堀江貴文氏語る「日本が世界に勝てるのは宇宙とロボティクス、今が大チャンス」

Infinity Ventures Summit 2019 Summer KOBEの2日目となる7月12日には、宇宙開発を手がけるスタートアップのインターステラテクノロジズの創業者である堀江貴文が司会を務めた「宇宙開発概論」というセッションが開催された。

ゲストとして、2027年までの有人宇宙飛行を目指すSPACE WALKER(スペースウォーカー)で代表取締役CEOを務める眞鍋顕秀氏と、人工流れ星を開発中ALEで代表取締役を務める岡島礼奈氏の2人が登壇した。

堀江氏がセッション中にしきりに強調していたのが「日本にとって宇宙産業は非常に有望で、世界に勝てる数少ない産業」という点。

その根拠として同氏は、国内には最適な射場があることに触れた。ロケットは地球の自転速度を利用できる東に向けて打つことが多く、西に向けて打つことはない。また、縦に回る極軌道に載せる必要がある地球観測衛星などは南や北に打つ。インターステラテクノロジズが利用する北海道にある射場は東、北、南のどの方向に打てるそうだ。米国では、東に打つときはフロリダ(ケネディ宇宙センター)、南に打つときはカリフォルニア(ヴァンデンバーグ空軍基地)の射場が使われることが多く、開発拠点から遠いとそれだけ移送コストもかさむ。

次に堀江氏が挙げた理由が、ロケット部品の国内製造能力。日本では、すべての部品を国内調達できるのが非常に大きな強みだという。「ロケットの部品を海外から輸入するとなると、輸入や移送にコストがかかるうえ煩雑な税関手続きなども発生し、低コストのロケットを量産するには不利」と眞鍋氏。堀江氏は「日本なら、国内の部品を集めて射場の近くに建設した工場で組み立てればすぐに発射できる」ことを強調した。実際にインターステラテクノロジズのロケットは1カ月程度で組み上げたそうだ。

この点に関してさらに眞鍋氏は、助成金の申請に行くと「海外でやれば?」という意見もあるが「海外でロケットを打ち上げるのは、許認可や輸出など大変」と話す。岡島氏も「ロケットには国籍があり、日本のロケットは宇宙活動法という法律に則って運用するが、海外で打ち上げるとなると同じような別の法律に従う必要があり、その都度必要な調整が煩雑」と語る。

ちなみに岡島氏が代表を務めるALEが開発した人工流れ星を生成可能な衛星は、すでに打ち上げは成功しているものの、人工流れ星の放出には着手できていないとのと。JAXAのイプシロンロケットに載せて打ち上げられて高度500kmの位置にいるのだが、高度400kmの位置にある宇宙ステーションよりも低い高度で検証する必要があり、現在高度を調整している最中とのこと。

公表はできないがすでに顧客もついているそうだ。問い合わせベースでは、ホテルやイベントのオープニングに使いたいという依頼もあったとのこと。明るさはマイナス1等星程度で、オリオン座が見える空なら、そのオリオン座を構成する星よりも明るく見える。気になる価格は、流れ星1つあたり数百万円程度になるとのこと。この価格設定について「特大の花火と同じくらいの値段」と岡島氏。数百万でコストであれば結構な需要が生まれそうだ。

話を元に戻そう。堀江氏は3つ目の理由として国内の資金調達市場の成熟を挙げる。国内のスタートアップ企業への投資は現在も盛んで、ネット関連企業に数十億円が投資されることも少なくない。最近ではVCが組成するファンドに機関投資家も加わるようなり、ファンド規模も拡大している。堀江氏は「ネット企業への投資もいいが、もっと宇宙産業に目を向けてほしい」とも語る。「インターステラテクノロジズでは、さまざまなアイデアを駆使してなんとか10億円ほど集まった」とのこと。宇宙産業への投資熱がまだ低いことに不満を募らせているようだった。

堀江氏はどのように資金を集めたかも語ってくれた。インターステラテクノロジズのロケットは100kgほどのペイロード(可搬重量)があるが、コーヒーやハンバーガーなどを載せて打ち上げるのだそうだ。ハンバーガーは250万円でロケットに載せる権利を売ったとのこと。「宇宙に行ったハンバーガーというだけで十分な宣伝効果になるじゃないですか」と堀江氏。確かに、数百万円で宇宙に持って行けるのであれば、宣伝費用としてはリーズナブルかもしれない。

そのほか、宇宙で飛ばす紙飛行機などエンタメ系の実験も真面目に進めている。

実はインターステラテクノロジズは7月13日にロケットの打ち上げを予定している。この機体は「ペイターズドリームMOMO4号機」と名付けられており、ロケットとしては珍しく外装に広告が入っているのが特徴だ。ペイターズ(paters)とはオンラインラウンジアプリ、いわゆるパパ活アプリだ。そのほか、メガネのオンラインストアを運営するOWNDAYS(オンデーズ)、平和酒造といったさまざなスポンサーのロゴが機体にペイントされる。これらも堀江氏のアイデアだ。

最後の理由が、スタートアップが宇宙開発に参入できる環境を整ったこと。現在堀江氏のインターステラテクノロジズは、JAXAとの共同実験を進めているそうだ。「例えば、JAXAが機体に使うシールは200万円ぐらいする。もちろん超高性能で剥がれないのだが、剥がれるかもしれないが30万円ぐらいの品質のシールを試したりしている」とのこと。そのほか、ロケットの姿勢制御用などに使うジャイロスコープもJAXAは1個800万円ぐらいのものを使っていて、万が一のために冗長性を持たせるために2、3個を搭載する。これも汎用のジャイロスコープにしてコストダウンできないかを検討している」そうだ。

堀江氏によると、インターステラテクノロジズでは現在10基のロケットを作っており、1基を5億円ぐらいで売る予定。そうなると1基あたり1000万円ぐらいの部品コストしか使えないとのこと。「JAXAのシールを2枚使うだけで400万円するので、残り600万でほかの部品を調達するのは無理で、部品の大幅なコストダウンは必須」という。

そしてスタートアップの強みとして堀江氏は「失敗してもいい」点を強調した。JAXAなどの国家事業となると絶対に失敗できないため、基本設計はあまり変えられない。H-IIAロケットも基本設計は古く「iPhoneより性能が低いコンピュータを使っている」と眞鍋氏。堀江氏は「スタートアップであれば、どんどん新しい設計のロケットを試すこともできる」とし「インターステラテクノロジズのロケットもH-IIAロケットよりも高性能なコンピュータを積んでいる」と教えてくれた。そして「高性能といってもラズパイなのでコストは安い」とのこと。ご存じのようにラズパイは、ワンボードマイコンのRaspberry Piのことで一般向けなら6000円弱、産業用でも5万円ぐらいで手に入る。

このように堀江氏は、スタートアップと宇宙産業の相性がいいことをアピールした。「海外のネットベンチャーは非常に強く、日本企業が進出しても成功するのは難しい。これからの日本が世界で戦えるのは、ロボティクスの分野と宇宙の分野しかない」と堀江氏。岡島氏も「ロケットには言語バリアがなく、載せられるのであればどの国のロケットであっても構わない」と語る。

堀江氏と眞鍋氏によると、現在の日本の宇宙産業はインターネットの黎明期に似ているそうだ。「当時は回線やサーバーのコストがむちゃくちゃ高く、以前経営していた会社はその影響で上場年に赤字になったほど。そのあと、Linuxベースの安価なサーバが出てきてサーバーコストは大幅に下がり、回線コストも非常に安くなった」と堀江氏は振り返る。

堀江氏は「宇宙産業で日本と競争できるのは米国と中国ぐらい。フランスも実力はあるが、射場が南米のフランス領などにあるので移送コストの問題がある。とにかくいまは日本にとって大チャンス」と何度も強調していた。

余談として堀江氏は、所有するプライベートビジネスジェット「HondaJet Elite」に触れ、現在6人で共同所有しており購入時には1人あたり1億円程度を出したことを明かしてくれた。そして、年間の維持費は1300~1400万円、1回のフライトは40~50万円とのこと。共同所有であれば、起業家やVCが無理なく所有できる額であり「この飛行機が30機ほど日本にあればシェアリングも可能なってさらに身近になる」と堀江氏。HondaJet Eliteの最大定員は、乗員1名+乗客6名、もしくは乗員2名+乗客5名。ビジネスやファーストクラスでの移動を考えれば、それほど高コストではない。また、移動時間をコストとして考えれば、十分に現実的だろう。

関連記事:ホンダジェットの国内第一顧客は、千葉功太郎氏、堀江貴文氏、山岸広太郎氏と発表

はやぶさ2は小惑星リュウグウへの2回目の着地に成功

日本の「はやぶさ2」が小惑星リュウグウを目指したミッションは、最初から野心的なものだった。そしてチームは最近、宇宙空間に浮かぶ岩石の表面に、2度目のタッチダウンを試みるというかなり難しい決断を下した。すべてが計画通りにうまくいっただけでなく、その小惑星の表面のすばらしい写真を地球に送り届けてくれた。

はやぶさ2は、最高にクールなミッションだ。基本的な構想は以下の通り:

  1. 地球の近くの小惑星に向けて飛ぶ
  2. 表面に着地して岩石のサンプルを採取する
  3. スペースガンで爆破してクレーターを作る
  4. 着地してクレーターの中の岩石のサンプルを採取する
  5. 採取した岩石を地球に持ち帰る

なんとも素晴らしい。そして、この勇敢な宇宙船は、今回4番目のステップまで完了した。さらに、着地して岩石をサンプリングしながら、すごい写真も撮影した。これはまさに着地の瞬間の画像だ。

このステップまでも、成功するという保証は何もなかった。はやぶさ2のミッションを遂行するJAXAのチームが最近のブログで、そう明かしている。2回目のタッチダウンが危険過ぎるものになったり、それによって大きなトラブルをかかえることになってしまう可能性は、いくらでもあった。最終的に、彼らはリスクは許容できるものであり、成功すればさまざまな意味で重要な功績になると判断することができた。

(関連記事:日本のHayabusa 2ミッション、遙かなる小惑星の地表に到達

最初のサンプルは、リュウグウの手付かずの表面から採ったもの。長年に渡ってそこにあったものだ。そしてスペースガンの出番となった。質量2kgの銅の弾丸を、制御された爆発によって4400mph(約7081km/h)に加速して発射する。よし、これでクレーターができた。このとき探査機は、小惑星の反対側に回り込んで、爆発によって飛び散った破片を避けた。

これで、これまで人間もロボットも、誰もいちども調査したことのない小惑星の内部が露出された。いわば小惑星のやわらかい臓物だ。そこから得られる情報は多い。それこそが、チームが今回のタッチダウンを決行した理由だ。これはとてつもなく素晴らしいことであり、歴史的な快挙だ。

JAXAはブログをすばやく更新して、タッチダウン成功の様子を撮影した数枚の写真を掲載した。4秒前のもの、接触の瞬間、そして4秒後のものなどだ。探査機はその場に長くとどまるわけではない。「着陸」というよりは、その場で「弾む」感じに近い。上に示したように、これらの写真をGIFにまとめてみた。他にも、タッチダウン直後に広角カメラで撮影した写真などがある。

現時点では、これ以上の詳しい情報はない。「はやぶさ2プロジェクト」のサイトに示されているように、今後より詳しい情報も掲載されるだろう。それまでは、この驚くべき偉業を達成したチームのメンバーの写真を拝んでおくことにしよう。

(画像クレジット:JAXA)

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Virgin Orbitがボーイング747からのLauncherOneロケット空中投下テストに成功

リチャード・ブランソン氏が率いる宇宙企業であるVirgin Orbitが、商用衛星打ち上げに向けて大きく一歩前進した。同社はコスミックガールと命名されたボーイング747からLauncherOneロケットを切り離して投下するテストに成功した。これは衛星の空中発射に必須のステップだった。

LauncherOneの切り離しは実際の打ち上げ同様、高度は3万5000フィート(約1万m)で実施されたが、これは商用旅客機の通常の巡航高度だ。これ以前にVirgin Orbitでは打ち上げをシミュレーションしてボーイング747にロケットを吊り下げてこの高度を飛ぶテストを行っていた。空中発射はSpaceX などの地上発射に比べてエンジン推力と燃料を節約でき、打ち上げコストの低減に役立つことが期待されている。

今回のテストではLauncherOneロケットのエンジンには点火されなかった。実は用いられたのは空力と重量を同一にしたダミーでボーイング747から投下された後、弾道飛行してモハーベ砂漠のエドワーズ空軍基地の定められた地点に落下した。

今回のテストの主眼はロケットが予定どおり母機の翼から安全に切り離せることの確認だった。またダミーに設置された多数のセンサーにより、自由落下中のダミーの飛行の挙動の詳細なデータも得られたという。

Virgin OrbitはVirgin Galactic と並ぶVirginグループの宇宙企業の1つで、Virgin Galacticが有人宇宙旅行の実現を目的とするのに対してOrbitは低コストで小型の商用衛星を打ち上げようとしている。Galacticは今週、上場を目指していることを明らかにした。小型衛星の打ち上げはRocket Labのプロジェクトがライバルとなるだろう。こちらは伝統的な地上発射モデルだ。

Virgin Orbitではこの後、実際の衛星打ち上げに用いるロケットを組み立てる。最初の空中発射は今年中に予定されている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アマゾン、3000機以上のブロードバンド通信衛星の打ち上げをFCCに申請

Amazon(アマゾン)は以前、地球低軌道にてブロードバンドインターネットを提供する衛星コンステレーションのKuiper計画を明かしたが、GeekWireが報じたFCCの申請により、その詳細がすこし明らかになった。申請書では、ネットワークのバックボーンを提供する合計3236機の通信衛星を打ち上げる許可を米通信規制当局に求めている。

アマゾンの申請によれば、この人工衛星ネットワークは世界中の38億人と、アメリカの固定ブロードバンドにアクセスできない2130万人に、より信頼できるアクセスとブロードバンドへの接続を提供する。遠隔地でサービスをうけていない消費者にくわえ、航空機や船舶、車両向けにも移動ブロードバンド接続を提供すると、アマゾンは申請書に記載している。

同様のニーズを同じような方法で提案している企業は他にもあり、SpaceX(スペース)は約1万2000機の衛星ブロードバンドによるStarlinkの打ち上げを模索している。打ち上げ後に3機が交信不能になったのをのぞけば、Starlinkはすでに57機が軌道上に存在している。

しかし人工衛星が天文学者の地上観測に影響を与えるため、スペースXの事業はすでにかなりの議論をよんでおり、また宇宙関連の研究者と産業筋は、ブロードバンド接続を提供する人工衛星が地球低軌道で運用されることによるデブリと混雑を懸念している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがNASAと契約してブラックホールや中性子星を調査する宇宙船を打ち上げ

SpaceXがNASAからの受注で、画像作成X線偏光測定探査船(Imaging X-ray Polarimetry Explorer、IXPE)を打ち上げることになった。この研究用宇宙船は、中性子星やパルサー星雲、超大質量ブラックホールなどの光源からの偏光を調べて、これまでの宇宙観測よりもさらに多くの画像を提供する。

このミッションは科学者たちによるマグネター(強力な磁場をもつ特殊な中性子星)やブラックホール、パルサー風星雲などの研究を助ける。パルサー風星雲は、超新星の残存物の中にある星雲だ。

SpaceXはこのIXPEミッションの打ち上げを、すでに性能が実証されているFalcon Xで行い、その契約総額は5030万ドルだ。打ち上げは2021年4月で、フロリダ州ケネディ宇宙センターのLC-39Aから行われる。

SpaceXの社長でCOOのGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏は、声明でこう述べている。「NASAが重要な科学的ペイロードの軌道打ち上げ用に弊社の実証された打ち上げ船体を信頼していることは、SpaceXの名誉である。IXPEは弊社にとって6度めのNASA打ち上げサービス事業からの受注であり、内二つは2016年と2018年に打ち上げ成功し、同機関の科学観測能力の増大に寄与した」。

NASAとの契約によるSpaceXの今後の打ち上げ計画はほかにもまだまだあり、その中には国際宇宙ステーションへの定期的な物資供給輸送業務もある。

画像クレジット: NASA/JPL-Caltech/McGill

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

人類を月に送るNASAの巨大な移動式発射台、発射場にて最終テストへ

NASAは米国人宇宙飛行士を月に届け、また初の米国人女性宇宙飛行士を月面に立たせる、Artemisシリーズの最初のミッション「Artemis 1」の最終準備段階にある。Artemis 1のOrionカプセルを搭載したSpace Launch Systemロケットを打ち上げる全長335フィート(約102m)の移動式発射台は、実際の運用を前にしたテストのために発射場に設置されている。

NASAのArtemis 1ミッションはOrion有人カプセルを宇宙へと打ち上げ、6日間の月周辺飛行を含む3週間を宇宙で過ごす予定だ。カプセルにはすべての生命維持システムが装備されているが、Artemis 1の数年後に実施される有人ミッションのArtemis 2の前にその安全性と効果を証明することを目的としているため、実際には宇宙飛行士は搭乗しない。

Artemis 1はフロリダのケネディ宇宙センターの第39A発射施設から、現時点では2020年6月に打ち上げられる予定だ。発射システムはロケット部品が宇宙センターにて集められ組み立てられる巨大なVehicle Assembly Building(VAB)と、その前の組立段階にて、さまざまなテストが実施されている。しかし最も大事なテストは、実際に打ち上げられる前の発射場での最後のテストとなるだろう。

現時点でのArtemisプログラムの最終目標は、すべてが計画通りに推移すれば2024年に実施されるミッションにて、宇宙飛行士を月面に立たせることだ。それ以降は月面基地の建設を含む、宇宙空間における人類のプレゼンスを確立することにある。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

イーロン・マスク氏がStarshipのプレゼンをエンジンテスト後の7月後半に予定

イーロン・マスク氏は米国時間7月7日にTwitterでファンからの幅広い質問に答え、次世代の再使用ロケットことStarshipと火星探査計画の核心について「7月後半に発表する」ことを明かした。

Space X(スペースX)でCEOを務めるマスク氏はまた、Raptorロケットエンジン(公式にはSN6)のテストが中断されたもの「総合的には成功」しており、その目的が新エンジンの燃料混合比の許容限界を試すものだったと伝えた。

 

マスク氏によれば、スペースXによる公式のStarshipのプレゼンテーションは「Hopperのホバー(浮上)の数週間後」に行われ、これはプロトタイプのStarHopper(Hopper)の短時間の飛行テストを意味し、完全な打ち上げは実施されないものの、最終的な打ち上げに向けたエンジン性能を証明するためのものとなる。StarHopperは4月に係留された状態で飛行テストが実施されたが、次回はそのような制限はなく、実際の打ち上げにより近い。これは、Raptorエンジンにおける特定動作周波数での振動問題が、昨晩のテストにて解決されたことが関係している。

Hopperのテストが終われば、スペースXは低高度でのテストのみを目的とした小型版のプロトタイプから、本格的なロケット製造に移行するが、Starshipのプレゼンテーションが実際におこなわれれば、我々はよりその詳細を知ることになるだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

TV番組「アポロ:ミッション・トゥ・ザ・ムーン」で宇宙探査の歴史が甦る

人類の月着陸から50周年を記念して、ナショナルジオグラフィックは、日曜日の夜から始まるスペースウィークの皮切りに、新しいドキュメンタリー番組「アポロ:ミッション・トゥ・ザ・ムーン」を放送する(日本では7月16日放送予定)。

これまで、この話は何度も語られてきた。昨年は、ニール・アームストロングの伝記映画「ファースト・マン」が公開され、当然のことながら今後数週間にわたり、新しいドキュメンタリー番組や特別番組が続々と放送される。「アポロ:ミッション・トゥ・ザ・ムーン」の監督Tom Jennings(トム・ジェニングス)氏も、私たちの電話インタビューの受話器越しに、悔しそうな笑いを交えて、それを認めていた。

しかしジェニングス氏は、このプロジェクトに独特の切り口で挑んでいる。それは、彼の以前のドキュメンタリー作品「チャレンジャー号爆発事故 30年目の真実」や「ダイアナ妃の告白」で使用したものと同じ手法だ。つまり、現存する音声、動画、写真のみを使って構成することで、視聴者は50年後のナレーターの語りでではなく、その当時の現在時制で体験できるのだ。

今回の作品では、ナショナル ジオグラフィックによると、800時間の音声、500時間の動画、1万枚以上の写真から素材を集めているという。これには、未公開の管制室の音声も含まれる。

「昔のドキュメンタリーでは、月着陸でもその他のアポロのミッションでも、私たちが聞ける管制室からの音声は、
1本のオープンチャンネルに限られていました。それは、CAPCOM(宇宙船通信担当官)と呼ばれる人の声です」とジェニングス氏は言う。「(しかし)そこには何百人もの人がいて、その多くはヘッドセットを着けていました」。

アポロ11号が着陸に成功すると、握手の嵐が巻き起こった(NASA)

その音声を加えることで、番組は管制室で何が起きていたのか、地上のチームはこの宇宙でのイベントにどう反応したかを、より完全に伝えることができた。

もうひとつ、強調しておくべきことがある。この番組は、アポロ11号だけでなく、アポロ計画全般について物語っている。ミッションによって割かれる時間はまちまちだが、月に到達するまでと、その後の出来事を含めた完全な文脈を視聴者に提供するのが狙いだ。

それには、この計画の冷戦に端を発した部分も含まれている。しかしジェニングス氏は、時間を追うごとに「宇宙開発競争とロシアの話は少なく」なり、「不可能に挑戦する」話に移ってゆくという。「話の中心は政治から遠征に移る」と彼は要約してくれた。

このドキュメンタリーの大きな要素のひとつに、最初のミッションを追ったメディアの息をのむような方法がある(「メディアはひとつの登場人物だった」)。結局、アポロ7号で、有人飛行の初めてのテレビの生中継が行われたのだが、最も感動的だったのは、世界中の人たちがどのようにしてアポロ1号を見ていたかを示すシーンだ。

「世界が止まったのは前代未聞のことでした」とジェニングス氏は言う。「もう二度と、あんなことは起こらないと思います」。

キャンプ場でアポロ11号の打ち上げを待つ見物人たちの上空からの写真(Otis Imboden/National Geographic Creative)

ドキュメンタリーを見るとわかるが、アポロ計画への人々の熱狂は、月着陸の後、次第に冷めてゆく。ジェニングス氏はこう推測する。「それは探求の旅だったのです。ひとたび目標に到達してしまった後は、次はなんだ?みたいになったのでしょう」。

事実、そうしたシーンが番組の中にあると彼は教えてくれた。「NASAの報道官は、アポロ11号の後、13号が事故に見舞われるまで、プレスルームでぶらぶらしていました。つまり、アポロ11号では立ち見のみ、でも今はガラガラ、いったところです」。

この作品は、アポロ11号の勝利をちびちび見せるものではない。全体を通して見ると、もの悲しい記録であることがわかる。アポロ計画が終わったとき、NASAの職員は正確に未来を予測していた。もう一生、月へは行かないだろうと。「アポロ:ミッション・トゥ・ザ・ムーン」では、最近の数十年の間に何が起きたかは直接語っていないが、NASAの規模を縮小した野心に対する暗黙の批判が、どうしても見えてくる。

「この作品で、私たちが何を失ったのかを正しく伝える必要があると感じました」とジェニングスは言う。彼は、アポロ計画のエンジニアだったFrances “Poppy” Northcutt(フランシズ・ポピー・ノースカット)氏が彼に言ったことを振り返った。「すべてがそこにあったのです。もっと遠くの深宇宙に行く準備ができていました。あのまま続けていれば、人類は30年前に火星に行っていたはずです」

それでも、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のBlue OriginやElon Musk(イーロン・マスク)氏のSpaceXといった活動が、彼に未来への希望を与えている。「我々は再び月に行くと思います。月に何かが建つでしょう」。

「アポロ:ミッション・トゥ・ザ・ムーン」はナショナル ジオグラフィック(TV)にて、米国標準時7月7日、日曜日午後9時から(中部標準時午後8時から)放送される(日本では7月16日火曜日午後10時より)。

関連記事:映画「ファースト・マン」制作チームは宇宙計画の神秘性を払拭したかった(未訳)

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(翻訳:金井哲夫)

太陽帆走に挑戦中のLightSail 2が見られるダッシュボード

Planetary Societyが、太陽光からの光子を帆に受けて帆走する宇宙船であるLightSail 2のミッションコントロールダッシュボードを立ち上げた。このクラウドファンディングで資金を得た宇宙船は今、その真の太陽帆走をテストするための軌道上にいる。ダッシュボードはその最新情報を提供し、それを誰もが見られて、用途が何であれ自由にダウンロードもできる。

それは、Kickstarterで100万ドルあまりを調達したLightSail 2の精神にも沿っている。このプロジェクトは人気キャスターのBill Nye(ビル・ナイ)氏が作った非営利団体が起案し、名前の終わりに「2」がつく二度目のプロトタイプがSpace Xの最新ロケットであるFalcon Heavyで打ち上げられた。

LightSail 2のミッションコントロールダッシュボードは、最近得た情報を伝えてくる。今同船は、初めての太陽帆走の展開に向けて準備中だ。データは、LightSail 2がPlanetary Societyの複数の地上局のどれかとの通信レンジに入ったときに得られるので、ときには遅れが生ずる。

そのダッシュボードを見れば、これまでのLightSail 2の宇宙滞在時間や、太陽帆走の準備や実施の現況もわかる。そのほか、バッテリー残量や宇宙船の内部温度、回転角度、姿勢制御の制御モードなども表示される。姿勢とは要するに、宇宙の中での方向のことだ。LightSail 2の現在位置を地図上に確認でき、またダッシュボードを見る人の位置によっては行うであろうオーバーヘッドパスも見られる。今後実際に帆走が始まったらそれもこのダッシュボードで見られるから、とても便利だ。

もっと情報が欲しかったら、ダッシュボードの画面下の「Download recent data」(最新データをダウンロードする)ボタンを押すと、これまで送信されたすべてのデータを得られる。大量すぎてぼくの手には負えないが、アマチュアとプロの両方を含めて、熱心な宇宙マニアや研究者にとっては素晴らしいデータだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

適切な温度になると拡大するソーラーパネル

太陽が出ているときだけ現れるソーラーパネルがあったらいいと思わないだろうか?それがこの研究プロジェクトのテーマだ。彼らは形状変化材料を使って圧縮された状態から大きくなるソーラーパネルを作ろうとしている。形を変えるきっかけは温度の変化だけだ。

この花のような形をしたプロトタイプは、「形状記憶ポリマー」と呼ばれる材料で作られていて、冷たい状態で、ある形状にしたものが加熱されると、元の自然な形状に戻ろうとする。ここでは冷却時の状態が圧縮された円板で、高温時は大きく広がったソーラーパネルだ。

変化には1分とかからない(デモンストレーションのためお湯につけている)。網状に配置された蝶番(ちょうつがい)によって別の形状へと誘導される。この仕組みのアイデアは、小さなウニ状のボールを放り投げると大きな球に変形するホバーマンスフィア(Hoberman Sphere)と呼ばれるおもちゃがヒントになった。

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この物質は冷却状態、例えば人工衛星に設置されたときには固定されたままでいる。太陽光を受けると、構造がフルサイズに拡大される。電力は必要ない。このため、パネルを広げるためのバッテリーも予備のソーラーパネルも置けない人工衛星で、場所の節約になることが期待できる。

今のところ変形は一方向で、大きくなった円板は手動で戻さなくてはならない。しかし、フル充電されたあと、次に太陽光を受けるときまで自身を折り畳むための機構を別途作ることが考えられる。

これが来年宇宙船に載ることを期待してはいけないが、将来小さな人工衛星などで少なからず役立ちそうな優れたアイデアに違いない。それに、もしかしたらその前に、小さなパネルの花園を屋根の上で見られる日がくるかもしれない。

カリフォルニア工科大学とスイス連邦工科大学チューリッヒ校による共同研究の詳細は、Physics Review Applied誌で発表されている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXがFalcon Heavyのフェアリングを専用船でキャッチ

 SpaceXが衛星打ち上げロケットの再利用をまた一歩前進させた。6月25日のFalcon Heavyの打ち上げで宇宙から落下してきたロケットのフェアリングを専用船、Ms. Treeに装備された巨大な回収ネットで洋上キャッチすることに成功した。

ペイロードを大気との摩擦から守るノーズコーンは非常に高価な部品だが、通常は洋上に落下したまま失われてしまう(まれに海から拾い上げるのに成功することもあった)。

SpaceXはノーズコーンのフェアリングが大気中を落下し、回収船のネットにキャッチされるまでのビデオを公開した。SpaceX がフェアリングや回収船にセットしたオンボードカメラの映像でMs Treeのネットにフェアリングが無事タッチダウンする瞬間を見ることができる。下にエンベッドされたビデオを見れば、フェアリングがくぐってきた試練が実感できる。フェアリングは大気中を落下するときに高熱と激しい衝撃にされている。

STP-2打ち上げミッションの際、フェアリングに取り付けられたカメラからの映像。フェアリングは摩擦で高音となり、大気の分子が明るい空色に輝いて見える。

一方、フェアリングがパラシュートで操縦されながらMs. Treeにキャッチされる瞬間の映像はあまり劇的なものではない。夜間のことでもあり、ネットがわずかに変形するのが分かるだけだ。

SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏によれば回収の目的は、「600万ドルを海に捨てない」ことだ。SpaceXはすでに「飛行済み」のブースターを安全に着地させ、再利用することによってFalcon の打ち上げコストを6200万ドルから5000万ドルに削減することに成功している。Falcon Heavyの場合も、再利用なしなら1億5000万ドルの打ち上げコストが再利用ありの場合は9000万ドルになるという。ここでさらに600万ドルの部品を安定して回収、再利用できれば収益性の改善に貢献するのは明らかだ。

ただしフェアリングの回収が実際に収益性の改善に役立つかどうかは今後の問題だ。今後、SpaceXは回収された部品が再利用できる状態に整備可能だと実証しなければならない。また今回は回収に成功したが、今後も専用船が安定して部品をネットで受け止めることができるのかどうかも注目だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

月でもGPSを使いたい、NASAが研究中

オレゴン州ポートランドからカリフォルニア州マーセドまで車で行くなら、自分の位置を知るためにはGPSを使うだろう。しかし、月を走っていて嵐の大洋から静かの海まで行くときは?実はやっぱりGPSが使える。ただしNASAのこの研究が成功すればの話だ。

宇宙で自分のいる位置を正確に知ることは、他の天体を利用しても簡単ではない。幸い、星の位置は固定されているので、星やその他の目印を使って三角測量すれば、宇宙船は自分の位置をかなり正確に割り出すことができる。

しかし、それは結構手間のかかるな作業だ!地球では、かなり前から使うのをやめて、今は数メートル精度で位置を教えてくれるGPSに(おそらく過剰に)頼っている。

独自の恒星(対地同期軌道衛星)を作り、決められた信号を定常的に発信させることによって、われわれの端末はこれらの信号を受信して直ちに自分の位置を決定できる。

月でもGPSが使えれば便利なことは間違いないが、40万キロという距離は、超精密なタイミングで信号を測定するシステムにとっては、大きな違いを生む。それでも、理論的にはGPS信号を月面で測定するのを妨げるものはない。実際すでにNASAは、数年前のMMSミッションでその約半分の距離でテストしている。

「NASAは高高度GPS技術を何年も前から研究している」とMMSのシステムアーキテクトであるLuke Winternitz氏(ルーク・ウィンターニッツ)がNASAのニュースリリースで言った。「月のGPSはネクスト・フロンティアだ」。

宇宙飛行士は自分の携帯電話を持っていってももちろん使えない。われわれが使っている端末は、自分たちの上空で一定の距離以内にあることがわかっている衛星から信号を受信して計算している。軌道から信号が届くまでの時間は1秒の何分の一かだが、月の近くでは1.5秒ほどかかる。大したことではないと思うかもしれないが、GPSの受信・処理システムの作り方に根本的な影響を与える。

navcube 0NASAゴダード宇宙飛行センターの研究チームがやっているのがまさにそれだ。特殊な高利得アンテナや超精密時計を使い、従来の宇宙GPSシステムである NavCubeや、一般の携帯電話用GPSシステムに改善を加えることで新しいナビゲーション・コンピューターを作ろうとしている。

目的は、NASAの地上と衛星測定システムとを結ぶネットワークの代わりにGPSを使うことだ。従来の方法は宇宙船とデータを交換しなてくはならないため、貴重な通信帯域と電力を消費していた。そうしたシステムの負荷を軽減することで、GPS対応衛星の通信能力を科学実験やその他の優先度の高いデータ通信に割り当てることができる。

チームは年末までに月面探査用のNavCubeハードウェアを完成し、月へのフライトを見つけてできるだけ早くテストしたがっている。幸いなことに、アルテミス計画が注目を浴びていることから、候補探しに困ることはなさそうだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

太陽光で帆走する宇宙船「LightSail 2」が帆を広げる段階に到達

Planetary Societyがクラウドファンディングした宇宙船であるLightSail 2が米国時間7月2日に朗報をもたらした。先週、SpaceXのFalcon Heavyに相乗りして宇宙に運ばれた同機がついに、正規の軌道に乗った。

LightSail 2は本日の早朝、そのことを伝えてきた。セットアップが良好で、太陽帆を十分に広げるというメインのミッションを十分に達成できそうだ。その後同機は計画されたコースを進み、軌道の位置を今よりも高くする。そのための唯一の動力が、反射性のマイラーでできた約10平方mのシートに当る太陽光の光子だ。それは太陽光のエネルギーを電気に換えるいわゆるソーラーパワーとは、まったく異なる。

帆の展開に成功したらLightSailとして初めての偉業になる。最初の機はほかのシステムのテストが目的で、帆走はしなかった。ただし生成する推力はきわめて小さいから、スピード競争には向かない。でもその設計は、加速性や最大速度が重要でないある種のミッションにのための、効率的で効果的で安上がりな方法であることを、理論的に実証するだろう。非常に軽い推力でも、その数が多くなることによって、宇宙の真空の中では大きなスピードを作り出せる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAのDragonflyが海のある土星の月「タイタン」の探査に向かう

NASAは、次に挑む大きな惑星間ミッション、「Dragonfly」(ドラゴンフライ=トンボ)を発表した。マーズローバー(火星探査車)サイズの飛行探査機を、土星の月であるタイタンの地表に送り込むというもの。タイタンには、生命を育む環境があるのではないかとも期待されている。この探査機は、タイタンの表面をあちこち飛び回り、有機物を豊富に含む地表付近の物質を採取したり、高解像度の画像を地球に送信することになっている。

Dragonflyは、2026年に打ち上げられる。すべてうまくいけば、8年後の2034年にはタイタンに到達する予定だ。もちろん、それまでには、もっと多くの詳しい情報がもたらされるはずだ。

この機体は、もやのかかったようなタイタンの大気の中をパラシュートで下降し、多くの砂丘がある赤道付近に着陸する。表面を調査するためのドリルとプローブを装備し、異郷の地の景観を撮影するための数種類のカメラも、当然ながら備えている。また、ドローンのような複数のローターを備え、飛び上がって移動することができる。

タイタン自体は、Cassini(カッシーニ)のミッションによって、すでに上空から観察されている。また、Huygens(ホイヘンス)探査機が、地表に着陸した実績もある。おそらくHuygensは、まだそこにある。しかしDragonflyによって、この魅惑的な月を、もっとずっと詳しく知ることができるはずだ。

タイタンは不思議な場所だ。表面には川や海があり、有機物も豊富に存在している。部分的には地球に似ているのだ。とはいえ、人間が住めるような環境ではない。まず、川に流れるのは液体のメタンなのだ。メタンの性質を知っている人なら、それが非常に低温であることを意味しているのが分かるだろう。

にもかかわらず、興味深いことに、タイタンは生まれたころの地球に似ているとされる。

「私たちは、タイタンの表面に豊富な有機物があり、しかもそれが非常に複雑な有機物であることを知ってます。太陽光という形のエネルギーもあります。さらに過去には、地表に水があったことも分かっています。そのような要素は、生命の誕生に必要なものなのです。そして、それらがタイタンの地表に揃っていることが分かっているのです」と、主任研究者のElizabeth Turtle氏は述べている。「タイタン上では、何億年もの間、ずっと化学実験が行われてきたようなものです。そしてDragonflyは、その実験結果を取りに行くように設計されました」。

とはいえ、メタンに生息する微生物の生存競争は期待できない。これは、生命が誕生する以前の地球に戻って、どのような条件によって、自己複製能力を持った初期の複雑な分子が生成されるのか、つまり生命の起源の、その元が生まれるのかということを調べるようなものだ。

Dragonflyの1/4スケールの模型を披露する主任研究員のElizabeth Turtle氏

そのためにDragonflyは、ちょうどトンボのように、地表のあちこちを飛び回り、さまざまに異なった場所からデータを収集する。ソファほどの大きさのあるものを飛ばすのは、難しいことのように思えるかもしれない。しかしTurtle氏によれば、タイタンでは地表を走行するよりも、飛び回るほうがずっと簡単なのだという。大気は、地球と同じようにほとんどが窒素だが、地球よりもずっと濃く、重力も地球上よりかなり小さい。そのため、空中を飛ぶというよりも、水中を潜行するのに近いのだ。

Dragonflyのローターが、なぜあれほど小さくて済むのかは、それによって理解できるだろう。もし、あれほどの大きさのものを地球で飛ばすとしたら、もっと大きくて強力なローターをずっと回し続けていなければならない。しかしタイタンでは、これらの小さなローターのうち1つを動かしただけでも、必要に応じて機体の姿勢を変えることができる。ただし、離陸の際には8つすべてのローターを使うし、予備としての意味合いもある。

近いうちに、間違いなくもっと詳しい情報が発表されるはずだ。今回の発表は、Dragonflyの開発や打ち上げなどに関して、今後数年間続くはずのNASAによる大きな発表や解説の、開始の挨拶のようなものに過ぎない。

「この回転翼を持った機体が、土星の最も大きな月の、有機物で満ちた砂漠の上を何マイルも飛行するのは、想像するだけでも素晴らしいことです。あのようなまったく異質な環境を生み出したしくみを探索するのです」と、NASAの科学担当管理官、Thomas Zurbuchen氏は述べている。「タイタンような場所は、太陽系には他のどこにもなく、Dragonflyは他のどんなミッションとも異なったものなのです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Space Xが340億円超の資金調達を計画中か

CNBCの報道によると、SpaceX(スペースX)は3億1420万ドル(約340億円)という巨額の資金調達を予定している。この資金調達は今年三度目で、合計金額は10億ドル(約1100億円)を超えることになる。

これらの書類は5月に公開されたもので、2019年半ばに達しないうちに多くの資金が集まった。しかしSpace Xの出費も多額であり、既存のロケット打ち上げ事業にとどまらず、新しい再使用可能な宇宙船「Starship」や、世界の遠隔地に高速インターネットを提供する衛星ブロードバンド計画「Starlink」など、コストのかかる新しいプロジェクトに取り組んでいる。

一方、Space Xはロケット打ち上げから利益を生み出しており、CEOのイーロン・マスク氏は去年、今年の収益が約30億ドル(約3200億円)になるだろうと予測した。これは十分な大金だが、マスク氏は毎年開催される国際宇宙会議で複数回語ったように、火星へと行き、恒久的な活動を計画しているように、いくつものコストのかかる計画を手がけている。

この件に関し、Space Xはコメントを控えている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

1969年の月面着陸を指揮した管制室をNASAが完全復元

7月20日の月面着陸50周年を記念してNASAは、当時のアポロ計画の管制室、ヒューストンのジョンソン宇宙センターにあったApollo Mission Control Centerを復元して公開した。復元は細部まで完璧を期し、資料映像と画像の研究に数年を要した。復元の工程そのものは、7か月を要した。

復元には、あらゆるものが利用された。当時実際に管制室にいてアポロ11号の宇宙飛行士たちを支えたメンバーもチームに参加して、細部を指導した。オリジナルが残っていないものは、注意深く再生された。コンピューターのコンソールや端末など大きなものだけでなく、カーペットや服の一つ一つ、灰皿やペンなども正しく用意した。また、それらが置かれていた場所や置き方も、当時の正確な再現を目指した。管制室だけでなく、隣接するビジターのための歩廊やシミュレーションサポートルームなども、管制センターの一部として再現された。

「ジョンソン宇宙センター歴史的な偉業。準備と研究に何年もかけたこのタイムラプスは、アポロ計画のミッションコントロールルームの7カ月にわたる復元過程を捉えている。1969年のときとまったく同じ外見を、アポロの50周年記念(#Apollo50th)に間に合わせることができた。2019 6/29 12:30 AM」

この、復元された現代史の驚異は、Space Center Houston(ヒューストン宇宙センター)の見学者に一般公開される。アポロ11号の50周年記念の前後には、相当な人気観光スポットになるだろう。

その施設は、ジェミニ(Gemini)から始まって、アポロ、スカイラブ、そしてスペースシャトルと各ミッションに奉仕した。最初のテストが1965年、最後は1992年のスペースシャトルディスカバリーのSTS-53ミッションだった。

下の5枚のスライドで復元の細部がよくわかる。パイプがあり、3穴パンチがあり、そして当時はありふれた誤字だったものすら、歴史の遺物として感動と畏怖の念を与える。

  1. 0ws8HbFiMWXasz_1

  2. D-KDNLrWsAAo72H

  3. D-KDN9EWkAIPI39

  4. D-KDMS4XsAUKE4W

  5. D-KDLj1XkAAPNMh

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXは2021年までのStarship商業打ち上げを目指す

SpaceXはFalcon Heavyの商業打ち上げを始めたばかりだが、すでに次に目を向けている。Starshipの打ち上げだ。そしていま、SpaceXの商業セールス担当副社長であるJonathan Hofeller(ジョナサン・ホフェラー)氏により、同社が完全に再利用できるこの次世代ロケットの商業サービスを2021年までに開始することを目指していることが明らかになった。

ホフェラー氏はインドネシアでの会議で語り(SpaceNews経由)、同社は新宇宙船に搭載する初のミッションの選定について通信企業3社と現在協議していると明らかにした。「BFR」または「Big Falcon Rocket」としてかつて知られていたStarshipは現在、テキサスとフロリダの2カ所にあるSpaceX施設で開発中だ。これは、どちらのチームがよりいいソリューションを早く現実のものとできるか、内部で競わせていることになる。この手のエンジニアリングの対決はテック企業では一般的ではなく、「勝者がすべてを取る」シナリオというより往々にして最終プロダクトをより洗練したものにするために両方のいいとこ取りをする。

そうした作業が完了すればStarshipは、現在のFalcon Heavyロケットよりも揚力がある「Super Heavy」ブースターにより軌道に投入される。静止トランスファ軌道には2万kg、低地球周回軌道には100トン超を届けることができる。またStarshipは火星への有人飛行を行うという同社の最終目標を達成するために使用される宇宙船でもある。

これまでに言及のあったStarshipに関する目標としては、2020年までに軌道打ち上げを達成するというものがあった。しかし今回の新たな情報に基づくと、そうした軌道打ち上げは、有料で利用する客向けというよりテストやデモンストレーションとなる。SpaceXのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は以前、同社初の有償顧客である前澤友作氏に提供する月旅行の時期は、最短で2023年を見据えていると語っていた。

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(翻訳:Mizoguchi)

SpaceXの大型ロケットFalcon Heavyが初の夜間打ち上げ

米国時間6月24日、SpaceXは大型ロケットFalcon Heavyの3回目になる打ち上げを行う。計画通りに進めば、太平洋標準時午後11時30分(日本時間6月25日12時30分)に始まる4時間の発射時間帯に、フロリダ州ケネディ宇宙センターの発射施設39Aから打ち上げられる。

Falcon Heavy初の夜間打ち上げとなる今回のSTP-2ミッションでは、複数の企業、米国防総省、国立海洋大気庁(NOAA)およびNASAの貨物を運搬する。ミッションには、24種類の宇宙探査機を3種類の軌道に載せる作業も含まれている。うち1つは空軍研究所の実験衛星であり、NASAの積荷には、同局が今月詳細を発表した原子時計を始めとする4種類の実験機器が入っている

ロケットには、TV番組ホストとして知られるBill Nye(ビル・ナイ)氏のPlanetary Society(惑星協会)が呼びかけたクラウドファンディング宇宙船「LightSail 2」も搭載される。LightSail 2は巨大な帆に文字通り太陽風を受けて進む。SpaceXは今回初めてFalcon Heavyのブースターロケットを再利用する。サイドブースターは4月に飛んだArabsat-6Aミッションで利用されたものであり、今回も3体の第1ステージロケット全部をケープカナベラルの着陸施設および洋上の着陸ドローンで回収する予定だ。

打ち上げの模様は上記の画面でライブストリーミングされる。予定発射時間帯の15分前頃から配信が始まる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

クラウドファンディングで資金調達した太陽帆走宇宙船が間もなく打ち上げへ

米国時間の6月24日に打ち上げが予定されているFalcon Heavyには、数多くの宇宙船や人工衛星が搭載されるが、Planetary Society(惑星協会)のLightSail 2には、中でも一番興味が惹かれる。すべて順調にいけば、打ち上げから1週間後に、ゆっくり、しかし着実に、太陽光の力だけで航行し始める。

LightSail 2は、太陽光発電エンジンを搭載しているわけではない。太陽エネルギーや熱を別のものに変換して使うこともない。これは文字通り、非常に大きな輝く帆に光子を受けて、その物理的な力で推進する。間違えないで欲しいのは、太陽風ではないということ。これとはまったくの別物だ。

このアイデアの起源は、Planetary SocietyのCEOで、テレビ番組『Bill Nye the Science Guy』のホストとしても知られるBill Nyeが打ち上げ前の記者会見で話したことによると、数世紀前に遡るという。

NASAは深宇宙原子時計などの実験をSpace XのFalcon Heavyで行うと詳細を発表(本文は英語)

「それは実に1600年代にまで遡ります。ケプラーは、太陽が発する力が、彗星の尾やその他の効果を生み出しているに違いないと推測した。そして、いつの日か勇敢な人々が虚空を帆走するようになると、思いを巡らせていました」という。

現代の天文学者やエンジニアたちが、その可能性をもっと真剣に考えるようになれば、実現するかも知れない。

「私がこれを知ったのは1970年代、ディスコ時代でした。私はカール・セーガンの天文学クラスを受講していました。なんと、42年前です。彼は太陽帆走の話を聞かせてくれました」とNyeは振り返る。「私は、1980年、創設とともにPlanetary Societyに参加し、そこを中心に、当時から太陽帆走について議論してきました。実用的な応用性が驚くほど高い、ロマンチックなアイデアです。太陽帆走の利用が間違いなく最適なミッションも、いくつかあります」。

それらは、基本的に、地球から少し離れた、地球に似た惑星の中軌道に長期的に滞在するミッションとなる。また、太陽光やレーザーでゆっくり着実に加速を続けられるために、将来的には、他の推進方式よりも実用的となる長距離ミッションも考えられる。

ミッションの概要

目ざとい方なら、ミッション名の「2」が気になっていることだろう。LightSail 2は、事実、このタイプの2番目のミッションだ。第1号は2015年に打ち上げられたが、帆を開くことだけを目的とし、1週間ほどで燃え尽きることになっていた。

このミッションには、ちょっとした欠陥があった。帆が完全に開かず、コンピューターの異常で通信が途絶えてしまったのだ。太陽帆走は想定されておらず、実際に行われなかった。

「私たちはCubeSatを打ち上げ、無線、通信、エレクトロニクス全般の検査を行い、帆を展開させて、宇宙で開いた帆の写真を撮りました」と、COOのJennifer Vaughnは話してくれた。「純粋な展開テストであり、太陽帆走は行いませんでした」。

宇宙船本体。もちろん、帆は別

しかしそれは、夢のような乗り物の形を目指す後継者への道を均すことになった。その他の宇宙船も貢献している。なかでも有名なのが、金星を目指すJAXAのIKAROSミッションだ。これはもっとずっと大きい。しかし、LightSail 2の開発者たちは、彼らの宇宙船とは効率がまるで違い、目的もまったく違うと指摘した。

この最新の宇宙船は、ほぼ食パン1斤の大きさの3U CubeSatのエンクロージャーに収められ、アメリカ軍のペイロードに便乗して約720キロメートルの高度に運ばれる。そこでペイロードは切り離され、1週間ほど自由に浮遊し、放出される他のペイロードから遠く離れる。

安全が確保されると、LightSail 2はペイロードから撃ち出され、帆を広げ始める。その食パンほどのパッケージからは、32平方メートル(ボクシングリンクと同じほど)の反射マイラーが展開される。

この宇宙船には、リアクションホイールと呼ばれるものが内蔵されている。これを回転させたり速度を落としたりして宇宙船に相反力を加え、宇宙での姿勢を変更できる。この方式によりLightSail 2は、常に光子が当たる角度を保ち、目的の方向へ進み、目的の軌道に乗ることができる。

1HP(ハエ・パワー)のエンジン

開発チームの話では、推進力は、ご想像のとおり非常に小さい。光子には質量がない。しかし(なぜか)運動量がある。どう見てもそんなに強くはない。しかしゼロではない。それが重要なのだ。

「太陽光が私たちに与える力の量はと言えば、マイクロニュートンの単位です」とLightSailのプロジェクト・マネージャーDave Spencerは言う。「化学推進に比べたら、微々たるものです。電気推進と比較しても非常に僅かです。しかし、太陽帆走の鍵は、その力が常にそこにあるということなのです」

「数字にまつわる面白い話がたくさんあります」とNyeが割って入り、そのひとつを解説した。「その力は1平方メートルあたり9マイクロニュートンです。なので32平方メートルなら100マイクロニュートンになります。わずかに聞こえるでしょうが、Daveが言うように、それが連続するのです。ロケットエンジンは、燃料が切れて停止すればおしまいです。しかし太陽帆は、昼も夜もずっと力を受け続けます。あれ……」(と彼は、夜ってあるのかどうか自問自答を始めた。下の図のような感じだ)。

LightSailの主任科学者Bruce Bettsも、もっと信頼性の高い数値を示そうと割って入ってきた。「帆に加わる力の全量は、地球上で手の平にハエを乗せたときとほぼ同じです」。

しかし数時間続けて、毎秒新しいハエを増やしていけば、たちまちその力は加速度的に増加する。このミッションは、その力を捕まえることができるかどうかを確かめるためのものだ。

「私たちは今回の打ち上げを大変楽しみにしています」とNyeは言う。「なぜなら、大気圏から十分に離れた、実際に軌道エネルギーを蓄積して、できるならば、感動的な写真が撮影できる高高度に打ち上げることができるからです」。

前回と(ほぼ)同じ第2の宇宙船

今週打ち上げられるLightSailには、前回の宇宙船から改良が加えられている。とはいえ、全体的にはほぼ変わらない。しかも、比較的シンプルで、低コストな宇宙船だと彼らは主張する。この10年間に、クラウドファンディングと寄付で相当な額の現金を集めてプロジェクトを進めてきた。それでもNASAが同等のプロジェクトを行った場合の数分の1に過ぎないとSpencerは言う。

「このプロジェクトは、前回のLightSail 1よりもずっとしっかりしていますが、前にも言ったとおり、小さなチームでやっています」と彼は言う。「私たちの予算はNASAよりもずっと小さく、同じようなミッションをNASAが行うとして、恐らくその20分の1程度です。これはローコスト宇宙船なのです」。

展開した太陽帆のサイズは5.6×5.6m、支柱の長さは46m、総面積は32平方6mで、ボクシングリングとほぼ同じ。推進材は数cm幅で碁盤の目状に糸を縫い付け、スペースデブリなどによる損傷が広がらないように対策している。帆の厚さは4.5ミクロンで、人間の髪の毛の幅よりも薄い。加速度は0.058ミリ毎秒毎秒。帆の展開方式は、4本のコバルト合金の支柱が巻き尺のように収納されていて、モーターによってそれぞれが伸びる(解説図提供:Planetary Society)

この改良は、LightSail 2の前任者が遭遇した問題にた対処するものだ。まず、内蔵コンピューターは、より頑丈にして(ただし、放射線対策は強化されていない)、不具合を検知でき、必要に応じて再起動できる能力を追加した。LightSail 1のときのように、コンピューターやケースが予測不能な宇宙線の攻撃を受けて、勝手に再起動するのを待たずに済む(実際にそれが起きていたのだ)。

帆の展開方法も改良された。以前のものは、完全展開された状態の90%までしか開かず、後からそれを修正する手段を持たなかった。その後、100%展開するにはモーターを正確に何回転させるべきかを調べるテストが続けられたと、Bettsは話してくれた。それだけではない。伸びる支柱に印を付け、どこまで展開したかをダブルチェックできるようにした。

「さらに、完全に展開されていないとわかったときに、軌道上でもう少し広げられる機能も追加しました」と彼は言った。

ひとたび打ち上げられたなら、そこは未開の領域だ。このようなミッションを実行した者はまだいない。まったく異なるフライトプロフィールを持つIKAROSも行っていない。センサーやソフトウェアが正常に機能することを、彼らは祈っている。それがハッキリするのは、帆を展開してから数時間内だ。

もちろん、これはまだ実験段階だ。ここで習得した知識は、彼らが目指す将来のLightSailミッションに活かす予定になっている。しかし同時に、宇宙飛行コミュニティや太陽帆走を目指す人々にも公開される。

「私たちはみな顔見知りなので、すべての情報は共有しています」とNyeは言う。「実際に、これ以上の言葉では言い表せないのですが、やっとこれが飛ばせるようになって、本当に興奮しています。間もなく2020年です。私たちはこのことを、そう、まさに40年間話続けてきたのです。本当に最高に嬉しい」。

LightSail 2は、SpaceXのFalcon Heavyで6月24日以降に打ち上げられる。最新情報はPlanetary Societyのサイトで確認できる。打ち上げ間際になったら、ライブストリームをチェックしよう。

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(翻訳:金井哲夫)

宇宙スタートアップWyvernは地球で何が起こっているのか誰でも把握できるようにする

民間宇宙産業では、従来の衛星よりもデザインや組み立て、打ち上げがずいぶん簡単な手頃価格かつ軽量の超小型衛星で革命が起こっている。これはWyvernのような新たなビジネスに道を切り開いている。Wyvernは10年前には不可能だっただろう、かなり特殊なサービスを提供しているアルバータ拠点のスタートアップだ。人間の目や従来のレンズでは見られなかった地球の画像データをとらえる手法を用いて、地球低軌道から撮影されるハイパースペクトルの画像に、比較的低コストでアクセスできるサービスを提供している。

CEOのChris Robson氏、CTOのKristen Cote氏、CSOのCallie Lissinna氏、そしてエンジニアリングVPのでCOOのKurtis Broda氏を含むWyvernの創業チームは、アルバータでデザインして作る初の衛星となったEx-Alta 1プロジェクトを含め、授業を通じて衛星をつくった経験を持つ。彼らはまた、クライアントのニーズに応える画像にするための独自の光学技術を開発した。例を挙げると、彼らのまず最初のターゲットは農家だ。農家は商業版にログインして、農地の最新のハイパースペクトル画像データを得ることができるようになる。こうしたハイパースペクトル画像データは、土壌の変化を検出したり(これにより窒素が足りていないことがわかる)、侵入した植物や昆虫を見つけたりするのに役立つ。

「我々は農家の収支に直接かかわるようなことをやっている」とRobson氏はインタビューで答えた。「そうしたものを検出できれば、影響を推測でき、農家はそれにどう対応するか、究極的にはどうやって収支を向上させるか決断を下すことができる。そうしたことの多くは現在マルチスペクトル(画像)なしではできない。たとえば、マルチスペクトルがなければ種分化できず、侵入種を検出することは不可能だ」。

ハイパースペクトル画像と対照的にマルチスペクトル画像は、平均3〜15バンドで光を測定するが、ハイパースペクトル画像は付近にある数百ものバンドに呼応し、これにより衛星から観測するエリアの地上の動物の種類を特定するというかなり専門的なことができる。

ハイパースペクトル画像は、すでにこうした目的での使用では証明されている技術だ。しかし画像をとらえる主な手段はドローン航空機で、これはRobson氏いわく軌道上のCubeSats(小型衛星)より費用がかかり、効率は落ちる。

「ドローン航空機は本当に費用がかかる。現在使用されているドローンの10分の1以下で我々は画像を提供できる」と語った。

Wyvernのビジネスモデルでは衛星の所有・運営にフォーカスする。データへアクセスできるようにし、誰でもアクセスして使える状態にして顧客に提供する。

「我々の差異化を図っている主な点は、実際に行動に移せる情報にアクセスできるようにしているという事実だ」とRobson氏は語った。「これは、もし画像をオーダーしたければ、誰かに電話して見積もりをとるのに1〜3日待つのではなく、Webブラウザでできることを意味する」。

Robson氏は、光学の発達(我々の光学システムは基本的に、物理法則を破ることなく大きな衛星ですべきことを小さなものでできるようにしている、とRobson氏)、小型衛星、データストレージと監視ステーション、そして他のクライアントと一緒の打ち上げに乗っかることで宇宙にアクセスしやすくする民営の打ち上げによりこうしたことが可能になり、しかも手頃な価格になった、と話す。

Wyvernはこのかなり専門的な情報提供のサービスをまずは農業分野のクライアントに提供し、その後、林業や水質監視、環境モニタリング、防衛といった分野に広げる計画だ。これは、Planet Labsのような他の一般的な衛星画像プロバイダーがしようとしていることではない、とRobson氏は語る。というのも、完全に異なる機材やクライアント、需要による異なるビジネスだからだ。ゆくゆくは集めるデータにより広くアクセスできるようオープンにしたいとWyvernは願っている。

「あなたが誰で、どこの政府や国に属し、どこにいようが、地球の健康に関する情報にアクセスする権利を持っている」とRobson氏は話す。「他の人やあなたが地球をどのように扱っているか、あなたの国がどのような行動を取っているかを見る権利を持っている。そしてまた地球に配慮する権利も持っている。なぜなら我々はかなりの略奪者だからだ。我々は最も賢い生き物だ。そして地球の世話役としての責任もある。その一環として、我々の体で何が起こっているのか理解するのと同じように地球で何が起こっているのか、博識をもって行動することができる。それが我々が人々に望むことだ」。

この実現に向かって、Wyvernは今の所まだ初期段階にある。彼らは初の資金調達に取り組んでいる。そして潜在顧客にアプローチしつつ、初のプロダクトの最終検証作業を行っている。しかし、衛星をつくって打ち上げた実績、どういったことをしたいのかはっきりと示された野望からするに、彼らが確かなスタート切ることは確実だろう。

イメージクレジット: NASA

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(翻訳:Mizoguchi)