Mozilla、同デベロッパーネットワークのサブスク有料会員募集を開始

Mozilla(モジラ)は米国時間3月24日、既存のMozilla Developer Network(MDN、モジラ・デベロッパー・ネットワーク)上に、サブスクリプションサービスMDN Plus発表した。MDNは、ウェブ上でCSS、HTML、JavaScriptなどのウェブ技術に関するドキュメントやコードサンプルを見つけるための、最も人気のある場所の1つだ。なおMDNは最近デザインを一新している。

新しいサブスクリプションサービスが提供するのは、通知コレクション(保存したい記事のリストなど)、利用者がオンラインでないときにMDNにアクセスしたいときのためのMDNオフラインなどだ。

サブスクリプションは3つの階層に分かれる。有料プランの無料限定版である「MDN core」、通知、コレクション、MDNオフラインへのアクセスが月5ドル(約610円)、年50ドル(約6100円)で提供される「MDN Plus 5」、そしてMDNチームへの直接のフィードバックチャネル(と「誇りと喜び」)に加えて、プラットフォームのサポートにもう少しお金を払ってもいい人たち向けの「MDN Supporter 10」だ。その名のとおり、最後の高価なプランは、月々10ドル(約1220円)、年間契約では100ドル(約1万2200円)が課金される。

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MDN Web Docsの内容に変更はない。それらは今後も無償で利用できる。「私たちは今後も無料で、誰でもアクセスできるウェブドキュメントの執筆・保守を続けていきます。これは将来変わりません。さらに、MDN Plusから得られる利益の一部を再投資し、ドキュメントやウェブサイト全体のユーザーエクスペリエンスを改善する予定ですので、MDN Web Docsも恩恵を受けることができると考えています」と、MozillaのFAQは説明している。

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MDN Plusは、米国時間3月24日、米国とカナダでローンチする。今後数カ月のうちに、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ベルギー、オーストリア、オランダ、アイルランド、英国、スイス、マレーシア、ニュージーランド、シンガポールで展開される予定だ(グローバルなサブスクリプションサービスの立ち上げには、多数の弁護士の関与が必要だ)。

今回、MDN Plusがローンチされたのは、決して予想外ではない。Mozillaは2021年、この動きに向けての探りを入れ始めていた。そのときは、Mozillaが5ドルと10ドルの2種類の価格をA/Bテストしていたため、価格設定に少し混乱が起きたが、MDNがもたらす価値の大きさから、ほとんどの開発者はこの取り組みに賛同した

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また、Mozillaは2020年に行ったレイオフでMDNのスタッフをかなり削減したものの、中核となるエンジニアリングチームはほとんど手つかずのままにしておいたことも注目に値する。Mozillaの歴史を振り返ると、MDN のような無料のサービスを提供することが、Mozilla のミッションステートメントにはっきりと謳われ、他の収入源から容易に補助を受けることができていた時期もあった。今回の有料プランによって、Mozillaはやがて自立できることを望んでいるに違いない。現段階では、この収益の使い道についてMozillaがいっているのは「Mozillaの中にとどまる」ということだけだ。

画像クレジット:Benjamin Kerens /Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

MozillaがAndroid版Firefox FocusとiOS版Firefoxに新機能を導入、ピクサー映画の壁紙も

Mozilla(モジラ)は米国時間3月8日、Android版「Firefox Focus」とiOS版「Firefox」に新機能を導入すると発表した。Android向けのプライバシーを重視したモバイルブラウザであるFirefox Focusには「HTTPSオンリーモード」が追加される。このモードでは、訪問するすべてのウェブサイトで、アプリが自動的にHTTPSによる安全で暗号化された接続を確立するようになる。

「シンプルでプライバシーをデフォルトで重視するコンパニオンアプリとして、私たちはFirefox Focusをユーザーにとってより安全にするためにもっとできることはないかと考え、HTTPS専用モードを思いつきました」と、Mozillaはこの発表についてのブログ記事で述べている。「これは、Firefox Focusに自然にフィットするように感じられました。Android版Firefox Focusは現在、利用できる最高のセキュリティとプライバシーのために、自動的にHTTPSを選んで接続し、気が散ったり心配したりすることなく、あなたが迅速な検索を行いたいと思う瞬間をサポートします」。

今回の発表から2カ月ほど前、MozillaはAndroid版Firefox Focusに「Total Cookie Protection(トータル・クッキー・プロテクション)」と呼ばれるプライバシー保護機能も導入している。その目的は、毎日訪れるサイトや検索している製品など、複数のサイトでクッキーを共有して企業がユーザーに関する情報を収集するクロスサイトトラッキングを制限することだ。

iOS版Firefoxアプリの方は、画面の上部だけでなく下部にも配置できる新しい調整可能な検索バーが追加された。このわずかな変更により、ユーザーがオンラインで訪問したい場所にすばやくアクセスできるようになると、Mozillaでは述べている。この新しいオプションは、Apple(アップル)が「Safari(サファリ)」ブラウザに採用した調整可能な検索バーと似ている。

なお、Mozillaは今回の発表に合わせて、Disney(ディズニー)とPixar(ピクサー)の映画「私ときどきレッサーパンダ(原題:Turning Red)」にちなんだモバイル壁紙を、米国内の全ユーザーに展開することも発表した。この壁紙は、Firefoxモバイルアプリを開き、ホームページのFirefoxロゴをダブルクリックするか「ホームページをカスタマイズ」から見つけることができ、さまざまな壁紙の中から好きなものを選んで設定できる。Mozillaによると、今後数カ月のうちには新しい壁紙も用意され、グローバルにも展開する予定だという。

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

MozillaがVRウェブブラウザ「Firefox Reality」の公開終了を発表

人気のVRウェブブラウザが終了する。米国時間2月3日、MozillaはVR環境で使用するために開発し、4年にわたって公開していたFirefox Realityブラウザを終了すると発表した。このブラウザを利用するとVRヘッドセットでウェブにアクセスし、マウスではなくVR用ハンドコントローラを操作して、URLへのジャンプ、検索、2Dと3Dのインターネットのブラウズなどができる。

関連記事:MozillaのVR用ブラウザーFirefox Realityが完成、VRがWebのふつうのコンテンツになる日も近い?

Firefox Realityは2018年秋に初めて公開され、Viveport、Oculus、Pico、Hololensのプラットフォームでアプリストアから入手することができた。2Dのウェブを閲覧できる一方、この新しいテクノロジーを使ってウェブの3Dコンテンツ、例えば360度パノラマ画像やビデオ、3Dモデル、WebVRゲームなどのブラウズや操作ができると期待された。しかし米国時間2月3日の発表で、Mozillaはこれまでダウンロード可能だったアプリストアから「数週間」以内にブラウザが削除されると述べた。

Mozillaはその代わりとして、今後もVRでウェブブラウザを利用したいユーザーは、Firefox Realityのソースコードに基づいてIgaliaが公開するオープンソースのブラウザ「Wolvic」を使うように案内している。Wolvicは2月7日の週にダウンロードできるようになるので、ユーザーにとってはブラウザがなくなってしまうわけではないが、乗り換えが必要となる。

IgaliaはXR分野への取り組みを全面に押し出している。XRとは、VRやAR、そしてこれに類するテクノロジーの総称として使われる言葉だ。Igaliaは同社の発表の中で、この分野に対するMozillaの取り組みが行き詰まっていると感じていたことを示唆し、実験を引き継いで「この取り組みを継続してプロジェクトを完成させる」ことに意欲を示している。

Igaliaのウェブサイトに掲載された発表には、以下のように書かれている。「Igaliaは、XR分野にとってウェブは多くの点で重要であると確信しています。没入型OSを提供するXRシステムには、その一部としてウェブブラウザが必要です。ウェブ上にすでに存在するものに一切アクセスせずに『リアリティ』に入っていくことは、かなり難しいでしょう。そしてWebXRはブラウザ自体から得られる情報をたどり、共有し、体験するための新しい手段となります。没入型OS向けブラウザの再考は新しい領域であり、なぜ新しいかといえばブラウザの選択が現在は限られているからです」。

公開時点では、WolvicブラウザはOculus、HTC Vive Focus、Pico Interactive、Daydream、HuaweiのARメガネ、オープンソースのLynxデバイスで動作する。ただし2月7日の週に公開されるブラウザはMozillaがこれまでのブラウザで提供していた機能の一部を移行中であるため、まだベータ版だ。

Igaliaは今後2年間ブラウザのプロジェクトに取り組む資金の一部を確保したが、健全なエコシステムを構築するにはさらにパートナーを見つける必要があると述べ、関心のある人はメールで連絡して欲しいと呼びかけている。

Firefox Realityの終了を決めた理由について、MozillaはWebVRやWebARといった新しいテクノロジーの開発は支援するが、そうしたテクノロジーのホストやインキュベートを長期にわたって継続するとは限らないと説明している。WebAssembly、Rust、Servoのように、プロジェクトを継続できる他の組織を見つける場合もある。もちろん、かつてたいへんな人気を誇ったウェブブラウザのFirefoxで一般ユーザーに今でもよく知られている組織として、最新のブラウザ技術の将来は別の組織に引き継いでいる。

画像クレジット:Mozilla

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

Mozilla、モバイルおよびデスクトップのVPNに新プライバシー機能を展開

Mozilla(モジラ)は、モバイルとデスクトップVPNサービスの新しいアップデートを展開すると、米国時間2月1日に発表した。Mozilla VPN 2.7では、Firefoxの人気アドオンの1つであるマルチアカウントコンテナーをデスクトッププラットフォームに導入し、AndroidとiOS版のVPNサービスにもマルチホップ機能を導入している。

Firefoxのマルチアカウントコンテナーにより、ユーザーは仕事、ショッピング、バンキングなど、オンライン活動の異なる部分を分離することができる。仕事のメールをチェックするために新しいウィンドウや別のブラウザを開く必要がなく、その活動をコンテナータブに分離することができ、他のサイトがウェブ上の活動を追跡するのを防ぐことができる。同社は、このアドオンとMozillaのVPNを組み合わせることで、ユーザーの区分されたブラウジング活動にさらなる保護層を追加し、ユーザーの位置情報にもさらなる保護を追加することができると述べている。

「例えば、仕事で出張中、フランスのパリで仕事のメールをチェックするためにコンピュータを使用しているが、ニューヨークの個人の銀行口座もチェックしたいとします。そこで、マルチアカウントコンテナーに加え、Mozilla VPNの追加プライバシーと30カ国の400以上のサーバーから選択することで、仕事と個人の財務のオンライン活動を分離することができます」と、Mozillaは新しい発表についてブログ投稿に書いた。

2021年、Mozillaは、1つのVPNサービスではなく、2つのVPNサーバを使用することができるマルチホップ機能をデスクトップで発表したが、今回、それがモバイル上でも展開されることになった。この機能は、最初にエントリのVPNサーバー、そして出口のVPNサーバーを介してあなたのオンラインアクティビティをルーティングすることによって動作する。Mozillaは、VPNサービスのAndroidとiOSバージョンにこの機能をもたらすことは、ブラウジング時にユーザーにさらなるプライバシーを与えると言っている。同社は、この機能は、プライバシーについて特に注意したい人々に有用であり、政治活動家や敏感なトピックについて書いているジャーナリストにも有用であることを指摘している。

これらの新しいアップデートは、Mozilla が最近、Android 版 Firefox Focus にクロスサイトトラッキングに対抗するために使用する Total Cooke Protection (トータルクッキープロテクション)の提供を開始したことに続くものだ。Total Cookie Protection の目的は、毎日訪れるサイトや検索している製品などの情報を企業が収集するクロスサイト・トラッキングを緩和することだ。Mozillaは2021年、Firefox Relayを発表した。これは、ユーザーのアイデンティティを保護するために、ユーザーの実際の電子メールアドレスを隠すための製品だ。

画像クレジット:David Tran / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

Mozillaの2021年売上は約567億円超の見込み、新たな取り組みや製品がゆっくりだが確実に軌道に乗る

Mozilla Foundation(モジラ・ファウンデーション)は米国時間12月13日、2020年の財務報告書を発表した。いつものように1年前からの同社の財務状況をよく知ることができるが、2021年初めて同社はより最近のデータも提供した。

最近のMozillaが、営利部門であるMozilla Corporation(モジラ・コーポレーション)の再編にともない、2020年に大規模解雇を実施するなど、数々の困難な状況に陥ったことは周知の事実だ。主力ブラウザFirefoxも、かなりの技術的進歩にもかかわらず、Chromiumベースのブラウザが主流となっている市場で苦戦を強いられている。それでも、2020年のMozilla Corporationの売上高は、検索パートナーシップ(主にGoogleとの検索契約が牽引)、サブスクリプション、広告収入で4億6600万ドル(約528億円)となった。これは、Mozilla Corporationがこれらのソースから4億6500万ドル(約527億円)を得た2019年と基本的に同じだ。

2021年については、5億ドル(約567億円)超の売上を見込んでいる。

しかし、おそらく最も重要なことは、Mozilla VPNサービス、Firefox Relay Premium、PocketなどのMozillaの新製品やその他の商業的な取り組みが、ゆっくりと、しかし確実に成果を上げ始めていることだ。MozillaのエグゼクティブVPであるAngela Plohman(アンジェラ・プローマン)氏とCFOのEric Muhlheim(エリック・ミュールハイム)氏が12月13日の発表で述べたように、新製品の提供による売上は2021年150%成長し、2021年には売上の14%を占める見込みだ。Mozilla VPNサービスは、2020年から2021年にかけて450%の売上増となった。

それでも、2020年でのMozilla売上の86%は、Googleとの検索契約によるものだ。2019年の88%からはいくぶん下がっているが、どう考えてもMozillaはここしばらくGoogleに完全に依存していることに変わりはない。

売上源を多様化することはMozillaにとって、圧倒的なシェアを誇るChromeブラウザを展開しているために競争相手でもあり、Mozillaの全体的な哲学とはますます一致しないようになっているGoogleとの検索契約への依存度を下げる唯一の方法だ。

Mozilla FoundationのCEO兼会長のMitchell Baker(ミッチェル・ベイカー)氏は、同日の発表で次のように述べている。「広告が変化し、ウェブのビジネスモデルの将来が危ぶまれる中、私たちの価値観に合致し、当社を際立たせることのできる、新しく責任ある収益化の方法を模索してきました。Cookieの廃止とオンライン広告のエコシステムの見直しが必要だと考えてきました。そして当社は、人々を尊重しながら企業に価値を提供する、責任ある広告の新しいモデルに向けて業界をナビゲートする立場にあります。未来のための製品を作ることで、私たちは将来のためのビジネスを作っているのです」。

しかし結局のところ、Mozillaが必要としているのは、ブラウザであれVPNであれMozillaのサービスをより多くのユーザーに採用してもらう(あるいは戻ってきてもらう)ことだ。Googleの動機にユーザーがますます懐疑的になっていることや、MicrosoftのEdge チームがここ数カ月でいくつかの過失を犯していることから、非Chromeブラウザにはチャンスがある。しかし同時に、MozillaはFirefoxにスポンサー付きの提案や広告を導入するための努力をしてきたが、必ずしもユーザーに好かれているわけでもなかった。

画像クレジット: David Tran / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

Firefoxモバイルブラウザーがアップデート、最近のタスクにすばやくアクセス可能に

モバイルブラウザーFirefox(ファイヤーフォックス)は現地時間11月2日、iOSおよびAndroid向けの最新版をリリースし、開いているタブの数が多すぎることによる煩雑さや、前回アプリを閉じたときに中断した場所に戻る必要があることなど、よくある問題への対応を目的としたアップデートを行った。今回の変更は、モバイルウェブへの再アクセスポイントとして機能するようになる新しいホームページを導入したFirefox Betaの一環として行われたものだと、ブラウザの製造元であるMozilla(モジラ)は述べた。

この変更により、Firefox は、Apple(アップル)のSafari(サファリ)や Google(グーグル)のChrome(クローム)のようなモバイルデバイスのデフォルトオプションとの競争力を高めることができる。他のApple アプリから送られてきたものを共有するSafariの新しい「あなたと共有」や、Chrome の最近のタブや検索履歴に簡単にアクセスできるボタンのように、Firefoxの「新しいタブ」ページは、ブックマークやリーディングリストなどのアイテムをユーザーに提供している。

しかし、Firefoxの場合は、単なるボタンではなく、ホームページ上で直接スクロールできるリストとして表示されるので、読んでいた記事や最近の検索結果などの項目により簡単に戻ることができる。

例えば「Jump back in(ジャンプバックイン)」セクションでは、タブの混乱の原因になりがちなユーザーが読みかけの記事をすぐに見つけることができるようになる。これらは、ホームページに直接表示される最新のヘッドラインの隣に「すべて表示」リンクをクリックするとリストで表示される。

最近保存したブックマークは、デスクトップのFirefoxから同期したものも含めて、ホームページ上に表示されるようになった。また、最近の検索結果は、トピックごとにグループ化されてホームページに表示される。Mozillaによると、これらの検索結果は最大14日間保存されるので、検索履歴を調べなくても、オンラインリサーチに簡単に戻ることができる。

大きな変更点の1つは、モバイルブラウザを使用する際の最も一般的な問題の1つであるタブの乱立に対処することだ。ユーザーは、参照する必要のあるタブや読み終える必要のあるタブを閉じずに開いたままにすることがよくある。しかし、これでは多くのタブが開いたままになり、実際に開いているタブを移動させる必要が生じたときに、混乱することになる。

Firefoxはこの問題に対処するため、14日間再訪していない非アクティブなタブを保存し、開いているタブが多すぎることによる視覚的な混乱やストレスを軽減するために、これらのタブを表示から削除する新機能を導入した。残念ながら、この機能は発売時にはAndroidベータ版でしか利用できない。

また、同社は「あとで読む」のためのアプリPocket(ポケット)との提携を拡大し、ユーザーが自分の興味に合ったストーリーでホームページをカスタマイズできるようにする。これまでもFirefoxでは、新着記事をPocketからAndroidユーザーに提供していたが、ユーザーからのどのような記事を表示するか、もっとカスタマイズしたいという声が寄せられていた。この機能も当面はAndroidのみの提供となる。

その他の変更点としては、新たに18種類以上のテーマを選択できるようになったこと、Site Isolation(サイトアイソレーション)と呼ばれるセキュリティアーキテクチャの導入によりサイドチャネル攻撃への対応が強化されたことなどが挙げられる。

今回の変更は、5月に導入された大規模なデザイン変更にさらに磨きをかけたものだ。このデザイン変更は、ごちゃごちゃしたメニューをなくし、ナビゲーションを簡素化し、新しいタブデザイン、iOSアプリの更新、プライバシー機能の強化など、ブラウジング体験をシンプルにすることを目的としている。その際、Mozillaは、年内にさらなるアップデートを行うことを約束した。

また、Mozillaは2021年10月、プライバシーを重視したブラウザFirefox Focus(ファイヤーフォックスフォーカス)を刷新し、ユーザーが頻繁にアクセスするサイトにすばやくアクセスできる方法を盛り込んだ。

新しいブラウザのアップデート版であるFirefox 94は、現在、Google Playストアで「Firefox Beta」と検索することで入手でき、Android 5.0以上で動作する。iOSでは、ユーザーはTestFlightを通じてベータ版をダウンロードする必要があり、iOS 13以上に対応している。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

プライバシー重視のモバイルブラウザー「Firefox Focus」アップデート、新ロゴ、ショートカット機能などなど追加

Mozillaは、プライバシーを重視したモバイルブラウザー「Firefox Focus」をアップデートし、外観やショートカットを一新するとともに、プライバシーコントロールを強化した。Firefox Focusは2016年に初めて登場し、基本的にデフォルトでプライベートブラウジングモードを提供する。このブラウザーは、ニューカラー、新しいロゴ、ダークテーマを採用している。また、Mozillaは、ユーザーが頻繁に訪れるサイトにすばやくアクセスできるように、新しいショートカット機能を追加した。

最新のアップデートには、個々のトラッカーの有効 / 無効をすばやく切り替えられるシールドアイコン(盾型アイコン)がある。また、現在、グローバルにブロックしているトラッカーの数がわかるカウンターがある。Mozillaによると、これらによりユーザーは、自分がトラック(追跡)されているか気にせずに検索をすばやく完了できる。

Cybersecurity Awareness Monthの一環としてMozillaは、Android上のFirefoxに新しい機能を加えた。アプリのアカウントをこれから作るユーザーは、新しいパスワードを直接ブラウザーに保存可能で、モバイルとデスクトップの両方で、アカウントに簡単にログインできるようになる。

またブラウザーに保存したパスワードを自動入力して、そのアカウントにログインできる。Firefoxのアカウントを作ったユーザーは、すべてのパスワードをデスクトップとモバイルデバイスの両方で同期できる。さらにパスワードなどを使わずにユーザーの顔や指紋でアカウントのロックを解くこともできる。

Mozillaの発表によると、Firefoxは年内にWindowsのMicrosoft Storeで入手できるようになるという。Microsoftが、ストアにおけるサードパーティー製ブラウザーの制限を緩めたからだ。

「Firefoxのような独立したブラウザーを含む企業やアプリケーションに対して、Microsoft Storeがよりオープンになったというニュースを歓迎します。より健全なインターネットとは、人々が多様なブラウザーやブラウザエンジンから選択する機会を持つことだと考えています」とMozillaは声明で述べている。

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

YouTubeの動画レコメンドAIは依然として悪行を重ねていることが大規模調査で判明

YouTubeの動画推薦アルゴリズムは長年、さまざまな社会悪を煽ってきたとして非難されてきた。YouTubeには、AIで増幅されたヘイトスピーチ、過激な政治思想、そして同社の広告インベントリに数十億人の目を釘付けにして荒稼ぎするための策略やデマの類があふれている。

YouTubeの親会社であるGoogle(グーグル)は、YouTubeのアルゴリズムが反社会的な動画を推薦していることをめぐって、ひどくなる一方の非難に対して時折対応策を講じているものの(いくつかのポリシー変更憎しみに満ちたアカウトの制限や削除など)、ひどく不健全なクリックベイトを表示するYouTubeの傾向がどの程度復活しているのかは不明だ。

だが、そうした傾向が復活している疑いは限りなく強い。

Mozilla(モジラ)によって公開された新しい調査も同じ考えを支持している。YouTubeのAIによって「他人の不幸を利用して利益を得る」、低級で、争いの種になる、偽情報の動画コンテツが増え続けている。人々の怒りに火をつけ、分裂や分断を縫い合わせ、根拠のない有害な偽情報を拡散するといった行為によって人の目を引く類の動画だ。これらは、悪質な動画を推薦するYouTubeの問題が同社の体質的なものであることを暗示している。つまり、動画の再生回数を増やして広告の表示回数を稼ぐ同社の強欲さの副作用だ。

YouTubeのAIは依然としてひどい行為をしているというモジラの調査結果は、グーグルが少なくとも表面的には改善を行っていると主張することでうまく批判を和らげていることを示唆している。

このようにYouTubeの戦略が曲がりなりにも成功しているのは、推薦エンジンのアルゴリズムの仕組み(と関連付けられたデータ)を世間の目と外部の監視から隠す主要な保護メカニズムが「経営上の機密事項」という都合の良い隠れ蓑によって機能しているためと思われる。

しかし、このYouTube独自のAIブラックボックスをこじ開ける可能性のある規制が、少なくとも欧州では、採択されそうだ。

YouTubeのアルゴリズムを修正するために、モジラは「常識的な透明性を規定した法律、監視の強化、消費者による圧力」を求めており、YouTube AIの過剰機能による最悪の事態を抑制するために、AIシステムに透明性を強制的に導入し、独立した研究者を保護してアルゴリズムによる影響を調査できるようにし、堅牢な制御権(「パーソナライズ」された推薦をオフにする権利など)をYouTubeのユーザーに付与するといったさまざまな法律の組み合わせが必要になることを示唆している。

YouTubeユーザーが観たことを後悔する残念な動画

YouTubeユーザーに対して行われている具体的な推薦に関するデータ(グーグルはこのデータを外部の研究者に対して定期的に公開していない)を収集するため、モジラはクラウドソーシングによるアプローチを採用した。具体的には、ブラウザーの拡張機能(RegretsReporter)を使用して、ユーザーが視聴したことを後悔しているYouTube動画を自己報告できるようにした。

このツールを使用すると、ユーザーに対して推薦された動画(以前再生された動画も含む)の詳細情報を含むレポートを生成して、YouTubeの推薦システムがどの程度機能している(場合によっては「機能していない」)のかを示す実態を構築できる。

クラウドソースで自主的に回答した(モジラの調査にデータが使用された)ユーザーたちは、感染拡大する新型コロナウイルスの恐怖を利用した動画、政治的なデマ「極めて不適切な」子ども向け漫画など、さまざまな「残念な動画」を報告している。レポートによると、最も頻繁に報告されたコンテンツカテゴリーとして、デマ、暴力 / グラフィックコンテンツ、ヘイトスピーチ、スパム / スキャムなどがある。

残念動画のレポートの圧倒的多数(71%)がYouTubeのアルゴリズムによって推薦された動画に対するものだった。これは、YouTubeのAIがユーザーにゴミのような動画を押し付けるのに大きな役割を果たしていることを明確に示している。

また、この調査によって、推薦された動画のほうが調査回答者が自分で探した動画よりも報告される可能性が40%以上高かったことも判明した。

モジラによると、動画推薦アルゴリズムが、YouTube自身のコミュニティガイドラインに違反しているコンテンツまたは以前視聴された動画と関係のないコンテンツをユーザーに提示しているケースがかなり多数見つかったという。つまり、明らかに推薦に失敗したケースだ。

今回の調査結果で特筆すべき点は、視聴して後悔する残念なコンテンツは、非英語圏国のYouTubeユーザーにとって、より大きな問題となるらしいという点だ。モジラによると、YouTube動画を視聴して後悔する確率は英語が一次言語ではない国のほうが60%高かったという。具体的には、ブラジル、ドイツ、フランスではYouTubeの動画視聴で後悔するレベルが「とりわけ高かった」(この3か国は国際市場として決して小規模ではない)。

レポートによると、パンデミック関連の残念な動画もやはり、非英語圏国でより広く見受けられた。これは、世界中で健康危機が継続している今大いに懸念される点だ。

今回のクラウドソーシングによる調査(モジラによるとYouTubeの推薦アルゴリズムに関する調査では最大規模)は、前述の拡張機能をインストールした3万7000人を超えるYouTubeユーザーのデータに基づいているが、このうち実際に動画を報告したのは91カ国、1162人の回答者で、彼らが指摘した3362本の視聴して後悔した動画に基づいてレポートが作成された。

これらのレポートは2020年7月から2021年5月の間に生成された。

モジラのいうYouTubeの「残念な動画」とは実際のところ何を意味するのだろうか。モジラによると、これは、YouTube動画を視聴したときの悪い体験のユーザによる自己報告に基づくクラウドソーシング型概念だという。しかし、モジラによると、この「人力」方式のアプローチでは、インターネットユーザーの実際の経験に重点を置いているため、社会的に主流ではない、あるいは弱い立場の人たちやコミュニティの声をすくい上げるのに効果的だ(狭義の法的な意味での「有害」という言葉を当てはめて終わるのとは対照的だ)。

モジラのアドボカシー担当上級マネージャーで、今回のプロジェクトの主任研究者であるBrandi Geurkink(ブランディ・ゲルキンク)氏は、今回の調査の目的について次のように説明してくれた。「我々は、YouTube動画視聴の泥沼にはまり込んでしまう人々の体験を掘り下げて調査し、よく言われる不快な体験を率直に確認して、そこに埋もれている傾向を把握したかったのです」。

「この調査を実施して、我々が予想していたことの一部が事実であることが確認されたことは本当にショックでした。調査対象人数も少なく使用した方法にも制限のある調査ですが、それでも結果は極めてシンプルでした。データは我々が考えていたことの一部が確認されたことを示していたのです」。

「例えばコンテンツを推薦するアルゴリズムというのは基本的に誤りを犯すものという事実が確認されました。推薦した後で、『おっと、これは当社のポリシーに違反しているじゃないか。これをユーザーに積極的に推薦すべきではなかったな』という具合に。非英語圏のユーザーベースではもっとひどい体験をしているということもあります。こうしたことは事例としてはよく議論されるのを聞きますし、活動家はこれらの問題を取り上げています。しかし、私が今回の調査結果で感じたのは『すごい!データにはっきりと現れているじゃないか』ということです」。

モジラによると、今回のクラウドソーシングによる調査で、ヘイトスピーチや政治的 / 科学的なデマなど、YouTubeのコミュニティガイドラインに違反する可能性が高い、あるいは実際に違反する膨大な数のコンテンツ例が報告され明らかになったという。

またレポートでは、YouTubeが「ボーダーライン上のコンテンツ」とみなす可能性のある多くの動画が指摘されていたという。つまり、分類するのは難しいが、おそらく許容範囲を逸脱していると思われる低質の動画、アルゴリズムによるモデレーションシステムでは対応するのが難しい動画だ(こうしたコンテンツは削除のリスクを逃れ長期に渡って掲載されたままになる可能性がある)。

これに関連してレポートで指摘されているのは、YouTubeは(ガイドラインの中で説明はしているものの)ボーダーライン上のコンテンツの定義を提供していないという問題だ。このため、多くの回答者が「残念」として報告している動画の大半はYouTubeのいうボーダーライン上のコンテンツというカテゴリーに含まれるのだろうという研究者の仮説を検証する手立てがない、とモジラはいう。

グーグルのテクノロジーとプロセスの社会的影響を独自に研究するのを困難にしているのは、研究の基盤となるテーマに掴みどころがない点だ。ただし、モジラのレポートによると、YouTubeへの批判に対するグーグルの対応は「無気力で不透明」だとして非難されてもいる。

問題は、それだけに留まらない。批評家たちは、YouTubeの親会社であるグーグルが、憎しみに満ちた怒りや有害なデマによって生まれるエンゲージメントから利益を得ていることを長い間非難してきた。グーグルが、ユーザー生成コンテンツという名目の下で低質コンテンツビジネスを擁護している間にも、AIによって生成された憎しみの泡によってさらに有害な(それだけに見るものを強力に惹きつける)コンテンツが出現し、疑うことを知らない無防備なYouTube視聴者はますます不快で過激なコンテンツに曝されることになる。

実際「YouTube動画の泥沼にはまる」という表現は、無防備なインターネットユーザーが暗く不快なウエブの片隅に引きずり込まれるプロセスを説明する常套文句となっている。このユーザーの思考回路の修正(洗脳)はAIによって生成された推薦によって白昼公然と行われており、YouTubeという主流ウエブプラットフォームから陰謀論のパンくずリストをたどるよう人々に叫んでいるのである。

2017年、オンラインテロとソーシャルメディアでのISISコンテンツの拡散について懸念が高まっていた頃、欧州の政治家たちはYouTubeのアルゴリズムを自動過激化と称して非難していた。

とはいえ、個々のYouTubeユーザーが過激なコンテンツや陰謀論動画を再生した後「過激化」されているという事例レポートを裏付ける信頼できるデータを取得するのは依然として難しい。

YouTubeの前社員Guillaume Chaslot(ギヨーム・チャスロット)氏は、algotransparencyプロジェクトによって、これまでYouTubeの独自テクノロジーを詳細な調査から保護してきた障害を排除する取り組みを続けてきた著名な批評家の1人だ。

モジラのクラウドソーシングによる調査は、チャスロット氏の取り組みを基礎として、ユーザー自身の不快な体験の各レポートを照合して、いろいろと問題の多いYouTube AIの全体像を浮かび上がらせようとしたものだ。

もちろん、グーグルのみが(詳細度と量の両面において)全体を保持しているプラットフォームレベルのデータを外部からサンプリングするだけで全体像は得られない。それに、自己報告では、モジラのデータセットにバイアスが導入される可能性もある。しかし、モジラはプラットフォームのパワーの適切な監視を支持する立場をとっているため、テック大手のブラックボックスを効果的に研究するという問題は、今回の調査にともなう重要なポイントだ。

レポートでは、一連の推奨事項として「堅牢な透明性、精密な調査、ユーザーに推薦アルゴリズムのコントロール権を付与すること」を求め、適正な監視なしでは、精神的損害を与え人を脳死状態にするコンテンツに、何も考えずにユーザーを晒すことで、YouTubeは今後も有害であり続けると主張している。

YouTubeの大半の機能において問題となっている透明性の欠如は、レポートのその他の詳細部分からも見て取れる。例えばモジラは推薦された残念な動画のうち約9%(200本近い動画)が削除されていることを確認した。削除の理由はさまざまだが、いつも明確な理由があるわけではない(コンテンツが報告され、おそらくYouTubeが同社のガイドラインに違反していると判断した後に削除されたものもある)。

合計すると、こうした一部の動画だけで、何らかの理由で削除される前の合計再生回数は1億6000万回にもなる。

また、残念な動画ほどYouTubeプラットフォーム上で高い収益を上げる傾向があることも今回の調査で判明した。

狂っているとしか思えない数字だが、報告された残念な動画は、回答者が視聴した他の動画よりも、1日あたりの再生回数が70%も多い。この事実は、YouTubeのエンゲージメント最適化アルゴリズムが、単にクリック回数を稼げるという理由だけで、(よく考えられた、有益な情報をもたらす)高品質の動画よりも扇動的な、あるいは誤解を与えるコンテンツのほうを偏って選択するという主張に説得力を与える。

これはグーグルのビジネスにはすばらしいことかもしれない。しかし、民主社会では、ばかげた情報よりも本物の情報に、人工的な / 増幅されたコンピュータ上のデータよりも正真正銘の公開された議論に、争いの種となる部族主義よりも建設的な市民の団結に価値を見出す。そのような民主社会にとって、YouTubeのアルゴリズムは明らかにマイナスだ。

しかし、広告プラットフォームに対する法的な強制力のある透明性要件がないかぎり、そして何より、監査当局による規制の監視と実施がなければ、今後もこうしたテック大手に、無防備なユーザーに目をつけ、社会的犠牲と引き換えに収益を上げる動機を与え続けることになる。

モジラのレポートでは、YouTubeのアルゴリズムが明らかに、コンテンツ自体とは無関係のロジックによって動いている実例も強調している。回答者が残念な動画を報告する前に視聴した動画についてのデータを研究者が持っているケースのうち、実に43.6%で、以前視聴した動画とまったく無関係の動画が推薦されているという結果が得られた。

レポートでは、このような理屈に合わないAIによる推薦コンテンツの急転換の実例を上げている。例えば米国軍の動画を見た人が、その直後に「口コミ動画でフェミニストを侮辱する男性」というタイトルの女性蔑視動画を推薦された例などだ。

ソフトウェア所有権に関する動画を見た後、銃所有権に関する動画を推薦された例もある。2つの権利(right)によって、YouTubeの推薦間違い(wrong)がまた増えたわけだ。

さらには、Art Garfunkelのミュージック動画を見た後「トランプのディベート司会者が民主党と深いつながりがあることが判明、メディアの偏向が限界点に」というタイトルの政治関連動画を推薦された例もある。

こうした間抜けな推薦に対しては「何だって?!」と反応するしかない。

こうした事例のYouTubeの出力は、控えめにいっても「AIの屁のようなもの」としか思えない。

寛大に解釈すれば、アルゴリズムが混乱して間抜けな推薦をしてしまったということなのかもしれない。とはいえ、レポートでは、こうした混乱によって、YouTubeユーザーが、右寄りの政治的偏向のあるコンテンツを見るよう仕向けられている多くの例が紹介されているのは、興味深い。

モジラのゲルキンク氏に最も懸念される点を尋ねると、次のように答えてくれた。「1つは、デマがYouTubeプラットフォーム上で明らかに大きな問題として浮上しているという点です。モジラの支持者や世界中の人たちに聞いた話によると、人々がオンラインに流れるデマについて懸念していることは明白です。ですから、その問題がYouTubeアルゴリズムで最大の問題として浮上しているという事実は大いに懸念されるところです」。

同氏は、もう1つの大きな懸念材料として、推薦動画の問題が非英語圏のユーザーにとって、より深刻になっている点を挙げ、YouTubeプラットフォーム上における世界的な不平等によって「十分に配慮してもらえない」という問題が、そうした問題が議論されているにもかかわらず起こっていることを示唆した。

モジラのレポートに対してグーグルの広報担当にコメントを求めたところ、次のような返事が返ってきた。

当社の推薦システムの目標は、視聴者をいつでもお好みのコンテンツと結びつけることです。ホームページ上だけで2億本を超える動画が推薦されています。システムには、視聴者に好みの動画を尋ねたアンケートの回答を含め、800億を超える情報が入力として与えられています。当社はYouTube上での体験を改善するための取り組みを継続的に行っており、2020年だけで有害コンテンツの推薦を削減するために30カ所を超える変更を実施しました。この変更により、システムによってボーダーライン上のコンテンツが推薦され、ユーザーがそのコンテンツを再生する率は1%をはるかに下回るようになっています。

グーグルはまた、YouTubeに対する調査を歓迎するとし、プラットフォーム調査のために外部の研究者を迎え入れるオプションを検討していることを示唆したが、具体的な内容については触れなかった。

同時に、モジラの調査における「残念な」コンテンツの定義について疑問を呈し、グーグル独自のユーザー調査では、ユーザーはYouTubeの推薦するコンテンツに概ね満足していると主張した。

さらに、実際の発言は引用できないが、グーグルは2021年はじめ、 YouTube向けに「違反再生率」(VVR)という指標の公開を開始した。これは、YouTubeのポリシーに違反しているコンテンツのYouTube上での再生回数割合を初めて公開したものだ。

最新のVVRは0.16~0.18%で、これは、グーグルによると、YouTube上で1万回動画が再生されるたびに、16~18本の違反コンテンツが見つかることを意味する。この数字は、2017年の同四半期と比較して70%以上低下しており、機械学習に投資したことが大きな低下の要因だとしている。

ただし、ゲルキンク氏が指摘しているとおり、グーグル自身のルールにYouTube上で再生すべきではないと明記されているコンテツの再生回数の増加に、どの程度AIが絡んでいるかをコンテキスト化および定量化するためのデータをグーグルが公開しないかぎり、VVRは指標としてはあまり役に立たない。この重要なデータがないかぎり、VVRは大きな見当違いとなる疑いが強い。

「VVRよりも奥深く、本当に役に立つのは、こうしたことに推薦アルゴリズムが果たしている役割を理解することです」とゲルキンク氏は指摘し、次のように付け加えた。「この点は未だに完全なブラックボックスです。透明性が向上しなければ、改善されているというグーグルの主張は話半分に聞いておく必要があります」。

グーグルは、YouTubeの推薦アルゴリズムが「ボーダーライン上のコンテンツ」(つまり、ポリシーには違反していないがグレーゾーンに入る問題のあるコンテンツ)を処理する方法について、2019年に同社が行った変更についても指摘した。この変更によって、この種のコンテンツの視聴時間が70%減少したという。

グーグルは、こうしたボーダーラインカテゴリーは固定されていないことを認めており、変化するトレンドやコンテキストを考慮に入れ、専門家と協力してボーダーラインに分類される動画を決定しているという。ということは、測定の基準となる固定ベースラインが存在しないということだから、上記の70%の減少という数字はほとんど意味がないことになる。

モジラのレポートに対するグーグルの反応で、英語圏以外の市場のアンケート回答者によって報告された経験の質の低下について言及していない点は注目に値する。ゲルキンク氏が示唆しているとおり、一般に、YouTubeが行っているという多くの緩和策は、米国や英国などの英語圏市場に地理的に限定されている(あるいは、まずそうした英語圏市場で対応策を実施してから、その他の市場に徐々に展開されていく)。

例えば2019年1月に米国で実施された陰謀論コンテンツの増殖を抑える変更は、数カ月後の8月になってようやく英国市場にも拡張された。

「YouTubeはここ数年、米国および英語圏市場についてのみ、有害な、またはボーダライン上のコンテンツの推薦について改善を実施したことを報告してきました」と同氏はいう。「この点について疑問を呈する人はほとんどいませんが、英語圏以外の市場はどうなったのでしょうか。個人的には、そちらのほうがもっと注目および精査されてよいと思います」。

我々はグーグルに対して、2019年の陰謀論関連の変更を全世界の市場に適用したのかどうかを確認する質問をした。同社の広報担当によれば、適用したという。しかし、非英語圏市場のほうが、より広範な残念なコンテンツが報告される率がはるかに高いままであることは注目に値する。

明らかに不釣り合いな高いレポート件数を見ると、その他の要因が作用している可能性もあるが、今回の調査結果によってもう1つわかったことは、YouTubeのネガティブな影響に関するかぎり、グーグルは、同社の評価を下げるリスクとコンテンツを自動分類する機械学習テクノロジーの能力が最も高い市場と言語に最大のリソースを投入しているということだ。

AI関連のリスクに対するこうした不平等な対応によって、一部のユーザーが有害な動画のより大きなリスクに曝されることは明白だ。現時点でも多面的で多岐に渡る問題に、不公平という有害な側面が追加された形だ。

これは、強力なプラットフォームが、自身のAIを自身で評価し、自身の宿題を自身で採点し、心底心配しているユーザーに利己的なPRで対抗する状態を放置していることがいかにばかばかしいかというもう1つの理由でもある。

(グーグルは、記事の背景を埋めるだけの上記の言葉だけでなく、自身を、検索と発見アルゴリズムに「権威」を組み込んだ業界で最初の企業であると説明している。ただし、そのような取り組みを正確にいつ行ったのか、そのような取り組みが「世界中の情報を編成し、世界中でアクセス可能かつ有益なものにする」という同社の掲げるミッションを情報源の相対価値を考慮に入れることなく、どのようにして実現できると考えているのかについては説明されていない。そうした主張には当惑してしまう。おそらく偽情報でライバル企業を惑わす不器用な試みである可能性が高いと思うが)。

規制の話に戻ると、EUの提案しているDigital Services Act(DSA、デジタルサービス法)は、説明責任の手段としての広範なパッケージの一部として、大手デジタルプラットフォームにある程度の透明性要件を導入するものだ。この点についてゲルキンク氏に質問すると「DSAは高い透明性を実現するための有望な手段」であると説明してくれた。

しかし、YouTube AIのような推薦システムを規制するには、さらなる法制化を進める必要があることを同氏は示唆した。

「推薦システムの透明性、ユーザーが自分自身のデータの使用許諾を与える権限を持つこと、そして推薦の出力は非常に重要だと考えています。これらは、現在のDSAでは、対応しきれない手薄な部分でもあります。ですから、この部分に腰を据えて取り組む必要があります」と同氏はいう。

同氏が支持を表明している1つの考え方は「データアクセスフレームワーク」を法律に組み込むことで、チェックを受けた研究者が強力なAIテクノロジーを調査するために必要な情報を十分に取得できるようにするというものだ。このアイデアは「透明性に関するさまざまな条項と適用可能とすべき情報の長いリスト」を法律で提示しようとする方法とは対照的だ。

また、EUは現在、AI規制に関する草案を審議中だ。法制化には、人工知能の特定分野への適用の規制に対するリスクベースのアプローチが必要となる。ただし、YouTubeの推薦システムが、より入念に規制されるカテゴリーの1つに収まるのか、あるいは、計画されている法律のまったくの範囲外になるのかは未定だ。(初期の委員会提案では少なくとも)後者の可能性が高そうだが。

「この提案の初期の草案では、人の振る舞いを操作するシステムについて規定しており、これはまさに推薦システムのことです。と同時に、それはある意味、一般に広告の目標であると考えることもできます。ですから、推薦システムがそうしたシステムのどこに分類されるのかを理解するのは簡単ではありませんでした」。

「DSAにおける堅牢なデータアクセスの提供と新しいAI規制の間には、うまく調和する部分があるのかもしれません」と同氏は付け加えた。「最終的に求められるのは透明性ですから、そうしたより高い透明性を実現できるのであれば、良いことです」。

「YouTubeもやろうと思えば十分な透明性を実現できたはずです。我々は、もう何年もこの問題に取り組んでいますが、同社がこの問題について何か有意義な対策を講じたのを見たことがありません。この点は我々も心に留めておきたいと思います。法制化には数年かかります。ですから、我々が推奨したことが一部でもグーグルに採用されれば、それは正しい方向への大きな一歩となるでしょう」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:YouTubeGoogle動画人工知能Mozilla

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

FirefoxがApple Silicon Macにネイティブ対応、最大2.5倍高速に

Mozilla(モジラ)は、Apple Silicon(Apple M1)にネイティブ対応したFirefox 84をリリースした。これまでApple M1搭載のMacBookやMacBook Proでは、macOS Big Sur上ではRosetta 2のエミューション環境で動作していたが、84からはネイティブ対応となり、ブラウザ向けベンチマークのSpeedoMeter 2.0では前バージョンに比べて2.5倍高速になったという。

macOS向けのFirefox 84はアプリはUniversal Binaryとなっており、Intel(インテル)、Apple Siliconベースの両方でネイティブ動作する。

そのほか、マルチコアCPU/GPUを活用して描画を高速化するWebRenderが、macOS Big Sur、インテル第6世代のGPUを搭載したWindowsデバイス、Windows 7と8を搭載するインテルCPU内蔵のノートPCでも使えるようになる。

Linux/GNOME/X11にも高速レンダリングパイプラインが実装されたほか、Linux上でのDockerとの互換性が向上しているとのこと。

そして、FirefoxとしてはAdobe Flashに対応する最後のバージョンとなる。バージョン85以降はFlashは完全に使えなくなる。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:MozillaFirefox

ギフトはMozillaの「Privacy not included」リストを見てから選ぼう

ガジェットは、昔からギフトの良い候補だ。しかし最近では、フィットネストラッカーがユーザーの感情をモニターしたり、ドアベルが警察に密告したり(未訳記事)するから危険だ。そこでMozillaは、現在市販されていて人気ガジェットを、ユーザーのプライバシーを犯すかもしれない「気持ち悪さ」で格付けしたリストを作った

その「Privacy not included(プライバシーは含まれない)」というリストを見ることは、いまやネット上の人権を気にする人たちの年中行事だ。2020年は特に豊作で、気持ち悪いデバイスが勢揃いしている。いまやスマートスピーカーやスマートセキュリティカメラ、スマートごみ入れなど、コンピューターとネット接続機能を持つガジェットが増えているため、リストが充実するのも当然だ。

最悪に気持ち悪いガジェットといえば、Kindleを除くAmazon(アマゾン)の製品すべてだ。それらのデバイスは大量のデータをアマゾンに送る設計になっており、Mozillaによると、それらの製品はそんなことをしてもいいほどの信頼をまだユーザーから得ていない。Facebook(フェイスブック)のPortalも、同じ理由で気持ち悪さ満点だ。

画像クレジット:Mozilla

たまたま採り上げたスマートコーヒーメーカーやモレスキンのスマートノートブックが気持ち悪さの上位にランクインしているのは、それらのガジェットや、ひいては企業が集めているはずのデータに愛して、ユーザーに悪用していないという確約を行っていないためだ。スマートガジェットでは、確約をとるのは常識だ。それらの製品は基本的に気持ち悪くないかもしれないが、それを作っている企業は、その気になりさえすれば密かにユーザー情報を盗むことができるためだ。

一方、Withingsのスマートデバイスは、プライバシーとセキュリティに対する妥当なポリシーで良い点をもらっている。Ring以外のスマートドアベルも良い評価、そしてGarminのスマートウォッチもだ。

これらは、ユーザーデータの悪用や露出の可能性に基づく非公式な格付けだ。ランクの良い製品が絶対安全、とはいえない。こういうものを購入したら、直ちに設定やカスタマイズのやり方を調べて、怪しいものはすべて無効にしよう。機能はいつでも有効にできるが、いったん盗まれたデータを取り戻すことは至難のわざだ。

問題のリストはここにある

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Mozilla

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa