アマゾンがAWSの宇宙スタートアップアクセラレーターでSeraphimと提携

AmazonはまもなくKuiperプロジェクトで衛星コンステレーションによるインターネット接続ビジネスの重要な部分を担うことになる。一方、地上ではもう少し地味だが同じくらい重要な宇宙ビジネスのアクセラレーターを立ち上げることを目指している。Amazonは宇宙ビジネスを専門とするベンチャーキャピタルであるSeraphim Capitalと提携して4週間のプログラムを提供する。参加のインセンティブとして10万ドル(約1100万円)分のAWSクレジットの提供が含まれる。

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AWS Space Acceleratorは現在募集中だ。応募条件は宇宙分野を目指したビジネスでありAWSの利用を予定していることだけだ。募集枠は10組み、4月21日まで受け付けている。

プログラムは比較的標準的な仕組みだ。分野は「テクノロジー、ビジネス、メンターシップ」であり、特色としてはAWSの適切な使用方法を学ぶ。AWSパートナーネットワークをはじめ、宇宙分野に焦点を当てたテクノロジー、法的規制、セキュリティについて専門家から優れたコーチングを得ることができる。またベンチャーキャピタリストと直接資金調達ラウンドについて交渉できる(Seraphim参加チームが最初の投資契約を得ることができるのは間違いなさそうだが、事前の厳密な投資約定はないようだ)。

「選定されたスタートアップは、最大10万ドルのAWS Activateクレジットを獲得できる可能性がある」と発表されている。「可能性」というような若干あいまいな表現になっているのはおそらく法的な配慮からだろう。

宇宙に特化したプログラムは数多いが、いずれも資金需要は十分に満たされているとはいえない。宇宙関連のスタートアップは、高度な技術を必要としユーザーは国家などの公共機関が多い。企業向けSaaSと比較してさえより多くの資金を必要とするという特殊な分野だ。

プログラムの具体的な詳細については、最初のバッチの参加メンバーが発表されてからになるだろう。これは少なくとも1〜2カ月後になる見込みだ。

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画像クレジット:Jason Alden/Bloomberg / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook

スペースXが11機目のStarshipプロトタイプを打ち上げるも着陸時爆発

SpaceX(スペースX)は米国時間3月30日の火曜日、Starshipのプロトタイプ宇宙船のさらなる高高度テスト飛行を行った。すべてのStarshipのプロトタイプの建造や飛行テストと同様、このプロトタイプも最近Elon Musk(イーロン・マスク)氏が 「Starbase」と改名した同社のテキサス州ボカチカの開発施設から離陸した。ただし、残念ながらテストはうまくいかず、SN11のプロトタイプは最終降下中に失われた。現場からの報告によれば大きな爆発が起こり、着陸地点周辺に破片が散乱したとされている。

現時点でのスペースXの目標は、Starshipを高高度(およそ3万2000〜4万フィート、約10〜12キロメートル)まで飛行させ「ベリーフロップ」というマヌーバーを実行した後、垂直方向に制御された姿勢で地球に帰還させ、その後に軟着陸させることだ。今日までに同社はこの目標に向けて前進してきた。最初の2回の試みは着陸時の衝撃で爆発し、3回目の試みでは垂直に着陸したが、しっかりとした状態で静止した後もののわずか10分弱で爆発した。

スペースXの現時点での具体的な目標は、Starshipの姿勢を制御するために使用するコントロールフラップのデータを収集し、軟着陸を実現することだ。同社は低高度飛行にて研究し、後に軌道上での弾道飛行テストを開始した際の成功率を高めるために必要なデータを得たいと考えている。

当日朝、テキサス州の発射場が霧に覆われていたため、スペースXの飛行テストの様子をはっきりと見ることはできず、またミッションの何が問題だったのかはまだ明らかされていないい。この点については、後に調査結果が公開される予定だ。

【更新】マスク氏によれば、着陸時の燃焼に使用された第2エンジンに問題があったとしている。

事故直後のマスク氏のツイートは以下のとおりだ。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

スペースXがStarlink衛星をさらに60機打ち上げ、3月だけで240機も投入

SpaceX(スペースX)は米国時間3月24日の朝、フロリダ州ケープ・カナベラルから60機の衛星を打ち上げ、Starlink衛星を軌道上の既存のコンステレーションにさらに追加した。今回のミッションでは過去5回の打ち上げで使われた飛行証明ブースターを使用したFalcon 9と、過去の飛行で使用された貨物フェアリングカバーを再使用した。

Starlinkは米国時間3月14日、11日、3月4日にそれぞれ60機ずつ打ち上げられており、今回は1カ月以内での4回目の打ち上げとなった。合計すると、約3週間で240機の衛星が打ち上げられたことになる。これは、世界第2位の商業衛星オペレーターであるPlanetが宇宙に保有する衛星の数とほぼ同じだ。

SpaceXの目標は2020年に1500機のStarlink衛星を打ち上げることだが、現在の打ち上げペースは目標達成に向けて順調なもののような。Starlinkは最終的には低軌道上に1万機以上のアクティブな衛星を保有するまでに成長するはずだが、短期的な目標はブロードバンドインターネットサービスの地理的な適用範囲をさらに多くの国や顧客にまで拡大し続けることだ。

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現在のところ、SpaceXがサービスを提供している地域なら誰にでも予約注文ができることから、ベータ版サービスの展開は地上コンポーネント側のハードウェアに制約があるようだ。Starlinkのアンテナとモデムのキットを申し込んでいる顧客は、サービスが提供されていることが知られている地域や、あるいは既存のベータ版ユーザーがきちんと利用できている地域であっても、2021年末まで配達時間が延長されている。

SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、初期のインフラ投資が完了し収益が安定した段階で、最終的に会社をスピンアウトさせる計画だ述べている。これまでのところ他の地方のブロードバンドソリューションと比較して、顧客は速度と信頼性の面でStarlinkのネットワークを好意的に評価しているようだが、次の大きな試練はネットワークが顧客数の増加により高負荷になったときに訪れるはずだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXStarlink

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NASAが火星で初となるヘリコプターの飛行を4月8日に計画

エキサイティングな火星探査車「Perseverance(パーセベランス)」のミッションで、我々地球人が最も楽しみにしているイベントの1つは「Ingenuity(インジェニュイティ)」と呼ばれるヘリコプターの初飛行だろう。何度もチェックを重ねた後、Perseveranceチームは地球以外の惑星で初めて制御された動力飛行に挑戦する日付を4月8日に設定した。

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すべてが順調に進めば、約2週間後にIngenuityは、火星の地上から約3メートルの高さで、初のホバリング飛行を行う。しかし、それまでの間にはさまざまな準備が必要だ。

まず、チームはPerseveranceの着陸地点の近くに「飛行場」となる10メートル四方の平らな空間を特定しなければならない。完了したら、火星探査車はその中心部に向かい、位置を確認することになる。

次にヘリコプターが探査車の腹部から切り離される。ヘリコプターは探査車にボルトやケーブルで固定されている。これは混沌とした着陸プロセスの間、ヘリコプターを安全に保つためのものだが、一度外したら元には戻せない。だからチームは、その場所が100%間違いなく、条件が整っていることを確認しなければならない。この作業には約5日かかる。

IngenuityがPerseveranceから切り離され、飛行可能な位置まで回転すると、Ingenuityは地表からわずか5インチ(約12.7センチメートル)の高さにぶら下がり、わずかに残された探査車との接続を利用してバッテリーを充電する。そしてIngenuityを着陸させた後、Perseveranceはすぐに走り去る。

「6年前にこの旅が始まって以来、私たちが歩んできた一歩一歩は、航空機の歴史において未知の領域でした」と、JPL(ジェット推進研究所)でプロジェクトのチーフエンジニアを務めるBob Balaram(ボブ・バララム)氏は、NASAのニュースリリースで語っている。「地表に展開することも大きな挑戦ですが、火星での最初の夜を、探査車による保護と電力供給なしに単独で乗り切ることは、さらに大きな挑戦となります。Perseveranceとの接続を切り離し、地表に向けて最後の5インチを落としたら、大きな友人にできるだけ早く走り去ってもらい、太陽の光をソーラーパネルに当てて、バッテリーの充電を開始するつもりです」。

ヘリコプターは切り離された後、火星で30日間(火星太陽日)は作動に十分な電力が得られることは確認されているが、それ以上は確実ではない。

これから数日間は、Ingenuityのシステムのテストと、ローターを2537rpmまで回転させるテストが行われる。火星の大気は地球と比べるとほんのわずかしかないため、飛行は多くの意味でかなり困難だ。だからこそ、挑戦はとても楽しみにものになる。

すべてのテストとチェックがOKであれば、早ければ4月8日にIngenuityは離陸を試みて、3メートルの高さまで上昇し、30秒間留まることになる。それから数時間後に、チームは飛行が成功したかどうかを知ることができる。そして多分、Ingenuityに搭載されたカメラから白黒の画像が得られるだろう。カラー画像が取得できるのは、それからさらに数日後になる。

チームは今回の初飛行に基づいて次に行うことを査定し、数週間後にはさらなる(より遠くへの)飛行が行われるかもしれない。データが戻れば、もっと詳しいことがわかるだろう。

Ingenuityの機体には、ライト兄弟が初飛行に成功した飛行機「Flyer(フライヤー)」の翼に使われていた端布が積まれている。地球で初めて飛行した機械が、他の惑星における最初の飛行にも、わずかながら参加することになるのだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星ヘリコプター

画像クレジット:NASA / JPL

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rocket LabのベックCEOがより大きなロケットが必要な理由と株式公開の理由を語る

米国時間3月1日月曜日、Rocket Labは多くのニュースを発表した。SPAC(特別買収目的会社)との合併による株式公開がその1つであり、またより重量のあるペイロードにも対応できる新しい大型打ち上げロケットであるNeutron(ニュートロン)の建造も発表された。Rocket Labの創設者兼CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏に、なぜ今ニュートロンなのか、そしてなぜ同時に株式公開しようとしているのかを聞いた。当然のことながら、この2つは密接に関連している。

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「当社は多くのクライアントのためにElectron(エレクトロン、Rocket Labの現在の小型打ち上げロケット)を飛ばして利益を得ています。また、メガコンステレーションを含む多くの宇宙探査機に資材を供給する宇宙システム部門もあります」と、ベック氏は語る。「多くの、さまざまなクライアントと非常に強い関係を築いていることから、業界の今後、そして問題点について独自のインサイトを得ることができると思っています」。

再利用可能な2段式ロケット、ニュートロンの開発にもこれらの問題点が意識されている。ベック氏はかつて打ち上げロケット市場のニーズについて別の考えを持っていたが、Rocket Labでは、エレクトロンを部分的に再利用可能にすることで、その過去の考えと決別したかたちだ。そして、同社はさらにこの新たなコンセプトを前進させており、ニュートロンではSpaceX(スペースX)のFalcon9(ファルコン9)のように、1段目のブースターが地球に戻り、海に配置されたプラットフォームに着陸するかたちとなる。しかし、Rocket Labによるエレクトロンの開発以降、市場はエレクトロンのもたらした成果により変化してきた。

「ニュートロンは2つの個別の要因が発端となり開発されました。1つは、現在の市場におけるニーズです。また、近い将来、ニュートロンは、地球を回る人工衛星、計画途上にある人工衛星の90%以上を打ち上げることになります。これらの衛星は、80%がメガコンステレーション用です。多くのクライアントと話をするうちに、市場が本当に必要としているのはメガコンステレーション構築用のマシーンであることが明らかになりました」。

ベック氏は、このような市場のニーズと、ほとんどの大型ロケットの積載量が最大積載量の半分であったことを示す現在までの分析を組み合わせた結果、ニュートロンの8トンという積載量が決まった、と話す。ほぼ毎回、最大積載量での打ち上げを行う必要があるとはいえ、将来に至るまで、ほぼすべての衛星における大量のニーズを満たすこともできる。

「エレクトロン開発の道のりは厳しいものでした。私がElon Musk(イーロン・マスク)氏に強く同意することの1つは、ロケット開発の最も難しい過程は実際のスケーリング(規模拡大)の過程だということです。ロケットを軌道に乗せるのも簡単ではありませんが、製造を実際にスケーリングするのは途方もなく難しいことです。幸いなことに、私たちはそのすべてを経験してきました。製造とは製品だけではなく ERPシステム、品質システム、財務、サプライチェーンなど、さまざまなものを内包します。これらのインフラすべてを構築する必要がありました」。

エレクトロンとニュートロンは、工場、製造プロセス、インフラストラクチャの他、コンピューティングやアビオニクスなど、サイズに依存しない要素を共有している。エレクトロン打ち上げの許可を取得するまでの作業の多くはニュートロンにも適用できるので、エレクトロンの開発から打ち上げ、飛行までに必要だったコストと時間に比較して相当の節約になる、とベック氏は指摘する。Rocket Labは、エレクトロンを製造するプロセスを経て、全体的なコストにフレキシブルに対応しており、これは必ずニュートロンでの競争力に反映される、とベック氏はいう。

「エレクトロンの価格は750万ドル(約8億円)です。そのため、私たちは物事を極めて効率的に行う方法を見つける必要がありました」とベック氏。「価格が750万ドルでは、飛行安全分析やペイロード環境分析などに200万ドル(約2億2000万円)を費やすことはできません。このコストを償却できるのは6000万~8000万ドル(約65億〜87億円)のロケットでしょう。そのため、私たちはすべてを非常に効率よく進める必要がありました。さらに、ここまでの過程には、システムだけではなく、基本的なロケットの設計が含まれています。私たちが学んできたことをすべてをニュートロンに適用すれば、非常に競争力のある製品を市場に投入できると信じています」。

SPACとの合併に関して、ベック氏は株式公開という決断は2つの理由に要約されると話す。1つ目は、ニュートロンの開発や「その他の」プロジェクト必要な資金を調達すること。もう1つは、一種の「公的通貨」を獲得して、Rocket Labが達成したいと考えているビジネス面での買収を行うこと。従来のIPOではなくSPACとの合併を決断した理由の根本には、効率と固定資本目標がある、とのことだ。

「当時、IPOに向けた計画を進める中で、私たちの念頭にあったのは自社のことだけでした。しかし非常に多くのSPACパートナー候補が当社に強い関心を持っていることがわかったのです」とベック氏は私に語った。「最終的には、タイムラインのバランスを考え、SPACとの合併が当社がやりたいことを進める能力を加速させてくれると判断しました。なぜなら、ご指摘のように、SPACとの合併によりプロセスを合理化できるだけでなく、収益の確実性も確保されるからです」。

SPACとの合併が完了すると、Rocket Labは約7億5000万ドル(約817億円)をキャッシュで持つことになる。SPACルートの利点の1つに、調達する金額がその日の株価に依存しないことが挙げられる。ベック氏とRocket Labは、合併完了に向け予期せぬ障壁や障害を排除しつつ、約7億5000万ドルを手にし、計画に組み込むことができる。

「現在私たちには必要とする資本があり、準備もできています。つまり、Rocket Labには強力な実行力があるということです」とベック氏は語る。「Rocket Labの歴史において、これまでに実行したすべてを合計しても、数億ドルの資金しか調達していません。したがって、7億5000万ドルを調達したことで、大きなことができると期待しています」。

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画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)

東京の宇宙スタートアップAstroscaleが軌道上デブリ除去衛星「ELSA-d」を打ち上げ

日本の宇宙スタートアップAstroscale(アストロスケール)が、軌道上のデブリを捕獲して安全に除去することを目的とする、同社のELSA(End-of-Life Services by Astroscale、エルサ)技術の実証ミッションのために、ELSA-d(エルサd)衛星を打ち上げた。Astroscaleの実証実験パッケージには、2つの独立したペイロードが搭載されている。1つは、未来の本番宇宙船の役目の「捕獲衛星」、もう1つは、将来は顧客の依頼を受けて軌道から除去される役目の「デブリ模擬衛星」だ。

このAstrocaleのペイロードは、18カ国から集められた他の商業衛星38基とともに、カザフスタンを米国時間3月22日早朝に離陸したソユーズロケットを使って打ち上げられた。2013年に日本人起業家の岡田光信氏が創業したAstroscaleの宇宙船が、軌道に乗るのは今回が初めてだ。Astroscaleは、2017年に小規模デブリの測定を目的とした超小型衛星を打ち上げたが、発射ロケットのプログラムにミスがあったため、そのミッションでは18個の衛星すべてが軌道に到達できなかった。

今回のELSA-dミッションは、さらに野心的な取り組みであり、Astroscaleが最終的に商業化を目指している技術の、軌道上での積極的なデモンストレーションを行うものだ。ミッション内容には、捕獲衛星と模擬衛星の間でドッキングとリリースを繰り返す操作が含まれていて、模擬衛星には捕獲衛星のドッキング手続きを支援するための強磁性プレートが組み込まれている。

Astroscaleは、今回のデモンストレーションで、捕獲衛星が顧客役の模擬衛星を探し出して位置を特定し、損傷の有無を検査した上で、上述のようにドッキングを行う。なおその際には、対象が安定した軌道を維持している場合と、姿勢を制御できずに宇宙空間で回転している場合の両方のシナリオを想定している。

英国内に、Astroscaleが設置した地上センターから制御されるこのミッションには、多くのものがかかっている。長期的な商業活動だけでなく、スタートアップはJAXAと提携して、日本の宇宙機関史上初の軌道上デブリ除去ミッションを行うことになっている。このミッションでは、ロケットの使用済み上段ロケットに相当する大きな物体を、軌道上から除去する世界初の試み行う予定だ。

カテゴリー:宇宙
タグ:Astroscaleスペースデブリ日本

画像クレジット:Astroscale

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(文:Darrell Etherington、翻訳:sako)

ロケット打ち上げ用OSを元SpaceXエンジニアの企業Epsilon3が開発

Laura Crabtree(ローラ・クラブツリー)氏は、子供の頃からロケットの打ち上げをテレビで見るのが大好きで、仕事も最初に入社したNorthrup Grumman(ノースラップ・グラマン)から、次に移ったSpaceX(スペースエックス)で、ずっとロケットの打ち上げに携わってきた。

SpaceXのシニアミッションオペレーションエンジニアを務めていた彼女だが、現在はロサンゼルスに拠点を置くEpsilon3(エプシロンスリー)という宇宙関連スタートアップ企業の共同設立者兼CEOとして、打ち上げオペレーション用のオペレーティングシステム開発を手がけている。

「私が欲しかったツールは存在しませんでした」と、クラブツリー氏はいう。そこで、次の機会を求めてSpaceXを離れたとき、自分が持っていなかったツールキットを開発しようとするのは当然のことだった。「私は、宇宙産業がより効率的になりエラーが減ることに貢献できる方法を探し始めました」と、初めて起業家となった同氏は語っている。

クラブツリー氏とともにこの新事業に参加した人物は、前に起ち上げた会社のEpirus(イピロス)で、8VC、Bedrock Capital(ベッドロック・キャピタル)、L3 Harris Technologies(L3ハリス・テクノロジーズ)などの投資家から少なくとも1億4470万ドル(約157億6000万円)を調達した連続起業家のMax Mednik(マックス・メドニック)氏と、元Google(グーグル)でチーフソフトウェアエンジニアを務めていたAaron Sullivan(アーロン・サリバン)氏だ。メドニック氏も起業に目を向ける前にはGoogleで働いていた経験がある。同氏がそれまで手がけてきた事業は、金融サービス用ソフトウェアから法律サービス用ソフトウェアまで多岐にわたるが、メドニック氏は航空宇宙にも興味を持っていた。学校を卒業して最初に求職したのはSpaceX、JPL、Googleだった。

SpaceX出身者が起業したネットワークの中でも、Epsilon3は、First Resonance(ファースト・レゾナンス)やPrewitt Ridge(プルウィット・リッジ)と同様に、ロケットの設計、製造、ミッション管理、運用のうち、これまで手作業や特別に作られたツールで対応していた部分をプロダクト化している。

「この会社は、ロケット打ち上げ会社やそのペイロードとなる衛星会社に向けて、ミッション管理ソフトウェアを製作しています」と、最近のシードラウンドに参加したStage Venture Partners(ステージ・ベンチャーズ・パートナーズ)の創業者でマネージングパートナーであるAlex Rubalcava(アレックス・ルバルカバ)氏は述べている。「設計や仕様だけではなく、実際に動作しているとき、データのアップリンクやダウンリンク、ソフトウェアの変更をしているときに、何をしているのかが重要なのです」。

ルバルカバ氏は、Epsilon3の市場はまったく新しいものだが、急速に成長していると認めた。

「これは、かつて宇宙へのアクセスは非常に高価で、各国政府の機関や世界で10〜20社の商業衛星事業者にしか提供されていなかったという事実に基づく分析でした。そして実際に打ち上げが可能な企業は、ごく限られていました」と、ルバルカバ氏はいう。「しかし今では、突然、30もの異なる宇宙飛行が行われるようになりました。30もの異なる会社がロケットを所有しているのです。宇宙へのアクセスは、かつては希少で、高価で、非常に制限されていましたが、今ではもはや、そうではありません」。

画像クレジット:Relativity Space

宇宙サービスの需要は爆発的に増加しており、2026年には打ち上げサービス産業が180億ドル(約1兆9600億円)を超えると予測するアナリストもいる

「とてもよく似た話ですが、私たちはみんなSpaceXの異なる部署の出身です」と、クラブツリー氏は語っている。First Resonanceは試作から製造までのソフトウェアを提供し、Prewitt Ridgeはエンジニアリングおよび管理ツールを提供し、Epsilon3は打ち上げオペレーション用のオペレーティングシステムを開発している。

「設計開発、製造、統合試験、運用という段階があり、私たちはその統合試験と運用をサポートしようとしています」と、クラブツリー氏はいう。

First ResonanceとPrewitt Ridgeは航空宇宙や製造業にまで広く応用されているが、クラブツリー氏の目、そして彼女の会社の使命は、依然として星に向けられている。

「私たちは宇宙に焦点を絞り、最も困難で複雑な環境でもソフトウェアが機能することを証明しています」と、メドニック氏はいう。「原子力発電所の建設や操業、エネルギー、採鉱、航空など、複雑なワークフローを必要とする他の分野にも応用できますが、今のところ、そして予測可能な将来のことを考えると、宇宙ビジネスがすべてなのです」。

メドニック氏は、このソフトウェアを、ワークフローや手順を制御・編集するための電子ツールキットと表現した。「Asana(アサナ)のプロジェクト管理とGitHub(ギットハブ)のバージョン管理を融合させたようなものだと思っていただければよいでしょう」と、同氏はいう。「サブシステムやシステムと、システムの運用を統合させるためのものでなければなりません」。

SFドラマ「Babylon 5(バビロン5)」に登場する惑星にちなんで名付けられたEpsilon3は、将来的に他の世界を探査するロケットミッションに欠かせない存在になるかもしれない。少なくとも、Stage Venture PartnersやMaC Ventures(マック・ベンチャーズ)などの投資会社は、180万ドル(約1億9600万円)の初期投資を行って、この事業に賭けている。

現時点で、Epislon3の初期の顧客は、打ち上げ時に同社のプラットフォームを使用している初期段階の宇宙企業で、Stoke Space(ストーク・スペース)のような新規参入のロケット企業などだ。

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「我々にとって、宇宙とディープテックはホットなテーマです」と、MaC Venturesの共同設立者でマネージングパートナーであるAdrian Fenty(エイドリアン・フェンティ)氏は述べている。この前ワシントン市長は、メドニック氏の連続起業家としての信用と、クラブツリー氏のこの分野における極めて深い専門知識の組み合わせに注目した。

「私たちは一般的なオペレーティングシステムを見てきて、良いものが出てくるのではないかと考えていました」とフェンティ氏はいう。彼の会社は、深宇宙、深技術、そして垂直統合型オペレーティングシステム開発にともなう命題という、すべての条件を満たす組み合わせを、Epislon3に見つけた。

MaC Venturesの前身であるM Venturesの共同設立者で、フェンティ氏とともにマネージングパートナーを務めるMichael Palank(マイケル・パランク)氏は「この会社を調査してみると【略】宇宙がいかに大きなビジネスであり、今後もそうなるだろうということがわかります」と語る。「地球上の課題の多くは、宇宙でしか解決できません。そして、宇宙への往来を管理するためには、より優れたオペレーティングシステムが必要です」。

AstraのRocket 3.2第2段から見た宇宙(画像クレジット:Astra)

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タグ:Epsilon3ロケットOS

画像クレジット:NASA/Bill Ingalls / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スペースXの次世代超大型ロケットブースターが完成間近

SpaceX(スペースX)は、Starship宇宙船を軌道に乗せるための次世代の超大型ロケットブースターSuper Heavyの試作品1号機の「スタッキング」を完了した。Super Heavy高さは約220フィート(約67メートル)で、これはBoeing 747の翼幅とほぼ同じか、あるいはフロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールドにあるシンデレラ城よりも少し高いくらいだ。

ここにはStarshipがないので、あと160フィート(約49メートル)ほど高さが追加される。しかしSuper Heavyは、Starshipと結合されて飛行する前に独自の飛行テストを実施する予定であり、その主な目的はエンジンが実際に燃焼する前に、点火可能な燃料を安定状態に保つために必要な加圧と、極端な温度に燃料タンクが耐えられることを確認することに焦点が当てられる。

Super HeavyはStarshipと同じエンジンを使用している。これはRaptorエンジンで、スペースXはこの次世代ロケットのために新しいエンジンを製造した。最終バージョンには合計28基のRaptorエンジンが搭載されるが、この最初のプロトタイプに搭載されるエンジン数ははるかに少なく、同社CEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、組み立てや輸送の仕組みなどのテストにのみ使用されるため、地上に留まることになると認めた。

マスク氏は次のプロトタイプでは飛行すると述べている。同氏はスケジュールに関しては必ずしも正確ではないが、Starshipの上段ステージ(フィンがついた大きな穀物サイロのような形状のもの)の開発は急速に進んでり、最近のテスト飛行ではほぼ完璧な着陸を達成したようにみえたが、数分後に起きた爆発でプロトタイプの機体は完全に吹き飛んでしまった

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マスク氏がStarshipとSuper Heavyの開発を急いでいるのは、Artemis(アルテミス)計画の一環として将来の有人月面着陸ミッションをNASAに提供するという野心的な目標を持っていることと、2023年までのわずか2年間でStarshipの初の商用観光飛行を計画していることが理由だ。

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タグ:SpaceXSuper Heavyロケット

画像クレジット:Elon Musk

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NASAの火星を飛ぶヘリコプター「インジェニュイティー」はクアルコム「Snapdragon 801」搭載

NASAの火星を飛ぶヘリコプター「インジェニュイティー」はクアルコム「Snapdragon 801」搭載

NASA/JPL-Caltech

日本時間2月19日朝に火星へ着陸したNASAの火星探査車「パーセペランス」。同探査車は史上初めて地球以外の惑星を飛行するヘリコプター「インジュニュイティ」を搭載しています。

同ヘリコプターについてクアルコムは、主にスマートフォンに使われる同社製のSnapdragonプロセッサーを内蔵した「Qualcomm Flight Platform」を搭載していると明らかにしました。

この「Qualcomm Flight Platform」は自律飛行を念頭に開発されたドローン用の基板で、Xperia Z3など2014年の上位スマートフォンに広く採用されたSoCの「Snapdragon 801」プロセッサーを搭載。このほか、4K動画撮影やナビゲーション、飛行支援といったドローン向けの各種機能を、小型で耐久性の高いパッケージにまとめています。

発表によると、地球と火星間は、それぞれの公転軌道上の位置に応じて電波でも片道3〜22分かかることから、地球からヘリコプターをリアルタイムで遠隔操縦することは困難で、自律的に飛行する能力が求められます。また、極寒となる火星の夜から機器を保護すべく、ヘリコプターの電力の多くは保温ヒーターに配分されるため、消費電力の低さも重要となります。加えて、火星の強い放射線や変動の大きい大気にも耐える必要があります。

こうした条件を満たすため、NASAジェット推進研究所が検討した結果、クアルコムの「Qualcomm Flight Platform」が火星での飛行に必要な条件を満たすと判断されたとしています。

また、ヘリコプターだけでなく、母艦となる火星探査車の通信システムも「Qualcomm Flight Platform」を採用しており、探査車とヘリコプターが撮影した画像や映像を地球に送信します。

クアルコムの半導体はスマートフォンやオーディオ・PC・IoT・モビリティなどさまざまな領域に進出していますが、今回宇宙にも活躍の舞台が広がった格好です。

(Source:クアルコムEngadget日本版より転載)

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タグ:Ingenuity / インジェニュイティー(製品・サービス)火星(用語)Qualcomm / クアルコム(企業)Snapdragon(製品・サービス)NASA(組織)

NASAとSpaceXがStarlink衝突予防のため高度な情報共有契約を締結

NASAは、誰でも自由に、何でもかんでも宇宙に打ち上げて良いとは認めていない。国際宇宙ステーション(ISS)を含む地球軌道上の同局のアセットへの影響を確認する必要があるからだ。NASAには、いわゆるConjunction Assessment(接近評価)を中心とした一連の標準規則がある。これは基本的に、宇宙に存在する物同士が接近し、衝突の危険性が生じるか否かを判断するためのものだ。ご推察のとおり、何がいつどこを飛ぶかを審査する。

米国時間3月19日、NASAは、SpaceX(スペースエックス)との間で、通常の接近評価の内容を超える新たな契約を発表した。NASAがその使命を果たすために、どのような企業とも協働できることを認めるSpace Act Agrement(航空宇宙契約)の委託下に位置するこの高度な合意は「非弁済」とされている。つまり、契約者双方が利益を得られるため、金銭的取引は生じない。

SpaceXは、Starlink(スターリンク)という現在、最も大量の人工衛星によるコンステレーションを運用しており、その数は急速に増え続けている。またStarlinkの各衛星にはミッションの内容に応じて自律的に移動できる能力がある。そのためNASAとSpaceXは、接近を避けるために緊密な協力関係を継続する必要がある。この契約は、事実上そう物語っている。

したがって、NASAとSpaceXとの間で交わされるコミュニケーションと情報共有の方法を規定したこの合意は、これまで通常考えられていたものよりも踏み込んだ内容になっている。NASAは、計画中のミッションに関する詳細情報を事前にSpaceXに伝えなければならない。NASAのアセットがSpaceXのコンステレーションの近くを通過する可能性のある場合、SpaceXはその情報を元にStarlink衛星の自動衝突防止機能を適切にプログラムする。またNASAは、その評価能力や事故防止対策の改善でSpaceXと直接協力し合うことができる。さらに「放射輝度」、つまりStarlink衛星の反射光をより効率的に抑えるための技術的支援をNASAが提供することもできる。

一方SpaceXは、Starlink衛星が「回避行動」を取り「NASAのあらゆるアセットとの距離を保ち衝突を防止する」ように責任を持つ。SpaceXはまた、Starlink衛星が衝突防止行動を取れない間の「準備期間」の予定を提出する必要がある。これはおもに打ち上げ直後から、目標軌道に到達して稼働を開始するまでの間に多く発生する時間帯だ。

もう1つ、この合意で重要な点は、SpaceXがStarlinkを打ち上げるときは、ISSの軌道の最低高度と最高高度からそれぞれ少なくとも5kmの高度の差をつけて地球を周回するよう計画しなければならないというものがある。さらにSpaceXは、衛星の反射光を減衰させる技術の効果に関する評価結果を共有することが求められる。この問題に関するガイドラインを、NASAが調整できるようにするためだ。

合意の全内容は下記の通りだが、最も注目すべきは、SpaceXのコンステレーション衛星の数が1200基を超え、2021年中に1500基以上にまで増えることを受けて、NASAは同社を地球低軌道の良きパートナーであり住民になって欲しいという望みが明らかに見て取れる点だ。またNASAは、SpaceXに多大な信頼を寄せると同時に、その手に大きな責任を持たせたいとも考えている。そもそもNASAは、Starlinkに搭載された自律的能力が、実際に起こり得るどのような危険も回避できると述べている。NASAはこの文書を、他のコンステレーション運営企業にも転用できるように構成している。

NASA-SpaceX Starlink Agreem… by TechCrunch

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

北半球最大のニュートリノ観測器「Baikal-GVD」第1段階が完成、バイカル湖に光モジュール沈めチェレンコフ放射を記録

北半球最大のニュートリノ観測器「Baikal-GVD」第1段階が完成、バイカル湖に光モジュール沈めチェレンコフ放射を記録

Alexei Kushnirenko via Getty Images

ロシアの科学者らが、2015年から建設が続けられてきたバイカルニュートリノ望遠鏡(Baikal deep underwater neutrino telescope:BDUNTまたはBaikal-Gigaton Volume Detector:Baikal-GVD)の最初のフェーズとなるGVD-Iを完成させました。

その名のとおりニュートリノ観測用に作られたこの設備は透明な球型をした多数の光モジュール(OM)で構成されます。OMは288個を1セットとして8セットのクラスターを作り、それらすべてをバイカル湖の岸から約4km、深さ750~1300mに沈めて、宇宙から飛来したニュートリノが透明度が高く非常に深いバイカル湖の水中を通過する際に発生するミューオンからのチェレンコフ放射を記録します。

ロシアの研究機関ドゥブナ合同原子核研究所のドミトリー・ナウモフ氏は、氷の張ったバイカル湖に開けた小さな長方形の穴からOMを沈めながら「0.5立方kmのニュートリノ望遠鏡が私たちの足の真下にあります」と説明しました。

北半球最大のニュートリノ観測器「Baikal-GVD」第1段階が完成、バイカル湖に光モジュール沈めチェレンコフ放射を記録

Alexei Kushnirenko via Getty Images

ロシア、ドイツ、ポーランド、スロバキア、チェコ共和国の共同プロジェクトであるBaikal-GVDは、北半球最大のニュートリノ検出器であり、ナウモフ氏によれば今後もOMの設置を続けていく計画とのこと。数年後には1立方kmにまで設置範囲を拡大して観測できるように拡張されます。

ニュートリノの観測と研究は、宇宙の生い立ちと時間とともどのように変化してきたかを解明するために重要な情報をもたらすと考えられています。今回のOMの設置に際し、ロシア科学・高等教育大臣ヴァレリー・ファルコフ氏は「宇宙をより深く理解し、銀河がどのようにして生まれ成長してきたのか、その歴史を明らかにするのにわれわれの研究者たちが貢献してくれることを期待する」とコメントしました。

ちなみにニュートリノ観測といえば、Baikal-GVDと同様の仕組みを持ち、南極の氷に埋められた観測施設「アイスキューブ・ニュートリノ観測所」が3月11日、ニュートリノの反物質が起こすとされる反応を観測したと発表しています。これは2016年12月に観測されたもので、反ニュートリノが氷の電子と衝突して「Wボソン」と呼ばれる素粒子が生成された兆候を発見したとのこと。この反応は1960年に提唱された「グラショー共鳴」と呼ばれるもので、これまで一度も観測されていなかった現象だとされています。

(Source:Phys.org。via:ScienceAlertEngadget日本版より転載)

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ロケット史上最高の事前契約数を記録したRelativity Spaceが米国防総省と初打ち上げ契約を締結

Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、すでに相当数の打ち上げ契約を交わしている。事実、CEOで共同創設者のTim Ellis(ティム・エリス)氏によれば、同社のTerran 1(テランワン)ロケットの事前契約の数は、ロケット史上最高を記録したという。だが、とりわけ重要なのは最も新しい契約先だ。それは米国防総省(ペンタゴン)。同省は国防イノベーション部門(Defense Innovation Unit、DIU)の取り組みとして、450〜1200kgのペイロードの地球低軌道への打ち上げに即応できるパートナーを探し続けてきたが、Relativity Spaceは、今回の契約でその役割を担うこととなった。

「かなり大型の衛星です。これだけの宇宙船を打ち上げられる業者はかなり限られます」とエリス氏はインタビューに応えて話した。「3mのペイロードフェアリングを持つTerran 1は、実際にそのサイズのペイロードが打ち上げられるすべての米国企業の中でも特異な存在です。そのスケールに十分に対応できるフェアリングを有しているのは、いまだに私たちだけです」。

DIUには、革新的な米国企業、特に技術開発が比較的初歩の段階の企業と協力するという特別な使命があり、その契約は、将来にわたり国防総省との深い関係が保証されるお墨つきとも見られている。だが今回のケースは、Relativity Spaceが比較的成熟した企業であり、国防関係以外の政府機関のものを含むミッションの事前契約数が多いことが評価された。

「今回は、特定のロケットを必要とする現実のミッションがあったからです」とエリス氏。「またこれは、国防総省を初めて顧客として迎えともに仕事ができる、そして私たちが聞いてきた政府の要望を実現できる大きなエコシステムへ駆け上がるすばらしいチャンスでもあります。これはすべてTerran 1に焦点を当てたものですが、もちろん、このプロジェクトとはまったく別に、私たちはTerran Rについてもすでに公表しています。これは、ほんのきっかけに過ぎません。私たちが作るあらゆるものを活用して、さまざまな分野で国益を支えてゆく多大な好機を私たちは見据えています」。

関連記事:Relativity Spaceが完全再利用可能な新しい大型ロケットの建造計画を発表

エリス氏が話していたのは、先日Relativity Spaceが発表した大積載量ロケットTerran Rだ。これは3Dプリントでロケットを建造するこの会社が2021年2月に発表した大型ロケット計画であり、地球低軌道に衛星コンステレーションを投入する目的で注文に応じて作られる。変化するニーズに即応でき、冗長性の高い衛星技術を特に求める国防総省は、これまでに何度も衛星コンステレーションへの強い関心を示してきた。

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タグ:Relativity Spaceロケット3Dプリントペンタゴン

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

スペースXが記録となる9回目のFalcon 9打ち上げに成功、2週間で3回Starlink衛星を投入

SpaceX(スペースX)はさらに60機のStarlink衛星を軌道上に投入した。これにより、同社はこの2週間で合計180基のStarlink衛星を打ち上げたことになる。米国時間3月14日の打ち上げは、この第1段ブースターの9回目の飛行かつ9回目の着陸であり、Falcon 9ロケットの再使用プログラムにおける新記録でもある。

このブースターは過去にStarlink衛星を5回打ち上げたほか、Crew DragonカプセルのDemo-1など、さまざまなミッションで使用されてきた。打ち上げから国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキング、そして地球への帰還まで、意図どおりに機能することを証明する無人のテストフライトだった。

SpaceXは2021年1月のStarlinkの打ち上げで、2020年12月に飛行したばかりの改修された第1段を使用して、再使用回数の記録を更新した。同社はこのブースターが何度も再使用できることを示すだけでなく、、スピードとペイロードの両方が打ち上げコストに大きな影響を与えることもあり次のミッションに向けてブースターをすばやく運用できることも示したいと考えている。

関連記事:スペースXが2021年最初の打ち上げでStarlinkを60機投入、Falcon 9ロケットの再利用記録も更新

ロケットの再使用はこれらのStarlinkミッションにおいて特に重要であり、SpaceXがブロードバンドインターネットサービスの提供を世界的に拡大している中で、ますます頻繁に実施されている。前述のとおり、今回の打ち上げはわずか10日間で60基の衛星を打ち上げた3回目のミッションで、前回は3月11日に実施された。

関連記事:スペースXがStarlink衛星60機を打ち上げ、前回ミッションからわずか1週間後

SpaceXは米国時間3月21日に予定されているStarlinkの打ち上げを含め、3月末までにあと2回の打ち上げを予定しているため、しばらくはほぼこのペースで打ち上げを続けていくことになる。同社はこれらのミッションの顧客であるため、(少なくともStarlinkが現在のベータ版を終え、より多くの収益を上げるまでは)打ち上げにかかる費用を負担しており、ブースターの再飛行は全体的なコストを軽減するのに有効な方法だ。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

スペースXがStarlink衛星60機を打ち上げ、前回ミッションからわずか1週間後

SpaceX(スペースX)は米国時間3月11日の朝早く、フロリダ州のケープ・カナベラルから最新のブロードバンド衛星Starlinkをさらに60機を打ち上げた。同社は先週、米国時間3月4日に60機の衛星を打ち上げたばかりだが、今週にはStarlinkのインターネットサービスのベータ版をドイツやニュージーランドなど、世界の他の市場にも拡大することを発表している。

Starlinkの打ち上げは全体で21回目で、2021年に入ってからは6回目となる。天候やスケジュールが許せば2021年3月中にはさらに3回の打ち上げが予定されている。スペースXがこのような積極的な打ち上げを実施している理由には、低軌道上のコンステレーションに衛星を増やせば増やすほど、より多くの顧客と契約してサービスを提供できるからだ。Starlinkは現在ベータテスト中だが、地域によっては誰でも契約できるようになっており、SpaceXはデポジットを受け取り、利用可能になるまでの大まかなスケジュールを提示している。

これまでのところ、Starlinkのサービスは米国、カナダ、英国、ドイツおよびニュージーランドのユーザーに開放されているが、2021年末までに「世界人口のほぼ全域」をカバーする計画だ。衛星をコンステレーションに追加すると、地理的な到達範囲が広がるだけでなく、ネットワークのパフォーマンスも向上する。SpaceXによると、現在のベータ版の速度は50Mb/sから150Mb/sで、レイテンシーは20ms〜40msの間だが、今後数カ月のうちに、さらに多くの衛星がネットワークに参加し、SpaceXが地上ステーションのさらなる追加、展開により、これらの数値は改善されるという。

Starlinkのサービスはすでに、セルラーインターネットや静止衛星ベースのインターネットなどの地上インフラの代替サービスが期待外れだった農村部や到達困難な地域で、競合他社を圧倒したという報告がある。

今回の打ち上げでは、Starlink衛星を軌道に投入したFalcon 9ロケットのブースターの制御着陸にも成功した。SpaceXは同社初の有人宇宙飛行ミッションを含む5回のミッションで使用したロケット第1段を、大西洋に浮かぶドローン船に着陸させている。

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タグ:SpaceXStarlink

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ブルーオリジンが月面重力をシミュレートする機能をNew Shepardロケットに追加へ

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)が率いるBlue Origin(ブルーオリジン)は、月への帰還というNASAの目標に先駆けて、同宇宙期間に貴重な科学的ツールを提供する。それは月の重力をシミュレートした実験を、より身近なサブオービタルスペースで行うことができるというものだ。

NASAの発表によると、Blue Originは再使用可能なNew Shepardを改良し、宇宙船のカプセルを回転させることで月の重力を再現することを計画している。これにより、カプセルは実質的に1つの大きな遠心分離機となり、内部の物体には月面で見られる重力に非常に近い力がかかることになる。

月面の重力をシミュレートする方法は他にもあるが、New Shepardのシステムは既存の方法にはない2つの利点を提供する。1つは、2分間以上という長時間の連続した人工月面重力の体験を可能にする点で、もう1つは現在の宇宙空間では不可能な大きな積載量による実験的能力の拡大だ。

Blue Originは、New Shepardのこの新機能が2022年までに完成すると予想している。これは、NASAのアルテミス計画を支援するための重要なタイミングとなる。アルテミス計画とはでは月軌道と月面の両方でより恒常的な有人研究活動を確立することを含む、人類の月探査への復帰を目指す一連のミッションだ。

月面の重力は地球の約6分の1である。NASAは月面探査の準備だけでなく、重力が地球の3分の1強である火星への有人打ち上げをサポートするためにも、実験が必要であると指摘している。

またBlue Originは、Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)、Draper(ドレイパー)などの宇宙産業チームと協力して、月面ミッションのための有人着陸機をNASAと共同開発している。

関連記事:Blue Originの宇宙産業オールスターチームが人類を月に運ぶ着陸システムを提案

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タグ:Blue OriginNew Shepardアルテミス計画

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ヴァージン・ギャラクティック会長が同社の残り個人株を売却

Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)と所有する持株会社のSocial Capital Hedosophia holding(ソーシャル・キャピタル・ヘドソフィア・ホールディングス)との合併により、現在のSPAC(特別買収目的会社)ラッシュの先駆けとなった人物が、宇宙旅行会社での個人的な残り持ち株を売却した。ヴァージン・ギャラクティックの取締役会会長を務めるChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏は、投資家のIan Osborne(イアン・オズボーン)氏との共同名義となる6.2%の株式をまだ保有しているが、彼の同社における単独保有率は現在ゼロになっている。

パリハピティヤ氏はVirgin Galactic経由で、TechCrunchに以下の声明を送った。

私は600万株を2億ドル(約216億8000万円)で売却しましたが、これは気候変動との戦いに向けた大規模な投資に振り向ける予定です。この投資の詳細は数カ月後に公開されます。私はこれまでと同様、ヴァージン・ギャラクティックのチーム、ミッション、そして将来の展望に献身的に取り組みます。

パリハピティヤ氏は380万株を2020年12月に売却し「2021年から始まるいくつかの新しいプロジェクト」に資金を提供して「流動性の管理を助けるため」に、株式を売却していたと言及した。その際パリハピティヤ氏は「SPCE(ヴァージン・ギャラクティックのニューヨーク証券取引所での株式ティッカー)の未来のために引き続きコミットし、また興奮している」と述べていた。

今週の売却は620万株で、パリハピティヤ氏は約2億1300万ドル(約230億9000万円)を手にした。

ヴァージン・ギャラクティックは、そのテストプログラムでいくつかの挫折を味わったが、その最初となる有料の商業観光客飛行の予定日を2021年中から2022年に延期している。同社は2020年7月にチーフスペースオフィサーに異動したGeorge Whitesides(ジョージ・ホワイトサイズ)氏に代わって、Disney Parks(ディズニー・パークス)のリーダーであるMichael Colglazier(マイケル・コルグラジエ)氏を新しいCEOに任命したが、3月4日にホワイトサイズ氏が退社することが明らかになっている。ホワイトサイズ氏の決定は、公共サービスの機会を追求したいという思いからだと言われている。

宇宙部門は最近のSPAC活動の温床となっており、Astra、Spire、Rocket Lab、BlackSky、Momentusを含む多くの企業の合併がこの1年の間に発表された。ヴァージン・ギャラクティックは最も初期の一企業として、この分野の基準を探している人なら誰でも注目するだろう。同社の株価は市場前に5%強下落しており、2021年2月半ばに史上最高値をつけて以来、着実に下落している。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

SpaceXが新たにStarlink衛星60機打ち上げ、Starshipロケットは一度に最大400機まで打ち上げ可能に

SpaceX(スペースエックス)が、Starlink(スターリンク)衛星の新しいバッチを打ち上げた。いつものように地球低軌道向けの60機の衛星で構成されており、打ち上げ済みの1000機の衛星コンステレーションに加わることになった。今回の打ち上げは、SpaceXにとって2021年5回目のStarlink衛星の打ち上げであり、トータルでは20回目の打ち上げとなる。

2021年の初めにSpaceXは、払い戻し可能な前払いの予約システムを介して、現在または計画されているStarlinkのサービスエリアへ、誰でもアクセスできるようにした。同社は、このような打ち上げを2021年を通して続け、世界のはるか広い範囲で顧客にサービスを提供できる、衛星コンステレーションを構成することを目指している。以前SpaceXのCOOで社長であるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏は、同社は約1200個の衛星で世界の多くの地域をカバーできると予想していると語っていたが、現在同社はネットワークの容量と速度を完全に作り上げるために3万個以上の衛星打ち上げを計画している。

SpaceXは、Falcon 9ロケットを使ったStarlinkの打ち上げを順調に進めているが、その一方で衛星コンステレーション成長のキードライバーとしてStarshipにも目を向けている。南テキサスで開発中のSpaceXの次世代ロケット「Starship」は、一度に400個のStarlink衛星を軌道に投入することが可能で、完全な再利用性と迅速なターンアラウンドを考慮して設計されている。

1回のミッションで6倍以上の衛星を打ち上げることができるようになれば、Starlinkネットワークの展開速度や計画の全体的なコストの面で、SpaceX社にとって大きな助けになるだろう(なおここでは、Starshipが量産ロケットとなった際には、Starlinkが一般的に手頃な価格になるとしている彼らのコスト予測が正確であると仮定している)。少なくともそれは間違いなく数年先のことだが、SpaceXは米国時間3月3日に新しいマイルストーンを達成し、それが実現する可能性があることを十分に示している。

関連記事:SpaceXの大型宇宙船Starshipが3度目の試験飛行で高度10kmまで上昇〜着陸に成功

同社の最新のStarship試作機は、米国時間3月3日にこれまでで最も成功したテスト打ち上げを行った。同機はSpaceX社のテキサス州ボカチカ開発サイトから離陸し、高度約3万2000フィート(約9728m)まで飛行した後「フロップ」操作を実行して、垂直方向の軟着陸のために自身の向きを変えた。今回のテストロケットも、着陸後10分以内に爆発を起こしたが、その派手な結末にもかかわらず、今回のテストでは、SpaceXがStarshipを現実のものにするために必要な基本的なエンジニアリング作業の多くが証明された。

Starlinkは数年に渡る巨大な取り組みであり、Starshipの大量生産や飛行が数年先になったとしても、プロジェクト全体にまだ大きな影響を与えられるはずだ。そして、Starlinkが完全に展開され運用が始まった後は、定期的な保守作業が発生する。ネットワーク内の個々の衛星は、実際には最大で5年までの運用ができるように設計されているに過ぎない。そのため運用をスムースに行い続けるためには、定期的な交換が必要となるのだ。

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タグ:SpaceXStarshipロケット衛星コンステレーション人工衛星

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(文:Darrell Etherington、翻訳:sako)

SpaceXの大型宇宙船Starshipが3度目の試験飛行で高度10kmまで上昇〜着陸に成功

SpaceXは、開発中の重量級再利用型宇宙船「Starship(スターシップ)」で現行10番目の試験機体となる「SN10」を打ち上げた。SpaceXが開発施設を置くテキサス州ボカチカから離陸したStarship SN10は、約10kmの高さまで上昇した後、摩擦を利用した着陸降下に向けてマヌーバを行い、体勢を立て直した。

この高度を飛んだ過去2台のStarship試験機体とは異なり、約6分間の飛行は火の玉になって終了することはなかった。SN10は意図したとおり、着陸に向けた姿勢転換マヌーバを完了させ、落下速度を減速させて軟着陸した。ロケットは垂直姿勢を保ったまま、無傷のままだ(更新:とはいえ、ロケットは着陸してから数分後に着陸パッド上で静止している間に爆発したのだが、これは潜在的に漏れが原因であった可能性がある)。

これはすばらしい結果であり、SpaceXのライブストリームによると、すべて「計画どおり」とのことだ。しかし、前回と前々回の爆発後、どうしてすぐにここまで来れたのだろうか?それはこのロケットの開発方法によるところが大きい。すべてのロケット開発には予期せぬ出来事や最良ではない結果が付き物だが、SpaceXの仕事にはいくつか平均的な宇宙船メーカーと異なる点がある

まず、この開発をオープンに行っていることだ。ボカチカの施設は、基本的にはいくつかの小さな建物、コンクリートのパッド、貯蔵タンク、足場があるだけだ。公道に非常に近く(テスト中は閉鎖され、周辺地域は避難している)、人々はクルマで近くまでやって来てカメラを構え、そこで行われていることを撮影することができる。これは、従来のロケットメーカーの一般的なやり方とはまったく違う。

そして2番目、SpaceXの創業者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏が、SpaceXが迅速にStarshipの試作機を製造して試験を繰り返す開発戦略を追求することに対して、一切ブレないことだ。つまり、一般的なロケットメーカーのように、各テストを行った後に一度引き下がって、数カ月に及ぶ長期的な分析を行ってから別の仕様のロケットを製作して飛ばすのではなく、SpaceXでは少しずつ改良を加えた複数の試作機を、同時進行で製造・組み上げていることを意味する。

画像クレジット:SpaceX

この日、最初の打ち上げの試みは、短いエンジン点火の後に中断された。ロケットの計器が、マスク氏のいう「保守的」に反するわずかに高い推力値を示したからだ。これに対し、実際にSpaceXが考案した修正策は、試験中止を回避するため、限界値を高く調整することだった。

同社が飛行と着陸に成功した後に起こった爆発の原因について、これから調査を行うことは間違いない。だが、開発のこの段階において、SpaceXにとって最も重要な事項が、すべて成功したことに変わりはない。Starshipの次なる課題は、テスト飛行の高度をさらに上げることだろう。もちろん最終的には軌道に到達することが目標だが、その前にSpaceXは大気圏内に留まりながらも、今回の試験飛行をはるかに上回る打ち上げを、何度か試すことになるだろう。

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SpaceXのプロトタイプStarship飛行実験は今回も成功、しかし着陸でまた爆発
SpaceXが有料月旅行最初の利用者、前澤友作氏に8席提供、前澤氏は現在クルー募集中

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タグ:SpaceXStarShipロケット

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

衛星コンステレーションのSpire Globalが約1712億万円のSPACを通じて上場へ

米国時間3月1日、2つの宇宙SPACがやってきた。最初がRocket Lab、次がSpire Globalだ。Spire Globalは100機以上の人工衛星コンステレーションで可能になるデータとその分析を提供するSaaSを自称している。SPACは宇宙スタートアップ市場の圧力放出バルブであることを本質的に証明し、ベンチャーのサポートは儲かるとする連中の、鳴り物入りのエグジットへの期待に応えているのだ。

関連記事:ロケット打ち上げのRocket LabがSPAC合併で上場へ、企業価値4370億円に

Spire Globalは2012年にデビューし、これまで約2億2000万ドル(約235億4000万円)を調達している。同社はNavSight Holdingsと呼ばれる特殊目的買収企業(SPAC)と合併して、ニューヨーク証券取引所に「SPIR」というティッカーシンボルでデビューするつもりだ。合弁後の企業は取引終了後の公式の企業価値が16億ドル(約1711億70000万円)になる予定で、期日は2021年夏を目指している。

この取引で同社には4億7500万ドル(約508億2000万円)が入る。それにはTiger GlobalやBlackRock、HedosophiaなどのPIPEも含まれる。Spireの既存株主は合併後の企業の約67%を保有することになる。

Spireの衛星ネットワークは顧客に「Space-as-a-Service」を提供し、各自が自分のペイロードで運用する。デベロッパーが自分のソフトウェアにAPIを統合して、コンステレーションが集めたデータにアクセスできる。ビジネスモデルはサブスクリプション方式で、データは顧客が宇宙で入手生成したものでもよい。ただしそれは契約とコミットメントから1年以内でなければならない。

関連記事:小型衛星スタートアップCapella Spaceが最高解像度の最先端合成開口レーダー画像を提供

Spire Globalの既存の投資家はRRE VenturesやPromus Ventures、Seraphim Capital、Mitsui Global Investmentなどで、最新のラウンドは投資でなく融資だった。同社は衛星の打ち上げをRocket Labに依頼する、こちらも3月1日のSPACラッシュ仲間だ。同社が運用する衛星は小型のキューブサットで、使われる打ち上げ機はSpaceXのFalcon 9やロシアのSoyuz、ISROのPSLV、日本のH-2B、ULAのロケット、Northrop GrummanのAntaresそれに国際宇宙ステーションも使われる。

Spireの始まりは実にささやかなもので、10万ドル(約1070万円)の資金を集めたKickstarterキャンペーンにまで遡る。

カテゴリー:宇宙
タグ:Spire GlobalSPAC衛星コンステレーション

画像クレジット:Spire Global

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

SpaceXの有料月旅行の最初の顧客が仲間になる人に8席を無償で提供

Yusaku Maezawa(前澤友作)氏は、SpaceXが目下開発中の宇宙船Starshipに乗って月を巡回する旅を予約した最初のお金を払う乗客だ。その彼が、ミッションに関する約束のアップデートを公表した。出発が2023年、月への往復の旅は1週間という日程は変わらないが、今回Maezawa氏はクルーを求めている。Maezawa氏発表のビデオによると、乗客数は最大で10名から12名だが、内8席の乗客は一般から選ぶ。

このミッションが発表された2018年にMaezawa氏は、同乗する仲間の宇宙飛行士として6名から8名のアーチストを選び、その体験に基づく作品を作ってもらうためのインスピレーションを提供したい、と言っていた。それが今回はちょっと変わって、どんな種類でも良いから何らかのクリエイティビティを表現している人はアーチストと見なされる、ということになった。そこで選考基準は二つあり、ひとつは、宇宙に行くことによって自分が今やってることがさらに良くなること。そして第二は、旅の途中で他のクルーを支えることだ。

Maezawa氏は億万長者で連続起業家で自分でもアーチストだが、今日発表した8人ぶんも含めて旅費は全額彼が払う。

Maezawa氏は新しいサイトでクルーの選考方法を詳しく述べている。まず、3月14日までに事前登録をする。次に書類選考が3月21日に終わる。宿題があり、応募者は3月21日までにそれを終えないといけない。そのあと、オンラインの面接があり、次が5月下旬の最終面接とメディカルチェックとなる。これらの日付はすべて、日本時間だ。

応募用のミニサイトによると、これらのスケジュールは今後変わることもある。いったんチームが確定したら、2022年と2023年は訓練と準備に集中する。タイムラインの入った大まかなフライトプランはあるが(下図)、あまり詳しくない。しかし、月をぐるっと回って帰ってくるコースは描かれている。


画像クレジット: dearMoon

この乗客募集の呼びかけに欠けていて気になるのは、それがMaezawa氏と生死を共にするパートナーを募集する、軽率できわめて不気味な呼びかけであることだ。彼は2020年に、その旅を彼とのお見合いの場のようなものにするための、20歳以上の独身女性を旅のドキュメンタリーのスターとして募集したことがある。Maezawa氏はしかしその同じ月に、その女性募集路線を引っ込めた

このように一般公募で宇宙への無料の旅路を提供する試みは、意外にもこれが唯一ではない。SpaceXのDragonを利用する軌道ミッションInspiration4があり、これは人間のフライトをすでに承認されている。その離陸は、早くて2021年の予定だ。

関連記事: SpaceXのBFRに乗って月を周回飛行する最初の民間人乗客はYusaku Maezawa(前澤友作)だ

(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

画像クレジット: dearMoon

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa