プロeスポーツチーム「REJECT」運営のCYLOOKが総額5000万円を調達

プロeスポーツチーム「REJECT」運営のCYLOOKが総額5000万円を調達、選手のサポート体制やブランディングを強化

プロeスポーツチーム「REJECT」運営のCYLOOKは9月11日、シードラウンドにおいて、昨年12月からこれまでに累計5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はEast Ventures、iFund、ほか個人投資家。調達した資金は、選手のサポート体制やブランディングの強化、事業拡大に利用する。

REJECTは、2018年発足のプロのeスポーツチーム。世界的に人気のシューティングゲームタイトルを主に取り扱っており、現在はPUBG、PUBGMOBILE、CoD、CoDMOBILE、R6S、ApexLegends、VALORANTの7タイトルの部門を保有。 モバイルシューティングゲームでは日本トップの実績を重ねており、「PUBGMOBILE」部門では、5大会連続で日本代表として世界大会に出場中。

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RDNAアーキテクチャのモバイル向けGPU「Radeon RX 5000M」でライバルを追撃するAMD

モバイル向けGPU「Radeon RX 5000M」でライバルを追撃するAMD

高いパフォーマンスで注目を集めるCPU「Ryzen Mobile 4000」シリーズ同様、AMDはモバイル向けGPUにも力を入れており、「Radeon RX 5000」シリーズを投入している。

Radeon RX 5000は、開発コードネーム「Navi」で呼ばれていたGPUで、製造プロセス7nmの「Radeon DNA」(RDNA)アーキテクチャを採用している。RDNAと聞いて気がつく人もいるはずだが、年末商戦期発売予定のPlayStation 5が採用しているGPUは、このRDNAの第2世代「RDNA 2」をカスタムしたGPUとなっている。第1世代とはいえ、同系統のRadeon RX 5000シリーズもそのパフォーマンスに関し十分期待できるというものだろう。

具体的な製品としては、2020年1月に開催された「CES2020」プレスカンファレンスにおいて「Radeon RX 5000M」シリーズが発表されており、「AMDづくし」といえるスペック(CPUとしてRyzen Mobile 4000シリーズを採用)のノートPCの発売が始まっている。

Ryzen Mobile 4000とRadeon RX 5000Mを搭載したノートPCが登場している

Ryzen Mobile 4000とRadeon RX 5000Mを搭載したノートPCが登場している

Radeon RX 5000MのSKUは、Radeon RX 5700M、RX 5600M、RX 5500M、RX 5300Mの4GPUとシンプルになっている。型番から察せられるように、現状最上位はRadeon RX 5700Mになるが、RX 5600MとはGPUコアクロックや、最大メモリー容量、帯域幅が異なるだけで、演算ユニット数とストリーミングプロセッサー数は同じとなっている。ただし、ピーク時の単精度浮動小数点演算性能はRX 5700Mが7.93TFLOPsのところ、RX 5600Mは5.83TFLOPsと差が開いている。

また、7.93TFLOPsという演算性能(FP32)は、デスクトップ向けミドルクラスGPUのRadeon RX 5700と同等(7.95TFLOPs)だ。

Radeon RX 5500Mのスペック(GPU-Z)

Radeon RX 5500Mのスペック(GPU-Z)

SKUで多少異なるが、Radeon RX 5000Mシリーズのスペックは、デスクトップ向けの同シリーズと同等または近くなっている。「フルHD解像度、60fps」というゲームプレイがターゲットとなる、エントリークラスのゲーミングノートPCに採用されているRadeon RX 5500Mでも、ピーク単精度浮動小数点演算性能はデスクトップ向けGPUのRadeon RX 5500 XTの5.2TFLOPsから、若干パワーダウンした4.63TFLOPsの性能が備わっている。

あくまでも数値上になるものの、NVIDIAのモバイル向けGPUのGeForce GTX 1660 Ti Max-Q Designの4.101TFLOPsを上回っている点もポイントだろう。

なお、モバイルCPU「Ryzen Mobile 4700U」が内蔵するiGPU「AMD Radeon Graphics(Vega 7)」では、演算ユニット7基、ストリーミングプロセッサー448基となっている。エントリーdGPUのRadeon RX 5500MやRX 5300Mでも、その3倍以上のスペックになっているため、そのぶんゲーミングパフォーマンスには期待できるというものだ。

Radoen RX 5000Mシリーズ スペック

デスクトップ向けおよびモバイル向けGPUの比較

CPUとGPUを手がけるAMDならではの技術に注目

モバイル向けのCPU・GPUを手がけるAMDならではとして注目したい技術が、「AMD Smart Shift」だ。クリエイティブ系ソフトウェアやゲームなどアプリケーションの負荷に状況に応じて、CPUのRyzen Mobile 4000と、GPUのRadeon RX 5000Mの間で動的に電力を割り振ることで、パフォーマンスが最大14%向上するとうたっている。

基本的な考え方は、NVIDIAが最新のMax-Q Designに盛り込んだ「Dynamic Boost」と同じで、CPUとGPUの両方を開発しているAMDだけに、そのパフォーマンスアップに期待が持てるだろう。

CPUとdGPUの消費電力をアプリケーションに合わせて最適化し、最大限の性能を引き出すAMD Smart Shift

CPUとdGPUの消費電力をアプリケーションに合わせて最適化し、最大限の性能を引き出すAMD Smart Shift

AMD RadeonとMacBook Pro

Appleは、自社開発のCPU「Apple Silicon」の発表により、長らく続いたIntelとの関係に終わりを告げた。GPUに関しては、(今のところ)AMDとの関係が続いており、MacBook Pro向けには「Radeon Pro 5000M」シリーズが投入されている。

Radeon Pro 5000MシリーズのGPUイメージ

Radeon Pro 5000Mは、製造プロセス7nmのRDNAアーキテクチャを採用する点はRadeon RX 5000Mシリーズと同じだが、演算ユニット数やストリーミングプロセッサ数などが増加。16インチモデルのMacBook Proで選択できるRadeon Pro 5600Mでは、帯域幅が高速なHBM2(High Bandwidth Memory 2)の8GBメモリーを搭載している。

Radoen Pro 5000Mシリーズ スペック

モバイル向けGPUでも優勢を誇るNVIDIA「GeForce」シリーズ

モバイル向けGPUでも優勢を誇るNVIDIA「GeForce」シリーズ

AMDのモバイル向けCPU「Ryzen Mobile 4000」シリーズが内蔵する「Radeon Vega」のように、iGPU(integrated GPU)は性能向上が進んでいる。しかし正直なところその性能は、画像処理に特化した外部演算プロセッサーにあたるdGPU(Discrete GPU)に並ぶとは言いがたい。そのためPCメーカーは、高い処理能力を求めるユーザー向けにdGPUを搭載するモデルを数多くラインアップしている。

dGPUは、主にゲーミングノートPCに搭載されており、その性能がゲームの描画品質や、スムーズなプレイに直結している。快適なゲーミングプレイを目指すなら、CPUよりも重要なポイントといえるほどだ。

さらに最近は、プロはじめYouTuberなども愛用している動画編集ツール「Adobe Premium Pro」、またフリーエンコードソフトウェア「HandBrake」など、多くのクリエイティブ向けソフトウェアがGPUを使った処理をサポートしており、CPUとGPUを組み合わせた高速処理が可能になっている。

「Adobe Premium Pro」では、書き出し時にiGPUとdGPUを活用でき、CPUと負荷を分散して処理時間を短縮できる

「Adobe Premium Pro」では、書き出し時にiGPUとdGPUを活用でき、CPUと負荷を分散して処理時間を短縮できる

無料で使える「HandBrake」も、NVIDIAハードウェアエンコーダー「NVENC」などといったGPU支援機能をサポート

無料で使える「HandBrake」も、NVIDIAハードウェアエンコーダー「NVENC」などといったGPU支援機能をサポート

AI(ディープラーニング)の面でもGPUによるアクセラレーションはすでに一般的で、学生やエンジニアがAIについて学習する環境としても欠かせない。ゲームで遊ぶ機会はない方でも、dGPUは無視できない存在といえるだろう。

dGPUの勢力図は、2020年8月現在では、「NVIDIA GeForce RTX 2×00」シリーズをメインに、ハイエンドからエントリーまで展開しているNVIDIAが、ノート向けおよびデスクトップ向けともに優勢だ。一方ライバルにあたるAMDは、「Radeon RX 5000」シリーズをリリースしており、その影響に注目といった状況だ。

デスクトップ同様に充実しているモバイル向けGeForce

NVIDIA GeForceシリーズは次世代GPUとなる「Ampere」が控えているが、まずはデスクトップ向けからなので、当面モバイル向けは、現行となる「Turing」アーキテクチャを採用したGeForce RTX 20ならびにGeForce GTX 16×0シリーズになる。

dGPUを搭載したノートPCなら、快適なゲーミング環境を狙える

dGPUを搭載したノートPCなら、快適なゲーミング環境を狙える

これらは、2018年8月から投入が始まったNVIDIA最新アーキテクチャ「Turing」を採用したGPU群だ。最大の特徴は、よりリアルな光の表現が可能なレイトレーシング処理をリアルタイムに実行できる専用プロセッサー「RT Core」を内蔵している点になる。GeForce RTX 2×00シリーズが備えており、リアルタイムレイトレーシングを使うことで、これまでにないリアルなゲーム描写を実現している。

ゲーム側での対応が必要なうえ、処理負荷も高くなる一方、その効果は圧倒的だ。開発中のレイトレーシング対応「Minecraft with RTX」など、必見のゲームが登場予定になっている。そのほかディープラーニング(AI)技術に利用できる「Tensor Core」も内蔵されており、高速かつ高品質なグラフィックス表示を可能にするアンチエイリアス処理「DLSS」(Deep Learning Super Sampling)が可能になっているなど、前世代アーキテクチャ「Pascal」のGeForce GTX 10世代からパフォーマンスは大きく強化している。

レイトレーシング対応のMinecraft with RTXのワンシーン。リアルな光の演出をゲーム内で実現

レイトレーシング対応のMinecraft with RTXのワンシーン。リアルな光の演出をゲーム内で実現

Turing世代GPUのメインストリームとなるGeForce RTX 20×0シリーズのモバイル版は、デスクトップ向けからGPUコアクロックや、メモリークロックがダウンしているだけで、性能の指標となるCUDA Core数などの演算ユニット数は同じになので、ノートPCでも快適なゲーミングを可能にしている。

モバイル版GeForce RTX 2080 SUPERのスペック(GPU-Z)

モバイル版GeForce RTX 2080 SUPERのスペック(GPU-Z)

NVIDIAのモバイル向けGPUの主だったラインアップは、ハイエンドに位置する「GeForce RTX 20×0」シリーズが5SKUとなっている。ミドルクラスでは、Turingアーキテクチャを採用するものの、RT CoreとTensor Coreを搭載していない「GeForce GTX 16×0」シリーズが3SKU存在する。そしてエントリー向けに、前世代アーキテクチャ「Pascal」を採用する「GeForce MX330」が用意されている。

モバイル版 GeForce RTX 20シリーズ スペック

モバイル版 GeForce GTX 16×0シリーズ スペック

GeForce MXシリーズ スペック

dGPU搭載ノートにとって重要なデザインコンセプト「Max-Q Design」とは?

GPUとともに重視したい要素が、NVIDIAが提唱しているゲーミングノートPCのデザインコンセプト「Max-Q Design」(Max-Q デザイン)だ。高性能なぶん高発熱のGPUを薄型軽量ノートPCに搭載するためのフォームファクターで、ノートPCのTDP(熱設計消費電力)の範囲内に収まるように消費電力と発熱を抑えつつ、可能な限りGPUパフォーマンスを引き出す「Max-Q Technology」が使われている。

MSI製ゲーミングノートPC「GS66 STEALTH」のスペック表から抜粋。GPU仕様部分に「Max-Q デザイン」と記載されている

MSI製ゲーミングノートPC「GS66 STEALTH」のスペック表から抜粋。GPU仕様部分に「Max-Q デザイン」と記載されている

このMax-Q TechnologyについてNVIDIAは、モバイル版GeForce RTX 20×0シリーズの投入とともに、アプリケーションがCPUとGPUのどちらに負荷をかけているか監視し、より高い負荷のほうへ電力を割り当てる「Dynamic Boost」などアップデートを実施。ノートPCでより快適にゲームプレイを楽しむためのキーポイントであり続けているのだ。

Dynamic Boostの動作イメージ。CPUの15W分をGPUに割り当てることで、GPUコアクロックを引き上げることが可能になる

Dynamic Boostの動作イメージ。CPUの15W分をGPUに割り当てることで、GPUコアクロックを引き上げることが可能になる

多くの製品が「Max-Q Design」を採用しており、ミドルクラスのGeForce GTX 1660シリーズに加え、AMD製CPU「Ryzen Mobile」とGeForce GPUを採用したノートPCの場合でも、「Max-Q Design」に対応しているので注目だ。

Xbox Series Xは約5.3万円で米国で11月10日発売、予約開始は9月22日

Microsoft(マイクロソフト)は、米国時間11月9日の水曜日に次期モデルのゲーム機「Xbox Series X」 を499ドル(約5万3000円)で発売することを認めた。

同ゲーム機は9月22日から予約受付が開始され、Xbox Series Xだけでなく廉価モデルの「Xbox Series S」も発売される。Xbox Series Sの価格は299ドル(約3万2000円)で、11月10日に発売され、予約注文は9月22日から始まる。

Xbox Series X は、Xbox Oneのハイエンドモデルとなる後継機で、8コアのカスタムCPU、16GBのメモリー、12テラフロップスの処理能力を持つGPU、超高速なロードと転送速度を実現する1TBのNVMe SSD、および60/120fpsの両方で最大4K解像度をサポートするなど、非常に印象的なスペックを誇る。

Series Sは低消費電力な廉価モデルで、物理ディスクドライブを搭載せず、60fps/最大1440p解像度をサポートし、512GBのNVMe SSDを含むより低いスペックとなる。なおSeries Sは、Series Xと同じCPUを搭載する。マイクロソフトが新世代コンソールにおいて、予算重視なゲーマーとプレミアムゲーマーの両方にアピールしたいと考えているのは明らかだ。

今週初めには、Xbox Series Sのオフィシャルティーザー画像とトレーラーが、価格情報とともにリークされた。マイクロソフトはその後にこれらの詳細を確認し、低価格かつ非常にコンパクトなSeries Sの発売予告を公開したが、これまでSeries Xと同じ発売日に発売されるかどうかもわからなかった。さらに、499ドルという価格も本日初めて明らかにされた。

Xbox Series Xは、マイクロソフトのXbox All Accessサブスクリプションを通じて、2年間にわたり月額34.99ドルで提供される。Series Sは分割払いでも入手可能で、同じ24カ月間で月額24.99ドルだ。これらのサブスクリプションには 「Xbox Game Pass Ultimate」 も含まれており、ハードウェアの支払い期間中に同社のサブスクリプションゲームライブラリにアクセスできる。

画像クレジット:Microsoft

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

「ゼルダの伝説 BoW」の前日譚「ゼルダ無双 厄災の黙示録」が11月20日発売

任天堂は同社のモダンクラシックである「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド(Breath of the Wild)」(未訳記事)のサプライズスピンオフとして、その前日譚となるアクションゲーム「ゼルダ無双 厄災の黙示録(Hyrule Warriors: Age of Calamity)」を発表した。プレイヤーはいつもの通りリンクをプレイするほか、4人の英傑とゼルダ姫本人も操作して、「ブレス オブ ザ ワイルド」から100年前の世界でガノンとの戦いに挑む。発売は2020年11月20日だ。

このゲームの目的が、2019年に発表された後日譚を待ち焦がれるファンの声を鎮めるためであることは明らかで、ロングランのベルトスクロールアクションゲーム、無双シリーズの一作品である最初の「ゼルダ無双」を制作したコーエーテクモゲームスが開発した。しかし前作はゼルダがモチーフとなったアクションゲームとしての色が強く、任天堂がより絵画的で様式化されたタイトルに移行する前の古いリアリスティックスタイルのゲームだった。

「厄災の黙示録」は、「ブレス オブ ザ ワイルド」の新しいルックスだけでなく、キャラクターや設定も引き継いだ正真正銘の前日譚だ。

ブレス オブ ザ ワイルドにおける最大の注目すべき点はゼルダ姫で、長年の伝統に逆らい、彼女はただの単なる捕らわれの姫君であるだけでなく、リンクや他の英傑たち以上に興味深いキャラクターとして描かれている。彼女の好奇心と学問への熱意はプレイヤーを魅了しながらも、プレイしている英傑たちは強く賢いが、それ以上ではないことを理解させた。そして誰もがゼルダ姫を求めていた。

画像クレジット:Nintendo

後日譚はそのむずがゆさを解消してくれるに違いないが、それまでの間はこの前日譚で、戦うゼルダ姫と一緒に遊び回ることができる。これは滅多にないお楽しみ(ゼルダ姫をプレイできるのは前作の「ゼルダ無双」とごくわずかなタイトルだけ)であり、次回作の前触れであることを期待したい。

最近私は、3Dのマリオゲームを現代のプレイヤーに届けたりする任天堂の保守的で期待はずれのアプローチに失望していたが、ゼルダシリーズは一度ならず、再発明とアップデート(未訳記事)に成功しり。無双シリーズは、新たな境地を切り開いたことで知られているわけではない。何百というモンスターや敵の兵隊を殺すのが主題だ。しかし、ゲーム界で最も愛されたゼルダシリーズにとって価値ある追加ラインナップであることは証明できるだろう。ともあれこのゲームに頭脳的パズルを期待してはいけない。

ゲーム内容と予約の詳細は任天堂の公式サイトで詳しい。ついては任天堂のサイトにある

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タグ:任天堂

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルがEpicをApp Storeの契約違反で反訴、Epicは立証責任を果たせるか

Apple(アップル)が、Epic GamesによるApp Storeを回避して数百万ドル(数億円)もの手数料の支払いを避けようとした試みに反訴した。その訴えでは、Epic Gamesが意図的に契約に違反したと主張しており、法廷が損害を認め、同社が二度と同じとを行わないよう求めている。

振り返れば、Epic Gamesは2020年8月半ばにFortniteのゲーム内通貨の新しい購入方法をこっそり導入し、アップルに30%の支払いを行わなかった。さらにPRキャンペーンも展開してアップルを独占を訴え、App Storeのルールを不正と主張した。アップルはEpic Gamesの動きに対してApp Storeにおける同社のアカウントを削除し、Epic Gamesがゲーム内ストアを削除するか調整すれば今回の行為は避けられたはずだ、と主張した。Epic Gamesはアカウント削除を独占による不公平な営業行為だと法廷が認めることを求めたが、Fortniteと無関係なアカウントが復帰しただけに終わった。

Epic Gamesはさらに、アップルが独占企業でその行動は違法と見なされるべきと主張し、アップルはそれは真実でないと示そうとしているが、今回の反訴においてアップルは、Epic Gamesの不正行為を主張している。

「Epic Gamesは自らを現代の企業社会におけるロビンフッドだと考えているが、実際のところ同社は売上数百万ドルの大企業であり、App Storeから得た膨大な価値の代価を一銭も払うまいとしているだだ」とアップルの訴状で述べている。

さらに「Epic GamesとそのCEOは、アップルが2008年以降すべての開発者に提供しているApp Storeに関する規約に異議を唱えているが、そこには拘束力のある契約への違反や、長年のビジネスパートナーに対する欺瞞行為、アップルに正当に属する手数料の着服、そして21世紀の最も革新的なビジネスプラットフォームに対して、Epic Gamesの収益を最大化しなかったことを理由に、法の鉄槌を下すよう裁判所に求めるようなことは、何一つ含まれていない」と続く。

類似の判例に関する知識のほとんどない私が、この訴訟の細部に立ち入っても得るところは少ないだろう。アップルに対して仮差し止め命令が出るとしても、それは何週間も先だし、それまでに得られる新しい情報は少ない。

この議論は、ハードウェアとソフトウェアのエコシステムを完全にコントロールしているアップルのような企業が独占企業に該当するかどうかに帰着する。もしそうであれば、Epic Gamesが反抗したアップルの事業慣行は違法となり、逆らうことは正当なものとなる。そうでなければ、この反訴でEpic Gamesの立場は危うくなる。アップルに数百万ドルの借りがあるからだけではなく、このトリックを二度と使えなくなるからだ。

ここでは、Epic Gamesの立証責任がとても重要だ。現在の独占禁止法では、アップルのApp Storeや、同じ理由で訴えているGoogle(グーグル)のPlay Storeは、独占行為とは見なされていないようであるからだ。しかし立証ができずに裁判がEpicの敗訴に終わっても、アップルには独占企業のイメージが残り、裁判官の疑念含みの評価でさえも好印象を与えないだろう。

Epic Gamesが有名な企業であり、契約違反を認めているため、アップルによる今回の反訴は避けられなかった。しかしそれは、高くついている。同社は損害賠償額の規模を明らかにしていないが、数千万ドル(数十億円)にはなるだろう。アップルの訴状は以下で読むことができる。

Apple Countersuit Against epic by TechCrunch on Scribd

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

圧倒的な性能アップで注目されるAMDのモバイルCPU「Ryzen Mobile」とは?

圧倒的な性能アップで注目されるモバイルCPU「AMD Ryzen Mobile」とは?

2017年に投入され、Intel一択だったCPU市場にクサビを打ち込んだのが、AMD Ryzenプロセッサーだ。第1世代Ryzenでは、Intelの強固な地盤にひびを入れた程度だったが、2019年7月に投入されたZen 2アーキテクチャを採用した第3世代Ryzenでは、確実に地盤を砕き、自作PC市場のCPU単体販売数シェア(BCNランキング調べ)がIntelを上回ったほどだ。

  • 第1世代Ryzen: Zenアーキテクチャ(Ryzen 1000シリーズ)
  • 第2世代Ryzen: Zen+アーキテクチャ(Ryzen 2000シリーズ)
  • 第3世代Ryzen: Zen 2アーキテクチャ(Ryzen 3000シリーズ)

プロセッサーを手がけて半世紀のAMD

Ryzenとともにその名を知らしめたAMDだが、まだまだ「AMDって?」と首を傾げてしまう人も、かなりの数になるはずだ。そこで、駆け足になるが、軽くその歴史に触れておこう。

AMDこと、Advanced Micro Devices(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)の歴史は約半世紀と長く、1969年に半導体メーカーとして設立された。当初はIntelプロセッサーと同じ仕様の製品を提供するセカンドソースメーカーだったが、Intel互換プロセッサーの開発を経て、1999年にIntelと互換性のない独自プロセッサー「Athlon」を投入、すでにIntel独占状態だったCPU市場に一石を投じた。

その後も独自CPUの開発し、2006年にはNVIDIA GeForceのライバルとなるRadeonを手がけていたATI Technologiesを買収。dGPUのRadeonシリーズに加え、CPUにGPUを統合したAPUを開発している。

Zen 2アーキテクチャ採用の「Ryzen Mobile 4000」シリーズ

しばらくの間パッとしなかったAMDは、Ryzenの高いコストパフォーマンスに加え、PlayStation 5や次世代Xboxはじめ据置型家庭用ゲーム機にもAMDプロセッサーやグラフィックス機能が採用され続けるなどで改めて知られるようになった。今や自作PCだけでなく、メーカー、BTO PCに第3世代AMD Ryzenシリーズを採用するデスクトップPCが増えている。

そんなAMD Ryzenのモバイル向けは、デスクトップ向けに遅れること約1年、Zen2アーキテクチャを採用するRyzen Mobile 4000シリーズを投入している。

大幅性能アップで注目を集める第3世代Ryzen Mobile。GPUにはRadeon Vegaを内蔵する

大幅性能アップで注目を集める第3世代Ryzen Mobile。GPUにはRadeon Vegaを内蔵する

Ryzen Mobile 4000シリーズは、同社デスクトップ向けAPU(CPUとGPUを統合したAMDの製品名)と同じく、GPU「Radeon Vega」を内蔵する開発コードネーム「Renoir」(ルノアール)として噂されていた新世代のAPUになる。

  • 第1世代Ryzen Mobile APU: Zenアーキテクチャ+Radeon Vega(Ryzen Mobile 2000シリーズ)
  • 第2世代Ryzen Mobile APU: Zen+アーキテクチャ+Radeon Vega(Ryzen Mobile 3000シリーズ)
  • 第3世代Ryzen Mobile APU: Zen 2アーキテクチャ+Radeon Vega(Ryzen Mobile 4000シリーズ)

製造プロセスとして、7nmプロセスを採用

メインストリームCPUの製造プロセスが14nmで滞っているIntelと異なり、7nmプロセスを採用しており、Zenアーキテクチャ、12nmプロセス採用の第2世代Ryzen Mobileから大幅に性能を引き上げられている。

7nmプロセス製造とZen2アーキテクチャの採用は大きく、第2世代Ryzen Mobileからはメモリーコントローラーが強化され、メモリークロックは第2世代Ryzen MobileのDDR4-2666から、DDR4-3200に向上ししている。

さらに、IntelがIce LakeでサポートするLPDDR4-3733を上回るLPDDR4x-4266にも対応している。このメモリーの高クロック化により、iGPUの性能アップに期待が持てる。

 

開発コードネーム「Renoir」の第3世代Ryzen Mobile 4000シリーズ

開発コードネーム「Renoir」の第3世代Ryzen Mobile 4000シリーズ

Ryzen Mobile 4000シリーズのラインナップ

2つのスキームで展開するIntelのモバイル向け第10世代Coreプロセッサーと比較すると、Ryzen Mobile 4000のSKUは少ない。8コア/16スレッド、ベース稼働クロック3.3GHz、最大稼働クロック4.4GHzとなる「Ryzen 9 4900H」を最上位に、4コア/4スレッドでベース稼働クロック2.7GHz、最大稼働クロック3.7GHzの「Ryzen 3 4300U」まで、9SKUを用意している。

TDP(熱設計電力)は、15W、35W、45W、35-54Wの4種類。TDP15WのSKUを含め、ベース稼働クロックが高くなっている点にも注目といえる。なお、TDPはプロセッサナンバー末尾のアルファベットで分かり、TDP15Wは「U」、35Wは「HS」、45W、35~54Wは「H」となっている。

Ryzen Mobile 4000シリーズのラインナップ

GPUコアは第2世代同様Radeon Vegaベース

GPUコアは第2世代と同じRadeon Vegaをベースに7nmプロセスに移行しており、各SKUでGPUコア数や、GPU稼働クロックが異なるAMD Radeon Graphicsが搭載されている。

GPUはAMD Radeon Graphicsを搭載

GPUはAMD Radeon Graphicsを搭載

そこで、GPUコア数7基、稼働クロック1600MHzのAMD Radeon Graphics(Vega 7)を搭載しているRyzen 7 4700Uでその性能を確認してみた。

「Intel Iris Plus Graphics」採用のモバイル向け第10世代Coreプロセッサー搭載ノートPC同様に、Ryzen 7 4700U搭載ノートPCにおいて、Epic Gamesの「フォートナイト」をフルHD解像度、画質(プリセット)「中」という条件でプレイしたところ、フレームレートは80fps台と、快適ゲーミングの指標となる60fpsを余裕でオーバーしていた。CPUスペックが異なるため横並びの比較にはならないので、あくまで参考程度としてほしい。

さらに、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーXIV」の公式ベンチマークでは、フルHD解像度、標準品質(ノートPC)で「とても快適」指標を記録していた。フレームレートは30fps台だったので、実際にレイド戦などをプレイするのは厳しいが、iGPUとしては非常に高い性能を持っているのは確実といえる。

「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」のスコア

「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」のスコア (C)2010 – 2020 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

圧倒的な性能アップで注目されるモバイルCPU「AMD Ryzen Mobile」とは?

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カテゴリー:ハードウェア

タグ:AMD

まだまだ優位を保つIntelの第10・第11世代モバイル向けCPUを知る

まだまだ優位を保つIntelのモバイル向けCPUを知る

テレワークやオンライン学習など、新しい生活様式に欠かせないPC。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行とともに、会社から支給されたり、急きょ中古品を購入したりした人も多いだろう。しかし、そんなPCは低スペックなことがあり、急場はしのげるものの、リモートでの会議・打ち合わせや、資料の写真編集で動作がモタつく、増えた自宅時間を活用してゲームを始めたものの動作がカクツクなど、性能不足が気になってくるはずだ。特別定額給付金の支給もあり、最新PCの購入を決めた人も多いだろう。

そこで、会社や学校などの近くにあるカフェなどで仕事・学業に勤しんだり、女性の場合ならチャットアプリで化粧のエフェクトをかけつつビデオ会議アプリを使ったりと、使う場所や用途を選ばない人気のモバイルノートPC選びに役立つ最新の知識や用語をお伝えしていこう。

第1回はIntelのモバイル向けCPUからだ。

10世代目に進化した、Intelのモバイル向けCPU

簡単な表計算から動画の編集&エンコード、ゲーミングなどまで、PCの性能で最も重要になるCPU。デスクトップPCの世界では、Intel Core iシリーズを超える性能でありながら安価なAMD Ryzenシリーズが注目を集め、シェアを伸ばしている一方、モバイルノートPCではまだまだIntelが優位を保っている。

第10世代Coreプロセッサー搭載PCに貼られているロゴ。シルバーベースのデザインになっている

第10世代Coreプロセッサー搭載PCに貼られているロゴ。シルバーベースのデザインになっている

そんなIntelモバイル向けCPUは、世代を重ねすでに10世代目になっており、この9月3日には第11世代が正式に発表された(後述)。

第10世代は2019年8月に投入され、Intel CPUでは初めて10nmプロセスで製造された開発コードネーム「Ice Lake」(アイス レイク)を皮切りに、従来通り製造プロセス14nmを採用する「Comet Lake」(コメット レイク)、デスクトップに迫る8コア/16スレッド・最大5.3GHzの稼働クロック(周波数)を実現したハイエンドモバイル向けの「Comet Lake-H」を投入しており、第10世代Coreプロセッサーを搭載したノートPCが各社から数多く登場している。

第10世代Coreプロセッサーのイメージ

第10世代Coreプロセッサーのイメージ

  • Ice Lake(アイス レイク): Intel CPUでは初めて10nmプロセスで製造
  • Comet Lake(コメット レイク): 製造プロセス14nmを採用
  • Comet Lake-H: 製造プロセス14nm。最大5.3GHzの稼働クロック(周波数)を実現したハイエンドモバイル向け

第10世代Coreプロセッサーは、Intel CPUとして初めて10nmプロセスで製造されたIce Lakeと、従来通りの14nmプロセスで製造されたComet Lake/Comet Lake-Hの2つのスキームに分かれている。また、これまでのCoreプロセッサーと同様「Core i3」、「Core i5」、「Core i7」のラインナップに加え、「Core i9」が新たに追加され、20を超えるSKU(SKU Numeric Digits)が用意されている。

Ice LakeとComet Lakeの概要

Ice LakeおよびComet Lake/Comet Lake-Hでは、最新インターフェースの「Thunderbolt 3」(USB Type-C)や、次世代Wi-Fi規格の「Wi-Fi 6」(IEEE 802.11ax)を標準でサポートする点は共通だ。

Ice LakeとComet Lakeの概要

Ice Lakeのブロックダイヤグラム。Thunderbolt 3やWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)がサポートされている

Ice Lakeのブロックダイヤグラム。Thunderbolt 3やWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)がサポートされている

Ice Lake

2スキームのうちIce Lakeの相違点は、Intelの定義上第11世代(Gen11)となる統合グラフィックス機能(iGPU。Integrated GPU)を搭載している点にある。

  • Intel UHD Graphics(Gen11。第11世代)
  • Intel Iris Plus Graphics(Gen11。第11世代)

これらiGPUファミリー自体の仕様は3種類のグレードに分かれており、Intelによると、Gen11 iGPUの上位モデル「Iris Plus Graphics」は、第8世代Coreプロセッサーで採用された第9世代(Gen9)iGPUと比べ、ゲームのフレームレートが最大1.8倍向上しているという。

Gen11 iGPU最上位のIntel Iris Plus Graphicsでは、64基の実行ユニット(Shaders)を搭載している

Gen11 iGPU最上位のIntel Iris Plus Graphicsでは、64基の実行ユニット(Shaders)を搭載している

実際、Gen11 iGPUの最上位で実行ユニット数64基のIntel Iris Plus Graphicsで、Epic Gamesの人気FPSゲーム「フォートナイト」をフルHD解像度、画質(プリセット)「中」でプレイしてみると、フレームレートは40~50fps程度になっていた。ゲームを遊ぶ上で「快適さ」の指標になる数値「60fps」を切ってしまっているため、カクツクことがあるものの、画質設定次第では十分プレイ可能だ。

フォートナイト(クリエイティブ)のワンシーン。Intel Iris Plus Graphicsなら、解像度や画質次第でライトゲームをプレイできる

フォートナイト(クリエイティブ)のワンシーン。Intel Iris Plus Graphicsなら、解像度や画質次第でライトゲームをプレイできる

Ice Lakeのコア/スレッド数は基本4コア/8スレッドで、稼働クロックや、バッテリー駆動時間に影響するCPUのTDP(熱設計電力)に関しては、現在28W、15W、9Wの3つのグレードに分かれており、全12のSKUが用意されている。

また、PC全体の性能に影響するメインメモリーのスピードでは、Ice Lakeの場合DDR4-3200のほかに、LPDDR4X-3733までをサポートしており、Comet Lakeの場合DDR4-2666または、LPDDR3-2133、LPDDR4X-2933よりも高速になっている点もポイントといえるだろう。

Comet Lake

Intel最先端の10nmプロセスで製造され、最新のiGPUなどを採用するIce Lakeと変わって、これまでと同じ14nm製造プロセスを採用するComet Lakeの最大の強化点は、6コアと8コア(Comet Lake-H)を投入した点になる。

6コア/12スレッドをTDP15Wの「Uプロセッサー」で実現しており、ベース稼働クロックは1.1GHzと抑え気味だが、最大稼働クロック5.1GHz(シングル時)、4.9GHz(マルチ時)のスペックを備えている。さらに、TDPが45Wになる「Hプロセッサー」では、6コア/12スレッドを2SKU、8コア/16スレッドモデルを3SKU用意し、それぞれ5GHzを超える稼働クロックを実現している。

また、TDPが7Wとなる超省電力な「Yプロセッサー」を用意しており、U、Y、Hプロセッサーを合わせると18種ものSKUを用意している。

統合グラフィックス機能重視のIce Lake、CPU処理性能重視のComet Lake

2つのスキームに分かれる第10世代Coreプロセッサーだが、そのうちIce LakeはiGPUの統合グラフィックス機能重視といえる。Comet Lakeは、これまでと同じ14nm製造プロセスや、Gen9 iGPUを採用する一方で、超省電力な4コア/8スレッドCPUから、動画の編集・エンコードといったクリエイティブな作業に効いてくる6コア・8コアや、4GHz超えの稼働クロックとなるSKUを数多く用意するCPU処理性能重視といった位置づけと思っていいだろう。

Comet Lakeの弱点といえるiGPUは、NVIDIA GeForceや、AMD RadeonといったdGPU(ディスクリートGPU。外付けGPU)を組み合わせることで、コジマプロダクションの「DEATH STRANDING」(デス・ストランディング)などといった最新の重量級3Dゲームも快適に遊ぶことが可能になる。その分コストはアップするものの、動画や写真の編集・管理から、趣味を活かした動画配信への挑戦や、最新ゲームの高画質ゲーミングなどをノートPCで快適に行うことが可能だ。

第11世代Coreプロセッサー(Tiger Lake)が正式発表

Intelは2020年9月3日、モバイル向けCPUとして第11世代Coreプロセッサー(Tiger Lake。タイガーレイク)を発表した。TDPによって「UP3」(12~28W)、「UP4」(7~15W)の2系統を用意しており、計9SKUを展開。競合製品と比べ、実環境のワークフローにおいて、コンテンツ作成が最大7倍、オフィス生産性が20%以上、ゲームストリーミングでは2倍以上の高速化を実現しているという。第11世代Coreプロセッサーを搭載した150機種以上の製品は、Acer、ASUS、Dell、Dynabook、HP、Lenovo、LG、MSI、Razer、Samsungなどから登場予定という。

  • UP3(12~28W): Core i7-1185G7、Core i7-1165G7、Core i5-1135G7、Core i3-1125G4、Core i3-1115G4
  • UP4(7~15W): Core i7-1160G7、Core i5-1130G7、Core i3-1120G4、Core i3-1110G4
第11世代Coreプロセッサー(Tiger Lake)

第11世代Coreプロセッサー(Tiger Lake)。写真左が「UP3」(12~28W)、右側が「UP4」(7~15W)

Tiger Lakeは、第10世代(Ice Lake)と同じ10nmプロセスながら、新技術「SuperFin プロセス・テクノロジー」を採用した高性能トランジスターを投入。Thunderbolt 4(USB4準拠)やIntel Wi-Fi 6(Gig+)をサポートするほか、モバイル向けとして初めてPCIe Gen 4インターフェイスを採用している。

第11世代Coreプロセッサー(Tiger Lake)。Thunderbolt 4(USB4準拠)ほか、モバイル向けとして初めてPCIe Gen 4インターフェイスを採用

チップセットにあたるPCH(Platform Controller Hub)。Intel Wi-Fi 6(Gig+)をサポート

CPU内蔵グラフィックス(iGPU)としては、グラフィックス実行ユニット数96基(最大)を備えるIntel Iris Xe Graphics、または実行ユニット数48のIntel UHD Graphicsを内蔵。パフォーマンスが前世代と比較して 最大2倍向上し、ゲームだけでなく、ストリーミング性能も競合製品と比較して2倍以上高速化したという。

Intel Iris PLus Graphics(Gen11)とIntel Iris Xe Graphicsの仕様比較

Intel Iris PLus Graphics(Gen11)とIntel Iris Xe Graphicsの仕様比較

カーレースゲーム「GRID」をフルHD表示で動作させた際のフレームレート比較。Intelによると、第11世代Coreプロセッサー(Intel Iris Xe Graphics)が58fps、Ryzen 7 4800Uが38fps、第10世代Coreプロセッサー+dGPU「NVIDIA GeForce MX350」が33fpsとなったという

カーレースゲーム「GRID」をフルHD表示で動作させた際のフレームレート比較。Intelによると、第11世代Coreプロセッサー(Intel Iris Xe Graphics)が58fps、Ryzen 7 4800Uが38fps、第10世代Coreプロセッサー+dGPU「NVIDIA GeForce MX350」が33fpsとなったという

さらにIntel Xe Graphicsには、Intel DL ブーストを搭載した、AI推論として初の命令セットも採用しており、最大5倍のAIパフォーマンスを実現しているという。またIntel GNA(Gaussian and Neural Accelerator) 2.0を介したニューラルノイズ抑制、背景のぼかしなども可能。

Intel Evo Platform Brand

Intelは、以下に挙げる内容を含むノートPC向け認証プログラム「Project Athena」第2版についても公開した。Project Athena準拠の製品はIntel Evo Platform Brandのロゴマークが貼付される。EvoベースのノートPCは、年内に20種類を超える製品が発売予定としている。

  • モバイル向け第11世代Core i5/i7およびIntel Xe Graphicsを搭載
  • 8GB以上のメモリー
  • 256GB以上のPCIe/NVMe SSD
  • Thunderbolt 4(USB4準拠)
  • Intel Wi-Fi 6(Gig+)
  • AI(推論)アクセラレーション(Intel DL ブースト + Intel GNA 2.0、OpenVINO、WinML)
  • バッテリー駆動時も安定した応答性
  • スリープ状態から1秒未満で起動
  • フルHDディスプレイ搭載システムにおいて、実際の作業で9時間以上のバッテリー駆動
  • フルHDディスプレイ搭載システムにおいて、30分以内で最大4時間駆動分の急速充電

第11世代Coreプロセッサー(Tiger Lake)スペック表

プロセッサーナンバーで性能を見分ける

第10世代CoreプロセッサーにあたるIce LakeとComet Lakeとでは、プロセッサナンバー(数字とアルファベットを組み合わせた型番)の命名規則が異なっている。また第11世代のTiger Lakeは、Ice Lakeの名目規則が引き継がれた形だ。どのCPUが高性能なのか、ひと目で判断できなくなっている点も知っておきたいところだ。

プロセッサナンバーの命名規則

プロセッサナンバーの命名規則

まずIce LakeとTiger Lakeは、「Core i×」の後ろの数字が4桁で、前半2桁がCPUの世代(第10世代または第11世代)、続く2桁がCPUのSKUになる。そして続くアルファベットと数字で統合グラフック機能(iGPU)のグレードを表している。例えば「Intel UHD Graphics」を内蔵するなら「G1」、「Intel Iris Plus Graphics」の実行ユニット数48基なら「G4」、実行ユニット数64基なら「G7」となっている。

基本的に、TDPの違いを表していた「U」や「Y」はなくなったが、新たに追加されたTDP28WのSKUのみ、CPUのSKUの後に「N」が追加され「Core i×-10××NG×」となっている。TDPが分かりづらくなったが、Ice Lakeの特徴となるiGPUのグレードは、ひと目でわかる形だ。

そしてComet Lakeは、これまでのIntel モバイル向けCoreプロセッサーと同じになる。Core i×-10より後ろの数字3桁がCPUのSKUで、末尾のアルファベットがTDPの種別になっている。なお、TDPがデスクトップクラスの45Wになっているクリエイターやゲーミング用途向けのハイエンドの「H」には、末尾に「K」が追加され、オーバークロック機能の「Intel Speed Optimizer」に対応する「Core i9-10980HK」もある。

基本的に、CPU処理性能が高いほどCPUのSKUの数字が大きくなるという点は、これまでと同じと思って問題ない。しかし今後は、プロセッサーナンバーだけで比べるのは止めて、SKUのスペックを確認するようにした方が安全だろう。

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任天堂は次世代ノスタルジアの封印を剥がしたが、ファンは心配している

「いつ頃からか」という問題ではなく、任天堂が「ファミコン世代を超えたコンテンツを本格的に活用し始めるかどうか」ということが常に考えられてきた。同社は米国時間9月3日、ついにその意図を示したが、64ビット時代以降の古典的なゲームに対する任天堂の意図を心配するファンもいるようだ。

スーパーマリオブラザーズの35年の歴史を祝うビデオの中で、任天堂は象徴的な配管工の主人公を主人公とした新旧のゲームを発表した。

その発表のいくつかは、いい意味で非常に任天堂らしいものだった。「マリオカート ライブ ホームサーキット」は、マリオカートを作る「Labo DIY プロジェクト」のような、現実とゲームの間のギャップを橋渡しすることは素晴らしいアイデアであり、コンソールゲームで他社がやっていることとは異なる。そして、「スーパーマリオブラザーズ」と「スーパーマリオブラザーズ2」(スーパーマリオブラザーズ ザ・ロストレベルズ)がプリインストールされたレトロなスタイルの「ゲーム&ウオッチ スーパーマリオブラザーズ」は、今年のホリデーシーズンに人気のギフトになることは間違いないだろう。

任天堂はまた、最も古く、ある意味では最も保守的なフランチャイズである「スーパーマリオブラザーズ35」で、35人のプレイヤーが同じレベルで競い合い、お互いにハザードを送り、さまざまな勝利条件でゴールを目指すバトルロイヤルバージョンのようなものを試してみたいという意欲を示している。誰もが好きなブロックベースのパズルに似たような変換を適用した「テトリス99」の論理的な続編であり、潜在的に多くの楽しみがある。

任天堂はまた、35人のプレーヤーが同じレベルで競い合い、さまざまな勝利条件で締めくくるという同社おなじみのバトルロイヤルゲーム「スーパーマリオブラザーズ35」を、最も古く、ある意味で最も保守的なシリーズで実験しようとする意思を示した。いわば、同社が99人の対戦ゲームとしてリメイクした「Tetris 99」の論理的続編だ。誰もが気に入っているブロックベースのパズルに同じような変換を施しており、大いに楽しめる可能性を秘めている。

しかし、NINTENDO64やゲームキューブなどのファンのお気に入りをSwitchに持ち込むことになると、同社はユーザーに多くの不満を残した。

任天堂が過去作品を復活されるアプローチは少々行き当たりばったりだった。Nintendo Onlineの加入者にファミコンやスーファミのゲームを無料で与えることは、ある意味ではいいボーナスであるが、多くのプレイヤーはすでに以前のコンソールでそれらのゲームのために出費している。しかも、おそらく複数回。「なぜ、Wiiのバーチャルコンソールで購入した『光神話 パルテナの鏡』(Kid Icarus、キッド・イカロス)をSwitchに持ち込んで、契約せずに遊べないのか」と疑問に思うプレーヤーもいるだろう。任天堂はこれまでいい答えを出したことはないが、「SNES Mini」(北米版ニンテンドークラシックミニスーパーファミコン)では優れた代替品を提供しているが、もちろんこれもゲームを再び購入することを意味する。

何人ものプレイヤーが疑問に思ったのは「任天堂は誰もがアクセスできるようにNINTENDO64タイトルを過去世代のゲームのライブラリに追加するのか。それとも気取って別々に販売するのか」ということだった。マリオとゼルダの35周年が近づく中、これは非常に重大な関心事だ。

結局のところ、任天堂は誰もが何かを望んでいるように見える解決策を、どうにかして編み出した。

画像クレジット:任天堂

「スーパーマリオ3Dオールスターズ」コレクションには、それぞれNINTENDO64の「スーパーマリオ64」、ゲームキューブの「スーパーマリオサンシャイン」、Wiiの「スーパーマリオギャラクシー」が収録されている。画面比率を4:3サイズから16:9のフルサイズに改良し、7128円で9月18日発売予定だ。もちろん、これらはすべて素晴らしいゲームだ。しかし、クラシックであるからといって、現代の視聴者にアップデートする方法がないわけではない。

マリオ64を例に挙げてみよう。普遍的に愛され大きな影響力を持っているもかかわらず、いくつかの面で少し残念だ。コレクション収録のマリオ64は、現代のコンソールでの最低限の操作性を満たしているに過ぎない。確かに、現在のSwitchコントローラで動作し、更新された解像度でプレイできる。しかし、それ以上のものはなく、元の4:3のアスペクト比を変更する必要すらなかったかもしれない。

驚くべきことに、Nintendo DSの再リリースのために行った大幅なアップグレードも含まれていなかった。オリジナルのオールスターズであるSNESでは、スプライトの再描画やその他の改良が行われていた。これはゲームの質を高めると同時に、21世紀の消費に適したものにするために、長年エミュレーターや改造に頼らざるを得なかったファンにとっても正しい道を作る機会であった。

今回その代わりに任天堂は、絶対的な最大値と絶対的な最小値を設定した。数週間後に発売される「ゲーム&ウオッチ スーパーマリオブラザーズ」は、来年の3月までの限定生産だ。その先について任天堂はなにも言っていない。

画像クレジット:任天堂

長年の顧客は、任天堂の斜め上の戦略や野心のなさに驚かないだろう。同社は極端な保守主義と目を見張るようなリスクテイクのユニークな組み合わせを制度化してきた。片手でオーバーデリバリーし、もう一方の手でアンダーデリバリーするのが任天堂のアプローチであり、多くのプレーヤーは片手がマリオ記念日のコンテンツを含むものになることを期待していた。

問題なのは、価格に見合う価値がないゲームが1つあるからだけではなく、それが任天堂の古典的なライブラリ全体への圧倒的なアプローチを示しているからやっかいなのだ。「ゼルダの伝説」 や 「メトロイド」どほかの人気作品の35周年を目前に控え、任天堂も同様にファンを失望させてしまうのではないかと心配になるのは当然のことだ。

確かに、マイクロトランザクションや独占契約など、ゲーマーが表明する悪名高い権利主義のように聞こえるかもしれない。しかし、任天堂と、その保管庫にあるこれらの非常に重要なタイトルとでは期待することは当然異なってくる。

サードパーティ製のプラットフォームでのリリースがほとんどなく、知的財産権侵害とみなされるものを排除するために積極的なアプローチを取っている任天堂は、コンテンツ、特にその王冠とも言えるマリオとゼルダをしっかりと掌握している。もしマリオ64やサンシャイン、時のオカリナなどの改良版が出るとしたら、それを提供できるのは任天堂だけだ。

ときには「リンクの覚醒」のようにゲームを美しく完全に作り直すことを意味することもあるが、それ以外の場合は、Nintendo Switch Onlineに登場するファミコンやスーファミのゲームのように特典として提供するしか方法がないかもしれない。今は誰もが、避けられないゼルダコレクションも同じように骨のない、そして高価なものになるだろうと考えている。

マルチプレイのマリオ64など、何十年も前からプレイヤーが夢見てきたものは、インターネットの荒野には決して出てこないだろう。なぜなら任天堂は記録的な速さで市場から撤退したからだ。夢を実現するためには任天堂に頼らなければならないが、それを実現するのは著しく矛盾している。

任天堂がフタを開けたばかりの名作ゲームの宝箱は、何年にもわたるコンテンツの源となる可能性があり、今後の同社の包括的な戦略を部分的に決定づけることになるだろう。しかし、任天堂が心ではなく財布を狙っているように見えるのは、ゲーマーを不安にさせる。通常は少なくとも両方を狙うものだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:TechCrunch Japan)

インタビュー: 社会人プロゲーマー5年目を迎えた「ネモ」氏が見るeスポーツの世界

インタビュー: 社会人プロゲーマー5年目を迎えた「ネモ」氏が見るeスポーツの世界

ネモ(根本直樹)氏は、世界最大規模のeスポーツチーム「Team Liquid」(チーム リキッド)に所属する、格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズのプロゲーマーだ。大手ゲーム会社スクウェア・エニックスの社員であると同時に、世界な大会で上位に食い込む活躍を続ける社会人プロゲーマーでもある。

ネモ氏は、2016年7月にALIENWAREとプロ契約を行い、2020年に社会人プロゲーマー5年目を迎えた。海外でのeスポーツの隆盛を目の当たりにしプロになり、現在の日本での盛り上がりを支えてきた選手のひとりといえる存在なのだ。

インタビュー: 社会人プロゲーマー5年目を迎えた「ネモ」氏が見るeスポーツの世界

ネモ(根本直樹)氏。世界最大規模のeスポーツチーム「Team Liquid」(チーム リキッド)に所属する、格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズの社会人プロゲーマー。大手ゲーム会社スクウェア・エニックスに勤務しながら、活動を続けている。

経歴および最近の活動内容は?

ネモ氏: 高校生のころからゲームの大会や試合に多く参加し、2016年にプロゲーマーになりました。現在も働きながらプロゲーマー活動を続けています。

基本的には、カプコン公認の世界大会「カプコンカップ」出場のために、公式認定大会「CAPCOM PRO TOUR」(CPT。カプコンプロツアー)に毎年参加して、優勝するように日々練習しています。

今年は、新型コロナ感染症の影響で、オンラインでの大会参加が多いという状況です。試合以外では、ゲーム関連の活動としては、ファン向けの動画配信で自分が参加した試合の解説なども行っています。

ファンの方と対戦することもありますか? 対戦希望者はどういった方が多いですか?

誰でも対戦に参加できる仕組みを利用して、初心者の方や、強くなりたいというファンの方と対戦することがあります。20代だとプロゲーマーになりたい方が多い印象です。30代だとゲームが趣味という方が多くて、せっかくの機会なので対戦したいと考えて挑戦してくれたりします。

どのような経緯で社会人プロゲーマーに?

プロゲーマーになる以前にも、先に触れたように大会への参加など活動自体は続けていて、企業にスポンサーについてもらったのが30歳を過ぎてからです。

前職で、自分のキャリアプランを上司と話した際に検討し始めたことがきっかけで、海外でeスポーツシーンが広がる中、今のままでいいのかと考えたんですね。すでに海外大会にも参加していたので、もっとゲームに特化したスキルを活かしたかった。

そこで「プロゲーマーになる」と決めて、その1週間後には、東京ゲームショウをはじめスポンサーを探すために名刺を配り始めました。ただ2015年当時の日本は、eスポーツがまったく認知されていない状況で、前例がないという理由で断られ続けていました。その後、デルさんのALIENWAREブランドを紹介してもらって、プレゼンを行っています。

当時のALIENWAREブランドでは、ちょうど担当者さんがeスポーツについて検討中という状況だったようです。自分のプレゼンに興味をもっていただいて、必要な資料など具体的なアドバイスをいただきました。そこで手応えを感じて、5~6回プレゼンをさせてもらっています。

その際自分の強みとしたのは、社会人として働きながらでも、eスポーツの大会で活躍できること、強いことです。「年を取ると、いつかはゲームをやめないといけない」という考え方がありますけど、それをなくしていきたい、ゲームが好きな社会人を応援したいということで、ALIENWAREブランドにスポンサーとなっていただいています。

専業プロゲーマーと社会人プロゲーマーの違いは?

社会人プロゲーマーの場合、企業に勤めているので、両親・家族をはじめ周囲の理解が違います。正直なところ、最初は否定的だったのですが、仕事をしながらという点をキチンと伝えて、好きなことを仕事にするということで安心してもらうように説明しました。また、メディアなどに露出しているうちに、少しずつ理解してもらっています。

現在だと専業になっても家族に認めてもらえるかもしれませんが、プロとして活動を続ける上で家族の協力が必要になる場面もあります。家族の理解が得られずに苦労している方は、まず社会人として仕事をしつつ活動を続けて、家族に求めてもらってから専業になるといいかもしれません。

専業プロゲーマーだと、ゲームに使える時間が増えるのはメリットです。ただ自分の場合では、例えば空き時間などに試合内容、技の連携などプレイの流れを練習としてイメージしたりしています。専業プロゲーマーと社会人プロゲーマーとでは、そういったイメージした連携をどの程度早く実際に試せるかどうかが違う程度にとらえています。

プロゲーマーを続ける上での障害は?

ゲームの寿命が選手の寿命につながる可能性があります。特定の1タイトルだけの場合、そのタイトルで勝てないと、そのまま選手寿命なりかねません。例えば人気のある格闘ゲーム、同じジャンルの違うタイトルにも挑戦するなど、ゲームの変化についていく必要があります。

またそれが、多くのファンの方に支持されるかどうかにもつながります。

どのように試合や練習などの時間、あるいは練習場所を確保していますか?

普段の練習は、仕事を終えてからです。また土日を使って長時間練習しています。練習場所は、新型コロナの影響があるので、自宅に環境を整えて練習しています。

こういった状況になる前は、知り合いのeスポーツプロゲーマーさんの自宅に行ったり、eスポーツの施設で練習していました。

また、兼業で社会人としてプロゲーマーを続けられるのは、会社や一緒に仕事をしている方の理解・協力が大きいです。自分が大会で休むとなると、周囲の方に仕事をお願いする必要が出てきます。

そういった活動を認めない会社であれば、そもそも難しく、現職のスクウェア・エニックスでは、周囲の方の協力に助けられています。

練習のためのハードウェア環境は、家庭用ゲーム機を使う場合が多い?

練習で家庭用ゲーム機とPCのどちらを使うのかは、大会によって変えています。昨年のカプコンカップ決勝大会では、試合環境として家庭用ゲーム機を採用していたので、同じ環境で練習するために家庭用ゲーム機を使っていました。

現状ではPCを使う大会が多いので、PCで練習しています。PC系企業の大会スポンサーがだんだんと増えていて、PCが試合環境になることが多くなっています。

日本でのeスポーツの隆盛を受けて、どんな変化がありましたか?

メディアの扱いが変わってきています。メディアで取り上げられる場合、以前は「eスポーツとは?」といった基本的な解説が多かったのですけど、現在ではそういった紹介は減っています。eスポーツは多くの方に認知されるようになっていて、どんなゲームタイトルか、どんな選手なのかが注目され始めているように思います。

そのぶん、選手のブランド力が大事になってきていると感じます。強いというだけではなく、あるeスポーツ選手のイメージやカラーが、スポンサー企業に合うのかなどが大切です。将来のことを考えると、選手にとってもその方が長く活動できるように思います。

例えば自分なら、「ALIENWARE=ネモ」といったイメージを持たれるようになりたいですね。

個人戦とチーム戦で大きく違う点は? 個人戦とチーム戦では、どちらが好きですか?

ストリートファイター限定の話になりますけど、個人戦は、試合結果は自分ひとりの責任、たとえ負けてもあくまで自分だけの責任で済みます。チーム戦は、個人の力量や勝ち負けだけではなく、他選手との兼ね合いが大きい。チームワーク、団結力の違いが大きいですよね。勝ったときの喜びも強いです。

チーム戦はもともと好きで、大学生のころは「闘劇」(とうげき)という大会に、仲が良いメンバーと組んで全国大会での優勝を目指して戦っていました。個人戦とは別の魅力があって、チーム戦は悔しさうれしさがまったく違います。

これからeスポーツに挑戦する10代の個人、また社会人に対してメッセージは?

これからeスポーツに挑戦する方は、「ゼロかイチ」という気持ちで挑んでほしいんですよ。

ダラダラと続けても、正直なところ成功しません。ゲームを楽しくプレイするというだけでは続かない。自分もゲームが楽しくて続けてきたものの、特殊例だったと思います。格闘ゲームというジャンルしかプレイしないような道を歩んできて、他の人より強くてプロゲーマーになれています。

これからプロゲーマーになりたい、eスポーツに挑戦したい方の場合は、ある時はこのゲーム、別の時期には違うジャンルを遊んで、いろんなゲームで「俺はこのゲームで、(別の時期に別のゲームで)プロゲーマーになるんだ」とフワフワしていると、中途半端になってしまうと考えています。

本当にプロゲーマーになりたいなら、「この時期までにプロになる」と決めて活動して、挑戦した方がいい。そこでプロゲーマーになれなかったら踏ん切りも付けやすく、別の道も歩みやすいと思います。

実は、新作ゲームが出る度にそれに飛びついてしまい、試合で勝てるほどの実力がつかず、いつまでもプロゲーマーになれない方が今後増えてしまうのではないかと気にかけています。「あなたは、いつプロゲーマーになれるのか?」ということですね。

ゲームが好きで遊び続けるのは、良いことだと思います。でも、プロを目指す方なら、常に先々のことを考えて挑戦してほしいです。

プロゲーマーのスポンサーになることを検討している企業にアドバイスは?

ゲームをやってきた人は変わっているところがあります。企業とは違う感覚・文化があるので、企業側も自分達の考え方やスタンスを伝えて、プロゲーマー側を成長させていく必要があると考えています。スポンサーとして金銭的な支援をしているのにと不満を持つ企業もあるのですが、多少長い目で見てもらって、ゲームを強みとする選手達をうまく使ってほしいです。

その選手が何が得意なのかも見てほしい。例えば、あまりしゃべりがうまくないのに、MCをやらせるのは無理がありますよね。逆にゲームは多少下手だけど、人に教えることがうまい場合もありえます。企業側のほうが様々な人材を見ているはずなので、一緒にチャンスをつかんだり、長所を伸ばせるようにしてほしいのです。

もうひとつ、企業内で決定権を持つ方、金銭面で権限を持つ管理職が、ゲームを知っている世代やゲームで育った世代になってきたという変化も感じています。自分がプロゲーマーになるためにプレゼンをして回った5年前と比べても、ゲームに対する理解度の高さが違います。

その点では、ゲーマーと企業との間のインターフェースが整って、コミュニケーションが取りやすくなってきています。その影響を考えると、eスポーツはむしろこれからスタートといえる業界で、今後理解度の高いスポンサー企業がさらに増えて、もっと変化する可能性があると考えています。

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任天堂が往年のゲーム&ウォッチをマリオ版としてカラー画面・USB-C化でリメイク、11月13日に5478円で発売

任天堂が最初に作った携帯ゲーム機はなにか?「ゲームボーイ」ではない。任天堂は、あの象徴的な灰色の獣を発売する10年近く前から「ゲーム&ウォッチ」を作っていたのだ。同社は9月2日、「ゲーム&ウォッチ」を現代風にアレンジした限定版で復活させることを発表した。

スーパーマリオブラザーズ35周年記念の一環として発売されたこの時計は、完全にマリオをテーマにしたもので、その名も「ゲーム&ウオッチ スーパーマリオブラザーズ」。

初代「ゲーム&ウォッチ」と同じく、遊べるタイトルがかなり限定されている。公式ページでは、「スーパーマリオブラザーズ」「スーパーマリオブラザーズ2」、そして1980年4月に発売されたゲーム&ウォッチの第1作「ボール」をマリオの皮を被せてリメイクした合計3タイトルが挙げられている。全部でたった3つのゲームだが、このような以前のデバイスで起こったことを見てきたことを考えると、ファンがこのゲームを開いて、あっという間にそれ以上のゲームが出てきても驚かないだろう。

40年近くで多くのことが変わってしまったので、任天堂はこのゲーム&ウォッチに、おそらくいまでは当たり前のように思えるいくつかのアップグレードをこっそりと施している。例えば、オリジナルのディスプレイが白黒だったのに対し、このゲームはフルカラー液晶を搭載しており、USB-Cで充電することができる。任天堂によると、1回の充電で約8時間持つとのこと。

時計モード

付属のゲームをプレイしていないときは、マリオがテーマの35種類のシーンが用意された小さなポータブル時計になる。もし任天堂がこの時計を正しく機能させることができれば、多くの人々の机の上で永久的な地位を得ることができるだろう。

任天堂は「近いうちに」としているが、具体的な生産台数は明らかにしていない。11月13日にメーカー希望小売価格5478円で出荷され、2021年3月末までの期間限定生産となっている。

画像クレジット:任天堂

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(翻訳:TechCrunch Japan)

対話型物語のノーコード制作プラットフォーム「Dorian」が3.3億円を調達

Dorian(ドリアン)の創業者でCEOのJulia Palatovska(ジュリア・パラトフスカ)氏は、彼女のプラットフォームを提供することで、小説家をはじめとする物語の語り手たちが自分のゲームを作成する手助けをしたいと語る。

今回そのスタートアップが、シードラウンドで315万ドル(約3億3000万円)の調達を行ったことを発表した。ラウンドを主導したのはMarch Capital Partnersで、参加したのはVGames、Konvoy Ventures、London Venture Partners、Michael Chow(Twitchの「Artificial」シリーズの共同クリエーター)、Andover Venturesそしてタレントマネジメント会社のNight Mediaだ。

パラトフスカ氏は、以前はG5 Entertainment(G5エンターテイメント)のビジネス開発責任者としてゲーム業界に関わっていたが、やがてナラティブゲーム(物語ゲーム)やインタラクティブフィクション(対話型物語)にも夢中になったと語る。また、すでにインタラクティブフィクションのためのプラットフォームはあったものの、それらに関して彼女は「どれもシングルプレイヤーで、他のプレイヤーたちと遊んだり協力したりする機会がない」ことから、「私がチャンスだと考えたものを欠いている」と考えたのだという。

それから彼女は、私にDorianプラットフォームのクイックツアーを行い、作家がコーディングを行うことなく、基本的にさまざまなビジュアルアセットから選択して(最終的には、独自のアセットをアップロードできるようにもなる)キャラクターと背景をデザインするやり方を見せてくれた。一方、フローチャートスタイルのインターフェイスを使用して、作家がストーリーのさまざまなシーンを接続し、プレイヤーの選択肢を作成することもできる。また、パトラフスカ氏が先に触れたように、他の作家たちとストーリー上でリアルタイムに協力することもできる。

「作家の生産性に関していえば、私たちのエンジンでインタラクティブフィクションを作成することと、ただフィクションを書くことの間にはほとんど違いがないと思っています」と彼女はいう。

Dorian Gunmen Scene

画像クレジット:Dorian

私の見た範囲では、生み出されるゲームは、Pocket GemsのEpisode(未訳記事)のようなプラットフォーム上で見られるものに似ている。つまり技術的な飾り機能が多くないため、ストーリー、ダイアログ、キャラクターの選択が前面に押し出されるようなスタイルだ。

私がオープンソースのゲーム作成ソフトウェアであるTwine(トゥワイン)について尋ねてみたところ、パトラフスカ氏はTwineは「単なるツール」だと答えた。

「ツール提供とディストリビューションの両方を行う、Robloxのような存在になりたいのです」と彼女はいう。

つまり、作家はDorianを使用してインタラクティブなストーリーを作成し、またDorianアプリを使ってそれらのストーリーを公開することもできるということだ (作家は、作品に対する知的財産権を所有したままだ)。パトラフスカ氏は、Dorianは読者の反応に関する詳細な分析も提供することも指摘した。これは、ストーリーの作成に役立つだけでなく、プレミアムストーリーの選択を通しての収益化にも役立つ。

実際、Dorianによれば、約5万人のプレーヤーを対象とした初期のテストでわずか1回または2回の繰り返しで、作家は収益を70%改善できたという。またパトラフスカ氏は、「Black Mirror: Bandersnatch(ブラックミラー:バンダースナッチ)」などのインタラクティブ映画とは異なり、Dorianのゲームは「複数のブランチをすばやく簡単にテストできます」と述べている。

現在、Dorianは招待制だが、2020年の後半にはさらに広い範囲に公開される予定だ。パトラフスカ氏ゲーム経験の有無を問わず作家を募集しているが、同時に彼女は、完全な初心者たちからも数多くの素晴らしい貢献が得られることを期待している。彼女はDorianが「作家にとって、RobloxやTwitchのような、完全にオープンなプラットフォームになる」ことを望んでいる。

March CapitalのGregory Milken(グレゴリー・ミルケン)氏は声明で「Dorianが、作家の収益化に重きを置きながら、ストーリーテリングを重視するインタラクティブなプラットフォームを開発できたことは、この先大いなる変革を引き起こすでしょう」と語った。「ジュリアと彼女のチームは、影響力はあるものの過小評価されている、多様なコンテンツクリエーターの読者たちの、注目を捕らえるためのコミュニティを育成しています」。

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画像クレジット::Malte Mueller / Getty Images

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(翻訳:sako)

アップルがFortniteを筆頭にEpic GamesのApp Storeアカウントを完全削除

Epic GamesがアップルのApp Storeから削除された。すでにmacOSやiOSデバイスにFortnite(フォートナイト)をダウンロードしている場合はまだ動作するが、EpicアカウントがApp Storeからなくなるため、Fortniteの開発者が新しいアプリやアップデートをAppl Store経由では配信できなくなることを意味する。つまり、今後登場する新しいシーズンなどはプレイできない確率が高い。

アップル専門メディアのMacStoriesでマネージング・エディターを務めるJohn Voorhees(ジョン・ボーヒーズ)氏は、App Storeでは現在FortniteのライバルであるPUBGがフィーチャーされていることと同様に、Twitter上でEpic Gamesアカウントの完全削除について指摘している。

アップルは声明で今回の経緯を以下のように説明している。

App StoreのEpic Gamesのアカウントを終了せざるを得なくなったことに失望しています。我々は、Epic Gamesのチームとは長年にわたり、彼らのローンチやリリースで協力してきました。裁判所は、Epicがこのような状況を作り出すまでの10年間、Epicがこれまで守ってきたApp Storeのガイドラインに従うことを、訴訟が進む間もEpicに遵守するよう勧告しました。しかしEpicはこれを拒否しました。その代わりに、彼らはApp Storeのガイドラインに違反するようにデザインされたFortniteのアップデートを繰り返し提出しています。これはApp Storeのほかのすべての開発者に公平ではなく、顧客を彼らの戦いの真っ只中に追い込んでいます。我々は将来的に再び協力し合えることを願っていますが、残念ながら現在はそれができません」

またアップルは、Epicが不満を持ったユーザーをAppleCareに誘導してサポート問題を起こしているとも述べている。これはEpicとアップルの論争における最新の展開で、開発者が今月初めにFortniteでApp Storeを介さない直接支払いの機能を導入したことで、App Storeでの支払いにかかる30%の手数料を回避しようとしたことに端を発している。これによりFortniteはApp Storeから一時削除された。Epicはすぐに訴訟を開始し、その市場力を乱用しているアップルを非難する宣伝キャンペーンを展開した

今週初め、連邦地方裁判所の判事はアップルに対し、開発者向けにEpicが開発している3DゲームエンジンであるUnreal Engineへのアクセスをブロックしないよう命じたが、Fortnite自体ははApp Storeのルールに従うまで除外されるという見方が強かった

米国時間8月28日のApp StoreからのEpic Gamesのアプリの削除は、Epicが別のアカウントで管理しているUnreal Engineには影響しないだろう。

画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

SequoiaがビデオゲームエンジンUnityのIPOで大きなリターンの可能性

米大手VCのSequoia Capital(セコイア・キャピタル)とそのパートナーらがラスボスを倒せるなら、ビッグボーナスが待っている。

大方の予想どおり、3DゲームエンジンのUnity(ユニティ)は8月24日、フォームS-1をSEC(米証券取引委員会)に提出した(SECサイト)。今後数週間での公開を目指し、ロードショーの準備中だ。

Unityの株主情報が公開された今、IPOの大きな勝者が1社明らかになった。それはSequoiaだ。申請書類によると、Sequoiaの現在の保有割合は約24.1%。Unityの直近のバリュエーションは2019年半ば時点で約60億ドル(約6400億円)だった(未訳記事)。数週間経てば市場での価値がわかる。しかし、Sequoiaにとって数十億ドル(数千億円)のほぼ4分の1を保有していることは大きなリターンになる。

もう1つの主要なVC投資家はSilver Lake(シルバーレイク)。2017年に最大4億ドル(約430億ドル)を投資したようで(PR Newswire記事)、現在18.2%を保有している。創業者および経営幹部の中では、Unityの創業者で現在取締役を務めるDavid Helgason(デビッド・ヘルガソン)氏が4.4%を、Unityの現在のCEOであるJohn Riccitiello(ジョン・リッチティエッロ)氏が3.4%を保有している。申請書類によれば株主は合計782人だ。

Sequoiaの持ち分について興味深い点は、2009年に遡る10年以上前のシリーズAでUnityに最初に投資して以来、長期間でUnityがどれだけ成長したのかということだ。下表で、Sequioaのさまざまなファンドからの長年にわたる投資を確認してほしい。

Sequoiaがビデオゲームプラットフォームの分野に手を付けたのは確かに早かったが、何年にもわたってカギとなったのは、成長投資の一環としての追加投資と、おそらく初期の投資家、従業員、創業者からの普通株の買い集めだ。最初の12号ファンドからの出資割合は合計10.28%だが、グロースファンドからは合計で13.82%だ。

最後に、シリーズAから現在までのUnityの株価上昇のグラフを以下に示す。

リークされたS-1申請書類のコピーに基づきTechCrunchが8月20日に報じたPalantirの数字(未訳記事)とは異なり、Unityの業績は過去10年間で比較的上向きだ。2011年のシリーズBと2016年のシリーズCの間には調達額にかなりの開きがあり、価格は指数関数的な成長カーブを描いている。今度は、公開市場の反応を見てみよう。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

ゲームエンジンのUnityはIPOを控えて業績好調

Unity(ユニティ)は2004年にコペンハーゲンのアパートの一室で創業した(未訳記事)。新規株式公開(IPO)を間近に控える同社の数字はかなり強力だ。

最大のライバルであるEpic Games(エピックゲームズ)はアプリケーション(ゲームを含む)販売に関わる手数料を巡ってAppleと大掛かりな公開対決を繰り広げている最中だが、Unityは困難と戦いながら損失を縮小し、ゲーム開発市場の半分以上の支配を維持している。

2020年の前半6カ月に、同社は3億5130万ドル(約373億円)の売上で5420万ドル(約58億円)の損失を出した。これは2019年の売上5億4180万ドル(約575億円)、損失1億6320万ドル(約173億円)、2018年の売上3億8080万ドル(約404億円)、損失1億3160万ドル(約140億円)と比べて損失の削減に成功している。

売上の増加と損失の縮小は、投資家にとって投資先企業が黒字化に向けて進む上で期待できる。この会社の成長を示すもう1つの兆候が年間10万ドル(約1060万円)以上の売上に貢献する顧客の数だ。今年前半、Unityにはそういう顧客が716人いて、プラットフォームの健全さを表している。

UnityはNYSE(ニューヨーク証券取引所)で1文字のティッカーシンボル 「U」で取引される。NYSEに残っていた1文字シンボルはごくわずかだ。ちなみにPandora(パンドラ)はPの文字を2018年にLiberty Mediaに買収された(未訳記事)際に放棄している。

関連記事:How Unity built the world’s most popular game engine(未訳記事)

Epic Gamesと異なり、Unityは長年主要プラットフォームやゲーム会社の協力を得て、自社のエンジンをできる限り多くのデベロッパーやゲーマーに見せる努力を続けてきた。実際、Apple App StoreとGoogle Play Storeにあるモバイルゲームトップ1000の53%、モバイル、パソコンおよび専用機用ゲームの50%以上がUnityを用いて作られていると同社は推定している。

同社が挙げるトップタイトルには任天堂の「マリオカート ツアー」「スーパーマリオ ラン」「どうぶつの森 ポケットキャンプ」、Niantic(ナイアンティック)の「ポケモンGO」があり、Activision(アクティビジョン)の最新作「Call of Duty: Mobile」もUniyゲームだ。

Unityの課題は、Epicのレンダリングエンジン Unrealほど強力ではないことだが、それも同社がゲーム以外の業界に進出する妨げになっていない。他分野への進出は同社が成功するために継続が必要な取り組みの1つだ。

Unityはすでにハリウッドとのつながりを持っていて、ディズニーの「ライオンキング」リメークで使われたジャングル環境の再構築に使われた。ちなみに 「The Mandalorian(マンダロリアン)」の大部分はEpicのUnrealエンジンを使って作られた。

もちろん、Unityの数字は同社の事業規模が最大のライバルと比べて現在やや小さいことも明らかにしている。2019年、VentureBeatによるとEpicは売上42億ドル(約4460億円)、利益7億3000万ドル(約775億円)だった。そしてノースカロライナ州拠点のゲーム開発会社の時価総額は173億ドル(約1兆8363億円)だ(VentureBeat記事)。

それでもゲーム市場は、2つの会社が生き残るために十分大きいと思われる。「歴史的にゲーム開発ツールビジネスでは大型の企業統合が行われてきたが、この10年はデベロッパーの数が大きく増えているため、業界が2つの主要プレーヤーを支えられる可能性は高い」と、Ampre AnalysisのゲームアナリストであるPiers Harding-Rolls(ピアース・ハーディング・ロールシ)氏が Financial Times(フィナンシャル・タイムズ紙)に語った。

Unityプラットフォームのベンチャー投資家はこの瞬間が来るのを長らく待っていた。会社の将来についても確信しているに違いない。

社の直近の投資ラウンドにおける会社評価額は60億ドル(約6370億円)で、株式の二次販売で5億2500万ドル(約557億円)を調達した。

関連記事:Unity, now valued at $6B, raising up to $525M(未訳記事)

カテゴリー:ゲーム / eSports

タグ:Unity

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

裁判所がアップルにUnreal Engineのブロックを止める命令、ただしFortniteのApp Store復帰は認めず

地方裁判所はEpic Games(エピックゲームズ)に対して、iOS App StoreへのゲームFortniteの一時的復帰の要求を却下するとともに、Apple(アップル)にはゲームの巨人がUnreal Engineをアップルのエコシステムに供給するのを阻止しないよう命じた。裁定は悲喜こもごもの結果となった。

連邦地方裁判所判事のYvonne Gonzalez Rogers(イボンヌ・ゴンザレス・ロジャース)氏は、アップルはEpic Gamesへの報復措置として同社のアカウントを停止したり、アップルのプラットフォーム上で広く利用されているUnreal Engineへのデベロッパーアカウントによるアクセスを制限することを禁止した。

「Unreal Engineプラットフォームそのもの、およびサードパーティーデベロッパーやゲーマーを含むゲーム業界全体に対する著しい損害を招く可能性があることを記録が示している」と同氏は語り、たとえEpic GamesがApp Storeのガイドラインに違反したとしても、Unreal Engineおよびデベロッパーツールに関する契約には違反していないと付け加えた。

「アップルは断固とした行動を選び、その結果として契約上無関係な人々やサードパーティーデベロッパーエコシステムに影響を与えた」とロジャース氏は述べた。

しかしEpic Gamesにとって裁定は完全勝利ではなかった。同社は大ヒットタイトルのFortniteのiOS App Storeへの復活も要求していた。ロジャース氏は、同タイトルはEpic GamesがApp Storeガイドラインに再び準拠しない限りApp Storeから外されたままになると語った。

米国時間8月24日の裁定は、アップルとEpic Gamesの両巨人によるiPhone App Storeの基本的ルールを巡る大がかりな公開バトルに、ひとまずの決着をつけた。2020年8月EpicはアップルおよびGoogle(グーグル)のアプリストアガイドラインを破り、FortniteのiOSおよびAndroidユーザーが直接料金を支払う方法を提供した。アップルとグーグルは、プラットフォーム上のデベロッパーに対してそれぞれの支払プロセスシステムを使用し、手数料を支払うことを義務付けている。ゲームの手数料は取引金額の30%だ。

Epicの行動によってアップルは、おそらく史上最大のベストセラーゲームであるFortniteをApp Storeから削除する決断を下した。アップルの行動を予期していたEpic Gamesは、FortniteがApp Storeから削除された数分後にアップルを訴訟し、史上最も奇っ怪な、あるいは大胆なマーケティングキャンペーンを始動させた。

翌日、アップルはEpic Gamesに対してApp Storeガイドラインおよびデベロッパープログラムライセンス契約違反を根拠に、あらゆるデベロッパーツールを無効化すると伝えた。その結果、Unreal Engineを含む他のプログラムへのアップデートが8月28日まで不可能となった。その後Epic Gamesはアップルに対する差し止め請求を申請した

Unreal Engineはゲームデベロッパーの間で広く使われている人気の開発ツールだ。最近同ツールの評価が高まり、商業映画やDinsey+のThe Mandalorianのようなテレビ番組でも使用されている(未訳記事)。

先週Epic Gamesは、アップルのエコシステムでの将来に不安を感じたデベロッパーがUnreal Engineを離れ始めていると語った。Microsoft(マイクロソフト)のゲーミングデベロッパー体験担当ゼネラルマネージャーであるKevin Gammill(ケビン・ガムミル)氏はEpicによる差し止め要求に声明を追加して支持を表明した。

Xbox責任者のPhil Spence(フィル・スペンサー)氏もツイートで、「我々はEpicのUnreal EngineのためのApple SDKアクセスの維持を支持する声明を提出した。Epicが最新のアップルテクノロジーへのアクセスできることを保証することはゲームデベロッパーおよびゲーマーにとって正しい行動だ」と語った。

ちなみに、マイクロソフトとアップルは彼ら自身の法廷闘争の最中(未訳記事)である。

画像クレジット:Kyle Grillot/Bloomberg / Getty Images

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カテゴリー:ゲーム / eSports

タグ:Apple Epic Games

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

GTAやBioShockのゲーム販売を手掛けるTake-TwoがパズルゲームTwo Dotsなど開発するPlaydotsを買収

モバイルゲームのDots、Two Dots、Dots & Coを開発しているPlaydotsが、ゲーム販売企業のTake-Two Interactiveによる買収に合意した。

Take-Two Interactive Softwareは現金9000万ドル(約95億4000万円)と株式1億200万ドル(約108億1200万円)の計1億9200万ドル(約203億5200万円)でPlaydotsを買収する。

Playdotsは2014年にPaul Murphy(ポール・マーフィー)氏とPatrick Moberg(パトリック・モバーグ)氏がスタートアップスタジオのbetaworksからスピンアウトし(未訳記事)、Tencent(テンセント)とGreycroft(グレイクロフト)の主導により1000万ドル(約10億6000万円)を調達して設立された。現在のCEOは、King.comのエグゼクティブを経て2018年にPlaydotsに加わったNir Efrat(ニール・エフラット)氏だ。

Take-Twoは、BioShock(バイオショック)やNBA 2Kといった人気ゲームの販売、そして傘下のRockstar Gamesレーベルが出しているGTA(グランド・セフト・オート)やRED DEAD REDEMPTION(レッド・デッド・リデンプション)で知られる。Take-Twoは買収の発表(Yahoo! Finance記事)の中で、エフラット氏が引き続き70人が所属するPlaydotsを率いると説明している。

Dotsシリーズのゲームはこれまでに1億回以上ダウンロードされ、そのうち8000万回以上は最も人気のあるTwo Dotsのようだ。

Take-Twoのエグゼクティブバイスプレジデントで戦略および独立系パブリッシング担当責任者のMichael Worosz(マイケル・ウォロッズ)氏は、発表の中で次のように述べている。

我々がPlaydotsを買収することにより、特にカジュアルな無料ゲームの分野において、Take-Twoのモバイルゲームは多様化し強化される。Two Dotsのプレイヤーは増え続けている。またニールのリーダーシップのもとで、 アイテム集めやソーシャルリーダーボード、LiveOpsのテクノロジーを取り入れてゲームを拡張し、長期にわたる有意義な消費者のエンゲージメントを促進している。我々はニールとPlaydotsのチーム全員をTake-Twoファミリーに迎えることをたいへん嬉しく思い、Playdotsの今後の製品開発と我々のビジネスへの長期的な貢献の将来性に大きな期待を寄せている。

画像クレジット:dotsandco

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(翻訳:Kaori Koyama)

抵抗感や衝撃をウェアラブルで再現した一人称ボクシングゲームのフィットネスデバイス「Quell」

Quellは自分をPelotonの廉価版と位置づけている。たしかに料金はPelotonの1/10で、ロンドンを拠点とするスタートアップならそうするかもしれない。新型コロナウイルス(COVID-19)のロックダウンでフィットネスバイクメーカーの企業価値が急上昇し、最近のLululemonによるMirror買収からもわかるように、フィットネスのスタートアップは大人気だ。

しかしQuellとのもっと適切な比較になるのは、任天堂のリングフィットアドベンチャーだろう。このNintendo Switch用の周辺機器は、価格、規模、体験においてQuellに近い。このスタートアップは、リングフィットアドベンチャーと同じくフィットネスにゲームベースのアプローチを取っている。

Quellは一人称のボクシングスタイルのゲームで、画面上のモンスターたちと戦う。発売時にはパソコン版とMac版とiOS版が提供されるが、Androidにも近く対応する。Quellが独特なのは、抵抗感をウェアラブルデバイスで再現していることだ。基本的には調整可能な抵抗感を生むバンドで衝撃をシミュレートし、ジャイロスコープや加速度センサーといったオンボードセンサーでユーザーの動きを追跡する。

画像クレジット:Quell

製品はまだかなり初期のもので、そもそもやっと米国時間8月18日に、Kickstarterでプロジェクトが始まる。目標額は3万ドル(約317万円)ほどで、182ドル(約1万9000円)以下の出資額で入手できる。最終価格は250ドル(約2万6000円)ほどだ。

このシステムに関する多くのことと同じく、月額10ドル(約1060円)のサブスクリプションモデルも検討中だ。同社はTechCrunchに対して「ストーリーモードやクイックファイトモードもある」と語っている。「サブスクリプション料金によって、ローカルやオンラインのマルチプレイヤーなどの可能性が拡大し、将来的には拡張コンテンツも提供される。キャラクターのビジュアルなどのアップデートもあるでしょう」とのことだ。

画像クレジット:Quell

今後はシステムに飽きがこないように、ゲーム体験を拡張していくだろう。またQuellは、サードパーティの開発者にもオープンにして、独自のコンテンツを作成できるようにする可能性も探っている。

ただし現在のQuellは非常に小さなチームで、現在4人が創業者のロンドンにあるアパートの1つで仕事をしている状況なので多くのことが仮定の話だ。実際にチームが本格的に活動を開始したのは2020年2月のことで、フルタイムで活動を始めたのは2カ月前だ。地味な始まりにも関わらず、2020年7月にウェブサイトを立ち上げて以来、同社はすでにY Combinatorの支援を受けており、これまでに1万ドル(約106万円)のプレオーダーを獲得している。新型コロナウイルス(COVID-19)により生じたホームフィットネスへの関心から、いろんな物が出てくるのは驚くべきものだ。

Quellは、2021年中に支援者たちに製品を発送できると予想している。その頃には人々はジムに戻っているかもしれないが、感染拡大の現状を見る限りそれもあやしい。

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タグ:QuellKickstarterフィットネス

画像クレジット:Quell

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Epic GamesがアップルによるUnreal Engineを含む開発ツール全面禁止予告に差し止めの申し立て

App Storeの売上にApple(アップル)が高率の手数料を課することにFortniteの開発元であるEpic Gamesが戦いを挑んだ。アップルはUnreal Engineを含む開発ツールの削除を通告した。しかしEpicは引き下がる姿勢を見せていない。Epicはアップルから来週いっぱいで同社のデベロッパーアカウントを削除し、すべてのデベロッパーツールへのアクセスを禁止することを通知する書面を受け取った。これに対して、米国時間8月17日朝、Epic Gamesはカリフォルニア州北部地区連邦裁判所にアップルに対する差止命令の申立てを行った。

アップルはApp StoreからFortniteを削除し、8月28日を終期としてEpicのすべてのデベロッパーアカウントを削除し 、同時にiOSとMacの開発ツールに対するアクセスも禁ずると通知してきた。我々はこのような報復行為に対し、裁判所に差し止め請求を行っている。詳細はリンク先に。

差し止めの申し立てによれば、Epicはアップルの行為を報復と非難すると同時に、モバイルアプリ市場におけるアップルの独占体制を打ち破ることを使命と考えていることを再確認した。またアップルがEpic Gamesの一切のデベロッパーアクセスを差し止める行為がFortniteと無関係な広汎なビジネスに打撃を与えるものだと指摘した。同社はゲームエンジンを代表する有力なプロダクトであるUnreal Engineを多数のサードパーティのゲーム開発企業にライセンスしている。

申し立てでは「アップルはEpic Gamesに対し8月28日を終期として、同社のプラットフォームでゲームを制作するために必須であるすべての開発ツールへのアクセスを禁止すると通告してきた。これには、Epicが多数のサードパーティーのデベロッパーにライセンスしているUnreal Engineが含まれている。これらのツールは、アップル自身も利用約款に違反するとは一度も主張していない」と述べている。

「アップルは単にFortniteをApp Storeから削除するだけでは満足せず、Fortniteとはまったく無関係なEpic Gamesのビジネス全般に影響する攻撃を仕掛けてきた。最終的には法廷で我々の主張が認められるものと信じているが、差止命令が認められなければEpic Gamesは法廷から最終判断を得るよりはるか前に回復不能なビジネス上の打撃を受けることになる」と主張している。

先週、Epic GamesはFortnite内にアプリストアに手数料を支払うことなく直接支払が可能となる機能を追加することによりアップル、Google(グーグル)双方のアプリストアの規約に違反した。簡単にいえば、Fortniteのプレイヤーはこの機能を利用すればストアに手数料を支払わずに済むため、有利な条件でデジタルグッズの購入ができる。アップルは即座にこれを規約違反としてFortniteをApp Store から削除した。これに対しEpicは反アップルのPRキャンペーンを開始した。テクノロジーの巨人に対する反撃は十分に準備されたものだったようだ。Epic Gamesは反トラスト法による訴訟を起こすと同時にアップルの有名な「1984」CMを下敷きにした「圧制者を倒せ」と主張するビデオを流した。

TechCrunchの取材に対し、アップルはこの展開に関する新たなコメントを避け「アップルはこの問題を解決するためにEpic Gamesと協議しており、FortniteがApp Storeに復帰できるようあらゆる努力を払っている」という従来の主張を繰り返した。

Epic Gamesのアップルの行為に対する差し止め申し立ての全文はこちら

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画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

2020年版「Microsoft Flight Simulator」は完璧ではないが待ち続けたファンの期待を裏切らない出来栄え

長く続いたシリーズの最後のリリースになるかと思われていた「Microsoft Flight Simulator X」の発売から14年が経過した。ちょうど1年前に、マイクロソフトが新しいグラフィックエンジンとBing Mapsの衛星データを使用してこのシリーズを再始動すると発表したとき、古くからのファンはもちろん、旧バージョンをプレイしたことがなくても同社が予告編で披露した次世代グラフィックスに魅了されたユーザーの間では最新版は話題になっていた。新しいMicrosoft Flight Simulatorは待ったかいが十分にあるクオリティーで、8月18日からは自分の目で確かめることができるようになっている。

Microsoft StoreとSteamの両方販売されており、価格はいずれもStandard版が7450円だ。より多くの飛行機や空港にアクセスしたい場合は、1万700円のDeluxe版がある。さらに多くの飛行機を利用したい場合は1万3100円のPremium版も用意されている。各バージョンにどの空港と飛行機が含まれているかの詳細はこちらで確認できる。

フライトシミュレーターを初めてプレイする読者も安心してほしい。Standard版でも他のバージョンと同じ3万6000の空港に着陸することができ、飛行機も十分すぎるほど用意されている。また、必要に応じてPremium版などへのアップグレードも可能だ。

このゲームをとりあえず試してみたいならのXbox Game Passに1カ月間登録するのが最も安上がりだ。私はすでに数週間前にベータ版をかなり深く試しているが、マイクロソフトはPremium版の最終リリースの早期レビュー版を提供してくれたので、それをもう一度見てみる価値はある(未訳記事)。

私がこの最新版を見せたときにみんなが同様に感じたのは「その美しさ」だ。それは風景にも言えることで、Bing Mapsの写真測量データのおかげで細部まで再構築された都市と、マイクロソフトのパートナーであるオーストリアのスタートアップBlackshark.aiが2Dマップから再構築した都市が混在している。なお、詳細はBlacksharkへのインタビューを参照してほしい。リアルなのは都市や町だけではなく、高速道路や地元の道路、街灯、そして夜には家の窓がライトアップされるなど、まるでそこで誰かが生活しているようだ。

気象モデルに注目だ。最新版のFlight Simulatorでは、ゲームでは見たこともないような美しい雲が描かれている。遠くに見える雨雲は、現実の生活の中と同じように見える。そして風は、操縦している飛行機にリアルに作用する。また冬のフライトでは、雪が地面を覆っている。

画像クレジット:TechCrunch

マイクロソフトとフランス拠点のゲームスタジオのAsobo Studios(アソボスタジオ)は、フライトシミュレータで地球のほぼデジタルツインを作ることにした。それを実現するための唯一の方法が、すべてのオブジェクトを手作業で配置するのではなく、機械学習を活用することだった。そのため、最新版の世界にはまだたくさんの奇妙なものが残っている。ベータ版から最終版リリースまでの間に、開発チームがもっと修正してくれることを期待していたが、この点ではベータ版からあまり変化が見られなかった。ダムのように見える橋や、水の中に入ってしまう道路、そして建物や木の位置を間違えたものがいくつかある。

私の見解では、2020年版Flight Simulatorはまだ発展途上であり、最終リリースでもそれは変わっていないと考えている。たとえ間違いがあったとしても、都市や町はほかのフライトシミュレータの有料アドオンよりも高品質で、個人的には納得している。また、これらの画像データの多くはAzureクラウドからストリーミングされており、開発チームはアルゴリズムを微調整し続けているので時間が経てばこのような問題が減ることも期待できる。当初、私はこの間違いにこだわっていたのだが、しばらくするとゲームの楽しみを奪うものではないことに気付いた。

画像クレジット:TechCrunch

マイクロソフトに改善してほしかった点の1つに航空管制がある。これは常にマイクロソフトが、公平に言えば競合他社も苦戦していた分野だ。アルファ版とベータ版の間に問題になっていたもので、最終版でも変わっておらず本当に残念だ。なにが残念かというと、あまり現実的ではないのだ。

Flight Simulatorの航空管制官は通常の指示は出さず、離陸するまでは飛行機側にコントロールを引き渡してくれない。常に全員にゴーアラウンド(着陸復行、着陸のやり直し)するように伝えるのだ。ちなみに現実の航空管制官は、操縦する飛行機が離陸するタイミングを教えてくれる。最終バージョンのFlight Simulatorを使って3日間で行ったゴーアラウンドの数は、私のパイロットライセンスのためのトレーニング全体よりも多い。これは次のアップデートで改善されるはずだ。

あと、個人的には管制官が航空会社を実名で呼んでほしいところだ。ゲームとは異なるが、マイクロソフトはFlightAwareと提携して、飛行機の発着時刻をリアルタイムで表示するサービスを提供している。しかし、どういうわけかゲーム内では限られたモデルしか登場しない。ただし、ユナイテッド航空の欠航便が時折発生していることを除けば、今後さらに多くの旅客機が登場することが予想される。繰り返しになるが、これはおそらく今後のアップデートで改善されるだろう。

画像クレジット:TechCrunch

飛行に関していえば、同社はベータ版以来いくつか微調整を加えている。私はボーイング787のコックピットには乗ったことがないが、私が乗ったシングルエンジンのセスナは期待どおりに動作した。ただし、舵はまだかなり不安定で調整が必要だが。そのほかの飛行機については保証できないが、本物のパイロットも同じようにリアルだと思うはずだ。

また、シミュレーター内の飛行計器にはいくつかバグがある。例えば、GPSシステムがときどき飛行機を滑走路に入れてくれないことがあった。また、ガーミン社の航空機用グラスコックピットであるG1000とG3Xのシミュレーション精度をもう少し上げてほしい。マイクロソフトとAsobo Studioは、アドオン開発者にもっと多くの余地を残すために、あえてこの精度に留めているのだろうか。

画像クレジット:Microsoft

ゲームのパフォーマンスはベータ版から変わっていない。バルセロナやベルリンのような都市で建物の屋根の上をかすめる場合でも、GeForce RTX 2070 SUPERとCore i7-9700Kの組み合わせで常時40フレーム/秒程度の速度を得られた。

パフォーマンスが20フレーム/秒台に落ち込んだのは、フランクフルト空港のように開発チームが手作業で作った空港の上空を低空飛行しているときだけだった。そのときでさえも、空港の上空を旋回して再び飛行した後には数値は40フレーム/秒台に戻っていた。

画像クレジット:TechCrunch

この記事では 「シミュレーター」 と 「ゲーム」 を同じ意味で使っていることに気づいたかもしれない。さまざまな理由でFlight Simulatorがユーザーが望むものを提供してる。飛行訓練、着陸チャレンジ、ブッシュフライング(着陸帯や滑走路が整備されていない場所への着陸や離陸)など、ゲーム要素がたくさんある。また、新型コロナウイルスが蔓延している現在においては、地球を低空でゆっくりと飛行し、素晴らしい景色を眺め、ほかのことをしばらく忘れられる、とてもリラックスできる環境を提供してくれる。とはいえ、ほとんどのカジュアルプレーヤーは、しばらくプレイすると飽きてしまうかもしれない。

ファンにとっては2020年版Microsoft Flight Simulatorは神からの贈り物だ。マイクロソフトが今後もアップデートを続け、多くの企業があらゆる種類のアドオンを開発する予定であることを考慮すると、ファンにとっては楽しみが今後何年も続くための素晴らしい基盤を手に入れたといえる。ゲームにはまだまだ開発の余地が残されており、例えば誰かが航空機や手作りの小さな空港を作ることも可能だろう。

プレビュー版でも言及したが、Flight Simulatorは技術的な驚異ともいえる作品だ。まだ完璧ではないが、その不完全さに目をつぶることはできる。

画像クレジット:Microsoft

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(翻訳:TechCrunch Japan)