FBIが新たに「ランサムウェアの爆発的増加」に対応する暗号資産犯罪ユニット立ち上げ

米国連邦捜査局(FBI)は、暗号資産関連犯罪やランサムウェアによる利益を追跡するための専門部署を新たに立ち上げることを発表した。

Lisa Monaco(リサ・モナコ)司法副長官は、今週開催されたMunich Cyber Security Conference(MCSC)での講演で、Virtual Asset Exploitation Team(VAXU、仮想資産搾取ユニット)の設立を発表し、この新部署は「市場がイノベーションを生み出すのと同じ速さで、それを悪用する脅威の行為者」に米国政府が対応するのに一役買うと述べた。

さらにモナコ氏は、FBIが現在100種類以上のランサムウェアの亜種を追跡していることを指摘し「ランサムウェアの爆発的な増加と暗号資産の乱用」も同チームの担当に含まれると述べた。Chainalysisの報告によると、詐欺師が2021年に世界の被害者から奪った暗号資産は77億ドル(約8860億円)以上で、前年に比べて80%増加しているという。

FBIのVAXUユニットは、暗号資産の専門家、ブロックチェーン分析、暗号資産の押収を1つにまとめ、捜査を行うとともに、FBIの他の部署にトレーニングを提供する。この専門部署は、デジタル資産の犯罪利用を調査するために2021年末に創設された米国司法(DOJ)の部門である国家暗号資産執行チーム(NCET、National Cryptocurrency Enforcement Team)の一部を構成し、特に暗号資産取引所や、暗号資産の悪用を可能にしたり犯罪行為を助長するその他の技術に重点を置いていく。

モナコ氏はこう述べている。「ランサムウェアやデジタル恐喝は、暗号資産を利用した他の多くの犯罪と同様に、犯罪者が支払いを受ける場合にのみ機能します。つまり、彼らのビジネスモデルを破壊しなければならないということです。通貨は仮想かもしれませんが、企業に伝えたいメッセージは具体的です。『私たちに報告していただければ、お金の流れを追うことができ、あなたの組織を助けるだけでなく、うまくいけば次の被害者が出るのを防ぐことができます』」。

また、モナコ氏は今週、サイバー犯罪者の検挙経験を持つ連邦検事のEun Young Choi(チェ・ウンヨン)氏をNCETの初代ディレクターに任命したことを発表した。

「NCETは、デジタル資産を取り巻く技術が成長・進化する中で、あらゆる種類の犯罪者による不正利用に対抗するための取り組みを司法省が加速・拡大していく上で、極めて重要な役割を果たすことになるでしょう」とチェ氏は述べている。

今回の発表は、2016年に暗号資産取引所Bitfinex (ビットフィネックス)のハッキングで盗まれたとされる9万4000以上のBitcoin(現在の価値は36億ドル / 約4200億円)を司法省が押収し、同省による「史上最大」の金融資産押収となった数週間後に行われた。

関連記事:米司法省がハッキングで盗まれた4160億円相当のビットコインを押収、ロンダリングの疑いで技術系スタートアップ関係者夫婦を逮捕

画像クレジット:Stefani Reynolds / Getty Images

原文へ

(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。