フォードが新型コロナ症状のある労働者に対してPCR検査を実施、工場再開計画の一環として

フォードは米国時間5月16日、主要事業を展開する4つの都市圏での今月の工場再開に向けて準備を進める中で、新型コロナウイルス(COVID-19)の疑いのある症状を持つ、時間給、月給従業員に対して検査を行うと発表した。

5月18日以降北米の工場で、生産と操業の一部を再開する予定だ。工場労働者のほかにも、車両のテストや設計など、リモートで行うことができない仕事を行う約1万2000人の従業員も呼び戻す。なお、同社の北米部品流通センターは、5月11日に再開済みだ。

まず、ウイルス感染を識別するためにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を行うと発表している。PCR検査はウイルスRNAの存在を検知するためのものであり、身体の免疫応答である抗体の存在を調べるためのものではない。

同社は、テストを実施するために各地の保健機関と契約した。フォードの検査に協力するのは、ミシガン州南東部にあるBeaumont Health(バーモントヘルス)病院、ケンタッキー州西部ルイビルにあるルイビル大学保健機関、ミズーリ州西部カンザスシティ地域のLiberty(リバティ)病院、イリノイ州シカゴ地域のシカゴ大学医療センターならびにシカゴ大学Medicine-Ingalls(メディシン=インガルス)記念病院。同社は、ミシガン南東部、ルイビル、カンザスシティー、そしてシカゴに、合わせて7万2000人を超える従業員を雇用している。

フォードのメディカルディレクターを務めるWalter Talamonti(ウォルター・タラモンティ)博士によると、この契約によって、フォードは症状が疑われる従業員を検査し、24時間以内に結果を出すことを目指せるようになる。検査結果は同時にフォードの医師と共有され、感染した労働者と密接に接触した可能性のある他の従業員を特定するのに役立てられる。それらの従業員は、14日間の自己隔離を求められる。

フォードCTOのKen Washington (ケン・ワシントン)氏は声明で、同社は検査の拡大に取り組んでいると語った。同氏はまた、フォードは従業員のために将来的には自主的な抗体検査も検討していると付け加えた。

同社は、工場での生産が再開された際に進めるべき手順について説明した業務再開手順書を5月1日にリリースした。従業員は毎日自己診断による健康診断を行い、フォードの作業場に到着したら体温を測定する必要がある。フェイスマスクの着用も義務付けられる。仕事上対人距離が十分とれない場合には、サイドシールドまたはフェイスシールド付きの保護メガネの装着が必要とされる。

画像クレジット: Ford

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(翻訳:sako)

フォードはRivianとの協業によるリンカーンの電動車開発をキャンセル

Ford(フォード)の高級ブランドであるLincoln(リンカーン)は、Rivianのスケートボード型プラットフォームをベースにしたまったく新しい電気自動車の開発計画をキャンセルした。

画像クレジット:Lincoln

Crain’s Detroit Businessによると、米国時間4月28日に各ディーラーに通知されたという。

Rivianとフォードは、TechCrunchに宛てた声明で、これは現在の状況を鑑みた両社合意による決定であると述べている。つまり、新型コロナウイルスのパンデミックが主な原因であることを暗に示している。また両社は将来、共同で車を開発する計画だとしている。

「現在の状況を考慮し、リンカーンとRivianは、Rivianのスケートボード型プラットフォームをベースにした全電動車の開発にこれ以上踏み込まないことを決定しました」と、リンカーンの広報担当者はその声明で述べている。「リンカーンとRivian両社の電動化に関する戦略的なコミットメントは変更されていません。リンカーンの今後の計画には、Quiet FlightのDNAを受け継いだ全電動車も含まれることになるでしょう」。

この決定は、フォードがRivianに5億ドル(約532億8000万円)を出資した1年後になされたもの。Rivianはミシガン州を拠点とするEVのスタートアップで、全電動ピックアップトラックとSUVを開発している。当時フォードは、Rivianと共同で電気自動車を共同開発する計画も発表していた。

2020年の初めまでは車がどのようなものになるのか、またどのブランドのものになるのか、といったことも明らかにされていなかった。フォードは1月に、リンカーンとRivianが共同開発している全電動車が、SUVになるであろうことを発表した。このバッテリーで動作するリンカーンの電気自動車は、Rivianのフレキシブルなスケートボード型プラットフォームをベースに開発されることになると、その際に同社は明らかにした。

フォードはTechCrunchに「開発サイクルを進めていく中で、現在の状況を考えると、リンカーン独自の完全な電気自動車を開発する取り組みに集中するほうがよいと判断するに至りました」と語った。

フォードは、Rivianとは依然として強固なパートナーシップを保っていると付け加えた。

「当社の戦略的コミットメントは変更されておらず、Rivianのスケートボード型プラットフォームを利用した別の車の開発に、引き続きRivianと協力しながら取り組んでいます」と、フォードは述べたが、その車がどのようなものになるかについては言及していない。

リンカーンは、これまでに2車種のプラグインハイブリッド車を生産している。2019年11月のロサンゼルスモーターショーで発表したAviatorとCorsair Grand Touringだ。同社はまだ全電動車を製造したことはない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

米三大自動車メーカーが新型コロナウィルスの脅威で北米の全工場を閉鎖へ

米国イリノイ州デトロイトの三大自動車メーカーが新型コロナウィルスの脅威を受けて全工場を閉鎖する。詳細はまだ検討中で近く発表される予定だ。

過去数日間、米自動車労働組合(UAW)は、労働者の安全を考慮して工場を閉鎖するようメーカーに求めてきた。UAWのRory Gamble委員長はメーカーに書状を送り、2週間の閉鎖を要請した。この圧力がメーカーの思考プロセスに影響を与えたのかどうかは定かではない。

Ford(フォード)とFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)は、ミシガン地域の一部の工場でのみ、操業を停止する意向だと発言していた。米国時間3月18日、ホンダは北米の12工場の全操業を停止すると発表した。その中にはオハイオ州、インディアナ州、アラバマ州、カナダ、およびメキシコのトランスミッションおよびエンジン工場が含まれる。フォードとGM(ゼネラル・モーターズ)も数時間後に歩調を合わせた。そして午後にはFCAも全面閉鎖を決定した。

この時期になって自動車メーカーは製造、組立て工場に注目し始めたようだ。ほとんどの自動車メーカーが、オフィスワーカーについてはすでに在宅勤務を実施している。

主要自動車メーカーの各工場に加え、第三者の部品提供会社も影響を受ける。提供していた部品が不要になるからだ。この閉鎖によって最終的に何人の労働者が影響を受けるのかまだわかっていない。

Teslaは在宅勤務指令の元で作業していると報道されている。3月18日にTechCrunchは、Tesla(テスラ)のカリフォルニア州フリーモント工場の従業員向けに詳細な指示が書かれた社内メモを入手した。

一部を抜粋する。「通常の業務に変わりはなく、製造、サービス、配送、試験、サポートなどの重要任務についてる人たちは、上司と相談の上これまで通り出社して仕事をすること」。Teslaの製造労働者は、デトロイトの三大自動車メーカーと異なり、自動車労働組合に属していない。

画像クレジット:Veanne Cao

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

フォードが完全電動のトランジット貨物バンを米国市場向けに開発中

Ford(フォード)は、人気の高いFord Transit(フォード・トランジット)貨物バンの全電動バージョンを開発し、2022年度から北米市場向けに販売すると発表した。同社の電動化に対する決意を示す動きの1つと考えられる。

画像クレジット:Ford

この全電動トランジットは米国内で製造される。フォードは、2022年までに電動化に対して115億ドル(約1兆1800億円)以上を投資することにしている。同社のEV計画には、他にも2019年4月に発表した欧州市場向けの全電動トランジットであるMustang Mach-E SUV(マスタング・マッハ-E SUV)、さらには電動のF-150トラックが含まれる。

商用バンをEV戦略の中に含めるというフォードの決定は、米国内での販売状況と将来の成長に関する見通しとリンクしたもの。2015年以降、同社の米国内のトラックおよびバンのフリート販売は、33%増加している。フォードは、eコマースと「最後の1マイル」の配送の増加によって、米国でのバン販売は継続的に成長するものと予想している。

またフォードは、電気自動車は、2025年の米市場で、この分野の8%を占めるまでに成長すると予測している。「商用車は、私たちの電動化に対する大きな賭けの、重要な要素です」とフォードの最高執行責任者であるJim Farley(ジム・ファーリー)氏は声明で述べている。「この分野のリーダーとして、私たちは企業の業績向上につながるソリューションを構築する計画を加速しています。まずは全電動のトランジットとF-150から始めます。このフォード・トランジットについては、単に電動の駆動系を製作するだけでなく、フリート全体を推進するデジタル製品の設計、開発することも目的としています」と続ける。

フォードは、車内インターネット接続やドライバーアシスタンスなど、IT機能にも焦点を当てるつもりだ。「世界は電動化された製品に向かっており、フリートの顧客も、まさにそれを求めています」と、ファーリー氏は言う。「フリートの車両は、コネクテッドモバイルビジネスとして運営されています。したがって、テクノロジーに対するニーズも、一般の顧客向けのものとは異なることを、私たちも理解しています。そこでフォードは、コネクティビティの関連性について深く考慮しています。私たちの車内高速電子アーキテクチャをクラウドベースのデータサービスと結び付けることで、単に電動の駆動系を備えた車ではなく、スマートビークルと呼べるものを、そうしたビジネスに供給するのです」と語る。

フォードによると、そうした「スマート」機能を組み込むことで、顧客はフリートの効率を最適化し、無駄を削減し、ドライバーの行動を改善することができるという。フリートは、内蔵のFordPass Connectモデムを利用して、4G、LTE、Wi-Fiに対応したホットスポットに接続し、フォードのテレマティクスシステムによって収集されたデータにアクセスできるようになる。このホットスポットは、最大10台のデバイスに接続できるという。フリートのマネージャーは、フォードのデータツールによって、ライブマップ上でのGPSによる追跡、ジオフェンシング、車両診断など、車両とドライバーの状態をひと目で確認可能なパフォーマンスインジケーターを利用できるようになると、フォードは説明している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Rivianが作るリンカーンの電気自動車

リンカーン・モーター(Lincoln Motor)初となる全電動車は、Rivian(リビアン)製となりそうだ。

画像クレジット:Lincoln

フォード(Ford)傘下の高級ブランドであるリンカーン(Lincoln)は米国時間1月29日に、両社は「まったく新しい」電気自動車の開発に協力して取り組むと述べた。この電気自動車、というよりもそれを開発するという意図は、昨年4月のフォードによるRivianへの5億ドル(約54億4700万円)の出資とともに発表された。しかしこれまでは、その車がどのようなもので、どのブランドになるのかは明らかにされていなかった。

Rivianは、今回の発表を確認したが、それ以上の詳細は明かさなかった。

リンカーンは、すでに2種類のプラグインハイブリッド車を生産している。昨年11月にLA Auto Showで発表したAviator(アビエイター)とCorsair Grand Touring(コルセア・グランドツーリング)だ。しかしこれまでは、完全な電気自動車を生産したことはなかった。

リンカーンのバッテリー駆動の電気自動車は、Rivianのフレキシブルなスケートボードのプラットフォームを利用して開発される。

「Rivianとの協力して仕事を進めることは、リンカーンが完全な電気自動車という未来に向けて前進するための重要なポイントです」と、リンカーン・モーターカンパニーの社長であるJoy Falotico(ジョイ・ファロティコ)氏は声明で述べている。「この車両は、Quiet Flightに新たな境地を開くものです。排出ゼロ、さりげない高性能、コネクテッドで直感的なテクノロジーです。驚くようなものになるはずです」。

リンカーンは、この3年間、消費者のSUVに対する欲求を刺激することに注力してきた。同社によれば、それによってグローバルなSUVの売り上げが、毎年7%ずつ成長してきたという。

リンカーンは、Rivianがどのような車を製造するかについては述べなかったが、ここ数年の傾向を見れば、SUVである可能性が高い。

高級なEVの追加は、MKZセダンの終焉を意味することになる。メキシコのエルモシオ生産工場が、新しいフォード車の生産準備に入るため、MKZセダンの生産は今年中に終了すると同社は明らかにした。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Agilityが業務用二足歩行ロボットDigitを市場投入、最初の顧客はフォード

Agility Robotics(アジリティー・ロボティクス)は、40ポンド(約18kg)の荷物を持ち運べる二足歩行ロボットDigit(ディジット)を市場に投入した。最初の顧客はフォード・モーターだ。

生産ラインで製造された最初の2台を手に入れることになっているフォードがCES 2020に先立って1月5日の日曜夜にラスベガスでの語った内容によれば、同社は2019年からこのロボティクスのスタートアップとの共同研究開発に参加していたとのこと。フォードは、Digitと自動運転車をどのように使えば、同社CTOのKen Washington(ケン・ワシントン)氏がいう「ラスト50フィート問題」、つまり縁石から玄関までの運搬に対処できるかを研究してきた。

Digitの販売価格は、まだどちらの企業も決めていない。

フォードはスタートアップ、Agility Roboticsと提携して二足歩行ロボットDigitの研究とテストを行っている。

Digitの販売開始は、Agilityにとってひとつの節目となる。2015年末にオレゴン州立大学ダイナミック・ロボティクス研究所からスピンアウトして設立された同社は、二足歩行ロボットの商品化を目指してきた。Agilityは、2017年、ダチョウからヒントを得た二足歩行研究プラットフォームCassie(キャシー)を発表した。DigitはCassyに上半身と腕、センサーを取り付け、コンピューター能力を強化したモデルとして2019年の春に発表された。そこからAgilityは、片足でもバランスを取ることが可能になり、障害物を安全に回避できるように改良を加え、ナビゲーションのために周囲を知覚しマッピングを行う新しいセンサーも追加した。

「インターネットでの小売り業が成長を続ける中、ロボットが、あらゆる人のための配達の効率化と低コスト化を実現し、私たちの法人顧客のビジネスを強化するものと信じています」とワシントン氏は声明の中で述べている。「私たちはこの1年、Agilityと多くのことを学びました。これで私たちは、商用Digitロボットとともに探索的研究をさらに加速させることができます」

フォードは、Digitが自動運転車をサポートして商品を人々に配達する方法を模索しているが、このロボットには、倉庫や会社内での用途もあると、同社は話している。

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(翻訳:金井哲夫)

Tesla Cybertruckとフォード F-150の綱引きバトルの再戦はあるのか?

電気自動車の世界で語られている闘いがあった。しかし誰もが待ち望んでいるFord F-150とTesla Cybertruckの綱引きバトルは、おそらく実現しそうにない。簡単にまとめると、TeslaのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、Cybertruckお披露目イベントで綱引き対決と称するビデオを流し、同社の未来的電動トラックがF-150を引っ張る場面を見せた。

多くの人々がこれは公平な闘いだったのか疑問を呈し、宇宙物理学者で作家のニール・ドグラース・タイソン氏もその一人だった。しかし、何よりもマスク氏の注意を引いたのは、フォードのベンチャー・インキュベーターであるFord XのSundeep Madra(サンディープ・マドラ)副社長のツイートだった。

たちの悪い@Teslaがたちの悪いことをしている。@Ford F-150は後輪駆動なので「荷物がない」状態だと後車軸にかかる荷重は著しく小さくなり、牽引力は低くTeslaは容易に打ち勝つことができる。このコンテストはエンジンパワーよりも摩擦の物理学の問題だ

マドラ氏はマスク氏宛のツイートで、「公平な」テストを行うために

しかしフォードによると、マドラ氏のツイートは本気で戦うという意味ではなく冗談半分の煽りだったらしい。

「マドラのツイートは、テスラのビデオのばかばかしさを指摘するための冗談にすぎない」とフォード広報がTechCrunchにメールで伝えた。「42年続く米国のベストセラートラックを提供する当社は、他者が何を言おうとも、お客様を満足させることに尽くすだけです。来年の新しいF-150ハイブリッドと数年後の全電動F-150を発売することを楽しみにしています」。

フォードは考えを変えるのではないかと思う。しかし今のところ、綱引きバトルのリマッチの有無はテスラ側にかかっている。

よし、来週やろうじゃないか

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

自律運転車の寿命はわずか4年というフォードの目算の真実

自動車業界は、交通渋滞、安全、生産性(乗車中に仕事ができる)など、今まさに現代社会が格闘している数々の問題を一気に解決してくれる万能薬であるかのように、自律運転車を宣伝している。

しかし残念なことに、あるひとつの非常に大きな疑問が置き去りにされている。自律運転車は、どのくらい持つのだろうか?

その答えには誰もが驚くだろう。ロンドンのザ・テレグラフのインタビューで、フォード・オートノマス・ビークルズ(Ford Autonomous Vehicles)執行責任者ジョン・リッチ(John Rich)氏は、「世界の自動車の需要が減少するとは、まったく思っていません」と話した。なぜなら「この業界では4年ごとに車を使い切って潰しているから」だという。

4年とは! ボロボロになってもまだ走り続けているニューヨークのタクシーの寿命が、2017年の平均で3.8年とのことだが、それと比較しても決して長持ちとは言えない。ニューヨークのタクシーの中には新車もあるが、7年以上も奉公している車もある。

アメリカの自動車オーナーが1台の車に乗り続ける平均の年数は12年近いという。それと比べると驚きが増す。実際、自動車の製造や維持管理の技術が飛躍的に進歩していることもあり、アメリカ人は以前よりも車を長く使うようになった。ロンドンの調査会社IHSマークイットの2002年の調査では、1台の車の寿命は平均9.6年だった。

それでは、何十億ドルもの投資がつぎ込まれている自律運転車の場合はどうだろう。ペンシルベニア州ピッツバーグのスタートアップ、アルゴAI(Argo AI)は、3年前にフォードから10億ドル(約1060億円)の投資を受け、この夏には、フォルクスワーゲンとフォードの包括的な業務提携の一環としてフォルクスワーゲンから26億ドル(約2750億円)の資本投資を受けている。アルゴはフォードの車両に搭載する自律運転技術の開発を委託され、現在、5つの都市で技術実験を行っている。

私たちは、フォードがいかにして4年という寿命を導き出したのか、寿命を延ばすことはできないかなど、4年間という数字の本当の意味をアルゴが解き明かしてくれるものと期待した。しかし、実際に車を扱うのはフォードであり、アルゴは車の製造、整備、運用といったビジネスには関わらないため、彼らはフォードのリッチ氏を紹介してくれた。リッチ氏は、忙しい中、私たちの質問に電子メールで答えてくれた。

まずは、こんな質問をしてみた。フォードは自動車の1年間の走行距離をどの程度に想定しているのか。それがタクシーやフルタイムのウーバーのドライバーの距離より長いか短いかを知りたかったのだが、彼は答えず、代わりに、フォードは目標とする走行距離は公表しないが「車両は最大限に利用されるようデザインしている」と話してくれた。

リッチ氏はこう説明する。「今日の自動車は、1日のうちほとんどが駐車場にいます。利益を生む現実的な(自律運転車のための)ビジネスモデルを構築するには、ほぼ1日中走り回っている必要があります」。

実際、とくにフォードは、今すぐにでも自律運転車を個人向けに発売することはないだろう。むしろ、配達業などのサービスに、または他の業者による自律的な貨物輸送に車両を使うことを計画している。フォードは「自律運転車の最初の商用利用は輸送業中心になる」と見ているとリッチ氏は言う。

また私たちは、完全な自律運転車の寿命に関するリッチ氏の予測は、フォードの自律運転車は内燃機関で走るという彼の期待と関連しているのか否かも疑問に思った。ほとんどの自動車メーカーは、低燃費、低排出ガスを約束する新しい構造の内燃機関に投資をしている。しかし、内燃機関は電気自動車に比べると部品点数が多い。より多くの部品がストレスを受けると、それだけ故障要因も増える。

いずれは電池式の電気自動車(BEV)へ移行することを考えているフォードだが、「利益を生む現実的なビジネスモデルを構築するための最適なバランスを探す必要がある。つまり、まずはハイブリッド」から立ち上げるとリッチ氏は話していた。

彼によれば、自律運転車としてのBEVの課題には、今のところ「自律運転トラックの運用に必要な充電インフラの不足があり、充電スタンドと充電インフラの建設と運用も、すでに資本集約的な性質を帯びた自律運転車技術の開発に組み込まれなければならない」とのことだ。

もうひとつ課題がある。「車載技術が原因の航続距離の減少です。BEVの走行距離の最大50%分の電力が自律運転システムの演算、エアコン、そして送迎サービスで、また乗客を楽しませるために必要な娯楽に消費されます」という。

フォードはまた、稼働率を気にしているとリッチ氏は言う。「利益を生む自律運転車ビジネスの鍵は稼働率です。充電器の前でずっと停まっていては、お金になりません」。

バッテリーの劣化も懸念材料だ。「自律運転トラックは毎日急速充電をする必要がありますが、バッテリーの酷使は劣化につながります」と彼は言う。

内燃機関の排気ガスがなくなれば、世界はずっと良くなるのは当然だ。明るい側面としては、フォードの自動車の寿命が短かったとしても、素材の80〜86%はリサイクルして再利用される。業界団体インスティテュート・オブ・スクラップ・リサイクリング・インダストリーズ(ISRI)によれば、アメリカでは、毎年、合計で1億5000万トンのスクラップ素材がリサイクルされている。

そのうち8500万トンが鉄と鋼だ。ISRIによると、アメリカではその他に550万トンのアルミもリサイクルされている。軽量だが鋼よりも高価な自動車材料だ。

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(翻訳:金井哲夫)

自動運転車と2足歩行ロボがタッグを組んで配達するフォードの近未来構想

自動運転車は、混み合った街の通りを走り抜け、食料品、ピザ、その他の荷物を、やがて人間が運転しなくても配達できるようになるかもしれない。しかし、それだけでは、フォード自動車のCTO、Ken Washington氏が言う「最後の50フィート(約15m)の問題」を解決できない。

フォードと、スタートアップのAgility Roboticsが共同で取り組む研究プロジェクトでは、2足歩行ロボットと自動運転車を連携させて、道路からドアまでの問題に対処する方法を検討する。このプロジェクに採用されたのは、頭の部分にライダー(Lidar)を取り付けた2足歩行ロボットであるAgilityのDigitだ。このロボットは、40ポンド(約18kg)までの荷物を持ち上げることができる。荷物と一緒に自動運転車に乗って移動し、配達先で車を降りて荷物を運ぶ。

「私たちは、利用する人の視点で自動運転車の可能性を検討しています。初期の実験で、最後の50フィートに課題があることはわかっていました」と、Washington氏はTechCrunchの最近のインタビューで語った。その解決策を見つけることは、2021年からの運用を計画しているフォードの商用ロボタクシーを差別化するための重要な要素となる。

Digitと、フォードの自動運転車の間のコミュニケーションが、おそらくこの研究プロジェクトの中でも最も感動的な部分だろう。下に示したGIFのように、車が目的地に到着すると、フォードのワゴン車、Transitのハッチが開く。Digitは手足を伸ばしてそこから降り、荷物を持ち上げてドアまで歩くのだ。

Digitはライダーとステレオカメラを装備している。基本的な動作には、それで十分だろう。

興味深い話はまだ続く。自動運転車も、各種の強力なセンサー類と複雑な意思決定能力を持ったコンピュータを備えている。そして、Digitが歩き出す前からデータの共有を始める。それによってDigitは、「目覚め」た時点ですでに今どこにいるのかを理解できている。そして、万一Digitが問題に遭遇したら待機中の自動運転車と通信して、より優れた知見に基付いた判断を仰ぐのだ。

これによって、AgilityのCEOであるDamion Shelton氏が「ロボットの古典的な弱点」としている問題を解決できる。つまり、スリープ状態から目覚めたときに、自分が今どこにいるのかわからないということがないようにする。

「もし、周囲を完全に見渡せるような状態で、走り回っている車に乗っていれば、起き上がって歩き始めるのもずっと簡単です」と、Shelton氏は説明する。「しかしそうはできないので、このデータ通信によってロボットが周囲を認識できるようにするのです。ロボットが目覚めて車から降りてから、最初の30秒間は混乱している、というようなことが起こることはありません」。

Washington氏によれば、車からドアまでの問題を解決するためにフォードが実験している手段は、AgilityのDigitだけではないという。しかし、2本足のロボットには、それなりのメリットがあることは、Washington氏も認めている。たとえば歩道の溝をまたいだり、階段を歩いて登る能力を持っていることだ。そのあたりは車輪式ロボットの弱点となりうる。

フォードとAgilityの合意は、今のところ研究プロジェクトに分類されるもの。フォードは、まだAgilityに株式出資をしていない。しかしWashington氏は、「しかるべき時に、そのような選択をしないというわけではない」と付け加えた。

Agilityにとって、このプロジェクトは新しいビジネスの転換点、というよりもむしろ、それを加速させるものだ。このロボット工学のスタートアップは、2015年後半にオレゴン州立大学からスピンアウトしてできた会社。同大学のDynamic Robotics Laboratoryによる2足歩行の研究成果を商業化することを目的としている。2017年には、ダチョウを模して設計されたCassieロボットを、2足歩行の研究プラットフォームとして発表した。Digitは、Cassieに上半身、腕、センサー類、そしてより強力なコンピュータを付加したもので2019年2月に発表した。

Agilityには20人の従業員がいて、そのうち約半数がロボットの製作に携わっている。同社は、シードラウンドとシリーズAラウンドによって、880万ドル(約9億7000万円)近くの資金を調達した。さらに今、この新たなパートナーシップを念頭に業務を拡張するため、新たなラウンドによる資金調達をもくろんでいる。

Agilityのオフィスは、米オレゴン州アルバニーとピッツバーグにある。同社は、これまでに第1世代のDigitロボットを2体作っている。夏までには第2世代のDigitを発表することを計画している。Shelton氏によれば、この2足歩行ロボットの最終型となる3世代目のDigitも、夏から秋にかけて登場する可能性があるという。

Agilityは、このDigitの最終バージョンを6体製作するつもりだ。そこからは、月に2体という安定したペースでDigitsを製造できるとShelton氏は見積もっている。最終的にAgilityは、2021年までに50体から100体を製造できるペースをつかむことになる。

これらの研究と実験は、すべて商用のロボタクシーサービスを立ち上げるというフォードの最終的な目標の一部だ。そして、例の最後の50フィートは、自動運転車を利益の生み出せる事業に育てるためにには、どうしても避けて通ることのできない課題なのだ。その目標を実現するための準備として、フォードでは2つの仕事を並行して走らせている。1つは、自動運転車の事業を運営する手法について、テストしながら磨きをかけること。もう1つは、それとは独立に、子会社のArgo AIを使って自動運転車の技術を開発することだ。

Argo AIは、ピッツバーグを拠点とする会社で、フォードは2017年に10億ドル(約1100億円)を投資した。フォードの自動運転車用に設計された仮想運転者システムと、高精度のマップを開発している。その一方で、フォードは地元の企業だけでなく、ウォルマートドミノ・ピザ、Postmatesといった大企業のパートナーを手を組んだパイロットプログラムによって、市場進出戦略を試行している。

フォードは、自動運転車のビジネスを構築することに専念したLLCに対して、2023年までに40億ドル(約4400億円)をつぎ込む覚悟だ。その40億ドルのうちの10億ドル(約1100億円)が、スタートアップArgo AIへの出資として計上されている。

フォードは、現在デトロイト、マイアミ、ピッツバーグ、およびワシントンDCでテストしていて、オースティンにも拡大する準備ができている。

画像クレジット:フォード提供/写真=Tim LaBarge 2019

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

フォードがライド・シェア・スタートアップのChariotを買収

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Ford Smart Mobilityは自動車会社のフォードが設立した会社で、既存の交通システムに対する代替的な交通手段を提供する会社である。この会社が初めての企業買収を行ったが、その会社とは、サンフランシスコを拠点とする通勤者用ライド・シェアのスタートアップであるChariot社だ。

フォードにとっては、この買収により同社が街で展開するシャトル・モビリティ・プログラムの礎にChariotを据えることとなる。フォードとしては、このスタートアップの買収は設立間もないFord Smart Mobility社にとってさらなる前進である。同社は今年3月に正式に設立されたが、その事業はこれまでのところ限られた領域での試験に留まっており、ほとんどは主に学術機関との提携によるものだ。

Chariotは2014年に設立され、それ以来ずっとフォード車のみを使い続けている。これは単なる偶然の一致ということのようだが、実際のところ同社は現在も15人乗りのFord Transitヴァンのみを使用しており、その車体にはChariotの文字がしっかりとペイントされている。Chariotにとってみれば、Ford Smart Mobilityの一部になることで素早い成長と迅速な事業拡大が可能となる。

「我々は極めて積極的にビジネスを拡大して次の1年で複数のマーケットに展開する予定です」と、ChariotのCEOで共同設立者のAli VahabzadehはTechCrunchとのインタビューで述べた。「極めて初期の段階から明白だったのは、Chariotはフォードの物流、自動車および営業の専門知識を梃子に、単なるベイエリア内のサービスに留まらず、そのサービスを世界規模にまで広げていくことが可能だということです」

同社によると、既存のChariotのサービスは現状を維持し、ヴァンの見かけも変わらない予定だ。また、フォードとChariotの発表では、同社は次の18ヶ月で少なくとも5つのマーケットに進出する予定で、数週間中に次のマーケットが明らかにされる予定だ。Vahabzadehが語ったところでは、フォードは資金や物流面だけでなく世界中の国や都市の行政との関係においてもその専門性を大いに発揮してビジネスの拡大を支援してくれるということだ。

Chariotの目標は、価格面で公共の交通機関とそれほど乖離せず、それでいてより早く、より便利なルートでサービスを提供することだ。現在のプラットフォームではルートの設定はクラウドソーシングにより決定されている。つまり、ユーザーがアプリで指定するピックアップ地点と目的地を集計し、特定の地点に対する要望が一定数を超えるとルートが確定する。現在ベイエリアでは28のルートで100台のヴァンが運行中だ。

「我々は最高に快適な通勤というものに関して確たるビジョンを持っていますが、それはサンフランシスコに住む人にとってより早く、信頼性があり、しかも安全であるということです。こういったサービスをサンフランシスコの枠を超えて広げて行きたい」と、Vahabzadehは説明した。

ライド・シェアの領域に投資しているのはフォードだけではない。例えば、GMも自社内にMavenというスタートアップを設立し、Lyftとも提携している。また、Chariotのビジネスモデルはフォードの自動運転車の方向性ともとても相性が良い。フォードはオンデマンドで運行するライド・シェア方式の代替交通手段のネットワークを展開しようと画策しているからだ。

「まだまだ道のりは長いが、それも今Ford Smart Mobilityと組むことの理由の1つです」と、Vahabzadehは言った。実際、同社はChariotの将来の方向性として自動化に目を向けている、と彼は付け加えた。

Chariotとフォードは今回の契約に関する金銭的な条件に関してはコメントを控えた。
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(翻訳:Tsubouchi)