ライティングのプロに聞く、スタートアップのホームページのコンバージョン率を倍にする方法

編集部注:Nick Costelloe(ニック・コステロ)氏は、Demand Curveのコンテンツ責任者として、実用的なグロースマーケティングのインサイトを執筆している。

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私たちは、当社Demand Curve(デマンド・カーブ)と当社の代理店Bell Curve(ベル・カーブ)の仕事を通じて、ほぼすべての業界にわたり、スタートアップのために1000以上のウェブサイトのリライトを行ってきた。

これから紹介するコピーライティング戦術に従えば、サイト訪問者を顧客へと変えるコンバージョン率を倍にできるだろう。

アバブ・ザ・フォールド(Above the fold)のすべてを使って核心を伝える

ウェブサイトのトップページを開いて、スクロールせずに見ることができる画面領域を「アバブ・ザ・フォールド」、またはファーストビューという(紙媒体の新聞を考えてみよう。文字通りの折り目(フォールド)の上にあるものすべてが、その紙面で最も重要な情報である)。訪問者は、その画面領域に表示されるコンテンツを見て、スクロールして閲覧を続けるか、閲覧を終了するかを決める。

何をする会社なのか、自分の目的にかなう会社なのかどうかを、訪問者は数秒で判断しようとするということだ。

私たちは、スタートアップが犯しがちなある間違いに気づいた。それは、ファーストビューに表示されるコンテンツがおもしろくない、あるいはわかりにくいことだ。この間違いは多くの場合、マーケティング担当者がファーストビューにコンテンツを詰め込み過ぎることが原因である。

実のところ、ウェブサイトに掲載されている情報のほとんどは新しい訪問者とは無関係である。だからこそ、ファーストビューでは、新しい訪問者が抱える特定の問題を解決するためにその企業がどのように役立つかを説明すべきだ。

例えば、技術系ブログの最新記事を投稿したことをファーストビューで宣伝しても、その企業が何をしているかを知らない訪問者にとっては何の役にも立たない。

訪問者をさらに混乱させているのが、多くの企業がトップページに表示している、項目の多いナビゲーションバーだ。このナビゲーションバーを使えば、理論上は、ウェブサイト内の任意のページに簡単にアクセスできるようになるが、実際のところ、訪問者はナビゲーションバー内の項目を選ぶのに疲れてしまい、コンバージョン率も低下する。

その企業が何をしているのか、訪問者の目的にかなう企業なのか、という疑問に対して直接的に答えるコンテンツのみをファーストビューに表示し、それ以外はファーストビューから削除すべきだ。

ホームページのコンバージョン率を上げるには次の3つの方法がある。

  1. 「刺さる」ヘッダーを作る
  2. サブヘッダーを使ってヘッダーを補足する
  3. 意図を持ってデザインする

この記事では、上記の3つの分野を改善する戦術について取り上げる。

集団ではなく個人に訴求するヘッダーを書く

ヘッダーはウェブサイト上で最も大きなテキストだ。10ワード以内(推奨する最長の単語数。ただし、これは英語の場合)で、次の3つを達成する必要がある。

1.顧客が貴社の商品からどのように価値を得られるかを明らかにする。

これは最も重要な価値提案である。貴社の商品からどのように価値を得られるかを10ワード以内で説明できなければ、訪問者の注意を長く引き付けておくのは難しいだろう。

ここでは、貴社の主要な価値提案を明らかにする方法を説明する。

  • 貴社の商品を入手できないときに使用される質の悪い代替品にはどのようなものがあるか。
  • 貴社の商品が質の悪い代替品より優れている点は何か。
  • 最後のステップを行動ステートメントとして言い換えると、それが価値提案になる。

Airbnb(エアビーアンドビー)を例として考えてみよう。

  • 質の悪い代替品は、おもしろみのないホテルに閉じ込められ、本物の文化を体験できないことである。
  • Airbnbのサービスが質の悪い代替品よりも優れている点は、地元住民の家に滞在できる点である。
  • 2つ目の点を行動ステートメントとして言い換えると「初めての街での体験を、まるで住んでいるかのように楽しめる」という価値提案が得られる。

以下に、有名なスタートアップの例をいくつか紹介する。

画像クレジット:Demand Curve

2. 訪問者に読み続けてもらうための魅力的な仕掛けを組み込む

貴社がどんな会社かを訪問者に伝えられたらまずはひと安心だが、次は、貴社の商品に対してワクワクさせる必要がある。

多くのスタートアップは、ウェブサイトのコピーのせいで大きなチャンスを逃がしている。そのコピーが行動指向型ではないからだ。顧客が24時間いつでも買い物ができる世界では、訪問者が今すぐ行動を起こさなければならない緊急性はほとんどない。

フック(仕掛け)を組み込むことによって、訪問者が最初の訪問時に買い物をする可能性が高まる。

仕掛けを組み込むには次の2つの方法がある。

  • 大胆に宣言する:顧客が「へー。こんなことができるなんて知らなかった」と考えるように、極めて具体的な内容にする。

画像クレジット:Demand Curve

  • よくある反対意見に答える:訪問者がすでに考えている可能性の高い疑問や反論に答える。反論にすぐに対処するのは意外に感じるかもしれない。しかし貴社の弱点に注意を向けることによって、訪問者は貴社ブランドへの信頼感を高めるだろう。直販チームがいないため、コピーを駆使してできるだけ多くの疑問に対処する必要がある。

以下は、最も大きい反論に前もって対応している有名スタートアップの価値提案の例である。

画像クレジット:Demand Curve

3. 想定する顧客ペルソナに直接訴える

ヘッダーのメッセージで訪問者の心をとらえるには、顧客ペルソナに直接訴えるように価値提案を書き直す必要がある。

そのためにまず、上位2~3の顧客ペルソナをリストアップする。そして、商品の中でそのペルソナが最も重視する部分を取り上げるようなヘッダーに作り直す。業界用語ではなく、想定した顧客ペルソナが普段使う言葉で書くことが重要だ。顧客が貴社の商品のどこを気に入っているかをウェブサイトで示すには、1対1のインタビューを掲載するか、顧客の成功事例を簡潔に紹介するのが最も効果的だろう。

想定する顧客ペルソナに直接訴えるヘッダーを作成した後は、どのヘッダーがコンバージョン率を上げるかを判断するA/Bテストを実施したり、各ヘッダーを使用してカスタムのランディングページを作成し、さまざまなソースからのトラフィックを特定のページに誘導したりできる。

例えば、ゲストのブログ投稿に貴社のウェブサイトへのリンクを追加する場合、最も関連性の高いヘッダーが表示されるページにその閲覧者を誘導する。

以下は、同じスタートアップのために書かれた複数の価値提案の例である。

画像クレジット:Demand Curve

サブヘッダーを使用してヘッダーに書かれた内容の実現方法を説明する

あなたの時間の約50%をヘッダーの作成に、25%をサブヘッダーの作成に費やして欲しい。ヘッダーがおもしろくなければ、訪問者はわざわざサブヘッダーを読むことはないからだ。

サブヘッダーは次の2つのことを詳しく説明するために使用する。

  1. 貴社の商品の機能に関する正確な説明
  2. ヘッダーに記載した大胆な宣言の根拠となる機能・特徴

上位2~3つの機能・特徴を利用して、ヘッダーに書かれた内容を実現する方法を説明できる。

例えば、Airbnbのヘッダー「地元体験型の休暇をお楽しみください。最低滞在日数はありません」について考えてみよう。

この文の根拠を示すには「地元体験型の休暇」と「最低滞在日数なし」をどのように可能にするかを説明する必要がある。

サブヘッダーには「お住まいの地域にある何千もの短期賃貸物件を扱うオンラインマーケットプレイスです」などと書くことができる。

サブヘッダーやヘッダーには業界用語や技術用語を使用せず、小学校5年生の読者でも理解できる言葉を使用する。文章は短くすること。また、長い段落は読者の勢いをそいでしまう。

以下に、サブヘッダーを使用してヘッダーを説明している例をいくつか紹介する。

画像クレジット:Demand Curve

親しみやすく期待通りに機能するホームページを作る

高いコンバージョン率を持つホームページを作成する際に検討すべき最後の点はデザインだ。多くのハイテクスタートアップは、その独創性を見せつけるためにウェブサイトを利用している。

私たちの経験から言わせてもらえば、ウェブサイトは独創性を発揮する場所ではない。

ウェブサイトのデザインは独創的であるべきではない。独創的であるべきなのは商品である。ウェブサイトは商品の独創性を伝えるための一般的な媒体でしかないのだ。

機能性

他のウェブサイトでも広く利用されている使い慣れたボタンとナビゲーションを使用すると、訪問者がウェブサイトの機能を覚える手間が省ける。例えば、私たちはページの左上に「ホーム」ボタンがあるものだと思っている。右下に同じボタンを配置して独自性を出そうとすると、混乱が生まれ、おそらく顧客を失うことになるだろう。うまく機能しているものに忠実であるべきだ。

画像

ホームページに画像を追加するときは、次の目的を検討しよう。

  • 実際に動いている商品を見せることによって、不安要素を取り除く。GIFやループ動画は、スペースを取らずに商品の仕組みを示す優れた方法である。

画像クレジット:Judy

  • 物理的な商品を販売する場合は、画像を使って、素材や生地のさまざまな使用事例とクローズアップを示す。これにより訪問者は商品の品質を評価し、商品が自分たちにふさわしいかどうかを検証できる。

画像クレジット:Allbirds

行動喚起ボタン

行動喚起ボタン(CTA)は、ウェブページの訪問者をアクティブ顧客に変換する場所である。したがってCTAは、ヘッダーコピーの中に組み込んだ仕掛けの延長線上に配置しなければならない。

CTAボタンのコピーは、行動に焦点を置き、クリックしたら何が起きるかを訪問者に伝えるものにする。

以下に紹介するCTAボタンは、ヘッダーコピーからストーリーが続いているため違和感がない。

画像クレジット:Demand Curve

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画像クレジット:Anna_leni / Getty Images

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(文:Nick Costelloe、翻訳:Dragonfly)

スイスの大学が円周率計算の世界新記録62.8兆桁達成と報告、AMD Epyc 7542×2・1TBメモリー・16TB HDD×38など利用

スイスの大学が円周率計算の世界新記録62.8兆桁達成と報告、AMD Epyc 7542×2・1TBメモリー・16TB HDD×38など利用

Olivier Le Moal via Getty Images

スイス・グラウビュンデン応用科学大学の研究チームが、円周率計算の世界記録に挑戦し、これまでの記録である50兆桁を12.8兆桁更新する、62.8兆桁まで計算したと主張しています。

50兆桁というこれまでの記録は2020年に米国のティモシー・マリカン氏が更新したもので、その計算時間は303日もかかりました。これに対し62.8兆桁まで計算した今回の記録はもしかしたら1年超えか…とおもいきや、意外にも108日と9時間ということなので、ほぼ1/3に短縮されています。

ではその計算を行った機材はと言えば、2.9GHz(最大3.4GHz)の32コアAMD Epyc 7542を2つ搭載し、1TB RAM、ディスクアレイとして16TB HDDを38台搭載したマシンとのこと。特徴的なのは、38台あるHDDのうち34台はメモリスワップデータ格納用に使用されているところ。これはメモリーが非常に高価でであるためコストダウン策として構成されています。またSSDではなくHDDを使用している理由としては、膨大な回数の計算を繰り返して行い、データの上書きを繰り返すことを考慮した結果とのことです。なお、OSはSSDにインストールされたUbuntu 20.04で、円周率計算には「y-Cruncher」と呼ばれるソフトウェアを使用しました。

ちなみに、62.8兆桁まで計算されたという円周率ですが、チームはまだギネスに正式に記録として認められていないとして、その最後の10桁が「7817924264」だったとだけ述べています。どうやって確認するのかはわかりませんが、ギネスがその数値を正しいと認め、記録として認定すれば、62.8兆桁すべてを公表するとしています。

(Source:FH Graubünden。Via The RegisterEngadget日本版より転載)

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タグ:Ubuntu(製品・サービス)AMD(企業)AMD EPYC(製品)グラウビュンデン応用科学大学 / FHGR(組織)数学(用語)Linux(製品・サービス)

「オルタナティブデータ」とは何か?KDDIらデータ分析のキーパーソンが語る金融業界における位置情報活用

金融業界ではこれまで、財務情報や経済統計といったデータを元に経済分析を行ってきた。そして現在、位置情報やクレジットカード情報といったオルタナティブデータを活用する動きも出てきている。オルタナティブデータの可能性はどこにあるだろうか。クロスロケーションズ代表取締役小尾一介氏、ナウキャスト代表取締役CEO辻中仁士氏、KDDIパーソナル事業本部サービス統括本部データマネジメント部データ戦略Gグループリーダー杉本将之氏、KDDIパーソナル事業本部サービス統括本部データマネジメント部データ戦略G課長補佐瀧本祐介氏が、データ活用場面の効果と課題、国内のオルタナティブデータの市場と今後の展開についてディスカッションを行った。モデレーターは技研商事インターナショナル執行役員マーケティング部部長市川史祥氏。

本記事は位置情報DXカンファレンス 2021July中のセッションを編集・再構成したものとなる。

オルタナティブデータとは?

オルタナティブデータとは、位置情報、決済情報、POSデータ、クレジットカードデータ、ニューステキスト、衛生画像など、多様なデータを指す。

ビッグデータを活用したデータ分析サービスを提供するナウキャストの辻中氏は「オルタナティブデータは多様です。だからこそ、お客様からの要望は『この種類のデータが欲しい』という形ではなく、『こういうことを知りたい』という形で出てきます。その要望に合わせて提供するデータを特定することが、現状のオルタナティブデータ活用の1つの形です」と話す。

オルタナティブデータの活用例として、辻中氏は「高齢者のコロナワクチン接種によって消費が回復したのか?」という問いを提示した。

辻中氏が使用したクレジットカードの決済データによると、高齢者を中心に百貨店、アパレルの消費が回復している。しかし、これには注意点がある。コロナワクチン接種の状況、進捗には地域差があり「高齢者を中心に百貨店、アパレルの消費が回復している」と決済データから読み取ることができても、それだけではコロナワクチンの接種が回復に影響しているのかどうか結論を出すことができないのだ。この場合、位置情報を組み合わせることで、より精度の高い結論を出すことができる。

ナウキャストでは、KDDIが提供する位置情報データを分析した。そこからわかったのは、東京駅、銀座駅、梅田駅を比較すると、60代以上の人の外出がその他世代よりも多く、特に梅田駅でその傾向が強いことだった。

辻中氏は「これはおそらく5月後半まで大阪エリアでコロナウイルスの感染者が多かったものの、6月以降感染が落ち着き、『外に出よう』という動きが他のエリアより大きく出たと考えることができます。こうした分析はクレジットカードの決済情報や、他のオルタナティブデータではなかなかできません。この場合は位置情報が重要だったわけです」と語った。

オルタナティブデータの具体的な使い方

ここモデレーターの市川氏は「オルタナティブデータ活用のその他の具体的ユースケースはありますでしょうか?」と質問した。

小尾氏は、自身が所属するクロスロケーションズがニッセイ基礎研究所と共同で開発した「オフィス出社率指数」を例に挙げた。これは、位置情報のAI解析データを使って開発したもので、東京のオフィスエリアをいくつかに分け、それぞれのエリアの出社率を分析するものだ。オフィスワーカーの出社状況を把握することで、オフィスの賃貸やオフィス建設に関わる業種の企業に有用なデータを得ることができる。また、オフィスワーカーをターゲットにした飲食業やコンビニ業界も活用できる可能性がある。

小尾氏はもう1例挙げた。あるヘッジファンドがクロスロケーションズが提供するLocation AI Platformを導入して2万拠点以上の上場企業の店舗や工場、オフィスなどを登録し、稼働や売り上げの状況を推測したのだ。

「今後は天気や決済情報などと掛け合わせて検証することで有益な情報が得られるだろうと考えております」と小尾氏は語った。

KDDIの杉本氏は「オルタナティブデータの活用と言っても、クライアントのニーズはさまざまです。クライアントに依頼された種類のデータを提供し、クライアント自身がデータのメンテナンスを行う場合もありますが、それもそれでクライアントにとっては負担になることもあります。また、データを扱う知見がクライアントにない場合もあります。『分析の結果だけ知りたい』というニーズもあります。クライアントに合わせて情報を提供することが重要ですね」という。

同じくKDDIの瀧本氏も「海外のヘッジファンドなどで『自社でデータ加工できるので、生データをください』と言われることもありますし、オルタナティブデータ活用というと、このイメージが強いと思います。ですが、そうでないお客様もいらっしゃいます。実はマーケットのボリュームゾーンにいらっしゃるお客様は加工済みのデータを必要としています。『どう加工するのか』は非常に重要なことです。この加工プロセスには匿名処理も含まれます。市場の予測精度を落とさず統計化することが肝要ですね」と話した。

大切なのは「データの組み合わせ」

市川氏は次に「オルタナティブデータにおける位置情報の課題は何でしょうか?」と質問した。

辻中氏は「やはりデータの組み合わせですね。例えば、百貨店に人が集まっていても、それが売り上げに繋がっているとは限りません。ウィンドウショッピングをしにきた人がたくさんいるだけかもしれません。これはクレジットカードの決済データを見れば答えがわかるでしょう。また、POSデータを見ると、来場者がアパレルを買ったのか、口紅を買ったのかが見えてきます。1つのデータで答を出そうとすることには無理があります。同じ事象でも、データによって見えてくるものが異なるので、組み合わせが重要ですね」と回答。

杉本氏は「私も同感です。例えば、位置情報をみて、ある工場の人流が増加したことがわかったとします。景気が良くて稼働が増え、人が増えたのかもしれませんが、機械化が遅れているから人を増やしている可能性もあります。逆に人流が減っている場合、稼働率が下がって人が減っているのか、機械化が進んで人手が減っているのかまではわかりません。同じ結果でも、意味や原因がまったく異なることがあり得ます。なので、データを活用する人自身のデータを組み合わせて読み解く力が重要です」という。

小尾氏は「データの組み合わせは重要ですが、それはつまりデータを持っている他の企業との協業も重要だということです。例えば、位置データを使ってある商圏を分析した時、西からは人が来るけど東からは来ないことがわかった。ですが、『それはなぜか』を分析するには、位置情報だけでは十分ではありません。自分が持っていないデータを持っている企業との連携も重要です」と語った。

辻中氏は「次の問いはデータをどう組み合わせれば良い分析ができるのか」だという。その鍵は2つあるという。

1つは対象の経済活動に関するドメイン知識だ。例えば自動車の生産は労働集約型であり、自動車の生産を増やす場合には人員の1日の交代回数を増やすことになる。そのため、自動車工場の人流が増えている場合は自動車の生産が増えているとみなせる。しかし、化学産業や鉄鋼、コンビナートのようなところでは機械化・装置化が進んでいるため、生産量の増減と人員の増減の関連性が薄い。

「こうなってくると、位置情報をどう使うのか、どんなデータを組み合わせるのかというコンテクストが大きく変わってきます。なので、ドメイン知識が重要になります」と辻中氏。

2つ目に同氏は「データの癖の理解の重要性」を挙げた。例えば携帯電話の基地局ベースデータは粒度が荒いがデータそのものの数が多い。一方GPSベースデータは粒度が細かいがデータそのものの数があまり多く取れない。さらに、GoogleやAppleのプライバシーポリシーの変更の影響も受けやすい。さらに、デパートの中での人の位置を考えた場合、3Dのデータがなければその人が地上にいるのか、地下にいるのか、高い階層にいるのかもわからない。

「こうしたデータ間のインタラクションを考えた時、当社のようなユーザーとデータプロバイダーの間にいる存在が果たす役割が重要になってくるのではないかと思います」と辻中氏今後の位置情報関連企業の重要性を語った。

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タグ:オルタナティブデータ位置情報金融

キャンピングカーを拠点に旅をしながら暮らす新たなカルチャー「バンライフ」を支えるCarstay

キャンピングカーなどを拠点に旅や生活をするだけでなく、クルマをDIYして自己表現のツールにするなど、新たな文化として注目を集める「バンライフ」。バンライフの文化を広め、市場を開拓しようとしているのが、バンライフのプラットフォーム事業を展開するCarstayだ。

「難易度は高い挑戦ですが、バンライフが当たり前になった世の中の方が豊な生活を送ることができると信じています」とCarstayの宮下晃樹代表は意気込む。

宮下氏はロシア出身で、米国留学の経験があり、慶応義塾大学経済学部を卒業。20歳で公認会計士試験に合格し、外資系企業に就職するが2016年に退社・独立して、2018年6月にCarstayを設立した。

Carstayは現在「バンシェア」と「カーステイ」の2つの軸で事業を行っている。バンシェアはバンライフを楽しみたい個人と、キャンピングカーなどを保有するオーナー間で、クルマを共用できるカーシェアサービスだ。カーステイは空き駐車場などのオーナーと、キャンピングカーなどで旅をする個人とをマッチングするシェアサービスとなる。それぞれウェブサイトかアプリ(iOSAndroid)で利用可能だ。

シニア向けから転換、若者に注目されるバンライフ

近年、バンライフ市場は拡大し、需要にも変化が起きている。「キャンピングカーの販売高は日本だけでなく、世界でも年間10%ほどで伸びています。ここ3、4年でInstagramにおける『#vanlife』の投稿が1000万件を超えるなど、もともとはシニア向けだったものが、より若者にフューチャーされるようになり、人気が出ているのです」と宮下氏は説明する。

実際にバンシェアの利用状況をみると、約95%がキャンピングカーを運転することが初めてで、20~30代の女性を含むグループが多いという。2021年8月の夏休み期間中、コロナ禍であっても密を避けることができ、手ぶらでキャンピングカーに乗って地方に旅ができると、予約数は前年比10倍増で推移し、売上高は過去最高となっているという。

また、特に注目を集めているのが、サウナテント付きのキャンピングカーだ。キャンピングカー利用のオプションとしてテントサウナを貸し出してみると、バンシェアにおける2021年6月の予約獲得数1位となった。「いわゆるサウナーが外でサウナをすることが流行っているようです。そもそもキャンピングカーの中に何が積んであるかといえば、オーナーさんの趣味のグッズです。それらも貸し出しをします。クルマとしての移動手段、滞在方法から、アクティビティまですべてトータルでユーザーが楽しめるよう工夫しているのです」と宮下氏。

平均的な料金は、バンシェアとカーステイを両方予約すると、1泊2日で5万円ほどとなる。宮下氏は「6人乗りのキャンピングカーであれば、キャンプなどで食材などを購入しても、1人当たり大体1万円から少し足が出る程度で過ごせるイメージです」と述べた。

また、バンシェアはキャンピングカーのオーナー側にもメリットがある。キャンピングカーを手に入れても、年間340~350日ほどは乗らず、遊休率が高い資産となっているという。オーナーは乗らないときに貸し出すことで、副収入としてはもちろん、キャンピングカーの維持費節約につながるのだ。

さらに旅好きが高じてキャンピングカーを購入するオーナーも多く「自慢のキャンピングカーをいろいろな人に魅力を味わって欲しい」「穴場のキャンプサイトまでキャンピングカーで旅をしたら絶対に楽しい」と、次世代に魅力を伝えられると積極的にサービスに登録しているという。

バンシェアの登録台数は現在160台ほどだが、オーナーとして登録している人は500人ほどいる。宮下氏は「まだ需要は流動的なので、すべてのクルマを登録してもらっても、実際に稼働するかはハッキリと言えません。なので、いま登録してもらっているクルマの稼働率が一定以上になれば、その都度登録する台数を増やしていく計画です。22年5月までには500台に増やしていきたい。また、カーステイの車中泊スポットは現在300カ所ほどですが、22年5月までには全国1000カ所まで増やしていく考えです」と説明した。

また、宮下氏は「我われはバンライフ市場の入り口を抑えています。初めて乗る人がバンライフそのものに興味を持ち、キャンピングカーを購入することも出てくるはずです。そこからバンシェアにオーナーとして登録し、どんどん稼いで欲しい。このライフタイムバリューを取りきることが重要になります」と話した。

キャンピングカーをカスタマイズする新たなプラットフォームも

「今後、バンライフを追求していくうえで、車内でいかに快適に滞在できるのかは、私たちの究極的な課題だと認識しています。一方で、この部分は自動車メーカーに依存する部分も多いので、私たちはプラスアルファの部分を担っていきたいと考えています」と宮下氏。

宮下氏は続けてこう語る。「住宅にはオーダーメイドやデザイナーズ物件など、ユーザーの好みを選ぶことができます。しかし、キャンピングカーはそこまでに至っていません。市場を眺めても、似ているキャンピングカーが売れている状況なのです。だからこそ、誰もが自分好みのキャンピングカーにカスタマイズできるようなプラットフォーム作りに挑戦したい」。

すでにCarstayは自動車会社との連携を進めているという。「キャンピングカー業界はDXされてきませんでした。板金屋など、クルマの2、3次市場のプライヤーが支えてきた市場ではありますが、デジタル化されてない問題が多いことも事実です。ここを我われがIT会社としてやり切れば、新たなプラットフォーム作りも夢ではありません。2025年ほどには完成させたいです」と宮下氏は展望を語った。

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カテゴリー:その他
タグ:Carstay日本キャンプカーシェアリング

お香と抹茶のサブスクD2Cブランド「S.E.N」が開始、日本香堂と共同開発した香木セットなど毎月送付

お香と抹茶のサブスクD2Cブランド「S.E.N」が開始、日本香堂と共同開発した香木セットなど毎月送付

「自分と向き合う時間と空間をつくる」ことを目指すSENは8月16日、リラックスに特化したお香と抹茶のライフスタイル提案型D2Cブランド「S.E.N」(エス・イー・エヌ)をスタートしたと発表。オンラインストアにおいて、日本香堂と共同開発したお香、抹茶は創業270年の京都の老舗とコラボした抹茶などの販売を開始した。

ラインナップ(抜粋)

  • The OKOH Modern:直販価格2480円(税込)。容量18本(1種類9本×2種類)。月替わりで2種類のお香を毎月送付
  • The OKOH Authentic:直販価格3280円(税込)。容量21本(1種類7本×3種類)。白檀・沈香・伽羅の3種類の高級お香を桐箱に入れて毎月送付
  • The MATCHA Modern:直販価格2480円(税込)。月替わりで2種類の「フレーバー抹茶」が届く定期便。1751年創業の老舗カネ七畠山製茶、京都宇治のおくみどり、やぶきた抹茶を使用。本格的な京都の宇治抹茶にフルーツやチョコなどの香りを付加した新感覚の抹茶
  • The MATCHA Authentic:価格3980円(税込)。パリで金賞を受賞した最高級抹茶(ごこう・濃茶)の定期便。1751年創業の京都宇治茶の老舗カネ七畠山製茶のオーガニック・有機抹茶を使用。上品な甘さの讃岐和三盆をセットにして送付
  • The OTEMAE:価格1万4800円(税込)。有田焼の工房と共同開発したS.E.Nオリジナルお茶碗、1751年に創業した京都宇治・老舗カネ七畠山製茶の有機抹茶(20g)、讃岐和三盆(10個)、お盆、茶筅マドラー、茶杓のセット製品

「The OKOH Authentic」「The OKOH Modern」

SENと日本香堂は、「The OKOH Authentic」「The OKOH Modern」のお香2製品を共同開発。The OKOH Authenticは、高級香木の白檀(ビャクダン)、沈香(ジンコウ)、伽羅(キャラ)の3種類のお香を組み合わせた、リラックスに特化したプロダクトという。同商品に同封している、呼吸を整えるためのマインドフルネスコンテンツと同じ時間(約12分)で消えるよう設計したそうだ。

お香と抹茶のサブスクD2Cブランド「S.E.N」が開始、日本香堂と共同開発した香木セットなど毎月送付

The OKOH Modernは、より現代的な香りが楽しめる製品。牡丹、日本茶、梅、松、金木犀としゃぼん玉など、現代人のライフスタイルにもなじみやすいスタイリッシュな香りを楽しめるとしている。The OKOH Authenticと同様、同封のマインドフルネスコンテンツとあわせて約12分間で消えるようにデザインした。

お香と抹茶のサブスクD2Cブランド「S.E.N」が開始、日本香堂と共同開発した香木セットなど毎月送付

「The MATCHA Authentic」「The MATCHA Modern」

抹茶の商品開発では、創業1751年の京都の老舗抹茶店とコラボし、「The MATCHA Authentic」「The MATCHA Modern」の2製品を展開。The MATCHA Authenticは、2019年フランス・パリで開催された日本茶コンクール「ジャパニーズティー・セレクション・パリ」の玉露・抹茶部門で金賞を受賞した高級抹茶を採用。ストレス軽減の効果があるテアニンとアルギニンの含有量が多く、仕事の合間のリラックスに最適としている。

お香と抹茶のサブスクD2Cブランド「S.E.N」が開始、日本香堂と共同開発した香木セットなど毎月送付

The MATCHA Modernは、気軽に、日常的に抹茶を楽しめる、本格的な京都の宇治抹茶にフルーツやチョコなどの香りを付加した新感覚のフレーバー抹茶の商品シリーズ。京都宇治のおくみどり、やぶきた抹茶を仕様しており、しっかりとした抹茶の味わいの中に、ほのかに香るフレーバーを楽しめるという。お香と抹茶のサブスクD2Cブランド「S.E.N」が開始、日本香堂と共同開発した香木セットなど毎月送付

The OTEMAE

The OTEMAEは、有田焼の工房と共同開発したS.E.Nオリジナルお茶碗をはじめとする抹茶の入門セット。1751年に創業した京都宇治・老舗カネ七畠山製茶の有機抹茶(20g)、讃岐和三盆(10個)、お盆、茶筅マドラー、茶杓を同梱している。お香と抹茶のサブスクD2Cブランド「S.E.N」が開始、日本香堂と共同開発した香木セットなど毎月送付

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【コラム】シリコンバレーは軍事業務に対する偏見と戦うべきだ

編集部注:本稿の執筆者Phil Wagner(フィル・ワグナー)博士はSparta Scienceのファウンダー。南カリフォルニア大学で医学学位を取得した後、同氏はスポーツや軍隊、労働衛生の実績と傷害予防における根拠に基づく方法の欠如に不満を感じ、Sparta Scienceを設立する動機となった。

ーーー

職場での政治的議論は、2000年代初めに私がLAC+USC Medical Center(ロサンゼルス郡+南カリフォルニア大学医療センター)で訓練を受けていたころには推奨されていなかった。

13階の囚人病棟で、我々は職務上の義務として飲酒運転犯や窃盗犯を他の患者と同じように治療し、彼らの立場に関する刑事司法政策に関する意見を述べた。

その意味で医療が特別というわけではない。我々の生活は法律家、軍人、その他の公共サービス提供者が、個人の意見よりも社会的義務を優先することによっていっそう向上する。

テック企業はしばしば同様の社会的に重要な役割を果たすことを目指すが、職務上の義務と個人の意見の区別を会得する者は稀だ。私はテック企業のファウンダーとして、アマチュアから大学、プロにいたるスポーツや労働衛生、さらには増え続ける軍事機構の人員など幅広い組織にサービスを提供するテック企業をこの目で見てきた。

前政権下では、軍の仕事をすることは世界を良くする力になるという会社のミッションと一致しているのか、という疑問を何人かの同僚が投げかけた。過去数年間、軍事業務に対するこの偏見はいくつかのシリコンバレー大手企業を混乱に陥れ、時には契約の解除や不更新の誓約や米軍に関わる作業に対する明白な抑制効果を引き起こした。

テクノロジー企業と軍との協力関係は新しくないが、今ほど多くの議論を呼んだのは稀である。こうした協力は20世紀を通じて標準的な慣行であり、そこから生まれたマイクロ波レーダーやGPS、ARPANETなどの軍事技術は、現代のつながった世界の構成要素として平時との二役をこなしている。

軍事契約はシリコンバレーにおいて、伝統的に国の軍事的優位と企業の収益というウィンウィンの関係と見られてきた。連邦政府の財源に支えられた壮大で実現困難な計画の数々は、プロダクト志向の技術者にとって魅力的選択肢の1つでもある。

この関係が過去数年間崩れつつあり、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)をはじめとする企業の従業員たちは、前政権の政策に対する強い嫌悪のためにあらゆる政府プロジェクトと距離を起こうとしている。しかし、ワシントンに新しい指導者を迎えた今、企業とテックワーカーは、軍事業務に対するその認識が永久に植え付けられるものなのか、それとも変化を続ける関係の中の1章に限定されるものなのかを決める必要がある。

先へ進む前に、従業員と軍部間の緊張関係に関する前政権の誤認識を修正しておくべきだろう。最近ある研究が、反軍隊思想はテックワーカーの普遍的特質であるという概念に疑問を投げかけた。

2019年終わりから2020年初頭にかけて実施された調査でジョージタウン大学のセキュリティ新興テクノロジーセンターは、AI専門家の中でペンタゴンとの仕事を否定的に見ているのは1/4以下であり、78%は肯定的あるいは中立的であるという結果を得た。

国防総省との業務機会を追求する用意のある企業は、商業顧客と政府顧客との違いと優位性をよく考えるべきだ。

政府の契約は一般的に、多大な金額と低い利益幅と長い業務期間が特徴だ。これは、売上に基づいて評価されるVC支援企業にアピールし、政府契約独特の構造は、利益は大きいが変動の大きいB2BおよびB2C市場の仕事にとって歓迎される補完要素だ。両極端を混ぜ合わせることで強力な全体が生まれるが、それは株式と債権のバランスを取る投資信託とあまり変わらない

多くのファウンダーが、国防総省(DOD)との契約を追求しないのは、軍事ビジネスに従事していると見られたくないからだ。私はSparta Science(スパルタ・サイエンス)でその一例に遭遇した。社員たちは政府のあらゆる政策の全面支持を受けた政府職員を支援する業務に参加した。

現実はもっと微妙だ。DODは5000億ドル(約54億6980万円)以上の年間予算と280万人の労働力を有する。戦闘に関わっている個人はそのごくわずかであり、組織は多数の管理者と専門家に支えられてそれぞれのミッションを遂行している。

DODでは常時1300万件契約が進行中であり、その分野は医療、アパレル、物流からソフトウェアライセンシングまで多岐にわたる。軍はまさしく米国の断面であり、そこで働く人々を支援することはシリコンバレーの伝統であり、公正なビジネス手法であり、正しい行動である。

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(文:Phil Wagner、翻訳:Nob Takahashi / facebook

体験型ストア「b8ta」が国内3店舗目を渋谷に11月オープン、試飲・試食も可能なカフェスペースにより食品カテゴリー拡充

体験型ストア「b8ta」が国内3店舗目を渋谷に11月オープン、試飲・試食も可能なカフェスペースにより食品カテゴリー拡充

b8ta Japan(b8ta、ベータ)は8月16日、国内3店舗目となる「b8ta Tokyo – Shibuya」を発表した。2021年11月中に、渋谷区にオープンする予定。住所は、〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1丁目14番11号 小林ビル1階。営業時間は11:00~19:30。定休日は不定休。

渋谷駅から徒歩約1分という好立地にオープンする新店舗のコンセプトは、「より進化した体験型ストアを見据えた実証実験店舗b8ta 1.5」。b8ta Japan代表の北川卓司氏によると、実店舗での体験価値向上のために今どのような機能や体験が実店舗で求められているのかを探るという。b8taのビジネスモデルであるRaaS(Retail as a Service)を進化させるため、3つの新しい取り組みを実施する。

3つの新しい取り組み

  • 新たにカフェスペースを設置し、食品カテゴリーの体験拡充:カフェスペースではコーヒーなどの飲み物を提供。既存店舗では取り扱いが少なかった食品カテゴリーを充実させ、試飲・試食など五感に訴える体験を充実させる
  • 店内での体験をリッチにするアプを開発:より手軽に店内で商品・サービスの体験や発見できるようにする。帰宅後も店内で体験した商品情報を覚えておけるアプリを新たに開発し、提供
  • フレキシブルなイベントスペース:従来の店舗では店内のレイアウトを自由に変更することが難しかったが、可動式什器を導入することで、大型商品設置やイベントなどの様々なニーズに沿ったレイアウトを可能にする

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それぞれの犬に合わせた新鮮なドッグフードを配達するロンドンのButternut Box

ロンドンで新鮮なドッグフードを提供しているサービスButternut Boxは、テクノロジーを利用したHelloFresh的なプラットフォームで、自社で調理したドッグフードを出前風に配達している。同社はこのほど、消費者向け企業を対象とするプライベートエクイティ企業のL Cattertonがリードするラウンドで5540万ドル(約61億1000万円)を調達した。これには、White Star CapitalやFive Seasons Ventures、そしてPassion Capitalが参加した。同社の初期のラウンドをTechCrunchは、2017年に報じたことがある。

2016年に設立されたButternut Boxは、独自の技術プラットフォームによって「パーソナライズされた食事の提供」を行う「人間の食事のような新鮮なドッグフード会社」を自称している。

L Catterton Europeのパートナーで同社のロンドン支社長であるJean-Philippe Barade(ジャン-フィリップ・バラード)氏は、次のようにコメントしている。「英国でブランドイメージと、ペットのオーナーたちのブランドへの信頼を築いてきたButternut Boxの、長年の努力には感銘を受けている。同社は今もその革新的なデジタルプラットフォームを活かして、成長市場であるペットフード市場のバーの高さを上げ続けている」。

ゴールドマン・サックス出身のKevin Glynn(ケビン・グリン)氏とDavid Nolan(デビッド・ノーラン)氏が率いる同社は、その独自のアルゴリズムにより、犬の年齢や体重、犬種、活動レベル、体調などに基づいて適正カロリーを計算し、それに基づいて日々の食餌の提供量を決めている。

また同社は、同社自身が独自の自然食ドッグフードを作っている。なぜなら、これまでの研究調査によると、自然食を食べた犬は工業生産された缶詰製品を食べていた犬よりも長寿だからだ。その寿命の差は3年と言われているが、犬の3年は長い。英国の犬のオーナーは年間およそ2億ポンド(約306億円)近くを動物病院に費やしているが、その大きな原因は過食と不健康なフードだと言われる。

しかしながら英国の自然食ドッグフード企業はButternut Boxの他にもLily’s KitchenやTails.com、Natural Instinctなどの競合企業が多く、すべてがその成長市場をめぐって競走している。

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タグ:ロンドンイギリスペットButternut Box資金調達

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

屋外広告でも進む位置情報の活用、広告業界はどうなっていく?

デジタルサイネージを利用した屋外広告全般を指す「DOOH(Digital out of Home)」。それが位置情報の活用によって進化しているという。最新のDOOHの動向はどうなっているのか?今後どう変わっていくのか?unerryでBeaconBank事業部ビジネスプロデューサーを努める一枝悟史氏、エムシードゥコーのマーケティング部マーケティングディレクターである渡仲容子氏、博報堂DYアウトドアデジタルプロデュース部兼屋外&エリアプロモーション部プラナーの​​秦雄治氏、データインサイトとヘキメンでデータサイエンティストを努める神谷啓太氏がパネルディスカッション行った。モデレーターは技研商事インターナショナル執行役員マーケティング部部長市川史祥氏。

本記事は位置情報DXカンファレンス 2021July中のセッションを編集・再構成したものとなる。

DOOHと位置情報、現状はどうなっている?

モデレーターの市川氏はまず「位置情報はどう活用されているのでしょうか?」と渡仲氏に質問した。

技研商事インターナショナル執行役員マーケティング部部長市川史祥氏

渡仲氏は「当社の場合、これまでは自社調査や公共データを活用することが中心でしたが、今では位置情報、地図情報を他のデータと組み合わせて使うようにしています」と話す。

例えば、デジタルパネルのプロファイリング。広告主が宇田川町のバス停に広告を出そうか、二子玉川の高島屋前のバス停に広告を出そうか迷っているとする。イメージだけで言えば、前者には20〜30代の若い層が多そうだ。また、後者には30〜40代の年収の高い層が多そうだ。位置情報を使えば、イメージだけに頼るのではなく、実際にどこで誰が広告を見ているのかというデータを含めて顧客に広告を出す場所を提案できる。

エムシードゥコーマーケティング部マーケティングディレクター渡仲容子氏

渡仲氏は「実際、デジタルパネル広告の分布を見てみると、交通量が多かったり、購買力の強い層がいたり、高所得世帯が多かったり、ショッピング客の多いプレミアムな地域ではデジタルパネルが多く設置されています。こうしたエリアのプロファイルは高頻度で変わるものではないので、国税調査や商業データをベースにしたGISを活用することが適していると言えます」と話す。

データを組み合わせれば多様な知見を得ることができる。ショッピングモールに対しては、位置情報を使って来場者の属性データを供給することができ、レジャー施設に対しては、居住地情報を使って来場者がどこから来たのかというデータを渡すことができる。トラフィックデータを活用すれば、広告の周辺の交通量を広告主に知らせたり、広告料金の根拠を示すのに役立つ。

渡仲氏は「いろいろなデータがあるからこそ、データを難しくしないで、お客様にわかりやすいように情報を伝えることが大切です」と強調した。

広告主に説明できなければ、価値を発揮できていない

秦氏は、ある商業施設で行ったPoC(概念検証)の中で発見した位置情報活用の課題を語った。

博報堂DYアウトドアデジタルプロデュース部兼屋外&エリアプロモーション部プラナー秦雄治氏

このPoCでは、広告媒体の接触状況と、広告主店舗への送客効果を調査した。広告媒体付近と送客先の店舗にセンサーを設置し、広告接触者の接触状況や属性などを4週間かけて計測、分析した。

このPoCの結果、この施設の客層などの特徴を数値で裏付けることができたという。また、送客効果も出ており、狙っていたターゲットの来店率が最も高いことも確認できたという。

しかし課題も3つ見つかった。1つ目は精度。取得したデータを見てみると、広告の前に5時間ほど滞在した人がいたのだ。おそらくこれは店員だが、こうした異常値を弾くロジックの必要性が見えてきた。2つ目は計測期間。このPoCでは4週間計測を行ったが、そこから得られた結果がこの4週間に限った特徴なのか、季節的な特徴なのか、通年の特徴なのかを断定することができなかった。定常的なセンシング機器の設置が望ましいということがわかった。3つ目がデータの解釈。PoCを通して気づきを得てインサイトを抽出できても、なぜそういった事象が起きているのかを広告主に説明できなければ、広告代理店の価値を発揮しきれていないことになる。

秦氏は「逆に言えば、これが説明できれば、広告代理店の価値をわかってもらえるということです。これは重要なポイントになりますね」と語った。

これからのOOHはリーチ時間も大切に

神谷氏は、建物の3Dデータを活用し、特定の建物の特定の壁面はどれくらいの人に見られているのかを分析しようとしている。

ヘキメンの神谷啓太氏

「壁面の大きさと角度のデータをメッシュ人口データなどの位置情報と組み合わせれば、どのくらいの範囲でその壁面が見られているのか、そしてその範囲に1日平均何人がいるのかなどを知ることができます」と神谷氏。

現状、こうした分析を屋外広告の分野で活用しようとしているが、太陽光パネルの設置の可能性や有効性を検討したり、SDGsで注目される壁面緑化の可能性と効果を検討することもできるという。

こうした分析で神谷氏が有用だと考えているのがPlateauだ。Plateauは国土交通省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトだ。

実際、神谷氏が所属するヘキメンはPlateauを用いて羽田未来開発と鹿島建設とともにPoCを行い、Haneda Innovation cityのどこに壁面広告を設置すると効果的なのかを分析した。

神谷氏は「こうした分析を行えば、時間帯別にどれだけの人が広告を見るのか、広告を見た人のセグメントはどうなっているのか、見た人たちはどこから来たのか、などを知ることができます」と話す。

こうしたデータは広告の価値、つまり広告の収益性や市場価値に直結している。

「非常に単純化した説明にはなりますが、広告の価値の軸には、何人が見ているのかという『リーチ人数』と、どれだけ長く見ているのかという『リーチ時間』の2つがあります。これまでのOOHはどちらかというと掲載場所や滞在人数や見通しなど、リーチ人数重視でした。しかし、デジタルマーケティングやテレビCM、YouTube広告では、『ちゃんと最後まで広告を見たのか』というリーチ時間がむしろ重要視されます。まだ方法はわからないのですが、広告を見る人の移動速度などを含めたリーチ時間を、今後はOOHの世界でも考慮しなければいけないでしょう」と神谷氏は語った。

広告主とメディアのギャップは恐れずに埋める

一枝氏は「当社unerryはデータ分析プラットフォームを提供しており、メディアと広告主両方の支援をしています。現在、両者がデータ活用をどう発展させるのかを活発に議論しています」と現状を語る。

unerryのBeaconBank事業部ビジネスプロデューサー一枝悟史氏

同氏によると、これまでメディアは広告主に媒体接触人数を提示して広告枠を売り切るモデルでビジネスを行っていた。しかし、今ではプロファイリングや効果分析ができるようになり、メディア自身がメディアの理解を深められるようになってきたという。一方で、広告主もOOHや交通広告の戦略が変わってきたという。

同氏は参考としてunerryがジェイアール東日本企画(以下、jeki)と進めた企画を紹介した。これは、電車の中の窓上のサイネージや、改札のステッカーに接触したユーザーにFacebookやInstagram、LINEで広告を配信するというものだ。

「この企画の狙いは、jekiが持つ窓上のサイネージや、改札のステッカーに接触し人にさらに広告をに接触してもらうという訴求です。デジタルを使ってOOHを拡張するような考え方です」と一枝氏。

これは広告のフリークエンシーを高めるという単純なアプローチではあるが、データ活用が進むまでには取れなかったアプローチでもある。

一枝氏は「この方法なら、SNSで接触した人たちの効果、行動、CPA、CPIも見えます。OOHからDOOHへの変革の参考になると思います」という。

しかし、同氏は広告のデジタル化に関し、問題も提起する。

「データの活用が進み、さまざまな広告の効果をトラックできるようになりましたが、広告運用自体はまだ大きく変わっていません。そこでどこまでデジタルに踏み込んでいくのか、悩む企業もあるでしょう。さらに、広告主が求めることと、メディアが提供することにギャップも出てきているかもしれません。そのギャップを恐れずに、埋めていこうとすることが今後の広告で重要になっていくでしょう」と同氏は語った。

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カテゴリー: その他
タグ:DOOH(Digital out of Home)デジタルサイネージ位置情報広告

インド最高裁がFutureとRelianceの3740億円の取引を停止する判決、アマゾンを支持

インドの最高裁判所は現地時間8月6日、Amazon(アマゾン)を支持し、Reliance Industries(リライアンス・インダストリーズ)へのFuture Group(フューチャー・グループ)売却を停止する判決を下した。これは、米国の電子商取引大手が海外の重要市場で大きな勝利を収めたことを意味するとともに、インドの大富豪Mukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏にとっては打撃となった。

関連記事:インド最大の小売Reliance Retailが2番手Future Groupの事業を3580億円で買収

インド最高裁は、シンガポールの仲裁裁判所が2020年下したインドの大手2社間の取引を停止させる判決がインドで強制力と法的拘束力をもつと述べた。

今回の裁判所の命令は、国内第2位の小売チェーンを運営し、資金に飢えているFuture Retailにとって、また1つ後退となった。

インド最大の小売チェーンであるReliance Retail(リライアンス・リテール)は1年前、Future Groupとの間で、同グループの小売・卸売事業および物流・倉庫事業を34億ドル(約3740億円)で買収することで合意したと発表していた。

まもなく事態は複雑になり始めた。2年前にFuture Groupのある部門に出資していたAmazonが、同グループの契約違反を訴え、シンガポールの仲裁人にインド企業間の取引停止を打診したのだ。

AmazonとFuture Retail(フューチャー・リテール)の契約上、AmazonにはFuture Retailの株式に関して優先購入権があったとAmazonは主張している。

これに対しインド企業2社は2020年、シンガポールの裁判所命令は南アジア市場では有効ではないと主張した。さらに、インドの監視機関であるインド競争委員会は、2020年、そのインド企業間の取引を承認した

関連記事:Amazonに新たな頭痛の種、インド政府がRelianceによる3580億円のFuture Group買収を承認

Reliance Industriesは当時、Future Retailとの取引はインドの法律に基づき完全に執行可能であり「遅滞なく」取引を完了させるつもりだと述べていた。

インドの400都市で1700の小売店を運営するFuture Retailの株価は8月6日の裁判所命令を受け6%下落し、Reliance Industries(Reliance Retailを経営するコングロマリット)は1.3%下落した。

Amazon、Walmart(ウォルマート)のFlipkart(フリップカート)、そしてインドで最も価値ある企業であるアンバニ氏のReliance Industriesは、インドの小売市場を支配すべく激しい戦いを繰り広げている。

インドの小売市場における電子商取引の比率は3~7%にすぎない。Reliance RetailはAmazonやFlipkartに対抗するために独自の電子商取引事業を立ち上げた。多くの業界アナリストは、報じられているAmazonとReliance Retailとの将来の提携が、Amazonがインドで将来的に成功するために重要だと考えている。

8年前にインドで活動を開始したAmazonは、これまでに65億ドル(約7150億円)以上をインドでのローカルビジネスに投資してきた。

2006年創業のReliance Retailは、インド国内の6500以上の市や町にある約1万2000の実店舗を通じて、(2021年初め時点で)毎週350万人以上の顧客に商品を提供している。

インドで最も裕福な男、ムケシュ・アンバニ氏が経営するこの小売チェーンは、2020年70億ドル(約7700億円)以上を調達した。また、アンバニ氏の別のベンチャー企業であるJio Platforms(ジオ・プラットフォームズ)は2020年、Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)を含む10社以上の著名な投資家から200億ドル(約2兆2000億円)以上を調達した。

カテゴリー:その他
タグ:インドFutureRelianceAmazon裁判

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

スティーブ・ジョブズ伝を著した元TIME編集長がイーロン・マスク氏の伝記を執筆中

Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏やBenjamin Franklin(ベンジャミン・フランクリン)、Leonardo da Vinci(レオナルド・ダ・ヴィンチ)などの人生を描いた伝記作家Walter Isaacson(ウォルター・アイザックソン)氏が、今度はElon Musk(イーロン・マスク)氏の人生とキャリアを記録することに取り組んでいる。Tesla(テスラ)のCEOは、米国時間8月5日のツイートでこのプロジェクトを発表した。

マスク氏は、アイザックソン氏が取材のため「これまでに数日間」自分とずっと一緒にいたと述べたが、その後、自叙伝をいつか出す可能性もまだあると付け加えた。この本がいつ発売されるのか、またこのプロジェクトがどれだけ進んでいるのかは不明だ。アイザックソン氏は、スティーブ・ジョブズ氏の伝記(タイトルはふさわしい「Steve Jobs / スティーブ・ジョブズ」)を2年以上かけて執筆し、同氏の仲間や同僚100人以上へのインタビューも行った。

マスク氏は何冊もの本の題材となってきたが、アイザックソン氏は同氏のストーリーをこれまでに書きつづってきた著者の中で、最も知名度の高い伝記作家だ。アイザックソン氏は現在テュレーン大学の教授を務めており、以前はAspen Institute(アスペン研究所)のCEOやCNNのCEOを務めていた。同氏は、2014年に開催されたTechCrunch Disruptのステージにも登場している。

マスク氏の人生とキャリアについての他の書籍には、同氏がインタビューに参加したAshlee Vance(アシュリー・バンス)氏による2015年の伝記「Elon Musk:Tesla, SpaceX, and the Quest for a Fantastic Future / イーロン・マスク 未来を創る男​​」、Ed Niedermeyer(エド・ニーダーメイヤー)氏の「Ludicrous:The Unvarnished Story of Tesla Motors(馬鹿げた話:テスラモーターズの真のストーリー)」、そして、2021年8月に発売されたTim Higgins(ティム・ヒギンズ)氏の「Power Play:Tesla, Elon Musk, and the Bet of the Century(パワープレー:テスラ、イーロン・マスク、世紀の賭け)」などがある。

マスク氏とヒギンズ氏は「Power Play」の中で、マスク氏とApple(アップル)のTim Cook(ティム・クック)CEOとの間で交わされた特に辛口のやりとりを記述した部分について、一時議論をしたことがある。ヒギンズ氏が著書の中で説明したこの会話は、2016年にクック氏がテスラの買収に興味を持ったとされることをめぐって交わされたもの。ヒギンズ氏によれば、マスク氏はクック氏に対し、興味はあるが、マスク氏がAppleのCEOに就任することが条件だと伝え、クック氏は「F—you(ふざけんな馬鹿野郎)」と答えたという。

マスク氏はツイートの中で、クック氏とは話したこともなければ、メールなど書面でやりとりしたこともないと主張した。これに対してヒギンズ氏は、この逸話は、当時のマスク氏の会話を聞いたという人たちが語ったものだと答えた。さらに同氏は、マスク氏にはこの逸話についてコメントする機会が何度も与えられたが「彼はそうしなかった」と付け加えた。

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タグ:イーロン・マスクTesla

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】働き方の未来、自分の仕事環境を持参せよ

編集部注:著者のMichael Biltz(マイケル・ビルツ)氏は、Accenture Technology Visionのマネージングディレクター。テクノロジーが私たちの仕事や生活にどのように影響するかに焦点を当てるために、企業の年間ビジョニングプロセスを主導している。

ーーー

世界は、史上かつてないほどの急激な仕事の変革を目の当たりにしたばかりだ。新型コロナウイルス(COVID-19)によって、企業は人びとを一斉に家に送り返し、いつものようなビジネスを維持するためにテクノロジーに頼ることを学んだ。在宅勤務は、かつては普通ではなく例外だったが、2019年には3億5000万人だった在宅勤務が、いまや世界中で推定11億人が日常業務をリモートで実行することを余儀なくされたために、今では経済活動の3分の2を担うようになっている

2021年版Accenture Technology Visionレポートで説明しているように、この変革はほんの始まりに過ぎない。将来的には、人びとがどこでどのように働くかは、従業員と雇用者の双方に利益をもたらす可能性をもつ、はるかに柔軟な概念になるだろう。実際、Accentureが調査した経営幹部の87%は、リモートワークの出現によって、見つけるのが難しい人材の市場が開かれると考えている。

こうしたメリットは、企業が将来の仕事に戦略的アプローチを採用した場合にのみ完全に享受される。数年前、BYOD(Bring Your Own Device、個人のデバイスを使って仕事をすること)が流行していたことを思い出して欲しい。企業環境の中で自分のデバイスを使用したいという労働者からの要求に直面して、企業はこのモデルをサポートするために新しいポリシーと管理を検討する必要があった。

雇用主は今や同じことをしなければならないが、その規模ははるかに大きい。それはBYODが「BYOE」(Bring Your Own Environment)になったからだ。従業員は環境(Environment)全体を仕事に持ち込むようになった。こうした環境には、労働者自身が所有する幅広いテック機器(スマートスピーカー、ホームネットワーク、ゲームコンソール、防犯カメラなど)とその作業環境が含まれている。ある人は庭小屋にホームオフィスを設置し、また別の人は家族に囲まれた台所のテーブルで働いているかもしれない。

職場の再考

今後は、BYOEスタイルの仕事は従業員の自宅には限定されない。人びとはどこからでも自由に仕事をすることができるようになるだろう、オフィス、自宅、またはその2つのハイブリッド環境など、自分に最適な環境で仕事をしたいと思うだろう。リーダーたちは、これに抵抗するのではなく、むしろ支えなければならないのだ。

実際、リーダーたちはビジネスを構成する、倉庫、貯蔵庫、工場、事務所、実験室、およびその他の場所で働く目的を再考することができる。彼らは、人びとが、いつ特定の場所にいて、特定の人びとと一緒にいることが理に適っているのかを慎重に考慮しなければならない。そうすることによって、業務を最適化できるようになるだろう。

数年後、成功している組織は、全員をオフィスに戻そうという圧力に抵抗し、代わりに従業員の働き方を再考した組織になるだろう。彼らはクラウド、AI、IoT、XRなどのテクノロジー成功要因の採用を含む、変化のための強力な戦略を導入するだろう。しかし、もっと重要なことは、こうした戦略が、彼らの再考された労働力モデルがどのように従業員をサポートし、働かせることができるか、そしてこれがどのように企業文化に反映させることができるかの概略を描き出すことだ。

新しさを受け入れる

この未来への第一歩は、従業員の体験を可視化することだ。BYOEを使用することで、従業員の体験がこれまで以上に重要になるが、モニタリングはこれまで以上に難しくなる。したがって、従業員の環境が仕事にどのように影響しているかを理解し、経験と生産性を向上させることができる洞察を見つけるためには、職場の分析をすることが重要になる。

セキュリティは、もう1つの主要な成功要因だ。企業は、従業員の環境が企業の永続的な部分を構成することを受け入れ、それに応じて調整する必要がある。ITセキュリティチームは、従業員のノートPCが最新のファイアウォールパッチで保護されていることを確認するだけでなく、従業員のネットワークセキュリティと、ベビーモニターやスマートテレビなど、そのネットワークにリンクされているすべてのデバイスのセキュリティを考慮する必要がある。

テクノロジー、分析、セキュリティの基盤が整ったら、企業はBYOEの価値を最大限に引き出すことができるようになる。それは業務モデルの変革だ。企業がバーチャルファーストになると、新しいテクノロジーを労働力に統合する新しい機会が生まれる。たとえば仮想ファーストのBYOE戦略を使用すると、企業は、物理的な作業を行うロボットでいっぱいの倉庫を、安全に監視および監督するオフサイトの従業員と組み合わせる戦略を実践することができる。

文化の変化こそが鍵

BYOEでの成功は文化にも影響を及ぼす。企業は、従業員の環境が今や「職場」の一部であり、人々のニーズに対応していることを受け入れる必要がある。これは大規模で、進行が遅い文化的変化だが、迅速な勝利もある。

例として、対面ならびにリモートワーカー間の分断を取り上げよう。現在は、地理的なものに多くのことが結びついているが、将来はバランスがすべてになる。さまざまな役割の労働者が、自分のニーズに最も適した作業環境の便益を受けるようになる。ただし、注意深く実践しないと、このアプローチでは従業員が分割され、オフィスにいる従業員とリモートの従業員が同士がコラボレーションに苦労する可能性が生まれる。Quora(クオーラ)は、在宅かオフィス内かに関係なく、会議に参加するすべての従業員に対してビデオ上に登場することでこの課題を克服しようとしている

BYOEのために組織を再考することは動くゴールを追うことで、いまでもベストプラクティスが生み出され続けている。しかし、すでに明らかなことが1つある。それは、待っている余裕はないということだ。最高の人材を引き付け、従業員のエンゲージメントを維持するには、今すぐ計画を開始しよう。

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タグ:コラムリモートワークBYOD

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(文: Michael Biltz、翻訳:sako)

即時配達サービス拡大に向けGopuffが1.65兆円の評価額で新たに1100億円調達

食料品や日用品を24時間、一律1.95ドル(約215円)で配達する「インスタント」宅配サービスを米国で始めたスタートアップのGopuff(ゴーパフ)は、サービスを米国および世界でさらに拡大するため、大規模な資金調達を実施した。フィラデルフィアを拠点とする同社は、シリーズHラウンドで10億ドル(約1100億円)を調達し、バリュエーションは150億ドル(約1兆6500億円)に達した。

新たな出資者には、BlackstoneのHorizonsプラットフォーム、Guggenheim Investments、Hedosophia、Adage Capitalが含まれる。これまでに出資していたFidelity Management and Research Company、Softbank Vision Fund 1、Atreides Management、Eldridgeもこのラウンドに参加した。

このニュースは、TechCrunchによる先週のスクープを裏づける。このシリーズHがクローズする前に報じたものだ。

Gopuffは今回の資金調達を、北米、英国(すでにFancyを買収済みで、情報筋によるとさらにDijaを買収予定)、欧州での事業拡大の継続、雇用の拡大、顧客・ドライバー・サプライヤー・配送センターを含むエコシステムの橋渡しをする技術プラットフォームの構築に充てる予定だと述べている。

Gopuffは現在、北米と英国で450カ所の拠点で運営しており、その中には285カ所以上のダークストア(同社の言葉を借りれば「マイクロ・フルフィルメント・センター」)と、2021年初めのBevMo買収で得た185店超の小売店が含まれている。

同社がこのように多額の資金を調達した理由の1つは、食品をベースとし、物流を推進力とする輸送ビジネスを、それらにともなうすべてのパラメータに沿って構築することが資本集約的であるということだ。

だが、このような成長のための努力は、競争という強力な波の中で行われている。トルコのGetirはセコイアなどの投資を受け、直近では75億ドル(約8250億円)の評価がついているが、この会社も積極的に事業を拡大している。また、欧州だけを見ても、FlinkGorillasGlovoZappCajooWeezyなど、銀行口座を膨らませ、宅配バッグをひっさげて参戦する企業が続々と登場している。米国では、DoorDashのような既存の宅配大手もGopuffの領域に深く入り込んでくる。

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Gopuffは、これらの企業にひと泡吹かせることができると信じている。同社は、現在の共同CEOであるRafael Ilishayev(ラファエル・イリシャエフ)氏とYakir Gola(ヤキール・ゴラ)氏が大学在学中の2013年に創業した。彼らは、自分たちのような学生にとっての市場には埋めるべきギャップがあると見た。同社は、ギャップを埋めるにとどまらず、必要な品物を比較的低コストで、実際に自ら取りに行かずに、すばやく手に入れたいと考えている人たちに向け拡大してきた。

新型コロナウイルスの蔓延を防ぐために、多くの人が自治体の命令または自分の判断により自宅にとどまっていた時期に、Gopuffの存在は、消費者心理を損なうことなく簡単にそれに従うことができる手段として急速に広まった。

しかし、トルコのGetirのような企業は何年も前から存在しており、必要な商品を「即座に」配達するモデルを構築し、そのコンセプトになお十分な力があることを実証した。それこそがGopuffが賭けようとしているものだ。

「Gopuffは、非常に強力なビジネスを静かに構築し、進化するこのカテゴリーを定義し続けるリーディング・プレイヤーとしての地位を確立しました」とGuggenheim Investmentsのグローバル・チーフ・インベストメント・オフィサーであるScott Minerd(スコット・マイナード)氏は声明で述べた。「ラファエルとヤキールは、戦略的な成長機会を成功させる能力を持ちながら、財務的責任を果たすことを重視しています。この冷静なアプローチとGopuffのすばらしい製品は、その姿をわずかに見せたにすぎません。私たちは、この非常に強力な企業を支援できることを喜んでおり、Gopuffの旅と継続的な拡大の一部になれることを楽しみにしています」。

Gopuffの戦略は、基本的な必需品の即時配達を、より効率的な流通と「必需品」を構成する内容の拡大によって強化することにあった。

そのため、商品を購入した顧客に簡単に商品を提供するために、地域に密着した「ダーク」ストアを設置することに加えて、出来合いの食品を作って配送する「Gopuffキッチン」を始めたり、2020年11月にアルコール小売店のBevMoを3億5000万ドル(約385億円)で買収したり、1億1500万ドル(約127億円)でのrideOSの買収という形で多くの物流テクノロジーを獲得したりしている。

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Gopuffは、これらすべてのために資金調達を続けてきた。3月に89億ドル(約9760億円)のバリュエーションで11億5000万ドル(約1265億円)を調達したばかりだが、その数カ月前には38億ドル(4180億円)のバリュエーションで3億8000万ドル(約418億円)を調達している。直近3回のラウンドを合わせると、10カ月間で約25億ドル(約2750億円)の資金を調達したことになるが、今回のアイデアは、調達する資金がさらに増えるかもしれないということを意味しているようだ。

「Gopuffがインスタント・ニーズ・エコノミーを定義し続ける中で、長年の投資家からの支援に加えて、新たに重要なグローバル・パートナーを迎え入れることができ、大変うれしく思っています」とイリシャエフ氏は声明で述べた。「今回の資金調達は、我々のモデルの成功をさらに証明するものであり、我々が最も得意とすること、すなわち比類のない顧客体験を提供し続けることを可能にしてくれます」。

「当社は、主要な事業上の優先事項に力を注いできました。米国および海外の新市場に参入することで地理的拡大を加速させ、顧客のために革新を行い、当社の技術、人材、パートナーに多大な投資を続けてきました」とゴラ氏は付け加えた。「我々は、これからも顧客の体験を向上させ、Gopuffの魔法を世界中の新しい顧客に届けることを楽しみにしています」。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

マイクロソフトがインドのホテルチェーン「Oyo」に投資へ

Microsoft(マイクロソフト)はOyo(オヨ)への出資の最終検討段階に入り、インドのスタートアップを約90億ドル(約9850億円)と評価している、と本件に詳しい筋はいう。提案されている出資規模は不明。契約は7月30日にも締結される可能性がある、とある情報筋は言った。

Oyoは2019年に約100億ドル(約1兆950億円)と評価されたが、同社の主要出資者であるSoftBank(ソフトバンク)は、最近の四半期にインドのスタートアップの評価額を30億ドル(約3280億円)へと減額した。

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提案された取引条件には、OyoがMicrosoftのクラウドサービスに乗り換えることも含まれているという向きもある。いずれの情報筋も本件が非公開であることを理由に匿名を要求している。

MicrosoftおよびOyoのファウンダーでCEOであるRitesh Agawal(リテシュ・アガーワル)氏は 29日時点でコメントを拒んだ。

Oyoはインドで最も価値のあるスタートアップの1つであり、近年東南アジア、ヨーロッパ、米国をはじめとするさまざまな市場に積極的に進出している。しかし、 いくつかの間違い(「有害なカルチャー」、ガバナンスの遅れ、ホテルオーナーとの関係など)が成長に影を落としている。

同社がホテルオーナーとの関係を改善すると誓約した直後に、パンデミックがやってきた。それに対応してOyoは成長を減速し、世界の国々が都市封鎖する中、2021年3月に世界で数千人の従業員を解雇した。

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パンデミックは創業7年のスタートアップをサイクロンのように襲った、と2021年7月初めにアガーワル氏がBloombergTVに話した。「何年もかけて作り上げてきたものがたった30日の間に60%以上崩壊しました」と彼は語り、同社が株式上場の決断をしていないことを付け加えた。

Airbnbが支援するOyoは、銀行に7億8000万〜8億ドル(約854億〜876億円)の残高があり、全事業の支出を毎月500万ドル(約5億5000万円)に抑えていることを最近のバーチャルカンファレンスでアガーワル氏が言った(2020年12月時点で同社の預金残高は約10億ドル[約1095億円]だった)。

7月、アガーワル氏が上記のカンファレンスでコメントした後、Oyoは6億6000万ドル(約723億円)の借入を行ったことを発表した。その借金は以前の負債を支払うために使われたと本件に詳しい人物がTechCrunchに話した。

Oyoは30日の提出書類で、借入の条件に後日株式と交換するオプションが含まれていることを明らかにした。

2社間の取引が実現すれば、Microsoftにとってインドのスタートアップへの最新の投資になる。同社は東南アジア諸国でいくつかのスタートアップを支援しており、その中にはニュース収集と短編ビデオプラットフォームのDailyHunt(デイリーハント)、eコマースの巨人Flipkart(フリップカート)、物流SaaS会社のFarEye(ファーアイ)などがいる。

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画像クレジット:Akio Kon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

花き産業の世界的独占の打破を目指すColvinはB2Bによる中間業者排除に向かう

サプライチェーンには今、とても興味深いことが起こっており、しかもそれはずっと続いている。ただしパンデミックがそれを加速したことも事実だ。テクノロジーのスタートアップたちは、またまた中間業者を排除しようとしているが、今回はサプライチェーンのレベルでだ。彼らにとっての商機は、サプライチェーンをプラットフォームで置換することにある。いうなればそれは「サプライチェーンのプラットフォーム化」だ。

最新例の1つであるColvinは、花き産業のためのプラットフォームで、今回はEurazeoのリードで4500万ユーロ(約58億6000万円)のシリーズCを調達した。Eurazeoは知る人ぞ知るフランスのプライベート・エクイティおよびベンチャーキャピタル企業で、これまでFarfetchやGlovo、ManoManoなどのマーケットプレイスに投資している。他に、同じくフランスのアグテックとフードテックのVCであるCapagroがこの投資に参加した。

D2Cのブランドとしてローンチし、今でもそうであるColvinは最近、プロを狙ったB2Bのカテゴリーも作った。

Colvinの共同創業者であるSergi Bastardas(セルギ・バスターダス)氏によると「2020年はColvinにとって加速の年で、今後の成長のペースを確定したという意味で転機でもありました。Colvinの目標は、花き産業のデジタルトランスフォーメーションをグローバルなレベルでリードしていくことです」という。

Eurazeoの投資ディレクターChloé Giard(クロエ・ジャルド)氏は、次のように話す。

フラワーデリバリーの市場におけるColvinの軌跡はずば抜けています。彼らは、急速な成長と利益が両立することを証明し、しかも市場を地球レベルで拡大しています。これは、花き産業の未来を築こうとする彼らの意欲の、第一歩にすぎません。AnkorstoreやChoco、Sennderなどの例に見られるように、ますます多くのB2Bカテゴリーがオンライン化している今日は、花きの卸売市場に新たなスタンダードを導入する天恵の好機です。Colvinはこの業界における長年の経験と専門的技能とスケーラブルなサプライチェーン、および信頼に足る生産者たちのグローバルなネットワークを生かして、この数十億ドル(数千億円)規模の市場機会を掴もうとしています。

電話インタビューで、バスターダス氏は「オランダには花きと植物の市場の独占体制があります。世界の花きと植物のおよそ65%は、オランダにある巨大なオークションを物理的に通過しなければなりません。それらが、どこで栽培されたかは問われません。この状態が長期に維持されているのは、業界がデジタル化されていないからです。それが、私たちが解決しようとしている問題です。ステークホルダーたちを、もっとダイレクトに結びつけなければなりません」という。

彼によると、同社は生産者と顧客をB2Cのプラットフォームで結びつけた。「今度はB2Bのソリューションを構築して、卸と小売など生産者同士を結びつけ、不必要な中間業者をテクノロジーの力で回避しなければなりません」。

あなたは業界の邪魔者になりますね、と尋ねたら彼は「確かにそうですね。中間業者たちは今、私たちに対して頭にきているからね」と答えた。

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画像クレジット:Colvin

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルの第3四半期決算はiPhoneと各種サービスが牽引し36%増、ただし翌四半期の鈍化予想も

Apple(アップル)にとってこの四半期もすばらしいものだった。売上高は814億ドル(約8兆9400億円)と、前年同期比で36%の増加であり、ウォール街が予想した733億ドル(約8兆500億円)を大幅に上回った。

「当社の4〜6月期の営業成績は、各地域セグメントで売上高の新記録を達成し、各製品カテゴリーで2桁の成長を遂げ、アクティブ端末数はインストールベースで過去最高を記録しました」と、Luca Maestri(ルカ・マエストリ)最高財務責任者(CFO)はリリースの中で述べている。「当四半期には、210億ドル(約2兆3000億円)の営業キャッシュフローを生み出し、290億ドル(約3兆2000億円)近くを株主に還元しました。そして長期的な成長計画を支えるために事業全体にわたって多額の投資を継続しました」。

すべてにおいて同社にとって好調な数字が並んでいるが、引き続きこれらを牽引したのはiPhoneの販売とサブスクリプションサービスだ。これまで同社の四半期決算を追ってきた人にとってはお馴染みの話だろう。

iPhoneの売上高は、260億ドル(約2兆8600億円)から395億ドル(約4兆3400億円)に増加した。これは、同社が待ち望んでいた5G回線の導入が、引き続き強みを発揮したことによるものだ。一方、サービスによる売上高は131億ドル(約1兆4400億円)から175億ドル(約1兆9200億円)に増加。アップルはサービスの拡大を続けており、現在はApple Music(アップル・ミュージック)、Apple TV+(アップルTVプラス)、iCloud(アイクラウド)、Apple Arcade(アップル・アーケード)、News+(アップル・ニュース・プラス)、Fitness+(アップル・フィットネス・プラス)などのサービスを提供している。同社は明らかに、サブスクリプションサービスの取り揃えを収益モデルの将来像と見なしている。

この第3四半期に中華圏はアップルにとって強力な市場であることが証明された。同地域の売上高は147億6000万ドル(約1兆6210億円)と、前年同期比50%以上の増加となった。一方、米州地域では270億ドル(約2兆9650億円)から358億9000万ドル(約3兆9410億円)に増加した。

Tim Cook(ティム・クック)最高経営責任者(CEO)は決算報告の中で、新型コロナウイルス関連の問題に言及し、同社のより広範な社会的関心を強調した。

「当四半期、私たちのチームは比類なき革新を続け、テクノロジーを使ってあらゆる場所の人々をつなぐことがかつてないほど重要になっている中、パワフルな新製品をユーザーのみなさまにお届けしました」と、アップルのティム・クックCEOは語った。「私たちは、新しい世代の開発者にコードを学ぼうとするやる気を奮起させ、2030年の環境目標に近づき、より公平な未来を築くための切迫した課題に取り組むことで、私たちを定義する価値観をすべての製品に吹き込むための取り組みを、引き続き推し進めていきます」。

同社は、新型コロナウイルス流行による不確実性を理由に、業績見通しの提示を今回も断った。しかしながら、引き続き行われた投資家たちとの電話会見で、マエストリCFOは「収益の成長は第3四半期よりも低くなると予想しています」と言及し、その理由として、米ドルとの為替レート、各サービスの成長率の鈍化、ハードウェア製品に影響を及ぼす半導体不足など、さまざまな問題を挙げた。

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画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】政治的なことと個人的な時間、仕事では両方のためのスペースを確保する

私たちの会社には、月次の社内ブッククラブがある。それは夕方に行われるもので、チーム全員が参加しているので(そう、私たちはブッククラブにはまっている)、4月20日の夕方、1人のチームメンバーがブッククラブ開始の数分前に、自身が不在となるであろうことを私たち全員に知らせたのは理に適っていた。

彼はミネソタに住んでおり、Derek Chauvin(デレク・ショービン)被告の裁判の評決が間もなく下されるところで、雰囲気は緊迫していた。彼は集中することができず、チームの他のメンバーに不参加の意思をSlackで伝えた。いくつかのサムズアップ絵文字が返され、ブッククラブが開始された。

数日後、経営陣との話し合いの席で何人かの幹部が、自身のチームメンバーがブッククラブの状況を話題にしたことに言及した。それについて何かが感じられた。キャンセルすべきだったのだろうか?どのような理由があっても個人的な時間を自由に取ることができることを、みんなに再認識してもらえただろうか?誰も的確な答えを持ち合わせていなかったが、より思慮深いアプローチを熟考し、実現する機会のように感じられた。それは私たちのチームが急速に成長し、リモート環境に置かれているという状況において、特に重要な意味を有するものだ。

この1年、私たちは、仕事をする中で非常に重要な出来事が起こっているときに、それが私たちの集団的な良心に入り込み、仕事と生活の間の境界が薄くて穴だらけであると認識させられる瞬間を何度となく経験した。企業は、こうした出来事についてチームとどのように話し合うか、あるいは話し合うべきかどうかという課題に直面している。

インクルーシブな企業を発展させるためには、世界で起きていることのためのスペースが必要であるとほとんどの企業は考えている。一方で「政治的なこと」という曖昧な言葉とは切り離して企業は存在すべきだという相反する意見もある。

私は陸軍に何年も所属していたので「黙って仕事をしろ」という考え方には慣れている。例えば政治的な問題に関して、辛口の兵士たちは次のようにいうだろう。「陸軍が意見を求めているならそうしているはずだ」(意見したいことは多くあったが)。

しかし、それは私が考える会社づくりの様相とは異なっている。私たちの「仕事の自分」は、世界で起きていることと切っても切れない関係にあると私は信じている。波立つ水面をどう進むべきか正確にはわからないが、前述した最近の経験は、私のチームがいくつかの教訓を具体化するのに役立つものとなった。

「政治的なこと」がチームに影響を与えるときのためのスペースを確保する

数カ月前、私は仕事の準備をしながら「The Daily」を聞いていた。エピソードは、兵役中に性的嫌がらせを受けていた陸軍兵士Vanessa Guillen(ヴァネッサ・ギレン)氏の殺害に関するものだった。陸軍がどのようにしてヴァネッサを失望させたかについての彼女の母親の話を聞いて、胸が張り裂けそうになった。私は泣いた。制服を着ていた私自身の経験がよみがえり、その朝はじっくり考えて書き物をする時間が必要だった。私は自分のスケジュールの中でいくつかのことを変更し、準備ができるまで仕事を始めることはなかった。

個人的な時間を必要とする許容可能な理由について指示を出すことは、企業の役割ではないと思う。そうではなく、賢明で意欲的な人材を採用し、その適切な意思決定を支援するフレームワークを与えることが重要だ。

私はその朝、時間が必要だった。個人的な時間を必要とする理由として何が受け入れられ、何が受け入れられないかを決定するのは、企業が果たすべき役目ではないと私は考えている。そうではなく、賢明で意欲的な人材を採用し、その適切な意思決定を支援するフレームワークを与えることが重要だ。

当社のワーキングフレームワーク(私たちにとって企業文化の構築は進行中の仕事であるため「ワーキング」と表現している)は、Netflixから拝借しているところが大きい。すなわち、自由と責任から成るデュアルコンセプトを採用している。Ethenaの従業員は、理由を問わず自由に休暇を取ることができ、上司に正当な理由を述べる必要はない。彼らには自分の仕事をきちんとこなす責任もある。例えば、ミーティングに参加できない場合は、カバレッジを確保する必要がある。

同僚からの意見に耳を傾ける

創業者の神話というのは強力なものだが、CTOのAnne Solmssen(アン・ソルムセン)氏と私はそれを支持していない。次の2つのことに真価があると考えている。賢明で、原動力を備え、機知機略に富む創業者であること、そして、チームと協働して向上していくこと。当社では、会社をより良くして欲しいという想いを託すことのできる、見いだせる限り最も賢明な人材の採用に努めている。

私たちは直属の部下との間でフィードバックミーティングを毎週実施しており、フィードバックは常に二者間で行われる。つまり、マネージャーは直属の部下からフィードバックを得る。フィードバック・フライデーは、問題が最初に表面化する場となっている。こうしたフィードバックのための圧力解放バルブの存在はとても喜ばしいことだ。リモートチームにおいては特にそうだと思う。こうした場がなければ、上手くいっていないときにすべてが順調だと考えてしまうような、狭い視野に陥ってしまう。またフィードバックを私たちの文化の中に早期に取り入れたことは、後になってからそれを固定するのは非常に難しいことから、幸いに感じている。

従業員のフィードバックに耳を傾ける上で重要でありながら無視されがちなことに、意思決定の方法に関する公正さがある。例えば、共同創業者と私は、意見の相違や批判を聞きたいと思っている。しかし、熱心に耳を傾けることは、直接民主主義とは異を呈する。私はCEOとして意思決定を行うとともに、従業員たちができる限り多くの情報を得て、包括的であることに重きを置いている。

早い段階で人材運用に投資する

社内ブッククラブへの参加について積極的なアプローチが取られなかった理由として、当社にはまだ人材運用のリーダーが存在しないことが挙げられる。従業員約20名ほどのチームで、急速に成長しているところだ。私たちが人材運用担当者の採用を優先してきたのは、それが必須の機能であり、早期に投資しなければ、問題が見過ごされたままになりかねないからである。

確かに、共同創業者は企業文化に個人的に投資すべきだが、人材運用は技能であり、専門知識を必要とする。経験豊富な人材運用のリーダーは、複雑な問題に対処するプラクティスを豊富に有している。

誰もが自分自身を仕事に駆り立て、時間が必要なときには仕事から離れることもできる、機能性の高いチームを作りたいと私は考えている。この先途中で間違ってしまうこともあると思うが、どこでつまづくかを知る最善の方法は、賢明で有能なチームに教えてもらい、彼らのいうことに耳を傾け、企業文化を構築することに意識的になることである。

編集部注:本稿の著者Roxanne Petraeus(ロクサーヌ・ペトレイアス)氏は、現代のチームのためのコンプライアンス研修プラットフォームであるEthenaのCEO兼共同設立者。元陸軍の戦闘経験者でもある。

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画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images

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(文:Roxanne Petraeus、翻訳:Dragonfly)

サンフランシスコ名物フードトラックフェス「Off the Grid」、山火事、パンデミックを乗り越えて地元の食文化維持にも貢献

サンフランシスコでグルメといえば「Off the Grid(オフ・ザ・グリッド)」だ。2010年にMatt Cohen(マット・コーエン)氏が設立した同名のイベント会社は、起業を夢見るベンダーのフードトラックを中心に、身近で楽しめるポップアップフェスティバルを計画。食と食を楽しむ人々について独創的なアイデアを持つ、野心的で多様な未来のシェフに道を開くためのこのイベントは、フードトラックムーブメントの先駆けとなった。

サンフランシスコのフォートメイソンで開催される「Off the Grid」のフードフェスティバル(画像クレジット:Off the Grid)

フェスティバルは年々人気が高まり(筆者も何度か立ち寄ったが、長蛇の列ができていた)、Off the Grid自体もイベント向けのケータリングサービスをますます拡大してきた。コーエン氏は「食べ物はどんな時でも心の支えになるという信念に基づいてキャリアを築いてきた」と話す。

古き良き時代の話だろうか?

同社に変化の兆しが見え始めたのは、ソノマやナパで発生したような山火事がカリフォルニアを襲った2017年のことだった。第一線で活躍する消防士たちは、時には署から離れたところでの消火活動も余儀なくされ、MRE(米軍が採用している配給品)のようなものしか口にできないことも多かった。

コーエン氏とチームは、ここにチャンスを見出した。「長年にわたり、緊急時の配給品は、カロリーを採るためだけのものと考えられ、必ずしも地元の食品事業者にとって利益の出るものではありませんでした」とコーエン氏。配給品は総じて当たり障りのない味で、通常は大量に州外に注文される。点と点をつなげるように、Off the Gridが物流を提供して、地元のレストラン経営者が作った料理を最前線に届けることはできないだろうか?

Off the Gridは2017年の山火事をきっかけに、消防隊や被災者の支援に乗り出す。同年、Off the Gridはレストラン経営者と協力して推定2万人に食事を提供した。「緊急対応における市場の状況を知ることができた」とコーエン氏は話す。

2020年に新型コロナウイルス感染症によるパンデミックがカリフォルニアをはじめとする世界各地で発生したことにより、Off the Gridの試みは劇的に加速する。突如として、レストランと地域社会をつなげる手段がデリバリーだけになり、もはや火災が発生している山麓だけではなく、常にあらゆる場所が最前線となったのだ。

2020年のパンデミックや山火事のピーク時に、パートナーのレストランと協力して、最前線の労働者や被災者に食事を届ける事業を拡大したOff the Grid(画像クレジット:Off the Grid)

Off the Gridは、悲惨な状況にある人々に心の安らぎを提供する機会を得て、事業を方向転換する。コーエン氏は次のように話す。「食べられるものさえあればラッキーであり、非常時の食事は美味しくないと考えられているかもしれません」「でも、つらい状況であればあるほど、美味しい食事が心の支えになるのです」。パンデミックの期間中、Off the Gridは、一時収容施設に滞在する人から自宅待機の免疫力の低い人まで、130万食の食事を提供し「常に喜んでもらえるように、選択肢を増やす」ことにも成功した。

このモデルは、美味しい食事を提供するだけでなく、Off the Gridが長年のプログラムで育ててきた地元の食文化の維持にも貢献している。コーエン氏は、カリフォルニアのみならず世界各地で気候変動が深刻化する中、こうした地域とのつながりは、レジリエンス(回復力)の高いコミュニティを構築するための重要なツールであると考えている。

2020年の急激な成長により、同社は迅速な事業拡大を余儀なくされた。食品の安全性や健康に関する規制は郡によって異なるので、Off the Gridはベイエリアをはじめとするカリフォルニア州全域に食事を届けるにあたり、事務や物流を処理するためのスケーラブルなプロセスを開発する必要があった。この技術は、設立から11年目を迎えたOff the Gridの次のビジネスの基盤となっている。

「フードビジネスにはフードビジネスだけのユニークな側面がたくさんあります。ライセンスや許可、保険といったあまりおもしろくないものも、運営には必要です」とコーエン氏は話す。同社のロジスティックスはますます体系化され、2021年は同社にとってさらに成長できる年になるだろう。

Off the GridのCEOかつ設立者マット・コーエン氏(画像クレジット:Off the Grid)

コーエン氏は次のように話す。「州と赤十字社と協力してカリフォルニア州の中でも比較的火災の危険性が高い39の郡を特定し、200店のレストランをリスト化しました。火災が発生した場合にはこれらのレストランにアクセスして活動を開始します」。現在、同社の約半分はこの緊急対応プログラムに特化している。

とはいえ、フードフェスティバルがなくなるわけではない。ノースビーチのコイトタワーの近くにあるLevi’s Plaza(リーバイス・プラザ)など、小規模な会場ではすでに再開され、十分に安全になれば大規模なフェスティバルも再開するという。しかし、緊急事態への対応は、ミッションを重視するこの会社にとって、新たな、かつ永続的な使命である。「ニーズがある限り、確実に継続していきます」。

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

DNA検査で犬の健康問題を早期発見するEmbark Veterinaryにソフトバンクも投資

今や犬も新型コロナウイルスに感染するというが、そんなときでもEmbark Veterinaryは慌てず騒がずちゃんとDNA検査をして発病を防ぎ、次の10年間の犬の寿命を現在の予測よりも3年以上長くしてくれる。

犬の遺伝子治療を行っているこのボストンの動物病院は、このほどシリーズBで7500万ドル(約82億6000万円)を調達し「ペットのスタートアップのシリーズBとしてはこれまでで最高額」と自称している。ラウンドをリードした投資家はSoftBank Vision Fund 2で、これにF-Prime CapitalやSV Angel、Slow Ventures、Freestyle Capital、そしてThird Kind Venture Capitalらが参加している。

Crunchbaseのデータによると、2015年に創業したEmbarkの総調達額はこれで9430万ドル(約104億円)になり、投資後の評価額は7億ドル(約771億3000万円)になると、Embarkの創業者でCEOのRyan Boyko(ライアン・ボイコ)氏はいう。

犬好きのボイコ氏は、生物学と進化にも関心がある。特に彼にとって犬は、品種の多さが関心をそそるという。体重がわずか1kgでも、100kg近くても犬。形やサイズも非常に多様だ。そこで彼は犬の研究に関心を持ち、特に彼らの進化を理解したいと思った。

「健康の問題についても考えるようになりましたが、率直に言って、健康のために遺伝子を上手に利用している点では、犬の体の方が人間より上です。犬は交配によって新しい犬種を生み出すことができますが、交配は犬の健康に貢献すると同時に、健康問題の原因でもあります」とボイコ氏はいう。

Embarkの犬のDNA検査は199ドル(約2万2000円)で、犬の飼い主やブリーダー、獣医は犬のユニークな遺伝子プロファイルに基づいて、治療やケアのプランをそれぞれで作ることができる。これまで350種あまりの犬種を検査し、200種の遺伝子由来の健康問題や身体的特徴を特定してきた。人間の遺伝子を検査する23andMeと同じく、検査によってその犬の犬種や健康や祖先に関する特性を知ることができる。

たとえば検査によって、健康な犬が今後椎間板ヘルニアになりやすい遺伝子を持ってることが、わかったりする。そんな犬には、ケアのメニューに体重管理を重要な要素として含め、ソファーから跳び下りることを禁ずるなどの対応が必要だ。もう1つの、よくある遺伝子リスクが高尿酸尿症だ。尿酸値が高いために犬がミネラルを上手に処理できず、膀胱結石になりやすい。そんな場合、犬の食事を変えることによって、石ができることを防げる。結石は、痛いだけでなく治療費も高額です、とボイコ氏はいう。

同社の検査技術は独自の遺伝子型判定技術を軸とし、これまでに20万以上の遺伝子マーカーを分析している。ボイコ氏によると、それは現在市場にあるどのDNA検査と比べても2倍以上の情報量がある。これによってEmbarkは今や、犬の健康と生物学的情報に関する世界最大のデータベースを持ち、同社はさまざまな状況や条件へのインサイトを可能にして、健康のリスクや特性、また犬種に関する、新たな発見を可能にしている。

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犬が指定範囲外に出たら通知するスマートなペット用首輪のFiが約32億円のシリーズBを調達

Embarkは犬の飼い主や獣医にとっての、ケアのスタンダードになることを狙っている。同社は2019年から2020年にかけて235%成長し、年商は過去2年間で5倍増した。このような高い成長を支えるために同社は、今度の資金を新たな雇用とデータベースの拡大に充てるつもりだ。ボイコ氏によると、2021年から2022年にかけて100人増やすという。

ボイコ氏によると、米国のペット市場はまだまだ伸び代がとても大きい。実際、American Pet Products Associationによると、2020年のペットへの支出は1000億ドル(約11兆200億円)近くに達し、2019年の957億ドル(約10兆5400億円)と比べて大きく増えている。

またCrunchbaseのデータによると、米国のペット企業に対するベンチャーキャピタルの関心は、栄養食、旅行、ヘルスケアなどすべてを含めて2019年から2020年にかけて 29.5%成長した。Embarkの資金調達だけでなく、2021年はその他のペット関連スタートアップにとっても良い年で、たとえばペット保険のWagmoは1250万ドル(約13億8000万円)を調達し、犬の居場所を本人の首輪からWi-FiやBluetoothで教えるFiは3000万ドル(約33億1000万円)を調達、そしてドッグシッター / ウォーカーのRoverは、SPACという手法による上場を発表している

SoftBank Investment AdvisersのパートナーであるLydia Jett(リディア・ジェット)氏は、ペット関連の投資はこれが初めてだが、Embarkはこの分野に進歩をもたらそうとしており、それは、どんなことをしてもペットをできるかぎり長生きさせたいという、飼い主の願いにも応えるものだ、と語っている。

ジェット氏によると、同社の経営がDNA分析を軸としていることには将来性があり、ペットに対して遺伝子分析の大きな市場を初めて開き、ペットに対する愛情とその長寿のための技術を結びつけたことの市場性はとても大きい。

「同社は変化を推進しています。私たちは消費者市場への投資企業として世界最大ですが、消費者のプライオリティと選択に関する弊社のポートフォリオとEmbarkが目指すものは完全に一致しています。それは、とても大きなトレンドであり、しかもペットのための個体化は、まだまだ初期の段階です」とジェット氏はいう。

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タグ:DNAEmbark VeterinarySoftBank Vision Fund資金調達ペット

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

インドのユニコーン「Zomato」のIPOに世界が注目

フードデリバリーのスタートアップで来週公開市場で取引を開始するZomatoは、ジャーナリストや業界の専門家から、インドで史上最大のテック系株式上場であると言われている。上場によって同社の時価総額は最大86億ドル(約9400億円)に達する可能性があり、投資家は早くから強い関心を示している

同僚のAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)とAnna Heim(アナ・ハイム)がTechCrunchコラムに書いたように、ZomatoのIPO後の成り行きには、Paytm(ペイティーエム)とMobiKwik(モビクイック)という、同じく近日中の上場を目指しているインドのフィンテック・ユニコーンの2社を始めとする100社ほどのインド・ユニコーン、そしてもちろんリターンに焦点を合わせたベンチャーキャピタリストたちが注目している。Zomatoの成功は、追加の資金調達や今後のイグジットにつながり、法律や規制による緊張が続く中、成長投資の節目になるだろう。

関連記事:インドがMastercardに新規顧客の受付停止を命令、データ保存規則違反で

Zomotoには、公開市場で押しつぶされることがないようにというプレッシャーがかかっており、それは単なる根拠のない憶測ではない。TechCrunchの現地レポーター、Manish Singh(マニッシュ・シン)は、インドでこの上場に向けて起きているあらゆる兆候について、アーリーステージ・スタットアップで頻発している資金調達から、需要増加のおかげでエンジニアが突如力を得たと感じていることまで詳しく報告している。

Zomatoの成功によって、より多くの投資家がスタートアップ・シーンに注目する可能性があり、彼らは遅れを取り戻そうと躍起になるだろう。インドのスタートアップは2021年前半に新記録となる104億6000万ドル(約1兆1490億円)を資金調達した。2020年同時期の40億ドル(約4390億円)や2019年前半の54億ドル(約5930億円)から大幅に増加している、とデータ予測プラットフォームのTracxnがTechCrunchに伝えた。ちなみにインドのスタートアップは2020年通年で116億ドル(約1兆2740億円)を調達した。

重要なのは、人生においてもスタートアップ世界においても、「最初」の何かが単一の決断の結果で起きるのは稀だということだ。よく見てみると多くの場合、大きな節目はさまざまな勝利と成功や失敗さらにはそれまでの小さな節目の集大成である。これはインド最大のテック系スタートアップの上場(重要かつ稀!)、という偉業にケチをつけるものではなく、その波及効果は単なる資金調達イベントの副次効果ではなく、そもそもIPOを実行するにいたった推進力によるものであることを示唆している。

記事の後半では、新進ファンドマネージャー登用のトレンドについて、およびラウンド完了とは無関係な調達ラウンドに関するアドバイスについてお送りする。

新進ファンドマネージャーの台頭

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

多様な新進ファンドマネージャーたちによる一連のファンドストーリーは、これまで私が見たことのないものだった。先週、Female Founders Fund(フィーメール・ファンダーズ・ファンド)は5700万ドル(約63億円)の女性向けファンドFund IIIの募集を完了、Nasir Quadree(ナシーア・カドリー)氏は最大級のソロGPファンドを組成し、Peter Boyce II(ピーター・ボイス2世)氏はStellation Capitalでまもなく4000万ドルのファンドを完了 H Ventures(Hベンチャーズ)は1000万ドル(約11億円)の初ファンドを立ち上げた

ポイントはここだ:ますます多くの古参ベンチャーキャピタルが新進ファンドマネージャーにディールフローを依頼したり新規パートーとして勧誘している、と同僚のConnie Loizos(コニー・ロイゾス)は言っている。つい先週、 Initialized Partner(イニシャライズド・パートナー)はFounder Collective(ファウンダー・コレクティブ)からParul Singh(パルール・シン)氏を引き抜き、自社の新パートナーに任命した。このトレンドはすぐに止まりそうにはない。

調達ラウンドは珍しくないが、あなたのは違うかもしれない

画像クレジット:Mohd Hafiez Mohd Razali/EyeEm

資金を調達するほうが、資金調達を記事に取り上げてもらうよりも簡単だ。最近TechCrunchがForbes(フォーブス誌)のシニア・エディター、Alex Konrad(アレックス・コンラッド)氏を招いたEquityで話したように「調達ラウンド・ストーリー」へのハードルはかつてないほど高い。

ポイントはここだ:
注目を浴びるために、ファウンダーは競争や業界について率直に語り、記憶に残るような名言や話題を提供する必要がある。Equityでは具体的なアドバイスや、歴史的に見過ごされてきた人々がいかに麻酔効果の影響を受けたかを紹介している。

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TechCrunch

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook