【コラム】オンチェーンの資金調達はスタートアップの資金調達を変える

Web3はVCが支配する、とJack Dorsey(ジャック・ドーシー、Twitterの共同創業者)はツイートする。そうだろうか。Web3は私たちが作るものであり、許可された場合のみVCが所有するのだと筆者は思う。私たちは今まさにWeb3を構築しており、その過程でどこに行くのか、どのように資金を調達するのかをコントロールするできるのは私たちである。

分散と自律性を真剣に考えるなら、時代遅れのVCの基準に従わなければならない理由はない。スマートコントラクトで管理されたオンチェーンの資金調達など、他の手段が存在する。プロジェクトが直感的に利用できる、より公平で、完全に透明性があり、投資家や開発者にとっても適応性がある手段である。

筆者が完全なオンチェーン方式を資金調達の未来(あるいは少なくとも次の大きな進化)と考えるのはこれが理由である。

長く困難な道のり

Web3がVCに支配されるとしたら、Web2.0がすでに億万長者、コングロマリット、多国籍企業に支配され、文化的影響力、政治的権力、そして人類がこれまでに経験したことのないような巨額の富を得ていることも頷ける。それならば、消えゆく光に逆らっても仕方がないが、ここに問題がある。私たちがインターネット上で行うことは、文字通りすべて、彼らに権力をさらに独占させ、彼らにより多くの資本を生み出すように設計されている。私たちがログインするたびに、彼らには富が転がり込む。

そう考えると、ジャック・ドーシーのようなベテランのWeb 2.0プレイヤーが、Web3の将来について冷ややかに見ているのも不思議ではない。今後、私たちが覚えておくべきことは、Web3はスタンドアロンで存在するということである。Web2.0に取って代わるものではなく、彼らのプレイグラウンドはそのまま存続する。

Web3は、Web2.0とは独立して同時に存在する。信じようと信じまいと、この機会を倫理的な要請として捉え、インターネットの概念を反復し、前世代の過ちを正し、おそらく社会の機能の最も基本的な部分に影響を与え始めなければならないと考える人もいる。企業に力を与えるのではなく、コミュニティに力を与えるのだ。

結局のところ、現在企業が支配しているものと同じプラットフォームを個人に与えるためのオープンソースがWeb3なのだ。私たちの新しいフレームワークの存在意義は、個人に力を与え、年齢、人種、性別、国籍を問わず、すべての人がより公平にアクセスできるようにすることにある。現状を打破するためには、誰かが立ち上がらなければならない。

未来は私たちが描くものである

この崩壊は、具体的にどのように起こるのだろうか?出発点はオンチェーンに他ならない。現在、Web3のプロトコルや分散型アプリを構築している開発者の大半は、新世代のクリエイターとして哲学にむしゃぶりついて仕事をしている。

彼らは、古いモデルがどのように機能しているか、誰がサービスを提供しているか、その状態を維持できるようにどのように設計されているかを理解している。会社の設立、資金調達、取締役会の設立、従業員の採用などを知る従来のスタートアップアクセラレーターの経験は、開発者たちの仕事をさらに向上させるための強固な基盤となる。

ブロックチェーン技術は、すでにオープンソースの不変的な台帳を提供している。この台帳は、Web3を生み、これを推進してきた理念と直接沿う形で、すべての資金調達ニーズを満たすために使用できる。私たちは、自己実行型のスマートコントラクトを利用して、資金調達のオープンポイントとクローズポイントをコントロールし、すべての投資と条件をオープンにして検証可能性をもたせることができる。

Web3のプロジェクトでは、透明性は非常に重要である。このようなオンチェーンで一般に検証可能な資金調達方法を利用すれば、偏りがないことを保証できる。このモデルでは、すべてが公開され、すべての投資家が同じ土俵に立っていることがオープンなので、裏取引はできない。さらにいえば、投資がブロックチェーン上で確定するたびに、株式取引や構造が明らかになる。

もう1つの方法は、ホワイトリストを利用することである。ホワイトリストを利用すると、プロジェクトに純粋に情熱をもち、それに関わっている人々が、経済的に最も大きな影響力をもつことができる。

暗号アドレスを事前に選択することで、すべての審査とデューデリジェンスを事前に完了し、プロセスを効率化することができる。資金調達契約は汎用性があり、理由を問わず任意のアドレスをホワイトリストに登録することができるため、権限はすべてスマートコントラクトを発行したチームに残る。これにより、煩雑で時間がかかりがちなプロセスをきめ細かくコントロールすることができる。

良心的な創造

オンチェーンの資金調達モデルは、開発者に対してより公平なアプローチを提供し、教育、雇用、信用、コネクションなどの社会経済的な障壁を回避することができる。これらのモデルでは、プロジェクトだけしかもっていない開発者でも、プロジェクトをスタートさせることができる。プロジェクトとその潜在価値だけが重要となる、より実力主義的な機能が提供されるのだ。

小規模なプロジェクトでも、ピッチデッキを作成したり、銀行口座を開設したり、今までのように積極的に投資家を探したりする必要がなくなり、リソースと時間を節約することができる。

これこそが、ブロックチェーンという産業を生み出したコミュニティ主導の理念である。シンプルなツールを導入することで、プロジェクトごとに理にかなう方法で成長と資金調達を促進することができる。これにより、開発者、愛好家、ユーザーによるWeb3の所有が可能になる。

まだ長い道のり

オンチェーンの資金調達は、従来のVCモデルを完全に消滅させるものではない。なぜなら、開発者は優れた投資家と一緒に仕事をすることで、貴重な視点を得ることができるからである。VCは、ビジネスモデルや財務モデルの分析、スケールアップの計画、実行リスクや市場での企業のポジションなどを評価する専門家である。このような特性に重点を置くVCは、今と同じように価値をもち続けるだろう。どのプロジェクトも、企業の成長と成功を支援した実績のある人材を求めている。

オンチェーンは特効薬ではない。それは単に、オープンで公平な資金調達のプロセスを実現し、開発者が最も便利だと感じるメカニズムに近づけるための、(今のところ)最高の枠組みである。

この新しいイノベーションに注目し、新しいつながりがその可能性を最大限に発揮できるように歓迎したい。

編集部注:本稿の執筆者Parker McCurley(パーカー・マッカーリー)はDecent Labsの共同設立者でCEO。

画像クレジット:cnythzl / Getty Images

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(文:Parker McCurley、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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