B Dash Camp 2019 SpringのPitch Arena優勝はAI搭載型クラウドIP電話サービスのRevcomm

独立系ベンチャーキャピタルのB Dash Venturesが主催するスタートアップの祭典「B Dash Camp」が5月23日、24日に北海道・札幌で開催された。その目玉企画の1つであるピッチイベント「Pitch Arena」(ピッチアリーナ)は2日間に渡って熱戦が繰り広げられた。

今回は12社が初日のファーストラウンドに参戦。通常は6社が2日目のファイナルラウンドに進むのだが、今回はファーストラウンドで同点となった企業が出たため、異例の7社選出となった。

ファイナルラウンドで審査員を務めたのは以下の5名で、激戦を勝ち抜いて見事優勝を飾ったのはAI搭載型クラウドIP電話サービス「MiiTel」(ミーテル)を開発・提供するRevcomm(レブコム)。準優勝にあたるスペシャルアワードは、農作物の自動収穫ロボットを開発し、RaaS(Robot as a Service)モデルで提供するinahoだった。

  • 江幡智広氏(mediba社長)
  • 木村新司氏(DasCapital代表)
  • 國光宏尚氏(gumi創業者/CEO)
  • 佐藤裕介氏(ヘイ代表取締役社長)
  • 玉川 憲氏(ソラコム代表取締役社長)

以下、優勝のRevcomm、準優勝のinahoを含めファイナルラウンドに登壇した各企業をピッチ順に紹介していこう。

モノグサ

2016年8月設立。知識習得のための問題作成から習得判定までを自動で行うサービスを開発・提供する。具体的には、解いて覚える記憶記憶アプリ「Monoxer」を提供している。このアプリは、解答を入力するだけでAIが誤答の選定も含めて作成してくれるのが特徴だ。

利用者の学習状況から知識の定着度を計測し、問題の出題頻度や難易度を自動で調整する機能も備える。現在は学習塾を中心に10社40万人ほどが利用しており、月間アクティブユーザーは3000人程度とのこと。個人には無料で提供、法人向けの利用料金は、スタンダードプランは無料、プレミアムプランは1ユーザーあたり年額3000円。プレミアムプランでは、進捗の確認や非公開スクールの作成が可能だ。

今後は、会計や法律、トークスクリプトなど学習塾以外の企業への導入も計画している。

Nature Innovation Group

2018年1月設立。傘のシェアリングサービス「アイカサ」を昨年12月に東京・渋谷エリアでスタート。1日70円で傘を借りられるサービスで、専用アプリを必要とせず、LINEでアイカサと友だちになることですぐに使えるのが特徴だ。アイカサスポットに設置されている施錠状態の傘に張られているQRコードをスマホで読み取ることで解錠・決済が可能。

LINE Payとも連携しており、クレジットカードとともに決済方法として選べる。直近では福岡市やLINE Fukuokaとの連携を発表。すでに福岡市内で1000本の傘のシェアリングを開始している。

inaho

2017年1月設立。画像処理とロボットアームの技術をベースに、アスパラやきゅうりといった農作物の自動収穫ロボットを開発。

従来は、農家が目視で収穫可能かどうかを判断する必要があった農作物を、機械学習によってAIが自動判断してロボットアームが収穫する。赤外線センサーを内蔵しているので、夜間作業も可能とのこと。

ロボットは売り切りではなく、RaaS(Robot as a Service)として提供。ロボットには重量を量るセンサーも備わっており、農家が収穫量した野菜の市場取引価格の15%を同社が手数料として徴収するというマネタイズモデルだ。15%という手数料は人件費に比べると安価とのこと。しかもinahoのロボットはRaaSモデルのため、稼働していない時期は手数料が発生しないのもポイント。センサーやカメラなどの性能が向上した場合はロボットのアップグレードなども追加費用なしで受けられる。農業従事者は季節雇用のケースも多く、不安定な労働条件を強いられる。そのためなかなか人が集まらず、収穫量はもちろん農家の収入も落ち込む。inahoは、そういった課題をロボットで打破する。

A1A

2018年6月設立。見積査定に必要なデータを一元管理することで、企業の購買担当者が最適な価格で購買できるようにする「RFQクラウド」と呼ばれるサービスを提供。

100人を超える現役購買担当者へのインタビューを通して抽出した「見積査定に必要な明細項目がそろっていない」「過去の類似品目の見積が残っていない」「データの保管場所が散在している」といった課題を解決する。購買担当者の業務負荷を軽減しつつ、将来のAI活用経営に向けた下地作りをサポートするとのこと。

実際の現場では、仕入れ先では部品点数が多く見積もりフォーマットも統一されていないため、同じ材料を使った同じ製品でも価格が異なるという問題が発生していた。購買側が統一フォーマットを用意して発注することで、原価低減やコストの最適化を進めていけるとしている。相見積もりや過去の見積もりとの参照も簡単になる。

ネクストイノベーション

2016年6月設立。女性向けの遠隔診療サービスを提供。生理などの悩み相談を受け付けるサービス「アレのスマルナ」では、診断後にピルの処方・発送までを実現。婦人科での診察に抵抗がある若年層を中心に、重い生理痛で学業や仕事に支障をきたすといった問題を解決する。

もちろん、避妊などの相談も可能だ。意図しない妊娠を避けるためのアフターピルを処方してもらうこともできる。同社によると、最近は副作用が少なく女性の身体に負担がかからないピルが主流だが、ピルにはいまだ昔の悪いイメージがあり日本ではなかなか普及しない。オンラインで気兼ねなく受診してピルを入手できるルートを確保することで、女性がより活躍できる社会を目指す。

RevComm(レブコム)

2017年7月設立。電話営業や顧客対応を可視化する音声解析AI搭載型クラウドIP電話サービス「MiiTel」(ミーテル)を提供。電話営業や電話での顧客対応の内容をAIがリアルタイムで解析することで、成約率を上げつつ、解約率と教育コストの低下を目指す。

顧客管理システムとの連携も可能で、顧客名をクリックするだけで簡単に発信できるほか、着信時に顧客情報を自動表示するいった機能もある。電話での会話内容は顧客情報に紐付けてクラウド上に自動録音されるため、すぐにアクセスできる。一部を抜粋して共有することも可能だ。

現在のコアターゲットは人材会社だが、今後は教育目的やコンプライアンス目的など多く業界で幅広く活用できるとしている。さらに世界進出時にまず狙う国はインドネシアとのこと。

AiLL

2016年10月設立。人とのコミュニケーションをAIがナビゲートとするマッチングサービスを提供。出会いから相手の気持ちの変化、自分の行動による結果などをAIがリアルタイムで分析できるのが特徴だ。

相手への好感度をAIが分析し、上がったのか下がったのかがすぐにわかるほか、相手をデートを誘うまでの会話をAIがアシストすることで効率よくコミュニケーションが取れる。「フラれて傷つくのが怖いので人に声をかけにくい」という不安をAIが払拭する。

現在は、大企業の20~30代の共働き志望の正社員独身者を対象に、企業の福利厚生サービスとして試験導入されている。

“起業する”とは何か、俳優・香川照之が語る起業家としての「想いの伝え方」

10月1日、俳優の香川照之氏がアランチヲネという名のスタートアップを創業した。アメリカではもはや珍しいニュースではないのかもしれけれど、有名人による投資や起業がまだまだ少ない日本では話題を呼ぶニュースとなった。

10月4日、5日の2日間で開催中の「B Dash Camp」では、その香川氏が登場。すでに俳優として大成功を収める彼がなぜ新しいチャンレンジをしようと思ったのか。アランチヲネ創業の背景を語った。

子供服を通して、自然の大切さを教える

「功名が辻」、「龍馬伝」などの大河ドラマを始め、数多くのドラマや映画に出演する香川氏。老若男女、彼の顔を1度もテレビで見たことがないという人はそうそういないはずだ。しかし、彼自身も「僕にとって“VR”といえば、ビデオリサーチ(TVの視聴率調査)のことだ」と話すように、スタートアップや起業に関してはまったくの素人だという。その彼がなぜ起業という道を進むことに決めたのか。

「大学生くらいのころから、『時間とは何か』ということをずっと考えていた。そのうちに、時間というものは地球が自転をして太陽を回るという現象の結果生まれたものにすぎず、人間という生き物はそれに乗っているだけでしかないと思うようになった。その大きな運命を人間がどうこうできるようなものではない。そう考えるうちに、地球というものに真摯に向き合うことこそ、正しい時間との付き合い方ではないかと思った」(香川氏)

香川氏なりの「地球に真摯に向かい合うこと」がアランチヲネの創業の理由だ。アランチヲネは、昆虫の柄をモチーフにしたファッションブランド「INSECT COLLECTION」を主な事業とする。9つのオリジナル昆虫キャラクターを作り、それをあしらったシャツ、ニット、帽子などのファッションアイテムを展開していく予定だ。地球に優しい素材、子供の肌にも優しい素材を使い、誰もが地球のことを思い、寄り添いながら身に付けられるアイテム作りを目指すという。収益の一部は自然教育や昆虫生体保護団体などに寄付される。

香川氏は大の昆虫好きとしても有名で、2016年より不定期で放送中のNHK教育テレビ「香川照之の昆虫すごいぜ!」ではカマキリの着ぐるみを被って「カマキリ先生」に扮している。

「昆虫というものは、人間よりずっと前に地球に住んでいたのにもかかわらず、人間が便利な生活を追求した結果、彼らの住む場所を奪ってしまった。昆虫は『小さいから』、『たくさんいて気持ちわるいから』という理由で虐げられるべき存在ではない。地球上の生物の75%が昆虫とも言われている。アランチヲネを通して、彼らに対するリスペクトをもう一度思い出してほしい」と香川氏は語る。

香川氏がINSECT COLLECTIONの事業を通して実現したいのは、子どもに着せる服を通して環境問題などに対する理解を深める「服育」だ。子供たちに可愛らしい昆虫をあしらった服を着せることで、昆虫という生き物の尊さ、ひいては地球という自然の大切さを教えようとしている。

想いの伝承手段としての起業

香川氏が考える昆虫の尊さ、地球という自然の大切さ。彼はそれを「伝えなければならないと思った」と話す。

みずからの考えを伝える方法はたくさんある。僕たち記者のように記事を書いてもいいし、本を書いてもいい。飲み会のたびにガミガミと説教をしてもいいし、講演会に出て自分の考えを伝えてもいい。しかし、香川氏はその数多くある選択肢のなかで、会社を作りビジネスとして伝えるという方法を選んだ。その理由は、自分という存在がなくなっても想いが伝承されるためだという。

想いを伝えるという話のなかで、香川氏は自分が“父親”として慕っていた先輩俳優の松田優作さんとのエピソードを語った。

「1989年の夏に松田優作さんと出会い、彼にとって人生最後の仕事となった2時間ドラマに共演者として出演することができた。実の父(二代目 市川猿翁)と没交渉だった僕は、自分の周りに人生の問いに答えてくれる人がいないと悩んでいたが、優作さんと会い、彼に惚れ、やっと父親を見つけたと思った。優作さんは『お前とは長い付き合いになる』と言ってくれた」(香川氏)

しかし、その松田優作さんは共演から約2ヶ月後に他界。香川氏は遺体の枕元で、「長い付き合いになるなんて嘘じゃないか」と涙を流したという。

「優作さんが亡くなり、“個”というものは、無くなってしまえばもう伝えられなくなるのだと思った。世間一般がもつ優作さんのイメージは、誰にでも殴りかかってしまうという“乱暴者“というイメージ。僕が『そうではない』とどれだけ言ったとしても、優作さんという個がいなくなるだけで、本当の彼の姿は伝えられなくなってしまう」(香川氏)

香川氏が伝えたい昆虫の尊さなどは、俳優・香川照之という個でも伝えられる。しかし、それでは自分の死とともにその想いの伝承手段が失われてしまう。だからこそ、みずからの想いを半永久的に伝えるための手段として、香川氏は会社という器を利用すると決めたのだという。

「せっかく自分の名前を切り売りしてやるのだから、自分にしかできないことをやりたい。“仕事”とは、代わりがないことだと思う。その人のやっていることを代わりにできる人がいるのであれば、それは仕事ではなく、単なる暇つぶしなのかもしれない。それは、大きい小さい、どちらが上でどちらが下、と測るようなものではなく、どんなに小さいことでも自分にしかできないものを見つけることが大切だと思う」(香川氏)

TechCrunch Japanでは、毎日のようにスタートアップとそれを作り上げる起業家のストーリーを伝えている。それぞれが起業する理由はさまざまであり、だからこそ面白い。僕がそのストーリーを伝えようとする原動力もそこにある。でも今日、自分にしかできない事を成し遂げるための手段、そして、自分の想いを伝えるための手段として起業という選択肢があることを、香川氏は僕たちに教えてくれた。起業を目指す未来の起業家も、ぜひ参考にしていただきたい。

業界の異端児がイノベーションを生む――FinTechスタートアップたちの勝機とは

3月15日、16日で開催された「B Dash Camp 2018 Spring in Fukuoka」。2日目には、「フィンテックにいま参入その理由と勝機の可能性」と題して、フィンテックの第一線で活躍するプレイヤーたちが業界のいまを語った。登壇者は以下の通りだ。

モデレーターを務めたのは日経FinTech編集長の原隆氏だ。

幅広いフィンテック、どこに注目するか

Finance × Technologyだから「フィンテック」とひとくちに言っても、その領域はとても幅広い。本セッションではまず、各登壇者がフィンテック業界の中でもどの領域に注目しているのかという質問が飛んだ。

ソーシャルレンディング事業者の比較サイトを運営するクラウドポート代表取締役の藤田氏は、「注目しているのは中小企業のデットファイナンスと債権の流動化。中小企業の資金調達の選択肢が少ない。VCから出資を受けるのはひと握りだ。残りの大半は銀行融資を受けるが、審査が厳しい。それらの事業者から融資を受けられなかった企業に対してこれまで資金を供給していたのがノンバンクだ。しかし、1999年に3万社以上あったノンバンクは、2016年には2000社以下になっている。ここにビジネスチャンスがある」と語る。

メルペイ代表取締役の青柳氏は、「フィンテックのプレイヤーがひと通り揃ってきた。金融以外で活躍していた人たちが業界に参入するというのがグローバルなトレンドだと思う。そういうプレイヤーが入ったことで今後盛り上がると思うのが、まずは入口としての決済の部分。また、スコアリングやレンディングといった“信用を創造する”という分野が勃興すると思う」と話した。

青柳氏と同じく、スコアリングや与信の部分に注目するのがバンク代表取締役の光本氏だ。「企業でも個人でも、何かしらの取引をするときは必ず与信をとる。ただ、この与信はコストでしかない。そうであれば、それをとらずに成り立つビジネスができないかと僕たちは考えている。新しい与信のとり方、そして与信を使った新しいビジネスが今年はどんどん出てくると思う」(光本氏)

ところで、フィンテックという文脈でいつも話題にあがるのが、現金を使わないで買い物などを済ますキャッシュレス化の推進だ。日本は諸外国に比べてそのキャッシュレス化が遅れていると言われている。経済産業省が2017年に発表した資料によれば、米国、韓国、中国のキャッシュレス決済比率はそれぞれ40〜50%程度であるのに対し、日本は約18%と低い。なぜだろうか。

「日本の店員さんはまじめで、レジをちゃんと閉めるなど現金を扱うだけのモラルがある。他の国では現金を扱うとトラブルが起こるので、費用を払ってでもキャッシュレス化を進める動機がある」とヘイ代表取締役の佐藤氏は言う。

優秀な日本の金融インフラ、そこにイノベーションをどう生むか

日本が他国に比べてキャッシュレス化が遅れているのは、金融インフラが非常に整っているからだ、という意見もある。ただ、それは金融業界の既存プレイヤーにとってイノベーションの足かせになっているのかもしれない。

証券会社出身であるFOLIO代表取締役の甲斐氏は、「証券会社の反社チェックのシステムは、銀行に比べても厳しい。警察庁のデータを照合しなければならないが、リアルタイムでそれをしようとすると1回あたり数十件程度しか処理できない。もう少しそこを効率化するということは考えられる」と、現在の金融インフラの非効率性について述べた。

青柳氏は、「(イノベーションには)大きな社会インフラの組み換えが必要。既存プレイヤーはそこに大きな金額を投資してきて、それに合わせてオペレーションを最適化してきた。中国では色々なプレイヤーがインフラに大きな金額を投資をして、それを作り直した。そこから学べるのは、(金融インフラに対する)マッシブな投資はいずれにしろ必要で、それができたら色々なプレイヤーがどんどん出てくるということだ」と語る。

スーツ組と私服組が手を組むとき

金融インフラへの投資とともに、青柳氏が“必要なもの”として挙げたのが人材だ。「非金融業界の人が金融業界の人を引き込む採用力」が必要だと彼は話す。これまでスーツを着て毎日出社をしていた金融人からすると、スタートアップ業界というのは特異なものとして映るのかもしれない。でも、異業種の人間が交わることで生まれるイノベーションもある。

甲斐氏は、「FOLIOの場合、4割の社員が金融社員出身。基本的には、FOLIOでは金融用語は使わないということに非常にこだわっている。プロダクトの開発現場では、コンプラ担当と5人のデザイナーが毎日バチバチにやり合っています」と語った。些細なことかもしれないけれど、金融業界以外の人の視点で使いやすいUI/UXを金融商品に取り入れ、「冷たい」と言われがちなものに温かみをもたらす工夫だ。

一方、光本氏が率いるバンクには金融出身者が1人もいないという。「保守的な意見をすべてプロダクトに取り入れてしまうと、既存の金融機関のものと変わらないプロダクトが生まれてしまう。新しいサービスを作る場合、空気を読まずにやるのがちょうどいいのかもしれない」と光本氏は笑顔で話した。

どの業界もそうだけれど、お金を扱う金融業界は法令の順守が特に求められる領域だ。光本氏が言うように、まずは空気を読まずにプロダクトを作ってみるというイノベーションの方法論もあるが、法的なリスクに対しては気を配らざるを得ないのが現実だ。

それについて佐藤氏は、「ルール的にグレーな部分というのはトレードオフだと思っている。(多少プロダクトが不便になったとしても)それをやらなければ長期でみてユーザーの体験を毀損してしまうならやるべきだし、そうではないならユーザーのために取るべきリスクだと考える」と話す。

一方で、業界を取り巻く環境もここ数年で大きく変わったと青柳氏は話す。「フィンテックには追い風が吹いていると感じるようになった。ルールを作る金融庁などと話していても、20分間いろいろと話したあとに、『やりたいことっていうのは、例えばこういうものです』と直接UIを見せたりすると理解を得られることが多い」(青柳氏)。

世界中の金融業界にイノベーションが起こりつつある今、法的に可能な範囲で本当に便利なものは受け入れようという流れがあるのかもしれない。非金融と金融の視点を融合し、既存インフラの改善、または創造的破壊を起こすべきだと思っているのはスタートアップだけではないようだ。そのような流れのなかで、どのような新しいサービスが生まれるのか、注目したい。

B Dash Campピッチアリーナ、優勝は薬局薬剤師向けSaaSのカケハシ

3月15日から16日にかけて開催中の「B Dash Camp 2018 Spring in Fukuoka」。2日目となる本日、最後のセッションとなったのは、スタートアップのプレゼンバトル「ピッチアリーナ」だ。バトルには合計で18社のスタートアップが参加し、初日に行なわれたファーストラウンドを勝ち抜いた6社が本戦へと進んだ。

その本戦で優勝を飾ったのは、薬局薬剤師向けSaaSサービスのカケハシだった。同社が提供する「Musubi」では、患者の疾患や年齢、アレルギーの有無などの情報をもとに、それぞれの患者に最適な指導内容を提案する。薬の処方だけでなく、生活習慣のアドバイスなども行う。

通常は2時間ほどかかる薬歴(調剤や服薬指導の内容を記録したもの)の記入時間を、15分に短縮できるという。初期費用は100万円で、現在のユーザー数は40店舗。現在の月次売上高は4000万円ほどに達しているという。代表取締役の中尾豊氏は武田薬品出身だ。

優勝したカケハシのほか、ピッチアリーナ本戦に出場したスタートアップを以下に紹介しよう。

HERP

複数の求人媒体に送られた応募を一元管理できる採用プラットフォーム。メッセージ交換や日程調整、求人票の作成などの業務を1つのアプリケーションで完結できる。ベータ版における現在のユーザー企業数は20社。代表取締役の庄田一郎氏はエウレカの出身者だ。2017年12月には数千万円規模の資金調達を実施している

Inner Resource

Inner Resourceが提供する「ラボナビ」は研究機関向けの購買システム。研究機関では、研究費の不正利用を防ぐために購買に関するルールが数多く存在するという。そのため、実際の購買管理にかかる手間は非常に煩雑になってしまう。ラボナビを利用することで、複数の業者へ一括で見積もりや問い合わせを行うことができる。従来ならエクセルで行なわれていた予算管理もクラウド上で完結する。月額9800円。

ニューレボ

ニューレボが提供する「ロジクラ」は、商品の入荷から在庫管理、出荷までを一気通貫で管理できるシステム。バーコードやラベルの発行、在庫管理、通販サイトの受注取り込み、納品書の作成といった一連の物流業務をクラウド上で完結する。30万円ほどで販売されている従来の専用デバイスを、スマホに置き換える。将来的には取得した在庫データ、販売データをもとに需要予測ができるところまでを目指している。STORES.JPやShopifyなどと提携済みだという。ロジクラは、月額の基本料金と従量課金でマネタイズする。現在の有料課金ユーザーは4社。2017年12月には5000万円の資金調達も実施している

Subdream Studios

Subdream Studiosはカルフォルニアに本社を置くスタートアップで、ソーシャルVRゲームなどの開発を行う。「Yumerium」はブロックチェーンベースのゲームプラットフォームだ。同社はプラットフォーム上で使える仮想通貨「YUM」を発行。ゲームを長くプレイしたり、レビューやシェアするインフルエンサーがトークンが受け取れる仕組みを作る。また、開発者がマーケティング費用としてYUMをパブリッシャーに支払ったり、プレイヤーがゲーム内マネーとYUMと交換したりといった、YUMを中心とした経済圏を構築する。2018年2Qをめどにテスト運営を開始する予定。

justInCase

justInCaseは、スマホの故障に備える「スマホ保険」を提供する少額保険スタートアップ。ユーザーの活動量を機械学習によってスコアリングし、ユーザーごとに最適化した保険料を提案する。知り合いや友人同士でグループを作り、そのメンバーが保険金を拠出し合うP2P型保険の提供を目指す。2018年2月には3000万円の資金調達を実施した。TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルにも登場した。ピッチアリーナ本戦では、SPECIAL AWARDを受賞している。

「今回のディスラプトはデカい」――仮想通貨とブロックチェーンでビジネスが変わる

3月15日から16日にかけて開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2018 Spring in Fukuoka」。開幕セッションでは、仮想通貨業界の最前線で活躍する経営者が仮想通貨やブロックチェーンの未来を語った。セッションの登壇者は以下の通りだ。

モデレーターはB Dash Ventures代表取締役の渡辺洋行氏が務めた。

過渡期を迎えた取引所ビジネス

この数年間、仮想通貨ビジネスの中心にいたのは取引所だった。コインチェックから580億円相当のNEMが流出した事件をきっかけに、世間から大きな注目も集めている。

メタップスは2017年11月、韓国の現地子会社を通して仮想通貨取引所の「CoinRoom(コインルーム)」を開設した。ICOを実施し、約11億円の資金も調達している。そのメタップスを率いる佐藤氏は、現在の日本の取引所ビジネスについて、FX業界の強いプレイヤーが参入してきており、手数料やレバレッジ倍率などもFX業界の慣習に近くなってきていると評した。FX業界の枠組みに、仮想通貨取引所を運営する新しいプレイヤーが飲み込まれてしまうといった危惧もあるという。

ステージ上にはGMOクリック証券を設立した高島氏もいる。同社はFX取引高が1兆円に達する、佐藤氏が言うところの“FX業界の強いプレイヤー”の1つだ。2006年に創業したGMOコインを通してFX業界から仮想通貨ビジネスに参入した高島氏は、現在の取引所ビジネスをどのように見ているのだろうか。

仮想通貨の取引所では、取り扱い通貨を増やすごとに別の管理システムを作らなければいけない点がFX業界との大きな違いだ、と高島氏は話す。異なるプログラムによって作られたビットコイン、イーサリアム、リップルなどの各通貨は、必要になる管理システムもまったく異なる。取り扱い通貨数の分だけ監理システムが必要だ。その取り扱いが雑になってしまうと、今回のコインチェックの流出事件のような問題につながりかねない。

こうした事件を受け、金融庁は仮想通貨交換業者に対する規制を強化するという姿勢を強めている。佐藤氏は、取引所ビジネスにはまだ伸びしろがあるが、通常のスタートアップが規制に対応できるだけの体力を備えられるかは疑問だと話す。「ファイナンス、人材など上場企業なみのものが求められている。それができるスタートアップは少ないだろう。(取引所ビジネスは)大人の戦いになってきたと感じる」(佐藤氏)。

規制強化を受け、取引所を運営するスタートアップは新しい生き残りの道を模索する必要があるのかもしれない。

ブロックチェーンは何を変えるか

急速な盛り上がりを見せた取引所ビジネスが変革を迎える一方、仮想通貨を支えるブロックチェーン技術があらゆるビジネスに影響をもたらそうとしている。セッションでは、今後2〜3年における有望な仮想通貨ビジネスの領域はなにかという質問が渡辺氏から飛んだ。

gumiの国光氏とメタップスの佐藤氏は、エンターテイメントが最も有望だろうと答えた。スマホ向けゲーム開発のgumiを率いる国光氏は、「インターネットの時代では、データというものはコピー自由なものだった。データそのものには価値がなかった。なので、SpotifyやNetflixなどもコンテンツではなくサービスを売っていた。対して、ビットコインはただのデータなのにそれが価値をもっている。それは、ビットコインはブロックチェーン上にあってコピーができないのでユニーク性が担保されており、かつトレーダブルだからだ。ゲームのアイテムなどがそれと同じような特徴を帯びるようになれば非常に面白いと思う」と話す。

それに関連して、佐藤氏は「これまでネイティブアプリをAppleやGoogleなどのプラットフォームで公開していた人たちが、ブロックチェーンのプラットフォームに流れてくる。そうなったときに、既存のプラットフォーマーがどのような対策を打つのかに興味がある」と語った。

DAS Capitalを通して仮想通貨領域への投資を行う木村氏は、「注力分野として考えているのは、仮想通貨、シェアリングエコノミー、人工知能。ユーザーを集める、というところ以外は、基本的にはすべてブロックチェーンでやれる。現在は20%や30%というプラットフォーム手数料はザラだけれど、そういう手数料は減っていくだろう」と話す。佐藤氏も、「これまでのモデルは場をつくって手数料を徴収するというモデルだったが、これからは通貨発行益を軸にしたモデルがどんどん生まれる」とコメントした。

GMOコインの高島氏は、「取引所が盛り上がる前、仮想通貨ビジネスは国際送金が一番伸びると言われていた」として国際送金ビジネスへの参入を示唆した。「外国に資金を送金するには、送金元と送金先の両国で銀行口座を持っている必要がある。為替手数料、取引手数料も高い。少額でも送りやすいビジネスをつくりたいと思っている」と自社の展望も交えながら注目分野について語った。

モデレーターを務めたB Dash Ventures代表取締役の渡辺洋行氏は、ブロックチェーンの破壊力を「今回のディスラプトはデカい」と表現した。ブロックチェーン技術の台頭は、現在ではすっかりインフラとなったインターネット黎明期以来のパラダイムシフトだと言う人もいる。もしかすると、今を生きる僕たちはそんな時代の移り変わりを見ているのかもしれない。

国際物流向けクラウドサービス提供のサークルインが優勝——B Dash Campピッチアリーナ

サークルイン代表取締役社長の佐藤孝徳氏

北海道・札幌市で8月3〜4日にかけて開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2017 Summer in Sapporo」。2日目最後のセッションとなったのは、スタートアップのプレゼンバトルである「ピッチアリーナ」のファイナルラウンド。約60社が集まった書類審査を勝ち抜いた14社が1日目のファーストラウンドに登壇。その中から選ばれた6社がプレゼンテーションを繰り広げた。

2日間のバトルを勝ち抜き、見事優勝を果たしたのは国際物流向けにクラウドサービスを提供するサークルインだった。SPECIAL AWARD(準優勝)はシングラー、PERSOL SPECIAL AWARDはサークルイン。登壇各社の概要は以下のとおり。

OTON GLASS

文字を認識し、自動で読み上げてくれるスマートグラス「OTON GLASS(オトングラス)」を開発。代表である島影圭佑氏の父親が脳梗塞となり、その後遺症での失読症になったことが開発の動機だという。島影氏の父親はリハビリにより回復したそうだが、現在は読字障がい者や視覚障がい者、海外渡航者など、文字を読むことが困難な人たちに向けて受注生産方式でプロダクトを提供している。

文字の認識や読み上げの処理はクラウド上で実行。20カ国語に対応しており、翻訳した内容を読み上げることも可能。2018年にはスマートフォンと連携する小型の最新版を提供予定。また、文字のログデータを利用したサービスなども提供予定。2019年には海外展開も視野に入れている。

スマートフォンでアプリを立ち上げ、カメラでかざすよりも、メガネをかけてボタンを1つ押すだけで動作するプロダクトということで、ユーザーの反応も上々だという。

ウィファブリック

BtoB向けのフリマサービス「SMASELL(スマセル)」を提供する。アパレルの不動在庫は、廃棄処分するか買取処分の業者に安価に下取りしてもらうしかなかった。メーカーはそこに時間も取られ、償却すれば環境負担も少なくない。そんな課題の解決を目指すのがSMASELLだ。在庫売買の既存市場は世界で推定10兆円規模なのだという。

このサービスでは在庫を処分したい人と買取したい人をマッチングしてくれる。価格は通常の30〜99%。価格交渉やサンプルの取り寄せといった機能も提供する。サービス開始前の事前登録者数は約50社。オープン2週間で100s社まで拡大した。また、佐川、西濃、松菱といった大手ロジスティクス事業者との連携スキームも構築。現在の出品依頼総額は20億円になっているという。

シングラー

人材分析サービス「HR Analyst」を提供する。代表の熊谷氏は10年間人材業界でコンサルティングなどに従事しているが、その中で採用の強い会社には2つの強みがあることに気付いたという。それは「採用の勘所が分かっている」ということと、「インファイトが得意(目の前の人を採用できること)」ということだという。

そんな採用戦略を実現するためには、これまで採用に強い人材(コンサルタントなど)が必要になるが、フィーも高く、その人間がいなくなると資産としてノウハウが残らないなどの課題がある。HR Analystはそんな課題を解決する。利用にはまず採用予定の人材に対してアンケートをしてもらう。するとサービス上でその人物の特徴や意思決定プロセスを分析。人材ごとに採用手法を提案してくれる。採用予定人材と社内の類似社員も表示する。

価格は月額2万9800円程度で、コンサルタントなどを雇うのに比較して訳10分の1になる。
現在はベータ版として5社に導入。今後はエンジニア特化サービスも提供していく。

Laboratik

チームのエンゲージメントを可視化するスマートボット「A;(エー)」を開発・提供。
ビジネスチャット(Slack)のボットとして動作。チャット内容を解析することで、コミュニケーションの質を判断。レポートを作成する。

コミュニケーションのレポートでは、チームの変遷や、ネガティブな感情をデータを元に分析、コミュニケーションのリーダーを調べるといった機能を提供。サービス開始から5カ月で、日米550社だ利用。8月から派産学連携でリコー、早稲田大学と共同研究を行う予定だ。価格はサブスクリプションモデルで1ユーザー1000円以下のパッケージと、大企業向けのパッケージの2種類を用意する。

キネカ

エンタメCtoCサービス「Pato」。タレント、芸能人、キャストなど登録する500人のキャスト(面接合格者のみに限定)とのマッチングを行う。条件を設定すれば、30分程度でマッチング。事前登録したクレジットカードでの決済を行う。

今後はライブ配信機能を提供。投げ銭モデルのビジネスも展開する予定だという。また今後はスマホライブに特化したタレント事務所の設立も予定する。なお風営法上の接客業務受託営業の許可が必要ではないかという質問に対しては、「合法だという判断をもらっている」としている。代表の藪本崇氏はミクシィが買収したコンフィアンザの代表。コンフィアンザは街コン事業などを展開していた。

サークルイン

コンテナ船や航空貨物便などを使った国際物流のフォワーダー(ブッキング担当者)向けの支援サービス「sippio(シッピオ)」を提供。フォワーダー向けに、見積もりやブッキング、輸送状況の管理や貿易関連の書類の作成・管理といった機能を提供する。

これまでクローズドベータ版としてサービスを1社に限定して提供してきたが、8月1日よりオープンベータ版を公開。すでに59社の利用が予定されているという。今後は10月1日に正式版の提供を予定する。

B Dash Campのプレゼンコンテスト、優勝は訪日観光客向けプラットフォームの「WAmazing」

WAmazing代表取締役の加藤史子氏

福岡県・博多で3月16〜17日にかけて開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2017 Spring in Fukuoka」。その中で行われるスタートアップのプレゼンバトル「ピッチアリーナ」。17日に行われたファイナルラウンドには、16日のファーストラウンドに登壇した全20社から選ばれた5社がプレゼンテーションを繰り広げた。スペシャルアワードには外貨交換サービスを手がけるポケットチェンジが、優勝には訪日観光客向けプラットフォームを提供するWAmazingがそれぞれ選ばれた。5社の概要は以下のとおり。
衛星通信用アンテナのシェアリングサービス。人工衛星のための通信リソースをシェアすることでコストを下げ、使い勝手を高めることを目指す(紹介記事はこちら)。
許諾を受けたマンガのコマをSNSなどにエンベッドして利用できるサービス「マンガルー」を提供。
リリースから1週間で100万コマPVを達成。今後はアプリやメディアを提供するほか、課金サービスも予定
韓国発のスタートアップ、IoTを活用して水処理施設を管理するサービスを展開する。中国、台湾、シンガポールなどでサービスを展開する。
軽貨物ドライバーの配車サービス「軽town」を提供。アプリで荷主と個人ドライバーのマッチングを行うサービス。
訪日外国人観光客向けのタクシー配車、ツアー・アクティビティ予約、決済のプラットフォーム。専用アプリと無料SIMカード(500MBまで)を提供することで、ユーザーの利用を喚起する(紹介記事はこちら)。
海外旅行で余った外貨を両替し、各国の電子マネーと交換するサービス。ユニセフへ寄付することも可能だ。現在は羽田空港に端末を設置しており、1日100人が利用する。

世界への進出、どうやるの? Facebook、C Channel、メルカリそれぞれの戦略

3月16日から17日にかけて福岡県・博多で開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2017 Spring in Fukuoka」。初日のセッション「インターネットビジネス、グローバルでの戦い方」にはフェイスブックジャパン代表取締役の長谷川晋氏、C Channel代表取締役社長の森川亮氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏が登壇。グリーの田中良和氏がモデレートする中、それぞれの世界戦略を買った。

メルカリの世界進出の理由、「ロマンの部分が大きい」

田中氏はまず、「スタートアップが海外進出をする理由」について登壇者に尋ねる。

今日まさにイギリスでサービスをローンチしたばかりのメルカリだが、最初に米国への進出をしている。山田氏は当時を振り返り、「ECのGMV(総流通総額)は10倍。米国で成功できれば世界でも成功できると思っている。だがロマンの部分のほうが大きい。せっかくインターネットのビジネスで世界中繋がっているのだから、大きな市場でいいサービスを作って全世界でやりたいな、と」と振り返る。当時、直接的な競合も居ない状況であり、海外進出のチャンスとも考えたという。「(競合がない方が)可能性があるんじゃないか。でもホームラン狙いのようにビジネスをやっているところがある。当然日本でうまくいったからといって米国やヨーロッパでうまくいく保証はない。でもとれたらでかいよねと」

テレビ局でのビジネス経験もある森川氏。C Channelについて「日本発のメディアブランドを作りたいな、と思った。僕たちのターゲットは若い女性なので、日本だとそれほど多くなかった」と振り返る。現在はタイや台湾、インドネシアに進出するC Channel。月間再生は現在6億6000万回で、そのうち5億回以上は海外なのだという。アジア進出の理由は、競合不在(まだYouTubeが強く、一方では分散型が出なくライブ配信のようなコンテンツが流行している)であり、前職のLINEでの経験も生かせると考えたからだそうだ。

積極的にグローバル展開を進めるFacebook。中でもユーザー数の伸び、ビジネスのスケールを考慮してもアジア圏、特にモバイル、動画の領域は注目だと説明する。

とはいえFacebookは一度モバイルで大失敗しているのだそう。2012年頃、当時はデスクトップからのアクセスが圧倒的だったため、モバイルシフトが大きく遅れてしまったのだと語る。現在ではMAUの90%、売上の80%がモバイルからのものになっているとした。

世界展開するプロダクト、どう作る?

世界進出を進める3社。では本国と海外ではどういったチーム作りをしているのか。メルカリは協働創業者の石塚氏が元RockYouの創業者であり、シリコンバレーのカルチャーにも精通していると言うことで、オペレーションまわりは100%現地のアメリカ人が担当しているそう。

一方で開発はほとんど日本人が担当しているそうだ。もともとは国別に作っていたプロダクトを「グローバル版」として米国の品質に寄せた経験があるそうだ。「ただ去年くらいから米国でプロダクトマネージャーやデザイナーを取り始めている。また日本からも赴任する人も増やし、そこで融合することを試している。そうしないとグローバルなプロダクト作りはできない」(山田氏)。

山田氏はまた、トヨタやソニー、ホンダ、任天堂といった日本企業が過去にどうやって海外で成功してきたかを、「日本は圧倒的に強い技術力があってプロダクト出てくるから、ローカルもマーケティングや販売戦略を立てられた」と説明。日本の強みを持ってしてプロダクトを作り、現地とコミュニケーションを取っているとした。

これに対して、田中氏は「日本の強さ」を作るのが難しくなってきたのではないかと語る。山田氏もそれに同意した上で、「シリコンバレーから新しいテクノロジーがやってくる中で、技術というより、『こういうモノがいいんじゃない?』という強い信念がないといけない」とした。

一方で森川氏が話したところによると、C Channelは、女性向けコンテンツということで現地のカルチャーを理解していることも重要だそうで、コンテンツに関しては現地での制作をおこなっているという。

長谷川氏はFacebookというグローバル企業、またグローバルのマーケティングのために使われるプラットフォームという視点で世界進出について語る。まずグローバル企業としての視点だが、Facebookは本社というよりは、世界に複数ある拠点でサービスを開発しており、一方でビジネス面に関しては、各国に権限委譲する文化なのだそうだ。

一方でプラットフォーマーとして、「米国も1つの国として進出を考えるのは必ずしも正解ではない」と説明する。米国と言っても地域や人種、年齢、性別もさまざま。いくつもあるクラスタのどこに徹底するのかを考えるのが大事だという。またその進出方法にしても、現地チームを作るかどうかだけが大事な訳ではないと語る。「ユーザーインサイトはPC1台で分かる。プロダクトの作り込み、動画の作り込みは現地でやって、マーケティングやブランディングは本社でやる、ということもできるようになってきた」(長谷川氏)

では具体的にどうやって世界に進出すべきなのか。田中氏はFacebookやTwitterといったグローバルサービスを例に、世界進出の鍵になるのは、日本発のプラットフォームを作ることではないかと登壇者に問う。

山田氏もこれに同意した上で、「2年半米国でサービスをやって、やはり経験によって得られるモノもかなりある」と語った。「海外で五里霧中という中で進んでいると、『こういうことなんだ』とか『こうことはやっちゃいけないんだ』と考え、いつの間にか高いレベルで戦えるようになっている」(山田氏)。

森川氏は「原則から言うと、現地の人がモノを作る」ということが大事だと語る。今はコンテンツでもさまざまなパターンが存在しているが、それはやがて成熟してくる。その中で何が大事なのか、差別化要素がどこにあるかを考えていかなければいけないと。自動車や家電メーカーが世界進出した時代は日本の技術が武器であったが、これからは技術だけで勝てる世界ではない。インターネットのビジネスも、よっぽどのものでないかぎり、コンテンツやサービスのデザインが重要だという。数字と感性、両方を見て、現地に根付いたコンテンツを徹底的に作れるチームが大事だとした。

世界進出、いくらかかる?

このあとは会場との質疑が行われたが、興味深かったのは「グローバル展開のためのお金のかけ方」というもの。

山田氏はメルカリについて「日本で収益も立ちはじめて、調達もグローバル進出に理解あるところからなので、お金をかけやすい状況」だとした上で、「市場がデカいということは、市場を取るためにもお金がかかるということ。戦略的にやらないとお金が尽きちゃう。普通にやるなら数十億円は必要。最低でも月1億円は欲しいと思うので」と説明。

森川氏も「あればあるだけいい」とコメント。たとえ話として、中国では1つサービスがローンチすると、80社くらい競合が出てくると説明。そこで勝つ方法というのは、「最後までやること」つまりお金を調達してやりきることだと聞いたと語った。「だから(C Channelは)真っ向からぶつかるのでなく、小さい点を取っていく。アジアで言うと、国ごとに押さえていくというやり方もある」(森川氏)

長谷川氏はまた別の視点で回答した。「2人がスケールも大きい話をしているが、そういう話ばかりではない。例えばドイツで家族経営の家具の会社があった。息子さんが家具の良さを伝えて(筆者注:Facebook Adの事例と思われる)、結果ビジネスが順調になって海外含めて5店舗くらいになった。必ずしもスケールを大きくしないとグローバルにいけないわけではない。そこは会社のスタンスとやりたいことで違うと思う」(長谷川氏)

B Dash Campのプレゼンコンテスト「ピッチアリーナ」、優勝は仮想化SIMソリューションのSimgoに

北海道・札幌で10月17〜18日にかけて開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2016 Autumn in Sapporo」。2日目にはスタートアップのプレゼンバトル「ピッチアリーナ」のファイナルラウンドが開催された。前日に開催されたファーストラウンドに登壇した全20社から選ばれた6社がプレゼンテーションを繰り広げた。見事優勝を果たしたのは仮想化SIMソリューションを提供するシンガポール発のスタートアップ・Simgoだった。準優勝にはCombinatorが、PayPal賞およびgumi賞にはウィンクルがそれぞれ選ばれた。各社のプロダクトは以下のとおり。

ウィンクル「Gatebox

GateboxはAR、IoTを組み合わせた世界初(同社発表)のバーチャルホームロボット。専用筐体内にバーチャルなキャラクターを表示。ユーザーとコミュニケーションできる。動画は60万再生、メール会員1万人、仮予約者1300人。うち7割が海外だという。すでにプロトタイプで「初音ミク」とのコラボレーションも果たしている。2016年冬に限定販売を開始する予定で、価格は「婚約指輪相当」の数十万円程度だという。今後はキャラクターの種類の拡大も予定している。

Combinator「Refcome

リファラル採用を行う際の施策設計の支援から、人事担当者、社員、社員の友人(採用の対象)向けの機能を提供するクラウドサービス。利用料は月額7万〜10万円程度。正式公開から3カ月で約30社9000人が利用する。今後はタレントマネジメントや組織改善、SNSを通じたダイレクト採用機能などの提供も予定する。

Maverick「ALIVE

韓国発のスタートアップが提供するALIVEは、スマートフォンで利用できる動画の編集アプリ。スマートフォン上でエフェクトをかけ、30秒の動画を作成してSNSに投稿できる。クラウドベースのレンダリングエンジンを採用することで高度なエフェクトを付けることができるという。200カ国、300万件のダウンロード実績を誇る。MAUが50万人、週間コンテンツクリエーターは15万人。アクティブユーザーは半分が米国となっている。

NURVE「NURVE

友人、無人でのオペレーションを実現するVRシステム。CADデータや360度動画などをVRコンテンツ化する。現在は池袋の不動産屋に対して専用端末を提供(初期0円、月額1万8000円)で導入。VRをベースに下内見サービスを提供している。今後は不動産だけでなく、旅行、ウェディング業界への導入も進めている。

Mobingi「Mobingi

東京、米国に拠点を置くMobingi。同社が提供するのはクラウドサービスのメンテナンスを自動化を実現するサービス。クラウドサービス利用時の教育コストや運用コストを最小化する。

Simgo「Simgo

シンガポールに拠点を置くSimgoが提供するのは、モバイルデバイスに利用するSIMカードを仮想化するソリューション。このsimgoを導入することで、時と場所に応じて動的にSIMカードを割り当てることができる。

興味あるのは「SNS」、一番怖いのは「固定化すること」——取締役・舛田氏が語るLINEのこれから

B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏(左)、LINE取締役CSMOの舛田淳氏(右)

B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏(左)、LINE取締役CSMOの舛田淳氏(右)

10月17日から18日にかけて北海道・札幌で開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2016 Fall in Sapporo」。初日最初のセッションにはLINE取締役CSMOの舛田淳氏が登壇。B Dash Ventures代表取締役社長の渡辺洋行氏とのセッションを繰り広げた。

日本、NY同時上場の意味

2016年7月に日本(東証1部)、ニューヨーク(ニューヨーク証券取引所:NYSE)に同時上場したLINE。渡邊氏は舛田氏に改めて同時上場の意図を尋ねた。

「2016年の年頭までは悩みに悩みまくっていた。東証とNYSE両方なのか、東証だけに上場するのか。テクニカルなこと(株価上昇など)をしたかったという観測もあったが、全然そんなことはない」

「仮に今の経営陣がくたばったとしても——呪詛のように『LINEという会社は世界を意識しないといけない。10年後20年後にもそういう意識を持たさないといけない』と考えた。普通に考えたら『日本だけでいいんじゃないか』と(今後)我々以外の経営者が言うかも知れない。それでは困るのでニューヨークとの同時上場をした。これまで無茶をしてきたので、(上場も)無茶をするのがLINEらしいところもある。海外の投資家の理解度も高い。Twitter、Facebookと同じようなポテンシャルで見てもらっている」(舛田氏)

同時上場については、決定しなければいけない期限まで話し合ったのだという。「明日決めるという日の前日も、仕事の帰り際に出澤(LINE代表取締役社長CEOの出澤剛氏)と『どうする』と話していた。全ての選択肢は持ち続けた」(舛田氏)

そして迎えた7月15日の日米同時上場。ニューヨークで上場を迎えた舛田氏は、その様子を振り返る。

「同時上場ではなく、アメリカで上場するのもアリだと思う。文化の違いというのもあるが、チャレンジする人がサクセスするということ対して、『ウェルカム』と言ってくれる国だ。上場日、マーケットの前で車を下りた瞬間から、ある種のショーが始まっている。映画のように掃除をする人や警備をする人から『今日はいい日になるといいね』言われたり、ハイタッチされたりする」

「(取引所も)もう全てシステム化されているので、本来はディールの場に人が必要ない。ただ初値が付くまでは、(スタッフが)『40ドルだ。(LINEの株価は)そんな価値ではない』と言ってくれる。我々がしびれを切らすと『大丈夫だ。水を飲め』と語りかけるなど、エンターテインメントとして演出してくれる。TIMES SQUAREのショーなども決して我々が仕込んだのではない。セレモニーをやってもらった」(舛田氏)

一方で東証での上場については、出澤氏はじめとして参加者から「少し寂しかった」という声が出たそうだ。舛田氏は「ちょっとした演出でチャレンジする人(のモチベーションが)上がる。その日1日誇れれば、継続して成長するプライドも持てるのではないか」と提案する。

LINEは上場して何を目指す?

LINEは上場以降、「スマートポータル」という構想を掲げてサービスを展開している。渡辺氏はその進捗について舛田氏に尋ねる。舛田氏は次のスライドをもとに現状を語る。

LINEの「スマートポータル」構想

LINEの「スマートポータル」構想

「コンテンツやメディアの領域で1番成長著しいのはLINE NEWS。10代、20代はYahoo! ニュースに迫る勢い。MAUは4100万人で、スマートポータルのメディア戦略の中核中の中核。LINE LIVEは動画プラットフォーム。よく比較されるのはAbema TVだが、全然違うことを考えている。我々はスマホらしいプラットフォームを考えた時に、縦(縦向き動画のUI)だろうと考え、縦向きでコミュニケーションしやすいプラットフォームとして舵を切った。LINEのプッシュ通知などもあるので視聴も配信も増えてきた」

「(サブスクリプション型音楽配信サービスの)LINE MUSICも着実に伸びている。通常のサブスクリプションだとなかなか厳しいところがあったので、LINEの呼び出し音などに(利用できるように)力を入れたところ、サブスクライバーの数も売上も伸びてきた」(舛田氏)

このほか、インフラの面でも、LINE Payやメッセージング、BOT APIなどの提供も進めている。舛田氏は、LINEの本質は「カンバーセション」の会社だと続ける。「日本もタイも台湾もだが、そこで(メッセージングサービスの)リーディングカンパニーは間違いなくLINE。そこにUI、データ、カンバセーションといったものをOSのようにしてさまざまに展開しようとしている」(舛田氏)

スマートポータル構想について語る舛田氏。だが、渡辺氏からはより具体的な戦略について知りたいという質問が飛ぶ。

「さっきニュース(LINE NEWS)の話をしたが、ポータルサイトで必要なコンテンツというのはいろいろある。だが(ポータルと)スマートフォンを掛け合わせた時に必要なバーティカルなコンテンツやサービスはまだLINEにはない」(舛田氏)

LINEにまだ欠けているコンテンツやサービス、その1つの答えが先日発表された「出前館」運営の夢の街創造委員会の株式取得だろうか。舛田氏は「(コンテンツと比較して)サービスに近いところだがそうだ」と語る。

さらに、「コンテンツやメディアはまだ(LINEに)ない」として、他社との提携、株式の取得、協業などに力を入れていくとした。同時に、内製して開発していた内容についても、テクノロジー系のスタートアップと組んで補完していくと語った。「出資もするし、必要であれば100%(LINEの)中に入ってもらうものもある」(舛田氏)

舛田氏はLINEの戦略は分かりやすいと語る。「引いたところから見ると、光が強い(注目しており、サービスを提供しているという意味)ところ、弱いところがある」(舛田氏)。そしてまだ光が当たっていない領域については、すでに外部と連携に関する話をしていたりするとした。ビジネスとしては広告事業にも注力していくが、さらにLINEらしい非連続のチャレンジも続けていくという。

「例えば『NEXT LINE』というところにも張っていこうとしている」(舛田氏)

一番怖いのは「固定化すること」

その「NEXT LINE」としてチャレンジする領域の1つが「SNS」だという。LINEは現在、動画SNSのSNOWに出資したり、写真SNSの「B612」を提供したりしている。舛田氏は「LINEは基本的な連絡をすべてやっているのでアクティブ率は落ちない」とした上で、InstagramやSnapchatを例に挙げつつ、「ただ、(LINEが)みんなにリーチしてるからこそ、逃げたくなるようなもの(コミュニケーション)もある。そういうニーズをどうくみ取るかが大事」と語る。今後もこの領域でのチャレンジがあるということだろうか。

「社内で言っているが、一番怖いことは固くなること、固定化すること」——舛田氏はこう続ける。LINEは1兆円規模の会社になったが、ここまでのプロセスでの強みが、今後は弱点になることはある。そうやって終わっていく企業は多い。なのでどこまで固くならず、変な前提を持たず、新しいことにチャレンジできるのか(が大事)。IPOしたからこそ、きちんとやるべきだと思う。

B Dash Campのプレゼンバトル「ピッチアリーナ」優勝はSmartHR運営のKUFUに

福岡で3月3〜4日にかけて開催された招待制イベント「B Dash Camp 2016 Spring Fukuoka」。2日目にはスタートアップのプレゼンバトル「ピッチアリーナ」が開催された。午前中に開催された全18社による予選を勝ち抜いた4社が決勝ステージに進出。見事優勝を果たしたのは「SmartHR」を手がけるKUFUだった。また準優勝には「Gozal」を手がけるBECが、PayPal賞にはこちらもKUFUが、さくらインターネット賞には「nine」を手がけるLipがそれぞれ選ばれた。各社のプロダクトは以下のとおり。

Lip「nine

Instagramを利用したマッチングアプリ。「nine」ではユーザーのプロフィールを9枚の写真でプロフィール画像を生成し、個性でのマッチングを行うという。マッチングアプリで最も有名なのはTinderだが、マッチングの大きな決め手となるのは顔写真であり、一部のモテる人の間でしかマッチングが起きていないとLipの共同創業者で代表取締役社長の松村有祐は説明する。

nineでは、ユーザーのInstagramから他のユーザーからの評価高いものを中心にプロフィールを生成するそうだ。そのユーザーが好きなものや個性を表す写真を独自のアルゴリズムで選出するという。世界ですでに世界の231カ国で13万件の事前登録があり、アメリカ大統領選挙に出馬しているドナルド・トランプ氏や米国大統領夫人オバマ夫人などもnineのプロフィール生成していると言う。

Outland「HelloWings

台湾発のLCC(ローコストキャリア)価格比較・予約サイト。LCCでも安価な席数は限られているが、HELLOWINGSでは、出発地と行き先を指定して検索するだけで最低価格で購入できるチケットを表示してくれる。そのままそこからチケットを購入することができる。96社の航空会社・40万のルートをカバーしており、サイトのMAU(月間アクティブユーザー)は7万人。

KUFU「SmartHR

KUFUは労務手続を簡略化するSmartHRを提供している。社会保障制度の労務手続きは入力するのが分かりづらく、書類が作成できても役所に行って提出しなければならない。SmartHRはそのような手続きを自動化するSaaSだ。社員が入社した場合は、SmartHRに必要情報を入力していく。SmartHRは政府が公開しているAPIとも連携しているため、1クリックで手続きの書類を提出することができる。Smart HRは980円から利用可能ですでに登録企業は650社だそうだ。

また、無料トライアルから15%くらいの転換率で有料会員になっていると話す。登壇したKUFUの代表取締役の宮田昇始氏は、良く社労士との仕事と被るのではないかと聞かれることが多いが、実際は社労士をSmartHRを仕事に活用していると話す。SmartHRは日本の中小企業419万社をターゲットとしいて、そこにリーチするのに今後は士業の専門家と販売パートナーに迎え、協力関係を築いていきたいと話す。

BEC「Gozal

会社の登記を始めとして、労務や法務などのバックオフィス機能を自動化するクラウドサービス。弁護士や税理士と共同開発し、現在特許申請中の人工知能が、業務にあわせてやるべき手続きを自動で確認して通知。サイト上の指示に沿って作業をすれば、役所への電子申請が可能。現在無料。4月後半からは月額980円からの課金を行う予定。

アプリ操作の録画で定着率を上げる「Repro」が栄冠、B Dash Campピッチコンテスト

京都で開催中の「B Dash Camp」で18日、スタートアップのピッチコンテスト「ピッチアリーナ」が開催された。国内外23社が参加し、前日の予選を通過した10社が本戦でプレゼンを実施。本戦には韓国企業が7社と半数以上を占めたが、最優秀チームには、ユーザーのアプリ利用動画を使ってコンバージョン率や定着率を改善するサービス「Repro」が選ばれた。以下、賞を獲得したサービスを紹介する。

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B Dash Venturesの渡辺洋行社長(左)とReproの平田祐介社長(右)

Repro(日本)※最優秀チーム/PayPal賞

ユーザーの画面操作を動画で取得し、モバイルアプリの課題発見から解決策までを提示する。Reproが提供するSDKを自社アプリに導入すると、例えば、アプリの起動からクラッシュまでのユーザー行動を記録。これを動画を見れば、簡単にクラッシュを再現し、効率的にバグを修正できる。

アプリ操作動画の再生画面。多くの動画を見るときは倍速、じっくり確認したいときはスロー再生ができる

アプリ操作動画の再生画面。多くの動画を見るときは倍速、じっくり確認したいときはスロー再生ができる

ユーザーの離脱率を把握するファネル分析と連携し、離脱しやすい場所を見つけられる。離脱してしまったユーザーと、コンバージョンしたユーザー行動の動画を見比べれば、離脱原因までわかるのが特徴だ。離脱したユーザーだけを抽出してプッシュ通知を送り、再訪やコンバージョンを促す機能もある。

「初回アクセス時にお気に入りを3回実行した」のように設定したユーザー抽出できる

「初回アクセス時にお気に入りを3回実行した」のように設定したユーザー抽出できる

リピーターを増やすためのリテンション分析とも連携。ユーザーが特定のアクションを「いつまでに何回すると定着しやすい」かを示す“マジックナンバー”を導き出せる。マジックナンバーとは、Twitterで言うと、新規ユーザーが5人以上フォローするとリピーターになりやすいといった数値だ。

利用料金は毎月1万2000円〜。4月22日に公開し、これまでに852アプリが導入している。

TALKEY(韓国)※特別賞

スマートデバイス向けの自然言語解析技術。スマートウォッチで「ランチでもどう?」というメッセージを受信した場合、その内容を解析したうえで「何時?」「もちろん」「お前のおごりな!」みたいな返信メッセージ候補を表示する。

現時点では英語版のみだが、日本語を含む多言語に対応する。将来的にはスマートデバイス以外にも、ネット対応の自動車やIoTへの技術提供も視野に入れている。

カバンやポケットからスマホを取り出さずに、スマートウォッチで受信したメッセージに返事できるのが便利そう。

カバンやポケットからスマホを取り出さずに、スマートウォッチで受信したメッセージに返事できるのが便利そう。

Vetpeer(日本)※エボラブルアジア賞

動物病院の獣医師を対象にしたコミュニティサイト。獣医師が読むべきニュースをキュレーションしたり、「パート獣医師の時給どうしてる?」「開業にかかったお金は?」といった同業者だからこそ相談できるQ&Aコーナーがある。2年前にローンチし、全国の獣医師の42%にあたる約6000人が登録している。

収益源は、動物病院に医薬品や療法食を販売するメーカー向けのマーケティング。具体的にはメーカーの獣医師向けセミナーをネット配信する。従来、この種のセミナーは首都圏を中心に開催していたので来場者が限られたが、全国の獣医師に向けて情報発信できるようになる。

獣医必読(?)のニュースをピックアップしたり、獣医師同士だからこそ聞けるQAコーナーなどがある

獣医必読(?)のニュースをピックアップしたり、獣医師同士だからこそ聞けるQAコーナーなどがある

アウトドア地図アプリ「YAMAP」が栄冠、B Dash Campプレゼンバトル「ピッチアリーナ」

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B Dash Venturesの渡辺洋行社長(左)とセフリの春山慶彦社長(右)

 

福岡で開催中の「B Dash Camp」で10日、スタートアップのピッチコンテスト「ピッチアリーナ」が開催された。国内外54社が参加し、前日の予選を通過した12社が本戦でプレゼンを実施。本戦には韓国や台湾、タイなどの海外勢が9社半数以上を占め、国際色の強いコンテストとなった。最優秀チームにはアウトドア向けの地図アプリ「YAMAP」を手がけるセフリが選ばれた。以下、出場各社とサービスを紹介する。

YAMAP(最優秀チーム)
携帯の電波が届かない状態でも、スマートフォンで現在位置がわかる地図アプリ。地図を印刷して持ち歩くこともできる。利用シーンは登山、スキー、スノーボード、釣りなどアウトドア全般を想定。特に近年社会問題化しているという「山での遭難事故」を解決したいという。2013年3月にリリースし、ダウンロード数は10万件。アプリには自分のアウトドア用品を登録する欄があり、これと連動するアウトドア用品の比較評価アプリをまもなくリリースする予定。ちなみにYAMAPはTechCrunch Tokyo 2013のファイナリストでもあった。

VIDEO SELFIE(審査員特別賞)
加工機能のついた動画撮影アプリ。顔をリアルタイムでトラッキングし、顔の位置、距離に合わせて画像や音楽でデコレーションできる。2014年11月から50万ダウンロード。MAUは7万5000人。

CREVO(PayPal賞)
クラウドソーシングを活用したアニメーション動画制作サービス。企画から納品までをサポートする。国内外のクリエイター1000人が登録し、このうち7割は海外のクリエイター。リリースから1年間で250社が導入している。価格は18万円〜。過去にはhuluのテレビCM動画を作った実績もある。

MakeLeaps
フリーランスや中小企業向けの見積書・請求書オンライン作成・管理・郵送ツール。楽天などもサービスを導入しており、98.3%のリテンション率を誇る。これまでに500Startupsをはじめとして、75万ドルを調達。

BookTrack
音声付き電子書籍プラットフォーム。本を読んでいる位置をトラッキングし、その動きと同期して音楽やエフェクトを付け流ことができる電子書籍。サービスは1年3カ月前にスタート。これまで30カ国200万ユーザーが利用している。学校用のプログラムは1700校、2万5000人が利用している。

CATFI
ネットワーク接続する体重計付き自動給餌器。以前の名称は「Bisrto」でクラウドファンディングのIndiegogoなどにも出展していた。スマートフォンを通じて、ネコの食事量や体重を管理。猫向けの顔認識機能により、複数の猫への給餌が可能。また猫の健康状態に合わせて最適な餌を提供する。

PopUp Immo
法人向けの賃貸物件版のAirbnb。数週間とか短期間にだけレンタルするニーズに対応する。保険などもカバー。フランスのパリでサービスを展開。すでに大手企業からの引き合いもあるのだそうだ。ビジネスモデルは20%の手数料。今後は年末までに1500スペース(現在は500スペース)まで拡大。さらにアジア圏でのサービス展開を検討している。

Sellsuki

東南アジアのECサイト向けツール。東南アジアでは、ECサイトとのチャットを通じて購買まで至るようなECサイトもあるそうなのだが、そういったサイト向けの注文管理やコミュニケーションを管理できる。7000人(店舗)がサービスに登録

ChattingCat
英語のネイティブスピーカーに、自分の英語を添削してもらえるサービス。韓国人創業者のApril Kim氏によれば、世界で一番使われている言語は「ヘタな英語」。自身もその1人で、実際に先生に添削してもらった経験がある。これをオンラインで提供しようと、サービスを開発した。ユーザーは英文を入力すると、平均4分以内に世界中で登録している600人以上のネイティブスピーカーに添削してもらえる。

EatMe
レストランのディスカウントクーポンを配布する台湾のアプリ。ユーザーは2000店舗以上のレストランを検索できる。店舗側は、クーポンの利用状況に応じて、どんなキャンペーンがユーザーに刺さるかがわかる。年間で10万ユーザーが利用しているという。

FANDORA
クリエイターが投稿したキャラクターやイラストをグッズ化し、販売できるプラットフォーム。台湾で2013年にスタートした。1500人以上のクリエイターが登録し、4万点以上の商品が購入可能となっている。すでに130万ドルの資金調達を実施し、翌年には日本、中国、東南アジアにも進出する予定。

フリップデスク
スマホECサイト上で実店舗のような販促・接客を提供するASPサービス。サイトに埋め込んだタグによって訪問者の行動を解析し、最適な販促を行う。例えば、購入を迷っている新規ユーザーを判別し、オーバーレイコンテンツやクーポンを配布したり、チャットでサポートすることができる。販売開始7カ月で約200サイトが導入している。

全ユーザーの3割が投稿、なぜ10代はMixChannelに熱狂するのか?

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スマートフォンで撮影した10秒の動画を共有できる「MixChannel」は、10代に人気のコミュニティだ。月間アクティブユーザー数(MAU)は380万人、月間再生回数は5億回。こうした数字以上に驚くのは、動画を投稿したことのあるユーザーが全体の3割を占めることだ。なぜ、10代はMixChannelに熱狂するのか。

福岡で開催中のイベント「B Dash Camp 2015」で、サービスを運営するDonutsの福山誠氏が、その秘訣を明かした。

MixChannelで人気のコンテンツのひとつはカップル動画だ。どんな内容かというと、中高生の男女がカメラの前でイチャイチャと抱き合ったり、キスしたりというもの。ただそれだけの内容を何組ものカップルがマネをして、相次いで投稿しているのだという。

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MixChannelプロデューサーの福山誠氏

「MixChannelでは、他のユーザーが投稿した動画をマネる行為が多いんです。やってることはみんな一緒で、数千人が目をつぶってチューする動画を上げている。マネをしたり、されたりするのが、MixChannelのコミュニケーションなんです。」

ユーザーがコンテンツを投稿するCGMは、Instagramのように利用者のほとんどが閲覧も投稿もするサービスを除けば、投稿率は全体の1割以下というのが相場。福山氏の言葉を借りれば、MixChannelの投稿率の高さは、「お題に乗っかるコミュニティの楽しみ方がある」ということらしい。

ビジネス版Airbnb「スペースマーケット」が海外勢抑え栄冠、B Dash Campプレゼンバトル「ピッチアリーナ」

福岡で開催中の「B Dash Camp」で18日、スタートアップのピッチコンテスト「ピッチアリーナ」が開催された。国内外100社以上が参加し、前日の予選を通過した12社が本戦でプレゼンを実施。本戦には韓国、台湾、インドネシアといった海外勢が半数以上を占め、国際色の強いコンテストとなった。最優秀チームには空きスペースを1時間単位で貸し借りできる「SPACEMARKET(スペースマーケット」が選ばれた。以下、出場各社とサービスを紹介する。

SPACEMARKET

会議やセミナー、イベントなどに使える空きスペースを持つオーナーと借り手をマッチングする。ビジネス版のAirbnbとも言えるサービス。映画館や古民家、お化け屋敷などユニークな空きスペースが多数掲載されている。スペースマーケット代表取締役の重松大輔氏によれば、伊豆大島の古民家で開発合宿が行われたり、映画館で株主総会が開かれたりしているそう。リリースから2カ月時点で、ユーザーに提示された見積もりの総額は9000万円を超える。売り上げは非公表だが、スペースマーケットは販売金額の20〜50%を徴収している。今後は物件数を増やすため、多くの遊休スペースを持つ大手不動産会社との提携も視野に入れている。

 

BountyHunter(台湾)

デザインコンペを開催するプラットフォーム。2011年にローンチし、これまでにGoogleやGigabyte、Lexus、Playboyなどが自社商品のためのコンペを実施している。商品デザインについては生産前に購入者を集めることもできる。デザイナーのクラウドソーシングサービスと言えそうだ。

Drivemode(アメリカ)

スマートフォンアプリで操作可能な運転支援システム。大きくて見やすいボタンをタップするだけで道順をナビしたり、音楽を再生できる。ユーザーの行動をもとに、行き先や連絡先などをリコメンドする機能を備える。Drivemodeはシリコンバレーに拠点を置く日本のスタートアップ。CEOの古賀洋吉氏は日本で学生時代にベンチャーを立ち上げた後、渡米してモバイルベンチャー、ベンチャーキャピタル、カーシェアリングサービスを手がけてきた人物。

あきっぱ

全国の空いている月極や個人の駐車場を1日500〜1000円で予約して利用できるサービス。「駐車場版Airbnb」を標榜する。スマホで予約でき、市場価格よりも平均40%安く借りられるのが利点だという。貸し手は駐車料金の60〜90%が得られるほか、特別な設備を導入する必要もない。現在、4万台以上の駐車場を掲載していて、来期は10万台を確保したいという。10%の稼働率で1日1万台の稼働を目指す。

iCHEF(台湾)

飲食店に特化したiPadを使ったクラウド型のPOSレジ。レジだけでなく、注文や座席の空席管理も行える。月額使用料は65ドルで1台のiPadが無償貸与される。共同創業者のKen Chen氏によれば、通常のPOSレジシステムと比べて40%ほどコストを抑えることができ、すでに3万件以上の取り引きがあるのだという。プレゼンでは日本語のユーザーインターフェイスのアプリが使われていて、日本への参入も視野にいれているようだ。

Keukey(韓国)

スマートフォンのタイプミスや文法ミスを修正してくれるアプリ。指摘された修正案は画面をスワイプするだけで反映されるため、わざわざカーソルを動かす手間が省ける。CEOのMinchul Kim氏によれば、アプリを使うことでタイピング速度が12%上がるのだといい、9月には日本語バージョンも追加する予定。

 

LEZHIN COMICS(韓国)

フリーミアムモデルのデジタルコミックサービス。約300冊の漫画の中から、1週間で1冊を無料で読める。毎月10冊以上の漫画を追加している。一般的にフリーミアムモデルの有料ユーザー率は全体の5%と言われるが、LEZHIN COMICSは読者の15%が有料で漫画を購読しているという。8月には日本にも進出する。

MINDQUAKE(韓国)

6歳以下の子どのアプリ利用を監視するアプリ。自分で利用時間を認識できるようにするため、子どもに親しみやすいたまご型のタイマーで利用可能な時間を表示する。

LOGBOOK

知識がなくてもウェブサービスやスマホアプリのサービスの課題を発見し、改善プロセスを回せるグロースハックのプラットフォーム。サービス分析の基本フレームワーク「AARRR」に沿っており、業種を問わずサービスの改善を行う。改善すべきポイントをハイライト表示することで、「分析ツールは入れてみたものの、どこを見ればよいのかわからない」といった問題を解決できるのだとか。現在、事前登録者は300ユーザー。A/BテストのKAIZEN platformと提携している。

 

TEXTAT(韓国)

LINEやカカオトーク、WhatsAppなどのメッセージングアプリからエクスポートしたテキストを解析し、相手が自分のことをどう思っているかがわかるサービス。「会いたい」や「淋しい」といったテキストの内容だけでなく、返信時間も踏まえた上でお互いの関係性を分析する。2013年にローンチし、60万ダウンロードを突破。現在は韓国語しか対応していないが、今夏に日本語バージョンも提供する。

Shakr(韓国)

中小企業向けの動画広告制作サービス。写真をドラッグ&ドロップしてテキストを入れるだけで、動画を自動的に作成する。「アプリ&ゲーム」「宿泊&不動産」「自動車」といったテーマ別のテンプレを用意している。無料版もあるが、ユーザーの35%が多くのテンプレを選べる有料版に登録しているという。今夏までに4500のテンプレを用意する。18日には日本語サイトを開設した。

 

Tees.co.id(インドネシア)
自分でデザインしたTシャツやマグカップなどを販売できるサイト。買い手が現れた場合、製造や配送、カスタマーサービスまでを代行してもらえる。ユーザーはデザインをアップロードするだけで、在庫を一切持たないでよいのがメリット。現在、3万点のデザインが掲載されていて、収益は毎月30%増えている。