調剤薬局のDXを推進するカケハシが約18億円調達、薬局の業務効率化からオンライン服薬指導までをサポート

カケハシは10月12日、総額18億円の資金調達を発表した。第三者割り当て増資によるもので、引受先は、既存投資家である千葉道場ファンド(千葉道場2号投資事業有限責任組合)、DNX Ventures、Salesforce Venturesのほか、新規投資家としてCoral Capital(Coral Growth)、三井住友トラスト・インベストメント(ジャパン・コインベスト3号投資事業有限責任組合)とSony Innovation Fund by IGVが加わった。今回の資金調達により累計調達額は約55億円になる。

今回調達した資金は、薬局業界のデジタルトランスフォーメーションを支援する既存事業の拡大と新規事業の創出、それに伴う組織の拡充へと継続投資するとのこと。現在、新型コロナウイルスの影響や今年9月に改正・施行された薬機法(薬剤師法並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)によりオンライン服薬指導について取り決めが定められるなど、​薬局業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)への要請が高まっているそうだ。

同社は、調剤薬局のDXを進めるための、薬局体験アシスタント「Musubi」やおくすり連絡帳アプリ「Pocket Musubi」などのサービスを開発・提供しており、業界の注目度はさらに高まっている。

Musubiは、処方にあわせた薬剤情報、患者の健康状態や生活習慣に合わせた指導内容・アドバイスをタブレット端末の画面に自動提示しつつ、患者と一緒に服薬指導を進められるツール。 薬歴の下書きが自動で作成されるため、患者とのコミュニケーションと同時並行となり作業効率がアップするというメリットもある。これらのDXにより、服薬指導とは毎日数時間かかっていた薬歴記入による業務負担が大幅に削減されるわけだ。

もちろん、業務の状況や店舗の経営状況、患者との関係性をデータで可視化できるため、新たに義務化される服薬期間中のフォローアップについても、Musubiを活用することで現実的な業務フローの構築が可能となるという。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:カケハシ、資金調達

日用品を30分以内に届けるデリバリースタートアップのgoPuffが4100億円超の評価額で約400億円を調達

GoPuffはフィラデルフィアに本社を置くスタートアップで、市販薬やベビーフード、アルコールなど、基本的にはコンビニで買うような商品を30分以内に配達するサービスを提供している。

共同創業者のRafael Ilishaye(ラファエル・イリシャエフ)氏と共同CEOを務めるYakir Gola(ヤキール・ゴラ)氏はGoPuffの目標は「市販薬や家庭用品、ベビーフード、アイスクリーム、アルコールに至るまで、30分以内にすべての製品を24時間365日配達すること」だと話す。

メディアでの知名度は比較的低いものの、すでに米国の500カ所以上の都市で利用できるようになっている。最近では、ダラス、マイアミ、デトロイト、ミネアポリス、ヒューストンなどでサービスを開始した。また、発表されたばかりの3億8000万ドル(約401億円)のラウンドを含め、総額13億5000万ドル(約1426億円)の資金調達を済ませており、同社の価値は39億ドル(約4120億円)に達している。

この新しいラウンドは、AccelとD1 Capital Partnersがリードし、Luxor Capitalとソフトバンク・ビジョン・ファンドが参加した。なお、Accelとソフトバンクは以前にも投資を行っている。

「Accelが2018年に初めてgoPuffに投資したのは、チームのオンデマンド配信に対する先見の明のあるアプローチと、独自の垂直統合モデルの構築に必要なインフラ構築へのコミットメントがあったからです」とAccelのパートナーであるRyan Sweeney(ライアン・スウィーニー)氏は声明の中で述べている。「goPuffの集中的なアプローチにより、同社はこれまで見てきた中で最高のユニット・エコノミクスを一貫して提供し、全国的に成長してきました。私たちは、ヤキル、ラファエル、そしてgoPuffチームの他のメンバーの旅立ちを支援するパートナーであり続けることに興奮しています」と続けた。

ゴラ氏によると、イリシャエフ氏と2013年にドレクセル大学に一緒に通っていたときに「便利な商品を配達してもらうためにもっと良い方法があるはずだ」と考えて会社を作ったという。

同社の印象的な軍資金にもかかわらず、goPuffは設立当初から「財政的責任に大きな焦点を当ててきた」とゴラ氏。最初は創業者が配達を行い、キャッシュフローと利益で初期の拡大資金を調達していた。

「私たちにとって初日から重要だったのは、収益を上げ、実際のマージンを確保できるビジネスを始めることでした」とゴラ氏は語る。

これを実現するために同氏は、メーカーから製品を直接仕入れ、goPuffの従業員が担当する200件の「マイクロフルフィルメント」センターと独立したドライバーのネットワークを介して消費者に製品を届けるという、スタートアップの「垂直統合モデル」を構築したことを強調した。

GoPuffは「我々が販売している製品から利益を得る」という意味のほかにも、このモデルでは、ナショナルブランドとローカルブランドの製品をミックスすることができ、「常に新製品を導入し、売れない製品を廃止している」とゴラ氏。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:goPuff、デリバリーサービス、資金調達

画像クレジット:goPuff

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(翻訳:TechCrunch Japan)

インドのインフルエンサー向けサービスプラットフォームCreatorOSを注目スタートアップ幹部が支援

安価なAndroidスマートフォンの出現と世界で最も安いモバイルデータ料金により、ここ数年でインドの数百万人のソーシャルメディアインフルエンサーに数千万人のユーザーを獲得する道を開いた。

インフルエンサーはクリエイターとも呼ばれ、毎日、さまざまな問題を扱ったVlogや意見をシェアし、一部のインフルエンサーには、ニッチで忠実な視聴者に製品を販売するために大手ブランドと提携している者もいる。eコマースの大手Flipkartや、その他の多くの企業が、今ではインフルエンサーと提携している

しかし2020年6月の終わりにインド政府はTikTokを禁止した。インドでも20億あまりのユーザーがいるこの中国のショートビデオアプリの禁止は、クリエイターにとって大きな打撃になった。彼らは他のプラットフォームも利用しているが、それらはTikTokに比べるととても影響力が小さいものだ。

しかし、あるスタートアップが、クリエイターがもっと自分の作品をコントロールできるプラットフォームを構築したと自負している。多くの著名な起業家も同じ意見だ。

米国時間10月9日、Madhavan Malolan(マダヴァン・マロラン)氏はクリエイターが自分のビジネスを構築、管理し、成長させていけるプラットフォームであるCreatorOSを発表した。このプラットフォームの共同創業者であるマロラン氏によると、2020年1月の時点ですでに、ショートビデオ製作者を含むおよそ1000名のクリエイターや教師、コンサルタントが、以前Socionityと呼ばれたこのプラットフォームに参加しているという。マロラン氏は以前、Microsoft(マイクロソフト)など数社で働いていた。

「私たちは、クリエイターがこれからの10年で起業家になると信じている。そこで私たちは、彼らがデジタルビジネスを行うために必要となるツールや人とのつながり、インフラを構築しています。現状、クリエイターの側に欠けているものが多く、より多くの人が発見できるようにバイラル化を目指して動画を制作しています」とマロラン氏はいう。

現在のCreatorOSのメインツールは、クリエイターが自分のアプリを作るためのアプリビルダーだ。CreatorOSでは、クリエイターがそのコンテンツを売り込み、コミュニティを作ることもできる。マロラン氏によると、CreatorOSのアプリビルダーを使えば、自分のアプリをシンプルなドラッグ&ドロップ方式で簡単に作ることができるという。

また10月9日に、同社は高名な投資家のグループから50万ドル(約5300万円)を調達したという。投資に参加したエンジェル投資家はチケット予約のRedBus.inの創業者で元CEOのPhanindra Sama(パニンドラ・サマ)氏、オンライン学習プラットホームのUnacademyの共同創業者でCEOのGaurav Munjal(ガウラヴ・ムンジャル)氏、Flipkart GroupのCEOであるKalyan Krishnamurthy(カリアン・クリシュナムルシー)氏、B2BマーケットプレースUdaanの共同創業者であるSujeet Kumar(スチット・クマール)氏、ソーシャルeコマースMeeshoの共同創業者でCEOのVidit Aatrey(ヴィディット・アトレー)氏、モビリティ企業Bounceの共同創業者でCEOのVivekananda Hallekere(ヴィヴェカナンダ・ハレキレ)氏、そしてXiaomi IndonesiaのゼネラルマネージャーであるAlvin Tse(アルヴィン・ツェ)氏などだ。

マロラン氏は、多くの優れた起業家がCreatorOSに信頼を示したため、まだVC企業と関わる必要はなく、代わりにクリエイターへのサービス提供に全体の焦点を置くことを確信させたと述べている。また彼は、TikTokが禁止され、多くのスタートアップがショートビデオアプリの規模を拡大しようとしている(未訳記事)ことが、CreatorOSにとって計り知れないチャンスになっていると述べている。

同社は、年末までに5000人以上のクリエイターがプラットフォームに参加すると予想している。現在、マロラン氏はクリエイターと協力して、彼らの利益になるような機能をより多く理解し、構築しているいう。

関連記事:インド政府がTikTokなど中国企業の59のアプリを禁止すると発表

カテゴリー:ネットサービス
タグ:CreatorOSTikTokインドインフルエンサーショートビデオ資金調達

画像クレジット:INDRANIL MUKHERJEE / AFP / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

VR/AR/MR企画・開発のSynamonが2.5億円を調達、人材採用・先端技術活用の価値創出を推進

VR/AR/MR企画・開発のSynamonが2.5億円を調達、人材採用・先端技術活用の価値創出を推進

VR/AR/MR領域に対するプロダクトの企画・開発を手がけるSynamon(シナモン)は10月9日、第三者割当増資として約2.5億円の資金調達を発表した。引受先は、三井住友海上キャピタル、KDDI設立の「KDDI Open Innovation Fund 3号」、ロゼッタ、三井不動産設立のCVCファンド「31VENTURES Global Innovation Fund 1号」。また同ラウンドの資金調達は継続し、年内での最終クローズを予定している。

またSynamonは、グローバル・ユビキタスなオフィス、海外旅行、ビジネスイベントのためのVRシステム開発を目指し、ロゼッタと資本業務提携を実施したと明らかにした。

今回調達した資金は、多様なニーズに対応するための技術開発・要件定義や提案内容のレベル向上・組織体制の強化を目的とした採用推進と、関連技術の多様化・高度化に対応するための研究開発および先端技術を活用しての価値創出の推進という観点に対して充当し、事業推進を加速させる。

Synamonは2016年8月の創業から現在までVRをはじめXR技術の社会実装、当たり前に使われている社会を目指し事業展開を推進。2020年8月から5期目となり、昨今のニューノーマルやDX化を推進する社会情勢も背景に、最新テクノロジーの活用を目指した問い合わせを様々な業種、業態の企業から受けているという。

Synamonは、これら様々な用途や要望に応えるべく、単なるプロダクト提供にとどまらず、今までにない新たな価値創出・提供に向け二人三脚で取り組みを進めていけるパートナーとして、顧客とプロジェクトを推進しているとした。

カテゴリー: VR / AR / MR
タグ: Synamon資金調達日本

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アスリート向けセラピー機器の「Hyperice」が大坂なおみ選手らのスーパースター投資で企業価値740億円に

著名アスリートのグループが手を組んで、4780万ドル(約50億6000万円)をHypericeに投資した。同社は、スポーツ選手やフィットネス愛好家がワークアウトや試合後の回復を早めるための医療機器を開発している会社だ。

会社を支援するのは、野球、バスケットボール、フットボール、サーフィン、テニスなどの以下のビッグネームだ。

  • Seth Curry(セス・カリー)
  • Anthony Davis(アンソニー・デイビス)
  • Rickie Fowler(リッキー・ファウラー)
  • DeAndre Jordan(デアンドレ・ジョーダン)
  • Jarvis Landry(ジャービス・ランドリー)
  • Patrick Mahomes,(パトリック・マホームズ)
  • Christian McCaffrey(クリスチャン・マカフリー)
  • Ja Morant(ジャ・モラント)
  • 大阪なおみ
  • Chris Paul(クリス・ポール)
  • Doc Rivers(ドック・リバース)
  • Ben Simmons(ベン・シモンズ)
  • Kelly Slater(ケリー・スレーター)
  • Fernando Tatis Jr(フェルナンド・タティス)
  • J.J. Watt(J.J・ワット)
  • Russell Westbrook(ラッセル・ウェストブルック)
  • Trae Young(トレイ・ヤング)

新たな投資は「カリフォルニア州アーバイン拠点の同社に7億ドル(741億円)の会社価値をもたらす」と同社の声明に書かれており、資金は営業とマーケティングと製品開発に使用されるとのこと。

そしてこのスポーツ医療技術開発会社を支える投資家はプレーヤーだけではない。米国トップの各スポーツリーグの投資部門もHypericeを支援している。NFL所属32チームのために戦略的投資を指揮する32 Equity、野球、バスケットボール、サッカー、アメリカンフットボール、およびNBAの選手会のための投資グループであるOneTeamがそれだ。

声明によると、財務顧問・投資会社のMain Street AdvisorsとSC Holdingsが今回のラウンドをリードした。新たな現金に加えてHypericeは、NBAおよび総合格闘技団体のUFCと、公式回復技術パートナーとして重要なパートナーシップ契約を結んだ。

画像クレジット: Hyperice

「Hypericeを始めたのはアスリートのパフォーマンスと選手寿命を改善するためだけではなく、同じ水準の技術を一般の人たちにも提供するためです」と創業者のAnthony Katz(アンソニ−・カッツ)氏が声明で言った。「私たちは何年もかけて、当社製品を毎日使うアスリートたちと強固な関係を築いてきました。彼らを投資家として会社に迎えることは、当社ブランドとの深い結びつきを考えればごく自然な成り行きです」。

次の大きな一歩は、アスリートのパフォーマンスを監視、管理して最適な休憩・回復時間を、ウェアラブルデバイスやApple HealthやStravaなどのサービスから得た情報に基づいて推奨するソフトウェアサービスだ。

「Hypericeを使い始めてから、トレーニングの効果を最大限に高め、競技にむけて体を準備するためには、いかに回復が重要なのかを知りました」とテニスのスーパースターである大坂なおみ選手が声明で語っている。「Hypericeは私の体と全身の健康を改善してくれました。私はこれが長く健康的な選手生活を送る基盤になることを知っています。それが投資した理由であり、私はこの立場を利用して全アスリートに対して回復を真剣に考えることを奨励していきます」。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Hyperice、資金調達

画像クレジット:Matthew Stockman / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

買い物代行のInstacartが210億円を調達、バリュエーションは1.8兆円に

Instacart(インスタカート)は10月8日、既存投資家向けの新たな資金調達ラウンドで2億ドル(約210億円)を調達したことを発表した。D1 CapitalとValiant Peregrine Fundが本ラウンドをリードした。ポストマネーでInstacartの価値は177億ドル(約1兆8700億万円)、プレマネーでは175億ドル(約1兆8500億万円)だ。ブログ投稿によると、調達した資金は顧客エクスペリエンスの向上、法人事業や広告事業のさらなるサポートを目的とする新機能やツールの導入に使われる。

Instacartはこれより前の今年6月に2億2500万ドル(約238億円)に(CrunchBase記事)、7月に1億ドル(約106億円)を調達した (Axios記事)。6月のラウンドで同社の価値は約137億ドル(約1兆4500億円)になり、それから数カ月後の今回のラウンドの調達額はいっそう大きなものとなった。

ほかのテック企業、そしてテックを活用した企業と同様、Instacartもパンデミックの間に需要増を経験した。家から出たくない人々が安全を確保するためにオンデマンドサービスを利用し、新型コロナウイルス感染症と事業成績の間に相関性を見つけることはたやすい。

Uberのフードデリバリー事業の成長は、もう1つの格好の例だ。

Instacartのバリュエーションは、2018年のシリーズF時の79億ドル(約8400億円)から倍になっている。成し遂げた成長ペースは驚くものだが、IPO計画は見通せなくなったようで、またパンデミック収束がまだ見えない中で新型コロナ特需がどのくらい続くのかもわからない。

同社は第2四半期中のある月に黒字化を達成し、The Informationによるとその額は1000万ドル(約10億円)だった。記事はまた、Instacartは2019年に3億ドル(約320億円)の赤字だったとしている。2020年に通年で黒字となるかはまだわからない。

TechCrunchはInstacartに、2020年に黒字となった月が他にあるかどうか、2020年第3四半期の成長幅など多くの質問をしたが、同社の広報担当はそうした質問に答えなかった。

「今回の投資は、既存投資家が当社のチームの強み、顧客やパートナー、グローサリーエコシステム全体にとって当社が担っている重要な役割を支持するものです」とCEOのApoorva Mehta(アプオルワ・メフタ)氏はプレスリリースの中で述べた。「昨年当社の事業を拡大するため、そして前代未聞の消費者需要と成長に対応するチームの働きを本当に誇りに思っています」

Instacartはカリフォルニア州がAB5法案を通過させた後に展開されている規制戦争に直面している企業の1社だ。この法律によりギグワーカーにかかる州の規則が変更された。ライドシェアドライバーやデリバリーワーカーを独立した請負業者と分類することになるかもしれないProp 22という住民投票がカリフォルニアで間もなく行われる。InstacartはUber、Lyft、 DoorDash、Postmates(現在Uber傘下だ)とともに請負業者分類に賛成の立場だ。

Uber、Lyft、Instacart、DoorDashはYes on 22キャンペーンに合計1億8400万8361ドル46セント(約195億円)を支援した。そうした貢献は金によるものとそうでないもの、ローンという形態を伴うものだった。これら4社は9月にそれぞれ1750万ドル(約18億円)をYes on 22キャンペーンに提供した。公正な政治慣行に関する委員会によると、こうした資金の大半はYes on 22が受け取った。

Yes on 22はさておき、InstacartはワシントンD.C.地方検事総長Karl A. Racine(カール・A・ラシーン)氏に訴えられている。同氏は、Instacartが「詐欺的なサービス料金」として顧客に何百万ドルも課金し、そして何十万ドルもの売上税を納めなかったと主張している。訴訟はそうしたサービス料金を支払った顧客への返還、D.C.への滞納税金と利子の支払いを求めている。特に、Instacartは2016年9月から2018年4月までの間、配達員へのチップだと思わせて徴収した10%のサービス料金について、顧客をミスリードしたと主張している。

一方、パンデミックとカリフォルニアの山火事の期間、Instacartのワーカーたちは個人防護具と報酬アップ、そして直近では災害基金を要求した。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Instacart、買い物代行、資金調達

画像クレジット:Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

歯科手術ロボ開発のNeocisが約76億円調達、すでに2700人超の患者が利用

2019年、歯科手術アシスタントYomi(ヨミ)が市場に登場してから、2700人を超える患者がそのプラスティックで覆われた金属の腕を見上げてきたそのロボットを開発した企業のNeocis(ネオシス)は、さらに多くの歯科医院にこのロボットを普及させようと7200万ドル(約76億円)を調達した。

この資金は、今回新たに参加した投資会社のDFJ GrowthとVivo Capital、以前からの投資会社Mithril Capital Management、Norwest Venture Partners、Section 32、そしてロボット外科手術のゴッドファーザーFred Mollからなる新規投資ラウンドによってもたらされた。

今回の投資により、Neocisは2009年の創設から1億2000万ドル(約127億円)を集めたことになる。

ロボットは米国中の手術室で急激に数を増しており、ロボットが支援する手術は、いくつもの専門科で600万件以上も実施されている。これらのロボットは、何年間にもわたり、人の脳や心臓や骨をスキャンし、切除し、穴を開けてきたが、口の中をいじくり回せるだけの器用さを身につけたのは、ここ数年のことに過ぎない。

事実、米国食品医薬品局(FDA)から歯科インプラント手術の認証を受けたロボットは、まだYomiだけだ。これは現在、ボストン大学とウエストバージニア大学の2つの歯学科に導入され、歯科医を目指す学生たちの訓練が実施されている。

このNeocisのロボットは、歯科インプラント手術の計画と仕上げのためのナビゲーションツールだ。従来のインプラント手術の技法では、歯茎を切開して顎骨を露出させる必要があった。しかしYomiを使えば、そこまで侵襲的な方法を取る必要はなく、より短時間にインプラント処理できる。大手術とはならないため、合併症の心配も少ないと同社は話している。

だが、ロボットこそ外科手術の未来だと認めるのは時期尚早だと訴える人たちもいる。ヒューストンの外科医、Mike Liang(マイク・リアン)氏、Naila Dhanani(ナイラ・ダナニ)氏、Oscar Olavarria(オスカー・オラバリア)氏の3名は、イギリスの医学雑誌であるThe BMJに寄稿し、医療ロボット使用の際のリスクとメリットを示した。

ロボット外科手術には賛否両論がある。ロボットを支持する外科医には、その事例体験に基づく強い感情から相対的有利性を認める者、または業界のマーケティングに影響されたと思われる者が多い。一方、批判的な人たちは、利用者がこの技術の有利性を誇張しており、制約を認めたがらないと主張する。ロボットの使用を支持する公開研究論文のほとんどは、ロボット業界から資金援助を受けた著者が実施した観察研究に基づくものだ。業界と著者との経済的なつながりは、業界に好意的な同様の研究報告が大量に増えていることと関係している。いかなる新技術も、患者のアウトカムにおける真の利点を評価しようとするなら、そうした偏向を考慮しなければならない。

技術革新やテクノロジーが医療や治療方法を向上させた場合もあるが、その一方で、効果がない、さらには害があるとさえ証明されたものもある。我々の最新の研究に加え、無作為化した試験のほとんどにおいて、現在のロボット技術には臨床または患者本位のアウトカムへの測定可能な恩恵がないにも関わらず、費用と手術時間を増大させることが証明されている。これは、新興テクノロジーおよび治療法の価値を厳格に審査できる高度な調査に限定して得られた結果である。ほとんどの医療関係者がこれと同じ意見を共有しているが、驚くべきことに、そうでない者もいる。「技術革新」と見なされる新式の手術器具には、最高品質の研究を通じた慎重な評価が必要であろうことは明らかだ。

「ロボット整形外科技術の黎明期からの先駆者である私たちは、歯科手術の世界へのロボット技術の導入に胸を踊らせています」とNeosicの共同創設者で最高責任者のAlon Mozes(アーロン・モーゼス)氏は話す。「今回の最新ラウンドにより私たちは、このロボットによる手術支援システムの普及を進め、この国のすべての歯科医院に付加価値を提供するYomiの技術基盤をさらに発展させることが可能になります」

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Neocis、Yomi、歯科、資金調達

画像クレジット:Neocis

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(翻訳:金井哲夫)

ウイスキー熟成の加速加速させるデータ駆動型プロセス開発のBespoken Spiritsが約2.8億円調達

ウイスキーの熟成を加速し、特定のフレーバーを生み出す新しいデータ駆動型プロセスを開発した、シリコンバレーのスピリッツメーカーであるBespoken Spirits(ビースポークン・スピリッツ)が、米国時間10月7日、260万ドル(約2億8000万円)のシード資金を調達したことを発表した。投資家には、ワイナリーClos de la TechのオーナーであるT. J. Rodgers(T.J.ロジャーズ)氏や元野球選手のDerek Jeter(デレク・ジーター)氏も名を連ねている。

同社は、かつてBloom Energy(ブルーム・エナジー)、Blue Jeans(ブルー・ジーンズ)、そしてMixpanel(ミックスパネル)の幹部だったStu Aaron (ステュー・アーロン)氏と、また別のBloom Energy卒業生のMartin Janousek(マーティン・ジャノセック)氏によって共同創業された。ジャノセック氏の名前はBloom Energyが所有する多くの特許上で見ることができる(特許参照サイト)(特許参照サイト)。

熟成を加速させる課題に挑戦するスタートアップはBespokenが初めてではない。これは、通常木の樽の中で行われる、蒸留酒の熟成にかかる時間を、最小化しようとする試みだ。同社は、自身がACTivation(アクティベーション)テクノロジーと呼んでいる手法と、機械学習ベースのアプローチを組み合わせたのは、初めてだと主張している。

「蒸留酒を樽に入れ、自然のなりゆきを受動的に待って、偶然に頼って何が起こるかを見守るのではなく、私たちは独自のACTivationテクノロジーを使用します。A、C、Tはそれぞれ、アロマ(香り)、カラー(色)、テイスト(味)を意味しています。この手法は樽の成分を蒸留酒に注入し、優れた品質の特製蒸留酒を生み出すために工程と化学反応を積極的に制御するのです。そして、そのことを数十年単位ではなく数日単位で行えるようにするのです」。

もちろんこのテクノロジーには、特に職人的なアプーロチを誇るビジネスの中では、多くの懐疑の目が向けられている。だが一方で、同社は多くのコンテストで受賞を果たしているのだ。チームは、蒸発によって製品の20%が失われ、再現することが難しい従来の樽熟成は無駄なプロセスだと主張している。また、従来の熟成には時間がかかるため、ビジネスのスタートアップには経済的な課題も発生させ、イノベーションも困難になる。

共同創業者が私に語ったところでは、同社のビジネスには3つの柱がある。独自ブランドの蒸留酒の販売、ブレンド業者や蒸留業者のための「サービスとしての熟成処理」(Maturation-as-a-Service)提供、そして小売店、バー、レストラン向けのカスタムプライベートラベル蒸留酒の製造だ。当面チームが焦点を合わせるのは、主に後の2つ、特にサービスとしての熟成処理ビジネスだ。アーロン氏が述べたように、現在多くのクラフト蒸留所が財政的負担に直面しており、在庫のロックを解除して市場により早く出せることが、しかもおそらくこれまでに比べてより良い品質で、つまりより高い価格で売れることが望まれている。

また少なくとも米国では、既存の製品を使ってブレンドを行うブレンド業者の市場も存在している。こうした業者も、工程を改善し、再現可能性を高める方法を模索している。

興味深いことに、多くの醸造所もまた新型コロナウィルスの感染蔓延のために過剰なビールや期限切れのビールに苦しんでいる。「彼らは、そのビールを回収して処分するために費用をかけるのではなく、それをリサイクル、まあより良い表現としてアップサイクル(付加価値付きリサイクル)して、ビールを蒸留し、ウイスキーにできることに気がついたのです」とアーロン氏は語る。「しかし残念ながら、醸造所がビールをウイスキーへと蒸留しても、普通あまり良いウイスキーにはなりません。そこで私たちの出番となります。多くの人が初期蒸留品と呼ぶ、そうしたビールを蒸留した製品を、私たちは受け入れて高品質のウイスキーに変えることができるのです」。

Bespokenはまた、いくつかの食料品チェーンと協力して、既存のブランドの外観や味に一致する、またはまったく新しいエクスペリエンスを提供する、独自ブランドの特注ウイスキーを製造している。

チームがこれを行う方法は、工程全体で多くのデータを収集し、テイスティング委員会に製品の評価を依頼するというやり方だ。そのデータをシステムにフィードすることで、同社は結果を再現するか、必要に応じて微調整するかを決めていくことができる。しかも樽が成熟するまでに何年も待つ必要はないのだ。

「私たちはこうしたすべてのデータを収集しています。現在収集しているデータの一部には、何に使用するのかさえ、まだわからないものもあります」とジャノセック氏はいう。多くの場合、Bespokenは独自の技術を使用して新規顧客向けに数十種類のサンプルを作成し、そこから絞り込む作業を支援する。

「私はよく、自分たちの会社を23andme(遺伝子検査キット企業)、Nespresso(ネスプレッソ)、Impossible Foods(インポッシブル・フーズ)をかけ合わせたものだと表現しています」とアーロン氏。「まず私たちは23andmeに似ています。繰り返しになりますが、顧客の好みを結果に対するレシピへとマッピングしようとしているからです。ちょうどビッグデータを用いた、ゲノムマッピングのような作業を伴うのです。また私たちの企業はNespressoにも似ています。私たちは蒸留酒を受け入れて供給ユニットを生み出します。もっとも私たちの場合は供給ユニットが小さなカプセルではなく、産業規模ですけれど。そしてまた、私たちはImpossible Foodsのような存在でもあります。なぜなら、私たちは古くさい時代遅れのモデルを、完全に異なるものへと再定義しようとしているからです」。

同社は、新しく得た資金を利用して、市場での勢いを加速し、技術開発をさらに進めることを計画している。そのハウスブランドは現在、カリフォルニア州、ウィスコンシン州、ニューヨーク州で販売されている。

T.J.ロジャーズ氏は「品質と多様性の両方を提供できる会社の能力が、私の注意を強く引き投資したいと思わせた理由です」と語る。そして「彼らは短期間のうちに、ウイスキーからラム酒、ブランデー、テキーラまで、信じられないほどのレンジの一流のスピリッツをすでに生み出しています。これらはすべて、それぞれブラインドテイスティングや一流の品評会で何度も検証されているのです」。

免責事項:Bespokenは私にいくつかのサンプルを送ってくれた。私はそれらをレビューできるほどのウイスキー愛好家ではないものの、それらを楽しめたということだけは責任をもっていうことができる。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Bespoken Spirits、ウイスキー

画像クレジット:Bespoken Spirits

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(翻訳:sako)

養殖魚のタンパク源となるミールワーム生産のŸnsectが240億円追加調達、フランスに世界最大の昆虫農場建設へ

世界で最もハイテクな昆虫のコロニーを建設中のスタートアップであるŸnsect(インセクト)は、事業の商業化を目指し、以前獲得した印象的な1億4800万ドル(約160億円)のキャッシュに、株式と負債などにより2億2400万ドル(約240億円)を追加した。

同社に投資する投資家には、ロサンゼルスを拠点とする投資会社のUpfront Venturesや、有名なスーパーヒーローであるRobert Downey Jr(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏が資金提供する投資ビークルのFootPrint Coalitionがある。

今回調達した資金には負債による1億3900万ドル(約150億円)と株式による6500万ドル(約70億円)が含まれる。資金は2022年初頭開業予定の仏アミアンにある世界最大の昆虫農場の建設に使用される。

なぜ昆虫農場に合計3億7200万ドル(約400億円)を株式と負債で投資するのか。Ÿnsectにとってはタンパク質と魚、それも大量の魚がすべてだ。

養殖は爆発的に成長している産業。消費者需要増加と、海洋酸性化や気候変動による水温上昇を要因とする供給減少により、天然の魚の数が減少しているからだ。

魚の商用養殖には多くのタンパク質が必要だが、商用の養殖魚をしっかり育てるのに十分なタンパク質供給源がない。Ÿnsectは、魚の餌に使える昆虫タンパクを提供することによりその状況を変えたいと考えている。ゆくゆくは肥料や、最終的にはペットフード、さらに(その随分先に)人間の食料となる昆虫タンパク質に拡げる。

「Ÿnsectの行っていることは昆虫の飼育だけに限られません。気候変動と世界の人口増加に伴い、より少ない資源と利用可能な土地でより多くの食料を生産する必要があります。そうすれば森林を伐採したり海の資源を枯渇させたりすることが避けられます。Ÿnsectは世界を変える解決策により、極めて重要な役割を果たすことができると信じています」と共同創業者でCEOのAntoine Hubert(アントワーヌ・ユベール)氏は声明で述べた。

Upfront VenturesのYves Sisteron(イブ・システロン)氏のような投資家によると、同社のハイテク垂直昆虫農場(主にミールワームを飼育)は魚にとって完璧なタンパク質であり、業界が現在依存する限られたタンパク源に取って代わることが可能だ。

「海洋は枯渇しつつあり、養魚場がそれに代わりつつあります。養殖による魚は50%に迫ろうとしています」とシステロン氏は述べた。「魚の餌の主な成分は魚由来です。トロール船が海の底でかき集めたカタクチイワシをタンパク質のペーストと合わせたものが養魚場で魚に与えられます。これは基本的に持続可能ではありません。問題となっている量が莫大なのです。世界で養殖魚に与えられる魚の餌は年間約4400万トンに上ります」。

システロン氏によると、Ÿnsectのミールワームは実際に低コストで高品質のタンパク質を魚に与えることができる。「Ÿnsectが解決する問題は、拡大可能で栄養豊富な新しいタンパク質を魚に与えることです」 と同氏は説明した。

Ÿnsectは昆虫(特にミールワーム)を動物や植物のタンパク質に変換する。同社は、昆虫の繁殖から滅菌、選別、包装まで、完全に自動化されたフルスタックの工場を建設している。

同社は、アミアンの農場が操業を開始すれば、年間10万トンの昆虫製品が生産されると見込む。500人が直接・間接にプロジェクトに関わる。

ダウニー・ジュニア氏が投資するFootPrint Coalitionの創業パートナーであるJonathan Schulhof(ジョナサン・シュルホフ)氏によると、Ÿnsectによる持続可能なタンパク質生産と大規模な最終市場の組み合わせは魅力的な投資機会であり、気候変動と戦う役割を果たす会社をまた1つ支援する機会となったという。

これはFootPrint Coalitionにとって、竹をベースにしたトイレットペーパーの会社Cloud Paper(クラウドペーパー)に続き、公表された投資としては2番目になる。

「当社は水産養殖産業が絶対に魅力的だと感じており、この業界で彼らがしていることは不可欠だと考えています」とシュルホフ氏は言う。

UpfrontとFootPrintは、既存投資家であるAstanorVenturesや、Happiness Capital、Supernova Invest、Armat Groupなどの金融投資家に加わる。

Caisse des Dépôts、Crédit Agricole Brie Picard、Caisse d’Epargne Hauts-de-Franceがクレジットラインにより資金調達に貢献している主要な銀行だ。株式を取得した銀行もあり、他の銀行もそれに続く。Ÿnsectは2011年以来4億2500万ドル(約450億円)を調達した。

複数の企業がすでに1億500万ドル(約110億円)相当の契約を結んでいる。クライアントには、Torres(ブドウ農場)、魚飼料会社のSkretting、植物肥料会社のCompoGroupなどがある。

将来的には、Ÿnsectは米国にも進出し、ウェットペットフードなどの新製品を生産する予定だ。

カテゴリー:フードテック
タグ:Ÿnsect、資金調達

画像クレジット:Ÿnsect

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(翻訳:Mizoguchi)

車載ホログラフィック・ディスプレイ開発の英国Envsicsが約53億円調達、Jaguarランドローバーへの搭載目指す

VR(拡張現実)技術の実現可能なビジネスモデルとはどんなものか、まだ世間は模索を続けている状態だ。そんな中、英国のあるスタートアップは、車の中に大きな市場があると見定め、ホログラフィック・ディスプレイとというかたちで賭けに出た。米国時間10月7日、言うなればその「ビジョン」を実現させる戦略的投資家による巨額投資の発表に漕ぎ着けた。

Envisicsは(エンヴィシクス)は、コンピュータービジョン、機械学習、ビッグデータ解析、ナビゲーションといったテクノロジーを自動車用のホログラフィック・ヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)のためのハードウェアに統合し、マップ表示やナビゲーションガイド、危険の警告などの情報をドライバーに示す高度な「ダッシュボード」を提供する。同社は本日、シリーズB投資5000万ドル(約53億円)の調達を発表した。

同社の創業者のJamieson Christmas(ジェイミソン・クリスマス)博士はインタビューの中で、この投資は2億5000万ドル(約270億円)を上回る評価額の段階で実施されたと話している。前回のラウンドによって評価額が「大幅にアップ」したとのことだが、イングランドでロンドンの北西に位置するミルトン・キーンズを拠点とするEnvisicsは、これまで評価額を公表していなかった。

この資金は、すでにこのスタートアップに協力してきた、韓国のHyundai Mobis(現代モービス)、米国のGeneral Motors Ventures(ジェネラル・モーターズ・ベンチャーズ)、中国のSAIC Motors(上海汽車集団)、自動車販売と関連サービスで財を成した米国Van Tuyl Group(バン・タイル・グループ)のファミリーオフィスであるVan Tuyl Companiesからなる企業の強力な戦略的投資家グループによってもたらされた。

Envisicsは、すでに数社の自動車メーカーと手を組み、その技術の車両への導入を進めている。まずは市場のハイエンド層を狙い、「インドのTata Motors(タタ・モーターズ)が所有するJaguar Land Rover(ジャガー・ランドローバー)のモデルに搭載する」とクリスマス氏は話す。その技術を組み込んだ車の量産は2023年から開始される予定だ。

ARスタートアップ各社の足元が揺らいでいるこの時期にあって、今回の投資はEnvisicsの価値を認めるものとなるばかりか、同社の事業が関わる幅広い市場も評価されたことになる。

クリスマス氏がホログラフィック・ディスプレイの世界に足を踏み入れたのは、同氏が創業した最初のスタートアップであるTwo Trees(トゥー・ツリーズ)でのことだ。この会社は、Microsoft(マイクロソフト)とそのHoloLens(ホロレンズ)に抵抗できる優れた技術を探していたARグラスの企業Daqri(ダクリ)によって2016年に買収された(Forbes記事)。

クリスマス氏は、Daqriがヘッドセットに力を入れていた間も、ホログラフィック・ディスプレイを自動車メーカーに売り込む機会を引き続き探り続けていたという。事実、買収された時点でTwo Treesは、すでに自動車メーカー数社を顧客にしていた。

それが2年後の2018年、Envisicsのスピンアウトにつながった。前の企業と同じく、同社は英国のスタートアップとして創設されたが、今回は自動車へのホログラフィック技術導入に特化している。

それは結果的に適時の判断だった。結局Daqriは、ビジネス用途に軸足を置いたことで失敗し、すでにARには厳しい状況になっていた中で資金が底をついて2019年9月に倒産(未訳記事)してしまった。Daqriだけではない。当時犠牲になった企業には、特許や資産を売却に追い込まれたOsterhout Design Group(オスターハウト・デザイン・グループ)とMeta(メタ)がある。

Envisicsは燃え盛る舞台からの脱出に成功したと考えるなら、それは間違いなくフライパンから炎の中に飛び込むのと同じだった(紛らわしい火の比喩で申し訳ない)。自動車セクターには巨額の資金が投入され、次世代の輸送手段として期待が集まる自動運転車で、熱い競争が繰り広げられている。

もしあなたが、ARはまだビジネスとしての着地点を発見していないと考えていたとしても、自動運転車は、彼らの目標地点のずっと彼方にある。人間と同等の信頼できる判断が下せる完全な自動運転車が登場するのは、まだまだ何年も先のことだと多くの専門家は口をそろえる。そもそもその実現性を危ぶむ専門家もいる。

そこで、Envisicsのような技術の出番となる。同社のツールは人間のドライバーに取って代わるものではなく、人間の運転を支援するものであり、今から、最終的に自動車が自律走行をできるようになる未来までのいくつもの段階で同社などの技術は極めて重要で、また面白い役割を担い続けることになる。想像できる範囲内でも、自動車そのものの発達と共に進化していく余地は非常に大きい。例えば今、重要なデータを提供してくれるものが、将来、人が運転しなくてもよくなったときには気の利いた娯楽を提供してくれるようになるかもしれない。

「現代モービスは、2025年の量産を目指して、自動運転に特化したAR HUDをEnvisicsと共同開発しています」と現代モービスの上級副社長兼CTOのSung Hwan Cho(チョ・ソンファン)氏は声明の中で述べている。「私たちは世界の自動車メーカーに向けて、安全性を高め、ドライバーの集中力を削ぐことなく利便性をもたらす次世代型AR HUDを積極的に提案していきます」と続ける。

「GMは、Envisicsのホログラフィック拡張現実ヘッドアップ・ディスプレイ技術に大変に感銘しました」とGM Venturesの社長Matt Tsien(マット・チエン)氏は話す。「この技術は、Cadillac LYRIQのような将来のEVの手放し運転を支援する機能など、さまざまな安全機能や高度に統合された直感的なアプリケーションにより、自動車内の体験に革命をもたらします」

「私たちは、Envisicsの革命的ホログラフィック技術の商品化という冒険の旅に参加できることを、とても嬉しく思っています。そして、彼らと手を組み、中国国内および国際市場の次世代の自動車に、高度なAR HUDを展開できることを心待ちにしています」と、SAIC Capitaiの投資ディレクターMichael Cohen(マイケル・コーエン)は自身の声明で語っていた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Envisics、イギリス、HUD、資金調達

画像クレジット:Envisics

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(翻訳:金井哲夫)

日本全国の飲食店と食品加工工場をDXで連携・支援するスパイスコードが総額7500万円調達

スパイスコードは10月8日、2019年10月に実施したプレシードラウンド、2020年2月に実施したシードラウンドの資金調達総額が7500万円になったことを発表した。Coral Capitalのほか、アクセス・オール・エリア代表の浜田 岳氏を含む個人投資家の複数名が引受け先の第三者割り当て増資によるものだ。同社は、外食およびフードデリバリー事業者にネット食品OEMサービス「ロカルメオーダー」を開発・運営する2019年8月設立のスタートアップ。現在、100種類を超える食品を受注し、外食およびフードデリバリー事業者に提供中だ。

今回調達した資金は、人材の獲得と組織体制の強化のために投下されるほか、「ロカルメオーダー」のアップデート、新サービスの開発費用に充てられる。

労働時間や賃金などでさまざまな問題を抱える飲食業界だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が「対面で食事をする」「大人数で集まって楽しく食事する」というこれまで当たり前だった行動自体が自粛傾向にある状態だ。一部の飲食業は撤退も始めているが、客単価が高く密を避けられる業態への変更、テイクアウト、デリバリーなどに活路を目指している企業もある。

スパイスコードは「飲食業界の持続可能な仕組み」を構築し、業界全体のDXと生産性の向上を実現を目標とする。具体的には、クオリティの担保を前提に調理工程にメリハリをつけ、調理場で注力する工程とアウトソースする工程を選別。日本全国各地に点在する食品加工工場をネットワーク化して、飲食業界とつなぐプラットフォームの開発に取り組んでいる。

同社は本取り組みの第1弾として2020年3月に、時間のかかる仕込み調理などをPB化して調理現場の生産性をアップす るネット食品OEMサービス「ロカルメオーダー」(旧名・スパイスオーダー)の提供を開始。2020年9月末までの間に、ローストビーフや仕込みに時間がかかる煮込み類、各種ソースなど100種類を超える食品を、外食およびフードデリバリー事業者に提供しているという。

スパイスコードCEOの上村友一氏は、過去にレストランでシェフとして働いていた経歴を持つ人物。「仕込み時間に取られる時間が膨大で、朝は始発から夜はいつも終電ギリギリで帰るという状況でした。そんな状況に疲弊して志半ばでこの業界を去る友人も数多くい ました」と当時を振り返る。同氏は「料理人はおいしい料理を作り、来店者と会話をするといった『体験価値向上』に直結する創造的な活動に時間を割くべき」と考え、時間のかかる仕込みをアウトソージング可能にするロカルメオーダーを開発。大手のようなセントラルキッチン化、多店舗によるスケールメリット構築、有名料理店のような高い客単価で経営を成り立たせることが難しい中小の飲食店が、付加価値の高い業務に専念できるよう、さらにサービスを磨いていきたいとしている。

カテゴリー:フードテック
タグ:スパイスコード、ロメカルオーダー、資金調達

画像クレジット:スパイスコード

チームコラボツールtoaster team開発のnocoが総額7500万円調達、リリース2カ月で1300社が導入

チームコラボレーションツールtoaster team(トースターチーム)を開発・運営するnocoは10月8日、総額7500万円の資金調達を発表した。第三社割り当て増資による調達で、引受先はアプリコット・ベンチャーズ、STRIVE、VOYAGEVENTURES、個人投資家。

toaster teamは、組織内の情報共有やコミュニケーションなどの共同作業を支援するクラウドサービス。業務マニュアルや手順書を手軽に作成できるレシピ機能、日報・企画書・議事録を共有するノート機能、画像編集機能、用語集管理、タスク管理機能 など、ワークマネジメントに必要な機能を1つにまとめている。GoogleドキュメントやGoogleスプレッドシート、Googleスライド、SNSなどのコンテンツを張り付けることも可能だ。

同社によると、2020年10月現在、東証一部上場企業から個人事業主まで1300社超の企業が導入しているとのこと。なおベータ版の導入時点で導入企業は700社を突破しており、2020年度中には2000社への導入を目指す。

toaster teamには利用料金がかからないがデータ上限のある無料プランのほか、1チーム(11名以上)あたり月額800円の有料プランを提供する。今後は、SlackやMicrosoft Teamなどの法人向けメッセンジャーサービスとの連携も進めていく。

今回調達した資金は、プロダクト開発の強化およびカスタマーサポート体制の立ち上げなどの採用などに充てられる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:noco、toaster team、資金調達、コラボレーションツール

タクシー予約・配車業務をクラウド化する徳島拠点の電脳交通が総額5億円を調達、 タクシー会社とのDX推進が超加速

電脳交通

タクシー会社でいまだ人力業務が多い配車・予約管理などのバックオフィス業務のDXを進めてきた、徳島を拠点とする電脳交通は10月8日、総額5億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、既存投資家のほか、今回新規投資家として三菱商事、JR東日本スタートアップ、第一交通産業グループ、エムケイ、阿波銀行、いよぎんキャピタルが加わっている。既存投資家には、日本交通グループのJapan Taxi(Mobility Technologies)、JR西日本イノベーションズ、NTTドコモベンチャーズなどが名を連ねる。

今回の資金調達では、タクシー事業会社の第一交通産業グループ、エムケイが参加している点に注目。なお、第一交通産業グループは7月に、電脳交通が開発したクラウド型タクシー配車システムの「自動配車機能」と「データ解析機能」を、三重県津市を拠点とするグループ会社のタカモリ第一交通に導入済みだ。

電脳交通最近は都市部の大手タクシー会社を中心に配車アプリにより利便性が高まっている一方で、国内のタクシー事業者は市場の縮小や従業員の高齢化などに悩まされている。IT化の遅れにより、配車・予約業務の75%が未だに電話対応など、非効率・長時間と厳しい労働環境も問題だ。

電脳交通その結果、地方では観光や地元住民の移動手段としてのタクシーの需要が減っており、交通空白地帯の拡大も起きている。電脳交通は、配車・予約業務やデータ解析などをクラウド化・集約化して、資本投下に限りのある地方のタクシー会社を中心にDXや労働環境の支援・改善するのが狙い。

電脳交通具体的には、経営効率化、配車業務の負担軽減・コストの削減、配車アプリ間のデータ共有・交換を実現する。将来的には、QRチケットや決済レスコール機能、フードデリバリー、公共タクシー配車などの計画もある。

電脳交通なお配車・予約業務については、全国各地に配車センターを開設しリモート配車業務を手掛けている。導入企業は社内に配車業務のスタッフなどを配置する必要がなくなり、平均30〜50%のコスト削減につながっているという。

電脳交通今後は各社との提携により、タクシー業界全体のさらなるDXを推進。今回の資金調達は、全国への事業展開、機能強化と配車センターの拡充など事業に充てられる。

カテゴリー:モビリティ
タグ:電脳交通、資金調達、配車サービス

自然言語処理AIの独自開発など手がけるバズグラフが7600万円を調達

自然言語処理AIの独自開発など手がけるバズグラフが7600万円を調達

自社開発の自然言語処理AIをベースに、文章要約システムやビッグデータ分析ソリューションを展開するバズグラフは10月7日、第三者割当増資により、7600万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、UNITEDベンチャーキャピタルおよび個人投資家。

今回調達した資金は、自社開発の自然言語処理AIを基盤にした、文章要約システム、ビッグデータ分析ソリューション、オンラインミーティング議事録要約システムなど、各ソリューションの精度向上・機能拡張・ユーザビリティ向上に向けた追加開発にあてる。

2014年11月設立のバズグラフは、言語解析技術、ビッグデータ解析技術を応用したサービスを提供。これら技術により、世界中の人々がITリテラシー・情報リテラシーの壁を超え、さらに円滑な国際間の相互コミュニケーションを実現できれば、世界中のあらゆる問題が解決できると考えているとしている。

カテゴリー: 人工知能・AI
タグ: バズグラフ資金調達日本(国・地域)

自分だけのドリームチームで競い合うファンタジースポーツのSPORTS CROWNが1.2億円を調達

自分だけのドリームチームで競い合うファンタジースポーツのSPORTS CROWNが1.2億円を調達

新たなスポーツ観戦スタイルとして注目されているファンタジースポーツ「SPORTS CROWN」運営のSPORTS CROWN Pte. Ltd. (旧社名Rabona Pte. Ltd. )は、第三者割当増資による総額1.2億円の資金調達が完了したと発表した。累計調達額は1.9億円となる。

引受先は、大湯俊介氏(コネヒト 創業者)、中川綾太郎氏(newn inc. 代表取締役)、國光宏尚氏(gumi 取締役会長)、里見治紀氏(セガサミーホールディングス 代表取締役社長グループCOO)、見城徹氏(幻冬舎 代表取締役社長)、ベクトル。

今回調達した資金は、マーケティング強化、サービスの研究・開発に加え、エンジニアをはじめとする人材採用に積極的に投資する。今後の展開としては、集積したデータを活用した企業プロモーション、地域産業と連携した地方創生に一役を担えるようなスポーツテック領域におけるリーディングカンパニーを目指すとしている。

自分だけのドリームチームで競い合うファンタジースポーツのSPORTS CROWNが1.2億円を調達

ファンタジースポーツとは、自分の好きな選手を選んで架空のスポーツチームを編成し、活躍する選手などを予想するシミュレーションゲーム。

サッカーや野球、アメリカンフットボール、バスケットボールなど実際に行われているプロスポーツの中から活躍する選手を複数人予想し、自分だけのドリームチームを結成。実際の試合の結果に応じて選手の活躍ごとにポイントが振り分けられる仕組みになっており、ユーザー同士で同じように結成されたドリームチームの合計ポイントを競い合う。

海外におけるファンタジースポーツの市場は大きく、ファンタジー・スポーツ事業協会(FSTA)によると、米国でのユーザー数は約3200万人で参加者は年間平均で467ドルを費やし、総額150億ドルの一大市場を形成しているという。

2018年1月サービス開始のSPORTS CROWNは、新型コロナウイルスの影響で延期されていたプロスポーツ再開後もユーザー数を伸ばしており、日本最大級のファンタジースポーツに成長しているとした。

カテゴリー: ゲーム / eSports
タグ: SPORTS CROWNファンタジースポーツ資金調達

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長崎大発の香りAIスタートアップ「REVORN」が資金調達、事業拡大に向け人材獲得

長崎大学発の香りAIスタートアップ「REVORN」が資金調達、事業拡大に向け人材獲得

長崎大学発の香りAIスタートアップ「REVORN」(レボーン)は10月7日、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は、九州オープンイノベーション1号投資事業有限責任組合(GxPartners LLPとFFGベンチャービジネスパートナーズ)、FFGベンチャー投資事業有限責任組合第2号(FFGベンチャービジネスパートナーズ)。

今回の資金調達により、事業拡大に伴う人材の獲得、顧客企業からの依頼案件の進捗を図るとしている。

2016年4月設立のREVORNは、「『香り』を定義し、新しい世界へ導くこと」を目指し、独自開発のセンサーによって「香り」を情報化し、AIで解析する研究開発型スタートアップ企業。世界中の「香り」データを使用し、「嗅覚」の領域に新しい定義を築き上げることにより、新しい産業の誕生を目指す。

カテゴリー: 人工知能・AI
タグ: REVORN資金調達日本(国・地域)

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ケンブリッジ大学の量子フォトニクス研究のスピンオフ「Nu Quantum」がシード資金を調達、商用技術のデモを目指す

量子暗号化、量子シミュレーションが現実のプロダクトとして実現されつつある今、個々のフォトン(光子)を高い信頼性で送出、検知できるハイパフォーマンス素子が必要とされるようになっている。こうした分野を専門として成果を上げている企業は世界的にも数少ないが、その1つがNu Quantumだ。このスタートアップはケンブリッジ大学の研究プロジェクトからのスピンオフだ。

同社はAmadeus Capital Partnersがリードするシード資金調達ラウンドで210万ポンド(約2億8600万)を調達することに成功した。投資家にはAhren Innovation Capital、IQ Capital、Cambridge Enterprise、Martlet Capitalが含まれる。2020年にAmadeusは65万ポンド(約8800万円)のプレシード投資をリードしており、これに参加したSeraphim Capitalも今回のラウンドに新たな投資家として参加した。

今回の資金はケンブリッジにある最先端のフォトニクス研究所に充てられ、同社が初の商用技術のデモンストレーションを開始するにあたり、科学者、製品チームメンバー、ビジネス部門の主要な採用活動に充てられる。

Nu Quantumはケンブリッジ大学のキャベンディッシュ研究所で8年前から開発が続けられた量子光学、半導体フォトニクス、情報理論等の成果を統合した知財ポートフォリオをベースとしてスピンアウトしたスタートアップだ。 同社は量子フォトニクス分野で数少ない世界最高レベルの企業の1つだ。

同社が最初の商業的プロダクトとして提供を計画しているのは、量子フォトニクスにおける独自のテクノロジーとアルゴリズムを利用して乱数を生成するデバイスだ。この乱数のランダム性には極めて高い信頼性があり、同社では暗号化のためのベースとなる乱数としてデータ保護のために広範囲で利用されることになると期待している。Nu Quantumは英国の国立物理研究所をリーダーとする乱数ジェネレーター開発コンソーシアムのパートナーで、このプロジェクトには英国政府のIndustrial Strategy Challenge Fundから280万ポンド(約3億8100万円)の助成金が出ている。

Nu QuantumのCEOであるCarmen Palacios-Berraquero(カーメン・パラシオス=ベラケロ)博士は声明で「私たちのシステムは量子力学的効果を利用した量子フォトニクス素子の実現を目標としています。今回の資金はこの目標に現実化するために利用されます。Nu Quantumでは世界的かつ学際的なチームによる新しいラボが可能となります。私達は潜在的顧客とパートナーに向けて独自テクノロジーの初の意義あるデモを実施できると期待しています」と述べた。

Amadeus Capital PartnersのマネージングパートナーであるAlex van Someren( アレックス・ヴァン・ソメレン)氏は、「量子フォトニクスはデジタル暗号化を根本的に変革しサイバーセキュリティに新たな時代を切り開く可能性があります。私たちがNu Quantum に再び投資したのは同社には商業的ソリューションを開発し、市場に提供する能力が十分あると信じているからです。ケンブリッジはこれまでも量子コンピューティングのハード、ソフトの開発と商業化で世界をリードしてきました。Amadeusではこの優れた起業家チームを応援する機会を得たことに興奮しています」と述べている。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Nu Quantum量子コンピュータケンブリッジ大学資金調達

画像クレジット:Nu Quantum

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滑川海彦@Facebook

セキュリティ認証所得をサポートするStrike Graphが自動セキュリティ監査の実現に約4億円を調達

コンプライアンスの自動化は、興奮するほどおもしろい話題とはいえないが、セキュリティ監査はビッグビジネスであり、SOC2、ISO 207001、FedRampなどの認証を得たい企業にとっては、数千万円単位の投資も惜しまない分野だ。シアトルを拠点とするStrike Graph(ストライク・グラフ)は、米国時間10月5日、事業開始とシード投資ラウンド390万ドル(約4億円)の調達を発表した。セキュリティ監査のプロセスをできるだけ自動化したいと意気込んでいる。

同社の今回のラウンドは、Madrona Venture Groupが主導しAmplify.LA、RevolutionのRise of the Rest Seed Fund、Green D Venturesが参加している。

Strike Graphの共同創設者でCEOのJustin Beals(ジャスティン・ビールス)氏は、この事業のアイデアは、2019年、少々奇妙なエグジット(GeekWire記事)を果たした機械学習スタートアップのKoru(コル)のCTOを務めていたときに思いついたのだと私に話した。この事業を行うには、同社はセキュリティのSOC2認証を取得しなければならなかった。「特に小さな企業にとって、それは本当に大きな挑戦でした。同僚に話をすると、それが徹頭徹尾、どれほど困難なことかを思い知らされました。なので、新しいスタートアップを立ち上げる段になったとき、私はもう興味津々でした」と彼は話していた。

画像クレジット:Strike Graph

Koruを去った後、彼は共同創設者のBrian Bero(ブライアン・ベロウ)氏とともにMadrona Venture Labs(マドローナ・ベンチャー・ラボズ)に客員起業家としてしばらく過ごしていた間に、そのアイデアを温め続けた。

ビールス氏は、現在のプロセスは遅く、非効率で多額の費用がかかる傾向にあると指摘する。Strike Graphの基本となる考え方は、当然ながらそうした非効率性を今の時点でできる限り排除するというものだ。断っておくが、同社が実際の監査サービスを提供するわけではない。顧客企業は、自身で監査サービスと契約する必要がある。しかしビールス氏は、そうした企業が監査のために拠出している費用は、その大半が監査前の準備のためだと主張する。

「あらゆる準備作業を行い態勢を整える。しかし最初の監査が終わると、また翌年のために最初から準備をし直さなければいけません。そのため、その情報の管理が大変に重要になります」。

画像クレジット:Strike Graph

Strike Graphの顧客は、まずリスク評価を提出する。同社はそれを元に、監査に合格するよう、そして自社のデータを守れるようセキュリティ態勢を改善する方法を示す。また、間もなくStrike Graphは、各企業の監査のための証拠収集(たとえば暗号化の設定)を自動化し、定期的にデータを集められるようにするとビールス氏は話している。SOC2などの認証を取得するには、企業は継続的なセキュリティ対応を実施し、12カ月ごとの監査を受ける必要がある。同社の自動証拠収集機能は、証拠データ収集にその機能を統合させた最初のセットが完成すれば、2021年の早い時期に提供できる予定だ。

主に中堅クラスの企業をターゲットとする同社は、その自動化機能に今回調達した資金の大半を投入する予定だ。さらに、マーケティングにも力を入れる。その中心はコンテンツマーケティングであり、潜在顧客への教育を目指す。

「規模の大小を問わず、ソフトウェアソリューションを販売するすべての企業は、セキュリティとプライバシーの両面において、広範なコンプライアンス要件に準拠しなければなりません。認証の取得は、負担の大きい、不透明で費用のかかる作業です。Strike Graphは、その問題にインテリジェントテクノロジーを応用します。それぞれの企業に特有のリスクを特定し、監査がスムーズに行われるよう手助けし、コンプライアンスと将来のテストを自動化します」と、Madrona Venture Group業務執行取締役Hope Cochran(ホープ・コクラン)氏はいう。「監査は、私がCFOだったころには避けられない痛みでした。しかし、Strike Graphのエレガントなソリューションが、企業内のすべての部署を一体化し、事業をより迅速に進められるようにしてくれます」。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Strike GraphコンプライアンスSOC2資金調達

画像クレジット:Strike Graph

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(翻訳:金井哲夫)

インドでのクレカ利用拡大を目指すUniが約20億円調達、製品もサービスもないスタートアップにVCが熱い期待を寄せる理由

インドのクレジットカード業界は行き詰まっているようだ。業界の推計によると、現在インドでは3000万人から3500万人が少なくとも1枚のクレジットカードを持っており、そのうち最大5800万枚が流通しているという。しかし、これを約10億枚発行されているデビットカードと比較してみると、その規模がわかるだろう。

人口の大多数がクレジットカードを持っていない理由の1つは、彼らがクレジットスコアを持っていないからだ。銀行やクレジットカード会社は、信用度を判断するために古い方法論に頼っており、信用スコアを持っている人はほとんどいないのだ。

例えば、インドのほとんどの銀行は、銀行が管理している古いスプレッドシートに記載されている数百社のうちの1社にフルタイムで雇用されている個人にしかクレジットカードを発行していない。

金融サービスビジネスのベテランであるNitin Gupta(ニチン・グプタ)氏は、インドの金融サービス会社であるUniを設立して、これらの問題のいくつかに対処したいと考えている。

Uniの創業者、Nitin Gupta(ニチン・グプタ)氏

グプタ氏はUniを通じてこれらの問題を解決したいと考えている。同氏は国内でも数少ない、それを実行できる人物の一人であるからだ。なぜなら、フィンテック企業のPayU Indiaの共同設立者であり、その後に配車サービスのスタートアップであるOlaで金融サービス事業を運営していた実績がある。

PayUでの在職中に、Olaは国内の決済処理ビジネスで優位性を確立した。あとから乗車料金を支払うことができるサービスとしてOlamoney Postpaidをローンチ。Olamoneyは、昨年2億5000万ドル(約264億円)の評価を受けており、今では国内最大級の金融サービス事業者となっている。

そしていま、さまざまなVCがグプタ氏の新しい会社に賭ける気になっている。

10月6日、UniはLightspeedとAccelが主導するシードラウンドで1850万ドル(約19億5000万円)を調達したと発表した。現在、このスタートアップは製品やサービスを有しておらず、さらには世界的な新型コロナウイルスの流行の中で、インド最大のシード資金調達ラウンドの調達にわずか2カ月しかかかっていない。

コンサルティング会社のConvergence Catalystの創業者兼チーフアナリストであるJayanth Kolla(ジャヤンス・コラ)氏は、「製品もまだ何持っていない2カ月のスタートアップが1850万ドルのシード資金を調達したことは、純粋に創業者の信用情報と経歴に基づいたものであり、インドにおける純粋なシリコンバレー型の資金調達の最初の例です」とコメントしている。

TechCrunchとのインタビューでグプタ氏は、Uniには金融サービスビジネスで優れた実績を持つLaxmikant Vyas(ラクスミカント・ヴィヤス)氏とPrateek Jindal(プラティーク・ジンダル)氏という2人の上級幹部が加わっていると述べた。

グプタ氏は、Uniの商品がどのようなものになるのかは明らかにしなかったが、現代の消費者向けクレジットカードを構築していることをほのめかした。

「Uniのサービスは非常にわかりやすく見えるだろうし、人々はなぜ他の誰もがそれを考えなかったのかと不思議に思うだろう」とグプタ氏。現在同氏は、複数の銀行と提携していると教えてくれた。

さらに「デジタル決済の採用は過去5年間で急激に成長しているが、クレジットカードビジネスはまだ進出に苦労している」と話し、「今後5年間でクレジットカードのベースを2億人に拡大する機会がある」と付け加えた。

Lightspeed IndiaのパートナーであるBejul Somaia(ベジュール・ソマイア)氏は「ニチンとUniのチームは、新しい技術を駆使したソリューションを使って、何百万人ものインドの消費者のために金融サービスの力を解き放つことに情熱を注いでいる。我々は彼らのミッションに興奮しており、初日から彼らをサポートできることを誇りに思っている」と語った。

カテゴリー:フィンテック
タグ:インド、資金調達

画像クレジット:Jon Hicks / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

店舗の冷蔵食品棚のトビラをインタラクティブスクリーンに変えるCooler Screens

店舗の冷蔵食品棚に使われているガラスの扉をインタラクティブなデジタルディスプレイに置き換えるCooler Screens(クーラー・スクリーンズ)がシリーズC投資ラウンドで8000万ドル(約85億円)超を調達したと発表した。

同社の累計調達額は1億ドル(約105億円)を超える。最新の投資ラウンドはVerizon Ventures(VerizonはTechCrunchを所有する)、Microsoft(マイクロソフト)のM12ベンチャーファンド、GreatPoint Ventures(グレートポイント・ベンチャーズ)、Silicon Valley Bank(シリコンバレー・バンク)などによるものだ。

Cooler Screensは共同創業者でCEOのArsen Avakian(アルセン・アバキアン)氏が率いている。これより前にArgo Tea(アルゴティー)を創業してCEOを務めた同氏は、i2 Technologiesを含む数多くのテック企業で働いたと筆者に語った。

「冗談みたいですが、私はITからお茶の世界に入り、現在ITに戻っています」と同氏は述べた。また、Cooler Screensはテック企業であり、自身の過去の経験すべてを活用しているが、消費者ブランドをいかに構築するか理解する必要がある、とも同氏は述べた。

単なるガラスの扉を電子ディスプレイに変えるというのは必要不可欠なものではないかもしれないし、うっとうしいものですらあるかもしれない。アバキアン氏は最優先事項は「消費者のハートをつかむこと」だと語った。

結局のところ、我々はオンラインで商品を購入する前にできる限り下調べすることに慣れているが、実在店舗での買い物となると利用できる情報はかなり少ない。それをCooler Screensが変えようとしている、とアバキアン氏はいう。「あなたはスクリーンに『ベジタリアン向けのアイテムを表示して』『この製品のカロリーは?』などと尋ねることができます」。

同社のディスプレイはすでにいくつかの店舗で利用できる。シカゴエリアのWalgreens(ウォルグリーン)50店舗に導入済みで、Cooler Screensは全米のWalgreens2500店舗に拡大する計画を発表している(Cision PRWebリリース)。他にKroger(クローガー)とGetGo(ゲットゴー)とも提携している。

アバキアン氏は提携に基づき店舗に「洗練されたデジタル商品化とコンテクストを伴う広告テクノロジー」をもたらす、と述べた。

画像クレジット:Cooler Screens

同氏はまた、「当社は店舗をデジタル化することができます。そうすることで消費者に愛されることを示したいと思っています。NPSスコアは非常に高くなるでしょう。もしそれらすべてをあなたに証明できれば、あなたの店舗の消費者に関係するCPG(消費財)ブランドにこのマーケットプレイスを提供し始めます。当社が広告のラストマイルを担うことになります」とも話した。

他の形態をとるデジタル広告と異なり、Cooler Screensは視聴する人のいかなる個人情報も収集しない、と同氏は語った。「消費者が買い物の最中という安全な環境」で消費者にリーチする方法を提供するというのは、広告主にとっては魅力的だ。

2020年3月以来、同社のプラットフォームを利用する広告主は40ブランドから150ブランド近くに増えたとアバキアン氏は述べた。

同氏はWalgreensやKrogerのような店舗がパンデミック中、多くの買い物客にとって必要不可欠な存在だったことを指摘しながら「実在の小売店舗が普及しているというのは皆が認めるところです。ただ刷新する必要があります」と指摘した。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Cooler Screens資金調達

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(翻訳:Mizoguchi