”物流界のUber”Lalamoveがアジア100都市以上での営業展開を目指し3000万ドルを調達

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香港に拠点を置きオンデマンド物流サービスを提供しているLalamoveは、上場を視野にこの度シリーズBで3000万ドルを調達した。

3年前にEasyVanという名前で設立された同社は、現在中国の50都市と東南アジアの5都市で営業しており、今回調達した資金を使って2017年中にさらに中国・アジアの60都市以上へとビジネスを展開していく予定だ。

今回のラウンドをうけ、Lalamoeはこれまでに合計6000万ドル以上を調達したことになる。シリーズBでは、Baiduで以前M&A部門のトップを務めていたHesong Tangによって新たに設立された、北京に拠点を置くVCのXianghe Capitalがリードインベスターとなった。そのほかにも既存の投資家であるMindWorks VenturesやCrystal Streamに加え、新規にBlackhole Capitalが同ラウンドに参加していた。

Lalamoveにて国際部門担当マネージング・ディレクターを務めるBlake Larsonは、TechCrunchとのインタビューで同社は損益分岐点に到達する寸前だと話していた。

「特にオンデマンドサービス界隈では資金調達が難しい今、今回のラウンドによってLalamoveは間違いなくビジネスを成長させる上で有利なポジションに立つことができます。既に複数の都市では黒字化できているほか、キャッシュフローもポジティブなため、今年中には全社的に採算がとれるようになるでしょう」とLarsonは語る。

「現在資金は十分にあるため再度資金を調達する必要はありませんが、今後全く資金調達をしないというわけではありません。私たちは既にもうかるビジネスモデルを持っており、上場は可能性の問題ではなく、時間の問題です。ハッキリと言うことはできませんが、現在の財務状況を考えると、2年から2年半のうちに上場することができると考えています」と彼は付け加える。

上場先の市場など、IPOについてはこれ以上Larsonは明かさなかった。

Lalamoveは、Uberのようなオンデマンドの交通サービスからヒントを得た複数存在する物流会社のひとつだ。しかしUberと違い、彼らは単価が高く利用頻度も安定している法人ユーザーを主な顧客としている。一方Lalamoveのアプリは誰でも使うことができ、ユーザーは同社のバイクやバンを利用して、食品や雑貨、オフィス用品を中心にさまざまなモノの配送を依頼できる。

「物流市場の規模は大きく、中国の市場規模は1兆7000億に達するほか、東南アジアの一部の国ではGDPの最大27%を占めています。その上、この業界はモバイルインターネットの世界ではあまり注目されていません。私たちのユーザーは、それぞれの街でより早くてシンプルな配送手段を求めており、Lalamoveは何でも1時間以内に配送できるということを証明してきました」とLalamoveのファウンダー兼CEOのShing Chowは声明の中で述べている。

現状Lalamoveのビジネスの中心は中国にあるが、全ての地域を勘案するとプラットフォーム上には50万人のドライバーと500万人のユーザーが登録されており、これまでに1500万回もの配送を行ってきたと同社は話す。Uberも2年前に香港で似たようなビジネスを展開しようとしたが、昨年Uber Cargoはサービスを停止した。

Uberと同社の中国におけるライバルであり、Uberの中国事業を買収予定のDidi Chuxingが今後数年の間に上場するかについては、さまざまな憶測が飛び交っているが、専門家のほとんどは両社ともまだ事業を黒字化できていないと考えている。

しかし、資金調達の難しさからオンデマンド物流界に残る数少ないプレイヤーのひとつであるとLarsonが話すLalamoveは、今年中の黒字化を狙っている。その原動力はターゲットとしている顧客層と、価格よりもサービス品質を重視した同社の戦略だ。

「私たちのオペレーションは表層部では(Uberと)似通っているかもしれませんが、コンシューマー市場のスイッチング・コストはとても低い水準にあります。そのため顧客ロイヤルティを保つのが、エンタープライズ市場に比べ難しくなってしまいます。(Lavamoveのように)法人顧客が中心の場合、顧客は短期的な金銭的メリットがあっても、他社に乗り換える可能性が低いんです。これは法人顧客がプロモーションに疎いというわけではなく、彼らは価格だけでは動かないということです」とLarsonは説明する。

昨年LalamoveはLINEと契約を結び、同社のチャットアプリ上のオンデマンドサービスをサポートすることになった。なおこの契約は、まずLINEのメイン市場のひとつであるタイで締結された。LINEがタイで提供しているLINE MANは、4年早くサービスを開始していたRocket InternetのFoodPandaを既にデリバリーボリュームで上回っているとLarsonは話す。さらに彼によれば、Lalamoveは現在LINEと似たようなサービスを東南アジアで展開している企業との将来的なパートナーシップの可能性を模索している。

「次のパートナーはチャットアプリを運営する企業ではないかもしれませんが、ソーシャルコマースサービスのように、今後一緒に仕事ができる可能性のあるプラットフォームはまだまだ存在します。特にオペレーション面のリソースに欠ける規模の大きなプラットフォーム(をLalamoveはサポートすることができます)」と彼は話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

フリートマネジメントのAutomileが750万ドルを調達

Automile 502-14, Jens
 Nylander

フリートマネジメントのAutomileは現地時間23日、シリーズAで750万ドルを調達したと発表した。本調達ラウンドでリード投資家を務めたのはSaaStrで、その他にもSalesforce Ventures、Niklas Zennstrom、Dawn Capital、Point Nine Capitalなどが参加している。

Automileは車両のダッシュボードの中に取り付け可能な四角いデバイスを提供しており、ユーザーはそれを取り付けることで車両の走行距離やルートのトラッキングをすることが可能になる。このデバイス自体は無料で提供されるが、車両1台につき月額5.90ドルから19ドルのサービス利用料が発生する。

最上位のプランでは、走行距離のロギング、各種統計の表示、費用のマネジメントツール、リアルタイムのロケーション・トラッキング、事故が発生したことを知らせるアラート、リスク軽減ツール、メンテナンスが必要になる時期の予測機能などを利用できる。Automileはこれまでに6000社のユーザーを獲得しており、SamsungやNestléなども同社のサービスを利用している。しかし、主要顧客は配管工事、清掃、石油、農業、コンクリート工事の分野に属する企業だという。

「マーケットで動き回るものすべてが私たちの事業領域です」と話すのはAutomile CEOのJens Nylanderだ。

企業向け(特に修理業者、工事業者、農業分野向け)のロジスティクスビジネスは、テクノロジーがまだ浸透しきっていない分野である。Berg Insightの調べでは、米国にある商業車両のほとんど(約80%)には、まだフリートマネジメント・ツールが搭載されていない。

Nylanderによれば、Verizonが今年8月に買収したFleetmaticsなどを除き、企業向けのロジスティクス分野に注力するスタートアップは、ほとんどいないという(ディスクロージャー:VerizonはTechCrunchの親会社)。Nylanderによれば、AutomileとFleetmaticとの違いはデバイス取り付けの難易度だ。Fleetmaticが提供するデバイスの取り付けは専門のスタッフが行う必要がある一方で、Automileのデバイスはユーザー自身が簡単に取り付けることができる。

Automileが予想する今年度の収益は300万ドルで、これは昨年の80万ドルから上昇している。同社は今回調達した資金を利用してヨーロッパ地域へのさらなる拡大を目指すとともに、Palo Altoのエンジニアリングチームを強化していく予定だ。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

世界を養うテクノロジー

Close-Up Of Wheat Growing On Field

【編集部注】著者のJoseph Byrum氏はSyngenta社のライフサイエンス – グローバルプロダクト開発・イノベーション・デリバリー部門のシニアR&Dエグゼクティブである。

今から20年後、あなたのテーブルの上に食べ物を載せるための最も重要なツールは、収穫機でも、コンバインでも、そしてトラクターでもない。それはソフトウェアたちだ。

現在農業は、完全にハイテク企業へ移行する過程にある。これは何世紀にも渡ってものごとが行われてきた方法に対する、遅れてきた革命なのだ。事実を見つめるならば、もし私たちが昔ながらの方法で農業やり続けるならば、2050年までには更に20億人の人びとが飢えることになる。

世界の人口増加が、農業生産性の急激な向上を、差し迫って求めている。生産性に対する、地道な進歩を待っていては、もう単に間に合わない。2050年の課題は、前例のないものである — 今日生きている全ての人を養った上に、1920年に生きていた全員を加えた人口を養うことと等価なのだ。

簡単に言えば、20世紀を通して私たちを導いてきた技術は、21世紀においては私たちを遠くまで導くことができない。そしてこのジレンマを解決するための、どのようなソリューションを手に入れるにせよ、土地と水は乏しい資源であり続け、環境の持続可能性が最優先事項であることも考慮に入れる必要がある。

幸いなことに、ハイテクガジェットが全国の農場に広がりつつあり、作物の生産性を押し上げている。自動運転車が米国のハイウェイ上で受け入れられることに手間取っている一方で、自動運転コンバインやトラクターは、米国の小麦並びにトウモロコシ畑では徐々にありふれた景色になりつつある。

Teslaは昨年自動運転装置を装備したModel Sモデルを5万台販売したが、John Deere社は既に20万台の自動運転トラクターを農場に投入している

ドローンや人工衛星が、農家に対して作物の健康状態に関する、これまでにはなかったオーバービューを与えている一方で、グラウンドレベルのセンサアレイは、土壌と気候に関するリアルタイムのデータを提供している。これらのシステムは、有害な昆虫や作物の生育を脅かすかもしれない他の問題の存在に対して、早期に警告を与える。

農業用ドローンとPrecisionHawks社のDataMapperを利用して作成された土壌マップ

農業用ドローンとPrecisionHawks社のDataMapperを利用して作成された土壌マップ

十分な情報を得ている農家は、問題が深刻になる前に解決へ向けて迅速に行動することが可能になる。例えば、窒素センサが、フィールドの一部における窒素の過剰を報告することもあれば、他の一部では不足を報告するかもしれない。これによって農家は、栄養が多すぎず、少なすぎず、必要な量だけ正確に供給される先進的な施肥システムを制御することができる。高い精度は無駄を省き、お金を節約し、そして環境のために良いのだ。

成長する植物は窒素を渇望し吸収するが、最新設備のない農家はしばしば「念のために」作物が必要とするものよりも多くの施肥を行いがちである。残念なことに、植物によって吸収されなかった余剰窒素は、地下水に浸透する傾向があり、それが多ければ魚に有害なものとなる。

したがって、これらのハイテクガジェットから得られる、効率と環境への潜在的な利点は途方もないものとなるが、それらははるかに複雑なパズルの一片を表しているのだ。

ガジェットが行うのは、前例のないレベルのモニタリングとデータ収集能力の解放である。しかし、21世紀の農業の中心となるものは、これらのデータの処理である。明日の農業のキラーアプリは情報による収穫だ。

成長という話題になると、農家は沢山の疑問に直面する。どのような作物を、いつ、どこに植えるべきなのか?どのくらいの水が必要とされるのか?どのくらいの肥料が必要とされるのか?水や肥料の量は、畑ごとに異なり、個々の畑の中でも異なる。その量も日によって、あるいは時間によっても変化する。このプロセスには、相互に関連する何千もの複雑な変数が関わっている。

ISRAEL – OCTOBER 03: 点滴灌漑  (写真:James L. Stanfield/National Geographic/Getty Images)Netiv Ha Asara, Near Qiryat Gat, Israel. (Photo by James L. Stanfield/National Geographic/Getty Images)

ISRAEL – OCTOBER 03: 点滴灌漑  (写真:James L. Stanfield/National Geographic/Getty Images)

複雑な数学が計算尺と黒板を用いることでしか行えなかった遠い昔には、私たちは訓練された推測以上に、最善の道筋を決定するための、複雑で増大する質問に答える計算能力は持っていなかった。

しかし今や計算能力は安価であり、全ての可能な選択肢とその潜在的な結果をモデル化することが可能になった。例えば、Google Mapを搭載したスマートフォンは、現在の交通状況に基いてA地点からB地点までの全ての経路を、最短あるいは最速の観点から評価することができる。

シミュレーションとモデリングはまた、作物栽培を行う際に迷子になることを防ぐ。最も基本的なレベルとして、作物は成長の様々な段階に応じてレベルが変化する、太陽光、水、そして栄養分を必要としている。これは単純な話に聞こえるが、大規模に行われる世界では、各因子を最適化すれば巨大な見返りが得られるのだ。

米国は毎年5000万エーカーの農地全体から、23億ブッシェル(1ブッシェルは米国では約35.2リットル)の小麦を収穫する。もし生産性が1パーセント伸びれば、毎年67万800トンの小麦粉が追加されることになる。

そしてデータ分析の能力をフルに利用すれば、1%よりもはるかに多い増産を行うことができる。

例え農場の地面に最初の種が蒔かれる前であっても、全国のそして世界中の成長の様々な条件のための遺伝的潜在能力を最大化を狙って、植物品種の育種を最適化するために、データ分析を利用することができる。カリフォルニア州の農家が干ばつに強い種を必要とするかもしれない一方で、中西部の農家は特定の植物病害に対してより強い抵抗性を有する種を欲しいかもしれない。

Prosperaの作物のモニタリングシステムは、農家が収穫量を向上させるための手助けをするために、コンピュータビジョンと人工知能を利用している。

Prosperaの作物のモニタリングシステムは、農家が収穫量を向上させるための手助けをするために、コンピュータビジョンと人工知能を利用している。

データ分析はまた個別の農家側でも役に立つ。例えば特定の農家のニーズと、その農家の畑の(昨年ではなく)今年予想される収穫条件の下で、最高の収量を期待できる種をマッチングする。

そしてその種を植えるタイミングになったときには、データ分析は作物の成長や土の条件、天候、そしてその他のキイファクターに関する大量の履歴データを処理し、個別の作物の条件が最大収量に向かって最適化されるようにする。収穫後には、データ分析は、配送物流や作物の販売を支援する。

情報による収穫は、種子の品種の育種から店舗の棚への食品の配置至るプロセスの各ステップを最適化する、完全なシステムとして考えられなければならない。目指すのは農業における意思決定を改善することだ、農家やそのサプライヤーから、農業機器メーカーまで、そして最終的には消費者たちの意思決定を。

食品製造プロセスの各段階において可能な最善の選択を行うことで、生産性が最大化され、より少ないリソースでより多くの食品を得るというゴールへ近付くことができる。これが、2050年に世界を養うために必要な作物の成長を達成するために、必要とされる努力のレベルだ。

これは、いかなる会社もしくは個人よりも大きな仕事である。既存の農業コミュニティさえ超えている課題なのだ。食品セキュリティは全ての人に影響する、そしてその問題解決が要求するのは、農業が次のレベルの生産性に到達するために必要な革新的なシステムを構築できる、数学とソフトウェア工学の世界からの才能の注入である。

これらのことが意味するのは、明日の最も偉大なテクノロジーの機会は、シリコンバレーではなく、(穀倉地帯である)中西部で見出すことができるということだ。

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(翻訳:Sako)

Verizonが車両管理のFleetmaticsを24億ドルで買収

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Verizonは7月25日にYahooを48億ドルで買収した。続けざまに、米国時間8月1日にアイルランドのダブリンに拠点を置く車両管理のテレマティクス企業Fleetmatics24億ドルの現金払いで買収すると発表した。これによりVerizonは物流や社外で働く従業員を管理する分野の企業向け製品の拡充を狙う。

この買収でFleetmaticsを車両管理、モバイルワーク(社外で働く従業員)のためのソリューションやIoTを事業とするVerizon子会社Verizon Telematicsに吸収することとなる。Verizonは6月21日にTelogisの買収を発表しており(買収額は公開されていない)、今回の買収は事業拡大のために行っている一連の買収に続くものだ。

一般的な観点から見て、VerizonによるFleetmaticsの買収は既存の電話サービス事業の失速を相殺するため、新興分野への投資に資金を充てるようバランスシートの資産配分を調整していることを示す。市場がよりコモディティ化し、ユーザーの関心は従来の音声サービスから遠のき、デジタルなコミュニケーションの方に向いている。その中で、Verizonはマージンを保ち収益を伸ばすためにも、土管化(通信のインフラしか取り扱っていない状況)から抜け出すべく新興分野への投資に意欲を持っている。

AOLの買収(そして今回のYahooの買収)がVerizonのメディア、広告、コンテンツの運用事業の拡充を後押しするのに対し、Fleetmaticsの買収は企業向けサービス、とりわけエンタープライズ・モビリティー(社外で働く従業員を管理する)分野におけるVerizonの野望を示している。

このような市場を俯瞰して見えてくる背景は興味深いものだ。

trucks一方、Fleetmaticsのサービスの既存顧客は、企業の広範な業務の一環に車両を常時運転する従業員を雇用している企業だ(Fleetmaticsの既存顧客にはTime Warner Cable 、DirecTVがいる)。

スマートフォンサービス、エンタープライズ・モビリティーの流行によって、既存顧客は自分たちの仕事を改善する幅広いツールを手に入れることができた。顧客がそれらのツールを購入する際に頼りにできる企業になることをVerizonは目指している。

その一方で、新たな成長市場が存在する。Uberのような企業は単なる人々の交通手段におさまらない物流事業を構築するために多くの投資を行ってきた。多くのスタートアップ(そして、Amazonのような大きな企業も)がA地点からB地点に物を運ぶ既存のプロバイダーの変革を目指している。Verizonも同様に顧客企業からの収益を増加させる手段としてそれらのサービスに利用されているテクノロジーを買収している。単なる通信ネットワーク接続事業におさまらないように。

Fleetmaticsは移動する従業員を抱える企業、車両に対してGPSやサービスを提供するSaaS型の事業を展開するプロバイダーだ。3万7000社の顧客、73万7000台の登録車両、1200人の従業員を持つ。Fleetmaticsのサービスは位置特定サービス、ドライバー、車のセキュリティーサービス、燃料の計測、派遣、発注や請求管理も含む。

2012年より株式の公開をしており、株式は一株60ドルの現金に相当する。Fleetmaticsの株式が未公開だった時にIVPなどの出資者から9300万ドルを資金調達している。

VerizonTelematicsのCEOであるAndres Irlando氏は今回の買収は中小企業向けのテレマティクス事業を強化するためだと語った。

「Fleetmaticsは北米のマーケット首位の企業です。また、国際的にもシェアを伸ばしつつあります。中小企業向けに多くの魅力的なSaaS型の製品とソリューションを開発してきました」とAndres Irlando氏は声明で語った。今後も引き続き同様の買収の予定があるかAndres Irlando氏に対して聞いていく予定だ。

「SaaS型の車両管理のソリューション市場は巨大でグローバル、ソリューションはわずかだけ浸透しており、細分化しており統合されていない状況です。VerizonとFleetmaticsはその市場において業界最高の製品、最大の流通チャネルで一緒になって勝負していくビジョンを共有しています」とFleetmaticsの代表取締役会長兼CEOのJim Travers氏は声明で語った。

Verizon TelematicsはAOL(TechCrunchも所有)も所有しているVerizonの子会社だ。ソフトウェア、ハードウェアのソリューションを40カ国以上の市場で展開している。

買収は2016年の第4四半期に完了する予定だ。

原文

(翻訳:Shinya Morimoto)

地味すぎる100兆円スタートアップ

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船舶の積み荷目録からiPhone 3Gの存在が漏れた一件で、Steve Jobsは激怒した。フレート・フォワーディング(貨物の運送)業界でエキサイティングな出来事があったとすれば、この一件だけだ。世界経済の血流ともいえるこの業界は、100兆ドル規模のビジネスである。しかし、誰もそれを話題に取り上げることもなければ、この業界向けのテクノロジーを開発しようともしない。

Flexportのようなスタートアップにとって、この状況は彼らがディスラプション(創造的破壊)を成し遂げるための絶好のチャンスとなった。

透明性がデータを生み、データが効率性を生む。スマートな運輸が物理的世界を収縮し、インターネットがデジタル世界を収縮する。新しいビジネスが誕生する。高帯域幅のインターネットがNetflixの進路を舗装した。そして今、Flexportによって現実世界の商業がAmazonのような高速化を遂げる。

2690万ドルの資金調達によって、Flexportは今年の運輸実績を16倍に伸ばした。Y CombinatorのプレジデントであるPaul Grahamは、「Flexportは、世界を変える一握りのスタートアップの1つです」と語る。運輸業界が、その規模に見合った注目を浴びる時代がついに来るのかもしれない。

フレート・フォワーディングとは何か?

しばし説明にお付き合いを。150キロ以上の荷物を郵便システムを使って輸送することはできない。それは貨物運送に該当し、それを輸送するためには個別に所有された複数台の車両や船舶などを利用する必要がある。そうして、陸、海、空を通して工場などから小売店などの目的地まで運送されるのだ。

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画像上のドットは、現時点でFlexportによって輸送されている貨物を表す。 黄色は海運、 赤は空運(数が少ないのは到着までに時間がかからないから) 、そして白はトラックを意味する。

最も安価に運送し、面倒な税関手続きなどを避けるための手段として、組織的な運送業者であるフレート・フォワーディング企業のサービスが利用される。彼らはトラックや巨大な貨物船などのオーナーと直接的なコネクションを持つ。

しかし、すでに述べたように、この業界は地味なビジネスである。そのため、つい最近までのフレート・フォワーディングでは、エクセル、Eメール、ファックス、そして紙でできた積み荷目録が利用されていた。そのために、サプライチェーンにおけるムダや弊害を見つけ出すのがとても難しかったのだ。

だが、Flexportがすべての運送業者をインデックス化して検索可能なデータベースへと落とし込み、それを無料のソフトウェアとして提供し始めたことで状況は変わった。組織化され、追跡可能な輸送が可能になったのだ。

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これは突飛なアイデアというわけではない。現にFlexport自身、同ソフトウェアのダッシュボード上に整理されたデータを利用し、それによって最適化された独自のフレート・フォワーディング・サービスを提供している。同社のフルスタックなソフトウェアやサービスを通して運輸サービスが予約されると、そのルート、料金、スピード、税関のコンプライアンスなどのデータが蓄積される。そして、そのデータを利用することで、最も効率よく地点Aから地点B、C、X、Y、そして地点Zへと運輸する方法を割り出すことができるのだ。

時間が経つにつれ、Flexportによるルート決定機能はより自動化されたものになる。しかし、必要とあれば人の手を使ってシステムの隙間を補強する。近代化を拒む、中国のトラック輸送業界への対応などがその例だ。その一方、Flexportの競合企業たちは手探りで最良のルートを探し出すしかない。彼らは不完全なデータしか持たないからだ。

「ブラックボックスと化したこの業界に、透明性をもたらしたのです」とFlexportの創業者、CEOであるRyan Petersenは語る。「経済を支えているのは貨物を輸送する能力です」。

このビジネスを初めて1年間、その用語の意味を理解していませんでした。

— Ryan Petersen, Flexport CEO

Petersenは、貨物輸送事業を副業として始めた。当時10代だった彼とその兄弟は、中国で商品を仕入れ、それを米国でWeb上で販売するというビジネスを始めた。2005年に彼は中国に渡り、2年かけてサプライチェーンを構築した。

Petersenが積み荷目録という「手つかずの金鉱」を発見したのはその時だった。彼はImport Geniusという企業を立ち上げ、積み荷目録をインデックス化する事業を始めた。それからすぐ、Inport GeniusがSteve Jobsの激怒を買うことになる。Import Geniusは、当時まだ発表されていなかったiPhone 3Gが中国から輸送されていると予測し、それが報道機関に知れ渡ることになったのだ。

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左から、Flexport CTOのAmos EllistonとCEOで創業者のRyan Petersen

Import Geniusが安定化し始めた頃、Petersenはこのように話してくれた。「もっとも重大な問題は私の目の前にありました。グローバル貿易の分野には、それを管理するソフトウェア存在せず、管理がとても困難だったのです。私は、中小ビジネス向けのソフトウェアは存在しないと考えました。その後に明らかになったのは、そのようなソフトウェアは本当に皆無だったということでした」。

規制機関から認可が降りるのに2年を費やし、Y Combinatorの一員にもなった。そして、Flexportが誕生した。

2016年、同社はRingやLe Toteなど700以上のクライアントをもち、64ヵ国への運輸サービスを提供する。年間で輸送する貨物の価値は15億ドルにものぼる。現時点で、Flexportのプラットフォームで240万点のおもちゃと41万2000点のガラス製品が運搬されている。同社の出資者には、First Round, Founders Fund、Felicis、GV(Google Ventures)、Box Group、Bloomberg Beta、Ashton Kutcherなどが名を連ねる。

「このビジネスを始めてから1年経つまで、”フレート・フォワーダー”という用語の意味が分かりませんでした」というPetersenの発言を踏まえれば、この成功は驚くべきものだ。

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FedExやDHLといった巨大な物流サービス企業が居眠り運転をしていたわけではない。単に、彼らには素早い方向転換が不可能だったのだ。Petersenは、「(DHLは)150億ドルを費やして3社の巨大なフレート・フォワーダーを買収し、IT化を推進するためにIBMと9億6000万ドルの契約をしましたが、彼らは失敗しました。彼らは完全に諦めたのです」と話す。

Flexportにとって、最大の競合企業はExpeditorsだ。彼らは10億ドルの現金資産を持つが、テクノロジーを生み出すのに必要なスタートアップのDNAを持ち合わせていない。「ExpeditorsはGUIが誕生する以前のコンピューターです。DOSのようなもなのです。キーボードのショートカットしかありません」とPetersenは笑う。「ソフトウェアこそが企業を差別化させる存在なのです」。

Flexportとは別の部分にフォーカスしたり、異なるビジネスモデルを持つスタートアップも運輸ビジネスに参入しようとしている。Havenは運輸業者と輸出入業者を結びつけるマーケットプレイスを提供している。Disrupt SF 2014ではShipstrとしてローンチされ、その後に社名を変更したFleetは、ブローカーのためのマーケットプレイスを提供している。TruckerPathとOverhaulは大陸間のトラック輸送を統合するサービスを展開している。

これらの企業でも、Flexportが物流データと実際の運輸サービスを組み合わせることによって実現した「神の全知」を提供してはいない。

しかしながら、Flexportのソフトウェアが提供しているのはフレート・フォワーディングの予約サービスのみだ。そのため、このソフトウェアを通して他企業のサービスを利用することはできない。Flexportを利用する企業は、同ソフトウェアが割の良い料金設定を提供してくれることを祈るしかない。Flexportでは、料金設定の背景が見えにくい代わりに、複数のキャリア間の透明性を確保し、貨物の動きをコントロールすることができる。一方、Havenではカスタマイズ可能な運輸オプションが提供されている。

Flexportにとって、最大のリスクは規制の変化だろう。同社は世界中の規制に対応しなければならないからだ。それに加えてPetersenは、トランプ氏が大統領に就任することによって、中国からの輸入品に高い関税がかけられることが懸念材料だと述べる。

Flexportは、現在でも貨物輸送エコシステムの一部を支配できる可能性をもつが、当面は同社がもつユニークな強みにフォーカスすることに専念する。Petersenは「エンタープライズにAmazonのOne-Clickを」というアイデアの実現に血眼になっている。Flexportは、AIを活用して追加発注サイクルをモニタリングしたり、将来の注文を予測しており、それによってFlexportの顧客企業は少なくなった在庫を素早く補充することができる。shipments

Petersenはこれを「グローバル貿易におけるOS」と呼んでいる。

「彼らは運輸の自動化に挑戦している」とPaul Grahamは賞賛する。「そこから生まれるエネルギーのポテンシャルを想像してみてください。世界経済の15%です。そして残りの85%の足かせとなっているのが、この部分なのです。この分野における進歩はとても遅いために、運輸の自動化によって生まれるエネルギーはいっそう大きくなります。そして、Flexportはみずからの望みをすべて叶えている。なぜなら、schlep blindness(面倒な仕事の無視)によって皆がこの事実から目を背けていたからです」。

ある業界に内在する面倒な問題を避けるあまりに、イノベーターが大きなチャンスを見逃してしまうことを表す「Schelp Blindness」という言葉は、Graham自身がつくりあげた造語だ。Schelpはイディッシュ語で「退屈な旅」を意味する。

Flexportは、起業家が退屈に見えるビジネスに切り込むことで実現した成功の見本となる例だ。Petersenは文字通りに、また比喩的にも「退屈な旅」を好機と捉え、フレート・フォワーディングの世界に新しい風を吹き込んだ。どんなに退屈に見えたとしても、カエルとキスをすることで、カエルが王子に変わることもあるのだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook