「泥臭いことも全部やる」新型コロナ影響下でHRテックのROXXが9億円調達

人材採用関連サービスを提供するROXX(ロックス)は5月18日、グローバル・ブレインと日本郵政キャピタルを引受先とした、総額9億円の第三者割当増資を発表した。今回の資金調達は今年2月発表の総額5億円の調達に続くもので、シリーズBラウンドに当たる。同社の累計調達金額は約20億円となった。

求人DBとしての価値向上、中長期で人材紹介を支援

ROXXは現在、人材紹介会社向けのクラウド求人データベースサービス「agent bank(エージェントバンク)」および月額定額制のリファレンスチェックサービス「back check(バックチェック)」を提供している。

2018年5月に正式リリースされたagent bankは、人材紹介会社が月額利用料のみで利用できる、求人データベースと業務管理ツールのクラウドサービスだ。成功報酬に対する手数料不要で、自社で抱える転職者をデータベース掲載企業に紹介することができる。

新型コロナウイルス感染拡大を受け、4月に緊急事態宣言が出てから人材紹介会社を取り巻く状況は「売り手市場から真逆の環境に一気に変わった」とROXX代表取締役の中嶋汰朗氏は話す。「人材がいればすぐに紹介先が決まるという状況から、今は採用を続けている企業を探し回る、売り先がない状況。掲載求人情報は一時、2400件から1600件まで落ち込んだ」(中嶋氏)

ただ、そうした厳しい状況ゆえに、人材紹介会社から見ると求人データベースとしてのagent bankの価値は上がっていると中嶋氏は続ける。

「新型コロナ対策支援として、利用料を3カ月無料でサービスを提供するキャンペーンを実施したこともあって、5月だけで200社から問い合わせがあった。これは今までの年間契約社数と同じ数字だ。サービスローンチから2年経ち、昨年比で見ればほぼ全ての数字が2倍に伸びた。4月には人材会社から求人企業への紹介件数が、初めて単月で1万件を超えており、プラットフォームとしてはどんどん大きくなっている」(中嶋氏)

採用を絞る企業が増える中で、紹介先企業、求人件数を増やすことは、同社にも課題となっている。5月の大型連休明けからは若干回復傾向も見えるものの、「『オリンピック後に景気が悪化しても採用を続ける』と言っていた企業でもコロナ禍で採用をストップしたところもあり、予断は許さない」と中嶋氏はいう。

ただし、同社が対象としているのは人手を必要とする労働集約的な業界・職種が中心だ。「中長期的に見れば、まだまだ採用は続く。非正規や中卒・高卒といった領域の求人紹介はほかのプレイヤーも少ない。今は先行きが分からず採用を止めている企業も多いが、この時期にも採用を続けている企業もそれなりにある。5〜6月は厳しい状況が続くかもしれないが、連休明けに動きが出ていることもあるので、乗り切りたい」(中嶋氏)

リファレンスチェックサービスは非対面の面接と相性よい

かたやリファレンスチェックサービスのback checkのほうについては、「対面で面接ができない環境との相性はいい」と中嶋氏は述べている。

back checkは、面接や書類からだけでは見えにくい採用候補者の経歴や実績に関する情報を、候補者の上司や同僚といった一緒に働いた経験のある第三者から取得できるサービスだ(チェックは採用候補者本人の同意を得て行う仕組み)。採用予定の職種・ポジションに合わせて数十問の質問を自動生成し、オンライン上でリファレンスチェックを実施できる。

「新型コロナ感染症の影響が落ち着いても、リモート面接を取り入れる動きは元には戻らないだろう。採用候補者の見極め材料の不足を補うツールの必要性は、今まで以上に増してくる。ここはチャンスと捉えて、マーケットを作っていけるかどうかの正念場だ。『働く場所はどこでもいいから優秀な人材を探そう』という動きや副業、時短勤務も進むはず。そういう人材採用で使えるリファレンスチェックのツールとして、back checkの活用頻度はより増えていくのではないかと考える」(中嶋氏)

今回の資金調達は、新型コロナ感染拡大による影響が広がるさなかの2月〜4月にかけて交渉が進んだという。中嶋氏は「2社とも、約2カ月と短い時間で検討を進めてもらい、調達実施を決めることができた。前回と今回の調達資金については、アグレッシブに使うというよりは、体力が続く間で改めてやれること、投資対効果が合うものに絞って事業を伸ばすつもり」と語る。

「短期的な売上を作るより、提供金額などの敷居を下げて、体験してもらう数を最大化する。広告に投下するのではなく、例えばback checkについては1候補者あたり1000円で試用できるプランを期間限定で提供するなど、試してもらって、その後契約してもらえる流れをまずは作る。今後もいろいろなキャンペーンやプランを、タイミングを見ながら変更しつつ打ち出していく」(中嶋氏)

「スタートアップは本来、大企業より身軽でスピード感を持ってやれるはず」という中嶋氏。「この時代に即したやり方にすぐに変えていけるのが強みのはずなので、改めてスタートアップとして、この機会を成功に変えなければと思っている。資金調達によって、またチャンスをもらえたことに最大限感謝しつつ、泥臭いことも全部やっていくつもりだ」と話している。

「今までのモデル通りで伸び続けるというわけには行かないと思うので、再度足元を整える。ついつい勢いの中で進んできてできていなかったこと、自分たちが本来向き合わなければならないところに対して、今なら精いっぱい時間を使えると思うので、向き合っていこうと思う。今後の時代に合わせた事業モデル、顧客ターゲットに変えていくために、今も手を打っているところ。多少の痛みは伴うが、モデルの変換や組織体制変更など、対応していく」(中嶋氏)

ROXX代表取締役 中嶋汰朗氏

AIがプレゼントを提案するギフト特化型モール「Giftmall」が15億円を調達

ギフト特化型ECモール「Giftmall(ギフトモール)」を運営するギフトモールは5月18日、15億円の資金調達を発表した。第三者割当増資の引受先はジャフコが運営するファンドで、ギフトモールにとってはシリーズAラウンドの調達にあたる。

ギフト通販サイトとしては、ベルメゾンやディノス、シャディといったカタログ通販発の企業が運営するものが既にいくつかあるが、Giftmallの特徴は「モール型であること」「ギフト・プレゼントに特化していること」だとギフトモール代表取締役の藤田真裕氏は説明する。

「アパレルの世界で、ZOZOTOWNがモールとして各社の商品を扱っているのと同様に、ギフト・プレゼント領域のモールとして、自社商品を持つ企業にも声をかけ、商品を扱わせてもらっている」(藤田氏)

父の日・母の日、誕生日などのイベントや贈る相手、商品カテゴリからギフトを選べるほか、閲覧履歴を使ってAIによる商品提案も行う

ギフトモールは2014年8月の設立。藤田氏はリクルートホールディングスの出身で、在席中の2009年からサイドプロジェクトとしてメディアづくりを行ってきた。2013年にシンガポールへの移住とグローバルでの事業展開を決意し、2014年6月に退職、起業した。

ギフト領域に踏み出したきっかけは、両親へのプレゼントで何をあげればよいか分からず迷った体験にあると藤田氏は言う。「Amazonや楽天などの一般的なECや、カタログ通販でECへ進出した企業などもあるが、プレゼントで利用しようとするといろいろと課題もあって、改善点が多い領域だと感じた」(藤田氏)

Giftmallでは、利用シーンをギフトに特化したことで、ギフトならではのUXの磨き込みを行っているという。また、藤田氏は「テクノロジー企業としてデータを重視し、ギフトECのプラットフォームを提供している」と話している。これまでにステルスで展開してきた複数のメディアのインプレッション、コンバージョンデータを機械学習で分析。100万人を超える購買データをベースに、AIが27万点のアイテムの中から、ユーザーの閲覧履歴や購買情報に即したギフトを提案するという。

今回の調達資金は「グループ経営体制の構築に投資する」と藤田氏は述べている。今までにも複数メディアを展開してきたが、この3月にはトレンダーズの子会社でギフトEC事業を手がけるBLTの全株式を取得。同社が運営する「Anny」をグループ傘下に入れた。「今後もグループとして、中長期的にプラットフォームを増やしていく」と藤田氏はいう。

また直近ではロジスティックスの強化、人材採用強化も図っていくとのことだ。「商品や倉庫・物流の拡充は先行して実施しているが、より件数をさばけるようにしたい。また、人材については少数精鋭をモットーに、リファラル採用を中心に行っているが、将来を見据えて投資していきたい」(藤田氏)

新型コロナウイルス感染症の影響で、直接店頭に出向いてギフトを選びにくい環境になっていることから、「ここ数カ月の事業はかなり伸びている」という藤田氏は、「ギフトが増えることはコミュニケーションが増え、スマイルが増えること」と語る。現在ギフトプラットフォームを展開する日本、インドネシア、インドに続き、近々ベトナムでもサービスをローンチ予定だと話していた。

ギフトモールのメンバー。写真右上が代表取締役の藤田真裕氏