ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号のAshiraseが5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度製品化

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

靴に装着した「あしらせ」とスマートフォンアプリ

本田技研工業(Honda)の新事業創出プログラム「IGINITION」(イグニッション)発第1号スタートアップ企業「Ashirase」(アシラセ)は6月11日、シードラウンドにおいて、5000万円の資金調達を発表した。引受先は、Hondaおよびリアルテックファンド。調達した資金により、視覚障がい者の方に実際の生活で利用可能かつ最終仕様に近い試作を2021年度に製作することを目的に、靴装着型IoTデバイスおよびナビゲーションアプリを開発、2021年中に実証試験を実施する。またその結果を活用し、2022年度中の製品化を目指す。

Ashiraseが開発する「あしらせ」は、音声入力や案内を行うスマートフォンアプリと、靴の中に取り付ける立体型のモーションセンサー付き振動デバイスで構成された、視覚障がい者向け単独歩行支援ナビゲーションシステム。

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

「あしらせ」の振動デバイス

なおこのデバイスは、本体には柔らかく、形状を保てる素材を採用し、靴の中に入れても違和感が少ないという。装着したまま靴を脱ぎ履きできるため、付け忘れの心配もないそうだ。また充電はマグネットでの設置方式を採用しており、1回2時間の充電で1週間程度の使用が可能。

あしらせでは、GNSS測位情報と、ユーザーの足元の動作データから、視覚障がい者向けの誘導情報を生成。アプリで移動ルートを設定すると、白杖を持つ手や周囲の音を聞く耳を邪魔しないよう、靴の中に取り付けたデバイスが振動する形でナビゲーションを実施。直進時は足の前方の振動子が振動、右左折地点が近づくと右側あるいは左側の振動子が振動して通知する。進行方向を直感的に理解できるため、ルートを常に気にする必要がなくなり、より安全に、気持ちに余裕を持って歩行できるようになるとしている。

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

ロービジョンを含めた日本の視覚障がい者数は、国内164万人(【日本眼科医会研究班報告 2006~2008】日本における視覚障害の社会的コスト)、アメリカや欧州を含めた先進国全体では、1,200万人にのぼると推定されているという。一方、盲導犬は国内1000頭程度しか存在しないそうだ。また、ガイドヘルパーは自治体ごとに利用制限が設けられているとともに、歩行支援では腕を掴むなど必ず密になることから、コロナ禍の影響でヘルパーを辞める方が増えているという。

こうした背景から、視覚障がい者の方は単独で歩行するケースが増えているとされるものの、単独歩行には様々な課題がある。Ashiraseは、その中でも「歩行が出来ない、大変な思いをすることで、『外出が怖い』といった心理的課題が発生」「安全確認とルート確認に追われながら歩いている」「歩行時は聴覚に頼ることが多いため、音声ナビなどを使う聴覚を邪魔され、不安を感じたり危険に遭遇したりする」の3点に注目したそうだ。

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

Ashiraseは、「あしらせ」により視覚障がい者が自分自身で安全を担保しつつ余裕を持って歩けることが外出したいと思える気持ちや達成感の後押しとなり、ひいては自立につながると考えているそうだ。

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G7は有害オンラインコンテンツ規制に取り組むべきと仏マクロン大統領が力説

エリゼ宮での記者会見で、フランスのEmmanuel Macron(エマニュエル・マクロン)大統領はオンライン規制、特に有害なコンテンツ規制に繰り返し言及した。G7サミットが今週英国で開催されるため、マクロン大統領は国際協力を呼びかけた。

「効果的な多国間主義の恩恵を受けるかもしれず、また我々が今回のG7サミットで取り上げる3つめの大きなトピックはオンライン規制です」とマクロン大統領は述べた。「再度話すことになると私が確信しているこのトピックは我々の民主主義にとって不可欠なものです」。

マクロン大統領はまた、記者会見の場を利用してこの件に関するフランスの取り組みを総括した。「2017年夏に我々はオンラインテロリストコンテンツに取り組むイニシアチブをTheresa May(テリーザ・メイ)首相と立ち上げました。当時も今日同様にクレイジーでしたが、イニシアチブはほとんど失敗に終わりました。言論の自由のために、人々は余計なお世話だ、というようなことを言いました」。

2019年にニュージーランドのクライストチャーチで恐ろしいモスク銃乱射事件が起こった。その銃撃の様子をとらえたビデオの複数のコピーがFacebook、YouTube、Twitter上で出回った。マクロン大統領はニュージーランドのJacinda Ardern(ジャシンダ・アーダーン)首相や何人かのG7のデジタル大臣、テック企業をパリに招待した。

出席者は「Christchurch Call」という拘束力のない誓約に署名した。ソーシャルプラットフォームを運営するテック企業は基本的に有害コンテンツ、なかでもテロリストのコンテンツの阻止でさらに取り組むことに同意した。

Facebook、Twitter、Google (そしてYouTube)、Microsoft、Amazon、その他のテック企業も誓約に署名した。17カ国と欧州委員会もまたChristchurch Callを支持した。ただし1つ大きな例外があった。米国は誓約に署名しなかった。

「誓約に署名したすべてのオンラインプラットフォームが従ったため、この戦略はいくらか具体的な成果につながりました」とマクロン大統領は話した。「この証拠はフランスが昨秋テロ攻撃に直面したときに起こったことに見られます」。2020年10月、フランスの教師Samuel Paty(サミュエル・パティ)氏がテロリストによって殺され、斬首された。

「プラットフォームはコンテンツにフラッグを立て、1時間以内にコンテンツを削除しました」とマクロン大統領は続けた。

その後、さらに多くの国やオンラインプラットフォームがChristchurch Call支持を表明した。2021年5月に米国のJoe Biden(ジョー・バイデン)大統領も有害コンテンツに対する国際的な取り組みに加わった。「米国で法人化されている企業の数を考えたとき、大きなステップであり、私はこれを歓迎します」とマクロン大統領は述べた。

しかしChristchurch Callの次に何がくるのだろう。マクロン大統領はまず、Christchurch Callを支持するようさらに多くの国に働きかけたいとと考えている。たとえば中国とロシアはChristchurch Call支持の輪に加わっていない。

「2つめは、あらゆる種のオンラインのヘイト言論、差別的言論、反ユダヤ主義言論、そしてオンラインハラスメントに関連するフレームワークづくりを進める必要があります」とマクロン大統領は話した。

そしてこの件に関するフランスの規制についても手短に言及した。オンラインプラットフォーム上のヘイトスピーチに関するフランスの規制は2020年、新しい法律が合憲かどうかを判断する最高機関である憲法評議会によって違憲だと判断された。

ヘイトスピーチコンテンツのリストは長く広範で、その一方で科され得る罰金はかなり高額だ。憲法評議会はオンラインプラットフォームがあまりにも早くコンテンツを検閲するのではないかと危惧した。

しかしそれでもマクロン大統領は欧州レベルとG7レベルでンラインコンテンツに関する新しい規制を支持するのをやめはしないようだ。

「G20サミットで議論でき、またオンラインでのやりとりの中の粗暴な行為に対して戦えるようにする効果的なフレームワークを構築する唯一の方法です。ゆえに、我々の新しい世界の秩序の中に粗暴な行為をおくことになります」とマクロン大統領は物議を醸している「粗暴な行為」という暗喩(フランス語ensauvagementは「野蛮化する」の意を使って述べた。この言葉は最初に極右の政治家によって広まった

マクロン大統領によると、世界のリーダーがオンライン規制で共通点を見つけ出せなかったらインターネットの崩壊につながる。たとえば一部のオンラインサービスをブロックすることを選択する国も出てくるかもしれない。

そして最近の事件は、そうした事態がすでに起こりつつあることを示している。ナイジェリア政府は数日前にTwitterを禁止した。テロリストコンテンツを阻止するために合意するのは簡単だが、他のコンテンツをモデレートしようと思えばあっという間に大変な作業になる。

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タグ:エマニュエル・マクロンコンテンツモデレーションSNSフランスG7

画像クレジット:Pascal Rossignol / AFP / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

横浜FCコラボの「サッカー×テクノロジー」アイデアソンで横浜の地域課題を解決したい参加者を募集、CCC U-22が実施

横浜FCコラボの「サッカー×テクノロジー」アイデアソンで横浜の地域課題を解決したい参加者を募集、学生向けシビックテック開発コンテストCCC U-22が実施

Code for Japan(コード・フォー・ジャパン)は6月9日、学生向け開発コンテスト「Civictech Challenge Cup U-22」(CCC U-22)において、横浜のシビックテック(Civic Tech)コミュニティーCode for YOKOHAM(コード・フォー・ヨコハマ)およびJリーグ横浜FCの協力の下、学生向けアイデアソンを開催すると発表した。開催日時は6月20日午後1時から午後4時までで、Zoomを使った完全オンライン開催となっている(途中参加、途中退出も可能)。参加費は無料。

アイデアソンの目的は、サッカー、ファン、クラブチームの関係性、ホームタウンの町作りなどにITを活かすアイデアを競い、新しい価値を生み出すこと。「横浜とサッカーを切り口に、地域課題やコロナの影響を受けているスポーツ領域の課題解決策を考える」という。

横浜FCは、以前から地元社会との連携を強めるためのホームタウン活動を行っている。またJリーグ・Jクラブは、教育、ダイバーシティー、町作りなどの課題に、企業、自治体、学校などと連携して取り組む「シャレン!」(社会連携活動)を展開している。そこでCode for Japanは、横浜の人たちにシビックテックをもっと身近なものとして認知してもらおうと横浜FCの協力を仰ぎ、このアイデアソンが実現した。

このアイデアソンは、5月から始まったCode for Japanが主催する学生向け開発コンテスト「Civictech Challenge Cup U-22」(CCC U-22)期間中のイベントのひとつとして、6月20日午後1時から、Zoomを使った完全オンラインで開催される(途中参加、途中退出も可能)。CCC U-22参加者以外の学生、サッカーファン、横浜にゆかりのある人も参加可能。参加費用は無料だが、学生生活応援チケットという個人寄付付きチケットを5000円で購入することもできる。

CCC U-22は、社会課題にシビックテックで取り組もうという学生のためのコンテスト。コロナ禍の影響で就職活動が思うに任せず、サマーインターンにも参加できないという学生の苦悩に対処すべく、旭川の高専生が発案し、東京、関西、北海道の学生の賛同を受けて2020年に始まった。2021年も開催が決まり、5月にエントリー募集が始まっている。

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警察のDNAデータベースアクセスを制限する法律が米メリーランド州とモンタナ州で成立

メリーランド州とモンタナ州は、警察がDNAデータベースにアクセスするのを制限する法律を可決した米国初の州となった。

何百万人という米国人の遺伝に関するプライバシーを守るための新しい法律は、23andMeAncestryGEDmatch、FamilyTreeDNAといった消費者DNAデータベースにフォーカスしている。これらサービスでは人々に自分の遺伝子情報をアップロードさせ、遠い親戚とつなげたり家系図をたどっていくのに遺伝子情報を使っている。23andMeのユーザーは300万人超、GEDmatchは100万人超と人気がある一方で、多くの人はこうしたプラットフォームの一部が遺伝子データを製薬業界やサイエンティストから法執行機関に至るまでさまざまなサードパーティと共有していることを知らない。

法医学の遺伝子系図捜査(FGGS)として知られる手法を通じて警察によって使用されるとき、警察は容疑者についての手がかりを探すために犯罪現場で見つかったDNA証拠をアップロードできる。この手の捜査で最も知られている例は2018年のゴールデン・ステート・キラー(黄金州の殺人鬼)の特定だろう。この事件では、捜査チームは連続殺人犯につながる1980年の殺害現場で採取したDNAサンプルをGEDmatchにアップロードし、その後容疑者の遠い親戚を特定し、これが犯人Joseph James DeAngelo(ジョセフ・ジェームズ・ディアンジェロ)逮捕への重要な突破口となった。

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警察は犯罪捜査のために消費者DNAデータベース使うことで成功を収めてきたが、その一方でプライバシー擁護派は長い間こうしたプラットフォームの危険性を警告してきた。DNAプロフィールが遠い祖先をたどっていくのに使えるだけでなく、膨大な量の遺伝子データはその人の病気の傾向を暴いたり、中毒や薬物反応を予想したりでき、さらにはその人がどんな外観なのかイメージ図を作成するのに企業によって使われさえする。

Ancestryと23andMeは、令状を持たない警察には自社の遺伝子データベースを利用させていない。GEDmatch(2019年12月に犯罪現場DNA会社に買収された)とFamilyTreeDNAは以前、警察とデータベースを共有していた。

被告人と、その人の親戚の遺伝子プライバシーを確保するために、メリーランド州は10月1日から遺伝子系図を使う前に裁判官から令状を取得することを警察に課し、遺伝子系図の使用は殺人や誘拐、人身売買など重大な犯罪に限定する。また、ユーザーに情報が犯罪捜査に使われることがあるかもしれないとはっきりと伝えているデータベースのみを捜査当局は使用できる、としている。

新しい法律で使用をさらに限定するモンタナ州では、ユーザーがプライバシー権を放棄していなければ警察はDNAデータベースを使用する前に令状を取る必要がある

法律は「政治的立場の異なるさまざまな人々が、法執行機関による遺伝子データの使用が恐ろしく懸念されるものであり、そしてプライバシーを踏みにじるものだと気づいたことを示している」とメリーランド州の法律学教授Natalie Ram(ナタリー・ラム)氏は話した。「今後より多くの州が法執行機関のテクニックに関する堅牢な規制を擁するこを望みます」。

こうした法律の導入は、電子フロンティア財団(EFF)などのプライバシー擁護派には歓迎されている。EFFで監視訴訟ディレクターを務めるJennifer Lynch(ジェニファー・リンチ)氏は規制について「正しい方向へのステップ」と表現したが、より多くの州、さらには連邦政府がFGGSをさらに厳格に取り締まることを求めた。

「我々の遺伝子データは、保護を民間企業に任せたり、警察に自由に検索させたりするにはあまりにもセンシティブで重要なものです」とリンチ氏は述べた。

「GEDmatchやFamilyTreeDNAのような企業は警察の捜査を許し、促進さえしました。このため警察は米国中の犯罪捜査でますますこうしたデータベースにアクセスするようになっています」。

23andMeの広報担当はTechCrunchに次のように述べた。「消費者にさらに強固なプライバシー保護を提供する法律を当社は完全に支持します。実際、当社は消費者の遺伝子プライバシー保護を高めるために多くの州で法制化に取り組んでいます。顧客のプライバシーと透明性は、23andMeの法的要請対応と顧客の信頼維持へのアプローチをガイドする基本原則です。当社はすべての警察や当局の要請を綿密に調べ、裁判所の命令や召喚状、捜査令状、その他法的に有効だと判断した要請だけに対応します。これまで当社は警察に顧客の情報をまったく開示していません」。

Ancestryは「当社の顧客のプライバシーを守りながら公共政策の目標を達成している」法律をつくるのにメリーランド州の議員と協業したと述べた。

「顧客のプライバシーを守ること、顧客のデータの良き管理者となることはAncestryの最優先事項であり、当社は自ら進んで警察と協業しません。裁判所の命令や捜査令状など有効な法的プロセスでそうせざるを得ない限り、当社は警察といかなる情報も共有しません」とAncestryの広報担当は話した。

デフォルトでユーザーが警察の捜査の対象となるようにしているGEDmatchと FamilyTreeDNAはニューヨークタイムズ紙に対し、新しい法律への対応でユーザーの同意に関する既存の規則を変更する計画はないと語った。

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画像クレジット:Andrew Brookes / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

EU諸機関によるAWSとマイクロソフトの各クラウドサービス利用について同プライバシー責任者が調査を開始

欧州の主要データ保護規制当局は、EU機関による米国クラウド大手Amazon(アマゾン)とMicrosoft(マイクロソフト)のそれぞれのクラウドサービス利用について、調査を開始した。欧州の団体、機関、官公庁は、AWSおよびMicrosoftの間でいわゆる「Cloud II」契約を締結している。

欧州データ保護監察機関(EDPS)によると、欧州委員会によるMicrosoftのOffice 365の使用についても、以前の勧告への準拠状況を評価するための独立した調査が開始されたという。

Wojciech Wiewiórowski(ヴォイチェフ・ヴィヴィオロフスキ)氏は、2020年10月に発表されたより広範なコンプライアンス戦略の一環として、EUのクラウドサービスの利用を調査している。当該戦略は、欧州司法裁判所(CJEU)による画期的な裁定(通称Schrems II)を受けたものだ。この裁定は、EU-米国間の「Privacy Shield」データ移転協定を無効にし、EUユーザーの個人データが大規模監視体制によって危険にさらされる可能性のある第三国に流出している場合の、代替的なデータ移転メカニズムの実行可能性に疑問を投げかけるものだった。

EUの最高プライバシー規制当局は去る2020年10月、EU加盟国以外の国への個人データの移転について報告するようEU加盟国の機関に要請した。EDPSが米国時間5月27日の発表したところによると、この分析によってデータが第三国に流れていることが確認されたという。また、特に米国への流入が顕著であり、その理由として、EU機関が大手クラウドサービスプロバイダ(その多くは米国を拠点としている)への依存を高めていることが挙げられる。

驚くことではない。しかしEDPSは、Schrems II判決以前に署名された2社との契約がCJEUの判断に沿っているかどうかを見極めたいと考えており、次のステップは非常に興味深いものになるだろう。

実際、EDPSはその準拠性について懸念を示しており、将来的にはEU諸機関に対して代替のクラウドサービスプロバイダ(法的な不確実性を回避するためにEU内に設置されている可能性が高い)を探すことを要請する可能性もある。今回の調査は、規制当局主導による、EUの米国クラウド大手からの移行の始まりとなるかもしれない。

ヴィヴィオロフスキ氏は声明で次のように述べている。「EUの機関や団体からの報告の結果を受けて、私たちは両社との契約が特別な注意を要するものであることを特定しました。それが今回の2つの調査を開始することにした理由です。『Cloud II契約』は『Schrems II』判決前の2020年初めに署名されたこと、そしてAmazon(アマゾン)とMicrosoftの両方がその判決に沿うことを目的とした新たな措置を発表したことを認識しています。しかし、これらの措置はEUのデータ保護法を完全に遵守するのに十分ではない可能性があり、適切に調査する必要があります」。

AmazonとMicrosoftは、EU機関とのCloud II 契約に適用した特別措置に関する問い合わせに応じているところだ。

【更新1】現在、Microsoftの広報担当者が次のような声明を出している。

当社は、欧州データ保護監督機関から提起された質問に答えるために、EU機関を積極的に支援し、いかなる懸念にも迅速に対応する自信があります。EUのデータ保護要件を確実に遵守し、それ以上の成果を上げるための当社のアプローチに変更はありません。当社の「Defending Your Data」イニシアチブの一環として、EUの公共部門または商業部門のお客様のデータを求める政府の要請に対し、我々に合法的な根拠がある場合はすべて異議を申し立てることを約束しています。また、適用される個人情報保護法に違反してデータを開示し、損害を与えた場合には、ユーザーに金銭的な補償を行います。当社は今後も規制当局の指導に対応し、顧客のプライバシー保護の強化を継続的に図っていきます。

【更新2】Amazonからも次の声明が届いている。

EUの機関は、Schrems IIの要件に準拠してAWSサービスを利用することができ、お客様が欧州データ保護監察機関(EDPS)にそのことを実証してくださることをうれしく思います。顧客データを保護するための当社の強化された契約上のコミットメントは、Schrems II判決で要求されている以上のものであり、法執行機関の要求に挑戦してきた当社の長年の実績に基づいています」と述べている。

EDPSは、EUの機関に模範的な主導を求めていると表明した。欧州データ保護委員会(EDPB)は2020年、Schrems IIの判決の意味するところを実行するための規制猶予期間はないと公に警鐘を鳴らしたが、未だにデータ移転に関する本格的な取り組みがなされていないことを考えると、今回の動きは重要に思える。

対応が遅れていた理由として最も可能性が高いのは、法的基準を満たすことを期待して契約に加えられた、かなりの量の向こう見ずな反応や表面的な変更だろう(ただし規制当局による審査はまだ行われていない)。

EDPBからの最終的なガイダンスも保留中だが、当委員会は2020年秋に詳細な勧告を提示している。

CJEUの判決は、当該領域のEU法は看過されるべきではないことを明確に示した。EUのデータ規制当局がEUのデータを外部へ持ち出している契約を精査し始めることで、必然的にこれらの取り決めのいくつかは不十分であると判断され、関連するデータフローは停止を命じられることになるだろう。

ちなみに、長期戦となっているFacebook(フェイスブック)によるEU-米国間データ移転をめぐる苦情申し立ては、まさにそのような可能性に向けての歩みを遅らせている。申し立ての発端は、EUのプライバシー活動家で弁護士でもあるMax Schrems(マックス・シュレムス)氏によって2013年に提起された訴えにある。

2020年秋のSchrems II判決を受けて、アイルランドの規制当局はFacebookに対し、欧州の人々のデータを海を越えて移動させることはできないとする仮命令を出していた。Facebookはアイルランドの裁判所でこれに異議を唱えたが、今月初めにはその手続きを阻止する試みに失敗した。そのため、数カ月以内に業務停止命令を受ける可能性がある。

Facebookがどう反応するかは誰もが予想しているところだが、シュレムス氏は2020年夏TechCrunchに対し、同社は最終的にEUユーザーのデータをEU内に保存し、サービスをフェデレートする必要があると示唆している。

Schrems IIの判決は、法的な不確実性の問題を解決するために自らを位置づけることができるEUベースのクラウドサービスプロバイダにとって、一般的には朗報になりそうだ(米国ベースのクラウド大手ほど競争力のある価格や拡張性がない場合であっても)。

一方、CJEUの裁判官が繰り返し指摘しているように、EUの人々のデータへの脅威とみなされないようにする目的において、米国の監視法を独立した監督下に置き、市民以外の人々が利用可能な救済メカニズムを確立するには「数カ月」よりもはるかに長い時間がかかる可能性が高いだろう。それも米国当局が自らのアプローチを改革する必要性を確信することができるのならではあるが。

それでも、EUの規制当局が最終的にSchrems IIに対して行動を起こすようになれば、米国の政策立案者の意識を監視改革に集中させるのに役立つかもしれない。そうでなければ、ローカルストレージが将来の新しい標準になることもあり得る。

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画像クレジット:Jason Alden / Bloomberg / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

米アップルの一部従業員グループが9月からの週3日出社に反対、柔軟な対応を望む意見書を提出

米アップルの一部従業員グループが9月からの週3日出社に反対、柔軟な対応を望む意見書を提出

Pavlo Gonchar/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

先週、米Appleのティム・クックCEOは新型コロナウィルスのパンデミックによってこれまでリモート勤務にしていた従業員に対し、9月より月、火、木曜の週3日はオフィスに出勤し、水、金の2日はリモートでの勤務とするオフィス復帰計画を従業員にメールしました。ところが、一部の従業員はオフィスへの出社をしたくない場合はそれを認める柔軟なアプローチを求めており、クックCEO宛に意見書を提出したと、The Vergeなどが伝えています。

従業員は意見書の中で「この1年間、私たちはしばしば耳を傾けてもらえないだけでなく、時には積極的に無視されていると感じました」と述べ、会社に対し誰がリモートワークをしたり、または柔軟に仕事場を選ぶことを可能にすること、またリモートやその他の仕事場にも障害者を受け入れるための「明確な行動計画」を作成するよう会社に求めています。また、Appleはこれらの問題について労働者に尋ねるアンケートを定期的に実施すべきだ、と手紙の主は記しています。

意見書を出したグループは少人数ではあるものの、リモートワーク推進の考えを持つ約2800人の従業員がSlackチャンネルを通じて集まったとのこと。

TwitterやFacebookなどは、パンデミック終息後も従業員が望めばリモート勤務を自由に選択できるようにしています。それに比べると週3とはいえ出勤を必須とするAppleは保守的な姿勢と言えそうです。

Appleと同様に、Googleもまた週3日間のオフィス出社を採用していますが、リモートだけで仕事ができるポジションも含まれており、チームのニーズに応じて変更できるようになっています。アップルは、他のIT企業の間で変化している、リモートワークに対する考え方をアップデートし、社内ポリシーを調整しなければならないかもしれません。

(Source:the VergeEngadget日本版より転載)

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米バイデン政権が中国テック・通信企業への投資禁止措置を拡大

バイデン政権は、中国政府による監視や軍事機器に貢献していると見なされる中国企業への投資を制限するトランプ時代の規制を修正、強化した。大統領命令に挙げられた最初の59企業の中には、テック、宇宙、通信の大手企業の名前もあり、財務省の命令によってさらに追加される見込みだ。

「中国による中国国外における監視技術の使用、および抑圧を促したり深刻な人権侵害につながる中国監視技術の開発と利用、異常かつ並外れた脅威にあたるものです」と、大統領行政命令の発令に際してバイデン氏は述べた。

この大統領令は、トランプ政権の長期に渡り追加され続けた中国企業ブラックリストに由来する。リストは政府調達、米国企業による民間投資、その他の目的に使用されてきた。大手テック企業のZTEとHuawei(ファーウェイ)は2019年に当初から載せられ、他の企業も定常的に追加されていった。

バイデン大統領の命令はこれを精緻化したもので、一部を改訂あるいは拡張し、中でも何が危険な行為あるいは中国当局との協業を構成するかの定義が変更された。中国のウイグル人イスラム教徒および香港その他の反体制派の監視に関与している企業を含むように定義を拡大している点が注目される。

新たな企業リストには、過去2年間に掲載された企業の多くが含まれるほか、数多くが追加されている。China Mobile(中国移動通信)、China Aerospace(中国航天科技集団)、Hikvision(ハイクビジョン)から半導体メーカーのSMICまで、IT、通信、航空宇宙に関わる主要企業がリストに載る危機にさらされているようだ。これらの企業に対する直接投資だけでなく、禁止された企業を含むインデックスファンドなどの仲介手段への投資も禁止される。

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財務省は、従来の国防省に代わってリストの保守と更新の責任を持ち、追加および抹消を行う。

「一連の課題に真正面から取り組むことは、米国国家安全保障の根本的関心事と民主主義の価値を守るというバイデン政権の公約と一致するものであり、今後も政権は中国企業のリストを適宜更新していく」と大統領令に付随した概況報告書に書かれている。

ホワイトハウスがトランプ大統領が始めた中国との貿易戦争を継続し、精緻化しようとしていることは明白だ。米国による圧力が中国の政策に十分な影響を与えるのか、また国際社会の支持が必要になるのかは、近々大統領が本件ならびに他の法令への支持を求めて同盟国を訪問することで明らかになるだろう。

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画像クレジット:Blake Callahan / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

今も米国の自治体は中国共産党に関連する監視技術を購入している

この記事は、映像監視ニュースサイトIPVMとの提携により発表された。

TechCrunchが入手した契約データから、米国の少なくとも100の郡や町、そして市が、米国政府が人権侵害と関連づけた中国製の監視システムを購入していることがわかった。

米国政府は、2019年にHikvision(ハイクビジョン)とDahua(ダーファ)という中国のテクノロジー企業2社を経済ブラックリストに追加したが、一部の自治体は、その後、数万ドル(数百万円)以上を投じて両社の監視装置を購入している。この2社は、ウイグル族のイスラム教徒が多く住む新疆ウイグル自治区の少数民族に対する、中国の継続的な弾圧と関連している。議会はまた、中国政府によるスパイ活動を助長する恐れがあるとして、米国の連邦政府機関がハイクビジョンとダーファのテクノロジーを新たに購入したり、契約を更新したりすることを禁止した

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しかし、このような連邦政府の措置は、州や市のレベルにまでは適用されていない。連邦政府の資金が使われていない限り、地方自治体はビデオカメラや赤外線スキャナーをはじめ、そういった中国製の監視システムを特に制約なく購入できる。

この契約の詳細は、連邦政府や州政府の支出を追跡しているGovSpend(ガヴァスペンド)が、IPVM(アイ・ピー・ヴイ・エム)を通じてTechCrunchに提供したものだ。IPVMは、映像監視に関する主要なニュースサイトであり、ハイクビジョンとダーファの禁止令を注視している。

今回のデータ、およびIPVMが以前に報告したところによると、最大の支出はジョージア州Fayette(フェイエット)郡の教育委員会によるもので、2020年8月に公立学校での体温チェックに使用されるハイクビジョンのサーマルカメラ数十台を49万ドル(約5400万円)で購入している。

フェイエット郡公立学校の広報担当者Melinda Berry-Dreisbach(メリンダ・ベリードライスバッハ)氏の声明によると、カメラは、ハイクビジョンの正規販売店でもあり、以前から取引のあるセキュリティベンダーから購入したという。この声明では、教育委員会がハイクビジョンの人権侵害との関連性を認識していたかどうかについては触れられていない。また、ベリードライスバッハ氏は、フォローアップの質問には答えていない。

ハイクビジョンやダーファのモデルを含む多くのサーマルスキャナーについては、IPVMの調査により、測定値が不正確であることが判明し、誤った測定値による「深刻な公衆衛生上の潜在的リスク」があると、米国食品医薬品局(FDA)が、公衆衛生上の警告を発するに至っている。

人口9万5000人のノースカロライナ州Nash(ナッシュ)郡は、2020年9月から12月にかけて4万5000ドル(約490万円)以上を投じてダーファのサーマルカメラを購入した。郡長のZee Lamb(ジー・ラム)氏は、購入とその機材が郡内の公立学校に配備されたことを認めるメールを転送してきたが、それに対するコメントはなかった。

また、ニューオーリンズ市の一部を含むルイジアナ州のJefferson(ジェファーソン)郡は、2019年10月から2020年9月にかけて、ハイクビジョンの監視カメラとビデオストレージを3万5000ドル(約380万円)で購入したことがデータからわかっている。しかし、郡の広報担当者からのコメントはない。

連絡を取った自治体のうち、購入したテクノロジーと人権侵害との関連性について答えたのは1地区だけだった。カリフォルニア州のKern(カーン)郡は、2020年6月、保護観察局のオフィス用としてハイクビジョンの監視カメラとビデオ録画機器に1万5000ドル(約160万円)以上を支出した。契約のデータによると、地元の業者であるTel Tec Security(テル・テック・セキュリティ)がハイクビジョンの製品を同郡に販売していた。

カーン郡の最高行政責任者であるRyan Alsop(ライアン・アルソップ)氏は、ハイクビジョンと人権侵害との関連性について問われると「ハイクビジョンに関する問題についてはまったく知らない」という。

「繰り返すが、当郡はハイクビジョンと契約したのではなく、テル・テック・セキュリティと契約したのだ」とアルソップ氏は答えた。

カーン郡では、郡の保護観察所で使うハイクビジョンの機器購入に1万5000ドル(約160万円)以上を費やしている。(データ提供:GovSpend

フロリダ州Hollywood(ハリウッド)市では、ハイクビジョンのサーマルカメラに3万ドル(約330万円)近くを費やしたが、同市の広報担当者は、中国のこのテクノロジーメーカーが「すぐに納品可能で、規定のプロジェクトスコープに合致し、プロジェクト予算内でソリューションを提供する唯一の大手メーカーだった」と述べている。このカメラは、新型コロナウイルス感染症の拡散を抑制するために、従業員の体温の測定に使用された。広報担当者は、人権侵害との関連性については言及しなかったが。連邦政府の禁止令は同市には適用されないと述べている。

Human Rights Watch(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)のシニア研究員であるMaya Wang(マヤ・ワン)氏は、地方レベルでのプライバシー規制が不十分であることが、自治体がこのテクノロジーを購入する一因になっていると指摘する。

「問題の1つは、この種のカメラが、原産国や人権侵害に関連しているかどうか以前に、プライバシー基準に準拠しているかどうかを確認するための規制がないまま、国内のさまざまな地域、特に州や市のレベルで導入されていることだ」とワン氏は電話で語り、そして「また、企業の実績に基づいて、その企業が人権を侵害していないかどうかを厳密に調査し、より良い企業を選択することにより、プライバシー保護を重視する企業が勝ち残るような規制の枠組みもない」と付け加えた。

ウイグル族を抑圧する中国政府の継続的な措置の一環として、ウイグル族を監視するための監視テクノロジーの供給をハイクビジョン、ダーファなどに大きく依存していると米国政府は強く主張しているが、中国政府はこれを繰り返し否定している。

国連の監視機関によると、中国政府は近年、100万人以上のウイグル人を収容所に拘留しており、これが米国における監視テクノロジーメーカー2社のブラックリスト入りにつながっている。

米国商務省は、政府の経済ブラックリストに両社を加える際、ハイクビジョンとダーファが「中国政府によるウイグル人、カザフ人、その他のイスラム系少数民族に対する弾圧、恣意的な大量拘束、ハイテクを駆使した監視などの活動が行われる上で、人権侵害や虐待に関与してきた」と述べている。Biden(バイデン)政権は、この人権侵害を「ジェノサイド(大量虐殺)」と呼んだ。

この報道について、上院情報委員会の委員長を務めるMark Warner(マーク・ワーナー)上院議員は、TechCrunchに次のように述べている。「中華人民共和国の企業は、本当に『独立』しているわけではない。そのため、米国の団体が中国企業の機器を購入する際には、中国での民族抑圧を助長する企業を支援しているだけでなく、この監視機器を介して収集されたデータが中国共産党と共有される可能性があることを認識するべきだ。以前から、企業や大学を含むアメリカの団体が、新疆ウイグル自治区などに対する中国共産党の監視・検閲活動を助長していることに心を痛めていた」。

「しかし、これは問題の一部に過ぎない。米国人は、中国共産党がさまざまな手口でアメリカ市民のデータ収集に取り組んでいることにも関心を持つべきだ。このような機器を購入することのリスク、そして人権や安全保障との密接な関係について、地方自治体を含めアメリカ人を啓蒙する必要がある」とワーナー上院議員は述べる。

IPVMは、各社の監視技術がウイグル人の弾圧にどのように使われているかも大きく報じてきた。ダーファ製品には、警察に「リアルタイムのウイグル人警告」を提供するために人種検知のコードが含まれていることが判明した。

2021年初め、Thomson Reuters(トムソン・ロイター)財団は、ロンドンの議会の半数と英国の最大20都市が、ウイグル人の虐待に関連した技術を使用していることを明らかにした。また、Guardian(ガーディアン)紙は、英国の学校でハイクビジョンの監視技術が使用されていることを報じた

ダーファは、この報道を受けて、ブログに声明を掲載し「メディアでの一部報道とは異なり、当社は特定の民族をターゲットとするテクノロジーやソリューションを開発したことはない」と主張した。そして声明には「これに反する主張は単なる誤りであり、そのような主張を裏付ける証拠は、これまで確認されていないと認識している」と付け加えられている。

ハイクビジョンは、コメントの要請に応じていない。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:アメリカ中国プライバシー個人情報監視

画像クレジット:Zhengshun Tang (opens in a new window)/ Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

【インタビュー】HPがダイバーシティに関する意欲的な目標を発表 「世界で最も持続可能性のある公正なテック企業になる」

HPは「より多様で公正かつ包摂的な」テック業界を目指すための一連の意欲的な目標を発表した。

もちろん、ダイバーシティ(多様性)を実現したいと強く主張しているのはHPだけではない。前TechCrunchレポーターのMegan Rose Dickey(メーガン・ローズ・ディッキー)が詳細に報告しているとおり、ダイバーシティとインクルージョン(包摂性)という考え方がテック企業の取り組むべき課題として上がるようになってから数年が経過している。

HPのダイバーシティ担当最高責任者Lesley Slaton Brown(レズリー・スレートン・ブラウン)氏によると、インクルージョンは、1939年の創業以来、同社が重点的に取り組んできた課題であるという。現在、HPの全世界の従業員数は約5万人にのぼり、管理職の31%、技術職の22%が女性だ。この数字は、ほとんどの業界の平均を上回っている。

この割合をさらに高めるため、HPは、経営幹部(局長クラス以上)の完全な男女平等、30%を超える技術系とエンジニアリング部門の女性社員の割合、社内の少数人種 / 民族の割合を労働市場における割合と同等以上にすることという3つの目標を発表した。スレートン・ブラウン氏によると、同社は2030年までにこれらの目標を達成する決意だという。

スレートン・ブラウン氏に、これらの目標と、その達成計画、および説明責任の履行計画について、詳細を聞いた。

【編集部注】このインタビューはわかりやすくするために編集されている。

TC:貴社がこの目標を掲げるようになったきっかけと、社内の(性別、人種、民族などに関する)平等性を高めるためにこれまでに実施してきた取り組みについてお聞かせください。

スレートン・ブラウン氏:インクルージョンとダイバーシティは当社が創業時から重点的に取り組んできた課題です。今、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大と隔離生活、およびGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏の殺害事件が米国全体に及ぼした影響により、人種的平等と既存の体系的かつ構造的差別に対する対応が一層強化されました。

これをきっかけに、当社では「人種平等と社会正義に関するタスクフォース(Racial Equality and Social Justice Task Force)」を立ち上げることができました。その目的の1つは、とりわけHP社内の黒人やアフリカ系米国人のレプリゼンテーションを高めることです。また、当社と協力関係およびパートナー関係にある黒人およびアフリカ系米国人のサプライヤーやベンダーに、より多くのチャンスを与えるために必要なことについても考えています。最終的には、どうすれば国内外のコミュニティに影響を与えることができるか、という点に尽きます。具体的には、無意識の偏見をなくすためのトレーニングを提供するための政策と法律、および市政機関との交渉などです。これらすべての活動が始まり、1年が経過した今、大きな前進が見られていると思います。

HPのダイバーシティ担当最高責任者レズリー・スレートン・ブラウン氏(画像クレジット:HP)

また当社は、Human Rights Initiativeも立ち上げ、平等と人権の保護を進めています。気候変動対策と人権保護の実現に向けて、本当に真剣に取り組んでいます。

TC:貴社は、管理職と技術職におけるバランスの是正、例えば女性比率を向上させるためにさまざまな対策を講じてきたように思います。それは人種間格差の是正だけに限定されません。こうしたさまざまな目標の具体的な内容と、ダイバーシティとインクルージョンを高めるためにこれまでに貴社が実施した内容についてお聞かせください。

スレートン・ブラウン氏:当社は、PC・プリンター部門として2015年にHP Co.から独立したとき、何よりもまず、取締役会のダイバーシティを実現することを強く意識していました。現在、当社の取締役会の構成を見ると、約45%が女性、35%が少数民族、取締役会だけでマイノリティーが60%を占めています。当社の取締役会のダイバーシティはテック業界の中でも最も高くなっています。取締役会の構成(高いダイバーシティ)が重要なのは、それによって企業のビジョンを推進し、企業戦略を導くことができるからです。

これは、私が当時この役職に就いたときに最初に行ったことの1つです。目的は、我々が行うすべての活動の中にダイバーシティ、平等性、インクルージョンを埋め込むことでした。

TC:貴社はどのようにして説明責任を果たしていますか。

スレートン・ブラウン氏:一般社員から取締役会まで、我々の業務内容について真摯にお答えできるようにしています。我々がまとめたダッシュボードやマトリックスは取締役会に回され「実施内容、監視方法、最終的にもたらされたインパクト」が伝えられます。これが我々が今構築している仕組みです。私はこれをインフラと考えています。つまり、取締役会から経営幹部チームまで誰もが説得力のある説明をする用意ができている状態です。

この目標を設定したら、アクション、プログラムを推進し、インフラとエコシステムを介して実行に移し、目標を達成します。これには、米国女性エンジニア学会(Society of Women Engineers)、米国黒人エンジニア協会(Society of Black Engineers)、米国アジア人エンジニア協会(Society of Asian Engineers)などの組織と連携することも含まれます。連携するだけでなく、そうした組織を構築したり組織に投資したりして、パートナー関係を構築し、パイプラインを確保します。

TC:社内のレプリゼンテーションを労働市場のレプリゼンテーションと同等以上にするというのは、具体的にどのような意味でしょうか。

スレートン・ブラウン氏:確かに混乱を招く表現だったかもしれません。これは、全米の人口動態に一致させるという意味ではなく、テック業界の労働市場の人口動態に一致させるという意味です。例えば、当社の管理職におけるアフリカ系米国人の割合は約4%です。当社の目標は、これを2025年までに6%以上にすることです。

TC:これらの管理職や技術職に応募する女性やマイノリティーの数が少ないために目標の割合に届かなった場合はどうしますか。例えば、資格のある白人男性を排除しますか。

スレートン・ブラウン氏:我々は人権は平等という立場に立っています。また、男女間、人種間の平等と社会正義活動を推進することにも重点を置いています。具体的には、パイプラインの多様性や人材プールを確保する方法を探っています。

私は人材の不足など存在しないと考えています。問題は人材を確保する方法にあります。従来は、スタンフォードやMITなどの一流大学から人材を確保してきました。でも、頭の良い人たちや優れた人材はどこにでもいるのです。経済的に苦しいため、コミュニティカレッジに進んでから一流校に転入する学生もいます。このように、いわゆる歴史的黒人大学(HBCU)以外の選択肢もあります。

例えば、HPでは、HBCUに質の高いプログラムを開設して、従来なら特定の職種に応募する機会さえなかった学生たちにその機会を与え、それだけでなく、HPの拠点を実際に訪れてインターンとして働く予定の部署を見学できるようにもしています。当社の目標は、もちろん、業績に基づいてインターンを正規社員に変換する(昇格させる)際に、100%の変換率を達成することです。つまり、これは学生から社員になるまでのすべてのプロセスを支援する包括的なアプローチです。

女性や少数民族に関するこうした目標を立てると、白人男性は放って置かれている印象を受けるかもしれません。ですが、テック業界では白人男性は多数派なのです。HPで行っているのは、インクルージョンと相互信頼に基づく力強い文化の構築です。ですから、白人男性も雇用していますし、有能な女性、少数民族、さらには、退役軍人や身体障害者も採用しています。

要は、採用活動の幅を広げ、学生の選択肢として当社をアピールし(これは当社の目標、つまりレプリゼンテーションの低いグループの選択先となること)、そして入社した人たちを歓迎することです。つまり、学生たちを引き付け、雇用し、保持し(会社に留まってもらい)、教育や育成に投資し、昇格を支援します。これが、当社の取り組みです。

TC:人権のために貴社が行っている取り組みには、他にどのようなものがありますか。

スレートン・ブラウン氏:今回の発表は、全従業員とその能力向上を強化する方法に関することであり、物事を実行する際には、その方法も内容と同じくらい重要であることを示すものです。それは人権を尊重し、人権を最優先するということです。当社がサプライチェーンで働く人たちに約束しているのは、当社のベンダーが現代版の奴隷制度、つまり、学位や教育のある人たちを取り込む一方で、法外な手数料を課しパスポートを取り上げるようなシステムに労働者を放り込むようなやり方に加担しないようにすることです。

当社は、環境を作り、可視性を実現し、回復力のあるサプライチェーンを作ることで、そのような現代版の奴隷制度に加担しない、人権を尊重する企業でありたいと思っています。そして、当社の製造サプライヤーにもその目的に貢献して欲しいと思っています。

TC:報道向け資料には、HPは、管理職における男女平等の実現にコミットした最初のFortune 100社テック企業であると記載されています。貴社が先例を作り、他社がそれに続くようになることを願っています。

スレートン・ブラウン氏:そうですね。これは本当に大きな目標ですし、我々が実行している戦略とベストプラクティスの中には、試しに女性を採用するといったものではなく、新しい標準の確立を目指しているものもあります。

当社の目標とビジョンは、世界で最も持続可能性のある公正なテック企業になることです。ですから、口だけではなく、実行に移す必要があります。私はこのHPの文化が好きです。議論を尽くして、実際にアクションを起こし、2030年までに持続可能性のある公正な企業になるという目標を達成したいと思います。

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タグ:HPダイバーシティインクルージョンインタビュー

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

米アマゾンが従業員の薬物検査項目からマリファナを除外

Amazon(アマゾン)は、同社の薬物検査プログラムからマリファナを除外することを短いブログ記事で発表した。つまり、今後会社はマリファナをアルコールと同様に扱い、仕事時間以外に従業員は、ビールやマリファナたばこを安心して楽しめるという意味だ。もちろんアルコールと同じく、業務上事故が起きた際には、機能検査および薬物スクリーニングを行うとAmazonは述べている。

唯一の例外は、運輸省の規制を受けている職種、すなわちトラック運転者と重機操縦者だ。これらの仕事の求職者は、引き続きマリファナのスクリーニング検査を受ける。

この変更は、米国社会が国の大麻合法化に急速に寄り添い始めたことを受けたものだ。全米の有権者は、保守の牙城を含め、市民の大麻使用を許す法案を次々と通過させている。医療から娯楽的使用まで、米国は合法薬物に目覚めつつあり、Amazonも歴史に逆行したくない。

Amzonは、Worldwide Consumer(全世界消費者)部門CEOのDave Clark(デーブ・クラーク)氏の書いた声明で、政治状況が変化したことで大麻の合法化と犯罪記録抹消への道が開かれたとの認識を示した。

そして私たちはこれがAmazonだけにとどまらない問題であることを認識し、当社のパブリックポリシーチームは、The Marijuana Opportunity Reinvestment and Expungement Act of 2021(MORE Act)を積極的に支持いたします。これはマリファナを国レベルで合法化し過去の犯罪記録を抹消するとともに影響受けた人々に投資する連邦法案です。他の雇用者も我々に合流し、立法府が迅速に動いてこの法案を通過させることを願っています。

このポリシー改訂は、同社の労働者による組合結成が近づく中、Amazonが実施している最新の取り組みだ。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Amazon大麻アメリカ

画像クレジット:Bloomberg Creative / Getty Images

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(文:Matt Burns、翻訳:Nob Takahashi / facebook

草の根運動グループ「インディヴィジブル」が政治的な誤報を無力化するボランティア隊の訓練を開始

写真は2021年4月27日、米国ワシントンD.C.の連邦議会議事堂の外にある米国旗。バイデン大統領と下院民主党議員は、児童税額控除の延長をどれだけ優先させるかで衝突している

民主党の草の根運動グループ「Indivisible(インディヴィジブル)」は、誤った情報に対抗するために、独自のステルス・ ファクト・チェッカー・チームを起ち上げようとしている。これは、政治的メッセージを発信する兵隊を訓練し、情報の塹壕に送り込む実験だ。

「Truth Brigade(真実の旅団)」と名づけられたこのボランティア部隊は、右派が好みそうな誤解を招く情報に対抗するためのベストプラクティスを学ぶことになる。彼らは隔週で組織と連携し、政治的な誤報をかき消すための進歩的なメッセージの波動を放ち、その過程でBiden(バイデン)氏の立法計画を後押しする。

1月6日に行われたソーシャルメディアの大掃除の後にも誤報が広範囲に残っていることを考えると、このプロジェクトは確かに大変な仕事になるだろう。

「これは、ソーシャルメディアのプラットフォームによる非常に無責任な行動によって生じたギャップに、ボランティアの力を投じようという試みです」と、Indivisibleの共同設立者で共同執行役員であるLeah Greenberg(リア・グリーンバーグ)氏は、TechCrunchに語った。「彼らに最終的に対処する責任があるものに、私たちが立ち向かおうとしているのは非常に残念なことです」。

グリーンバーグ氏は、2016年の選挙後に夫とともにIndivisibleを設立した。この組織は、グリーンバーグ夫妻と他の2人の元下院職員が、議員に働きかける市民活動のためのハンドブックを出版した際に、大きな反響を呼んだことから発展した。このハンドブックの内容は、トランプ元大統領とその政策に反発することを米国人に呼びかける左派の「抵抗」時代の活動の中で旋風を巻き起こした。

IndivisibleのTruth Brigadeプロジェクトは、コロラド州で行われた試験的なプログラムから発展したもので、グループのシニアオーガナイザーであるJody Rein(ジョディ・ライン)氏が、自分の州で見たものに懸念を抱いたことが発端となった。2020年秋に始まったパイロットプログラムは、現在45州で2500人のボランティアが参加するまでに成長した。

メッセージの中心となるのは、バイデン氏の野心的な立法案である米国救済計画(American Rescue Plan)、選挙改革法案(HR-1)そして近々予定されているインフラ投資計画(Infrastructure Package)だ。ボランティアチームは、これらの法案に関する政治的な誤報を直接否定するのではなく、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)など既存のソーシャルメディア世界の中で、法案を宣伝し、誤った主張を否定するメッセージを発信する。

Indivisibleの中で組織化されたこのネットワークは、多くの偽情報キャンペーンが自分たちのコンテンツを拡散させる時に使うのと同じ戦術を用いて、これらの半有機的なコンテンツをクロスプロモーションする(自分たちの起源を隠すためにあからさまな努力をしているグループの場合、Facebookはこれを「組織的非真正行動」と呼んでいる)。これらの投稿はボランティア活動の一環であり、ターゲットを絞った広告ではないため、ラベル付けされないが、中にはTruth Brigadeのキャンペーンに関連するハッシュタグが付くものもある。

ボランティアは、進歩的な話を「真実でサンドイッチ」にして提供するように訓練されているが、その際には、反論しようとする誤った情報を増幅させないように気をつけなければならない。Indivisibleにとって、政治的な誤った情報をさらに焚きつけることがないようにボランティアを訓練することが、この活動の重要な部分を占めている。

「私たちが知っているのは、実際に偽情報を広め、悪者の仕事を代行している者たちがいるということです」と、グリーンバーグ氏はいう。「私たちはそのような者たちとの戦いに参加せずに、人々が実際に賛同できるように話を進めることで、人々の反応を得ようとしています。言い争いになれば、それは彼らの思う壺ですから」。

真実のサンドイッチ
1. 真実から始める。最初のフレームを取ることが有利になります。
2. 嘘を示す。できれば具体的な言葉の増幅は避ける。
3. 真実に戻る。常に嘘よりも真実を繰り返す。
詳しくはGil Duranと一緒にFrame​Lab(フレームラボ)のエピソード14でお聞きください。

グリーンバーグ氏は、2022年に民主党が再び直面するであろう問題の前兆として、ジョージア州選出の下院議員であるMarjorie Taylor Greene(マージョリー・テイラー・グリーン)氏がソーシャルメディア上で繰り広げた怒りの連鎖を挙げている。テイラー・グリーン氏は、QAnon(キューアノン)を支持したことで知られているが、議会におけるすべての委員会の役割から外され、マスクの必要性をホロコーストになぞらえる発言によって、一部の共和党員からも彼女の除名を求める声が上がった。

グリーン氏のような政治家は、突拍子もない主張や簡単に論破されてしまう陰謀論で、しばしば左派を刺激している。グリーン氏のようにネット上で左派を刺激する政治家は多くのエネルギーを消費しているが、それに対抗するエネルギーは、怒りに任せたリツイートの衝動を抑え、進歩的な政治メッセージを広めることに費やす方が良いと、グリーンバーグ氏は考えている。

「事実を確認するだけでは十分ではありませんし、反応するだけでも十分ではありません。なぜなら、基本的に私たちは、防御的な立場で活動しているからです」と、グリーンバーグ氏は語っている。

「私たちは、人々が本当に信じて受け入れることができるような、偽の情報や陰謀論から人々を守ることができるような、ポジティブなメッセージを積極的に広めていきたいと思っています」。

Indivisibleにとって、このプロジェクトは長期的な実験であり、ターゲット広告を超えた新しいタイプのオンライン草の根政治キャンペーンへの道を開く可能性がある。そしてそれは、ノイズの海の中でシグナルを高めるものになることが期待される。

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画像クレジット:Stefani Reynolds/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

位置情報関連ソリューション提供のGeoloniaがMedical DOCの「新型コロナワクチンマップ」開発に貢献

GENOVA(ジェノバ)が運営する医療用プラットフォーム「Medical DOC」(メディカルドキュメント)は6月1日、同プラットフォーム上で「新型コロナワクチンマップ」と「自費PCR検査マップ」の提供を開始した。これを技術面で支えているのが、位置情報関連のソリューションを提供するGeolonia(ジオロニア)だ。

「新型コロナワクチンマップ」は、新型コロナのワクチン接種が受けられる医療機関や施設を地図上で探せるサービス。厚生労働省の公開情報や、GENOVAと協力関係にある医療機関から提供された情報に基づく、日本全国約4万件の医療機関や施設の情報が掲載されている。

地図を広域表示にすると、現在地周辺の医療機関や施設の数が市区町村ごとに赤い円の中に示され(クラスター表示)、どこにどれだけの施設があるかが大まかに把握できる。拡大表示にすると、個々の医療機関や施設の名称と位置が表示され、ひとつを選んでクリックすると、その施設の住所や受付時間などの詳しい情報と、接種されるワクチンのメーカー、接種の予約の可否が示される。可能な場合はその場で予約が行える。

また、同時に公開された「自費PCR検査マップ」に切り替えると、PCR検査が受けられる施設の検索が可能になる。こちらは、各施設の住所や受付時間の他、検査方法、検査費用、証明書の発行の可否なども示される。

Geoloniaは、位置情報に関連する技術やソリューションを提供するスタートアップ。「新型コロナワクチンマップ」と「自費PCR検査マップ」では、地図の画像データのベクトルタイル化とホスティング、JavaScriptの開発で協力している。ベクトルタイルとは、地図の画像データを軽量なベクター形式に変換し、小さなタイル状に分割したパケットとしてウェブに送信する技術。データ量が小さくなるため、約4万件分のデータも軽快に表示できるようになった。また、画像が符号化されることからデータ処理の自由度が高まり、アイコンのカスタマイズ、市区町村ごとの施設のクラスタティング表示、対象外の病院を非表示にするといった設定変更も可能になった。

今後は、ワクチン接種を実施する歯科医やクリニックが順次追加される予定。

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不正なやり方でCookie同意を求めるウェブサイトの粛清が欧州で始まる

あなたはCookie(クッキー)のポップアップにうんざりしていないだろうか?欧州では、ウェブサイトの閲覧時に現れる「データの選択」の通知が、オンラインで行おうとしていることを邪魔し、イライラさせられたり、混乱させられたりするため、ウェブが「使いにくい」という苦情が多数のユーザーから寄せられている。

煩わしいから、不気味な広告のような誰も好まないものを動かす必須でないCookieは「すべて拒否」できるボタンがあればいいのに、と思う人もいるだろう。

しかし法規では、ユーザーが明確に「拒否を選択(オプトアウト)する」意思表示がなされるべきだとしている。だからEUの「規制好きな官僚主義」が問題だと訴える人々は、文句をいう対象を間違えている。

Cookieの同意に関するEUの法規は明確だ。ウェブユーザーには「受け入れる」か「拒否する」かというシンプルで自由な選択が提供されるべきというものである。

問題は、単にほとんどのウェブサイトがこれを遵守していないということだ。例えば、それらのウェブサイトは、非常にシンプルな「受け入れる」(すべてのデータを渡す)と、非常に解り難くてイライラする退屈な「拒否する」(場合によっては拒否の選択肢がまったくない)という、歪んだ選択肢を提供しているところもある。これは法規を馬鹿にした行為だ。

勘違いしてはいけない。これは意図的に法律を無視するように作られたのだ。このようなサイトは、あえて非対称な「選択肢」を提供することで、人々を疲弊させ、データを奪い続けようとしているのだ。

しかし、現行のEU規制では、そのようなCookieの同意を求めるやり方は認められていないので、こういうことをしているウェブサイトは、欧州一般データ保護規則(GDPR)やeプライバシー(ePrivacy)指令の下、規則に背いたとして多額の罰金を科せられることになる。

例えば、2020年末にはフランスで、Google(グーグル)とAmazon(アマゾン)が、ユーザーの同意なしに追跡用のCookieを投下したとして、前者に総額1億ユーロ(約134億円)、後者には3500万ユーロ(約47億円)の罰金が科せられた。

罰金は確かに目を見張るほど高額だ。だが、不正なCookie同意に対するEUの取締りは、まだそれほど見られない。

これは欧州各国のデータ保護機関が、ウェブサイトをコンプライアンスに導くために、ほとんどの場合、穏便なアプローチをとってきたためである。しかし、取締りがより厳しくなる兆候もある。その1つは、データ保護機関が、適切なCookieの同意とはどういうものかを詳細に明記した指針を発表したことだ。これで意図的に間違ったことをしても言い訳の余地がなくなる。

一部のデータ保護機関は、企業がCookieの同意フローに必要な変更を加える時間を確保するため、コンプライアンスの猶予期間を設けていた。しかし、今やEUの一般データ保護規則(GDPR)が適用されてから、まる3年が経過している。もはや、いまだにひどく歪んだCookie同意バナーを掲載しているウェブサイトには、正当な理由はない。それはそのサイトが法律を破り、取り締まられない幸運を祈っている状態であることを意味する。

Cookie同意に関する取り締まりがすぐに始まることを予感させる理由は他にもある。欧州のプライバシー保護団体「noyb」は現地時間5月31日、コンプライアンス違反を一掃するための大規模なキャンペーンを開始したと発表。年内に最大1万サイトのコンプライアンスを確認し、違反しているサイトには自動的に苦情を申し立てるソフトウェアを開発したという。このキャンペーンの一環として、noybは違反者が規則を遵守するためのガイダンスも無料で提供している。

まずはその第1弾として、EU全域(33カ国)における大小さまざまなサイトに対し、すでに560件の苦情を申し立てたことが発表された。noybによると、苦情の対象となっているのは、Google(グーグル)やTwitter(ツイッター)などの大手企業から「ある程度の訪問者数を持つ」ローカルなページまで多岐にわたるという。

「コンサルタントからデザイナーに至るまで、業界全体が、仮想の同意率を確保するために、おかしなクリックの迷宮を開発しています。人々をイライラさせて『OK』をクリックさせることは、GDPRの原則に明らかに違反しています。この法律に従い、企業はユーザーの選択を容易にし、システムを公正にデザインしなければなりません。これらの企業は、実際にCookieを受け入れたいと思っているユーザーが全体の3%しかいないことを公に認めています。しかし、90%以上のユーザーは『同意』ボタンをクリックするように誘導することができるのです」と、nybの会長であり、長年にわたりEUのプライバシーキャンペーンに携わってきたMax Schrems(マックス・シュレムス)氏は声明の中で述べている。

「企業は『はい』か『いいえ』という単純な選択肢を与える代わりに、あらゆる手段を用いてユーザーを操作しています。私たちは、15種類以上のよくある悪用を確認しました。最も多く見られる問題は、最初のページに『拒否』ボタンがないことです」と、シュレムス氏は続けている。「私たちは欧州で人気のあるページに焦点を当てています。このプロジェクトで申し立てる苦情は、1万件を容易に超えるだろうと予想しています。私たちの団体は寄付によって運営されているため、法律事務所とは違って、企業に無料で簡単な解決方法を提供しています。ほとんどの苦情が迅速に解決され、バナーがもっともっとプライバシーに配慮したものになることを、私たちは期待しています」。

noybはその活動を拡大するため、Cookieの同意フローを自動的に解析してコンプライアンス上の問題点を特定し(最上層で「拒否」ボタンが提供されていない、ボタンの色がまぎらわしい、偽の「legitimate interest(正当な利益)」によるCookieの受け入れが行われている、など)、違反者にメールで送信できる(noybの法務担当者が確認してから)報告書のドラフトを自動的に作成するツールを開発した。

これは、組織的に行われている悪質なCookie操作に取り組むための、革新的で拡張性のあるアプローチと言える。実際に目立った変化を起こし、おぞましいCookieポップアップを一掃することができるだろう。

noybは、まず違反者に警告を与え、1カ月以内に違反行為を是正させる猶予を与える。それでも改善されなければ、そのサイトが関連するデータ保護機関に正式な苦情を申し立てる(そして違反者には涙が出るほど高額な罰金が課せられるだろう)。

その最初の取り組みでは、この地域で最もよく使用されているテンプレートツールの1つであるOneTrust(ワントラスト)の利用同意管理プラットフォーム(CMP)に焦点を当てている。このツールは、欧州のプライバシー研究者が以前、顧客ベースにプレチェックボックスのような非準拠の選択肢を設定するための豊富なオプションを提供していると指摘していた。困った話だ。

noybの広報担当者は、OneTrustのツールが人気が高いため、今回はそれから始めたと語っているが、将来的には他のCMPにも対象を拡大していくことを認めている。

noybが始めたCookie同意に関する苦情の取り組みは、現在多くのウェブサイトで展開されているダークパターンの腐敗ぶりを露呈させた。noybが確認した500以上のページのうち、81%は最初のページで「拒否する」選択肢を提供しておらず(つまり、ユーザーは拒否オプションを見つけるためにサブメニューを探さなければならない)、73%はユーザーを騙して「同意する」をクリックさせようとする「欺瞞的な色とコントラスト」を使用していたという。

noybの評価では、90%が法律で定められている「容易に同意を撤回できる」方法を提供していないこともわかった。

第1弾の苦情申立て対象となったサイトで見つかったCookie遵守に関する問題(画像クレジット:noyb)

このことは、大規模な法規制の施行がまったく成功していないということの現れだ。しかし、不正なCookie同意の横行も、もはやこれまでといったところだろう。

クロールしたウェブサイトに基づき、EU全域でCookieの不正使用がどの程度蔓延しているかを把握できたかと尋ねられたnoybの広報担当者は、その過程には技術的な問題があるため、判断は難しいと答えたが、しかし最初に収集した5000サイトから3600サイトに絞られたと述べた。そして、そのうち3300サイトがEU一般データ保護規則に違反していると判断できたという。

残りの300サイトについては、技術的な問題があるものと、違反していないものがあったが、やはり大部分(90%)は違反していると判断された。これほど多くの規則違反があるのだから「不正な同意」の問題を改善するには組織的なアプローチが必要だ。つまり、noybによる自動化技術の使用は、非常に理に適っている。

この非営利団体は、他にも革新的な方法を考えている。noybは欧州の人々が「迷惑なCookieバナーを使わずに、バックグラウンドでプライバシーに関する選択を知らせることができる」自動化されたシステムの開発に取り組んでいるという。

この記事を書いている時点では、このシステムがどのように機能するかについての詳細は明らかにされていないが(おそらくブラウザのプラグインのようなものになると思われる)、noybは「今後数週間のうちに」詳細を発表すると語っているので、なるべく早くわかることを期待したい。

「すべてを拒否する」ボタンを自動的に検出して選択することができる(たとえ、最も普及しているCMPのサブセットのみに有効であっても)ブラウザプラグインは「Do not track(追跡するな)」の夢を復活させるかもしれない。少なくとも、Cookieバナーによるダークパターンの弊害に対抗し、不正なCookieをデジタルの塵にするための強力な武器となるだろう。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:CookieヨーロッパGDPREUeプライバシー規則noyb

画像クレジット:Lisa Zins Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EUの新型コロナワクチン「デジタルパス」が稼働、ドイツなど7カ国が先行導入

欧州連合(EU)の新型コロナウイルスのワクチン接種あるいは検査結果を域内で証明する汎EU「デジタルパス」を支えるシステムの運用が6月1日に始まった。いくつかのEU加盟国がゲートウェイにつながり、7月1日の完全始動までさらに多くの加盟国が加わることが予想されている。

EUの新型コロナデジタル証明は、EU市民の新型コロナステータス(ワクチンを接種したかどうか、最近の新型コロナ検査が陰性だったかどうか、あるいは新型コロナからの回復の証明)を確実に認証しようというもので、EU市民が域内で国境を越えるとき、その旅を安全なものにするのが狙いだ。

デジタルパスは、改ざんを防ぐのに公開鍵暗号方式を使って認証されたQRコードとデジタル署名に頼っている。デバイスへのアクセスを持たない人が使える紙ベースの認証もある。

テクニカルテストを終え、準備の整った加盟国は任意で認証の発行や検証を開始できる、と欧州委員会は6月1日に述べ、現時点で7カ国(ブルガリア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、クロアチア、ポーランド)が開始する意向だ。

他の国は、すべての機能が国内全域で展開されてからEUデジタル新型コロナ認証を立ち上げることにしている、と欧州委員会は付け加えた。加盟国のシステムアクティベート状況はこちらのウェブページで確認できる。

欧州委員会によると、5月10日以来、EUの22カ国がゲートウェイのテストを成功させ、関連する規則が適用される7月1日までに最大のアップデートを行いたい考えだ。

しかしすべてをうまく接続させるのにさらに時間が必要な加盟国のために、認証発行に6週間の「段階的導入期間」が認められている。つまり、最も遅い実行は夏が終わるころになるかもしれないことを意味する(6月までに域内全域で実装するというEU議員らの初期の目標は常に野心的だったようだ)。

欧州委員会は、認証の署名キーは各国のサーバーに保存されると指摘し、新型コロナデジタル認証の検証プロセスではパーソナルデータが「交換されたり保持されたり」することはないと話す。こうしたキーはゲートウェイ経由で各国の承認アプリあるいはEU全域で使われるシステムによってアクセスできる。

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欧州委員会はまた、EU加盟国による展開をサポートすべく、証明の発行、ストレージ、検証のためのレファレンスソフトウェアとアプリも開発し、GitHubで公開した。同委員会によると、これまでに加盟国12カ国がこのコードを利用した。

EU各国の当局が新型コロナデジタル認証の個人への発行を担当する。市民が認証を取得するには、新型コロナ検査センターや地元の健康衛生当局、あるいは国家eHealthポータル経由など、さまざまなルートがある。

ゲートウェイの立ち上げに関する声明の中で、EUの健康・食品安全担当委員Stella Kyriakides(ステラ・キリヤキデス)氏は実行に取り掛かり、完了するよう加盟国に促した。

「EUデジタル新型コロナ認証は、市民のための効果的なeHealthソリューションに加わった価値です」と同氏は述べた。「システムが休暇シーズン前までに機能するよう、今後数週間で全加盟国が認証の発行、保存、検証を行う自国のシステムの準備を完了させることが重要です。EU市民は再び旅行することを楽しみにしており、安全に旅行したいと考えています。EU認証の取得はそれに向けた重要なステップです」。

新型コロナデジタル認証の立ち上げについては、欧州委員会委員長のUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏もコメントし、おそらくパンデミックが2022年夏までに終息すると仮定し、システムは1年間のみ活用されると述べた。

「EU認証は、我々の価値を示すデジタルツールの最たる例です」と2021デジタル会議でのスピーチで同氏は話した。「EUはプライバシーを尊重します。パーソナルデータは交換または保持されません。EUは包括的です。ワクチンを接種していない人は検査や回復のデジタル証明を取得できます。スマートフォンを持っていない人は紙の証明を入手できます。証明でもって我々はパンデミックの中にあっても人々が自由に行き来できるようにしたいと考えています。だからこそこのシステムは1年間のみの活用となっています。欧州はこの分野で先頭に立っており、グローバルレベルで基準を設定できます」。

スピーチの中で同氏はまた、別のデジタル提案についても予告した。別の案とは、信頼できるオンラインIDを欧州の人々に提供するというもので、このIDは厳密に必要なもの以上のデータを提供させられることなく域内の政府や企業とやり取りするのに使えるというものだ。

「欧州の人々に新しいデジタルIDを提供したいと考えています。信頼を保証し、オンライン上でユーザーを守るIDです。案をまさに提示しようとしているところです」と同氏は述べた。「誰もが自分のIDをオンラインで管理し、欧州中の政府や企業とやり取りすることができるようになります。手近な目的のために必要以上に多くのデータを開示することを強制されるべきではありません。オンラインでホテルの部屋を予約するのに、私がどこから来て、誰が私の友達なのかを誰も知る必要はありません。案では大手オンラインプラットフォームのモデルの代替となるものを提案しています。我々は人間中心のデジタルトランジションを信じています」。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:EU新型コロナウイルスワクチンプライバシー個人情報

画像クレジット:Sebastian Gollnow / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

受刑者の社会復帰を支援するUptrustは無駄な大量収監に浪費される数千億円の問題に取り組む

「technical violation(規則[法則]上の違反、厳密な法解釈による違反)」は、米国の現代刑事司法制度を象徴する、プロセスと手続きの不条理な泥沼を埋めるために米国政府が使用しているオーウェルの用語の1つだ。犯罪者が刑を執行した後、彼らはしばしば保護観察下に置かれ、どこに行くことができるか、誰に会うことができるかについての多数の規則をともなう。規則上の違反を犯した人は、仮釈放の審理に数分遅れるという単純な処置のために、何カ月あるいは何年も刑務所に戻されることが少なくない。

規則上の違反は、私たちすべてにとって高くつく。2021年初め、ニューヨークの首都地区の新聞Times Unionは、コロンビア大学およびIndependent Commission on New York City Criminal Justice and Incarceration Reform(ニューヨーク市刑事司法と収監の改革に関する独立委員会)の報告書に基づいて「ニューヨーク州は他のどの州よりも多くの人々を規則上の仮釈放違反で収監しており、その率は全国平均のほぼ3倍である」と報告し「これらの人々の再収監には、納税者の負担として少なくとも6億8300万ドル(約745億円)かかる」と伝えている。

オーウェル的であり、カフカ的でもある。そして公共資源の破滅的な浪費となっている。しかし、それは潜在的な解決策へとつながる問題でもあり、Uptrustはそこを改善しようとしている。

Uptrustは、社会復帰した人々を公選弁護人や裁判記録と結びつけるサービスを提供しており、規則上の違反を防ぐために必要なカレンダー、アポイントメント、ルール、手続きを確実に整備することで、彼らの通常の生活への復帰を促進するとともに、納税者の多大な費用を節約することを目指している。

同社は米国時間5月18日、Decaration FundLuminateStand Together Ventures Labという3つの主要投資家から200万ドル(約2億2000万円)のシード資金を調達したことを発表した。これは2020年TechCrunchが報じた130万ドル(約1億4000万円)のラウンドに続くものだ。

2015年に設立され、2016年に最初の製品をローンチした同社は、Jacob Sills(ジェイコブ・シルズ)氏とElijah Gwynn(イライジャ・グウィン)氏が共同設立し、刑事司法制度を改善する方法を模索していた。両氏は保釈保証金のような領域に目を向けながらも、基本的な問題に立ち返り続けた。「あまりに多くの人が制度から脱してません【略】そして彼らは再び戻ってしまいます」とシルズ氏はいう。

Uptrustは、テキストメッセージングや独自のアプリを通じてサービスを提供している。被告側の弁護士は刑事司法制度に関わる他のメンバーより依頼人に通じやすいことから、同社のサービスはおおむね公選弁護人とリンクしている。

Uptrustのアプリは、保護観察官との迅速なチェックインを可能にし、主要な予定表のアポイントメントをモニタリングする(画像クレジット:Uptrust)

シルズ氏によると、同社は何年も前からさまざまなプロダクトを試しながら成長を続けており、現在では28州で150サイトを展開し、18カ月前の30サイトから増加しているという。現在2カ所でサービスを利用しているバージニア州は、2021年末から2022年初めにかけて同サービスを州全域に拡大する予定だ。

同社は現在、サービスを利用する政府に対して料金を請求しており、その目的は、支払い資金が不足しがちなエンドユーザーの金銭的負担を抑えることにある。しかし長期的には、ユーザーが社会に再参入する際に、増加しているユーザーを新しいサービスにつなげるという大きな機会があると捉えている。「彼らの半数以上は、ヘルスケアへのアクセスに問題を抱えています」とシルズ氏は語り、ヘルスケア、金融、銀行、住宅など、さまざまな分野でアプリが将来的に役割を果たす可能性があるとの見方を示した。

それでも同氏は、これは多くの伝統的なベンチャーキャピタルにとって魅力的ではない「新規市場」であることを認識していた。そこで今回の資金調達で、シルズ氏とそのチームは刑事司法問題に深く染み込んだ資金をターゲットにすることを決断した。解決されようとしている問題、そしてUptrustが自身の使命を果たしながらビジネスとして成功する方法について、先見の明を示してくれることを期待してのことだ。

彼らはまた、シルズ氏のいう「思考における優れた多様性」を求めた。Decarcation Fundはまさにその言葉どおりに投資しており、進歩派のPam Omidyar(パム・オミダイア)氏とPierre Omidyar(ピエール・オミダイア)氏によって設立されたLuminateは、市民の関与に焦点を当てた慈善事業を行っている。一方、Stand Together Ventures Labは、Charles Koch(チャールズ・コッホ)氏が設立したStand Togetherによる資金提供を受けている。コッホ氏は、共和党や保守派の運動に広く資金を提供しているだけでなく、近年では、民間人に対する政府の力を最小化するための刑事司法改革への取り組みも強化している。

Decarceration Fundでマネージング・プリンシパルを務めるChris Bentley(クリス・ベントレー)氏は、Uptrustがこうした特殊な人々が何を必要としているかを正確に理解していると確信し、同社を最初の投資先に選んだ。「この分野には、善意の会社が意図せぬ結果をもたらしてきた重大な歴史があります」とベントレー氏は語る。同ファンドは、明確な目標を備え、ポジティブな結果をもたらすビジネスモデルを有する企業への投資に注力している。「私たちの投資委員会の半分は自らが創業者ですが、同時に、この制度に関する実際的な経験を持つ市民でもあります」と同氏は続けた。

Uptrustは現在、サンフランシスコを中心に15人の従業員を擁するまでに成長し、東海岸にも拠点を広げている。「営利企業が残した実績はあまり芳しくありません。そうした企業のほとんどは、刑事司法制度が望むものを作っているだけなのです」とシルズ氏は指摘した。「私たちは、収益、成果、そして実質上の影響力をもたらすことを実証しようとしています」。

【2021年5月18日更新】LuminateはOmidyar Networkの一部ではなく、パム・オミダイア氏とピエール・オミダイア氏が運営するThe Omidyar Groupから独立した資金を受けている。

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タグ:Uptrust資金調達アメリカ犯罪

画像クレジット:MARVIN RECINOS / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

米国がシャオミの中国共産党軍事企業指定を解除

トランプ政権の標的にされていた中国の有名なテクノロジー企業の1つXiaomi(シャオミ)がこのほど「Communist Chinese Military Company」(CCMC、中国共産党の軍事企業CCMC)を指定している政府のブラックリストから除外された。

2021年5月25日に提出された文書によると、コロンビア特別区連邦地方裁判所は1月、米国防総省によるXiaomiのCCMCへの指定を取り消した。

関連記事:トランプ政権が世界3位の中国スマホメーカーXiaomiも防衛ブラックリストに追加

Xiaomiは2月、軍事ブラックリストに載せたことで米政府を訴えた。3月、にワシントンD.C.裁判所はXiaomiに対し、DoD指定に対する予備的差し止め命令を出した。DoD指定は「恣意的で気まぐれな」決定だとして、すべての米国人がXiaomiの証券を購入したり所持したりすることを禁止するものだった。この判決は、中国のスマートフォンメーカーに対する「修復不能な損害」を防ぐために下された。

関連記事:シャオミがブラックリスト入りを巡り米政府を提訴

ブラックリストから外れたことについて、Xiaomiは次のように述べている。

当社は世界中のユーザー、パートナー、従業員、株主のみなさまからの信頼とご支援に感謝しています。当社は、当社がオープンで透明性が高く、株式を公開し、独立して運営・管理されている企業であることを改めて表明します。当社は、ユーザーのみなさまに信頼性の高いコンシューマーエレクトロニクス製品とサービスを提供し、革新的な技術によって世界中のすべての人々がより良い生活を享受できるように、誠実な価格ですばらしい製品を絶え間なく作り続けていきます。

Xiaomiの国内競合企業であるHuawei(ファーウェイ)は、米国の貿易ブラックリストに掲載されたことで、同国の重要な技術へのアクセスが禁止され、世界中でのスマートフォンの販売に支障をきたしており、いまだに苦労している。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Xiaomi中国アメリカ

画像クレジット:Budrul Chukrut/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルが手話認識技術を開発、日本財団らが手話とろう者への理解促進を目指した手話学習オンラインゲームをベータ公開


公益事業をサポートする社会貢献財団「日本財団」は5月24日、香港中文大学関西学院大学Googleの協力を得て、手話学習オンラインゲーム「手話タウン」のベータ版を公開した。

手話タウンでは、PCカメラの前で手話を表現することで、手話が公用語の架空の町「手話タウン」を旅しながらアイテムを集めていく。学習した手話で正しく表現できているかを、AI技術を使って確認できるというわけだ。

手話学習者であれば、手話が単なる手の動きだけでなく、顔の表情、頷き、上半身を使った身振りなどを交えたものであるということを認識しているが、これまでの手話認識モデルは手の形と動きのみにフォーカスした認識技術にとどまっていた。

また、PCに搭載しているカメラは一般的に2D(平面)認識しかできず、奥行きのある立体的な手話の動作を認識するには専用カメラや認識を容易にする手袋といった特別な設備が必要だったため、広く普及させるのが困難であった。

しかし、今回の手話タウンプロジェクトでは、2Dしか認識できない一般的なカメラでも立体的な手話の動きを、上半身、頭、顔、口も含めて認識できる機械学習モデルを開発。日本と香港で手話を日常的に使用しているろう者の手話映像データを収集し、学習させることで、手話学習者が正しく手話を表現できているかの判断を可能にした。

今回、香港中文大学はプロジェクト全体の日本財団との共同統括、手話言語学における学術的見地からの監修、手話データの収集、ろう者に関する知見の提供を、関西学院大学は日本手話の学習データ収集とろう者に関する知見の提供、Googleはプロジェクトのコンセプト立案、AIによる手話認識技術の研究開発をするといった役割を担う。日本財団は、手話・ろう者についての知見の提供ならびに開発に必要な資金の提供を行っている。

誰もがスマホを持ち歩いていることから、ろう者に対しても「その場で入力したテキストを見せれば良いのではないか」と、健常者は考えるかもしれないが、生まれつき耳が聴こえない場合、文字を音として認識できず、理解が難しい場合が多い(「ろう児はどのように文字習得をするか」)。

その点、手話であれば、日常的に使っているため、一瞬で理解できる。そのことからも、2006年には国連障害者権利条約で「手話は言語である」と明記され、国内でも2011年には障害者基本法で手話の言語性が認められたが、手話とろう者への理解は未だ十分に浸透していない。

とはいえ、コロナ禍でひんぱんに行われる政府会見で手話通訳者を見る機会が増えたことから、手話への関心は高まりつつある。今回の手話タウンプロジェクトは、これを好機ととらえ手話やろう者への理解促進を図る目的で開発された。

手話タウンでは、言語を英語、日本語、中国が(繁体字)から、手話言語を日本手話と香港手話から選択可能。9月23日の手話言語の国際デーに正式公開を目指し、公式サイトにおいてフィードバックを募集している。

なお、基盤となっている手話認識技術はTensorFlowを活用し3つの機械学習モデル(PoseNet、Facemesh、ハンドトラッキング)を組み合わせており、ソースコードはオープンソースとして公開している。これにより、世界中の開発者や研究者が他の手話でも同様の認識技術を容易に開発することを可能にしているそうだ。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:アクセシビリティ(用語)オープンソース / Open Source(用語)関西学院大学(組織)Google / グーグル(企業)手話(用語)TensorFlow日本財団(団体)香港中文大学(組織)日本(国・地域)

UberとLyftが新型コロナワクチン接種促進のための無料乗車提供を米国で開始

Uber(ウーバー)とLyft(リフト)が新型コロナウイルスワクチンを接種しに行く人に無料乗車の提供を正式に開始した。これら配車サービス2社は2週間前にホワイトハウスとのプログラム合意を発表していた。

バイデン大統領は米国の全成人70%のワクチン接種を7月4日までに達成することを目標としていて、無料乗車は同日まで提供される。UberとLyftは以前TechCrunchに、無料乗車のコストをカバーすると話していた。ホワイトハウスはプロダクトの開発と立ち上げをアドバイスした。ホワイトハウスはまた、米国の8万カ所超のワクチン接種会場のデータを共有したともUberの広報担当はTechCrunchに述べた。

Uberはそれぞれ最大25ドル(約2700円)割引の片道乗車4回を提供する。これらの2往復の乗車は7月4日までの間に3週間の間隔を空けなければならない、とUberはブログで説明している。乗客はUberアプリを立ち上げて「ワクチン」をタップし「無料乗車を利用する」をタップしてプログラムに参加できる。提供時間は午前6時から午後8時までだ。利用する人は行き先、あるいは乗車する場所を検索するのに郵便番号を入力しなければならない。そしてワクチン接種会場と乗車オプションを選ぶ。

画像クレジット:Lyft

Lyftは最大15ドル(約1600円)の乗車を2往復分提供する。乗車の料金が15ドルを超えた場合、あるいは乗客がドライバーにチップをあげる場合は乗客に課金される、とLyftは述べた。また、無料乗車は3週間の間隔を要する。

ワクチン接種アクセスプログラムは、十分なサービスを受けられていないコミュニティに無料あるいは割引の乗車を提供し、またワクチン情報やワクチン接種会場へのアクセスを簡単なものにする機能の展開に続く取り組みだ。Uberはまず2020年3月に無料乗車を提供する新型コロナ救済プログラムを展開し、12月に追加で1000万回の無料・割引乗車を提供すると述べていた。

同社は2021年4月にユーザーがWalgreensでのワクチン接種を予約し、接種場所までの移動の乗車を予約できる機能を含む6つ以上の新機能を立ち上げることを発表した。

Lyftは12月にJPMorgan Chase、Anthem、United Wayなどを含むパートナーと、低所得者、保険に加入していない人、そしてリスクの高いコミュニティにワクチン接種にともなう行き来のために乗車6000万回を提供するというユニバーサルなワクチンアクセスキャンペーンを開始した。

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タグ:UberLyft新型コロナウイルスワクチンアメリカ

画像クレジット:Lyft/Uber

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

英国が子どものためのオンライン安全法案の草案を発表

英政府が、オンライン上のコンテンツや言論を規制しようと長きにわたって議論を進めてきた(子どもの)「安全確保」計画を公開した。

Online Safety Bill(オンライン安全法案)制定に向けた動きは、数年にわたって続いていた。以前の計画では、子どもがオンライン上の不適切なコンテンツにさらされることを防ぐ目的もあり、英国内でオンラインのポルノにアクセスする際の年齢確認を義務化する試みがあったが、こちらは非現実的として広く批判され、ひっそりと取り下げられた

当時の英政府は、オンライン上のさまざまな危険を規制する包括的な法案の策定に注力すると述べた。今回、それが達成された様子だ。

145ページにわたるオンライン安全法案は、123枚の補足資料と146枚のインパクト評価とともに、gov.uk(英政府の公式ウェブサイト)のこちらのウェブサイトにて公開されている。

本草案では、ユーザーがオンライン上で違法および / または有害なコンテンツにさらされる危険を防ぐため、ユーザーが生成したコンテンツの管理義務をデジタルサービスプロバイダーに課している。

英政府はこの計画を世界においても「画期的」なものと位置付け「テクノロジー企業が新時代で負う義務の先駆けであり、オンライン界に公平さと責任をもたらすもの」と主張している。

批評家は、プラットフォームによる過度な検閲を促すことで表現の自由が脅かされるだけでなく、提出法案がデジタル企業にとって法務および業務上大きな負担となるため、技術革新の減退につながる可能性があると警鐘を鳴らしている。

議論が本格化するのは、これからだ。

本法案は今後、下院議員による合同委員会で徹底的に調べられたのち、年内には最終版が正式に議会に提出される。

本法案が施行されるまでどのくらいの時間がかかるのかはまだ不透明だが、英政府は議会の過半数を獲得しているため、世間で大騒動が起きたり与党内で多数が反対に回ったりしない限り、オンライン安全法案は確実に制定の道をたどるだろう。

デジタル相のOliver Dowden(オリバー・ダウデン)氏は声明でこう述べている。「本日発表した画期的な法案は、英国が世界を率いるリーダーであることを示すものだ。この法案はテクノロジー企業が新時代で負う義務の先駆けであり、オンライン界に公平さと責任をもたらすものである」。

「私たちは、我々の権利を保護する新たな措置を通じてインターネット上で子どもたちを守り、ソーシャルメディアで見られる人種差別的発言を厳しく取り締まることで、真に民主的なデジタル時代を切り開いていく」。

英政府がオンライン安全法案の草案を作成する上で要した期間の長さは、法によって「インターネットを規制」する試みがいかに困難かという点を裏づけている。

DCMS(デジタル・文化・メディア・スポーツ省)の広報担当者は、以前「インターネットを安全にしようとする政府の奮闘」についてうっかり漏らしたことがある。英国のオンライン安全法案をめぐる勝者と敗者が誰になるのか、現在はまだ疑問だ。

安全性か、民主主義か

本計画に関するプレスリリースにて、デジタル・文化・メディア・スポーツ省はこの「歴史的な法令」が「子どもたちの安全を守り、人種差別を撤廃し、オンライン上の民主主義を保護する」と主張する。

とはいえ、壮大な目標がいくつも並んでいることからわかるように、関連する分野の範囲はとても広いだ。規定の間で矛盾が生まれ、法令の一貫性が失われてしまえば、失敗のリスクも非常に高い。デジタル企業の業務にも、必要なコンテンツにアクセスしようとするインターネットユーザーにとっても足かせとなってしまう。

本法案は広範囲に適用される模様だ。大手のテクノロジー企業やソーシャルメディアサイトにとどまらず、ユーザーが生成するコンテンツをホストしたり、単にオンラインで人と対話するサービスを提供したりするさまざまなウェブサイト、アプリ、サービスが対象となる。

サービスの領域では、違法コンテンツおよび(大手サービスの場合は)有害なコンテンツを削除および / または制限する法的義務が課せられ、ユーザーを保護する義務を怠った場合は多額の罰金が命じられる可能性がある。さらには、子どもの性的搾取に該当するコンテンツについては、警察に報告する義務も課せられる。

放送メディアと通信分野の取り締まりを担当する英国の通信監視機関Ofcom(オフコム)は、本計画にて英国内のインターネットコンテンツの監視機関としての役割も担う予定だ。

オフコムはユーザー保護の新しい義務を怠った企業に対し、最大1800万ポンド(約28億円)または世界売上高の10%(のどちらか高額な方)を罰金として科す権限を持つ。

この監視機関は、サイトへのアクセスをブロックする権限も有するため、プラットフォーム全体を検閲する可能性も潜んでいる。

厳格なインターネット規制の制定を支持する活動家の一部は、役員階級の目を有害コンテンツ防止策の遵守にしっかりと向けるため、CEOに対する刑事制裁も法案に含めるよう英政府に圧力をかけている。大臣らはここまで厳格な措置の制定は予定していないものの、デジタル・文化・メディア・スポーツ省は、将来的には刑事犯罪での役員の起訴も検討するとし、こう補足している。「テクノロジー企業が安全性向上のための取り組みを強化しない場合、この措置を追って導入する可能性もある」。

インターネット上のプラットフォームに対する規制強化については、英国内の世論は大きく賛成に傾いている一方で、問題となるのは具体的な計画の詳細だ。

本計画は英政府が私有企業に言論の取り締まりをさせることになるため、人権活動家や技術政策の専門家らは、当初から本計画がオンライン上の表現を委縮させるのではないかと警告を重ねてきた。

法律の専門家も同様に、この枠組みの非現実性について警鐘を鳴らしている。「有害」といった概念、さらには新たに「民主的に重要」と位置づけられるコンテンツ(英政府は特定のプラットフォームに対し、これを保護する特別な義務を課そうとしている)の定義が困難なためだ。

わかりやすいリスクとしては、デジタル企業が負う膨大な法的責任の不透明さが挙げられる。英国内のスタートアップ企業の革新に加え、サービス提供状況は大きな影響を受けることとなる。

2019年のホワイトペーパーで公開された法案の前身には、表題に「有害」という単語が使われていた。その後、この単語はより穏やかな「安全」に置き換えられたわけだが、法的な面での不透明さは解消されていない。

法案の主眼は依然として「有害」とされる漠然とした何かを抑制することに向けられている。オンライン上のアクティビティにさまざまな形で関連または関係しているものが対象で、なかには違法なコンテンツもあれば単に不快なコンテンツも含まれる(対象の大半は、Instagramなどのプラットフォーム上で自殺に関するコンテンツが子どもにさらされた事例など、注目を浴びたメディア報道に基づいている)。

具体的な内容としては、いじめや暴言(オンライン荒らし)から、違法コンテンツ(子どもの性的搾取)の流布、単に子どもが見るには不適切なコンテンツ(合法ポルノ)まで多岐に及ぶ。

最新の草案を見ると、ある特定のオンライン詐欺(恋愛詐欺)もまた、英政府が法令で規制しようとしている危険の1つのようだ。

包括的な「有害」コンテンツの枠組みを作る英国のアプローチは、欧州連合のDigital Service Act(デジタルサービス法)とは対照的だ。デジタルサービス法は欧州連合のデジタル規則を改訂する目的でオンライン安全法案と並行して策定が進められており、こちらは違法コンテンツに注意が集中している。内容としては、連合内で違法コンテンツの報告手続きを統一すること、そしてeコマース市場で危険な商品が販売されているリスクに対処すべく、顧客の本人確認を必須とすることだ。

英国の法案がオンライン上の表現に影響を及ぼしかねないとする批判に対し、英政府は本日、人々がオンラインで自由に表現する権利を強化する措置を追加で講じると発表した。

また、この措置は英国におけるジャーナリズムの保護に加え、政治に関する民主的な議論を保護する役割も果たすという。

しかし、こうした条項が本来の法案と相反しているように見えることから、このアプローチにはすでに疑問の声が上がっている。

例えば、報道コンテンツの取り扱い方をめぐるデジタル・文化・メディア・スポーツ省の議論によると、ニュース発行社の公式ウェブサイトは法令の対象にはならない(サイトに投稿される読者のコメントも対象外)こと、また対象サービスにて共有された「一般に認知されているニュース発行社」の記事は、報道以外のコンテンツに適用される法的義務からは除外されることがわかっている。

プラットフォームに、報道コンテンツへのアクセスを保護する法的義務があるのは事実だ。(「つまり、『デジタルプラットフォーム』はコンテンツのモデレーションを実施する際にジャーナリズムの重要性を考慮しなければならないということだ。削除されたコンテンツについてはジャーナリストの控訴手続きを迅速に行い、報道コンテンツを恣意的に削除した場合はオフコムから責任を問われることとなる」とデジタル・文化・メディア・スポーツ省は述べている)

しかし一方で、英政府は「市民ジャーナリストのコンテンツはプロのジャーナリストによるコンテンツと同様の保護を受ける」とも述べているのだ。とすると「一般に認知されている」ニュース発行者(対象外)と市民ジャーナリスト(こちらも対象外)、そして単にインターネット上にブログ記事やコンテンツを投稿しているおじさん(おそらく対象?)のそれぞれの線引きは具体的にどのように行われるのか、見方は人によってさまざまだろう。

政治的発言を保護する取り組みは、デジタルサービスにおけるコンテンツモデレーションを複雑化することにもなる。例えば、人種差別的な意見を持つ過激派集団は、自身のヘイトスピーチや差別発言を「政治的意見」としてごまかすこともできるからだ(人種差別主義で有名な活動家も自らを「ジャーナリスト」と名乗るかもしれない)。

デジタル・文化・メディア・スポーツ省の声明によると、企業は「特定の政治的意見に対する差別をしてはならず、所属政党に関わらず、多様な政治的意見を平等に保護しなければならない」という。

「こうしたコンテンツを保護する政策は明確かつ現実的な規定と条件によって定める必要があり、企業がこの政策に従わない場合はオフコムによる強制措置を受けることになる」声明はさらに続く。「コンテンツのモデレーションを行う際は、企業は該当コンテンツが共有されている政治的背景を考慮する他、民主的に重要な場合はそれを高度に保護する必要がある」。

プラットフォームはこうした相いれない条件をすべてバランスよく遵守する責任を負うことになるというわけだ。今後、オフコムが表現の自由を尊重する形でコンテンツモデレーションを行うための行動規範が作成される予定だが、企業が何かミスをした場合はいつでもオフコムから多額の罰金を科せられる危険がある。

興味深いことに、英政府はFacebook(フェイスブック)が考案した「監督委員会」モデルを好意的に受け止めているようだ。この監督委員会では、委員らが「複雑な」コンテンツモデレーションの事例について判断を下す他、発言のニュアンスの取り違いやコンテンツの不必要な削除を招く恐れがあるとして、AIフィルターの過度な使用を抑制している(以前、テロ関連のコンテンツの削除を高速化する目的で、英政府がプラットフォームに対してAIツールの導入を強く求めていたことを踏まえると、非常に興味深い動きといえる)。

「本法案は英国に住む人々がオンライン上で自由に表現し、多元的かつ率直な議論に参加する権利を徹底的に保護する」デジタル・文化・メディア・スポーツ省はこう続けている。「対象に含まれる企業はすべて、自らの責任を果たすうえで表現の自由の保護を考慮に入れ、必要な措置を取らなければならない。これらの対策はオフコムが作成する行動規範で定められるものの、背景情報が重要となる複雑な事例については、人間の監視官を含める必要がある場合も想定される」。

「企業のサービスを利用する人には、正当な理由なくコンテンツが削除された場合に即座に控訴手続きを行う手段を用意する他、不当にコンテンツが削除された場合は、企業は該当コンテンツを再公開しなければならない。ユーザーはまた、オフコムに控訴することができ、こうした告訴はオフコムのホライズン・スキャニング、調査、および強制措置の大部分を形成する」声明はさらに続く。

「カテゴリー1のサービス『最大かつ最も一般的なサービス』には、追加の義務が課せられる。これらのサービスは表現の自由に与える影響について最新の評価を実施してそれを公開し、マイナスの影響がある場合はそれを最小限に抑える対策を行動で示さなければならない。これらの措置はオンライン企業の対策が限定的になるリスクを取り除く他、オンライン安全性の義務を果たすためにコンテンツを過度に削除する事態を防ぐものである。後者の例としては、AIのモデレーション技術が風刺などの無害なコンテンツを誤って有害と判断してしまう場合などが挙げられる」。

本計画においてわかりにくい別の要素は、法案にいわゆる「ユーザーが生成する詐欺」(偽の投資機会についてのソーシャルメディアでの投稿や、デーティングアプリでの恋愛詐欺など)への対応策が含まれていながら、広告、メール、偽ウェブサイトなどを使って行われるオンライン上の詐欺行為は対象外だという点だ。デジタル・文化・メディア・スポーツ省によると「本法案はユーザーが生成するコンテンツにおける危険に焦点を当てている」。

とはいえ、インターネットユーザーが簡単かつ低コストでオンライン広告を作成し、掲載できる(基本的に、Facebookをはじめとするプラットフォームは料金を払う人なら誰にでも広告ターゲティングツールを提供している)のなら、広告による詐欺を規制から除外する理由はあるのだろうか?

どうやら、ここでの線引きは無意味なようだ。数ドル(数百円)払って虚偽の情報を広めようとする詐欺行為は、無料のFacebookページで秘密の投資アドバイスをうたう投稿をする詐欺行為と比べて何ら変わりはない。

つまり、線引きがランダムでずさんな場合、規則の一貫性やわかりやすさが失われ、抜け穴が存在しやすくなるリスクが生まれてしまうのだ。

並行して、英政府は特に大手テクノロジー企業を規制するため、競争を促す壮大な事前規制制度の考案を進めている。大手プラットフォームの規制制度と、有害なデジタルコンテンツを広範囲で規制するオンライン安全法案の2つの枠組みがある中、双方で義務の矛盾や重複が生まれないようにする難題は、まだ前途に立ちはだかっている。

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画像クレジット:Aping Vision / STS / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

インドの起業家や投資家が新型コロナに打ち勝つため結集、世界中からの助けを求めている

ワクチン接種が広がりを見せ、世界各地でコロナウイルスの蔓延に歯止めがかかりつつある今、世界2位の人口を誇るインドではまったく異なるストーリーが繰り広げられている。

インドの一部の州では検査数を減らしたり死亡者数を過少に報告したりしているにもかかわらず、2021年4月下旬、毎日、世界全体の感染者数の約半分を占める30万人以上の新規感染者が報告されている。

医療機関では新規患者のためのベッド数が大幅に不足しており、医師たちはソーシャルメディア上でしばしばNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相をタグ付けして酸素などの必要な医療機器の提供を訴えている。

映画界やスポーツ界などの複数の主要産業が、まるで何事もないかのようにしてこの危機を無視し続ける中、起業家やスタートアップが希望の光となって立ち上がり、国家が今直面している暗闇を乗り切るために行動を起こしている。

インドにおける何千ものスタートアップが自身の生き残りをかけて奮闘していた2020年とは一変した驚きの変化である。いまだに深刻な混乱に陥っているスタートアップもあるものの、我が国に救いの手を差し伸べるということが、ほとんどのスタートアップにとっての優先事項となっている。

何百ものスタートアップやベンチャーキャピタリストが多大な時間を費やしてソフトウェアを構築し、人々が最新情報を入手したり財団に寄付したりすることを容易にする方法を模索している。またこの危機を取り巻く課題を解決できる可能性のあるアイデアを探り、資金を提供しているのだ。

立ち上がった2つの組織。

ACT Grantsは、活動中のほぼすべてのベンチャーファンドやPE企業の他、数十人のボランティアによって運営されている。この取り組みは2020年から引き続き行われているものである。

Zomato Feeding Indiaは、インド最大のフードデリバリースタートアップが、患者や病院に酸素などの重要な物資を提供するというものである。

その他のリソースや取り組み。

https://www.linkedin.com/feed/update/urn:li:activity:6793450535878983680

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画像クレジット:Abhishek Chinnappa / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Dragonfly)