TikTokは2020年上半期に1億400万本の動画を削除、有害コンテンツ制限で他アプリとの連携を提案

ByteDance(バイトダンス)が運営するTikTok(ティックトック)の所有権の行方(未訳記事)について、テクノロジーとリテールの巨大企業、投資家、政府当局者らの間で協議が進められる中、TikTokは米国時間9月22日に最新の透明性レポートを公表した(TikTokリリース)。今年度上半期には合計1億450万本を超える動画が削除され、ユーザー情報に関する法的要請は1800件近く、著作権で保護されたコンテンツの削除通知は1万600件に上ったという。

TikTokは、同レポートの公表と同時に、他のソーシャルアプリとの連携を視野に入れた、有害コンテンツに対する新たな取り組みを発表した(TikTokリリース)。これはおそらく、不法動画が膨大な数に達していることを相殺するためだろう。さらに、9月22日に開かれた有害コンテンツに関する英議会委員会にTikTokが出席するため、そのタイミングに合わせたと思われる。

透明性レポートの数字は、この人気アプリの影響に関する重要な観点を明確にしている。米政府は安全保障上の懸念からTikTokのサービスを停止することを考えている。ByteDanceが米政治家たちを納得させるような、中国の経営主導でない新たな企業構造を作り出せれば別だが。

しかし現実には、他のソーシャルメディアアプリと同様、TikTokは他にも対策を講じるべき無視できない問題を抱えている。その問題とは、同アプリのプラットフォーム上で公開、共有された多くの違法・有害コンテンツへの対応だ。人気が拡大し続ける中で(現在のユーザー数は世界中で7億人以上)、この問題もまた拡大し続けるだろう。

中国国外での所有権の問題がどう進展するかに関わらず、こういったことは同社にとって継続的な問題となる。TikTokの今後にとって重要な問題の1つは「アルゴリズムに関わるもの、そしてそのアルゴリズムを取引に含めることが可能かどうか、または含まれるのかどうか」ということであり、同社はアルゴリズムの仕組みに関してオープンにしていく姿勢を示そうとしている。同社は今年の初め、米国にTransparency Centerを設置した(未訳記事)。このセンターでは、同社がコンテンツをどのように監視しているか、専門家が確認し、入念に調べることができるという。

TikTokによると、コミュニティガイドラインまたはサービス使用条件に違反したとして、同社が世界中で削除した合計1億454万3719本の動画は、v上にアップロードされた全動画の1%未満だそうだ。この数から同サービスの規模がうかがえる。

削除された動画の数は過去6カ月の間で倍以上に増えている。これは動画の総数が倍増したことを意味する。

同社が公表した前回の透明性レポートによれば、2019年の下半期、ティックトックは4900万本以上の動画を削除している(正確な理由は分からないが、この前回の透明性レポートは公表までにかなりの時間がかかっており、2020年の7月に報告された(TikTokリリース)。削除された動画が全動画に占める比率は、ここ6か月間とだいたい同じ「1%未満」だ。

TikTokは「全体の96.4%は報告前に削除されており、90.3%は誰にも視聴される前に削除された」としている。これらの動画が自動化システムにより発見されたのか、人間のモデレーターによるのか、またはその両方によるのかは明らかにされていないが、少なくとも一部のマーケットではアルゴリズムをベースとしたモデレーションに切り替えられているようだ。

「新型コロナウイルスの世界的な流行の結果、インドやブラジル、パキスタンなどのマーケットで違反コンテンツを検出し自動で削除するために、我々はテクノロジーにさらに依存するようになった」と同社は述べている。

削除された動画が最も多いカテゴリーは成人のヌードや性的行為に関するもので、30.9%を占める。その次に、未成年の安全性に関するものが22.3%、違法行為に関するものが19.6%と続く。その他のカテゴリーには自殺や自傷行為、暴力的なコンテンツ、ヘイトスピーチ、危険な人物などが挙げられる。同社によると、同一の動画が複数のカテゴリーでカウントされる場合もあるという。

削除された動画の投稿元として最も多かったのはTikTokが禁止されたマーケットだ(まあ当然だろう)。削除された動画が最も多かったのは3768万2924本が削除されたインドだった。一方、米国は削除された動画のうち982万2996本(9.4%)を占めており、2番目に多い。

現在のところ、誤情報や虚偽情報を流すことはTikTokが悪用される最大の方法ではないようだが、それでもかなりの数にのぼる。「約4万1820本の動画(米国で削除された動画の0.5%未満)がティックトックの誤情報・虚偽情報ポリシーに違反している」と同社は言う。

およそ32万1786本の動画(米国で削除されたコンテンツの約3.3%)が同社のヘイトスピーチポリシーに違反していた。

TikTokによると法的要請は増えており、今年上半期には42の国や地域からのユーザー情報の要請が1768件あったという。290件(16.4%)は米国の法執行機関からのもので、その中には126件の出頭命令、90件の捜索令状、6件の裁判所命令が含まれていた。また、15の国や地域の行政機関から、コンテンツの制限または削除の要請を合計135件受けた。

ソーシャルメディア間の連携を提案

英国の議会グループである、文化・メディア・スポーツ省内の委員会の前に姿を見せたのと同じ日、ティックトックは透明性レポートの公表とともに、有害コンテンツへ対応するための連携を発表した。

実際のところ、欧州・中東・アフリカにおける公共政策の最高責任者Theo Bertram(テオ・ベルトラム)氏が呼ばれた今回の審問に大きな実効性はないが、これは、英政府がこのアプリの存在と同国における消費者への影響を意識し始めている証拠だ。

TikTokによると、有害コンテンツへ対応するための連携は、米国事業で暫定的なトップを務めるVanessa Pappas(ヴァネッサ・パパス)氏の提案を基にしたもので、他のソーシャルメディアプラットフォームの9人の取締役に書簡が送られたという。送付先の企業名と回答の有無や内容は明らかにされなかった。TechCrunchは取材を続け、詳細がわかり次第、最新情報を伝える予定だ。

一方、vがその全文を公開した書簡(下記に転載)には、ソーシャルメディアは自分たちのプラットフォームの悪用を抑制するために積極的な防止策を講じており、それが功を奏していると考えていることが、明確に示されている。このような取り組みは今回が初めてではない(未訳記事)。複数の企業、それまで顧客獲得で競合した企業同士が、誤情報などに対処するために共同戦線を張って一体となる今回のような試みは今までにいくつもあった。

特に今回の取り組みは、政治色がなく「自殺など著しく暴力的で生々しい映像を早期に特定して通告するための、業界関係者による協調的アプローチ」を提案するものである。パパス氏によって提案された覚書(MOU)はソーシャルメディアプラットフォーム間で情報を交換し、お互いに別のプラットフォームのコンテンツを通告し合うことを勧めている。同一のコンテンツが複数のプラットフォームで共有される場合が非常に多いことを考えると賢いやり方だ。

有害コンテンツへ対応するために連携を図ろうとする同社の取り組みは、ソーシャルメディア企業が主体的に関わろうと努め、責任を尽くそうとする姿を示している例の1つである。これは、自分たちが規制されないよう政府に働きかけるための重要な方策だ。Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)、YouTube(ユーチューブ)、その他の企業が、自分たちのプラットフォームを介して共有されたコンテンツの悪用や改竄を抑制しようと努力しているのにもかかわらず、いまだ苦境に立たされていることを考えると、どのプラットフォームにとっても、今回の連携の取り組みが最終的な解決策になるとは考えにくい。

以下がパパス氏による覚書の全文となる。

最近、ソーシャルコンテンツプラットフォームが再び、際どい自殺コンテンツの投稿とクロスポスト(同じ内容を複数の場所に投稿すること)という問題に直面しています。こういったコンテンツは私たちすべて、そして当社のチーム、ユーザー、コミュニティに影響を与えてきました。

オリジナルのコンテンツおよび改竄されたコンテンツを削除し、可能な限り他のユーザーに閲覧、共有されないよう注意しながら拡散を抑えるため、皆さんと同様、当社も真剣に取り組んできました。一方で、ユーザーと集団的コミュニティーを守るための私たち一人一人の取り組みが、正式な協調的アプローチを通して、自殺などのひどく暴力的で生々しい映像を早期に特定して通告する業界関係者間の取り組みへの大きな後押しになると信じています。

以上のことから、当社は覚書(MOU)の共同策定を提案したいと考えています。これにより、こうしたコンテンツをお互いが素早く通告できるようになるでしょう。

当社は独自に、最近共有された自殺コンテンツに関係する状況を徹底的に分析しています。しかし、プラットフォーム各社がより迅速に対応して、極めて不愉快で暴力的なコンテンツを抑制するには、そのようなコンテンツの早期特定が有効であることは明らかです。

当社は、特定すべきコンテンツのタイプを明確に定義し、迅速に行動し、MOUに基づいて特定したコンテンツをプラットフォーム間で互いに通告することを可能にする取り決めを、協議に基づいて設けるべきだと考えています。さらに当社は、今まで以上に問題に積極的に取り組み、配慮することを可能にする法的な制約が、さまざまな地域に存在していることを評価しています。

そこで当社は、各地域でTrust and Safety(トラスト・アンド・セイフティ)チームの会議を召集して、このような仕組みについてさらに話し合っていきたいと考えています。この仕組みによりユーザーの安全を高めることができるでしょう。

御社からの前向きなご回答を心待ちにするとともに、ユーザーとより幅広いコミュニティーを守るために協働していけることを願っております。

以上、よろしくお願い申し上げます。

ヴァネッサ・パパス
ティックトック責任者

続報をお楽しみに。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

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(翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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