合警備保障(ALSOK)、三菱商事、SBIホールディングス、セコムの計10社。

調達した資金により、民間発行デジタル通貨の実現と企業独自のスマートコントラクトの実装を可能にする二層構造デジタル通貨プラットフォームや、ブロックチェーンを利用したあらゆるデジタル価値の交換プラットフォームの開発体制を強化し、事業加速につなげる。

ディーカレットが67億円調達、民間発行デジタル通貨と企業独自のスマコン実装が可能なプラットフォーム開発目指す

日本におけるデジタル通貨のリーディングカンパニーを目指す同社は、2020年6月よりデジタル通貨勉強会、その後継となるデジタル通貨フォーラム(現在の参加企業数55社以上)の事務局を務め、デジタル通貨実現のための取組みを実施してきた。

世界では中央銀行デジタル通貨(CBDC)や法定通貨を価値の裏付けとした暗号資産の発行など、デジタル通貨の実現に向けた動きが拡大しているという。デジタル通貨プラットフォーム開発や企業とのパートナーシップをさらに強化し、一体となってデジタル通貨の世界を実現するべく、今回の増資を実施した。

関連記事
KDDIグループがブロックチェーン活用のP2P電力取引の事業成立要因を検証開始
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.25~10.31)
マスターカードが暗号資産に年内対応と発表、中央銀行デジタル通貨(CBDC)で中央銀行数行とも連携
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.8.2~8.8)
ALSOKも出資のディーカレットが32億円調達、仮想通貨の決済技術開発にアクセル踏む

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:暗号資産 / 仮想通貨(用語)資金調達(用語)中央銀行デジタル通貨(CBDC)ディーカレット日本(国・地域)

マスターカードが暗号資産に年内対応と発表、中央銀行デジタル通貨(CBDC)で中央銀行数行とも連携

米マスターカードは今年から暗号通貨のサポートを追加することを発表しました。

マスターカードによれば、暗号通貨を自社ネットワーク内で取り扱うことにより、より多くの加盟店で新しい支払い方法が提供できるとしています。また、暗号通貨と従来の通貨の変換の必要がなくなるため、効率性も向上します。

なお、現時点ではマスターカードがどの暗号通貨を取り扱うかは発表されていません。これについては、コンプライアンス対策などの要件を今後検討するとしています。また世界の主要な中央銀行と連携することで、CBDCとよばれる新たなデジタル通貨の発行も検討しています。

暗号通貨をめぐる最近の動きとしては、PayPalがビットコインなど4銘柄に対応したことで、その流通性がさらに高まっています。またかつてはPayPalを所有していたイーロン・マスク氏の米テスラが15億ドル相当のビットコインを購入したことで、一時、同暗号通貨は史上最高値を記録しました。

一方で、マスターカードは「この動きは暗号通貨の購入を促進するものではありません」と説明しています。まだまだ暗号通貨がどう取り扱われるのかについては不透明ですが、着実にその足元を踏み固めているような印象も受けます。

Engadget日本版より転載)

関連記事
テスラが約1578億円相当のビットコインを購入、将来的に仮想通貨での支払いも検討
Geminiがビットコインリワード付きのクレジットカードを発表
仮想通貨ビットコインが23%、イーサリアムが29%の大幅下落、それでも過去の価格を上回る
PayPalが仮想通貨の対応やHoneyの統合など2021年のデジタルウォレット計画の詳細を公表
仮想通貨取引所Coinbaseが米国でデビットカード発行へ、Visaと提携
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.4~10.10)
CoinbaseがVisaの主要メンバーとなりデビットカード利用を促進

カテゴリー:フィンテック
タグ:暗号資産 / 仮想通貨(用語)中央銀行デジタル通貨(CBDC)Tesla / テスラ(企業)Paypal(企業)ブロックチェーン(用語)Mastercard(企業・サービス)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.25~10.31)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.25~10.31)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年10月25日~10月31日の情報をまとめた。

トヨタシステムズとディーカレット、デジタル通貨による福利厚生に関する実証実験をトヨタシステムズ社内で実施

トヨタグループのITソリューション企業「トヨタシステムズ」と、暗号資産取引所「DeCurret」運営のディーカレットは10月26日、デジタル通貨に関する実証実験を共同で開始したことを発表した

今回の取り組みは、トヨタシステムズ全社員2500名が参加する大規模なもの。ディーカレットが構築する「ブロックチェーン上でデジタル通貨を発行・管理するプラットフォーム」を活用し、同実証実験用の独自デジタル通貨を発行。トヨタシステムズは、同社社員向けの福利厚生における決済処理や自動化にこのデジタル通貨を利用する。実験では、決済業務の効率化・迅速化におけるデジタル通貨、ブロックチェーンによる決済やそのデータの記録・管理、スマートコントラクトの基本機能による自動実行などの技術検証を行う。

トヨタシステムズは、トヨタ自動車とそのグループを支援するするITソリューションおよびシステム開発の中核企業として、企画・提案から開発・運用まで一貫したトータルサービスを提供。今回は、新たにブロックチェーンやデジタル通貨を活用したソリューション研究のために、技術的な実証実験をディーカレットと共同で実施することにしたという。トヨタシステムズとディーカレット、デジタル通貨による福利厚生に関する実証実験をトヨタシステムズ社内で実施具体的には、同社社員に対して、実証実験専用カタログギフトや福利厚生ポイントへの交換に利用できるデジタル通貨を福利厚生として付与。この交換には、全社員に用意した専用ウォレットから商品・ポイントのウォレットに対して、取引額に応じたデジタル通貨が即座に送付される仕組み・スマートコントラクトを採用しており、その検証とともに有効性を確認する。ブロックチェーンにおけるスケーラビリティの課題や、大規模な実験参加者による業務運用性課題などを検証していく。

実証実験に利用されるデジタル通貨の有効期間は6ヵ月以内。また、実証実験ではデジタル通貨と日本円との交換は行えない。

デジタル通貨発行プラットフォームを提供するディーカレットは、暗号資産取引所の開業を目標に、2018年1月設立。2019年3月に金融庁の認定を受け、4月に暗号資産交換業者として開業した。同社は暗号資産取引所の運営にとどまらず、新しい時代の金融プラットフォームサービスを目指している。

デジタル通貨発行プラットフォームについては、2020年2月よりKDDI、auフィナンシャルホールディングス、ウェブマネー、ディーカレットの4社で、ブロックチェーン上に発行したデジタル通貨の処理を自動化する共同検証の実施を開始している。デジタル通貨の発行から、流通、償却になど業務プロセスの一部と決済処理をスマートコントラクトにより自動化し、検証・実証実験を続けてきた。これらの共同検証は、ディーカレットの「デジタル通貨ビジネスの推進および新たな顧客体験価値の創出」に関する取り組みの一環となる。

カンボジア国立銀行がソラミツと共同開発の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を正式運用開始

カンボジア国立銀行(NBC)ソラミツは、2019年7月よりカンボジア全土でパイロット運用を行ってきた中央銀行デジタル通貨(CBDC)「バコン」の正式運用を発表した。10月28日より、カンボジアのリテール決済および銀行間決済の基幹システムとして運用を開始済み。カンボジア国立銀行がソラミツと共同開発の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を正式運用開始バコンは、カンボジアの法定通貨リエルをトークン化したデジタルリエル(KHR)または米ドル(USD)を使用し、即時および最終的な取引を可能にするCBDC決済システム。NBCが、ソラミツのブロックチェーン技術「Hyperledger Iroha」(ハイパーレジャーいろは)を採用し、ソラミツと共同開発したもの。

テスト運用では、カンボジア最大の商業銀行アクレダを含む9行と決済事業者を接続し、日間数千人程度のユーザー送金や決済を処理してきた。その後、従来の決済システムと連携し、シームレスかつ安全に機能している。2020年第3四半期の時点では、カンボジア全土の18の金融機関がすでにバコンを採用している。

カンボジア国民にとってバコンは、送金手数料不要かつ安全でより速く支払いを行えるデジタル通貨となる。カンボジア国内の電話番号を持ち、スマートフォンアプリを使用できれば、デジタルリエルまたは米ドルのウォレットを保有することで、電話番号の指定またはEMVCo互換QRコードをスキャンし、個人間や法人間での送金や店頭などでの支払いが行える。

ちなみにEMVCoとは、American Express、Discover、JCB、MasterCard、銀聯(UnionPay)、Visaによるカード決済の安全と普及促進を推進する団体で、新しいグローバルなQRコード決済仕様などを定めている。

NBCは、古代クメール帝国の州立寺院「バコン寺院」にちなみ命名したプロジェクトバコンを2016年に発足、CBDCの検討を進めてきた。その目的は、デジタル決済システムによる金融機関の効率改善、負担軽減、自国通貨リエルの使用促進という。

そして何よりも重要なのは、自国内の金融サービスの行き届いていない国民の金融包摂を強化する可能性を探るためだったという。日本のように、国民のほとんどが銀行口座を持つ国はまれであり、そうした国々では銀行口座を必要としない金融システムが必要とされている。

システムの概要

バコンは、NBC運営のバコン・コア、金融機関に割り当てた決済ゲートウェイ、金融機関が個人・企業などに割り当てたウォレットで構成される。金融機関はデスクトップアプリを経由してバコン・コアにアクセスし、個人・企業はiOSアプリまたはAndroidアプリを介してウォレットにアクセスする。カンボジア国立銀行がソラミツと共同開発の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を正式運用開始

バコン・コアは、許可型のコンソーシアム・ブロックチェーンであるソラミツのブロックチェーン技術Hyperledger Irohaを利用しており、複数のノードに格納されている改ざん不可能な時系列チェーンにすべてのトランザクションを記録する。バコン・コアはNBCが管理するノード上の分散台帳に記録されるとともに、同一の分散台帳が特定金融機関と共有され、冗長性と強靭性が保証される。

Hyperledger Irohaは、一部のノードに障害がある場合や信頼できないノードがある場合でも、元帳の安全性を保証する独自のコンセンサスアルゴリズム「YACコンセンサス」を備え、分散台帳全体のトランザクションを検証し、不正のリスク、二重支払いの問題、およびカウンターパーティのリスクを排除する。カンボジア国立銀行がソラミツと共同開発の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を正式運用開始

マクロ経済の観点から、現在のバコンは中立という。デジタルリエルは現金に取って代わるものではなく、利子もない。デジタルリエル・ウォレットは従来の銀行口座に裏打ちされているため、取り付け騒ぎと流動性リスクは抑えられるという。

また、金融機関は従来の金融システムと同様、デューデリジェンス(Due Diligence)を実施し、本人確認(KYC)規制を遵守する。バコンは多要素認証の本人確認システムをサポートしている。基本はスマホのSMS検証を使用して少額決済が可能なバコン口座を開設できるが、高額決済可能なバコン口座の開設には、政府IDを登録し厳格な本人確認を行う必要がある。

ソラミツの「Hyperledger Iroha」

ソラミツは、オープンソースの許可型ブロックチェーンプラットフォームであるHyperledger Irohaのオリジナル開発者であり、中心的開発貢献者。企業や金融機関のデジタル資産管理の支援を目的としたHyperledger Irohaは現在、Linux Foundation運営のクロスインダストリー(異業種連携)共同開発プロジェクト「Hyperledger」の一部となっている。またこのHyperledgerプロジェクトにおいて、Hyperledger Fabricなどに続いてバージョン1.0リリースに到達した4番目のブロックチェーンプロジェクトとなっている。

Hyperledger IrohaはC++で記述されており、高いパフォーマンスと信頼性が必要なユースケースや組み込みシステムに最適とされる。

ソラミツは、Hyperledger Irohaを使用し、デジタル資産、ID、契約を管理するためのモバイルアプリケーションなど、ユーザー向けのサービスを作成している。Hyperledger Irohaを活用することで、より安全で効率的な社会の構築に貢献していくという。Hyperledger Irohaのオリジナル開発者・主要な貢献者として、今後もHyperledger Irohaの技術およびビジネスサポートについても提供していく。

ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」がゲームを作成できるツールの完成を発表

中国・香港拠点のゲーム開発会社「Animoca Brands」(アニモカブランド)の子会社TSB Gamingは10月31日、ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」でゲームを作成できるツール「Game Maker」の完成を同社ブログにおいて発表した

ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」がゲームを作成できるツールの完成を発表The Sandboxは、ブロックチェーンベースの仮想空間(メタバース)にあたる、コミュニティ主導型ゲームおよびゲーム作成プラットフォーム。現在開発中で、2020年後半にローンチ予定だ。TSB Gamingは、その一部として3Dボクセル(ブロック)アセットを作成できる「VoxEdit BETA」と、VoxEditで作成されたゲーム内アセットを取引できる分散型マーケットプレイスを公開しているほか、メタバース内で3Dゲームを作成できるビジュアルスクリプトツールボックスGame Makerのアルファ版を公開していた。

また、The Sandboxは、ユーティリティトークンSANDを利用可能。SANDは、暗号資産Ethereum上で発行されたERC-20準拠トークンで、メタバースにて利用できる主要トークンとなる。暗号資産取引所BinanceのIEOプラットフォームBinance Launchpadを通じ、300万ドル(約3億1700万円)相当のSANDが販売され、すでに上場も果たしている。

これらによりThe Sandboxユーザー(コンテンツ制作者)は、アセットを使用しゲームを作ったり、他人の作ったゲームをプレイしたりできる(ゲーム体験)。また、所有する土地(LAND)やキャラクター、アイテムなどデジタルアセットについても、NFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)としてマーケットプレイスにて売買可能(収益化可能)となっている。

ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」がゲームを作成できるツールの完成を発表Game Makerは、無料で3Dゲーム体験を作ることができるツールという位置付けだ。

Game Makerでは、初めてゲームを作る際にイチからすべて作ることも可能だが、テンプレートとして用意されているアセット組み込み済みLANDも利用できる。ゲーム体験の規模に合わせて、LANDのサイズや湖、砂漠、低地、草原、南極、ジャングルといったテーマの選択が可能だ。

また、ゲームとして重要な要素となるルールや出現するアセットとその希少性、勝利条件など、細かい設定も行える。ゲームには欠かせないNPC(ノンプレイヤーキャラクター)も設定できる。NPCは、味方や単なる住民・農家などゲームに応じたキャラクターを用意できるほか、NPCを利用したクエストの作成や、NPCに設定するセリフによる質問なども可能であり、作り込めば作り込むほど本格的なゲームを制作できるという。NPCは必ずしも友好的なキャラクターとは限らず、敵対するNPCの設置も行える。

ゲームの主人公となる自分のアバターについても、強いあるいは弱いアバター、動きが速いもの、ジャンプ力のあるものなど、様々なパラメターを設定可能。その他にも、ゲームに必要なアイテム集めなど、あらゆる要素が用意されているので、詳しくはブログをチェックしていただきたい。

The Sandboxは、Game Maker以外にも、The Sandbox内で使用できるアセットとして有名キャラクターとの提携についても発表を行っている。10月29日には、世界的に有名なキャラクターである「The Smurfs」(スマーフ)との契約の締結を発表したばかりだ。

ブロックチェーンゲームプラットフォーム「The Sandbox」がゲームを作成できるツールの完成を発表ユーザーはThe Sandbox内のスマーフのLANDにてゲームをプレイできるほか、スマーフをテーマにしたアセットを購入し、独自にゲームが作れるようになるなど、新たなゲームの世界が登場する予定。

The Sandboxは、いずれもSANDトークンを中心にした新しいゲーム体の世界が構築できる、これまでにはないプラットフォームになることは間違いなさそうだ。

関連記事
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.18~10.24)
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.11~10.17)

カテゴリー: ブロックチェーン
タグ: オープンソース / Open Source(用語)The Sandboxソラミツ中央銀行デジタル通貨TSB GamingディーカレットトヨタシステムズHyperledgerHyperledger IrohaメタバースLinux Foundation

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.11~10.17)

学習サービスPoL運用のtechtecが英Aaveより資金調達、日本発DeFiプロダクト構築を目指す

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年10月11日~10月17日の情報をまとめた。

学習サービスPoL運用のtechtecが英Aaveより資金調達、日本発DeFiプロダクト構築を目指す

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL」(ポル)を運営するtechtecは10月15日、英ロンドン拠点のAave(アーベ)より資金調達を実施したと発表した。DeFi(分散型金融)によるレンディングプラットフォームAaveの助成金プログラム「Aave Ecosystem Grants」からグラント(研究助成金)を獲得した日本初の企業となる。

techtecは今回の資金調達により、PoLに蓄積された学習者の学習データ「Learning Score」(ラーニングスコア。後述)を活用した、日本発のDeFiプロダクトを構築していくと明らかにした。

学習サービスPoL運用のtechtecが英Aaveより資金調達、日本発DeFiプロダクト構築を目指す

DeFiサービス大手のAaveは、主にレンディング領域でサービスを展開。Aaveは、ユーザーが預金者・借用者として参加できる、金融機関など中央集権的管理者がいない(ノン カストディアル)分散型金融サービスとなっている。預金者は預金により市場に流動性を供給し利息を得ることができ、借用者は固定金利または変動金利による方法で借り入れが行える。また、預金を担保にした借り入れも可能。

その他にも、無担保借り入れが可能なFlash Loans(フラッシュローン)や、自身の持つ与信枠を他者へ移譲するCredit Delegation(クレジットデリゲーション)といった先進的なサービスも提供している。

Aaveは2020年1月のメインネット公開以来、1日あたり1500億円超の流通額を誇る巨大市場を形成するDeFiサービスに成長。8月には、英金融行動監視機構(FCA。Financial Conduct Authority)より、「電子マネー機関」としてのライセンスを取得している。これによりAaveは、法定通貨とDeFiサービスへの直接的な接続が可能となった。

Aave Ecosystem Grantsは、DeFiエコシステムの拡大に取り組むべく、Aaveが2020年4月に開始した助成金プログラム。世界中のブロックチェーン企業対象に資金提供を行い非中央集権志向のプロダクトを育てることで、分散型金融の普及により金融民主化を促進させるのが狙いだ。Aave Ecosystem Grantsは、企業のみならず個人企業家など、あらゆる規模のチームやプロジェクトを対象に支援する。

「学習するほど金融サービスが受けやすくなる」DeFiサービスを構築

techtecは、この助成金プログラムの採択を受け、「学習するほど金融サービスが受けやすくなる」DeFiサービスの構築を進める。

同社提供中のサービスPoLは、日本で初めてオンライン学習にブロックチェーンを導入したeラーニングプラットフォーム。PoLのサービス上で蓄積された学習データは、ブロックチェーンに記録され改ざんが困難な状態で管理されている。techtecは、この学習データを「ラーニングスコア」と呼んでいる。

同社はラーニングスコアを活用し、学歴評価に代わる新たな評価軸を導入した「学習歴社会」の実現を目指している。ブロックチェーンに記録されたラーニングスコアは、真に正しい学習データを蓄積可能なため、学歴の詐称を防止することも期待できるとしている。

助成金により日本発のDeFiサービスの構築を目指すtechtecは、このラーニングスコアをDeFi(Aave)に接続し、学習するほど金融サービスが受けやすくなるサービスの提供を目指す。具体的には、DeFi市場の課題のひとつである過剰な担保率を解消するサービスの提供を行う予定という。PoLで学習することによって蓄積されたラーニングスコアを評価軸とし、DeFiを利用する際の担保率を一部PoLで肩代わりする。

まずはAaveとの接続を行い、Aaveを利用する際の担保率(借りる際の利子率)を通常よりも抑えられるか検証していく。

学習サービスPoL運用のtechtecが英Aaveより資金調達、日本発DeFiプロダクト構築を目指す

techtecは、今回海外から資金調達を行った理由についても明かしている。

これまで日本のスタートアップ(一般の企業も含め)は、日本が高度経済成長期を経てGDP世界第2位にまでのぼりつめたことから、日本国内だけでも「そこそこやれてしまう」状況にあったとtechtecはいう。しかし、日本は中国の後塵を拝しGDPは3位に転落。それでも3位だが、世界のスタートアップに目を向けると、中国はじめインドやシンガポールなどは、最初から世界を意識していることがわかる。また、GDPの伸び率の鈍化を見ても、このまま3位に甘んじていると「そこそこやれてしまう」ことは次第になくなっていくとtechtecは分析。そこでtechtecは、海外からの資金調達にこだわり、あえて世界で戦わなければならない市場を選択したという。

Securitizeがブローカー・ディーラーDTMを買収し、発行から流通市場までカバーするデジタル証券プラットフォームに

デジタル証券プラットフォームを提供する米Securitize(セキュリタイズ)は10月15日、Distributed Technology Markets(DTM)を買収するための最終契約を締結したと発表した

DTMは、米国証券取引委員会(SEC)および米金融取引業規制機構(FINRA)登録のブローカー・ディーラーであり代替取引システム(ATS)提供者。同社は、2020年にデジタル証券(セキュリティトークン)を含む私募証券のプライマリー発行とセカンダリー取引所提供の認可を取得している。今回の買収によりSecuritizeは、デジタル証券の発行から流通市場まですべてをカバーする唯一のデジタル証券プラットフォームとなる。

また、買収の一環としてSecuritizeは、米国の複数の州でマネートランスミッターのライセンスを持ちマネーサービス事業を展開するVelocity Platformの買収予定についても明らかにした。Velocity Platformの買収は規制当局の承認が必要という。買収条件は公表していない。

Securitizeがブローカー・ディーラーDTMを買収し、発行から流通市場までカバーするデジタル証券プラットフォームに

Securitizeは2017年に創業、セキュリティートークン、デジタル証券の発行と管理を行うプラットフォームをSaaSとして提供開始し、資本市場の効率化を目指してきた。同社プラットフォームは、株式、債券、不動産などデジタル証券の組成を可能にし、適格投資家により簡単に所有、管理、取引を可能にする。同社は2019年8月にSECからの認可も得ており、資金調達(STO)用のプラットフォームなども開発。すでに米国を中心に150社以上の顧客企業と契約をしている。

Securitizeはこれまで、Santander InnoVenture(現Mouro Capital)、MUFG、野村ホールディングス、SBI、ソニー・フィナンシャル・ベンチャーズ(SFV)など、世界大手の金融機関から3000万ドル以上の資金調達を行ってきた。また、本格的に日本市場でのデジタル証券事業を展開するために、日本の拠点としてSecuritize Japan(セキュリタイズジャパン)を設立している。

CryptoPieが実物の印鑑をデジタル化するブロックチェーン押印システム「Iohan」を開発

ブロックチェーン企業CryptoPieは10月12日、印章業創業98年の松島清光堂と共同で、印章文化とブロックチェーンなどデジタル技術を融合させた次世代押印記録システム「Iohan」を開発したと発表した。位置情報や回数、タイムスタンプなど関連情報とともに印鑑の押印事実をブロックチェーンに記録・共有させる特許出願技術を用いているという。

CryptoPieが実物の印鑑をデジタル化するブロックチェーン押印システム「Iohan」を開発

テレワークやDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みにより脱ハンコが話題に上がる中、非金融分野におけるブロックチェーンの社会実装を推進するCryptoPieは、印鑑のDX化に取り組む。印鑑のデジタル化は、電子印鑑などの普及により徐々に進んでいるものの、現状は印鑑と電子印鑑は二極化し、共存ができていない。CryptoPieは、その共存を目指す。

CryptoPieは印章店として老舗の松島清光堂と共同で、印影をデジタル化するのではなく、印鑑実物とデジタルが共存可能な世界を目指し、Iohanの開発を行ったという。

Iohanは、印鑑による押印事実を、位置情報やタイムスタンプと共にブロックチェーン上に保管できる。押印の履歴管理は、別途専用のスマホアプリによって管理するという。印鑑の押印事実を確保することで、印鑑が持つ「本人の意思表明」という本来の印鑑の使用方法を維持する。

また、Iohanはスマホアプリにより遠隔で押印事実を管理できることから、年老いた実家の両親など遠方の家族が不要な押印をしていないかなどの見守りや、悪徳業者による犯罪行為・詐欺行為の抑制など、さまざまなシーンでの活用が期待できるという。

Iohanは印鑑を廃止するのではなく、古くからの伝統的な印鑑による押印という文化とデジタルと結びつけることを目指した。Iohanの普及を通して、印章業界におけるDX化の課題解決が期待できるプロダクトであると、CryptoPieはIohan開発の思いを語っている。

今後両社は、Iohanをまずは業界内で普及させることに尽力し、印鑑とデジタルが共存する社会を目指す。また、将来は電子契約サービスとの連携も視野に入れ、アナログとデジタルそのものが共存可能な社会の実現を目標とするとした。

CryptoPieが実物の印鑑をデジタル化するブロックチェーン押印システム「Iohan」を開発

バハマ中央銀行が他国通貨と相互運用可能なCBDCを10月20日にも発行

バハマ中央銀行(CBOB。Central Bank of The Bahamas)は10月14日、一部地域で試験運用中だった同国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)「Sand Dollars」(サンド・ドル)の全国展開を10月20日より開始すると発表した。サンド・ドルは、他国の法定通貨と相互運用の計画があることも明らかにした。

バハマ中央銀行が他国通貨と相互運用可能なCBDCを10月20日にも発行
今回の発表は、CBOBとバハマ商工会議所・雇用者連盟(BCCEC)が10月14日に共催したオンラインイベント「プロジェクト・サンド・ドル:バハマの決済システム近代化イニシアティブ」(PROJECT SAND DOLLAR: A Bahamas Payments System Modernisation Initiative)内にて行われた。イベントは、BCCECのFacebookページやZoomにて公開された。

発表によると、バハマ中央銀行のCBDCサンド・ドルは、2019年12月よりエグズーマ島やアバコ諸島など一部試験地区にて導入してきた。10月20日より、バハマの他の地域でも公認金融機関(AFI)を通じて、段階的にリリースしていく。

発表の際、バハマ中央銀行の電子ソリューション担当アシスタントマネージャーBobby Chen氏は、「(サンド・ドルは)現在はバハマ国内でしか使用されていませんが、最終的には他のグローバル通貨との相互運用が可能になるようなソリューションに取り組んでいます」と述べた。

また、Chen氏はサンド・ドルの発表に先立ち、バハマ国民にサンド・ドルを提供する権限が与えられた最初の6つのAFIを発表した。認可されたのは、Omni Financial Group、Cash and Go、Mobile Assist、Kanoo、Money Maxx、Sun Cashの6社となる。

バハマ中央銀行の銀行部門の責任者Cleopatra Davis氏によると、サンド・ドルの大きな特徴は、APIによるカードレスのオンライン機能という。それにより、物理的に事業所に出向くことなく、サンド・ドルにアクセスできるようになる。

そして、もうひとつの戦略的な機能は、サンド・ドルのオフライン機能。

「これは我々がハリケーン“ドリアン”のときに経験した重要なこと。電気がなくても、携帯電話のネットワークがなくても、どうやって取引を続けるのか? オフライン機能は、サンド・ドルのプラットフォームに組み込まれた重要な戦略的機能です」とDavis氏は述べた。

「また、他のウォレットと相互運用可能である必要があります。これは、私たちが取り組んでいる重要な戦略であり、具体的には銀行口座との間でサンド・ドルを移動できるようにします。それにより、CBDCは法定通貨に交換できます」と、相互運用性の必要性についても語っている。

2019年9月にバハマを襲った巨大ハリケーン「ドリアン」により、バハマの銀行ATMは数ヵ月に渡りダウンしてしまうというダメージを受けた。そのとき、携帯電話サービスはわずか数日で復旧したという。その経験からバハマは、自然災害に強い金融システムを必要としていた。バハマ中央銀行のCBDC導入計画は、すでに2018年に発表されていたが、災害によりCBDCの開発は急加速で進んだことになる。

サンド・ドルの開発には、CBDCソリューションを開発・提供するバハマのNZIA Limitedとシンガポールのブロックチェーン企業Zynesisが協力している。

関連記事
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.4~10.10)
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.27~10.3)

カテゴリー: ブロックチェーン
タグ: CryptoPieSecuritizetechtecバハマ中央銀行(CBOB)
中央銀行デジタル通貨(CBDC)フィンテック

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.4~10.10)

暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.10.4~10.10)

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年10月4日~10月10日の情報をまとめた。

NTT Comがセキュリティインテリジェンスを売買する「ブロックチェーン型セキュリティ情報流通フレームワーク」の実証実験

NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は10月6日、セキュリティ対策に欠かせない情報セキュリティインテリジェンスを参加者間で売買し利活用するプラットフォーム「ブロックチェーン型セキュリティ情報流通フレームワーク」の実証実験の開始を発表した。同実験の参加者を募集する。

NTT Comが開発を進める「ブロックチェーン型セキュリティ情報流通フレームワーク」は、個人で活動するセキュリティエンジニアや企業が独自に入手したサイバー攻撃者のIPアドレスや悪質サイトのURLなど、これまでは入手が難しかったセキュリティ対策に有益な情報となるセキュリティインテリジェンスの売買が、プラットフォーム参加者間で可能となる。

NTT Comがセキュリティインテリジェンスを売買する「ブロックチェーン型セキュリティ情報流通フレームワーク」の実証実験

プラットフォームには、ブロックチェーン技術およびスマートコントラクトが採用されており、安心・安全なセキュリティインテリジェンスの売買が可能な仕組みが実装されている。参加者はセキュリティインテリジェンスを売ることができ、また流通するセキュリティインテリジェンスを購入し、自社サービスなどに利活用できる。

プラットフォームのメリットとして、参加者は取引されるインテリジェンスの流通状態と購入者のフィードバックが確認可能なため、セキュリティインテリジェンスに対する評価および利用状況(人気など)を把握できる。

また、参加者間で相互に情報共有を行えるため、そのままでは利活用が難しいセキュリティインテリジェンスを利用可能にする方法などを学習できる。

実証実験は、プラットフォームのさらなる改善に向け、参加者からのフィードバックを目的に実施される。参加希望者は、専用の応募フォームより申し込み可能。法人、個人を問わず参加できる。

  • 期間: 2020年11月30日~2021年3月31日
  • 応募方法: 応募フォームによる申し込み
  • 参加費用: 無料
  • その他: 参加者には同実験で利用可能なポイントを付与。ポイントを利用し、NTT Comが独自に提供するセキュリティインテリジェンスが購入可能

セキュリティインテリジェンスをビジネスへ展開

グループ会社であるNTTセキュアプラットフォーム研究所は、サイバー攻撃を継続的に収集・解析することで、最新のマルウェア感染の特徴を正確かつ効率的に特定する技術を創出してきた。

しかし昨今では、新たなタイプの攻撃やマルウェアの出現が非常に短いサイクルとなり、攻撃も複雑化するなど、サービスを創出することが単一の技術、単一の企業だけでは困難になっている。

そこで、同研究所はインテリジェンス創出技術の研究開発に着手し、NTTコミュニケーションズらと連携し、セキュリティインテリジェンスを総合リスクマネジメントサービス「WideAngle」へとビジネス展開をする。

一般的なセキュリティインテリジェンスは、サイバー攻撃防御用の情報を示す。同研究所のセキュリティインテリジェンスは、マルウェア感染時の通信先や感染者の通信先にかかわるIPアドレスやURLなどの情報で構成されている。

セキュリティインテリジェンスをビジネスへ展開するためには、悪性と判断した根拠情報や使用用途に関する情報を明示する必要がある。

同研究所では、おとりシステムであるハニーポットを用いて意図的に攻撃を受けて、マルウェアを収集する。ハニーポットへの通信を解析し、マルウェア感染の際に利用された脆弱性の情報を根拠情報として特定するとともに、マルウェア感染を防御するために有効な情報を特定するなど、他社では収集できない悪性サイトURLを特定。さらに、収集した悪性サイトURLを解析し、未知の悪性サイトURLを特定するという。

また、ハニーポットで収集したマルウェアを解析し調査することで潜在的な脅威を解明する。マルウェア感染によって発生する通信を解析し、追加のマルウェアを取得する際の通信先サーバーや、攻撃者が設置した指令サーバーなどを発見し、マルウェア感染の被害を抑制するために有効となる情報を特定することが可能だ。

マルウェアを解析する際に、解析環境におとりのウェブサイト管理者アカウント情報を配置しておくことで(ハニートークンという)、管理下のもとサイバー攻撃者に改ざんさせ、さらに最新の攻撃情報を収集できるという。

こうしたNTTセキュアプラットフォーム研究所で創出したセキュリティインテリジェンスが、NTT Comのサービスに現在活用されている。

今回の「ブロックチェーン型セキュリティ情報流通フレームワーク」による実証実験は、さらにその先にあるセキュリティインテリジェンスの創出方法を検討するものと見られる。

なお、プラットフォームの今後の展開は、同実験の結果を踏まえ、来年度以降の商用化を目指し改善に取り組む予定となっている。

国際決済銀行(BIS)・日銀ほか主要中央銀行がCBDCの基本原則や機能についての報告書を共同発表

世界各国の中央銀行から構成される国際決済銀行(BIS)は10月9日、日本銀行など主要中央銀行7行と共同で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の基本原則およびコアとなる特徴についてまとめた報告書を作成し発表。BIS公式サイトにて、報告書「中央銀行デジタル通貨:基本原則とコア機能」(Central bank digital currencies: foundational principles and core features)を公開した日本銀行仮訳も公開)。

なお同グループは、CBDCの基本原則と基本的な特徴を報告書にまとめたが、発行するか否かについて意見を示すものではないこと、CBDCの実現可能性に関する研究を継続するものの、発行をコミットするものではないことを明示している。

国際決済銀行(BIS)・日銀ほか主要中央銀行がCBDCの基本原則や機能についての報告書を共同発表

報告書の作成は、カナダ銀行欧州中央銀行日本銀行スウェーデン国立銀行スイス国立銀行イングランド銀行米連邦準備制度理事会(FRB)および国際決済銀行によるグループにて作成されたという。

中央銀行は、公共政策の目的の一環として、何百年もの間、信頼できる資金を国民に提供してきた。しかし、世界は暗号資産、ブロックチェーンの登場により変わりつつある。デジタル社会の中で、中央銀行は公共政策の目的を進化させ追求するために、デジタル通貨を国民に提供することの是非について積極的に研究している。

報告書では、いずれの法域においてもCBDCを検討するためには、一定の基準を満たす必要があるとして3つの基本原則を示した。当局はこれらを堅確に満たす必要があることを強調。

またこれらの原則に基づき、将来のあらゆるCBDCシステムが備えるべき基本的な特徴もまとめている。

  • オペレーションの完全性を維持するため、強靭性と安全性を備えなければならない
  • 利便性を有するほか、エンドユーザーが、非常に低いコストもしくは無償で利用できなければならない
  • 適切な基準や明確な法的枠組みによって支えられなければならない
  • 民間セクターが適切な役割を担い、競争やイノベーションが促進されなければならない

同グループに参加した各中央銀行のCBDCを検討する共通動機は、決済手段としての利用という。信頼されるマネーの供給は、中央銀行がその使命を実現し、広範な政策目的を支えるための中核的な方法と指摘。取引目的の現金利用の低下は、人々による中央銀行マネーへのアクセス低下という課題を生むほか、金融包摂、プライバシーにかかる権利についての懸念を高めかねない。現金が引き続き頻繁に使われている法域においても、この点でCBDCは、国内決済システムの強靭性および多様性を高めうるとしている。

またCBDCは、これまで現金では実現し得なかった機会を提供する可能性もあると指摘。利便性と利用可能性を備えたCBDCは、民間マネーの安全性が低い場合にはその代替を果たし、利用者へのプライバシー提供、違法な活動の抑制、財政給付の円滑化、あるいは「プログラマブル・マネー」の供給を実現するとしている。

しかし、こうした機会はトレードオフを伴う可能性があるほか、通貨への信認を脅かすなど中央銀行の任務遂行能力(マンデート)に関わりがない限り、中央銀行にとっては副次的な動機とした。

さらに、CBDCの導入は金融安定への含意を有しており、慎重に評価し管理する必要がある点を指摘。第一にストレス時の「デジタル逃避」の可能性、第二に銀行の資金調達へのより長期的な影響が含まれる点を挙げた。

CBDCの3つの基本原則の目的と内容

報告書は、中央銀行の公共政策の目的に貢献するために、CBDCと支援インフラが必要とする共通の3つの基本原則と主要な特徴を概説する。それにより、国際的な基礎的作業を前進させるとした。

報告書の基本原則は次のことを強調している。

  • 中央銀行は、CBDCを発行することで金融や金融の安定性を損なうべきではない
  • CBDCは既存の貨幣形態と共存し、これを補完する必要がある
  • CBDCはイノベーションと効率性を促進すべきである

中央銀行がCBDCの発行を検討する際に重要な基本原則は、共通の目的から導かれているという。

ひとつ目は、「害をおよぼさない」こと。中央銀行が供給する新たな形態の資金は、引き続き公共政策の目的の達成を支援すべきであり、中央銀行の通貨・金融の安定のための任務遂行能力(マンデート)を妨げたりしてはならない。

ふたつ目は、「共存」である。中央銀行には安定の責務があり、新しい領域では慎重に行動することとする。新しいもの(CBDC)と既存のもの(現金、準備金、決済口座)、それぞれ性質の異なる中央銀行マネーは、互いに補完し合い、公共政策の目的を支えるために強固な民間資金(たとえば商業銀行口座など)と共存すべき。また、中央銀行は現金に対して国民の需要がある限り、現金の提供と支援を継続すべきである。

最後は、「イノベーションと効率性」。法域内の決済システムの効率化を推進するための継続的なイノベーションと競争がなければ、利用者は、安全性の低い他の金融商品や通貨を採用する可能性がある。それは最終的には、経済・消費者に悪影響をおよぼし、金融および金融の安定性を損なう可能性がある。

さらに報告書では、これらの基本原則を満たすために、CBDCの制度、その基礎となるシステム、およびそれらが存在するためにより広範な制度的枠組みを網羅する、14の中核的特徴を特定し、記載している。

これらの基準をしっかりと満たし、同グループが(報告書に)設定した機能を提供するCBDCは、中央銀行が公共政策の目的を達成するための重要な手段となり得るとした。

ただし、中央銀行の懸念材料として、CBDCが銀行の資金調達や金融仲介に与える悪影響の可能性は、法定通貨の不安定化の可能性を含め、常にあるという。

中央銀行によるCBDC発行の決定は、これらのリスクがCBDCの設計に組み込まれたセーフガードと、より一般的な金融システム政策との何らかの組み合わせを通じて管理できるという、十分な情報を得た上での判断にかかっているという。

CBDC発行の可能性は、共通の原則および特徴に関する合意とともに、CBDCに関する将来の国際協力、知識共有および実験の余地がかなりあることを意味している。中央銀行によるCBDCの同時研究開発は、意図しない結果を回避しつつ、G20のロードマップ「CPMI第二次報告書」の一部として、国際送金を改善する方法を探求することもできるという。

CBDCの潜在的な市場構造への影響、金融の安定性への影響、および潜在的な緩和策を理解することは、同グループのさらなる作業領域であるとした。CBDCの詳細については、報告書を一読することをお勧めする。

日本銀行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する方針を発表

日本銀行は10月9日、世界的に話題となっている中央銀行デジタル通貨(CBDC)についての新たな方針を発表。「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を公表した

世界的には、CBDC発行に向けて具体的に動いている国がいくつか存在する。こうした国では、国民の現金使用比率が顕著に低下、あるいは自国通貨や決済に関するインフラが未整備であるため、最新デジタル技術を全面採用しイチから決済制度を構築したほうが効率的など、差し迫った事情がある。

日本にはそのような事情は存在しないため、日銀は、現時点でCBDCを発行する計画はないと明言。

しかし今後、よりCBDCに対する社会のニーズが高まる可能性もあり、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、将来の環境変化に的確に対応できるよう、しっかりとした準備が重要と考えているという。こうした認識のもと、企業や個人の利用を想定する「一般利用型CBDC」について、日本銀行の取り組み方針を示したとしている。

日本銀行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する方針を発表

CBDCには、「一般利用型CBDC」のほかに、大企業・官公庁・地方自治体・金融仲介機関など大口金融取引での利用が想定される「ホールセール型CBDC」のふたつの形態があるとされている。

日銀は、CBDC導入時に期待されるCBDCの機能・役割として、「現金と並ぶ決済手段の導入」「民間決済サービスのサポート」「デジタル社会にふさわしい決済システムの構築」を挙げている。

一般利用型CBDCが導入される可能性について日銀は、現金流通高の対名目GDP比率が20%程度と高いことなどから、一般利用型CBDCを導入する必要性は当面生じないとの見方も少なくないと指摘。

仮に将来、暗号資産や民間のデジタルマネーの影響で現金の流通が大きく減少する状況が生じた場合、一方で民間のデジタルマネーが現金の持つ機能を十分に代替できない状況においては、現金と並ぶ決済手段として、一般利用型CBDCを提供することが考えられるという。

ただし、クリーンで偽札も少ない銀行券に対し一貫して高い信頼が寄せられており、日銀は現金に対する需要がある限り、現金の供給についても責任をもって続けていくとした。

また、現金の流通が現状のままの場合においても、決済システム全体の安定性・効率性を高める観点から必要であれば、民間決済サービスをサポートするためにCBDCを発行することが適切となる可能性があるという。現状、暗号資産を決済手段とした場合、ボラティリティの影響が大きく実用的ではないとされていることから、法的に問題のない安定したステーブルコインの登場が望まれているが、その代替案として一般利用型CBDCの利用も考えられる。

これらに加え、より広い観点から、日銀がCBDCを発行したうえで、民間事業者の創意工夫により様々なサービスを上乗せして提供することなどが、デジタル社会にふさわしい安定的・効率的な決済システムの構築に繋がる可能性も考えられるとした。

一般利用型CBDCの発行形態と基本的特性

一般利用型CBDCを発行する場合は、「間接型」の発行形態が基本であり、中央銀行と民間部門による決済システムの二層構造を維持することが適当であるとした。

また、日銀は「間接型」の一般利用型CBDCに必要な基本的特性についても言及。

まず、CBDCを誰でも使えるものとするため、決済や送金時に利用する端末、カードなどの利用対象者を制限することがないよう、簡便性や携帯性に関する設計面を工夫した「ユニバーサルアクセス」が必須であるとした。

CBDCを安心して使えるものとするためには、偽造抵抗力を確保し、各種不正を排除するよう、「セキュリティ」を高める取り組みが必要である。また、CBDCは、エンドユーザーが24時間365日、常に利用できる「強靱性」を持った仕組みも必要となる。システム障害や通信障害を想定しオフライン環境下でも利用できる仕組みを確保することも、自然災害の多い日本においては重要なポイントになる。

さらにCBDCには、現金と同様に決済のファイナリティ(支払完了性)および「即時決済性」が求められる。多数のユーザーによる高頻度の決済を迅速に完了させるためには、システム面での十分な処理性能と将来の利用増加に備えた拡張性が必要となる。

運用システムについては、民間決済システムなどとの「相互運用性」を確保していることや、将来の民間決済サービスの高度化などに適応するために柔軟な構造となっていることも重要であるとした。

今後の取り組み方針

日銀は、CBDCに対する今後の取り組み方針として、実証実験を行っていくことも明らかにした。

日本銀行が中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する方針を発表

今後は、これまでのリサーチ中心の検討ではなく、実証実験を実施し、具体的・実務的な検討を行っていくとした。まずは、「概念実証」(PoC。Proof of Concept)のプロセスを通じて、CBDCの基本的な機能などについて技術的に実現可能かどうかを検証する。PoCの結果、必要であればパイロット実験の要否についても検討するという。

PoCは段階的に行っていく予定で、システム的な実験環境を構築し、決済手段としてのCBDCの中核をなす、発行・流通(送金)・還収の基本機能に関する検証を行う「概念実証フェーズ1」については、2021年度の早い時期に開始することを目指す。

「概念実証フェーズ2」では、フェーズ1で構築した実験環境にCBDCの周辺機能を付加して、その実現可能性などを検証する。

PoCを経て、さらに必要と判断されれば、民間事業者や消費者が実地に参加する形での「パイロット実験」を行うことも視野に入れて検討していくとした。

制度設計面の検討

日銀はPoCと並行して、「中央銀行と民間事業者の協調・役割分担のあり方」「CBDCの発行額・保有額制限や付利に関する考え方」「プライバシーの確保と利用者情報の取扱い」「デジタル通貨に関連する情報技術の標準化のあり方」など、制度設計面の検討も順次行っていくという。

こられCBDCについて日銀は、引き続き、他の中央銀行と連携しながら、CBDCの基本的な特性や実務面に及ぼす影響について理解を深め、自らの検討に活かしていく。

また、CBDCの導入については広範かつ大規模な取り組みが必要となることから、銀行やノンバンク決済事業者、ITや法律の専門家、関係当局など、内外関係者と協力し、様々な知見を今後の検討に活かすことを重視していくとした。

なお、各項目の詳細については「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」の全文がPDFにて公開されているので、そちらを参照いただきたい。

関連記事
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.27~10.3)
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.9.20~9.26)

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NTTコミュニケーションズNTTセキュアプラットフォーム研究所国際決済銀行(BIS)セキュリティ中央銀行デジタル通貨(CBDC)日本銀行フィンテック