Ethel’s Clubの創設者が有色人種向けソーシャル・プラットフォームSomewhere Goodを開設

現実とデジタルのサブスクリプション型コミュニティーEthel’s Club(エセルズ・クラブ)の創設者でCEOのNaj Austin(ナジ・オースティン)氏は、白人以外の人たちのためのワンストップのオンラインショップSomewhere Good(サムホエア・グッド:どこかいいところという意味)の開設準備を進めている。ここには有色人種の人たちがつながりを作るという他に、人々に本来の自分でいられる安全な場所を提供するという役割もある。

「Somewhere Goodについて投資家に説明するときによく話すのが、私たちのアイデンティティーが中心になる世界という考え方です」とオースティン氏は私に話してくれた。「Somewhere Goodのビジョンは、ポケットから電話を取り出せば、黒人として、または有色人種として必要なすべてが、そのひとつの場所で間に合うというものです」。

つまり、健康、アート、音楽、映画などに関連するコミュニティーにアクセスでき、それらのグループを通じて経済活動ができるということだ。なにも、そうしたコミュニティーがこれまで存在していなかったというわけではない。存在はしているが、小さく断片的にウェブの中に埋もれているため、簡単に出会える状態ではないということだ。

健康コミュニティーEthel’s Clubを運営中、オースティン氏は、たとえば80年代のジャズや、子どもを産みたくない黒人女性に特化したスペースなど、もっと限定的な黒人と有色人種のための場を知らないかと利用者に尋ねられることが多かった。

「無数にあるのです」とオースティン氏。「私たちに必要なのは、そうした場所を自分で探せるようにするプラットフォームなのです。そこで、有色人種のための場を提供する会社を設立するという私の信念の核心部分に立ち戻ります。より多くの場を提供できているか。より多くの有色人種の人たちに活力を与えているか。そこに私は全力を傾けています。それらの答が「イエス」である限り、手段はなんでもいいのです」。

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1月、Somewhere Goodがベータ版でローンチされたとき、利用者は自分のおおまかな情報をインプットすれば、興味のあるセクションを選択できるとオースティン氏は話していた。たとえば、犬を飼っていてパン屋で働いている絵が好きな母親、といった具合に自分を表すことができる。

関連記事:GreylockとMLTはテック業界の富のサイクルに多様化を促す約100億円のファンドを創

「すると私たちは、その人に最適と思われるコミュニティーを見繕って紹介します」とオースティン氏。

それによりSomewhere Goodは、利用者にもうひとつ上のレベルでのつながりをもたらすことが可能になるとオースティン氏は言う。その新たなレイヤーを構築するひとつの方法として、マッチングツールが考えられる。

「私たちは、人々のつながりに、もっと実感を伴った動機を与えたいと考えています」とオースティン氏は話す。「両方とも黒人というだけではなく」。

現在はMighty Network(マイティー・ネットワーク)に属する有色人種のための健康プラットフォームEthel’s Clubも、Somewhere Goodの中の数あるコミュニティーのひとつに過ぎない。彼女たちは、他のコミュニティーのメンバーを、黒人と有色人種を中心としたこのプラットフォームに誘い込もうと計画している。そこから、それらのコミュニティーの人たちがSomewhere Goodで独自のコミュニティーを築いてゆくことをオースティン氏は思い描いている。

「すでにコミュニティーを形成している人たちに場所を提供し、コミュニティーのための場が欲しい人たちにその機会を与え、やがてはその他の参加者たちも、やる気が湧いてきたときに、自分たちのコミュニティーを構築できるようにしたいのです」と彼女は話す。

今のところは、Somewhere Goodにアクセスし「Take me somewhere good」(どこかいいところへ連れて行って)をクリックすると、黒人や有色人種向けのブランドが、たまたま見つけたような感覚で示される。現在このサイトには、黒人向けヘアーブランドNappy Head Club,、黒人デザイナーの紹介サイトBlack Fashion Fair、シリアルとカルチャーのブランドOffLimitsなど、100件を少し超える数のブランドが登録されている。

私たちはみなさんを箱に閉じ込めたりしない。箱はシリアルのためにあるもの(画像クレジット:OffLimits)

例えば、OffLimits(オフリミッツ)は、まだコミュニティーが作られていないものの、食品を見直すという観点を中心にしたブランドだとオースティン氏は言う。だが「情緒的に不安定なカウンターカルチャー的漫画のキャラクター」の物語を掲載するなどしているOffLimitsも、プロダクトデザインや食品を中心としたコミュニティーをSomewhere Goodで立ち上げて運営することが可能だ。彼女はまた、化粧品ブランドのFenty(フェンティー)がスキンケアを中心としたコミュニティーを作って欲しいと期待を寄せている。

Somewhere Goodのコミュニティーには、それぞれにモデレーターが付き、すべてのメンバーはSomewhere Goodの行動規範に従わなければならない。このプラットフォームでは、ヘイトスピーチ、嫌がらせ行為、いじめやその他の暴力行為を一切禁止している。

「私たちの行動規範に違反した者は、誰であれ即座にSomewhere Goodプラットフォームから追放される」と同プラットフォームの綱領に書かれている。

Somewhere Goodは一切の広告を入れず、データを売却することも決してないと話している。そのビジネスモデルは、利用者が支払うコミュニティー参加料から徴収する一定割合の手数料に依存している。

「そのため私たちには、人々にコミュニティーを作りたいと感じさせる魅力的な機会を作り出す必要があります」と彼女は言う。

Somewhere Goodでは、ゆくゆくはコミュニティーが、ライブストリーミング・イベントで収益を得たり、製品を販売したり、いろいろなタイプのピアツーピア取引が行えるようにもしたいと考えている。

Somewhere Goodは先週、ツイートを投稿してソフトローンチを行い、会員の募集を開始した。すでに2500人以上が予約リストに登録されている。

これは、オースティン氏がEthel’ Clubで用いた戦略に通じるものだという。Ethel’s Clubでは、ローンチされるまで、彼女はその製品の機能性に十分な確証がなかったのだが、人々が関心を示すかどうかを確かめるために、まずは話を持ちかけた。そして関心があるとわかるや、Ethel’s Clubはそのコミュニティーを受け入れ、彼女たちが望んでいた製品の構築に協力してもらった。彼女はそれと同じ枠組みを、Somewhere Goodでも利用しているという。

Ethel’s Clubは、そもそもブルックリンで発足した現実のコミュニティーだったのだが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響でデジタル世界に進出した。現在は、Dream Machine、Shrug CapitalCanvas Ventures、Color、Debut Capital、そしてKatie Stanton(ケイティー・スタントン)氏、Roxane Gay(ログザーヌ・ゲイ)氏、Hannibal Buress(ハンニバル・ブレス)氏といったエンジェル投資家から100万ドル(約1億600万円)を調達している。

デジタル世界に移行したことで、Ethel’s Clubの会員は1500人を超えた。しかし最大の問題は、人々がもっと多くを求めていることだったとオースティン氏は話す。Somewhere Goodは、まさにそれに対応するためのものだと彼女は言う。それは、たった1箇所で有色人種の人々があらゆるものに出会えるプラットフォームを目指している。

画像クレジット:Naj Austin

カテゴリー:ネットサービス
タグ:フラットフォームコミュニティ

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookの「監査審査会」に対抗し活動家による「真の監査審査会」が発足

米国時間9月30日、学者、研究者、公民権運動の指導者などからなるグループがThe Real Facebook Oversight Board(真のFacebook監査審査会)を発足させた。来たる米国大統領選挙におけるFacebook(フェイスブック)の役割を批判・議論するための会だ。メンバーには、元Facebook選挙セキュリティー責任者、#StopHateForProfit キャンペーンのリーダー、およびFacebookの初期投資家であるRoger McNamee(ロジャー・マクナミー)氏が在籍している。Facebookは昨年11月にコンテンツ管理の厄介な問題に対応するために「監査審査会」を自社で立ち上げたが、選挙期間中にコンテンツや活動を監視するつもりはなく、選挙終了後に問題を審査するだけであることを、正式に認めている。

発足記者会見は以下のチャンネルで中継される。

Facebook創業者のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は昨年11月、監査審査会は「極めて重要な取り組み」であり「社内の各チームが意思決定に集中しすぎることを防ぐ」とともに「説明責任と監視」を促進すると強調した。

それはFacebook内での意思決定の難しさを認めた行動とも見られた。物議を巻き起こす投稿を削除するかどうかの判断は、個々の幹部の責任となることから、監査審査会はコンテンツ管理の「最高裁判所」のような役割になると言われている。

しかし審査会は、意思決定には最長3カ月を要し、審査の対象はプラットフォームから削除されたコンテンツのみであり、残っているものは審査しないことを認めている。

Facebookはこの審査会に1億3000万ドル(約137億1700万円)を投資し、5月にデンマークの元首相であるHelle Thorning-Schmidt(ヘレ・トーニング・シュミット)氏やGuardian(ガーディアン)紙の元編集長であるAlan Rusbridger(アラン・ラスブリジャー)氏などで構成される初期の委員会メンバーを発表した。

一方、活動家主導の「真のFacebook監査審査会」には、Facebookの辛口批評家として知られるエストニアのToomas Hendrik Ilves(トーマス・ヘンドリク・イルヴェス)元大統領や、サイバー名誉毀損で現在フィリピンで収監中のジャーナリストであるMaria Ressa(マリア・レッサ)氏らが参加している。

真のFacebook監査審査会のメンバーにはほかに、The Age of Surveillance Capitalism(監視資本主義の時代)の著者、Shoshana Zuboff(ショシャナ・ズボフ)氏、NAACP(全米黒人地位向上協会)代表のDerrick Johnson(デリック・ジョンソン)氏、元Facebook選挙整合性責任者のYael Eisenstat(ヤエル・アイゼンスタット)氏、公民権擁護団体のColor of Change代表のRashad Robinson(ラシャド・ロビンソン)氏、Anti-Defamation League(名誉毀損防止同盟)CEOのJonathan Greenblatt(ジョナサン・グリーンブラット)氏らも名を連ねる。

Facebookがいかにコンテンツを管理し、ユーザーをキャンペーンのターゲットにすることを許すかの問題は、米国大当郎選挙が近づくにつれ喫緊の事態となっている。すでに英国のChannel 4 Newsは、2016年大統領選挙でトランプ氏陣営が、米国の黒人350万人の投票を阻止するために、Facebook上でプロファイリングを実施していたことを暴露した。

 

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

GreylockとMLTはテック業界の富のサイクルに多様化を促す約100億円のファンドを創設

Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)は、Management Leadership for Tomorrow(マネージメント・リーダーシップ・オブ・トゥモロー、MLT)と手を組み、テック業界の多様性とインクルージョンの問題に取り組むことにした。

「これは総合的なアプローチだというのが私たちの見解です」とMLTの創設者でCEOのJohn Rice(ジョン・ライス)氏はTechCrunchに話した。「これは、単なるコーディングやメンタリングやフェローシップのプログラムではありません。それらも大変に素晴らしいものです。重要でもあります。しかし私たちが訴えているのは、これらすべてを採り入れた長期的な視野が必要だということです。一気に方向転換して、テック業界のエコシステムが最大の力を入れている分野にマイノリティーの参加を増やすことは可能だと、私たちは見ています」。

手始めに、Greylockはその多面的なパートナーシップを活かし、専門技能を持つ黒人、ラテン系、米国先住民およそ8000人を擁するMLTのネットワークとつながり、彼らを同社のポートフォリオにある企業の有望な働き口に結び付ける。さらに、GreylockとMLTはともにそれらの企業の離職防止に協力し、同時にMLTに登録した専門家たちがベンチャービジネスでキャリアを積めるように支援する。

「Greylockで働きながら、20年間テック業界のエコシステムを見てきてハッキリしてきたのは、私たちには特に驚きはしませんが、現代のテクノロジーは富を生み出す最大の機会だということです」と、GreylockのパートナーであるDavid Sze(デイビッド・ジー)氏はTechCrunchに話した。「それはこれまでも富の最大の生成器であり、おそらく今後もそうあり続けるでしょう。ここ当面はね」。

しかし、最大の経済的利益は企業創設者、初期の従業員、投資家の元に集まる。そこから、この富を生み出すサイクルの中で、やがて次世代のスタートアップの創設者となる初期の従業員やFacebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)といったトップ企業出身者のネットワークができ上がったとジー氏はいう。

「このサイクルは繰り返されます」とジー氏。

そしてベンチャー投資家たちは、そんな急成長企業に在籍経験のある人たちを支援したいと必死になる。

「これがシリコンバレーの仕組みです」とジー氏。「それ自体がソーシャルネットワークなのです。しかし問題は、黒人やラテン系や米国先住民の人たちが、テック系スタートアップ、ベンチャー投資、そしてそのネットワークで極端に置き去りにされていることです。結果として、それが悪化因子となっています」。

このシステムの中の人たちにとって、そこは自分の都合のいいように作られている。だがそのために取り残された人たちには、ますます入りづらい場所になっていくとジー氏は話す。

「それに、ベンチャー投資家であれテック系スタートアップであれ、そこを正す能力が私たちにはまったく欠けていることを、素直に認めなければなりません」とジー氏。「歴史的にも、多様性やインクルージョンという面でのトップダウンの視点がないまま、システム発展させてしまった。まさに、そこを変える必要があります」。

GreylockとMLTが手を結び、彼らが支援するテック系スタートアップに黒人、ラテン系、米国先住民の人々をもっと多く送り込もうとする最大の理由はそこだ。またそれは、供給の問題ではないとジー氏は話す。優れた人材はあり余っているからだ。もし供給に問題があるとするなら、「その問題は私たちの側にあります」と。

「人材の側ではありません」とジー氏。「人材は豊富です。長年かけて拡大してきた今のシリコンバレーのネットワークとシステムが、そうした人たちの受け入れを推進してこなかったことに責任があります」。

Greylockのパートナー企業も、この初のインパクト投資に500万ドル(約5億2800万円)を寄付している。これにともないMLTは、Greylockの10億ドル(約106億円)規模の最新ファンド(Greylockリリース)のリミテッドパートナーとなった。

「私たちには、リミテッドパートナーとの長い歴史があります」とジー氏は話す。「新しいリミテッドパートナーは滅多に作らないため、彼らが加わってくれたことを本当に嬉しく思っています。彼らのおかげでパワー倍増です」。

このパートナーシップに期待されるのは、他のベンチャー投資ファンドにもこの考え方が広がることだとジー氏はいう。ライス氏は、これがテック業界の他のリーダーたちの関心を集め、方向転換の力になってくれることを期待している。

「リーダーたちは、今、この極めて重要な時期にあたり、私たちが今こうしている理由について、もっと意識を高める必要があります」とライス氏はいう。「リーダーたちはより深い見識を得るだけでなく、さらに深い見識を学ぶ責任感を持たなければなりません。なにも、人種差別の歴史の専門家になる必要はありません。彼らがよく知っていること、つまりAIやビットコインに関する理解と同じぐらいに、理解すればよいのです。わかって欲しいのです」。

またライス氏は、リーダーたちはベンチャー投資家が企業への投資について考えるときや、自社の成長について考えるときと同程度の厳格さで、総合的アプローチに取り組むべきだと話す。

「それと同じぐらいの厳格さで私たちのアプローチに取り組ままなかったり、また多様性に対して適当に選んだ行動で方向転換を図ろうと軽く考えるようでは、行き詰まります。私たちは方向を変えるのです。それには総合的なアプローチが欠かせないのです」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:Greylock Partners

画像クレジット:iStock/Getty Images Plus / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

TikTok、WeChatをめぐる騒動と、米中間で広がるデジタル格差

この10年で、中国と米国のテック企業のダイナミクスは大きく変わった。かつて中国は米国の有望な市場とみなされていたが、中国の技術革新と投資力が目に見えて高まるにつれ、その立場は逆転した。また、中国共産党のサイバーセキュリティ規制の対象が拡大されると、データプライバシー侵害を懸念する声が高まった。しかし、そんな中でも、両国が互いにアイデアを交換できていた期間は何年もあったように思う。ところが、関税戦争という政治的背景もあり、また最近、TikTokとWeChatに対してトランプ政権の大統領命令が発令されたせいで、そうした良い関係もすっかり損なわれてしまった。

米国商務省は先週、TikTokとWeChatの米国での利用停止を強制する予定だったが、両社に対する命令の執行は延期された。WeChatについては、米国地方裁判所裁判官は利用停止の一時的な保留を命じた。一方、TikTokの所有会社であるByteDance(バイトダンス)は、Oracle(オラクル)との複雑な交渉の最終段階を迎えている。

TikTokとWeChatをめぐる紛糾は、米国の中国テック企業に対する見方が大きく変化したことを明確に示している。TikTokは、中国企業による消費者向けアプリとして初めて米国で大きな地盤を築いただけではなく、米国の大衆文化にも大きな影響を与えた。ほんの10年前、いや5年前でさえ、このような事態になろうとは、ほとんど想像もできなかっただろう。

進出先としての中国

14億人の人口を抱える中国は長い間、中国政府による検閲が強化されていた時期でさえ、多くの海外テック企業から、もうかる市場とみなされてきた。2003年、中国公安部は、一般に「万里のファイアウオール」と呼ばれるGolden Shield Project(金盾)を開始した。目的は、中国のインターネットユーザーがアクセスできる海外のサイトやアプリを制限することだ。万里のファイアウオールは当初、主に反中国共産党コンテンツが掲載された中国語サイトに対するアクセスを制限していたが、やがて、より多くのサービスをブロックするようになった。

2006年1月26日、Google(グーグル)が中国本土進出を果たした翌日のノートパソコンの画面。グーグルは、北京当局によって禁止されているウエブサイトやコンテンツを検閲することに同意した後、新しいサービスを開始した。画像クレジット:AFP PHOTO / Frederic J. BROWN

中国共産党によるオンライン検閲は厳しくなる一方だったが、それでも多くの米国のインターネット企業は中国への進出を熱望していた。当時最も注目されていたのはGoogle(グーグル)だ。グーグルは2000年に、Google.comに中国語のサポートを追加した。

グーグル検索エンジンへは部分的にしかアクセスできず(ファイナンシャル・タイムズ紙の2010年版記事アーカイブによると、この原因は、中国の認可を受けたインターネットサービスプロバイダーによる「広範なフィルタリング」である可能性がある)、2002年には短期間ブロックされたこともあったが、それでもグーグルは、グーグルニュースの簡体字中国語版など、中国のユーザー向けに新しいサービスの提供を続けた。

2005年には、中国にR&D部門を設置する計画を発表した。そして翌年には、Google.cnを正式に立ち上げた。グーグルは、Google.cnを立ち上げるために、政治的にセンシティブなトピックの検索結果を排除することに同意し、物議を醸した。

このように中国政府に対して譲歩の姿勢を見せていたのにもかかわらず、グーグルと中国との関係は悪化し始めた。このことは、他の海外テック企業、とりわけオンラインサービスを提供する会社が中国市場への参入を試みるとどういう結果になるのかを暗示していた。YouTubeへのアクセスについては、ブロックと解除が繰り返されたが、Lhasa(ラサ)のデモに参加したチベット人を容赦なく殴打する場面を撮影したとみられる動画がアップロードされた後、2009年に完全にアクセス禁止となった。同じ年、フェイスブックとツイッターへのアクセスもブロックされた。

2010年1月、グーグルは中国でのネット検索の検閲を中止し、必要なら同国から撤退すると発表した。また、Google.cnでのすべての検索クエリをGoogle.com.hkにリダイレクトする措置も開始した。

ただし、中国でのR&D活動は継続し、セールス部門もそのまま残された(2018年のThe Interceptの調査で、グーグルは、Project Dragonflyというコードネームで中国での検索の検閲を再開したことがわかっている)。グーグル以外の米国テック企業も、たとえ自社のサービスが中国でブロックされても、中国市場への進出を諦めなかった。

フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は2010年代の半ばに、数回に渡って中国を訪問した。2015年には、研究開発の最先端である清華大学を訪問している。ザッカーバーグ氏はその前年に同大学の理事会メンバーとなっており、標準中国語で何度か一般講演を行っている。フェイスブックが同社サービスの中国版をリリースするという憶測が飛び交ったが、中国本拠の企業は、当時もその後も、フェイスブックの最も重要な広告収益源であった

さらに、国内企業の競争力強化を目指して策定された中国政府のポリシーが成果を上げ始め、2015年までには、大半の米国テック企業は中国市場に参入するために中国国内のパートナーを見つける必要に迫られることになった。中国が米国の技術イノベーションを求めるという図式は、こうして逆転し始めたのである。

ダイナミクスの変化

Google Playが中国でブロックされると、サードパーティー製Androidアプリストア登場の道が開けた。その1つが、中国インターネット大手Tencent(テンセント)のMy Appだ。

しかし、テンセントで最も影響力のあるアプリは、2011年にリリースされたメッセージアプリWeChatである。WeChatリリースの2年後、テンセントは、TenPayとの統合化によりモバイル決済サービス分野にも進出する。5年も経たないうちに、WeChatは、数億人のユーザーの日常生活に欠かせないアプリとなった。WeChat Payと、その主な競合相手であるAlibaba(アリババ)のAlipayは、中国の決済市場に革命を起こした。シンクタンクCGAPの調査によると、今や、中国の消費者決済の3分の1はキャッシュレス化しているという。

北京発 – 2020年9月19日:中国人の顧客が地元の市場で、モバイル端末上で動作するWeChatのQRコードを使って決済している。画像クレジット:Kevin Frayer / Getty Images

2017年、Wechatは、「ミニプログラム」をリリースした。このミニプログラムにより、開発者はWeChat上で動作する「アプリ内アプリ」を作成できるようになった。Tencentによればミニプログラムはあっという間に軌道に乗り、2年にも満たない短期間で、その数は100万、1日あたりのユーザー数は200万人に達したという。グーグルでさえ、2018年に独自のミニプログラムを密かにリリースした

こうしてWeChatは中国国内では広く普及したが、その存在は世界的にはまだあまり知られていなかった。特に、別のメッセージアプリWhatsAppと比較するとその差は歴然としていた。WeChatの月間アクティブユーザー数は10億人を超えていたが、そのうち海外のユーザー数は推計で1~2億人程度だった。その多くは、WeChatを使って中国本土の家族や仲間と連絡を取る中国人移民たちだ。というのも、WhatsApp、Facebook Messanger、Lineといった他の人気のメッセージアプリはすべて中国ではブロックされているからだ。テンセントは、Tesla(テスラ)、Riot Games(ライアットゲームズ)、Snap(スナップ)など、多くの米国企業に大口の投資を行っており、スナップの創業者Evan Spiegel(エヴァン・シュピーゲル)氏を含むテック起業家たちの間ではインスピレーションの源だと言われていたが、世界的な大ヒットアプリはまだ生み出したことがなかった。

その間、別の企業が競争優位を獲得し、テンセントが成功できなかった分野で成功を収めていった。

2012年にマイクロソフトのベテラン社員Zhang Yiming(チャン・イーミン)氏によって創業されたByteDance(バイトダンス)もやはり、創業当初、中国政府とのゴタゴタに巻き込まれた。同社が最初にリリースしたアプリはNeihan Duanziと呼ばれるソーシャルメディアプラットフォームで、そのユーザー数は2017年に2億人に達したが、翌年、中国国家広播電影電視総局によって不適切なコンテンツがあるとの指摘を受けたあと、利用停止を命じられた。こうした初期の挫折はあったが、バイトダンスはToutiao(中国トップのニュースアグリゲータ)などのアプリをリリースし、成長を続けた。

そして2016年に、同社を最も世に知らしめたアプリをリリースする。このアプリは中国でDouyin(抖音またはドウイン)と呼ばれている。バイトダンスは、海外でショートビデオ共有アプリを広める計画を以前から練っていた。中国のテックニュースサイト36Krのインタビューでチャン氏は次のように答えている。「中国のインターネット人口は世界全体の5分の1にすぎない。世界に進出しなければ、我々は、中国以外の市場に目を付けている同業他社に敗北することになる」。これは、中国を重要な市場とみなしてきた米国のインターネット企業の見方とまったく同じだが、(立場が逆転したという意味で)正反対であるとも言える。

ドウインの国際バージョンであるTikTokは、2017年にリリースされた。その年、バイトダンスはティーンエージャーに人気のリップシンクアプリMusical.lyを買収する。買収金額は8億ドル~10億ドル(約840億円~1050億円)と言われている。バイトダンスはMusical.lyとTikTokを統合して、両アプリの視聴者を一元化した。

2019年に入る頃には、TikTokは米国の10代~20代前半の若者の間で人気アプリとなったが、多くの大人たちは一体どこが良いのか理解に苦しんでいた。しかし、TikTokが一躍、Z世代文化の中心に出てくると、米国政府による監視の対象になり始めた。2019年2月、連邦取引委員会は、子どものプライバシー保護法に違反したとしてTikTokに570万ドル(約6億円)の罰金を科した

その数か月後、米国政府は国の安全保障に関わる問題としてTikTokの調査を開始したと見られている。これが、その後8月に発表された同社に対する大統領命令、バイトダンスと「信頼できるテクノロジーパートナー」であるOracle(オラクル)との不可解な新合意をはじめとする一連の出来事へとつながっていった。

2017年のサイバーセキュリティ法の影響

TikTokが安全保障上の脅威とみなされている国は米国だけではない。インド政府は今年6月、「国家の防衛と安全保障」を脅かすとして、59の中国製モバイルアプリを使用禁止としたが、その中にTikTokも含まれていた。フランスのデータセキュリティ監視機関CNILも、ユーザーデータの処理方法に関してTikTokを調査している

TikTokのデータ収集方法は、ターゲット広告からの収益に依存している他のソーシャルメディアアプリとほぼ同じだと考えているサイバーセキュリティ専門家もいるが、問題の核心は2017年に施行された中国のサイバーセキュリティ法にある。同法では、企業が中国国内で保存したデータについては、中国政府の要求に従う必要があると規定されている。バイトダンスは、米国ユーザーのデータは米国とシンガポールで保存されたものであるとし、中国政府による米国ユーザーのデータへのアクセスを拒否する、と繰り返し主張してきた。

2019年10月に出した声明の中でTikTokは次のように述べている。「当社のデータセンターはすべての中国国外に存在しているため、当社のデータはすべて中国の法律の対象外である。さらに、当社は、堅牢なサイバーセキュリティポリシー、データプライバシー、セキュリティ対策に特化した専任の技術チームも設置している」

同社はまた、同じ声明の中で、香港の抗議デモウイグル人などのイスラム教徒グループに対する中国政府の弾圧に関する動画を含むコンテンツの検閲についても懸念を表明し、「中国政府からコンテンツ削除の要請を受けたことはないし、受けたとしても応じるつもりはまったくない」と断言した。

米国におけるWeChatとTikTokの不確かな未来

しかし、バイトダンスは中国の企業であるため、最終的には中国の法律の規制を受ける。今週始め、バイトダンスは、オラクルとウォルマートにTikTokの全株式の20%を売却した後、残りの80%を保有すると発表した。その後、オラクルの執行副社長Ken Glueck(ケン・グリュック)氏は、オラクルとウォルマートは、TikTok Globalという新しく創設される会社に対して投資すると発表し、さらに、バイトダンスはTikTok Globalに対する所有権をまったく持たない、と付け加えた。

この発言は新たな疑問を生むだけで、最も知りたいことに答えていない。この米国版TikTokはバイトダンスとどのような関係になるのだろうか、また、今後も、大きな懸念事項である中国のサイバーセキュリティ規制の対象になるのだろうか。

バイトダンスがオラクルとウォルマートとの交渉を発表したのと同じ頃、米国の地方裁判所裁判官は、U.S. WeChat Users Alliance(米国WeChatユーザー同盟、米国ユーザーのWeChatへのアクセス保護を求める弁護士グループによって創設された非営利団体)米国政府を相手取って起こした訴訟の一環として、WeChatの全国規模での使用禁止を一時的に延期する決定を下した。Laurel Beeler(ローレル・ビーラー)裁判官は自身の見解として次のように書いている。「政府は、中国の活動は米国の安全保障に対する重大な懸念を提起するものであると明言しているが、すべての米国ユーザーに対してWeChatの使用を事実上禁止することでそうした懸念が軽減されるという証拠はほとんどない」。

同じサイトで、米国WeChatユーザー同盟は、8月6日のWeChatに対する大統領命令は、「米国憲法および行政手続法の多くの条項に違反している」と確信している、と述べている。同ユーザー同盟は、WeChatの使用禁止は、WeChatを使用して家族、友人、仕事仲間とコミュニケーションを図っている「米国の数百万人のユーザーの生活と仕事に重大な支障をきたすものだ」と主張している。

WeChatは厳重に検閲されているものの、ユーザーは、中国政府が神経質になっているトピックに対する検閲をうまく回避する方法を見つけていることが多い。例えば、ユーザーたちは、絵文字やPDF、およびKlingonなどの架空の言語を使って、Ai Fen(アイ・フェン)氏のインタビューを共有している。アイ氏は武漢市中心病院救急科主任の医師で、中国政府が新型コロナウイルスに関する情報を隠ぺいしようとした最中にあって同ウイルスについて警鐘を鳴らし続けた最初の人物の一人だ。

広がる格差

TikTokとWeChatに対する米国政府の措置の背景には、緊迫の度を増す政治情勢がある。Huawei(ファーウェイ)とZTEは2012年、超党派の下院委員会の報告で、米国安全保障の潜在的脅威として最初に名指しで指摘されたが、世界最大の通信機器サプライヤであるファーウェイに対する法的措置は、トランプ政権のもとでエスカレートしていった。具体的には、司法省によるファーウェイの刑事告発や最高財務責任者Meng Wanzhou(モウ・バンシュウ)氏の逮捕および起訴などだ。

米国政府の措置は、国の安全保障という名目で行われたものの、その影響を受けるのは、中国政府や中国の大企業だけではない。中国人留学生の入国ビザ規制が非常に厳しくなるなど、個人にも大きな影響が及ぶ。

同時に、習近平体制の下で万里のファイアウォールによる制限が強化されており、中国のサイバーセキュリティ法がますます強権的になり、市民データに対する当局のより広範なアクセスを許可するようになっている。また、ウイグル人やその他の少数民族の監視に、より洗練された監視テクノロジーが使われるようになり、2017年に強化が始まったVPNサービスの取り締まりにより、中国在住の人たちが万里のファイアウオールを回避するのはますます困難になっている。

そうした社会問題と比較すれば、ビデオ共有アプリの将来など比較的小さな問題と思えるかもしれない。しかし、この問題が、過去10年間の米中関係で最も不安な展開を見せていることは間違いない。

2016年のワシントン・ポスト紙の「中国はイノベーションを起こせないと信じたい米国を愕然とさせるテック業界の真実」と題する記事は、この展開を予見していたかのようだ。この記事で執筆者のEmily Rauhala(エミリー・ラウハラ)氏は「中国のテック業界は中国というパラレルワールドで繁栄している」と書いている。TikTokが米国の文化に与えた大きな影響は、2つのパラレルワールドが結合すると何が起こるのかをうかがわせるものとなった。しかし、地政学的な緊張という背景の中、今回のTikTokとWeChatをめぐる騒ぎによって別のことが明らかになった。それは、ニ大大国の市民によるアイデアと情報の相互交換は、彼らが制御できない状況の中でますます制限されるようになっているという事実だ。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

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(翻訳:Dragonfly)

EUがAppleに対する1.5兆円超の罰金命令を棄却した判決を上訴

アップルとヨーロッパ間の税金問題は終わりが見えない。米国時間9月27日、欧州委員会(EU)はアップルとアイルランドに対する国家支援と税金に関する150億ドル(約1兆5800億円)の罰金命令を無効とする2020年7月の裁定(未訳記事)を上訴する意向を発表(EUリリース)し、2016年8月の原判決を破棄した。一般裁判所は「多数の法的過ちを犯した」と主張した。

つまりこれは、上訴の上訴だ。

欧州委員会の Margrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)競争担当委員は声明で「同委員会は税控除を1社に与えライバルには与えない行為は『欧州連合における公正な競争を阻み、国家支援法に反すると考えているため、この行動を起こしたと』」説明した。

本訴訟が進行すれば、最高裁判所に相当する欧州司法裁判所で扱われる。かつて「第一審裁判所」と呼ばれていた一般裁判所の判決に対する上訴はここで裁かれる。声明の全文は文末に掲載した。

アップルはすでに自身の声明を発表しており、上訴内容をこれから調べるとともに、2020年7月の決定が最終であると考えていると(当然ながら)語った。

「一般裁判所は7月の委員会の訴訟断定的に棄却しており、事実はそれ以降変化していない。本件は当社がいくら税金を支払うかではなく、どこで支払う必要があるかの問題である」と広報担当者は言った。「当社は委員会の訴状を受け取り次第内容を確認するが、それは一般裁判所の事実に基づく結論を変えるものではなく、当社が事業を営む他の場所と同じく、アイルランド法を常に遵守していることは一般裁判所の裁定が証明されている」。

この発表は、世界で最も利益を上げている世界最大の企業を巡る数年にわたって進行中の税金物語が、これからも続くことを意味している。

この件は、新型コロナウイルスの感染拡大のために世界経済が縮小している最中に起きた。感染拡大は欧州諸国、とりわけ自宅待機などの措置によって職を失った個人や事業への公的支援に苦悩する国や地域に大きな打撃を与えている。そうした状況の中、税収を得て公正な競争を保証することは極めて緊急な課題だ。

国家援助訴訟を棄却した判決は、税優遇の大きい地域で高い利益を上げてきた巨大多国籍企業から税金を回収しようとしたヨーロッパの取組みに大きな打撃を与えると見られている。

この裁定で裁判所は、「欧州委員会は第107条(1)TFEU(EU機能条約)における利益があったことの立証に必要な法的基準を示すことができなかった」とした。

アップルの基本的論点は常に「ヨーロッパの事業所は実際に利益を上げている場所ではないので、なぜそこで得た収益に税金を払う必要があるのか」というものだ。

同社は2016年の原審判決の後、罰金支払いに必要な資金を第三者預託口座に蓄え始めたが、支払いは始めてはいない。TechCrunchはアップルにコメントを求めている。

欧州委員会の声明は以下のとおりだ。

本委員会は欧州司法裁判所に対し、2020年7月の一般裁判所による、アイルランドが選択的税優遇を通じてアップルに違法な国家援助を与えたとした2016年8月の委員会決定を棄却した判決を上訴することを決定した。

この一般裁判所判決は本委員会による税金対策における国家支援規則の適用に関して、重大な法的問題を引き起こしている。また本委員会は一般裁判所の判決には複数の法的誤りが認められると考えている。このため本委員会はこの問題を欧州司法裁判所に提訴する。

大小を問わずあらゆる企業が相応の税金を支払うことは、委員会の最優先課題である。一般裁判所は繰り返し、加盟諸国は独自の税法を決定する権限を持つが、そのためにはEU法に従う必要があり、国家支援法もその1つであることを確認している。もし加盟国が特定の多国籍企業に対してライバルの得られない税優遇を与えたなら、欧州連合における適切なの競争を阻み、国家支援法に反する。

我々は企業が相応の税金を支払うことを保証するために、あらゆる手段を使い続ける。さもなければ、国庫および国民は投資に必要な資金を奪われることになり、現在その資金はヨーロッパ経済の復活を支援するためにいっそう緊急に必要とされている。まだこの先必要な仕事は残っており、デジタル企業を含め、あらゆる企業が合法的に義務化されている税金を相応に支払うことを確実にすることがその一つだ。

画像クレジット:Emmanuel Dunand / AFP / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

テクノロジー企業は独立業務請負人の扱い方を徹底的に見直すべきだ

著者紹介:Adam Jackson(アダム・ジャクソン)氏は、組織と世界水準の技術人材を結ぶ、初めてのユーザー主導型人材ネットワークBraintrust(ブレイントラスト)の最高経営責任者(CEO)だ。彼は遠隔診療企業Doctor On Demand(ドクター・オンデマンド)とブロックチェーンにフォーカスしたデジタルアセットマネジメント企業Cambrian Asset Management(キャンブリアン・アセットマネジメント)の共同創業者でもある。

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株式市場が急騰し、大手テクノロジー企業の多くが過去最高の四半期収益を達成しているにも関わらず、テクノロジー企業やその他の米国実業界全体で、いまだに解雇される人々がいる。Salesforce(セールスフォース)は四半期利益が50億ドル(約5260億円)を超える過去最大を記録したが、約1000人を解雇した。LinkedIn(リンクトイン)は10パーセントの収益増を報告した翌日に、960人を解雇している。

このような解雇は大企業にとってはサイズの縮小程度に思えるかもしれないが、実際には「The Great Unbundling of Corporate America(米国実業界の大変化)」と私が呼んでいるものの始まりだ。企業はまだ成長し、イノベーションを実現し、仕事を成し遂げる必要があるため、簡単にプロジェクトをキャンセルしたり契約を断念したりはしない。

新型コロナウイルス感染症によりリモートワークへ向けた動きが加速したように、我々が直面する現在の危機により独立業務請負人を雇用する傾向が加速している。2019年の『New York Times(ニューヨーク・タイムズ)』の記事によると、Google(グーグル)は12万1000人の派遣社員と契約社員を雇っていた。こうした人たちは影の労働力と呼ばれ、正社員の人数10万2000人を上回っていた。2018年のZipRecruiter(ジップリクルーター)の報告によると、テクノロジー企業における雇用の記録的拡大とともに、独立業務請負人の雇用比率は増加を示していた

Bureau of Labor Statistics(アメリカ合衆国労働統計局)の調査では、現在、総労働力の6.9パーセントから9.6パーセントが独立業務請負人であることがわかった。Upwork(アップワーク)によると、実際は35パーセントに上る可能性がある。ここで重要なことは、企業が今この時を独立業務請負人に振り子を振る機会として利用し、企業の贅肉をそぎ落とそうとしていることだ。そして、「前例のない時期」への対応をあいまいにしたまま、そのことを正当化している。

私の考えでは、世の中の混乱にもかかわらずNASDAQ(ナスダック)が最高値を更新しているのは、こういった理由からだ。気が滅入るような話だが、大企業が締め付けを強め、無駄なものを一掃している一方で、自由に採用、解雇できる手頃な労働力を手に入れていることを投資家はわかっている。大企業はオフィス空間から自由になったように、決まった数の従業員を持つことからも自由になろうとしている。

Square(スクエア)は全従業員が永続的にリモートで働くことを許可した。これは、従業員たちに創造的、生産的であってほしいという思いからだけでなく、かなり高額で無駄なオフィススペースを手放したいという思いもあったようだ。

同様に、もし融通が利く独立業務請負人ができる仕事を正社員がやっていたら、そこも変えたいと思うのが当然だ。それに、オフィスにそんなに多くの人がいない方が、ずっと楽だろう。

しかし、この議論で私が言いたいのは、独立業務請負人を使うことに反対だということではない。

過去に、フリーランスビジネスを始める方が望ましかったとき、というのを思いつかない。今、起業コストはかなり低くなっている。企業がリモートワークへと移行する中、理論上はビジネスを今までとは違い、国家的に(もしくは国際的に)捉えることができる。企業が正社員を独立業務請負人と入れ替える動きは、自分だけの小規模フリーランス企業を立ち上げるチャンスだ。米国の実業界が求める労働時間から自由になり、自分の収入がどのような会社からも影響を受けないようにすることで、この先の苦難の時を切り抜ける方法を作り出せるかもしれない。

リモートワークへの移行が急がれているということは、多くの労働者がフリーランス経済へと向かう可能性もある。リモートオフィスを整えなければならない、会議はリモート出席、それに毎日を管理し段取りしなければならない。そうやって普通の労働者はフリーランサーの生活にほとんど適応してきた。

オフィスに通っていた人は、物事が単純に起こるだけ、という状態だったかもしれない。それに対し、リモートの世界はカレンダーに注意を払わなければならないし、同僚に積極的に働きかけなければならない。それがフリーランスビジネス運営のやり方のモデルになる。市場価値があり、複数の顧客に売ることができるコアな知識や能力を持っている人は、賃金生活者でいることがまだ必要なのか、きちんとした理由があるのか、それを考えるべきだ。

とはいえ、米国の実業界、特にテクノロジー企業は、この必要不可欠な働き手を今まで以上に大きな共感と敬意を持って待遇しなければならない。

Uber(ウーバー)やLyft(リフト)はドライバーを従業員として扱うよう命じられた。契約社員を会社の一員として扱ってこなかったことが1つの原因になっている。諸手当(有給休暇や健康保険など)が明らかに足りないだけでなく、ウーバーは多くの大企業と同様、契約社員を融通が利く人員としてではなく、いつでも解雇できる人員として扱っている。契約社員はこの会社における正真正銘の原動力であるにもかかわらず、である。ウーバーが株式を公開したとき、2500回から4万回仕事をしたドライバーに、ごくわずかのボーナスが出た。それとともに最高1万ドル(約105万円)分の株式をIPO価格で購入するチャンスが与えられた。ウーバーが株式を公開したときに多くの人々が百万長者、億万長者になったのは、まさにこうしたドライバーたちのおかげだったが、このドライバーたちには、もし株式を素早く売れば収入が得られるかもしれないというチャンスが与えられただけだった。

これは独立業務請負人のロイヤルティを生み出すうえで、非常に悪い見本だ。独立業務請負人を搾取して事業を確立しようとする大企業にとっては良い見本となる。

私が提案したいのは、フリーランス契約の徹底した見直しだ。独立業務請負人を、正社員の雇用を避けるための手段としてでなく、まったく違うタイプの労働者として考えてほしい。定義によればフリーランサーとは、独占されず、積極的に仕事が斡旋されるべき者であり、構築されたネットワークの一員である。米国の実業界における自由契約労働へのアプローチに関して問題の1つとなっているのが、雇用に対する「我々」対「彼ら」というアプローチだ。我々の一員なのか、単なる使い捨ての存在なのか、どっちなんだという考え方である。私が提案しているのは、フリーランサーを企業戦略の必要不可欠な一部として扱い、相応に報いることだ。フリーランサーは自分の株主所有権を獲得し、個人的に関与していくべきだ。フリーランサーが数多くのプロジェクトに協力し、会社の歴史の中でも大きな成功を獲得してくれるかもしれない。

フリーランスワーカーの扱いが原因で、請負の仕事が単なる報酬目当てになっている。テクノロジー企業は、何十万人もの独立業務請負人の職を生み出すことに成功してからは、独立業務請負人の待遇の仕方や、仕事に対する報酬の与え方を先陣を切って見直すことが必要である。そして、米国の実業界は、独立業務請負人をビジネスを行うための単なる安くて楽な手段とみなすことをやめる必要がある。彼らにはもっとずっと価値があるのだから。

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タグ:コラム

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(翻訳:Dragonfly)

TikTokは2020年上半期に1億400万本の動画を削除、有害コンテンツ制限で他アプリとの連携を提案

ByteDance(バイトダンス)が運営するTikTok(ティックトック)の所有権の行方(未訳記事)について、テクノロジーとリテールの巨大企業、投資家、政府当局者らの間で協議が進められる中、TikTokは米国時間9月22日に最新の透明性レポートを公表した(TikTokリリース)。今年度上半期には合計1億450万本を超える動画が削除され、ユーザー情報に関する法的要請は1800件近く、著作権で保護されたコンテンツの削除通知は1万600件に上ったという。

TikTokは、同レポートの公表と同時に、他のソーシャルアプリとの連携を視野に入れた、有害コンテンツに対する新たな取り組みを発表した(TikTokリリース)。これはおそらく、不法動画が膨大な数に達していることを相殺するためだろう。さらに、9月22日に開かれた有害コンテンツに関する英議会委員会にTikTokが出席するため、そのタイミングに合わせたと思われる。

透明性レポートの数字は、この人気アプリの影響に関する重要な観点を明確にしている。米政府は安全保障上の懸念からTikTokのサービスを停止することを考えている。ByteDanceが米政治家たちを納得させるような、中国の経営主導でない新たな企業構造を作り出せれば別だが。

しかし現実には、他のソーシャルメディアアプリと同様、TikTokは他にも対策を講じるべき無視できない問題を抱えている。その問題とは、同アプリのプラットフォーム上で公開、共有された多くの違法・有害コンテンツへの対応だ。人気が拡大し続ける中で(現在のユーザー数は世界中で7億人以上)、この問題もまた拡大し続けるだろう。

中国国外での所有権の問題がどう進展するかに関わらず、こういったことは同社にとって継続的な問題となる。TikTokの今後にとって重要な問題の1つは「アルゴリズムに関わるもの、そしてそのアルゴリズムを取引に含めることが可能かどうか、または含まれるのかどうか」ということであり、同社はアルゴリズムの仕組みに関してオープンにしていく姿勢を示そうとしている。同社は今年の初め、米国にTransparency Centerを設置した(未訳記事)。このセンターでは、同社がコンテンツをどのように監視しているか、専門家が確認し、入念に調べることができるという。

TikTokによると、コミュニティガイドラインまたはサービス使用条件に違反したとして、同社が世界中で削除した合計1億454万3719本の動画は、v上にアップロードされた全動画の1%未満だそうだ。この数から同サービスの規模がうかがえる。

削除された動画の数は過去6カ月の間で倍以上に増えている。これは動画の総数が倍増したことを意味する。

同社が公表した前回の透明性レポートによれば、2019年の下半期、ティックトックは4900万本以上の動画を削除している(正確な理由は分からないが、この前回の透明性レポートは公表までにかなりの時間がかかっており、2020年の7月に報告された(TikTokリリース)。削除された動画が全動画に占める比率は、ここ6か月間とだいたい同じ「1%未満」だ。

TikTokは「全体の96.4%は報告前に削除されており、90.3%は誰にも視聴される前に削除された」としている。これらの動画が自動化システムにより発見されたのか、人間のモデレーターによるのか、またはその両方によるのかは明らかにされていないが、少なくとも一部のマーケットではアルゴリズムをベースとしたモデレーションに切り替えられているようだ。

「新型コロナウイルスの世界的な流行の結果、インドやブラジル、パキスタンなどのマーケットで違反コンテンツを検出し自動で削除するために、我々はテクノロジーにさらに依存するようになった」と同社は述べている。

削除された動画が最も多いカテゴリーは成人のヌードや性的行為に関するもので、30.9%を占める。その次に、未成年の安全性に関するものが22.3%、違法行為に関するものが19.6%と続く。その他のカテゴリーには自殺や自傷行為、暴力的なコンテンツ、ヘイトスピーチ、危険な人物などが挙げられる。同社によると、同一の動画が複数のカテゴリーでカウントされる場合もあるという。

削除された動画の投稿元として最も多かったのはTikTokが禁止されたマーケットだ(まあ当然だろう)。削除された動画が最も多かったのは3768万2924本が削除されたインドだった。一方、米国は削除された動画のうち982万2996本(9.4%)を占めており、2番目に多い。

現在のところ、誤情報や虚偽情報を流すことはTikTokが悪用される最大の方法ではないようだが、それでもかなりの数にのぼる。「約4万1820本の動画(米国で削除された動画の0.5%未満)がティックトックの誤情報・虚偽情報ポリシーに違反している」と同社は言う。

およそ32万1786本の動画(米国で削除されたコンテンツの約3.3%)が同社のヘイトスピーチポリシーに違反していた。

TikTokによると法的要請は増えており、今年上半期には42の国や地域からのユーザー情報の要請が1768件あったという。290件(16.4%)は米国の法執行機関からのもので、その中には126件の出頭命令、90件の捜索令状、6件の裁判所命令が含まれていた。また、15の国や地域の行政機関から、コンテンツの制限または削除の要請を合計135件受けた。

ソーシャルメディア間の連携を提案

英国の議会グループである、文化・メディア・スポーツ省内の委員会の前に姿を見せたのと同じ日、ティックトックは透明性レポートの公表とともに、有害コンテンツへ対応するための連携を発表した。

実際のところ、欧州・中東・アフリカにおける公共政策の最高責任者Theo Bertram(テオ・ベルトラム)氏が呼ばれた今回の審問に大きな実効性はないが、これは、英政府がこのアプリの存在と同国における消費者への影響を意識し始めている証拠だ。

TikTokによると、有害コンテンツへ対応するための連携は、米国事業で暫定的なトップを務めるVanessa Pappas(ヴァネッサ・パパス)氏の提案を基にしたもので、他のソーシャルメディアプラットフォームの9人の取締役に書簡が送られたという。送付先の企業名と回答の有無や内容は明らかにされなかった。TechCrunchは取材を続け、詳細がわかり次第、最新情報を伝える予定だ。

一方、vがその全文を公開した書簡(下記に転載)には、ソーシャルメディアは自分たちのプラットフォームの悪用を抑制するために積極的な防止策を講じており、それが功を奏していると考えていることが、明確に示されている。このような取り組みは今回が初めてではない(未訳記事)。複数の企業、それまで顧客獲得で競合した企業同士が、誤情報などに対処するために共同戦線を張って一体となる今回のような試みは今までにいくつもあった。

特に今回の取り組みは、政治色がなく「自殺など著しく暴力的で生々しい映像を早期に特定して通告するための、業界関係者による協調的アプローチ」を提案するものである。パパス氏によって提案された覚書(MOU)はソーシャルメディアプラットフォーム間で情報を交換し、お互いに別のプラットフォームのコンテンツを通告し合うことを勧めている。同一のコンテンツが複数のプラットフォームで共有される場合が非常に多いことを考えると賢いやり方だ。

有害コンテンツへ対応するために連携を図ろうとする同社の取り組みは、ソーシャルメディア企業が主体的に関わろうと努め、責任を尽くそうとする姿を示している例の1つである。これは、自分たちが規制されないよう政府に働きかけるための重要な方策だ。Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)、YouTube(ユーチューブ)、その他の企業が、自分たちのプラットフォームを介して共有されたコンテンツの悪用や改竄を抑制しようと努力しているのにもかかわらず、いまだ苦境に立たされていることを考えると、どのプラットフォームにとっても、今回の連携の取り組みが最終的な解決策になるとは考えにくい。

以下がパパス氏による覚書の全文となる。

最近、ソーシャルコンテンツプラットフォームが再び、際どい自殺コンテンツの投稿とクロスポスト(同じ内容を複数の場所に投稿すること)という問題に直面しています。こういったコンテンツは私たちすべて、そして当社のチーム、ユーザー、コミュニティに影響を与えてきました。

オリジナルのコンテンツおよび改竄されたコンテンツを削除し、可能な限り他のユーザーに閲覧、共有されないよう注意しながら拡散を抑えるため、皆さんと同様、当社も真剣に取り組んできました。一方で、ユーザーと集団的コミュニティーを守るための私たち一人一人の取り組みが、正式な協調的アプローチを通して、自殺などのひどく暴力的で生々しい映像を早期に特定して通告する業界関係者間の取り組みへの大きな後押しになると信じています。

以上のことから、当社は覚書(MOU)の共同策定を提案したいと考えています。これにより、こうしたコンテンツをお互いが素早く通告できるようになるでしょう。

当社は独自に、最近共有された自殺コンテンツに関係する状況を徹底的に分析しています。しかし、プラットフォーム各社がより迅速に対応して、極めて不愉快で暴力的なコンテンツを抑制するには、そのようなコンテンツの早期特定が有効であることは明らかです。

当社は、特定すべきコンテンツのタイプを明確に定義し、迅速に行動し、MOUに基づいて特定したコンテンツをプラットフォーム間で互いに通告することを可能にする取り決めを、協議に基づいて設けるべきだと考えています。さらに当社は、今まで以上に問題に積極的に取り組み、配慮することを可能にする法的な制約が、さまざまな地域に存在していることを評価しています。

そこで当社は、各地域でTrust and Safety(トラスト・アンド・セイフティ)チームの会議を召集して、このような仕組みについてさらに話し合っていきたいと考えています。この仕組みによりユーザーの安全を高めることができるでしょう。

御社からの前向きなご回答を心待ちにするとともに、ユーザーとより幅広いコミュニティーを守るために協働していけることを願っております。

以上、よろしくお願い申し上げます。

ヴァネッサ・パパス
ティックトック責任者

続報をお楽しみに。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:TikTok

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(翻訳:Dragonfly)

ユナイテッド航空がSF-ハワイ線の乗客に15分で結果がわかる新型コロナ検査を提供、陰性なら隔離不要に

新型コロナウイルスの感染蔓延が続く中、「普段通りのビジネス」への道のりはまだ全く見えない。しかしUnited Airlines(ユナイテッド航空)は搭乗直前の新型コロナ検査を簡単に利用できるようにすることが移動の規制緩和に役立つかを確かめる新たな試みに乗り出す。同航空は新型コロナ検査(空港での迅速検査、あるいは郵送されてくる検査キットで旅行前に自宅で行う)をサンフランシスコ国際空港からハワイに向かう乗客向けに10月15日から提供する。

ユナイテッド航空はハワイ州の検疫対策の要件を満たすために州政府ならびに衛生当局と直接協業した。そのため、旅行前に受けた検査の結果が陰性だった乗客はハワイ到着後、義務化されている隔離をスキップできる。当然のことながら、一定期間の隔離はハワイのような人気観光地に旅行する際の大きな障壁だ。2週間という期間は、米国本土から訪れる人の典型的な滞在期間のほとんどにあたる。

ユナイテッド航空は検査の提供にあたって2社と提携した。在宅検査ではColorを利用する。医師によって指示され、サンプル到着後2日以内に結果を案内する。空港での検査はGoHealth(ゴーヘルス)のUrgent Careが行う。わずか15分で結果がわかるAbbot ID NOWを活用する。

もし乗客がColorを選択する場合、テストキットを少なくとも搭乗10日前にリクエストするようアドバイスされる。そして搭乗前72時間以内にサンプルを提出する。サンプルキットを期日内に受け取り、またフライト前に新型コロナウイルスに接触した可能性を極めて低くするべく結果を最新のものにするのが目的だ。Colorの検査を選択した乗客はサンプルをサンフランシスコ空港に設置するドロップボックス経由で提出することもできる。結果は離陸後に判明するが、陰性の場合は隔離期間を短縮できる。

空港で検査を受ける場合は、あらかじめサンフランシスコ国際空港の国際線ターミナルにあるテスト施設に予約を入れる必要がある。検査は太平洋時間午前9時から午後6時の間、毎日利用可能だ。

今回は試験プログラムにすぎないが、いい取り組みだ。というのもこの結果どうなるのか、隔離期間をスキップできるかを確かめるのは重要だからだ。移動後の2週間隔離はこのパンデミックで世界的にかなり広く導入されているが、ほとんどのところで検査結果や、検査をどのような手法でどれくらい最近受けたかにかかわらず意図的に隔離が求められている。

それは、現時点では検査の結果が必ずしも確実ではないからだ。たとえば無症状の人の感染を検知するのに、検出に十分なウイルス量がない場合は検査の有効性が低い可能性もある。そうすると偽陰性という結果になり、14日間の隔離義務が適用されない。

旅行、特に米国内の観光はハワイのような州にとっては経済を保つのに不可欠だ。広範での検査は米国、そして国際的にもこの手の経済活動を再開させるためのレバーとなりえる。しかしこうした手法が本格導入される前に綿密で入念な調査、衛生・健康専門家による精査、診断の精度と一貫性の改善が必要だろう。

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

「人材パイプラインの問題」など存在しない、テック業界の黒人求人活動と採用後の実態

テック業界は白人男性が圧倒的多数を占める場として知られるようになった。しかし、世間で広く信じられている人材パイプラインの問題というのは虚構であり、実際の問題は定着率の低さだ。

Black Tech Pipeline(ブラック・テック・パイプライン)は人材パイプラインの問題という神話の偽りを暴き、黒人テクノロジストたちの就職活動をサポートすることを目的としている。Pariss Athena(パリス・アテナ)氏によって創業されたブラック・テック・パイプラインには3つの主要サービスがある。誰でも料金を支払えば掲載してもらえる求人掲示板、求人およびコンサルティングサービス、およびイベントの講演候補者とのコネクション形成の3つだ。

「ブラック・テック・パイプラインの目標は、黒人テクノロジストのコミュニティが存在していることを広く世間に知ってもらうことだ」とアテナ氏はいう。「我々は黒人テクノロジストたちにフォーカスしている。『人材パイプラインの問題』全体が嘘であることを世間に知ってもらいたいからだ。黒人テクノロジストたちはテック業界に存在している。実際にそこで何年も働いている。ベテラン社員、中堅社員など、経験年数もさまざまだ。でも、それだけでなく、テック業界外の人たちにも波及効果を形成して、彼らに、『ここにあなたと同じような人たちのコミュニティがあって、あなたの就職活動をいつでもサポートしますよ』と伝えたいと思っている」。

現在、データベースには700人近くの黒人テクノロジストが登録されている。7月現在、経験年数ゼロの応募者は8.66%、1~2年相当の経験者は37.33%、2~3年の経験者は27.33%、5~10年の経験者は22%、10年以上の経験者は10.5%となっている。

求人掲示板に掲載された企業は、ブラック・テック・パイプラインの顧客に対して料金を支払う。そうした企業はカスタマイズされたランディングページで、空きのある職種、そうした職種の価値、ダイバーシティとインクルージョンに関する自社の考え方を説明できる。また、その企業は、ブラック・テック・パイプラインのニュースレターやソーシャルメディアプラットフォームでも取り上げられる(両方合わせて4万人を超えるフォロワーがいる)。

「自分がマイノリティーとなる可能性が高い職場で働くということの意味をわかりやすく説明したいと考えている」とアテナ氏はいう。

アテナ氏は、最初の会社でソフトウェアエンジニアの職を解雇され、ツイッターでアクティブに発信するようになってから、黒人テクノロジストのデータベースを作成するというアイデアにたどり着いた。

「実際に作成作業に取り掛かってみると、本当に小さなコミュニティだったが、黒人テクノロジストのコミュニティが存在していることに気づき、興味深く感じた。このボストンという土地柄を考えるとなおさらだった(どこでも状況は同じだと思うが)。それに、私は開発チームで唯一の黒人ソフトウェアエンジニアであったばかりでなく、私がこの業界で働きだしてから、会社全体で黒人は私一人だった」とアテナ氏は語る。

「自分のような黒人エンジニアを見ることはほとんどなく、『ああ、この業界には黒人はいないんだ』と思っていた。ところが、わずかだけど存在することがわかって、『いるじゃない。じゃあ、世界中にどのくらいいるんだろう』と思い、ツイッターで『Black Twitter in tech(テック業界の黒人ツイッター)なんてどうかな』とつぶやいてみた。そのツイートが意外にもあっという間に広がり、世界中の大勢の黒人テクノロジストたちがどんどん投稿してきて、彼らの写真と業界での仕事内容の説明からなる長い長いスレッドが出来上がってしまった。一夜にして、このムーブメントが起こり、Black Tech Twitter(ブラック・テック・ツイッター)のコミュニティが形成された」。

その同じ週に、さまざまな企業がアテナ氏に接触してきて、黒人の求人活動を手伝って欲しいと依頼してきたという。アテナ氏は求人活動の経験などなかったが引き受けた。求職者と雇用主をつなげるために人材データベースを作成し、自動的にデータベースを検索する付随のアプリケーションも用意した。

活動を始めた頃、同氏は、多くの応募者が採用はされているが、その多くは定着していないことに気づいたという。

「つまり問題なのは定着率だったというわけ」と同氏はいう。「白人が圧倒的に多い環境でただ一人の黒人として働いた経験のある者として、何が起こっているのかよくわかった」。

こうした経緯で、アテナ氏はコンサルタントパッケージを作成し、企業に課金するようになる。同氏のコンサルティングを介して応募者が採用されたときは常に、入社後の90日間、隔週でチェックを入れ、応募者の社内での状況を確認するようにした。

「それが、黒人に悪影響を及ぼす会社に応募者を送り込んでいないことを確認するための方法だった」と同氏はいう。「そして応募者の同意を得て、彼らの安全を考慮した上で、彼らから受け取ったフィードバックを雇用主側に伝えるようにした」。

目的は、雇用主に、自社の労働文化、および偏見が埋め込まれたシステムやプロセスを改善してもらうことだ。アテナ氏は当初、このサービスを、単純にツイッターのダイレクトメッセージを使って無料で行っていたが、その後、同氏の立ち上げた会社であるブラック・テック・パイプラインが提供するサービスの一環として雇用主に課金するようになった。

同氏はブラック・テック・パイプラインにかなりの労力を注ぎ込んでいるものの、まだフルタイムの仕事にはなっていない。ゆくゆくはそうしたいと同氏はいう。理想は、コンサルティングの仕事の比率を上げることだという。

「雇用主のためではなく求職者のための社外人事部のようなこの仕事が本当に気にっている」と同氏はいう。「私の仕事は企業を保護することが目的じゃない。企業がひどい有害行為をしていてもそれをカバーしてよく見せるような、そんな仕事はしていない。応募者が採用された後、良い経験を積んでいるかどうか確認し、もしそうでなければ、状況を説明してもらって、対処するのが私の仕事だ。それが本当にやりたいことだ。つまり、変化を起こし、雇用主側に約束を守らせること。演技だけで何も変えようとしない人とは仕事をしたくない」。

これまで12社の求人活動を手伝ったが、採用されたのは9人だけだ。厳密にはもっといたが、「採用されたものの、長続きしなかった人は含めていない」とアテナ氏はいう。低い定着率には、同氏が大企業で経験したいくつかの問題が関連している。

そうした問題の1つに、変化を実現したいと本当に思っている社員と、あまりその気がない上層部との間の断絶がある。また、採用はされたがマイクロアグレッション、つまり排除されていると感じさせる何気ない言動を経験して辞めざるを得ない状況に追い込まれる人もいる。

「そうした事態が起こると、マネージャに報告するのだが、彼らもどう対応してよいのかわかっていない」とアテナ氏はいう。「実際にどの程度深刻なのかわからないとか、偶然じゃないのかといった答えが返ってくる。このように雇用主側に分かってもらえないときは、実際に調査してフィードバックを報告し、その会社との契約を終了する。現在のプロセスを詳細に見て、改善点を指摘するようなことはしない。そうした話の分からない雇用主にそこまでのサービスは提供しなくなった。さっさと契約を終了して、次に進むだけだ」。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別

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(翻訳:Dragonfly)

TikTokがトランプ大統領に抵抗、禁止命令に対して差止めを申し立て

TikTokの親会社、ByteDanceとOracleの間で売却契約が成立したと報道されたものの、トランプ政権の禁止命令に対するTikTokの抵抗は続いている。

今日(9月22日)、TikTokは同社のショートビデオプラットフォームの運営を禁止する商務省の命令に対し連邦裁判所に差し止めを申し立てた。この命令は9月20日に執行されるはずだったが、ByteDanceとOracleの交渉を受けて一週間延長された。また Oracle への売却手続きに時間がかかることが考えられるため、さらに数週間延長されることが予想されている。

しかしTikTokは政府の措置に対してさらに強い抵抗を示している。おそらく禁止命令を受けた別のアプリ、WeChatの例を見てのことだろう。WeChatのユーザーグループはサンフランシスコを管轄する連邦地裁に対し商務省の命令を無効であるとする訴訟を起こし、先週、禁止命令に対する差し止めを勝ち取っている。WeChatの場合、原告は親会社の中国企業、Tencentではなくアメリカ市民のグループだった。訴訟記録によれば、TikTokの場合は同社自身がトランプ大統領とアメリカ政府を相手取って9月18日に「命令は無効である」とする訴訟を起こしている。

今回の差し止め申し立てにおいて同社は「安全保障に関連するとするアメリカ政府の常に揺れ動く要求を満足させるべく、われわれは所有者及び運営体制の変更を含めあらゆる努力を重ねてきた。この努力は今後とも続ける」と述べている。

同社は「差止命令が実行された場合の損害は「著しいものがある…大統領選挙を6週間後に控えて…まだわれわれのアプリをダウンロードしていない何億ものアメリカ市民がこの禁止によってコミュニケーションから排除されることになる」としている。TikTokは先週のWeChatの主張に習って「大統領と商務省は現在の法律によって与えられた権限を逸脱して禁止を強行しようとしている」と主張している。

しかしこの法廷闘争は現在混沌を極めるTikTok問題の一部をなすに過ぎない。昨夜、TechCrunchの同僚、Rita Liao記者が報じたように、中国政府はByteDanceによるOracleへの売却を「強迫によるもの」と非難しており、契約そのもののを認めない可能性が出ている。TikTokの将来は不透明さを増している。

画像:Sheldon Cooper/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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滑川海彦@Facebook

ギャング資本主義と米国の中国イノベーションの盗用、これは正しい道なのか

かつて、米国と中国の経済を見分けるのは「簡単」だった。一方は革新的で、他方はクローンを作っていた。一方は自由市場で、他方は政党とその指導者に賄賂を要求(The New York Times紙)していた。一方は世界のトップの頭脳を引き付ける働きをして、才能のある人たちを受け入れた。他方は、あなたを扇動罪で投獄する前に空港のバックルームに連れて行った(それはどちらもだが)。

これまで、このように比較はいつも簡単にできていて詳細がわからなくても少なくとも方向性は正確だった。

しかし今では、爆発するバッテリーを輸出した国は(The Atlantic記事)は量子コンピューティングを開発しているし、インターネットを開拓した国は空から落ちる飛行機を作っている

TikTokの成功にはさまざまな要因があるが、率直に言ってそれを標的にするには米国の恥さらしでしかない。何千人もの起業家と何百人ものベンチャーキャピタルがシリコンバレーやほかの米国のイノベーションハブに群がり、次の素晴らしいソーシャルアプリを探したり、自分たちで作ったりしている。

しかし、ユーザーの成長と投資家のリターンの法則は偶然にも中国・北京の海淀区(かいでんく)にある。中国のローカルアプリ「抖音」(Douyin)やTikTokのような海外アプリを通じたByteDance(バイトダンス)は、過去10年に消費者に多くのものを還元している(今シーズンのIPOがすべてエンタープライズSaaSであるのには理由があるのだ)。

これは国家の産業政策だけには頼れない勝利と言える。半導体やそのほかの資本集約型産業では、中国政府が数十億ドルのインセンティブを提供して開発を促進できるが、ByteDanceはアプリを構築しているだけで、それを世界中のアプリストアで配信している。Apple Developerアカウントを持つすべての開発者が利用できるのとまったく同じツールを使っている。TikTokのような消費者向けアプリを作って普及させようという「Made in China 2025」(米戦略国際問題研究所レポート)の計画はない、というよりも文字どおり消費者向けの成功のための計画は立てられない。むしろTikTokは、何億人もの人が中毒になるような完成度の高い製品を自ら開発したのだ。

中国がGoogle(グーグル)やAmazon(アマゾン)のような海外の競争相手から市場参入障壁を介して業界を守ったように、米国はいま、TikTokのような海外の競争相手から既存の既存企業を守ろうとしている。共産党が何年も前から要求してきたように、ジョイントベンチャーやローカルクラウドデータの主権を要求しているのだ。

さらにトランプ大統領はByteDanceに50億ドル(約5227億円)の納税を要求(Bloomberg記事)しているようで、若者の愛国教育に資金を提供すると表明している。もちろん大統領はいろいろと注文を付けているが、少なくとも50億ドルの価格は、Oracle(オラクル)のプレスリリースで確認されている(税収が実際に何に使われるのかは推測だが)。最近の香港の抗議行動を(Reuters記事)を長く追っていると、愛国的な若者の教育が2012年のデモのきっかけになったことを覚えているだろう。巡り巡ってくるものは巡り巡ってくると私は思う。

開発経済学者は「キャッチアップ」戦略、つまり中間所得層の問題を後回しにして、欧米との格差を縮めるために各国が選択できる戦術について話すのが好きだ。しかし、いま私たちが必要としているのは、米国の「遅れを取り戻す」戦略を説明してくれる先進国の経済学者だ。なぜなら、私たちはほとんどすべての面で遅れをとっている。

TikTokのここ最近の動向とそれ以前のHuawei(ファーウェイ)の問題が示すように、米国はもはや多くの重要な戦略市場においてテクノロジーの最先端を走っていない。中国本土の企業は、5Gやソーシャルネットワークなど多様な分野で世界的に勝利を収めているが、政府の直接の介入がなければ米国やヨーロッパのハイテク企業はこれらの市場を完全に失っていただろう。たとえ介入があったとしても、まだ失う可能性がある。台湾では、TSMCがIntel(インテル)をすで抜き去り、最先端の半導体製造で1、2年のリードを奪っている。

つまり、最近では中国の歴史や神話を盗み出してまともな映画にすることすらできないのだ。そして、後れを取る戦略は続いている。米国のイノベーションの最大の源泉を破壊しようとしている政権からの移民規制は、新型コロナウイルスの感染蔓延と相まって、留学生の移住者数は米国史上最大の減少につながっている(Axios記事)。

なぜそれが重要なのか?比較的最近のデータによると、米国では電気工学の大学院生の81%が外国人留学生であり、コンピュータサイエンスでは79%が外国人留学生であり、ほとんどの工学・技術分野では、その数は過半数を超えている(Inside Higher Ed記事)。

このような留学生がずっと家にいてくれれば「米国人もなんとか最先端の枠に入るれるだろう」という幻想を信じるのは素晴らしいが、実際のところはどうなのだろうか?イチゴ狩りや給食サービスの労働者に当てはまることは、電気工学を学ぶの大学院生にも当てはまるのだ。しかし、いわゆる 「米国人」 はこうした仕事を望んでいない。これらは大変な仕事であり、報酬面では実入りの少ない仕事であり、米国の労働者や学生が一般的に持っていない粘り強さを必要とする。これらの産業では大量の外国人労働者が従事しているが、それはまさに国内の誰も外国人労働者の役割を引き受けたがらないからだ。

才能があればあるほど、イノベーションも生まれてくる。このような頭脳の源泉が米国のトップ・イノベーション・ハブに宿ることなく、それがどこに行くのだろうと考えているのだろうか。かつて、スタンフォードやマサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピュータ・サイエンティストになりたいと思っていた人は、窓際に座って地平線を眺めながら日が沈むのを待っていたわけでないのだ。まして、いまはインターネットの時代であり、彼らはどこにいても、どんなツールやリソースを使ってでも、夢に向かって出発できる環境が整っている。

シードアクセラレーターであるY Combinatorが主催するプログラムの最近の参加者を見ていると、将来の偉大なスタートアップ企業となりそうなグループ、ますます米本土以外の地域からやってくるようになってきていることがわかる。何十人もの賢くて優秀な起業家たちは、米国への移住を考えているわけではなく、むしろ自国の市場が自慢の大国よりも技術革新や技術進歩に対してオープンであることを正しく認識している。フロンティアは米国で閉ざされ、他の場所に移ってしまったのだ。

では、米国、そしてヨーロッパにはいったい何が残っているのだろうか?柔軟性に欠ける企業のトップが、世界最高の技術との競争を避けるために外部の技術革新をブロックするという視野の狭い政策が、経済的な災いのレシピではないのなら、私はそれが何なのか分からない。

しかし、少なくとも米国の若者は愛国心を持っているはずだ。

画像クレジット:Thomas Peter – Pool  / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

日本語音声合成向けに東京式アクセントを自動推定する自然言語処理ソフト「tdmelodic」がオープンソース化

日本語音声合成向けに東京式アクセントを自動推定する自然言語処理ソフト「tdmelodic」がオープンソース化

PKSHA Technology(パークシャテクノロジー)は9月18日、自然言語処理ソフトウェア「tdmelodic」(Tokyo Dialect MELOdic accent DICtionary generator:東京方言高低アクセント辞書ジェネレーター)をオープンソースソフトウェア(OSS)としてGithub上で公開したと発表した。ライセンスは修正BSDライセンス(三条項BSDライセンス)。また特許出願中という。

tdmelodicを使用すると、様々な単語の東京式アクセントを推定でき、それにより大語彙アクセント辞書の自動生成が可能となる。この辞書は、より自然に感じられる日本語音声合成などの用途に利用できる。「日本語の単語の表層形と読みを入力とし、その単語の東京式アクセントを出力する機能」、「既存の日本語形態素解析用辞書UniDicとNEologdをベースとして、日本語文章の分析機能を有するMeCab用の大語彙アクセント辞書を自動生成する機能」を提供する。

PKSHA Technologyは、日本語音声合成技術の社会実装の加速を目的として、日本語音声合成で実用上必要となるような幅広い語彙を網羅した大規模アクセント辞書を自動生成するためのモジュールとして、単語の東京式アクセントを自動推定するソフトウェアtdmelodicを開発・公開。同ソフトウェアは、単語の表層形(漢字など、単語が文章中で現れる形)と読み(フリガナ)から、その単語のアクセントを深層学習に基づく技術により推定する。

同ソフトウェアを、既存OSSの大規模日本語辞書のひとつ「NEologd」などに適用すると、語彙サイズ数百万単語規模の大規模なMeCab用アクセント辞書を一括で自動生成できる。tdmelodicの活用法の一例として、音声合成システム開発者はまずtdmelodicとNEologdによる自動生成辞書をベースラインとして開発を始め、必要に応じて辞書中の誤りを適宜修正しながら文章読み上げの性能を向上させていくといった開発プロセスへの活用などが考えられるという。

近年、深層学習を活用した音声合成技術の登場により、合成音声の音質は飛躍的が向上し、店舗接客ロボットやスマートスピーカーなどにおいて音声合成システムが活用され始めて普及しつつある。しかし日本語の音声合成においては、いわゆる「イントネーションに若干の違和感がある」傾向にあり、依然として技術的課題となっているという。この問題は、音声合成システムの前処理において、各単語にアクセント情報を付与する際に、必ずしも正しい情報を付与できていないことが原因のひとつと考えられるとされる。

日本語の多くの方言の話し言葉において、単語のアクセント情報は重要な役割を担っており、そのひとつが同音異義語の識別のための役割(弁別機能)となっている。例えば、「富士」と「藤」は平仮名で書くと同じふりがな(ふじ)になる単語だが、アクセントが異なることによって識別でき、同様のケースが多数ある。

また、もうひとつの重要な役割が、文章中のフレーズの意味的まとまりや、文章の構造を理解しやすくするための役割(統語機能)という。例えば東京方言では、複数の単語が連結して複合語になった際に、複合語のアクセントと、個々の単語を単純に連結したアクセントとが、まったく異なったものになることがある。例えば「機械学習」は、「機械」(き\かい)「学習」(が/くしゅう)を単純に連結した「き\かいが/くしゅう」ではなく、「き/かいが\くしゅう」と発音する(\は下降気味に発音。/は上昇気味。東京方言の場合)。このように発音することで、「機械学習」が意味的にひとつの塊であって、単に「機械」と「学習」を並べた以上の特別な意味を持つ複合語であるということが分かりやすくなる。

日本語音声合成においてより自然な結果を得るためには、読み上げ文章中の全単語に対してこれらアクセント情報を適切に付与する必要があり、現在では、アクセント辞書(単語のアクセント情報を列挙した電子的な目録)を活用することが一般的という。

しかし、新語や流行語、商標名のように、標準的な辞書には掲載されない単語や、複雑な複合語などについては、実用上の重要性の高さにもかかわらず、既存の標準的なアクセント辞書では必ずしも十分に対応しきれていなかったという。

なお今回の成果の一部は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果得られたものという。

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Twitterが米大統領選挙に関するニュースやお役立ち情報をまとめたハブを導入

Twitter(ツイッター)は米国時間9月15日、米国民が米国近代史上最も不確実な選挙に備えられるようにする一連のツールを導入し、選挙ハブをデビューさせた。

ツイッターはトレンドを紹介するタブやキュレートされた話題のリストがあるExploreメニューに新たに「US Elections(米国選挙)」タブを追加した。US Electionsタブは、厳選された英語とスペイン語の選挙ニュース、各州のリソース、候補者の情報などが集められた中心的なソースとなる。

ツイッターはまた、選挙に関連する重要な話題について有権者を啓発するために「public service announcements(公共サービスの案内、PSA)」というものも導入する。PSAは有権者登録にかかる情報、郵便投票の入手についてのインストラクション、そして新型コロナウイルスパンデミックがまだ米国中で猛威を振るう中で安全に投票するためのアドバイスなどを紹介する。

「ツイッターは、2020年米国大統領選挙の投票権を有するあらゆる人に投票を促したい。人々が有権者登録できるよう、そして期日前投票を含む新型コロナの中での選挙プロセスをより深く理解したり、投票の選択肢について情報をしっかりと得たりできるようにサポートすることに注力している」と同社の公共政策担当ディレクターであるBridget Coyne(ブリジット・コイン)氏とシニアプロダクトマネジャーのSam Toizer(サム・トイザー)氏はブログに記している。

同社は2020年大統領選挙についての誤情報やプラットフォームの不正操作をめぐる懸念を解決するために、早くから多くの取り組みを展開してきた。紆余曲折を経たFacebook(フェイスブック)と異なり、ツイッターは政治広告を受け付けない方針を2019年10月の段階で決定した(Daily Beast記事)。ツイッターはまた、選挙に関連する誤情報についても数カ月前から積極的に注意喚起を始めた。これは、トランプ大統領のようなたびたびプラットフォームの規則を破る有名な利用者を想定しての措置だ。

ツイッターはトランプ大統領との争いを2020年5月に勃発させた。有権者登録と郵送投票のセキュリティについて誤った主張を含んでいた大統領の2つのツイートに同社が「要事実確認」のラベルを付けたときだ。子供は新型コロナに「ほぼ免疫がある」という誤った主張を含むビデオを共有したとして、ツイッターは過去1カ月半トランプ陣営のツイッターアカウントを凍結し、投票を思い止まらせるような大統領によるツイートを閲覧できないようにし、そして国民に違法である2回投票を推奨した大統領の一連のツイートに制限をかけた

11月の選挙で起こるだろうと国民が予想していることに対応しようと、ツイッターは先週、候補者が時期尚早の勝利宣言を行った場合の問題を解決する誤情報に関するルールを拡大した。同じアップデートの中で、ツイッターは「平和的な政権移行や禅譲を妨げる不法な行為を扇動する」いかなるツイートに対しても対応措置を取ると明らかにした。

ツイッターは誤情報問題を多く抱えるが、大統領選に関してはすぐさまポリシーに変更を加えたり、必要に応じて選択に流動性を持たせたりと、実際の懸念に積極的に応える姿勢を見せている。2020年大統領選での最悪のシナリオを想定することで、ツイッターは少なくとも選挙をしっかりと見張るつもりだ。こうした激動の年においては未知のことがあるが、これで十分であることを祈ろう。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:Twitter アメリカ 政治・選挙 SNS

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

Facebookライブにアップされた自殺動画の拡散防止に失敗した各SNSの理由

あるFacebook(フェイスブック)ユーザーが自分が自殺するところをライブ動画としてアップロードした。その動画がTikTok、Twitter(ツイッター)、Instagramに拡散した。YouTubeでは何千回も再生され、それにともなう広告収入を集める動画が今現在も多数流れている。ソーシャルネットワークはさまざまな努力はしているものの、拡散防止に失敗したことは明らかだ。多数の暴力的コンテンツ、フェイクニュースの拡散を防止できなかったことが思い出される。

オリジナルの動画がフェイスブックにアップされたのは2020年8月末だったが、その後、主要な動画プラットフォームにコピーされた。多くは無害なイントロを流した後で自殺の場面に移る。この手法は、はるか以前からプラットフォームによる審査をごまかすために多用されてきた。こうした動画は視聴した人々が違法な内容だ気づいて手動で通報するが、その時点ではすでに大勢が問題のシーンを見せられしまった後だ。

これはいろいろな意味で新型コロナウイルスは人工的に作り出されたものだとする陰謀論がSNSで拡散された際の手法に似ている。ソーシャルネットワークは、多大のリソースを投入してこのような陰謀論が猛威を振るうことを防ごうとしたが失敗した。

大型ソーシャルネットワークは、利用約款に違反する動画を即座に削除する高度なアルゴリズムを装備しているにも関わらず、これまでのところ規約違反動画が狙いとする最も重要な点を防ぐことができていない。多くのユーザーが過激な場面を目にしてしまっている。

Ronnie McNutt(ロニー・マクナット)氏の自殺動画が、最初にアップロードされたのは8月31日だった。システムがこの動画を削除したのは公開後3時間近く経ってからだった。その時には視聴回数は膨大なものになっており、多数のコピーが作られていた。多数のユーザーによって通報されていたにも関わらず、なぜこのような過激で暴力的かつ利用約款に明らかに違反する動画にはが長時間公開されたままになっていたのか?

先週発表されたコミュニティ規定施行レポートでフェイスブックは 暴力的あるいは性的な内容のコンテンツを審査するという報われない仕事に1日中携わる人間の担当者(多くは外部の契約者)がパンデミックのために不足していたことを認めた。

審査担当者の人員が不足していれば 、当然ながらフェイスブックとInstagramにおける自殺、自傷、チャイルドポルノなどのコンテンツの審査も遅れ気味になる。

また違法なコンテンツをみ全員が通報するとは限らないため、通報件数だけでは違法性の程度を判断することが難しい。

しかし自殺したマクナット氏の友人でポッドキャストの共同ホストを務めていたJosh Steen(ジョッシュ・スティーン)氏はTechCrunchの取材に対して次のようなメールを返しており、このライブ動画は自殺シーンのはるか以前に規約違反として通報されていたという。「彼をよく知っているし、またこのような動画がどのように処理されるかについても知識があるので、あのストリーミング動画は、何らかのかたちで介入があることを期待していたのだと信じる。これは仮定に過ぎないが、本人の気をそらすことができてさえいれば、彼が自殺をすることはなかったはずだと思う」。

この点についてもフェイスブックに取材したが、回答は「ライブストリームにいち早く介入できる方法がなかったか検討しているところだ」という型通りのものだった。ともあれ、そういう方法の確立を強く期待する。

しかし、こうした動画が一度配信されてしまうと、フェイスブックにはその拡散を防ぐ方法はない。過去にも自殺や暴力的な場面がライブストリームで放映されたことは多数ある。ただし今回、他のソーシャルメディアの対応は明らかに遅すぎだ。TikTokはこの動画を「おすすめ」ページに入れていた。無責任なアルゴリズムによって、何百万という人々がこのシーンを見ることになってしまった。なるほどこの動画をプラットフォームから完全に削除するのは難しかったかもしれないが、少なくとも「おすすめ」に入れて積極的に拡散すること防止するなんらかの手立てが取られて良かったはずだ。

YouTubeもいわば事後従犯だ。スティーン氏のグループの動画はキャプチャーされ、無数の営利目的のサイトがYouTubeにアップして広告料を稼いだ。スティーン氏は自殺動画をコピーし、広告を付加してSquarespaceやMotley Foolで流した例のスクリーンショットを送ってきた。

最大の動画配信プラットフォームがこのように無責任な態度を取り、悪質なコンテンツを排除するための方策を取らなかったように見えることは非常に残念だ。例えばTikTokは、契約違反の動画を繰り返しアップロードしたユーザーのアカウントを凍結するとしている。しかしそうしたユーザーを排除する前に、何度も繰り返される悪質な動画の投稿を許す必要があるのだろうか?

一方、フェイスブックは繰り返し通報を受けていたにも関わらず、この動画をが規約違反であると断定するのを躊躇したようだ。さまざまなかたちでの再アップロードが、禁止されることなくしばらく続いた。もちろんこれは審査のスキを突かれ、いくつかの動画がすり抜けてしまったのだとも考えられる。何千もの動画が大勢のユーザーの目に触れる前に削除されている。しかしフェイスブックのように、何十億ドル(数千億円)もの資金と何万人もの人員を割り当てている巨大企業が、これほど重大な規約違反動画を削除するために躊躇した理由がわからない。

フェイスブックは8月上旬に「通常の審査体制に戻した」と述べたとされている。しかしスティーン氏は「AIテクノロジーはパンデミック期間中に大きく進歩していた。だからライブストリーミングだから防止できなかった、あるいはその後の拡散を防げなかったというのはおかしい」と主張する。

「(乱射犯がモスクを襲った)クライストチャーチ事件で、私たちはライブ動画のバイラルな拡散の危険性についていくつか重要な教訓を得た。これは広く知らせる必要がある。ライブストリーミングが視聴された総数、共有された回数、それらが視聴された回数などだ。私はこれらの数字はライブ映像のインパクトを正しく認識する上で極めて重要だと考えている。特にどの時点でライブストリームのビューが急増したのかというデータが重要だ」とスティーンは述べている。

TwitterとInstagramでは、自殺動画アップロードするためだけに多数のアカウントが作られた。また自殺者のハンドル名を利用した多数のフェイクアカウントが作られている。一部の動画には「自殺」や「死」といったタグさえ付加されている。こうしたアカウントには、利用規約を破った動画をアップロードする以外の目的がないのは明らかだ。フェイクアカウントやボットアカウントを判別できるはずのアルゴリズムは何をしていたのか?

筆者が見つけたYouTubeチャンネルには、マクナット氏の自殺を利用して50万以上のビューを得ているものがあった。オリジナルの動画にはプリロール広告が付けられ、無害であることを装ったコンテンツとして始まるが、やがて興味を抱くユーザー向けに自殺シーンが表示される。私がYouTubeにこの動画を報告すると、プラットフォームはこのアカウントの収益化を停止し、問題の動画を削除した。しかしスティーン氏らは、何日も前に同じこと報告していた。次にこうしたことが起こった場合、あるいは別のプラットフォームで現に起こりつつあるかもしれないが、メディアが記事にしない限り、プラットフォームは責任ある措置を取ろうとしないのではないかと考えざるを得ない。

こうしたプラットフォームが目的としているのは、規約違反に対する措置をなるべく穏やかなものにして目につかないようにし、ユーザー離れを防いでビジネスへの影響を最小限にすることだ。他のソーシャルネットワークでも見られたが、もし厳格な削除措置がビジネスに悪影響を与えるようであれば、そういう措置は取られない。

しかし、今回の事態あるいは以前の事態が示すように、これはソーシャルネットワークサービスが必要とする重要な要素を欠いている。現在の状況をリアルタイムで共有できる動画配信サービスは、ビジネスとして極めて大きな利益を上げることは明らかだ。しかし同時に、恐るべき行為の映像をそのまま流してしまうというリスクをはらんでいる。

スティーン氏は「こうした(ソーシャルメディア)は非協力的であり、また正直ではない。我々の抗議に対して、ソーシャルメディアが責任ある対応をしなかったことを繰り返し見てきたことにより、改革を求めるハッシュタグ「#ReformForRonnie」を作った。何らかの変革がなければ、こうしたことはいつまでも続くだろう」と述べている。

もちろんスティーン氏は親しい友人を失い、その死を悲しんでいる人間であることは考慮に入れ必要がある。しかし友人の自殺が乱用され不当にコピーされて、故人が笑い者にされている状況に対して巨大動画プラットフォームが中途半端な対応しかしないことについて、強い不満と怒りを感じていることにも留意すべきだ。

スティーン氏はメジャーなソーシャルネットワークに対して、人々は何らかの声を上げるべきだとしてこのハッシュタグを広める運動をしている。どうすればこうした事態を防げたのか?すでにアップロードされた動画についての対応は、どのように改善されるべきなのか?どのようにすれば故人を愛した人々の意思をより尊重できたのか?もちろんこれらすべては完全に実現するのが極めて困難な課題だ。しかしそれが、プラットフォームが何も努力をしないことの言い訳になってはならない。

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タグ:Facebook YouTube

画像:Florian Gaertner / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

地方自治体はデジタルサービスの導入により困難な時代に真の変革を実現できる

著者紹介:Bob Ainsbury(ボブ・アインズベリー)氏Granicus(グラニカス)の製品部門の最高責任者。

大変な年だ。毎朝目を覚ますと、パンデミック ― 9.11以来最大の予期せぬ人命の喪失、国民の不安、自然災害、迫り来る経済崩壊 ― の悲劇が進行している。

このような状況では、政府機関が市民に対して「ただ今サービスは停止しています。番号を入力して下さい。できるだけ早く折り返しご連絡いたします」と言ったとしても、仕方がないと思う。

しかし、政府機関にそのような選択肢はない。我々が知っているように、公衆衛生リスクと不安定な経済状況に直面する市民のニーズは増え続けており、政府はそれに首尾よく積極的に対応する必要があるからだ。実際、過去数か月において、米国市民の間で効果的な公共サービスや情報の迅速な提供を求める声がやんだことはない。地方自治体やコミュニティ組織に対する市民の要求は高まり、その声はかつてないほど大きくなっている。人々は、自分たちの望む方法で提供される新しい公共サービスを地方自治体に求めており、年中無休かつ24時間対応の情報とサービスへの高まる需要にも対応してほしいと考えている。

2020年を特徴づける出来事は(これまでのところ)グローバルに進展しつつも非常にローカルなレベルで人々に影響を与えている。たとえば、パンデミックをきっかけに、公衆衛生や人種的平等といった問題への米国市民の関わり方が大きく変化した。過去数か月で、地方自治体の権限が強化され、人々の生活に直接影響するサービスや情報を効率よく提供できるようになった。市や地方自治体が抱える目下の課題は、新型コロナウイルス感染症が蔓延する世界における市民活動の新しいあり方を地域のリーダーが受け入れ、誰もが現状に対応できるようサポートするデジタルソリューションを提供する方法を探すことだ。

誰もが利用できるデジタル公共広場を構築する

米国では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、文字通り市庁舎が閉鎖され、あらゆるレベルの政府機関が、市民サービスをオンラインで平等に提供できるよう、公共部門の業務に近代化の余地があるかどうか再検討することを余儀なくされた。特に市長、市議会議員、地方自治体の職員は、この複雑な時期に生じた機会を逃すことなく、自治体のサービスを誰にとってもわかりやすく、誰もが参加でき、活気あふれるものへと改善するチャンスとして受け入れる必要がある。そのための方法の1つは、地方自治体がオンラインでの市民活動と市民サービスの場を開発するのに役立つデジタルツール、テクノロジー、人材に投資することである。必要とされる行政サービスを提供するだけでなく、市民からの意見を優先し、わかりやすさ、信頼、説明責任を重視した地域社会との対話を促進するプラットフォームが必要なのである。

公共サービスは常に地方自治体の中核をなしてきた。しかし、今日の公共部門のリーダーが直面している主な課題は、重要なサービスをどのようにオンラインで提供するかということである。より具体的には、対面でサービスを受けるために行列に並んで待つことが不可能になったため、オンラインサービスを開発することで、人々が登録して投票する、許可証を取得または更新する、停電を報告するといったことをオンラインで行えるようにする必要がある。

解決策を導き出すためには次の点を考えるべきである。結局のところ、市民は消費者である。市民は、いつでも利用できる行政サービス、市民の利便性に配慮しながらニーズも満たしてくれるサービス提供者を利用できる方法を求めている。デジタルトランスフォーメーションの真っただ中にある地方自治体にとって、自治体内部で提供するデジタルガバメントのサービスやソリューションを実現する際に利便性を組み込むことは重要である。デジタルガバメントが提供するサービスやソリューションは、バックエンドではプラットフォームやデバイスにとらわれない(少なくとも置き換え可能な)設計とし、フロントエンドではウェブ、モバイル、ソーシャルメディア、オフラインのオプションを通じて市民や行政機関のニーズに対応するオムニチャネルアプローチを取る必要がある。

地方自治体の価値を再び輝かせる

パンデミックの中、コミュニティメンバーやリモートワーカーがオンラインで活動することが増えたため、地方自治体がデジタルサービスを推進するための費用対効果の高い機会が新たに生まれている。最近まで、身分証明書用の写真作成、重要書類のスキャン、帳票のデジタル化、ワークフローやケース管理の合理化など、大掛かりな取り組みは、大規模な政府チームが必要に応じて複数の技術を別個に購入し、組み合わせて使うのに十分な予算を持っている場合にのみ実行可能だった。予算と能力に制約のあるコミュニティにできることはほとんどなかった。

良いニュースがある。今日のクラウドベースのソリューションはあらゆるサービスがそろっており、さまざまな規模のコミュニティに合わせて拡張可能であり、なおかつ料金も手頃であることだ。市場には、従来の対面サービスをデジタルでのサービスに移行しつつ、レガシーITシステムと統合できる地方自治体向けのソリューションが用途別に用意されている。そして、こうしたソリューションを活用し、米国において活発になっている市民活動の新たな形を促進し、市民にサービスを迅速に提供することが可能である。

さらに、使いやすくて手頃な価格(無料の場合もある)のデジタルエンゲージメントプラットフォームのおかげで、政府も真に有意義なものを提供できるのだという認識が米国社会で高まっている。このような考え方の変化により、民間企業のような利益の追求ではなく、コミュニティの代表として実政策に影響を与え、公共サービスを形作ることを目指す市民による社会参画活動が行われるようになった。

解決策を導き出すためには次の点を考えるべきである。デジタルガバメントプラットフォームは、常時稼働しているだけでなく、物資やサービスを市民に直接かつスムーズに提供できる必要がある。政府の援助を申請する場合でも、公園の使用許可を申請する場合でも、市民は、簡単かつ効率的に要望が実現してほしいと思っている。新型コロナウイルス感染症が蔓延している中、すべてまたは大部分のサービスをオンラインで提供できるようにすることは、これまで以上に重要である。これに対応するために、行政機関は、双方向のコミュニケーションが可能なデジタルフォーラムの作成に投資し、個々の家庭レベルで地域社会の需要とニーズを正確に反映したフィードバックを収集する必要がある。

デジタフォーラムの説明責任と代表性を高める

今日、市民活動をめぐるエネルギーが高まっているのは、パンデミック消費者活動の拡大、そして最近の組織的不正に対する抗議行動の直接的な結果である。このような要因が重なって、地方自治体には、国中の声を反映した市民活動を単に観察する以上の行動を起こす機会がつかの間与えられている。今や、市民活動と地域社会から寄せられる信頼を施策の土台として、時間をかけて積極的にそうした信頼を成長させていくチャンスがある。

地方自治体は、関心の高い支持者からなるネットワークを拡大し、全市民に情報を提供しながら、誤った情報に対処することで、より多くの市民に接触できるようになった。こうしたネットワークの形成と誤情報への対処を促進するために、行政機関は、市政のリーダーに政策と手続きの進捗状況を共有することを推奨する双方向のフォーラムを提供できる。結局のところ、行政とのやり取りは、銀行口座の残高を確認したり、Amazonでコーヒーポッドを再注文したりするのと同じように、誰にとってもシンプルで透明性のあるものにする必要がある。

解決策を導き出すためには次の点を考えるべきである。地方自治体は、変化を求めるコミュニティの多様な声に耳を傾けるチャンスを活用すべきだ。政府や社会の一部の権力者が彼らを黙らせたり無視したりしようとしている中ではとりわけそうだ。自治体は長い間待ち望まれてきたデジタルソリューションの開発を検討すべきである。そうしたソリューションにより、多様なコミュニティの声を増幅し、重要なサービスを提供し、人々に広く情報を提供できる。市民は、公務員や行政の代表者に意見を述べる、アイデアを共有する、緊急のニーズを伝えるといったことを簡単にできるようになるべきである。公務員や行政の代表者は市民から、安心して話を聞いてもらい、サービスを受けることができるという信頼を得る必要がある。市民活動の影響が拡大すると、Eメール、テキストメッセージ、郵便など、個人に合わせた方法を通じてより多くの人々にアプローチし、対話を確立して行動につなげる必要がある。

私は、全国の地方自治体が、市民とのやり取りの場をオンラインで提供することにより、政策問題に対する個人の認識を高め、市民の生活実態を明らかにし、多様性を許容した市民活動と真の変革を実現することで、現在生じている前例のない課題に立ち向かうことができると確信している。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:コラム

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(翻訳:Dragonfly)

Facebookがニュースフィードで米国の投票所スタッフ募集のプッシュ通知を開始

パンデミックが米国全体を襲う中、選挙が迫っている。投票所のスタッフ不足は今年11月の投票に対する多くの脅威の1つにすぎない。だが大きな問題だ。

Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は9月11日のFacebook(フェイスブック)への投稿で、同社がプラットフォーム上で投票所スタッフの募集活動を開始すると発表した。今週末から、米国の18歳以上のフェイスブックユーザーのニュースフィードにメッセージが表示され、州の投票所スタッフ登録ページへのリンクが付く。同社はまた、先月立ち上げた米国の選挙情報のハブである投票情報センター(未訳記事)にもその情報を含める。

Facebookは、Microsoft(マイクロソフト)、Starbucks(スターバックス)、Old Navy(オールドネイビー)、Target(ターゲット)など多くの大企業に加わり(Vox記事)、投票所でボランティアを希望する従業員に有給休暇を付与する。同社はまた、投票所スタッフ募集のプッシュ通知のために州選挙当局に対し広告を無料で提供し、カリフォルニア州に続いて他の州もこのキャンペーンに参加することを期待している。

投票所スタッフの不足は常に問題となってきたが、今年の懸念は非常に大きい。投票所スタッフは高齢者に偏っているため、一般的に新型コロナウイルスの脅威に対して弱い。そのため投票所スタッフの募集は通常の年より重要になる。

ピュー・リサーチ・センターの2018年の州政策報告にあるように、選挙を円滑に進めるには投票所のスタッフが不可欠だ。その不足は「長蛇の列、大混乱、票の集計ミス」につながる可能性がある。しかもこの報告はパンデミックを考慮に入れていない。

「スタッフは、あなたの近所の図書館、教会、消防署に設置されたプラスチック製の折りたたみ式のテーブルの向こうからあなたに挨拶し、あなたの名前、住所、州によっては写真IDを確認してから、投票用紙を渡すか投票機に案内する」。ピューの報告書はこう述べる。

「彼らは単に称賛すべき受付係というわけではない。彼らは十分に支払いを受けていないが、本当は民主主義の門番というべき存在だ」

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イングラントとウェールズで導入が遅れていた新型コロナ接触追跡アプリが9月24日にリリース

英国で長く導入が遅れていた新型コロナウイルス接触追跡アプリがついにリリースされる。英保健省(DHSC)は9月11日、イングランドとウェールズで9月24日にリリースされると発表した

英国内ではスコットランドと北アイルランドで既に独自の新型コロナ接触追跡アプリが導入されている。北アイルランドではこの夏にリリースされた。「Protect Scotland」(プロテクト・スコットランド)アプリは昨日(9月10日)リリースされ、数時間で60万件以上のダウンロードを記録した。

イングランドとウェールズでは当初予想よりはるかに長くアプリを待つことになった。政府大臣らが日次の新型コロナブリーフィングで5月、アプリがまもなくスタートすると示唆したが、実現しなかった。

結局立ち上げは遅れ、「NHS COVID-19」アプリの開発はNational Health Service(英国民保険サービス)のデジタル部門であるNHSXからDHSCに引き継がれた。NHSXは集中型アプリアーキテクチャーの選択に関連する問題に突き当たっていた。その問題がプライバシーに関する懸念を引き起こし、テストアプリはiPhoneデバイスの検出に関する技術的な問題に悩まされていることになった。

政府はアプリを分散型アーキテクチャーに転換した。つまり、公式の新型コロナ接触追跡アプリにAppleとGoogleが提供する公開通知APIを利用すれば、iOSのバックグラウンドでのBluetooth検出に関連する技術的な問題を回避できるということだ。

NHS COVID-19アプリに追加されたもう1つの要素は、スキャン可能なQRコードによるチェックイン機能だ。政府は、パブ、レストラン、美容院、図書館など、人が集まる可能性のある場所でQRコードを印刷して掲示し、アプリのユーザーがスキャンしてチェックインすることを推奨している。

チェックインデータはローカルデバイス上に保持される。デバイス同士が接近して一時的なIDが交換されるときに生成される接触データと同じプライバシー保護アプローチを採用する。

DHSCによるとチェックインデータは21日間デバイスに保持される。ある場所で発生が確認された場合、アプリを実行している全てのデバイスにその場所のIDが送信される。デバイス側では、最近のチェックイン情報との照合をデバイス上で行う。

DHSCは、照合の結果による「リスクのレベルに応じて」何をすべきか(たとえば隔離するか)についてアプリユーザーに対する警告と助言を生成するかもしれないと述べた。

政府によると、ワイト島で行われたNHSのボランティアおよび再構築されたアプリによるテストでは、従来の接触追跡と組み合わせて使用​​した場合に、新型コロナに対し陽性を示した人との接触を「非常に効果的」に特定できたという。

以前はAppleとGoogleのAPIの制約に関連する問題があり、接触通知を生成するために必要となるデバイス間の距離を効果的に推定することが困難であることが指摘されていた。

アプリが近く立ち上げられることに関して、Matt Hancock(マット・ハンコック)保険・社会福祉相は、スキャン可能な場所コードは「NHSの検査・追跡システムの根幹となる接触情報を収集するシンプルかつ容易な方法」だと述べた。ただしレストランなどでは、アプリを持たない常連客からデータを収集するシステムも必要となる。

「ウイルス蔓延を制御するために、最先端のテクノロジーを含めたあらゆるツールを使用する必要がある。今月後半のイングランドとウェールズでのアプリのリリースは非常に重要な瞬間であり、この重要な時期にウイルスを封じ込める能力を高めるのに役立つ」とハンコック氏は付け加えた。

英国のレストラン等は、gov.uk/create-coronavirus-qr-posterで自らの店舗等で掲示するQRコードをダウンロードするよう促される予定だ。

英国の全国紙が先月、アプリは自動の接触追跡を採用しないと報道した内容は見当違いだったようだ。

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ルカシェンコ体制批判で逮捕されたPandaDoc社員をベラルーシのテック業界がビデオで支援

サンフランシスコ拠点のスタートアップPandaDoc(パンダドック)の社員4人が逮捕されたことを受け、ベラルーシのテック業界が同社とベラルーシの民主化運動をサポートしようと集結した。

テックコミュニティの代表らが録画した、拘留されている社員をサポートするビデオはソーシャルメディア上で広く視聴されている。

「我々の強みは連帯だ」とテックコミュニティの代表らはビデオで話している。ビデオは英語の字幕付きで、テック業界で働く人の嘆願も取り上げている。多くのワーカーが、国家による嫌がらせはベラルーシにおけるテック産業の崩壊につながりかねないと話す。

TechCrunchは9月11日、PandaDocのCEOであるMikita Mikado(ミキタ・ミカド)氏に話を聞いたが、社員がベラルーシ警察によって10年以下の懲役で告発されていることを明らかにした。同氏が言うには、ルカシェンコ体制に対する同氏の個人的な抗議運動へのリベンジとして、でっちあげの容疑での告発とのことだ。

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1本のバイラルな記事が中国フードデリバリー業界の狂乱にブレーキをかける

中国のフードデリバリードライバーは、毎日がアルゴリズムと交通警察と不機嫌な客との果てしない戦いように感じているかもしれない。

中国のフードデリバリー配達員の危険な労働環境に深く切り込んだ1本の記事が、米国時間9月8日にインターネットを駆け巡り、アルゴリズムが人間に与えている害が国中で槍玉に挙げられた。

中国の中心地に行けば、スクーターに乗った大量の配達員がスピードを出して警笛を鳴らしながら走るところを見ない日はない。中国のPeople誌の調査レポートによると、彼らの危険運転の主な原因は、配達の遅れを罰する厳しいアルゴリズムのためだという。しかも、コンピューターは天候や交通状況などの現状を完全には考慮しておらず、ドライバーの命が危険に晒されることも多い。記事は数時間のうちに10万ビュー以上を記録し、広くシェアされてWeChatメッセンジャーの上で議論された。

フードデリバリー業者が最新の機械学習を使って高速配達を益々謳うようになるにつれ、アルゴリズムがドライバーに課すゴールはエスカレートし、実現するためには交通規則を破って長時間働くしかなくなっている。注文する顧客は家の中でアプリをタップするだけで、危険な配達の旅とは無縁だ。悪いレビューや給料カットを避けるために、配達員はスピードを出し歩行者を警笛で追い払って時間内に届けようとする。

2019年前半の6カ月間に、上海では食品と小荷物配達ドライバーだけで325件の死傷者が報告された。Alibaba(アリババ)のEle.meとTencent(テンセント)傘下のMeituanというフードデリバリーの2大サービスだけで事故の70%近くを占めている。

「ほとんどの人は注文が2分早く届こうが10分遅れようが気にしない。業者は実際、ドライバーにもっと猶予を与えられるはず。みんなが思うよりも客は忍耐強い」と書かれたコメントには3万3000件の「いいね」がついた。

その一方にあるのが巨大な市場機会だ。中国のフードデリバリー業界は、2020年に6650億人民元(約10兆3000億円)に達すると推定されている(艾媒网記事)。2020年3月時点で中国インターネット利用者の45%近い3億9800人がオンラインで食事を注文したことがある。対して米国のオンラインデリバリーの普及率は2020年に約9%(Morgan Stanleyレポート)と推測されている。

数百万人のドライバーが中国のフードデリバリー経済を支えており、Meituanが2019年時点で400万人近く(新浪科技記事)、Ele.meが最新の集計で300万人のドライバーを抱えている。

中国がフードデリバリー配達員の安全性で課題に直面するのはこれが初めてではない。2017年に起きた一連の路上事故の後、中国警察はオンデマンド・プラットフォーム各社にドライバーの安全基準の改善を指示した(Reuters記事)。当時中国国営紙の論説記事は、テイクアウト業者にもっと「思いやりのある」経営を求めた。

Alibaba(アリババ)は最近の批判を認識している。記事が公開されてから約12時間後、Ele.meは顧客が自主的に待ち時間を5分または10分延長する機能を追加すると発表した。さらに同社は、評価が高く実績のあるドライバーには時折遅れても罰を与えないことを約束した。Ele.meの最大のライバルであるMeituanは、この広く出回っている記事が提起した問題に対してまだ反応していない。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:中国

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PandaDoc社員4名がベラルーシで逮捕、ルカシェンコ体制批判への報復か

米国時間9月5日、米国拠点のエンタープライズ向けソフトウェアスタートアップであるPandaDoc(パンダドック)の社員4名がベラルーシ警察に首都ミンスクで逮捕された。同社の創業者が26年君臨するAlexander Lukashenko(アレクサンドル・ルカシェンコ)大統領に対する抗議活動に参加したことに対する国家主導の報復と見られている。国際監視団はルカシェンコ氏が同国で最近行われた選挙を自らの有利になるよう不正操作し、野党党首のSviatlana Tsikhanouskaya(スベトラーナ・チハノフスカヤ)氏の当選を阻止したと見ている。

PandaDocは2013年にベルリンのTechCrunchミートアップでデビュー(未訳記事)した後、5110万ドルを調達し、現在サンフランシスコに本社をおいている。同社は声明を出し、米国時間9月5日にミンスク開発オフィスが警察および「資金情報機関」の強制捜査を受けたことを発表した。

PandaDocは新たなウェブサイト、SavePandaDocに声明文を掲載して本件の概要を説明し、社員は事務所外に出ることを禁じられ、弁護士との接見は許されず、管理職の一人は警察に連行されたと書いた。

創業者の一人で米国在住のMikita Midado(ミキタ・ミダド)氏も本件に関する個人声明を自身のInstagramとYouTubeで公開した。

逮捕されたPandaDoc社員4名は、会社の資金10万7000BYR(ベラルーシ・ルーブル、約435万円)を横領し、課税を逃れた罪で告発されている。社員らは2カ月間拘留されている。

しかしPandaDocは声明で「この告発はまったくのでっち上げであり、一切根拠がないことを宣言する。当社のあらゆる行動は法に則っており、そのことは国際的監査や調査によって繰り返し確認されている」と語った。

現在勾留されている人物と役職は以下のとおり。

  • Yulia Shardiko氏(ユリア・シャルディコ):会計責任者
  • Dmitry Rabtsevich氏(ドミトリー・ラブセビッチ):ディレクター
  • Victor Kuvshinov氏(ビクタークブシノフ):プロダクト・ディレクター
  • Vladislav Mikholap氏(ウラジスラフ・ミホラップ):人事担当

同社は本社事務所をサンフランシスコに置いているが、ベラルーシ政府がテック業界を支援するために開発したベラルーシ・ハイテクパークもに巨大なオフィスを持っている。

PandaDocは、警察の強制捜査は同社の創業者、特にミダド氏がルカシェンコ氏による民主化活動家の暴力的抑圧を公の場で抗議したことと関連があるに違いないと言っている。しかしミダド氏の行動は純粋に個人的なものだった。

最近、ミダド氏はこの抗議運動の指導的発言者となっている。ProtectBelarus.orgという活動を立ち上げ、抗議者に対する暴力や拷問の命令に背く決断をしたベラルーシ警察官を経済的に支援し、テック業界で働けるよう教育している。

ベラルーシの警察官は、実質的な「契約社員」となり、契約時に多額の支払いを受けるが、契約を破棄するとその時点で直ちにその金額は負債となる。

ミダド氏は声明の中で「8月29日現在、6000通以上のメッセージと約600件の支援要求を受け取った」ことを明らかにした。「同サイトは有志によって運営されておりPandaDocとの関係はない」と同社は説明する。

「世界のテック企業には、このメッセージをシェアし、#SavePanadaDocタグを付けて行動を起こすことでPandaDocを支援するようお願いしたい」とミダド氏は声明で呼びかけている。

「もはや法律はない。当局は法に従って行動しようともせず、上からの政治命令のために事実を捻じ曲げている。みなさんがもしこれは自分には関係ないと考えているなら、正反対であることを保証する。すでに全員に影響を及ぼしている」と声明に書かれている。

「これ以上黙ってはいない!国の法秩序は混沌状態だ。当局の行動は集団虐殺と抑圧以外実行されない。先へ進むほど戻すのに時間がかかる。断崖はすぐそこに迫っている。我々は、同僚を直ちに釈放し、容疑を解き、会社を通常通り運営させ、福祉と収益を元に戻せるよう要求する」。

ベラルーシ内の事務所は閉鎖を余儀なくされており、「ベラルーシ共和国以外にハイテクノロジー・パークの代わりを設立し始める」と同社は表明している。

PandaDocはつい最近3000万ドル(約32億円)のシリーズBラウンドを実施し、One Peak、Microsoft Venture Fund M12、およびEBRD Venture Fundから資金調達した。

8月9日のベラルーシ大統領選挙の後、警察は平和的抗議を暴力で取り締り、6名の死者を出し、450件の警察による拷問事例報告が国連に承認されている。なお、この選挙は自由で公正ではなかったとEU、英国、米国は認識している。ルカシェンコ氏に有利な投票操作が行われたことが広く報道されたためだ。

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