DeFi史上最大のハッキング、Axie InfinityのRoninネットワークから約765億円相当のイーサとUSCコイン流出

2021年、a16zから30億ドル(約3688億円)の評価額で資金を調達したブロックチェーンゲーム大手のAxie Infinity(アクシー・インフィニティ)は、壊滅的な1週間を過ごしていた。米国時間3月29日朝までまで、同社がそのことを知らなかっただけで。

人気のPlay to Earn(P2E、プレイトゥアーン=プレイして稼ぐ)タイトルの、イーサリアムのサイドチェーンであるRonin(ロニン、RON)が悪用され、17万3600イーサ、つまり約5億9700万ドル(約733億6000万円)相当と、2550万ドル(約31億3400円)相当のステーブルコインのUSCコイン(USDC)が盗まれたと同社は発表した。奇妙なことに、このエクスプロイトは6日前の米国時間3月23日に発生したが、3月29日まで発見されなかったとRoninのデベロッパーは公式ブログへの投稿で共有した。

今回のハッキングは現在の価値で合計約6億2250万ドル(約765億円)に上り、DeFi詐欺、ハッキング、エクスプロイトを追跡するDeFiYield REKTデータベースによると、史上最大の分散型金融ハッキングとなる。2021年8月にPoly Networkがハッキングされ、当時、暗号資産史上最大だったエクスプロイトで6億200万ドル(約740億円)が流出したが、今回のエクスプロイトはそれを上回った。

Roninは、特にAxie Infinityをサポートするサイドチェーンとして作られた。Axie Infinityは最も有名なイーサリアム対応P2Eの1つで、2021年に急成長を遂げた。当初は2021年末までに25万ユーザーという「アグレッシブな目標」を想定していたが、その目標を1000%上回り、約290万ユーザーのコミュニティが形成された。

Etherscanのオンチェーンデータによると、今回のハッキングは、イーサのトランザクションUSDCトランザクションの2回にわたって発生したという。攻撃者はハッキングした秘密鍵を使って、不正な引き出しを行ったと同社は書いている。「今朝、ブリッジから5k ETHを引き出せなくなったというユーザーからの報告を受けて、この攻撃を発見しました」とのこと。

同社チームは「犯罪者を裁きにかけるために、さまざまな政府機関と連携しています」と述べている。

Ronin上のイーサとUSDCの預金はブリッジコントラクトから流出したが、同ネットワークはAxie Infinityとその親会社Sky Mavisの関係者と協力して、ユーザーの資金が永久に失われないように最善の方法を決定するため働いていると述べた。「Ronin上にあるAXS、RON、SLP(トークン)は今、すべて安全です」とも。

TechCrunchはSky Mavisに追加コメントを求めたが、同社から回答は得られなかった。

画像クレジット:Yield Guild Games

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(文:Jacquelyn Melinek、翻訳:Den Nakano)

NFT総合マーケットLINE NFTが4月13日開始―吉本興業など17コンテンツと提携・Web3への入口を目指す

LINEの暗号資産事業およびブロックチェーン関連事業を展開するLVCは3月23日、NFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」(記事執筆現在はティザーサイト)を4月13日より開始すると発表した。ローンチラインナップとして、吉本興業など計17コンテンツと提携しており、エンターテインメントやスポーツ、ゲーム、アーティスト、アニメ、キャラクター、イベントの7ジャンル100種類以上のNFTを販売する。今後はソフトバンクやZホールディングスのグループ企業などとの協業を通じ、さらなる拡大を目指す。

ローンチ時に販売されるNFTのラインナップは、吉本興業ホールディングスによる人気芸人のネタをNFT用撮りおろした限定NFT動画「よしもとNFT劇場」、歌手や俳優として活躍するNissy(西島隆弘)の今後の活動と関連したNFTやLINE用のヨッシースタンプのNFTなどを予定。

昨今、海外のNFT市場が爆発的に広がり、国内でも多くの企業がNFT事業に参入している一方、NFTは、購入までのハードルの高さやNFTを保有する価値・意味が十分に理解されていないという課題がある。

これに対してLINE NFTでは、月間9000万人が利用するLINEからNFTを購入(一次流通)およびユーザー間で取引(二次流通)できることに加えて、その先にあるNFTを持つことによる楽しみを感じられるような場を提供するという。また今後は、LINE NFTにより誰でもNFTにアクセスできる環境を提供し、Web3への入口をユーザーに届けることを目指す。

LINE NFTで購入したNFTは、LINEアカウントですぐに登録できるデジタルアセット管理ウォレット「LINE BITMAX Wallet」で保管可能。自分のNFTをLINEの友達と交換したり送り合ったりできる。また、キャンペーンプラットフォーム「LINEで応募」といったLINEの他サービスとの連携も進めることで、購入特典やキャンペーン景品などにNFTを付与する機会を増やす。LINEのプロフィールにNFTを設定可能とするほか、現在国内で約600万セット以上が発売されているLINEスタンプにおいて、NFTを活用する予定。

今後の展開としては、ソフトバンクやZOZO、Zホールディングスと協業し各社が提供する各種サービスと連携を予定。ソフトバンクとは、同社提供の動画配信サービス「バスケットLIVE」での動画NFTを取り扱う予定。また同社コンテンツ配信サービス「5G LAB」とも技術的な連携を深めてxR技術を活用した立体感・臨場感のあるNFTの検討を進めているという。加えてNFT購入時の決済手段としてPayPayの導入も検討中。「ヤフオク!」にNFTを出品・落札できるよう準備している。

ZOZOとは一部のファッションブランドとのNFT販売を予定しており、ファッション領域におけるNFTの協業を検討。

「LINE GAME」「LINE MUSIC」「GYAO!」といったエンターテインメントサービスを運営するZホールディングス傘下のZ Entertainmentと連携し、動画やライブ配信といったエンターテインメント領域におけるNFT事業の推進を図る。

メタバース・現実世界で企業・個人を問わず収入を得られるプラットフォームを開発するSuper Massive Globalが1.1億円調達

メタバース・現実世界で企業・個人を問わず収入を得られるプラットフォームを開発するSuper Massive Globalが1.1億円調達

メタバース空間・現実世界でNFTを誰もが活用し価値を発揮できるプラットフォーム開発を目指すSuper Massive Global(スーパー マッシブ グローバル)は3月10日、シードラウンドとして、第三者割当増資による1億1000万円の資金調達を2月18日に行ったことを発表した。引受先はCBCなど合計8社。2021年にZero-Tenなどから2回にわたる資金調達を受けており、累計調達額は2億5000万円となった。今回調達した資金は、プラットフォーム開発とパートナー企業との業務環境の整備にあてる。

2020年9月設立のSuper Massive Globalは、「バーチャルと現実の境界線を無くす」ことをビジョンに掲げるスタートアップ企業。同社は、国境や人種・性別・文化、そして空間を超えて企業とユーザーといった誰もが楽しく生活をしながら収入や権利を持つことができる「Play to Earn」という世界観の実現を目指しているという。

そのために、メタバース空間内でNFTを発行し、現実世界また誰でも活用可能とすることで、企業・個人どちらも収入を得られる新たなプラットフォームの開発を進めている。

イーサリアム互換ブロックチェーン構築クラウドなどを手がけるG.U.テクノロジーズがプレシリーズAで2.6億円の追加調達

イーサリアム(Ethereum)互換ブロックチェーン構築クラウドサービスなどを手がけるG.U.テクノロジーズは3月8日、プレシリーズAとして第三者割当増資による2億6000万円の追加調達を実施し、総額3億6100万円の資金調達を完了したと発表した。

引受先は、Coral Capitalと自然キャピタル。調達した資金は、NFTなどWeb3種の領域、エンタープライズ・ブロックチェーン領域、ステープルコインなどフィンテック領域におけるソリューション提供へ向けた開発強化にあてる。

G.U.テクノロジーズは、金融やフィンテックのバックグラウンドを持つ稲葉大明氏と、ウェブブラウザーLunascape創始者の近藤秀和氏が、親会社G.U.Labsで進めていたブロックチェーン研究の成果を元に、2020年10月にスピンアウトする形で設立したスタートアップ。

同社は、独自のイーサリアム互換Layer2ブロックチェーンを構築できるソリューション「G.U.Blockchain Cloud」、DApps対応のイーサリアム用ウォレット「Lunascape Wallet Extension」を提供。Lunascape Wallet Extensionは、Google Chrome拡張機能として利用する。また、ブロックチェーン関連の情報サイト「G.U.net」も運営している。

DApps対応のイーサリアム用ウォレット「Lunascape Wallet Extension」

DApps対応のイーサリアム用ウォレット「Lunascape Wallet Extension」

今後は、エンタープライズ向けのイーサリアム互換Layer2コンソーシアム・ブロックチェーンの運営をはじめ、Web3時代を見据えたステーブルコイン、DeFi、NFTを含む様々な実証実験を提携企業と進める。また、顧客のブロックチェーンビジネスを支援するためのインフラやツール提供、コンサルティングや開発支援を強化していく予定。

ウクライナへの暗号資産による寄付金、政府基金の使われ方

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ウクライナの公式Twitterアカウントは寄付を募るべく、ここ数日、暗号資産ウォレットのアドレスを共有している。筆者が以前書いたように、ウクライナのデジタル変革省の広報担当者が「これらのアカウントは国が所有するもの」と確認したように、共有しているウォレットアドレスで受け取った寄付はウクライナ政府が管理している可能性が高いようだ。

関連記事:暗号資産の寄付、ウクライナはどう活用するか

しかし、これらの暗号資産による寄付の目的は何なのか、その資金で何を購入するのか。ブロックチェーンの性質上、ある時点までは暗号資産取引を追うのは簡単だ。ブロックチェーンエクスプローラーに公開アドレスを入力すれば、入出金取引のリストを見ることができる。

例えば、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーンでは、ほとんどの送金はキエフに拠点を置く暗号資産取引所のKuna(クーナ)に向かっている。

「Kuna.ioはウクライナの資金調達を技術面でサポートしています」とKunaの広報担当者は2月28日に電子メールで筆者に述べた。「すべての資金は安全で、要請に応じて政府に送られています」。

しかし、一度資金が取引所にアップロードされると、追跡が難しくなる。そこで、筆者はKunaの創業者Michael Chobanian(マイケル・チョバニアン)氏にいくつか質問した。チョバニアン氏は、暗号資産寄付のセットアップにおけるKunaの役割と、ウクライナ政府の動機について詳しく教えてくれた。

同氏は、寄付に関する情報を共有するためにこのほどTwitterアカウントを作成したことを認めた。「その通り、私のアカウントです。最近作りました。Twitterは主に英語のコミュニティなので、ここではTwitterはあまり人気ではありません。しかし世界に発信しなければならないので、アカウントを作りました」と語った。

キエフ時間3月2日午後12時に、同氏は2枚のスクリーンショットを公開した。「ウクライナの暗号資産基金」(Twitterで@Ukraineが共有したウォレットアドレスだ)には3100万ドル(約35億8000万円)超が集まり、別の基金には1700万ドル(約19億6000万円)ほどが寄せられている。

「私たちは2つの基金を持っています。まず、自分たちの基金を立ち上げ、それがうまくいっているのを政府が見ました。そしてデジタル変革省から、政府基金を立ち上げるのを手伝って欲しいと打診がありました。そこで、政府基金も作ったのです」とチョバニアン氏は語った。

それぞれのファンドのアドレスは異なるチャネルで共有されている。「現在、私たちは2つの基金を持っています。Twitterにあるのが政府基金で、Telegram(テレグラム)や他のソーシャルメディアにあるのがKuna基金です」と付け加えた。

ウクライナの軍事費の資金源

チョバニアン氏が「政府基金」と呼ぶものは、現在もKunaが管理している。しかし、同氏によると、Kunaは政府の代理で動いており、暗号資産アセットについては発言権がない。

「私たちは技術のプロバイダーです。基本的には、これらの基金の暗号資産銀行として機能しています。私たちは資金を集め、その資金がクリーンであることを確認します。その後、支払いや通貨の要件に応じて、変換するか、直接支払うかします」と同氏は語った。

「この基金は、軍隊のためのものです。変革省の助けを借りて、大部分が軍によって運営されています。そして、輸入される特殊品にお金が使われています。それらの特殊品は軍や特殊部隊に直接送られます。具体的には何を買っているのでしょうか。明らかな理由で、言えません。政府が実際に何を買ったかを公表するかどうかはわかりません。明らかに秘密だからです」と同氏は述べた。

Telegramやその他のソーシャルネットワークで共有されているKunaのもう1つの基金は、目的が少し異なる。「私の基金では、ドローンを買い、ガソリンを買い、人々に食事を提供し、キエフやハリコフといった最も危険な場所から人々を避難させるための輸送費などに使っています」とチョバニアン氏は説明した。「私たちは正規軍にも供給していますし、政府から銃を受け取って戦っている普通の人々にも供給しています」と付け加えた。

暗号資産での物資購入

興味深いことに、暗号資産はインターネットを通じて資金を調達するためだけに使われているわけではない。Kunaは、これらの暗号資産をすべて不換通貨に変換してはいない。

「どこにいくら支払うのか、暗号資産を受け取って喜ぶ人がいるかを理解するまで、暗号資産のままにしています。支払いの90%は暗号資産のみで行っています」とチョバニアン氏は述べた。

しかし、誰かが不換通貨で支払われる必要がある場合、Kunaは暗号資産を換えて銀行口座に送金することができる。「我々は暗号資産、ユーロ、そしてドルで支払っており、資金のニーズを満たすために必要なあらゆる種類の取引を行っています」と話した。

画像クレジット:Sergey Bobok / AFP / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

FBIが新たに「ランサムウェアの爆発的増加」に対応する暗号資産犯罪ユニット立ち上げ

米国連邦捜査局(FBI)は、暗号資産関連犯罪やランサムウェアによる利益を追跡するための専門部署を新たに立ち上げることを発表した。

Lisa Monaco(リサ・モナコ)司法副長官は、今週開催されたMunich Cyber Security Conference(MCSC)での講演で、Virtual Asset Exploitation Team(VAXU、仮想資産搾取ユニット)の設立を発表し、この新部署は「市場がイノベーションを生み出すのと同じ速さで、それを悪用する脅威の行為者」に米国政府が対応するのに一役買うと述べた。

さらにモナコ氏は、FBIが現在100種類以上のランサムウェアの亜種を追跡していることを指摘し「ランサムウェアの爆発的な増加と暗号資産の乱用」も同チームの担当に含まれると述べた。Chainalysisの報告によると、詐欺師が2021年に世界の被害者から奪った暗号資産は77億ドル(約8860億円)以上で、前年に比べて80%増加しているという。

FBIのVAXUユニットは、暗号資産の専門家、ブロックチェーン分析、暗号資産の押収を1つにまとめ、捜査を行うとともに、FBIの他の部署にトレーニングを提供する。この専門部署は、デジタル資産の犯罪利用を調査するために2021年末に創設された米国司法(DOJ)の部門である国家暗号資産執行チーム(NCET、National Cryptocurrency Enforcement Team)の一部を構成し、特に暗号資産取引所や、暗号資産の悪用を可能にしたり犯罪行為を助長するその他の技術に重点を置いていく。

モナコ氏はこう述べている。「ランサムウェアやデジタル恐喝は、暗号資産を利用した他の多くの犯罪と同様に、犯罪者が支払いを受ける場合にのみ機能します。つまり、彼らのビジネスモデルを破壊しなければならないということです。通貨は仮想かもしれませんが、企業に伝えたいメッセージは具体的です。『私たちに報告していただければ、お金の流れを追うことができ、あなたの組織を助けるだけでなく、うまくいけば次の被害者が出るのを防ぐことができます』」。

また、モナコ氏は今週、サイバー犯罪者の検挙経験を持つ連邦検事のEun Young Choi(チェ・ウンヨン)氏をNCETの初代ディレクターに任命したことを発表した。

「NCETは、デジタル資産を取り巻く技術が成長・進化する中で、あらゆる種類の犯罪者による不正利用に対抗するための取り組みを司法省が加速・拡大していく上で、極めて重要な役割を果たすことになるでしょう」とチェ氏は述べている。

今回の発表は、2016年に暗号資産取引所Bitfinex (ビットフィネックス)のハッキングで盗まれたとされる9万4000以上のBitcoin(現在の価値は36億ドル / 約4200億円)を司法省が押収し、同省による「史上最大」の金融資産押収となった数週間後に行われた。

関連記事:米司法省がハッキングで盗まれた4160億円相当のビットコインを押収、ロンダリングの疑いで技術系スタートアップ関係者夫婦を逮捕

画像クレジット:Stefani Reynolds / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

「YouTubeの将来を語るうえでメタバースに触れないわけにはいきません」YouTubeがメタバース参入検討、Web3も示唆

「YouTubeの将来を語るうえでメタバースに触れないわけにはいきません」YouTubeがメタバース参入検討、Web3の可能性も示唆

YouTubeは2月18日、日本版YouTube公式ブログのエントリー「2022年の展望:コミュニティ、コラボレーション、コマース」を公開した。「クリエイター向け」「視聴者向け」「パートナー向け」に2022年の展望を掲載しており、新たなサービスやツールのリリースを予定していることを紹介。Web3、メタバースについても触れている。

Web3については、クリエイター向けの話題の中で「Web3もまたクリエイターに新たな機会をもたらします」と紹介。「ブロックチェーンやNFTのような新しいテクノロジーによって、クリエイターはファンとより深い関係を築くことができるようになるでしょう」としている。「このような新しいテクノロジーには、責任を持って取り組むべきことが沢山ありますが、同時に素晴らしい可能性も秘めていると考えています」という。「YouTubeの将来を語るうえでメタバースに触れないわけにはいきません」YouTubeがメタバース参入検討、Web3の可能性も示唆

メタバースについては、視聴者向けとして採り上げている。「より没入感の高い視聴体験をどうすれば提供できるか」を考えているという。まずはゲームへの適用を検討しており、「ゲームにもっとインタラクションを持たせ、よりリアルな体感を導入することを目指します」としている。

英歳入関税庁が2.2億円相当の脱税案件の捜査にともないNFTを押収、英法執行機関として初

英歳入関税庁が2.2億円相当の脱税案件の捜査にともないNFTを押収、英法執行機関として初

Dinendra Haria/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

英国の歳入関税庁(HMRC)が、詐欺事件に関わる調査の一環としてNFT3つを押収したことを明らかにしました。当局によると、このNFTに関して140万ポンド(約2.2億円)以上の付加価値税(VAT)詐欺の疑いがあり、調査の一環としてのNFTおよび5000ポンド(約78万円)相当の暗号資産を押収したとのこと。英国の法執行機関がNFTを押収するのは今回が初めてとされます。

容疑者は偽造身分証明書、プリペイド電話、VPNなどを使い、250以上の偽装企業を通じた金品の売買に応じて徴収されるVATの額をごまかしていたとされ、脱税の疑いで逮捕されました。

調査はまだ進行中ですが、HMRCの経済犯罪担当副局長ニック・シャープ氏は、このNFTの「押収事例が暗号資産を脱税に利用すれば金を隠しおおせると思っている人たちへの警告になる」と述べ「われわれは常に新しい技術に対応し、犯罪者が資産を隠そうとする方法を研究把握している」としています。

NFTとは、デジタルアートワークやビデオゲームのキャラクターなどバーチャルなアイテムの所有権を追跡するために、ブロックチェーン技術を応用した非代替性トークンのことで、これが添付されたデジタルアートや、何らかのデータが本物かどうかを証明する鑑定書のようなものといえばわかりやすいかもしれません。

巨額の案件がいくつかニュースになり、その結果2021年には総額400億ドルを超えるNFTが販売、取り引きされたと伝えられています。しかしNFTには法的な規制や保護が整備されていない状況であり、たとえば自己売買(いわゆるウォッシュトレード)を繰り返すことによる価格つり上げから、まがい物、盗作品などを使った詐欺案件も急増しています。

NFT売買大手の米OpenSeaは、今回のNFTの押収について「犯罪者が暗号のしくみを隠れ蓑にできないことを示している」とし「執行機関がその取り引きを追跡して違法行為に使われたNFTと暗号資産を押収し犯罪者に利益を得させないようにできる」とコメントしています。

(Source:BBC NewsCNBCEngadget日本版より転載)

【コラム】所有の新しいかたち、P2Pファイル共有から音楽NFTまで

Outkast(アウトキャスト)の海賊版が販売されていた2003年に、そのMP3のコピーを所有することでロイヤリティー(著作物使用料)を得られる世界を想像できただろうか。

NFT(非代替性トークン)やWeb3への批判が高まる中、ヒップホップ界のレジェンドでありイノベーターであるNas(ナズ)は、自身のシングル2曲をNFTでリリースしている。ファンはこれを購入することにより、ストリーミングのロイヤリティを得ることができる。音楽NFTの人気の高まりにより、次のような非常に興味深い議論に注目が集まっている。ブロックチェーンは、トレントの自由でオープンであるという利点に相反するものだろうか。ブロックチェーンは、コンテンツの違法コピー製作者と同じように、ゲートキーパーを排除しようとしているのだろうか。

アーティストとファンの対立

デジタルエンターテインメントの歴史の中で最も対立が激しかったのは、Napster(ナップスター)が登場してきた時期と、2000年代、BitTorrent(ビットトレント)が広く普及した時期だ。この時期、音楽業界、映画業界が大きく変わり、アーティストとファンが対立した。2000年代の終わりには知的財産権の行使が急増し、同時に、Spotify(スポティファイ)、Netflix(ネットフリックス)、Apple Music(アップルミュージック)などに代表されるような、デジタル商品の消費者向けオプションが大幅に拡充した。

Web3への移行が始まり、デジタル所有権、知的財産マネジメント、クリエイターの権利といった概念に再び注目が集まっている。Web3を批判する人たちはトレントの特性と比較して否定することが多い。トレントは「知的財産権への革新を求める抵抗」の表れで、コンテンツがよりオープンで自由で利用しやすいインターネットを生み出したのに対し、ブロックチェーンはその逆のことを行っている、というのがその言い分だ。

これには的外れな点がある。まずユーザーがトレントを利用する理由として、金銭面の節約という人もいたが、多くの人にとっては公式の有料コンテンツに比べて利便性が圧倒的に高いからというものだった。トレントの動きは、急速な技術革新によって引き起こされた、時代遅れのビジネスモデルに対する消費者の反発と捉えると、非常にわかりやすい。その意味で、Web3はまさにトレント時代の精神を継承したと言える。

もう1つの問題は、Web3を批判する人たちが当時の実際の論点を忘れてしまっていることだ。哲学的な考えを持った当時の違法コピー製作者たちは、その行為の大義名分として、アーティストは中間業者のせいで不利益を被っていると指摘していた。

「アーティストはツアーで稼いでいるから問題ない」というのがその時の目立った主張で、大規模な音楽出版社はたいてい悪者とされた。実際には、トレントがレコードの売上に影響を与え、音楽出版社とアーティストの両方の利益が損なわれた可能性が高い。トレントの動きをWeb1.0支持者によるWeb2.0移行への反発としてのみ捉え直すのは、コンテンツの違法コピーにより不利益を被る人たちを無視する「バラ色のメガネ」をかけた楽観主義だ。

また、自らの権利を主張し、音楽出版社側に付いていたと思われる多くのミュージシャンもファンの反感を買ったが、これによりトレントの道徳的優位性が高まるということはなかった。

一方、Web3では、コンテンツへのアクセスだけでなく、そのコンテンツで何ができるかということも重要視されている。言い換えれば、コンテンツの実用性と価値、とりわけこの問題の中心であるクリエイターにとってのそれが重要になる。ゲートキーパーを排除しようとする点では、Web3の構築者とトレントのサービス提供者は多くの同じ目標を共有している。

しかしWeb3は、強力な希少性、透明性、完全な所有権、明確な出所など、トレントよりはるかに優れた武器をこの戦いのためにクリエイターやファンに提供する。アーティストが自分のコンテンツを直接所有し、自分のコミュニティとのつながりを維持することは、これまで以上に容易になってきている。Web3はある点ではトレントに敬意を表しつつ、アーティストとそのファンにとってより有意義で、彼らに経済的な力を与えることのできるインフラを提供している。

ゲートキーパーの排除

トレントとブロックチェーンは、どちらもピア・ツー・ピアの分散型テクノロジーであるという点で類似している。また、NFT人気の高まりにより、ブロックチェーンはコンテンツを配信するためのより一般的な方法になりつつある。コンテンツ配信はビットトレントが手がけるサービスでもある。これらのテクノロジーの大きな違いの1つは、知的財産権に対するそれぞれのユーザーのアプローチだ。

トレント時代、Web3時代のどちらにおいても常に認識されているのは、創作活動は難しく、楽しく、利益や称賛に値するという事実だ。知的財産権は、このような創作活動が継続的に行われることを保証する1つの方法である。これまでの知的財産権の制度では、創造活動の価値は、ゲートキーパー、レントシーカー(既得権者)、中間業者によって圧倒的に掌握されていた。こうした枠組みでは、中間業者は価値を「発掘」するための手段に過ぎないということが見逃されている。

私と同じようにシャワーを浴びながら好きなように歌う人たちには好感しかないが、アーティストが何もない部屋に閉じこもって創作活動をしても、家賃を支払う助けにはならない。そのために、音楽出版社、レーベル、管理会社、代理店などが登場してきたのだ。賛否両論あるものの、こういった中間業者は、テクノロジーや配信手段の特質を考えると、非常に長い間、信じられないほどの成功を収めてきた。それでも、決して価値の発掘が大きな問題としてなくなったわけではない。もっと詳しいことが知りたい方には「shill on Twitter(Twitter上のサクラ)」の部屋がある私のNFT Discord(ディスコード)を紹介したい。

ともあれ、トレント時代に激しい対立が生まれた要因は、これらの中間業者が、支援するべき才能あるクリエイターが手にするよりはるかに大きな力と価値を持つようになったと考えられたことにある。とりわけ急速に技術革新が進む時代にありながらである。

Web3の大きなゴールは、トレントのサービス提供者が追い込んできたゲートキーパーを根本的に排除することだ。Web3に問題があるとすれば、その1つは、ゲートキーパーが数多く存在するということだ。このような透明で分散化されたツールを使えば、自分が苦労して稼いだお金が支援したいクリエイターやプロジェクトに直接使われているのを実感できることが増えていく。

オープン台帳やスマートコントラクト、ホワイトペーパーは、かつてクリエイターが強制的に結ばされていた不可解で機密性の高い契約とは際立って対照的だ。これまでは知的財産権がクリエイターを保護してきたが、これからは新しいメカニズムがその役割りを果たすことが期待されており、利益を得るのはクリエイター自身であると確信できるようになった。あるアーティストの言葉を借りれば、このテクノロジーによって「クリエイターを増やし、音楽を増やし、そして人間としての体験を増やしていく」ことが可能になるのだ。これを「昔は知的財産権は悪だったが、今は知的財産権は善だ」とまとめては、両者の動きの核心を完全に理解していないことになる。

権利を求める戦い

NFTは、アルバムや物理的なアートと完全に置き換わるものではない。音楽を聴いたり美しいものを集めたりするのに、暗号資産ウォレットは(おそらく)必要ないだろう。NFTはファンに新しい体験を提供すると同時に、権利設定とクリエイターの自活能力の両方に大きな影響を与える。

私は4年以上かけてTwitch(ツイッチ)の音楽サービスを構築し、そのうちのかなりの時間をDMCA(デジタルミレニアム著作権法)の調査に費やしたため、米国のデジタル知的財産権の行使には頭痛がともなうをことをよく知っている。

NFTは、それよりはるかに明確で、透明性が高く、相互運用性があり、効率的なビジネス手法だ。すべての所有権の詳細は法律用語に埋め尽くされることなく、単純なコンピューターでも理解できる言葉で書かれている。さらにこれらの契約がシンプルであれば、ライセンスの利用が大幅に促進される。これは、購入しやすいMP3への移行が音楽ストリーミング産業の始まりとなった流れと同様だ。人々はやるべきことをしたいと考えており、それを容易にかなえられる製品があれば、それを実行に移す。

つまり、NFTはコラボレーションへの障壁を下げ、ファン自らもクリエイターを志せるきっかけなるということだ。ファンがアルバムを所有すれば、そのアルバムを使ってリミックスやサンプリングができるようになるだけでなく、ストリーミングしたり、バーで流したり、映画やポッドキャストのサウンドトラックに入れたりする権利も得られるというのであれば、それはとてもすばらしいことだ。

当然のことながら、NFTの利用に際して譲渡される権利はアーティストが所有しているか、権利者により譲渡される必要がある。これが独立系アーティストがこの領域でのイノベーションと早期導入を後押しする理由だ。彼らは自分たちのために公正な権利プロファイルを保持しており、そのおかげで活動の余地がさらに広がる。

契約を結んでいるアーティストにも参加のチャンスはある。自分の肖像や制作したアートをベースにしたアートやコレクター向けのNFTを発行することができるだろう。私は、クリエイターがNFTをメリットバッジやコンサートなどのライブイベントへのアクセスパスとして活用しているを見るのが好きだ。多くのミュージシャンがこのような新しい手法を使い、自分たちのファンクラブを変えることに成功している。そこでは、完全な所有権と、一緒にコミュニティを構築する機会を得られる。

訴訟ではなく、コラボレーション

ブロックチェーンのテクノロジーは、自分のファンを把握する、中間業者を介さずにファンに物を贈ったり売ったりする、共有されたアーティファクトやシグナルでコミュニティを形成することなどを可能にして、アーティストがファンとのコミュニティを構築するための直接的な方法を提供する。

こういった活動を組み合わせることで、アーティストは20年前(特にファンを訴えていたころ)をはるかにしのぐコミュニティ形成力が得られる。そしてこれらのことはすべて、かつて消費者へのアクセスを管理していた中間業者を介さなくとも実行可能だ。

さあ、一息ついて、クリエイターたちにこの新しい領域を開拓する余地を与えよう。そして、これから構築される新しい物事を保護するために知的財産法が役立つのであれば、それを称えよう。私たちは、近年の技術的な動きにおいて最も重要な原則が、いまだ有効であることを喜び、そして理解することができる。その原則とは次のようなものである。「作品を生み出すというのはたいへんなことであり、クリエイターとその作品は保護されるに値する」。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Chris Fortier、翻訳:Dragonfly)

近い将来、すべてのブロックチェーン企業が暗号投機家になる

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

ロシアが間もなくウクライナに侵攻するというニュースが流れたばかりの時に、落ち着いてテクノロジースタートアップ市場の現状について活き活きとした原稿を書くのは、ちょっと難しい。独裁政治よりも民主主義を信じている人にとっては、かなり暗い一日になるだろう。そして、すぐ近くの地平線上にある、迫りくる地政学的な雲は、さらに悪いニュースを約束している。

それでも、ニュースエンジンは前進していて、自分の分野で何かをしなければならない。そこで、暗号市場での資本リサイクルについて話すことで仕事の手を止めないことにしよう。

それは、ぐるぐると回っていいる

現在、テクノロジーの世界で徐々に勢いを増しているイノベーションの1つが、企業が創立後のより早い段階からベンチャーキャピタル活動(防御的なものも攻撃的なものも)を始めるようになっているということだ。

OpenSea(オープンシー)は、その最新の例だ。同社は米国時間2月12日に、OpenSea Ventures(オープンシー・ベンチャーズ)という組織と「Ecosystem Grants」(エコシステム・グランツ)という名のプログラムを立ち上げることを発表した。どちらも「Web3とNFTの世界的な成長を促進するクリエイター、チーム、新技術を支援することを目的としている」という触れ込みだ。

OpenSeaから資金を得る企業は「OpenSeaのリーダーシップへのアクセス」を行うことが可能で、当然ながらa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)を含むOpenSeaの投資家へもアクセスすることができる。

The Block(ザ・ブロック)が指摘するように「OpenSeaは、ユニコーンのAlchemy(アルケミー)やFTXなどの、独自のベンチャーユニットを立ち上げた数多くの暗号スタートアップの一員になる」のだ。いずれも非公開企業であることをお断りしておく。ともあれ、急成長したブロックチェーン企業が余剰資金を得て、その資金を他のグループに再投資し始めることはよくある話だ。

Intel Capitalが企業のベンチャー取引のパラダイムだった時代は終わった。現在は、Coinbaseがおそらく最近最も尊敬されている企業投資チームだが、ライバルたちはそれに挑戦しようとしている。

だが、本当にそうなのだろうか?この近辺には奇妙なニュアンスがある。

  • Coinbaseは非公開の時代、a16zがバックアップしていた
  • Marc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、最近自身の暗号ファンドを立ち上げたKatie Haun(ケイティハウン)氏とともに、Coinbaseの役員として残っている
  • Coinbase VenturesがOpenSeaを支援
  • a16zもOpenSeaを支援
  • OpenSeaは現在、独自の投資を行っているが、理論的にはある程度はa16zとの共同投資となっているはずだ

a16zはまた、独自の投資を行っているAlchemyにも出資しているが、これはなかなかのからみ具合だ。OpenSeaはAlchemyの技術を使用しており、すべてが統合されている(このような中央集権化とファミリー化が、分権化すなわち民主化と正反対であることはいうまでもない)。

資本が暗号を追い、暗号が資本を追うこの渦巻は、いつほど収まり始めるのだろうか、そしていつ内部での競争が強まるのだろうか?もしCoinbaseがかねての計画通り独自のNFTプロダクトをローンチしたら、OpenSeaはいつまで共通の投資家に寄り添っていたいだろうか?Coinbaseがインフラを売りたいと思って、Alchemyのスペースに入ってきたらどうなるのだろうか?Alchemyがどれだけの活動をしているかを考えると、率直に言って、Coinbaseがそれをしない理由はない。

現在、OpenSeaが自らのイグジットの前に、資本を他のベンチャーに再投資しているのは奇妙なことだ。しかし、より大きな暗号資産市場の変化のペースが、単純なビジネスモデルである投機を行う企業を、多数ではないにしても少なくともある程度の数以上生み出したようだ。すごい!そして奇妙だ!

私は、主要な暗号資産プレイヤーとその財政スポンサーのクローズドネットワークを監視しようとしている。私にとっては、他のベンチャーカテゴリーよりも中央集権的で、ちょっと奇妙な感じを受けている。Web 2.0で大金を稼いだ人たちが、この先Web3が何になろうとほとんどの利益を手にしようとしているように見える中で、同じ人たちが、分散型の自律組織やゼロトラスト体制などを推進している話を読み続けていると、口の中にこみ上げる苦みを拭い去ることができない。

さて、私はもう消えて、今は自由な社会と民主主義の運命について心配することにしよう。月曜日までにロシアがウクライナに侵攻していないことを祈る。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

【コラム】暗号資産とDeFiを救うのは「内部告発者」だ! 

規制のない暗号資産の世界というのは今や昔の話。蔓延する暗号詐欺と規制を回避する分散型金融(DeFi)の驚異的な成長を受けて、米国の規制当局は暗号資産業界に対して前例のない措置を講じることとした。

このような規制の変化は米国の金融規制における歴史的なパターンを踏襲している。金融の不安定性への懸念よりも自由への欲求の方が強いか、あるいはその逆かによって、規制の強化と緩和の間を行き来するものなのである。

自由市場の暗号愛好家は失望するかもしれないが、協力を惜しまない者には大きなメリットがあるかもしれない。内部の人間が目にした違法行為や不正使用について声を上げれば、規制当局が他の悪質行為者を対象とするため、その間に自分の会社が成功すれば良いのである。

また、例えば内部告発者が勤める会社が改革を拒み、規制当局が行動を起こさざるを得ない場合、内部告発者は多額の報奨金を得られる可能性がある。また、内部告発をしたことによる報復から保護を受けることも可能なのである。

繰り返される歴史

米国の金融規制には、比較的金融規制の少ない時期と、金融不安を是正するために規制を強化する時期という、おなじみのパターンがある。

米国の建国者たちは当初から、金融システムに対する連邦政府の規制の必要性について国立銀行の設立を中心とした議論を繰り広げていた。アンドリュー・ジャクソン(第7代米国大統領)は最終的に国立銀行を廃止し、分散型の銀行システムを採用。その後、自由銀行時代として知られるようになり「ワイルドキャット」と呼ばれる銀行や数十年にわたる金融不安が続いたが、エイブラハム・リンカーンの暗号詐欺で幕を閉じている。

最近では1980年頃から規制緩和の波が押し寄せ、金融革命や金融統合を引き起こしたが、1980年代後半から1990年代前半にかけての緩やかな貯蓄貸付危機という形で金融の不安定性が起きている。この規制緩和の流れは2007年から2008年にかけての大不況で頂点に達し、その後ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法の成立により、規制強化へと振り子が戻ってきたわけだ。

この規制パターンは今後、最近までほとんど規制がなかった暗号資産業界でも同様に展開されるようになる。麻薬の売人や脱税者、テロリストの資金源になっているといわれている暗号業界で、アンチマネーロンダリングや本人確認(AML/KYC)の慢性的な失敗を懸念した議員たちが、Bank Secrecy Act(銀行秘密法)を改正し、暗号資産を明確にカバーするようにしたのである。

SEC(米国証券取引委員会)のGary Gensler(ゲーリー・ゲンスラー)委員長は、暗号革命をワイルドキャット銀行の新時代と比較しており、またRipple(リップル)に対する訴訟で有名なように、多くの暗号資産や暗号資産に関連する商品は証券であるとの立場をとっている。元CFTC(商品先物取引委員会)委員のDan Berkowitz(ダン・バーコウィッツ)氏(現SEC顧問弁護士)は、DeFiは完全に違法である可能性があると考えており、財務省は議会に対し、安定した価格を提供するために準備資産に裏付けされたステーブルコインを非銀行が発行することを禁止するよう勧告している

州もその一味となっており、NEXO(ネクソ)Celsius(セルシアス)、BlockFi(ブロックファイ)などの企業が証券や商品を販売する前に州への登録を怠ったとして、州の検事総長が処分を下している。明らかに、暗号資産が規制の監視を受けない時代は終わったのである。

内部告発者が規制やコンプライアンスを導く

暗号業界がこのような反革命に頭を悩ませている一方で、不正や違法行為を政府に報告した内部関係者は大きな利益を得る可能性がある。SEC、CFTC、FinCEN(金融犯罪捜査網)、IRS(米内国歳入庁)などの規制当局は、企業や業界セグメントの運営状況を内部から把握し、不正行為者が投資家や顧客、一般市民に回復不能な損害を与える前に不正行為や違法行為を発見できるようにするための内部告発者を必要としている。

また、内部関係者からの情報により、規制当局は悪質な行為者に的を当てた強制措置やルール作りを実施することができ、暗号資産業界の革新的で価値のある側面を不必要に潰してしまうのを防ぐことができるだろう。

こういった情報と引き換えに、内部告発者は連邦政府のさまざまな内部告発者報奨プログラムから報奨金を得ることができる。ただしこれは、強制措置の執行に役立つ情報を、適切に提出した場合に限られる。

SECCFTCのプログラム、そして今回新たに強化されたAML内部告発プログラムの場合、内部告発者は100万ドル(約1億1500万円)以上の強制措置において最大30%の報奨金を受け取ることができる。これらのプログラムでは、弁護士を介して匿名で情報を提供することで、自分の身元を隠すことも可能だ。

IRSの内部告発プログラムの場合、内部告発者は200万ドル(約2億3000万円)以上の政府回収金のうち最大30%を受け取ることができる。SECとCFTCの内部告発者はこれまでに、なんと1億ドル(約115億円)以上の賞金など、合計10億ドル(約1151億円)以上を受け取っており、またIRSの内部告発者プログラムでも、2007年以来10億ドル(約1151億円)以上の賞金が支払われているという。

しかし、内部告発者が助けているのは政府だけではない。内部告発者たちは、規制の動向や将来の強制措置を予測することで、企業が規制の標的にならないよう導くことができるのである。多くの従業員が警告を発して意思決定者に変更の必要性を知らせることができる立場にいる。内部告発者は、企業が規制当局にノーアクションレター(特定の製品や行動方針を規制当局に承認してもらうもの、または規制に抵触する可能性が低い方法で取引や製品を再構築することを提案するもの)を求めるべきであることを指摘して、潜在的な問題を回避することもできるのである。

すでに違法行為を行っている可能性のある企業であっても、会社の方向性を修正する方法や、会社の行為を是正するために規制当局に働きかける方法について、内部告発者は最も適切な判断を下すことができるのである。

内部告発者の保護

報復行為も十分に起き得るため、内部告発者になるのが恐ろしいと考えるのは当然である。報復行為とは、敵対的な職場環境から解雇まで、さまざまな形で行われるものだ。

そこで、内部告発者を報復から保護するのがサーベンス・オクスリー法ドッド・フランク法2020年マネーロンダリング防止法などの連邦法や州法だ。内部告発者法に基づく救済措置はさまざまだが、報復を受けた従業員が、報復がなかった場合と同じ状況になれるように設計されている。

しかしこういった保護を受けるためには、それが可能な方法で内部告発を行う必要がある。内部告発者は、実際に法律違反があったことを証明する必要はなく、また不正や違法行為があったという事実が正確である必要もない。従業員が懸念を表明することを奨励するために、これらの法律は一般的に、内部告発者が「合理的な信念」を持っている場合、つまり「同じ訓練を受けた同じ事実関係にある合理的な人間なら、この場合雇用者が法律に違反していると考えるだろう」ということを示すことができる場合、報復から保護してくれるのである。

過去10年間に、大規模な内部告発の多くの陪審評決が証明したように、報復を行った雇用者は相当な額の責任を負うことになる。しかし、内部告発報復法の複雑さを考えると、内部告発を考えている従業員は、まず法的アドバイスを求めるのが正解だろう。

内部告発者が救う

暗号資産業界はこれから多くのことを学んでいくのだろう。従来の金融機関は何十年という月日かけて規制に対応してきたが、暗号資産はこれまでコンプライアンスをほとんど気にすることなく運営されてきたのである。

暗号業界の内部告発者が早期に警告を発することで、競争の公平性が確保されるだろう。内部告発者の懸念を真剣に受け止めることで、暗号業界の企業は間もなく直面することになる不可避の強制措置の嵐を回避し、時間、お金、そして心痛を節約できるのだ。

編集部注:本稿の執筆者Alexis Ronickher(アレクシス・ロニッカー)氏は、ワシントンD.C.にある内部告発者と公民権に関する法律事務所Katz, Marshall & Banks LLPのパートナー。内部告発者の弁護を専門としている。Nicolas O’Connor(ニコラス・オコナー)氏はKatz, Marshall & Banks LLPのアソシエイト。

画像クレジット:danijelala / Getty Images

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(文:Alexis Ronickher、Nicolas O’Connor、翻訳:Dragonfly)

イーサリアム開発者ツールプラットフォーム「Hardhat」開発元、a16zなどの寄付により非営利団体「Nomic Foundation」に

人気の高いEthereum(イーサリアム)開発者ツールプラットフォーム「Hardhat」を開発したNomic Labsは、プロトコルの開発者エコシステムを改善することを目的として、非営利団体になることを発表した。

2018年に立ち上げられたNomicは、Nomic Foundationとしてリブランディングを行っており、3000万ドル(約34億6600万円)の寄付目標のうち、すでに1500万ドル(約17億3300万円)の寄付を確保していると、共同設立者兼CEOのFranco Zeoli(フランコ・ゼオリ)氏がTechCrunchのインタビューで述べている。Nomicによると、最初のコミットメントは、Ethereum Foundatio(イーサリアム財団)、Ethereumの共同設立者であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏、およびCoinbase(コインベース)、Consensys(コンセンシス)、Andreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)、The Graph(ザ・グラフ)、Polygon(ポリゴン)、Chainlink(チェーンリンク)、a_capital、Kaszek Venturesなどの多数の暗号取引所やベンチャーから得られたものだ。

同グループは3000万ドル(約34億6600万円)の目標を達成するために、いくつかの分散型自律組織(DAO)に資金提供の提案を行う予定だ。

開発者ツールは、ソフトウェアエンジニアがそのブロックチェーン上でアプリを作成することをより簡単にすることで、Ethereumのような特定のプロトコルの成長を加速させることができる。ゼオリ氏によると、実際に2万3千のGitHubリポジトリ(開発者プロジェクト)がHardhatを使用しており、数万人のアクティブユーザーがいるとのこと。また、Uniswap、ENS、AAVEなどの著名な暗号プロジェクトもHardhatユーザーだという。

Nomic Foundationの主な目標の1つは、開発者に質の高いエクスペリエンスを提供するインフラを構築することで、より多くの開発者をEthereumプロトコルに引き付けることだとゼオリ氏は語る。

「Ethereumには、成功しなければならない2つの重要な側面があると思います。1つはスケーリングです。しかし、非常にスケーラブルなシステムを持っていても誰も使わないのであれば、それは無意味なことです」とゼオリ氏。開発者による採用は、Ethereumプロトコルの将来にとって中核をなすものだ、と同氏は続けた。

ゼオリ氏と彼の共同設立者は、2015年にビットコインの可能性を探るために暗号の世界に入り、Nomic Labsはプロトコルの異なるさまざまな暗号化プロジェクトに取り組むために設立されたが、Ethereum Foundationからの助成金を受けて、2019年にHardhat製品に注力するためにピボットした。この助成金がきっかけとなり、NomicとEthereum Foundationの間に密接な協力関係が生まれ、Nomicが非営利団体に移行する前は、後者がNomicの唯一の資金源となったとゼオリ氏は語った。

同氏と共同設立者のPatricio Palladino(パトリシオ・パラディーノ)氏は、ともに母国アルゼンチンに住んでいるが、同国では、通貨の切下げやボラティリティが激しく、市民の生活に支障をきたしている。このような変動に関連する課題は、暗号資産が価値ある代替手段となり得る明確な例を示しており、これがNomicを非営利団体にすることを決めた動機となったとゼオリ氏はいう。

Nomic Foundationは、Hardhatをサポートするだけでなく、Ethereumエコシステム全体を向上させることを目的として、他の開発者ツールをサポートすることを目指していく。

ゼオリ氏はこう語っている。「(Nomic Foundationが)将来的に成功するシナリオは、Hardhatに対する競争が大幅に激化することでしょう。Hardhatだけでは、成長を続ける業界全体のニーズを満たすのに十分でないことがわかっているからです。ソリューションの多様性、異なるアプローチ、異なる戦略、さらには異なる嗜好が存在することが必要なのです」。

画像クレジット:DrawKit Illustrations on Unsplash

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Aya Nakazato)

Dapper LabsのFlowブロックチェーン活用、ミクシィとDAZNがスポーツ特化型NFTマーケットプレイスを今春提供開始

Dapper LabsのFlowブロックチェーン活用、ミクシィとDAZNがスポーツ特化型NFTマーケットプレイスDAZN MOMENTS発表

ミクシィは2月4日、スポーツ・チャンネル「DAZN」(ダゾーン)を運営するDAZN Japan Investmentと共同で様々なスポーツのスーパープレイやメモリアルシーンをコレクションできるスポーツ特化型NFTマーケットプレイス「DAZN MOMENTS」を開始することを発表した。開始時期は今年春頃を予定。

また開発においては、「Cryptokitties」(クリプトキティ)や「NBA Top Shot」(NBAトップショット)を手がけるDapper Labsのブロックチェーン「Flow」(フロー)を基盤にサービス構築を行う。

DAZN MOMENTSは、日本国内で展開するスポーツ特化型NFTマーケットプレイスで、スポーツ選手のスーパープレイやメモリアルシーンといった貴重な動画映像をNFTコンテンツ(すべて動画)として提供する。コンテンツにはそれぞれシリアルナンバーが記されており、Flowブロックチェーン上にデータが記録される。

サービス開始時は、NFTコンテンツの収集をメインとして提供。その後、段階的にユーザー同士でコンテンツを売買できるマーケットプレイス機能や、コミュニティとして集まれる場を作るなど、同じ興味・関心を持つユーザー同士がコミュニケーションを取りながら楽しめるサービスにアップデートする予定。正式な提供開始日やDAZN MOMENTSで実際に展開するNFTコンテンツについては、公式サイトで随時発表する。

SNS「mixi」やスマートフォンゲーム「モンスターストライク」などを展開するミクシィは、「エンタメ×テクノロジーの力で、世界のコミュニケーションを豊かに」を中期経営方針として掲げている。その中で、Dapper Labsと業務提携に関する基本合意書を締結するなど、最新テクノロジーを駆使したエンターテインメントやスポーツ領域での事業創出に注力している。また2020年12月には、DAZNの「商業施設利用契約サービス」提供開始に合わせて、セールスエージェントパートナーとしてDAZNと協業を開始した。

今回の取り組みでは、ミクシィの最新テクノロジーを活用したサービス開発のノウハウと、DAZNが持つ豊富なスポーツコンテンツを掛け合わせた新規事業を創出することで、多くのスポーツファンが楽しめるサービスを提供できると考え、両社の強みを活かしたDAZN MOMENTSを開発・提供を開始するという。

DAZN MOMENTSでは、DAZNがコンテンツマネジメントやマーケティングを行い、ミクシィはサービス開発・運用を担う。

手持ちのモノを売り支払いに充てられる決済プラットフォームTwigが約40.3億円調達、「グリーン」を謳うがそのサステナビリティにはほころびが見える

Z世代と若いミレニアル世代の消費者をターゲットとし、電子マネーアカウントで衣類や電子機器を売って即座に換金できるロンドン本拠のフィンテックTwig(トゥイグ)が3500万ドル(約40億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。

今回のラウンドを率いたのは、フィンテック投資専門のFasanara Capital(ファサナラキャピタル)で、Twigによると、LVMH、Valentino(バレンチーノ)、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の現幹部や旧幹部など、他にも数多くの匿名の戦略投資家たちが参加したという。

Twigは2020年創業の新興スタートアップで2021年7月に英国でサービスを開始したばかりだが、英国内で急速に成長しており(Twigのアプリのダウンロード回数は月間10万回を超えており、iOSのApp Storeでファイナンス関連アプリの第6位にランキングされた)、すでに海外進出に向けて準備を開始している。

Twigは、シリーズAで獲得した資金で、米国(2022年第1四半期)およびEU(第2四半期。まずはイタリア、フランス、ドイツを予定)に進出すると目されている。また、Web3とデジタル収集品の流行に注目して製品の機能拡張も予定している。

現時点では、Twigのアカウントは英国内でのみ使用できる。創業者兼CEOのGeri Cupi(ゲリー・クピ)氏によると、現段階で約25万人のユーザーを確保しているという。

同氏によると、典型的なユーザーは大学を卒業したばかりの22歳の働く女性だ。こうした女性は、おそらくワードローブに着れなくなった衣類が山のようにあり、いつでも売りたいと考えているからだ。

Twigでは、他の金融機関のアカウントに送金すると1ユーロの手数料を請求されるが、Twigアカウント同士の送金では手数料はかからないため、口コミで広がり成長したことが初期段階での急成長を加速させたようだ。

また「your bank of things(モノの銀行)」というマーケティングスローガンを掲げているものの、Twigは実際には銀行ではないことも指摘しておく必要がある。Twigのアカウントは「電子マネーアカウント」だ。このため適用される規制に関して銀行とは大きな違いがある(例えばTwigのアカウントは英国の預金保証制度の対象にはならない)。

正式な銀行ではないため、Twigは新市場でいち早く成長することができる。銀行業務ライセンスを取得する必要がある場合に比べて、提供サービスに適用される規制が軽減されるからだ。クピ氏によると、現時点では性急に正式な銀行になるつもりはないという。

数十年前、インターネットおよびオープンバンキングを背景とするフィンテックブームなど存在しない時代の昔ながらの銀行は、バッグ、文房具、音楽などの無料のおまけをつけることで学校を出たばかりの新社会人に営業して口座を作ってもらっていた。最近のフィンテックスタートアップは、最も魅力的な機能セットを競って提供することで若い年齢層の顧客を捕まえようとしている。

ただし、お金を口座に入れてもらうことが依然として主たる目的であることは間違いない。

とは言え、TwigはB Corp認証を取得申請中だ。B Corp認証は社会的目的と環境への配慮、透明性、説明責任を重視していると認められる企業に与えられる。クピ氏によると、同社は、申請の最終段階にあり、現時点では保留状態だが、第一四半期には完全な認証を受けられる見込みであるといい、ユーザーにブランド品を捨てる代わりに売るよう勧めることでサステナビリティと経済循環性を実現していることを強くPRしている。

Twigのウェブサイトでも、環境への影響を抑えるためにカーボンオフセットの取り組みを行っており、その他のイニシアチブにも参加していることが掲載されている。

要するに、人類が気候災害を回避するには、世界レベルでのCO2排出量、つまりは全体的な消費の削減が必要となる。そこで疑問視されるのが「サステナビリティ」を再販売というコンセプトに無理矢理結びつける主張の信憑性だ。再販売には、すぐに査定してもらって現金が手に入るため、逆に消費量が増すリスクがあるからだ。

現在所有しているモノを売って現金が手に入るなら、一度購入したアイテムを手放さずに長く使う場合に比べて、消費者はお金をどんどん使って新しいモノを買うよう仕向けられる可能性がある。別の言い方をすれば、消費を削減してCO2排出量を削減するつもりなら、循環経済とモノの寿命をセットで考える必要があるということだ。再販売に必要な面倒な手続きが削減されることで消費者がモノを買わなくなるかどうかはわからない。逆にもっとモノを買うようになる可能性もある。

これがTwigの謳うサステナビリティにほころびが見える点の1つだ。

この難題をクピ氏にぶつけたところ、同氏は次のような議論(いくらか循環論法的ではあるが)を展開して巧妙に解決して見せた。「中古品の流動性を高めるというTwigの目的はサステナビリティの向上と消費量削減の推進を実現します。というのは、より多くの中古品が買えるようになるからです。その結果新しいモノに対する需要が減り、より多くのアイテムがこの(より活発な)中古品経済を介して循環するようになる。

「基本的に、当社のビジネスは、消費者が自分が持っている古いアイテムをお金に変えられるようにすることで、その古いアイテムに新しい命を与えるというものです。これによって、少なくとも中古市場の供給が増大します」と同氏はいう。「中古市場の需要はずっと増え続けています。当社が中古市場の供給側だけでやっていけるのは、現在、中古市場には供給の追加を求める大きなニーズがあるからです。消費者が手持ちの中古品を売ってお金を得たとしても、そのお金で別のモノを購入するとは限りません」。

「これは当社のユーザーの行動からわかることですが、Twigに送られてくる資金のうち約42%は新しい経験、つまり旅行や経験主導の活動に使われています。ですから、流動性が向上したからといって、必ずしもモノの消費が増大して環境に悪影響を与えるとは限りません。それがこれまでのユーザーの行動から分かっていることです」。

クピ氏はTwigのビジネスを非常にシンプルな次の宣伝文句に集約させている。「当社は資産をトークン化します」。

「Twigでは、例えばGucci Marmont(グッチ・マーモント)のハンドバッグをプラットフォーム上にアップロードします。そして、アップロードされた資産をトークン化して、その価格を提示します」と同氏は説明する。

「当社の目標はこの仕組を外部でも使えるようにすることです。そこで役に立つのが、ブロックチェーンです。当社は資産の流動性を向上させて、消費者が物理的なモノを売って仮想的なモノを入手し、その仮想的なモノを使って物理的なモノや体験を購入するという行為を簡単に行えるようにします」。

「基本的に、ユーザーが簡単に取引できるようにすることが目的です」。

クピ氏にはブロックチェーンと循環経済に関するバックグラウンドがある。例えば、2018年には、デニムのアップサイクルビジネスをLevi’s Albania(リーバイス・アルバニア)に売却している

Twigのホワイトペーパーによると、よく売れる物理的なモノとしては、Nike(ナイキ)、Gucci(グッチ)Chanel(シャネル)、Hermes(エルメス)、その他の高級品メーカーのブランド品などがあるという。このペーパーには「所有の未来の再定義」と「 循環型ライフスタイルで生活を送るためのパワーをZ世代に付与」という内容が記載されている。

クピ氏によると、Appleの電子機器も中古市場で高値がついているという。同氏は、購入対象中古品に、不要になった衣類だけでなく電子機器も追加したところ、それまで女性が9割以上だったTwigの利用者構成が、女性7割男性3割くらいに変化したと指摘する。

Twigは中古品の再販売に関する手続きを代行する。具体的には、中古品を即座に査定して、Twigがその中古品の購入を承諾するとすぐに現金が手に入るので何でも好きなものを買える(Twigでは極めて詳細な購入対象品リストを用意している)。

Twigまでの配送料は無料なので、Twigのサービスを利用することで、Vinted(ヴィンテッド)Depop(ディポップ)といった中古品マーケットプレイスにアイテムを自分で直接販売する場合に発生する面倒な手続きやリスクは基本的に排除される(ただし、自分で直接販売した場合よりも売値は低くなる)。

Twigの倉庫に到着したアイテムが品質チェックに引っかかると、ユーザーは返送料を請求される(そして、おそらく即金で支払われた代金も全額Twigに返金される)。アイテムが売れなかった場合は、アップサイクルとリサイクルが適切に行われているかどうかが確認され、どちらの方法でも対処できない場合は、慈善団体に寄付される。環境に悪いため、ごみ廃棄場送りにはしない。

クピ氏によると、Twigは現在成長重視フェーズであるため、再販ビジネスで大きな利益を出すことは考えていないという。

提示する買取価格は、動的に変化するさまざまな要因によって変わる。前述のホワイトペーパーによると、Twigは「市場ベースの価格設定アルゴリズム」を使用して、中古市場の100万点を超える商品を分析し「ブランド、アイテムのカテゴリー、市場セグメントに応じた適切な再販価格を提示している」という。

その前提の中核をなすのは、消費者にとっての総所有コストという概念を再販価値の変化に織り込むという考え方だ。これは購入パターンをシフトさせるパワーを秘めている可能性がある(例えば消費者は、環境的なダメージを与える低再販価値のファストファッションではなく、高級ファッションを選択してその価値を長期間に渡って楽しむ選択をするようになるかもしれない)。

Twigは銀行のような機能(Twigの口座を作るとTwigVisaデビットカードが発行され、国内および国際送金を行うことができる)と本業の中古品再販サービスを組み合わせたものというが、ターゲットであるZ世代と若いミレニアル世代向けの宣伝文句だ。こうした世代の若者たちは中古品市場の倹約性とサステナビリティの両方にますます強い関心を寄せている。

Twigがターゲットとする年齢層を見れば、同社のマーケティングが循環経済による環境への配慮に重きを置いている理由がわかる(「Twigは循環経済を簡単に実現し、サステナビリティの高いライフスタイルを選択できるようにします」とグラフィックを多用したレトロ風のウェブサイトは謳っている)。

特にZ世代はサステナビリティ世代と呼ばれ、この世代の若い消費者は「モノを所有することよりも使うことを優先する」とTwigのホワイトペーパーに書かれている。

こうしてみると、銀行の機能を、文字どおり経済的価値を保存する場所ではなく、再販価値の交換所および仲介者として捉え直すことが非常におもしろく見えてくる。消費者は、あらゆるモノを擬似通貨に変えて、所有したいモノややりたいことの支払いに充てることができる(ハイテクによるバーター取引の再発明と言ってもよいだろう)。

しかし、Twigのビジネスにブロックチェーンが深く組み込まれていることを考えると、同社の主張するサステナビリティには別のほころびが見えてくる。

Twigのテクノロジーは最初からブロックチェーンを基盤として構築されているが、同社のウェブサイトのユーザー対面型の説明からそのことに気づくのは難しい。TwigのシリーズAで公開されたプランでは、Z世代向けの環境配慮型マーケティングがまったくうまくいかない危険がある。というのは、PRでは、Twigを「世界初のWeb3対応グリーン・ペイメント・インフラストラクチャー」と称し、その立ち上げに、最近のWeb3ハイプをうまく利用しようとしているからだ。

この来たるべき機能により、ユーザーは、実世界の資産を「トークン化」して「数秒で取引可能にできる」と、リリースノートには書かれており、さらに次のように続く。「Twigを使用すると、デジタルアイテムと物理アイテムをマネタイズして新しい方法で取引できます。このアプローチにより、ユーザーはチェックアウトページで手持ちのアイテムを売って、暗号資産を購入したり、衣類や電子機器を売ってNFTを購入したりできます」。

暗号資産とNFTの取引が「グリーン」に行われることが本当に希望のあることなのかどうかはよく考えてみる必要がある。

結局、暗号資産に使われるエネルギーコストそれ自体、地球に壊滅的な悪影響を与える要因のように見えなくもない。

例えばケンブリッジ大学が2021年行った研究は、1つの暗号資産(ビットコインなど)だけで、アルゼンチン全体の年間エネルギー消費量を超えていることを示している。

2021年3月に実施された別の研究によると、ビットコインはノルウェーと同じ量のエネルギーを消費したとし、ビットコインのCO2排出量はまもなくロンドンの大都市圏全体で生成される排出量に匹敵するようになると予測している。

要するに、ブロックチェーンベースの暗号資産(もちろんトランザクションを承認するためにプルーフ・オブ・ワークを必要とするもの)の悪名高い非効率性は、サステナブルとは程遠いものに思えるということだ。

しかもブロックチェーンはもっとひどいエネルギーの浪費に関わっている。すなわち、NFT(代替不可能なトークン)の台頭である。NFTでは、ブロックチェーンの上にデジタル収集品を取引するレイヤーを追加することで、エネルギー集約的なトランザクションが必要となり、そうしたトランザクションが促進される。

(ファッションやステータスシンボルとしての)NFTをめぐる現在の騒動と そうしたデジタル資産の小売取引、およびエネルギーを燃やして収集品ピクセルをシフトさせることで非常に手っ取り早くお金を作り出すことができるという提案によって、このエネルギーの焚き火にさらなる燃料が注入されている。

2021年、あるデジタルアーティストの分析によって、1つの平均的なNFTは、EUに住んでいる1人の人間の1カ月分の電力消費量に相当するCO2を排出することが示された。以前と同様、ユーザーにトークン化とモノ(または、デジタル収集品)の取引で忙しくするように促す機能を、どのような形であれ「グリーン」に稼働させる方法を思いつくのは難しい。

しかし、クピ氏はこの反論にもひるまない。

第一に、Twigが基盤としているブロックチェーンインフラストラクチャーは他のブロックチェーンよりもエネルギー効率が高いと同氏はいう。

「ブロックチェーン自体はテクノロジーとして環境に悪いわけではありません。ブロックチェーンにはさまざまな応用事例があります」と同氏はいう。「当社の基盤となっているHyperledger Sawtooth(ハイパーレッヂャーソートゥース)というブロックチェーンは、他のソリューションに比べてエネルギー消費量が極めて小さいという特長があります」。

「つまり、当社はエネルギーを大量に消費するソリューションの使用を最小限に抑えたいと考えています」。

また、Twigは内部のエネルギー消費量を計算して、環境への影響を数量化しており、対抗策としてカーボンオフセットの取り組みも行っているという。

さらには、大気圏からCO2を排除するプロジェクトも支援している。

ただし、個々のプロジェクトがどの程度実行可能で信頼できるものかは、まったく別の問題だ。

Twigは自社のエネルギー消費を最小化し、CO2排出量をオフセットしようとしているかもしれないが、それより大きな環境への影響が、二次使用つまり、TwigのユーザーとサプライヤーがTwigを利用した結果として発生する消費、エネルギー使用、CO2排出量によって起こる可能性がある。

こうした関連のある間接的な影響(サステナビリティレポートの用語でScope 3排出量と呼ばれる)を計算することは、企業の直接的なエネルギー使用を内部的に監査するよりもはるかに難しい。とはいえ、Scope 3排出量は企業のCO2排出量の大きな部分を占める傾向があることも確かだ。このため、そうした間接的な取引、排出量、影響をなきものとして片付けてしまうことはできない。

Twigは、カーボンオフセットによって商品の配送にともなうCO2排出量を相殺するなど、明確な姿勢でScope 3排出量対策に取り組んでいる。また、B Corp認証を取得しようという野心も称賛に値する。

しかし、Twigによって拡大も縮小もするかもしれない消費者需要やトレンドに基づいて、最終的に発生するエネルギーコストを予測するのは非常に難しい。

ユーザーに暗号資産を購入し、NFT取引を始めるよう促すことによってエネルギーコストが発生することは間違いない。そして、たとえTwigが中古品の流動性を高めることで、消費者が新品を購入する需要が低下し、新製品の実質生産量を削減することができるとしても、このような大量のエネルギー消費にともなうコストによって環境へのプラスの影響が相殺されてしまう危険がある。

とはいえ、支払いに使用できるものがこのように根本的に見直されると(あらゆるモノで支払いができる。トークン化された価値の世界では、理論上、消費者は実際のお金を使う必要がない)、消費活動の大きなシフトにつながり、循環経済に実際に目立った変化をもたらすことができる。その結果、数十年に渡る資本主義を特徴づける使い捨て消費の悪循環から抜け出すことができる。

別の言い方をすれば、(認証をサポートすることで偽物に対抗できる)ブロックチェーンベースのトークン化と(分散台帳インフラストラクチャによって完全な所有履歴を把握することで実現される)安定度の高い査定のおかげで、モノの再販時の価値をもっと確実に予測できるなら、消費者は、持っているモノを丁寧に扱う気持ちになるかもしれない。モノの寿命が維持されれば高い売値がつくからだ。そうなれば、世界の産業はそもそも現在の半分だけモノを作れば足りるようになり、資源の枯渇によって地球が機能不全に陥る重圧から解放される。

これには確かに一理ある。

あらゆるモノを売って極めて簡単に支払いができるようにすることでお金の価値が重要視されなくなることは、価値、所有、富に対する考え方を修正するために必要な最初の一歩になるかもしれない。

クピ氏は次のように説明する。「現金を使う代わりに、自宅にある不要になったモノを使ってNFTを買うことができます。例えば使わなくなった古いiPhone(アイフォーン)を売ってNFTや暗号資産を買ったり、体験を買うことができます。ニューヨークまでの旅行費用に充てたり、次回の職業教育コースの支払いに充てたりできます。つまり、Twigの目的は、市場の流動性を高めることです。人々が使わなくなった資産を売ることでその資産に新たな第二の命を与えることなのです」。

「当社の信念は、財布にも地球にもやさしい結果をもたらすことです」。

Twigのビジョンは自身を支払いプラットフォームに変えることです。ユーザーや顧客の代わりに物理的なモノを支払い代金に変えるプラットフォームです。

「現時点では、Twigは単なるB2Cプラットフォームに過ぎませんが、ゆくゆくはB2B2Cプラットフォームにしたいと考えています。将来的には、さまざまなプロバイダーの決済ゲートウェイとして接続する予定です」とクピ氏はいい「いくつかの大手小売業者」とTwigのインフラストラクチャへの接続を許可する契約を結んでいると話した(小売業者の名前は明かしていない)。

「当社がやろうとしているのは、要するに、富の定義の再発明です」とクピ氏は付け加え、お金の概念が大きく様変わりしていると説明する。「自分が所有しているものがすべてお金として扱えるとなると、富の見方も変わってきます」。

「富とは、従来の定義では、家や車など、大きな資産の価値です。しかし、たとえばワードローブの価値は通常資産の一部とはみなされません。我々はこれを変えたいのです。すべてのモノに即時の流動性があれば、モノを現金とみなすことができます。現金だろうとGGマーモントのハンドバッグだろうと違いはないのです。ポンドで何かを買いたい場合、現金でもハンドバッグでも使えるのです」。

Twigが普及すれば、決済の未来は今よりずっとビジュアルで物質的なものになる可能性があります。例えばeコマース決済ウインドウに鋳造しておいたNFTをドラッグアンドドロップして中古のiPhoneを購入する。

あるいは、限定版のナイキのシューズを売って、ずっと楽しみにしていた都市滞在型の春休みを取る。

ダイヤモンドで覆われたすばらしい宝石を売って高級不動産を買うといった具合だ。

若い消費者たちはコモディティ化された価値交換可能なモノの世界をすでに違和感なく受け入れているようだが、年配の消費者たちはどうだろう。クピ氏は、ブーマー世代やX世代が大枚をはたいて買ったモノを手放して支払いに充てるという新しいやり方に納得できると考えているのだろうか。

サイン入りの初版本や貴重なビニールのレコードが将来の決済方法の一部に取り込まれることになるだろうか。

「正直、その答えは私にもわかりません」とクピ氏はいう。「現時点では、Twigに対するZ世代の反応は極めて良好です。また、英国のミレニアル世代、我々がターゲットとしている20代の若者たちの反応も上々です。英国外の市場に進出した際には状況は変わるかもしれません」。

画像クレジット:Twig

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

ブロックチェーン分析ツール「Dune Analytics」がCoatue主導で約80億円調達、従業員16名でユニコーンに

暗号批判者の多くは、Web3分野はミームマネーに支えられていると主張する。それらの人々にとって、Coatue(コーチュー)がブロックチェーンスタートアップの6942万ドル(約80億円)のシリーズBをリードしたニュースは、あまり驚くことではないだろう。

今回投資を受けたのは、ノルウェーの暗号分析プラットフォームであるDune Analytics(ドゥーンアナリティクス)。同スタートアップの評価額は10億ドル(約1152億円)に達した。このクラウドソースデータプラットフォームは、暗号の世界の動きを分析するダッシュボードとして、より好まれるものに成長した。Multicoin CapitalとDragonfly Capitalも、従業員16名のこのスタートアップの資金調達ラウンドに参加した。

ブロックチェーンには膨大な量のトランザクションデータが蓄積されており、Duneのようなプラットフォームは、投資家がそのデータからより多くの洞察を得られるように、Ethereum(イーサリアム)、Polygon(ポリゴン)、Optimism(オプティミズム)、Binance Smart Chain(BSC、バイナンススマートチェーン)、xDAIの各ブロックチェーンの動きを分析しようとしている。

Duneの創業者たちは、ラウンドを発表するブログ記事で「暗号データには膨大な情報が含まれていますが、インセンティブのある有能なアナリストと優れたツールがなければ、この情報は表面に出てこないままです」と述べている。「今回の資金調達により、我々は暗号データをよりアクセスしやすいものにするという当社のミッションをさらに強化し、100万人のDuneウィザード(Web3データアナリスト)をWeb3にもたらすことを約束します」。

Coatueの今回の投資は、2021年8月に実施されたDune Analyticsの800万ドル(約9億2000万円)のシリーズAに続くものだ。

関連記事:分散型「マーベル」のようなNFTメディア帝国を目指すPixel Vault、約115億円の資金を調達

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】オンチェーンの資金調達はスタートアップの資金調達を変える

Web3はVCが支配する、とJack Dorsey(ジャック・ドーシー、Twitterの共同創業者)はツイートする。そうだろうか。Web3は私たちが作るものであり、許可された場合のみVCが所有するのだと筆者は思う。私たちは今まさにWeb3を構築しており、その過程でどこに行くのか、どのように資金を調達するのかをコントロールするできるのは私たちである。

分散と自律性を真剣に考えるなら、時代遅れのVCの基準に従わなければならない理由はない。スマートコントラクトで管理されたオンチェーンの資金調達など、他の手段が存在する。プロジェクトが直感的に利用できる、より公平で、完全に透明性があり、投資家や開発者にとっても適応性がある手段である。

筆者が完全なオンチェーン方式を資金調達の未来(あるいは少なくとも次の大きな進化)と考えるのはこれが理由である。

長く困難な道のり

Web3がVCに支配されるとしたら、Web2.0がすでに億万長者、コングロマリット、多国籍企業に支配され、文化的影響力、政治的権力、そして人類がこれまでに経験したことのないような巨額の富を得ていることも頷ける。それならば、消えゆく光に逆らっても仕方がないが、ここに問題がある。私たちがインターネット上で行うことは、文字通りすべて、彼らに権力をさらに独占させ、彼らにより多くの資本を生み出すように設計されている。私たちがログインするたびに、彼らには富が転がり込む。

そう考えると、ジャック・ドーシーのようなベテランのWeb 2.0プレイヤーが、Web3の将来について冷ややかに見ているのも不思議ではない。今後、私たちが覚えておくべきことは、Web3はスタンドアロンで存在するということである。Web2.0に取って代わるものではなく、彼らのプレイグラウンドはそのまま存続する。

Web3は、Web2.0とは独立して同時に存在する。信じようと信じまいと、この機会を倫理的な要請として捉え、インターネットの概念を反復し、前世代の過ちを正し、おそらく社会の機能の最も基本的な部分に影響を与え始めなければならないと考える人もいる。企業に力を与えるのではなく、コミュニティに力を与えるのだ。

結局のところ、現在企業が支配しているものと同じプラットフォームを個人に与えるためのオープンソースがWeb3なのだ。私たちの新しいフレームワークの存在意義は、個人に力を与え、年齢、人種、性別、国籍を問わず、すべての人がより公平にアクセスできるようにすることにある。現状を打破するためには、誰かが立ち上がらなければならない。

未来は私たちが描くものである

この崩壊は、具体的にどのように起こるのだろうか?出発点はオンチェーンに他ならない。現在、Web3のプロトコルや分散型アプリを構築している開発者の大半は、新世代のクリエイターとして哲学にむしゃぶりついて仕事をしている。

彼らは、古いモデルがどのように機能しているか、誰がサービスを提供しているか、その状態を維持できるようにどのように設計されているかを理解している。会社の設立、資金調達、取締役会の設立、従業員の採用などを知る従来のスタートアップアクセラレーターの経験は、開発者たちの仕事をさらに向上させるための強固な基盤となる。

ブロックチェーン技術は、すでにオープンソースの不変的な台帳を提供している。この台帳は、Web3を生み、これを推進してきた理念と直接沿う形で、すべての資金調達ニーズを満たすために使用できる。私たちは、自己実行型のスマートコントラクトを利用して、資金調達のオープンポイントとクローズポイントをコントロールし、すべての投資と条件をオープンにして検証可能性をもたせることができる。

Web3のプロジェクトでは、透明性は非常に重要である。このようなオンチェーンで一般に検証可能な資金調達方法を利用すれば、偏りがないことを保証できる。このモデルでは、すべてが公開され、すべての投資家が同じ土俵に立っていることがオープンなので、裏取引はできない。さらにいえば、投資がブロックチェーン上で確定するたびに、株式取引や構造が明らかになる。

もう1つの方法は、ホワイトリストを利用することである。ホワイトリストを利用すると、プロジェクトに純粋に情熱をもち、それに関わっている人々が、経済的に最も大きな影響力をもつことができる。

暗号アドレスを事前に選択することで、すべての審査とデューデリジェンスを事前に完了し、プロセスを効率化することができる。資金調達契約は汎用性があり、理由を問わず任意のアドレスをホワイトリストに登録することができるため、権限はすべてスマートコントラクトを発行したチームに残る。これにより、煩雑で時間がかかりがちなプロセスをきめ細かくコントロールすることができる。

良心的な創造

オンチェーンの資金調達モデルは、開発者に対してより公平なアプローチを提供し、教育、雇用、信用、コネクションなどの社会経済的な障壁を回避することができる。これらのモデルでは、プロジェクトだけしかもっていない開発者でも、プロジェクトをスタートさせることができる。プロジェクトとその潜在価値だけが重要となる、より実力主義的な機能が提供されるのだ。

小規模なプロジェクトでも、ピッチデッキを作成したり、銀行口座を開設したり、今までのように積極的に投資家を探したりする必要がなくなり、リソースと時間を節約することができる。

これこそが、ブロックチェーンという産業を生み出したコミュニティ主導の理念である。シンプルなツールを導入することで、プロジェクトごとに理にかなう方法で成長と資金調達を促進することができる。これにより、開発者、愛好家、ユーザーによるWeb3の所有が可能になる。

まだ長い道のり

オンチェーンの資金調達は、従来のVCモデルを完全に消滅させるものではない。なぜなら、開発者は優れた投資家と一緒に仕事をすることで、貴重な視点を得ることができるからである。VCは、ビジネスモデルや財務モデルの分析、スケールアップの計画、実行リスクや市場での企業のポジションなどを評価する専門家である。このような特性に重点を置くVCは、今と同じように価値をもち続けるだろう。どのプロジェクトも、企業の成長と成功を支援した実績のある人材を求めている。

オンチェーンは特効薬ではない。それは単に、オープンで公平な資金調達のプロセスを実現し、開発者が最も便利だと感じるメカニズムに近づけるための、(今のところ)最高の枠組みである。

この新しいイノベーションに注目し、新しいつながりがその可能性を最大限に発揮できるように歓迎したい。

編集部注:本稿の執筆者Parker McCurley(パーカー・マッカーリー)はDecent Labsの共同設立者でCEO。

画像クレジット:cnythzl / Getty Images

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(文:Parker McCurley、翻訳:Dragonfly)

ザンジバルの住民にブロックチェーンで構築されたモバイルネットワークを届けるWorld Mobile Group

インターネットの急激な普及により、世界が急速にグローバル・ヴィレッジ(地球村)へと移行する中、一部の人々は、遠隔地にいるために取り残されやすい状況に置かれている。例えば、東アフリカの自治島であるザンジバルの大半の地域では、地上ケーブルや衛星ネットワークによるサービスが不足しており、人口の大部分がカバーされていない。しかし、世界的な通信事業者であるWorld Mobile Group(ワールド・モバイル・グループ)の計画が具現化すれば、今後数カ月のうちにザンジバルの住民たちの多くが初めてインターネットに接続することになるだろう。

World Mobileは、自由空間光通信やその他の無線送信機などのスペクトルを使用して、ラストマイル接続のインフラストラクチャを構築している。こうしたスペクトルはライセンスを必要とせず、より低コストのインターネットアクセスを実現できる。

このスペクトルが複数のエアノードに接続してメッシュネットワークを形成し、遠く離れた村へのインターネットカバレッジにつながっていく。

「大陸全体に敷設された光ファイバーは数多くありますが、私たちは光ファイバーのラストワンマイルに着目し、自由空間光学やその他の無線帯域のような、ライセンス不要の代替スペクトルを使用しています」と、World Mobile GroupのCEOで創業者のMicky Watkins(ミッキー・ワトキンス)氏はTechCrunchに語った。

ワトキンス氏によると、ライセンスを必要としない代替スペクトルを利用することで、大幅な節税効果が得られ、ユーザーにとってより安価なインターネット環境を生み出すことができるという。

「これらの代替スペクトルを使用してバックホール(アクセスノードとコアネットワーク間の接続)を構築し、人々がそのバックホールから受信できるデバイス(ノード)を作成します」とワトキンス氏。

持続可能性に向けて、このエアノードは約7000ドル(約79万円)の一時費用で民間主体が所有することになる。人々がそのアクセスポイントを介してインターネットに接続することで、収入、あるいは同通信事業者の暗号資産であるWorld Mobile Token(WMT)の形で報酬を受け取り、その初期投資は経時的に回収されていく。またこのネットワーク事業者は小規模金融機関と協働しており、ノードを購入する起業家に資金の融資を提供する。

各エアノードは、500〜700人に信頼性の高いWi-Fiインターネットを供給する。また、統合された太陽電池式投光器による公共照明などの補助的なユーティリティも備えている。

シェアリングエコノミーの概念は、メンテナンス、セキュリティ、リースにかかる運用コストを削減すると同時に、自立したビジネスモデルを支えるものだとワトキンス氏は述べている。

「今では住民に選択の余地があります。家畜を所有するのか、それとも電気通信インフラの一部を所有して電気通信プラットフォームを運営する方が良いだろうか?この選択肢はかつてなかったものです。それゆえ私たちは、Uber(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)と同じように、シェアリングエコノミーモデルの下で運用を進めています」。

World Mobileは現在、5つのパイロットサイトで約3000の顧客にサービスを提供しているが、コネクティビティへの取り組みを加速させるため、2022年1月までに30サイトに拡大する計画だ。

ワトキンス氏によれば、現在のユーザーがインターネットの利用に費やす金額は月に4ドルほどだという。同事業者は、ユーザーがインターネットに接続するためにフィアット通貨の現金を投入したり、あるいは同社のデジタル通貨であるWMTを購入したりするベンダーのネットワークを有している。

World Mobileは、ザンジバルを5年以内にカバーするという野心的な計画を抱いている。150万人の全人口がインターネットを利用できるようにし、Zanlink(ザンリンク)のような従来のネットワーク企業や、通信ネットワーク拠点および通信事業者として知られるGlobalTT(グローバルTT)などの衛星インターネット企業との競争に乗り込む。

「海岸線全域、そして本土(タンザニア)とザンジバル境界との間を含む、ザンジバル全体でのコネクティビティを可能にするパイプラインを通じて、IoTの実装や人々のためのコネクティビティを確保する複数の取引が進んでいます」とワトキンス氏。

同社は、すでに操業を開始しているケニアとタンザニアで、今後数カ月のうちにこのネットワークを本格展開する予定だ。

ワトキンス氏はこう語る。「これは1つのムーブメントであり、住民たちが運営する世界最大のモバイルネットワークになる可能性があります。これまで誰も行ったことがないものです。それこそが、私たちの目指していることです」。

ザンジバルは東アフリカの自治島で、人気の観光地だ。World Mobile Groupは、接続されていないユーザーをオンラインにするためのラストマイル接続インフラを構築している(画像クレジット:World Mobile Group)

コネクティビティを活用したデジタル経済構築へのザンジバルの取り組み

インターネットに接続する市民の増加にともない、ザンジバル政府はデジタル経済のフレームワークの導入を開始した。この計画は10年余り棚上げされていたものである。

同政府が構想し現在進行中の数多くのアイデアの中には、コネクティビティを活用してブルーエコノミーを成長させること、そしてザンジバルのブルーエコノミーを違法な漁労者から守るソリューションを開発することが含まれている。

ザンジバルの海洋ベースの活動は、労働力の33%に雇用を提供し、島のGDPの29%超に貢献している。しかし、より優れたテクノロジーの力で、海洋ベースの富からさらに多くのことを実現できる可能性がある。

コネクティビティはまた、すべての管理タスクとプロセスの自動化につながるインフラストラクチャの構築にも寄与する。政府と市民、企業、従業員、政府機関との相互作用を可能にする電子政府システムが確立されることになる。この投資により、サービスや情報を求めて物理的にオフィスを訪れる必要がなくなった市民にとって、政府がよりアクセスしやすいものになるだろう。

「新政権はデジタル変革に真剣に取り組んでいます。そこに到達する必要があるのです。ただし、まず第一に、誰もが手頃な料金でインターネットにアクセスできるようにしていく所存です」と、E-Government Agency of Zanzibar(eGaz、ザンジバル電子政府機関)の事務局長Said Seif Said(サイード・シーフ・サイード)氏は語っている。

同機関は、公的機構全体におけるICTの普及を強化する政策、基準、その他の慣行を推進するために設立された。

「統合されたブルーエコノミーマネジメントシステムのような、新たなソリューションを導入する可能性があります。衛星自動識別システム、船舶マネジメントシステム、ドローンなどが含まれるものです。いずれの要素も、違法な未報告漁業や未登録漁業の問題の解決を目的としています。これらすべてのテクノロジーに、適切なコネクティビティが必要です」。

デジタル化の緊急性は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより部分的に拍車がかかり、ザンジバルのデジタル政府とデジタル経済の計画を加速させた。ザンジバルは現在、こうした移行に向けてペースを速め、失った時間を埋め合わせようとしている。

「新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、あらゆることを行う上での方法に大きな変化が生じました。市民が必要なことを自宅で行えるよう、支援する体制を整えなければなりません。ICTを適切に活用し、手の届きやすい、効果的かつ効率的な方法で、国全体の行政サービスにアクセスできるようにする必要があります。そこで、World Mobile GroupとInput Output Global(IOG、インプット・アウトプット・グローバル)との連携が重要な役割を担っています」とサイード氏は続けた。

今回の提携では、Cardano(カルダノ)ブロックチェーンを支えるブロックチェーンおよびデジタルID企業のIOGが「追跡可能なデジタル識別」を提供する。レジストリシステムにブロックチェーンテクノロジーを実装し、ザンジバルのシステムの自動化を進めていく。また、バックエンドの政府システムを統合して、ビジネスプロセスの自動化を可能にし、政府機関内のコミュニケーションフローの促進を図る。

World Mobileの加入者は、教育、銀行、医療などのサービスに向けたIOGのデジタル識別ソリューションAtala PRISM(アタラ・プリズム)にアクセス可能となる。

一方、ザンジバルはブロックチェーンアカデミーを立ち上げ、2022年の初めには、ブロックチェーンの未来の中心地となる観光地として自らを位置づけ、カンファレンスを開催する予定である。

画像クレジット:World Mobile Group

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(文:Annie Njanja、翻訳:Dragonfly)

【コラム】DAOはメディアに革命をもたらすのか、それとも金持ちの遊び場を作るだけだろうか?

2021年11月に、ConstitutionDAOという何千人もの暗号資産ファンを擁する仮想フラッシュモブが、米国憲法の初版の1つを購入するために約4500万ドル(約51億8000万円)をクラウドファンディングした。オークションには敗れたが、彼らはすでに、ニュースレター会社MorningBrewが配布した絵文字入りのスウェットシャツのラインを立ち上げていた。

ソーシャルメディアに無数のミームを氾濫させ、クラウドファンドへの参加を呼びかけたこの動きは、今やベンチャーキャピタル界で大流行している自立型分散組織(DAO、Decentralized Autonomous Organization)の一例にすぎない。Bitcoin Core(ビットコイン・コア)のようなオープンソースプロジェクトと同様に、DAOプロジェクトには自発的な参加者と受動的なフォロワーの両方が含まれており、その多くは有償のコアコントリビューターによって管理されている。コントリビューターに報酬を支払うためにどのように資金が集められるかは、プロジェクトによって大きく異なる。

他にも、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が支援するFriends with Benefits(FWB)など、複数のDAOプロジェクトが6億ドル(約692億円)を超える資産を運用している。DJやイベントコーディネーターの経験を持つFWBのリードオーガナイザーAlex Zhang(アレックス・ザング)氏は、2021年5月に収益性の高いDAOを統括しており、同クラブでは現在、奨学金プログラムを設けて四半期ごとに最大40人の奨学生を受け入れているという。このプログラムは最長3年間の資金提供を受けている(それ以外の場合はフルメンバーとして約8000ドル[約92万円]を要する)。

人々は、アイデアが即座に資金調達につながるか、立ち消えとなるかを確認する目的で自発的にDAOを開始することも多く、また暗号資産に関する試みを行うためのよりソーシャルな方法を含む、さまざまなネットワーキングの機会のためにDAOに参加することもある。ここで話を戻すと、これらのDAOの多くは、基本的に暗号資産を利用するメディア企業である。DAOと、The Informationのような(フィアットの)サブスクリプションファンドによる組織の間には、重複する部分も数多くあるが、主な違いは、FWBがジャーナリズムのイベントではなくパーティーを開くことだ。

手短にいえば、FWBは投資家の友人たちのグループで、2020年9月に資金をプールし、自分たちのクラブに入ってトークンを買いたいと望むEthereum(イーサリアム)ファンを募ったものだ。その後、マイアミ、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルスでトークン保有者のための独占パーティーを開いた。ザング氏によると、FWBには現在、2000人の正会員に加えて、より安価な読み取り専用または地域限定のメンバーシップを持つ少数のファン集団が含まれているという。

「ZINE(個人やグループで制作する出版物)のようなマルチメディア資産を作成する編集・コンテンツチームを組織し、他の形式のコンテンツにも確実に移行しています。近々ラジオ局を立ち上げ、さまざまなDJをブックする予定です」とザング氏は語る。「私たちはサブスクリプション料金モデルから資産保有に移行しつつあります」。

特に有名なDAOとしては、ジャーナリストのDaisy Alioto(デイジー・アリオト)氏とKyle Chayka(カイル・チェイカ)氏が創設したニュースレターDAOプロジェクトDirt、Uniswap(ユニスワップ)のようなツールのユーザーのための暗号資産取引DAO、さらにFWBやPleasrDAOなどの暗号資産ソーシャルクラブが挙げられる。PleasrDAOのようなアートに特化したDAOは、JPEGからレアなアルバムまでのあらゆるものを含むアートコレクション収集のために数百万ドル(数億円)を集め、分配している。

PleasrDAOの共同創設者であり、2014年のEthereumトークンの最初の販売に参加したJamis Johnson(ジャミス・ジョンソン)氏は、次のように述べている。「DAOの会員総数は74人です。他のDAOと同様に、絶え間ない浮き沈みがあります。フルタイムの従業員として専任のオペレーターが在籍しており、約5人ほどになると思います。主なコミュニケーション手段はTelegram(テレグラム)です」。

これまでのところDAO参加者のほとんどは、さまざまなDAOにわたり、Ethereumの共同創設者Joe Lubin(ジョー・ルービン)氏のポートフォリオに属するMetaMask(メタマスク)、Gitcoin(ギトコイン)、Gnosis(グノーシス)、Infura(インフラ)といった企業に依存している。特にMetaMaskは現在、月間アクティブユーザー1000万人を擁しているという。また、Gitcoin DAOは6億4300万ドル(約741億円)を超える資産を持つと推定されている。

GitHubがスポンサーとなった調査によると、2021年時点で、DAO参加者422人のうち33%がFWBのようなDAOから月に1000〜3000ドル(約11万5000~約34万6000円)を受け取っている。回答者は主に、2020年以前からEthereumプロジェクトに深く関わっていた若い男性だった。現在のDAO参加者のほとんどが富裕層の暗号資産ファンだとしても、それはこのムーブメントのより広範なゴールではない。

FWBの投資家であり、The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)がSubstack(サブスタック)やPatreon(パトレオン)、暗号ブログプラットフォームMirror(ミラー)といったクリエイターエコノミー企業の背後にいる「It Girl」投資家と呼ぶLi Jin(リー・ジン)氏の言葉を借りれば、DAOの目指すところは「暗号資産への新規参入者のためのフロントドア」になることだ。

その一方で、一部の機関はすでにDAOを受け入れており、ビジネスを行っている。ConstitutionDAOはSotheby’s(サザビーズ)に入札し、PleasrDAOは希少なWu-Tang Clan(ウー・タン・クラン)のアルバムをUnited States Department of Justice(米国司法省)から直接購入した。ワイオミング州は2022年に入り、DAOを州として初めて独自の法制度として認めている。ただし、申請手続きはまだ難しく、制約が課される可能性もある。

DAO MastersとFWBのメンバーであり、環境に焦点を当てたEcoDAOの創設者であるDavid Phelps(デイヴィッド・フェルプス)氏は、現時点で少なくともDAOムーブメントにより、人々の慈善活動への寄付が促されていると述べている。実際、このスペースには、奨学金プログラムやさまざまな慈善活動への数百万ドル(数億円)の寄付があふれている。

「ドルのエコトークンをリリースすれば、私たちはすべて問題なく支払いを受けることができるでしょう」とフェルプス氏は語り、自らのDAOの試みに言及した。先住民の土地改革と熱帯雨林の再生のための慈善事業に、これまでのところ3万7000ドル(約427万円)余りが集まっている。「ですが当面の目標は、アーティストたちが互いに支え合い、生涯にわたって収入を得られるような持続可能なエコノミーを作ることです」。

参加するには費用がかかり、困難がともなうかもしれないが、DAOムーブメントはすでに「ステータスを寄付に結びつけ、人々にパーティーの支払いを促し、意義のある大義にお金を再配分する」ことで価値を高めることを促進していると同氏は付け加えた。

しかし、このきらびやかな部屋の中の象は、Ethereumのベテランであっても、これらの数百万ドル規模の暗号資産クラブのメンバーがどのように税金を支払うかを誰も認識していないことを意味する。DAOムーブメントに関わっている中産階級の参加者たちの多くは、彼らが数千ドル(約数十万円)もの税金をため込んでいることに気づいていない。

「私たちは多くの請負業者や開発者、DAOのために働いている人々が税金申告の要件を知らないのを目の当たりにしてきました」と、Gordon Law(ゴードン・ロー)の税理士Andrew Gordon(アンドリュー・ゴードン)氏は話す。「通常、こうした事業者は1099(米国税庁の個人事業主向けの申請書)を発行する必要があります。社会保障番号なしでどうやって発行するのでしょうか?1099を提出しないと罰則が科せられます」。

さらにゴードン氏は、こうしたDAOの多くはフリーランスのコントリビューターやオペレーターに、ドルやその他の通貨ではなく独自のメンバーシップトークンで支払っていると付け加えた。これはトークンの「公正な市場価値を決定する責任は納税者に帰する」ことを意味する、とゴードン氏。DAOが自動的にNFT(非代替性トークン)をメンバーに贈与する場合、これは納税義務についての疑問を提起するかもしれない。2022年の納税シーズンが到来したとき、これらのデジタル資産の価格が急落すると、一部のDAOコントリビューターは支払い能力を超える税金を支払う義務を負う可能性がある。

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    FWB Paris party(画像クレジット:Alex Zhang)
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    FWB Paris party(画像クレジット:Alex Zhang)
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    FWB Paris party(画像クレジット:Alex Zhang)

「受け取った暗号資産が、受け取った時点での公正な市場価値に基づいて課税されることを知らなかった人から、電話がかかってくることがよくあります」とゴードン氏は続ける。「NFTとの関係でさらに複雑化する点は、評価の問題【略】最低価格と平均市場価格のどちらがその価値になるのでしょうか」。

すでに多くの若者たち、前述のDAOに参加する余裕がない人たちが、これらの試みを模して独自のものをローンチしている。Shannon Li(シャノン・リー)氏のケースもそうだ。

同氏は2018年に大学を卒業した後、パンデミックの初期には嫌だった仕事を辞め、それ以来コーディングのブートキャンプに参加している。現在独自のDAOを作っているが、それは人気の高いDAOの会費を払う余裕がなく、自分が応募した無料のオポチュニティにも反応がなかったからだ。こうして同氏は、トークンなしで開始することで、法的リスクを巧みに軽減することに成功した。

「DAOの最大の懸念は、実際には合法性と弁護士費用です」とリー氏は言い、DAOトークンの中には証券として規制されるものもあるかもしれないと指摘した。「このことは、トークンの販売が流通市場で行われるサービスではなく、サービス・フォー・サービスのDAOを作成したいと思う大きな理由です」。

リー氏は、女性のための暗号資産教育コンテンツに焦点を当てた80人で構成されるDiscord(ディスコード)サーバー、WEKrypto DAOを立ち上げた。最終的には、DAOにトークンゲートのグループチャットとNFTのイベントチケットを導入する計画だ。今のところ、ブートストラップ段階では「暗号資産についてもっと学び、他の人たちも利用できるように公開し、願わくば共有学習のジャーニー上で関係を築いていく」ことに注力している。

このムーブメントが、ルービン氏やVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏のようなEthereumの創設者たちによって育まれ、サポートされた企業を超えて成長するにつれて、DAOのエコシステムがどのようになるかはまだわからない。(すでに一部の人たちは、Bitcoin[ビットコイン]やSolana[ソラナ]のようなブロックチェーンを使いながら、同様のDAOのコンセプトを実装し始めている。)明るい面としては、FWBやIndex CoopのようなDAOにより、このムーブメントの多様性を改善するための多くの取り組みが始まっていることだ。

「私たちのコミュニティは、参加できなかったアーティストやクリエイター、その他の人たちに報いるために、1万8000のトークンを使ったフェローシッププログラムを立ち上げました」とザング氏はFWBについて語っている。「私たちは、普遍的な基本的資産の所有権を提供しています。この世界で何かを創造しているのであれば、その価値の一部を手に入れることができるはずです」。

今日でも、DAOたちが使っているツールは実験的なものだという見方が依然として大勢を占めている。Awesome People Ventures(オーサム・ピープル・ベンチャーズ)の創設者で、PartyDAOを含む複数のDAOのメンバーであるJulia Lipton(ジュリア・リプトン) 氏は、広く使われているGnosis Safe(グノーシス・セーフ)ウォレットに数百万ドル相当のデジタル資産を保有することは依然として「リスクを感じ」、DAO実験の技術面を完成させるには「途方もない時間」を要することが多いと述べている。技術的な問題に加えて、中間層のユーザーにとっては取引手数料が法外に高い場合もあるという。

「先は長いです。税金や規制だけでなく、DAO全般に関しても、未知のものが山ほどあります。コミュニティの所有権という概念については、まだ完全には解明されていません。私たちはこれらのプロジェクトをすべてA/Bテストし、公の場で実験を行ってきました」とリプトン氏は語る。

リプトン氏がDAO Mastersの設立に協力したのはそのためである。何十万ドル(何千万円)もの資金をクラウドファンディングして、新規参入者がDAOに関わるオポチュニティ、スキル、リスクについて学べるように支援した。

「私が最も情熱を注いでいることの1つは、価値の創造が価値の帰属と分配に結びつくことです。うすればより公正で公平なシステムを作ることができるでしょうか?」とリプトン氏はいう。

最終的には、DAOムーブメントの主要なインサイトは、他の方法では難解なメタバースに属しているという感覚に対して、人々がどれだけのお金を払おうとしているかということかもしれない。DAOのメンバーは、受動的なオーディエンスではなく、トライブ(同じ志を持つ人々の集まり)である。そのため、彼らは自分たちが代表されていると感じるメディアや体験に対して(お金か労働力のどちらかで)喜んで支払う。

あらゆる暗号資産トレンドと同様に、この帰属意識は金持ちになるという希望によって増幅される。DAOの参加者の中には、表立ったコメントは控えたものの、参加者自身のスタートアップやDAOに投資する可能性のある投資家とネットワークを作りたいと考えてDAOに参加していることを強調する向きもあった。

それは、Andreessen Horowitzの投資家ネットワークで埋め尽くされたDAOに所属することの魅力の一部だ。ジン氏は自身もこの巨大ファームの出身であり「(FWBの創設者である)Trevor McFedries(トレヴァー・マクフェドリーズ)氏とは何年来の友人」であると語っている。またザング氏は、マクフェドリーズ氏がFWBに招かれるずっと前から個人的な友人だったという。DAOのメンバーは、彼らの友人を定期的に高額な雇用や投資のオポチュニティに招待する。これらの暗号クラブに参加することは、いくつかの点で、アイビーリーグの友愛会に匹敵する。

一方、FWBの投資家であるジン氏は、Twitter(ツイッター)やポッドキャストで、クリエイターがより直接的にユニバーサルベーシックインカム(UBI)の恩恵を受けられるようになることへの期待を率直に語っている。ニュースレターのDirt(ダート)やForefront(フォアフロント)のライターたちのプログラムのようなDAOのその他の実験は、DAOの将来の可能性を垣間見せてくれる。それは、お互いのベンチャー支援によるグループチャットに投資している裕福な友人たちだけにとどまらない。

Forefrontのライターへの支払い能力は1稿当たり400ドル(約4万6200円)ほどで、数百人のトークン保有者を抱えるコミュニティの成長に支えられているが、目につくものではない。税金の問題やEthereumの取引手数料を考慮しても、その価格は一部の主要な従来型の小売店が最近ライターに支払っている額と変わらない。DAOのアドボケートたちが、より公平で分散化されたメディアのエコシステムを目指していると信じていることは明らかだ。コンプライアンスモデルが出現して初めて、リスクと責任がこれらのネットワークにどのように分散されるかが明らかになる。

「DAOは潜在的に、労働市場が機能する新しい方法と新たな経済的インセンティブを解き放ちます」とリプトン氏は語る。「コミュニティのトークンが長期的にどうなるかはまだ結論が出ていませんが、コミュニティの所有権という概念は残るでしょう」。

情報開示・著者はKomorebi CollectiveDes Femmes DAOの2つのDAOプロジェクトの創設メンバーである。

画像クレジット:Andrii Yalanskyi / Getty Images

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(文:Leigh Cuen、翻訳:Dragonfly)

実在する不動産をNFTとして購入可能に、Propyが米国でプラットフォームの展開を開始

2021年、初期のブロックチェーンスタートアップであるPropy(プロピー)が、このテクノロジーを使って現実の不動産販売をスムーズに行えるようにするために、スマートコントラクトの概念を導入することを計画しているという記事を掲載した。同社は実際にNFT(非代替性トークン)としてアパートを販売し、NFTを使って法的手続きを効果的に処理することに成功している。ただし、そのアパートはウクライナにあるものだった。同社は今回、この概念をそっくりそのまま、法律的な問題がまったく異なる米国で展開を始める。

関連記事:キエフのアパートが収集可能なNFTとして初オークション、ブロックチェーンスタートアップPropyが企画

同社は現在、米国で不動産を担保としたNFTを起ち上げることによって、このプロセス全体をさらに拡大し、文字通り不動産の所有権をNFTに変えるための技術的・法的な枠組みに取り組んでいる。

このテクノロジーは、所有者や仲介業者に向けて販売されることになっており、Propyは不動産NFT化サービスの一環として、2月8日にフロリダ州にある2つの住宅用物件をオークションにかける予定だ。

その仕組みは次のようになっている。Propyによると、購入の記録は変更不可能なブロックチェーン上に置かれ、所有権を示す法的文書へのアクセスを提供する。これによって、買い手はコストを削減でき、購入のプロセスが短時間で簡単になるため、わずか数分で物件を購入することができる。

Propyの計画は、このサービスをグローバルに拡大し、ブロックチェーン技術を使って不動産を購入するための単一のフレームワークを提供することである。

うまくいけば、買い手はフロリダ州にある投資用不動産を手に入れ、所有権がNFTに関連づけられた米国にある実体の所有者となることができる。フラクショナル・オーナーシップではなく、担保にして借り入れが可能なDeFi資産となるのだ。

Propyの共同創業者でCEOのNatalia Karayaneva(ナタリア・カラヤネバ)氏は、次のように述べている。「私たちはPropyで、必要なすべてのスマートコントラクトと、米国内のあらゆる不動産物件のトークン化を可能にする互換性のある法的枠組みを開発してきました。NFTの販売額は2021年12月に40億ドル(約4600億円)に達しましたが、実物資産がその市場のかなりの部分を占めるようになるでしょう」。

2021年、PropyはウクライナでNFTを介してアパートを販売した。現在までに1600万ドル(約18億5000万円)以上の資金をベンチャー・キャピタルから調達しており、Tim Draper(ティム・ドレイパー)氏やMichael Arrington(マイケル・アーリントン)氏などから支援を受けている。

スマートコントラクトは、バーモント州アリゾナ州でこれを認める法案が可決されるなど、ますます法的効力を持つ記録になりつつある。

Propyに競合する会社はいくつかある。RealT(リアルT)はフラクショナル不動産投資プラットフォームで、世界中の投資家がトークンベースのブロックチェーンネットワークを通じて米国の不動産市場に投資することができる。SafeWire(セーフワイヤ)、かつてのSafeChain(セーフチェーン)は、不動産会社、エージェント、顧客、業界が、ハッカーの介入によって直面する通信詐欺の課題に取り組んでいる。しかし、同社はClosingLock(クロージングロック)に買収された。

画像クレジット:Andrii Yalanskyi / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NFTゲーム事業を展開するNFTARTSが1200万円のシード調達、2次元アイドルNFTメタバースゲームを開発

NFTを活用したゲーム事業を展開するNFTARTS(エヌエフティアーツ)は1月27日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による合計1200万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はエンジェル投資家2名と事業会社。調達した資金は、NFTゲームの開発とマーケティングにあてる。

NFTARTSは、「アイドルコネクト」や人気VTuber「ウタゴエ放送部♪」などのコンテンツプロデューサー宮脇元康氏が、「NFTゲーム・メタバース」に特化したスタートアップ企業として2021年12月に設立。NFTを活用したクリエイター支援事業を行うことなどを目的としている。「アイドルインフィニティ(IDOL INFINITY)」(仮称)を開発中。またオリジナルIPとしてハイクオリティなNFTゲームをリリースしていく。

NFTARTSが手がけるNFTメタバースアイドルゲームは、プレイヤーがアイドル事務所のプロデューサーとなり、担当アイドルとトップを目指して活躍するというもの。NFTを活用した「Play to earn」ゲームとなる。

NFTゲーム事業を展開するNFTARTSが1200万円のシード調達、2次元アイドルNFTメタバースゲーム開発を加速

キャラクタービジュアル(一部)

NFTホルダーの特典例としては、ゲーム内に登場するアイドルキャラクターのボイス声優オーディションへの参加、NFTホルダーによる投票オーディションで選ばれるなどがある。NFTトークンホルダーは、アイドルプロデューサーとして新人声優発掘オーディションを体験できるという。また新人声優に対して、前述の仕組みにより新たな活躍の場とNFTを活用した1次・2次収益を提供し、継続的な活動支援を行うとしている。

同作品のロードマップとしては、NFTゲームからスタートし、アイドルが活躍するメタバースを目指し展開するという。3D CGによるアイドルがメタバース空間でライブ活動を行うなど、プレイヤーはリアリティーのあるプロデュース体験を楽しめるとしている。将来的にはアイドル特化メタバースの最高峰を目指すとのこと。

開発中のメタバース空間(3Dライブステージ)

開発中のメタバース空間(3Dライブステージ)