スポーツ選手やチームをブロックチェーン応用の投げ銭で応援するEngateが正式ローンチ、競技場でキャンペーンを展開

エンゲートは、スポーツ選手やチームを、ブロックチェーン上で発行したデジタルの「投げ銭」で応援するサービス「Engate(エンゲート)」(関連記事)をこの10月20日より開始する。まずWebアプリケーションの形態から開始する。スマートフォンアプリ版も追って投入する方向だ。スポーツ選手、スポーツチームにとって「ファンの応援と資金」はとても重要だ。Engateが目指すビジネスは、選手やチームを応援するファンの応援の可視化、コミュニティ形成、そして投げ銭という形での収入を選手とチームにもたらすことだ。

サービス開始にあたり、複数のプロスポーツの試合の場でキャンペーンを展開する。キャンペーン対象となる試合当日、競技場への来場者にURLを配布、そのURL経由で新規ユーザーアカウントを作ると100ポイントを付与する。100ポイントの範囲でギフトの投げ銭(「ギフティング」と呼んでいる)の体験を無料でしてもらう。もっと応援したければ、クレジットカードでポイントを購入してもらう仕組みだ。

キャンペーン対象の最初のゲームは、10月20、21日開催の横浜ビー・コルセアーズ(バスケットボール)の滋賀レイクスターズ戦である。会場は横浜国際プール。続いて、野球の徳島インディゴソックス、女子サッカーのINAC神戸レオネッサ、サッカーの湘南ベルマーレ、ハンドボールの琉球コラソン、フットサルのフウガドールすみだ、以上の各チームの試合でのキャンペーンを予定する。さらに「サッカーの横浜マリノスでのサービス活用ももほぼ本決まり」(同社)とのことだ。

サッカーJ1リーグ所属の湘南ベルマーレの運営会社で代表取締役を務める水谷尚人氏は、「1990年代には、我々のチーム名はベルマーレ平塚だった。親会社が撤退し、地域の人々に支えられた。そのような経験から収入源には常に気を配っている」と話し、「我々とサポーター(ファン)の距離をもっと近くしていきたい」とサービス参加への狙いを話す。

記者会見の会場には、前出の湘南ベルマーレ水谷氏をはじめ、計5チームの経営者が出席した。横浜ビー・コルセアーズ(バスケットボール)代表取締役CEOの岡本尚博氏、徳島インディゴソックス(野球)運営のパブリック・ベースボールクラブ徳島 代表取締役社長の南啓介氏、フウガドールすみだ(フットサル)運営の風雅プロモーション代表取締役社長 安藤弘之氏、琉球コラソン(ハンドボール)代表取締役/CEOの水野裕矢氏である。

各チームとも、ファンとチームを結ぶ新サービスへの期待を口々に語った。目を引いたのは「異なる競技のチームと知見を共有したい」というコメントが目立ったことだ。エンゲートの城戸幸一郎CEOは、「日本のスポーツファンは一つのスポーツのファン、野球ファンやサッカーファンのような人たちが多い。仕事で目にした欧州では、2種類以上の競技のファンであることは普通だった。今後は、サッカーのファンがハンドボールの面白さに気がついたり、野球ファンがバスケットボールも見始めたり、ファンが環流するよう仕掛けていきたい」と抱負を語る。

サービス設計では、「投げ銭」としてデジタルなギフトを送るだけでなく、スポーツチームからファンへのお返し(リワード)も重要な役割を果たす。例えば選手との食事会、始球式へのファンの起用、記念グッズなどの検討を進めている。

収益モデルはレベニューシェアだ。利用者が購入するデジタルなギフトの売上げを、エンゲートと各スポーツチームで分配する。「スポーツ以外のギフティングサービスに比べても大きな割合をチームに分配する予定だ」(城戸CEO)としている。

3種のブロックチェーン技術を比較検討しNEMを選択

記者会見の場では、サービスが利用するブロックチェーン技術についても説明があった。エンゲートは、ブロックチェーン技術に関するセミナー事業も展開していることもあり、ビットコイン、Ethereum、NEMと複数のブロックチェーン技術のリサーチを行ったと語る。

今回のサービスでは、ポイントを表現するトークン発行の基盤技術として仮想通貨NEMのパブリックブロックチェーンを採用した。その理由として、エンゲートBlockchain PRの藤田綾子氏は「ビットコイン、Ethereumのトークンはアプリケーションにより発行する。NEMのトークン(モザイク)はブロックチェーンの核となるプロトコルそのものが発行するので安全性が高く、またAPIから利用でき簡単だ。またEthereumに比べ手数料が約1/40で安いという特徴もある」と説明。「安全、簡単、安いという理由でNEMを選択した」(藤田氏)。

Engateのポイントはパブリックブロックチェーン上のトークン(NEMのモザイク)を使ってはいるが、サービスの外部では価値を持たない設計とした。「仮想通貨と異なり、サービス外で価値がなければ盗難などの恐れも少ない」(藤田氏)。

ここまでの話を聞けば、ブロックチェーンを使わなくても似たサービスは実現できそうに思える。だが、パブリックブロックチェーンならではの特徴がいくつかある。一つは、ある種の公共財といえるパブリックブロックチェーンを上手に活用することでシステム構築コストを抑えられる可能性があること。もう一つは、ブロックチェーン上の記録は誰でも読み出せる記録として永続的に残ることだ。Engateのサービスが使われる度に、改ざんがほぼ不可能なパブリックブロックチェーン上にファンと選手、チームの応援の記録が刻まれる。「ファンの思い、『熱量』が恒久的にデータとして残る。このデータの上の多様なサービス展開も考えている」(藤田氏)と同社は思いを語っている。

ウェブUI/UX解析ツール「USERDIVE」提供元が6億円調達、分析自動化を目指しプロダクトをリニューアル

ウェブサイトのUI/UX解析ツール「USERDIVE」などを提供するUNCOVER TRUTH(アンカバートゥルース)は10月9日、三井物産、三井住友海上キャピタル、イノベーション・エンジン、楽天(楽天ベンチャーズ)、Draper Nexus Ventures、エボラブルアジア、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタルを引受先とする、総額約6億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

UNCOVER TRUTHは2013年4月の設立。今回の資金調達は2016年9月の4億円の調達に続くもので、シリーズBラウンドにあたる。これまでの同社の累計調達金額は約10億円となる。

UNCOVER TRUTHが提供するUSERDIVEは、ウェブページ内のユーザー行動を動画やヒートマップとして可視化するツールだ。マウスの動きを可視化するマウスヒートマップや、入力フォームでユーザーが離脱する原因を分析する動線分析などの機能を備え、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールとあわせて利用することで、UIやコンテンツ改善に役立てることができる。

またUNCOVER TRUTHでは、ツールによって得られたデータの分析により、ウェブサイト改善のための施策を提案するコンサルティングもサービスとして提供している。このサービスは、アクセス解析の実施からKPI設計、ヒートマップ分析、施策立案、ABテスト、効果検証までを一気通貫で支援するというものだ。

これまでにウェブサイトの改善を支援した企業は、JALや富士フイルム、三井住友カードなどの大手企業を中心に累計400社を超えるという。

調達資金によりUNCOVER TRUTHでは、より高度な分析をするためのプロダクトのアップデートや人材への投資、グローバル展開を進めるとしている。

プロダクトのUSERDIVEについては、今回フルリニューアルが行われ、実装機能にも大きな変化があったそうだ。UNCOVER TRUTH代表取締役の石川敬三氏は、以前のTechCrunch Japanの取材でも「ウェブサイト解析と改善でも自動化を進め、ツールだけで完結する世界を作る。そのために機械学習を取り入れていく」と答えていたが、今回のアップデートはその布石ともいえるものだ。

アップデートにより実装された機能はいくつかあるが、そのうちのひとつが「全量データの取得」。石川氏によれば、世にあるヒートマップツールのほとんどが、ユーザー行動データの全部を解析するわけではない。例えば1000万PV(ページビュー)のサイトであれば、そのうちの100万PV分のデータをサンプリングして取得し、傾向を分析するという。それを新バージョンでは、全データストックするように変更している。

これにより、例えば「新規会員登録を完了し、かつ『よくある質問』を見た」といったセグメントごとの分析が、より正確に行えるようになるという。

「UNCOVER TRUTHではこれまで、ツールとコンサルの両方を提供してきた。コンサルもやってきたことによって、アナリストの手作業によるウェブサイト改善の結果が蓄積された。EC、金融サービス、求人、メディアなどさまざまなジャンルのサイトで、『こういうサイトなら、こう改善するといい』『こう改善しても、あまり成果は上がらない』といった多くの情報を得ている。これらの情報を、機械学習の教師データとして取り込み、AIを活用して自動的にサジェスチョンしていきたい」(石川氏)

このほかにも、「イベント機能」「タイムヒートマップ」といった機能が追加されている。イベント機能は、これまでのヒートマップツールが苦手としていた、ページ遷移しない行動をイベントとして取得できるというもの。

「これまでは、例えばハンバーガーメニュー(スマートフォン向けサイトなどでよく利用される“≡”の形をしたアイコンを使ったナビゲーションメニュー。タップすると操作メニューが元の画面の上にかぶさって開く)の中の動きについては、『メニュー内をタップしたのか、元のコンテンツを触ったのか』を人が見て、想像で判断していた。こうしたメニュー内の動きを取得して、分析することができるようになる」(石川氏)

タイムヒートマップは、ウェブサイトをグリッド(格子)状に区切り、グリッドごとのヒートマップを時間単位で取得できるという機能だ。

タイムヒートマップ機能(クリックすると拡大)

「他社ツールやこれまでのバージョンでは、画面を上下に区切って、ユーザー行動を判断してきたが、左右も含めて細かく場所が分析できるようになった」と石川氏。特定コンテンツに対するユーザーの行動が「5秒間で終わっているのか、30秒間継続しているのか」といったデータを取得できるようになり、ユーザー行動と興味度合いをより正確に紐づけることが可能になるという。

UNCOVER TRUTHでは、分析機能の自動化を含むさらなる機能拡充により、ソリューション全体の質を高めていく、としている。石川氏は、出資元との協調により、新しいソリューションの検討も進めたい、とも述べていた。

東大発の無線通信技術で“IoTの足かせ”なくすーーソナスが3.5億円を調達

IoT向け無線通信プラットフォーム「UNISONet(ユニゾネット)」を展開するソナスは10月9日、シリーズAラウンドでグローバル・ブレインとANRIから総額3.5億円を調達したことを明らかにした。

同社は東京大学で省電力無線センサネットワークの研究開発を行ってきたメンバーを中心に立ち上げられたスタートアップ。橋梁や建造物のモニタリングなど、土木・建設業界の企業を中心に無線センサを軸としたソリューションを提供してきた。

ソナスでは資金調達と合わせて、これまで限定的に展開していた加速度モニタリングシステム「sonas xシリーズ」の一般販売を始めることを発表。調達した資金を基に組織基盤を強化するとともに、工場やプラントなど同プロダクトの適用領域の拡大を目指すという。

最新技術を採用し無線センシングの抱える課題を解決

ソナスが展開する「sonas xシリーズ」

“IoT”という言葉が広く使われるようになり、様々な業界の課題解決に活用できるのではないかと注目を集めるようになってから数年が経つ。現状ではそこまで本格的に普及しているとは言えないように思うが、その理由のひとつに「質の高いデータを集める仕組み」がまだ十分に整っていないことがありそうだ。

少なともソナスでは「IoTが真に社会の礎となるためには、無線での高品質センシングを実現することこそが必要である」という思いを持っていて、有線と同等のクオリティを持つ無線システムの研究開発を進めてきた。

同社が手がけているのは乾電池で動く省電力の無線通信規格だ。近年はIoTの要素技術としても使われているもので、ほかにもSIGFOXやLoRa、Dust、ZigBeeなど様々なタイプがある。

従来、この無線通信規格においては「省電力と通信範囲、通信速度」がトレードオフの関係となり、これらを同時に満たすものがないことがひとつの課題となってきた。

たとえばDustは消費電力効率が高い点が強みである一方で電波環境やトラフィックの変動には弱かったり、省電力かつ長距離の転送を実現するSIGFOXやLoRaにも速度面で課題があったり。これらを兼ね備えている無線通信規格はなかったため、「アプリケーションによって無線規格を選んでいる」(ソナス代表取締役CEOの大原壮太郎氏)のが現状だという。

一方ソナスのUNISONetではある技術を採用することで、省電力、マルチホップ、時刻同期、ロスレスデータ収集、高速収集、低遅延な双方向通信といった性能を同時に実現。温度や湿度など小容量のセンシングから、加速度・画像など大容量のセンシングまで無線のチューニングを行うことなく実用的なシステムを構築できるのがウリで、アプリケーションを問わず幅広い用途で使えるような仕組みを作った。

その“ある技術”というのが、無線通信の常識を変えた「同時送信フラッディング(同時送信によるマルチホップ)」だ。

UNISONetのコアとなる同時送信フラッディング

省電力で、かつ通信範囲を伸ばしながら速度も落とさない無線方式の手法は以前から研究されてきた。データをバケツリレーのように運ぶ「マルチホップ」もそのひとつだが、大原氏によると「ルーティング(バケツリレーの経路の決め方)が複雑で難しかったこと」がボトルネックとなり、なかなか流行らなかったのだという。

同時送信フラッディングが画期的なのは、このルーティングをせずにデータを効果的に届けられる点だ。

同時送信フラッディングでは、上の図のようにまず最初の一台が自分の通信範囲にデータを送信し、そのデータを受け取った各ノードがそれをそのまま即座に転送する。

大原氏によるとこの点がユニークなポイントで、「(これまでの無線の常識では)複数のノードから電波を受け取る場合、コリジョン(衝突)が起きて受信できないと考えられていた」けれど、「同一データを同一時刻に受信するとコリジョンが起きない」現象がわかってきたのだという。

この工程を繰り返すことで、データを高速にネットワーク全体へ伝搬できるのが同時送信フラッディングの特徴だ。UNISONetではこの同時送信フラッディングを上手くスケジューリングすることにより、簡単な制御で効率的かつ高性能なネットワークを組める環境を作っている。

少数のルートのみを選ぶルーティングベースの通信とは違い、同時送信フラッディングでは経路を定めないために電波環境の変動の影響を受けにくいほか、従来は難しかった“省エネと高速”の両立も可能。時刻情報をネットワーク内で容易に共有できるため、同一タイミングでセンサの値を取得できる(時刻同期)といったメリットもある。

また上りのトラフィック(散らばった各センサーからゲートウェイへデータを集める)だけでなく、下りのトラフィック(ゲートウェイ側から指示を出す)にも対応することで、データのロスが発生しても即座に再送制御し、漏れなくデータを収集できる。

これによって「有線から無線に変えた結果、データの抜けがあって解析できなくなってしまった」といった課題に直面することもない。

インフラのモニタリングや工場での予知保全が軸

現在ソナスでは、無線センサ・ゲートウェイ、現場で測定指示やノードの設置補助ができるWindowsのソフトウェア、遠隔からクラウドベースでデータの閲覧や分析ができるアプリケーションをひとつのソリューションとして提供することを軸としている。

製品ベースではsonas xシリーズ(加速度のセンシング)がすでに複数のゼネコンで利用実績があるそう。橋梁や建物のモニタリングなどインフラ領域の課題解決に使われていて、ワイヤレス振動センサによって軍艦島にある建築物の揺れを遠隔から常時モニタリングする取り組みなどを行なっている。

「取ってくるデータの品質が良いのは最低条件。(ゼネコンなどでは)自分たちの持つ分析技術を生かしたいというのが根底にある。データが抜けていればそれだけで分析できなくなってしまうし、同期が取れていなくても話にならない。そのニーズに応えられるものがずっと求められていた」(大原氏)

またソナスの共同創業者でCTOの鈴木誠氏によると、インフラ領域では省電力もかなり重要視されるそう。地震のモニタリングなどはまさにその典型で「ずっと現場に置いておいて地震が発生した時だけデータが欲しいという要望がある。これまでは同期のとれた橋全体の挙動を見ることができなかったので、それが見られるようになった点を評価してもらえている」という。

ソナスではインフラ領域に加えて、工場やプラントでの展開を2つめの柱として考えているそう。他社とも協業しながら「設備の予知保全」ニーズに応えていく計画だ。

無線の足かせ外し、いろんな人がIoTを使える世界に

写真左からANRI鮫島昌弘氏、ソナス代表取締役CEO大原壮太郎氏、同CTO鈴木誠氏、グローバルブレイン木塚健太氏

冒頭でも少し触れた通り、もともとソナスは東京大学での研究をベースにしたスタートアップだ。CEOの大原氏とCTOの鈴木氏は同じ研究室の先輩後輩の間柄(鈴木氏が先輩)。創業前、大原氏はソニーで半導体エンジニアの職に就き、鈴木氏は東大で省電力無線の研究を続けていたという。

「飲んでいる時に(起業をして)一緒に勝負をしてみないかという話になったのが創業のきっかけ。以前から鈴木がUNISONetの原型となるものを作っていることは知っていて、この技術なら世界でも勝負できるんじゃないかということで、挑戦することを決めた」(大原氏)

その話が出たのが2015年の秋頃。もう一人の共同創業者である神野響一氏も含めた3人でソナスを立ち上げ、1年ほど大学で技術を温めたのち、2017年4月から事業をスタートした。同年11月にはANRIから資金調達も実施。複数の領域で実績を積み上げてきた。

「現場に出て話をしてみると『無線なんていらない』と言われることもある。先端技術に積極的な人ほどまだ成熟しきる前の無線通信規格を試していて、『現場に入れたら全然飛ばなかった』『マルチホップと言ってるのに全然ホップしない』といった経験をしている。そういう人たちにこそ、使ってもらえるようにアプローチをしていきたい。ソナスでは(鈴木氏の研究を軸に)これまでの歴史的経緯や課題も踏まえて、UNISONetという規格を作り上げた」(大原氏)

今回の資金調達は同社にとって約1年ぶりとなるもの。調達した資金は組み込みエンジニアやビジネスサイドのメンバーを始め、組織体制の強化に用いる。また直近は同社のソリューションがフィットする領域を模索しながら、ゆくゆくは電機メーカーなど製品パートナーに対して無線単体での提供や、世界の人たちに無線通信規格として使ってもらえるように標準化やIP化にも取り組むという。

「IoTはバズワードになっていて『なんでもできる』と思われがちだけれど、実際に使ってみると使いづらかったり、可能性がすごく狭いところに止まっているのが現状だ。まずは無線の領域でIoTの足かせとなるものを外して、いろいろな人がIoTを使える世界を支えていきたい」(大原氏)

Toyota AI Venturesに聞くモビリティの未来、TC ToykoにマネージングディレクターのJim Adler氏登壇決定

強大なクルマ産業がこれまでの経済を引っ張ってきた日本。モビリティの未来とは何か、そしてどうすれば日本がその中心的な存在となれるのか、という問いには答えを出さなければならない。11月15日、16日で開催する「TechCrunch Tokyo 2018」にも、その問いに答えてくれるキーパーソンをお呼びした。Toyota AI VenturesマネージングディレクターのJim Adler氏だ。

Toyota AI Venturesは、2017年7月に設立されたトヨタグループのベンチャーキャピタルファンド。トヨタ自動車の子会社で、米国において主に人工知能の分野で研究開発を行うToyota Research Institute(TRI)が設立した。人工知能、ロボティクス、自動運転・モビリティサービスおよびデータ・クラウド技術の4分野における有望なスタートアップの発掘と投資が彼らの役割だ。

同ファンドはこれまでに、LiDAR開発のBlackmore、自動運転ロボットによるラストワンマイル物流のBoxbot、自動車の運行データ分析のConnected Signalsなどに投資を行っている。

TechCrunch Tokyoに登壇いただくAdler氏は、Toyota AI Venturesの設立時にマネージングディレクターに就任。Adler氏はもともと、Sequoia Capitalなどから出資を受けたデータ分析スタートアップのMatanautixでプロダクトおよびマーケティング部門のバイスプレジデントを務めており、TRIに移ったあとは同社のデータおよびビジネス部門のバイスプレジデントを務めた。彼自身、VoteHereという電子投票のスタートアップを創業した起業家でもある。

壇上のAdler氏には、トヨタグループのVCとして注力する投資領域や、モビリティの未来、データと人工知能がモビリティに与える影響などを聞きたいと思う。

TC Tokyoの開催まであと約1ヶ月。まだチケットを手に入れていない人は、以下のリンクからぜひ購入してほしい。

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スマホ決済サービス「PayPay」がリリース

ソフトバンクとヤフーの合弁会社であるPayPay(ペイペイ)は10月5日、バーコードを活用した実店舗でのスマホ決済サービス「PayPay」の提供をスタートした。

PayPayは事前に銀行口座からチャージした電子マネー(「PayPay」電子マネーまたは「Yahoo!マネー」)と、クレジットカードによる支払いの2種類を選択できることが特長。バーコードの読み取り方式についても、事業者側が掲示したQRコードをユーザーがアプリで読み取る「ユーザースキャン」方式と、ユーザーがアプリに表示したバーコード(1次元バーコード、QRコード)を事業者側がレジなどで読み取る「ストアスキャン」方式の2タイプを提供する。

同サービスの提供開始にあたって、特典として新規登録ユーザーに500円相当のPayPay電子マネーを進呈。加盟店向けには本日より2021年9月末までの3年間、ユーザースキャン方式の決済手数料を無料とする。また今秋より提供開始予定の「Alipay」による決済の手数料も、2019年9月末までの期間は無料で提供するという。

なおPayPayのサービス開始に伴い、ヤフーが提供する「Yahoo!ウォレット」のスマホ決済サービスは近々終了する計画。今後はYahoo! JAPANのアプリからもPayPayを利用できるようになる予定だ。

PayPayでは「あらゆる小売店やサービス事業者、ユーザーにスマホ決済の利便性を提供し、日本全国どこでもキャッシュレスで買い物ができる世界を目指してまいります」としている。

同社はソフトバンクとヤフーが日本国内でキャッシュレス決済の普及を促進することを目的に今年6月に設立(当初はPayという社名だったが、7月より現在のPayPayへと変更している)。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先である、インドの決済サービス事業者Paytmとも連携してサービスを提供することでも話題を集めた。

なお11月に開催する「TechCrunch Tokyo 2018」にはPayPay代表取締役の中山一郎氏、PaytmとPayPayの主要人物であるハリンダー・タカール氏が登壇する。同社の戦略などについて掘り下げて話を聞く予定だ。

ドローン開発のALI、同業のドローンデパートメントを完全子会社化:2016年創業同士のマージ

ドローンの研究開発・販売などを展開するAerial Lab Industries(以下、ALI)は10月5日、ドローン関連領域で複数サービスを展開するドローンデパートメントの発行済株式の100%を取得し、完全子会社化したと発表した。取得価格は非公開。

ALIは、ドローン関連商品の販売や技術コンサルティング業務をはじめ、ブロックチェーン技術を活用したプロダクト開発などを手がけるスタートアップ。具体的には、東京電力ホールディングスからのドローンハイウェイ構想に向けた技術調査受託、みんなの電力とのブロックチェーン技術を活用したP2P電力取引システムの開発などに取り組んでいる。

一方、同社が買収したドローンデパートメントは、ドローンによる空撮動画の制作、ドローン専門メディアの運営、ドローン専門の人材派遣サービスの展開など、この領域で幅広いサービスを展開している。

ALIはドローンデパートメントの買収により、ドローンデパートメントが持つ200社以上の操縦士ネットワーク、ドローンスクール運営のノウハウなどを獲得する。それにより、ALIが提供するインフラ点検サービスなどで現場でのオペレーションまで踏み込んだ一気通貫のソリューション提供に活かすという。

ALIとドローンデパートは、両社ともに2016年の創業。同時期に創業したスタートアップ同士がマージするという例が増えてきた。

モバイル動画のCandee、VTuber特化型のライブ配信サービス「Colon:」リリース

モバイル動画を軸に、メディア事業や動画マーケティング支援事業などを展開するCandeeは10月5日、VTuberに特化したライブ配信サービス「Colon:(コロン)」をリリースした。

YouTuberや配信者の代わりに2D/3Dキャラクターを動画に登場させるVTuber。現状、彼らの主戦場はYouTubeでのライブ配信だ。一方、Colon:はそのVTuberだけに特化したライブ配信サービスとなる。スタート時点では総勢120人以上のVTuberが参加予定だ。

視聴者はライブ配信を楽しみながらコメントやハートで配信者を応援したり、有料のアイテムを購入して配信者に贈ることができる(ギフティング)。これが配信者とCandeeにとっての収入源だ。

Colon:の他にも、VTuberに特化したライブ配信サービスとしてグリーの「REALITY」などがある。Colon:事業のマーケティング担当者によれば、「VTuberには“ハイエンド”と“ローエンド”のキャラクターが存在します。ハイエンドは高価な機材をつかい、口の動きも完全に配信者とリンクするなど作り込まれているのに対し、ローエンドは基本的にスマホやPCのカメラがあれば配信できます。REALITYはそのハイエンドのキャラクターに注力している印象ですが、Colon:はVTuberの大多数を占めるローエンドに注力していきます」と、Colon:ならでは違いを話した。

また、アンケートやクイズ機能など、配信者が簡単にユーザーとコミュニケーションを行うための各種機能を用意し、誰もが手軽にライブ配信のコンテンツを作れるようなプラットフォームを目指すという。Colon:はiOSAndroidのアプリを本日よりリリース。また、Webブラウザでも配信を視聴可能だ。

世界で戦えるセキュリティ企業目指しココンが28億円を調達、研究開発やM&Aに投資

ココン代表取締役社長の倉富佑也氏

サイバーセキュリティ事業を主力として、複数の領域でビジネスを展開するココン。同社は10月5日、YJキャピタルや住友電気工業などを引受先とした第三者割当増資により、約28億円を調達したことを明らかにした。創業以来の第三者割当増資による調達額は累計で41億円になるという。

ココンでは調達した資金を基にコネクテッドカーや産業制御システム、電力インフラなどの領域におけるセキュリティ診断技術の研究開発やプロダクト整備を進める計画。また引き続き、サイバーセキュリティを含むテクノロジーやデザインなど、同社のケイパビリティに関連したM&Aも推進していく。

M&Aで事業拡大、近年はセキュリティ領域が成長

ココンは早い段階から積極的にM&Aに取り組みながら事業を拡大してきたという意味で、珍しいタイプのスタートアップと言えるかもしれない。

2013年2月にPanda Graphicsという社名で創業。ゲームイラストに焦点を当てたクラウドソーシング事業からスタートした。翌年には資金調達を経て3DCGモーション制作を手掛けるモックス、UX設計・UIデザイン事業を手掛けるオハコとそれぞれ資本業務提携を結びグループ会社化。2015年5月には当時Groodが展開していた音声クラウドソーシングサービス「Voip!」を譲受している。

現在のココンへと商号を変えたのは2015年7月のこと。同年8月にはセキュリティ診断を行うイエラエセキュリティを、翌年7月にはセキュリティなどの情報技術における研究開発支援に取り組むレピダムを完全子会社化。2017年12月には動作拡大型スーツを開発するスケルトニクスにも出資をした。

これまでに実施したM&Aは5社。特にサイバーセキュリティ領域は同社にとって軸となるような事業に成長していて、倉富氏も「いろいろな偶然もあってM&Aの機会をいただき、結果的にはそれが会社を大きく伸ばすことにも繋がった」と話す。

セキュリティ事業ではWebアプリやモバイルアプリ、IoTデバイスなどにおけるセキュリティ診断やペネトレーションテストサービス(実際のハッカーによる攻撃を想定した擬似攻撃を通じて脆弱性を発見するテスト)を展開。ここ1年ほどで、車や制御系システムなど新たな領域における仕事も増えてきているという。

「Webやモバイルだけでなく、あらゆるものがネットに繋がる時代。そのような社会ではどのようなものが新たにセキュリティの脅威にさらされるか、未来を見据えた際に今後対策が必要になってくる分野へ先んじて事業を広げてきた」(倉富氏)

たとえば今回の調達先でもある住友電工は、車の電源や情報を伝送するワイヤーハーネスを始めとした自動車製品の開発に力を入れてきた企業だ。同社とは車のセキュリティ対策に関してシナジーが見込めるだろう。

これに限らず昨年11月には保険領域でSOMPOホールディングスと提携をしたりなど、さまざまな業界で大手企業との取り組みも加速させている。

セキュリティ事業の研究開発とM&Aを推進へ

そんなココンは28億円という資金をどこに投資していくのか。冒頭でも少し触れた通り、大きくは「セキュリティ事業の拡大に向けた研究開発やプロダクトアウト」と「その他の領域も含めた組織強化のためのM&A」の2つになるようだ。

セキュリティ事業についてはここまで紹介してきたような分野を中心に、診断技術の向上に資する環境整備や人工知能を活用した診断技術の研究開発などにも取り組む。

特に技術面ではロシア最大級のハッキングコンテストで準優勝、ラスベガスで開催された車載通信ネットワークに関するハッキングコンテストでは優勝するなど、海外のコンテストでも日本人中心のチームで戦えるようになってきているという。

「とはいえ、グローバルで世の中のためになる事業を作るという意味では、影響力も極めて段階的。現時点ではスタートラインにも立てていないような状況だ。これから中長期で研究開発を進め、グローバルで勝てるような技術的なバックグラウンドを持った、影響力のあるセキュリティカンパニーを目指していきたい」(倉富氏)

目下の軸はセキュリティに置きつつも、他の領域も含めてM&Aを推進するスタンスも崩さない方針。サイバーセキュリティや暗号技術、人工知能などのテクノロジーと、UI/UX設計などのデザインやブランディングといったココンの持つケイパビリティに関連するM&Aを実施し、“ひとつのチームとして”顧客や社会の課題解決に繋がる事業を展開していくという。

「自社ならではの独自性とは何かを考えていく中で、シナジーがある会社に入り込んで、一緒に汗をかきながら成長してきた。今後もテクノロジーに詳しいというのをひとつの軸に独自なポジションを築いていきたい。また国内初で大きくなっている会社を見ると、M&Aに向き合いながら成長している会社が多い。M&Aに関するノウハウを早期に蓄積しておくことも、将来を見据えた時に重要なことだと考えている」(倉富氏)

フリーランスのコラボを促進する“個の時代”のプロジェクトシェアサービス「TEAMKIT」が資金調達

フリーランスを中心とした個人が、自分で受けた仕事を周りの人とシェアしたり、コラボすることができるプロジェクトシェアプラットフォーム「TEAMKIT(チームキット)」。同サービスを運営するLboseは10月5日、ANRIと他1社を引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。具体的な調達額は公表されていないが、数千万円前半になるという。

冒頭でも書いたように、TEAMKITは個人同士がプロジェクトをシェアするためのプラットフォームだ。数ヶ月間のベータ版期間を経て、2018年8月20日に正式版がリリースされている。

Lbose代表取締役社長の小谷草志氏によると「今の仕事が回せるようになってきたので、単価も上げてもっと大きな仕事にチャレンジしたいと思っているようなフリーランスや、仕事は来るけど1人で回すのが大変になってきたというフリーランス」を主な利用者層として想定。そのようなユーザーが持っている案件をシェアしたり、コラボして新しいチャレンジをできるような場所を目指している。

具体的にTEAMKITを通じてできることは「自分のプロフィールページを作ること」「Tent(プロジェクト)を立てて仲間を募ったり、他のユーザーが立てたTentに参加すること」「他ユーザーとWhoop(紹介文)を送り合うこと」の3つだ。

特に特徴的なのが他己紹介機能のWhoop。小谷氏はこの機能を通じて、SNSのフォロワー数などとはまた違った形で信頼性を可視化していきたいのだという。

「(クラウドソーシングなどで)全く知らない誰かといきなり仕事をするのはハードルが高い。それよりも、直接繋がっていなくても自分の知り合いが紹介してくれる人の方が信頼感がある。『あの人が紹介してくれるなら信頼できるかも』という感覚を大切にしていて、それを可視化する上では他己紹介の仕組みが重要になる」(小谷氏)

Whoopは一方のユーザーが書いただけでは表示されず、お互いが書いた場合に初めて相手方のプロフィールページに掲載される仕組みになっている。これは何となくFacebookで友達になっているといった薄い関係性ではなく、ある程度お互いのことを理解しているようなユーザーが書いた紹介文だからこそ信頼できるという思想があっての設計だ。

「普段フリーランスは『こんな人を探しているのだけど、知り合いにいい人いない?』といった形で個別に人を紹介し合っている。それをWhoopを軸に『この人紹介してくれない?』といったコミュニケーションが生まれたり、(TEAMKIT上で)直接繋がれるような世界観を実現していきたい」(小谷氏)

小谷氏を含めて、Lboseの創業メンバー3人は全員がフリーランスの経験者。自分たち自身がFBメッセンジャーなどを通じて人を探したり、紹介することの大変さを実感していたことも、Whoopを含めたTEAMKITのコンセプトに繋がっているのだという。

現在TEAMKITがフォーカスしているのは、個人のユーザー同士や、ユーザーとTentが出会うための場所になること。今後はその「出会い方の多様性やクオリティ」をさらに上げていくための機能開発などを重点的に進める計画だ。

また小谷氏は、オンライン上のみならず「オンラインとオフラインの境界をもっとなくしていきたい」のだそう。「例えばコワーキングスペースなどのように、リアルな場所があるからこそ発生する熱量やコミュニティみたいなものがある。オンラインとオフラインを上手く行き来できるような仕組みがあれば、プロジェクトのシェアももっと促進される」(小谷氏)

この取り組みについてはワークプレイス「co-ba(コーバ)」を展開するツクルバと連携して、地域を越えたプロジェクトのシェアやコミュニティ作りを進める方針。それに向けてLboseはツクルバが開始したスタートアップ支援プログラムの第一号に採択されている。

“ディープラーニングで解決できない課題”に独自AIで挑むハカルスが1億円を調達

“スパースモデリング”という技術を機械学習に応用し、独自のAIソリューションを開発するハカルス。同社は10月5日、イノベーション・エンジン、加賀電子、PALTEKを引受先とした第三者割当増資により総額1億円を調達したことを明らかにした。

ハカルス代表取締役CEOの藤原健真氏によると今回の資金調達は7月に実施した1.7億円の調達に続くもので、トータルで総額2.7億円のシリーズAラウンドが完了。それ以前のラウンドも含めた累計調達額は3.7億円になる。

7月の調達では大原薬品、エッセンシャルファーマ、メディフューチャーなど医療系の企業から出資を受け、医療分野において事業を強化する旨を発表していたハカルス。今回は同社にとってもうひとつの軸となる、産業分野での事業展開を見据えたものだ。

具体的にはFPGAの受託設計・開発支援を行う半導体商社のPALTEKなどとタッグを組みながら、ハカルスのAIエンジンを搭載したFPGA製品とボックスコンピュータの開発に取り組む計画。オフラインのエッジ端末上で動くAIを作ることに資金を投じていくという。

医療領域と産業領域に特化したAIソリューションで事業拡大

これまでも何度か紹介している通り、ハカルスの技術的な特徴はディープラーニングを一切使っていない点にある。少量のデータからでも特徴を抽出できるスパースモデリング技術を機械学習に応用することで、「ディープラーニングでは解決できないような課題」に対してAIソリューションを提供しようというのが同社のビジネスだ。

もともとこの技術を用いた健康管理アプリを開発していたこともあり、まずは対象領域を広げる形で医療・ヘルスケア領域でサービスをスタート。同様のニーズがあったため、コアとなる仕組みを産業領域にも広げてきた。

藤原氏によると、ディープラーニングを軸にしたソリューションを現場に導入する際にネックとなるのが、「多くのデータ量が必要になること」や「AIの意思決定プロセスを説明できないこと」なのだという。

「(ディープラーニングは)大量のデータがそもそも手に入らないためにつまづくということが多い。またAIのロジックが完全にブラックボックスとなっていて、なぜAIがそのような結果を出したのかが設計した本人でさえもわからない場合もある。医療分野なら『なぜ目の前の患者を手術するべきか』の理由が説明できないと現場での導入は難しい。そこはある意味、精度以上に重要視されている部分でもある」(藤原氏)

たとえば医療の場合、患者数が多い三大疾病などの病気であれば多くのデータが集まるだろう。一方で年間の患者数が100人や200人といったように、そもそも発症数が少ない希少疾患だとデータが少なくディープラーニングでやるのは難易度があがる。結果的には「そういった病気に対するAIを作ろうと思うと別の技術が必要になる」(藤原氏)そうだ。

産業領域も同様で、現代は少量多品種の時代のため一つひとつの製品に関するデータが限られ、大量のデータを集めるのが難しくなっているという。また品質管理が厳しい自動車や航空機に搭載する部品工場などでは、不良品の検知にAIを使うにしても「なぜOKか、なぜNGかの説明」が求められる。

「産業分野のお客さんに関しては、約半数が『もともとディープラーニングを活用したシステムを導入していたものの、データ不足の壁に直面して一向にAIの精度があがらない』という悩みを抱えていた」(藤原氏)

ハカルスではこのような医療領域、産業領域の課題を抱える企業に対して、同社のソリューションを強提供していく方針。また独自のAIエンジンを搭載した半導体を開発し、産業分野で展開していく計画だ。今回調達した資金もデータサイエンティストや組み込み系のエンジニアを始めとした開発人材の強化などに用いる。

「(AIが)クラウドを使わないエッジ端末の中でどういうことができるかはまだ未開の領域。今回はオフラインで、エッジ端末上で動くAIを開発するところに資金を使っていく。具体的には一切インターネットにつながずに学習と推論をできるAIを作っている」(藤原氏)

推論部分だけでなく学習部分まで含めてエッジ側でできるようにすることで、AIがその場でエッジ端末の設置された環境を学習し、「AI自身が環境に合わせてアジャストして、最適化を行う」ソリューションの構築が可能になる。このAIをいろいろな分野で使ってもらうことを目指していくという。

エッジ端末上で動作している人物検知のデモの様子

インターネットの基盤を築いた先人達のように、ブロックチェーンの土台を作るーーchaintopeが1.1億円を調達

chaintopeのメンバー。前列右から3人目が代表取締役CEOの正田英樹氏

「インターネットだってかつてはめちゃくちゃ遅かったし、拡張性もなくて使い物になるかわからなかった」ーーブロックチェーンの基盤技術を研究開発するchaintope代表取締役CEOの正田英樹氏はそう語る。

メディアなどで取り上げられるブロックチェーン関連のスタートアップは、その技術を何らかの領域に用いた“アプリケーション”を作っているところが多いが、chaintopeが開発しているのはその前提となるコアな技術。特にパブリックなブロックチェーンにおける“プロトコル”レイヤーの技術開発に取り組んでいる。

目指しているのは、ブロックチェーンを活用した自立分散型のビジネスモデルを作りやすくするための基盤を作ること。いわば「ブロックチェーンのインフラ」を作ることと言えるかもしれない。

今でこそ当たり前の存在になっているインターネットも、90年代から業界の先人達が研究開発を重ね、整えてきた基盤があるからこそ成り立っている。正田氏いわく、それを支えてきたのは「大学のネットワークや研究者のネットワーク」の存在。chaintopeがブロックチェーンの領域でやろうとしていることも、まさにこれと同じようなことだ。

同社は10月5日、ベンチャーキャピタルのANRIからシリーズAラウンドで約1.1億円を調達したことを明らかにした。chaintopeではブロックチェーン領域で大学のネットワークと技術者のコミュニティを広げていきながら、ブロックチェーンの基盤技術の開発を進め、その技術を応用したビジネスモデルの実証実験を国内外で加速させる計画だ。

今の技術では限られたモデルチェンジしかできない

冒頭から長々と説明してしまったけれど、改めてchaintopeが取り組んでいることを紹介したい。

まず前提にあるのが、今現在のパブリックブロックチェーンの技術では実際の社会システムに組み込む際の課題が多く、限られたモデルチェンジしかできないということだ。

「今はパブリックなチェーンをいろいろな業界に当てはめていこうと思うと、スケーラビリティやプライバシー、セキュリティなど技術サイドがネックになってしまう。まずはそこを解決するための技術が必要だ」(正田氏)

たとえば一定時間内で処理できるトランザクションの量が限られるという「スケーラビリティ」の問題に対しては、ブロックチェーンの“セカンドレイヤー”における新しい技術(ビットコインのLightning NetworkやイーサリアムのPlasmaなど、オフチェーンやサイドチェーンといった技術)の開発・検証が活発になってきている。

同社ではこのような暗号通貨やブロックチェーン領域の研究に数年前から着手。現在はブロックチェーン関連の2つのコア技術の開発に力を入れている。

1つ目が新たなコンセプトのブロックチェーン。これはパブリックな環境下で不特定多数の参加者が想定されるが、既存の技術では実際のビジネスに組み込むのは難しいというニーズに応えるためのものになる。想定しているのは、不動産の資産管理やトレーサビリティ、P2Pの電力売買、投票、国際送金といったシーンだ。

そして2つ目がバブリックチェーンをベースにしたセカンドレイヤーの技術。こちらは非中央集権的でパブリックな使い方をしつつも、一定のコミュニティ内で利用し、取引の高速化や手数料低減のニーズが強い場面で活躍する。地域通貨やP2Pのマイクロペイメント、それを用いた関連サービスなどでの利用を想定しているそうだ。

国境を超えて大学や技術者のネットワークを広げる

これらの技術をベースに各業界の企業や自治体と実証実験に取り組み、サービス化に向けたシステム開発を行うというのがその次のステップ。これまでも投票システムや資金貸借市場での応用(東京短資)、デジタル通貨(近鉄ハルカスコイン)や不動産連携コイン(シノケンコイン)、働き方改革(サーキュレーション)や地方創生など、さまざまなジャンルで実証実験を重ねてきた。

特に今進めているのが、各国の有力な大学との連携だ。つい先日も取締役CTOの安⼟茂亨氏がインド工科大学ハイデラバード校にてブロックチェーンの特別講座を実施。これに限らず大学とタッグを組んでアカデミックサイドから研究開発に取り組み、プロトタイプのようなものを作る。

並行してハッカソンなども積極的に行い、国境を超えて技術者のネットワークを広げていく構想だ。アーリーステージで乗ってくれるような企業も巻き込みながら、モデル化を目指していくという。

「インターネットでもアカデミックな領域から新しい技術が生まれてきた。ブロックチェーンの場合は大学のネットワークと技術者コミュニティが重要な役割を担うので、ここを盛り上げながら世界的なネットワークを作っていきたい」(正田氏)

最初にモデルを実装する国についても日本に限定しない。むしろまだ基本的なインフラも十分に整っていないようなASEANの国で実証実験を進め、それを軸に日本に逆輸入するような計画もあるようだ。実際、現時点ではまだ公開できないそうだが、海外では実証実験がかなり進んでいる領域もあるという。

取締役CTOの安⼟茂亨氏がインド工科大学で講義をした際の様子

今のインターネットも先人たちが築いた基盤の上で成り立っている

chaintopeは普段TechCrunhで紹介しているスタートアップとは若干毛色が異なる企業かもしれない。もともと母体となっているのは正田氏が1999年に福岡の飯塚市で創業したハウインターナショナル(創業時の社名はHeart at Work)。2015年頃からブロックチェーンの研究開発に取り組み始め、同領域に特化するべく立ち上げたのがchaintopeだ。

「昔から福岡県内でハッカソンや技術者向けのコミュニティイベントをやっていて、仲間内で『ブロックチェーンのテクノロジーはこれまで実現できなかったようなシステムを構築できるポテンシャルがあるのではないか』と話したのがきっかけで研究開発を始めた」(正田氏)

最初のプロジェクトは近畿大学の山崎重一郎氏らとともに開発したP2P型の投票システム。門司港で開催された唐揚げ選手権やラーメン選手権の投票にブロックチェーン技術を用いたところ、フクオカRuby大賞で優秀賞を受賞。そこから問い合わせなどもあり、分野を広げて勉強会や実証実験を実施してきた。

chaintopeには「ブロックチェーン・プログラミング 仮想通貨入門」の著者としても知られる開発者の安⼟氏のほか、CER(Chief Ethereum Researcher)の中城元臣氏など、暗号通貨やブロックチェーン領域に詳しい技術者が集まっている。その多くは昔から同じコミュニティ内で交流があったメンバー達だ。

「今は当たり前のようにスマホアプリが普及しているが、それも1995年頃から先人達が土台を作ってくれてきたからこそ。今度は自分たちがブロックチェーンにおいて、自立分散型のアプリケーションを作りやすくするための土台を作りたい。アプリケーションレイヤーではなくプロトコルレイヤーから始めることに対して、上の世代の人たちも共感して応援してくれていて、エンジニア達も本気で燃えている」(正田氏)

この1年で業界は大きく変わるからこそ、資金調達で開発加速へ

正田氏自身も、chaintopeやブロックチェーンに対しては強い思い入れがある。インターネットが日本で立ち上がり始めた約20年前頃、正田氏は24歳で飯塚にて起業した。

「学生の時にモザイクが出てきたけれど、当時はすごく遅くて。今みたいに手元でどんどん動画を見る時代が来るなんてイメージできなかった。『これからインターネットがないと生活が困るようになる』なんて言う人もいたけど、ほんとかなと」(正田氏)

当時は渋谷などで同世代の若手起業家が活躍するのを新聞などで目にしていたそう。その後Javaで着うたや着メロサイトのバックボーンとなる技術を作るなど躍進したが、技術的には評価されたものの表にでることはなく「ある種“第一次のインターネット革命”には出遅れてしまった形になった」(正田氏)と言う。

それから約20年、昔からよく知った仲間を中心に技術者が集まり、インターネット以来の発明とも言われるブロックチェーンの領域においては「今の所、かなり先頭の方で走れていると思っている」と自信を持っている。

「昔であれば最初にシリコンバレーで新しい技術が生まれて、それが時間をおいて東京、地方へと広がっていたイメージだった。でもブロックチェーンは世界同時。世界中がヨーイドンで課題解決に向けて新しい技術を作っている。おそらく3年後には状況も大きく変わっているはずで、特にこの1年が重要。だからこそ調達した資金も基にコア技術の開発を加速させるとともに、アカデミアや技術者との連携を加速させ、世界的なネットワークを構築しながら次のモデルを作っていきたい」(正田氏)

“起業する”とは何か、俳優・香川照之が語る起業家としての「想いの伝え方」

10月1日、俳優の香川照之氏がアランチヲネという名のスタートアップを創業した。アメリカではもはや珍しいニュースではないのかもしれけれど、有名人による投資や起業がまだまだ少ない日本では話題を呼ぶニュースとなった。

10月4日、5日の2日間で開催中の「B Dash Camp」では、その香川氏が登場。すでに俳優として大成功を収める彼がなぜ新しいチャンレンジをしようと思ったのか。アランチヲネ創業の背景を語った。

子供服を通して、自然の大切さを教える

「功名が辻」、「龍馬伝」などの大河ドラマを始め、数多くのドラマや映画に出演する香川氏。老若男女、彼の顔を1度もテレビで見たことがないという人はそうそういないはずだ。しかし、彼自身も「僕にとって“VR”といえば、ビデオリサーチ(TVの視聴率調査)のことだ」と話すように、スタートアップや起業に関してはまったくの素人だという。その彼がなぜ起業という道を進むことに決めたのか。

「大学生くらいのころから、『時間とは何か』ということをずっと考えていた。そのうちに、時間というものは地球が自転をして太陽を回るという現象の結果生まれたものにすぎず、人間という生き物はそれに乗っているだけでしかないと思うようになった。その大きな運命を人間がどうこうできるようなものではない。そう考えるうちに、地球というものに真摯に向き合うことこそ、正しい時間との付き合い方ではないかと思った」(香川氏)

香川氏なりの「地球に真摯に向かい合うこと」がアランチヲネの創業の理由だ。アランチヲネは、昆虫の柄をモチーフにしたファッションブランド「INSECT COLLECTION」を主な事業とする。9つのオリジナル昆虫キャラクターを作り、それをあしらったシャツ、ニット、帽子などのファッションアイテムを展開していく予定だ。地球に優しい素材、子供の肌にも優しい素材を使い、誰もが地球のことを思い、寄り添いながら身に付けられるアイテム作りを目指すという。収益の一部は自然教育や昆虫生体保護団体などに寄付される。

香川氏は大の昆虫好きとしても有名で、2016年より不定期で放送中のNHK教育テレビ「香川照之の昆虫すごいぜ!」ではカマキリの着ぐるみを被って「カマキリ先生」に扮している。

「昆虫というものは、人間よりずっと前に地球に住んでいたのにもかかわらず、人間が便利な生活を追求した結果、彼らの住む場所を奪ってしまった。昆虫は『小さいから』、『たくさんいて気持ちわるいから』という理由で虐げられるべき存在ではない。地球上の生物の75%が昆虫とも言われている。アランチヲネを通して、彼らに対するリスペクトをもう一度思い出してほしい」と香川氏は語る。

香川氏がINSECT COLLECTIONの事業を通して実現したいのは、子どもに着せる服を通して環境問題などに対する理解を深める「服育」だ。子供たちに可愛らしい昆虫をあしらった服を着せることで、昆虫という生き物の尊さ、ひいては地球という自然の大切さを教えようとしている。

想いの伝承手段としての起業

香川氏が考える昆虫の尊さ、地球という自然の大切さ。彼はそれを「伝えなければならないと思った」と話す。

みずからの考えを伝える方法はたくさんある。僕たち記者のように記事を書いてもいいし、本を書いてもいい。飲み会のたびにガミガミと説教をしてもいいし、講演会に出て自分の考えを伝えてもいい。しかし、香川氏はその数多くある選択肢のなかで、会社を作りビジネスとして伝えるという方法を選んだ。その理由は、自分という存在がなくなっても想いが伝承されるためだという。

想いを伝えるという話のなかで、香川氏は自分が“父親”として慕っていた先輩俳優の松田優作さんとのエピソードを語った。

「1989年の夏に松田優作さんと出会い、彼にとって人生最後の仕事となった2時間ドラマに共演者として出演することができた。実の父(二代目 市川猿翁)と没交渉だった僕は、自分の周りに人生の問いに答えてくれる人がいないと悩んでいたが、優作さんと会い、彼に惚れ、やっと父親を見つけたと思った。優作さんは『お前とは長い付き合いになる』と言ってくれた」(香川氏)

しかし、その松田優作さんは共演から約2ヶ月後に他界。香川氏は遺体の枕元で、「長い付き合いになるなんて嘘じゃないか」と涙を流したという。

「優作さんが亡くなり、“個”というものは、無くなってしまえばもう伝えられなくなるのだと思った。世間一般がもつ優作さんのイメージは、誰にでも殴りかかってしまうという“乱暴者“というイメージ。僕が『そうではない』とどれだけ言ったとしても、優作さんという個がいなくなるだけで、本当の彼の姿は伝えられなくなってしまう」(香川氏)

香川氏が伝えたい昆虫の尊さなどは、俳優・香川照之という個でも伝えられる。しかし、それでは自分の死とともにその想いの伝承手段が失われてしまう。だからこそ、みずからの想いを半永久的に伝えるための手段として、香川氏は会社という器を利用すると決めたのだという。

「せっかく自分の名前を切り売りしてやるのだから、自分にしかできないことをやりたい。“仕事”とは、代わりがないことだと思う。その人のやっていることを代わりにできる人がいるのであれば、それは仕事ではなく、単なる暇つぶしなのかもしれない。それは、大きい小さい、どちらが上でどちらが下、と測るようなものではなく、どんなに小さいことでも自分にしかできないものを見つけることが大切だと思う」(香川氏)

TechCrunch Japanでは、毎日のようにスタートアップとそれを作り上げる起業家のストーリーを伝えている。それぞれが起業する理由はさまざまであり、だからこそ面白い。僕がそのストーリーを伝えようとする原動力もそこにある。でも今日、自分にしかできない事を成し遂げるための手段、そして、自分の想いを伝えるための手段として起業という選択肢があることを、香川氏は僕たちに教えてくれた。起業を目指す未来の起業家も、ぜひ参考にしていただきたい。

DMMが100億規模のファンド設立、若手起業家支援の目的で比率1〜5%のマイノリティ投資へ

DMM VENTURESの運営を担う、DMM COOの村中悠介氏と同CTOの松本勇気氏

DMM.com(以下、DMM)は10月4日、ベンチャーコミュニティ活性化に向けたマイノリティ出資を行う「DMM VENTURES」を設立すると発表した。ファンド規模は100億円。

DMM VENTURESは、ベンチャーコミュニティ活性化への貢献と若手起業家支援などを目的としたファンド。出資比率を1〜5%に抑えた“マイノリティ出資”を基本理念としている。

このマイノリティ出資を基本理念とする理由として、DMM最高経営責任者の片桐孝憲氏は、「DMMはこれまでにも買収などのマジョリティ投資は行ってきた。今後は、できるだけ多くの若手起業家、より幅広いベンチャーコミュニティに対して機会提供を行うために、マイノリティ投資にも取り組みたいと考えた」と話す。

DMM VENTURESの投資対象はビジネス領域にとらわれず、「ジャンル・規模を問わず次世代を担う人材(「ヒト」への投資)」としている。また、投資先のスタートアップにはDMMグループが保有する経営ノウハウやネットワーク等のリソースも必要に応じて提供するとしている。

なお、DMM会長の亀山敬司氏は10月4日、5日の2日間で開催中の「B Dash Camp」に登場。DMM VENTURESについて、亀山氏は壇上で「将来的な買収が前提。失敗してて、売らないといけないというときに『売ってよ』と言いやすいように。1社あたりは数百万とか数千万くらいの規模で、どちらかと言えば早めに人間関係をつくることなどを求めている」とコメントした。

トヨタとソフトバンクが新会社、次世代EV「e-Paletto」で移動サービス展開

eng-logo-2015ソフトバンクとトヨタ自動車は、次世代のモビリティサービス構築に向けた共同出資会社「MONET Technologies」(モネ テクノロジーズ)を設立。年内に共同事業を開始すると発表しました。

この新会社では、トヨタの次世代EV「e-Paletto」によるモビリティサービスの実現を目指すとのこと。

この「e-Paletto」は、移動・物流・物販など多目的に使える自動運転車です。『過疎地においてボタン一つで家の前までやってくる移動コンビニ』『移動中に料理を作って宅配するサービス』『移動型オフィス』などのモビリティサービスを提供可能。自動車メーカーからモビリティ企業への変革を目指すトヨタにとっての象徴とも言えるクルマです。

この実現に向けて「MONET」では、トヨタが構築したコネクテッドカーの情報基盤「モビリティサービスプラットフォーム」と、ソフトバンクのビッグデータ収集・解析サービス「IoTプラットフォーム」を連携。クルマや人の移動に関するさまざまなデータから需要と供給を最適化し、新たな価値創造を可能にする未来のMaaSを目指すとしています。

新会社の出資比率はソフトバンクが50.25%、トヨタ自動車が49.75%。資本金は20億円で、将来的には10億円までの増資を目指すとしています。

(更新中)

Engadget 日本版からの転載。

ディズニー出資の次世代VRエンタメ施設TYFFONが新たに217万ドルを調達、アメリカ出店も見据える

VRエンターテインメント施設「TYFFONIUM(ティフォニウム)」を運営するティフォン。同社は10月4日、100%親会社であるTYFFONが、ザッパラス、セガサミーホールディングス、みずほキャピタル、東急レクリエーション、キャナルベンチャーズから217万ドル(本日のレートで換算すると日本円では約2.4億円になる)の資金調達を実施したことを明らかにした。

ティフォンについては“MRお化け屋敷”を展開するスタートアップとして、TechCrunchでも何度か紹介してきた。現在はお台場に施設を構え、ホラーアトラクションの「Magic-Reality: Corridor(コリドール)」のほか、ファンタジーアトラクションの「Magic-Reality: FLUCTUS(フラクタス)」を提供している。

創業は2011年の11月。2014年にディズニーのアクセラレーターの第1回プログラムに選ばれ、同社から出資を受けているほか、2017年にはインキュベイトファンドとアカツキが運営するファンドからも100万ドルを調達した。今回のラウンドも含めると、調達総額は400万ドルになるという。

今年7月には調達先の1社でもある東急レクリエーションと資本業務提携を締結し、国内での出店を加速させることを発表。現在は2号店となる「TYFFONIUM SHIBUYA」を11月23日にオープンする予定で進めている(東急レクリエーションが運営)。

またティフォンの担当者によると、今回の資金調達はさらにそれ以降の出店を見据えたものとのこと。国内では首都圏、首都圏外でそれぞれ新規出店を計画しているほか、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスでも準備を進めているそう。具体的な場所は現時点で非公開だけれど、2019年夏前のオープンを目指しているという。

AR謎解きゲーム「サラと謎のハッカークラブ」運営のプレティアが資金調達ーー続編提供に向け加速

プレティア代表取締役CEO 牛尾湧氏

渋谷で開催中の新感覚AR謎解きゲーム「サラと謎のハッカークラブ」を提供するARスタートアップのプレティアは10月4日、インキュベイトファンド、Tokyo XR Startups、NHN CAPITALのほか、國光宏尚氏、佐藤裕介氏、塩田元規氏、吉田浩一郎氏ほか複数の個人投資家から資金調達したことを発表した。調達した額は非公開となっているが、資金をもとに同社は更なる高い顧客満足度を達成するため技術開発及びサービス改善に注力するという。

8月4日より開催されているサラと謎のハッカークラブはオリジナルアプリ「HACK PAD」を使って遊ぶAR謎解きゲームだ。プレイヤーたちは渋谷駅前の岡崎ビルに集合し、そこで注意事項などの説明を受けてから街へと繰り出し、90分間の制限時間内に数々の謎解きを攻略しクリアを目指す。

僕も一部体験させてもらったが、街中を歩くのは良い運動にもなるし、ヒントを使うことで初心者を含め誰でも気兼ねなくそのSFテーマの世界観を堪能することができる仕様となっている。1人で参加するも良し、友達や恋人と一緒にコミュニケーションを取りながら遊ぶのもきっと楽しいだろう。

ARゲームの開発に関してプレティア代表取締役CEOの牛尾湧氏は「なぜ僕たちがこの事業をやっているのか。ARの良いところは何もないところでも素敵なコンテンツを提供し人を集め、楽しんでもらうことができるからだ」と話した。「地方にはエンターテインメントが少なく、楽しめることがあまりない」が、ARゲームを使えば「今まで置けなかったところにも面白いコンテンツを置くことができる」(牛尾氏)

また、同氏は「1、2時間くらいの隙間時間で楽しむエンターテインメントとなると、映画、カフェ、飲み、などはあるが、あまりオルタナティブがない」とも説明。隙間時間で楽しむ娯楽は圧倒的に選択肢が少いため、同社のサラと謎のハッカークラブのようなARゲームは良いオルタナティブになり得るだろう。

「こういった隙間時間エンターテインメントを全国または世界中で開催することで、人と人との本質的に幸福なコミュニケーションを世界中に広げたい」(牛尾氏)

プレティアはARゲームと同時に独自のARバックエンド技術を「世界中のAR開発者に向けて開放」するため「ARクラウド」というプロダクトも開発している。これを使うことで「今までよりも更にAR、言い換えると面白い体験へのアクセスを多くの人に広めることができる」という。「コンテンツの民主化がしたいというのが僕たちの想いだ」(牛尾氏)

開催から約2ヵ月が経過したサラと謎のハッカークラブ。これまでにはNON STYLE井上裕介氏ら著名人もプライベートで参加するなど盛り上がりを見せている。開催は11月4日までと残りあと1ヵ月くらい。予約は公式サイトから可能で、料金は平日1290円、土日祝は1990円(それぞれ税込)。

調達した資金をゲーム・ARクラウドの開発とマーケティングチャンネルの開拓に使うという同社だが、「共に達成する喜びを世界中に届ける」というミッションのもと、今後、AR技術を更に進化させた謎解きゲーム第二弾(続編)の制作にも取り組んでいくという。牛尾氏は遠くない未来に海外進出することも既に視野にあると話していた。

「メルカリはアメリカで勝てないと世界では勝てないと言っている。僕も同じ思いだ」(牛尾氏)

LINEがテイクアウトサービスを2019年春に開始、事前注文から決済までLINE上で完結

LINEは10月3日、フードテイクアウトの新サービス「LINEテイクアウト」を2019年春に開始すると発表した。2020年内中に掲載店舗3万店を目指す。

同社は2017年7月に、先行するフードデリバリーサービス「LINEデリマ」をスタートした。現在1万4000店のフードをLINEで検索・注文が可能。2018年6月末には会員数650万人を超え、取扱高も昨年対比344%増に達するサービスに成長している。

同社では、6月にLINEデリマの公式アカウントを利用して、大手ファーストフード店でテイクアウトクーポンの訴求を実施したところ、通常のLINEデリマで使用できるクーポン訴求に比べ、コンバージョン率が上昇したという。このことから、LINEがテイクアウト訴求にも有効であるとして、今回の新サービス展開に至ったようだ。

LINEテイクアウトは、ユーザーの位置情報から、近くのレストランを検索・事前注文ができるほか、同社の決済サービス「LINE Pay」やクレジットカード決済を利用して、LINE上で注文から決済まで完結できる。タイムセールなど割引情報の配信もあり、また注文するたびに「LINEポイント」を受け取ることも可能。ポイントは1ポイント=1円としてLINE Payで利用できる。

レストランや惣菜店などの登録店舗にとっては、急な予約キャンセルなどで余剰商品が発生しても、LINEテイクアウトのタイムラインを利用して、タイムリーにディスカウント情報を告知できるという。

LINEでは、デリバリーやテイクアウトサービスを足がかりに、LINEを通じて、あらゆる飲食店への注文が可能となる世界を目指す「LINEオーダー」構想を展開していく構えだ。

動画で見る「AQUOS zero」シャープ初の有機ELスマホ

eng-logo-2015シャープが今冬に発売する、日本製有機ELディスプレイ搭載スマートフォン「AQUOS zero」。発表会場より実機動画をお届けします。

「AQUOS zero」は、三重県と大阪府で生産した自社製有機ELディスプレイを搭載。画面サイズは6.2インチで、解像度は2992 x 1440。また、画面の中央に向かって緩やかに盛り上がる独自の曲面形状を採用し、タッチ操作時の指の動きにフィットするため、タッチ操作がしやすいとアピールします。

6.2インチの大画面ながら146gという小型スマホ並の重量も売り。この軽量化には、液晶に比べてバックライトが不要な有機ELディスプレイの採用が寄与しているほか、側面フレームにアルミニウムではなくマグネシウム合金を採用、さらに背面に軽量・高強度のアラミド繊維を用いたことで実現しています。

発表会場では、AQUOS zeroの実機を風船で浮かせるパフォーマンスも披露されました。

製品の詳細はこちらの記事をご覧ください

シャープ、国産有機ELスマホ「AQUOS zero」発表

Engadget 日本版からの転載。

会員数1万人強のポイント投資「STOCK POINT」がクレディセゾンから2億円調達

株価連動型ポイントサービス「ストックポイント」を提供するSTOCK POINTは10月1日、クレディセゾンから2億円を調達したと発表した。

ストックポイントは、企業の株価に連動して所持ポイント数が増減するポイントサービス。同社が2017年12月に開始した「ポイント運用プログラム」では、サイバーエージェントの「ドットマネー」が取り扱うポイントを自分の好きな企業のストックポイントに交換することができる。

株価が上がって所持ポイント数が増えれば、そのストックポイントをドットマネーを通してnanacoポイントなどのお買い物ポイントに再度交換することも可能だ。また、ストックポイントを貯めたり運用したりして、所持ポイント数が企業の1株あたりの株価まで達すれば、それを実際の株式に変換することもできる(ただし、提携証券会社で取引口座を保有している必要がある)。

現在、同サービスが取り扱うのは全15銘柄の上場企業の株式、およびETF(上場投資信託)だ。その中には、みずほフィナンシャルグループやソフトバンクグループなど、日頃から良く目にする企業も含まれる。STOCK POINT代表取締役の土屋清美氏は、「ストックポイントを利用するユーザーには、初めて投資にチャレンジするという人たちも多い。そのため、ただ銘柄数を増やすのではなく、日々の生活で触れるような企業を選定して取り扱い銘柄を増やしている」と話す。

同社は2018年3月にクレディセゾンとの提携をすでに発表しており、クレディセゾンが提供する「ポイント運用サービス」において株価に連動してポイントが増減する「株式コース」を提供していた。今回の資金調達の目的はこの連携関係をさらに強化するためだという。

土屋氏よれば、STOCK POINTは個別株価にポイント数が連動するという仕組みに特許をもち、他方のクレディセゾンは投資信託の価格に連動するという仕組みに特許をもつ。そのため、両社が手を組むことで両社の知財をうまく組み合わせた展開が可能になるという。

ストックポイントは2017年12月に正式リリース。現在の会員数は非公開だが、1万人を超える勢いだと土屋氏はいう。同社は今回調達した資金を利用して、普段スマホアプリを利用しない層へのリーチ拡大のため、Webアプリ開発に注力していくという。

子育てをテクノロジーで支援する 「子育Tech」が始動

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カラダノート、ファーストアセント、AsMama、オトバンク、ピクスタの5社は10月2日、ITやテクノロジーを活用して子育て環境の改善を目指すことを目的として「子育Tech」(こそだテック)を提唱・推進。その共同組織として「子育Tech委員会」を発足させた。今後は参画企業を集い、市場調査やイベントなどを開催していくという。

カラダノートは、 妊婦の情報の記録や共有、収集を助ける「ママびより」や陣痛間隔を測定する「陣痛きたかも」、授乳やうんち、おしっこなどの間隔や回数を記録する「授乳ノート」などのアプリを提供している。

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妊婦の情報の記録や共有、収集を助ける「ママびより」

AsMamaは、送迎や子育てなどのニーズを共助する「子育てシェア」をいうサービスを提供している。顔見知り同士のコミュニティー形成を支援するサービスで、万が一にも安心の損害賠償保険(最大5000万円)も利用者負担0円で適用される。

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送迎や子育てなどのニーズを共助する「子育てシェア」

ファーストアセンドは、赤ちゃんの泣き声をAIで分析する「CryAnalyzer」などのアプリをリリースしている。同アプリは、2万人のモニターユーザから集めた赤ちゃんの泣き声データを基に、泣き声診断アルゴリズムを開発。正答率80%以上を記録しているという。なお、CryAnalyzerは海外向けで、国内で使えるアプリとしては「パパっと育児@赤ちゃん手帳」があり、こちらも赤ちゃんの泣き声から感情を分析できる機能が備わっている。

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赤ちゃんの泣き声から感情を分析できる「パパっと育児@赤ちゃん手帳」

オトバンクは、子供を抱っこしながらや寝かしつけながら、家事をしながらなど、さまざまなシーンで読書できるオーディオブック「audiobook.jp」アプリを提供。月額750円の聴き放題サービスを用意しており、会員数は50万人とのこと。

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オーディオブック「audiobook.jp」

ピクスタは、カメラマンとユーザーをマッチングさせる家族向け出張サービス「fotowa」を提供する。

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カメラマンとユーザーをマッチングさせる家族向け出張サービス「fotowa」

同委員会によると、米国では妊娠から乳幼児の育児に関する技術分野が「BabyTech」として発展しているが、日本国内ではスマホなどを利用した子育て支援の環境が整っておらず周囲への認知や理解も進んでいないことが調査によって判明したとのこと。それを踏まえて子育Techとして、1.育児の記録や共有を効率化するもの、2.育児の情報収集を効率化するもの、3.育児にまつわる夫婦間コミュニケーションの糸口になるもの——を共同で開発していくという。

今回は子育Tech委員会の発足と協力体制の発表に留まったが、将来的にアプリで利用するIDの共通化、API連携によるデータの取り込みなどが可能になれば、スマホなどを利用した子育てがより身近になるはずだ。