GreylockとMLTはテック業界の富のサイクルに多様化を促す約100億円のファンドを創設

Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)は、Management Leadership for Tomorrow(マネージメント・リーダーシップ・オブ・トゥモロー、MLT)と手を組み、テック業界の多様性とインクルージョンの問題に取り組むことにした。

「これは総合的なアプローチだというのが私たちの見解です」とMLTの創設者でCEOのJohn Rice(ジョン・ライス)氏はTechCrunchに話した。「これは、単なるコーディングやメンタリングやフェローシップのプログラムではありません。それらも大変に素晴らしいものです。重要でもあります。しかし私たちが訴えているのは、これらすべてを採り入れた長期的な視野が必要だということです。一気に方向転換して、テック業界のエコシステムが最大の力を入れている分野にマイノリティーの参加を増やすことは可能だと、私たちは見ています」。

手始めに、Greylockはその多面的なパートナーシップを活かし、専門技能を持つ黒人、ラテン系、米国先住民およそ8000人を擁するMLTのネットワークとつながり、彼らを同社のポートフォリオにある企業の有望な働き口に結び付ける。さらに、GreylockとMLTはともにそれらの企業の離職防止に協力し、同時にMLTに登録した専門家たちがベンチャービジネスでキャリアを積めるように支援する。

「Greylockで働きながら、20年間テック業界のエコシステムを見てきてハッキリしてきたのは、私たちには特に驚きはしませんが、現代のテクノロジーは富を生み出す最大の機会だということです」と、GreylockのパートナーであるDavid Sze(デイビッド・ジー)氏はTechCrunchに話した。「それはこれまでも富の最大の生成器であり、おそらく今後もそうあり続けるでしょう。ここ当面はね」。

しかし、最大の経済的利益は企業創設者、初期の従業員、投資家の元に集まる。そこから、この富を生み出すサイクルの中で、やがて次世代のスタートアップの創設者となる初期の従業員やFacebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)といったトップ企業出身者のネットワークができ上がったとジー氏はいう。

「このサイクルは繰り返されます」とジー氏。

そしてベンチャー投資家たちは、そんな急成長企業に在籍経験のある人たちを支援したいと必死になる。

「これがシリコンバレーの仕組みです」とジー氏。「それ自体がソーシャルネットワークなのです。しかし問題は、黒人やラテン系や米国先住民の人たちが、テック系スタートアップ、ベンチャー投資、そしてそのネットワークで極端に置き去りにされていることです。結果として、それが悪化因子となっています」。

このシステムの中の人たちにとって、そこは自分の都合のいいように作られている。だがそのために取り残された人たちには、ますます入りづらい場所になっていくとジー氏は話す。

「それに、ベンチャー投資家であれテック系スタートアップであれ、そこを正す能力が私たちにはまったく欠けていることを、素直に認めなければなりません」とジー氏。「歴史的にも、多様性やインクルージョンという面でのトップダウンの視点がないまま、システム発展させてしまった。まさに、そこを変える必要があります」。

GreylockとMLTが手を結び、彼らが支援するテック系スタートアップに黒人、ラテン系、米国先住民の人々をもっと多く送り込もうとする最大の理由はそこだ。またそれは、供給の問題ではないとジー氏は話す。優れた人材はあり余っているからだ。もし供給に問題があるとするなら、「その問題は私たちの側にあります」と。

「人材の側ではありません」とジー氏。「人材は豊富です。長年かけて拡大してきた今のシリコンバレーのネットワークとシステムが、そうした人たちの受け入れを推進してこなかったことに責任があります」。

Greylockのパートナー企業も、この初のインパクト投資に500万ドル(約5億2800万円)を寄付している。これにともないMLTは、Greylockの10億ドル(約106億円)規模の最新ファンド(Greylockリリース)のリミテッドパートナーとなった。

「私たちには、リミテッドパートナーとの長い歴史があります」とジー氏は話す。「新しいリミテッドパートナーは滅多に作らないため、彼らが加わってくれたことを本当に嬉しく思っています。彼らのおかげでパワー倍増です」。

このパートナーシップに期待されるのは、他のベンチャー投資ファンドにもこの考え方が広がることだとジー氏はいう。ライス氏は、これがテック業界の他のリーダーたちの関心を集め、方向転換の力になってくれることを期待している。

「リーダーたちは、今、この極めて重要な時期にあたり、私たちが今こうしている理由について、もっと意識を高める必要があります」とライス氏はいう。「リーダーたちはより深い見識を得るだけでなく、さらに深い見識を学ぶ責任感を持たなければなりません。なにも、人種差別の歴史の専門家になる必要はありません。彼らがよく知っていること、つまりAIやビットコインに関する理解と同じぐらいに、理解すればよいのです。わかって欲しいのです」。

またライス氏は、リーダーたちはベンチャー投資家が企業への投資について考えるときや、自社の成長について考えるときと同程度の厳格さで、総合的アプローチに取り組むべきだと話す。

「それと同じぐらいの厳格さで私たちのアプローチに取り組ままなかったり、また多様性に対して適当に選んだ行動で方向転換を図ろうと軽く考えるようでは、行き詰まります。私たちは方向を変えるのです。それには総合的なアプローチが欠かせないのです」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

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(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

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