ITとクラウドワーカーの力で民泊運営を効率化するSQUEEZE、ケネディクスから約8億円を調達

民泊を中心とした宿泊事業者向けの運営代行サービス「mister suite」などを展開するSQUEEZEは3月28日、不動産アセットマネジメント会社のケネディクスと資本業務提携を締結し、総額約8億円を調達したことを明らかにした。

今回の業務提携を通じて、両社では「サービスアパートメントと民泊のハイブリッド運用モデルの共同開発」と「SQUEEZEが運営するスマートホテル施設の調達および投資」を行っていくという。

SQUEEZEは2014年9月の設立。同年にmister suiteをリリースした。同サービスは物件の運用に必要となる業務を、専業の登録ユーザーに依頼できるクラウドソーシングの機能を備えている点が特徴だ。集客に関わるチャネルのマネジメント、部屋料金の自動調整、24時間のカスタマーサポート、清掃スケジュールの自動化など幅広い業務をカバーする。

同社ではクラウド上で物件の情報を一元管理できる「suitebook」やスマートロックの販売事業も展開。民泊を中心とした宿泊事業者が行う一連のタスクを、システムとクラウドワーカーの力で効率化している。

また2017年からは他事業で培った知見をもとに、「Minn」というブランドでスマートホテルの自社運用をスタート。この領域においては今後ケネディクスと協業していく予定だ。加えてSQUEEZEではケネディクス傘下のスペースデザインと連携し、6月15日に施行される住宅宿泊事業法の下でサービスアパートメントと民泊のハイブリッド運用にも取り組むという。

SQUEEZEは今回調達した資金でさらなる体制強化を図るほか、スマートホテル施設の調達やsuitebookのシステム開発を進める方針だ。なお同社は、2016年5月にジャフコ、インキュベイトファンド、その他事業会社、個人投資家らから総額約4.2億円の資金調達を実施している。

検索直前の「アクションデータ」を武器にデジタル広告を革新、A1 Media Groupが4億円を調達

インターネット広告関連の事業を複数展開するA1 Media Group。同社は3月29日、Global Catalyst Partners JapanSBIインベストメントデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムなどを引受先とした第三者割当増資により、総額4億円を調達したことを明らかにした。

調達した資金をもとに、さらなる事業拡大に向けて開発・営業体制の強化を図る方針。合わせて今回のラウンドに参加するVCや事業会社とは、今後データ連携や広告商品の共同開発、海外市場での協業などを行っていく予定だという。

アクションデータを軸に、日韓で複数事業を展開

A1 Media Groupは日本に本社を置き、日韓でインターネット広告代理事業やプレミアム媒体社向け広告配信事業を行っているスタートアップだ。同社の特徴は「アクションデータ」と呼ばれるオーディエンスデータを保有していること。これはユーザーがコンテンツを閲覧した際に行った意図的なアクションを指し、URLやキーワードのコピー、文章のハイライト、SNSのシェア、読了率や閲覧時間といったコンテンツのViewデータなどが該当する。

韓国ではこのデータを軸にした特許をすでに3件取得。たとえば「アクションデータをベースに、広告主が指定したキーワードに興味を持つユーザーへターゲット広告を配信する技術」はそのひとつだ。ハイライトされた文章などをデータマイニングにかけて、ユーザーの意図に沿ったキーワードを抽出。そこから広告セグメントを作成することで、広告主は精度の高いターゲット広告を配信できるようになる。

そのほか保有するユーザーのプロファイルに合わせてカスタマイズ広告やコンテンツを配信する技術(広告配信前に、予算に応じて獲得できるリーチ数などを予測・プランニングできる)や、アクションデータに基づいた広告ランディングページの最適化技術(イメージとしてはA/Bテストに近いが、数百万個に及ぶ広告物とLPを一気に管理、最適化できるのが特徴)で特許を保有しているという。

ユニークな「アクションデータ」とそれを分析・活用する技術を通じて、広告主や媒体社向けに複数の事業を展開しているのがA1 Media Groupの現状だ。

媒体の広告収益最大化へ、毎日新聞と記事広告プロジェクト実施

現在A1 Media Groupが日本で進めている事業の1つが、アクションデータを用いた媒体社向けの広告商品の開発だ。たとえば直近では毎日新聞と共同で、タイアップ記事広告のプロジェクトを実施している。

「特にコンテンツを大事にしているメディアにとっては、記事広告は重要な収益源であり今後伸ばしていきたい広告商品だ。一方で費用が高いのにリーチできる人数が少ない、PVやクリックが効果測定の中心になっているという課題もある。ユーザーがコンテンツをどのように消化したのか、どの箇所に興味関心を示したのかを見える化して活用できれば、差別化された広告商品の開発にもつながる」(A1 Media Group代表取締役のジョン・ジェウ氏)

この事例では記事広告の作成と、ユーザーのアクションデータを分析したレポートを商品として提供。ハイライトや読了率などユーザーの行動やそれに至った意図、他のどんなコンテンツに関心をもっているかといった属性分析や潜在顧客の分析までをカバーする。

オプションとして記事広告で獲得したアクションデータをもとに、ネイティブ広告などを通じて外部から親和性の高いユーザーを誘導するパッケージも開発。このオプションを実施した結果、記事広告のPV数が2.4倍、アクション数が2.5倍に上昇した例もあるそうだ。

「『アクションデータを取得、分析できるようになりました』というだけで終わるのではなく、そのデータを活用することで、親和性の高いユーザーを抽出して誘導し、記事内でのアクションを増やすことまでできるという点で価値を感じてもらえている」(ジョン氏)

ジョン氏によるとアクションデータの活用はメディアに限った話ではなく、ECなどにも展開できるそうで、韓国では結果もでているという。すでにA1 Media Groupでは日本と韓国で70以上の媒体、ECサイトにおける匿名のユーザーアクションデータを分析済み。今後は記事広告を含めた関連広告商品の開発と広告代理事業に力を入れていく。

A1 Media Groupは2016年1月の設立。代表のジョン氏は1998年に24/7 Media Koreaを創業し、2004年に同社をNasdaq上場企業である24/7 Media(現WPPグループのXaxis)に売却。その後24/7 Media APACの社長を務めた経験を持つ起業家だ。

“商品ありすぎ、チャネル多すぎ”な化粧品の購入体験を変革、コマースメディア「noin」が3億円を調達

「コスメの最安値がわかるのが便利」「コスメに特化した価格.comのようなもの」——化粧品コマースメディア「noin」のApp Storeのレビューには、そのようなコメントが並ぶ。2017年10月にiOSアプリをリリースし、12月にはApp Storeのライフスタイルカテゴリで1位を獲得。レビュー数はリリースから約5ヶ月で5000件を超える。

そんなnoinを提供するノインは3月28日、グリーベンチャーズ500 Startups JapanKLab Venture Partnersみずほキャピタルおよび個人投資家を引受先とした第三者割当増資を実施。約3億円を調達したことを明らかにした。またこれに合わせて、グリーベンチャーズの堤達生氏が同社の取締役に就任するという。

化粧品の「選定時」と「購入時」の課題を解決

noinは大きく2つの特徴を持つ、動画コマースアプリだ。1つは冒頭でも触れたように、気になる化粧品の最安値を整理したECとしての機能。そしてもう1つが新作情報やメイクのハウツーを紹介する動画メディアとしての機能だ。

ユーザーはAmazon、yahoo!ショッピング、楽天、マツモトキヨシといったショッピングサイトの最安値を横断で把握できるだけでなく、人気ブランドのセール情報を取得可能。動画を通じて商品の特徴や使い勝手も知ることもでき、気になる商品をお手頃価格で購入したい人を中心に支持を集めている。

もともとは分散型の動画メディア「noin.tv」を2017年2月にスタート。10月にコマースメディアとしてnoinをリリースした。ノイン代表取締役の渡部賢氏によると、化粧品の領域においては情報の発信者となるメーカーやショップと、受け手となる消費者の間に「情報の非対称性」が2つ存在するという。

「1点目は『化粧品選び』の課題。たとえばリップだけで約5000点の商品が販売されているように、商品がありすぎて、本当に自分に合ったものがわからないという女性も多い。そして2点目は『購入時』の課題。販売チャネルが多様化した結果、在庫と価格のブレが生じている。各ショップがすべての商品を揃えているわけではないし、知らないだけで実はもっとお得に買える場所があることもある」(渡部氏)

つまりノインでは動画コンテンツを通じて化粧品選びの、コマース機能を通じて購入時の情報の非対称性を埋めようとしているわけだ。

化粧品のEC化を推進、経験財からの脱却へ

もっとも化粧品領域の「動画メディア」については、すでに複数のプレイヤーが存在する。そこにはC Channelのような女性向けの総合メディアや、美容系のYouTuberも含まれるだろう。ノインでも動画制作のノウハウや実績はあるというが、軸になるのはコマースの部分。それによってユーザーの利用シーンも違ってくるというのが渡部氏の見解だ。

「(商品購入体験の初期段階に)情報収集の目的で使われるメディアは、購入までに距離がある。欲しい商品を見つけてもすぐに買うわけではなく、口コミアプリなどで参考になるレビューを探す消費者が多い。その後、店舗で試すなど検証をして、納得のいく価格を見つけた上で購入する。ノインの特徴は、確度があがった“購入寸前”のユーザーが利用するアプリだという点にある」(渡部氏)

たとえばamazonは商品詳細ページから購入までのコンバージョンが平均で3%と言われているが、noinから送客したユーザーの購入率は平均で10%になるそう。化粧品メーカーなどブランド側としては最終的に自社製品を買って欲しいため、購入意欲が高いユーザーが多いことは大きな価値になるという。

近年、化粧品のEC化率は伸びてきているものの、2016年では約5%ほどというデータもあるように決して高いとはいえない(『電子商取引に関する市場調査』における、化粧品、医薬品のEC化率)。一般論として化粧品はいわゆる「経験財」で、実際に試してみてから購入するものであると考えられてきたため、約5%という数値はそこまで驚くものではないだろう。

ただこの考え方については、若い世代を中心に少しずつ変わってきていると渡部氏は言う。

「『タグる』という言葉が広がってきているように、SNS上などで自分に近い人や共感する著名人が発信する情報を参考に商品を購入するというケースも増えてきている。noinでも動画のアプローチなど、コンテンツの見せ方や届け方を工夫することで、EC化率をもっと上げていきたい」(渡部氏)

実際noinを使っているユーザーの90%以上はF1層の女性。特に20代前後が多いため、従来とは違ったプロセスで化粧品の情報にアクセスし、購入に至る割合も高そうだ。

化粧品業界の新しい流通プラットフォーム目指す

写真左がノイン代表取締役の渡部賢氏、右はグリーベンチャーズの堤達生氏

ノインは2015年1月の創業。代表の渡部氏が個人事業として始め、2016年11月に法人化している。渡部氏はネイバージャパンでキャリアをスタートし、グリーでスマホ版のGREE NEWSの立ち上げなどに従事。その後プロデューサーとして複数のサービスに携わってきた。

「検索サイトもニュースも、受け手が欲しい情報と発信される情報のミスマッチをなくしていくことは同じ。さまざまなサービスに関わる中で情報の非対称性をなくしていくことが自分の得意分野であり、興味のある領域だとわかった。動画制作に携わる中で知見も貯まっていたので、これらを活かして何か新しい変化を起こせる市場がないか、それを探っていった結果noinに行き着いた」(渡部氏)

2017年2月から分散型メディアをスタートし、同年7月には500 Startups JapanとKLab Venture Partnersから4000万円を調達。今回の資金調達はそれに続くラウンドとなる。

ノインでは調達した資金をもとに人材採用の強化、広告投資の強化を進める方針。またAndroid版の開発に加え、化粧品メーカーや小売業者がnoin上で商品の販売を行えるように事業提携を進め、化粧品業界の新しい流通プラットフォームを目指していく。

「たとえばライブコマースや共同購入の仕組みなども含めて、商品を購入するまでのプロセスを楽しめる要素を増やしていく。(そこで収益化したいという意図ではなく)noinをたくさん開いてもらうきっかけを作り、アクションメディアとしてのバリューを拡大していきたい」(渡部氏)

生徒の苦手分野をAIが特定し、教材を自動生成――atama plusが初の増資で5億円調達

AIを利用した教育プログラムを提供するatama plusは3月26日、DCMベンチャーズを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は5億円だ。これが同社にとって初めての外部調達となる。

同社が提供する「atama+(アタマプラス)」は、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成するサービスだ。例えば、数学の正弦定理が苦手な生徒がいたとする。その場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて力ずくで覚えるという学習方法が一般的だろう。でも、atama plus代表取締役の稲田大輔氏は、その方法はとても非効率だと話す。

正弦定理を理解するにはまず、平方根や三角形の内角など、より基礎的な要素を理解する必要がある。それを理解しないまま正弦定理の問題をただひたすら解くというのは非効率だ。一方、atama plusでは生徒の苦手分野を特定するためのオンラインのテストをさまざまな角度から出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成するのだ。

atama plusが追求するのは“学習の効率性”だ。解いても意味のない問題を解かせるのではなく、AIが特定した苦手な部分だけを集中して解かせる。「Googleで活躍できるような人材を育てるには、“基礎学力”とプレゼン力などの“社会で生きる力”をつける必要がある。そして、その社会で生きる力をつけるには、基礎学力の習得にかかる時間を短縮するしか方法がないと考えている」(稲田氏)

atama plusは、提携する塾に対して同サービスのライセンスを付与するというかたちでビジネスを展開している(ライセンス料は非公開)。2017年4月の創業から約11ヶ月が経過した現在、Z会エデュース、学研塾ホールディングス、駿台教育センターなど学習塾大手がatama+を活用した授業を行っているという。現時点での対応教科は、中高数学、高校英文法、高校の物理化学だ。

同社によれば、2017年12月末に行なったatama+の冬期講習(約2週間)を受講した25人の生徒が、受講前に解いたセンター試験過去問の得点と、2018年1月のセンター試験本番の得点を調べたところ、その得点の伸び率の平均は50.4%だったという。2週間という短期間でこれだけの成果をあげているのは、正直驚きだった。

稲田氏は「塾の先生の役割は2つある。学習を教える“Teaching”と、目標までの到達をサポートする“Coaching”だ」と話す。TeachingはAIの得意領域で、人間の先生は勝てない。でも、Coachingは人間の先生こそが得意とする分野なのだという。atama plusでは、ある生徒が問題を解くのに手間取っていたり集中力が落ちていることを問題を解く時間などからAIが判断し、タブレット端末を持った先生にアラートする。そして、先生がその生徒を手助けにいく。人間がCoachingするのをAIがサポートするのだ。

人に何かを教えるという役割は、もう人間の役割ではなくなったのかもしれない。

猫の飼い主同士をマッチングするnyansが複数のエンジェル投資家から3000万円調達

猫の飼い主同士をマッチングする「nyatching(ニャッチング)」を提供するnyans(ニャンズ)は3月22日、複数のエンジェル投資家を引受先とする総額3000万円の第三者割当増資を実施した。

2月22日の猫の日にサービスローンチしたnyatchingは、猫の飼い主限定のマッチングサービスだ。近所に住む猫の飼い主を探し、家を留守にする際の猫の世話を他のnyatchingユーザーに依頼することなどを目的としている。

サービスローンチ時には本社のある福岡県在住のユーザーを限定に事前登録を開始していたnyatching。ローンチからちょうど1ヶ月の現在、事前登録には数百人のユーザーが登録済みだという。同社は今回の資金調達を期に、東京23区在住のユーザーからの登録を受け付ける。

地域限定で事前登録を実施する意図について、nyans代表取締役の谷口紗喜子氏は「サービス自体がご近所さんでのマッチングを重要視しているため。地域を絞らないと会員が分散されてしまい、ご近所さん同士でのマッチングが図りづらくなることを懸念しており、まずは地域を絞ってサービスを展開する」と話す。全国での展開の時期は未定だという。

毎週ランダムに花束が届く定期購買サービス「Bloomee LIFE」運営が1億円調達、ニッセンとの提携も

リビングテーブルや玄関の脇に、花がいつも飾られていたらホッとするものだ。ただし「欠かさずに生け替える」となると、やはりちょっと面倒だなと筆者などは思う。そんな「無精だけど手軽に部屋を明るくしたい」人にうってつけなのが、花のサブスクリプション(定期購買)サービス「Bloomee LIFE(ブルーミーライフ)」だ。

Bloomee LIFEを運営するCrunch Style(クランチスタイル)は3月19日、シリーズAで総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。第三者割当増資の引受先は、KLab Venture Partners朝日メディアラボベンチャーズPE&HRの各社が運営するファンド。Crunch Styleではこれまでにも、トレンダーズ創業者で現在はキッズライン代表の経沢香保子氏とPE&HRから資金を調達している。

2016年6月にローンチしたBloomee LIFEは、週1回か2週に1回、週末に季節の花が定額で届くサービス。毎週違う花屋さんから違う種類の花束がランダムに届けられる。プランは500円、800円、1200円の3パターン(送料は別)。小さなサイズの花束はポストに投函してくれる。

ローンチから1年半で、Bloomee LIFEの有料会員は6500人を突破。同社のInstagramからの口コミを中心に、利用が広がっているという。また、ユーザーからInstagramにハッシュタグ「#bloomeelife」付きで投稿される写真は8000枚を超えている。

今回の調達資金により、Crunch Styleでは、ユーザーが好きな花屋を選べる機能の追加、ユーザーの好きな色や花材などのデータ化により、サービスを強化する予定。将来的にはD2C(Direct to Customer)展開も目指すとしている。また同時に、病院やカフェなどの法人向けサービス展開も行っていくという。

Crunch Styleは同日、今年2月に実施された、日本政策投資銀行主催のアクセラレーションプログラム「京都オープンアクセラレーター」を通じて、ニッセンとの協業を4月から開始することも明らかにしている。

まずはニッセンからBloomee LIFEへの送客を検証実験として実施。その後、両社協力して、サービス開発やプレゼント需要の創出など、新規事業化に向けての取り組みを行っていく予定だ。

インバウンドメディア「MATCHA」がTHE GUILDらから資金調達、“送客メディア”の枠を超えた挑戦も

訪日外国人向けメディア「MATCHA」を運営するMATCHAは3月19日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資と日本政策金融公庫からの融資により資金調達を実施したことを明らかにした。

具体的な金額は非公開だが、関係者の話では約1億円になるという。今回MATCHAに出資したのは、日本経済新聞の電子版の監修をはじめ様々なサービスの開発・デザインを手がけてきたクリエイターチームのTHE GUILD、コンサルティング業など複数事業を展開するバリュークリエイトの2社。そして片山晃氏を含む3名の個人投資家だ。

MATCHAにとっては今回が4回目の資金調達となる。前回は2017年7月に星野リゾート(資本業務提携)、個人投資家の千葉功太郎氏から。同年9月にはスノーピークとの資本提携に加えて、個人投資家の藤野英人氏、中竹竜二氏、志立正嗣氏を引受先とした第三者割当増資を実施し、トータルで約1億円を集めた。

月間で420万PV、自治体や企業とのネットワークも拡大

日本国内の観光情報を全10言語で発信しているMATCHA。現在の月間PVは420万ほどで、毎月200万人近くのユーザーが集まるサイトになっている。核となる広告に加え、宿泊施設やアクティビティ予約のアフィリエイトの強化などマネタイズの多角化も進めるほか、2017年11月にはiOSアプリもリリースした。

MATCHA代表取締役社長の青木優氏によると、スノーピークや星野リゾートとの提携効果もあって問い合わせ数も増加傾向にあるとのこと。特にここ半年ほどで「企業や省庁とのダイレクトなネットワークが広がってきた」(青木氏)という。

この繋がりも活用して同社では「MATCHAに訪れたユーザーを観光地のサイトへ送客する」ところからもう一歩踏み込んだ、新しい取り組みも模索している。

「たとえばある町はメキシコと縁があって国内での認知度も高いが、実際にメキシコから訪れる人は多くない。そこでMATCHAの特集と連動して『メキシコ人観光客限定で街の職員が無料ガイドを提供する』といったプランを提案している。(この仕組みがうまく回れば)来訪率の改善も期待できる上、実際に訪れた際の満足度向上にもつながる」(青木氏)

Webからの送客だけでなく、実際にコンバージョンする(来訪する)までの流れを自治体と一緒に設計することは、MATCHAにとっても新たな収益源となりうるだろう。

ただ直近では、組織体制を強化しシステムの開発とコンテンツの拡充に力を入れる方針だ。国内の主要なエリアについてはある程度カバーできてきたとのことで、これからは地方の記事も充実させて「面をもっと増やしていく」(青木氏)という。

星野リゾート、スノーピークに続き今回はTHE GUILDが出資

MATCHA代表取締役社長の青木優氏(写真右)、THE GUILD代表取締役の深津貴之氏(左)

冒頭でも触れたとおり、当ラウンドには新たな株主としてTHE GUILDが参加している。TechCrunchでは今回THE GUILD代表取締役の深津貴之氏にも話を聞くことができたので、出資の背景や今後の取り組みについても紹介したい。

深津氏はTHE GUILDのメンバーとして複数アプリのUI/UXデザインに携わっているほか、「cakes」や「note」を展開するピースオブケイクのCXO(Chief eXperience Officer)も担っている人物だ。もともとインバウンド業界に興味や課題意識があり、MATCHAへの出資に至ったという。

「少子高齢化が進み国内産業が衰退していくことが考えられる中で、どうやって外貨を獲得していくか。そのためにはある程度、観光立国化する必要があり、観光領域におけるユーザー体験の設計に関心があった」(深津氏)

インバウンドメディアはMATCHA以外にもあるが、大きな決め手になったのはMATCHAのチーム体制なのだそう。同メディアには約60名のライターが所属していて、約半数を外国籍のライターが占める。

「もの作りやデザインにおいて、『自分ごと』として作れるかが1番大事だと考えている。インバウンドメディアに関しては、日本人だけでやると日本人だけの自分ごとになり、外国人観光客を置いてけぼりにしてしまう恐れもある。THE GUILDとしてプロダクトを磨くサポートはできるが、そもそも内部にいい土壌がなければ意味がない。(MATCHAは)プロダクトもそうだが、現時点のチームのあり方に魅力を感じた」(深津氏)

深津氏に聞くまで知らなかったのだけれど、実はTHE GUILDとして、そして深津氏個人としても少しずつスタートアップへの出資を始めているそう。もともと同社では単発の「打ち上げ花火」的な関わり方ではなく、中長期に渡り「パートナー」として顧客と付き合ってスタイルを大切にしてきた。そして深津氏いわく「パートナーとして1番究極系のコミットの形が株主」なのだという。

「そもそも間違ったミッションが降りてきたり、本来なら他に優先すべきことがあったりした場合、受託の関係性ではそれを伝えるのが難しいこともある。(良いプロダクトを作るための本質的な議論を)対等にするためのチケットが、株主だと考えている」(深津氏)

“送客メディア”の枠を超え、観光体験を改善する

今回THE GUILDが出資したことで、MATCHAは今後どのようになっていくのだろうか。深津氏によると直近ではTHE GUILDでプロダクトの細かい改善をするなどはなく、「経営チームのアドバイザリーとして『視点を提供する』というコミットの仕方になる」(深津氏)という。

具体的には大局的な観点からMATCHAのポジションを一緒に設計したり、提供する観光体験のあり方についてアイデア出しや立案のサポートする。長期的な構想も含めると、2つの側面から「観光体験の改善」を一緒に目指していくことを見据えているようだ。

「1つは(Webメディアとしての)MATCHAの体験。ユーザーがMATCHAにきて、観光コンテンツを見つけて読む、この一連の体験を良くすることをサポートする。もう1つはMATCHAが提案する日本の観光体験そのもの。自治体や企業に提案する際に、MATCHAが考える良い観光体験とはどんなものか、そしてMATCHAと組むことでどんな価値を提供できるのか。『アプリの外側』の体験設計についても支えていければと思っている」(深津氏)

後者の「観光体験そのもの」については、これから方向性が定まっていく部分であり、現時点で何か具体的な構想がいくつもあるわけではないという。ただ記事中で紹介した、自治体と組んだメキシコ人観光客向けのプランなどはその一例と言えるだろう。

「送客するだけで終わるのはもったいない」という考え方は、青木氏と深津氏に共通するもの。日本の観光地にはポテンシャルを十分に発揮できておらず、もっとよくなる余地を残している場所もある。

「そのような自治体と組んで具体的な観光体験を提案できればMATCHAのバリューもあがる」と2人が話すように、これからのMATCHAはアプリの内側からだけではなく、外側の部分も含めて日本の観光体験そのものを変えていく——そんなフェーズに入っていくようだ。

ホームセキュリティのStroboが1.5億の資金調達と新サービスを発表、“ウザくても通知がきれない”がカギ

低価格で導入できる後付型ホームセキュリティシステム「leafee(リーフィー)」を提供するStroboは3月15日、CROOZ VENTURESSkyland Ventures日本政策金融公庫、ほか複数名の個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達総額は1億5000万円だ。また、同社は賃貸管理会社向けの新サービス「Roomio(ルーミオ)」も併せて発表している。

Stroboのメンバー。写真中央が代表取締役の業天亮人氏

leafeeは、賃貸物件にも後付で導入できるホームセキュリティデバイスだ。42mm×42mmの小型デバイスをドアや窓などに貼り付けるだけで、スマホから扉の開閉状態を調べることができる。本体デバイスは専用のセンサーとセットになっていて、本体とセンサーが離れると扉が「空いている」と認識する仕組みだ。本体価格2580円という手頃な価格や導入の容易さがleafeeの特徴だ。現時点での販売台数は約1万台だという。

そして、Stroboが今回新たに発表したのが賃貸管理会社向けのスマートホームアプリ開発・運営プラットフォームのRoomioだ。管理会社は同サービスを利用して、入居者に提供する専用アプリを開発することができる。そのアプリにはleafeeのスマートホームセキュリティ機能が内蔵されているだけでなく、入居者が管理会社にチャットで問い合わせできる機能、入居者への情報提供機能などを備えることが可能だ。

特徴的なのは、Roomioで作るアプリは管理会社のオリジナルブランドとして提供ができる点だ。ホワイトレーベルアプリとでも呼ぶべきだろうか。アプリの大枠はすでに用意されているので、管理会社はアプリ名、アイコン素材、ナビゲーションバーに使う素材などを用意するだけで簡単にアプリを開発可能だ。

ホワイトレーベルというモデルを採用した理由について、Strobo代表取締役の業天亮人氏は「特に地方の管理会社は、賃貸管理業とは別にジムなどを運営しているところが多い。そういった企業へのヒアリングから、自社のブランディングのために独自プランドでアプリを提供したいというニーズがあることが分かった」と話す。

Roomioのような入居者向けアプリと、leafeeのようなホームセキュリティアプリの相性はとても良い。たしかに、特に単身者だと日中電話するのは難しいのでチャットで問い合わせできるのは便利だし、紙の回覧板が不要になる機能は便利だ。でも、賃貸に住んでいる読者なら分かると思うけれど、管理会社に問い合わせるのは1年に1回あるかどうかのこと。必要になる頻度を考えると、僕はわざわざそのためにアプリをダウンロードしようとは思わない。僕のように、プッシュ通知がはっきり言って“うざったい”のでオフにしてしまうというユーザーも多いだろう。

だから、管理会社が単体で入居者向けアプリを提供しようとしても、その普及は難しいのではないかと僕は思う。

でも、そのアプリにleafeeのホームセキュリティ機能が搭載されているとしたら話は別だ。leafeeのユーザーはドアの開閉状態をリアルタイムで知りたいという人たちなので、基本的にアプリからの通知を遮断することはない。業天氏によれば、「ほぼ100%に近い」ユーザーがleafeeの通知を許可しているという。普通であればわずらわしいと感じてしまう通知も、セキュリティのためだから切れないということなのだろう。そのような特徴があるので、管理会社はアプリを通した情報提供がしやすくなる。

また、チャット問い合わせ機能自体は便利なものだから、管理会社に連絡する頻度がたとえ低くても、その機能がホームセキュリティアプリに”おまけ”として付いているならユーザーは嬉しい。一方、チャット問い合わせ機能は管理会社にとっても大きなメリットを与える。問い合わせる側にとっては1年に1回のことかもしれないけど、問い合わせを受ける側は1日に何度も対応しなければいけない業務なのだ。

紙の回覧板が不要で、チャットで問い合わせに対応できれば管理会社の業務負担は大幅に短縮できる。もちろん、そのためにはユーザーがそのアプリを本当の意味で利用してくれることが必要だけれど、Stroboと手を組めばその可能性も高くなる。それを考えれば、管理会社にとってRoomioの導入は非常に魅力的に感じるのではないのだろうか。

Roomioの導入料金は管理戸数に応じて変動する。具体的な料金は非公開だが、1戸あたり数百円という価格帯で「個人がleafeeを導入するより安い価格」(業天氏)で提供する。業天氏によれば、現時点ですでに約10社の管理会社への導入が決定しているという。

Stroboは2015年2月の創業。同社はこれまでに複数回の資金調達を実施しており、今回のラウンドを含む累計調達金額は約2億5000万円となる。

日商120万円超えのアパレルEC、女性向け動画メディアの「PATRA」が1.3億円を調達

InstagramとYouTubeを中心に展開する女性向けの動画メディア「PATRA」とアパレルブランド「mellowneon by PATRA」を運営するChotchy(3月下旬に社名をPATRAに変更予定)。同社は3月15日、グローバル・ブレイン、SMBCベンチャーキャピタル、個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、総額約1.3億円を調達したことを明らかにした。

PATRAではメイクやファッションに関する動画コンテンツをアプリを含む複数のプラットフォームで展開。Instagramアカウントのフォロワーは8万人、YouTubeチャンネルの登録者数は5万人を超えていて、1コンテンツあたりのリーチユーザー数は約15万人に上る。

1月にはオンライン販売に特化するセレクトアパレルブランドのmellowneon by PATRAも開始。インフルエンサーとのコラボ商品なども展開、3月には日商120万円を突破したという。

同社ではPATRAで培ったマーケティングノウハウを活用し、複数の自社ブランドを中心としたコマース事業を展開していく方針。「今後は動画やライブ配信を活用した既存のコマースとは違う体験を提供していくことで新しいEコマースの可能性を広げてまいります」としている。

プロ写真家に出張撮影を頼めるマッチングサービス「AMI」運営がメルカリなどから資金調達

国内外のプロフォトグラファーが登録するデータベース&撮影予約サービス「AMI」などを運営する、撮影サービスのスタートアップ、aMiは3月15日、メルカリマネックスベンチャーズ、その他エンジェル投資家を引受先とした第三者割当増資等により、シードラウンドでの資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は総額数千万円規模。同時に会社名をFamarryからaMiに変更したことも発表している。

aMiの創業者・藤井悠夏氏はリクルート出身。ゼクシィで営業に携わった後、退職してベトナムのホーチミンとシンガポールでそれぞれ2年弱、ウェディング事業の立ち上げに関わっていた。両都市で盛んだったのが「フォトウェディング」。海外で前撮りするカップルも多く、断崖の上などの絶景やパリのルーブル美術館が夜ライトアップされたタイミングで撮影するといったケースもあるそうだ。

aMi 代表取締役の藤井悠夏氏

そのフォトウェディングの舞台として日本の人気も高まる中、海外のウェディング撮影希望者と日本のフォトグラファーをマッチングする場や集客ツールがない、と藤井氏が気づいたことが同社立ち上げのきっかけだった。開発が始まったのは2014年末のこと。日本に帰国した藤井氏はエンジェル投資家らから投資を受け、まずはフォトグラファーを登録するデータベースを準備し、2015年初夏にはウェディング撮影予約サービス「Famarry(ファマリー)」ベータ版を、同年9月には正式版をリリースした。

その後、フォトグラファー向け管理ツールのリリース、企業向け撮影サービス提供開始を経て、2017年2月にプロフォトグラファー検索と撮影予約ができるサービス、AMIとしてローンチ。同年7月には家族写真の撮影予約サービス「emily(エミリィ)」もローンチしている。

現在は、AMIを軸にフォトグラファーの空き時間の管理やマッチング支援を行い、Famarryとemilyとの連携によって、ニーズが高く件数の多いウェディング写真や家族写真の撮影の仕事を紹介。撮影を希望するユーザーには、従来のスタジオ撮影などよりはリーズナブルな価格で、プロによる撮影サービスを提供している。

今回の調達資金の使途について、藤井氏は「撮影依頼件数をさらに引き上げることを目指し、ユーザー向けのマーケティングを強化する」と話している。「現在、フォトグラファーの登録数は国内外合わせて700名を超えた。撮影のキャパシティーは充実してきたし、システム構築もある程度行ってきたので、これからはフォトグラファーにより多くの仕事を紹介できる体制を用意したい」(藤井氏)

また、フォトグラファーにとってよりスムーズなマッチングができる環境も整えたい、とも藤井氏は述べた。「請求・決済などの事務作業や、撮影データの納品など、フォトグラファーにとって面倒な手間を軽減するための機能強化を考えている。フォトグラファーが多く登録してくれることで、撮影サービスの質も上がり、結果的にはユーザーも増えて満足度が上がると考えている」(藤井氏)。今後は評価システムを導入し、より評判のよいフォトグラファーがきちんと評価、利用されるような仕組み作りも検討している。

今回のラウンドでリード投資家となるメルカリについては、「スキルを広くマッチングするメルカリアッテを提供する彼らにとって、撮影だけに特化してマーケットを開拓し、そこに最適化したサービスを提供する我々のやっていることを評価してもらえたと考えている」と藤井氏は話す。

また「aMiのマッチングサービスはフォトグラファー視点。フォトグラファーにとって、登録していれば仕事が増えるという状態を作りたい。(ユーザー規模の大きな)メルカリと提携することで、仕事が増えれば」と藤井氏は、提携が実現した場合のシナジーにも期待を込める。

藤井氏は「ユーザーにとって良い撮影体験は、フォトグラファーの質で決まる」と話す。同社によれば国内の撮影市場は約1兆円。そのうちのほとんどはBtoBのビジネスである。収益を上げているのは大手フォトスタジオやエージェント、結婚式場などの既存プレイヤー。例えば結婚式の撮影費用で20〜30万円が式場から請求されても、フォトグラファーの手元にはその1割程度が支払われるだけ、というケースも多く、「フォトグラファーにとってはもちろん、ユーザーにとってもアンハッピー」と藤井氏は言う。

「インターネットの力で双方を直接マッチングできれば、フォトグラファーは収入が上がり、ユーザーは満足のいく撮影体験を得ることができる。現状では、子どもの七五三など、家族の節目の写真は大手のフォトスタジオでの撮影が多いが、ネットなら出張撮影の依頼も安くすることが可能。七五三ならお参りのところから撮影してくれるなど、自然な表情の写真も撮れる。私たちは同じ価格で良い撮影体験を提供できていると自負している」(藤井氏)

Instagramの影響もあり、日本でもユーザーの写真に対するこだわりは上がってきている、と藤井氏は言う。「ただ、フォトグラファーに撮影してもらう文化、ということではまだ日本は遅れている。一方、撮影文化が進んだ欧米や東南アジアでも、まだマッチングサービスが台頭している、というほどではない」(藤井氏)

aMiが提供する各サービスには、海外ユーザーもいる。日本人が海外で撮影したい、というアウトバウンドでも、海外からのユーザーが日本で撮影したい、というインバウンドでもマッチングが可能だ。特にアジア圏に関しては、はじめから英語でもサイトを用意していたので、「海外進出というよりは最初から利用があった」と藤井氏は話す。フォトグラファーの派遣を行うサービス自体は、GMOグループが提供する「出張撮影サービス by GMO」やPIXTAの「fotowa」などもあるが、国内外での撮影に対応しているのはaMiの強みと言えるだろう。

「東南アジアについては、タイからの問い合わせが増えている。富良野のラベンダー畑や渋谷のスクランブル交差点など、日本人にもよく知られたスポットだけでなく、山口県や青森県など日本人は知らない土地での撮影についても問い合わせがある」(藤井氏)

一方、日本人の方もInstagramで話題の海外のスポットで撮影したい、という傾向はあるそうだ。「ニューヨークなどからトレンドが始まった、新生児をアーティスティックに撮影する“NEW BORN”フォトなども日本に入ってきているし、今後さまざまなシチュエーションでフォトグラファーに撮影してもらうことは、さらに増えると思う」(藤井氏)

ウェディング、家族といったC向けだけでなく、企業の利用についても藤井氏はニーズを感じている。「UBER EATS、Airbnbなどのサービスの広がりで、レストランの料理や貸し出す部屋の写真などをより良く撮りたい、ということも増えている。Wantedlyなどの採用サイトやメディア取材で掲載する企業や人の写真も同様だ。そうしたネット上のサービスを提供する企業との連携も進めたい」と藤井氏は語っていた。

採用活動する前に候補者を囲い込む、タレントプール型採用ツールの「EVERYHUB」

タレントプール型の人材採用サービス「EVERYHUB(エブリハブ)」を提供するEveryhubは3月14日、プレ・シードラウンドとしてF Venturesを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は500万円だ。これに併せて、同社はEVERYHUBの正式版を本日より提供開始する。

写真左より、代表取締役CEOの小林祐太郎氏、CTOのTyler Shukert氏

数多くの人材採用系のサービスがあるなかで、EVERYHUBはちょっと変わった採用のあり方を提案しようとしている。自社に興味を持つ人々をあらかじめ囲い込み、その時点で採用活動を行っていようがなかろうが、それらの人材をタレントプールとして管理するという方法だ。

このようにタレントプールを構築し、その中の人材と継続的にコミュニケーションをとり続けることで、いざ採用活動を行うとなったときに効率的に候補者を絞りこむことができるというわけだ。

EVERYHUBでは、企業のタレントプールに紐付いたURLとQRコードを発行することができる。その企業に少しでも興味がある候補者は、これをスマホのカメラで読み取り、氏名、メールアドレス、パスワードの3点を入力することでタレントプールに参加できる。例えば、イベントで設置するバナーや名刺にこのQRコードをプリントしておけば、オフラインで出会った人々もタレントプールに呼び込むことが可能になる。

ちなみに、EVRYHUBはWebアプリとして提供しているので、QRコードを読み込むとアプリをダウンロードしろと言ってくることもない(僕はそこで離脱してしまうたちだ)。

企業はタレントプールに参加した候補者に対し、チャットやタイムライン型のフィードコンテンツを通してコミュニケーションを図ることができる。費用をかけて人材募集をかける前に、まずはタレントプール内の人材に対してフィード上で募集をかけるといったことも可能だろう。

タレントプールに参加した候補者は、EVERYHUBのサービスページにアクセスして自分のプロフィール情報をより充実させることも可能だ。タレントプールへ参加する時に入力した3つ情報に加えて、学歴やスキルなどを追加で入力することができる。すると、履歴書のフォーマットにそったプロフィールが自動で作成される。

Everyhub代表取締役の小林祐太郎氏によれば、このプロフィール機能は「社内会議で利用するために履歴書のフォーマットで候補者のプロフィールが見たい」という声を受けて導入したのだという。一方の候補者も、この履歴書をダウンロード(もしくは印刷)して利用することが可能だ。

EVERYHUBはタレントプールを作成する企業側に対し月額3980円〜の料金で提供する。それに加えて、タレントプール内の人数に応じて従量課金が発生する。

タレントプールという仕組みを取り入れ、広い意味での候補者たちと継続的なコミュニケーションが取れるというメリットを打ち出すEVERYHUB。しかし、現時点で同サービスが提供する機能だけを考えれば、ビジネスSNSの「Wantedly」とそう変わらないように見える。Wantedlyでも企業を”フォロー”することで最新情報を受け取ることができるし、企業側もフォローした候補者にアプローチできる。

QRコードを活用してオフラインでの出会いも採用に生かせる、という点のように、EVERYHUBならではのタレントプールという仕組みを生かし、既存サービスとは違うメリットをどれだけ訴求できるかが今後の成功の鍵となるだろう。

サービス業の人材育成を“動画”で支援、クラウドOJTサービス「ClipLine」が6.1億円を調達

動画を活用したサービス業の技術習得支援プラットフォーム「ClipLine」を提供するClipLine。同社は3月13日、産業革新機構とアニヴェルセルHOLDINGSを引受先とする第三者割当増資により総額6.1億円を調達したことを明らかにした。

ClipLineは動画を用いることで、離れた場所からでもクラウド上でOJT(On-The-Job Training)を実施できるサービスだ。主な顧客は外食や小売、介護・医療など多店舗展開しているサービス産業。そのような企業が抱える「指示が正確に伝わらず実行されない」「店舗間のサービス品質にバラつきが生まれる」といった課題を双方向の動画(クリップ)を通じて解決する。

たとえば本部の教育担当者やマネージャーがお手本となる動画を作成し、ClipLine上で共有する。各店舗で働くスタッフはその教材を参考に自分で実践した様子を撮影。再度ClipLineに投稿することで、担当者からのフィードバックを受け取るという流れだ。

2017年5月には「映像音声クリップを利用した自律的学習システム」で特許を取得している。

ClipLineは2014年10月のリリース。これまで対面指導が当たり前だったOJTをクラウド上で実現することで、多店舗展開する企業の人材育成やコミュニケーションをサポート。2015年に1.3億円を調達した際にはTechCrunch Japanでも一度紹介したが、これまで数回の資金調達をしながら事業を拡大してきた。

今回調達した資金をもとに、同社では開発体制やセールス・マーケティング体制を強化。コア機能の拡充やサービス拡大を図るほか、動画解析やAIなど新技術の研究も進めていく方針だ。

また業界としては介護・医療領域への市場開拓を加速。合わせて研究開発組織 「ClipLine Service Management Lab」を設立し、サービス産業全体の労働生産性向上と人材不足の解消を目指すという。

研究者の挑戦をサポートへ、実験機器のシェアサービス「Co-LABO MAKER」がβ版リリース

新たな技術を生み出すためには欠かせない「研究」には、高額な研究設備や専門知識がつきものだ。ただ予算の問題などがネックとなり、本当にやりたい研究に時間を費やせない研究者も少なくない。

その一方で、大学や企業には有効活用されていない機器やリソースが眠っているのもまた事実。そんな問題の解決を目指して開発されたのが、研究リソースのシェアサービス「Co-LABO MAKER(コラボメーカー)」だ。

提供元のCo-LABO MAKERは3月13日、同サービスのβ版をリリース。合わせてプライマルキャピタルと日本政策金融公庫から総額3000万円を調達したことを明らかにした。

Co-LABO MAKERは利用したい実験機器や技術の検索、マッチング、実験、決済という一連のプロセスを提供することを目的としたサービス。β版では実験機器のシェアリングに絞り、ライフサイエンス分野から材料工学分野まで幅広い領域の実験機器を貸し借りできるようにする。

専門知識がない分野など、懸念点がある場合はCo-LABO MAKERコーディネーターに相談することも可能。研究者は通常よりも安価に実験機器を利用することができ、提供者側も稼働していない実験機器の有効活用や外部との交流、共同研究など研究ネットワークの拡大も見込める。

Co-LABO MAKERで代表取締役CEOを務める古谷優貴氏は大学時代に2つの研究室を経験。そこから総合化学メーカーで半導体関連の研究開発をした後、大学院と大学発ベンチャーに所属するなど長く研究の現場に身を置いてきた人物だ。

自身が多くの機器や技術、研究者がそのポテンシャルを持て余している現場、一方で「実験機器を購入する資金がなく、希望する実験ができない」研究者がいる現状を見て、Co-LABO MAKERを立ち上げたという。

同社では今回の資金調達により、本格的なサービス展開に向けて探索機能やコミュニケーション機能を中心にサービス強化に取り組む方針。まずはライフサイエンス分野のラインナップ拡充に注力するという。

将来的には実験機器のシェアリングサービスを起点に、他の研究リソースのシェアリングや実験を一から企画するトータルコーディネートサービス、遊休設備の流通など、研究開発と事業化に貢献できるサービスを展開していく計画だという。

保険セールス向けSaaSの「hokan」が6000万円調達、保険証券を見える化

保険セールス向けのSaaSサービス「hokan」を開発するhokanは3月13日、500 Startups japanBEENEXTMIDベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は6000万円だ。

「保険証券ってどこにある?」と聞かれたとき、すぐに答えられる人はどれくらいいるのだろうか。保険証券とは、保険契約の内容や給付金の支払い条件などが明記された契約書だ。ただ、これは大切な書類ではあるが頻繁にチェックする類いのものではないので、どこに保管してあるか分からないという人も多いだろう。

hokanのメイン機能は、この保険証券の見える化だ。保険営業員が顧客の保険証券の画像をアップロードすることで、書面をオンラインで確認できるようになるほか、保証内容や解約払戻金の額をグラフで表示する。

保険証券を見える化し、グラフやデータをもとにした営業活動を行えるようにするのがhokanの役割だ。hokanによれば、同社が200人を対象に行ったオンラインアンケート調査で、保険を契約する人の90%は自分の保証内容を正確に把握できておらず、全体の40%は保険証券がどこに保管されているか把握していないことが分かったという。

また、hokan代表取締役の小坂直之氏は、「オンライン化することで、(保険証券を)すべてデータとして扱えるようになる。営業員に対して、同じ補償内容でもより安くなる保険をレコメンドしたり、契約日から1年などの節目で訪問すべき顧客をレコメンドするなどを行う」と今後の目標について語る。将来的には、hokanにCRMなどの営業支援機能を追加することで営業員向けSaaSサービスとしての利便性を強化していくようだ。

また、hokanは年内にも一般消費者向けに「家計簿アプリの保険版」をリリースする予定だ。これは、ユーザー自身が保険の補償内容や、解約払戻金の金額などをスマホで確認するためのアプリだという。ただ、正直このアプリのマネタイズは難しいのかもしれない。

給料は毎月支払われるし、それに合わせて貯金額は増えていく。だから、例えば家計簿アプリの「マネーフォワード」を頻繁に開くというユーザー行動は理解できる。僕も自己満足のために3日に1度くらいはアプリを開いている。でも、その一方で、保険の保障内容や解約払戻金の金額を確認したいと思うのは1年に1度あるかないか。それだけC向けの保険管理アプリを普及させるのは苦労しそうだ。

それに対し小坂氏は、「C向けの保険管理アプリとしてのマネタイズは考えていない」としたうえで、将来的にはこのC向けアプリに保険募集人とメッセージのやり取りができる機能を追加し、保険内容をいつでも確認できるだけでなく、保険に関する相談ができる窓口として同アプリを位置づけていくと話す。

hokanは4月1日に営業員向けサービスのベータ版を公開し、その後7月1日に正式版をリリースする予定だ。価格はまだ未定だが、月額5000円に加えて、保険証券のアップロード数に応じた従量課金方式を採用する予定だという。

代表取締役の小坂氏は元々保険の営業マンだった。その後、複数の保険会社の商品を取り扱う保険代理店を開業した。その経験から、「未だに保険は保険営業員から加入する人も多い。そのため、営業員が活用できるインフラを作っていくことこそが、日本における金融流通の革新に寄与できる」と考え、2017年にhokanを創業した。

写真前列の左より、hokan COOの尾花政篤氏、CEOの小坂直之氏、CTOの横塚出氏。ちなみに、hokanは尾花氏と小坂氏の両者がともに”代表取締役社長”と名乗るちょっと変わった体制だ。

ソーシャルレンディング投資家の約7割が毎月使うインフラ「クラウドポート」が3.1億円を調達

「世の中的には仮想通貨の盛り上がりがすごく、その影に追いやられてしまった部分はあるが、ソーシャルレンディング市場も着実に伸びてきている」——そう話すのはクラウドポート代表取締役の藤田雄一郎氏だ。

クラウドポートでは年々拡大するソーシャルレンディング業界に特化した比較サイト「クラウドポート」を2017年2月から提供。そして本日B Dash VenturesAGキャピタルみずほキャピタルなどを引受先とした第三者割当増資により、総額3.1億円を調達したことを明らかにした。

2017年の市場規模は1316億円、前年から約2.5倍に拡大

冒頭の藤田氏の話にもあるように、最近は毎日のようにビットコインを中心とする仮想通貨の話題がメディアで取り上げられるほど、ここ1年ほどでその知名度は一気に上昇した。ただその裏側では着実に新たな資産運用の仕組みが広がってきている。

たとえば資産運用を自動化する「ロボアドザイザー」。直近では2018年1月にテーマ型投資のFOLIOがLINEやゴールドマン・サックスから70億円を調達。2月にはウェルスナビが未来創生ファンドらを引受先とした第三者割当増資と融資を合わせて45億円を集めた。「THEO」を提供するお金のデザインも累計で数十億円を調達していて、Fintech界隈でも特に大型の調達が続く市場となっている。

そして同じく拡大傾向にあるのが、お金を必要とする人や企業と、投資をしたい一般投資家をマッチングする「ソーシャルレンディング」だ。

かつてはデフォルト(貸し倒れ)率の高さが問題視されることもあったが、近年はそのような状況も改善され、サービス提供者の数も20社を突破。藤田氏によると2017年の市場規模は前年の533億円から約2.5倍拡大し、1316億円まで膨らんでいるという。

ソーシャルレンディングは「銀行が融資しづらい」領域へ新しい資金を投じる仕組みとして期待を集めていて、近年は古民家再生や再生可能エネルギー発電施設の開発などの目的で利用が増加。不動産情報サイト「LIFULL HOME’S」を提供するLIFULLなど参入を表明している大手企業も複数あり、今後も市場の拡大が見込まれている。

分散投資の支援に向けて3つの軸でサービスを提供

そんなソーシャルレンディング事業者の動向をわかりやすく整理したサイトとして始まったのがクラウドポートだ。事業者の横断比較サイト(現時点で23社掲載)と専門ニュースサイト「クラウドポートニュース」に加え、2017年10月にポートフォリオ管理ツール「マイ投資レポート」の提供を開始。

利用者数も増加傾向にあり、現在国内でアクティブなソーシャルレンディング投資家のうち約7割が毎月利用するサービスになっているという(各事業者へのヒアリングや同社でのユーザーアンケート、および公開データを元に同社で推定したもの)。

「ソーシャルレンディングは複数の事業者やファンドへ分散投資をしている人が多く、事業者だけで20社以上もあるとなると比較検討が大変。そのため玄人の人を中心に比較サイトや資産管理ツールを定期的に活用いただいている。一方でクラウドポートニュースを中心に、初心者の方にも使ってもらえることが増えてきた。(リリースから約1年で)少しずつソーシャルレンディングのインフラ的な存在になれているという実感はある」(藤田氏)

クラウドポート利用者の平均保有口座数は6つ。現在投資中のファンド数についても約40%のユーザーは11ファンド以上だというから、確かに投資状況を一覧できるツールや比較サイトのニーズは高そうだ。

クラウドポートでは今回調達した資金をもとに組織基盤を強化。サービスの改善を図るとともに、新サービスのリリースも予定しているという。

「ソーシャルレンディングはミドルリスクミドルリターン。株式やFXほど難しくなく安定的に運用できるのが特徴だ。もともと忙しいサラリーマンや主婦でも始められるような、新たな資産運用の選択肢が必要だと思い(クラウドポートを)始めた。とはいえ絶対に損失が発生しないとは言えないし、ファンドや事業者を分散することも大切。そのための負担や手間を減らし『投資家が分散投資をしやすくするための環境』を整備していきたい」(藤田氏)

写真左からクラウドポート代表取締役の藤田雄一郎氏、共同創業者の柴田陽氏。藤田氏はソーシャルレンディングサービス「クラウドバンク」の立ち上げに携わった人物。一方の柴田氏は「スマポ」など複数サービスの立ち上げ、売却経験のある連続起業家だ。

 

「DELISH KITCHEN」提供のエブリーがKDDIと資本業務提携、30億円調達でライブコマース提供へ

レシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」などを提供するエブリーは3月12日、KDDIと資本業務提携を締結したことを発表。同日、第三者割当増資により発行する株式をKDDIが約30億円で取得し、今後エブリーがKDDIの持分法適用関連会社となる予定だ。両社は2018年7月を目途に共同でライブコマース事業を提供していく。

エブリーは2015年9月の創業。これまでに、2016年6月に約6.6億円、2017年3月に約27億円、2017年12月に約20.6億円を調達している。

エブリーではDELISH KITCHENに加え、女性向けライフスタイル動画メディア「KALOS」、ママ&ファミリー動画メディア「MAMADAYS」、ニュース動画メディア「TIMELINE」の4サービスを、FacebookやInstagram、YouTubeなどのプラットフォームを通じた分散型メディアとして提供。月間延べ4400万人以上に配信しているという。

今回の資本業務提携により、エブリーとKDDIは、ライブ配信動画の出演者にリアルタイムで質問やコメントをしながら買い物ができる、ライブコマース事業を提供していく。ライブコマースはKDDIグループが運営するショッピングモール「Wowma!」などにも展開する予定だ。

また、エブリーが持つ動画コンテンツとKDDIグループが持つユーザー基盤をはじめとしたアセットとの連携により、EC事業の企画・開発を進めるなど、国内EC事業の強化に両社で取り組んでいくという。

受付業務から負担の大きい“内線電話”をなくすiPadシステム「RECEPTIONIST」、提供元が1.2億円を調達

iPad無人受付システム「RECEPTIONIST(レセプショニスト)」を提供するディライテッドは3月7日、大和企業投資ツネイシキャピタルパートナーズなどを引受先とする第三者割当増資により、総額約1.2億円を調達したことを明らかにした。

同社では2017年5月にも大和企業投資やツネイシキャピタルパートナーズ、個人投資家から数千万円規模と見られる資金調達を実施している。

RECEPTIONISTは来客受付でよくある「内線電話」を、iPadシステムとビジネスチャットによって置き換えるサービスだ。これにより従来かかっていた負担を削減するとともに、来客情報の可視化や蓄積もサポートする。

訪問客は企業のエントランスにてiPadアプリ上で訪問先を選択。すると担当者のビジネスチャットツール(Slackやチャットワークなど)に直接通知がいく仕組みになっている。担当者が席を外していても来客に気づけるため対応がスピーディーになるだけでなく、電話応対をする社員の負担もなくなることが特徴だ。

サービスの正式リリースは2017年の1月。トレタCTOの増井雄一郎氏らがTechCrunch Tokyo 2015のハッカソンで開発したiPad受付アプリ「→Kitayon(キタヨン)」を譲り受け、追加開発を経て公開したものであることは以前紹介した通りだ。

リリースから約1年が経過した現在では社員数が500名を超える企業や、インターネット業界以外の企業の利用も進んでいて、総受付回数は20万回を突破している(同社の過去の発表によると2018年1月時点では、渋谷区の企業だけで113社が導入しているようだ)。

ディライテッドでは今回の調達に伴い、エンジニアや営業、カスタマーサクセス部門の人員体制を強化するほか、新機能開発・他社サービス連携にも力を入れていくという。

なお同社はTechCrunch Tokyo 2017スタートアップバトルに参加。東急電鉄賞を獲得している。

医師と患者を繋ぐSNS「メディカルケアステーション」運営がKDDIなどから約10億円を調達、医療IoTなど推進

eng-logo-2015病院や薬局・介護施設などで勤務する医療従事者と、患者やその家族をつなぐSNS「メディカルケアステーション」を運営する日本エンブレースは3月7日、KDDIを引受先とする第三者割当増資を実施しました。

「メディカルケアステーション」は、病院やクリニック、介護施設や薬局などの医療・介護従事者と、患者やその家族が、スマートフォンやPC上で簡単にコミュニケーションできるSNSです。医療関係者だけのタイムライン、および医療関係者と患者・家族を交えたタイムラインを作成可能で、テキストや画像の情報共有により、在宅医療や介護の現場におけるダイレクトな多職種連携を実現するといいます。

KDDIは今回の出資により、日本エンブレースと資本業務提携。医療・介護現場のIT化支援を目的に、下記3つの取り組みを推進するといいます。

・MCSを利用する医療従事者の拡大
・MCSの活用シーンの拡大
・医療介護ITプラットフォームの創出・連携

日本エンブレース代表取締役CEOの伊藤学氏は、今回の資本業務提携について「地域包括ケア、遠隔医療、医療エビデンス、医療AI、医療IoTをテーマに(中略)新たな社会インフラを構築してまいります」とコメントしています。

Engadget 日本版からの転載。

編集部注 : 日本エンブレースの発表によると、今回のラウンドではKDDIに加えて産業革新機構、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルからも資金調達を実施。調達総額は約10億円になるという。

ベンチャーキャピタルが、おべんちゃらキャピタルに化ける時――過剰な資金調達は毒

【編集部注】Eric PaleyはFounder Collectiveのマネージングパートナーである。

これまで私は、効率的な起業家精神(efficient entrepreneurship)の利点についてたくさん書いてきた。その視点に関して私は概念的に説明し、有り余る資金が有望な企業を殺してしまう仕組みを説明してきた。そして71のIPOのデータから、たとえ成功していたとしても、資金調達額と良い結果の間には相関関係がないことも示した。こうした説明が、それでもまだ概念的過ぎるという人びとに向けて、今回私は、このブログポストをまた別の感情 ―― 富への欲求 ―― に対して訴えかけるように構成してみた。

調達額を抑えたり、調達時期を遅らせることは、単に良い会社につながるだけでなく、創業者もより豊かになることにつながるのだ。

ZapposあるいはWayfairの創業者。あなたがなりたいのはどちら?

私はハーバードビジネススクールに通うMBAの学生たちに対して、しばしば質問をして挙手をしてもらう。君たちがなりたいのはZapposか、それともWayfairか?学生は皆、Zapposが成功事例だと知っている。一方、その多くはWayfairについて聞いたことさえない。スマートな学生たちの10人中9人がZapposを選ぶのだ。

Zapposは教科書に載るような成功事例だ。彼らは、シリコンバレーの最高のVCたちから段階的に資金を調達した。創業者であるTony Hsiehは、その型破りなアプローチなリーダーシップによって、雑誌の表紙を飾り、書籍が書かれることにもなった。同社がAmazonによって、8億5000万ドルから12億ドルの間の価格で買収されたとき、Hsiehが手にしたのは2億1400万ドルから3億6700万ドルである。もちろんこれは大した額だ。この成功によって、Zapposは創業者たちが学ぶべきお手本になったのだ。

しかし、研究すべき対象だということが創業者たちにあまり知られていない、より優れたeコマースのスタートアップストーリーたちが、他にも存在しているのだ。

Zapposと違い、Wayfairは家具の工場直送販売を行うeコマース企業だ。創設者、Niraj ShahとSteve Conineはビジネスをゼロから立ち上げ、Googleのアルゴリズムに対して最適化することで素早い成長を果たした。例えば何百ものSEOフレンドリーなURL(www.racksandstands.comのようなもの)を購入し、トラフィックを集約したのだ。同社は最初の月から利益を出していたが、多くのVCからの申し出を尻目に、彼らはビジネスが5億ドルの売上を超えるようになるまで、外部の資本を導入せずに成長したのだ。同社のことを、強固で、安定し、そして少々退屈な企業だとみる人もいるだろう。しかし創業者たちは、2014年のニューヨーク証券取引所へのIPOで最高の笑顔を見せることになる。同社にまつわる数々の注目すべき属性の中には、創業者たちの金銭的成功も含まれている。

創業者のそれぞれが、IPOの時点で同社の株式の約29%を所有していた。以後彼らは定期的に株式を売却しているが、同社の現在の市場価値が69億ドルであることを考えれば、Wayfairの2人の創業者は、それぞれがZapposの全株主を合わせたものよりも多額の金を手にしたことになる。別の言い方をするなら、並外れて資本効率の良いビジネスを構築し、会社に既に大きな価値が生まれてから初めて資金を調達したことで、Wayfairの共同創業者たちは、Hsiehのおよそ10倍の金を手にすることができたのだ。私ならShahとConineの方になりたい。

早期の資本を最小化する

おそらく、この違いは家具市場と靴市場の相対的な違いによるものだ、と言いたい人もいるかもしれない。公正を期すために言っておくならば、家具ビジネスは、靴市場の約2倍の大きさである、とはいえ靴産業は、顧客の反復注文が多く、輸送コストは安く、試用と返品のやりとりが少ないため、おそらくeコマースにより向いていると思われる。

業界の動向が重要な役割を果たすことはあるものの、違いを生み出すのは企業の資本戦略であると私は考えている。Wayfairは、会社を設立するためや、早期の成長を加速するための資金調達は行わなかった。もし途中で資金調達をしようと思ったならばそれは容易だったことだろう。しかし彼らが初めて資金調達をしたのは、ビジネスを劇的に拡大し、既に大きくて健全な会社に投資を行うべきタイミングに来た時だった。彼らは多額の資本を取り込むことを躊躇うことはなかった。Waifairが調達した資金はZapposの調達した資金の3倍に達している。しかしそれは会社の市場での優位性が確立し、膨大なスケールメリットを出せるようになった後であり、希釈性は最小に抑えられた。

金が全てではない

あまりにも早期に資本を導入して、あまりにも希釈してしまうと、最終的な払い戻し金額以上の波及効果がある。Hsiehは、Amazonに売却を行った後、株主からの圧力によって会社を売却することを強制されたのだとほのめかした。関係者は皆一財産を築いたものの、個人的な意向が軽んじられて、5年も早く金銭的な決定が下されたことは残念なことだ。もしZappos自身のコントロールがそのまま続いていれば、Hsiehは彼の会社を成長させ続けることができただろう。そしてWayfairの成功に肩を並べることも可能だったかもしれない。IPOの時点でも半分以上の株式を所有しており、限定的な希釈の範囲で資金を調達したWayfairの創業者たちは、彼らの運命をコントロールできる大きな自由を持ち、現在でもなお驚異的なビジネスを展開することができた。

TrueCar対CarGurus

さて、また同じ質問をしてみよう。どちらの自動車eコマース会社がお好みだろうか?TrueCarまたはCarGurusのどちらの創業者になりたいか挙手をお願いする。以下の表を見る前に答を決めて欲しい。

その通り、遥かに少ない資金調達しか行っていないCarGurusは、TrueCarと同程度の利益率を持ち、そして遥かに速く成長している。よってその価値が3倍以上に及ぶ。

CarGurusはあまり資金調達を行っていなかったために、Langley SteinartはIPOの時点で会社の29%を所有していた。これはTrueCarの価値全体に匹敵する金額だ。IPOの時点で、TrueCarの創業者であるScott Painterは自社の株式の約14%を所有していた、もちろん相当な額であることは間違いない。しかしそれはSteinertがCarGuruで所有する額の10分の1に過ぎないのだ。

たとえ成功していても、より多くの資本がより良いビジネスにつながるとは限らない。反対に調達額を抑えることで、個人的な資産を増やし会社に対するより多くの自由を確保することが可能になるのだ。

これらは大きな成果である

これらのそれぞれの例で、どちらの会社も成功し、創業者たちは目覚ましい経済的成功を収めている。私が起業家たちに思考実験を課してみると、彼らはしばしば抵抗しながら、有名なブランドを作り上げるチャンスをものにするためなら、個人的な金銭的利益は喜んで抑えることができるなどと言う。彼らは、たったの1億ドルならびに名声と引き換えに、10億ドルの銀行口座をドブに捨てようと言うのだ。しかし実際にはこんなトレードオフが創業者に与えられることは滅多にない。

より一般的なイグジットは、数十億ドルのIPOではなく、5000万ドルから1億ドルの買収によるものだ。適度な金額を調達すれば、それは素晴らしい結果をもたらす可能性がある。しかし、もし数千万ドル(場合によっては数百万ドル)を調達したならば、すべてではないにせよ、多くの場合買収によるイグジットオプションは閉ざされてしまう。過剰資本企業が直面する可能性の高い選択肢は、5000万ドルを調達してベンチャー投資家に優先権を手渡すか、破産の危機に直面し従業員全員を解雇する羽目になるかのどちらかである。どちらの場合でも、創業者にはほとんどまたは全く返ってくるものがない可能性が高い。

設立から10年が過ぎて、WayfairとCarGurusはそれぞれそのライバルに比べて、より価値のあるビジネスとなった。そして創業者たちはその軽量金融戦略の恩恵を大いに受けている。しかしそれ以上に価値のあることは、選択の自由があるということだ。

彼らはベンチャーキャピタリストたちや並外れて大きな評価額の影響を受けていないために、その過程で5000万ドルでも5億ドルでも、売却を行うことのできる自由度を有していた。こうした創業者たちは、売却すべきか否かを、その資本構成ではなく、ビジネスの業績とリスクに対する意欲に応じて、決定することができる。1億ドルのスタートアップを恥じる必要はないのだ。しかし創業者たちは早々とそのオプションに飛びつくべきでもない。

たとえ成功したとしても、多すぎる資本はコストが高く、安心していてはならない。その一方で、効率的な起業家精神には、軽んじてはいけない多くの利点がある。Niraj Shah、Steve Conine、Langley Steinertらに尋ねてみると良い。

[原文へ]
(翻訳:Sako)

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建設プロジェクトSaaS「ANDPAD」開発のオクトが4億円を資金調達、経営プラットフォームへの進化目指す

ANDPAD」は、工程表や写真・図面資料など、建設現場で必要な情報をクラウド上で一括管理することができる建設・建築現場のプロジェクト管理ソフトウェアだ。職人や現場監督など、建設現場で働く人が使いやすいようスマートフォンアプリも提供されていて、現場での利用が広がっている。

そのANDPADを運営する建設サービスのスタートアップ、オクトは3月6日、Draper Nexus VenturesSalesforce VenturesBEENEXT、および個人投資家を引受先とした総額約4億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。資金調達に合わせて、Draper Nexus Venturesのマネージングディレクター、倉林陽氏が社外取締役に就任する。

オクトは2012年9月、代表取締役社長である稲田武夫氏が前職のリクルート在席時に設立した。2016年11月には個人投資家数名から数千万円規模の資金調達を実施している。

創業当初はリフォーム会社選びのポータルサイト「みんなのリフォーム」を立ち上げて運営してきたオクト。ユーザー企業であるリフォーム施工会社から「現場の工程管理ができるサービスがほしい」という声が多く寄せられ、開発したのが「ReformPad」、ANDPADの前身となるサービスだ。

2015年9月にサービスを開始したReformPadは、リフォームの施工管理に特化していた。その後サービスを新築や商業施設など、さまざまな建設現場に対応するよう機能拡張を行い、2016年3月にANDPADとしてリリース。その時にスマホアプリの提供も始めている。

2017年1月のTechCrunchの取材では、ANDPADの導入社数は350社という話だったが、それから1年後の2018年1月時点では800社を超え、現場管理アプリのシェアNo.1となっているという。稲田氏によれば、この社数は「契約・登録ベースでの数字」だとのこと。「GitHubやBacklogなどのプロジェクト管理ツールと同じで、ANDPADは契約企業が取引先にアカウントを発行すれば他社でも使える。だから利用企業数でいうと10倍の8000社ぐらいになっているはずだ」(稲田氏)

今回の調達により稲田氏は「営業やマーケティングの強化のほか、プロダクト開発によりさらにANDPADを進化させたい」と話す。「施工管理アプリとして認知が広まった今、『現場を管理したい』というニーズに加えて、経営者層から『経営指標を見える化したい』との声が増えている。経営者向けダッシュボードを提供するなど、建設業界の経営プラットフォームとなるようプロダクト強化を図る」(稲田氏)

これは建設業向けにERPシステムを提供したい、ということだが、この分野には大手システム会社をはじめ、既存プレーヤーがひしめいている。それらのサービスと比べたときのANDPADの強みは何だろうか。稲田氏に聞いてみた。

稲田氏はこう説明する。「建設業界は、元請け企業から各種施工を行う取引先へ仕事が委託される多重構造となっている。経営分析を行う基幹システムは元請け企業が利用するもの。しかし既存システムでは、セキュリティに関する不安や取引先企業のIT対応の遅れなどが理由で、取引先も含む複数社でコラボレーションして経営数値を把握できるものはなかった」

例えば予算1000万円の工事があって、800万円が原価として想定されていたとする。複数の取引先のどこにいくらで発注したのか、また各社が担当する施工が終わって最終的にいくらが請求されるのか、従来のシステムではこれらの数字を途中で把握することは困難だった。

「ANDPADは既存ERPと必ずしも競合するものではなく、連携できるのが強みだ」と稲田氏は言う。「ANDPADなら、現場の職人までIDを持っているし、受発注もリアルタイムに把握できる。ERPシステムでコラボ機能がないものでも、ANDPADと連携すれば、指標もリアルタイム化できる。ERPとANDPADは共存・補完できるシステムだと考えている」(稲田氏)

今回株主となった3社のVCは海外に拠点を持ち、SaaSベンチャーにも詳しい。稲田氏は3社について「建設業界の働き方を変え、労働環境も変えるのが我々の目的。ただ、米国でIndustry Cloudと呼ばれているような業界特化型のクラウドサービスを提供するスタートアップは、日本では先行事例があまりない。だからその部分に詳しい投資家を選んだ」と言い、「SaaS三銃士ともいうべき3社に知見をもらいながら、成長を図りたい」と述べている。

オクトでは、ANDPADを早期に1万社へ導入することを目指す。「ANDPADは法人向けサービスではあるが、現場で毎日アクティブに使われているアプリでもある。1日に登録される写真は2万枚にも及ぶ。ユーザーが求めるサービスを今後も提供して、建設業界という巨大市場を担っていきたい」(稲田氏)

写真左から、オクト取締役兼CTO 金近望氏、代表取締役社長 稲田武夫氏、Draper Nexus Venturesマネージングディレクター 倉林陽氏

【3月6日 10:32】倉林陽氏の肩書きに誤りがありました。お詫びして訂正いたします。