Instagram(インスタグラム)の写真タグ付け機能だけで1つのアプリにしたら、バイラルセンセーションを巻き起こした「Poparazzi(ポパラッチ)」が生まれ、今やApp Storeのナンバー1アプリにまで上り詰めた。この新しいソーシャルネットワークアプリはTTYL(ティーティーワイエル)に開発されたもので、友達だけが写真を投稿できるソーシャルプロフィールを作成することができる。つまり友達を自分の「パパラッチ」にすることができるのだ。この新しいアプリは、公開前のTikTok(ティックトック)での宣伝活動によるApp Storeでの予約の促進から、公開後の支持者による好意的なツイートをはじめとするソーシャルバズの活用まで、公開初日からの猛ダッシュを実現するために計画された一連のミッションを完璧に遂行した。しかし、ユーザーのプライバシーと引き換えにネットワーク効果を高め、トップチャートを狙う向きもあり、長く力を維持できるかという点ではリスクの高い手法ともいえる。
TTYLは、編集された写真、過剰な自撮り、そして「安直なうわべだけの完璧さ」に満ちた今日のソーシャルフィードに反発しており、Poparazziをある種のアンチInstagramと位置づけている。人々の現実の生活は、多くの完璧ではない瞬間で成り立っており、そういったものが撮影され共有される価値を持つ、と同社はブログ記事で説明している。
このマニフェストは、タイムリーにユーザーに受け入れられた。ユーザー、特に若いZ世代が、大手テクノロジー企業に踊らされていることに気づくにつれ、見世物要素の低いソーシャルメディアに対するユーザーの需要は、何年も前から着実に高まっている。多くのスタートアップが同じようなスローガンを掲げてInstagramからユーザーを引き抜こうとしている。例えば、Minutiae(マイニューシー)、Vero(ベロー)、Dayflash(デイフラッシュ)、Oggl(オグル)、そして最近では、一時バズったこともあるDispo(ディスポ)や、あまり目立っていないHerd(ハード)などが挙げられる。
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Facebookでさえも、こういった消費者の要望に気づき、FacebookやInstagramのユーザーが自分の投稿やフィードから「いいね!」の数を削除できる新機能を展開する予定だ。
Poparazziの中核となるアイデアは、必ずしも革新的なものではない。写真にユーザーをタグ付けする機能は、何年も前からあったからだ。実際、Facebookの初期に導入された最初のバイラル効果の1つだった。
Poparazziは、確実なロケットスタートをともなう成長戦略を慎重に遂行することで、チャートのトップに立った。
同社は、公開前からTikTokを使って需要を喚起し、話題を集めた。TikTokは、モバイルゲーム「High Heels(ハイヒールズ)」などのApp Storeでのヒット作の創出にもひと役買っている。TikTokは、その姉妹アプリである「CapCut(キャップカット)」やeコマースアプリの「Shein(シェイン)」など、いくつかのモバイルビジネスでダウンロード数の引き上げに貢献しているが、TikTokがアプリをトップチャートに送り込む潜在能力はまだ過小評価されがちだ。
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Poparazziは、TikTokで需要を喚起するだけではなく、略歴のページにリンクを置き、ユーザーをApp Storeの予約ページに誘導することで、実際に需要を獲得した。公開日を迎える頃には、Poparazziを試してみたいというZ世代の一団が形成されていた。
アプリを起動すると、イントロビデオの再生中に携帯電話を振動させて触覚に訴える巧妙なオンボーディング画面が表示される。これは、ユーザーがPoparazziの「かっこよさ」を話したり、投稿したりするのに十分な目新しさがあり、口コミによる有機的成長を生み出す可能性があるもう1つの仕組みだ。
Poparazziは、ユーザーをワクワクさせた後、本格的にデータ収集へと進む。
まず、電話番号を使ってサインアップし、ユーザーを認証する。Apple(アップル)がApp Storeのポリシーとして、ユーザーが自分の身元を保護するために「Sign In with Apple(Appleでサインイン)」できることを必要としているにもかかわらず、Poparazziには、このプライバシーを守るためのオプションはない。「Appleでサインイン」では、電話番号やアドレス帳によるアクセス方法に比べて、Poparazziの成長の可能性が制限されてしまうからだろう。
続いて、カメラへのアクセス許可(当然必要だ)、連絡先へのアクセス許可(なぜ全部必要なのだろうか)、通知の表示の許可を求める画面が表示される。しかし、ここからが問題だ。このアプリは、かつてのClubhouse(クラブハウス)がそうだったように、アドレス帳の完全なアップロードを要求する。ソーシャルメディアで友達を追加するには、お互いのQRコードのスキャン、ユーザー名の直接入力、検索など、他にも多くの方法があるため、アプリの使い方を考えると、これは不要だ。
しかし、Poparazziにとっては、ユーザーの連絡先データベース全体にアクセスできることで、プライバシーを気にする人のための機能を組み入れる必要がなくなる。さらに、ユーザーが登録した電話番号と、Poparazziが保存している電話番号を照合するだけで、すぐにフレンドグラフを作成することができる。
個々の許可を完了すると、Poparazziは緑色のチェックマークをつけてくれる。実際には、求められた許可を拒否しても、緑色のチェックは表示される。これではユーザーは、誤ってアプリにアクセス許可を与えてしまったのではないかと混乱するかもしれない。
アドレス帳のアップロードは「拒否」でき、ポップアップメッセージの「チェッ」という音とともに、Poparazziはまるで友達に舌打ちしているかのように警告してくるが、自分の電話番号を携帯電話に保存している他のPoparazziユーザーに見つけられることは避けられない。
ユーザー登録が終わると、アプリはユーザーのアドレス帳とPoparazziに登録されている電話番号を照合し、あっという間にそのユーザーは、既存のユーザーをフォローすることになる。逆に、すでに登録している友人がいれば、最初にログインした時点ですぐにフォローされる。
言い換えれば、Poparazziでは「フレンドグラフ」を手動でキュレーションすることはない。つまり、ユーザーのアドレス帳がフレンドグラフであり、Poparazziはそれを複製しているに過ぎないということだ。
もちろん、これが実生活での関係を的確に表しているとは限らない。
多くの若者、特に女性は、携帯電話の「連絡先」に迷惑電話の加害者やストーカー、以前の恋人やパートナーの電話番号を保存している場合がある。そうすることで、携帯電話に組み込まれている機能により、迷惑な電話やメールをブロックすることができるからだ。しかし、Poparazziでは電話番号で自動的に照合されるため、悪用しようと思えば、嫌がらせなどで狙われる人のユーザープロファイルにすぐにアクセスできてしまう。
もちろん、これは極端な例だ。しかし、見過ごせることではない。
こういった問題はよく知られており、初期の成長段階にあったClubhouseが、アドレス帳すべてのアップロードを要求していたことでも物議を醸していた。これは、標準とするにはひどい戦略であり、Clubhouseが短期的にも持続する囲い込みに成功したようには見えない。また、これは新しい戦術でもない。10年近く前、モバイルSNSのPath(パス)がユーザーにアドレス帳のアップロードをさせようとしたが、当時、ほとんどの人がこのアイデアを批判していた。
Poparazziのデザインは非常に丁寧であり、アイコンには信頼性を象徴する青色を使っている。しかし、同社は意図的に穴埋めを狙ったのかもしれない。Poparazziは、ユーザーのプライバシーや安全性の一部と引き換えに、即席のフレンドグラフから得られるネットワーク効果を優先しているのだ。
このアプリの残りの機能は、ユーザーがそのフレンドグラフをさらに拡大し、他のユーザーを巻き込むように働きかけることだ。ユーザー自身のプロフィールは、他の誰かに写真をアップロードしてもらわない限り、空っぽのままだ。SnapKit(スナップキット)との連携により、Snapchat(スナップチャット)でフォトタグをおねだりできる。また、写真にタグ付けしてくれる友人が少ないと思えば「承認した人」だけでなく「すべての人からのポップを許可する」という設定に惹かれるかもしれない。
ソーシャルメディアのプロフィールへの写真のアップロードを「すべての人」に許すことが、悪用につながらないほど甘い世界ではないが、Poparazziは明らかにここで賭けをしている。こういった手段がもたらす影響に対処するのは、もっと先のことになると考えているのだろう。つまり、Instagramに不満を持った何百万人ものユーザーで、Poparazziのネットワークが満たされた後の話だ。
他にも、友人を招待したくなるいくつもの機能から、親友がどんどん投稿を続けるためのインセンティブとなるスナップチャット的な「Top Poparazzi」セクションまで、何十ものグロースハックがアプリ内に散りばめられている。
巧妙なからくりだ。このアプリは、コメントやフォロワーの数を表示しないが、強い影響力を追い求めるところを見れば「アンチInstagram」というほどのものではない。連写モードで撮影した写真はループGIFとして投稿することもでき、Instagramの写真ほど加工されておらず、より「本物」になるかもしれない。しかし、Poparazziのユーザーは、さまざまな絵文字を使って投稿にリアクションすることができ、その数は公開される。
探索ページで紹介されているベータテスターの投稿についていえば、リアクションは数百から数千にもなり、ポップの影響力の基準は効果的に確立されている。
最後に、自分がフォローしているユーザーは、写真の投稿を許可されているが、そのユーザーを自分のPoparazzi隊から除隊させても、つまりフォローを解除しても、そのユーザーが、自分のプロフィールに投稿することは止められない。結局のところ、自分のPoparazzi隊は「ポップを許可するアカウント」という別の設定で管理する。これはトラブルにつながるかもしれない。せめて、フォローを解除する時に、解除するアカウントからのプロフィールへの投稿許可も解除するかどうか、アプリがユーザーに確認してくれるといいのだが。
全体として、楽しいアプリだ。特に、このアプリがターゲットとする若い気楽な世代であればなおさらだ。友達を中心とした、皮肉めいた反インスタ映え的なスタンスも期待できる。しかし、プライバシーコントロールの強化や、乱用防止を目的とした、より詳細なフレンドグラフのコントロールの元で参加できるようになれば、それは歓迎すべき追加機能となるだろう。
TechCrunchは、Poparazziチームに連絡を取り、アプリのデザインと成長戦略についての展望を問い合わせたが、回答は得られていない(当面は鳴りを潜めるつもりだろう)。SignalFire(シグナルファイア)のJosh Constine(ジョシュ・コンスチン)氏とTechCrunchの確認により、元TechCrunchの共同編集者Alexia Bonatsos(アレクシア・ボナトソス)氏のDream Machine(ドリームマシン)とWeekend Fund(ウィークエンドファンド)とともに、Floodgate(フラッドゲート)がこのスタートアップに投資していると承知している。
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画像クレジット:Poparazzi
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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)