ツイッター、Birdwatchコミュニティのファクトチェックをより多くのユーザーに表示

Twitter(ツイッター)は、2020年10月に初めて明らかにしたコミュニティベースのファクトチェック構想「Birdwatch(バードウォッチ)」へのアクセスを拡大すると発表した。このサービスはこれまで、誤解を招く可能性のあるツイートにより多くの文脈を追加するためにメモを書いたり、評価したりすることに時間を投資した1万人の貢献者の小グループによってテストされてきた。しかし同社は、Birdwatchをより多くの貢献者に開放するのではなく、これらのメモをより多くの米国ユーザーが閲覧し、評価できるようにする。

米国時間3月3日から米国のTwitterユーザーの「少人数の無作為抽出された」グループが、ツイート上でBirdwatch のメモを直接見ることができ、メモを「役に立つ」「多少役に立つ」「まったく役に立たない」のいずれかで評価し、なぜそのように回答したのかを示して意見を提供できるようになると同社は述べた。このような発信はBirdwatchの改善に役立つ。

Birdwatchのもともとのアイデアは、Twitterにツイートを報告して検証してもらうことで、現在よりもはるかに速いペースでプラットフォーム上の誤情報に対抗するシステムを構築することだった。

2021年1月に正式にパイロットテストが始まった際にTwitterが説明したように、誤解を招く情報はオンラインですぐに広がってしまう。Birdwatchのメモはより迅速な方法でコンテキストを追加することが可能だ。さらに、Birdwatchのメモは、ユーザーがTwitterに報告して削除してもらうような問題のあるツイートで、実際にはルールを破っていないものについての懸念に対処するのに役立つ可能性がある。また、事実として正しいかもしれないが、問題の全体像を明らかにするための文脈を欠いているツイートの質を高めることができるかもしれない。

画像クレジット:Twitter

Twitterの発表のタイミングは、ワシントンポストの報道でBirdwatchサービスが初めて登場してから1年以上経っても、より広く展開できなかったと批判されてわずか数日後のことだ。

試験運用を開始して以来、Twitterはクリエイターツール(Super Follows)、eコマース機能、パワーユーザー向けのサブスクリプション商品(Twitter Blue)、ニュースレター(Revue)、NFTアバター、アプリ内投げ銭など、収益を伸ばすためのあらゆる種類の他のプロジェクトにリソースをさいてきた。

しかし、ロシア・ウクライナ戦争が激化する中、ソーシャルメディアにおける誤情報やプロパガンダの拡散により、より優れた(少なくともより迅速な)ファクトチェックがこれまで以上に求められている。Twitterは、ワシントンポスト紙へのコメントで、Birdwatchの試験運用を「非常に近いうちに」拡大すると述べている。つまり、今日の発表のタイミングは偶然ではない。

TwitterはBirdwatchの試験運用期間中に、メモ投稿者を嫌がらせから守るために自動生成されたエイリアスを提供したり、自分のメモが役に立つと評価されたり有り難られたりするとそれを知らせる通知を提供するなど、Birdwatchの改良を行った。ツイート上に表示されるには、まず十分な数のBirdwatch貢献者が異なる視点から評価を行う必要があると同社は述べている。また、Twitterは貢献者に出典を記載し、説明を明確にするよう促すアプリ内プロンプトリマインダーを追加し、Birdwatch貢献者がより多くのフィードバックを必要とするメモを評価するための「Needs Your Help」タブを導入した。

画像クレジット:Twitter

Twitterは2021年夏、APおよびロイターと協力して、プラットフォーム上の誤情報と戦うことを発表したが、これにはBirdwatchの投稿の評価への協力も含まれていた。

Twitterの調査によると、誤解を招く可能性のあるツイートに関するメモを見た後、その内容に同意する人の割合は、メモを見なかった人に比べて20%から40%少ないことがわかった。

Birdwatchメモは、3月3日からごく少数のユーザーに見えるようになるかもしれないが、一般公開にはほど遠い状態だ。まだ「試験的」なものだと考えられている。

また、Birdwatchの投稿者は必ずしも訓練を受けたファクトチェッカーやジャーナリスト、ある種の専門家ではないことから、コミュニティによるファクトチェックが誤情報を扱うのに正しいアプローチなのかどうかという疑問も引き続きある(さらに、ある分野の専門家であっても、別の分野の誤情報を適切に評価できるとは限らない)。その代わり、認証された電話番号を持ち、米国を拠点とする信頼できる通信会社を使っていて、最近Twitter違反をしていないことが条件とされている。

そして、あるファクトチェックが他のものと比べてどれだけ重要か、また、隠されたメモが真実を明るみに出すための正しい方法であるかどうかという問題がある。例えば、ミームアカウントが投稿したGIFでマーク・ハミルと確認された人物が、おそらく才能あるコスプレイヤーであることを知るのは良いことだが、検証済みの元スウェーデン首相や外交官がウクライナ・ロシア戦争での誤解を招く写真をツイートするとなると話は違ってくる。

Twitterは、Birdwatchメモを見て評価できるようになる米国ユーザーの数、あるいはTwitterの米国ユーザーベースの何パーセントに相当するかについての言及を避けた。

画像クレジット:Twitter

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

世界中のファクトチェック団体がYouTubeに誤報・偽情報対策を要求

世界中の80以上の著名なファクトチェック団体が、YouTube(ユーチューブ)に新型コロナウイルスに関する誤報への対策を求めている。この誤報は新型コロナウイルス感染拡大から2年が経過した現在でも、依然としてこの動画共有サイト上で広まっている。

「ファクトチェック機関の国際的なネットワークとして、私たちはオンラインでどのように嘘が広がるかを監視しています。そしてYouTubeがオンラインの偽情報や誤報を世界に広める主要な導線の1つとなっていることを、毎日私たちは目の当たりにしているのです」と、ファクトチェック機関の連合はPoynter(ポインター)に掲載された公開書簡で述べている。「これは、世界のファクトチェッキングコミュニティの重要な懸念事項です」。

この公開書簡に署名したファクトチェック機関は、PolitiFact(ポリティファクト)、The Washington Post Fact Checker(ワシントンポスト紙のファクトチェッカー)、PoynterのMediaWise(メディアワイズ)といった米国を拠点とする団体に加え、アフリカのDubawa(ドゥバワ)とAfrica Check(アフリカ・チェック)、インドのFact Crescendo(ファクト・クレッシェンド)とFactly(ファクトリー)、さらにはインドネシア、イスラエル、トルコといった国々の団体など、世界中に広がっている。

同グループは、YouTubeが長年にわたって健康に関する誤った情報の温床になっていると指摘。その中には、がん患者に非科学的な治療法で闘病を促す内容も含まれている。

「2021年は、いくつもの陰謀集団が繁栄し、国境を越えて協力し合うのを、我々は目にしてきました。その中には、ドイツで始まった活動がスペインに飛び火し、ラテンアメリカにまで広がった国際的な運動も含まれます。これらはすべてYouTubeで展開されているのです」と、書簡には書かれている。「その一方で、何百万人ものYouTubeユーザーが、予防接種を拒否するよう勧めたり、ウイルス感染症をインチキな治療法で治すことを奨励するギリシャ語やアラビア語の動画を見ています」。

この書簡では、英語以外の言語の動画で誤った情報が広がるという特殊な危険性も強調している。Facebook(フェイスブック)の内部告発者であるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)氏は、英語圏以外でのコンテンツモデレーションに十分な投資を行っていないFacebookでも、同様の懸念があることに注意を促していた。ファクトチェック団体グループは、YouTubeに対して「国や言語ごとのデータや、あらゆる言語に対応した字幕サービスを提供する」ことで、英語以外の言語から誤報の流出を防ぐよう働きかけている。これはYouTubeが注力しているモデレーションの方法だ。

ファクトチェッカー団体は、問題点を指摘するだけでなく解決策も提示しており、YouTubeは誤報や偽情報に関するポリシーの透明性を高め、それらの問題を専門とする独立した研究者を支援すべきだと指摘している。また、同グループはYouTubeに対し、誤報を否定して迅速にその件に関する事情や背後関係をプラットフォーム上で提供する取り組みを強化するようにも求めている。この2つの取り組みは、ファクトチェック機関との連携を深めることで実現可能だ。

FacebookやTwitter(ツイッター)は、プラットフォーム上での誤った情報の拡散について、長い間、世間の厳しい目にさらされてきたが、YouTubeはしばしばそれらの監視の目をかいくぐっている。YouTubeの推薦アルゴリズムは近年、危険な主張を広めることに能動的な役割を果たしているが、TikTok(ティックトック)と同様にテキストベースではなく動画であるため、一般的に研究者にとっては調査が困難で、テクノロジーの説明責任に関する公聴会を開いている議員たちにとっては理解することが難しい。

「YouTubeは、不謹慎な行為者が他人を操って利用したり、組織化して資金調達したりするために、自社のプラットフォームを武器にすることを許している」と、ファクトチェッカー団体はいう。「現在の対策では不十分です」。

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】ファクトチェックのスタートアップをの構築で学んだこと

2016年の米大統領選の余波を受けて、筆者はオンライン上のフェイクニュースの惨害に対処できるプロダクトの開発に着手した。最初の仮説は単純だった。偽の主張や疑わしい主張を自動的にハイライトし、それに対して最高品質のコンテクストに基づく事実を提案する半自動のファクトチェックアルゴリズムを構築する。私たちの論旨は、おそらくユートピア的であるとしても、明確であった。テクノロジーの推進力により、人々が真実、事実、統計、データを求めて意思決定を行うようになれば、誇張ではなく、理性と合理性を備えたオンラインの議論を構築することができるはずだ。

5年にわたる努力の末、Factmata(ファクトマタ)は一定の成功を収めた。しかし、この分野が真に成長するためには、経済面から技術面に至るまで、まだ克服しなければならない多くの障壁がある。

鍵となる課題

私たちはすぐに、自動化されたファクトチェックが極めて難しい研究課題であることを認識した。最初の課題は、チェックする事実そのものを定義することであった。次に、特定の主張の正確性を評価するために、最新の事実データベースをどのように構築し、維持するかについて検討した。例えば、よく使われているWikidata(ウィキデータ)の知識ベースは明らかな選択肢であったが、急速に変化する出来事に関する主張をチェックするには更新が遅すぎる側面がある。

また、営利目的のファクトチェック企業であることが障害になっていることも判明した。ほとんどのジャーナリズムやファクトチェックのネットワークは非営利であり、ソーシャルメディアプラットフォームはバイアスの告発を避けるために非営利団体との連携を好む。

これらの要因の枠を超えたところに、何が「良い」かを評価できるビジネスを構築すること自体が本質的に複雑で微妙であるという問題がある。定義については議論が絶えない。例を挙げると、人々が「フェイクニュース」と呼ぶものがしばしば極端な党派間対立であることが判明し、人々が「偽情報」と称するものが実際には反対意見による見解であったりする。

したがって、ビジネスの観点からは、何を「悪い」(有害、不道徳、脅威的または憎悪的)と判断するかということの方がはるかに容易であると私たちは結論づけた。具体的には「グレーエリア」の有害なテキストを検出することにした。これは、プラットフォームから削除すべきかどうかわからないが、追加のコンテクストが必要なコンテンツだ。これを達成するために、コメント、投稿、ニュース記事の有害性を、党派間対立性、論争性、客観性、憎悪性など15のシグナルのレベルで評価するAPIを構築した。

そして、関連する企業の問題についてオンラインで展開されるすべての主張を追跡することに価値があることを認識した。そのため当社のAPIを超えて、ブランドのプロダクト、政府の方針、新型コロナウイルス感染症のワクチンなど、あらゆるトピックで展開する噂や「ナラティブ」を追跡するSaaSプラットフォームを構築した。

複雑に聞こえるかもしれない。実際にそうだからだ。私たちが学んだ最大の教訓の1つは、この領域において100万ドル(約1億1400万円)のシード資金がいかに少ないかということだった。有効性が確認されたヘイトスピーチや虚偽の主張に関するデータを訓練することは通常のラベリング作業とは異なる。それには、主題に関する専門知識と正確な検討が必要であり、いずれも安価なものではない。

実際、複数のブラウザ拡張機能、ウェブサイトのデモ、データラベリングプラットフォーム、ソーシャルニュースコメントプラットフォーム、AI出力のリアルタイムダッシュボードなど、必要としていたツールを構築することは、複数の新しいスタートアップを同時に構築するようなものだった。

さらに事態を複雑にしていたのは、プロダクトと市場の適合性を見つけるのが非常に困難な道のりだったことだ。長年の構築の後、Factmataはブランドの安全性とブランドの評判にシフトした。当社のテクノロジーは、広告インベントリのクリーンアップに目を向けているオンライン広告プラットフォーム、評判管理と最適化を求めているブランド、コンテンツモデレーションを必要としている小規模プラットフォームに提供されている。このビジネスモデルに到達するまでには長い時間がかかったが、2020年ようやく複数の顧客からトライアルや契約の申し込みが毎月寄せられるようになった。2022年半ばまでに経常収益100万ドルを達成するという目標に向かって前進している。

やるべきこと

私たちが辿った道のりは、メディア領域で社会的にインパクトのあるビジネスを構築する上で、多くの障壁があることを示している。バイラル性と注目度がオンライン広告、検索エンジン、ニュースフィードの指標である限り、変化は難しいだろう。また、小規模な企業では、それを単独で行うことは難しい。規制面と財政面の両方の支援が必要になる。

規制当局は、強力な法律の制定に踏み切る必要がある。Facebook(フェイスブック)とTwitter(ツイッター)は大きな前進を遂げたが、オンライン広告システムは大幅に後れを取っており、新興プラットフォームには異なる形での進化を促すインセンティブがない。今のところ、企業が違法ではない発言をプラットフォームから排除するようなインセンティブはない。評判上のダメージやユーザーの離脱を恐れるだけでは十分ではないのだ。言論の自由を最も熱心に支持する向きでさえ、筆者も同様であるが、金銭的なインセンティブや禁止を設ける必要性を認識している。そうすることで、プラットフォームは実際に行動を起こし、有害なコンテンツを減らし、エコシステムの健全性を促進するためにお金を使い始めるようになるだろう。

代替案にはどのようなものがあるだろうか?悪質なコンテンツは常に存在するが、より良質なコンテンツを促進するシステムを作り出すことは可能である。

欠点はあるかもしれないが、大きな役割が期待できるのはアルゴリズムだ。オンラインコンテンツの「善良さ」すなわち品質を自動的に評価するポテンシャルを有している。こうした「品質スコア」は、広告ベースとはまったく異なる、社会に有益なコンテンツのプロモーション(およびその支払い)を行う新しいソーシャルメディアプラットフォームを生み出すための基盤となる可能性を秘めている。

問題のスコープを考えると、これらの新しいスコアリングアルゴリズムを構築するには膨大なリソースが必要だ。最も革新的なスタートアップでさえ、数億ドル(数百億円)とは言わないまでも、数千万ドル(数十億円)の資金調達がなければ厳しいだろう。複数の企業や非営利団体が参加して、ユーザーのニュースフィードに埋め込むことのできる多様なバージョンを提供する必要がある。

政府が支援できる方法はいくつかある。まず「品質」に関するルールを定義する必要があるだろう。この問題を解決しようとしている企業が、独自の方針を打ち出すことは期待できない。

また政府も資金を提供すべきである。政府が資金援助をすることで、これらの企業は達成すべき目標が骨抜きにされるのを回避できる。さらに、企業が自社のテクノロジーを世間の目に触れやすいものにするよう促し、欠陥やバイアスに関する透明性を生み出すことにもつながる。これらのテクノロジーは、無料で利用可能な形で一般向けにリリースされるよう奨励され、最終的には公共の利益のために提供される可能性もある。

最後に、私たちは新興テクノロジーを取り入れていく必要がある。コンテンツモデレーションを効果的かつ持続的に行うために必要な深層テクノロジーに真剣に投資するという点で、プラットフォームは積極的な歩みを見せてきた。広告業界も、4年が経過した頃から、FactmataやGlobal Disinformation Index(グローバル・ディスインフォメーション・インデックス)、Newsguard(ニュースガード)などの新しいブランド安全アルゴリズムの採用を進めている。

当初は懐疑的であったが、筆者は暗号資産とトークンの経済学のポテンシャルについても楽観的に見ている。資金調達の新たな方法を提示し、質の高いファクトチェック型メディアの普及、大規模な配信に貢献することが考えられる。例えば、トークン化されたシステムの「エキスパート」により、ラベリングに多額の先行投資を必要とする企業の手を借りることなく、主張をファクトチェックし、AIコンテンツモデレーションシステムのデータラベリングを効率的に拡張することが可能になるかもしれない。

ファクトベースの世界の技術的な構成要素として、Factmataに掲げた当初のビジョンが実現するかどうかはわからない。しかし、私たちがそれに挑戦したことを誇りに思うとともに、現在進行中の誤報や偽情報との戦いにおいて、他の人々がより健全な方向性を示すことに、私たちの経験が役立つことを期待している。

編集部注:本稿の執筆者Dhruv Ghulati(ドルヴ・グラティ)氏は、オンラインの誤情報に取り組む最初のグローバルスタートアップの1つFactmataの創設者で、自動ファクトチェックを研究する最初の機械学習科学者の1人。London School of EconomicsとUniversity College Londonで経済学とコンピューターサイエンスの学位を取得している。

画像クレジット:sorbetto / Getty Images(Image has been modified)

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(文:Dhruv Ghulati、翻訳:Dragonfly)

ツイッターがAP通信、ロイターと提携して誤情報の拡散防止を強化

米国時間8月2日、Twitter(ツイッター)はニュース配信機構のThe Assosicated Press(AP通信)およびReuters(ロイター)と提携し、同プラットフォーム上のニュースや情報の信頼性を強調する取り組みに力を入れることを発表した。新たな契約を通じてTwitterのCuration(キュレーション)チームは、提携企業の専門知識を活用してTwitterで流通するニュースやトレンドにこれまで以上に多くの背景情報を付加したり、注目の集まるイベントにおける公共広告の利用、誤情報へのラベル付けなどに役立てることができる。

現在Curationチームは、トップトレンドに載ったコンテンツやExplore(「もっと探す」)タブにあるその他のニュースに追加情報を付加する作業を進めている。また同チームは、検索結果がどうランキングされるかを調べ、Twitterで特定のキーワードやハッシュタグが検索されたときに検索結果のトップに高品質のコンテンツが現れるよう対策する。

また同チームは、ホーム画面のExploreタブに表示される公衆衛生の緊急事態(たとえばパンデミック)や選挙などの大きなイベントに関連したプロンプトにも取り組んでいる。そのプロンプトは、問題はあるがTwitter上での表示は許されるコンテンツに、信頼できる情報源から得た情報をともなう誤情報ラベルを付加するために使用される。たとえば操作されたメディア選挙の公正性あるいは新型コロナウイルス(COVID-19)などに関するTwitterのルールに違反するツイートがそこに含まれる。

しかし同チームは、ツイートがTwitterのガイドラインに違反しているかどうか、あるいは削除、停止などの罰則を決定するTrust and Safety(信頼と安全)チームとは別に活動している。Twitterは、APとロイターは両社ともこの種の強制行動には関わっていないことを確認した。

画像クレジット:Twitter

AP、ReutersというFacebook(フェイスブック)ともファクトチェックで提携しているニュース会社と直接業務を行うことで、ツイートやその他のコンテンツに追加情報を付加するスピードとスケールを高められる、とTwitterはいう。具体的には、ニュースが速報され、報道が進むにつれて事実が議論の的になっているそのときに、Twitterの社内チームが信頼のおける情報源と迅速に接触できることで、Twitter上の会話によりよいコンテキスト情報を付加できるようになる。

これは、誤解を招くツイートを修正するための事実を待つことなく、誤情報がバイラルに流布されるのを防ぐのにも役立つ。

クラウドソーシングを用いたTwitterの新しいファクト・チェッキング・システムであるBirdwatch(バードウォッチ)も、Birdwatch参加者が共有した情報の質を決定するためにAP通信とReutersからのフィードバックを利用する予定だ。

関連記事:Twitterが誤った情報と戦うためにツイートにコンテキストを追加する「Birdwatch」システムを開発中

この取り組みは、Curationチームと報道機関による共同作業が、記事や会話に情報を付加するだけでなく、どの記事に情報を付加する必要があるかの見極めにも役立つだろう、とTwitterはTechCrunchに語った。追加情報はTwitter内のさまざまな場所に付加される。「ツイート」「検索」「もっと探す」および「モーメント」と呼ばれるまとめも対象だ。

Twitterは誤情報の扱いにしばしば苦慮してきた。リアルタイムという性質に加えて、著名人が自らの利益のために真実を操作するという利用方法もある。これまでにも、誤情報の拡散を緩和あるいは阻止するためにさまざまな機能を実験してきた。ワンクリックによるリツイートの禁止からファクトチェックの追加、 アカウントの禁止 などだ。Birdwatchはツイートにメモを付加する最新の取り組みだが、このシステムは誤情報の扱いを分散化しようとい試みであり、信頼できるパートナーに頼るものではない。

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ツイッターがユーザーの手を借りた新ファクトチェック機能「バードウォッチ」の試験運用開始

「APにはTwitterやその他のプラットフォームと緊密に仕事をしてきた長い歴史があります。事実報道を広めることが目的です」とAPのグローバル事業開発担当副社長、Tom Januszewski(トム・ジャヌスゼウスキ)氏が提携を伝える声明で語った。「この業務は当社のミッションの中核をなすものです。オンライン会話にコンテキストを付加するためにAPのスケールとスピードが活用されることは特に楽しみです。事実を容易にアクセスできることによる恩恵を受けることができます」。

「信頼と正確と公正は、日々数十億の人たちが賢明な決断を下すのに必要な情報を提供しているReutersの核心です」とReutersのUGCニュース収集の責任者、Hazel Baker(ヘイゼル・ベイカー)氏が付け加えた。「これらの価値は、誤情報の拡散を阻止する当社の取り組みを後押しするものでもあります。Twitterと提携することによって、公共の会話に信頼できる情報を提供するために、世界や地域における当社の専門知識を活かせることを楽しみにしています」とベイカー氏は言った。

共同作業では当初Twitterの英語コンテンツのみに焦点を合わせるが、今後他の言語や地域にも対応するつもりだと同社は言っている。Twitterは今回の初期フェーズで、多言語に対応できる協力者を評価するつもりだとTechCrunchに話した。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Twitter誤情報ロイターAP通信ファクトチェック

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ツイッターがユーザーの手を借りた新ファクトチェック機能「バードウォッチ」の試験運用開始

Twitter(ツイッター)は、熱心なツイート発信者のネットワークを利用して誤解を招くツイートにメモを追加する新プロダクト「Birdwatch(バードウォッチ)」で、誤情報の問題をクラウドソーシングで解決しようとしている。米国時間6月2日、TwitterはBirdwatchに関する注記をiOS、Android、デスクトップのパイロット版参加者に公開すると発表した。

同社がこのプログラムのパイロット版を立ち上げたのは2021年1月で、そのときは誤報にコンテキストを付加する1つの方法である、と説明していた。

関連記事:Twitterがコミュニティによるノートを付加して誤情報を防ぐ「Birdwatch」の試験運用を開始

当時、プロダクト担当の副社長であるKeith Coleman(キース・コールマン)氏は、ブログで「このアプローチは、誤解を招くような情報が広まった際、迅速に対応し人々が信頼し、価値を見出すような文脈を加えることができる可能性があると考えています。最終的には世界中のTwitterユーザーのために、広く多様な投稿者の合意が得られた場合、メモを直接ツイートに表示することを目指しています」と述べている。

Birdwatchの初期のパイロット参加者に、その時が来たようだ。

お待たせしました。エキサイティングなニュースです。現在、Android、iOS、https://Twitter.comでTwitterを閲覧していると、Birdwatchのメモが付いたTweetが表示されることがあります。メモは、ツイート上のカードに表示されます。現在のところ、この機能はパイロット参加者にのみ表示されています。

 

Twitterによると、Birdwatchのメモがツイートに追加されると、ユーザーはそのフィードバックが役に立ったかどうかを評価する機会が与えられる。参考にならないと判断された場合、Birdwatchカード自体は消えてしまうが、参考になると判断されたメモは、ツイート内に直接ポップアップ表示される。

現在のソーシャルメディアの枠組みの中で、どのようなBirdwatchであれば有効か、そもそも有効なのかという疑問は山積みだった。コミュニティによるフィードバックを利用することは、Facebookのような独立したファクトチェック組織を用いる中央集権的な方法とは異なるものだ。Twitterは明らかに、取り組みをできる限り分散化して、決定権をBirdwatchのコントリビューターたちの手にゆだねたいが、個々のツイート発信者のオーディエンスが事実検証努力の有益性と可視性を決めるという現在の方法では、かなり面倒な解決方法になることもあるだろう。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:TwitterSNSファクトチェック

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

草の根運動グループ「インディヴィジブル」が政治的な誤報を無力化するボランティア隊の訓練を開始

写真は2021年4月27日、米国ワシントンD.C.の連邦議会議事堂の外にある米国旗。バイデン大統領と下院民主党議員は、児童税額控除の延長をどれだけ優先させるかで衝突している

民主党の草の根運動グループ「Indivisible(インディヴィジブル)」は、誤った情報に対抗するために、独自のステルス・ ファクト・チェッカー・チームを起ち上げようとしている。これは、政治的メッセージを発信する兵隊を訓練し、情報の塹壕に送り込む実験だ。

「Truth Brigade(真実の旅団)」と名づけられたこのボランティア部隊は、右派が好みそうな誤解を招く情報に対抗するためのベストプラクティスを学ぶことになる。彼らは隔週で組織と連携し、政治的な誤報をかき消すための進歩的なメッセージの波動を放ち、その過程でBiden(バイデン)氏の立法計画を後押しする。

1月6日に行われたソーシャルメディアの大掃除の後にも誤報が広範囲に残っていることを考えると、このプロジェクトは確かに大変な仕事になるだろう。

「これは、ソーシャルメディアのプラットフォームによる非常に無責任な行動によって生じたギャップに、ボランティアの力を投じようという試みです」と、Indivisibleの共同設立者で共同執行役員であるLeah Greenberg(リア・グリーンバーグ)氏は、TechCrunchに語った。「彼らに最終的に対処する責任があるものに、私たちが立ち向かおうとしているのは非常に残念なことです」。

グリーンバーグ氏は、2016年の選挙後に夫とともにIndivisibleを設立した。この組織は、グリーンバーグ夫妻と他の2人の元下院職員が、議員に働きかける市民活動のためのハンドブックを出版した際に、大きな反響を呼んだことから発展した。このハンドブックの内容は、トランプ元大統領とその政策に反発することを米国人に呼びかける左派の「抵抗」時代の活動の中で旋風を巻き起こした。

IndivisibleのTruth Brigadeプロジェクトは、コロラド州で行われた試験的なプログラムから発展したもので、グループのシニアオーガナイザーであるJody Rein(ジョディ・ライン)氏が、自分の州で見たものに懸念を抱いたことが発端となった。2020年秋に始まったパイロットプログラムは、現在45州で2500人のボランティアが参加するまでに成長した。

メッセージの中心となるのは、バイデン氏の野心的な立法案である米国救済計画(American Rescue Plan)、選挙改革法案(HR-1)そして近々予定されているインフラ投資計画(Infrastructure Package)だ。ボランティアチームは、これらの法案に関する政治的な誤報を直接否定するのではなく、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)など既存のソーシャルメディア世界の中で、法案を宣伝し、誤った主張を否定するメッセージを発信する。

Indivisibleの中で組織化されたこのネットワークは、多くの偽情報キャンペーンが自分たちのコンテンツを拡散させる時に使うのと同じ戦術を用いて、これらの半有機的なコンテンツをクロスプロモーションする(自分たちの起源を隠すためにあからさまな努力をしているグループの場合、Facebookはこれを「組織的非真正行動」と呼んでいる)。これらの投稿はボランティア活動の一環であり、ターゲットを絞った広告ではないため、ラベル付けされないが、中にはTruth Brigadeのキャンペーンに関連するハッシュタグが付くものもある。

ボランティアは、進歩的な話を「真実でサンドイッチ」にして提供するように訓練されているが、その際には、反論しようとする誤った情報を増幅させないように気をつけなければならない。Indivisibleにとって、政治的な誤った情報をさらに焚きつけることがないようにボランティアを訓練することが、この活動の重要な部分を占めている。

「私たちが知っているのは、実際に偽情報を広め、悪者の仕事を代行している者たちがいるということです」と、グリーンバーグ氏はいう。「私たちはそのような者たちとの戦いに参加せずに、人々が実際に賛同できるように話を進めることで、人々の反応を得ようとしています。言い争いになれば、それは彼らの思う壺ですから」。

真実のサンドイッチ
1. 真実から始める。最初のフレームを取ることが有利になります。
2. 嘘を示す。できれば具体的な言葉の増幅は避ける。
3. 真実に戻る。常に嘘よりも真実を繰り返す。
詳しくはGil Duranと一緒にFrame​Lab(フレームラボ)のエピソード14でお聞きください。

グリーンバーグ氏は、2022年に民主党が再び直面するであろう問題の前兆として、ジョージア州選出の下院議員であるMarjorie Taylor Greene(マージョリー・テイラー・グリーン)氏がソーシャルメディア上で繰り広げた怒りの連鎖を挙げている。テイラー・グリーン氏は、QAnon(キューアノン)を支持したことで知られているが、議会におけるすべての委員会の役割から外され、マスクの必要性をホロコーストになぞらえる発言によって、一部の共和党員からも彼女の除名を求める声が上がった。

グリーン氏のような政治家は、突拍子もない主張や簡単に論破されてしまう陰謀論で、しばしば左派を刺激している。グリーン氏のようにネット上で左派を刺激する政治家は多くのエネルギーを消費しているが、それに対抗するエネルギーは、怒りに任せたリツイートの衝動を抑え、進歩的な政治メッセージを広めることに費やす方が良いと、グリーンバーグ氏は考えている。

「事実を確認するだけでは十分ではありませんし、反応するだけでも十分ではありません。なぜなら、基本的に私たちは、防御的な立場で活動しているからです」と、グリーンバーグ氏は語っている。

「私たちは、人々が本当に信じて受け入れることができるような、偽の情報や陰謀論から人々を守ることができるような、ポジティブなメッセージを積極的に広めていきたいと思っています」。

Indivisibleにとって、このプロジェクトは長期的な実験であり、ターゲット広告を超えた新しいタイプのオンライン草の根政治キャンペーンへの道を開く可能性がある。そしてそれは、ノイズの海の中でシグナルを高めるものになることが期待される。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Indivisibleジョー・バイデンソーシャルメディア民主党ファクトチェックアメリカ

画像クレジット:Stefani Reynolds/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Facebook Messenger担当副社長が転送回数制限とファクトチェックによる誤情報との闘いを語る

米国時間9月3日にFacebook Messengerは誤情報の拡散を防ぐためにメッセージの転送に関する新しいルールを発表した(Engadget US記事)。米国時間9月15日のTechCrunch Disrupt 2020でFacebook(フェイスブック)のMessenger担当副社長であるStan Chudnovsky(スタン・チュドノフスキー)氏は、Messengerプラットフォーム上での誤情報や有害コンテンツの拡散との闘いにおけるフェイスブックの役割、そしてMessengerはプライベートなプラットフォームであるべきで秘密のメッセージは暗号化されるが、このことと誤情報の拡散防止のバランスをどう考えているかを詳しく語った。

チュドノフスキー氏は、フェイスブックは友達や家族とリビングでプライベーな会話をしているかのように感じることを目指していると説明した。しかし同社は、デジタルツールや新しいメディアの台頭に伴いこうしたツールが悪用されるおそれが出てきていることをフェイスブックが認識する必要があるとも認めている。

「Messengerがプライベートなコミュニケーション手段であることは明らかだ。そして確実にプライベートなものにしたいと思っている。これは我々にとってきわめて優先順位が高いことだ」とチュドノフスキー氏は語り始めた。しかしユーザーが大量にメッセージを転送し始めると、Messengerはもはやプライベートな会話ではなくなる。1対多の情報共有ツールになるのだと同氏は説明する。

「そうなれば、公共放送のようになっていく」と同氏は言う。

フェイスブックは2019年にまずスリランカのMessengerユーザーに対しメッセージの転送に「抵抗感を持たせる」と発表(未訳記事)し、ユーザーはメッセージを一定回数しか共有できなくなった。その時点で、人またはグループを対象に転送は5回までと制限された。今はそのルールをMessengerプラットフォーム全体に拡大(Facebookリリース)し、人またはグループを対象に転送は5回までと制限している。

この新しい制限はスパム行為を止めるためだとチュドノフスキー氏は続ける。「特定の情報を何度も転送することはできない。このことは、特に現在の状況においては、誤情報の拡散を止めるのに本当に役立つと我々は考えている」。

さらに同氏は、Messengerはフェイスブックとつながっているため、フェイスブックに協力しているファクトチェッカーによって誤情報にフラグが立てられると、フェイスブックと同じように情報が不正確であるという警告をMessengerの会話に挿入することができ、ミスリーディング、あるいは有害なコンテンツを送信したユーザーに注意を与えると強調した。

「これはプライバシーの侵害にはまったくあたらない。すべて同じ大きなパイプラインを通るからだ」と同氏は指摘する。

ファクトチェックのプログラムについて詳しく説明しているフェイスブックのウェブサイトにはMessengerについての言及はなく、フェイスブックとInstagramにのみ言及されている。

リンクの共有を完全に止めることは検討しないとチュドノフスキー氏は述べた。

リンクの共有と転送について同氏は「これはインターネットの中核をなすものだと私は思う」と語る。「インターネットで情報交換をする機能(を完全に禁止すること)は、インターネット自体の目的を否定してしまう」。

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(翻訳:Kaori Koyama)