自閉症は社会的技能やコミュニケーション能力の障害で、最近はそう診断される人が増えている。原因は遺伝的な要素や環境などさまざまだが、症状が主に行動に現れるため、診断は子どもがある程度大きくなってからでないと行われないことが多く、より必要性の高い早期診断の確立と普及を阻んでいる。
しかしマサチューセッツ州のSynapDxは、高度な生命情報科学とゲノムシークエンシング、および血液検査を組み合わせた方法で、子どもたちが従来よりも低年齢の時期に診断を行おうとしている。
同社は最近、この障害を血液検査で診断する方法を開発するために、Google Venturesが率いるラウンドにより1540万ドルの資金を調達した。その方法は、障害を持つ子どもたちの遺伝子組成の研究から生まれたものだ。自閉症と関連する遺伝子変異を多く知れば知るほど、障害の兆候を知るための血液検査は精度を増す。
同社の商用化部門担当VP Theresa Tribbleは次のように言う: “自閉症の根本原因はまだ分からないが、弊社の方法では血液検査の結果と障害の診断とのあいだの、相関性を見つけることができる。今後はより多くの研究者との共同研究により、原因究明に力を入れていきたい”。
同社の最終目標は完全な精度を持つ血液検査方法の開発だが、その前の段階では、親たちが早期に本格的な診断を受けさせるべきかを決断する手助けとなる、初期段階的な検査方法を完成させたい、という。
“それは、どちらかというとリスク評価だ”、と彼女は言う。“小児科医がその血液検査の結果を見て、その子を普通よりも早く本格的な臨床検査にかけるべきかを判断する、それが当面の目的だ”。
今の診断年齢は平均4歳半ぐらいだが、心配性の親たちは18か月ぐらいで気にし始める場合もある、という。
“時間差が大きすぎるわね”、と彼女は言う。
今回の投資には、North Bridge Venture PartnersやGeneral Catalyst Partnersと並んでFoundation Medical Partnersも参加した。
このラウンドに伴い、GoogleのAndrew Conrad(元LabCorpのCSO(chief scientific officer)でNational Genetics Instituteの協同ファウンダ)が取締役会に加わる。Google Venturesで多くの保健医療関連投資を手がけたKrishna Yeshwantが、ラウンドを仕切った。
SynapDxは今、自閉症だけを対象にしているが、遺伝的変異と血液検査の結果との相関性を見つける技術は、ほかの障害にも応用できそうだ。
“脳神経の発達障害を見つけるための客観的なゲノム研究は、ここ当分のあいだ、未対応のニーズがものすごく多い。だからそれらは、弊社の技術の当然の拡張方向でもある”、とTribbleは言う。“ここしばらくは、自閉症に専念するけど”。
SynapDxが利用するゲノムシークエンサーは、そのほかのゲノム研究関連スタートアップが利用しているIlluminaなどからのものだ。しかし同社はそれらに独自の技術を適用して、疾病のリスクと遺伝的変異とを関連付ける。
“弊社の技術の基盤は、医学や遺伝科学などではなく、あくまでも情報科学だ”、とTribbleは言う。同社の検査技術は、多様な遺伝子からコピーしたRNAの量を計測する。それぞれの遺伝子に関して、コピーされたRNAの量からそこに作られたたんぱく質の量が分かる。そしてそのたんぱく質の量が、人間の脳の発達と、言語や行動能力の発達に影響するのだ。
同社は、その検査技術の商用化に関して明確なスケジュールを持っていない。同社は今年初めに、全国20か所で、660名の子どもたちの臨床研究を行った。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))