地方自治体はデジタルサービスの導入により困難な時代に真の変革を実現できる

著者紹介:Bob Ainsbury(ボブ・アインズベリー)氏Granicus(グラニカス)の製品部門の最高責任者。

大変な年だ。毎朝目を覚ますと、パンデミック ― 9.11以来最大の予期せぬ人命の喪失、国民の不安、自然災害、迫り来る経済崩壊 ― の悲劇が進行している。

このような状況では、政府機関が市民に対して「ただ今サービスは停止しています。番号を入力して下さい。できるだけ早く折り返しご連絡いたします」と言ったとしても、仕方がないと思う。

しかし、政府機関にそのような選択肢はない。我々が知っているように、公衆衛生リスクと不安定な経済状況に直面する市民のニーズは増え続けており、政府はそれに首尾よく積極的に対応する必要があるからだ。実際、過去数か月において、米国市民の間で効果的な公共サービスや情報の迅速な提供を求める声がやんだことはない。地方自治体やコミュニティ組織に対する市民の要求は高まり、その声はかつてないほど大きくなっている。人々は、自分たちの望む方法で提供される新しい公共サービスを地方自治体に求めており、年中無休かつ24時間対応の情報とサービスへの高まる需要にも対応してほしいと考えている。

2020年を特徴づける出来事は(これまでのところ)グローバルに進展しつつも非常にローカルなレベルで人々に影響を与えている。たとえば、パンデミックをきっかけに、公衆衛生や人種的平等といった問題への米国市民の関わり方が大きく変化した。過去数か月で、地方自治体の権限が強化され、人々の生活に直接影響するサービスや情報を効率よく提供できるようになった。市や地方自治体が抱える目下の課題は、新型コロナウイルス感染症が蔓延する世界における市民活動の新しいあり方を地域のリーダーが受け入れ、誰もが現状に対応できるようサポートするデジタルソリューションを提供する方法を探すことだ。

誰もが利用できるデジタル公共広場を構築する

米国では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、文字通り市庁舎が閉鎖され、あらゆるレベルの政府機関が、市民サービスをオンラインで平等に提供できるよう、公共部門の業務に近代化の余地があるかどうか再検討することを余儀なくされた。特に市長、市議会議員、地方自治体の職員は、この複雑な時期に生じた機会を逃すことなく、自治体のサービスを誰にとってもわかりやすく、誰もが参加でき、活気あふれるものへと改善するチャンスとして受け入れる必要がある。そのための方法の1つは、地方自治体がオンラインでの市民活動と市民サービスの場を開発するのに役立つデジタルツール、テクノロジー、人材に投資することである。必要とされる行政サービスを提供するだけでなく、市民からの意見を優先し、わかりやすさ、信頼、説明責任を重視した地域社会との対話を促進するプラットフォームが必要なのである。

公共サービスは常に地方自治体の中核をなしてきた。しかし、今日の公共部門のリーダーが直面している主な課題は、重要なサービスをどのようにオンラインで提供するかということである。より具体的には、対面でサービスを受けるために行列に並んで待つことが不可能になったため、オンラインサービスを開発することで、人々が登録して投票する、許可証を取得または更新する、停電を報告するといったことをオンラインで行えるようにする必要がある。

解決策を導き出すためには次の点を考えるべきである。結局のところ、市民は消費者である。市民は、いつでも利用できる行政サービス、市民の利便性に配慮しながらニーズも満たしてくれるサービス提供者を利用できる方法を求めている。デジタルトランスフォーメーションの真っただ中にある地方自治体にとって、自治体内部で提供するデジタルガバメントのサービスやソリューションを実現する際に利便性を組み込むことは重要である。デジタルガバメントが提供するサービスやソリューションは、バックエンドではプラットフォームやデバイスにとらわれない(少なくとも置き換え可能な)設計とし、フロントエンドではウェブ、モバイル、ソーシャルメディア、オフラインのオプションを通じて市民や行政機関のニーズに対応するオムニチャネルアプローチを取る必要がある。

地方自治体の価値を再び輝かせる

パンデミックの中、コミュニティメンバーやリモートワーカーがオンラインで活動することが増えたため、地方自治体がデジタルサービスを推進するための費用対効果の高い機会が新たに生まれている。最近まで、身分証明書用の写真作成、重要書類のスキャン、帳票のデジタル化、ワークフローやケース管理の合理化など、大掛かりな取り組みは、大規模な政府チームが必要に応じて複数の技術を別個に購入し、組み合わせて使うのに十分な予算を持っている場合にのみ実行可能だった。予算と能力に制約のあるコミュニティにできることはほとんどなかった。

良いニュースがある。今日のクラウドベースのソリューションはあらゆるサービスがそろっており、さまざまな規模のコミュニティに合わせて拡張可能であり、なおかつ料金も手頃であることだ。市場には、従来の対面サービスをデジタルでのサービスに移行しつつ、レガシーITシステムと統合できる地方自治体向けのソリューションが用途別に用意されている。そして、こうしたソリューションを活用し、米国において活発になっている市民活動の新たな形を促進し、市民にサービスを迅速に提供することが可能である。

さらに、使いやすくて手頃な価格(無料の場合もある)のデジタルエンゲージメントプラットフォームのおかげで、政府も真に有意義なものを提供できるのだという認識が米国社会で高まっている。このような考え方の変化により、民間企業のような利益の追求ではなく、コミュニティの代表として実政策に影響を与え、公共サービスを形作ることを目指す市民による社会参画活動が行われるようになった。

解決策を導き出すためには次の点を考えるべきである。デジタルガバメントプラットフォームは、常時稼働しているだけでなく、物資やサービスを市民に直接かつスムーズに提供できる必要がある。政府の援助を申請する場合でも、公園の使用許可を申請する場合でも、市民は、簡単かつ効率的に要望が実現してほしいと思っている。新型コロナウイルス感染症が蔓延している中、すべてまたは大部分のサービスをオンラインで提供できるようにすることは、これまで以上に重要である。これに対応するために、行政機関は、双方向のコミュニケーションが可能なデジタルフォーラムの作成に投資し、個々の家庭レベルで地域社会の需要とニーズを正確に反映したフィードバックを収集する必要がある。

デジタフォーラムの説明責任と代表性を高める

今日、市民活動をめぐるエネルギーが高まっているのは、パンデミック消費者活動の拡大、そして最近の組織的不正に対する抗議行動の直接的な結果である。このような要因が重なって、地方自治体には、国中の声を反映した市民活動を単に観察する以上の行動を起こす機会がつかの間与えられている。今や、市民活動と地域社会から寄せられる信頼を施策の土台として、時間をかけて積極的にそうした信頼を成長させていくチャンスがある。

地方自治体は、関心の高い支持者からなるネットワークを拡大し、全市民に情報を提供しながら、誤った情報に対処することで、より多くの市民に接触できるようになった。こうしたネットワークの形成と誤情報への対処を促進するために、行政機関は、市政のリーダーに政策と手続きの進捗状況を共有することを推奨する双方向のフォーラムを提供できる。結局のところ、行政とのやり取りは、銀行口座の残高を確認したり、Amazonでコーヒーポッドを再注文したりするのと同じように、誰にとってもシンプルで透明性のあるものにする必要がある。

解決策を導き出すためには次の点を考えるべきである。地方自治体は、変化を求めるコミュニティの多様な声に耳を傾けるチャンスを活用すべきだ。政府や社会の一部の権力者が彼らを黙らせたり無視したりしようとしている中ではとりわけそうだ。自治体は長い間待ち望まれてきたデジタルソリューションの開発を検討すべきである。そうしたソリューションにより、多様なコミュニティの声を増幅し、重要なサービスを提供し、人々に広く情報を提供できる。市民は、公務員や行政の代表者に意見を述べる、アイデアを共有する、緊急のニーズを伝えるといったことを簡単にできるようになるべきである。公務員や行政の代表者は市民から、安心して話を聞いてもらい、サービスを受けることができるという信頼を得る必要がある。市民活動の影響が拡大すると、Eメール、テキストメッセージ、郵便など、個人に合わせた方法を通じてより多くの人々にアプローチし、対話を確立して行動につなげる必要がある。

私は、全国の地方自治体が、市民とのやり取りの場をオンラインで提供することにより、政策問題に対する個人の認識を高め、市民の生活実態を明らかにし、多様性を許容した市民活動と真の変革を実現することで、現在生じている前例のない課題に立ち向かうことができると確信している。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:コラム

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(翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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