航空自衛隊「宇宙作戦群」発足、宇宙領域の指揮統制・監視能力を強化しスペースデブリや人工衛星への妨害行為など監視

防衛省が航空自衛隊「宇宙作戦群」発足、宇宙領域の指揮統制・監視能力を強化しスペースデブリや人工衛星への妨害行為など監視

Japan Ministry of Defence

3月18日、防衛省は航空自衛隊宇宙作戦隊の能力を強化し、宇宙領域での活動を指揮、統制する「宇宙作戦群」を発足、東京都府中市の府中基地で発足記念行事を開催しました。

日本政府は防衛力の新しい軸になる分野として宇宙・サイバー・電磁波の3領域を重視しており、17日の「自衛隊サイバー防衛隊」発足に続いて宇宙分野の能力強化も進めていく方針です。

宇宙作戦群の拠点は府中基地に置かれ、発足当初は70人という比較的少人数で構成され、本部20人、自衛隊(陸海空)との連携をとる宇宙作戦指揮所運用隊に30人、2020年に設置された既存の宇宙作戦隊20人という編成になります。

また2022年度には府中基地に装備の維持管理をする「宇宙システム管理隊」を10人編成で設置し、宇宙作戦隊を40人に倍増して「第1宇宙作戦隊」に改名、さらに山口県の航空自衛隊防府北基地に「第2宇宙作戦隊」を新設する予定です。

第1および第2宇宙作戦隊の役割分担は、主に第1作戦隊が宇宙状況(スペースデブリなど)の監視任務、第2作戦隊は電磁波による日本の人工衛星への妨害行為などの監視にあたるとのこと。現在山口県に建設中の宇宙監視レーダーは第1作戦隊が遠隔で運用します。また、2026年度までに監視用の人工衛星を打ち上げ予定で、レーダーと衛星などを組み合わせた宇宙監視システムを構成するとのこと。

近年は世界各国が再び月への有人探査を目指し、火星への進出なども計画される一方で、宇宙空間の監視体制を強化する動きも目立っています。最も話題になったのは米国が2019年に陸・海・空軍および海兵隊などに並ぶ軍種として設置した宇宙軍ですが、2020年にはフランスも空軍の活動領域を宇宙にまで拡大、防衛力強化を目的として「航空宇宙軍」に改名しています。そして日本でも先に述べたとおり2020年に「宇宙領域における部隊運用の検討、宇宙領域の知見を持つ人材の育成、米国との連携体制の構築」を目的とした宇宙作戦隊を編成しており、これが今回の宇宙作戦群発足の基礎になっています。

(Source:TBS。coverage:防衛省(PDF)、NHKEngadget日本版より転載)

情報通信研究機構(NICT)が世界最高性能の分解能15センチの航空機搭載用合成開口レーダーを開発、技術実証に成功

情報通信研究機構(NICT)が世界最高性能の分解能15センチの合成開口レーダーを開発、技術実証に成功

情報通信研究機構(NICT)は、分解能15cmの航空機搭載用の合成開口レーダー「Pi-SAR X3」(パイサー・エックススリー)を開発し、実証実験に成功した。2008年に開発した「Pi-SAR2」の分解能は30cmだったので、その2倍の性能となる。高精細画像が得られるようになり、自然災害時の被災状況のより詳細な把握や、効果的な救助活動や復旧作業に貢献できるという。

合成開口レーダー(SAR)とは、航空機や人工衛星などに搭載し、移動することで仮想的にレーダー直径(開口面)を大きくする仕組みのレーダーのこと。電磁波を送受信し、主に地表の観測に使われている。NICTの合成開口レーダーでは、X帯の電波(8〜12GHz)を使用しているが、Pi-SAR X3ではそのうち、従来の2倍となる9.2〜10.2GHzの帯域を使用。帯域幅を拡大することで、分解能を向上させた。また、観測データの記録装置は、従来比で書き込み速度は10倍、容量は8倍となった。2021年12月に能登半島上空で初めて行った試験観測では、田んぼに残されたトラクターの轍(わだち)もはっきりと写し出され、その高い性能が示されている。

2021年12月にPi-SAR X3で観測された輪島市近郊の画像と白枠内(田圃)の拡大図。拡大左図:15cm分解能、拡大右図:30cm分解能(Pi-SAR2相当)。Pi-SAR X3は、Pi-SAR2では計測困難だった田圃内の轍(わだち)を鮮明に観測することに成功。地震などで発生する地表面の変化をこれまで以上に詳細に観測可能となった

2021年12月にPi-SAR X3で観測された輪島市近郊の画像と白枠内(田圃)の拡大図。拡大左図:15cm分解能、拡大右図:30cm分解能(Pi-SAR2相当)。Pi-SAR X3は、Pi-SAR2では計測困難だった田圃内の轍(わだち)を鮮明に観測することに成功。地震などで発生する地表面の変化をこれまで以上に詳細に観測可能となった

今後はシステムの最適化による性能の向上を目指し、2022年度からは、地震などの自然災害のモニタリング、土地利用、森林破壊、海洋油汚染、海洋波浪、平時の火口観測などの環境モニタリングに関する技術の高度化を実施する予定とのこと。

産業が求めるレベルまで自動運転技術を前進させる「レーダー」技術を開発するSpartan Radarが総額約28億円調達

大量の機械学習とわずかなレーダーセンサー、そして歩行者の大群をひき殺すことのない自律走行車を求めている市場を見てみよう。8月に1000万ドル(約11億4000万円)を調達したばかりのSpartan Radarが米国時間11月3日、Prime Movers Labが率いる投資家たちからさらに1500万ドル(約17億1000万円)を調達した。このラウンドには8VCとMac VCが参加している

2020年に創業された同社は、2年前には存在しなかった企業だがそれにしては立派だ。同社の同社自身による位置づけは、クルマのレーダーと、同じくクルマの自動運転技術が交差するところにいる企業群の仲間だ。同社によると、現在および次世代の自動運転車(autonomous vehicles、AV)のレーダー技術はかなり進歩しているが、まだ車両自身が、レーダーに「見えて」いるものに対して何をすべきかわからない場合が多く、そのために間違いを起こしてしまうという。

Spartan Radarの創業者でCEOのNathan Mintz(ネイサン・ミンツ)氏は次のように主張する。「自動車産業は低レベルのオートメーションへ移行しているが、それにより、レーダーがLiDARよりも魅力的なものになっています。LiDARは初期にはたくさんの約束を披露してくれましたが、その誇大宣伝の実現には失敗しています。しかし、高解像度システムに対するニーズは消えていません。処理能力も、リアルタイムの超解像度などの高度なアルゴリズムが使えるほど大きくなっているため、今やレーダーは自動車メーカーにとってはるかに優れた選択肢なのです」。

同社はその製品をBiomimetic Radar(生体模倣型レーダー)と呼び、人間の感覚処理を模倣してフォーカス(焦点)とコンテキスト(状況理解)を強化している。同社によると、そのアルゴリズムは処理速度をめざましく高速化し、低い解像度や検出過誤など従来のレーダーの欠陥を減らしている。それにより、自動運転車の安全性と商用展開の規格であるADAS level 2(レベル2)以上をクリアしている。

Spartan Radarのソフトウェアは、現存するほとんどすべてのレーダーシステム上で展開できる。同社は顧客について明言しなかったが、矢継ぎ早の2度の資金調達ラウンドが示すのは、顧客たちが行列を作っているということだ。

「残念ながら私たちが実際に目にしているエビデンスによると、LiDARを使用するシステムは、それが追放するはずだった注意力散漫な人間ドライバーのように振る舞うことがあります。Spartanのレーダーシステムは自動運転技術の前進であり、AVとADASのシステムを今日の産業が必要とするレベルに持ち上げます」と同社の取締役会に加わったPrime Movers LabのゼネラルパートナーDavid Siminoff(デビッド・シミノフ)氏はいう。

「AV企業にはこれまで数十億ドル(約数千億円)が投資され、一部は上場もしました。この業界は今やっと、R&Dの段階を脱して、ラストマイルのデリバリーやトラック、ロボタクシーなど実用ユースケースで大規模に商用化されようとしています。OEMやAV開発企業各社は、2022年の市場化に備えて安全で堅牢なセンサーソリューションを必要とし、そして私たちには、そのニーズに呼応する準備ができています」とミンツ氏は語る。

画像クレジット:Spartan Radar

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ウェザーニューズが周囲50キロを30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

ウェザーニューズが周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

ウェザーニューズは10月14日、高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」を千葉県内に設置し、レーダーの有効性を確認する実証実験を開始したと発表した。2022年6月にかけてレーダーの精度評価と最終調整などを行う。

EAGLEレーダーは、周囲360度を高速スキャンし雲の立体構造を高頻度で観測するというもの。半径50km以内の積乱雲の発達状況をほぼリアルタイムに捉えられるため、ゲリラ豪雨や線状降水帯・大雪・突風・ヒョウなど、突発的かつ局地的に発生する気象現象をより正確に把握できるとしている。

道路の管理事業者における除雪作業判断の支援など新サービスも開発するほか、2年以内に日本を含むアジアの計50カ所への設置を計画。グローバルにおける気象現象の監視体制を強化する。

高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」

ウェザーニューズは、2009年に小型気象レーダー「WITHレーダー」を開発し、全国80カ所に設置・運用してきた。10年以上にわたり、ゲリラ豪雨や突風などの観測実験を行った結果、小型気象レーダーの有効性を確認できたという。しかし、従来のWITHレーダーでは、全方位を3次元で観測するには5分程度かかるため、雲が急激に発達する過程やその変化を詳細に捉えることは困難だった。

そこで、より高頻度な観測を可能にするため、WITHレーダーの後継機としてEAGLEレーダーを開発。同レーダーは、360度全方位を高速スキャンすることで、雨粒の大きさや雲の移動方向を立体的にほぼリアルタイムで観測できる独自の気象レーダーという。最短で5秒ごとに1回転し、半径50kmの詳細な3次元観測データを30秒で取得できる。これにより、ゲリラ豪雨や線状降水帯、大雪、突風、あられ、ひょうなど、局地的に発生する気象現象の把握が可能としている。

ウェザーニューズが周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

千葉県内八街市に設置し実証実験を開始

同社は、同レーダーを千葉県八街市に設置し、実証実験を開始した。2022年6月にかけて、レーダーの精度評価と感度の最終調整などを行う。

レーダーの活用方法として、まずはウェザーニューズの予報センターでレーダーを監視し、観測データを数時間先の予報精度向上に活用する。また、従来のWITHレーダーと同様に雲の様子を3次元的に把握するだけでなく、実証実験と並行して、道路の管理事業者における除雪作業の判断支援や迂回ルートの推薦など、企業向けのサービスを開発する。

また同レーダーの展開を進めるため、総務省(情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会 気象レーダー作業班)と無線免許の新制度策定について検討しているという。新制度が実現すると、同レーダーの設置が加速するとともに、観測データの販売も可能となる見込みとしている。気象データを扱う企業・研究機関などに活用してもらうことで、サービスへの利用や技術の発展に寄与できるとしている。ウェザーニューズが周囲50㎞を30秒で3次元観測する新型レーダーの実証実験、ゲリラ豪雨や線状降水帯の予測精度向上へ

2023年までに50台設置、日本・アジアの気象現象の監視体制を強化

同社は、2014年よりオクラホマ大学と共同でEAGLEレーダーの開発を進めてきたという。2017年6月には、航空宇宙向けの電子機器やシステムを設計・製造しているカナダNANOWAVE Technologiesとレーダーの量産に関する覚書を締結した。

気象レーダーの仕様変更や生産ラインの変更のほか、世界的な半導体不足による影響を受けて当初の計画からは遅れが生じたものの、現在の計画では、今後2年以内に日本を含むアジアの計50カ所にレーダーを設置する予定。引続きレーダーの設置を進め、観測データが十分ではないアジア地域における気象現象の監視体制を強化するという。

自動運転用にレーダーの性能をソフトウェアで向上させるOculiiにGMが数億円規模の出資

レーダーセンサーの空間分解能を最大100倍に向上させることを目標としているソフトウェア開発スタートアップ企業のOculii(オキュライ)は、General Motors(ゼネラル・モーターズ)から新たに投資を獲得した。両社によるとその額は数百万ドル(数億円)に上るという。数カ月前にOculiiは、5500万ドル(約60億5000万円)のシリーズB資金調達を完了させたばかりだ。

関連記事:長い歴史を持つ自律走行車用レーダーの機能向上を目指すOculiiが60億円調達

OculiiとGMは「しばらく前から」協力関係にあったと、CEOのSteven Hong(スティーヴン・ホン)氏はTechCrunchによる最近のインタビューで語っている。GMがOculiiのソフトウェアをどのように使用するつもりなのかということについて、同氏は具体的に明かそうとしなかったものの、GMのハンズフリー先進運転支援システム「Super Cruise(スーパークルーズ)」の機能を強化するために使用される可能性が高い。Oculiiは他にもいくつかの自動車メーカーと協力しており、その中の一社からも出資を受けていると、同氏は付け加えた。

「GMのような企業が、これはすばらしい技術だ、これは将来的に使いたいと言ってくれれば、サプライチェーン全体が注目し、そのソリューションや技術を採用するために、より密接に協力してくれるようになります。それが自動車メーカーに販売されるというわけです」と、ホン氏は語る。

Oculiiは顧客の自動車メーカーのためにハードウェアを製造するつもりはない(ただし、協業しているロボット企業のためにはセンサーを製造していると、同社の広報担当者は述べている)。その代わり、Oculiiはレーダーを製造している企業に、ソフトウェアのライセンスを提供したいと考えている。ホン氏によれば、低価格で市販されているレーダーセンサー(自動運転用に設計されたものではなく、緊急ブレーキや駐車支援などの限定されたシナリオ用に設計されたセンサー)に、同社のAIソフトウェアを使えば、より自動運転的な機能を実現させることができるというのが、Oculiiの主張だという。

「拡張性の高いものを提供する方法はソフトウェアによるものだと、私たちは強く確信しています。なぜなら、ソフトウェアはデータによって根本的に改善できるからです」と、ホン氏はいう。「ハードウェアの世代が新しくなれば、性能がより向上したハードウェアに合わせてソフトウェアは根本的に改善されます。また、ソフトウェアは基本的に、時間が経てばハードウェアよりもずっと早く、安価になっていきます」。

今回のニュースは、レーダーにとって間違いなく好材料になるだろう。レーダーは画像処理に限界があるため、一般的に補助的に使用されるセンサーだ。しかし、LiDARよりもはるかに安価に売られているレーダーの性能を、Oculiiが実際に向上させることができれば、自動車メーカーにとっては大幅なコスト削減につながる可能性がある。

世界で最も多くの電気自動車を販売しているTesla(テスラ)は最近、その先進運転支援システムからレーダーセンサーを外し、カメラと強力な車載コンピュータによるニューラルネットワークを使った「ピュアビジョン」と呼ばれるアプローチを採用することにした。しかしホン氏は、テスラが廃止したレーダーは非常に解像度が低く「既存のパイプラインに何も追加するものではない」と述べている。

しかし、技術が進歩すれば、テスラも必ずしもレーダーを排除しようとはしないだろうと、ホン氏は考えている。「基本的に、これらのセンサーはそれぞれがセーフティケースを改善し、それによって99.99999%の信頼性に近づくことができます。結局のところ、それが最も重要なことなのです。信頼性を、できるだけ多くの9が並ぶ確率まで近づけることです」。

関連記事:テスラの北米向けModel 3とModel Yがレーダー非搭載に

画像クレジット:Oculii

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

カメラではなくレーダーを使ったプライバシーが保護されたアクティビティ追跡の可能性をカーネギーメロン大学の研究者らが提示

部屋が最後に掃除されたのはいつか、ゴミ箱の中身がすでに捨てられたかをスマートスピーカーに問いかけることで、家庭内の争いを解決する(または蒸し返す)ことができる。そんな状況を想像してみて欲しい。

あるいは、健康関連の用途で、エクササイズ中にスピーカーにスクワットやベンチプレスの回数をカウントするように指示できたらどうだろう?または「パーソナルトレーナーモード」をオンにして、あなたが古いエクササイズバイクをこぐ際に、もっと早くこぎましょう、と気合を入れてくれるよう指示できたら(Pelotonなんて必要なし!)?

そして、あなたが食事をしているのをそのスピーカーが認識し、雰囲気にあった音楽を流してくれるほど賢かったらどうだろう?

そしてこうしたアクティビティの追跡を、インターネットに接続されたカメラを家の中に設置することなくできたら、と想像してみよう。

カーネギーメロン大学のフューチャーインターフェースグループの研究で、これらのことが実現できる可能性が浮上している。この研究ではセンシングツールとしてカメラを必要としない、アクティビティ追跡のための新しいアプローチを実証しているのだ。

家の中にインターネットに接続されたカメラを設置することは、プライバシーの観点から言えば、当然大きなリスクとなる。そのため、カーネギーメロン大学の研究者らは、人間のさまざまなアクティビティを検出するための媒体として、ミリ波(mmWave)ドップラーレーダーの調査に着手した。

彼らが解決すべきだった課題は、ミリ波が「マイクやカメラに近い信号の豊富さ」を提供する一方、さまざまな人間の活動をRFノイズとして認識するようAIモデルをトレーニングするためのデータセットを、簡単には入手できないという点である(この点他のタイプのAIモデルをトレーニングするための視覚データとは異なる)。

この問題の解決を目指し、彼らは、ドップラーデータを合成し、人間のアクティビティ追跡モデルにデータを供給することに着手した。プライバシーを保護することが可能なアクティビティ追跡AIモデルをトレーニングするためのソフトウェアパイプラインを考案したのだ。

その結果をワシントンD.C.こちらの動画で確認できる。この動画では、AIモデルがサイクリング、手を叩く、手を振る、スクワットをするといったさまざまなアクティビティを、動きから生成されるミリ波を解釈する能力を用いて正しく認識しているのが示されている。そしてこれは純粋に一般のビデオデータを用いたトレーニングの成果である。

「私たちは、一連の実験結果を通し、このクロスドメイントランスレーションがどのように達成されるかを提示しています」と彼らは書いている。「私たちは、このアプローチがヒューマンセンシングシステムなどのトレーニングの負担を大幅に低減する重要な足がかりであり、人間とコンピュータの相互作用におけるブートストラップ型使用に役立つものであると考えています」。

研究者であるChris Harrison(クリス・ハリソン)氏はワシントンD.C.、ミリ波によるドップラーレーダーベースのセンサーは「非常に微妙なもの(表情の違いなど)」は認識できないと認めている。しかし、食事をしたり本を読んだりといったそれほど活発でないアクティビティを検出するには十分な感度を備えているという。

またドップラーレーダーの持つ動きの検出能力は、対象とセンシングハードウェアの間のLOS(無線波の送受信が可能な範囲)にも制限を受ける(別の言い方をすれば「まだその段階に達していない」ということである。これは、将来ロボットが人検出能力を身につけることを懸念している人にとっては、ちょっとした安心感を得られる情報だろう)。

検出には、当然特殊なセンシングハードウェアが必要になる。しかし、物事はすでにその方向に向かって動き出している。例えば、GoogleはすでにPixel 4にレーダーセンサーを追加するというプロジェクトSoli に着手している。

GoogleのNest Hubにも、睡眠の質を追跡するために同じレーダーセンサーが組み込まれている。

関連記事:グーグルが7インチディスプレイの新型Nest Hub発表、Soliレーダーが睡眠トラッキング用途で復活

「レーダーセンサーがあまり携帯電話に採用されていない理由の1つは、説得力ある使用例がそれほどないためです(ニワトリが先かタマゴが先かということだが)」とハリス氏はTechCrunchに語った。「私たちのレーダーを用いたアクティビティ検出に関する研究により、より多くのアプリを使用できる可能性が浮上しています(例えば食事をしているとき、夕食を作っているとき、掃除をしているとき、運動しているときを認識できるよりスマートなSiriなど)」。

携帯用アプリと固定アプリでは、どちらにより大きな可能性があるかと聞かれ、ハリス氏はどちらにも興味深い使用事例があると答えた。

「携帯用アプリにも固定アプリにも使用事例はあります。Nest Hubに話を戻すと【略】センサーはすでに室内にあるため、それを使用して、Googleスマートスピーカーのより高度な機能をブートストラップすることができます(エクササイズで回数を数えるなど)」。

「建物には使用状況を検出するためにすでにレーダーセンサーが多数取り付けられています(しかし、今後は部屋の清掃が最後に行われたのはいつかなどを検出することが可能になる)」。

「これらのセンサーのコストはまもなく数ドルにまで落ちるでしょう(eBayで扱っているものの中にはすでに1ドルに近いものがある)。従って、あらゆるものにレーダーセンサーを組み込むことが可能です。そしてgoogleが寝室に設置される製品で示しているように「監視社会」の脅威は、レーダーが使用される場合、カメラセンサーを使った場合に比べはるかにリスクの少ないものになります」。

VergeSenseといったスタートアップは、すでにセンサーハードウェアとコンピュータビジョンテクノロジーを用いて、B2B市場向けの、屋内空間とアクティビティに対するリアルタイム分析(オフィスの使用状況を測定するなど)を強化している。

関連記事:職場の人の密度などを分析するサービスVergeSenseがシリーズBで約12.4億円を調達

しかし、解像度の低い画像データをローカルで処理したとしても、消費者環境では、視覚センサーを使用することでプライバシーのリスクが発生すると認識される可能性がある。

レーダーは「smart mirrors」のような、プライバシーをリスクにさらす危険のある、インタネットに接続された消費者向けのデバイスに、より適した視覚的監視の代替手段を提供する。

「ローカルに処理されたからといって、あなたはカメラを寝室や浴室に設置しますか?私が慎重なだけかもしれませんが、私なら設置しません」とハリス氏。

彼はまた、以前なされた研究に言及した。これはより多くの種類のセンシングハードウェアを組み込むことの価値を強調したものだ。「センサーが多いほど、サポートできる興味深いアプリケーションが増えます。カメラはすべてを捉えることができませんし、暗闇では機能しません。

最近はカメラもとても安価なため、レーダーが安いとはいっても、価格で勝負するのは困難です。レーダーの最大の強みは、プライバシーの保護だと思います」と彼は付け加えた。

もちろん、視覚的なものにしろ、そうでないものにしろ、センシングハードウェアを設置すれば、プライバシーがリスクにさらされる危険性は発生する。

例えば、子どもの寝室の使用状況を捉えるセンサーは、そのデータにアクセスするのが誰かによって、適切なものにも、不適切なものにもなるだろう。そして、あらゆる人間のアクティビティは、起こっている事柄によっては、安易に公開できない情報を生成するものだ。(つまり、セックスをしているのをスマートスピーカーに認識されてもかまわないか、という話である)

従って、レーダーを用いたアクティビティ追跡が他の種類のセンサーよりも非侵襲的だとはいっても、プライバシーの問題が生じないとは言い切れないのだ。

やはりそれはセンシングハードウェアがどのように使用されているかによる。とはいえ、レーダーが生成したデータはカメラなどが生成した視覚データに比べ、漏洩によってそれが人々の目にさらされた場合、比較的機密性が低いという点は間違いないだろう。

「いずれのセンサーにも、おのずとプライバシーの問題はつきまといます。プライバシーの問題があるか、ないか、ではなく、それは程度の問題です。レーダセンサーは詳細を捉えることができますが、カメラと違い匿名性が高いといえます。ドップラーレーダーデータがオンラインでリークされても、気まずい思いをすることはないでしょう。誰もそれがあなただとは認識できないからです。しかし、家の中に設置されたカメラからの情報がリークされた場合は、どうでしょうか……」。

ドップラーシグナルデータがすぐには入手できないことを前提とすると、トレーニングデータの合成にかかる計算コストは、どれ程だろうか?

「すぐに使えるというわけではありませんが、データを抽出するのに使用できる大規模なビデオコーパスは豊富にあります(Youtube-8Mのようなものを含め)」とハリス氏はいう。「動きのデータを収集するために人々をリクルートして研究室に来てもらうより、ビデオデータをダウンロードして合成レーダデータを作成するほうが、データ収集を桁違いに速く行うことができます」。

「実際の人物から質の高い1時間のデータを得ようとすると、どうしても1時間はかかります。しかし最近では、多くの良質のビデオデータベースから何百時間もの映像を簡単にダウンロードすることができます。ビデオ1時間を処理するのに2時間かかりますが、これは研究室にあるデスクトップ一台あたりの話です。重要なのは、Amazon AWSなどを使ってこれを並列化し一度に100本のビデオを処理できるということです。そのため、スループットは非常に高いものになります」。

また、無線周波数信号は、さまざまな表面からさまざまな程度で反射するが(「マルチパス干渉」としても知られる)、ハリス氏によると、ユーザーによって反射された信号は「圧倒的に優勢な信号」である。つまり、デモモデルを機能させるために、他の反射をモデル化する必要はない(しかしハリス氏は、機能をさらに磨くために「壁/天井/床/家具などの大きな表面をコンピュータービジョンで抽出し、それを合成段階に追加することができる」と述べた)。

「ワシントンD.C.(ドップラー)信号は実際に非常に高レベルで抽象的なため、リアルタイムで処理するのは特に困難ではありません(カメラよりはるかに少ない「ピクセル」のため)。車に組み込まれたプロセッサーは衝突被害軽減ブレーキシステムやブラインドスポットの監視などのためにレーダーデータを使用しています。そしてそれらはローエンドのCPUなのです(ディープラーニングなどを行わない)」。

この研究は、他のPose-on-the-Goと呼ばれる別のグループプロジェクトとあわせ、ACM CHIカンファレンスで発表されている。Pose-on-the-Goは、ウェアラブルセンサーを使わずに、スマートフォンのセンサーを使用してユーザーの全身のポーズの概要を捉えるものだ。

また、このグループのカーネギーメロン大学の研究者らは、安価に屋内「スマートホーム」センシングを実現する方法をワシントンD.C.以前実証しているワシントンD.C.(これもカメラを使わない)他、ワシントンD.C.2020年は、スマートフォンのカメラにより、デバイス上のAIアシスタントに詳細なコンテクストを供給する方法を示してもいる。

関連記事:音声AIがスマホカメラに映る映像を解析して質問にズバリ答えられるようにするWorldGaze

近年彼らはワシントンD.C.レーザー振動計電磁雑音を使ってスマートデバイスにより適切に環境認識をさせ、コンテキスト機能を与える方法の研究も行っている。このグループによる他の研究には、伝導性のスプレーペイントを用いてワシントンD.C.あらゆるものをタッチスクリーンに変える研究や、ワシントンD.C.レーザーで仮想ボタンをデイバイスユーザーの腕に投影したり、別のウェアラブル(リング)ワシントンD.C.をミックスに組み入れるなどして、ウェアラブルのインタラクティブな可能性を広げるさまざまな方法の研究が含まれていて大変興味深い。

現在の「スマート」デバイスは基本的なことにつまづくなど、あまり賢くないように見えるかもしれないが、今後人とコンピューターのインタラクションが、はるかに詳細なコンテクストベースのものになるのは確かだろう。

関連記事:このロボットはレーザーを使ってその環境を「聴く」

カテゴリー:セキュリティ
タグ:レーダープライバシー個人情報アクティビティカーネギーメロン大学

画像クレジット:CMU

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

事故の根本的問題解決のため超高解像度レーダーを自動運転車に搭載、中国AutoXがArbe Roboticsと提携

テルアビブに拠点を置く超高解像度レーダーのスタートアップArbe Roboticsに、新たな顧客が加わった。中国の自動運転会社AutoXが、同社のレベル4自動運転車に搭載するArbeベースのレーダーシステムを40万台調達したのだ。

両社は声明の中で、Arbe Roboticsのプラットフォームは自転車や歩行者などの交通弱者を正確に認識したり、静止物を検出したり、レーダー画像のあいまいさによる誤警報の除去など、最近の自動運転車事故の原因となっている「根本的な問題」を解決すると述べた。

Arbe Roboticsは独自の2K解像度、毎秒30フレームの画像処理技術を用いて、現在市販されているどのレーダーよりも100倍詳細な画像を提供するとしている。

Arbe RoboticsのKobi Marenko(コビ・マレンコ)CEOは最近のウェブウェブキャストで、同社はすでにティア1の自動車サプライヤー5社と提携しており、チップメーカーのNVIDIAとも提携していると述べた。さらに著名でない配送ロボット会社と「世界最大級の自動車会社」の2社から、追加発注を受けていると付け加えている。

AutoXはAlibaba(アリババ)、Shanghai Motors(上海汽車)、MediaTek(メディアテック)などの支援を受け、中国での自動運転車展開の最前線に立ってきた。同社は本社がある中国最大の都市の1つである深圳で、安全運転手のいない公道での自動運転のテストを行った中国初の企業だ。また、上海では自動運転タクシー「RoboTaxi」のサービスを開始している。

関連記事:自動運転ユニコーンAutoXが中国初のロボタクシーのテストを深センでスタート

またAutoXはカリフォルニア州で人間のセーフティードライバーをともなわない自動運転テストを開始するための許可を得ており、これはWaymoとNurに次いで3社目の許可となった。

今回の提携はテルアビブを拠点とするArbe Roboticsが、特別目的買収会社であるIndustrial Tech Acquisitionsとの合併により、7億2200万ドル(約780億円)の株式評価額で上場すると発表した数週間後に発表された。この動きはM&G Investment Management、Varana Capital、Texas Ventures、Eyal Waldmanなどの投資家による1億ドル(約110億円)のPIPE(非公開投資)によって支えられた。

マレンコ氏はウェブキャストの中で、Arbe Roboticsの収益は2021年にはわずか700万ドル(約7億6000万円)に止まると見積もっており、投資家が同社の技術に期待をよせていることは明らかだ。さらに同氏は2025年には収益が3億ドル(約320億円)を超え、わずか4年間で4185%も増加すると予想している。

関連記事:自動運転車両開発のAutoXがカリフォルニア州で無人運転テスト許可を取得

カテゴリー:モビリティ
タグ:Arbe RoboticsAutoXレーダー

画像クレジット:AutoX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:塚本直樹 / Twitter

コロナ禍で大活躍、空間内の人々を匿名で正確に追跡するDensityのOpen Areaレーダー

世界中の誰もが今、共有スペースに対する考えを再考していることだろう。日々、毎分、どのようにして空間が使用されているかを理解することが重要だ。Density(デンシティー)が開発した天井に取り付けられる小さなレーダーは、目立たないように、しかし非常に正確に人を見つけて追跡し、すべてのテーブル、椅子にいたるまで、オフィス全体を監視するデバイスだ。

そう言うと聞こえが悪いが、心配は無用。詳細は後ほど説明する。

Densityは、赤外線画像を使って人の出入りを追跡する通路監視装置「Entry」に潜在する可能性を見出し、大規模に人々を監視する技術の開発を検討し始めた。同社は1か所から数百平方フィートをカバーする精度を持ちつつも、簡単に誰かを識別するための機能を欠いたレーダーを起用することに落ち着いた。

一般的な防犯カメラに人を監視するソフトをインストールすることに対して警戒心を持っている人が多いため、この部分こそが重要なポイントなのである。画像は個人情報と容易に照合できるため悪用される可能性が高い。そのため、通常のカメラの上にコンピュータービジョンを重ねる方が安く済むかもしれないが、その方法だとどうしてもリスクと欠点が残ってしまう。

画像クレジット:Density

無論、デスクやコンピューターを監視し、機密文書や些細な行動を読み取れる監視カメラを好む人間はほとんどいないだろう。Densityが開発したシステムは、あの椅子に誰か座っているか、あのオフィスに人はいるのか、この部屋には何人いるのか、など「存在」に強い重点を置いている。

レーダーはポイントクラウドを生成するが、自動運転車のライダーシステムで見られるような詳細なものではない。人はオフィスキッチンの冷蔵庫の近くに存在する小さく、直立した雲のようなものとして描かれる。他の誰かがオフィスキッチンにコーヒーを飲みに来たときには、別の雲として追跡される。しかし、人を区別したり、サイズや衣類を見分けたりするのに十分な機能は設けられていない。

画像クレジット:Density

もちろん、雲を追跡して彼らの机に戻り遡って誰かを特定することも可能だが、今時人を追跡するための方法は他にいくらでもある。このレーダーには、もっと別の使い道があるのだ。

ここから得られるデータは実際に明確な価値がある。カフェでは座席の稼働率を確認したり、異なるレイアウトのABテストをしたり、ジムではどのマシンが一番頻繁に使われていて、メンテナンスや清掃が必要なのはどれかを確認したりできる。オフィスでは不人気の会議室や家具を再利用することや小売店では買い物客が寄り付かない棚を見つけたりすることが可能だ。また、デバイスに付属のソフトウェアを使用すると、人と人との距離や、様々な場所にどれくらいの時間滞在する傾向があるか、特定の通路が他の通路よりも多く使用されているかどうかなどを知ることができる。

Densityソフトウェアの動作中のスクリーンショット

データはリアルタイムで集計されるため、シェアオフィススペースではどのデスクが朝からずっと空いているかや、どのデスクが今空いているのかなどを、尋ねたり再確認したりすることなく簡単に知ることが可能だ。レストランでの使用も同様に、空きテーブル数を数えてもたつく事態を防ぐことができる(お気づきの通り、こういったアプリは主にパンデミック時以外を想定したものだが、今がデバイスをインストールする絶好のチャンスかもしれない)。

リアルタイムクラウドにレイアウト画像を追加すると、突然現実味を帯びてくる。

画像クレジット:Density

サンドイッチサイズのOpen Areaセンサーは、地上20フィート(約6メートル)の距離から1325平方フィート(約123方メートル)をカバーすることが可能。これは直径約38~40フィート(約11.5~12メートル)の円に相当し、この中には会議室数部屋か約20台の机を収めることができる。頭上式の光学カメラにも劣らず、さらにプライバシー面でも利点があるわけだ。

実際のオフィスでどう見えるか興味がある方は、以下の画像を見て写真の中から是非デバイスを見つけ出して欲しい。写真は難易度の低いものから並べている。

ただし、最初は価格の高さに驚くかもしれない。Open Areaセンサーの価格は399ドル(約4万2000円)。さらに1デバイスにつき年間199ドル(約2万1000円)のライセンス料がかかる。そのためそこそこのサイズのオフィスに装備を施した場合、軽く5桁の金額になってしまうだろう。もちろん、それだけの広さのスペースを運営している人ならばスペースの使用状況の調査(実際に人がそこに座って、誰が何を使っているのかを監視する)や、バッジベースエントリーのようなその他の便利な機器のコストの高さをご存知のはずだろう。

「当社は桁違いの安さと格段の利便性を実現しました」とCEOのAndrew Farah(アンドリュー・ファラー)氏は言う。

Densityはすでにいくつかの大手企業を顧客として持っている。オフィスや小売業の世界全体は現在混乱状態に陥っているものの、このようなツールが次の次元へと導いてくれることだろう。スペースの使い方をしっかり把握すると言うことは、コストの節約になるだけでなく、安全性を高め、そこにいる人々を幸せにすることにもつながるのだ。

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(翻訳:Dragonfly)